(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110789
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】車両用空調装置
(51)【国際特許分類】
B60H 1/00 20060101AFI20240808BHJP
B60H 1/22 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
B60H1/00 102J
B60H1/22 651Z
B60H1/22 651C
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023015591
(22)【出願日】2023-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上村 幸男
(72)【発明者】
【氏名】後藤 良寛
(72)【発明者】
【氏名】萩原 康太
(72)【発明者】
【氏名】大槻 赳之
【テーマコード(参考)】
3L211
【Fターム(参考)】
3L211BA42
3L211CA12
3L211DA06
3L211EA41
3L211FA37
3L211GA06
(57)【要約】
【課題】室内用熱交換器が保水状態にある場合でもデフロスタモードで窓晴らしが可能な車両用空調装置を提供する。
【解決手段】空調ケース14は、外気および内気が流れる室内用通風路17を形成する。デフロスタ吹出開口部31は、室内用通風路17から車両のフロントウィンドシールドに向けて吹き出される空気が流れる。室内用熱交換器5は、室内用通風路17内に設けられ、冷媒流路を流れる冷媒と外気および内気との熱交換により、冷媒を蒸発させる蒸発器および冷媒を凝縮させる凝縮器として使用することが可能である。バイパス通路25は、室内用通風路17の一部に形成され、室内用熱交換器5を迂回して外気および内気が流れる。通路仕切部材は、バイパス通路25を通過した空気をデフロスタ吹出開口部31へ導くと共に、室内用熱交換器5を通過した空気がデフロスタ吹出開口部31に流れることを抑制可能である。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用空調装置であって、
車室外空気および車室内空気が流れる室内用通風路(17)を形成する空調ケース(14)と、
前記室内用通風路から車両のフロントウィンドシールドに向けて吹き出される空気が流れるデフロスタ吹出開口部(31)と、
前記室内用通風路から乗員の上半身に向けて吹き出される空気が流れるフェイス吹出開口部(41)と、
前記室内用通風路から乗員の下半身に向けて吹き出される空気が流れるフット吹出開口部(51)と、
前記室内用通風路内に設けられ、冷媒流路を流れる冷媒と車室外空気および車室内空気との熱交換により、前記冷媒を蒸発させる蒸発器および前記冷媒を凝縮させる凝縮器として使用可能な室内用熱交換器(5)と、
前記室内用通風路の一部に形成され、前記室内用熱交換器を迂回して車室外空気および車室内空気が流れるバイパス通路(25)と、
前記バイパス通路を通過した空気を前記デフロスタ吹出開口部へ導くと共に、前記室内用熱交換器を通過した空気が前記デフロスタ吹出開口部に流れることを抑制可能な通路仕切部材と、を備える車両用空調装置。
【請求項2】
前記通路仕切部材は、前記バイパス通路を開閉するバイパスドア(15)により構成され、
前記バイパスドアは、前記通路仕切部材として機能する位置と、前記通路仕切部材として機能しない位置とに移動可能である、請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記バイパスドアは、前記バイパス通路を開くと共に、前記バイパス通路を通過した空気と前記室内用熱交換器を通過した空気とが前記室内用通風路内で混ざることを可能とする位置に移動することが可能である、請求項2に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記バイパスドアは、前記バイパス通路を開き、前記バイパス通路を通過した空気を前記デフロスタ吹出開口部へ導くと共に、前記室内用熱交換器を通過した空気を前記フェイス吹出開口部および前記フット吹出開口部の少なくとも1つに導く位置に移動することが可能である、請求項2または3に記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記室内用熱交換器に保水される凝縮水の保水状態を検知または推測可能であると共に、前記バイパスドアの駆動を制御する電子制御装置(11)をさらに備え、
前記電子制御装置は、前記デフロスタ吹出口から風を吹き出すモードを実行するとき、前記室内用熱交換器の保水状態が所定の閾値より多い場合、前記バイパスドアが前記バイパス通路を開き、且つ、前記通路仕切部材として機能する位置に前記バイパスドアを駆動する、請求項2または3に記載の車両用空調装置。
【請求項6】
前記電子制御装置は、前記デフロスタ吹出口から風を吹き出すモードを実行するとき、前記室内用熱交換器の保水状態が所定の閾値より少ない場合、前記バイパスドアが前記バイパス通路を閉じる位置に前記バイパスドアを駆動する、請求項5に記載の車両用空調装置。
【請求項7】
車室外空気および車室内空気を前記室内用通風路に選択的に吸い込むことの可能な内外気吸込部(21)をさらに備え、
前記電子制御装置は、前記デフロスタ吹出口から風を吹き出すモードを実行するとき、前記室内用熱交換器の保水状態が所定の閾値より多い場合、前記バイパス通路に車室外空気が流れるよう前記内外気吸込部の駆動を制御する、請求項5に記載の車両用空調装置。
【請求項8】
前記室内用通風路を2層に仕切る仕切壁(35)をさらに備え、
前記仕切壁は、前記内外気吸込部から吸い込まれた車室外空気を前記バイパス通路に導き、前記内外気吸込部から吸い込まれた車室内空気を前記室内用熱交換器に導くことが可能である、請求項7に記載の車両用空調装置。
【請求項9】
前記室内用熱交換器の下流側、且つ、前記デフロスタ吹出開口部、前記フェイス吹出開口部および前記フット吹出開口部の上流側に設けられ、前記室内用熱交換器を通過した空気を前記室内用通風路から車室外に排出することの可能な通風路開口部(36)と、
前記通風路開口部を開閉する通風路開閉ドア(37)をさらに備える、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項10】
