IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社東芝の特許一覧 ▶ 東芝エネルギーシステムズ株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-電力変換装置 図1
  • 特開-電力変換装置 図2
  • 特開-電力変換装置 図3
  • 特開-電力変換装置 図4
  • 特開-電力変換装置 図5
  • 特開-電力変換装置 図6
  • 特開-電力変換装置 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110779
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 1/08 20060101AFI20240808BHJP
   H02M 1/00 20070101ALI20240808BHJP
   H03K 17/08 20060101ALI20240808BHJP
   H03K 17/10 20060101ALI20240808BHJP
   H03K 17/567 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
H02M1/08 A
H02M1/00 F
H03K17/08 Z
H03K17/10
H03K17/567
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023015572
(22)【出願日】2023-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100124372
【弁理士】
【氏名又は名称】山ノ井 傑
(74)【代理人】
【識別番号】100125151
【弁理士】
【氏名又は名称】新畠 弘之
(72)【発明者】
【氏名】新井 卓郎
(72)【発明者】
【氏名】松本 脩平
(72)【発明者】
【氏名】金田 大成
(72)【発明者】
【氏名】森 淳二
【テーマコード(参考)】
5H740
5J055
【Fターム(参考)】
5H740BA11
5H740BB01
5H740BB05
5H740BB07
5H740BB09
5H740BC01
5H740BC02
5H740HH06
5H740JA01
5H740JB01
5H740MM01
5H740MM11
5J055AX08
5J055AX12
5J055AX32
5J055AX53
5J055AX56
5J055AX65
5J055BX16
5J055DX09
5J055DX42
5J055DX72
5J055DX83
5J055EY01
5J055EY10
5J055EY12
5J055FX05
5J055FX08
5J055FX13
5J055FX32
5J055GX02
(57)【要約】
【課題】スイッチング素子の端子間電圧にサージ電圧が含まれる場合にも、スイッチング素子が破壊されることを抑制可能である電力変換装置、駆動装置、及び駆動方法を提供する。
【解決手段】本実施形態に係る電力変換装置は、スイッチング素子で構成される複数のアームが直列に接続された電力変換装置あって、スイッチング素子を駆動する駆動装置を備える。駆動装置は、ゲートアンプと、検知回路と、電流アンプと、を有する。ゲートアンプは、ゲート信号に応じて、スイッチング素子の抵抗状態を制御する。検知回路は、スイッチング素子の端子間電圧を検知する。電流アンプは、端子間電圧に基づいて、スイッチング素子のゲート端子に第1電流を供給する。電流アンプは、端子間電圧予め設定された電圧に達したときに、スイッチング素子のゲート端子に流れる電流がゼロに近づくように、ゲート端子に電流を供給する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチング素子で構成される複数のアームが直列に接続された電力変換装置あって、
前記スイッチング素子を駆動する駆動装置を備え、
前記駆動装置は、
ゲート信号に応じて、前記スイッチング素子のゲート端子に直流電圧を印加して、前記スイッチング素子の抵抗状態を制御するゲートアンプと、
前記スイッチング素子の端子間電圧を検知する検知回路と、
前記端子間電圧に基づいて、前記ゲート端子に第1電流を供給する電流アンプと、
を有し、
前記電流アンプは、前記端子間電圧が予め設定された電圧に達したときに、前記ゲート端子に流れる電流がゼロに近づくように、前記第1電流を供給する、電力変換装置。
【請求項2】
前記電流アンプは、前記端子間電圧と予め設定された動作開始電圧との差分に比例する電流を前記ゲート端子に供給する、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記電流アンプは、ゲート抵抗に反比例した電流を前記ゲート端子に供給することで、前記ゲート端子に流れる電流をゼロに近づける、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記電流アンプは、ゲート端子電圧と負側ゲート駆動電圧源との和に比例する電流を前記ゲート端子に供給することで、前記ゲート端子に流れる電流をゼロに近づける、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記電流アンプは、ゲート電圧の変化に比例した電流を流すことで、前記ゲート端子に流れる電流をゼロに近づける、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記端子間電圧は、前記スイッチング素子の前記スイッチング素子のコレクタ-エミッタ間電圧である、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記電流アンプは前記検知回路の出力が予め設定されたクランプ電圧に達したときに、前記ゲート端子に流れる第2電流がゼロに近づくように、前記端子間電圧と前記第1電流との関係が設定される、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記ゲートアンプは、前記ゲート信号に応じて、正側ゲート駆動電圧源の正電位と負側ゲート電圧源の負電位を出力する、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項9】
