(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110818
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】車両の制御システム
(51)【国際特許分類】
F02D 19/02 20060101AFI20240808BHJP
F02M 21/02 20060101ALI20240808BHJP
F02D 19/08 20060101ALI20240808BHJP
F02D 41/12 20060101ALI20240808BHJP
F02D 41/34 20060101ALI20240808BHJP
F02D 41/22 20060101ALI20240808BHJP
F02B 75/02 20060101ALI20240808BHJP
F02M 33/00 20060101ALI20240808BHJP
F02M 25/00 20060101ALI20240808BHJP
B60K 6/48 20071001ALI20240808BHJP
B60K 6/24 20071001ALI20240808BHJP
B60W 10/06 20060101ALI20240808BHJP
B60W 10/08 20060101ALI20240808BHJP
B60W 20/19 20160101ALI20240808BHJP
B60L 50/16 20190101ALI20240808BHJP
【FI】
F02D19/02 B ZHV
F02M21/02 G
F02M21/02 K
F02D19/08 B
F02D41/12
F02D41/34 100
F02D41/22
F02B75/02 A
F02M33/00 D
F02M25/00 G
B60K6/48
B60K6/24
B60W10/06 900
B60W10/08 900
B60W20/19
B60L50/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023015646
(22)【出願日】2023-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松田 啓嗣
(72)【発明者】
【氏名】堀越 政寛
(72)【発明者】
【氏名】原田 雄司
(72)【発明者】
【氏名】内田 健司
【テーマコード(参考)】
3D202
3G092
3G301
5H125
【Fターム(参考)】
3D202AA08
3D202BB01
3D202BB11
3D202BB53
3D202CC02
3D202CC41
3D202DD16
3D202DD18
3D202DD20
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3D202DD26
3D202EE01
3G092AA01
3G092AA04
3G092AA06
3G092AA11
3G092AA17
3G092AB02
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3G092AB15
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3G092FA50
3G092GA05
3G092GA06
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3G092HF08Z
3G301HA01
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3G301PF03Z
5H125AA01
5H125AC08
5H125BA00
5H125BD17
5H125CA02
5H125EE31
5H125EE42
5H125EE51
(57)【要約】
【課題】車両の搭載に適した燃料改質のためのシステムを提供する。
【解決手段】レシプロエンジン3は、吸気行程、圧縮行程、膨張行程、ピストン32の上昇により燃焼ガスが圧縮される再圧縮行程、ピストンが下降する再膨張行程、及び、排気行程を有する6ストロークサイクルと、吸気行程、圧縮行程、膨張行程、排気行程を有する4ストロークサイクルとを選択的に実行し、6ストロークサイクルの実行中に、分解器6は、再圧縮行程における燃焼ガスの熱と圧力とを利用して、炭化水素燃料供給部45から供給された炭化水素燃料をカーボンと水素ガスとに分解し、水素ガス供給部5は、分解器によって生成された水素ガスを燃料として、シリンダ31内へ供給し、制御器21は、第1回転数N1よりも低い場合に、レシプロエンジンに6ストロークサイクルを実行させ、第1回転数以上の場合に、レシプロエンジンに4ストロークサイクルを実行させる。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されかつ、シリンダ内のピストンが往復動することにより、前記車両の走行用の駆動力を出力するレシプロエンジンと、
炭化水素燃料をカーボンと水素ガスとに分解しかつ、前記カーボンを貯蔵する分解器と、
前記炭化水素燃料を、前記シリンダ内及び前記分解器へ供給可能な炭化水素燃料供給部と、
前記分解器によって生成された前記水素ガスを燃料として、前記シリンダ内へ供給する水素ガス供給部と、
前記レシプロエンジンを制御する制御器と、を備え、
前記レシプロエンジンは、
前記ピストンの下降により、吸気ポートを通じて前記シリンダ内に、少なくとも吸気が導入される吸気行程、前記シリンダ内へ供給された前記水素ガスを含む混合気が、前記ピストンの上昇により圧縮される圧縮行程、前記混合気の燃焼により前記ピストンが下降する膨張行程、前記ピストンの上昇により燃焼ガスが圧縮される再圧縮行程、前記ピストンが下降する再膨張行程、及び、前記ピストンの上昇により、排気ポートを通じて排気ガスが排出される排気行程を有する6ストロークサイクルと、
前記ピストンの下降により、前記吸気ポートを通じて前記シリンダ内に、少なくとも吸気が導入される吸気行程、前記シリンダ内へ供給された前記炭化水素燃料を含む混合気が、前記ピストンの上昇により圧縮される圧縮行程、前記混合気の燃焼により前記ピストンが下降する膨張行程、及び、前記ピストンの上昇により、前記排気ポートを通じて排気ガスが排出される排気行程を有する4ストロークサイクルと、を、選択的に実行し、
前記分解器は、前記レシプロエンジンが前記6ストロークサイクルを実行している場合に、前記再圧縮行程における前記燃焼ガスの熱と圧力とを利用して、前記炭化水素燃料供給部から供給された前記炭化水素燃料を前記カーボンと前記水素ガスとに分解し、
前記制御器は、前記レシプロエンジンの回転数が第1回転数よりも低い場合に、前記レシプロエンジンに前記6ストロークサイクルを実行させ、前記第1回転数以上の場合に、前記レシプロエンジンに前記4ストロークサイクルを実行させる、車両の制御システム。
【請求項2】
請求項1に記載の車両の制御システムにおいて、
前記制御器は、前記レシプロエンジンの運転状態が、前記レシプロエンジンの回転数が前記第1回転数以上でかつ、前記レシプロエンジンの要求負荷が第1負荷以上の特定領域である場合に、前記レシプロエンジンに前記4ストロークサイクルを実行させ、前記レシプロエンジンの運転状態が、前記特定領域以外である場合に、前記レシプロエンジンに前記6ストロークサイクルを実行させる、車両の制御システム 。
【請求項3】
請求項1に記載の車両の制御システムにおいて、
前記制御器によって制御されると共に、前記レシプロエンジンの出力不足を補う電気モータを備え、
前記制御器は、前記レシプロエンジンが前記6ストロークサイクルを実行している場合であって、前記レシプロエンジンの要求負荷が第2負荷以上の場合に、前記電気モータを運転させる、車両の制御システム。
【請求項4】
請求項1に記載の車両の制御システムにおいて、
前記レシプロエンジンは、前記シリンダに連通する第3のポートと、前記第3のポートを開閉する開閉弁と、を有し、
前記分解器は、前記第3のポートに接続され、
前記炭化水素燃料供給部は、前記第3のポート内へ前記炭化水素燃料を噴射する第1インジェクタを有し、
前記制御器は、前記再圧縮行程において前記開閉弁を開弁させ、それによって前記燃焼ガスと前記炭化水素燃料とが、前記第3のポートを通じて前記分解器へ供給され、
前記制御器はまた、前記レシプロエンジンが前記4ストロークサイクルを実行している場合に、前記開閉弁の開閉を停止させる、車両の制御システム。
【請求項5】
請求項4に記載の車両の制御システムにおいて、
前記制御器は、前記車両の走行中でかつアクセル開度がゼロの場合に、前記レシプロエンジンへの前記水素ガス及び前記炭化水素燃料の供給を停止させるフューエルカットを実行し、
前記制御器は、前記フューエルカットの実行中に、前記ピストンが上昇している行程において前記開閉弁を開弁させ、
前記分解器は、前記ピストンの上昇により圧縮される前記シリンダ内のガスの熱と圧力とを利用して、前記第1インジェクタから噴射された前記炭化水素燃料を前記カーボンと前記水素ガスとに分解する、車両の制御システム。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の車両の制御システムにおいて、
前記水素ガス供給部は、前記水素ガスを前記シリンダ内へ噴射する第2インジェクタを有し、
前記炭化水素燃料供給部は、前記炭化水素燃料を前記吸気ポート内へ噴射する第3インジェクタを有している、車両の制御システム。
【請求項7】
