(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110777
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】原動機付き自転車
(51)【国際特許分類】
B62J 50/26 20200101AFI20240808BHJP
B62J 11/00 20200101ALI20240808BHJP
B62M 6/10 20100101ALI20240808BHJP
B62M 6/40 20100101ALI20240808BHJP
B62M 6/80 20100101ALI20240808BHJP
【FI】
B62J50/26
B62J11/00
B62M6/10
B62M6/40
B62M6/80
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023015568
(22)【出願日】2023-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100139365
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 武雄
(74)【代理人】
【識別番号】100150304
【弁理士】
【氏名又は名称】溝口 勉
(72)【発明者】
【氏名】江口 卓也
(57)【要約】
【課題】シンプルな構造で原動機付き自転車の使用態様を周囲の人々に認識させる。
【解決手段】原動機付き自転車は、原動機の動力で走行する第1の使用態様と人力駆動力を用いて走行する第2の使用態様に切替可能に形成されている。原動機付き自転車には、第1の使用態様であることを認識させるためのナンバープレート(36)と、ナンバープレートを表示姿勢又は非表示姿勢に保持する保持装置(40)と、が設けられている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原動機の動力で走行する第1の使用態様と人力駆動力を用いて走行する第2の使用態様に切替可能な原動機付き自転車であって、
第1の使用態様であることを認識させるためのナンバープレートと、
前記ナンバープレートを表示姿勢又は非表示姿勢に保持する保持装置と、を備えていることを特徴とする原動機付き自転車。
【請求項2】
前記保持装置は、車体及び前記ナンバープレートのいずれか一方に設けられた回転部材と、車体及び前記ナンバープレートのいずれか他方に設けられた支持部材と、を有し、
前記支持部材に対して前記回転部材が回転可能に支持されていることを特徴とする請求項1に記載の原動機付き自転車。
【請求項3】
前記ナンバープレートが表示姿勢となる回転位置と非表示姿勢となる回転位置で、前記回転部材が前記支持部材に掛け止めされることを特徴とする請求項2に記載の原動機付き自転車。
【請求項4】
前記支持部材が左右方向に延びていることを特徴とする請求項2に記載の原動機付き自転車。
【請求項5】
前記回転部材が前記ナンバープレートの上縁に沿って設けられていることを特徴とする請求項2に記載の原動機付き自転車。
【請求項6】
側面視にてシートの前端と後端の間に前記保持装置が位置していることを特徴とする請求項2に記載の原動機付き自転車。
【請求項7】
前記保持装置は、車体に設けられた支持部材と、前記支持部材に前後にスライド可能に支持されたスライダと、前記スライダのスライドに伴って前記ナンバープレートを揺動させるリンク部材と、を有し、
前記スライダが前方位置に位置付けられることで、前記ナンバープレートが表面を後方に向けた表示姿勢で保持され、前記スライダが後方位置に位置付けられることで、前記ナンバープレートが表面を下方に向けた非表示姿勢で保持されることを特徴とする請求項1に記載の原動機付き自転車。
【請求項8】
前記保持装置は、車体と前記ナンバープレートを連結する自在継手と、前記ナンバープレートを表示姿勢に着脱可能に保持する第1の保持部材と、前記ナンバープレートを非表示姿勢に着脱可能に保持する第2の保持部材と、を有していることを特徴とする請求項1に記載の原動機付き自転車。
【請求項9】
前記第1の保持部材によって前記ナンバープレートが表面を後方に向けた表示姿勢で保持され、前記第2の保持部材によって前記ナンバープレートが表面を側方に向けた非表示姿勢で保持されることを特徴とする請求項8に記載の原動機付き自転車。
【請求項10】
非表示姿勢では前記ナンバープレートが縦向きになり、側面視にてシートの前端と後端の間に前記ナンバープレートが位置することを特徴とする請求項9に記載の原動機付き自転車。
【請求項11】
非表示姿勢では上面視にてシートの側端よりも左右方向内側に前記ナンバープレートが位置することを特徴とする請求項9に記載の原動機付き自転車。
【請求項12】
非表示姿勢では上面視にてペダルの内側端よりも左右方向内側に前記ナンバープレートが位置することを特徴とする請求項9に記載の原動機付き自転車。
