(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110795
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】蓄電デバイス及び蓄電デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/058 20100101AFI20240808BHJP
H01M 10/04 20060101ALI20240808BHJP
H01M 50/533 20210101ALI20240808BHJP
H01M 50/534 20210101ALI20240808BHJP
H01G 11/84 20130101ALI20240808BHJP
H01G 11/70 20130101ALI20240808BHJP
【FI】
H01M10/058
H01M10/04 Z
H01M50/533
H01M50/534
H01G11/84
H01G11/70
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023015603
(22)【出願日】2023-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】月ヶ瀬 あずさ
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 徹
(72)【発明者】
【氏名】奥田 匠昭
【テーマコード(参考)】
5E078
5H028
5H029
5H043
【Fターム(参考)】
5E078AA01
5E078AB01
5E078AB02
5E078AB03
5E078FA03
5E078FA22
5E078FA23
5E078LA07
5H028AA05
5H028CC08
5H028CC17
5H029AJ03
5H029AK01
5H029AK02
5H029AK03
5H029AL03
5H029AL06
5H029AL07
5H029AM02
5H029AM03
5H029AM04
5H029AM05
5H029AM07
5H029BJ06
5H029BJ16
5H029DJ05
5H029HJ12
5H043AA16
5H043BA19
5H043CA15
5H043EA35
5H043EA36
5H043EA37
5H043KA44E
5H043LA21E
(57)【要約】
【課題】柱状電極を備えた蓄電デバイスにおいて、容量を確保しつつ、単位体積あたりのエネルギー密度をより向上する。
【解決手段】蓄電デバイスは、電極活物質を含む柱状電極と、柱状電極の外周側に形成され絶縁性とイオン伝導性とを有する分離膜と、分離膜の外周側に形成され対極活物質を含む対極とを備えた柱状電池体を所定方向に配列した配列体と、配列体の配列方向に沿う配列面に接触する導電部と、を備え、2つの配列体の間に導電部が挟み込まれている2層体を複数積層した構造を含む積層体を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極活物質を含む柱状電極と、前記柱状電極の外周側に形成され絶縁性とイオン伝導性とを有する分離膜と、前記分離膜の外周側に形成され対極活物質を含む対極とを備えた柱状電池体を所定方向に配列した配列体と、
前記配列体の配列方向に沿う配列面に接触する導電部と、を備え、
2つの前記配列体の間に前記導電部が挟み込まれている2層体を複数積層した構造を含む積層体を有する、蓄電デバイス。
【請求項2】
前記導電部は、前記配列面に接触するシート状の部材である、請求項1に記載の蓄電デバイス。
【請求項3】
前記導電部は、平滑な表面又は梨地状の表面を有し、表面に貫通孔を有してもよい、請求項1又は2に記載の蓄電デバイス。
【請求項4】
前記導電部は、厚さが5μm以上10μm以下の範囲である、請求項1又は2に記載の蓄電デバイス。
【請求項5】
前記導電部は、前記積層体の最外面には配設されていない、請求項1又は2に記載の蓄電デバイス。
【請求項6】
前記導電部は、前記積層体の最外面にも配設されている、請求項1又は2に記載の蓄電デバイス。
【請求項7】
前記2層体の間には前記導電部が挟み込まれていない、請求項1又は2に記載の蓄電デバイス。
【請求項8】
前記導電部は、その表面に導電材がコートされている、請求項1又は2に記載の蓄電デバイス。
【請求項9】
電極活物質を含む柱状電極と、前記柱状電極の外周側に形成され絶縁性とイオン伝導性とを有する分離膜と、前記分離膜の外周側に形成され対極活物質を含む対極とを備えた柱状電池体を所定方向に配列した配列体と、前記配列体の配列方向に沿う一方の配列面に接触する導電部とを有し、2つの前記配列体の間に前記導電部が挟み込まれている2層体を得る2層体工程と、
前記2層体を複数積層した構造を含む積層体を得る積層工程と、
を含む蓄電デバイスの製造方法。
【請求項10】
前記積層工程では、前記2層体の間には前記導電部が挟み込まれていない前記積層体を得る、請求項9に記載の蓄電デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、蓄電デバイス及び蓄電デバイスの製造方法を開示する。
【背景技術】
【0002】
