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特開2024-110767継手、及び熱可塑樹脂製のパイプと熱可塑性樹脂製の継手との接続方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110767
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】継手、及び熱可塑樹脂製のパイプと熱可塑性樹脂製の継手との接続方法
(51)【国際特許分類】
   F16L 47/02 20060101AFI20240808BHJP
【FI】
F16L47/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023015549
(22)【出願日】2023-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】後藤 康文
(72)【発明者】
【氏名】三觜 浩平
(72)【発明者】
【氏名】小▲浜▼ 奈月
【テーマコード(参考)】
3H019
【Fターム(参考)】
3H019GA06
(57)【要約】
【課題】短時間でパイプとの融着作業を行うことができ、無駄なエネルギーを消費せず、かつ融着作業が容易となる継手を提供する。
【解決手段】継手は、熱可塑樹脂製のパイプを挿入する孔が形成された挿入部と、挿入部に埋設された導電性の発熱媒体と、孔に設けられ、筒状に形成され、かつ内周と外周とを貫通する貫通部を備え、パイプが挿入される金属製の被加熱体と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑樹脂製のパイプを挿入する孔が形成された熱可塑樹脂製の挿入部と、
前記挿入部に埋設された導電性の発熱媒体と、
前記孔に設けられ、筒状に形成され、かつ内周と外周とを貫通する貫通部を備え、前記パイプが挿入される金属製の被加熱体と、
を有する継手。
【請求項2】
熱可塑樹脂製のパイプを挿入する孔が形成された熱可塑樹脂製の挿入部と、
前記挿入部に埋設され、挿入部のパイプ挿入方向の一方側から他方側に向けて疎に巻回されている導電性のコイルと、
前記孔に設けられ、金属を含む熱可塑性樹脂で筒状に形成され、前記パイプが挿入される金属含有樹脂製被加熱体と、
を有する継手。
【請求項3】
前記金属含有樹脂製被加熱体には、前記パイプを構成する前記熱可塑性樹脂、及び前記挿入部を構成する前記熱可塑性樹脂と同一の熱可塑性樹脂が用いられている、
請求項2に記載の継手。
【請求項4】
前記金属含有樹脂製被加熱体は、前記パイプと前記挿入部とは別体で形成され、
前記孔には、前記金属含有樹脂製被加熱体の挿入量を決めるストッパが設けられ、
前記金属含有樹脂製被加熱体を前記孔に挿入し、前記金属含有樹脂製被加熱体の挿入方向先端部が前記ストッパに当接した際に、前記金属含有樹脂製被加熱体の挿入方向とは反対側の後端部が、前記挿入部の前記孔の開口端と一致する、
請求項2または請求項3に記載の継手。
【請求項5】
前記金属含有樹脂製被加熱体の内面側には、前記パイプの外面に接触して、前記パイプを前記金属含有樹脂製被加熱体に挿入する挿入方向の移動は許容し、前記挿入方向とは反対方向である抜け方向の移動は阻止する第1抜け止め部材が設けられており、
前記金属含有樹脂製被加熱体の外面側には、前記孔の内面に接触して、前記金属含有樹脂製被加熱体を前記孔に挿入する挿入方向の移動は許容し、前記挿入方向とは反対方向である抜け方向の移動は阻止する第2抜け止め部材が設けられている、
請求項4に記載の継手。
【請求項6】
前記被加熱体は、前記挿入部に埋設されている、
請求項1に記載の継手。
【請求項7】
前記金属含有樹脂製被加熱体は、前記挿入部に埋設されている、
請求項2に記載の継手。
【請求項8】
前記被加熱体は、前記挿入部のパイプ挿入方向の一方側から他方側に向けて体積が減少している、
請求項1に記載の継手。
【請求項9】
前記金属含有樹脂製被加熱体は、前記挿入部のパイプ挿入方向の一方側から他方側に向けて体積が減少している、
請求項2に記載の継手。
【請求項10】
前記挿入部は、透明又は半透明な熱可塑性樹脂で形成されている、
請求項1または請求項2に記載の継手。
【請求項11】
熱可塑樹脂製のパイプと熱可塑性樹脂製の継手との接続方法であって、
前記継手には、前記パイプを挿入する挿入部に導電性の発熱媒体が埋設されており、
前記挿入部と前記パイプの端部分との間に、筒状に形成され、かつ内周と外周とを貫通する貫通部を備えて前記パイプが挿入される金属製の被加熱体を配置した状態で、前記発熱媒体に電流を流して前記被加熱体を誘導加熱することによって、前記被加熱体の周囲の前記パイプを構成する熱可塑性樹脂と前記継手を構成する前記熱可塑性樹脂とを溶融させて前記パイプと前記継手とを熱融着する、
熱可塑樹脂製のパイプと熱可塑性樹脂製の継手との接続方法。
【請求項12】
熱可塑樹脂製のパイプと熱可塑性樹脂製の継手との接続方法であって、
前記継手には、前記パイプを挿入する挿入部に導電性のコイルが埋設されており、
前記挿入部と前記パイプの端部分との間に金属を含む熱可塑性樹脂で筒状に形成され、パイプが挿入される金属含有樹脂製被加熱体を配置した状態で、前記コイルに電流を流して前記金属含有樹脂製被加熱体を誘導加熱することによって、前記金属含有樹脂製被加熱体の周囲の前記パイプを構成する熱可塑性樹脂と前記継手を構成する前記熱可塑性樹脂とを溶融させて前記パイプと前記継手とを熱融着する、
