(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110776
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】フロントカウリング
(51)【国際特許分類】
B62J 17/10 20200101AFI20240808BHJP
【FI】
B62J17/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023015567
(22)【出願日】2023-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100139365
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 武雄
(74)【代理人】
【識別番号】100150304
【弁理士】
【氏名又は名称】溝口 勉
(72)【発明者】
【氏名】出口 明仁
(72)【発明者】
【氏名】勇勢 竜也
(57)【要約】
【課題】低速走行時には十分なダウンフォースが得られると共に高速走行時には走行抵抗を低減する。
【解決手段】フロントカウリング(10)には、車両前部を前方及び側方から覆うカウリングパネル(11)と、カウリングパネルから側方に突き出したウイング(12)と、が設けられている。ウイングの前縁よりも後縁が上方に位置している。フロントカウリングには、車両前方から走行風を取り込み、気流としてウイングの下方空間に放出する導風路(90)が形成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前部を前方及び側方から覆うカウリングパネルと、前記カウリングパネルから側方に突き出したウイングと、を備えたフロントカウリングであって、
前記ウイングの前縁よりも後縁が上方に位置し、
車両前方から走行風を取り込み、気流として前記ウイングの下方空間に放出する導風路が形成されていることを特徴とするフロントカウリング。
【請求項2】
前記カウリングパネルには走行風を取り込む取込口が形成され、
前記ウイングの下面には走行風を気流として放出する放出口が形成され、
前記導風路は前記取込口から走行風を取り込み、前記放出口から前記ウイングの下方空間に気流を放出することを特徴とする請求項1に記載のフロントカウリング。
【請求項3】
前記放出口は、前記ウイングの下面の前後方向の中間よりも前縁側に位置していることを特徴とする請求項2に記載のフロントカウリング。
【請求項4】
前記放出口は、前記ウイングの基端から先端に向かって形成されていることを特徴とする請求項2に記載のフロントカウリング。
【請求項5】
前記カウリングパネルの内側に設けられたダクトを備え、
前記ダクトの一端が前記取込口に連なり、前記ダクトの他端が前記ウイングの基端に連なり、
前記ダクトの内部に前記導風路の上流側が形成され、前記ウイングの内部に前記導風路の下流側が形成され、
前記ダクトと前記ウイングの連通口が前記取込口の上端よりも下方かつ前記取込口の下端よりも上方に位置していることを特徴とする請求項2に記載のフロントカウリング。
【請求項6】
前記カウリングパネルの前部には走行風を取り込む取込口が形成され、
前記カウリングパネルの側部には走行風を気流として放出する放出口が形成され、
前記放出口が前記ウイングの下方空間に露出しており、
前記導風路は前記取込口から走行風を取り込み、前記放出口から前記ウイングの下方空間に気流を放出することを特徴とする請求項1に記載のフロントカウリング。
【請求項7】
側面視にて前記放出口が前記ウイングの後端よりも前方に位置していることを特徴とする請求項6に記載のフロントカウリング。
【請求項8】
前記放出口が前記取込口の上端よりも下方かつ前記取込口の下端よりも上方に位置していることを特徴とする請求項6に記載のフロントカウリング。
【請求項9】
前記ウイングは前記カウリングパネルから側方に向かって斜め下方に突き出し、
前記放出口が前記ウイングの先端よりも上方に位置していることを特徴とする請求項6に記載のフロントカウリング。
【請求項10】
側面視にて前記放出口が前記ウイングに重なっていることを特徴とする請求項9に記載のフロントカウリング。
【請求項11】
前記導風路には気流の流量を制御する制御弁が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のフロントカウリング。
【請求項12】
前記制御弁は走行状態に応じて動的に開閉されており、
直立姿勢の加速時には前記制御弁が開かれて気流の流量が増加され、減速時には前記制御弁が閉じられて気流の流量が減少されることを特徴とする請求項11に記載のフロントカウリング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロントカウリングに関する。
【背景技術】
【0002】