前記バイパス通路の下流側は、前記フット吹出開口部に通じるフット通路(52)に対して、前記フェイス吹出開口部に通じるフェイス通路(42)に近い位置に設けられている、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項11】
前記バイパス通路の下流側は、前記フェイス吹出開口部に通じるフェイス通路(42)に対して、前記フット吹出開口部に通じるフット通路(52)に近い位置に設けられている、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、冷媒の流れ方向を制御することで熱交換器を凝縮器と蒸発器に切り替えて使用することの可能なヒートポンプシステムを用いて車室内の空調を行う車両用空調装置が知られている。特許文献1に記載の車両用空調装置は、空調風を生成する空調ケース内に配置した1つの室内用熱交換器を凝縮器と蒸発器に切り替えて使用するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の車両用空調装置において、室内用熱交換器を蒸発器として使用した後、デフロスタモードに切り替える場合、室内用熱交換器を凝縮器として使用すると室内用熱交換器に保持された凝縮水が再蒸発して窓曇りを発生させる懸念がある。そのため、室内用熱交換器に凝縮水が保持された状態(即ち、保水状態)でデフロスタモードを行う場合、ヒートポンプシステムの駆動を停止し、車室外から導入した外気をデフロスタ吹出開口部から送風(即ち、外気送風)することが好ましい。
【0005】
しかしながら、外気送風とした場合でも、車両のカウル等からエンジンルームまたはモータールーム内に取り込まれた外気がエンジンまたはモータの熱で昇温された後に車両用空調装置の空調ケース内に吸い込まれることがある。その場合、空調ケース内で、その昇温された外気が保水状態にある室内用熱交換器を通過する際に絶対湿度が増加し、デフロスタ吹出開口部から吹き出された風がフロントウィンドシールドで冷やされると窓曇りが発生する恐れがある。
【0006】
本発明は上記点に鑑みて、室内用熱交換器が保水状態にある場合でもデフロスタモードで窓晴らしが可能な車両用空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、車両用空調装置であって、
車室外空気および車室内空気が流れる室内用通風路(17)を形成する空調ケース(14)と、
室内用通風路から車両のフロントウィンドシールドに向けて吹き出される空気が流れるデフロスタ吹出開口部(31)と、
室内用通風路から乗員の上半身に向けて吹き出される空気が流れるフェイス吹出開口部(41)と、
室内用通風路から乗員の下半身に向けて吹き出される空気が流れるフット吹出開口部(51)と、
室内用通風路内に設けられ、冷媒流路を流れる冷媒と車室外空気および車室内空気との熱交換により、冷媒を蒸発させる蒸発器および冷媒を凝縮させる凝縮器として使用可能な室内用熱交換器(5)と、
室内用通風路の一部に形成され、室内用熱交換器を迂回して車室外空気および車室内空気が流れるバイパス通路(25)と、
バイパス通路を通過した空気をデフロスタ吹出開口部へ導くと共に、室内用熱交換器を通過した空気がデフロスタ吹出開口部に流れることを抑制可能な通路仕切部材と、を備える。
【0008】
これによれば、室内用熱交換器が保水状態のときにデフロスタモードを実施する場合、通路仕切部材により、バイパス通路を通過した空気をデフロスタ吹出開口部へ導くと共に、室内用熱交換器を通過した空気がデフロスタ吹出開口部に流れることを抑制可能である。これにより、車両のカウル等からエンジンルーム内またはモータールーム内に取り込まれた外気がエンジンまたはモータの熱で昇温された後に空調ケース内の室内用通風路を流れる場合でも、その外気はバイパス通路を経由してデフロスタ吹出開口部から吹き出される。また、室内用熱交換器を通過した空気がデフロスタ吹出開口部に流れることが抑制される。そのため、バイパス通路を流れる外気は絶対湿度が増加しないので、デフロスタ吹出開口部から吹き出された風の温度がフロントウィンドシールドで外気温まで下がっても露点に至ることが無い。したがって、この車両用空調装置は、室内用熱交換器が保水状態にあるときにデフロスタモードを実施する場合でも、絶対湿度の低い外気を用いてフロントウィンドシールドの窓晴らしができる。
【0009】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態に係る車両用空調装置に用いられるヒートポンプシステムの概略構成図である。
【
図2】第1実施形態に係る車両用空調装置を模式的に示した断面図である。
【
図3】第1実施形態に係る車両用空調装置においてフェイスモードを示す断面図である。
【
図4】第1実施形態に係る車両用空調装置においてバイレベルモードを示す断面図である。
【
図5】第1実施形態に係る車両用空調装置においてフットモードを示す断面図である。
【
図6】第1実施形態に係る車両用空調装置においてフット/デフロスタモードを示す断面図である。
【
図7】第1実施形態に係る車両用空調装置において室内用熱交換器が保水状態の時のデフロスタモードを示す断面図である。
【
図8】第1実施形態に係る車両用空調装置において室内用熱交換器が保水していない状態の時のデフロスタモードを示す断面図である。
【
図9】第2実施形態に係る車両用空調装置においてバイレベルモードを示す断面図である。
【
図10】第3実施形態に係る車両用空調装置においてフット/デフロスタモードを示す断面図である。
【
図11】第4実施形態に係る車両用空調装置において室内用熱交換器が保水状態の時のデフロスタモードを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0012】
(第1実施形態)
第1実施形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態の車両用空調装置1は、車両に搭載され、ヒートポンプシステム2を用いて車室内の冷房および暖房を含む空調を行うものである。
【0013】
<ヒートポンプシステム2の構成>
まず、本実施形態の車両用空調装置1に用いられるヒートポンプシステム2の構成について、
図1を参照して説明する。
【0014】
図1に示すように、ヒートポンプシステム2は、圧縮機3、第1四方弁4、室内用熱交換器5、室外用熱交換器6、第2四方弁7、レシーバ8、可変絞り9、それらを接続する冷媒配管10、および、電子制御装置11などを備えている。ヒートポンプシステム2を循環する冷媒として、例えばHFC系冷媒(例えば、R134a)、HFO系冷媒(例えば、R1234yf)、または、自然冷媒(例えば、二酸化炭素)等が採用される。
【0015】