【請求項13】
非表示姿勢では前記ナンバープレートが前方に向かって左右方向内側になるように傾けられていることを特徴とする請求項9に記載の原動機付き自転車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原動機付き自転車に関する。
【背景技術】
【0002】
原動機付き自転車として、原動機出力を利用した電動車両と運転者の踏み込みを利用した自転車に切替可能なものが知られている(例えば、特許文献1参照)。電動車両は車道を走行する必要があるが、自転車は条件付きで歩道を走行できるため、原動機付き自転車の使用態様を周囲の人々に認識させることが望ましい。そこで、特許文献1の原動機付き自転車には、ナンバープレートの上縁にカバープレートが揺動可能に取り付けられている。原動機のOFFのときにはカバープレートでナンバープレートが遮蔽可能であり、原動機のONのときにはカバープレートによるナンバープレートの遮蔽が規制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の原動機付き自転車では、カバープレートを設けなければならず、装置構成が複雑になるという問題があった。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、シンプルな構造で使用態様を周囲の人々に認識させることができる原動機付き自転車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の原動機付き自転車は、原動機の動力で走行する第1の使用態様と人力駆動力を用いて走行する第2の使用態様に切替可能な原動機付き自転車であって、第1の使用態様であることを認識させるためのナンバープレートと、前記ナンバープレートを表示姿勢又は非表示姿勢に保持する保持装置と、を備えていることで上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様の原動機付き自転車によれば、ナンバープレートが表示姿勢に保持されることで、原動機の動力で走行中の第1の使用態様であることを周囲の人々に認識させることができる。ナンバープレートが非表示姿勢に保持されることで、人力駆動力を用いて走行中の第2の使用態様であることを周囲の人々に認識させることができる。また、ナンバープレートの姿勢の変更というシンプルな構造で使用態様を周囲の人々に認識させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施例の原動機付き自転車の側面図である。
【
図2】第1実施例の表示姿勢のナンバープレート周辺の斜視図である。
【
図3】第1実施例の非表示姿勢のナンバープレート周辺の斜視図である。
【
図4】第1実施例のナンバープレートの姿勢変更の一例を示す図である。
【
図5】第2実施例の表示姿勢のナンバープレート周辺の斜視図である。
【
図6】第2実施例の非表示姿勢のナンバープレート周辺の斜視図である。
【
図7】第2実施例のナンバープレートの姿勢変更の一例を示す図である。
【
図8】第3実施例の表示姿勢のナンバープレート周辺の斜視図である。
【
図9】第3実施例の非表示姿勢のナンバープレート周辺の斜視図である。
【
図10】第3実施例のナンバープレートの姿勢変更の一例を示す図である。
【
図11】第3実施例のナンバープレート周辺の上面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一態様の原動機付き自転車は、原動機の動力で走行する第1の使用態様と人力駆動力を用いて走行する第2の使用態様に切替可能になっている。第1の使用態様であること認識させるためのナンバープレートが保持装置によって表示姿勢又は非表示姿勢に保持される。ナンバープレートが表示姿勢に保持されることで、原動機の動力で走行中の第1の使用態様であることを周囲の人々に認識させることができる。ナンバープレートが非表示姿勢に保持されることで、人力駆動力を用いて走行中の第2の使用態様であることを周囲の人々に認識させることができる。また、ナンバープレートの姿勢の変更というシンプルな構造で使用態様を周囲の人々に認識させることができる。
【実施例0010】
<第1実施例>
以下、添付図面を参照して、第1実施例の原動機付き自転車について説明する。
図1は第1実施例の原動機付き自転車の側面図である。また、以下の図では、矢印FRは車両前方、矢印REは車両後方、矢印Lは車両左方、矢印Rは車両右方をそれぞれ示している。
【0011】
