(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110815
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】塗布装置
(51)【国際特許分類】
B05C 11/10 20060101AFI20240808BHJP
B05C 11/00 20060101ALI20240808BHJP
B05C 1/02 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
B05C11/10
B05C11/00
B05C1/02 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023015641
(22)【出願日】2023-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100150566
【弁理士】
【氏名又は名称】谷口 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100142608
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 由佳
(74)【代理人】
【識別番号】100213470
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 真二
(72)【発明者】
【氏名】大庭 博明
(72)【発明者】
【氏名】尾関 佑斗
【テーマコード(参考)】
4F040
4F042
【Fターム(参考)】
4F040AA02
4F040AA12
4F040AA32
4F040AB04
4F040AC01
4F040BA04
4F040CA03
4F040CA05
4F040CA09
4F040CA12
4F040CA17
4F040CA20
4F042AA02
4F042AA06
4F042AA28
4F042AB00
4F042BA08
4F042CA01
4F042DA00
4F042DF01
4F042DH09
(57)【要約】
【課題】塗布材料を塗布した箇所を容易に見つけることができ作業効率の向上を図ると共にコスト低減を図れる塗布装置を提供する。
【解決手段】塗布装置は、基板5の表面に凹部を加工する加工機構4Aと、加工機構4Aにより加工された凹部に塗布材料70を転写する塗布機構4Bと、加工機構4Aおよび塗布機構4Bの各サーボモータ41を制御すると共に、基板5に対する加工機構4Aおよび塗布機構4Bの相対位置を制御する制御部とを備える。加工機構4Aは、基板5の表面に対し垂直な方向に移動可能な加工針24Aと、この加工針24Aを前記垂直な方向に駆動するためのサーボモータ41と、これら加工針24Aおよびサーボモータ41を支持する架台17とを含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理対象材の表面に凹部を加工する加工機構と、
前記加工機構により加工された前記凹部に塗布材料を転写する塗布機構と、
前記加工機構および前記塗布機構の各駆動源を制御すると共に、前記処理対象材に対する前記加工機構および前記塗布機構の相対位置を制御する制御部と、
を備えた塗布装置。
【請求項2】
請求項1に記載の塗布装置において、前記加工機構は、前記処理対象材の表面に対し垂直な方向に移動可能な加工針と、この加工針を前記垂直な方向に駆動するための駆動源と、前記加工針および前記駆動源を支持する架台とを含む塗布装置。
【請求項3】
請求項2に記載の塗布装置において、前記塗布機構は、前記処理対象材の表面に対し垂直な方向に移動可能な塗布針と、この塗布針を前記垂直な方向に駆動するための駆動源と、前記塗布材料を貯留し前記塗布針を前記塗布材料内に浸漬させる塗布材料容器と、前記塗布針、前記駆動源および前記塗布材料容器を支持する架台とを含み、前記塗布材料容器には、前記塗布材料内に浸漬された前記塗布針の先端部が突出可能な貫通孔が設けられ、前記制御部は、前記塗布材料容器の前記貫通孔から前記塗布針の先端部を突出させるように、前記駆動源を制御する塗布装置。
【請求項4】