熱可塑樹脂製のパイプと熱可塑性樹脂製の継手との接続方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、パイプと接続される継手、及び熱可塑樹脂製のパイプと熱可塑性樹脂製の継手との接続方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パイプと継手の接続にはワンタッチ式継手が簡易で有効だが、施工主によってはより固着力が高い融着式を望む者もいる。
【0003】
融着にはこれまで電気融着等が使用されてきたが、加熱・冷却時間が長かったり、エネルギー効率が良くない。電気融着は、電熱線からなるヒータコイルが継手内に内蔵されており、継手とパイプを融着するには、継手の熱可塑性樹脂とパイプの熱可塑性樹脂の両方の熱可塑性樹脂を多量に溶融する必要があるため、溶融する時間、および冷却して固化させる時間を長く要する。
【0004】
誘導加熱だとそれは防げるが、現状だと継手サイズ(径)ごとに加熱治具(コイル)の交換が必要だったりしてサイズの異なる加熱治具への切り替えが煩雑である。誘導加熱式の融着は、例えば、特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-167630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は上記事実を考慮し、短時間でパイプとの融着作業を行うことができ、無駄なエネルギーを消費せず、かつ融着作業が容易となる継手、及び熱可塑樹脂製のパイプと熱可塑性樹脂製の継手との接続方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様に係る継手は、熱可塑樹脂製のパイプを挿入する孔が形成された熱可塑樹脂製の挿入部と、前記挿入部に埋設された導電性の発熱媒体と、前記孔に設けられ、筒状に形成され、かつ内周と外周とを貫通する貫通部を備え、前記パイプが挿入される金属製の被加熱体と、を有する。
【0008】
第1の態様に係る継手には、パイプを挿入する挿入部に導電性の発熱媒体が埋設されているので、挿入部とパイプの端部分との間に被加熱体を配置した状態で、発熱媒体に電流を流して被加熱体を誘導加熱すると、被加熱体に隣接するパイプを構成する熱可塑性樹脂と挿入部を構成する熱可塑性樹脂とが溶融する。パイプの溶融した熱可塑性樹脂と挿入部の溶融した熱可塑性樹脂とを被加熱体の貫通部で接触、及び混ざり合わせることができ、これにより、パイプと継手とを熱融着させることができる。
【0009】
挿入部には、発熱媒体が埋設されているため、挿入部の外部に発熱媒体を配置して被加熱体を誘導加熱する場合に比較して、発熱媒体のブレによる溶融のバラツキを抑制することができる。
【0010】
挿入部の外部に発熱媒体を配置して挿入部内の被加熱体を誘導加熱する場合では、継手のサイズに対応したサイズの発熱媒体を用意し、継手のサイズ毎に、挿入部の外部に配置する発熱媒体を交換する必要があったが、第1の態様に係る継手では、挿入部の外部に配置する発熱媒体の交換は必要としない。
【0011】
また、被加熱体は、パイプと挿入部とを直接的に加熱することができるので、パイプの熱可塑性樹脂と挿入部の熱可塑性樹脂とを効率的に溶融させることができる。
【0012】
第2の態様に係る継手は、熱可塑樹脂製のパイプを挿入する孔が形成された熱可塑樹脂製の挿入部と、前記挿入部に埋設され、挿入部のパイプ挿入方向の一方側から他方側に向けて疎に巻回されている導電性のコイルと、前記孔に設けられ、金属を含む熱可塑性樹脂で筒状に形成され、前記パイプが挿入される金属含有樹脂製被加熱体と、を有する。
【0013】
第2の態様に係る継手には、パイプを挿入する挿入部に導電性のコイルが埋設されているので、挿入部とパイプの端部分との間に金属含有樹脂製被加熱体を配置した状態で、コイルに電流を流して金属含有樹脂製被加熱体を誘導加熱すると、金属含有樹脂製被加熱体を構成する熱可塑性樹脂と、金属含有樹脂製被加熱体に隣接するパイプを構成する熱可塑性樹脂と、挿入部を構成する熱可塑性樹脂とが溶融する。そして、パイプの溶融した熱可塑性樹脂と金属含有樹脂製被加熱体の溶融した熱可塑性樹脂とが接触、及び混ざり合い、かつ、金属含有樹脂製被加熱体の溶融した熱可塑性樹脂と挿入部の溶融した熱可塑性樹脂とが接触、及び混ざり合い、パイプと継手とが熱融着する。
【0014】
挿入部には、コイルが埋設され、コイルと金属含有樹脂製被加熱体の位置ブレが少ないため、挿入部の外部にコイルを配置して被加熱体を誘導加熱する場合に比較して、コイルのブレによる溶融のバラツキを抑制することができる。
【0015】
挿入部の外部にコイルを配置して継手内の被加熱体を誘導加熱する場合では、継手のサイズに対応したサイズのコイルを用意し、継手のサイズ毎に、挿入部の外部に配置するコイルを交換する必要があったが、第2の態様に係る継手では、挿入部の外部に配置するコイルの交換は必要としない。
【0016】
金属含有樹脂製被加熱体は、パイプと挿入部とを直接的に加熱することができるので、パイプの熱可塑性樹脂と挿入部の熱可塑性樹脂とを効率的に溶融させることができる。
【0017】
コイルが密に巻回されている部分と疎に巻回されている部分とを比較すると、コイルが密に巻回されている部分の方が、疎に巻回されている部分よりも発熱量が多くなる。
【0018】
コイルに電流が流されると、金属含有樹脂製被加熱体の熱可塑性樹脂、パイプを構成する熱可塑性樹脂、及び挿入部を構成する熱可塑性樹脂は、コイルが密に巻回されて発熱量が多い方から疎に巻回されて発熱量が相対的に少ない方に向けて順次溶融して融着する。
【0019】