鞍乗型車両として、ウイング付きのフロントカウリングを備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の鞍乗型車両では、フロントカウリングの表面から側方に一対のウイングが突き出しており、断面視にて一対のウイングが後斜め上方に傾けられている。一対のウイングが走行風を受けることで一対のウイングにダウンフォースが生じ、ダウンフォースによって車体が押し下げられて前輪の接地力が高められる。また、一対のウイングによって走行風が整流されて、走行風が車体後方に流されることで空気抵抗が低減されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ダウンフォースによって前輪の接地力が高められて走行安定性が向上するが、高速直進時にはダウンフォースを得るよりも走行抵抗が低減されることが望ましい。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、低速走行時には十分なダウンフォースが得られると共に高速走行時には走行抵抗を低減することができるフロントカウリングを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様のフロントカウリングは、車両前部を前方及び側方から覆うカウリングパネルと、前記カウリングパネルから側方に突き出したウイングと、を備えたフロントカウリングであって、前記ウイングの前縁よりも後縁が上方に位置し、車両前方から走行風を取り込み、気流として前記ウイングの下方空間に放出する導風路が形成されていることで上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様のフロントカウリングによれば、ウイングの前縁よりも後縁が上方に位置しているため、ウイングが走行風を受けることでウイングの上面の圧力よりも下面の圧力が低くなる。一方で、導風路内の走行風が気流としてウイングの下方空間に放出されてウイングの下面の圧力が高められる。低速走行時にはウイングの下方空間に放出される気流の流量が減って、ウイングの上下両面の圧力差が大きくなり、ダウンフォースが大きくなって鞍乗型車両の操作性や走行安定性が向上する。高速走行時には、ウイングの下方空間に放出される気流の流量が増えて、ウイングの上下両面の圧力差が小さくなり、ダウンフォースが小さくなって鞍乗型車両の走行抵抗が減少する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施例の鞍乗型車両の車両前部の前面図である。
【
図2】第1実施例のフロントカウリングの背面図である。
【
図3】
図2のフロントカウリングをA-A線に沿って切断した断面図である。
【
図4】
図2のフロントカウリングをB-B線に沿って切断した断面図である。
【
図5】第2実施例のフロントカウリングを斜め下方から見た斜視図である。
【
図6】第3実施例のフロントカウリングを斜め下方から見た斜視図である。
【
図7】第4実施例のフロントカウリングを斜め下方から見た斜視図である。
【
図8】第5実施例のフロントカウリングの正面図である。
【
図9】第5実施例のフロントカウリングの斜め後方から見た斜視図である。
【
図10】第5実施例のフロントカウリングの側面図である。
【
図11】第6実施例のフロントカウリングの側面図である。
【
図12】第7実施例のフロントカウリングの斜視図である。
【
図13】第8実施例のフロントカウリングの断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一態様のフロントカウリングのカウリングパネルによって車両前部が前方及び側方から覆われており、カウリングパネルから側方にウイングが突き出している。ウイングの前縁よりも後縁が上方に位置しており、ウイングが走行風を受けることでウイングの上面の圧力よりも下面の圧力が低くなる。また、フロントカウリングには車両前方から走行風を取り込む導風路が形成され、導風路内の走行風が気流としてウイングの下方空間に放出されてウイングの下面の圧力が高められる。低速走行時にはウイングの下方空間に放出される気流の流量が減って、ウイングの上下両面の圧力差が大きくなり、ダウンフォースが大きくなって鞍乗型車両の操作性や走行安定性が向上する。高速走行時には、ウイングの下方空間に放出される気流の流量が増えて、ウイングの上下両面の圧力差が小さくなり、ダウンフォースが小さくなって鞍乗型車両の走行抵抗が減少する。
【実施例0010】
<第1実施例>
以下、添付図面を参照して、第1実施例のフロントカウリングが設けられた鞍乗型車両について説明する。
図1は第1実施例の鞍乗型車両の車両前部の前面図である。また、以下の図では、矢印FRは車両前方、矢印REは車両後方、矢印Lは車両左方、矢印Rは車両右方をそれぞれ示している。
【0011】
図1に示すように、鞍乗型車両1の車両前方にはフロントカウリング10が取り付けられ、鞍乗型車両1の車両側方にはサイドカウリング9が取り付けられている。フロントカウリング10のカウリングパネル11は後方に向かって車幅方向外側に広がっており、カウリングパネル11によって車両前部が前方及び側方から覆われている。カウリングパネル11から側方にハンドル5が突き出しており、カウリングパネル11から下方にフロントフォーク6が突き出している。カウリングパネル11の上部にはスクリーン8が設けられ、カウリングパネル11の前面にはエアボックス(不図示)用の導風口19が形成されている。
【0012】