ヒートポンプシステム2は、冷房運転と暖房運転を切り替え可能な蒸気圧縮式の冷凍サイクルである。
図1では、冷房運転時に冷媒の流れる方向を実線の矢印で示し、暖房運転時に冷媒の流れる方向を破線の矢印で示している。
【0016】
圧縮機3は、冷媒吸込口3aから吸い込んだ冷媒を圧縮し、冷媒吐出口3bから吐出する。圧縮機3の冷媒吸込口3aおよび冷媒吐出口3bには、冷媒配管10を介して第1四方弁4が接続されている。
【0017】
第1四方弁4の4つのポートはそれぞれ冷媒配管10を介して圧縮機3の冷媒吸込口3a、圧縮機3の冷媒吐出口3b、室内用熱交換器5、室外用熱交換器6に接続されている。第1四方弁4は、4つのポートにそれぞれ接続された冷媒配管10の連通状態を切り替える。
【0018】
室内用熱交換器5は、自身の有する冷媒流路を流れる冷媒と、室内用送風機12により送風される空気との熱交換を行う。室内用熱交換器5は、冷房運転時には自身の有する冷媒流路を流れる冷媒を蒸発させる蒸発器として使用可能であり、暖房運転時には自身の有する冷媒流路を流れる冷媒を凝縮させる凝縮器として使用可能である。
【0019】
室外用熱交換器6は、自身の有する冷媒流路を流れる冷媒と、室外用送風機13により送風される空気との熱交換を行う。室外用熱交換器6は、冷房運転時には自身の有する冷媒流路を流れる冷媒を凝縮させる凝縮器として使用可能であり、暖房運転時には自身の有する冷媒流路を流れる冷媒を蒸発させる蒸発器として使用可能である。
【0020】
室内用熱交換器5および室外用熱交換器6には、冷媒配管10を介して第2四方弁7が接続されている。第2四方弁7の4つのポートはそれぞれ冷媒配管10を介して室内用熱交換器5、室外用熱交換器6、レシーバ8、可変絞り9に接続されている。第2四方弁7は、4つのポートにそれぞれ接続された冷媒配管10の連通状態を切り替える。
【0021】
レシーバ8は、サイクルの負荷に応じて変動する余剰冷媒を貯める液貯めである。レシーバ8は、室内用熱交換器5または室外用熱交換器6から第2四方弁7を介して流入する冷媒を気相冷媒と液相冷媒に分離し、液相冷媒のみを下流側の可変絞り9に送り出す。
【0022】
可変絞り9は、レシーバ8から流入する冷媒を減圧膨張させる膨張弁である。可変絞り9は、レシーバ8から供給される冷媒を減圧膨張させ、低温低圧の気液二相状態にして第2四方弁7を介して下流側の室内用熱交換器5または室外用熱交換器6に供給する。
【0023】
電子制御装置11(以下、「ECU11」という)は、プロセッサと、ROM、RAM及びフラッシュメモリ等のメモリーとを備えたマイクロコンピュータを中心に構成されている。なお、ECUは、Electronic Control Unitの略である。ECU11は、プロセッサがメモリーに記憶されたプログラムを実行することにより、上述した圧縮機3、室内用送風機12、室外用送風機13などの駆動を制御する。また、ECU11は、後述する車両用空調装置1が備えるバイパスドア15、吸込部開閉ドア24および各モードドア30、40、50などの駆動を制御する。
【0024】
上述したヒートポンプシステム2の各構成のうち、室内用熱交換器5、室外用熱交換器6、室内用送風機12、室外用送風機13などは、車両用空調装置1の一部を構成する。
【0025】
<車両用空調装置1の構成>
次に、車両用空調装置1の構成について、
図2を参照して説明する。
【0026】
図2に示すように、車両用空調装置1は、空調ケース14、室内用熱交換器5、室外用熱交換器6、室内用送風機12、室外用送風機13、バイパスドア15などを備えている。
【0027】
空調ケース14は、室外用通風路16と室内用通風路17とを形成している。室外用通風路16と室内用通風路17とは、隔壁18により区画されている。
【0028】
室外用通風路16には、室外用送風機13、室外用熱交換器6などが設けられている。室外用送風機13の駆動により、車室外空気(以下、「外気」という)が外気導入口19から室外用通風路16に導入され、室外用熱交換器6を通って外気排出口20から車室外へ排出される。
【0029】
室内用通風路17には、内外気吸込部21、室内用送風機12、室内用熱交換器5、バイパスドア15、各モードドア30、40、50などが設けられている。
【0030】
内外気吸込部21は、外気を導入する外気導入口22と、車室内空気(以下、「内気」という)を導入する内気導入口23と、吸込部開閉ドア24を有している。吸込部開閉ドア24は、外気導入口22と内気導入口23を選択的に開閉可能なドアである。内外気吸込部21は、外気と内気を選択的に室内用通風路17に吸い込むことの可能な構成である。室内用送風機12の駆動により、内外気吸込部21から外気または内気が室内用通風路17に導入される。
【0031】
室内用通風路17の下流側には、デフロスタ吹出開口部31、フェイス吹出開口部41、フット吹出開口部51が設けられている。デフロスタ吹出開口部31、フェイス吹出開口部41、フット吹出開口部51はそれぞれ不図示のダクトを経由して、車室内に設けられた不図示のデフロスタ吹出口、フェイス吹出口、フット吹出口に接続される。したがって、デフロスタ吹出開口部31には、室内用通風路17から車両のフロントウィンドシールドに向けて吹き出される空気が流れる。フェイス吹出開口部41には、室内用通風路17から乗員の上半身に向けて吹き出される空気が流れる。フット吹出開口部51には、室内用通風路17から乗員の下半身に向けて吹き出される空気が流れる。
【0032】
室内用通風路17のうちデフロスタ吹出開口部31に通じる通路をデフロスタ通路32と呼び、フェイス吹出開口部41に通じる通路をフェイス通路42と呼び、フット吹出開口部51に通じる通路をフット通路52と呼ぶ。デフロスタ通路32、フェイス通路42、フット通路52にはそれぞれ、デフロスタ通路開閉ドア30、フェイス通路開閉ドア40、フット通路開閉ドア50が設けられている。なお、デフロスタ通路開閉ドア30、フェイス通路開閉ドア40、フット通路開閉ドア50を纏めて、各モードドア30、40、50と呼ぶことがある。
【0033】
室内用通風路17において、内外気吸込部21の下流側、且つ、各モードドア30、40、50の上流側には室内用熱交換器5が設けられている。室内用熱交換器5は、室内用通風路17の内壁の一部から離れた位置に設けられている。そのため、室内用熱交換器5と室内用通風路17の内壁の一部との間には、バイパス通路25が形成されている。バイパス通路25は、室内用通風路17を流れる空気を、室内用熱交換器5を迂回させて各吹出開口部31、41、51に流す通路である。バイパス通路25の下流側は、フェイス通路42およびフット通路52に対して、デフロスタ通路32に近い位置に設けられている。また、本実施形態のバイパス通路25の下流側は、フット通路52に対して、フェイス通路42に近い位置に設けられている。