このように、融着部分において、融着部分の長手方向一方側から他方側へ順次溶融させて融着させることで、パイプと挿入部との間に介在した空気を、溶融した熱可塑性樹脂で融着部分の長手方向一方側から他方側へ順次押し出しながら融着を行うことができる。そのため、融着部分において、空気が閉じ込められた状態で熱可塑性樹脂が固化することが抑制され、融着不良が抑制される。
【0020】
第3の態様に係る継手は、第2の態様に係る継手において、前記金属含有樹脂製被加熱体には、前記パイプを構成する前記熱可塑性樹脂、及び前記挿入部を構成する前記熱可塑性樹脂と同一の熱可塑性樹脂が用いられている。
【0021】
第3の態様に係る継手では、金属含有樹脂製被加熱体に用いられる熱可塑性樹脂と、パイプを構成する熱可塑性樹脂と、挿入部を構成する熱可塑性樹脂とが同一の熱可塑性樹脂とされているため、隣り合う熱可塑性樹脂同士の親和性、言い換えれば融着性を高めることができる。
【0022】
第4の態様に係る継手は、第2の態様または第3の態様に係る継手において、前記金属含有樹脂製被加熱体は、前記パイプと前記挿入部とは別体で形成され、前記孔には、前記金属含有樹脂製被加熱体の挿入量を決めるストッパが設けられ、前記金属含有樹脂製被加熱体を前記孔に挿入し、前記金属含有樹脂製被加熱体の挿入方向先端部が前記ストッパに当接した際に、前記金属含有樹脂製被加熱体の挿入方向とは反対側の後端部が、前記挿入部の前記孔の開口端と一致する。
【0023】
第4の態様に係る継手では、ストッパに当接するまで金属含有樹脂製被加熱体を挿入部の孔に挿入すると、金属含有樹脂製被加熱体の挿入方向とは反対側の後端部が、挿入部の孔の開口端と一致する。
【0024】
このため、金属含有樹脂製被加熱体の後端部が、挿入部の孔の開口端と一致したか否かを見ることで、金属含有樹脂製被加熱体の挿入方向先端部がストッパに当接したことを継手の外部から間接的に確認することができる。
【0025】
第5の態様に係る継手は、第4の態様に係る継手において、前記金属含有樹脂製被加熱体の内面側には、前記パイプの外面に接触して、前記パイプを前記金属含有樹脂製被加熱体に挿入する挿入方向の移動は許容し、前記挿入方向とは反対方向である抜け方向の移動は阻止する第1抜け止め部材が設けられており、前記金属含有樹脂製被加熱体の外面側には、前記孔の内面に接触して、前記金属含有樹脂製被加熱体を前記孔に挿入する挿入方向の移動は許容し、前記挿入方向とは反対方向である抜け方向の移動は阻止する第2抜け止め部材が設けられている。
【0026】
第5の態様に係る継手では、パイプを筒状の金属含有樹脂製被加熱体に挿入する際には、第1抜け止め部材は挿入方向の移動を許容し、パイプを金属含有樹脂製被加熱体に容易に挿入することができる。一方、金属含有樹脂製被加熱体に挿入されたパイプは、第1抜け止め部材によって抜け方向の移動が阻止される。
【0027】
また、金属含有樹脂製被加熱体を挿入部の孔に挿入する際には、第2抜け止め部材は、金属含有樹脂製被加熱体の挿入方向の移動を許容し、金属含有樹脂製被加熱体を孔に容易に挿入することができる。一方、孔に挿入された金属含有樹脂製被加熱体は、第2抜け止め部材によって抜け方向の移動が阻止される。
【0028】
第6の態様に係る継手は、第1の態様に係る継手において、前記被加熱体は、前記挿入部に埋設されている。
【0029】
第6の態様に係る継手では、被加熱体が挿入部に埋設されているので、被加熱体を挿入部の孔に挿入する手間がかからない。
【0030】
第7の態様に係る継手は、第2の態様に係る継手、及び第3の態様に係る継手において、前記金属含有樹脂製被加熱体は、前記挿入部に埋設されている。
【0031】
第7の態様に係る継手では、金属含有樹脂製被加熱体が挿入部に埋設されているので、金属含有樹脂製被加熱体を挿入部の孔に挿入する手間がかからない。
【0032】
第8の態様に係る継手は、第1の態様に係る継手において、前記被加熱体は、前記挿入部のパイプ挿入方向の一方側から他方側に向けて体積が減少している。
【0033】
発熱媒体に電流が流されると、パイプを構成する熱可塑性樹脂、及び挿入部を構成する熱可塑性樹脂は、被加熱体の体積が大きく発熱量が多い方から被加熱体の体積が小さく発熱量が相対的に少ない方に向けて順次溶融して融着する。
【0034】
このように、融着部分において、融着部分の長手方向一方側から他方側へ順次溶融させて融着させることで、パイプと挿入部との間に介在した空気を、溶融した熱可塑性樹脂で融着部分の長手方向一方側から他方側へ順次押し出しながら融着を行うことができる。そのため、融着部分において、空気が閉じ込められた状態で熱可塑性樹脂が固化することが抑制され、融着不良が抑制される。
【0035】
第9の態様に係る継手は、第2の態様に係る継手において、前記金属含有樹脂製被加熱体は、前記挿入部のパイプ挿入方向の一方側から他方側に向けて体積が減少している。
【0036】
発熱媒体に電流が流されると、金属含有樹脂製被加熱体の熱可塑性樹脂、パイプを構成する熱可塑性樹脂、及び挿入部を構成する熱可塑性樹脂は、金属含有樹脂製被加熱体の体積が大きく発熱量が多い方から金属含有樹脂製被加熱体の体積が小さく発熱量が相対的に少ない方に向けて順次溶融して融着する。
【0037】
このように、融着部分において、融着部分の長手方向一方側から他方側へ順次溶融させて融着させることで、パイプと挿入部との間に介在した空気を、溶融した熱可塑性樹脂で融着部分の長手方向一方側から他方側へ順次押し出しながら融着を行うことができる。そのため、融着部分において、空気が閉じ込められた状態で熱可塑性樹脂が固化することが抑制され、融着不良が抑制される。
【0038】
第10の態様に係る継手は、第1の態様~第9の態様の何れか一つの態様に係る継手において、前記挿入部は、透明又は半透明な熱可塑性樹脂で形成されている。
【0039】