カウリングパネル11から側方に一対のウイング12が突き出している。各ウイング12は、上下方向で対向するアッパウイング13及びロアウイング14と、アッパウイング13及びロアウイング14の先端を連結するサイドウイング15と、を有している。アッパウイング13は導風口19の側方に位置し、ロアウイング14はカウリングパネル11の下縁付近に位置している。アッパウイング13及びロアウイング14の前縁よりも後縁が上方に位置して後斜め上方に傾けられている。アッパウイング13及びロアウイング14がサイドウイング15を介して連結されることでウイング12全体の剛性が高められている。
【0013】
このフロントカウリング10では、アッパウイング13及びロアウイング14が走行風を受けると、アッパウイング13及びロアウイング14の傾きによって各ウイングの上下両面に圧力差が生じる。アッパウイング13及びロアウイング14の上面の圧力が高くなり、アッパウイング13及びロアウイング14の下面の圧力が低くなって、アッパウイング13及びロアウイング14に圧力差によってダウンフォースが生じる。このアッパウイング13及びロアウイング14のダウンフォースによって車体が押し下げられて、前輪7の接地力が高められて鞍乗型車両1の操作性及び走行安定性が向上されている。
【0014】
一対のウイング12によってダウンフォースが得られるが、高速走行時には車両が受ける走行抵抗が増加する。走行抵抗が増加すると加速性や燃費が低下するというデメリットがある。高速直進時等にはダウンフォースを得るよりも、走行抵抗を低減することを優先させたい場合がある。そこで、第1実施例のフロントカウリング10では、車両前方から走行風が取り込まれ、この走行風が気流としてアッパウイング13の下面から放出されてアッパウイング13の下面の圧力が高められている。高速走行時にアッパウイング13の上下両面の圧力差が小さくなってダウンフォースによる走行抵抗の増加が抑えられている。
【0015】
図2から
図4を参照して、第1実施例のフロントカウリングについて説明する。
図2は第1実施例のフロントカウリングの背面図である。
図3は
図2のフロントカウリングをA-A線に沿って切断した断面図である。
図4は
図2のフロントカウリングをB-B線に沿って切断した断面図である。
【0016】
図2及び
図3に示すように、カウリングパネル11には導風口19の両側方に円形の取込口16が形成されている。カウリングパネル11の内側には一対のダクト17が設けられている。ダクト17の一端は円形に形成されており、ダクト17の他端は略扁円形に形成されている。ダクト17の一端はカウリングパネル11の円形の取込口16に連なり、ダクト17の他端はアッパウイング13の略扁円形の基端に連なっている。アッパウイング13の基端が開口しており、アッパウイング13は基端から先端に向かって中空に形成されている。アッパウイング13の下面にはスリット状の放出口18が形成されている。
【0017】
フロントカウリング10には取込口16から放出口18に向かって導風路90が形成されている。車両前方の走行風F1が取込口16から導風路90に取り込まれ、放出口18からアッパウイング13の下方空間に気流F2として放出されている。放出口18からアッパウイング13の下方空間に気流F2がダイレクトに放出されてアッパウイング13の下面の圧力が高められている。低速走行時にも放出口18から気流F2が放出されるが、高速走行時には放出口18から放出される気流F2の流量が増えることで、アッパウイング13の上下両面の圧力差に起因したダウンフォースが小さくなる。
【0018】
放出口18がアッパウイング13の下面の前後方向の中間よりも前縁側に位置しているため、アッパウイング13の下面に沿って後方に気流F2を流すことができる。また、放出口18がアッパウイング13の基端から先端に向かってスリット状に形成され(特に
図4参照)、アッパウイング13の基端から先端までの広い範囲で後方に気流F2を流すことができる。すなわち、放出口18はアッパウイング13の前縁に沿って形成されている。アッパウイング13の下面全域に沿って気流F2が流されることで、気流F2によってアッパウイング13の下面全域の圧力が高められている。
【0019】
また、ダクト17の内部には導風路90の上流側が形成され、アッパウイング13の内部には導風路90の下流側が形成されている。ダクト17とアッパウイング13の連通口4が取込口16の上端よりも下方かつ取込口16の下端よりも上方に位置している。取込口16と連通口4の高低差が小さくなって、取込口16から連通口4を通じて放出口18にスムーズに気流F2が導かれる。上面視にてダクト17が円弧状に湾曲しており、導風路90の上流から下流に向けてダクト17の断面形状が円形から略扁円形に徐々に変化しているため、ダクト17での気流F2に対する管路抵抗が抑えられている。
【0020】
図3及び
図4に示すように、アッパウイング13とロアウイング14がサイドウイング15を介して連結しており、アッパウイング13、ロアウイング14、サイドウイング15によってカウリングパネル11の表面に沿って流れる走行風F1が整流されている。アッパウイング13の上面は後斜め上方に傾斜しており、アッパウイング13の下面は下向き膨らむように円弧状に反っている。ロアウイング14の上面は後斜め上方に凹状に湾曲傾斜しており、ロアウイング14の下面は下向き膨らむように円弧状に反っている。サイドウイング15は後方に向かって車幅方向外側に広がるように傾けられている。
【0021】