従来、蓄電デバイスである、エネルギー密度の高い二次電池としては、複数の柱状電極と、各柱状電極の周囲を囲うように設けられた分離膜と、隣合う分離膜同士の間を埋めるように設けられた正極とを備えたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この二次電池は、分離膜で周囲を囲われた柱状電極が正極内に配置された構造を有する。また、蓄電デバイスとしては、活物質を含む繊維状の第1電極と、複数の繊維状の第1電極の間に存在し活物質を含む第2電極と、イオン伝導性を有し第1電極を被覆しており第1電極と第2電極とを絶縁する分離膜と、を備え、複数の繊維状の第1電極は所定方向に配列されており、第1電極の直径Dと分離膜の厚さLとの比D/Lが3.3以上である構造を有するものが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-152229号公報
【特許文献2】特開2019-160733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1、2のような柱状電極を備えた蓄電デバイスでは、対極の集電が十分でなく、理論的な容量を十分発揮することができないことがあった。また、蓄電デバイス内に集電体を追加すると、体積あたりのエネルギー密度が低下することがあった。このように、柱状電極を備えた蓄電デバイスにおいて、適切な容量を確保しつつ、単位体積あたりのエネルギー密度をより向上することが求められていた。
【0005】
本開示は、このような課題に鑑みなされたものであり、柱状電極を備えた蓄電デバイスにおいて、容量を確保しつつ、単位体積あたりのエネルギー密度をより向上することができる蓄電デバイス及び蓄電デバイスの製造方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した目的を達成するために鋭意研究したところ、本発明者らは、柱状電池の配列体の間に適切な間隔で導電部を配置すると、蓄電デバイスの容量を確保しつつ、単位体積あたりのエネルギー密度をより向上することができることを見いだし、本明細書で開示する発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本明細書で開示する蓄電デバイスは、
電極活物質を含む柱状電極と、前記柱状電極の外周側に形成され絶縁性とイオン伝導性とを有する分離膜と、前記分離膜の外周側に形成され対極活物質を含む対極とを備えた柱状電池体を所定方向に配列した配列体と、
前記配列体の配列方向に沿う配列面に接触する導電部と、を備え、
2つの前記配列体の間に前記導電部が挟み込まれている2層体を複数積層した構造を含む積層体を有するものである。
【0008】
本開示の蓄電デバイスの製造方法は、
電極活物質を含む柱状電極と、前記柱状電極の外周側に形成され絶縁性とイオン伝導性とを有する分離膜と、前記分離膜の外周側に形成され対極活物質を含む対極とを備えた柱状電池体を所定方向に配列した配列体と、前記配列体の配列方向に沿う一方の配列面に接触する導電部とを有し、2つの前記配列体の間に前記導電部が挟み込まれている2層体を得る2層体工程と、
前記2層体を複数積層した構造を含む積層体を得る積層工程と、
を含むものである。
【発明の効果】
【0009】
本開示は、柱状電極を有する蓄電デバイスにおいて、容量を確保しつつ、単位体積あたりのエネルギー密度をより向上することができる。このような効果が得られる理由は、以下のように推察される。例えば、この蓄電デバイスでは、柱状電池体を所定方向に配列した2つの配列体の間に導電部が挟み込まれた2層体が、複数積層された構造を有する。この蓄電デバイスでは、配列体の一方の配列面にだけ導電部を設けることによって、対極の集電を向上して容量を確保すると共に、過剰な導電部の配設をより抑制することによって、エネルギー密度をより向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】別の蓄電デバイス10Bの一例を示す説明図。
【
図3】別の導電部21B、21C、21Dの一例を示す説明図。
【
図4】蓄電デバイス10,10Bの製造方法の一例を示す説明図。
【
図6】実験例1~4の放電電流に対する放電容量の関係図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(蓄電デバイス)
実施形態で説明する本開示の蓄電デバイスは、複数の柱状電極と、分離膜と、対極と、導電部とを備えている。この蓄電デバイスは、柱状電極に電気的に接続された電極集電体を備えているものとしてもよいし、対極や導電部に電気的に接続された対極集電体を備えているものとしてもよい。この蓄電デバイスは、例えば、電気二重層キャパシタやハイブリッドキャパシタ、疑似電気二重層キャパシタ、アルカリ金属二次電池、アルカリ金属イオン電池などとしてもよい。蓄電デバイスのキャリアイオンは、リチウムイオンやナトリウムイオン、カリウムイオンなどのアルカリ金属イオンやマグネシウムイオンやストロンチウムイオン、カルシウムイオンなどの第2族イオンなどが挙げられる。また、対極は、柱状電極の周りに存在するものとしてもよいし、柱状電極の間の空間に充填されているものとしてもよい。また、この蓄電デバイスは、分離膜を介して対極と隣り合う状態で複数の柱状電極が結束された構造を有するものとしてもよい。更に、この蓄電デバイスは、柱状電極、対極及び分離膜のうち1以上に電解液を含むものとしてもよい。柱状電極には、集電線などの集電部材が埋設されているものとしてもよいし、この集電部材を備えないものとしてもよい。更にまた、柱状電極は、対極との電位の関係で正極としてもよいし、負極としてもよいが、負極とすることが好ましい。対極も同様であり、正極としてもよいし、負極としてもよいが、正極とすることが好ましい。ここでは、説明の便宜のため、柱状電極を負極とし、対極を正極とし、リチウムイオンをキャリアとするリチウムイオン二次電池をその主たる一例として以下説明する。
【0012】