第10の態様に係る継手では、挿入部が透明又は半透明な熱可塑性樹脂で形成されているため、挿入部の内部を、外部から目視することができる。これにより、挿入部内のパイプの位置などの状況を外部から目視で確認することができる。
【0040】
第11の態様に係る熱可塑樹脂製のパイプと熱可塑性樹脂製の継手との接続方法は、熱可塑樹脂製のパイプと熱可塑性樹脂製の継手との接続方法であって、前記継手には、前記パイプを挿入する挿入部に導電性の発熱媒体が埋設されており、前記挿入部と前記パイプの端部分との間に、筒状に形成され、かつ内周と外周とを貫通する貫通部を備えて前記パイプが挿入される金属製の被加熱体を配置した状態で、前記発熱媒体に電流を流して前記被加熱体を誘導加熱することによって、前記被加熱体の周囲の前記パイプを構成する熱可塑性樹脂と前記継手を構成する前記熱可塑性樹脂とを溶融させて前記パイプと前記継手とを熱融着する。
【0041】
第11の態様に係る熱可塑樹脂製のパイプと熱可塑性樹脂製の継手との接続方法では、継手には、パイプを挿入する挿入部に導電性の発熱媒体が埋設されているので、挿入部とパイプの端部分との間に被加熱体を配置した状態で、発熱媒体に電流を流して被加熱体を誘導加熱すると、被加熱体の周囲のパイプを構成する熱可塑性樹脂と継手を構成する熱可塑性樹脂とが溶融し、貫通部を介してパイプと継手とが熱融着する。
また、被加熱体は、パイプと継手とを直接的に加熱することができ、パイプの熱可塑性樹脂と継手の熱可塑性樹脂とを効率的に溶融させることができる。
【0042】
第12の態様に係る熱可塑樹脂製のパイプと熱可塑性樹脂製の継手との接続方法は、熱可塑樹脂製のパイプと熱可塑性樹脂製の継手との接続方法であって、前記継手には、前記パイプを挿入する挿入部に導電性のコイルが埋設されており、前記挿入部と前記パイプの端部分との間に金属を含む熱可塑性樹脂で筒状に形成され、パイプが挿入される金属含有樹脂製被加熱体を配置した状態で、前記コイルに電流を流して前記金属含有樹脂製被加熱体を誘導加熱することによって、前記金属含有樹脂製被加熱体の周囲の前記パイプを構成する熱可塑性樹脂と前記継手を構成する前記熱可塑性樹脂とを溶融させて前記パイプと前記継手とを熱融着する。
【0043】
第12の態様に係る熱可塑樹脂製のパイプと熱可塑性樹脂製の継手との接続方法では、継手には、パイプを挿入する挿入部に導電性の発熱媒体が埋設されているので、挿入部とパイプの端部分との間に金属含有樹脂製被加熱体を配置した状態で、発熱媒体に電流を流して金属含有樹脂製被加熱体を誘導加熱すると、金属含有樹脂製被加熱体の熱可塑性樹脂と、金属含有樹脂製被加熱体の周囲のパイプを構成する熱可塑性樹脂と、継手を構成する熱可塑性樹脂とが溶融し、パイプと金属含有樹脂製被加熱体と継手とが熱融着する。
また、金属含有樹脂製被加熱体は、パイプと継手とを直接的に加熱することができ、パイプの熱可塑性樹脂と継手の熱可塑性樹脂とを効率的に溶融させることができる。
【発明の効果】
【0044】
以上説明したように本開示の継手によれば、短時間でパイプとの融着作業を行うことができ、無駄なエネルギーを消費せず、かつ融着作業が容易となる。
また、本開示の熱可塑樹脂製のパイプと熱可塑性樹脂製の継手との接続方法によれば、短時間でパイプと継手との融着作業を行うことができ、無駄なエネルギーを消費せず、かつ融着作業が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】本開示の第1の実施形態に係る継手に被加熱体、及びパイプを挿入した仮組状態を示す斜視断面図である。
図2】本開示の第1の実施形態に係る継手、パイプ、及び被加熱体を示す分解斜視図である。
図3】先端部分に被加熱体を取り付けた状態を示すパイプの斜視図である。
図4】本開示の第2の実施形態に係る継手に被加熱体、及びパイプを挿入した仮組状態を示す斜視断面図である。
図5】本開示の第3の実施形態に係る継手、パイプ、及び被加熱体の分解した状態を示す断面図である。
図6】本開示の第3の実施形態に係る継手に被加熱体、及びパイプを挿入した仮組状態を示す断面図である。
図7】本開示の第4の実施形態に係る継手に被加熱体、及びパイプを挿入した仮組状態を示す断面図である。
図8】本開示の第5の実施形態に係る継手に被加熱体、及びパイプを挿入した仮組状態を示す断面図である。
図9A】大サイズの継手、及びパイプを示す断面図である。
図9B】中サイズの継手、及びパイプを示す断面図である。
図9C】小サイズの継手、及びパイプを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
[第1の実施形態]
以下、図1図3にしたがって、本開示の第1の実施形態に係る継手20及び継手20を用いたパイプ10の接続方法について説明する。
【0047】
(継手の概略)
本実施形態の継手20は、一例として、図1、及び図2に示すように、2つのパイプ10を接続するものである。すなわち、継手20は、複数のパイプ10を接続するものである。
なお、図1は、パイプ10と継手20との仮組状態を示しており、パイプ10と継手20とを融着する前の状態を示している。
【0048】
パイプ10は、熱可塑性樹脂で形成された、一方向に延びる中空の円筒状の部材、所謂パイプである。パイプ10を形成する熱可塑性樹脂としては、例えばポリブテンを用いることができる。
【0049】
パイプ10は、図3に示すように、一方の端部分に後述する被加熱体40を取り付けた状態で、図1に示すように、後述する継手20の真直部24に形成された環状孔26に挿入される。
【0050】
(継手)