請求項6に記載の車両の制御システムにおいて、
前記制御器は、前記レシプロエンジンが前記4ストロークサイクルを実行している場合であって、前記レシプロエンジンの異常燃焼が検出された場合に、前記第3インジェクタからの前記炭化水素燃料に加えて、前記第2インジェクタに前記水素ガスを噴射させる、車両の制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示する技術は、車両の制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、炭化水素をカーボンと水素とに直接分解する装置が記載されている。この従来の分解装置は、触媒が収容された反応器を備えている。炭化水素を含む原料ガスが反応器に供給されると、触媒の反応により生成されたカーボンが触媒に付着する。水素を含む反応ガスは反応器を通過する。反応器下流の水素精製装置は、反応ガス中の水素を精製し、水素濃度を高める。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両(例えば四輪自動車)の技術分野において、カーボンニュートラルへの取り組みが求められている。炭化水素燃料(ガソリン、及び/又は、軽油を含む)を利用するエンジンを搭載した車両においてカーボンニュートラルを実現するためには、エンジンの熱効率の向上、及び/又は、排気エミッション性能の向上に加えて、炭化水素燃料からカーボン(C)又はCO2を回収する新たな技術が必要である。
【0005】
炭化水素燃料を利用するエンジンが搭載された車両において、カーボン又はCO2を回収しようとすれば、(1)炭化水素燃料の燃焼後にCO2を回収する、又は、(2)炭化水素燃料の燃焼前に炭化水素燃料をカーボンと水素ガスとに分解し、カーボンを回収する、ことが考えられる。回収されたCO2又はカーボンが車両に貯蔵されることを考慮すれば、CO2はカーボンよりも重いため、(2)の方が、車両の燃費性能の点で有利である。また、(2)であれば、水素ガスをエンジンの燃料として利用することも可能である。水素ガスを燃焼させれば、燃焼に起因する炭素酸化物が発生しないという利点もある。
【0006】
そこで、前述した従来の分解装置を車両に搭載することが考えられる。従来の分解装置は、触媒を昇温するための加熱装置を備えている。従来の分解装置が車両に搭載された場合、エンジンの熱を触媒の昇温に利用することが可能である。
【0007】
ところが、水素ガスをエンジンの燃料に使用しようとすれば高濃度の水素ガスが必要である。従来の分解装置は、高濃度の水素ガスを得るために、水素を含む反応ガスから水素を精製するためのPSA(Pressure Swing Adsorption)法による水素精製装置を必要としている。車両に、水素精製装置を搭載することは、車両重量を増大させるという不都合がある。従来の分解装置は、車両の搭載には不向きである。
【0008】
ここに開示する技術は、車両の搭載に適した燃料改質のためのシステムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
炭化水素燃料の分解と、水素ガスの分離とを同時に行う膜反応器(Membrane Reactor)を、車両の燃料改質システムに利用することが考えられる。膜反応器は、触媒を利用して炭化水素燃料をカーボンと水素ガスとに分解しながら、分離膜が水素ガスのみを透過させることにより、小型でありながら、高濃度の水素ガスを生成できる。ところが、膜反応器において高濃度の水素ガスを効率的に生成しようとすれば、膜反応器に供給する、炭化水素燃料を含む原料ガスの圧力を高めなければならない。
【0010】
本願発明者らは、レシプロエンジンにおいて、ピストンの上昇によりシリンダ内のガスが圧縮されることに着目して、ここに開示する技術を完成させるに至った。
【0011】
具体的に、ここに開示するシステムのレシプロエンジンは、6ストロークサイクルを実行する。6ストロークサイクルは、吸気行程、圧縮行程、膨張行程、及び、排気行程からなる4ストロークサイクルに対して、膨張行程と排気行程との間に、ピストンの上昇により燃焼ガスが圧縮される再圧縮行程と、ピストンが下降する再膨張行程とが追加されたサイクルである。再圧縮行程における燃焼ガスの熱と圧力を利用すれば、熱及び/又は圧力を発生させる専用デバイスを別途搭載しなくても、レシプロエンジンの運転に組み合わせることにより、炭化水素燃料を、カーボンと水素ガスとに効率的に分解できる。
【0012】
ところが、車両に搭載されたレシプロエンジンが、車両の走行用の駆動力を出力するエンジンである場合、その運転状態は、低負荷から高負荷まで、及び、低回転から高回転まで大きく変化する。レシプロエンジンの回転数が低回転である場合は、1サイクル当たりの時間が比較的長いため、炭化水素燃料を、カーボンと水素ガスとに効率的に分解できる。しかし、レシプロエンジンの回転数が高回転である場合は、1サイクル当たりの時間が短いため、炭化水素燃料の分解反応の時間を確保することが難しくなる。
【0013】
そこで、ここに開示する技術は、レシプロエンジンの運転状態に応じて、炭化水素燃料の分解を行う6ストロークサイクルと、炭化水素燃料の分解を行わない4ストロークサイクルとを切り替えることにした。
【0014】
具体的に、ここに開示する技術は、車両の制御システムに係る。この制御システムは、
車両に搭載されかつ、シリンダ内のピストンが往復動することにより、前記車両の走行用の駆動力を出力するレシプロエンジンと、
炭化水素燃料をカーボンと水素ガスとに分解しかつ、前記カーボンを貯蔵する分解器と、
前記炭化水素燃料を、前記シリンダ内及び前記分解器へ供給可能な炭化水素燃料供給部と、
前記分解器によって生成された前記水素ガスを燃料として、前記シリンダ内へ供給する水素ガス供給部と、
前記レシプロエンジンを制御する制御器と、を備え、
前記レシプロエンジンは、
前記ピストンの下降により、吸気ポートを通じて前記シリンダ内に、少なくとも吸気が導入される吸気行程、前記シリンダ内へ供給された前記水素ガスを含む混合気が、前記ピストンの上昇により圧縮される圧縮行程、前記混合気の燃焼により前記ピストンが下降する膨張行程、前記ピストンの上昇により燃焼ガスが圧縮される再圧縮行程、前記ピストンが下降する再膨張行程、及び、前記ピストンの上昇により、排気ポートを通じて排気ガスが排出される排気行程を有する6ストロークサイクルと、
前記ピストンの下降により、前記吸気ポートを通じて前記シリンダ内に、少なくとも吸気が導入される吸気行程、前記シリンダ内へ供給された前記炭化水素燃料を含む混合気が、前記ピストンの上昇により圧縮される圧縮行程、前記混合気の燃焼により前記ピストンが下降する膨張行程、及び、前記ピストンの上昇により、前記排気ポートを通じて排気ガスが排出される排気行程を有する4ストロークサイクルと、を、選択的に実行し、
前記分解器は、前記レシプロエンジンが前記6ストロークサイクルを実行している場合に、前記再圧縮行程における前記燃焼ガスの熱と圧力とを利用して、前記炭化水素燃料供給部から供給された前記炭化水素燃料を前記カーボンと前記水素ガスとに分解し、
前記制御器は、前記レシプロエンジンの回転数が第1回転数よりも低い場合に、前記レシプロエンジンに前記6ストロークサイクルを実行させ、前記第1回転数以上の場合に、前記レシプロエンジンに前記4ストロークサイクルを実行させる。
【0015】
制御システムは、燃料改質システムを含む。レシプロエンジンは、6ストロークサイクルを実行する。燃料改質システムは、再圧縮行程における燃焼ガスの熱と圧力とを利用して、炭化水素燃料を分解する。
【0016】
具体的に、燃料改質システムは、分解器と、炭化水素燃料供給部と、水素ガス供給部と、を備えている。
【0017】
炭化水素燃料供給部は、分解器へ炭化水素燃料を供給する。車両に搭載される燃料タンクには、炭化水素燃料が貯留されればよい。炭化水素燃料供給部は、燃料タンクの炭化水素燃料を、分解器へ供給する。
【0018】
分解器は、再圧縮行程における燃焼ガスの熱と圧力とを利用して、炭化水素燃料を、カーボンと水素ガスとに分解する。分解器は、炭化水素燃料を効率的に分解できる。カーボンは、分解器に貯蔵される。
【0019】
水素ガス供給部は、分解器において生成された水素ガスを、燃料として、レシプロエンジンのシリンダ内へ供給する。レシプロエンジンは、水素ガスを燃焼させることによって運転する。燃焼に起因する炭素酸化物は発生しない。車両は、レシプロエンジンの動力を走行用の駆動力として利用して、走行する。6ストロークサイクルを実行するレシプロエンジンは、動力を出力しながら、炭化水素燃料の分解のために、分解器へ熱と圧力とを供給できる。
【0020】
この燃料改質システムは、カーボンニュートラルを実現できる。また、この燃料改質システムは、レシプロエンジンに起因する熱と圧力とを利用するため、炭化水素燃料の分解に必要な熱及び/又は圧力を発生させるための、別途のデバイスが不要である。燃料改質システムは、車載のシステムとして有用である。
【0021】
その一方で、燃料改質システムは、車両の走行用の駆動力を発生するレシプロエンジンに組み合わされている。レシプロエンジンの運転状態は、低回転から高回転まで、また、低負荷から高負荷まで大きく変化する。レシプロエンジンの回転数が高回転である場合は、1サイクル当たりの時間が短いため、炭化水素燃料の分解反応の時間を確保することが難しくなる。
【0022】
そこで、制御システムの制御器は、レシプロエンジンの回転数が第1回転数よりも低い場合に、レシプロエンジンに6ストロークサイクルを実行させる。炭化水素燃料がカーボンと水素ガスとに効率的に分解される。