ここで、本実施形態で開示する蓄電デバイスについて図面を用いて説明する。
図1は、蓄電デバイス10の一例を示す説明図である。
図2は、別の蓄電デバイス10Bの一例を示す説明図である。
図3は、別の導電部21B、21C、21Dの一例を示す説明図である。
図2では、
図1と同様の構成については同じ符号を付した。蓄電デバイス10は、柱状電極12と、分離膜15と、対極16と、導電部21と、電極集電体25と、対極集電体26とを備えている。単セル11は、柱状電極12と、分離膜15と、対極16とにより構成されている。この蓄電デバイス10は、電極活物質を含む柱状電極12と、柱状電極12の周りに分離膜15を介して形成された対極活物質を含む対極16とを備えている。この蓄電デバイス10は、分離膜15及び対極16が形成された柱状電極12を含む柱状電池体としての単セル11を所定方向に複数配列した配列体30を含むものとしてもよい。更に、蓄電デバイス10は、2つの配列体30の間に導電部21が挟み込まれている2層体32を複数積層した構造を含む積層体41を有する。積層体41において、2層体32の間には導電部21が挟み込まれていないものとする。なお、配列体30の一方の配列面33に導電部21を配設した構造体を1層体31と称する。蓄電デバイス10Bは、2層体32を複数積層した積層体41の最外の配列面33に配列体30が対向した状態で1層体31を積層した構造を含む積層体41Bを有する。蓄電デバイス10Bは、2層体32が積層された最外面の配列面33に1層体31が積層された構造を有する以外は蓄電デバイス10と同じであるので、蓄電デバイス10の説明を主として行い、その詳細な説明を省略する。積層体41、積層体41Bは、積層体と総称する。なお、
図1~5では、便宜的に、配列体30に含まれる単セル11の外形を円柱状で示しているが、プレス成形後には単セル11の外形がなくなることがあり、配列体30では、単セル11の外形が失われ、柱状電極12の間に対極16が充填された構造を有するものとしてもよい。
【0013】
柱状電極12は、電極活物質を含む柱状の部材である。ここで、「柱状」とは、屈曲しない太さのもののほか、屈曲可能な繊維状の太さのものも含むものとする。この柱状電極12は、柱状であればよく、その断面は円形であってもよいし、多角形であってもよい。蓄電デバイス10では、複数の柱状電極12が所定方向に間隔を開けて配列された構造を有する。柱状電極12は、電極集電体25に接続される端部以外の外周が分離膜15に覆われている。例えば、柱状電極12は、n個が電極集電体25に並列接続されているものとしてもよい。この柱状電極12は、長手方向に垂直な断面の直径Dが5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましく、15μm以上や30μm以上であるものとしてもよい。また、柱状電極12の直径Dは、800μm以下であることが好ましく、500μm以下であることがより好ましく、400μm以下であるものとしてもよい。この直径Dが5μm以上では、電極構造体としての強度を担保することができ安定した充放電ができる。また、この直径Dが800μm以下ではキャリアのイオンの移動距離が長くなりすぎず、高出力性能が得られる。また、この直径Dが10~500μmの範囲では、単位体積あたりのエネルギー密度をより高めることができる。あるいは、この範囲では、キャリアのイオンの移動距離をより短くすることができ、より大きな電流で充放電を行うことができる。この柱状体の長手方向の長さは、蓄電デバイスの用途などに応じて適宜定めることができ、例えば、20mm以上200mm以下の範囲などとしてもよい。柱状体の長さが20mm以上では、電池容量をより高めることができ好ましく、200mm以下では、負極の電気抵抗をより低減することができ好ましい。
【0014】
柱状電極12は、電極活物質としての炭素材料を含むものが好ましく、電極活物質として炭素繊維14の束及び炭素材料の一体物のうちいずれか1以上であるものとしてもよい。炭素材料は、導電性が高く、柱状電極12として好ましい。炭素材料としては、例えば、グラファイト類や、コークス類、ガラス状炭素類、難黒鉛化性炭素類、熱分解炭素類のうち1以上が挙げられる。このうち、人造黒鉛、天然黒鉛などのグラファイト類が好ましい。また、グラファイト構造を有する炭素繊維14としてもよい。このような炭素繊維14は、例えば、繊維方向である長手方向に結晶が配向したものが好ましい。また、長手方向(繊維方向)に直交する方向に断面視したときに結晶が中心から外周面側に放射状に配向したものであることが好ましい。炭素繊維14の直径dは、例えば、5μm以上としてもよいし、7μm以上としてもよいし、10μm以上としてもよい。また、炭素繊維11の直径dは、50μm以下の範囲としてもよいし、25μm以下としてもよいし、20μm以下としてもよい。柱状電極12は、複数の炭素繊維14を撚糸して得られたものとしてもよいし、複数の炭素繊維14を結着材により結着させたものとしてもよい。結着材は、キャリアイオンの伝導性を有するものが好ましく、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)や、PVdFとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体(PVdF-HFP)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、及びPMMAとアクリルポリマーとの共重合体などが挙げられる。また、柱状電極12は、炭素材料の原料を柱状に成形したものを炭素化した一体物としてもよいし、炭化した炭素材料を結着材などで固形化したものとしてもよい。
