(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110796
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】細菌の活性評価方法、細菌の活性評価装置、排水処理法及び排水処理装置
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/02 20060101AFI20240808BHJP
C02F 3/34 20230101ALI20240808BHJP
C12N 1/20 20060101ALI20240808BHJP
C12Q 1/00 20060101ALI20240808BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20240808BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
C12Q1/02
C02F3/34 101A
C02F3/34 101B
C02F3/34 101D
C12N1/20 D
C12Q1/00 C
C12M1/00 Z
C12M1/34 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023015608
(22)【出願日】2023-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】501061319
【氏名又は名称】学校法人 東洋大学
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(72)【発明者】
【氏名】井坂 和一
(72)【発明者】
【氏名】染谷 果穂
【テーマコード(参考)】
4B029
4B063
4B065
4D040
【Fターム(参考)】
4B029AA27
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4B029CC03
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4B063QA05
4B063QQ06
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4B063QS39
4B063QX01
4B065AA01X
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4D040BB02
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4D040BB52
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4D040BB91
4D040DD03
4D040DD31
(57)【要約】
【課題】生物処理がなされる場所において、細菌の活性を評価することで、負荷の評価が可能になる細菌の活性評価方法、細菌の活性評価装置、排水処理法及び排水処理装置を提供する。
【解決手段】 細菌活性を評価する方法であって、生物処理を行う細菌に連続光を照射し、細菌からの反射光のうち、L*a*b*色空間に基づくa*、b*又は彩度、もしくはRGBデータに基づく少なくとも1つの値の経時的変化を検知することで細菌の活性を評価する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細菌活性を評価する方法であって、
生物処理を行う細菌に連続光を照射し、前記細菌からの反射光のうち、L*a*b*色空間に基づくa*、b*又は彩度、もしくはRGBデータに基づく少なくとも1つの値の経時的変化を検知することで前記細菌の活性を評価する細菌活性の評価方法。
【請求項2】
前記細菌が担体に固定化又は包括固定化されている、請求項1に記載の細菌活性の評価方法。
【請求項3】
前記細菌がアンモニア酸化細菌またはアナモックス細菌である、請求項2に記載の細菌活性の評価方法。
【請求項4】
細菌活性を評価する装置であって、
生物処理を行う細菌に連続光を照射する光源部と、
前記細菌からの反射光を受光する受光部であって、前記受光部が受光した光のうち、L*a*b*色空間に基づくa*、b*又は彩度、もしくはRGBデータに基づく少なくとも1つの値を取得する受光部と、
前記受光部が取得した前記値の経時的変化を検知することで前記細菌の活性を評価する評価部と、
を備える細菌活性評価装置。
【請求項5】
前記細菌が担体に固定化又は包括固定化されている、請求項4に記載の細菌活性評価装置。
【請求項6】
前記細菌がアンモニア酸化細菌またはアナモックス細菌である、請求項5に記載の細菌活性評価装置。
【請求項7】
細菌による生物処理によって排水を処理する方法であって、
請求項1から3のいずれか一項に記載の細菌活性の評価方法の評価結果に基づいて、生物処理を行う場所に対する流入する排水の排水量、曝気量又は溶存酸濃度のいずれかを調整する、排水処理方法。
【請求項8】
予めL*a*b*色空間に基づくa*、b*又は彩度、もしくはRGBデータに基づく少なくとも1つの値に関する閾値を設定し、前記評価結果と前記閾値と比較し、前記閾値を超えない範囲で、前記排水量、前記曝気量又は前記溶存酸濃度のいずれかを調整する、
請求項7に記載の排水処理方法。