前記スイッチング素子のゲート端子と前記正側ゲート駆動電圧源の正電極との間に、電位をクランプするクランプ回路を更に備え、
前記電流アンプに電圧を供給する電流アンプ用電源は前記正側ゲート駆動電圧源の正電位より高い電位である、請求項5に記載の電力変換装置。
【請求項10】
前記ゲートアンプと、前記検知回路と、前記電流アンプと、を内包する導電性のケースを更に備え、
前記導電性のケースは前記スイッチング素子のエミッタ端子と同電位である、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項11】
前記スイッチング素子の短絡を検知する短絡検知回路を更に備え。
前記検知回路は、コンデンサと抵抗を並列接続した回路を直列に接続して構成され、第1の直列接続点に前記電流アンプが接続され、第2の直列接続点に前記短絡検知回路が接続される、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項12】
前記電流アンプは、継続したオフ信号が入力されたときに、前記第1電流を停止する、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項13】
前記スイッチング素子のそれぞれのオン、オフを制御する制御装置と、
前記アームに直流電圧を供給する直流コンデンサと、
を更に備え、
前記制御装置は、前記直流コンデンサの電圧が予め設定された過電圧値を超えた場合、又は交流出力端子に対応する前記アームの接続点の電流が予め設定された過電流値を超えた場合に、前記スイッチング素子それぞれをオフする遮断信号を出力する、請求項7に記載の電力変換装置。
【請求項14】
前記クランプ電圧は、前記スイッチング素子の耐圧より小さく、前記遮断信号により前記スイッチング素子が遮断された際のサージ電圧より大きい値に設定される、請求項13に記載の電力変換装置。
【請求項15】
前記端子間電圧が、前記動作開始電圧と、予め設定されたクランプ電圧との間の第3の閾値より大きい場合に、クランプ動作信号を生成して、外部装置に出力する比較回路を更に備える、請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項16】
スイッチング素子で構成されるアームが2つ以上直列に接続された電力変換装置の駆動装置であって、
ゲート信号に応じて、前記スイッチング素子のゲート端子に直流電圧を印加して、前記スイッチング素子の抵抗状態を制御するゲートアンプと、
前記スイッチング素子の端子間電圧を検知する検知回路と、
前記端子間電圧に基づいて、前記スイッチング素子のゲート端子に第1電流を供給する電流アンプと、
を備え、
前記電流アンプは、前記端子間電圧が予め設定された電圧に達したときに、スイッチング素子のゲート端子に流れる電流がゼロに近づくように、前記ゲート端子に電流を供給する、駆動装置。
【請求項17】
スイッチング素子で構成されるアームが2つ以上直列に接続された電力変換装置の駆動方法であって、
ゲート信号に応じて、前記スイッチング素子のゲート端子に直流電圧を印加して、前記スイッチング素子の抵抗状態を制御する第1制御工程と、
前記スイッチング素子の端子間電圧を検知する検知工程と、
前記端子間電圧に基づいて、前記スイッチング素子のゲート端子に第1電流を供給する第2制御工程と、を備え、
前記第2制御工程では、前記端子間電圧が予め設定された電圧に達したときに、前記スイッチング素子のゲート端子に流れる電流がゼロに近づくように、前記ゲート端子に電流を供給する、駆動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電力変換装置、駆動装置、及び駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電力変換装置の応用先拡大に伴い、電力変換装置のさらなる高電圧・大容量化が求められている。しかし、絶縁ゲート型バイポーラトランジスター(IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)、及び絶縁ゲート電界効果トランジスタ(MOSFET:Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor)などに代表されるスイッチング素子の耐圧には実用上の限界がある。このため、さらなる高電圧化のために、スイッチング素子を複数直列化して高電圧化を実現している。
【0003】
このようなIGBT、MOSFETは、オン・オフ状態を自己継続しないノンラッチ型のスイッチング素子であり、サイリスタなど、ラッチング型のスイッチング素子に比べて、高いゲート制御特性を有する。例えばスイッチング素子のコレクタ、エミッタ端子間に端子間電圧が印加されている状態で、スイッチング素子のゲート端子にゲート電圧を印加したとき、スイッチング素子をオンさせ、ゲート端子に印加していたゲート電圧を解除するだけで、スイッチング素子をオフすることが可能となる。
【0004】