【0034】
バイパスドア15は、バイパス通路25を開閉するドアである。バイパスドア15は、
図2の矢印Aで示した範囲で移動することが可能である。バイパスドア15が
図2の破線Bの位置にあるとき、バイパス通路25が閉塞され、室内用熱交換器5が開放される。
【0035】
それに対し、バイパスドア15が
図2の破線Cの位置にあるとき、バイパス通路25が開放され、室内用熱交換器5の一部または全部が閉塞される。なお、図示は省略するが、バイパスドア15は、室内用熱交換器5の全部を閉塞可能な構成としてもよい。
【0036】
さらに、バイパスドア15は、
図2の実線Dで示した位置にあるとき、通路仕切部材として機能する。すなわち、通路仕切部材として機能する位置にあるバイパスドア15は、バイパス通路25を通過した空気をデフロスタ吹出開口部31へ導くと共に、室内用熱交換器5を通過した空気がデフロスタ吹出開口部31に流れることを抑制する。また、通路仕切部材として機能する位置にあるバイパスドア15は、室内用熱交換器5を通過した空気をフェイス吹出開口部41およびフット吹出開口部51の少なくとも1つに導くことが可能である。
【0037】
一方、バイパスドア15は、
図2の実線Dで示した位置を除く位置にあるとき、通路仕切部材として機能しない。バイパスドア15は、バイパス通路25を開き、且つ、
図2の実線Dで示した位置を除く位置にあるとき、バイパス通路25を通過した空気と室内用熱交換器5を通過した空気とが室内用通風路17内で混ざることを可能とする。
【0038】
<ヒートポンプシステム2の作動>
続いて、ヒートポンプシステム2の作動について、再び
図1を参照して説明する。
【0039】
本実施形態のヒートポンプシステム2は、第1四方弁4と第2四方弁7の動作により、冷房運転時と暖房運転時とで冷媒の流れる方向を切り替えることが可能である。
【0040】
冷房運転時に冷媒は、
図1の実線の矢印で示すように、圧縮機3→第1四方弁4→室外用熱交換器6→第2四方弁7→レシーバ8→可変絞り9→第2四方弁7→室内用熱交換器5→第1四方弁4→圧縮機3の順に流れる。それに対し、暖房運転時に冷媒は、
図1の破線の矢印で示すように、圧縮機3→第1四方弁4→室内用熱交換器5→第2四方弁7→レシーバ8→可変絞り9→第2四方弁7→室外用熱交換器6→第1四方弁4→圧縮機3の順に流れる。また、冷媒が流れる時は、室内用送風機12と室外用送風機13も作動し、室内用熱交換器5と室外用熱交換器6へ送風する。これらにより、冷房運転時に室内用熱交換器5は蒸発器として機能し、送風される空気を冷やして冷風を作る。また、暖房運転時に室内用熱交換器5は凝縮器として機能し、送風される空気を暖めて暖風を作る。一方、冷房運転時に室外用熱交換器6は凝縮器として機能し、送風される外気と冷媒とを熱交換して排熱を外気へ放出する。また、暖房運転時に室外用熱交換器6は蒸発器として機能し、送風される外気と冷媒とを熱交換して外気から冷媒へ吸熱する。
【0041】
<車両用空調装置1の作動>
次に、車両用空調装置1の作動について、
図3~
図8を参照して説明する。なお、
図3~
図8では、内外気吸込部21、室内用送風機12および室外用送風機13などの図示を省略している。
<フェイスモード>
フェイスモードを
図3に示す。フェイスモードでは、冷房運転が実施され、室内用熱交換器5は蒸発器として機能し、室外用熱交換器6は凝縮器として機能する。内外気吸込部21は、外気および内気を選択して室内用通風路17に吸い込む。室内用熱交換器5は、室内用通風路17を流れる空気を冷やして冷風を作る。フェイス通路開閉ドア40は、フェイス通路42を開いてフェイス吹出開口部41から車室内に冷風を吹き出す。
【0042】
圧縮機3の回転数を制御することで、冷媒流量を調整し、車室内へ吹き出す風の温度を調整することが可能である。さらに、
図3の矢印Aに示したように、バイパスドア15を開き、バイパスドア15の位置・開度を調整することで、バイパス通路25を流れる空気量と室内用熱交換器5を流れる空気量との比率を変えて、車室内へ吹き出す風の温度を調整することが可能である。
なお、室外用熱交換器6は凝縮器として機能し、排熱を車室外へ放出する。
【0043】
<バイレベルモード>
バイレベルモードを
図4に示す。バイレベルモードでは、暖房運転が実施され、室内用熱交換器5は凝縮器として機能し、室外用熱交換器6は蒸発器として機能する。内外気吸込部21は、外気および内気を選択して室内用通風路17に吸い込む。室内用熱交換器5は、室内用通風路17を流れる空気を暖めて暖風を作る。フェイス通路開閉ドア40とフット通路開閉ドア50はそれぞれの通路を開き、フェイス吹出開口部41とフット吹出開口部51から車室内に暖風を吹き出す。
【0044】
圧縮機3の回転数を制御することで、冷媒流量を調整し、車室内へ吹き出す風の温度を調整することが可能である。さらに、
図4の矢印Aに示したように、バイパスドア15を開き、バイパスドア15の位置・開度を調整することで、バイパス通路25を流れる空気量と室内用熱交換器5を流れる空気量との比率を変えて、車室内へ吹き出す風の温度を調整することが可能である。その場合、本実施形態のバイパス通路25の下流側は、フット通路52に対してフェイス通路42に近い位置に設けられているので、フェイス吹出開口部41から吹き出される風の温度よりもフット吹出開口部51から吹き出される風の温度を高くすることが可能である。
なお、室外用熱交換器6は蒸発器として機能し、送風される空気から冷媒へ吸熱する。
【0045】
<フットモード>
フットモードを
図5に示す。フットモードでは、暖房運転が実施され、室内用熱交換器5は凝縮器として機能し、室外用熱交換器6は蒸発器として機能する。内外気吸込部21は、外気および内気を選択して室内用通風路17に吸い込む。室内用熱交換器5は、室内用通風路17を流れる空気を暖めて暖風を作る。フット通路開閉ドア50はフット通路52を開き、フット吹出開口部51から車室内に暖風を吹き出す。
【0046】
圧縮機3の回転数を制御することで、冷媒流量を調整し、車室内へ吹き出す風の温度を調整することが可能である。さらに、
図5の矢印Aに示したように、バイパスドア15を開き、バイパスドア15の位置・開度を調整することで、バイパス通路25を流れる空気量と室内用熱交換器5を流れる空気量との比率を変えて、車室内へ吹き出す風の温度を調整することが可能である。
なお、室外用熱交換器6は蒸発器として機能し、送風される空気から冷媒へ吸熱する。