【請求項9】
細菌による生物処理によって排水を処理する排水処理装置であって、
請求項4から6のいずれか一項に記載の細菌活性評価装置の評価結果に基づいて、
生物処理を行う場所に対する流入する排水の排水量、曝気量又は溶存酸濃度のいずれかを調整する調整部と、
を備える排水処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細菌の活性評価方法、活性評価装置、排水処理法及び排水処理装置に係り、特に、細菌の活性を評価する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
排水中に含まれるアンモニア性窒素(NH4-N)は、環境保全の観点からその除去が課題となっている。窒素排水の処理法には、生物処理法が多く用いられている。この窒素排水の生物処理に関わる重要な細菌として、アンモニアを亜硝酸や硝酸に酸化するアンモニア酸化細菌(AOB:ammonium oxidizing bacteria)や、アンモニアと亜硝酸を利用して窒素ガスへ変換するアナモックス(ANAMMOX:Anaerobic Ammonium Oxidation)細菌等が存在する。
【0003】
なお、アンモニア細菌は、下水処理場等の排水処理施設から簡単に入手することができる一般的な細菌である。アナモックス細菌は、環境中に広く生息しており、下水汚泥などから簡単に集積培養することが知られている(非特許文献1)。
【0004】
アナモックス細菌を利用したアナモックス反応ではアンモニアと亜硝酸を利用して窒素ガスへ変換するものである。そのため、原水中のアンモニアの約半量を亜硝酸に酸化し、生成したアンモニアと亜硝酸をアナモックス反応で脱窒する。それぞれの反応を担うアンモニア酸化細菌とアナモックス細菌は、それぞれ好気性細菌と嫌気性細菌であり、別槽で利用することが好ましい。
【0005】
一方で、特定の条件でこれらの細菌を、一槽(好気槽)で利用できる1槽型システムが知られており、2つの反応を1の反応槽で行うことができるので、シンプルで維持管理が容易なシステムとして期待されている。
【0006】
しかしながら、反応槽に許容できる負荷が評価できないため、どの程度負荷をかけてよいか知ることができない。例えば、細菌の数が増えれば、その分負荷をかけられるが、反応槽内でどれぐらい細菌数が増えたか確認することは困難である。特に、反応槽が処理できる能力に対して、実際の負荷(余裕率)を検知することが困難であった。
【0007】
そのため、水質の評価から判断していた。すなわち、細菌の量に見合わない量の負荷(窒素量)を供給すれば、処理ができず、余った窒素量を検知していた。特に立ち上げ初期には、細菌の数の変動が大きく、負荷を徐々にあたえ、処理水質を見ることで、細菌の数の増加を確認していた。
【0008】
また、細菌数を測定する方法も考えられるが、排水処理系には様々な細菌が存在する混合細菌系であり、アンモニア酸化細菌やアナモックス細菌などの特定の細菌のみを定量することは困難であった。
【0009】
これに対して、非特許文献2の研究では、処理速度の異なる複数のアナモックスリアクターから汚泥を採取し、アナモックス菌が含まれる汚泥の平均彩度値と、各リアクターの処理速度が、相関することが記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Yasuhiro Date et al., “D Microbial diversity of anammox bacteria enriched from different types of seed sludge in an anaerobic continuous-feeding cultivation reactor” Journal of Bioscience and Bioengineering Volume 107, (March 2009)
【非特許文献2】Da Kang et al., “Deciphering correlation between chromaticity and activity of anammox sludge” Water Research Volume 185, (15 October 2020)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、従来における負荷の評価では、水質分析するために、サンプリングや、分析機関への輸送、機器による分析など、手間と時間がかかり、さらにコストもかかっていた。また、析結果が出るまでに時間を要するため、リアルタイムでの対応ができなかった。また、過剰に負荷をかけすぎると、細菌が死滅する場合もあった。その結果、過剰に負荷をかけると、処理できない分の窒素を、河川などに流すおそれがあるため、環境保護の観点から不適切という問題もあった。反応槽内の細菌の活性が、限界であるか、余裕があるか判断ができなかった。
【0012】
また、非特許文献2では、定常作業状態で異なるアナモックスシステム内で、アナモックス細菌のスラッジの色度と活性とを調査している。そのため、実際の生物処理がなされる場所において、どの様に適用するかは十分に検討されていない。また、処理速度の異なる条件で運転した、異なるリアクターから採取したサンプルで色彩を評価している。
【0013】