【0023】
制御器は、レシプロエンジンの回転数が第1回転数以上の場合に、レシプロエンジンに4ストロークサイクルを実行させる。炭化水素燃焼供給部は、レシプロエンジンに、炭化水素燃料を供給する。レシプロエンジンは、炭化水素燃料を燃焼させて運転する。4ストロークサイクルの実行中は、炭化水素燃料の分解は行われないものの、レシプロエンジンは、車両の走行に必要な駆動力を出力できる。
【0024】
前記制御器は、前記レシプロエンジンの運転状態が、前記レシプロエンジンの回転数が前記第1回転数以上でかつ、前記レシプロエンジンの要求負荷が第1負荷以上の特定領域である場合に、前記レシプロエンジンに前記4ストロークサイクルを実行させ、前記レシプロエンジンの運転状態が、前記特定領域以外である場合に、前記レシプロエンジンに前記6ストロークサイクルを実行させる、としてもよい。
【0025】
レシプロエンジンの要求負荷が高くなると、シリンダ内に供給される空気量が増えるため、分解器に導入される燃焼ガスの量が増える。レシプロエンジンの運転状態が、レシプロエンジンの要求負荷が高くかつ、レシプロエンジンの回転数が高い特定領域である場合、分解器に導入される燃焼ガスの量が増え、しかも、炭化水素燃料の分解反応の時間が短いため、炭化水素燃料の分解反応の時間を確保することが難しい。逆に、レシプロエンジンの要求負荷が低い場合は、分解器に導入される燃焼ガスの量が少ないため、レシプロエンジンの回転数が高くても、分解器は、炭化水素燃料を分解できる。
【0026】
そこで、制御器は、レシプロエンジンの運転状態が、特定領域である場合に、レシプロエンジンに4ストロークサイクルを実行させ、特定領域以外である場合に、レシプロエンジンに6ストロークサイクルを実行させる。炭化水素燃料の効率的な分解と、車両の走行に必要な駆動力の確保とが、両立する。
【0027】
前記制御器によって制御されると共に、前記レシプロエンジンの出力不足を補う電気モータを備え、
前記制御器は、前記レシプロエンジンが前記6ストロークサイクルを実行している場合であって、前記レシプロエンジンの要求負荷が第2負荷以上の場合に、前記電気モータを運転させる、としてもよい。
【0028】
6ストロークサイクルが実行されている最中は、4ストロークの実行中よりも、1サイクル当たりの行程が二つ多い。6ストロークサイクル実行中のレシプロエンジンの出力は、4ストロークサイクル実行中の出力の2/3になる。レシプロエンジンの要求負荷が高くなると、6ストロークサイクル実行中のレシプロエンジンは、要求負荷を満たすことが難しい。
【0029】
そこで、制御器は、レシプロエンジンが6ストロークサイクルを実行している場合であって、レシプロエンジンの要求負荷が第2負荷以上の場合に、電気モータを運転させる。第2負荷は、エンジンの運転領域を低負荷、中負荷、及び、高負荷の領域に三等分した場合の、高負荷の領域の負荷としてもよい。
【0030】
電気モータは、レシプロエンジンの出力不足を補うアシストモータである。レシプロエンジンと電気モータとの組み合わせは、車両の走行に要求される駆動力を出力できる。
【0031】
前記レシプロエンジンは、前記シリンダに連通する第3のポートと、前記第3のポートを開閉する開閉弁と、を有し、
前記分解器は、前記第3のポートに接続され、
前記炭化水素燃料供給部は、前記第3のポート内へ前記炭化水素燃料を噴射する第1インジェクタを有し、
前記制御器は、前記再圧縮行程において前記開閉弁を開弁させ、それによって前記燃焼ガスと前記炭化水素燃料とが、前記第3のポートを通じて前記分解器へ供給され、
前記制御器はまた、前記レシプロエンジンが前記4ストロークサイクルを実行している場合に、前記開閉弁の開閉を停止させる、としてもよい。
【0032】
燃料改質システムでは、分解器が第3のポートに接続されると共に、第1インジェクタが第3のポート内へ炭化水素燃料を噴射する。再圧縮行程において開閉弁が開弁すると、ピストンの上昇によって圧縮された燃焼ガスと、第1インジェクタが噴射した炭化水素燃料とが、第3のポートを通じて分解器へ供給される。分解器は、燃焼ガスの熱と圧力とを利用して、炭化水素燃料を効率的にカーボンと水素ガスとに分解できる。
【0033】
一般的なレシプロエンジンは、複数の吸気ポートと複数の排気ポートとを有している。燃料改質システムのレシプロエンジンにおいては、複数の吸気ポート及び複数の排気ポートのうちの少なくとも一つのポートが、第3のポートに転用されればよい。一般的なレシプロエンジンを、燃料改質システムに流用することができる。
【0034】
また、レシプロエンジンが4ストロークサイクルを実行している最中に、開閉弁は第3のポートを開閉しない。レシプロエンジンは、一般的なレシプロエンジンと同様に、通常の4ストロークサイクルを実行できる。
【0035】
前記制御器は、前記車両の走行中でかつアクセル開度がゼロの場合に、前記レシプロエンジンへの前記水素ガス及び前記炭化水素燃料の供給を停止させるフューエルカットを実行し、
前記制御器は、前記フューエルカットの実行中に、前記ピストンが上昇している行程において前記開閉弁を開弁させ、
前記分解器は、前記ピストンの上昇により圧縮される前記シリンダ内のガスの熱と圧力とを利用して、前記第1インジェクタから噴射された前記炭化水素燃料を前記カーボンと前記水素ガスとに分解する、としてもよい。
【0036】
フューエルカットの実行中で燃焼ガスが発生しない状況であっても、シリンダ内に導入されたガスが、ピストンの上昇によって圧縮されると、ガスの温度及び圧力が高まる。分解器は、シリンダ内のガスの熱と圧力とを利用して、第1インジェクタから第3のポート内へ噴射された炭化水素燃料を、カーボンと水素ガスとに分解できる。水素ガス供給部は、水素ガスを貯留しておくことにより、フューエルカットからの復帰後に、水素ガスをシリンダ内へ供給できる。
【0037】
前記水素ガス供給部は、前記水素ガスを前記シリンダ内へ噴射する第2インジェクタを有し、
前記炭化水素燃料供給部は、前記炭化水素燃料を前記吸気ポート内へ噴射する第3インジェクタを有している、としてもよい。
【0038】
第2インジェクタが水素ガスをシリンダ内へ噴射することにより、レシプロエンジンは、水素ガスを燃料として運転できる。
【0039】
第3インジェクタが炭化水素燃料を吸気ポート内へ噴射することにより、レシプロエンジンは、水素ガスのみならず、炭化水素燃料を使って運転できる。
【0040】
前記制御器は、前記レシプロエンジンが前記4ストロークサイクルを実行している場合であって、前記レシプロエンジンの異常燃焼が検出された場合に、前記第3インジェクタからの前記炭化水素燃料に加えて、前記第2インジェクタに前記水素ガスを噴射させる、としてもよい。
【0041】
水素ガスの燃焼は、炭化水素燃料の燃焼と比較して、燃焼速度が大幅に速い。水素ガスの燃焼は、異常燃焼(例えばノッキング)の抑制に有利である。
【0042】
レシプロエンジンが4ストロークサイクルを実行している場合、換言すれば炭化水素燃料を用いた燃焼が行われる場合であって、レシプロエンジンの異常燃焼が検出された場合に、制御器は、第2インジェクタに水素ガスを噴射させる。シリンダ内へ噴射された水素ガスは、燃焼促進剤として機能する。炭化水素燃料を用いた燃焼が行われている場合において、異常燃焼が抑制できる。
【発明の効果】
【0043】
前記の車両の制御システムは、燃料改質システムの車両への搭載を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】
図1は、車両に搭載される燃料改質システムを示している。
【
図2】
図2は、炭化水素燃料を分解する分解器を示している。
【
図3】
図3は、水素ガスをシリンダ内へ供給する水素ガス供給部を示している。
【
図5】
図5は、6ストロークサイクルの各行程を示している。
【
図6】
図6は、水素ガス供給部のモードを示している。
【
図7】
図7は、水素ガス供給部のモードの切替制御のフローチャートである。
【
図8】
図8は、水素ガス供給部の変形例を示している。
【
図9】
図9は、変形例に係る水素ガス供給部の、モードの切替制御のフローチャートである。
【
図10】
図10は、レシプロエンジンの制御用マップを示している。
【
図11】
図11は、吸気弁、排気弁、及び、開閉弁のリフトカーブを示している。
【
図12】
図12は、レシプロエンジンの、別の制御用マップを示している。
【
図13】
図13は、6ストロークサイクルと4ストロークサイクルとの切替制御のフローチャートである。
【
図14】
図14は、噴射する燃料の切替制御のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、車両の燃料改質システム、及び、車両の制御システムの実施形態について、図面を参照しながら説明する。ここで説明するシステムは例示である。
【0046】
(燃料改質システムの構成)
図1は、車両に搭載される燃料改質システム1を示している。車両に搭載された燃料タンクには、炭化水素燃料が貯留されている。炭化水素燃料は、例えばガソリンである。炭化水素燃料は、ガソリンに限らない。燃料改質システム1は、炭化水素燃料を、カーボンと水素ガスとに分解する。カーボンは、後述する分解器6に貯蔵される。水素ガスは、レシプロエンジン3の燃料として用いられる。燃料改質システム1は、炭化水素燃料が搭載される車両の、カーボンニュートラルを実現する。