請求項3に記載の塗布装置において、前記制御部は、前記凹部を撮像した画像または前記凹部の底面の深さに基づいて、前記凹部の位置情報を検出する塗布装置。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載の塗布装置において、前記処理対象材に対し前記加工機構および前記塗布機構を直交3軸方向に相対移動する直動ユニットを備える塗布装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理対象材に塗布材料を塗布した際に、塗布した箇所を容易に検出し得る塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、RFID(Radio Frequency Identification)タグなどの微細な回路を印刷(塗布)方式で描画して形成するプリンテッドエレクトロニクス技術が急速に発展してきている。微細な回路のパターンおよび電極パターンを形成する方式としては、インクジェット方式、ディスペンサ方式等が一般的であるが、塗布針を用いた方式も、広範囲の粘度の材料を用いて微細な塗布が可能な点で注目されている。
【0003】
塗布針を用いて液体材料の微細な塗布を行なう方法については、例えば、特許文献1に開示されている塗布ユニットを用いる方法が提案されている。このような塗布ユニットは、微細パターンの欠陥を修正することを目的とするもので、広範囲な粘度の塗布材料を用いて微細な塗布を行なうことが可能である。塗布動作の際、塗布材料を保持する材料容器の底部に形成された貫通孔から、1本の塗布針を突出させる。塗布針は、先端に付着している塗布材料を対象物に接触させて塗布を行なう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4802027号公報
【特許文献2】特開2000-146537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
塗布装置の対象物としては、ガラスまたはウェハ等の硬いもの、ゴム、樹脂、紙および多孔質材等の柔軟性を有するものがある。いずれの対象物においても、塗布材料が透明な場合、塗布した箇所を見つけにくいという問題がある。この問題の解決策として、例えば、対象物表面の凹凸を光学的に可視化する方法がある。
【0006】
特許文献2では、微分干渉観察機能を搭載し、液晶パネル上の厚さ0.1μm以下の薄膜欠陥を可視化している。この方法を用いれば、塗布材料の付着による凹凸を可視化することが可能である。しかしながら、凹凸を可視化するための特別な観察光学系を搭載する必要があり装置コストが上昇する。また、もともと表面に凹凸のある対象物では、塗布材料に起因した凹凸か、対象物表面の凹凸かの判定が難しいという課題がある。
【0007】
本発明の目的は、塗布材料を塗布した箇所を容易に見つけることができ作業効率の向上を図ると共にコスト低減を図れる塗布装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の塗布装置は、処理対象材5の表面に凹部5aを加工する加工機構4Aと、
前記加工機構4Aにより加工された前記凹部5aに塗布材料70を転写する塗布機構4Bと、
前記加工機構4Aおよび前記塗布機構4Bの各駆動源41を制御すると共に、前記処理対象材5に対する前記加工機構4Aおよび前記塗布機構4Bの相対位置を制御する制御部CUと、を備えている。
【0009】
この構成によると、処理対象材5の表面に凹部5aを加工しこの凹部5aに塗布材料70を転写する。前記凹部5aの壁面5aaを境界線として確認できるため、塗布材料70を塗布した箇所を容易に見つけることができる。前記箇所に追加の加工または修正等を行う場合にも、前記凹部5aから容易に特定の箇所を見つけることができるため、塗布ユニットを用いた従来構造よりも作業効率が向上する。前記のように前記凹部5aを容易に確認できるため、特別な観察光学系を用いた従来構造等よりもコスト低減を図れる。
【0010】
前記加工機構4Aは、前記処理対象材5の表面に対し垂直な方向に移動可能な加工針24Aと、この加工針24Aを前記垂直な方向に駆動するための駆動源41と、前記加工針24Aおよび前記駆動源41を支持する架台17とを含むものとしてもよい。この場合、塗布材料70を転写すべき凹部5aの大きさに応じた加工針24Aを用いることで、処理対象材5の表面に所望のパターンを形成することができる。
【0011】