排水処理リアクターの維持管理を考えた場合、細菌が担体法などにより、反応槽内に維持され、ある程度一定条件である状態において、負荷が色彩に与える影響を調査したものではない。
【0014】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、生物処理がなされる場所において、負荷の評価が可能な細菌の活性評価方法、細菌の活性評価装置、排水処理法及び排水処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
第1態様に係る発明は、細菌活性を評価する方法であって、生物処理を行う細菌に連続光を照射し、細菌からの反射光のうち、L*a*b*色空間に基づくa*、b*又は彩度、もしくはRGBデータに基づく少なくとも1つの値の経時的変化を検知することで細菌の活性を評価する。
【0016】
第2態様に係る細菌活性を評価する方法において、細菌が担体に固定化又は包括固定化されている。
【0017】
第3態様に係る細菌活性を評価する方法において、細菌がアンモニア酸化細菌またはアナモックス細菌である。
【0018】
第4態様に係る発明は、細菌活性を評価する装置であって、生物処理を行う細菌に連続光を照射する光源部と、細菌からの反射光を受光する受光部であって、受光部が受光した光のうち、L*a*b*色空間に基づくa*、b*又は彩度、もしくはRGBデータに基づく少なくとも1つの値を取得する受光部と、受光部が取得した値の経時的変化を検知することで細菌の活性を評価する評価部と、を備える。
【0019】
第5態様に係る細菌活性評価装置において、細菌が担体に固定化又は包括固定化されている。
【0020】
第6態様に係る細菌活性評価装置において、細菌がアンモニア酸化細菌またはアナモックス細菌である。
【0021】
第7態様に係る発明は、細菌による生物処理によって排水を処理する方法であって、上記1から3態様のいずれか記載の細菌活性の評価方法の評価結果に基づいて、生物処理を行う場所に対する流入する排水の排水量、曝気量又は溶存酸濃度のいずれかを調整する。
【0022】
第8態様に係る排水処理方法において、予めL*a*b*色空間に基づくa*、b*又は彩度、もしくはRGBデータに基づく少なくとも1つの値に関する閾値を設定し、評価結果と閾値と比較し、閾値を超えない範囲で、排水量、曝気量又は溶存酸濃度のいずれかを調整する。
【0023】
第9態様に係る発明は、細菌による生物処理によって排水を処理する排水処理装置であって、上記4から6態様のいずれかに記載の細菌活性評価装置の評価結果に基づいて、生物処理を行う場所に対する流入する排水の排水量、曝気量又は溶存酸濃度のいずれかを調整する調整部と、を備える。
【発明の効果】
【0024】
本発明の培養方法及び培養装置によれば、生物処理がなされる場所において、細菌の活性を評価することで、負荷の評価が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図2】
図2は窒素負荷ごとの反射光の波長を示すグラフである。
【
図3】
図3は第1形態の排水処理装置の概略図である。
【
図4】
図4は第2形態の排水処理装置の概略図である。
【
図5】
図5は第3形態の排水処理装置の概略図である。
【
図6】
図6は第4形態の排水処理装置の概略図である。
【
図7】
図7は実施例で使用した実験装置を示す図である。
【
図9】
図9は実施例1の色彩データを示す図である。
【
図10】
図10は実施例1のa*と窒素変換速度との関係を示す図である。
【
図11】
図11は実施例1のL*a*b*の評価を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付図面に従って、本発明に係る細菌の活性評価方法、細菌の活性評価装置、排水処理法及び排水処理装置について説明する。なお、本明細書において、「~」とは、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
【0027】
[細菌の活性評価方法及び活性評価装置]
実施形態の細菌の活性評価方法は、生物処理を行う細菌に連続光を照射し、細菌からの反射光のうち、L*a*b*色空間に基づくa*、b*又は彩度、もしくはRGBデータに基づく少なくとも1つの値(以下、これらを合わせて「色値」とも称する場合がある)の経時的変化を検知することで細菌の活性を評価する。
図1は細菌の活性評価方法に適用される細菌の活性評価装置の概略構成を示している。
図1の細菌の活性評価装置10は、光源部12と、受光部14と、評価部16とを備える。光源部12は、細菌18に対して光を照射する。受光部14は、細菌18からの反射光を受光する。評価部16は、受光部14が受光した反射光の経時的変化を検知する。
【0028】
<光源部>
光源部12は、連続光を照射する。ここで連続光は、多くの波長の光を含み、波長が広い範囲で連続的に分布している光をいう。連続光は可視光の波長を含んでいる。光源部12は連続光を照射することができれば、どのような光源も利用することができる。
【0029】
<細菌>
細菌18は生物処理を細菌である。生物処理は、例えば、各事業所から排水されるアンモニア性窒素(NH4-N)を含む排水を、細菌を利用して除去する窒素排水の処理を例示することができる。窒素排水の処理に利用される細菌として、アンモニアを亜硝酸や硝酸に酸化するアンモニア酸化細菌、及びアンモニアと亜硝酸を利用して窒素ガスへ変換するアナモックス細菌を例示することができる。
