(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110820
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】LEDチップの樹脂封止方法、および、LED光源装置
(51)【国際特許分類】
H01L 33/52 20100101AFI20240808BHJP
【FI】
H01L33/52
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023015648
(22)【出願日】2023-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】510138741
【氏名又は名称】フェニックス電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147706
【弁理士】
【氏名又は名称】多田 裕司
(72)【発明者】
【氏名】木下 雅章
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 嶺
【テーマコード(参考)】
5F142
【Fターム(参考)】
5F142AA52
5F142BA32
5F142CB22
5F142CB23
5F142CD13
5F142CG03
5F142CG04
5F142CG05
5F142CG06
5F142CG45
5F142FA18
(57)【要約】
【課題】基板をカットすることなく、複数の基板を互いに隣接して並べたときに基板同士の境目を間にして両側に配置された隣り合うLEDチップ同士の距離が不所望に長くならないLED光源装置を製造する方法を提供する。
【解決手段】基板12の互いに対向する一対の端辺AおよびBにおける、LEDチップ14が実装された基板12のLEDチップ実装領域18を臨む位置にそれぞれ封止部材20を配置するとともに、一対の封止部材20と協働してLEDチップ実装領域18を囲むように、基板12上に第2封止部材22を配置し、LEDチップ実装領域18に封止樹脂16を充填し、封止部材20を取り外す。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上のLEDチップ実装領域に実装されたLEDチップと、
前記LEDチップを覆うように前記LEDチップ実装領域に充填された封止樹脂とを備えるLED光源装置を製造する方法であって、
前記基板の互いに対向する一対の端辺における、前記LEDチップが実装された前記基板の前記LEDチップ実装領域を臨む位置にそれぞれ封止部材を配置するとともに、
一対の前記封止部材と協働して前記LEDチップ実装領域を囲むように、前記基板上に第2封止部材を配置し、
前記LEDチップ実装領域に前記封止樹脂を充填し、
前記封止部材を取り外す
LED光源装置の製造方法。
【請求項2】
前記第2封止部材を取り外すステップを有している
請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記封止部材は、前記基板の側面に当接する当接部と、前記基板上に突出する突出部とを有している
請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
基板と、
前記基板上のLEDチップ実装領域に実装されたLEDチップと、
前記LEDチップを覆うように前記LEDチップ実装領域に充填された封止樹脂とを備えており、
前記LEDチップ実装領域の周縁は、前記基板の端辺よりも内側に設定されていることを特徴とする
LED光源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の上に実装されたLEDチップの樹脂封止方法、および、LED光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従前より、基板の上に実装されたLEDチップや当該LEDチップに給電するためのワイヤ等(以下、「LEDチップ等」という。)に直接手が触れられないようにするため、LEDチップ等を樹脂で封止することが実施されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、基板上の複数のLEDチップ等を囲むようにして白色シリコーン製のダムを配置し、当該ダムで囲まれた領域に熔解させた樹脂を流し込むことでLEDチップ等を封止する技術が開示されている。
【0004】
さらに、特許文献1では、LEDチップ等を樹脂で封止した後、基板の長手方向両端部を、ダム(および、封止樹脂の一部)を含めてカットすることにより、複数の基板を互いに隣接して並べたときに基板同士の境目を間にして両側に配置された隣り合うLEDチップ同士の距離が不所望に長くならないようにできる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ダムや封止樹脂を含めて基板をカットするには高い切断精度が求められるだけでなく、切断の際に生じる振動や応力によってLEDチップ等を損傷させてしまうおそれがあった。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、基板をカットすることなく、複数の基板を互いに隣接して並べたときに基板同士の境目を間にして両側に配置された隣り合うLEDチップ同士の距離が不所望に長くならないLED光源装置を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一局面によれば、