前記塗布機構4Bは、前記処理対象材5の表面に対し垂直な方向に移動可能な塗布針24Bと、この塗布針24Bを前記垂直な方向に駆動するための駆動源41と、前記塗布材料70を貯留し前記塗布針24Bを前記塗布材料70内に浸漬させる塗布材料容器21と、前記塗布針24B、前記駆動源41および前記塗布材料容器21を支持する架台17とを含み、前記塗布材料容器21には、前記塗布材料70内に浸漬された前記塗布針24Bの先端部が突出可能な貫通孔21aが設けられ、前記制御部CUは、前記塗布材料容器21の前記貫通孔21aから前記塗布針24Bの先端部を突出させるように、前記駆動源41を制御してもよい。この場合、広範囲の粘度の塗布材料70を用いて微細なパターンを処理対象材5の表面に形成することができる。
【0012】
前記制御部CUは、前記凹部5aを撮像した画像または前記凹部5aの底面Sの深さに基づいて、前記凹部5aの位置情報を検出してもよい。この場合、処理対象材5の平面視における、凹部5aの位置情報をより確実に且つ精度よく検出し得る。
【0013】
前記処理対象材5に対し前記加工機構4Aおよび前記塗布機構4Bを直交3軸方向に相対移動する直動ユニットDUを備えてもよい。この場合、処理対象材5に対し、加工機構4Aおよび塗布機構4Bを直動ユニットDUにより直交3軸方向に相対移動させ、凹部5aの加工および塗布材料70の転写を連続的に行うことが可能となる。これにより作業効率の向上をさらに図ることが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の塗布装置は、処理対象材の表面に加工された凹部に塗布材料を転写するため、塗布材料を塗布した箇所を容易に見つけることができ作業効率の向上を図ると共にコスト低減を図れる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る塗布装置の斜視図である。
【
図2】同塗布装置の加工機構および塗布機構等の正面図である。
【
図3A】同加工機構の正面を拡大して示す拡大正面図である。
【
図3B】同加工機構の側面を拡大して示す拡大側面図である。
【
図4A】同加工機構のカム等を部分的に拡大して示す部分拡大図である。
【
図4B】同カムのカム面を含むフランジ部を側面から見た展開図である。
【
図5A】同塗布機構の正面を拡大して示す拡大正面図である。
【
図5B】同塗布機構の側面を拡大して示す拡大側面図である。
【
図6B】同塗布機構の塗布針をZ軸方向に移動させた状態の断面図である。
【
図7A】同加工機構により加工針を基板上に位置決めする過程を示す図である。
【
図7B】同加工針 を下降する過程を示す図である。
【
図7C】同加工針により基板に凹部が形成された過程を示す図である。
【
図8A】同塗布機構により塗布針を基板上に位置決めする過程を示す図である。
【
図9A】凹部の底面とその周辺との判別方法を説明する基板の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[第1の実施形態]
本発明の実施形態に係る塗布装置を
図1ないし
図9Cと共に説明する。
<塗布装置の全体構成>
図1のように、塗布装置は、処理室PRと、直動ユニットDUと、加工機構4Aと、塗布機構4Bと、観察光学系6と、観察光学系6に接続されたCCDカメラ7と、制御部CUとを備える。処理室PRの内部に、処理対象材である基板5が支持され、基板5に対し加工機構4Aおよび塗布機構4B等を用いた処理が行われる。
制御部CUは、加工機構4Aおよび塗布機構4Bの各駆動源を制御すると共に、基板5に対する加工機構4Aおよび塗布機構4Bの相対位置を制御する。また制御部CUは観察光学系6を制御する。観察光学系6は、基板5の塗布位置を観察するためのものである。CCDカメラ7は、観察光学系6で観察した画像を電気信号に変換する。基板5は、例えば、柔軟性を有する樹脂から成る薄板状である。
【0017】
<直動ユニット>
処理室PRの内部には、直動ユニットDUが設置されている。直動ユニットDUは、基板5に対し加工機構4Aおよび塗布機構4Bを直交3軸方向に相対移動するいわゆるXYZステージである。直動ユニットDUは、移動駆動用のアクチュエータであるX,YおよびZ軸用の直動アクチュエータ11,12,13を有する。各直動アクチュエータ11,12,13は制御部CUにより制御される。処理室PRの底部上に、装置本体の奥行き方向であるY軸用の直動アクチュエータ12が設置されている。
【0018】
Y軸用の直動アクチュエータ12は、処理室PRの底部上においてY軸方向に沿って延びるガイド部12aと、ガイド部12aに沿って摺動するY軸テーブル2と、駆動部材であるモータ12bと、モータ12bの回転を直線往復動作に変換するボールねじ等の変換機構12cとを有する。Y軸テーブル2の上部には、基板5が支持される。モータ12bにより変換機構12cを動作させることにより、Y軸テーブル2がガイド部12aに沿ってY軸方向に移動可能になっている。