【0047】
<フット/デフロスタモード>
フット/デフロスタモードを
図6に示す。フット/デフロスタモードでは、暖房運転が実施され、室内用熱交換器5は凝縮器として機能し、室外用熱交換器6は蒸発器として機能する。内外気吸込部21は、外気を室内用通風路17に吸い込む。室内用熱交換器5は、室内用通風路17を流れる空気を暖めて暖風を作る。
【0048】
バイパスドア15は、バイパス通路25を開くと共に、通路仕切部材として機能する。すなわち、バイパスドア15は、バイパス通路25を通過した空気をデフロスタ吹出開口部31へ導くと共に、室内用熱交換器5を通過した空気がデフロスタ吹出開口部31に流れることを抑制する。また、バイパスドア15は、室内用熱交換器5を通過した空気をフット吹出開口部51に導く。
デフロスタ通路開閉ドア30はデフロスタ通路32を開き、デフロスタ吹出開口部31から外気を吹き出す。一方、フット通路開閉ドア50はフット通路52を開き、フット吹出開口部51から車室内に暖風を吹き出す。
【0049】
圧縮機3の回転数を制御することで、冷媒流量を調整し、フット吹出開口部51から車室内へ吹き出す風の温度を調整することが可能である。
なお、室外用熱交換器6は蒸発器として機能し、送風される空気から冷媒へ吸熱する。
【0050】
ここで、本実施形態のECU11は、室内用熱交換器5に保水される凝縮水の保水状態を検知または推測可能である。具体的には、冷房運転時の凝縮水発生量や、エアコンオフ時の凝縮水の蒸発量や排出量と時間との関係を実験的に求め、その関係をECU11に記憶された制御に組み込む。そして、ECU11は、冷房運転時間やエアコンオフ時間を検知して室内用熱交換器5の保水状態を推定する。ECU11は、室内用熱交換器5の保水状態が所定の閾値より少ない場合、バイパスドア15を閉じて、室内用熱交換器5を通った暖風をデフロスタ吹出開口部31へ送風してもよい。なお、所定の閾値は、室内用熱交換器5を通った暖風をデフロスタ吹出開口部31から吹き出したときに窓曇りが発生しない値として設定され、ECU11に記憶されている。
また、フェイス通路開閉ドア40を開いてフェイス吹出開口部41から風を吹き出してもよい。
【0051】
<デフロスタモード(保水時)>
室内用熱交換器5が凝縮水を保水している時のデフロスタモードを
図7に示す。この時のデフロスタモードは、上述したフット/デフロスタモードに対して、フット通路開閉ドア50がフット通路52を閉じている点が異なり、その他はフット/デフロスタモードと同じである。
【0052】
<デフロスタモード(保水していない時)>
室内用熱交換器5が凝縮水を保水していない時のデフロスタモードを
図8に示す。この時のデフロスタモードは、暖房運転が実施され、室内用熱交換器5は凝縮器として機能し、室外用熱交換器6は蒸発器として機能する。内外気吸込部21は、外気を室内用通風路17に吸い込む。室内用熱交換器5は、室内用通風路17を流れる空気を暖めて暖風を作る。バイパスドア15は、バイパス通路25を閉じる。デフロスタ通路開閉ドア30はデフロスタ通路32を開く。そのため、室内用熱交換器5で作られた暖風がデフロスタ吹出開口部31から吹き出される。
【0053】
圧縮機3の回転数を制御することで、冷媒流量を調整し、車室内へ吹き出す風の温度を調整することが可能である。さらに、バイパスドア15を開き、バイパスドア15の位置・開度を調整することで、バイパス通路25を流れる空気量と室内用熱交換器5を流れる空気量との比率を変えて、車室内へ吹き出す風の温度を調整することが可能である。
また、フェイス通路開閉ドア40を開いてフェイス吹出開口部41から風を吹き出してもよい。
なお、室外用熱交換器6は蒸発器として機能し、送風される空気から冷媒へ吸熱する。
【0054】
なお、上記で説明した各モードの作動は、乗員の操作により、フェイスモード時に暖房運転を実施することを妨げず、バイレベルモード、フットモード、フット/デフロスタモード、デフロスタモードで冷房運転を実施することを妨げない。また、乗員の操作によりフット/デフロスタモード、デフロスタモードで内外気吸込部21が内気を室内用通風路17に吸い込むことを妨げない。
【0055】
<第1実施形態の作用効果>
第1実施形態の車両用空調装置1は、次の作用効果を奏するものである。
(1)第1実施形態の車両用空調装置1は、蒸発器および凝縮器として使用可能な室内用熱交換器5を迂回して空気を流すバイパス通路25を備えている。通路仕切部材として機能するバイパスドア15は、バイパス通路25を通過した空気をデフロスタ吹出開口部31へ導くと共に、室内用熱交換器5を通過した空気がデフロスタ吹出開口部31に流れることを抑制可能である。
これによれば、室内用熱交換器5が保水状態のときにデフロスタモードを実施する場合、バイパス通路25を通過した空気をデフロスタ吹出開口部31へ導くと共に、室内用熱交換器5を通過した空気がデフロスタ吹出開口部31に流れることを抑制可能である。これにより、車両のカウル等からエンジンルーム内またはモータールーム内に取り込まれた外気がエンジンまたはモータの熱で昇温された後に空調ケース14内の室内用通風路17を流れる場合でも、その外気はバイパス通路25を経由してデフロスタ吹出開口部31から吹き出される。また、室内用熱交換器5を通過した空気がデフロスタ吹出開口部31に流れることが抑制される。そのため、バイパス通路25を流れる外気は絶対湿度が増加しないので、デフロスタ吹出開口部31から吹き出された風の温度がフロントウィンドシールドで外気温まで下がっても露点に至ることが無い。したがって、この車両用空調装置1は、室内用熱交換器5が保水状態にあるときにデフロスタモードを実施する場合でも、絶対湿度の低い外気を用いてフロントウィンドシールドの窓晴らしができる。
【0056】
(2)第1実施形態では、通路仕切部材は、バイパスドア15により構成される。そのバイパスドア15は、通路仕切部材として機能する位置と、通路仕切部材として機能しない位置とに移動可能である。
これによれば、バイパスドア15に通路仕切部材の機能を持たせることで、通路仕切部材が可動する構成となる。そのため、バイパスドア15がバイパス通路25を開放し、且つ、通路仕切部材として機能しない位置にあるとき、バイパス通路25と室内用熱交換器5をそれぞれ通過した空気を室内用通風路17内で混ぜることが可能である。したがって、室内用熱交換器5を通過する空気の温度を冷媒流量で調整し、さらに室内用熱交換器5とバイパス通路25をそれぞれ通過した空気を室内用通風路17内で混ぜることで、各吹出開口部31、41、51から吹き出される空調風の温度範囲を広げることができる。