【0015】
あるいは、柱状電極12は、キャリアのイオンを吸蔵放出可能な複合酸化物を柱状体に成形したものとしてもよい。複合酸化物としては、例えば、リチウムチタン複合酸化物やリチウムバナジウム複合酸化物などが挙げられる。この複合酸化物からなる負極は、その表面の少なくとも一部に導電成分が形成されているものとしてもよい。この導電成分により、導電性をより高めることができる。この導電成分は、導電性の高い材料であれば特に限定されないが、例えば、金属としてもよい。
【0016】
分離膜15は、キャリアイオン(例えばリチウムイオン)のイオン伝導性を有し柱状電極12と対極16とを絶縁するものであり、柱状電極12の外周側に設けられている。分離膜15は、対極16と対向する柱状電極12の外周面の全体に形成されており、柱状電極12と対極16との短絡を防止している。この分離膜15は、例えば、樹脂を含む原料溶液から自立膜を作製し、柱状電極12の表面をこの自立膜で被覆させることにより形成されてもよいし、原料溶液へ柱状電極12を浸漬させてその表面にコートすることにより形成されるものとしてもよい。この分離膜15の樹脂としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)や、PVdFとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体(PVdF-HFP)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、及びPMMAとアクリルポリマーとの共重合体などが挙げられる。例えば、PVdFとHFPとの共重合体では、電解液の一部がこの膜を膨潤ゲル化し、イオン伝導膜となる。この分離膜15の厚さは、例えば、2μm以上であることが好ましく、5μm以上であることがより好ましく、8μm以上であるものとしてもよい。この厚さが2μm以上では、絶縁性を確保する上で好ましい。特に、分離膜15の厚さが2μm以上であれば、作製しやすい。また、分離膜15の厚さは、15μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましい。この厚さが15μm以下では、イオン伝導性の低下を抑制できる点や、セルに占める体積をより低減する上で好ましい。分離膜15の厚さが2~15μmの範囲では、イオン伝導性及び絶縁性が好適である。
【0017】
分離膜15は、キャリアであるイオンを伝導する電解液を含むものとしてもよい。この電解液は、例えば、非水系溶媒などが挙げられる。電解液の溶媒としては、例えば、非水電解液の溶媒などが挙げられる。この溶媒としては、例えば、カーボネート類、エステル類、エーテル類、ニトリル類、フラン類、スルホラン類及びジオキソラン類などが挙げられ、これらを単独又は混合して用いることができる。具体的には、カーボネート類としてエチレンカーボネート(EC)やプロピレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ブチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネートなどの環状カーボネート類や、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート、エチル-n-ブチルカーボネート、メチル-t-ブチルカーボネート、ジ-i-プロピルカーボネート、t-ブチル-i-プロピルカーボネートなどの鎖状カーボネート類、γ-ブチルラクトン、γ-バレロラクトンなどの環状エステル類、ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酪酸メチルなどの鎖状エステル類、ジメトキシエタン、エトキシメトキシエタン、ジエトキシエタンなどのエーテル類、アセトニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル類、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、などのフラン類、スルホラン、テトラメチルスルホランなどのスルホラン類、1,3-ジオキソラン、メチルジオキソランなどのジオキソラン類などが挙げられる。この電解液には、蓄電デバイス10のキャリアであるイオンを含む支持塩を溶解したものとしてもよい。支持塩としては、例えば、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2、LiC(CF3SO2)3、LiSbF6、LiSiF6、LiAlF4、LiSCN、LiClO4、LiCl、LiF、LiBr、LiI、LiAlCl4などが挙げられる。このうち、LiPF6、LiBF4、LiClO4などの無機塩、及びLiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2、LiC(CF3SO2)3などの有機塩からなる群より選ばれる1種又は2種以上の塩を組み合わせて用いることが電気特性の点から見て好ましい。この支持塩は、電解液中の濃度が0.1mol/L以上5mol/L以下であることが好ましく、0.5mol/L以上2mol/L以下であることがより好ましい。
【0018】
対極16は、対極活物質を含み、分離膜15の外周側に形成されている。対極16は、隣合う柱状電極12同士の間を埋めるように設けられているものとしてもよい。対極16は、対極活物質と、必要に応じて導電材と、結着材とを含むものとしてもよい。対極16は、蓄電デバイス10の作製時において、柱状電極12を内包し断面の外形を六角形状とするものとしてもよい(