また、このようなIGBT、MOSFETは、スイッチング素子をターンオン、ターンオフする際のスイッチング過渡期において、ゲート電圧などを制御することにより、電力スイッチング素子から出力される電流、電圧などの特性を制御可能であることが知られている。このような制御方法として、スイッチング過渡期にある電力スイッチング素子などの出力電圧、出力電流をゲートにフィードバックして、スイッチング素子を制御する所謂アクティブゲート駆動技術が用いられる。また、このアクティブゲート駆動技術は、スイッチング素子を多直列とした変換器において、短絡事故が生じた際にも用いられる。この場合、スイッチング素子に印可されるコレクターエミッタ端子間電圧(以下コレクタ電圧と呼ぶ)を短絡事故中でもバランスさせるために、アクティブゲート駆動技術によりゲート端子に電流を供給し、スイッチング素子の飽和電流値を制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3932841号公報
【特許文献2】特許第4901083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、コレクタ電圧を直接的に制御しているわけではないため、ゲート端子に供給する電流量が少ないと、電流を遮断する際のサージ電圧によって素子の耐圧を超えて破壊されてしまう恐れがある。一方で、電流量が多いと、短絡事故ではない通常のスイッチング時でも、アクティブゲートが動作してしまい、損失を大幅に増加させる恐れがある。
【0007】
そこで、本実施形態では、スイッチング素子の端子間電圧にサージ電圧が含まれる場合にも、スイッチング素子が破壊されることを抑制可能である電力変換装置、駆動装置、及び駆動方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本実施形態に係る電力変換装置は、スイッチング素子で構成される複数のアームが直列に接続された電力変換装置あって、スイッチング素子を駆動する駆動装置を備える。駆動装置は、ゲートアンプと、検知回路と、電流アンプと、を有する。ゲートアンプは、ゲート信号に応じて、スイッチング素子のゲート端子に直流電圧を印加して、スイッチング素子の抵抗状態を制御する。検知回路は、スイッチング素子の端子間電圧を検知する。電流アンプは、端子間電圧に基づいて、スイッチング素子のゲート端子に第1電流を供給する。電流アンプは、端子間電圧予め設定された電圧に達したときに、スイッチング素子のゲート端子に流れる電流がゼロに近づくように、ゲート端子に電流を供給する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態に係る電力変換装置の主要部を示す図。
図2】第1実施形態に係るゲート駆動装置の構成例を示すブロック図。
図3】電流アンプのゲイン特性例を示す図。
図4】ゲート駆動装置のクランプ動作例を示す図。
図5】第2実施形態に係るゲート駆動装置の構成を示すブロック図。
図6】第2実施形態に係るゲート駆動装置の構成を示すブロック図。
図7】ターンオン中に短絡検出された例を示すタイムチャート。
【効果】
【0010】
端子間電圧にサージ電圧が含まれる場合にも、スイッチング素子が破壊されることを抑制可能とする。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態に係る電力変換装置、駆動装置、及び駆動方法ついて、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態は、本発明の実施形態の一例であって、本発明はこれらの実施形態に限定して解釈されるものではない。また、本実施形態で参照する図面において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号又は類似の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。また、図面の寸法比率は説明の都合上実際の比率とは異なる場合や、構成の一部が図面から省略される場合がある。
【0012】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態に係る電力変換装置の主要部を示す図である。図1に示す様に、電力変換装置1は、制御装置2と、正側の第1アームA10と、負側の第2アームA20と、直流コンデンサC10と、複数のゲート駆動装置5とを、備える。電力変換装置1は、例えば2直列接続された第1アームA10と第2アームA20とが3並列され、それぞれ直流電圧源である直流コンデンサC10に接続される。図1では、接続点が交流系統のU端子に接続される第1アームA10と第2アームA20とを図示している。なお、U相、V相、W相とも同一の構成であるため、V端子、W端子それぞれに接続される第1アームA10と第2アームA20との図示を省略している。
【0013】
第1アームA10には複数のスイッチング素子S22が直列に接続され、第2アームA20には複数のスイッチング素子S22が直列に接続される。なお、本実施形態に係るスイッチング素子S22の直列数は、4であるが、これに限定されない。各スイッチング素子S22には、ダイオードD24が逆並列に接続される。スイッチング素子S22は、例えば絶縁ゲート型バイポーラトランジスター(IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)である。ダイオードD24は、例えば逆並列ダイオードである。
【0014】
絶縁ゲート型バイポーラトランジスターは、例えば入力部がMOS、出力部がバイポーラー構造となっており、バイポーラーモードで動作するパワートランジスターの一種である。なお、本実ではIGBTを例に説明するが、これに限定されない。例えば、スイッチング素子S22は、電界効果トランジスタ(FET:Field Effect Transistor)、及び電荷注入促進型絶縁ゲートトランジスタ(IEGT: Injection Enhanced Gate Transistor)などで構成してもよい。また、電界効果トランジスタ(FET: Field Effect Transistor)として、絶縁ゲート電界効果トランジスタ(MOSFET: Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor)などを用いることが可能である。