【0019】
X軸用の直動アクチュエータ11は、装置本体の左右方向であるX軸方向に沿って延びるガイド部11aと、ガイド部11aに沿って摺動するX軸テーブル1と、駆動部材であるモータ11bと、モータ11bの回転を直線往復動作に変換するボールねじ等の変換機構11cとを有する。処理室PRの底部上に門型の構造体14が設置され、構造体14は、Y軸テーブル2をX軸方向に跨ぐように架設されている。構造体14の上部に、前記ガイド部11aが設置されている。モータ11bにより変換機構11cを動作させることにより、X軸テーブル1がガイド部11aに沿ってX軸方向に移動可能になっている。
【0020】
Z軸用の直動アクチュエータ13は、X軸およびY軸方向にそれぞれ直交するZ軸方向(この例では上下方向)に進退する。Z軸用の直動アクチュエータ13は、X軸テーブル1に支持される。Z軸用の直動アクチュエータ13は、Z軸方向に沿って延びるガイド部13aと、ガイド部13aに沿って摺動するZ軸テーブル3と、駆動部材であるモータ13bと、モータ13bの回転を直線往復動作に変換するボールねじ等の変換機構13cとを有する。X軸テーブル1に連結された立板状の連結部15に、前記ガイド部13aが設置されている。モータ13bにより変換機構13cを動作させることにより、出力部となるZ軸テーブル3がガイド部13aに沿ってZ軸方向に移動可能になっている。Z軸テーブル3には、加工機構4A、塗布機構4Bおよび観察光学系6が支持されている。
【0021】
<加工機構>
図2に示す加工機構4Aは、基板5の表面に凹部を加工する。加工機構4Aは、サーボモータ41、加工針24A、加工機構用の駆動力変換機構部16Aおよび架台17を含む。
図1のZ軸テーブル3に、
図3Bの架台17を介してサーボモータ41が支持されている。サーボモータ41は、後述する加工針24Aを、
図2の基板5の表面に対し垂直な方向に駆動するための駆動源である。サーボモータ41はZ軸方向に延び且つZ軸心回りに回転する回転軸41aを有する。前記架台17に、サーボモータ41、駆動力変換機構部16Aおよび加工針24Aが支持される。
【0022】
<駆動力変換機構について>
図3Aのように、駆動力変換機構部16Aは、サーボモータ41の回転駆動力を、基板5の表面に対し垂直な方向であるZ軸方向の力に変換する機構部である。駆動力変換機構部16Aは、カム43、軸受44、カム連結板45、可動部46、加工針ホルダ固定部47A、加工針ホルダ収納部48Aおよび加工針ホルダ20Aを有する。サーボモータ41の回転軸41aにはカム43が連結され、カム43は回転軸41aを中心に回転可能である。カム43は、中心部43aと、フランジ部43bとを含む。
【0023】
中心部43aは、回転軸41aの先端部に同軸に連結された中空円筒状の部材である。中心部43aにおけるZ軸方向下端部に、フランジ部43bが設けられている。
図4Aのように、フランジ部43bの上面はカム面61となっている。カム面61は、中心部43aの外周に沿って円環状に形成され、フランジ部43bの底面からの距離が変動するようにスロープ状に形成されている。具体的には、
図4Bのように、カム面61は、上端フラット領域62と、下端フラット領域63と、スロープ部Spとを含む。
【0024】
カム面61のうち上端フラット領域62は、フランジ部43b(
図4A)の底面からの距離が最も大きい領域である。下端フラット領域63は、円周方向に間隔を隔てて設けられ、フランジ部43b(
図4A)の底面からの距離が最も小さい領域である。スロープ部Spは、上端フラット領域62と下端フラット領域63との間を接続するスロープ状である。
図3Bのように、カム43のカム面61に、軸受44の外輪外周面が接する。
【0025】
架台17には、Z軸方向に延びるリニアガイド49が設置されている。リニアガイド49に、可動部46、加工針ホルダ固定部47Aおよび加工針ホルダ収納部48AがZ軸方向に移動可能に支持されている。可動部46に、Z軸方向に延びるカム連結板45の基端部が固定されている。
図3Aのように、カム連結板45の先端部には、軸受44がX軸方向の回転軸心回りに回転自在に支持されている。
【0026】