なお、室内用熱交換器5を流れる冷媒流量は、ヒートポンプシステム2が備える圧縮機3の回転数に下限値があるので、冷媒流量のみで調整可能な吹出温度範囲にも限界がある。それに対し、室内用熱交換器5とバイパス通路25をそれぞれ通過した空気を室内用通風路17内で混ぜることで、吹出温度範囲をより広げることができる。
【0057】
(3)第1実施形態では、バイパスドア15は、バイパス通路25を開くと共に、バイパス通路25を通過した空気と室内用熱交換器5を通過した空気とが室内用通風路17内で混ざることを可能とする位置に移動することが可能である。
これによれば、ヒートポンプシステム2を循環する冷媒流量の調整により室内用熱交換器5を通過する空気の温度を調整し、さらに室内用熱交換器5とバイパス通路25をそれぞれ通過した空気を室内用通風路17内で混ぜることが可能となる。したがって、各吹出開口部31、41、51から吹き出される空調風の温度範囲を広げることができる。
【0058】
(4)第1実施形態では、バイパスドア15は、バイパス通路25を開き、バイパス通路25を通過した空気をデフロスタ吹出開口部31へ導くと共に、室内用熱交換器5を通過した空気をフェイス吹出開口部41およびフット吹出開口部51の少なくとも1つに導く位置に移動することが可能である。
これによれば、フット/デフロスタモード等において、室内用熱交換器5が保水状態のときでも、フロントウィンドシールドの窓晴らしと足元暖房が可能であり、さらに、室内用熱交換器5を早期に乾かすことができる。
【0059】
(5)第1実施形態では、ECU11は、デフロスタモード等において、室内用熱交換器5の保水状態が所定の閾値より多い場合、バイパスドア15がバイパス通路25を開き、且つ、通路仕切部材として機能する位置にバイパスドア15を駆動する。
これによれば、室内用熱交換器5が保水状態のときでも、外気をバイパス通路25を経由してデフロスタ吹出開口部31から吹き出すことで、フロントウィンドシールドの窓晴らしができる。
【0060】
(6)第1実施形態では、ECU11は、デフロスタモード等において、室内用熱交換器5の保水状態が所定の閾値より少ない場合、バイパスドア15を閉じて、室内用熱交換器5を通った暖風をデフロスタ吹出開口部31へ送風する。
これによれば、室内用熱交換器5に保水されていないとき、室内用熱交換器5を通った暖風をデフロスタ吹出開口部31から吹き出すことで、フロントウィンドシールドの窓晴らしを短時間できる。
【0061】
(7)第1実施形態では、ECU11は、デフロスタモード等において、室内用熱交換器5の保水状態が所定の閾値より多い場合、バイパス通路25に外気が流れるよう内外気吸込部21の駆動を制御する。
これによれば、室内用熱交換器5が保水状態のときでも、内外気吸込部21から吸い込んだ外気をバイパス通路25を経由してデフロスタ吹出開口部31から吹き出すことにより、フロントウィンドシールドの窓晴らしができる。
【0062】
(8)第1実施形態では、バイパス通路25の下流側は、フット通路52に対して、フェイス通路42に近い位置に設けられている。
これによれば、バイパスドア15がバイパス通路25を通過した外気と室内用熱交換器5を通過した空気とが混ざることの可能な位置に移動した際、その混ざった空気は、フット吹出開口部51に比べて、フェイス吹出開口部41からより多く吹き出される。そのため、冬季等に室内用熱交換器5を凝縮器として使用し、バイレベルモードを実施した場合、頭寒足熱となる吹出温度が実現できる。
【0063】
(第2実施形態)
第2実施形態について説明する。第2実施形態は、第1実施形態に対して車両用空調装置1の構成の一部を変更したものであり、その他については第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0064】
図9に示すように、第2実施形態では、バイパス通路25、フェイス通路42、フット通路52、デフロスタ通路32などの位置が第1実施形態と異なっている。第2実施形態では、バイパス通路25の下流側は、フェイス通路42に対して、フット通路52に近い位置に設けられている。また、バイパス通路25の下流側は、フェイス通路42およびフット通路52に対して、デフロスタ通路32に近い位置に設けられている。
【0065】
第2実施形態では、夏季などのバイレベルモードにおいて、第1実施形態とは異なる作用効果を奏するものである。
図9は、バイレベルモードを示している。夏季などのバイレベルモードでは、冷房運転が実施され、室内用熱交換器5は蒸発器として機能し、室外用熱交換器6は凝縮器として機能する。内外気吸込部21は、外気および内気を選択して室内用通風路17に吸い込む。室内用熱交換器5は、室内用通風路17を流れる空気を冷やして冷風を作る。フェイス通路開閉ドア40とフット通路開閉ドア50はそれぞれの通路を開き、フェイス吹出開口部41とフット吹出開口部51から車室内に暖風を吹き出す。
【0066】
圧縮機3の回転数を制御することで、冷媒流量を調整し、車室内へ吹き出す風の温度を調整することが可能である。さらに、
図9の矢印Aに示したように、バイパスドア15を開き、バイパスドア15の位置・開度を調整することで、バイパス通路25を流れる空気量と室内用熱交換器5を流れる空気量との比率を変えて、車室内へ吹き出す風の温度を調整することが可能である。その場合、第2実施形態では、バイパス通路25の下流側は、フェイス通路42に対してフット通路52に近い位置に設けられているので、フェイス吹出開口部41から吹き出される風よりもフット吹出開口部51から吹き出される風の温度を高くすることが可能である。
なお、室外用熱交換器6は凝縮器として機能し、排熱を車室外へ放出する。
【0067】
以上説明した第2実施形態の車両用空調装置1は、第1実施形態で説明した作用効果に加え、次の作用効果を奏する。
第2実施形態では、バイパス通路25の下流側が、フェイス通路42に対して、フット通路52に近い位置に設けられている。
これによれば、バイパスドア15がバイパス通路25を通過した車室外空気と室内用熱交換器5を通過した空気とが混ざることの可能な位置に移動した際、その混ざった空気は、フェイス吹出開口部41に比べて、フット吹出開口部51からより多く吹き出される。そのため、夏季等に室内用熱交換器5を蒸発器として使用し、空調風を冷やしたバイレベルモードを実施した場合、頭寒足熱となる吹出温度が実現できる。
【0068】
(第3実施形態)
第3実施形態について説明する。第3実施形態も、第1実施形態等に対して車両用空調装置1の構成の一部を変更したものであり、その他については第1実施形態等と同様であるため、第1実施形態等と異なる部分についてのみ説明する。
【0069】