図1に示すように、原動機付き自転車1は、モータ(原動機)31の動力で走行する電動車両としての第1の使用態様と、人力駆動力を用いて走行する自転車としての第2の使用態様と、に切替可能に形成されている。車体フレーム10のヘッドチューブ11から後方にメインチューブ12が延びており、メインチューブ12の後端から上下方向にシートチューブ13が延びている。シートチューブ13の上部付近から後斜め下方にシートステー14が延びており、シートチューブ13の下部付近から後方にチェーンステー15が延びており、シートステー14及びチェーンステー15の後端同士が連結されている。
【0012】
ヘッドチューブ11にはハンドルポスト21が操舵可能に挿し込まれている。ハンドルポスト21の上部には一対のハンドルバー22が設けられ、ハンドルポスト21の下部にはフロントフォーク23が設けられている。フロントフォーク23のフロントエンドには前輪24が回転可能に支持されている。シートチューブ13にはシートポスト26が高さ調整可能に挿し込まれており、シートポスト26の上部にはシート27が設けられている。シートチューブ13の下部にはモータ31が設けられており、シートチューブ13の後側にはモータ31に対して電力を供給するバッテリ32が設けられている。
【0013】
モータ31のクランク軸(不図示)には一対のクランク33が軸支されており、各クランク33の先端にはペダル34が設けられている。モータ31のクランク軸にはドライブスプロケット(不図示)が設けられている。シートステー14及びチェーンステー15のリアエンドには後輪25が回転可能に支持されており、後輪25にはドリブンスプロケット(不図示)が設けられている。モータ31のドライブスプロケット及び後輪25のドリブンスプロケットにはチェーン(不図示)が巻き掛けられており、モータ31からの動力及び/又はペダル34からの人力駆動力が後輪25に伝達されている。
【0014】
シートチューブ13の上部付近から後方にプレートステー28が突き出しており、プレートステー28にはナンバープレート36が支持されている。ナンバープレート36は原動機付き自転車1が電動車両として使用されることを周囲の人々に認識させており、原動機付き自転車1が車道を走行するためにはナンバープレート36を表示する必要がある。一方で、原動機付き自転車1が自転車として使用されている場合には条件付きで歩道を走行できる。しかしながら、原動機付き自転車1のナンバープレート36が表示されたままでは、電動車両が歩道を走行していると周囲の人々に誤認識されるおそれがある。
【0015】
この場合、別部材によってナンバープレート36を隠す構造も考えられるが、部品点数が増加すると共に車両構成が複雑になる。そこで、原動機付き自転車1では、ナンバープレート36の表面を後方に向けた表示姿勢とナンバープレート36の表面を後方以外の方向に向けた非表示姿勢にナンバープレート36の姿勢を変更可能にしている。ナンバープレート36が表示姿勢のときにはモータ31の動力で走行する電動車両であると周囲の人々に認識させ、ナンバープレート36が非表示姿勢のときには人力駆動力を用いて走行する自転車(又は電動アシスト自転車)であると周囲の人々に認識させている。
【0016】
図2から
図4を参照して、第1実施例のナンバープレートの保持構造について説明する。
図2は第1実施例の表示姿勢のナンバープレート周辺の斜視図である。
図3は第1実施例の非表示姿勢のナンバープレート周辺の斜視図である。
図4は第1実施例のナンバープレートの姿勢変更の一例を示す図である。なお、第1実施例では、表示姿勢ではナンバープレートの表面が後方に向けられ、非表示姿勢ではナンバープレートの背面が後方に向けられている。
【0017】
図2及び
図3に示すように、シートチューブ13のプレートステー28の後端には保持装置40を介して略長方形状のナンバープレート36が設けられている。保持装置40には、プレートステー28に固定された支持軸(支持部材)41と、ナンバープレート36に固定された連結板(回転部材)42と、が設けられている。支持軸41は左右方向に延びた円柱状に形成され、連結板42にはC字状に湾曲した引掛部43が形成されている。支持軸41の外周面に引掛部43が引っ掛けられて、支持軸41に連結板42が回転可能に支持されている。支持軸41を中心にナンバープレート36が上下に揺動可能になってナンバープレート36の姿勢が容易に変更される。
【0018】
支持軸41の外周面にはピン44が出没可能に取り付けられ、連結板42の引掛部43には回転中心を挟んだ対称箇所に第1、第2の掛止穴45、46が形成されている。ナンバープレート36が表示姿勢となる回転位置では第1の掛止穴45にピン44が入り込んで連結板42が支持軸41に掛け止めされる(
図2参照)。ナンバープレート36が非表示姿勢となる回転位置では第2の掛止穴46にピン44が入り込んで連結板42が支持軸41に掛け止めされる(
図3参照)。このように、保持装置40の支持軸41による連結板42の掛け止めによって、ナンバープレート36が表示姿勢と非表示姿勢に保持されている。
【0019】