【0015】
制御装置2は、ゲート駆動装置5を制御する。この制御装置2は、例えばPWM(Puls Width Modulation)制御により制御されたパルス信号をゲート信号として発生し、ゲート駆動装置5に出力する。なお、制御装置2による電力変換装置1の駆動制御は、PWM制御などの一般的な制御方法を用いることが可能であり、詳細を省略する。また、電力変換装置1には、例えばNPC(Neutral-Point Clamp)インバータ、或いは、NPC(Neutral-Point Clamp)コンバータを用いることも可能である。
【0016】
また、制御装置2は、直流コンデンサC10の電圧値と、U端子、V端子及びW端子それぞれの電流値を、不図示の電圧測定器と、電流測定器とから取得している。この制御装置2は、直流コンデンサC10の電圧値が予め設定された過電圧を超えた場合、又は、交流出力端子であるU端子、V端子及びW端子の電流が予め設定された過電流を超えた場合に、各スイッチング素子S22に遮断信号を出力し、オフすることが可能である。これにより、各スイッチング素子S22を過電圧、又は過電流から保護することが可能である。
【0017】
ここで、ゲート駆動装置5の詳細を説明する。図2は、第1実施形態に係るゲート駆動装置5の構成例を示すブロック図である。図2に示すようにゲート駆動装置5は、スイッチング素子S22のゲート電流を駆動制御することにより、スイッチング素子S22のコレクタ電圧をクランプ可能である装置である。より具体的には、このゲート駆動装置5は、ゲートアンプ10と、正側ゲート駆動電圧源12と、負側ゲート駆動電圧源14と、ゲート抵抗16と、検知回路(Vce検知回路)18と、電流アンプ20と、を備える。なお、本実施形態に係るゲート駆動装置5が駆動装置に対応する。
【0018】
ゲートアンプ10は、入力端子が端子t10に接続され、出力端子がゲート抵抗16に接続される。ゲートアンプ10には、正側ゲート駆動電圧源12と、負側ゲート駆動電圧源14と、が接続される。この正側ゲート駆動電圧源12は、ノードn2に負電位側が接続され、ゲートアンプ10に正電位側が接続される。負側ゲート駆動電圧源14は、ノードn2に正電位側が接続され、ゲートアンプ10に負電位側が接続される。このような構成により、ゲートアンプ10は、端子t10を介して制御装置2(図1参照)から送信されるゲート信号に応じて、正側ゲート駆動電圧源12の正電圧、又は負側ゲート駆動電圧源14の負電圧をパルス信号としてゲート抵抗16に出力する。ゲートアンプ10は、例えば、制御装置2のPWM制御により制御されたパルス信号を発生する。
【0019】
ゲート抵抗16は、ノードn6を介して、端子t14に接続される。端子t14には、スイッチング素子S22のゲート端子Gが接続される。
【0020】
このゲートアンプ10は、制御装置2のゲート信号に応じて、ゲート抵抗16を介して、スイッチング素子S22のゲート端子Gへの電圧印加状態を制御する。これにより、ゲートアンプ10は、スイッチング素子S22のオン/オフを制御することが可能である。例えば、ゲートアンプ10がハイレベル信号を出力する場合(ターンオン中)には、スイッチング素子S22のゲート容量、及びミラー容量が充電され、オンとなる。
【0021】
一方で、ゲートアンプ10がロウレベル信号を出力する場合(ターンオフ中)にはゲート容量、及びミラー容量が放電され、オフとなる。このように、スイッチング素子S22は、ゲート端子Gの電圧、つまりゲート端子Gのゲート容量、及びミラー容量に存在する電荷量によって、オン状態・過渡状態・オフ状態を切り替えることが可能となる。換言すると、IGBTやIEGTなどのゲート端子Gが絶縁されているスイッチング素子S22は、ゲート端子Gの電圧、つまりゲート端子Gに存在する電荷量によって、オン状態・過渡状態・オフ状態を切り替えることが可能となる。なお、本実施形態では、オン状態、過渡状態、オフ状態を含むスイッチング素子S22の状態を、抵抗状態と称する場合がある。すなわち、抵抗状態が変わると、スイッチング素子S22のコレクタ端子Cと、エミッタ端子Eとの間の抵抗値が変わるものである。このように、このゲートアンプ10は、ゲート信号に応じて、スイッチング素子S22の抵抗状態を制御する。
【0022】
スイッチング素子S22では、ゲート端子Gに流出入する電流を多くすると、ゲート端子の電圧を急峻に変化でき、過渡状態を短くすることが可能となる。この場合、スイッチング素子S22のコレクタ端子Cに流れるコレクタ電流Icを急激に変化させることになるため、電力変換装置1内の寄生インダクタンスによってサージ電圧が発生する。このサージ電圧は、コレクタ電圧Vceに含まれる。
【0023】
オン状態・過渡状態・オフ状態(抵抗状態)を切り替える場合に、スイッチング素子S22のコレクタ端子Cに流れるコレクタ電流Icの電流変化率をdIc/dt、寄生インダクタンスをLs、スイッチング素子S22のコレクタ端子C、エミッタ端子E間に直流電源が印可する電圧を直流電圧Vdcとすると、サージ電圧が含まれたコレクタ電圧Vceは、(1)式となる。なお、本実施形態では、スイッチング素子S22のコレクタ端子C、エミッタ端子E間の電圧をコレクタ電圧Vceと称する。
【数1】
(1)式で示すように、コレクタ電圧Vceは、過渡的に直流電圧Vdcを超える。このため、スイッチング素子S22のスイッチング動作が急峻にならないように、ゲート抵抗16によってゲート端子Gに流れる電流を限流する。なお、ターンオンとターンオフでは、制御特性が変わるため、ゲート抵抗16を変える構成としてもよい。また、本実施形態では、スイッチング素子S22の導通状態をオンと称し、スイッチング素子S22の非導通状態をオフと称する。また、スイッチング素子S22の非導通状態を遮断状態と称する場合がある。また、本実施形態に係るコレクタ電圧Vceが端子間電圧に対応する。