本実施形態の継手20は、熱可塑性樹脂で形成された、エルボ形状とされた中空の部材である。継手20を形成する熱可塑性樹脂は、融点がパイプ10を形成する熱可塑性樹脂の融点と同じであることが好ましい。また、継手20を形成する熱可塑性樹脂は、パイプ10と同じ素材であることがより好ましい。本実施形態において、継手20を形成する熱可塑性樹脂は、パイプ10を形成する熱可塑性樹脂と同一の樹脂である。継手20を形成する熱可塑性樹脂は、例えばポリブテンを用いることができる。
【0051】
継手20は、互いに直交する方向に延びる2つの円筒状の真直部24と、2つの真直部24を繋げるように湾曲している湾曲部27と、を有する。真直部24は、本開示の挿入部の一例である。なお、継手形状は本形状のようなエルボ形状+ストレート形状、チーズ形状、アダプタータイプ等、適宜適用される。
【0052】
継手20の内部には、エルボ形状とされた流路28が形成されている。
真直部24の先端面24A側には、パイプ10、及び被加熱体40を挿入する環状孔26が形成されている。継手20には、環状孔26の内側に、パイプ10に挿入される円筒状の突出部30が形成されている。
【0053】
(被加熱体)
図1、及び図2に示すように、被加熱体40は、円筒状の金属部材である。金属部材としては、鉄等の固有抵抗値の高い金属体が好ましい。
【0054】
図1に示すように、被加熱体40は、パイプ10を挿入可能な内径を有し、環状孔26に挿入可能な外径を有している。なお、被加熱体40の厚さは図示されているものより、薄くてもよく、被加熱体40の厚さは適宜変更可能である。
【0055】
図3に示すように、被加熱体40には、貫通部としての複数の貫通孔42が周方向、及び軸方向に形成されている。
【0056】
図1に示すように、被加熱体40の全長は、環状孔26の深さ寸法と同一寸法に設定されている。したがって、被加熱体40を環状孔26に挿入し、被加熱体40の挿入側の先端面40Aを環状孔26の底部26Aに突き当てると、被加熱体40の挿入側とは反対側の後端面40Bと、真直部24の先端面24Aとが面一になる。環状孔26の底部26Aは、本開示のストッパの一例である。
言い換えれば、継手20の環状孔26の開口端と、被加熱体40の後端面40Bとが一致したか否かを見ることで、被加熱体40の先端面40Aが環状孔26の底部26Aに当接したことを継手20の外部から間接的に確認することができる。
【0057】
なお、図1に示すように、融着前の仮組状態において、被加熱体40は、環状孔26、及びパイプ10に接している。
【0058】
図1に示すように、継手20の各真直部24には、環状孔26の外周側に、加熱体としての金属製の導体であるコイル44が埋設されている。コイル44は、一例として、熱可塑性樹脂で継手20を射出成型する際に、モールド内に配置されたりインサート成形により埋設される。コイル44は、螺旋状に巻回されているものであり、図2に示すように、一方の端部44A、及び他方の端部44Bが真直部24の外周面から突出している。本実施形態のコイル44は、軸方向のピッチ(線と線の中心間隔)は、全長に渡って一定である。コイル44は、本開示の発熱媒体の一例である。
【0059】
コイル44は、環状孔26の周面から露出しないように、言い換えれば、導体である被加熱体40と接触しないように樹脂中に埋設されている。なお、コイル44は、被加熱体40を効率的に電磁誘導加熱できるように、環状孔26の周面から露出しない範囲で、環状孔26の周面、即ち被加熱体40に接近させて設けることが好ましい。
【0060】
これらの端部44A、及び端部44Bには、図示しない高周波電流を供給する電源(図示省略)が接続され、コイル44に高周波電流を流すことが可能となっている。なお、本実施形態では、コイル44の端部44A、及び端部44Bが真直部24の外周面から突出しているが、コイル44の端部44A、及び端部44Bをコネクタ(図示省略)に接続し、該コネクタを電源のコネクタ(図示省略)に接続するようにしてもよい。
【0061】
(パイプの接続方法)
次に、本実施形態の継手20を用いたパイプ10の接続方法の手順の一例を説明する。
【0062】
(1) 図3に示すように、パイプ10の端部分を被加熱体40に挿入する。より具体的には、パイプ10の端部分の先端面が、被加熱体40の端部分の先端面と面一になるまで挿入する。
【0063】
(2) 次に、被加熱体40を取り付けたパイプ10の端部分を、継手20の環状孔26に挿入し、図1に示すように、パイプ10の先端面10A、及び被加熱体40の先端面40Aを、環状孔26の底部26Aに突き当てる。
【0064】
図1に示すように、被加熱体40を環状孔26に挿入して被加熱体40の先端面40Aが環状孔26の底部26Aに突き当たると、被加熱体40の後端面40Bと、真直部24の先端面24Aとが面一になる、言い換えれば、継手20の環状孔26の開口端と、被加熱体40の後端面40Bとが一致する。したがって、被加熱体40の後端面40Bの位置を見ることで、被加熱体40の先端面40Aが第2ストッパに当接したことを継手20の外部から間接的に確認することができる。
【0065】
なお、継手20を透明又は半透明の熱可塑性樹脂で形成すれば、作業者は、継手20の内部の状況を継手20の外部より目視で確認できる。例えば、パイプ10の先端面10A、及び被加熱体40の先端面40Aを継手20の外部より目視することができる。これにより、図1に示すように、パイプ10の先端面10A、及び被加熱体40の先端面40Aが、環状孔26の底部26Aに突き当たったことを継手20の外部より目視で確認できる。
【0066】
(3) 次に、コイル44の一方の端部44A、及び他方の端部44Bに電源(図示省略)を接続し、コイル44に予め設定された所定の高周波電流を、予め設定された所定時間流す。