支持軸41の内部にはピン44を突出状態でロックするロック機構が設けられている。支持軸41の片端面にはキーシリンダ47が形成されており、メカニカルキーによってキーシリンダ47が回転されることで、ピン44の没入が規制されてナンバープレート36の姿勢が固定される。運転者以外の他者がナンバープレート36を動かせなくなり、ナンバープレート36が勝手に変更されることがない。例えば、自転車専用の駐輪場ではナンバープレート36を非表示姿勢にする必要があるが、運転者が駐輪場から離れた隙に他者によってナンバープレート36が非表示姿勢から表示姿勢に変更されることがない。
【0020】
図4(A)に示すように、保持装置40の連結板42はナンバープレート36の上縁に沿って設けられている。ナンバープレート36が下ろされた状態では、ナンバープレート36の表面37が後方に向けられた表示姿勢になっている。上記したように、支持軸41のピン44が連結板42の第1の掛止穴45(
図2参照)に入り込み、支持軸41に連結板42が掛け止めされることでナンバープレート36が表示姿勢に保持されている。ナンバープレート36の表面37の識別情報が後方から視認し易くなることで、原動機付き自転車1が電動車両として使用中であることが周囲の人々に認識される。
【0021】
図4(B)に示すように、ナンバープレート36が持ち上げられた状態では、ナンバープレート36の背面38が後方に向けられた非表示姿勢になっている。上記したように、支持軸41のピン44が連結板42の第2の掛止穴46(
図3参照)に入り込み、支持軸41に連結板42が掛け止めされることでナンバープレート36が非表示姿勢に保持されている。ナンバープレート36の表面37の識別情報が後方から視認し難くなることで、原動機付き自転車1が自転車として使用中であることが周囲の人々に認識される。また、側面視にてシート27の前端と後端の間に保持装置40が位置し、シート27の下方にナンバープレート36がコンパクトに収められている。
【0022】
以上、第1実施例の原動機付き自転車1によれば、ナンバープレート36を表示姿勢に保持することで、モータ31の動力で走行中の電動車両であることを周囲の人々に認識させることができる。ナンバープレート36を非表示姿勢に保持することで、人力駆動力を用いて走行中の自転車であることを周囲の人々に認識させることができる。また、ナンバープレート36の姿勢の変更というシンプルな構造で使用態様を周囲の人々に認識させることができる。
【0023】
<第2実施例>
次に、
図5から
図7を参照して、第2実施例の原動機付き自転車について説明する。
図5は第2実施例の表示姿勢のナンバープレート周辺の斜視図である。
図6は第2実施例の非表示姿勢のナンバープレート周辺の斜視図である。
図7は第2実施例のナンバープレートの姿勢変更の一例を示す図である。なお、第2実施例では、表示姿勢ではナンバープレートの表面が後方に向けられ、非表示姿勢ではナンバープレートの表面が下方に向けられている。
【0024】
図5及び
図6に示すように、シートチューブ13の後面には保持装置50を介して略長方形状のナンバープレート36が設けられている。保持装置50には、シートチューブ13に固定されたホルダ(支持部材)51と、ホルダ51に支持されたスライダ52と、ナンバープレート36に固定された連結板53と、連結板53とホルダ51を連結するリンク部材54と、が設けられている。ホルダ51はシートチューブ13から後方に略水平な板状に延びている。ホルダ51の後端から前後方向の中間位置まで扁平状の収容穴55が形成されており、ホルダ51の両側面には収容穴55に連なる長穴56が形成されている。
【0025】
スライダ52の前半部は平板状に形成されており、スライダ52の前半部がホルダ51の収容穴55に前後にスライド可能に支持されている。スライダ52の前半部の両側面には突起58が設けられており、スライダ52の突起58がホルダ51の長穴56に入り込んでいる。ホルダ51の長穴56は前後方向に延びており、ホルダ51の長穴56によってスライダ52の突起58がガイドされている。ホルダ51の長穴56の後端にスライダ52の突起58が突き当たるとスライダ52が後方位置に位置付けられ、ホルダ51の長穴56の前端にスライダ52の突起58が突き当たるとスライダ52が前方位置に位置付けられる。
【0026】
スライダ52の後半部は後斜め下方に湾曲しており、スライダ52の後半部の先端にはヒンジ61を介して連結板53が連結されている。連結板53の後面にはナンバープレート36が固定されており、連結板53の前面にはリンク部材54を介してホルダ51の下面が連結されている。スライダ52のスライド動作がリンク部材54を介して連結板53の揺動動作に変換され、リンク部材54によってスライダ52のスライドに伴ってナンバープレート36が揺動される。スライダ52が前方位置に移動するとナンバープレート36が表示姿勢となり、スライダ52が後方位置に移動するとナンバープレート36が非表示姿勢となる。