基板と、
前記基板上のLEDチップ実装領域に実装されたLEDチップと、
前記LEDチップを覆うように前記LEDチップ実装領域に充填された封止樹脂とを備えるLED光源装置を製造する方法であって、
前記基板の互いに対向する一対の端辺における、前記LEDチップが実装された前記基板の前記LEDチップ実装領域を臨む位置にそれぞれ封止部材を配置するとともに、
一対の前記封止部材と協働して前記LEDチップ実装領域を囲むように、前記基板上に第2封止部材を配置し、
前記LEDチップ実装領域に前記封止樹脂を充填し、
前記封止部材を取り外す
LED光源装置の製造方法が提供される。
【0009】
好適には、
前記第2封止部材を取り外すステップを有している。
【0010】
好適には、
前記封止部材は、前記基板の側面に当接する当接部と、前記基板上に突出する突出部とを有している。
【0011】
本発明の他の局面によれば、
基板と、
前記基板上のLEDチップ実装領域に実装されたLEDチップと、
前記LEDチップを覆うように前記LEDチップ実装領域に充填された封止樹脂とを備えており、
前記LEDチップ実装領域の周縁は、前記基板の端辺よりも内側に設定されていることを特徴とする
LED光源装置が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るLED光源装置の製造方法によれば、基板の互いに対向する一対の端辺における、LEDチップ実装領域を臨む位置にそれぞれ封止部材を配置し、当該LEDチップ実装領域に封止樹脂を充填した後で当該封止部材を取り外すようにしているので、基板をカットすることなく、複数の基板を互いに隣接して並べたときに基板同士の境目を間にして両側に配置された隣り合うLEDチップ同士の距離が不所望に長くならないLED光源装置を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態に係るLED光源装置10を示す正面図である。
【
図2】実施形態に係るLED光源装置10を示す天面図である。
【
図3】基板12上のLEDチップ実装領域18にLEDチップ14を実装した状態を示す正面図である。
【
図4】基板12上のLEDチップ実装領域18にLEDチップ14を実装した状態を示す天面図である。
【
図5】封止部材20を配置した状態を示す正面図である。
【
図6】封止部材20を配置した状態を示す天面図である。
【
図7】第2封止部材22を配置した状態を示す正面図である。
【
図8】第2封止部材22を配置した状態を示す天面図である。
【
図9】LEDチップ実装領域18に封止樹脂16を封入した状態を示す正面図である。
【
図10】LEDチップ実装領域18に封止樹脂16を封入した状態を示す天面図である。
【
図11】変形例2に係る封止部材20および第2封止部材22を配置した状態を示す正面図である。
【
図12】変形例2に係る封止部材20および第2封止部材22を配置した状態を示す天面図である。
【
図13】変形例3に係る封止部材20および第2封止部材22を配置した状態を示す天面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下では、先ず本実施形態に係るLED光源装置の製造方法で製造されるLED光源装置10について説明し、然る後、このLED光源装置の製造方法について説明する。
【0015】
(LED光源装置10の構成)
本実施形態に係るLED光源装置10は、
図1および
図2に示すように、大略、基板12と、複数のLEDチップ14と、封止樹脂16とを備えている。
【0016】
基板12は、アルミニウム等の熱伝導率が高い金属で形成された矩形状の板状材である。また、基板12の表面には、LEDチップ14が実装されるLEDチップ実装領域18が規定されている。なお、このLEDチップ実装領域18は、基板12の表面を色分けする等といった明示的なものであってもよいし、特に明示等することなくLEDチップ14を実装する予定の領域を便宜的に「LEDチップ実装領域18」としてもよい。
【0017】
LEDチップ14は、上述した基板12のLEDチップ実装領域18に実装された発光体であり、基板12の表面に形成されたワイヤ等(図示せず)を介して供給された電力を受けて発光する。
【0018】
複数のLEDチップ14は、図中横方向(長手方向)に一定の間隔Xで並べて実装されており、横方向両端にあるLEDチップ14のそれぞれから基板12の端辺Aあるいは端辺Bまでの距離は、それぞれ間隔Xの半分に設定されている。これにより、複数のLED光源装置10を用意して、それぞれを長手方向に沿って隣接して配置すると、あるLED光源装置10における端(例えば右端)に配置されたLEDチップ14と、これに隣接するLED光源装置10における反対側端(例えば左端)に配置されたLEDチップ14との間の距離が、LEDチップ14が実装されている間隔Xと同じになるので、LED光源装置10同士(基板12同士)のつなぎ目でLEDチップ14の配置間隔を気にすることなく、複数のLED光源装置10を配置することができる。
【0019】