【0047】
燃料改質システム1は、レシプロエンジン3を備えている。レシプロエンジン3は、シリンダ31と、シリンダ31内を往復動するピストン32と、を有している。レシプロエンジン3は、複数のシリンダ31を有している。複数のシリンダ31は、例えばレシプロエンジン3のクランクシャフトが伸びる方向に並んでいる。各シリンダ31のピストン32は、コネクティングロッドを介してクランクシャフトに接続されている。コネクティングロッドは、ピストン32の往復動をクランクシャフトの回転に変換する。クランクシャフトは、変速機を介して駆動輪に接続されている。レシプロエンジン3は、車両の走行用の駆動力を出力する。
【0048】
レシプロエンジン3は、吸気ポート33を有している。吸気ポート33は、シリンダ31に連通している。各シリンダ31は、一つ又は複数の吸気ポート33を有している。各シリンダ31は、例えば二つの吸気ポート33を有していてもよい。吸気ポート33は、吸気管に接続されている。後述するように、吸気ポート33を通じて、シリンダ31内へ吸気が導入される。吸気は、少なくとも新気を含む。吸気に、EGR(Exhaust Gas Recirculation)ガスが含まれていてもよい。
【0049】
レシプロエンジン3は、吸気弁34を有している。吸気弁34は、吸気ポート33を開閉するポペット弁である。吸気弁34が開弁すると、吸気がシリンダ31内へ導入される。
図4に示す吸気動弁装置41が、吸気弁34を開閉する。吸気動弁装置41は、例えば吸気弁34に機械的に接続された吸気カムシャフトを有している。吸気動弁装置41は、吸気弁34のバルブタイミングを、連続的に変更できる(いわゆる、S-VT(Sequential-Valve Timing))。吸気動弁装置41はまた、吸気弁34のバルブリフトを、連続的に変更できる(いわゆる、CVVL(Continuously Variable Valve Lift)、
図11参照)。吸気動弁装置41は、公知の油圧式又は電動式の機構を採用できる。吸気動弁装置41は、レシプロエンジン3の運転状態に応じて、バルブタイミング及び/又はバルブリフトを変更する。
【0050】
レシプロエンジン3は、排気ポート35を有している。排気ポート35は、シリンダ31に連通している。各シリンダ31は、一つ又は複数の排気ポート35を有している。各シリンダ31は、例えば一つの排気ポート35を有していてもよい。排気ポート35は、排気管に接続されている。後述するように、排気ポート35を通じて、シリンダ31内から排気ガスが排出される。
【0051】
レシプロエンジン3は、排気弁36を有している。排気弁36は、排気ポート35を開閉するポペット弁である。排気弁36が開弁すると、排気ガスがシリンダ31の外へ排出される。
図4に示す排気動弁装置42が、排気弁36を開閉する。排気動弁装置42は、例えば排気弁36に機械的に接続された排気カムシャフトを有している。排気動弁装置42は、排気弁36のバルブタイミングを、連続的に変更できる(いわゆる、S-VT)。排気動弁装置42はまた、排気弁36のバルブリフトを、連続的に変更できる(いわゆる、CVVL、
図11参照)。排気動弁装置42は、公知の油圧式又は電動式の機構を採用できる。排気動弁装置42は、レシプロエンジン3の運転状態に応じて、バルブタイミング及び/又はバルブリフトを変更する。
【0052】
レシプロエンジン3は、第3のポート37を有している。第3のポート37は、シリンダ31に連通している。各シリンダ31は、少なくとも一つの第3のポート37を有している。各シリンダ31は、例えば一つの第3のポート37を有していてもよい。
【0053】
一般的なレシプロエンジンは、一つのシリンダにつき、二つの吸気ポートと二つの排気ポートを有している。二つの排気ポートのうちの一つが、第3のポート37に転用されてもよい。
図1のレシプロエンジン3は、一つのシリンダ31につき、二つの吸気ポート33と、一つの排気ポート35と、一つの第3のポート37とを有する。尚、
図1は、理解を容易にするために、排気ポート35と、第3のポート37とを、位置をずらして描いている。
【0054】
尚、二つの吸気ポートのうちの一つが、第3のポート37に転用されてもよい。但し、二つの吸気ポート33は、シリンダ31内へ多くの新気を導入できるという利点がある。排気ポート又は吸気ポートが第3のポート37に転用される場合、一般的なレシプロエンジンを燃料改質システム1のレシプロエンジン3に流用できる。尚、レシプロエンジン3は、一つのシリンダ31につき、二つの吸気ポート33と、二つの排気ポート35と、一つの第3のポート37とを有してもよい。
【0055】
レシプロエンジン3は、開閉弁38を有している。開閉弁38は、第3のポート37を開閉するポペット弁である。
図4に示す第3の動弁装置43が、開閉弁38を開閉する。第3の動弁装置43は、例えば開閉弁38に機械的に接続された第3のカムシャフトを有している。第3の動弁装置43は、開閉弁38を、1サイクル中に2回開弁する(
図11参照)。第3の動弁装置43はまた、開閉弁38の開閉を停止できる。開閉弁38の開閉を停止させる弁停止機構には、公知の油圧式又は電動式の機構を採用できる。弁停止機構は、例えば第3のカムシャフトと開閉弁38との間に介装されたロッカアームに組み込んでもよい。弁停止機構はまた、ロッカアームを支持するラッシュアジャスタに組み込んでもよい。尚、開閉弁38は、吸気カムシャフト又は排気カムシャフトに機械的に接続されてもよい。
【0056】
吸気ポートインジェクタ44が、レシプロエンジン3に取り付けられている。吸気ポートインジェクタ44の噴射孔は、吸気ポート33内に臨んでいる。吸気ポートインジェクタ44は、炭化水素燃料を吸気ポート33内へ噴射する。吸気ポートインジェクタ44は、第3インジェクタの一例である。炭化水素燃料供給部45が、吸気ポートインジェクタ44に接続されている。炭化水素燃料供給部45は、炭化水素燃料を貯留する燃料タンクと、炭化水素燃料を圧送する燃料ポンプとを有している。炭化水素燃料供給部45は、吸気ポートインジェクタ44へ炭化水素燃料を供給する。
【0057】
第3ポートインジェクタ46が、レシプロエンジン3に取り付けられている。第3ポートインジェクタ46の噴射孔は、第3のポート37内に臨んでいる。第3ポートインジェクタ46は、炭化水素燃料を第3のポート37内へ噴射する。第3ポートインジェクタ46は、第1インジェクタの一例である。炭化水素燃料供給部45は、第3ポートインジェクタ46にも接続されている。炭化水素燃料供給部45は、吸気ポートインジェクタ44及び第3ポートインジェクタ46へ、炭化水素燃料を、選択的に供給する。
【0058】
水素インジェクタ47が、レシプロエンジン3に取り付けられている。水素インジェクタ47の噴射孔は、シリンダ31内に臨んでいる。水素インジェクタ47は、水素ガスをシリンダ31内へ噴射する。水素インジェクタ47は、第2インジェクタの一例である。
【0059】
尚、炭化水素燃料を噴射するインジェクタを、シリンダ31内に臨んで、レシプロエンジン3に取り付け、水素ガスを噴射する水素インジェクタを、吸気ポート33内に臨んで、レシプロエンジン3に取り付けることもできる。
【0060】
水素ガス供給部5が、水素インジェクタ47に接続されている。水素ガス供給部5は、水素インジェクタ47へ水素ガスを供給する。水素ガスは、前述したように、炭化水素燃料から分解された水素ガスである。水素ガス供給部5の構成は、後述する。
【0061】
分解器6が、第3のポート37に接続されている。分解器6は、炭化水素燃料をカーボンと水素ガスとに分解する。分解器6は、シリンダ31毎に取り付けられている。分解器6は、複数のシリンダ31に共通であってもよい。
【0062】
図2は、分解器6の構造を示している。分解器6は、触媒を使って炭化水素燃料をカーボンと水素ガスとに分解すると共に、分離膜63を使って水素ガスを分離する。分解器6は、いわゆる膜反応器である。炭化水素燃料、例えばイソオクタンの分解は、以下の化学反応式により表される。
【0063】
iC8H18(g) = 8C(s) + 9H2
固体であるカーボンの回収は、車両の重量の増大を抑制する。燃料改質システム1は、車載のシステムとして適している。
【0064】
分解器6は、反応容器61を有している。反応容器61は、例えば筒状体である。反応容器61は、例えば多孔質セラミック製である。多孔質セラミックは、例えばジルコニアである。反応容器61は、後述する触媒の担持体62を収容する機能と、生成された水素ガスを透過させる機能とを有している。反応容器61は、前述した二つの機能を有するのであれば、様々な構造を採用することができる。
【0065】
分解器6は、触媒の担持体62を有している。炭化水素燃料の分解に使用できる触媒は、例えばNi-Al-Fe合金である。触媒は、炭化水素燃料の分解に利用できるものであれば、様々な触媒を利用できる。
【0066】
担持体62は、例えば酸化アルミニウムのボールを使用することができる。触媒は、ボールの表面に塗布される。多数の担持体62が、反応容器61の内部に充填されている。担持体62としてのボールの使用は、触媒の表面積を増大させて分解器6の分解効率を高める。尚、担持体62の形状は、特定の形状に制限されない。
【0067】
炭化水素燃料の分解により生成されたカーボンは、担持体62の表面に付着する。分解器6は、カーボンの貯蔵も行う。ボールの使用により、分解器6におけるカーボンの貯蔵量が増えると共に、カーボンの貯蔵量が増えても、分解器6の分解能力を維持できる。また、ボールの使用は、炭化水素燃料から分解された水素ガスの分離を容易にする。後述するように、水素ガスの効率的な分離も、分解器6の分解能力の低下を抑制する。