【0027】
また、ホルダ51の上面にはキーシリンダ62が取り付けられ、スライダ52の前半部にはキーシリンダ62が入り込む開口63が形成されている。スライダ52の開口63の内側面には、スライダ52の後方位置及び前方位置に合わせてキー溝64が形成されている。メカニカルキーによってキーシリンダ62が回転されることで、キーシリンダ62からピン(不図示)が突き出して、このピンがスライダ52のキー溝64に入り込むことでスライダ52の位置が固定される。運転者以外の他者がナンバープレート36を動かせなくなり、ナンバープレート36が勝手に変更されることがない。
【0028】
非表示姿勢ではナンバープレート36が水平であり、後方から見たときのナンバープレート36の投影面積が小さくなっている。これにより、原動機付き自転車1を自転車として使用しているときには、ナンバープレート36に対する走行中の空気抵抗が減少すると共に風切り音が抑えられている。また、第2実施例ではシートチューブ13にナンバープレート36が支持されているが、シートチューブ13から方向に延びるリアキャリア(不図示)にナンバープレート36が支持されていてもよい。この場合、リアキャリアの下面に保持装置50を介してナンバープレート36が設けられる。
【0029】
図7(A)に示すように、保持装置50の連結板53はスライダ52の先端に吊り下げられている。ナンバープレート36が下ろされた状態では、ナンバープレート36の表面37が後方に向けられた表示姿勢になっている。この場合、スライダ52が前方位置に位置付けられて、ナンバープレート36がシートチューブ13に干渉しない程度に近づけられる。スライダ52の突起58がホルダ51の長穴56の前端に突き当たることでナンバープレート36が表示姿勢に保持されている。ナンバープレート36の表面37の識別情報が後方から視認し易くなることで、原動機付き自転車1が電動車両として使用中であることが周囲の人々に認識される。
【0030】
図7(B)に示すように、ナンバープレート36が持ち上げられた状態では、ナンバープレート36の表面37が下方に向けられた非表示姿勢になっている。この場合、ナンバープレート36がシートチューブ13側に揺動して水平になるが、スライダ52が後方位置に位置付けられることで、ナンバープレート36がシートチューブ13に干渉することがない。スライダ52の突起58がホルダ51の長穴56の後端に突き当たることでナンバープレート36が非表示姿勢に保持されている。ナンバープレート36の表面37の識別情報が後方から視認し難くなることで、原動機付き自転車1が自転車として使用中であることが周囲の人々に認識される。
【0031】
以上、第2実施例の原動機付き自転車1においては、表示姿勢ではナンバープレート36の表面37が後方に向けられて、電動車両であることを周囲に人々に認識させることができる。非表示姿勢ではナンバープレート36の表面37が下方に向けられて、自転車であることを周囲の人々に認識させることができる。第2実施例においても、ナンバープレート36の姿勢の変更というシンプルな構造で使用態様を周囲の人々に認識させることができる。また、非表示姿勢ではナンバープレート36の揺動によってナンバープレート36の下縁がシートチューブ13に近づけられるが、スライダ52が後方へ移動することによってナンバープレート36の下縁とシートチューブ13の干渉が防止される。よって、ナンバープレート36を車体フレーム10に近づけて車体をコンパクトにできる。
【0032】
<第3実施例>
次に、
図8から
図11を参照して、第3実施例の原動機付き自転車について説明する。
図8は第3実施例の表示姿勢のナンバープレート周辺の斜視図である。
図9は第3実施例の非表示姿勢のナンバープレート周辺の斜視図である。
図10は第3実施例のナンバープレートの姿勢変更の一例を示す図である。
図11は第3実施例のナンバープレート周辺の上面模式図である。なお、第3実施例では、表示姿勢ではナンバープレートの表面が後方に向けられ、非表示姿勢ではナンバープレートの表面が側方に向けられている。
【0033】
図8及び
図9に示すように、シートチューブ13のプレートステー28の後端には保持装置70を介して略長方形状のナンバープレート36が設けられている。保持装置70にはプレートステー28に固定された支持ベース71が設けられている。支持ベース71は、左右方向に延びる横板部72と横板部72の一端(右端)から上方に延びる縦板部73とによってL字板状に形成されている。横板部72の他端(左端)にはボールジョイント(自在継手)74を介してナンバープレート36が連結されている。縦板部73及びシートステー14にはナンバープレート36を着脱可能に保持する第1、第2の保持部材77、78が設けられている。
【0034】