可動部46には、加工針ホルダ固定部47Aおよび加工針ホルダ収納部48Aが連結されている。加工針ホルダ収納部48Aに、加工針ホルダ20Aの大部分が収納されている。加工針24Aは、加工針ホルダ20Aの下面において同加工針ホルダ20AからZ軸方向に突出するように配置されている。加工針24Aは、基板5の表面に対し垂直な方向つまりZ軸方向に移動可能である。
【0027】
図3Bのように、可動部46に第1の固定ピン52が設けられ、架台17に第2の固定ピン51が設けられている。第1,第2の固定ピン52,51間に、引張りコイルばねから成るバネ50が設けられている。可動部46は、バネ50によりZ軸方向下方に向けた引張り力を受けた状態になっている。バネ50による引張り力は、可動部46およびカム連結板45を介して軸受44に作用する。したがって、軸受44は、バネ50の引張り力によって、カム43のカム面61に押圧された状態を維持する。
【0028】
<加工機構の動作について>
加工機構4Aにおいて、サーボモータ41を駆動することにより回転軸41aを回転させてカム43を回転させる。これによりカム43のカム面61は、Z軸方向における高さが変化する。このためカム面61に接触している軸受44は、サーボモータ41の回転に応じて、Z軸方向における位置が変動する。軸受44のZ軸方向での位置変動に応じて、可動部46、加工針ホルダ固定部47Aおよび加工針ホルダ収納部48AがZ軸方向に移動する。この結果、加工針ホルダ収納部48Aに保持されている加工針ホルダ20AもZ軸方向に移動するので、加工針ホルダ20Aに設けられた加工針24Aを、Z軸方向に変化させることができる。したがって、加工機構4Aにより基板5の表面に凹部を加工し得る。
【0029】
<塗布機構>
図2のように、塗布機構4Bは、加工機構4Aにより加工された凹部に塗布材料70を転写する。塗布材料70として、例えば、透明な材料が採用される。塗布機構4Bは、塗布針24BをZ軸方向に駆動するための駆動源であるサーボモータ41、塗布針24B、塗布機構用の駆動力変換機構部16Bおよび架台17を含む。塗布機構用の駆動力変換機構部16Bは、塗布材料容器21を備えている以外、加工機構用の駆動力変換機構部16Aと同様の構成である。したがって、塗布機構用の駆動力変換機構部16Bにつき、加工機構用の駆動力変換機構部16Aと同一の構成部品には同一の符号を付し重複する説明を適宜省略する。
【0030】
図5Aのように、塗布機構用の駆動力変換機構部16Bは、カム43、軸受44、カム連結板45、可動部46、塗布針ホルダ固定部47B、塗布針ホルダ収納部48B、塗布針ホルダ20Bおよび塗布材料容器21を有する。駆動力変換機構部16Bの架台17には、
図5Bのリニアガイド49が設置されている。リニアガイド49に、可動部46、塗布針ホルダ固定部47Bおよび塗布針ホルダ収納部48BがZ軸方向に移動可能に支持されている。塗布針ホルダ固定部47B、塗布針ホルダ収納部48Bおよび塗布針ホルダ20Bは、
図3Aの加工針ホルダ固定部47A、加工針ホルダ収納部48Aおよび加工針ホルダ20Aと同様の機能を有する。
【0031】
図5Bのように、架台17のZ軸方向下端部には、塗布材料容器21が支持されている。塗布針ホルダ20Bに対しZ軸方向下方に所定間隔を隔てて塗布材料容器21が配置され、塗布針24Bは、塗布材料容器21に挿入された状態で保持されている。前記架台17に、サーボモータ41、駆動力変換機構部16Bおよび塗布針24Bが支持される。
【0032】
図6Aのように、塗布材料容器21は、塗布材料70を貯留し塗布針24Bを塗布材料70内に浸漬させる。
図6Bのように、塗布材料容器21の底部には、塗布材料70に浸漬された塗布針24Bの先端部24Baが突出可能な貫通孔21aが設けられている。
図1の制御部CUは、
図5Aに示す塗布材料容器21の貫通孔21aから塗布針24Bの先端部24Ba(
図6B)を突出させるように、サーボモータ41を制御する。塗布針24Bは、基板5の表面に対し垂直な方向であるZ軸方向に移動可能である。
図8Aに示す塗布針24Bの先端部の直径D1は、
図7Aに示す加工針24Aの先端部の直径D2よりも小径に設定されている。
【0033】
<塗布機構の動作について>
図3Aの加工機構4Aにより基板5の表面に凹部を加工した後、
図5Bの塗布機構4Bにおいて、サーボモータ41を駆動することにより回転軸41aを回転させてカム43を回転させる。カム面61に接触している軸受44は、サーボモータ41の回転に応じて、Z軸方向における位置が変動する。軸受44のZ軸方向での位置変動に応じて、可動部46、塗布針ホルダ固定部47Bおよび塗布針ホルダ収納部48BがZ軸方向に移動する。この結果、塗布針ホルダ収納部48Bに保持されている塗布針ホルダ20BもZ軸方向に移動するので、塗布針ホルダ20Bに設けられた塗布針24Bを、Z軸方向に変化させることができる。