【0068】
分解器6は、分離膜63を有している。分離膜63は、反応容器61の内面に取り付けられている。反応容器61は、分離膜63を保持するホルダである。分離膜63は、水素ガスのみを透過する機能を有している。分離膜63は、例えばPd合金の膜である。尚、分離膜63は、Pd合金の膜に限定されない。分離膜63を透過した水素ガスは、反応容器61を通って反応容器61の外側へ至る(
図2の白抜きの矢印参照)。
【0069】
分解器6は、ケース64を有している。反応容器61は、ケース64の中に収容されている。反応容器61の外周面と、ケース64の内周面との間には、空間が形成されている。ケース64は、水素ガスを集合させて、後述する水素ガス通路50へ導く機能を有している。
【0070】
ケース64の端部には、第3のポート37が接続されている。より詳細に、第3のポート37は、筒状の反応容器61の内側に接続されている。燃焼ガスと炭化水素燃料とは、第3のポート37を通じて、反応容器61の内側に導入される。反応容器61の内側において、炭化水素燃料は、カーボンと水素ガスとに分解される。
【0071】
ケース64の側部には、水素ガス通路50が接続されている。反応容器61の内側において生成された水素ガスは、分離膜63及び反応容器61を通って反応容器61の外側へ至る。水素ガスは、水素ガス通路50を通って、水素ガス供給部5へ送られる。水素ガス通路50は、
図3に示すように、水素ガス供給部5を介して、水素インジェクタ47に接続されている。
【0072】
図3は、水素ガス供給部5の構造を示している。水素ガス供給部5は、前述したように、水素ガスを水素インジェクタ47へ供給する。水素ガス供給部5は、複数のシリンダ31に共通とすればよい。水素ガス供給部5は、シリンダ31毎に設けられてもよい。
【0073】
水素ガス供給部5は、第1タンク51を有している。第1タンク51は、水素ガス通路50に接続されている。第1タンク51は、分解器6からの水素ガスを貯留する。
【0074】
水素ガス供給部5は、バイパス通路53を有している。バイパス通路53は、第1タンク51をバイパスする。第1タンク51の上流側には第1切替弁54が設けられ、第1タンク51の下流側には第2切替弁55が設けられている。第1切替弁54及び第2切替弁55は、後述する制御器21からの制御信号を受けて、水素ガスの流通経路を、第1タンク51の側と、バイパス通路53の側とに切り替える。第1切替弁54及び第2切替弁55の切り替えについては、後述する。
【0075】
水素ガス供給部5は、ポンプ56を有している。ポンプ56は、第2切替弁55の下流において、水素ガス通路50に接続されている。ポンプ56は、水素ガスの圧力を高める。
【0076】
水素ガス供給部5は、第2タンク52を有している。第2タンク52は、ポンプ56の下流において、水素ガス通路50に接続されている。第2タンク52は、水素ガス通路50において、ポンプ56と水素インジェクタ47との間に位置している。第2タンク52は、高圧の水素ガスを貯留する。
【0077】
第1タンク51の圧力は、第2タンク52の圧力よりも低い。低圧の第1タンク51は、分離膜63の二次側の圧力(つまり、反応容器61の外側の圧力)を、一次側の圧力(つまり、反応容器61の内側の圧力)よりも下げる。低圧の第1タンク51は、分離膜63の一次側と二次側との圧力差を大きくする。大きい圧力差は、分離膜63における水素ガスの透過を促進する。反応容器61の内部で生成された水素ガスが、反応容器61の外へ速やかに透過するから、反応容器61の内部における炭化水素燃料の分解反応が促進される。第1タンク51は、水素ガス通路50の圧力を、反応容器61の内側の圧力よりも低下させる減圧部の一例である。この減圧部と、後述する再圧縮行程における燃焼ガスの熱と圧力との組み合わせは、分解器6の分解反応を、大幅に促進させる。炭化水素燃料の分解反応の促進は、分解器6が小型であっても、レシプロエンジン3の運転に必要な水素ガス量の確保を可能にする。
【0078】
また、後述するように、水素ガスの流通経路が、バイパス通路53の側に切り替えられた状態では、ポンプ56の駆動によって分離膜63の二次側の圧力が低下する。ポンプ56もまた、水素ガス通路50の圧力を、反応容器61の内側の圧力よりも低下させる減圧部の一例である。
【0079】
高圧の第2タンク52は、水素インジェクタ47へ高圧の水素ガスを、安定して供給できる。水素インジェクタ47は、シリンダ31内の圧力が高い圧縮上死点付近のタイミングで、シリンダ31内へ、水素ガスを噴射できる。ポンプ56は、第1タンク51の圧力を低く維持しながら、水素インジェクタ47へ高圧の水素ガスを供給することを可能にする。
【0080】
(制御システムの構成)
図4は、燃料改質システム1が搭載された車両の、制御システム2のブロック図である。制御システム2は、制御器21を有している。制御器21は、プロセッサ、メモリ、インターフェースなどのハードウエアと、データベースや制御プログラムなどのソフトウエアとで構成されている。
【0081】
回転数センサ22が、制御器21に、電気的に接続されている。回転数センサ22は、レシプロエンジン3に取り付けられている。回転数センサ22は、クランクシャフトの回転数に対応する計測信号を制御器21へ出力する。制御器21は、回転数センサ22の計測信号に基づいて、レシプロエンジン3の回転数を把握できる。
【0082】
アクセルポジションセンサ23が、制御器21に、電気的に接続されている。アクセルポジションセンサ23は、アクセルペダルに取り付けられている。アクセルポジションセンサ23は、アクセルペダルの踏み込み量に対応する信号を制御器21へ出力する。制御器21は、アクセルポジションセンサ23の計測信号に基づいて、レシプロエンジン3の要求負荷を把握できる。
【0083】
ノックセンサ24が、制御器21に、電気的に接続されている。ノックセンサ24は、レシプロエンジン3に取り付けられている。ノックセンサ24は、レシプロエンジン3においてノッキングが発生した場合に、ノック検出信号を制御器21へ出力する。制御器21は、ノック検出信号に基づいて、ノッキングの発生を把握できる。
【0084】
タンク圧センサ25が、制御器21に、電気的に接続されている。タンク圧センサ25は、水素ガス供給部5の第2タンク52に取り付けられている。タンク圧センサ25は、第2タンク52の水素ガス量に対応する信号を、制御器21へ出力する。制御器21は、タンク圧センサ25の信号に基づいて、シリンダ31へ供給可能な水素ガス量を判断できる。
【0085】
前述した吸気動弁装置41、排気動弁装置42、及び、第3の動弁装置43はそれぞれ、制御器21に電気的に接続されている。制御器21は、レシプロエンジン3の運転状態に応じて、吸気動弁装置41、排気動弁装置42、及び、第3の動弁装置43のそれぞれに、制御信号を出力する。吸気動弁装置41は、制御器21からの制御信号に基づいて、吸気弁34のバルブタイミング、及び/又は、バルブリフトを変更する。排気動弁装置42は、制御器21からの制御信号に基づいて、排気弁36のバルブタイミング、及び/又は、バルブリフトを変更する。第3の動弁装置43は、制御器21からの制御信号に基づいて、開閉弁38の開閉と停止とを切り替える。
【0086】
前述した吸気ポートインジェクタ44、第3ポートインジェクタ46、及び、水素インジェクタ47はそれぞれ、制御器21に電気的に接続されている。制御器21は、吸気ポートインジェクタ44、第3ポートインジェクタ46、及び、水素インジェクタ47のそれぞれに、制御信号を出力する。吸気ポートインジェクタ44は、制御器21からの制御信号に基づいて、所定のタイミングで、所定量の炭化水素燃料を、吸気ポート33内へ噴射する。第3ポートインジェクタ46は、制御器21からの制御信号に基づいて、所定のタイミングで、所定量の炭化水素燃料を、第3のポート37内へ噴射する。水素インジェクタ47は、制御器21からの制御信号に基づいて、所定のタイミングで、所定量の水素ガスを、シリンダ31内へ噴射する。
【0087】
制御システム2は、点火プラグ26を有している。点火プラグ26は、シリンダ31内に臨んで、レシプロエンジン3に取り付けられている。点火プラグ26は、制御器21に電気的に接続されている。制御器21は、点火プラグ26に、制御信号を出力する。点火プラグ26は、制御器21からの制御信号に基づいて、所定のタイミングで、シリンダ31内の混合気に点火する。
【0088】
制御システム2はまた、電気モータ27を有している。電気モータ27は、レシプロエンジン3の出力不足を補うアシストモータである。電気モータ27は、インバータ28を通じたバッテリからの電力供給を受けて運転する。電気モータ27とレシプロエンジン3とは、直列に接続されてもよいし、並列に接続されてもよい。レシプロエンジン3と電気モータ27との組み合わせは、車両の走行に要求される駆動力を出力できる。インバータ28は、制御器21に電気的に接続されている。制御器21は、インバータ28に、制御信号を出力する。インバータ28は、制御器21からの制御信号に基づいて、電気モータ27を運転させる。
【0089】
前述した水素ガス供給部5は、制御器21に電気的に接続されている。制御器21は、水素ガス供給部5の第1切替弁54、第2切替弁55、及び、ポンプ56へ、制御信号を出力する。
【0090】