ナンバープレート36の上側の一方(右方)の角部にはキーシリンダ79が装着されており、ナンバープレート36の上側の他方(左方)の角部にはボールジョイント74が連結されている。キーシリンダ79には第1、第2の保持部材77、78に掛け止めされるロック片が収容されており、キーシリンダ79がメカニカルキーによって回転されることでロック片が出没される。ボールジョイント74はナンバープレート36に固定されたボースタッド75と支持ベース71に固定されたソケット76を球面接触させて、ナンバープレート36を多方向に動かすことが可能になっている。
【0035】
第1の保持部材77はボールジョイント74の側方に位置し、第1の保持部材77にキーシリンダ79が固定されることでナンバープレート36が表示姿勢に保持される。表示姿勢では、ナンバープレート36の上縁が左右方向に向けられ、ナンバープレート36の側縁が上下方向に向けられている。第2の保持部材78はボールジョイント74の下方に位置し、第2の保持部材78にキーシリンダ79が固定されることでナンバープレート36が非表示姿勢に保持される。非表示姿勢では、ナンバープレート36の上縁が略上下方向に向けられ、ナンバープレート36の側縁が略前後方向に向けられている。
【0036】
より詳細には、非表示姿勢ではナンバープレート36の長手方向がシートチューブ13の延在方向と平行になり(
図10(B)参照)、ナンバープレート36の背面38がシートチューブ13に近づくようにナンバープレート36が傾けられている。非表示姿勢ではナンバープレート36がシートチューブ13に沿ってコンパクトに設置されると共にナンバープレート36の表面37が前斜め側方に向けられている。ナンバープレート36が後方に向かって左右方向外側になるように傾いているため、原動機付き自転車1を自転車として使用しているときには、ナンバープレート36に対する走行中の空気抵抗が減少すると共に風切り音が抑えられている。
【0037】
図10(A)に示すように、保持装置70にはボールジョイント74に介してナンバープレート36の角部が連結されている。第1の保持部材77にキーシリンダ79が位置付けられた状態では、ナンバープレート36が横向きでナンバープレート36の表面37が後方に向けられた表示姿勢になっている。キーシリンダ79のロック片が第1の保持部材77に掛け止めされることでナンバープレート36が表示姿勢に保持(施錠)されている。ナンバープレート36の表面37の識別情報が後方から視認し易くなることで、原動機付き自転車1が電動車両として使用中であることが周囲の人々に認識される。
【0038】
図10(B)に示すように、第2の保持部材78にキーシリンダ79が位置付けられた状態では、ナンバープレート36が縦向きでナンバープレート36の表面37が側方に向けられた非表示姿勢になっている。キーシリンダ79のロック片が第2の保持部材78に掛け止めされることでナンバープレート36が非表示姿勢に保持(施錠)されている。ナンバープレート36の表面37の識別情報が後方から視認し難くなることで、原動機付き自転車1が自転車として使用中であることが周囲の人々に認識される。また、側面視にてシート27の前端と後端の間にナンバープレート36が位置し、シート27の下方にナンバープレート36がコンパクトに収められている。
【0039】
図11に示すように、シート27の前側は運転者の股の間を通るように幅狭に形成され、シート27の後側は運転者の臀部が乗るように幅広に形成されている。シート27の後側の側端29はペダル34の内側端39よりも左右方向外側に位置している。非表示姿勢では上面視にてシート27の側端29よりも左右方向内側にナンバープレート36が位置し、シート27に座った運転者の脚部にナンバープレート36が当たり難くなっている。ペダル34の内側端39よりも左右方向内側にナンバープレート36が位置し、ペダル34に載せられた脚部にナンバープレート36が当たり難くなっている
【0040】
また、非表示姿勢ではナンバープレート36が前方に向かって左右方向内側になるように傾けられている。ナンバープレート36がシート27の外縁に沿って設置されており、シート27に座った運転者の脚部の内側にナンバープレート36が入り込み、運転者の脚部にナンバープレート36が当たり難くなっている。このように、シート27の下方にナンバープレート36がコンパクトに設置されている。また、ナンバープレート36の表面37が斜め側方に向けられているが、運転者の脚部によってナンバープレート36が隠されるため、ナンバープレート36が目立ち難くなっている。
【0041】
以上、第3実施例の原動機付き自転車1においては、ボールジョイント74を中心にしてナンバープレート36を多方向に動かして、ナンバープレート36の姿勢を変更することができる。表示姿勢ではナンバープレート36の表面37が後方に向けられて、電動車両であることを周囲に人々に認識させることができる。非表示姿勢ではナンバープレート36の表面37が側方に向けられて、自転車であることを周囲の人々に認識させることができる。第3実施例においても、ナンバープレート36の姿勢の変更というシンプルな構造で使用態様を周囲の人々に認識させることができる。