【0034】
具体的には、
図4Bに示すカム面61の上端フラット領域62に、
図5Bの軸受44が接している場合には、
図6Aのように、塗布針24Bが上端位置に配置される。このとき、塗布針24Bの先端部は、塗布材料容器21内に保持されている塗布材料70内に浸漬された状態になっている。
【0035】
次に、
図5Aのサーボモータ41が回転軸41aを回転させることにより、カム43が回転する。
図4Bに示すカム面61の下端フラット領域63が、
図5Bの軸受44に接する位置に到達した場合には、
図6Bのように、塗布針24Bは、塗布材料容器21の底部に形成された貫通孔21aを通り塗布材料容器21の底面からZ軸方向下向きに突出した状態になる。このとき突出した塗布針24Bの表面には、塗布材料70の一部が付着した状態となっている。
【0036】
そして、
図1のZ軸テーブル3が塗布機構4Bを基板5側に移動させる。これにより、
図8Bのように、基板5の凹部5aに塗布針24Bの先端部が接触して、塗布材料70(
図6B)を基板5の表面の凹部5aに塗布し得る。
図1のZ軸テーブル3を先に移動させた後に、
図2のサーボモータ41を駆動させてよいし、
図1のZ軸テーブル3と
図2のサーボモータ41との動作を略同時に実施してもよい。
このように塗布機構4Bでは、サーボモータ41の回転運動を塗布針24BのZ軸方向における運動(上下運動)に変換し得る。このような構成とすることにより、塗布針24Bを迅速かつ正確にZ軸方向に移動させ得る。
【0037】
<制御部>
図1のように、制御部CUは、制御用コンピュータ10と、操作パネル8と、モニタ9とを含む。制御用コンピュータ10は、直動ユニットDU、観察光学系6、加工機構4Aおよび塗布機構4Bを制御する。制御用コンピュータ10、操作パネル8およびモニタ9は、処理室PRの外部に設置されている。操作パネル8は、制御用コンピュータ10への指令を入力するために用いられる。モニタ9は、CCDカメラ7で変換された画像データ、および制御用コンピュータ10からの出力データを表示する。
【0038】
<塗布方法について>
以上説明した塗布装置を用いた塗布方法は、
図7A,
図7B,
図7Cのように、処理対象材である基板5の表面に凹部5aを加工する加工工程と、
図8A,
図8Bのように、加工工程で加工された凹部5aに塗布材料を転写する転写工程とを含む。
加工工程では、
図7Aのように、最初に、加工針24Aを用いて凹部を形成する。加工針24Aを基板5の真上に位置決めし、
図7Bのように、加工針24Aを下降する。この際、加工針24Aの先端位置Z1は、基板5の接触位置ZtよりもさらにΔZだけ下降させる。この下降動作により、
図7Cのように、基板5に凹部5aが形成される。この凹部5aの深さをDとする。
【0039】
次の転写工程では、
図8Aのように、塗布針24Bを用いて凹部5aの底面Sに塗布材料を塗布する。塗布針24Bを基板5の真上に位置決めし、
図8Bのように、塗布針24Bを下降する。ここで塗布針24Bの先端位置Z2は、基板5の接触位置Ztに凹部5aの深さDを加えた(Zt+D)になるように位置決めする。
図7B,
図7Cに示す加工針24Aの下降距離ΔZと凹部5aの深さDとの関係は、予め実験的に求めておく。また加工針24Aと塗布針24B(
図8B)の針先端の相対位置関係は予め計測しておく。
【0040】
<凹部とその周辺との判別方法>
図9A,
図9B,
図9Cを用いて凹部の底面とその周辺との判別方法を説明する。
図9Bは、凹部5aを
図9Aに示すZ軸方向一方Zaから見た図である。
凹部5aの壁面5aaでは、
図1の観察光学系6における図示外の照明装置から基板5に照射した光は散乱し、観察光学系6に戻ってこない。このため
図9Bのように、凹部の壁面5aaは、周囲と比較して暗くなりリング状のようになる。
【0041】
このリング状の部分を画像処理で抽出することにより、塗布位置を検出することができる。具体的には、
図9Aに示す凹部5aを
図1のCCDカメラ7で撮像し、撮像した画像を制御用コンピュータ10で処理する。処理内容は、撮像した画像をその輝度で2値化処理し、リング状の部分を抽出する。
図9Cに抽出結果を示す。白の部分18が凹部壁面を示す。白の部分18の中心位置を塗布位置とする。このように