【0067】
これにより、コイル44から磁界が発生し、被加熱体40が電磁誘導加熱され、被加熱体40と接触している熱可塑性樹脂、及び被加熱体40周辺の熱可塑性樹脂が溶融する。
【0068】
パイプ10の溶融した熱可塑性樹脂と継手20の溶融した熱可塑性樹脂とは、被加熱体40に形成された貫通孔42に進入し、少なくとも貫通孔42内部で相互に接触、及び混ざり合う。また、パイプ10の先端側においては、パイプ10の先端側の溶融した熱可塑性樹脂と継手20の環状孔26の底部26Aの溶融した熱可塑性樹脂とが相互に接触、及び混ざり合う。これにより、パイプ10と継手20とが融着する。
【0069】
なお、パイプ10の先端部分には、円筒状の突出部30が挿入され、突出部30がパイプ10を内面側から支持するので、融着時にパイプ10の変形が抑制される。
【0070】
パイプ10と継手20とに接する被加熱体40は、パイプ10と継手20とを直接的に加熱することができるので、パイプ10の熱可塑性樹脂と継手20の熱可塑性樹脂とを効率的に溶融させることができる。
【0071】
(4) 所定時間コイル44に電流を流した後、コイル44の端部44A、及び端部44Bから電源を切り離し、溶融した熱可塑性樹脂が固化するまで冷却する。溶融した熱可塑性樹脂が固化することでパイプ10と継手20との融着作業が完了する。
【0072】
このように、パイプ10と継手20とを融着することで、パイプ10と継手20とを強固に接続することができ、また、高いシール性が得られる。
【0073】
また、本実施形態の接続方法によれば、パイプ10と継手20とが対面している融着に必要な必要最小限の部分のみを溶融するので、短時間で融着作業を行うことができ、かつ無駄なエネルギーの消費を抑制することができる。また、継手の外部に配置するコイルを継手のサイズ毎に変更するといった従来の手間がなく、融着作業が容易となる。
【0074】
[第2の実施形態]
次に、図4にしたがって、本開示の第2の実施形態に係る継手20及び継手20を用いたパイプ10の接続方法について説明する。なお、第1の実施形態と同一構成には同一符号を付し、その説明は省略する。
【0075】
図4に示すように、本実施形態の継手20では、第1の実施形態の金属製の被加熱体40の代わりに、熱可塑性樹脂製の金属含有樹脂製被加熱体50が用いられている。
本実施形態の金属含有樹脂製被加熱体50は、金属の粉末(または粒子)を混入させた熱可塑性樹脂で形成されている。金属の粉末(または粒子)は、固有抵抗の高い金属が好ましい。
【0076】
金属含有樹脂製被加熱体50に用いる熱可塑性樹脂は、パイプ10を構成する熱可塑性樹脂と、継手20を構成する熱可塑性樹脂と同一の熱可塑性樹脂が好ましい。本実施形態では、パイプ10を構成する熱可塑性樹脂と、継手20を構成する熱可塑性樹脂と、金属含有樹脂製被加熱体50に用いる熱可塑性樹脂とに同一の熱可塑性樹脂(一例として、ポリブテン)が用いられている。
【0077】
本実施形態の金属含有樹脂製被加熱体50は、第1の実施形態の被加熱体40と同様の円筒形状であるが、貫通孔42は形成されていない。
【0078】
本実施形態の金属含有樹脂製被加熱体50は、コイル44の内周側に、コイル44とは間隔を開けて継手20の内部に埋設されている。金属含有樹脂製被加熱体50は、その内周面が、環状孔26の外周面と面一となるように埋設されている。本実施形態の金属含有樹脂製被加熱体50は継手20と一体化しており、一例として、継手20を成形する際に、継手20と一体で成型されている。
【0079】
本実施形態の継手20に埋設されたコイル44は、環状孔26の底部側から環状孔26の開口側へ向けて疎となるように巻回されている。言い換えれば、コイル44は、環状孔26の底部側から環状孔26の開口側へ向けてピッチが大きくなっている。
【0080】
(パイプの接続方法)
次に、本実施形態の継手20を用いたパイプ10の接続方法の手順の一例を説明する。
(1) パイプ10の端部分を継手20の環状孔26に挿入し、パイプ10の先端面10Aを環状孔26の底部26Aに突き当てる。
【0081】
(2) 次に、コイル44の一方の端部44A、及び他方の端部44Bに電源(図示省略)を接続し、予め設定された所定の高周波電流を、予め設定された所定時間コイル44に流す。
これにより、コイル44から磁界が発生し、金属含有樹脂製被加熱体50の熱可塑性樹脂中に混入された金属が電磁誘導加熱され、金属含有樹脂製被加熱体50を構成している熱可塑性樹脂、金属含有樹脂製被加熱体50と接触しているパイプ10の熱可塑性樹脂、及び継手20の熱可塑性樹脂が溶融する。
【0082】
金属含有樹脂製被加熱体50の溶融した熱可塑性樹脂とパイプ10の溶融した熱可塑性樹脂とが混ざり合い、また、金属含有樹脂製被加熱体50の溶融した熱可塑性樹脂と継手20の溶融した熱可塑性樹脂とが混ざり合い、さらに、パイプ10の先端側においては、パイプ10の先端側の溶融した熱可塑性樹脂と環状孔26の底部26Aの溶融した熱可塑性樹脂とが混ざり合い、パイプ10と継手20とが融着する。
【0083】
(3) 所定時間コイル44に電流を流した後、コイル44の端部44A、及び端部44Bから電源を切り離し、溶融した熱可塑性樹脂が固化するまで冷却する。溶融した熱可塑性樹脂が固化することでパイプ10と継手20との融着作業が完了する。
【0084】
本実施形態では、パイプ10を構成する熱可塑性樹脂と、継手20を構成する熱可塑性樹脂と、金属含有樹脂製被加熱体50に用いる熱可塑性樹脂とに同一の熱可塑性樹脂(一例として、ポリブテン)が用いられているため、溶融した樹脂同士の親和性がよい。言い換えれば、溶融した樹脂同士の融着性を高めることができる。
【0085】