図1参照)。この形状であれば、正極活物質が外周に形成された柱状電極12を結束すると、対極16が柱状電極12の間に充填されやすく好ましい。この対極16は、複数の柱状電極12の間に存在するものとすればよく、
図1に示すように、外形が六角形状であることに限定されない。対極16は、導電材を含み、それ自体に導電性を有するものとしてもよい。この対極16は、例えば、柱状電極12の外周に分離膜15を形成したのち、その外周に対極16の原料を塗布して形成されたものとしてもよい。
【0019】
対極16は、例えば、対極活物質と、導電材と、必要に応じて結着材とを混合した対極合材からなるものとしてもよい。対極活物質は、例えば、キャリアであるリチウムを吸蔵放出可能な正極活物質が挙げられる。正極活物質としては、例えば、リチウムと遷移金属とを有する化合物、例えば、リチウムと遷移金属元素とを含む酸化物や、リチウムと遷移金属元素とを含むリン酸化合物などが挙げられる。具体的には、基本組成式をLi(1-x)MnO2(0≦x≦1など、以下同じ)やLi(1-x)Mn2O4などとするリチウムマンガン複合酸化物、基本組成式をLi(1-x)CoO2などとするリチウムコバルト複合酸化物、基本組成式をLi(1-x)NiO2などとするリチウムニッケル複合酸化物、基本組成式をLi(1-x)CoaNibMncO2(a>0、b>0、c>0、a+b+c=1)、Li(1-x)CoaNibMncO4(0<a<1、0<b<1、1≦c<2、a+b+c=2)などとするリチウムコバルトニッケルマンガン複合酸化物、基本組成式をLiV2O3などとするリチウムバナジウム複合酸化物、基本組成式をV2O5などとする遷移金属酸化物などを用いることができる。また、基本組成式をLiFePO4とするリン酸鉄リチウム化合物などを正極活物質として用いることができる。これらのうち、リチウムコバルトニッケルマンガン複合酸化物、例えば、LiCo1/3Ni1/3Mn1/3O2やLiNi0.4Co0.3Mn0.3O2などが好ましい。なお、「基本組成式」とは、他の元素、例えば、AlやMgなどの成分を含んでもよい趣旨である。
【0020】
対極16に含まれる導電材は、電池性能に悪影響を及ぼさない電子伝導性材料であれば特に限定されず、例えば、天然黒鉛(鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛)や人造黒鉛などの黒鉛、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンウィスカ、ニードルコークス、炭素繊維、金属(銅、ニッケル、アルミニウム、銀、金など)などの1種又は2種以上を混合したものを用いることができる。結着材は、活物質粒子や導電材粒子を繋ぎ止めて所定の形状を保つ役割を果たすものであり、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、或いはポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)ゴム、スルホン化EPDMゴム、天然ブチルゴム(NBR)等を単独で、あるいは2種以上の混合物として用いることができる。また、水系バインダーであるセルロース系やスチレンブタジエンゴム(SBR)の水分散体等を用いることもできる。
【0021】
対極16において、正極活物質の含有量は、より多いことが好ましく、対極16の質量全体に対して70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましい。導電材の含有量は、対極16の全体の質量に対して0質量%以上20質量%以下の範囲であることが好ましく、0質量%以上10質量%以下の範囲であることがより好ましい。このような範囲では、電池容量の低下を抑制し、導電性を十分に付与することができる。また、結着材の含有量は、対極16の質量全体に対して0.1質量%以上5質量%以下の範囲であることが好ましく、0.2質量%以上3質量%以下の範囲であることがより好ましい。
【0022】
導電部21は、配列体30の配列方向Aに沿う配列面33に接触する部材であり、積層体41の内部に配設された導電部材である。導電部21は、配列体30の一方の配列面33に接触するよう配設されている。導電部21は、対極16に比して体積抵抗率が低い材質であり、対極16の集電効率を高める部材である。この導電部21は、金属箔としてもよく、例えば、アルミニウムやステンレスなどが用いられ、アルミニウムであることが好ましい。導電部21の厚さは、例えば、3μm以上が好ましく、5μm以上がより好ましく、6μm以上が更に好ましい。また、導電部21の厚さは、15μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、8μm以下が更に好ましい。厚さが3μm以上では部材の取扱い強度や導電性向上の観点から好ましく、15μm以下では充放電に寄与しない部材の存在がより少なくなり、体積エネルギー密度の観点から好ましい。導電部21は、厚さが5μm以上10μm以下の範囲であることが好ましい。導電部21は、蓄電デバイス10の内部に複数存在することが好ましいが、すべて同じ厚さとしてもよいし、異なる厚さとしてもよい。この導電部21は、積層体41の最外面には配設されていないものとしてもよいし、積層体41の最外面にも配設されているものとしてもよいが、最外面には配設されていないことが単位体積あたりのエネルギー密度をより高めることができ好ましい。
【0023】