図10に示すように、第3実施形態の車両用空調装置1は、室内用通風路17を2層に仕切る仕切壁35を備えている。室内用通風路17は、仕切壁35によって、第1室内用通風路171と第2室内用通風路172とに仕切られている。仕切壁35の下流側の端部351は、室内用熱交換器5のうちバイパス通路25側の外縁に合わせて配置されている。そのため、第1室内用通風路171を流れる風はバイパス通路25に導かれ、第2室内用通風路172を流れる風は室内用熱交換器5に導かれる。
【0070】
内外気吸込部21は、外気と内気を選択的に室内用通風路17に吸い込むことの可能な構成となっている。具体的に、内外気吸込部21は、第1室内用通風路171に外気を導入し、第2室内用通風路172に内気を導入することが可能である。
【0071】
図10は、フット/デフロスタモードを示している。フット/デフロスタモードでは、暖房運転が実施され、室内用熱交換器5は凝縮器として機能し、室外用熱交換器6は蒸発器として機能する。内外気吸込部21は、第1室内用通風路171に外気を導入し、第2室内用通風路172に内気を導入するモードを実施可能である。室内用熱交換器5は、第2室内用通風路172を流れる空気を暖めて暖風を作る。
【0072】
バイパスドア15は、バイパス通路25を開くと共に、通路仕切部材として機能する。すなわち、バイパスドア15は、バイパス通路25を通過した空気をデフロスタ吹出開口部31へ導くと共に、室内用熱交換器5を通過した空気がデフロスタ吹出開口部31に流れることを抑制する。また、バイパスドア15は、室内用熱交換器5を通過した空気をフット吹出開口部51に導く。
デフロスタ通路開閉ドア30はデフロスタ通路32を開き、デフロスタ吹出開口部31から外気を吹き出す。一方、フット通路開閉ドア50はフット通路52を開き、フット吹出開口部51から暖風を吹き出す。
【0073】
圧縮機3の回転数を制御することで、冷媒流量を調整し、フット吹出開口部51から車室内へ吹き出す風の温度を調整することが可能である。
なお、室外用熱交換器6は蒸発器として機能し、送風される空気から冷媒へ吸熱する。
【0074】
なお、ECU11は、室内用熱交換器5の保水状態が所定の閾値より少ない場合、バイパスドア15を閉じて、室内用熱交換器5を通った暖風をデフロスタ吹出開口部31へ送風してもよい。
また、フェイス通路開閉ドア40を開いてフェイス吹出開口部41から風を吹き出してもよい。
【0075】
以上説明した第3実施形態の車両用空調装置1は、第1実施形態で説明した作用効果に加え、次の作用効果を奏する。
第3実施形態の車両用空調装置1は、室内用通風路17を2層に仕切る仕切壁35を備えている。仕切壁35は、内外気吸込部21から吸い込まれた外気をバイパス通路25に導き、内外気吸込部21から吸い込まれた内気を室内用熱交換器5に導くことが可能である。
これによれば、室内用熱交換器5の保水状態が所定の閾値より多い場合でも、フロントウィンドシールドの窓晴らしと、足元暖房が可能である。また、内気の循環により暖房効率を高め、足元の吹出温度を上昇させることが可能となる。
【0076】
(第4実施形態)
第4実施形態について説明する。第4実施形態は、第2実施形態に対して車両用空調装置1の構成の一部を変更したものであり、その他については第2実施形態と同様であるため、第2実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0077】
図11に示すように、第4実施形態の車両用空調装置1は、室外用通風路16と室内用通風路17とを区画する隔壁18の一部に通風路開口部36と通風路開閉ドア37を備えている。通風路開口部36は、室内用熱交換器5の下流側、且つ、各吹出開口部31、41、51の上流側に設けられている。通風路開口部36は、室内用通風路17と室外用通風路16とを連通する穴である。通風路開閉ドア37は、通風路開口部36を開閉するドアである。そのため、通風路開閉ドア37が通風路開口部36を開くと、室内用熱交換器5を通過した空気を室内用通風路17から室外用通風路16を経由して車室外に排出することが可能である。
【0078】
図11は、室内用熱交換器5が保水状態の時のデフロスタモード示している。このデフロスタモードでは、暖房運転が実施され、室内用熱交換器5は凝縮器として機能し、室外用熱交換器6は蒸発器として機能する。内外気吸込部21は、外気を室内用通風路17に吸い込む。室内用熱交換器5は、室内用通風路17を流れる空気を暖めて暖風を作る。
【0079】
バイパスドア15は、バイパス通路25を開くと共に、通路仕切部材として機能する。すなわち、バイパスドア15は、バイパス通路25を通過した空気をデフロスタ吹出開口部31へ導くと共に、室内用熱交換器5を通過した空気がデフロスタ吹出開口部31に流れることを抑制する。
デフロスタ通路開閉ドア30はデフロスタ通路32を開き、デフロスタ吹出開口部31から外気を吹き出す。一方、フット通路開閉ドア50とフェイス通路開閉ドア40は閉じている。
【0080】
さらに、通風路開閉ドア37は通風路開口部36を開いている。そのため、室内用熱交換器5を通過して絶対湿度が高くなった空気は、室内用通風路17から室外用通風路16を経由して車室外に排出される。
【0081】
なお、室外用熱交換器6は蒸発器として機能し、送風される空気から冷媒へ吸熱する。
【0082】
以上説明した第4実施形態の車両用空調装置1は、第1、第2実施形態で説明した作用効果に加え、次の作用効果を奏する。
第4実施形態の車両用空調装置1は、通風路開口部36と通風路開閉ドア37を備えている。
これによれば、室内用熱交換器5が保水状態のときにデフロスタモードを実行する場合、室内用熱交換器5を凝縮器として作動させると共に、通風路開閉ドア37を開くことで、室内用熱交換器5を通過して絶対湿度が高くなった空気を車室外に排出することが可能である。したがって、室内用熱交換器5を早期に乾かすことができる。
【0083】
(他の実施形態)
(1)上記各実施形態では、通路仕切部材はバイパスドア15により構成されるものとして説明したが、それに限らず、例えば、通路仕切部材とバイパスドア15とを別部材で構成してもよい。
【0084】
(2)上記各実施形態では、車両用空調装置1が備えるバイパスドア15、吸込部開閉ドア24および各モードドア30、40、50を片開き式ドアまたは回転式ドアとして説明したが、それに限らず、例えば、それらのドアは、スライドドアなどでもよい。
【0085】
(3)上記各実施形態では、車両用空調装置1が備える空調ケース14は、室外用通風路16と室内用通風路17とを形成するものとして説明したが、それに限らず、例えば、空調ケース14は、室内用通風路17のみを形成するものであってもよい。