鞍乗型車両1の走行時には、アッパウイング13の上下両面に沿って走行風F1が流れ、アッパウイング13の翼面形状によって上面の圧力よりも下面の圧力が低くなる。また、カウリングパネル11の取込口16からダクト17に走行風F1が取り込まれ、アッパウイング13の内部に走行風F1が送り込まれて、アッパウイング13の下面の放出口18から下方空間に気流F2として放出される。アッパウイング13の下面に沿って気流F2が放出されることで、アッパウイング13の下面から全体的に走行風F1が剥離されて、アッパウイング13の下面の圧力が高められる。
【0022】
低速走行時には、取込口16に取り込まれる走行風F1の流量が減少して、放出口18から放出される気流F2の流量が減少する。このため、アッパウイング13の上下両面の圧力差が大きく、アッパウイング13に十分なダウンフォースが生じて鞍乗型車両1の操作性及び走行安定性が向上する。高速走行時には、取込口16に取り込まれる走行風F1の流量が増加して、放出口18から放出される気流F2の流量が増加する。このため、アッパウイング13の上下両面の圧力差が小さくなって、アッパウイング13に生じるダウンフォースが小さくなって鞍乗型車両1の走行抵抗が減少する。
【0023】
アッパウイング13の下方空間の車幅方向外側がサイドウイング15に仕切られている。このため、放出口18から下方空間に放出された気流F2が車幅方向外側に拡散し難くなって、気流F2によってアッパウイング13の下面から走行風F1が剥離され易くなっている。なお、ロアウイング14においても上下両面に沿って走行風F1が流れており、ロアウイング14の翼面形状によって上面の圧力よりも下面の圧力が低くなり、この圧力差に応じてロアウイング14に十分なダウンフォースが生じている。このため、高速走行時でも鞍乗型車両1の操作性及び走行安定性が確保される。
【0024】
以上、第1実施例のフロントカウリング10によれば、低速走行時にはアッパウイング13の上下両面の圧力差が大きくなり、ダウンフォースによって鞍乗型車両1の操作性や走行安定性を向上させることができる。高速走行時にはアッパウイング13の上下両面の圧力差が小さくなり、ダウンフォースに起因した鞍乗型車両1の走行抵抗を減少することができる。
【0025】
<第2実施例>
次に、
図5を参照して、第2実施例のフロントカウリングについて説明する。第2実施例のフロントカウリングは、ロアウイングに放出口が形成されている点で第1実施例のフロントカウリングと相違している。したがって、第2実施例については第1実施例と同様な構成については極力説明を省略する。
図5は第2実施例のフロントカウリングを斜め下方から見た斜視図である。
【0026】
図5に示すように、フロントカウリング20のカウリングパネル21から両側方にアッパウイング23及びロアウイング24が突き出し、アッパウイング23及びロアウイング24がサイドウイング25を介して連結されている。カウリングパネル21の内側にはダクト27が設けられている。ダクト27の一端はカウリングパネル21の円形の取込口26に連なり、ダクト27の他端はロアウイング24の略扁円形の基端に連なっている。ロアウイング24の基端が開口しており、ロアウイング24は基端から先端に向かって中空に形成されている。ロアウイング24の下面には前縁に沿ってスリット状の放出口28が形成されている。
【0027】
低速走行時には放出口28から放出される気流の流量が減少して、ロアウイング24の上下両面の圧力差が大きくなって、ロアウイング24に十分なダウンフォースが生じて鞍乗型車両の操作性及び走行安定性が向上する。高速走行時には放出口28から放出される気流の流量が増加して、ロアウイング24の上下両面の圧力差が小さくなって、ロアウイング24に生じるダウンフォースが小さくなって鞍乗型車両の走行抵抗が減少する。なお、アッパウイング23にも十分なダウンフォースが生じているため、高速走行時でも操作性及び走行安定性が確保される。
【0028】
以上、第2実施例のフロントカウリング20においても、低速走行時にダウンフォースによって鞍乗型車両の操作性や走行安定性を向上させ、高速走行時にダウンフォースに起因した鞍乗型車両の走行抵抗を減少することができる。
【0029】
<第3実施例>
次に、
図6を参照して、第3実施例のフロントカウリングについて説明する。第3実施例のフロントカウリングは、アッパウイング及びロアウイングに放出口が形成されている点で第1実施例のフロントカウリングと相違している。したがって、第3実施例については第1実施例と同様な構成については極力説明を省略する。
図6は第3実施例のフロントカウリングを斜め下方から見た斜視図である。
【0030】
図6に示すように、フロントカウリング30のカウリングパネル31から両側方にアッパウイング33及びロアウイング34が突き出し、アッパウイング33及びロアウイング34がサイドウイング35を介して連結されている。カウリングパネル31の内側には一対のダクト37が設けられている。ダクト37は上流から下流に向かう途中で二股に分岐している。ダクト37の一端はカウリングパネル31の円形の取込口36に連なっている。ダクト37の一方の他端がアッパウイング33の略扁円形の基端に連なり、ダクト37の他方の他端がロアウイング34の略扁円形の基端に連なっている。
【0031】