導電部21は、配列体30の配列方向に沿った配列面33に接触するシート状の部材であるものとしてもよい。この導電部21は、平滑な表面を有するものとしてもよいし、梨地状の表面を有するものとしてもよい。また、導電部21は、表面に貫通孔を有してもよい。貫通孔は、矩形状などのでもよいし、円形でもよいし、楕円形でもよい。導電部21は、
図3に示すように、溝状の孔が複数形成された導電部21Bとしてもよいし、円形の孔が複数形成された導電部21Cとしてもよいし、網状の開口部を有する導電部21Dとしてもよい。また、導電部21は、その表面に導電材がコートされているものとしてもよい。導電材としては、例えば、天然黒鉛(鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛)や人造黒鉛などの黒鉛、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンウィスカ、ニードルコークス、炭素繊維、金属(銅、ニッケル、アルミニウム、銀、金など)などの1種又は2種以上を混合したものを用いることができる。導電材をコートする結着材は、例えば、PTFE、PVdF、含フッ素樹脂、或いはポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、EPDM、NBR等を単独で、あるいは2種以上の混合物として用いることができる。
【0024】
電極集電体25は、導電性を有する部材であり、柱状電極12に電気的に接続されている。この電極集電体25は、柱状電極12が露出した側に配設されている。この電極集電体25は、例えば、カーボンペーパー、アルミニウム、銅、チタン、ステンレス鋼、ニッケル、鉄、白金、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラスなどのほか、接着性、導電性及び耐酸化(還元)性向上の目的で、アルミニウムや銅などの表面をカーボン、ニッケル、チタン、銀、白金、金などで処理したものも用いることができる。電極集電体25の形状は、柱状電極12が接続できるものであれば特に限定されず、例えば、板状、箔状、フィルム状、シート状、ネット状、パンチ又はエキスパンドされたもの、ラス体、多孔質体、発泡体、繊維群の形成体などが挙げられる。
【0025】
対極集電体26は、導電性を有し、対極16から集電する部材であり、対極16の外面や導電部21の端部に電気的に接続されている。対極集電体26は、例えば、電極集電体25で用いられる材質や形状を採用することができる。また、
図1において、対極集電体26は、蓄電デバイス10の下面側に配設されているものとしたが、側面側に配設されていてもよい。
【0026】
この蓄電デバイス10において、体積エネルギー密度は、より高いことがより好ましく、例えば、500Wh/L以上であることが好ましく、550Wh/L以上であることがより好ましく、600Wh/L以上であることが更に好ましい。この蓄電デバイス10において、正極活物質の容量に対する負極活物質の容量の比である正負極容量比(負極容量/正極容量)は、1.0以上1.5以下の範囲とすることが好ましく、より好ましくは1.2以下の範囲である。対極16の形成厚さは、柱状電極12の直径D及び正負極容量比に応じて適宜設定されるが、例えば、5μm以上50μm以下の範囲としてもよい。対極16の形成厚さは、例えば、柱状電極12上に形成された部分のうち最大の厚さをいうものとする。
【0027】
(蓄電デバイスの製造方法)
本開示の製造方法は、上述した蓄電デバイス10の製造方法としてもよい。この製造方法は、2層体工程と、積層工程とを含む。また、積層工程のあと、電極集電体25及び対極集電体26を配設する配設工程を更に含むものとしてもよい。
図4は、蓄電デバイス10の製造方法の一例を示す説明図であり、
図4Aが1層体31の配列処理、
図4Bが1層体31の説明図、
図4Cが2層体32の作製処理、
図4Dが積層体41Bの積層処理、
図4E積層体41の積層処理の一例の説明図である。なお、この製造方法では、上述した蓄電デバイスで説明した部材やサイズなどを適宜、採用するものとしてその説明を省略する。また、
図4では、便宜的に単セル11の本数を4本として説明するが、単セル11の本数は任意である。
【0028】
(2層体工程)
2層体工程では、2つの配列体30の間に導電部21が挟み込まれている2層体31を得る処理を行う。2層体32は、1層体31を作製したのち更に配列体30を積層して作製してもよい(
図4C)。1層体31は、単セル11を配列方向Aに配列させて圧着し配列体30を作製したのち1層体31を導電部21に圧着して作製してもよい(
図4A)。また、1層体31は、導電部21上に単セル11を配列方向Aに配列して全体を圧着して作製してもよい(
図4A)。あるいは、2層体32は、配列体30を作製したのち導電部21の表裏に配列体30を配設し圧着させて作製してもよい。配列体30や1層体31、2層体32は、プレスを行い、単セル11や導電部21を圧着させるものとしてもよい。プレスの条件は、蓄電デバイス10に求められる特性に基づいて、経験的に適宜定めることができる。
【0029】
(積層工程)
積層工程では、2層体32を複数積層した構造を含む積層体を得る処理を行う。また、積層工程では、2層体32の間には導電部21が挟み込まれていない積層体を得るものとする。2層体32の積層数は、蓄電デバイス10に求められる容量などの特性に応じて適宜定めることができる。この工程では、2層体32を複数積層して積層体41としてもよいし、積層体41の最外の配列面33に1層体31を更に積層し、積層体41Bを得るものとしてもよい。また、積層体41の一方の面のみ1層体31を積層させ、積層体41Bの最外の配列面33の一方のみ導電部21が配設されない構造としてもよい。積層体は、プレスを行い、2層体32や、1層体31を圧着させるものとしてもよい。プレスの条件は、蓄電デバイス10に求められる特性に基づいて、経験的に適宜定めることができる。