【0030】
細菌18は、担体に固定化された状態で生物処理が行われ場所に提供されることが好ましい。細菌18を固定化する方法としては、担体表面に付着固定化させ固定化担体とする方法、及び、担体内に細菌を包摂させて固定化し包括固定化担体とする方法がある。包括固定化担体とすることで、担体の内部に細菌18を維持することができるので、長期の生物処理を行っても細菌が流出することを防止することができる。
【0031】
担体としては、例えば、ポリビニルアルコール、アルギン酸、ポリエチレングリコール、アクリルアミド等のゲル担体や、セルロース、ポリエステル、ポリプロピレン、塩化ビニル、ポリウレタン等のプラスチック担体や、活性炭、珪藻土、ゼオライト等の無機担体等が挙げられる。担体の形態は、例えば、球、円筒、円柱、立方体、直方体等の適宜の形状に成形した浮遊担体を用いる流動床、スポンジ状、不織布状、中空糸状等とした担体濾材をハニカム状、波形状、格子状、繊維状、菊花状等に配列した固定床のいずれでもよい。流動床については、浮遊担体の大きさは、1mm以上10mm以下の範囲が好ましく、その充填率は、培養槽容量に対して10体積%以上40体積%以下の範囲が好ましい。一方、固定床については、その充填率は、培養槽容量に対して見かけ上の占有容積で10体積%以上50体積%以下の範囲が好ましく、その空隙率は、80%以上であることが好ましい。
【0032】
なお、ポリビニルアルコール(PVA)製のゲル担体にアナモックス細菌をあらかじめ付着させる方法については、文献(染谷果穂、井坂和一他(2022)『PVA担体を用いたアナモックス細菌の付着固定化方法の開発』日本水処理生物学会誌 別巻Vol 42, P481)に記載した方法を利用することができる。
【0033】
<受光部>
受光部14は、細菌18からの反射光のなかでL*a*b*色空間に基づくa*、b*又は彩度、もしくはRGBデータに基づく少なくとも1つの値を検出する。
【0034】
L*a*b*色空間は、ほぼ完全な色空間であり、国際照明委員会(CIE)が策定したものである。人間の目で見える全ての色を記述でき、機器固有モデルの基準として利用できるように意図したものである。人の目で見られる色の変化と合わせることで、誤った認識をせずに、細菌の活性を検知することができる。
【0035】
ここで、受光部14は、例えば、色彩計測の機器であり、特に限定はしないが、分光測色計CM-5(コニカミノルタ社製)を利用することができる。
【0036】
色値を評価する方法としてL*a*b*色空間に基づくa*及び/又はb*を利用することができる。なかでも、赤色を示すa*を利用することが好ましい。より好ましくは、彩度としてC=((a*)2+(b*)2)1/2とし、色彩空間での色の距離感を示すことも可能である。
【0037】
RGBデータは、赤色、緑色、青色の三つの色を混ぜて色を再現する方法で、赤色(8ビット)、緑色(8ビット)、青色(8ビット)の合計24ビットで規定される色データである。赤色、緑色及び青色は、0~255(10進数表記)で計256段階まで表現できる。RGBデータは、画像解析法などでその値を取得することができる。RGBデータは、緑色及び青色のデータ値を利用して評価することが好ましい。
【0038】
<評価部>
評価部16は、受光部14が検出した少なくとも1つの色値の経時的変化を検知する。評価部16は、プロセッサ、記憶部、ディスプレイ及びキーボード等を有するパーソナルコンピュータ等を例示できる。プロセッサはプログラムを実行することで各種の処理を行う処理部として機能する。記憶部は、ハード・ディスク・ドライブ(Hard Disk Drive:HDD)、ソリッド・ステート・ドライブ(Solid State Drive:SSD)等の非一時的記録媒体及びその制御部により構成される。
【0039】
評価部16は、受光部14からの結果(値)を経時的に受付け、記憶部に記憶する。プロセッサは、記憶部に記憶されたプログラムを実行し、結果(色値)の経時的変化を算出(検知)する。プロセッサは、算出(検知)した結果をディスプレイに出力する。
【0040】
また、評価部16は、プロセッサを適用することで活性評価装置10の全体を制御してもよい。例えば、評価部16は、光源部12及び受光部14を制御し、所定期間毎に自動で結果(色値)を受付けてもよい。但しこれに限定されず、評価部16は、手動で結果を受付けてもよい。
【0041】
[細菌の活性評価の原理]
発明者等は、生物処理(窒素排水の処理)に使用される細菌が赤色を呈することが多いことに着目した。またこの赤色が、活性に応じて変化し、細菌が処理能力に余裕があるときは、赤褐色であり、限界に近づくと鮮やかな赤色に呈することを発見した。
【0042】
図2は、PVA担体を用いたアナモックス細菌の反射光の波長の分布を示したグラフである。横軸に波長を示し、縦軸に細菌からの反射率を示す。窒素容積負荷(NLR:Nitrogen-Loading Rate)が、窒素負荷1(1.15[kg-N m
-3-carrier d
-1])、窒素負荷5(4.96[kg-N m
-3-carrier d
-1])、窒素負荷10(10.3[kg-N m
-3-carrier d
-1])、窒素負荷15(15.7[kg-N m
-3-carrier d