【0024】
検知回路18は、一端がノードn4を介して端子t16に接続される。端子t16には、スイッチング素子S22のエミッタ端子Eが接続される。この検知回路18は、他端が端子t12に接続される。端子t12には、スイッチング素子S22のコレクタ端子Cが接続される。このような接続により、検知回路18は、スイッチング素子S22のコレクタ端子Cとエミッタ端子Eとの間のコレクタ電圧Vceを検知する。なお、検知回路18は、一般的な電圧検知回路を用いることが可能である。また、本実施形態に係る検知回路18は、電圧を検知するが、これに限定されない。例えば、検知回路18は、スイッチング素子S22のコレクタCに流れるコレクタ電流Icを検知してもよい。或いは、検知回路18は、スイッチング素子S22のコレクタCに流れるコレクタ電流Icと、コレクタ電圧Vceとの双方を検知してもよい。
【0025】
電流アンプ20は、ノードn6に接続され、アンプ用電源VDDの電圧が供給される。電流アンプ20は、検知回路18が検知したコレクタ電圧Vce、及びコレクタ電流Icのうちの少なくともコレクタ電圧Vceに応じた電流アンプ電流I14をノードn6、及び端子t14を介して、スイッチング素子S22のゲート端子Gに供給する。電流アンプ電流I14は、矢印の向きを正方向とする。また、図1には、ゲートアンプ電流I12、及びゲート端子電流I16が更に図示されている。ゲートアンプ電流I12、及びゲート端子電流I16は、矢印の向きを正方向とする。なお、本実施形態に係る電流アンプ電流I14が第1電流に対応し、ゲート端子電流I16が第2電流に対応し、ゲートアンプ電流I12が第3電流に対応する。
【0026】
このように、本実施形態に係る電流アンプ20は、ゲート信号に応じたゲートアンプ10による制御とは独立に、ゲート端子電流I16を制御可能である。なお、電流アンプ20は、ゲート端子Gに直接的に接続される。このため、故障時の保護のために、電流アンプ20とゲート端子Gの間に微小な抵抗を挿入してもよい。この場合、ゲート抵抗16より小さな抵抗値に構成される。
【0027】
[電流アンプのゲイン特性例]
図3は、電流アンプ20のゲイン特性例を示す図である。縦軸は電流を示し、横軸はコレクタ電圧Vceを示す。なお、本実施形態では、コレクタ電圧Vceと、電流アンプ電流I14との関係を電流アンプ20のゲイン特性と称する。
【0028】
ここで、電流アンプ20のゲイン特性について説明する。コレクタ電圧Vceは、短絡時においても、オン状態・過渡状態・オフ状態(抵抗状態)を切り替えるスイッチング時においても、スイッチング素子S22の耐圧以下に収める必要がある。例えば、ターンオフの際にはサージ電圧によってコレクタ電圧Vceが上昇する。コレクタ電圧Vceを予め定められたクランプ電圧Vclp以下に抑制するためには、スイッチング素子S22のインピーダンスを下げる必要がある。つまり、電流アンプ20が電流アンプ電流I14をゲート端子Gに供給(注入)し、ゲート端子Gの電圧を上昇させる必要がある。
【0029】
このとき、電流アンプ電流I14をゲート端子Gに必要以上に注入してしまうと、インピーダンスが下がりすぎて、必要以上にコレクタ電圧Vceが下がり、損失が大幅に増大する恐れがある。最悪の場合、ターンオフができなくなってしまう恐れがある。また、電流アンプ電流I14が小さいとコレクタ電圧Vceの上昇が止められず、スイッチング素子S22の破壊に至る。そこで、本実施形態では、電流アンプ20が出力する電流アンプ電流I14は、コレクタ電圧Vceが予め設定したクランプ電圧Vclpになった際に、ゲート端子電流I16が略ゼロとなるようなゲインに設定される。つまり、電流アンプ20は、コレクタ電圧Vceが予め設定されたクランプ電圧Vclpに達したときに、スイッチング素子S22のゲート端子Gに流れるゲート端子電流I16がゼロに近づくように、ゲート端子Gに電流アンプ電流I14を供給する。
【0030】
ここで、ゲート端子電流I16を略ゼロにする(ゼロに近づける)ことについて補足する。コレクタ電流icとゲート電圧vge、ゲート端子電流igとゲート電圧vgeとの間には、以下に示す関係式が成り立つ。
【数2】
【数3】
ただし、AqとBqは素子固有の定数、Cgはゲート容量である。(3)式に(2)式を代入すると、
【数4】
が得られる。さらに、(1)式をdic/dtについて整理して、(4)式に代入すると、
【数5】
(5)式となる。つまり、コレクタ電圧VceをクランプしてVdcに近づけるには、igをゼロに近づけることに他ならない。したがって、ゲート端子Gに流れるゲート端子電流I16を略ゼロにすることで、所望のクランプ電圧に制御できる。また、(5)式からは、Cg、Bq、icなどによってゲート電流igを多少流す必要があることも示しており、本実施形態における略ゼロとは、このことを示している。
【0031】
例えば、電流アンプ20は、ゲート抵抗16に反比例したゲートアンプ電流I12をゲート端子Gに供給することで、ゲート端子Gに流れる電流をゼロに近づけることが可能である。より具体的には、電流アンプ20は、ゲート端子Gの電圧と負側ゲート駆動電圧源14の電圧との和に比例するゲートアンプ電流I12をゲート端子Gに供給することで、ゲート端子Gに流れる電流をゼロに近づけることが可能である。また、電流アンプ20は、ゲート端子Gの電圧の変化に比例したゲートアンプ電流I12を流すことで、ゲート端子Gに流れる電流をゼロに近づけることが可能である。
【0032】
コレクタ電圧Vceを一定値であるクランプ電圧Vclpにクランプするには、(1)式で示すdIc/dtを一定の値に制御する必要がある。dIc/dtを一定の値に制御する場合、予め設定されたクランプ電圧Vclpに達した際に、ゲート端子Gに流れるゲート端子電流I16を略ゼロにすることで、つまりゲート端子Gの電圧を固定にする。これにより、dIc/dtを一定に保つことができる。したがって、検出回路18の出力が予め設定されたクランプ電圧Vclpに達したときに、電流アンプ20がゲート端子Gに流れる電流を略ゼロとなるようなゲインを有していれば、コレクタ電圧Vceを所望のクランプ電圧Vclpに制御できる。