アッパウイング33の基端が開口しており、アッパウイング33は基端から先端に向かって中空に形成されている。アッパウイング33の下面には前縁に沿ってスリット状の放出口38が形成されている。ロアウイング34の基端が開口しており、ロアウイング34は基端から先端に向かって中空に形成されている。ロアウイング34の下面には前縁に沿ってスリット状の放出口39が形成されている。このように、アッパウイング33及びロアウイング34に放出口38、39が形成されており、アッパウイング33及びロアウイング34でダウンフォースが調整されている。
【0032】
低速走行時には放出口38、39から放出される気流の流量が減少して、アッパウイング33及びロアウイング34の上下両面の圧力差が大きくなる。これにより、アッパウイング33及びロアウイング34に十分なダウンフォースが生じて鞍乗型車両の操作性及び走行安定性が向上する。高速走行時には放出口38、39から放出される気流の流量が増加して、アッパウイング33及びロアウイング34の上下両面の圧力差が小さくなる。これにより、アッパウイング33及びロアウイング34に生じるダウンフォースが小さくなって鞍乗型車両の走行抵抗が減少する。
【0033】
以上、第3実施例のフロントカウリング30においても、低速走行時にダウンフォースによって鞍乗型車両の操作性や走行安定性を向上させ、高速走行時にダウンフォースに起因した鞍乗型車両の走行抵抗を減少することができる。
【0034】
<第4実施例>
次に、
図7を参照して、第4実施例のフロントカウリングについて説明する。第4実施例のフロントカウリングは、片持ちのウイングに放出口が形成されている点で第1実施例のフロントカウリングと相違している。したがって、第4実施例については第1実施例と同様な構成については極力説明を省略する。
図7は第4実施例のフロントカウリングを斜め下方から見た斜視図である。
【0035】
図7に示すように、フロントカウリング40のカウリングパネル41から両側方にウイング43が突き出している。ウイング43はカウリングパネル41に片持ちで支持されている。カウリングパネル41の内側には一対のダクト47が設けられている。ダクト47の一端はカウリングパネル41の円形の取込口46に連なり、ダクト47の他端はウイング43の略扁円形の基端に連なっている。ウイング43の基端が開口しており、ウイング43は基端から先端に向かって中空に形成されている。ウイング43の下面には前縁に沿ってスリット状の放出口48が形成されている。
【0036】
低速走行時には放出口48から放出される気流の流量が減少して、ウイング43の上下両面の圧力差が大きくなって、ウイング43に十分なダウンフォースが生じて鞍乗型車両の操作性及び走行安定性が向上する。高速走行時には放出口48から放出される気流の流量が増加して、ウイング43の上下両面の圧力差が小さくなって、ウイング43に生じるダウンフォースが小さくなって鞍乗型車両の走行抵抗が減少する。ウイング43が基端から先端に向かって斜め下方に突き出しており、放出口48から放出された気流が車幅方向外側に拡散し難くなっている。
【0037】
以上、第4実施例のフロントカウリング40においても、低速走行時にダウンフォースによって鞍乗型車両の操作性や走行安定性を向上させ、高速走行時にダウンフォースに起因した鞍乗型車両の走行抵抗を減少することができる。
【0038】
<第5実施例>
次に、
図8から
図10を参照して、第5実施例のフロントカウリングについて説明する。第5実施例のフロントカウリングは、カウリングパネルに放出口が形成されている点で第1実施例のフロントカウリングと相違している。したがって、第5実施例については第1実施例と同様な構成については極力説明を省略する。
図8は第5実施例のフロントカウリングの正面図である。
図9は第5実施例のフロントカウリングの斜め後方から見た斜視図である。
図10は第5実施例のフロントカウリングの側面図である。
【0039】
図8及び
図9に示すように、フロントカウリング50のカウリングパネル51から両側方にウイング53が突き出している。ウイング53はカウリングパネル51に片持ちで支持されている。カウリングパネル51の前部に円形の取込口56が形成され、カウリングパネル51の側部にスリット状の放出口58が形成されている。カウリングパネル51の内側には一対のダクト57が設けられている。ダクト57の一端はカウリングパネル51の円形の取込口56に連なり、ダクト57の他端はカウリングパネル51の扁平状の放出口58に連なっている。放出口58はウイング53の下方空間に露出している。
【0040】
図10に示すように、カウリングパネル51からウイング53が斜め前方に突き出し、側面視にてウイング53の基端が最も後方に位置している。カウリングパネル51において放出口58が前後方向に延びており、側面視にて放出口58がウイング53の後端よりも前方に位置している。このため、少なくともウイング53の基端側においては、ウイング53の下面に沿って後方に気流を流すことができる。放出口58が取込口56の上端よりも下方かつ取込口56の下端よりも上方に位置している。取込口56と放出口58の高低差が小さくなって、取込口56から放出口58にスムーズに気流が導かれる。
【0041】