-1])及び窒素負荷24(24.7[kg-N m
-3-carrier d
-1])に対応する波長の連続スペクトルがプロットされている。
図2のグラフによれば、窒素負荷を変更すると低波長側で差異がみられた。特に、細菌の活性が限界に近づくと鮮やかな赤色に呈することを発見した。
【0043】
この差異を利用すると、例えば、窒素負荷1の状態であれば赤褐色を呈するので、細菌が処理能力に余裕があり、窒素負荷を上昇できると判断できる。一方で、窒素負荷24の状態であれば鮮やかな赤色を呈するので、細菌が処理能力に余裕がなく、窒素負荷を上昇できないと判断できる。
【0044】
また、波長410nm付近および530nm付近の反射光を検知して、評価に用いても良いことが理解できる。これは、ヘムタンパクの酸化・還元状態において変化を示す波長であり、この値を利用することも可能である。
【0045】
さらに、発明者等は細菌からの反射光を時間的に継続して検知することで(色値の経時的変化を検知する)ことで、窒素負荷を上げた場合に、細菌の活性が上昇すると共に反射光が赤褐色から鮮やかな赤色に変化する一方で、窒素負荷を上げ過ぎた場合、細菌の活性が低下し、鮮やかな赤色から赤褐色へと変化することを見出した。この色の変化をL*a*b*色空間に基づくa*、b*又は彩度、もしくはRGBデータに基づく少なくとも1つの値(色値)で検知しようとするものである。すなわち、色値の経時的変化を検知することで生物処理において細菌の活性の限界を早期に見出す運用が可能であり、さらに生物処理において細菌の活性の限界を超えない運用が可能となる。
【0046】
排水中には色素成分を有することがあり、排水に応じて補正をかけて運転することが好ましい。たとえば、定常の運転条件において、水質変化から求めた窒素処理速度と、色に関わるデータ(例えばa*)の関係式を予め求めておき、その関係式を求めて運転を行ってもよい。
【0047】
また、担体法の場合、担体が本来有する色が、計測値に影響を与える。そのため、使用する担体ごとに、定常の運転条件において、水質変化から求めた窒素処理速度と、色に関わるデータ(例えば、a*)の関係式を予め求めておき、その補正式を利用して、運転を行ってもよい。
【0048】
[排水処理法及び排水処理装置]
次に、細菌の活性評価装置10を含む第1形態から第4形態に係る排水処理装置の概略構成について説明する。
【0049】
図3は第1形態の排水処理装置20を示している。排水処理装置20は、細菌の活性評価装置10、原水配管21、ポンプ22、生物処理槽23、処理水配管24及び調整部25を備える。細菌の活性評価装置10は、光源部12と、受光部14と、評価部16とを備える。
【0050】
図3に示す排水処理装置20では、ポンプ22により原水が原水配管21を介して生物処理槽23に供給される。生物処理槽23では、原水が細菌18により脱窒処理等の生物処理が実施され、生物処理槽23から処理水配管24を介して処理水が排出される。
【0051】
細菌の活性評価装置10を備える排水処理装置20では、光源部12が生物処理槽23の細菌18に連続光を照射する。受光部14が反射光から色値を取得し、評価部16を色値から細菌18の活性を評価する。調整部25は、細菌の活性評価装置10の評価部16からの評価結果に基づいてポンプ22を制御し、生物処理槽23に流入される排水(原水)の排水量(負荷量)を調整する。
【0052】
実施形態の細菌の活性評価装置10を利用することで、リアルタイムで細菌18の活性評価が可能となる。また、時間の要する細菌の数や水質の評価ではなく、処理能力に余裕があるか、又はさらに窒素負荷がかけられるかが判断できる。過剰に負荷をかけたことに起因して処理できない処理排水が排出されて処理水質が悪化する事態を回避できる。また、細菌18の活性の計測に試薬などを利用しないので廃液の排出が抑制される。
【0053】
また、予め色値に対する閾値を設定し、調整部25に記憶させることができる。調整部25は、評価部16からの評価結果と閾値とを比較し、評価結果が閾値を超えない範囲で排水量(負荷量)を調整することができる。閾値はL*a*b*色空間に基づくa*、b*又は彩度、もしくはRGBデータに基づく少なくとも1つの値に対して設定される。
【0054】
このように、閾値を設定し、閾値のすることで過剰な窒素負荷となることを回避でき、また、細菌18の活性低下を回避でき、安定し連続運転が可能となる。
【0055】
なお、第1形態の排水処理装置20における調整部25は、評価部16と同様に、プロセッサ、記憶部、ディスプレイ及びキーボード等を有するパーソナルコンピュータ等を例示できる。また、パーソナルコンピュータは、評価部16と調整部25との両方の機能を備えることができる。パーソナルコンピュータ等により排水処理装置20の全体を制御することができる。
【0056】
図4は第2形態の排水処理装置30を示している。
図4において、上述した第1形態の排水処理装置20と共通する部分には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0057】