【0033】
より具体的には、電流アンプ20は、図3に示すゲイン特性を有する。図3に示すように、電流アンプ電流I14は、コレクタ電圧Vceが、動作開始電圧Vsを越えると、増加を開始する。例えば、電流アンプ電流I14は、動作開始電圧Vsとクランプ電圧Vclpとの差分に比例して増加するゲイン特性を有する。
【0034】
スイッチング素子S22の過渡状態におけるゲート端子Gの電圧は、スイッチング素子S22のスレッショルド電圧Vth付近である。このため、スイッチング素子S22のターンオフ中にゲートアンプ10へ流入するゲートアンプ電流I12は、(6)式で示される。ここで、電圧Vnは負側ゲート駆動電圧源14の駆動電圧であり、抵抗値Rgはゲート抵抗16の抵抗値である。
【数6】
【0035】
すなわち、コレクタ電圧Vceがクランプ電圧Vclpに達した際の電流アンプ20の電流アンプ電流I14は、(7)式で示される電流Iagとなる。このように、コレクタ電圧Vceとクランプ電圧Vclpとが等しい時の電流アンプ電流I14は、ターンオフ中のゲートアンプ電流I12の絶対値と同じ大きさの注入電流Iagとなる。
【数7】
【0036】
このゲイン特性は一例であり、2次関数や指数関数などでゲイン特性を構成しても良い。ただし、2次関数や指数関数を利用したり、動作開始値を上げたりすることで、ゲイン特性の傾きを増加させることも可能である。しかしながら、電流アンプ20の持つ遅延によって安定性が損なわれる恐れがあるので、クランプ電圧Vclpと動作開始電圧Vsとの差分に比例する特性が望ましいと考えられる。なお、クランプ電圧Vclpは、スイッチング素子S22の耐圧より小さく、スイッチング素子S22が遮断信号により遮断された際のサージ電圧より大きい値に設定される。
【0037】
[ゲート駆動装置5のクランプ動作例]
図4は、ゲート駆動装置5のクランプ動作例を示す図である。図4は、図3のゲイン特性に従い、本実施形態に係るクランプ動作をシミュレーションした結果例である。
【0038】
図4(a)は、検知回路18が検知したコレクタ電圧Vceを示す図である。縦軸がコレクタ電圧Vceを示し、横軸が時間を示す。
【0039】
図4(b)は、ゲートアンプ電流I12、電流アンプ電流I14、及びゲート端子電流I16の時間変化例を示す図である。縦軸が電流I12、I14、I16を示し、横軸が時間を示す。
【0040】
図4(b)に示すように、ゲートアンプ10がターンオフ動作中には、スイッチング素子S22のゲート容量、及びミラー容量が放電を開始する。これにより、ゲートアンプ電流I12は、正側に流れ、スイッチング素子S22のゲート容量、及びミラー容量内の電荷が減少する。このとき、図4(a)に示すように、スイッチング素子S22の抵抗が大きくなり、スイッチング素子S22を流れるコレクタ電流Iceを制限するので、スイッチング素子S22のコレクタ電圧Vceが上昇する。
【0041】
そして、時刻Ti10で、動作開始電圧Vsを越える。コレクタ電圧Vceが動作開始電圧Vsを上側に越えるタイミングTi10で、電流アンプ20は、図3のゲイン特性に従い、電流アンプ電流I14をスイッチング素子S22のゲート端子Gに供給を開始する。すなわち、電流アンプ20は、コレクタ電圧Vceに応じて、コレクタ電圧Vceがクランプ電圧Vclpとなるように、電流アンプ電流I14の供給量を制御する。また、電流アンプ20は、コレクタ電圧Vceが動作開始電圧Vsを下側にタイミングTi12で、電流アンプ電流I14の供給を停止する。
【0042】
このように、電流アンプ20は、電流アンプ電流I14を、短絡時においてもスイッチング時においても、コレクタ電圧Vceがスイッチング素子S22の耐圧以下に収めるように制御する。例えば、ターンオフの際にはサージ電圧によってコレクタ電圧Vceが上昇する。電流アンプ20は、コレクタ電圧Vceをクランプ電圧Vclp以下に抑制するために、電流アンプ電流I14により、スイッチング素子S22のインピーダンスを下げる制御を行うことが可能である。すなわち、電流アンプ20は、ゲートアンプ電流I12を補償し、ゲート端子電流I16を略ゼロにするように、電流アンプ電流I14の供給量を制御する。こように、電流アンプ20が電流アンプ電流I14をゲート端子Gに注入し、ゲート端子Gの電圧を上昇させる。換言すると、ゲート信号に応じたゲートアンプ10によるゲート端子Gの電圧低下を、電流アンプ20が電流アンプ電流I14をゲート端子Gに注入し抑制する。このとき、ゲート端子電流I16が略ゼロであるので、上述のように、ゲート端子Gの電圧を固定にする。これにより、dIc/dtを一定に保つことができる。
【0043】
以上説明したように、電流アンプ20は、コレクタ電圧Vceに応じて、コレクタ電圧Vceがクランプ電圧Vclpとなるように、電流アンプ電流I14の供給量を制御することとした。これにより、コレクタ電圧Vceにサージ電圧が含まれる場合にも、スイッチング素子S22の耐圧以下に抑制可能となる。また、電流アンプ20が供給する電流アンプ電流I14の供給量は、コレクタ電圧Vceがクランプ電圧Vclpに達する際に、ゲート端子Gに流れるゲート端子電流I16を略ゼロにするように設定される。これにより、コレクト電流ICの時間変化量dIc/dtを一定に保つように制御可能となり、コレクタ電圧Vceをクランプ電圧Vclpにより安定して制御可能となる。このように、スイッチング素子S22の端子間電圧であるコレクタ電圧Vceにサージ電圧が含まれる場合にも、スイッチング素子S22が破壊されることが抑制される。
【0044】
(第2実施形態)