(6ストロークサイクル)
レシプロエンジン3は、分解器6が炭化水素燃料の分解を行うために、6ストロークサイクルを実行する。
図5は、6ストロークサイクルに含まれる各行程を示している。
【0091】
S1は、吸気行程である。レシプロエンジン3は、吸気行程S1において、ピストン32の下降により吸気をシリンダ31内へ導入する。吸気行程S1において、吸気弁34は開弁する。吸気ポート33を通じて、吸気がシリンダ31内へ導入される。吸気には、少なくとも新気が含まれる。吸気に、EGRガスが含まれてもよい。このEGRガスは、EGR通路を通じて吸気管に還流した、いわゆる外部EGRガスである。吸気行程S1において、排気弁36が開弁してもよい。排気弁36が開弁すれば、排気ポート35を通じて、排気ガスがシリンダ31内へ導入される。シリンダ31内へ導入される排気ガスは、いわゆる内部EGRガスである。尚、第3のポート37の開閉弁38は閉弁している。
【0092】
図5において水素インジェクタ47は、吸気行程S1中に、水素ガスをシリンダ31内へ噴射している。水素インジェクタ47は、吸気行程S1に続く圧縮行程S2において、水素ガスを噴射してもよい。水素インジェクタ47は、吸気行程S1から圧縮行程S2にかけての期間において、水素ガスを噴射してもよい。
【0093】
尚、水素ガスが不足している場合、吸気ポートインジェクタ44が、吸気行程S1において、不足分を補うように、炭化水素燃料を吸気ポート33へ噴射してもよい。また、水素ガスが無い場合、吸気ポートインジェクタ44が、水素インジェクタ47に代わって、吸気行程S1において、炭化水素燃料を吸気ポート33へ噴射してもよい。シリンダ31内へ供給する水素ガスが不足する場合に、吸気ポートインジェクタ44が炭化水素燃料を噴射することにより、レシプロエンジン3の必要燃料量が確保される。レシプロエンジン3は、炭化水素燃料を使って、又は、炭化水素燃料と水素ガスとの両方を使って、運転できる。
【0094】
S2は、圧縮行程である。レシプロエンジン3は、圧縮行程S2において、ピストン32の上昇によりシリンダ31内の混合気を圧縮する。吸気弁34、排気弁36及び開閉弁38は全て閉じている。
【0095】
点火プラグ26は、圧縮上死点付近のタイミングで、シリンダ31内の混合気に点火をする。混合気は燃焼を開始する。S3は、膨張行程である。ピストン32は、膨張行程S3において、混合気の燃焼により下降する。吸気弁34、排気弁36及び開閉弁38は全て閉じている。
【0096】
S4は、再圧縮行程である。レシプロエンジン3は、再圧縮行程S4において、ピストン32の上昇によりシリンダ31内の燃焼ガスを圧縮する。再圧縮行程S4において、開閉弁38は開弁する。圧縮された燃焼ガスが、第3のポート37を通じて分解器6へ導入される。また、第3ポートインジェクタ46が、再圧縮行程S4において、第3のポート37内へ炭化水素燃料を噴射する。炭化水素燃料は、燃焼ガスと共に、分解器6へ導入される。前述したように、分解器6において、燃焼ガスの熱と触媒により、炭化水素燃料が、カーボンと水素ガスとに分解される。カーボンは、分解器6に貯蔵される。水素ガスは、燃焼ガスの圧力により、分解器6の分離膜63を透過して、水素ガス供給部5へ送られる。
【0097】
再圧縮行程における燃焼ガスの高い圧力が、分解器6の内側に付与されるため、分解器6の内側において生成された水素ガスは、速やかに分離膜63を透過する。前述した化学反応式の右辺の水素ガスが、分解器6の内側から排出されるから、分解器6の内側における炭化水素燃料の分解反応が促進される。レシプロエンジン3の再圧縮行程S4の圧力を利用する分解器6は、小型であっても、レシプロエンジン3の運転に必要な量の水素ガスを生成できる。
【0098】
S5は、再膨張行程である。再膨張行程S5において、ピストン32が下降する。開閉弁38は、再圧縮行程S4において、開弁してもよい。開閉弁38が開弁すれば、カーボン及び水素ガスが除去された燃焼ガスが、分解器6からシリンダ31へ導入される。再膨張行程S5において開閉弁38が開弁することは、レシプロエンジン3のポンプ損失の低減に有利である。
【0099】
S6は、排気行程である。レシプロエンジン3は、排気行程S6において、ピストン32の上昇によりシリンダ31内の燃焼ガスを、排気ポート35を通じて排出する。排気行程S6において、排気弁36は開弁する。シリンダ31内の燃焼ガスが、排気ポート35へ排出される。尚、排気行程S6において、吸気弁34及び開閉弁38は閉じている。
【0100】
排気行程S6の後、レシプロエンジン3は、吸気行程S1へ戻る。
【0101】
尚、再膨張行程S5において開閉弁38が開弁する代わりに、又は、開閉弁38の開弁と共に、開閉弁38は、吸気行程S1において開弁してもよい。吸気行程S1において開閉弁38が開弁すれば、カーボン及び水素ガスが除去された燃焼ガスが、分解器6からシリンダ31へ導入される。当該燃焼ガスは、EGRガスとなる。
【0102】
再膨張行程S5において開閉弁38が開弁しなければ、再圧縮行程S4において分解器6に導入された炭化水素燃料が分解器6に長時間留まることになるから、炭化水素燃料の分解反応を促進させるという利点が得られる。
【0103】
このように、6ストロークサイクルを実行するレシプロエンジン3を含む燃料改質システム1は、炭化水素燃料の分解により生成されたカーボンを、分解器6に貯蔵する。また、レシプロエンジン3は、炭化水素燃料の分解により生成された水素ガスを燃焼させるため、燃焼に起因する炭素酸化物は発生しない。燃料改質システム1は、カーボンニュートラルを実現できる。
【0104】
また、この燃料改質システム1は、レシプロエンジン3に起因する熱と圧力とを利用するため、炭化水素燃料の分解に必要な熱及び/又は圧力を発生させるための、別途の専用デバイスが不要である。燃料改質システム1は、車載のシステムとして有用である。
【0105】
尚、分解器6のカーボン貯蔵量が多くなれば、分解器6からカーボンが回収される。例えば車両のメンテナンス入庫の際に、分解器6から、カーボンが付着した担持体62が取り出され、例えばミルを使って、カーボンが担持体62から除去される。回収したカーボンは、産業用カーボンとして利用できる。カーボンが除去された担持体62は、必要に応じて触媒が再塗布された上で、分解器6に再充填可能である。
【0106】
(水素ガス供給部のモード切替)
水素ガス供給部5は、レシプロエンジン3の状態に応じて、第1モード、第2モード、及び、第3モードを切り替える。
図6は、水素ガス供給部5の各モードを示している。
【0107】
第1モードは、炭化水素燃料の分解を行って、生成された水素ガスを第1タンク51に貯留しつつ、水素ガスをレシプロエンジン3へ供給するモードである。第1モードにおいて、第1切替弁54及び第2切替弁55は、水素ガスの流通経路を、第1タンク51の側にする。分解器6からの水素ガスは、第1タンク51に流入する。前述したように、第1タンク51は、水素ガス通路50の圧力を、反応容器61の内側の圧力よりも低下させる。
【0108】
また、ポンプ56は、駆動する。第1タンク51の水素ガスが昇圧されて、第2タンク52へ送られる。第2タンク52に高圧の水素ガスが貯留する。そして、第2タンク52から水素インジェクタ47へ高圧の水素ガスが供給され、水素インジェクタ47は、シリンダ31内へ水素ガスを噴射する。
【0109】
第1モードは、例えばレシプロエンジン3の始動時、及び/又は、第2タンク52の低圧時のモードとしてもよい。第1タンク51に予め貯留されていた水素ガスを利用しながら、レシプロエンジン3の始動、及び/又は、運転が可能になる。尚、前述したように、水素ガスが不足する場合、炭化水素燃料が吸気ポート33内へ噴射される。
【0110】
第2モードは、炭化水素燃料の分解を行って、生成された水素ガスを直ぐに、レシプロエンジン3へ供給するモードである。第2モードにおいて、第1切替弁54及び第2切替弁55は、水素ガスの流通方向を、バイパス通路53の側にする。分解器6からの水素ガスは、第1タンク51をバイパスして、ポンプ56に至る。ポンプ56は、駆動する。ポンプ56が駆動すると、入口側の圧力が低下する。ひいては分解器6の分離膜63の二次側の圧力が低下する。第2モードにおけるポンプ56は、減圧部に相当する。
【0111】
ポンプ56の駆動により水素ガスが昇圧されて、第2タンク52へ送られる。第2タンク52に高圧の水素ガスが貯留する。そして、第2タンク52から水素インジェクタ47へ高圧の水素ガスが供給され、水素インジェクタ47は、シリンダ31内へ水素ガスを噴射する。
【0112】
第2モードは、例えばレシプロエンジン3の通常運転時のモードとしてもよい。通常運転時は、前述した始動時、第2タンク52の低圧時、及び、後述するフューエルカット時以外を意味する。第2モードは、6ストロークサイクル実行時の、基本モードであってもよい。燃料改質システム1は、分解器6における炭化水素燃料の分解効率が高いため、炭化水素燃料を分解しながら、生成された水素ガスをレシプロエンジン3へ供給して、レシプロエンジン3を運転できる。
【0113】
第3モードは、レシプロエンジン3への水素ガスの供給を停止しつつ、炭化水素燃料の分解を行って、生成された水素ガスを第1タンク51に貯留するモードである。水素インジェクタ47は駆動を停止し、水素ガスの噴射を停止する一方で、第3ポートインジェクタ46は、第3のポート37へ炭化水素燃料を噴射する。
【0114】