また、カウリングパネル51からウイング53が側方に向かって斜め下方に突き出し、側面視にてウイング53の先端が最も下方に位置している。放出口58がウイング53の先端よりも上方に位置しており、側面視にて放出口58の一部がウイング53に重なっている。これにより、放出口58から放出された気流が車幅方向外側に拡散し難くなって、気流によってウイング53の下面から走行風が剥離され易くなっている。また、ウイング53によって放出口58が側方から覆われて目立ち難くなると共に、放出口58に砂埃等の異物が入り込み難くなる。
【0042】
低速走行時には放出口58から放出される気流の流量が減少して、ウイング53の上下両面の圧力差が大きくなって、ウイング53に十分なダウンフォースが生じて鞍乗型車両の操作性及び走行安定性が向上する。高速走行時には放出口58から放出される気流の流量が増加して、ウイング53の上下両面の圧力差が小さくなって、ウイング53に生じるダウンフォースが小さくなって鞍乗型車両の走行抵抗が減少する。このように、ウイング53の下面の近くであれば、ウイング53に限らずにカウリングパネル51に放出口58を形成することができる。
【0043】
以上、第5実施例のフロントカウリング50においても、シンプルな構造で、低速走行時にダウンフォースによって鞍乗型車両の操作性や走行安定性を向上させ、高速走行時にダウンフォースに起因した鞍乗型車両の走行抵抗を減少することができる。
【0044】
<第6実施例>
次に、
図11を参照して、第6実施例のフロントカウリングについて説明する。第6実施例のフロントカウリングは、カウリングパネルとウイングに放出口が形成されている点で第1実施例のフロントカウリングと相違している。したがって、第6実施例については第1実施例と同様な構成については極力説明を省略する。
図11は第6実施例のフロントカウリングの側面図である。
【0045】
図11に示すように、フロントカウリング60のカウリングパネル61から両側方にウイング63が突き出している。ウイング63はカウリングパネル61に片持ちで支持されている。カウリングパネル61の前部に円形の取込口66が形成され、カウリングパネル61の側部にスリット状の放出口68が形成されている。第5実施例と同様に、放出口68は、ウイング63の後端よりも前方で、取込口66の上端よりも下方かつ取込口66の下端よりも上方に位置している。また、側面視にて放出口68がウイング63の先端よりも上方に位置し、放出口68がウイング63に重なっている。
【0046】
カウリングパネル61の内側にはダクト67が設けられている。ダクト67は上流から下流に向かう途中で二股に分岐している。ダクト67の一端はカウリングパネル61の円形の取込口66に連なっている。ダクト67の一方の他端がカウリングパネル61の扁平状の放出口68に連なり、ダクト67の他方の他端がウイング63の扁円形の基端に連なっている。ウイング63の基端が開口しており、ウイング63は基端から先端に向かって中空に形成されている。ウイング63の下面には前縁に沿ってスリット状の放出口69が形成されている。放出口68、69によってウイング63の下面に2方向から気流が放出される。
【0047】
低速走行時には放出口68、69から放出される気流の流量が減少して、ウイング63の上下両面の圧力差が大きくなって、ウイング63に十分なダウンフォースが生じて鞍乗型車両の操作性及び走行安定性が向上する。高速走行時には放出口68、69から放出される気流の流量が増加して、ウイング63の上下両面の圧力差が小さくなって、ウイング63に生じるダウンフォースが小さくなって鞍乗型車両の走行抵抗が減少する。このように、ウイング63とカウリングパネル61の両方に放出口68、69を形成して気流の効果を高めることができる。
【0048】
以上、第6実施例のフロントカウリング60においても、低速走行時にダウンフォースによって鞍乗型車両の操作性や走行安定性を向上させ、高速走行時にダウンフォースに起因した鞍乗型車両の走行抵抗を減少することができる。
【0049】
<第7実施例>
次に、
図12を参照して、第7実施例のフロントカウリングについて説明する。第7実施例のフロントカウリングは、導風口の内側面に取込口が形成されている点で第1実施例のフロントカウリングと相違している。したがって、第7実施例については第1実施例と同様な構成については極力説明を省略する。
図12は第7実施例のフロントカウリングの斜視図である。
【0050】
図12に示すように、フロントカウリング70のカウリングパネル71にはアッパウイング73、ロアウイング74、サイドウイング75が設けられている。カウリングパネル71の前部には筒状の導風口79が形成されており、この導風口79の内側面に取込口76が開口している。カウリングパネル71の内側にはダクト77が設けられている。ダクト77一端はカウリングパネル71の円形の取込口76に連なり、ダクト77の他端はアッパウイング73の略扁円形の基端に連なっている。アッパウイング73は中空に形成され、アッパウイング73の下面には前縁に沿ってスリット状の放出口78が形成されている。
【0051】
低速走行時には放出口78から放出される気流の流量が減少して、アッパウイング73の上下両面の圧力差が大きくなって、アッパウイング73に十分なダウンフォースが生じて鞍乗型車両の操作性及び走行安定性が向上する。高速走行時には放出口78から放出される気流の流量が増加して、アッパウイング73の上下両面の圧力差が小さくなって、アッパウイング73に生じるダウンフォースが小さくなって鞍乗型車両の走行抵抗が減少する。なお、ロアウイング74にも十分なダウンフォースが生じているため、高速走行時でも操作性及び走行安定性が確保される。