図4に示す第2形態の排水処理装置30は、生物処理槽23から取り出した細菌18を保持する検出槽31を備える。生物処理槽23は、材質や形状によっては、光源部12から連続光を直接照射できない可能性もある。そのため、第2形態の排水処理装置30は検出槽31を備え、検出槽31は生物処理槽23から取り出した細菌18を保持する。光源部12は検出槽31に保持された細菌18に連続光を照射する。受光部14は、反射光の中から色値を取得す。第1形態の排水処理装置20と同様に、調整部25は、細菌の活性評価装置10の評価部16からの評価結果に基づいてポンプ22を制御し、生物処理槽23に流入される排水(原水)の排水量(負荷量)を調整する。
【0058】
図5は第3形態の排水処理装置40を示している。
図5において、上述した第1形態の排水処理装置20と共通する部分には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0059】
図5に示す第3形態の排水処理装置40は、生物処理槽23を曝気する送風機(ブロア)41を備える。第3形態の排水処理装置40において、調整部25は、細菌の活性評価装置10の評価部16からの評価結果に基づいて送風機41の曝気量を制御し、生物処理槽23に供給される酸素量を調整する。酸素量の条件は、細菌の活性に大きく作用するものであるから、送風機41を制御することで、好気性細菌の場合は、酸素量を増加することで活性化を図ることができる。一方、嫌気性細菌の場合は、酸素量を削減する方策となる。第3形態の排水処理装置40では溶存酸濃度を調整できる。
【0060】
第3形態の排水処理装置40において、第1形態の排水処理装置20と同様に、ポンプ22を制御し、生物処理槽23に流入される排水(原水)の排水量(負荷量)を調整してもよい。
【0061】
図6は第4形態の排水処理装置50を示している。
図6において、上述した第1形態の排水処理装置20と共通する部分には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0062】
図6に示す第4形態の排水処理装置50は、生物処理槽23に薬剤を供給するための薬剤タンク51と薬剤ポンプ52と、を備える。第4形態の排水処理装置50において、調整部25は、細菌の活性評価装置10の評価部16からの評価結果に基づいて薬剤ポンプ52を制御し、薬剤タンク51から生物処理槽23に供給される薬剤量を調整する。生物処理槽23のpHの条件によって活性を制御する場合には、酸またはアルカリを薬剤として薬剤タンク51から注入する。その他、細菌18の活性化する薬剤がある場合は、それを添加することができる。添加する薬剤に応じて複数の薬剤タンク51を準備することができる。
【0063】
第4形態の排水処理装置50において、第1形態の排水処理装置20と同様に、ポンプ22を制御し、生物処理槽23に流入される排水(原水)の排水量(負荷量)を調整してもよい。さらに、第3形態の排水処理装置40と同様に、送風機41を設けて、送風機41を制御することで、生物処理槽23に供給される酸素量を調整してもよい。
【0064】
<実施例>
以下に実施例を挙げ、本発明をより詳細に説明する。ただし、本発明はこの実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。
【0065】
(実施例1)<負荷低下試験>
アナモックス細菌を担体に保持し、細菌の数が変動しない条件で連続試験を実施した。この時、窒素負荷を低減させ、担体の赤色の変化について調査を行った。
【0066】
以下の表1に示す無機合成排水を用いて、
図7に示す実験装置200による連続試験を実施した。そして、各条件での担体の色について、色彩計および画像解析によるRGBデータを取得した。
【0067】
【0068】
図7に示す実験装置200は、反応槽202と、反応槽202を囲うウォータージャケット206と、反応槽202が載置される撹拌器216と、を備える。ウォータージャケット206は、恒温水を供給する恒温水供給管206Aと、恒温水を排出する恒温水排出管206Bとを備える。反応槽202は、原水(排水)を供給する原水供給管208、処理された処理水を排出する排出管210、0.2N塩酸溶液を供給する酸性溶液供給管212、N
2ガスを供給するガス供給管214、及びpHセンサー218を備える。
【0069】
反応槽202の反応容積は500mLであり、アナモックス担体204を50mL充填した(充填率:10%)。反応槽202は、ウォータージャケット206で水温35℃となるように調整した。反応槽202内のpHは、pHセンサー218により測定され、pHコントローラー(不図示)によりポンプ(不図示)を制御し、0.2N塩酸溶液を用いて、pH7.6に調整した。
【0070】
なお、供試担体には、ポリビニルアルコール(PVA)製のゲル担体を用いた。担体にアナモックス細菌をあらかじめ付着させた。記述した文献(染谷果穂、井坂和一他(2022)『PVA担体を用いたアナモックス細菌の付着固定化方法の開発』日本水処理生物学会誌 別巻Vol 42, P481)に記載した方法に準じた。
【0071】
また、アナモックス細菌には、非特許文献1に準じて下水汚泥から集積培養を行い、不織布を用いたリアクターにて長期間維持したものを用いた。
【0072】
(色彩の評価方法)
L*a*b*、及び彩度の計測では、反応槽から数粒の担体を採取し、分光測色計CM-5を用いて計測した。RGB値の測定には、デジタルカメラで撮影した画像から、画像解析ソフト(Windows(登録商標)のペイントアプリ)を利用して解析した。
【0073】
(水質評価)
反応槽202に流入させる排水量を低下させ、負荷を低減させた。その時の結果を