【0042】
なお、第1実施例においては、シートピラーに設けられた支持軸を支持部材として例示し、ナンバープレートに設けられた連結板を回転部材として例示したが、支持部材及び回転部材は特に限定されない。回転部材が車体及びナンバープレートのいずれか一方に設けられ、支持部材が車体及びナンバープレートのいずれか他方に設けられて、支持部材に対して回転部材が回転可能に支持されていればよい。例えば、シートピラーに軸受が設けられ、ナンバープレートに回転軸が設けられて、軸受に回転軸が回転可能に支持されていてもよい。
【0043】
また、第1実施例においては、支持軸がナンバープレートの上縁に沿って設けられているが、支持軸がナンバープレートの下縁に沿って設けられていてもよい。
【0044】
また、第2実施例においては、ナンバープレートに設けられた連結板がヒンジを介してスライダに連結されているが、ナンバープレートがヒンジを介してスライダに連結されていてもよい。この場合、ナンバープレートにリンク部材を介してホルダが連結される。
【0045】
また、第3実施例においては、自在継手としてボールジョイントを例示したが、自在継手は支持ベースに対してボールジョイントを多方向に移動可能に連結できればよい。例えば、自在継手は二軸タイプのユニバーサルジョイントでもよい。
【0046】
また、各実施例においては、ナンバープレートの表面が前方、下方、側方に向けられた姿勢を非表示姿勢としているが、非表示姿勢はナンバープレートの表面が後方以外の方向に向けられた姿勢であればよい。
【0047】
また、各実施例においては、保持装置にキーシリンダが設けられているが、保持装置にキーシリンダが設けられていなくてもよい。
【0048】
また、各実施例においては、手動によってナンバープレートの姿勢が変更されたが、アクチュエータ等によって自動的にナンバープレートの姿勢が変更されてもよい。
【0049】
また、各実施例においては、シートチューブやリアキャリアに保持装置を介してナンバープレートが設けられているが、リアフェンダー等の車体の別の箇所に保持装置を介してナンバープレートが設けられていてもよい。
【0050】
また、各実施例においては、ナンバープレートが表示姿勢かどうかを確認可能なセンサが設けられ、センサの出力に応じて制御装置によって車両制御が実施されてもよい。例えば、センサの出力(ナンバープレートの姿勢)に応じて速度制限が変更されてもよいし、センサの出力に応じてランプの点灯パターンや色が変更されてもよい。
【0051】
また、各実施例においては、ナンバープレートの固定のためのキーが、電源投入のキーと兼ねられていてもよい。また、ナンバープレートの固定のためのキー操作に連動して電源投入されてもよいし、キー操作に連動してバッテリがロックされてもよい。
【0052】
また、各実施例においては、ナンバープレートが車両後部に設置されているが、ナンバープレートが車両前部に設置されていてもよいし、ナンバープレートが車両前部及び車両後部に設置されていてもよい。
【0053】
また、保持装置は各実施例の構造に限定されない。保持装置は、ナンバープレートを表示姿勢又は非表示姿勢に保持可能に形成されていればよい。
【0054】
以上の通り、第1態様は、原動機(モータ31)の動力で走行する第1の使用態様と人力駆動力を用いて走行する第2の使用態様に切替可能な原動機付き自転車(1)であって、第1の使用態様であることを認識させるためのナンバープレート(36)と、ナンバープレートを表示姿勢又は非表示姿勢に保持する保持装置(40、50、70)と、を備えている。この構成によれば、ナンバープレートを表示姿勢に保持することで、原動機の動力で走行中の第1の使用態様であることを周囲の人々に認識させることができる。ナンバープレートを非表示姿勢に保持することで、人力駆動力を用いて走行中の第2の使用態様であることを周囲の人々に認識させることができる。また、ナンバープレートの姿勢の変更というシンプルな構造で使用態様を周囲の人々に認識させることができる。
【0055】
第2態様は、第1態様において、保持装置(40)が、車体(シートチューブ13)及びナンバープレートのいずれか一方に設けられた回転部材(連結板42)と、車体及びナンバープレートのいずれか他方に設けられた支持部材(支持軸41)と、を有し、支持部材に対して回転部材が回転可能に支持されている。この構成によれば、車体に対してナンバープレートを揺動させて、ナンバープレートの姿勢を容易に変更することができる。
【0056】
第3態様は、第2態様において、ナンバープレートが表示姿勢となる回転位置と非表示姿勢となる回転位置で、回転部材が支持部材に掛け止めされる。この構成によれば、支持部材による回転部材の掛け止めによって、ナンバープレートを表示姿勢と非表示姿勢に保持することができる。