【0052】
以上、第7実施例のフロントカウリング70においても、低速走行時にダウンフォースによって鞍乗型車両の操作性や走行安定性を向上させ、高速走行時にダウンフォースに起因した鞍乗型車両の走行抵抗を減少することができる。
【0053】
<第8実施例>
次に、
図13を参照して、第8実施例のフロントカウリングについて説明する。第8実施例のフロントカウリングは、制御弁が設けられている点で第1実施例のフロントカウリングと相違している。したがって、第8実施例については第1実施例と同様な構成については極力説明を省略する。
図13は第8実施例のフロントカウリングの断面模式図である。
【0054】
図13に示すように、フロントカウリング80のカウリングパネル81にはアッパウイング83、ロアウイング84、サイドウイング85が設けられている。カウリングパネル81の内側にはダクト87が設けられている。ダクト87の一端はカウリングパネル81の円形の取込口86に連なり、ダクト87の他端はアッパウイング83の略扁円形の基端に連なっている。アッパウイング83の基端が開口しており、アッパウイング83は基端から先端に向かって中空に形成されている。アッパウイング83の下面には前縁に沿ってスリット状の放出口88が形成されている。
【0055】
ダクト87の導風路には走行風の流量を制御する制御弁91が設けられている。車両姿勢や加減速等の走行状態に応じて制御弁91が開閉されることで、アッパウイング83の放出口88から放出される気流の流量が変化して走行抵抗、操作性、走行安定性が調整される。鞍乗型車両には制御装置92が設けられており、制御装置92によって制御弁91の開閉が制御されている。制御装置92では速度センサ93、加速度センサ94、傾斜センサ95からの検出信号に応じて車両の走行状態が検出され、この走行状態に応じて制御弁91が制御装置92によって動的に開閉される。
【0056】
減速時には制御装置92によって制御弁91が自動的に閉じられて、放出口88から放出される気流の流量が減少される。アッパウイング83の上下両面の圧力差が大きくなって、アッパウイング83に十分なダウンフォースが生じて鞍乗型車両の操作性及び走行安定性が向上する。直立姿勢の加速時には制御装置92によって制御弁91が自動的に開かれて、放出口88から放出される気流の流量が増加される。アッパウイング83の上下両面の圧力差が小さくなって、アッパウイング83に生じるダウンフォースが小さくなって鞍乗型車両の走行抵抗が減少する。
【0057】
なお、第8実施例では制御弁91はモータや電磁バルブ等によって自動的に開閉されているが、ケーブルによって手動で制御弁が開閉されてもよい。また、実施例1のフロントカウリングに制御弁を設ける構成を例示して説明したが、実施例2から実施例7のフロントカウリングに制御弁が設けられていてもよい。また、速度センサ93、加速度センサ94、傾斜センサ95から検出信号に応じて走行状態が検出されているが、これらの各センサの少なくとも1つから検出信号に応じて走行状態が検出されてもよい。速度センサ93、加速度センサ94、傾斜センサ95以外のセンサからの検出信号に応じて走行状態が検出されてもよい。
【0058】
以上、第8実施例のフロントカウリング80においては、減速時にはダウンフォースによって操作性や走行安定性を向上させ、直立姿勢の加速時にはダウンフォースに起因した走行抵抗を減少することができる。
【0059】
なお、各実施例においては、取込口が円形に形成されているが、車両前方から走行風を取り込み可能であれば、取込口の形状は特に限定されてない。例えば、取込口が四角形に形成されていてもよい。
【0060】
また、各実施例においては、放出口がスリット状に形成されているが、走行風を気流として放出可能であれば、放出口の形状は特に限定されない。例えば、放出口が直線上に並んだ無数の小孔でもよい。
【0061】
また、各実施例においては、ウイングが横向き姿勢の板状に形成されているが、ウイングの前縁よりも後縁が上方に位置していれば、ウイングの形状は特に限定されない。
【0062】
また、各実施例においては、ウイング(アッパウイング、ロアウイング)の下方空間とはウイングの下面に沿った空間を示している。また、ウイングの下方空間に気流を放出するとはウイングの下面に向けて気流を放出することを示している。
【0063】
また、放出口はウイングの下方空間に気流を放出可能であれば、放出口とウイングの位置関係は特に限定されない。
【0064】
また、各実施例のフロントカウリングは上記の鞍乗型車両に限らず、他のタイプの鞍乗型車両に採用されてもよい。なお、鞍乗型車両とは、運転者がシートに跨った姿勢で乗車する車両全般に限定されず、運転者がシートに跨らずに乗車するスクータタイプの車両も含んでいる。
【0065】