【0086】
(4)上記各実施形態では、ヒートポンプシステム2の備える圧縮機3は、冷媒吸込口3aから吸い込んだ冷媒を圧縮し、冷媒吐出口3bから吐出するものとして説明したが、それに限らない。例えば、圧縮機3は、一方の開口部から吸い込んだ冷媒を他方の開口部から吐出可能であり、且つ、他方の開口部から吸い込んだ冷媒を一方の開口部から吐出可能な両回転式圧縮機でもよい。その場合、第1四方弁4は不要となる。
【0087】
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。また、上記各実施形態およびその一部は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されるものではない。
【0088】
本発明に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリーを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本発明に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本発明に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリーと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【0089】
本発明の特徴は次のとおりである。
[請求項1]
車両用空調装置であって、
車室外空気および車室内空気が流れる室内用通風路(17)を形成する空調ケース(14)と、
前記室内用通風路から車両のフロントウィンドシールドに向けて吹き出される空気が流れるデフロスタ吹出開口部(31)と、
前記室内用通風路から乗員の上半身に向けて吹き出される空気が流れるフェイス吹出開口部(41)と、
前記室内用通風路から乗員の下半身に向けて吹き出される空気が流れるフット吹出開口部(51)と、
前記室内用通風路内に設けられ、冷媒流路を流れる冷媒と車室外空気および車室内空気との熱交換により、前記冷媒を蒸発させる蒸発器および前記冷媒を凝縮させる凝縮器として使用可能な室内用熱交換器(5)と、
前記室内用通風路の一部に形成され、前記室内用熱交換器を迂回して車室外空気および車室内空気が流れるバイパス通路(25)と、
前記バイパス通路を通過した空気を前記デフロスタ吹出開口部へ導くと共に、前記室内用熱交換器を通過した空気が前記デフロスタ吹出開口部に流れることを抑制可能な通路仕切部材と、を備える車両用空調装置。
[請求項2]
前記通路仕切部材は、前記バイパス通路を開閉するバイパスドア(15)により構成され、
前記バイパスドアは、前記通路仕切部材として機能する位置と、前記通路仕切部材として機能しない位置とに移動可能である、請求項1に記載の車両用空調装置。
[請求項3]
前記バイパスドアは、前記バイパス通路を開くと共に、前記バイパス通路を通過した空気と前記室内用熱交換器を通過した空気とが前記室内用通風路内で混ざることを可能とする位置に移動することが可能である、請求項2に記載の車両用空調装置。
[請求項4]
前記バイパスドアは、前記バイパス通路を開き、前記バイパス通路を通過した空気を前記デフロスタ吹出開口部へ導くと共に、前記室内用熱交換器を通過した空気を前記フェイス吹出開口部および前記フット吹出開口部の少なくとも1つに導く位置に移動することが可能である、請求項2または3に記載の車両用空調装置。
[請求項5]
前記室内用熱交換器に保水される凝縮水の保水状態を検知または推測可能であると共に、前記バイパスドアの駆動を制御する電子制御装置(11)をさらに備え、
前記電子制御装置は、前記デフロスタ吹出口から風を吹き出すモードを実行するとき、前記室内用熱交換器の保水状態が所定の閾値より多い場合、前記バイパスドアが前記バイパス通路を開き、且つ、前記通路仕切部材として機能する位置に前記バイパスドアを駆動する、請求項2ないし4のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
[請求項6]
前記電子制御装置は、前記デフロスタ吹出口から風を吹き出すモードを実行するとき、前記室内用熱交換器の保水状態が所定の閾値より少ない場合、前記バイパスドアが前記バイパス通路を閉じる位置に前記バイパスドアを駆動する、請求項5に記載の車両用空調装置。
[請求項7]
車室外空気および車室内空気を前記室内用通風路に選択的に吸い込むことの可能な内外気吸込部(21)をさらに備え、
前記電子制御装置は、前記デフロスタ吹出口から風を吹き出すモードを実行するとき、前記室内用熱交換器の保水状態が所定の閾値より多い場合、前記バイパス通路に車室外空気が流れるよう前記内外気吸込部の駆動を制御する、請求項5または6に記載の車両用空調装置。
[請求項8]
前記室内用通風路を2層に仕切る仕切壁(35)をさらに備え、
前記仕切壁は、前記内外気吸込部から吸い込まれた車室外空気を前記バイパス通路に導き、前記内外気吸込部から吸い込まれた車室内空気を前記室内用熱交換器に導くことが可能である、請求項7に記載の車両用空調装置。
[請求項9]
前記室内用熱交換器の下流側、且つ、前記デフロスタ吹出開口部、前記フェイス吹出開口部および前記フット吹出開口部の上流側に設けられ、前記室内用熱交換器を通過した空気を前記室内用通風路から車室外に排出することの可能な通風路開口部(36)と、
前記通風路開口部を開閉する通風路開閉ドア(37)をさらに備える、請求項1ないし8のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
[請求項10]
前記バイパス通路の下流側は、前記フット吹出開口部に通じるフット通路(52)に対して、前記フェイス吹出開口部に通じるフェイス通路(42)に近い位置に設けられている、請求項1ないし9のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
[請求項11]
前記バイパス通路の下流側は、前記フェイス吹出開口部に通じるフェイス通路(42)に対して、前記フット吹出開口部に通じるフット通路(52)に近い位置に設けられている、請求項1ないし9のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【符号の説明】
【0090】
1 車両用空調装置
5 室内用熱交換器
14 空調ケース
15 バイパスドア(通路仕切部材)
17 室内用通風路
25 バイパス通路
31 デフロスタ吹出開口部
41 フェイス吹出開口部
51 フット吹出開口部