図8のグラフに示した。
図8のグラフは横軸に時間(day)を示し、左縦軸は担体の窒素負荷速度C-NLR(Carrier-Nitrogen Loading Rate)の値、及び担体の窒素変換速度C-NCR(Carrier-Nitrogen N - Conversion Rate)を示している。右縦軸はHRT(Hydraulic retention time:水理学的滞留時間)(h)を示している。流速(HRT)を調整することで、負荷は段階的に低下させ、担体当たりの窒素変換速度(C-NCR)は241.1kg-N(m
3d)
-1から1.1kg-N(m
3d)
-1まで低下した。
【0074】
なお、担体当たりの窒素負荷(C-NLR)については、流入水中に含まれるアンモニアと亜硝酸の窒素濃度の和の値に、リアクター単位容積・1日あたりの水量を掛けることで窒素負荷量を求め、それを担体の体積当たりに変換したものである。
【0075】
また、担体当たりの窒素変換速度(C-NCR)については、流入水中に含まれるアンモニアと亜硝酸の窒素濃度の和から、処理水中に含まれるアンモニアと亜硝酸窒素濃度の和を差し引いた値に、リアクター単位容積・1日あたりの水量を掛けることで窒素変換速度を求め、それを担体の体積当たりに変換したものである。
【0076】
(色彩データ)
負荷を低下させる水質評価の試験時において、担体の色は鮮やかな赤色から、赤褐色へ変化していくことが確認された。この色の変化を評価するため、色彩指標であるa*を用いて評価した。
図9は、
図8のグラフにおいて、右縦軸のHRT(h)に代えて、右縦軸a*とし、プロットされたa*の値を示している。
図9のグラフの結果から、負荷が低下するとa*も低下することが理解できる。
【0077】
また、この結果から、担体体積当たりの窒素変換速度(C-NCR)と、色彩データ(a*)の関係を求め、その結果を
図10のグラフに示した。
図10は、横軸に窒素変換速度(C-NCR)を示し、縦軸にa*を示している。
図10に示すa*の回帰直線は、y=0.4314x+9.0469のモデルに対し、決定係数がR
2=0.9455であり、高い相関性があることを示している。
【0078】
(L*a*b*の評価)
色彩指標としては、a*のほかに、b*やL*を利用して評価することができる。それぞれについて、評価した結果を
図11のグラフに示した。
図11は、横軸に窒素変換速度(C-NCR)を示し、縦軸にL*a*b*の値を示している。a*については
図10と同じ回帰直線(y=0.4314x+9.0469:決定係数がR
2=0.9455)である。b*の回帰直線は、y=0.7471x+15.157のモデルに対し、決定係数がR
2=0.995であり、高い相関性があることを示している。L*の回帰直線は、y=-0.2891x+47.653のモデルに対し、決定係数がR
2=0.7593であった。このことから、L*は担体の活性(C-NCR)との相関性に関し、a*及びb*と比較すると低くなる傾向が確認された。
【0079】
(彩度Cの評価)
彩度としてC=((a*)
2+(b*)
2)
1/2とし、色彩空間での色の距離感を示すことも可能である。ここでは、高活性時(24kg-N(m
3d)
-1)を基準として100%とし、各条件での窒素変換速度を相対活性比で示し、評価した。評価した結果を
図12のグラフに示した。
図12は、横軸に活性比(%)を示し、縦軸にCの値を示している。Cの回帰直線は、y=0.213x+17.685のモデルに対し、決定係数がR
2=0.9939であり、高い相関性があることを示している。したがって、この場合、高い相関関係が得られCでも評価が可能であることが理解できる。
【0080】
(RGB評価)
さらにRGB値を利用して評価をすることができる。それぞれについて、評価した結果を
図13のグラフに示した。
図13に示すように、横軸は横軸に窒素変換速度(C-NLR)を示し、縦軸にRGB値を示している。
図13に示すRの回帰直線は、y=―0.1711x+244.95のモデルに対し、決定係数がR
2=0.2185であり、Gの回帰直線は、y=―1.807x+172.17のモデルに対し、決定係数がR
2=0.9555であり、Bの回帰直線は、y=―2.1366x+127.12のモデルに対し、決定係数がR
2=0.9621であった。
【0081】
赤い色を示すR値では決定係数がR2=0.2185であり、相関性はかなり弱い結果となった。一方、緑を示すG値では決定係数がR2=0.955であり、青を示すB値では決定係数がR2=0.9621であり、高い相関性が得られることを見出した。
【0082】
(実施例2:定常時の運転管理)
表1に示す排水を用い、
図7の連続試験を用いて連続運転を実施した。この時、担体の色を定期的に測定し、運転管理を行った。運転条件として、基本的に実施例1と同じである。水温は35℃、担体充填率は10%とし、反応槽内のpHは7.5となるようpHコントローラーを用いて調整した。滞留時間を調整することで、担体負荷を10~16kg-N(m
3d)
-1とした。
【0083】
色彩の評価方法としては、分光測色計CM-5を用いて計測した。このときa*の上限値を18と設定し、18以上の値の場合、異常とし、負荷を下げることとした。
【0084】