第2実施形態に係る電力変換装置1は、梯子回路を用いた短絡検知と、コレクタ電圧Vceの検知が可能である点で、第1実施形態に係る電力変換装置1と相違する。以下では、第1実施形態に係る電力変換装置1と相違する点を説明する。
【0045】
図5は、第2実施形態に係るゲート駆動装置5aの構成を示すブロック図である。図5に示すようにゲート駆動装置5aは、検知回路18aと、短絡検知回路22とを、有する点で第1実施形態に係るゲート駆動装置5と相違する。
【0046】
検知回路18aは、例えば梯子回路であり、検知コンデンサC1と検知抵抗R1を並列接続した回路を直列に接続して構成される。第1接続点n10に電流アンプ20が接続され、第2接続点n20に短絡検知回路22が接続される。検知回路18aは、検知コンデンサC1することで、スイッチングの過渡状態の時間(マイクロ秒)の電圧を正確に測定することができる。
【0047】
短絡検知回路22は、接続点n20と、ノードn4との間の電圧V2を検知する。この電圧V2は、分圧されている。例えば電圧V2の値はコレクタ電圧Vceの数百分の1とすることが可能である。短絡検知回路22は、電圧V2が所定値を越える場合に、短絡が発生したことを示す検知信号を、端子t18を介して、制御装置2(図1参照)に出力する。制御装置2は、検知信号が入力されると、遮断信号を出力する。このように、制御装置2は、検知信号が入力されると、対応するスイッチング素子S22(図1参照)を遮断する制御を行う。なお、短絡検知回路22の検知した電圧V2を電流アンプ20に供給することも可能である。
【0048】
電流アンプ20は、第1接続点n10と、ノードn4との間の電圧V3を検知する。電流アンプ20は、電圧V3に応じて、第1実施形態と同様の制御を行うことが可能である。このように、検知回路18aは、第1接続点n10と第2接続点n20を設け、それぞれ電流アンプ20と短絡検知回路22とに接続することで、検知回路18aの省略化を行うことができる。
【0049】
電力変換装置1の第1アームA10、及び第2アームA20(図1参照)のうち、一方で故障が発生した場合、他方の健全素子がターンオンすると、直流コンデンサC10が短絡され大電流が流れてしまう。このため、他方の健全素子は短絡に伴う大電流を遮断する必要がある。上述のように、制御装置2は、検知信号が入力されると、例えば、対応するスイッチング素子S22を遮断する制御を行う。この際に、ターンオンしているため、ゲート端子Gの電圧は正側ゲート駆動電圧源の電圧に近く、比較的高い状態となっている。このため、本実施形態に係る電流アンプ20のアンプ電源VDDaの電位は、正側ゲート駆動電圧源12の電位より高い値に設定される。これにより、電流アンプ20は、必要な電流アンプゲインを確保することが可能となる。
【0050】
(第3実施形態)
第3実施形態に係る電力変換装置1は、オフ継続回路24、クランプ回路26、及び比較回路28を更に備え、ゲート駆動装置5bを導電性のケース30で構成する点で、第2実施形態に係る電力変換装置1と相違する。以下では、第2実施形態に係る電力変換装置1と相違する点を説明する。
【0051】
図6は、第3実施形態に係るゲート駆動装置5bの構成を示すブロック図である。図6に示すようにゲート駆動装置5bは、オフ継続回路24、クランプ回路26、及び比較回路28を更に備え、ゲート駆動装置5bを導電性のケース30内に構成する点で第2実施形態に係るゲート駆動装置5aと相違する。
【0052】
オフ継続回路24は、制御装置2のゲート信号において、一定時間以上オフ状態が継続したら、電流アンプ20からゲート端子Gへの電流アンプ電流I14の供給を停止させる。すなわち、電流アンプ20は、ゲート信号において、一定時間以上オフ状態が継続した場合に、電流アンプ20のゲインをゼロにオフ継続回路24により制御される。
【0053】
ゲートブロック(すべてのスイッチング素子をオフ状態にすること)などのオフ状態が継続する際に、何らかの原因によって直流コンデンサが過充電され、コレクタ電圧が上昇することがある。このとき、動作開始電圧Vs(図3参照)以上となると、電流アンプ20が誤動作してしまう。或いは、電流アンプ20から負側ゲート電圧源14へと電流が継続的に流れるため、回路の破壊につながってしまう。これに対して本実施形態に係るオフ継続回路24は、一定時間以上オフ状態が継続したら、電流アンプ20からゲート端子へ電流を注入しないように電流アンプ20のゲインをゼロに制御する。これにより、電流アンプ20の誤動作などを抑制できる。なお、電流アンプ20とノードn6との間に接続スイッチを構成し、接続スイッチを制御することにより、電流アンプ20をノードn6から電気的に切り離してもよい。また、オフ継続回路24は、ゲート信号とは別に、後述のクランプ動作信号に応じて、電流アンプ20のゲインをゼロに制御することも可能である。或いはオフ継続回路24は、ゲートブロックなどオフ状態の継続を知らせる信号を直接受信し、電流アンプ20を制御してもよい。
【0054】
クランプ回路26は、例えばダイオードであり、ゲート端子Gと正側ゲート駆動電圧源12の正電極との間に接続される。このクランプ回路26は、ゲート端子Gの電位を正側ゲート駆動電圧源12の電位にクランプする。上述のように、電流アンプ20のアンプ電源VDDの電位を正側ゲート駆動電圧源12の電位より高い値に設定すると、ゲート端子Gの電圧がゲート駆動電圧源で想定された値より高くなり、短絡電流の増加を招く恐れがある。これにより、クランプ回路26が無い場合には、短絡電流の増加を招き、短絡電流を遮断する前に、スイッチング素子S22が熱的に破壊されてしまう恐れがある。これに対して、本実施形態に係るクランプ回路26は、ゲート端子Gの電位を正側ゲート駆動電圧源12の電位にクランプすることにより、スイッチング素子S22の熱的破壊を抑制可能となる。
【0055】