第3モードにおいて、第1切替弁54及び第2切替弁55は、水素ガスの流通経路を、第1タンク51の側にする。分解器6からの水素ガスは、第1タンク51に貯留される。ポンプ56は、停止する。水素ガスは、第1タンク51から第2タンク52へ送られない。尚、ポンプ56は、駆動してもよい。この場合、第2タンク52から水素インジェクタ47ヘの水素ガスの供給が停止される。
【0115】
第3モードは、例えばレシプロエンジン3の、フューエルカット時のモードとしてもよい。制御器21は、アクセルポジションセンサ23の計測信号に基づいて、フューエルカットか否かを判断できる。第3モードにおいて、第1タンク51の水素ガスの貯留量は増える。第1タンク51に貯留された水素ガスは、第1モードにおいて、水素インジェクタ47へ供給される。
【0116】
第1モード、第2モード、第3モードの切り替えは、レシプロエンジン3の運転状態、第2タンク52の圧力、及び、フューエルカットであるか否かに応じて、行われてもよい。
図7は、水素ガス供給部5のモード切り替えに関する制御手順を示している。スタート後のステップS71において、制御器21は各種信号を読み込む。続くステップS72において、制御器21は、水素ガス供給部5を第2モードにすべきか否かを判断する。前述したように、レシプロエンジン3の通常運転時に、制御器21は、水素ガス供給部5を第2モードにすべきと判断する。ステップS72の判断がYesであれば、制御器21は、続くステップS73において、第1切替弁54及び第2切替弁55により、第1タンク51がバイパスされるよう、水素ガスの流通経路をバイパス通路53の側にする。そして、ステップS76において、制御器21は、ポンプ56を駆動する。
【0117】
ステップS72の判断がNoであれば、制御器21は、ステップS74において、第1切替弁54及び第2切替弁55により、水素ガスの流通経路を第1タンク51の側にする。そして、ステップS75において、制御器21は、水素ガス供給部5を第3モードにすべきか否かを判断する。前述したように、レシプロエンジン3のフューエルカット時に、制御器21は、水素ガス供給部5を第3モードにすべきと判断する。ステップS75の判断がYesであれば、制御器21は、ステップS77において、ポンプ56を停止する。ステップS75の判断がNoであれば、制御器21は、ステップS76において、ポンプ56を駆動する。水素ガス供給部5は第1モードになる。
【0118】
図8は、水素ガス供給部の変形例を示している。水素ガス供給部59は、第2タンク52に代えて、第2ポンプ57を有している。第2ポンプ57は、水素ガス通路50における、分解器6と第1切替弁54との間に位置している。尚、
図8の水素ガス供給部59では、2台のポンプを区別するために、第2切替弁55と水素インジェクタ47との間に位置するポンプを、第1ポンプ56と呼ぶ。第1ポンプ56は、水素インジェクタ47へ高圧の水素ガスを供給するポンプである。
【0119】
第2ポンプ57が駆動すると、第2ポンプ57の入口側の圧力が低下する。入口側の圧力低下は、分解器6における分離膜63の二次側の圧力を下げる。第2ポンプ57は、水素ガス通路50の圧力を、反応容器61の内側の圧力よりも低下させる減圧部の一例である。
【0120】
水素ガス供給部59も、第1モード、第2モード及び第3モードを切り替える。
図9は、水素ガス供給部59のモード切り替えに関する制御手順を示している。スタート後のステップS91において、制御器21は各種信号を読み込む。続くステップS92において、制御器21は、水素ガス供給部59を第2モードにすべきか否かを判断する。ステップS92の判断がYesであれば、制御器21は、続くステップS93において、第1切替弁54及び第2切替弁55により、第1タンク51がバイパスされるよう、水素ガスの流通経路をバイパス通路53の側にする。そして、ステップS96において、制御器21は、第1ポンプ56及び第2ポンプ57を駆動する。炭化水素燃料から分解された水素ガスが、第2ポンプ57、バイパス通路53、及び、第1ポンプ56を通って、水素インジェクタ47へ供給される。
【0121】
ステップS92の判断がNoであれば、制御器21は、ステップS94において、第1切替弁54及び第2切替弁55により、水素ガスの流通経路を第1タンク51の側にする。そして、ステップS95において、制御器21は、水素ガス供給部59を第3モードにすべきか否かを判断する。ステップS95の判断がYesであれば、制御器21は、ステップS97において、第1ポンプ56を停止し、第2ポンプ57を駆動する。水素インジェクタ47への水素ガスの供給が停止されつつ、生成された水素ガスが、第1タンク51に貯留される。ステップS95の判断がNoであれば、制御器21は、ステップS96において、第1ポンプ56及び第2ポンプ57を駆動する。炭化水素燃料から分解された水素ガスが、第1タンク51へ供給されつつ、第1タンク51から第1ポンプ56を通って、水素インジェクタ47へ供給される。水素ガス供給部59は第1モードになる。
【0122】
(6ストロークサイクルと4ストロークサイクルとの切替)
燃料改質システム1に含まれるレシプロエンジン3は、車両の走行用の駆動力を出力するエンジンでもある。レシプロエンジン3の運転状態は、低負荷から高負荷まで、及び、低回転から高回転まで大きく変化する。レシプロエンジン3の回転数が低回転である場合は、1サイクル当たりの時間が比較的長いため、分解器6は炭化水素燃料を、カーボンと水素ガスとに効率的に分解できる。しかし、レシプロエンジン3の回転数が高回転である場合は、1サイクル当たりの時間が短いため、炭化水素燃料の分解反応の時間を確保することが難しくなる。
【0123】
そこで、車両の制御システム2では、レシプロエンジン3の回転数及び要求負荷に係る運転状態に応じて、炭化水素燃料の分解を行う6ストロークサイクルと、炭化水素燃料の分解を行わない4ストロークサイクルとが切り替わる。
【0124】
図10は、レシプロエンジン3の制御マップ101を示している。制御マップ101は、エンジンの回転数と要求負荷とによって規定されたレシプロエンジン3の運転領域に対応する。制御器21は、制御マップ101に従って、レシプロエンジン3を運転する。
【0125】
制御マップ101は、レシプロエンジン3の運転領域を、第1領域102と第2領域103とに分割している。第1領域102は、回転数が第1回転数N1よりも低い領域である。第2領域103は、回転数が第1回転数N1以上の領域である。第1回転数N1は、レシプロエンジン3の運転領域を、回転数の方向に、低回転領域、中回転領域、及び、高回転領域に三等分した場合の、中回転領域に含まれる回転数としてもよい。
【0126】
制御器21は、第1領域102において、レシプロエンジン3に、6ストロークサイクルを実行させる。具体的に、制御器21は、吸気動弁装置41及び排気動弁装置42を通じて、吸気弁34及び排気弁36を所定のタイミングで開弁させながら、第3の動弁装置43を通じて、開閉弁38を所定のタイミングで開弁させる。
【0127】
図11は、吸気弁34、排気弁36、及び、開閉弁38のリフトカーブを例示している。
図11の横軸はクランク角であり、縦軸はバルブリフトである。チャート111~114は、6ストロークサイクル実行時の、吸気弁34、排気弁36、及び、開閉弁38のリフトカーブである。チャート111、112、113、及び、114の順に、レシプロエンジン3の要求負荷が高くなる。
【0128】
チャート111、112、113、及び、114の全てにおいて、開閉弁38のリフトカーブは同じである。開閉弁38は、再圧縮行程において開弁すると共に、再膨張行程において開弁する。再圧縮行程においてシリンダ31内の燃焼ガスが、第3のポート37に導入され、再膨張行程において分解器6からシリンダ31へ、燃焼ガスが流入する。尚、再膨張行程における開弁に代えて、又は、開弁と共に、開閉弁38は、吸気行程において開弁してもよい。
【0129】
チャート111は、要求負荷が低い場合のリフトカーブを示している。要求負荷が低い場合、シリンダ31内へ導入される新気が相対的に少なくかつ、EGRガスが相対的多くされる。再膨張行程に続く排気行程において、排気弁36が開弁する。シリンダ31内の排気ガスが、排気ポート35へ排出される。そして、排気行程に続く吸気行程において、排気弁36は、もう一度開弁する。排気ポート35内の排気ガスの一部がEGRガスとして、シリンダ31内へ再導入される。レシプロエンジン3の負荷が低い場合、吸気行程において開弁する排気弁36は、例えば最大リフトである。また、吸気行程において、吸気弁34も開弁する。吸気弁34は、相対的に小リフトである。シリンダ31内へ導入される新気が相対的に少なくかつ、EGRガスが相対的多くされる。
【0130】
チャート112は、チャート111よりも要求負荷が高い。要求負荷が高くなると、吸気弁34のリフトが大きくされる。チャート112の吸気弁34のリフトは、例えば最大リフトである。チャート112の排気弁36のリフトは、チャート111と同じである。シリンダ31内へ導入される新気が増え、EGRガスが減る。
【0131】
チャート113は、チャート112よりも要求負荷が高い。吸気弁34のリフトが最大リフトまで大きくなれば、吸気行程において開弁する排気弁36のリフトが、要求負荷が高くなるに従い、小さくされる。チャート113の吸気弁34のリフトは、最大リフトのままである。シリンダ31内へ導入される新気がさらに増え、EGRガスがさらに減る。
【0132】