運転中a*を常時測定し、活性を評価した。その結果、a*の値は13~16の間であり、異常値を検知することなく、一定の運転が可能であった。このa*の測定により、水質を分析する頻度を下げることができ、水質分析費用やそれに伴う廃液、廃棄物量を削減することが可能であった。
【0085】
(実施例3:過負荷試験)
表1に示す排水を用い、
図7の連続試験を用いて連続運転を実施した。運転条件として、基本的に実施例1と同じである。水温は35℃、担体充填率は10%とし、反応槽内のpHは7.5となるようpHコントローラーを用いて調整した。過負荷条件を試すため、滞留時間を調整することで、担体負荷を20~40kg-N(m
3d)
-1とした。
【0086】
(色彩の評価方法)
L*a*b*および彩度の計測では、反応槽から数粒の担体を採取し、分光測色計CM-5を用いて計測した。また、RGB値の測定には、デジタルカメラで撮影した画像から、画像解析ソフト(Windowsのペイントアプリ)を利用して解析した。
【0087】
(水質評価およびa*評価)
反応槽202に流入させる排水量を低下させ、負荷を低減させた。その時の結果を
図14に示した。
図14のグラフは横軸に時間(day)を示し、左縦軸は担体の窒素負荷速度C-NLR(Carrier-Nitrogen Loading Rate)の値、及び担体の窒素変換速度C-NCR(Carrier-Nitrogen N - Conversion Rate)を示している。右縦軸a*とし、その値を示している。流速(HRT)を調整することで、負荷は段階的に低下させ、担体当たりの窒素負荷速度(C-NLR)を20から48kg-N(m
3d)
-1まで上昇させた。
【0088】
図14に示すように、負荷を上昇させると、窒素処理活性を示す窒素変換速度(C-NCR)は低下する傾向を示した。このように、過剰な負荷を与えると、水質が悪化する前に、a*が低下することを見出した。すなわち、図中の16日目に負荷を上昇させたが、これが限界であり、19日目のa*は先の値は22から19に低下している。そして、その後に急激に窒素変換速度C-NCRが低下している。
【0089】
これらのことから、本発明の運用方法として、a*の上限値を設定してa*が規定を超えないよう対策することも一案であるが、たとえば、流量を上げたり、負荷上昇時において、どこまで負荷がかけられるか、運転しなくてはいけない事態が生じた際、流入量を増やしている(負荷を上昇させている)にも関わらず、a*が低下した時には、限界が近いことを示す。その場合は、速やかに負荷を一段階下げるなど、対策をすることで、失活させることなく、運転が可能となる。
【0090】
(実施例4:過負荷時の運転管理)
表1に示す排水を用い、
図7の連続試験を用いて連続運転を実施した。この時、担体の色を定期的に測定し、運転管理を行った。
【0091】
運転条件として、基本的に実施例1と同じである。水温は35℃、担体充填率は10%とし、反応槽内のpHは7.5となるようpHコントローラーを用いて調整した。
【0092】
過負荷条件を試すため、滞留時間(HRT)を調整することで、担体負荷を20~40kg-N(m3d)-1とした。
【0093】
色彩の評価方法としては、分光測色計CM-5を用いて計測した。このときa*の上限値を20と設定し、20以上の値の場合、異常とし、負荷を下げることとした。
【0094】
運転中a*を常時測定し、活性を評価した。その結果、担体負荷を35から40kg-N(m3d)-1とした時、a*の値が20以上の値を検知した。この値を基に、リアクターの異常を検知し、原水の流入を停止した。
【0095】
滞留時間を調整することで、担体負荷を30程度に下げたところ、a*の値は19以下となった。その後は、安定した処理性能を維持することができた。
【0096】
このように、a*の測定により、過剰な窒素負荷を検知することができ、水質を分析する頻度を下げることができ、水質分析費用やそれに伴う廃液、廃棄物量を削減することが可能であった。また、リアクターが失活してしまうと、性能の回復に長い期間を要することがあるため、それを未然に防止できることは大きな効果である。
【0097】
(変形例:実排水を用いた管理)
下水処理場において、下水汚泥を消化処理した後、脱水した後に排出される下水汚泥脱水ろ液を用いて、実施例1と同様の試験を実施した。
【0098】
その結果、排水中に含まれる褐色成分により、a*の値は低い値とった。しかしながら、担体当たりの処理速度(X)とa*の値(Y)は比例関係を示しており、Y=0.31X+6.5となった。このように、各排水に含まれる色素成分を基に、補正を行うことが好ましい。
【符号の説明】
【0099】
10・・・活性評価装置、12・・・光源部、14・・・受光部、16・・・評価部、18・・・細菌、20・・・排水処理装置、21・・・原水配管、22・・・ポンプ、23・・・生物処理槽、24・・・処理水配管、25・・・調整部、30・・・排水処理装置、31・・・検出槽、40・・・排水処理装置、41・・・送風機(ブロア)、50・・・排水処理装置、51・・・薬剤タンク、52・・・薬剤ポンプ、200・・・実験装置、202・・・反応槽、204・・・アナモックス担体、206・・・ウォータージャケット、206A・・・恒温水供給管、206B・・・恒温水排出管、208・・・原水供給管、210・・・排出管、212・・・酸性溶液供給管、214・・・ガス供給管、216・・・撹拌器、218・・・pHセンサー