図1の制御部CUは、凹部を撮像した画像に基づいて、凹部の位置情報を検出し得る。
【0042】
凹部の判定方法は、必ずしも2値化処理を用いる必要はない。例えば、
図9Aに示す凹部5aの底面Sと基板表面との高さ(つまり凹部5aの底面Sの深さ)を測定し、3次元座標データを利用して凹部5aのXY軸方向の位置情報を検出してもよい。前記3次元座標データは、例えば、画像を高さ方向に走査して各画素のピント位置を検出する方法、または図示外の距離センサを用いて測定する方法を適用し得る。前記距離センサは、
図1の観察光学系6等と共にZ軸テーブル3に支持される。このように制御部CUは、凹部の底面の深さに基づいて、凹部の位置情報を検出し得る。
【0043】
<作用効果>
以上説明した塗布装置によれば、基板5の表面に
図9Aの凹部5aを加工しこの凹部5aに塗布材料70(
図6B)を転写する。凹部5aの壁面5aaを境界線として確認できるため、塗布材料を塗布した箇所を容易に見つけることができる。前記箇所に追加の加工または修正等を行う場合にも、凹部5aから容易に特定の箇所を見つけることができるため、塗布ユニットを用いた従来構造よりも作業効率が向上する。前記のように凹部5aを容易に確認できるため、特別な観察光学系を用いた従来構造等よりもコスト低減を図れる。
【0044】
基板5の凹部底面Sに、
図6Bのように、塗布針24Bの先端部24Baを接触させて塗布材料70を転写し得るため、転写量を一定にすることができる。これにより製造品質の向上を図れる。塗布針24Bの先端部24Baの直径は、
図7Aに示す加工針24Aの先端部の直径よりも小径に設定されているため、
図8Aの塗布針24Bの先端部を凹部底面Sに確実に接触させることができる。
図1の制御部CUは、
図9Aの凹部5aを撮像した画像または前記凹部5aの底面Sの深さに基づいて、凹部5aの位置情報を検出する。このため、基板5の平面視における、凹部5aの位置情報(XY軸座標)をより確実に且つ精度よく検出し得る。
図1のように、基板5に対し加工機構4Aおよび塗布機構4Bを直交3軸方向に相対移動する直動ユニットDUを備えている。このため、基板5に対し、加工機構4Aおよび塗布機構4Bを直動ユニットDUにより直交3軸方向に相対移動させ、凹部の加工および塗布材料の転写を連続的に行うことが可能となる。これにより作業効率の向上をさらに図ることが可能となる。
【0045】
塗布機構4Bは、
図2の塗布材料容器21を備えている以外、加工機構4Aと同様の構成である。このため、複数の塗布機構4Bを備えた既存の塗布装置のうち、いずれか1つの塗布機構の塗布材料容器21を除外して加工機構4Aに容易に改変することが可能となる。したがって、塗布装置の製造コストを低減することができる。なお複数の塗布機構を備えた既存の塗布装置のうち、いずれか1つの塗布機構において、塗布材料容器21に塗布材料を貯留せずに加工機構として取り扱うようにしてもよい。
【0046】
<他の実施形態について>
用途によっては、観察光学系およびCCDカメラを除外した塗布装置とし、例えば、処理対象材の塗布位置を目視により観察してもよい。
処理対象材は、ゴム、紙および多孔質材等の柔軟性を有するものであってもよく、ガラスまたはウェハ等の硬いものであってもよい。
塗布材料として、透明以外の塗布材料を適用してもよい。
塗布針の先端部と加工針の先端部とを同径にしてもよい。
【0047】
<参考提案例>
処理対象材に対するコンタミネーションの問題を解決できる場合、加工機構と塗布機構とを兼用することも可能である。この塗布装置は、以下のように記載される。
処理対象材の表面に凹部を加工し加工された前記凹部に塗布材料を転写する塗布機構と、
前記塗布機構の駆動源を制御すると共に、前記処理対象材に対する前記塗布機構の相対位置を制御する制御部と、を備えた塗布装置。
この塗布装置によると、加工機構と塗布機構とを兼用できる分、前述の実施形態よりも部品点数を低減し、装置全体のコンパクト化を図れると共に製造コストの低減を図れる。
【0048】
以上、本発明の実施形態を説明したが、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0049】
4A…加工機構、4B…塗布機構、5…基板(処理対象材)、5a…凹部、17…架台、21…塗布材料容器、21a…貫通孔、24A…加工針、24B…塗布針、41…サーボモータ(駆動源)、70…塗布材料、CU…制御部、DU…直動ユニット