【0057】
第4態様は、第2態様又は第3態様において、支持部材が左右方向に延びている。この構成によれば、ナンバープレートを上下に揺動させて、ナンバープレートの姿勢を容易に変更することができる。
【0058】
第5態様は、第2態様から第4態様のいずれか1態様において、回転部材がナンバープレートの上縁に沿って設けられている。この構成によれば、ナンバープレートが下ろされた状態では表示姿勢になり、ナンバープレートが持ち上げられた状態では非表示姿勢になる。
【0059】
第6態様は、第2態様から第5態様のいずれか1態様において、側面視にてシート(27)の前端と後端の間に保持装置が位置している。この構成によれば、シートの下方にナンバープレートをコンパクトに収めることができる。
【0060】
第7態様は、第1態様において、保持装置(50)が、車体(シートチューブ13)に設けられた支持部材(ホルダ51)と、支持部材に前後にスライド可能に支持されたスライダ(52)と、スライダのスライドに伴ってナンバープレートを揺動させるリンク部材(54)と、を有し、スライダが前方位置に位置付けられることで、ナンバープレートが表面を後方に向けた表示姿勢で保持され、スライダが後方位置に位置付けられることで、ナンバープレートが表面を下方に向けた非表示姿勢で保持される。この構成によれば、表示姿勢ではナンバープレートの表面が後方に向けられて、第1の使用態様であることを周囲に人々に認識させることができる。非表示姿勢ではナンバープレートの表面が下方に向けられて、第2の使用態様であることを周囲の人々に認識させることができる。また、非表示姿勢ではナンバープレートの揺動によってナンバープレートの下縁が車体に近づけられるが、スライダが後方へ移動することによってナンバープレートの下縁と車体の干渉が防止される。よって、ナンバープレートを車体に近づけて車体をコンパクトにできる。
【0061】
第8態様は、第1態様において、保持装置(70)が、車体(シートチューブ13)とナンバープレートを連結する自在継手(ボールジョイント74)と、ナンバープレートを表示姿勢に着脱可能に保持する第1の保持部材(77)と、ナンバープレートを非表示姿勢に着脱可能に保持する第2の保持部材(78)と、を有している。この構成によれば、自在継手を中心にしてナンバープレートを多方向に動かして、ナンバープレートの姿勢を変更することができる。
【0062】
第9態様は、第8態様において、第1の保持部材によってナンバープレートが表面を後方に向けた表示姿勢で保持され、第2の保持部材によってナンバープレートが表面を側方に向けた非表示姿勢で保持される。この構成によれば、表示姿勢ではナンバープレートの表面が後方に向けられて、第1の使用態様であることを周囲に人々に認識させることができる。非表示姿勢ではナンバープレートの表面が側方に向けられて、第2の使用態様であることを周囲の人々に認識させることができる。
【0063】
第10態様は、第9態様において、非表示姿勢ではナンバープレートが縦向きになり、側面視にてシート(27)の前端と後端の間にナンバープレートが位置する。この構成によれば、非表示姿勢のナンバープレートをシートの下方にコンパクトに収めることができる。
【0064】
第11態様は、第9態様又は第10態様において、非表示姿勢では上面視にてシートの側端(29)よりも左右方向内側にナンバープレートが位置する。この構成によれば、シートに座った運転者の脚部に非表示姿勢のナンバープレートが当たり難くなると共にナンバープレートの表面を目立ち難くすることができる。
【0065】
第12態様は、第9態様から第11態様のいずれか1態様において、非表示姿勢では上面視にてペダル(34)の内側端(39)よりも左右方向内側にナンバープレートが位置する。この構成によれば、ペダルに載せられた脚部に非表示姿勢のナンバープレートが当たり難くなると共にナンバープレートの表面を目立ち難くすることができる。
【0066】
第13態様は、第9態様から第12態様のいずれか1態様において、非表示姿勢ではナンバープレートが前方に向かって左右方向内側になるように傾けられている。この構成によれば、運転者の脚部の内側に非表示姿勢のナンバープレートが入り込んで、運転者の脚部にナンバープレートが当たり難くなると共にナンバープレートの表面を目立ち難くすることができる。
【0067】
なお、本実施例を説明したが、他の実施例として、上記実施例及び変形例を全体的又は部分的に組み合わせたものでもよい。
【0068】
また、本発明の技術は上記の実施例に限定されるものではなく、技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらには、技術の進歩又は派生する別技術によって、技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様をカバーしている。