以上の通り、第1態様は、車両前部を前方及び側方から覆うカウリングパネル(11、21、31、41、51、61、71、81)と、カウリングパネルから側方に突き出したウイング(13、24、33、34、43、53、63、73、83)と、を備えたフロントカウリングであって、ウイングの前縁よりも後縁が上方に位置し、車両前方から走行風を取り込み、気流としてウイングの下方空間に放出する導風路(90)が形成されている。この構成によれば、ウイングの前縁よりも後縁が上方に位置しているため、ウイングが走行風を受けることでウイングの上面の圧力よりも下面の圧力が低くなる。一方で、導風路内の走行風が気流としてウイングの下方空間に放出されてウイングの下面の圧力が高められる。低速走行時にはウイングの下方空間に放出される気流の流量が減って、ウイングの上下両面の圧力差が大きくなり、ダウンフォースが大きくなって鞍乗型車両の操作性や走行安定性が向上する。高速走行時には、ウイングの下方空間に放出される気流の流量が増えて、ウイングの上下両面の圧力差が小さくなり、ダウンフォースが小さくなって鞍乗型車両の走行抵抗が減少する。
【0066】
第2態様は、第1態様において、カウリングパネルには走行風を取り込む取込口(16、26、36、46、76、86)が形成され、ウイングの下面には走行風を気流として放出する放出口(18、28、38、39、48、78、88)が形成され、導風路は取込口から走行風を取り込み、放出口からウイングの下方空間に気流を放出する。この構成によれば、放出口からアッパウイングの下方空間に気流がダイレクトに放出されてアッパウイングの下面の圧力が高められる。
【0067】
第3態様は、第2態様において、放出口は、ウイングの下面の前後方向の中間よりも前縁側に位置している。この構成によれば、ウイングの下面に沿って後方に気流を流すことができる。
【0068】
第4態様は、第2態様及び第3態様において、放出口は、ウイングの基端から先端に向かって形成されている。この構成によれば、ウイングの基端から先端までの広い範囲で気流を流すことができる。
【0069】
第5態様は、第2態様から第4態様のいずれか1態様において、カウリングパネルの内側に設けられたダクト(17、27、37、47、77、87)を備え、ダクトの一端が取込口に連なり、ダクトの他端がウイングの基端に連なり、ダクトの内部に導風路の上流側が形成され、ウイングの内部に導風路の下流側が形成され、ダクトとウイングの連通口(4)が取込口の上端よりも下方かつ取込口の下端よりも上方に位置している。この構成によれば、取込口と連通口の高低差が小さくなって、取込口から連通口を通じて放出口にスムーズに気流が導かれる。
【0070】
第6態様は、第1態様において、カウリングパネルの前部には走行風を取り込む取込口(56、66)が形成され、カウリングパネルの側部には走行風を気流として放出する放出口(57、68、69)が形成され、放出口がウイングの下方空間に露出しており、導風路は取込口から走行風を取り込み、放出口からウイングの下方空間に気流を放出する。この構成によれば、シンプルな構造で放出口からウイングの下方空間に気流がダイレクトに放出されてアッパウイングの下面の圧力が高められる。
【0071】
第7態様は、第6態様において、側面視にて放出口がウイングの後端よりも前方に位置している。この構成によれば、ウイングの下面に沿って後方に気流を流すことができる。
【0072】
第8態様は、第6態様又は第7態様において、放出口が取込口の上端よりも下方かつ取込口の下端よりも上方に位置している。この構成によれば、取込口と放出口の高低差が小さくなって、取込口から放出口にスムーズに気流が導かれる。
【0073】
第9態様は、第6態様から第8態様のいずれか1態様において、ウイングはカウリングパネルから側方に向かって斜め下方に突き出し、放出口がウイングの先端よりも上方に位置している。この構成によれば、放出口から放出された気流が車幅方向外側に拡散し難くなって、気流によってウイングの下面から走行風が剥離されやすくなっている。
【0074】
第10態様は、第9態様において、側面視にて放出口がウイングに重なっている。この構成によれば、放出口から放出された気流が車幅方向外側に拡散し難くなって、気流によってウイングの下面から走行風がより剥離されやすくなっている。
【0075】
第11態様は、第1態様から第10態様のいずれか1態様において、導風路には気流の流量を制御する制御弁(91)が設けられている。この構成によれば、車両姿勢や加減速等の走行状態に応じて制御弁が開閉されることで、放出口から放出される気流の流量が変化して走行抵抗、操作性、走行安定性が調整される。
【0076】
第12態様は、第11態様において、制御弁は走行状態に応じて動的に開閉されており、直立姿勢の加速時には制御弁が開かれて気流の流量が増加され、減速時には制御弁が閉じられて気流の流量が減少される。この構成によれば、直立姿勢の加速時にはダウンフォースが小さくなって走行抵抗が減少され、減速時にはダウンフォースが大きくなって操作性や走行安定性が向上される。
【0077】
なお、本実施例を説明したが、他の実施例として、上記実施例及び変形例を全体的又は部分的に組み合わせたものでもよい。
【0078】
また、本発明の技術は上記の実施例に限定されるものではなく、技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらには、技術の進歩又は派生する別技術によって、技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様をカバーしている。