このように、パイプ10と継手20とを融着することで、第1の実施形態と同様に、パイプ10と継手20とを強固に接合することができ、また、高いシール性が得られる。
【0086】
また、本実施形態の接続方法によれば、第1の実施形態と同様に、パイプ10と継手20とが対面している融着に必要な必要最小限の部分のみを溶融するので、短時間で融着作業を行うことができ、かつ無駄なエネルギーの消費を抑制することができる。
【0087】
ところで。コイル44が密に巻回されている部分と疎に巻回されている部分とを比較すると、コイルが密に巻回されている部分の方が、疎に巻回されている部分よりも発熱量が多くなる。このため、コイル44に電流が流されると、熱可塑性樹脂は、コイル44が密に巻回されて発熱量が多い方から疎に巻回されて発熱量が相対的に少ない方に向けて溶融して融着する。
【0088】
本実施形態の継手20では、融着部分において、環状孔26の底部側から開口側へ向けて熱可塑性樹脂を溶融させて融着させることができ、パイプ10と金属含有樹脂製被加熱体50との間、及び金属含有樹脂製被加熱体50と継手20との間に介在した空気を、環状孔26の底部側から開口側へ順次押し出しながら融着を行うことができる。そのため、融着部分において、空気が閉じ込められた状態で熱可塑性樹脂が固化することが抑制され、融着不良が抑制される。
【0089】
[第3の実施形態]
次に、図5、及び図6にしたがって、本開示の第3の実施形態に係る継手20及び継手20を用いたパイプ10の接続方法について説明する。なお、前述した実施形態と同一構成には同一符号を付し、その説明は省略する。
【0090】
図5に示すように、本実施形態の金属含有樹脂製被加熱体60は、第2の実施形態の金属含有樹脂製被加熱体50の変形例であり、継手20とは別体で形成されている。
【0091】
図5、及び図6に示すように、本実施形態の金属含有樹脂製被加熱体60は、第2の実施形態の金属含有樹脂製被加熱体50とほぼ同様の円筒形状であるが、継手20に挿入する側の端部に、内周側に突出する段部62が形成されている。この段部62は、パイプ10の先端面10Aの突き当て部である。
【0092】
継手20の真直部24には、金属含有樹脂製被加熱体60を挿入する挿入孔74が形成されている。挿入孔74は、流路28よりも大径に形成されている。
【0093】
金属含有樹脂製被加熱体60には、パイプ10の挿入側の内周面に環状の浅溝64が形成されており、この浅溝64にリング状の第1抜け止め防止部材66が装着されている。
【0094】
第1抜け止め防止部材66には、内周側に傾斜して突出する複数の爪66Aが形成されている。爪66Aは、パイプ10を金属含有樹脂製被加熱体60に挿入する際には弾性変形して挿入を容易にしており、挿入されたパイプ10が金属含有樹脂製被加熱体60から抜ける方向(矢印A方向)に移動しようとすると、爪66Aの先端がパイプ10の外周面に食い込んで引っ掛かり、パイプ10の抜けを抑制することができる。
【0095】
また、金属含有樹脂製被加熱体60には、継手20へ挿入する側の外周面に環状の浅溝70が形成されており、この浅溝70にリング状の第2抜け止め防止部材72が装着されている。
【0096】
第2抜け止め防止部材72には、外周側に傾斜して突出する複数の爪72Aが形成されている。爪72Aは、金属含有樹脂製被加熱体60を継手20の挿入孔74へ挿入する際には弾性変形して挿入を容易にしており、挿入された金属含有樹脂製被加熱体60が継手20から抜ける方向(矢印B方向)に移動しようとすると、爪72Aの先端が継手20の挿入孔74の内周面に食い込んで引っ掛かり、金属含有樹脂製被加熱体60の抜けを抑制することができる(図6参照)。
【0097】
本実施形態では、図6に示すように、パイプ10が挿入された金属含有樹脂製被加熱体60を挿入孔74に挿入すると、第1抜け止め防止部材66、及び第2抜け止め防止部材72の作用により、パイプ10及び金属含有樹脂製被加熱体60の仮施工時抜けが抑制される。このため、熱可塑性樹脂が溶融して固化するまで、パイプ10、金属含有樹脂製被加熱体60が継手20に対して動かないように作業者がこれらを保持する必要がない。また、溶融した熱可塑性樹脂が固化するまでの間に、パイプ10、及び金属含有樹脂製被加熱体60に何らかの外力が作用しても、パイプ10、及び金属含有樹脂製被加熱体60が継手20の挿入孔74の所定位置に保持されるので、確実な融着を行うことができる。
【0098】
[第4の実施形態]
次に、図7にしたがって、本開示の第4の実施形態に係る継手20について説明する。なお、前述した第3実施形態と同一構成には同一符号を付し、その説明は省略する。
【0099】
図7に示すように、本実施形態の継手20に埋設されたコイル44は、挿入孔74の開口側から底部側へ向けて疎となるように巻回されている。言い換えれば、コイル44は、挿入孔74の開口側から挿入孔74の底部側へ向けてピッチが大きくなっている。
【0100】
このため、コイル44に電流が流されると、熱可塑性樹脂は、コイル44が密に巻回されて発熱量が多い方から疎に巻回されて発熱量が相対的に少ない方に向けて溶融して融着する。
【0101】
本実施形態の継手20では、融着部分において、挿入孔74の開口側から底部側へ向けて熱可塑性樹脂を溶融させて融着させることで、パイプ10と金属含有樹脂製被加熱体60との間、及び金属含有樹脂製被加熱体60と継手20との間に介在した空気を、挿入孔74の開口側から底部側へ順次押し出しながら融着を行うことができる。そのため、融着部分において、空気が閉じ込められた状態で熱可塑性樹脂が固化することが抑制され、融着不良が抑制される。
【0102】
[第5の実施形態]