【0030】
以上詳述した本実施形態の蓄電デバイス10およびその製造方法によれば、柱状電極を有する蓄電デバイスにおいて、容量を確保しつつ、単位体積あたりのエネルギー密度をより向上することができる。このような効果が得られる理由は、以下のように推察される。例えば、電池構造を構成する部材のうち、対極の集電を行う導電体をその構造内に配設することがあるが、一般的には、柱状電池の配列体の間に配設される。そして、一般的に、配列体同士の間の全てに導電部を配設すると、集電性は向上するものの、導電部は充放電に関与しない部材であるため、単位体積あたりのエネルギー密度は低下する。この蓄電デバイス10では、柱状電池体を所定方向に配列した2つの配列体の間に導電部が挟み込まれた2層体が、複数積層された構造を有する。この蓄電デバイス10では、配列体30の一方の配列面33にだけ導電部21を設けることによって、対極16の集電を向上して容量を確保すると共に、過剰な導電部21の配設をより抑制することによって、エネルギー密度をより向上することができる。
【0031】
なお、本開示は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0032】
例えば、上述した実施形態では、蓄電デバイスのキャリアをリチウムイオンとしたが、特にこれに限定されず、ナトリウムイオンやカリウムイオンなどのアルカリ金属イオン、カルシウムイオンやマグネシウムイオンなどの2族元素イオンとしてもよい。また、正極活物質は、キャリアのイオンを含むものとすればよい。また、電解液を非水系電解液としたが、水溶液系電解液としてもよい。
【0033】
上述した実施形態では、柱状電極12は、円柱形状である例を説明したが、特にこれに限定されず、四角柱や六角柱などの形状としてもよい。また、対極16は、外径を六角柱状で示したが、四角柱状や円柱状としてもよい。
【0034】
上述した実施形態では、対極活物質を遷移金属複合酸化物としたが、特に限定されず、例えば、キャパシタに用いられる炭素材料としてもよい。炭素材料としては、特に限定されるものではないが、例えば、活性炭類、コークス類、ガラス状炭素類、黒鉛類、難黒鉛化性炭素類、熱分解炭素類、炭素繊維類、カーボンナノチューブ類、ポリアセン類などが挙げられる。このうち、高比表面積を示す活性炭類が好ましい。炭素材料としての活性炭は、比表面積が1000m2/g以上であることが好ましく、1500m2/g以上であることがより好ましい。比表面積が1000m2/g以上では、放電容量をより高めることができる。この活性炭の比表面積は、作製の容易性から3000m2/g以下であることが好ましく、2000m2/g以下であることがより好ましい。なお、正極では、イオン伝導媒体に含まれるアニオン及びカチオンの少なくとも一方を吸着、脱離して蓄電するものと考えられるが、さらに、イオン伝導媒体に含まれるアニオン及びカチオンの少なくとも一方を挿入、脱離して蓄電するものとしてもよい。
【0035】
本開示は、以下の[1]~[10]のいずれかに示すものとしてもよい。
[1] 電極活物質を含む柱状電極と、前記柱状電極の外周側に形成され絶縁性とイオン伝導性とを有する分離膜と、前記分離膜の外周側に形成され対極活物質を含む対極とを備えた柱状電池体を所定方向に配列した配列体と、
前記配列体の配列方向に沿う配列面に接触する導電部と、を備え、
2つの前記配列体の間に前記導電部が挟み込まれている2層体を複数積層した構造を含む積層体を有する、蓄電デバイス。
[2] 前記導電部は、前記配列面に接触するシート状の部材である、[1]に記載の蓄電デバイス。
[3] 前記導電部は、平滑な表面又は梨地状の表面を有し、表面に貫通孔を有してもよい、[1]又は[2]に記載の蓄電デバイス。
[4] 前記導電部は、厚さが5μm以上10μm以下の範囲である、[1]~[3]のいずれか1つに記載の蓄電デバイス。
[5] 前記導電部は、前記積層体の最外面には配設されていない、[1]~[4]のいずれか1つに記載の蓄電デバイス。
[6] 前記導電部は、前記積層体の最外面にも配設されている、[1]~[5]のいずれか1つに記載の蓄電デバイス。
[7] 前記2層体の間には前記導電部が挟み込まれていない、[1]~[6]のいずれか1つに記載の蓄電デバイス。
[8] 前記導電部は、その表面に導電材がコートされている、[1]~[7]のいずれか1つに記載の蓄電デバイス。
[9] 電極活物質を含む柱状電極と、前記柱状電極の外周側に形成され絶縁性とイオン伝導性とを有する分離膜と、前記分離膜の外周側に形成され対極活物質を含む対極とを備えた柱状電池体を所定方向に配列した配列体と、前記配列体の配列方向に沿う一方の配列面に接触する導電部とを有し、2つの前記配列体の間に前記導電部が挟み込まれている2層体を得る2層体工程と、
前記2層体を複数積層した構造を含む積層体を得る積層工程と、
を含む蓄電デバイスの製造方法。
[10] 前記積層工程では、前記2層体の間には前記導電部が挟み込まれていない前記積層体を得る、[9]に記載の蓄電デバイスの製造方法。
【実施例0036】
以下には、上述した蓄電デバイスを具体的に作製した例を実験例として説明する。なお、実験例1、2が本開示の実施例に相当し、実験例3、4が比較例に相当する。
【0037】
(蓄電デバイスの作製)