比較回路28は、動作開始電圧Vs(図3参照)と、クランプ電圧Vclp(図3参照)との間の第3の閾値th3と、電流アンプ20の検知電位とを比較し、電流アンプ20の検知電位が閾値th3を越えた場合に、クランプ動作信号を、端子t20を介して、制御装置2(外部装置)に出力する。上述のように、制御装置2は、ゲートブロックなどのオフ状態に、クランプ動作信号が入力された際に、オフ継続回路24に対して、電流アンプ20からゲート端子へ電流を注入しないように電流アンプ20のゲインをゼロに制御させる。この比較回路28によっても、電流アンプ20の誤動作が抑制される。
【0056】
導電性のケース30は、スイッチング素子S22のエミッタ端子Eに電気的に接続される。これにより、第1接続点n10、及び第2接続点n20からエミッタ端子Eまでの静電容量は大きくなり、寄生容量の影響が抑制され、正確なコレクタ電圧Vceの検知が可能となる。
【0057】
一方で、エミッタ端子Eに電気的に接続される導電性のケース30がない場合には、第1接続点n10、及び第2接続点n20とコレクタ端子Cとの間に検知コンデンサ以外の寄生容量があると、検知したコレクタ電圧Vceにずれが生じてしまう。例えば、検知回路18aは、数kVの電圧を数Vに降圧するものであるから、第1接続点n10、及び第2接続点n20からコレクタ端子Cまでの、検知回路18aの静電容量は、例えばピコファラッド(pF)のオーダであり、第1接続点n10、及び第2接続点n20からエミッタ端子Eまでの静電容量と比較して非常に小さくなる。この場合、コレクタ端子Cは、直流コンデンサC10や他のスイッチング素子へとバスバーで接続されるため、ゲート駆動装置5bの位置関係などでも寄生容量が変わり、調整が非常に難しくなってしまう。
【0058】
これに対して、図6に示すように、本実施形態に係るゲート駆動装置5bは、導電性のケース30で覆われ、スイッチング素子S22のエミッタ端子Eに接続される。これにより、検知回路の寄生容量の多くは導電性のケース30との間に発生する。導電性のケース30はエミッタ端子Eに接続されており、検知回路18aの寄生容量はエミッタ端子Eとの間に発生することになる。第1接続点n10、及び第2接続点n20からエミッタ端子Eまでの検知回路18aの静電容量は大きいので、寄生容量の影響が抑制され、正確なコレクタ電圧Vceの検知が可能になる。
【0059】
図7は、ターンオン中に短絡検出された例を示すタイムチャートである。縦軸は、上からゲート信号、ゲート電圧Vg、コレクタ電圧Vce1,コレクタ電流Icを示し、横軸は、時間を示す。なお、コレクタ電圧Vce2は、同一アームにおける故障がないスイッチング素子S22のコレクタ電圧例であり、コレクタ電圧Vce1は何らかの故障ある場合のコレクタ電圧例である。図7中の破線が故障のないスイッチング素子S22の一部動作例であり、実線が何らかの故障のあるスイッチング素子S22の動作例である。例えば、コレクタ電圧Vce2は、故障がないスイッチング素子S22のコレクタ電圧例であり、コレクタ電圧Vce1は何らかの故障ある場合のコレクタ電圧例である。
【0060】
図7に示すように制御装置2(図2参照)からタイミングt10にオン制御の情報を含むハイレベル信号がゲート信号として、ゲートアンプ10に入力される。これにより、ゲートアンプ10は、各スイッチング素子S22のゲート端子Gに印可するゲート電圧Vgを負側ゲート駆動電圧源14の負電位Vg2から正側ゲート駆動電圧源12の正電位Vg1に切り替える。これにより、ゲート電圧Vgは、負電位から正電位へ上昇を開始する。
【0061】
次に、タイミングt12において、ゲート電圧Vgが閾値電圧Vthpを越え、スイッチング素子S22がターンオンを開始する。これにより、スイッチング素子S22の抵抗が低下するので、コレクタ電流Icが上昇を開始する。通常であれば、抵抗の低下にともない、コレクタ電圧Vce2のようにコレクタ電圧Viceは低下する。ところが、何らかの短絡故障が生じているスイッチング素子S22のコレクタ電圧Vce1は上昇を開始してしまう。
【0062】
次に、タイミングt14において、短絡検知回路22は、コレクタ電圧Vce1が所定値を越えたことを検知し、短絡が発生したことを示す検知信号を、端子t18を介して、制御装置2に出力する。続けて、タイミングt16において、制御装置2は、検知信号に基づき、同一アームの全スイッチング素子S22に対して、遮断信号としてゲート信号をロウレベルにする。
【0063】
これにより、ゲートアンプ10は、スイッチング素子S22のゲート端子Gに印可するゲート電圧Vgを正側ゲート駆動電圧源12の正電位Vg1から負側ゲート駆動電圧源14の負電位Vg2に切り替え、コレクタ電圧Vce1、及びコレクタ電流Icが下降する。このとき、遮断動作によりサージ電圧がコレクタ電圧Vce1、Vce2に含まれる。短絡故障をしているスイッチング素子S22は、動作開始点電圧を超えるので、電流アンプ20が動作し、コレクタ電圧Vce1は、クランプ電圧Vclpにクランプされる。そして、タイミングt18にコレクタ電流Icが零となり、遮断が完了する。このように、電流アンプ20が動作し、コレクタ電圧Vce1は、クランプ電圧Vclpにクランプされるので、遮断動作によりサージ電圧が含まれても、コレクタ電圧Vce1は、クランプ電圧Vclpにクランプされる。
【符号の説明】
【0064】
1:電力変換装置、2:制御装置、5:ゲート駆動装置、10:ゲートアンプ、12:正側ゲート駆動電圧源、14:負側ゲート駆動電圧源、16:ゲート抵抗、18、18a:検知回路、20:電流アンプ、22:短絡検知回路、28:比較回路、30:導電性のケース、A10:第1アーム、A20:第2アーム、C10:直流コンデンサ、I12:ゲートアンプ電流(第3電流)、I14:電流アンプ電流(第1電流)、I16:ゲート端子電流(第2電流)、S22:スイッチング素子、Vce、Vce1、Vce2:コレクタ電圧(端子間電圧)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7