次に、図8にしたがって、本開示の第6の実施形態に係る継手20について説明する。なお、前述した実施形態と同一構成には同一符号を付し、その説明は省略する。
【0103】
図8に示すように、本実施形態の継手20に埋設された金属含有樹脂製被加熱体50は、パイプ10の挿入方向に向けて体積が少なくなるように、言い換えれば、厚みが薄くなるように形成されている。
【0104】
このため、コイル44に電流が流されると、金属含有樹脂製被加熱体50の熱可塑性樹脂、金属含有樹脂製被加熱体50の熱可塑性樹脂、及び継手20の熱可塑性樹脂は、金属含有樹脂製被加熱体50の厚みが厚くて発熱量が多い方から厚みが薄くて発熱量が相対的に少ない方に向けて溶融して融着する。
【0105】
本実施形態の継手20では、融着部分において、パイプ10の挿入方向とは反対方向へ向けて熱可塑性樹脂を順次溶融させて融着させることで、パイプ10と金属含有樹脂製被加熱体60との間、及び金属含有樹脂製被加熱体60と継手20との間に介在した空気を、パイプ10の先端側へ順次押し出しながら融着を行うことができる。そのため、融着部分において、空気が閉じ込められた状態で熱可塑性樹脂が固化することが抑制され、融着不良が抑制される。
【0106】
[その他の実施形態]
以上のとおり、本開示の実施形態について詳細に説明したが、本開示は上記の実施形態に限定されるものではなく、本開示の技術的思想の範囲内にて種々の変形、変更、改良が可能である。
【0107】
上記実施形態の継手構造は、継手20のサイズが異なっていても、全て適用可能であるが、サイズによってコイル44のターン数(巻回数)を適宜変更することができる。電磁誘導加熱される被加熱体40、及び金属含有樹脂製被加熱体50,60の発熱量は、コイル44のターン数(巻回数)を変更することで調整できる。
【0108】
例えば、サイズの大きい継手とパイプとを融着する場合は、相対的にサイズの小さい継手とパイプとを融着する場合に比較して、熱可塑性樹脂を溶融する量、及び溶融に係る時間は多くなると考えるのが一般的である。
【0109】
しかし、一例として、図9A図9B図9Cに示すように、大サイズの継手20Lとパイプ10Lとを融着する場合、中サイズの継手20Mとパイプ10Mを融着する場合、小サイズの継手20Sとパイプ10Sとを融着する場合を想定した場合、各コイル44L,M,Sのターン数を、大サイズの継手20Lのコイル44Lのターン数>中サイズの継手20Mのコイル44Mのターン数>小サイズの継手20Sのコイル44Sのターン数とする。これにより、各コイル44L,M,Sに電流を流す時間を同じ時間に設定しても、大サイズの継手20Lの金属含有樹脂製被加熱体60の発熱量>中サイズの継手20Mの金属含有樹脂製被加熱体60の発熱量>小サイズの継手20Sの金属含有樹脂製被加熱体60の発熱量とすることが可能となり、継手サイズが変わっても、電流を流す時間(加熱時間)を同じにして、熱可塑性樹脂の融着に必要な量を溶融でき、融着時間を同じにすることが可能となる。
これにより、継手20のサイズ毎に電流を変更する必要が無くなり、予め設定した一定時間電流を流せばよく、融着作業が容易になる。
【0110】
したがって、コイル44に流す電流の時間を継手20のサイズ毎に変更する必要を無くし、様々なサイズの継手20を用いる作業現場での融着作業を容易にすることができる。
【0111】
上記第1実施形態の被加熱体40は、組付け前において、パイプ10、及び継手20とは別体であったが、第2の実施形態の金属含有樹脂製被加熱体50と同様に、継手20の内部に一体的に埋設されるように、継手20を成型する際に、継手20と一体化させてもよい。
【0112】
上記第1実施形態の被加熱体40は、円筒状の単一の金属部材であったが、被加熱体40は、軸方向に貫通部としての隙間を開けるようにして複数に分割してもよい。被加熱体40を軸方向に隙間を開けるようにして複数に分割した場合、該隙間によって、パイプ10の溶融した熱可塑性樹脂と継手20の溶融した熱可塑性樹脂とを接触、及び混ざり合わせることが可能となる。
【0113】
また、上記第1実施形態の被加熱体40は、円筒状の単一の金属部材であったが、被加熱体40は、金属のリボン(帯)を軸方向に貫通部としての隙間を開けるように螺旋状に巻回したものであってもよい。本実施形態では、該隙間によって、パイプ10の溶融した熱可塑性樹脂と継手20の溶融した熱可塑性樹脂とを接触、及び混ざり合わせることが可能となる。
【0114】
また、第1実施形態の被加熱体40は、貫通孔42が複数形成された円筒状の金属部材であったが、被加熱体40は、溶融した熱可塑性樹脂が透過する金属のメッシュで形成された円筒部材であってもよい。
【0115】
第1実施形態の金属製の被加熱体40は、継手20と別体であったが、継手20に埋設して継手20の熱可塑性樹脂と一体化させてもよい。
【0116】
上記実施形態の継手20は、2つのパイプ10を接続するものとした。しかしながら、本開示に係る継手20は、3つ以上のパイプ10を接続する構成を有していてもよい。上記実施形態の継手20は、L字形状とされていたが、本開示に係る継手20の形状は、L字形状に限らず、直線形状、T字形状、十字形状など、他の形状であってもよい。
【符号の説明】
【0117】
10…パイプ、20…継手、24…直線部(挿入部)、26…環状孔(孔)、26A…底部(ストッパ)、40…被加熱体、42…貫通孔(貫通部)、44…コイル(発熱媒体)、50…金属含有樹脂製被加熱体、60…金属含有樹脂製被加熱体、66…第1抜け止め防止部材、72…第2抜け止め防止部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C