直径dが7μmの炭素繊維(日本グラファイトファイバー社製)を400本撚糸して結束した直径Dが156.5μmの炭素繊維結束体を柱状電極(負極)とした。この柱状電極に対し、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVdF-HFP)をN-メチルピロリドン(NMP)に溶解させた溶液をディップ法で被覆、乾燥することで、5μmの膜厚で負極の表面に分離膜としてのポリマー膜を均一塗布した。次に、正極活物質(LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2)と、導電材としてのアセチレンブラック(デンカ社製HS-100)と、結着材としてのポリフッ化ビニリデン(クレハ製PVdF7305)とを質量比で90:4:4となるよう配合したものにN-メチルピロリドンを加えて正極合材ペーストとした。上記のポリマー被覆負極に対して正極スラリーをディップコートして、正極合材の厚さが35μmとなるように正極合材層を形成した。このように、負極/ポリマー膜/正極合材層を同心円状に形成したものを長さ11cmで切断し、柱状の単セルとした。
【0038】
(実験例1、2)
作製した単セルを、
図3に示した作製手順に従って配列、積層し、蓄電デバイスを作製した。厚さ7μmのアルミニウム箔を導電部として用い、この箔上に所定本数の単セルを一列に配置し、プレスして結束した筏状の配列体を含む1層体を作製した。また、配列体のない導電部の表面に同じ本数の単セルを一列に配置し、更にプレスして2層体を作製した。配列体の所定本数を18本とし、2層体を2個積層してプレスしたものを実験例1とした。
図5は、実験例1~4の積層体を示す模式図である。得られた積層体の柱状電極の端面に電極集電体としてのCu箔(厚さ10μm)を配置し、全柱状電極の端面に圧着して両者を電気的に接続させた。また、積層体の対極集電面に、対極集電体としてのAl箔(厚さ7μm)を配置し、各接続部に電気的に接続するよう圧着した。そして、電極集電体及び対極集電体が接続された積層体をケースに入れ、電解液(1M-LiPF
6,EC/DMC/EMC=3/4/3(体積比))を注液後、密閉することで、実験例1の蓄電デバイスとしてのリチウムイオン二次電池を作製した。また、2層体の最外の配列面の2面それぞれに単セル同士が対向するように更に1層体を積層してプレスしたものを実験例2とした(
図5参照)。
【0039】
(実験例3、4)
実験例1と同様の1層体を4層積層し、配列体のない配列面に導電部を配設したものを実験例3とした。また、配列体を4層積層し、最外の配列面の2面に導電部を形成したものを実験例4とした(
図5参照)。なお、作製した蓄電デバイスは、すべて単セル本数及び理論容量を同じとした。
【0040】
(充放電試験)
実験例1~4の蓄電デバイスを用い、20℃、2.5V~4.2Vで充放電試験を行い、放電容量を測定した。放電容量は、放電電流が10mA、20mA、40mA、100mA、300mA及び400mAで放電した際の容量とした。なお、実験例1~4の最大理論容量は、72mAhである。
【0041】
(エネルギー密度)
実験例1~4の蓄電デバイスの体積を算出し、10mAの放電電流で放電した際の放電容量を上記体積で除算することによって、単位体積あたりのエネルギー密度(Wh/L)を算出した。
【0042】
(結果と考察)
図6は、実験例1~4の放電電流に対する放電容量の関係図である。また、
図6に示した放電電流(mA)と放電容量(mAh)との関係を表1にまとめた。また、各実験例の電池体積及び単位体積あたりのエネルギー密度を表2にまとめた。
図6、表1に示すように、配列体の間に導電部のない実験例4では、低い放電容量を示した。一方、実験例1~3では、より高い放電容量が得られた。これは、配列体の間に存在する導電部によって対極の集電性が高く、そのため放電容量が向上するものと推察された。また、配列体の配列面の両面に導電部を有する実験例3では、表2に示すように、単位体積あたりのエネルギー密度が500Wh/Lを下回っており、エネルギー密度が十分とはいえなかった。一方、実験例2では、500Wh/Lを超え、550Wh/Lを超える体積エネルギー密度を示した。特に、実験例1では、単位体積あたりのエネルギー密度での目標値である600Wh/Lを超える値を示し、今までない範囲の高いエネルギー密度の領域を実現することができることがわかった。エネルギー密度の観点からは、最外面に1層体を有する実験例2に比して、2層体のみを積層し、配列体の一方の配列面にのみ導電部が存在する積層体である実験例1の方が好ましいことがわかった。この理由は、例えば、実験例2や実験例3などにおいて、最外面に導電部が存在すると、積層して圧着する際に導電部の剪断による電極へのダメージがあるのではないかと推察された。
【0043】
【0044】
【0045】
また、導電部の厚さは、より薄い方が体積エネルギー密度(Wh/L)を大きく設計することができる。導電部の厚さは、5μm以上10μm以下の範囲、より好ましくは、6μm以上8μm以下の範囲が好ましいと推察された。また、実験例1~4では、シート状の導電部を用いたが、矩形や円形の孔を有してもよいし、網状のものとしても、上述した実施例と同様の効果が得られるものと推察された。
【0046】
なお、本開示は上述した実施例に何ら限定されることはなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
10,10B 蓄電デバイス、11 単セル、12 柱状電極、14 炭素繊維、15 分離膜、16 対極、21,21B,21C,21D 導電部、25 電極集電体、26 対極集電体、30 配列体、31 1層体、32 2層体、33 配列面、41,41B 積層体、d,D 直径。