本実施形態では、上述のように、複数のLEDチップ14が図中横方向に並べて実装されているが、LEDチップ14の数や配置態様はこれに限定されるものではなく、1つのLEDチップ14であってもよいし、複数のLEDチップ14を碁盤目状あるいは千鳥状に配置してもよい。また、複数のLEDチップ14の全部または一部を不等間隔にならべてもよい。
【0020】
封止樹脂16は、上述したLEDチップ14を覆うようにして、LEDチップ実装領域18に充填されている。封止樹脂16の種類は特に限定されるものではないが、各LEDチップ14から放射される光を透過させる、シリコーン樹脂、エポキシ系樹脂、あるいはフッ素系樹脂、ガラス等が考えられる。
【0021】
(LED光源装置10の製造方法)
次に、上述したLED光源装置10の製造方法について説明する。先ず、
図3および
図4に示すように、基板12上のLEDチップ実装領域18にLEDチップ14を実装しておく。
【0022】
次に、
図5および
図6に示すように、基板12の互いに対向する一対の端辺AおよびBにおける、LEDチップ14が実装された基板12のLEDチップ実装領域18を臨む位置にそれぞれ封止部材20を配置する。
【0023】
ここで、封止部材20は、断面が矩形状(四角形状)の棒状部材であり、例えば、フッ素樹脂(PTFE)で形成されるが、この材質に限定されるものではない。
【0024】
次に、
図7および
図8に示すように、一対の封止部材20と協働してLEDチップ実装領域18を囲むように、基板12上に第2封止部材22を配置する。このとき、第2封止部材22の両端は、後述するように樹脂材を充填する際に当該樹脂材がLEDチップ実装領域18からはみ出ないように、封止部材20に当接する位置、つまり、基板12の端辺AおよびBまで形成される。なお、第2封止部材22を先に配置し、然る後、封止部材20を配置する順番であってもよい。
【0025】
ここで、第2封止部材22は、断面が半円形状で直線状に形成されており、例えば、シリコーン系樹脂で形成される。また、第2封止部材22の断面形状は矩形状(四角形状)であってもよい。
【0026】
然る後、
図9および
図10に示すように、LEDチップ実装領域18に封止樹脂16を充填する。
【0027】
最後に、封止部材20および第2封止部材22を取り外して、LED光源装置10の製造が完了する。
【0028】
(LED光源装置10の製造方法の特徴)
本実施形態に係るLED光源装置10の製造方法によれば、基板12の互いに対向する一対の端辺AおよびBにおける、LEDチップ実装領域18を臨む位置にそれぞれ封止部材20を配置し、当該LEDチップ実装領域18に封止樹脂16を充填した後で当該封止部材20を取り外すようにしているので、基板12をカットすることなく、複数の基板12を互いに隣接して並べたときに基板12同士の境目を間にして両側に配置された隣り合うLEDチップ14同士の距離が不所望に長くならないLED光源装置10を製造することができる。
【0029】
(変形例1)
上述した実施形態に係る製造方法では、基板12の互いに対向する一対の端辺AおよびBにおける、LEDチップ14が実装された基板12のLEDチップ実装領域18を臨む位置にそれぞれ配置された封止部材20を取り外して完成とし、これら封止部材20と協働してLEDチップ実装領域18を囲むように基板12上に配置された第2封止部材22は、LED光源装置10に残ったままになっていた。
【0030】
しかしながら、これら第2封止部材22も取り外した状態のLED光源装置10としてもよい。
【0031】
(変形例2)
また、上述した実施形態では、封止部材20として断面が矩形状(四角形状)の棒状部材を使用していたが、これに変えて、
図11および
図12に示すように、基板12の側面(端辺AあるいはBを含む面)に当接する当接部24と、基板12上に突出する突出部26とを有する封止部材20を使用してもよい。
【0032】
この場合、基板12の端辺AおよびBから少し内側に入った部分までは封止部材20の突出部26でカバーされるので、第2封止部材22の両端は、これら突出部26に当接する長さでよいこととなり、上述した実施形態の場合に比べて変形例2における第2封止部材22の長さは短くなる。
【0033】
これにより、封止樹脂16にカバーされている領域(つまり、LEDチップ実装領域18)も封止部材20の突出部26の分だけ狭くなり、基板12の端辺AおよびBから少し内側に入った部分までは封止樹脂16が存在しないことになる。このため、複数のLED光源装置10を並べて使用する際に、封止樹脂16の公差や膨張等によって隣り合う基板12上の封止樹脂16同士が互いに押し合うことで生じる応力が軽減され、LEDチップ14やボンディングワイヤ(図示せず)にダメージが生じるのを回避できる。
【0034】
(変形例3)
さらに、上述した実施形態では、LED光源装置10の天面視において封止部材20が矩形状(四角形状)になっていたが、これに変えて、
図13に示すように、LEDチップ14に向かって一部が凸、あるいは一部が凹となる形状であってもよい。もちろん、これに合わせてLEDチップ実装領域18も一部が凹、あるいは一部が凸となる。
【0035】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0036】
10…LED光源装置、12…基板、14…LEDチップ、16…封止樹脂、18…LEDチップ実装領域
20…封止部材、22…第2封止部材、24…(封止部材20の)当接部、26…(封止部材20の)突出部
A…(基板12の)端辺、B…(基板12の)端辺