チャート114は、チャート113よりも要求負荷が高い。要求負荷が高くなるに従い、吸気行程において開弁する排気弁36のリフトが小さくされる結果、チャート114において排気弁36は、吸気行程において開弁しない。シリンダ31内へ導入されるEGRガスは、実質的にゼロである。
【0133】
制御器21は、吸気弁34及び排気弁36の開弁制御を通じて、6ストロークサイクル実行中の、レシプロエンジン3の負荷を変更する。
【0134】
ここで、レシプロエンジン3が6ストロークサイクルを実行されている最中は、4ストロークの実行中よりも、1サイクル当たりの行程が二つ多い。6ストロークサイクル実行中のレシプロエンジン3の出力は、4ストロークサイクル実行中の出力の2/3になる。6ストロークサイクル実行中のレシプロエンジン3は、レシプロエンジン3の要求負荷が高くなると、要求負荷を満たすことが難しい。
【0135】
そこで、車両の制御システム2では、レシプロエンジン3が6ストロークサイクルを実行している場合であって、レシプロエンジン3の要求負荷が負荷Pe2以上の場合に、電気モータ27を運転させる(
図10参照)。電気モータ27は、レシプロエンジン3の出力不足を補うアシストモータとして機能する。レシプロエンジン3と電気モータ27との協働によって、車両の走行に要求される駆動力が出力される。
【0136】
尚、負荷Pe2は、レシプロエンジン3の運転領域を、負荷方向に低負荷、中負荷、及び、高負荷の領域に三等分した場合の、高負荷の領域に含まれる負荷としてもよい。
【0137】
制御器21はまた、第2領域103において、レシプロエンジン3に、4ストロークサイクルを実行させる。具体的に、制御器21は、吸気動弁装置41及び排気動弁装置42を通じて、吸気弁34及び排気弁36を所定のタイミングで開弁させながら、第3の動弁装置43を通じて、開閉弁38の開弁を停止させる。
図11のチャート115は、4ストロークサイクル実行時の、吸気弁34、及び、排気弁36のリフトカーブである。4ストロークサイクル実行時には、再圧縮行程及び再膨張行程が省略されるため、レシプロエンジン3のポンプ損失が低減する。レシプロエンジン3は炭化水素燃料によって運転されるもの、その燃料消費が抑制できる。尚、レシプロエンジン3は、6ストロークサイクルと4ストロークサイクルとの切替に際し、クランクシャフトとカムシャフトとの速度比を変える機構を有している。
【0138】
図12は、レシプロエンジン3の制御マップの変形例を示している。制御マップ104も、レシプロエンジン3の運転領域を、第1領域105と第2領域106とに分割している。第1領域105は、回転数が第1回転数N1よりも低い領域と、回転数が第1回転数N1以上でかつ、要求負荷が負荷Pe1よりも低い領域である。第2領域106は、回転数が第1回転数N1以上でかつ、要求負荷が負荷Pe1以上の領域である。負荷Pe1は、レシプロエンジン3の運転領域を、負荷方向に低負荷、中負荷、及び高負荷の領域に三等分した場合の、中負荷の領域に含まれる負荷としてもよい。
【0139】
要求負荷が低い場合、分解器6に導入される燃焼ガス量は減る。レシプロエンジン3の回転数が高くて反応時間が短くなっても、分解器6の分解能力が高ければ、分解器6は炭化水素燃料を分解できる。そこで、6ストロークサイクルが実行される第1領域105を、高回転低負荷の領域まで拡大してもよい。第1領域105の拡大は、炭化水素燃料が燃焼される領域を縮小するから、カーボンニュートラル化に有利である。
【0140】
図13のフローチャートは、6ストロークサイクルと、4ストロークサイクルとの切り替えに係る制御手順を示している。スタート後のステップS131において、制御器21は、各種信号を読み込み、続くステップS132において、制御器21は、読み込んだ信号と、制御マップ101又は104に基づき、レシプロエンジン3の運転状態が第1領域102又は105にあるか否かを判断する。ステップS132の判断がYesの場合、つまり、レシプロエンジン3の運転状態が第1領域102又は105にある場合、制御器21は、ステップS133において、第3のポート37の開閉弁38を開閉させる。レシプロエンジン3は、6ストロークサイクルを実行する。
【0141】
ステップS134において、制御器21は、吸気弁34及び/又は排気弁36の開弁を、要求出力に応じて調整する。続くステップS135において、制御器21は、燃料の設定を行う。ステップS135の燃料設定については後述する。
【0142】
ステップS136において、制御器21は、要求負荷Peが、負荷Pe2以上であるか否かを判断する。ステップS136の判断がYesの場合、制御器21は、ステップS137において、電気モータ27を運転させ、電気モータ27に、レシプロエンジン3をアシストさせる。ステップS136の判断がNoの場合、制御器21は、電気モータ27を運転させない。
【0143】
ステップS132に戻り、ステップS132の判断がNoの場合、制御器21は、ステップS138において、開閉弁38を停止させる。レシプロエンジン3は、4ストロークサイクルを実行する。
【0144】
ステップS139において、制御器21は、吸気弁34及び/又は排気弁36の開弁を、要求出力に応じて調整する。続くステップS1310において、制御器21は、ノックセンサ24がノッキングを検出したか否かを判断する。ステップS1310の判断がYesの場合、制御器21は、ステップS1311において、水素インジェクタ47に、水素ガスを噴射させて、異常燃焼の発生を抑制する。
【0145】
一般的に、炭化水素燃料を利用するエンジンが高負荷高回転で運転している場合は、異常燃焼(例えばノッキング)が発生しやすいという問題がある。レシプロエンジン3の運転状態が第2領域103又は106にある場合は、レシプロエンジン3の回転数が高い上に、炭化水素燃料を燃焼させるため、要求負荷が高まれば、異常燃焼が生じる恐れがある。
【0146】
ここで、炭化水素燃料の燃焼と、水素ガスの燃焼とを比較すると、水素ガスの燃焼は、燃焼速度が大幅に速いという特徴を有している。そこで、車両の制御システム2は、レシプロエンジン3の運転状態が第2領域103又は106にある場合であって、ノッキングが検出された場合には、吸気ポートインジェクタ44が炭化水素燃料を吸気ポート33内へ噴射することに加えて、水素インジェクタ47が水素ガスをシリンダ31内に噴射する。水素ガスは、例えば第1タンク51に貯留されている水素ガスが利用される。水素インジェクタ47は、例えば圧縮行程中のタイミングで、水素ガスをシリンダ31内に噴射してもよい。適切なタイミングでシリンダ31内へ噴射された水素ガスは、燃焼促進剤として機能し、燃焼速度を高める。炭化水素燃料を用いた燃焼が行われている場合であって、レシプロエンジン3の運転状態が高負荷高回転である場合に、異常燃焼が抑制できる。水素ガス噴射による異常燃焼の抑制は、レシプロエンジン3の熱効率を下げずに、異常燃焼が抑制できるという利点がある。
【0147】
ステップS1310の判断がNoの場合、制御器21は、水素インジェクタ47に、水素ガスを噴射させない。
【0148】
尚、ステップS1310は、要求負荷Peが、負荷Pe3以上であるか否かを判断してもよい。負荷Pe3は、
図10又は12に示すように、レシプロエンジン3の運転領域を負荷方向に、低負荷、中負荷、及び、高負荷の領域に三等分した場合の、高負荷の領域に含まれる負荷としてもよい。負荷Pe2とPe3との高低に、特に制限はない。異常燃焼が発生しやすい領域において水素ガスをシリンダ31内へ噴射することにより、異常燃焼が未然に回避される。
【0149】
図14は、
図13のフローチャートのステップS135の燃料設定に関する制御手順を示している。先ずステップS141において、制御器21は、タンク圧センサ25の信号に基づいて、シリンダ31へ供給可能な水素ガス量を取得する。そして、ステップS142において、制御器21は、要求出力と、水素ガス量とに基づいて、水素ガスのみの噴射が可能か否か、換言すれば、水素ガス量によって要求出力が満たされるか否かを判断する。
【0150】
ステップS142の判断がYesの場合、制御器21は、ステップS143において、水素ガスのみの噴射を設定する。ステップS142の判断がNoの場合、水素ガスが不足しているため、制御器21は、ステップS144において、水素ガスと炭化水素燃料との両方の噴射を設定する。炭化水素燃料の噴射量は、水素ガスの不足分の量に設定される。
【0151】
6ストロークサイクルと、4ストロークサイクルとの切り替えは、レシプロエンジン3のカーボンニュートラル化を進めつつ、レシプロエンジン3を駆動源とする車両の走行を可能にする。
【0152】
尚、ここに開示する技術は、前記の構成に限らない。例えばレシプロエンジン3は、圧縮着火式のエンジンであってもよい。
【0153】
また、燃料改質システム1の分解器6は、膜反応器に限定されない。燃焼ガスの熱と圧力を利用して炭化水素燃料を分解できるのであれば、分解器6は、どのような構造であってもよい。
【符号の説明】
【0154】
2 制御システム
21 制御器
27 電気モータ
3 レシプロエンジン
31 シリンダ
32 ピストン
33 吸気ポート
35 排気ポート
37 第3のポート
38 開閉弁
44 吸気ポートインジェクタ(第3インジェクタ)
45 炭化水素燃料供給部
46 第3ポートインジェクタ(第1インジェクタ)
47 水素インジェクタ(第2インジェクタ)
5 水素ガス供給部
59 水素ガス供給部
6 分解器
S1 吸気行程
S2 圧縮行程
S3 膨張行程
S4 再圧縮行程
S5 再膨張行程
S6 排気行程