(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110826
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】シートクッション及び車両用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/90 20180101AFI20240808BHJP
A47C 7/20 20060101ALI20240808BHJP
A47C 27/14 20060101ALI20240808BHJP
B68G 5/02 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
B60N2/90
A47C7/20
A47C27/14 A
B68G5/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023015665
(22)【出願日】2023-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 利春
【テーマコード(参考)】
3B084
3B087
3B096
【Fターム(参考)】
3B084CA05
3B084CB01
3B087DE10
3B096AB01
3B096AD07
(57)【要約】
【課題】パッド材をさらに薄肉化した場合であっても底付きを抑制することが可能なシートクッション及び車両用シートを得る。
【解決手段】着座乗員Pの臀部P1のシート下方側においてシートクッションパッド16には開口部26が形成されると共に、当該開口部26内には底付き抑制部材28が設けられ、当該底付き抑制部材28とシートクッションパッド16の間に空洞部30が設けられ、この空洞部30によって着座乗員Pに対する衝撃が緩衝される。すなわち、シートクッションパッド16に対して着座乗員Pを介して衝撃力が入力され、シートクッションパッド16がシート下方側へ向かって撓むと、空洞部30によって着座乗員Pに対する衝撃が緩和されると共に、底付き抑制部材28によって着座乗員Pに対する衝撃を吸収され、シートクッション12の底付きが抑制される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着座乗員の臀部及び大腿部を支持するシートクッション本体における少なくともシート上部側を構成するパッド材と、
前記着座乗員の臀部のシート下方側かつ前記パッド材のシート下方側に離間して設けられ、当該シートクッション本体の底付きを抑制する底付き抑制部材と、
前記着座乗員の臀部のシート下方側かつ前記パッド材と前記底付き抑制部材の間に設けられ、前記着座乗員に対する衝撃を緩和可能な緩衝部と、
を備えているシートクッション。
【請求項2】
前記シートクッション本体に設けられ、前記パッド材をシート下方側から支持する支持部材が設けられ、
前記支持部材における前記着座乗員の臀部のシート下方側に開口部が形成され、前記開口部の内側に前記緩衝部及び前記底付き抑制部材が設けられている請求項1に記載のシートクッション。
【請求項3】
前記パッド材、前記緩衝部及び前記底付き抑制部材における反発弾性率は、前記パッド材、前記底付き抑制部材よりも前記緩衝部の方が低くなるように設定されている請求項1に記載のシートクッション。
【請求項4】
前記緩衝部は、前記パッド材と前記底付き抑制部材の間で形成された空洞部とされている請求項1に記載のシートクッション。
【請求項5】
前記空洞部内には、前記着座乗員に対する衝撃を吸収可能なバネ部材がさらに設けられている請求項4に記載のシートクッション。
【請求項6】
前記緩衝部は、前記底付き抑制部材よりも反発弾性率が小さい軟質部材によって形成されている請求項1に記載のシートクッション。
【請求項7】
フロントシートの骨格部材とされたクッションフレームに取り付けられたクッションパンによって前記パッド材はシート下方側から支持されている請求項1に記載のシートクッション。
【請求項8】
請求項1~請求項7の何れか1項に記載のシートクッションと、
前記着座乗員の背部をシート後方側から支持するシートバックと、
を備えた車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートクッション及び車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用シートのシートクッションにおいて、例えば、特許文献1には、シートクッションパッドを薄肉化した場合であっても底付き感を解消することができるという技術が開示されている。この先行技術では、シートクッションパッドの原料としてポリオールを含有させることによって反発弾性率を上昇させ、十分な反発感を得て底付き感(底付き)の低減を可能にするというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、昨今の自動車において、電気自動車(EV)等ではバッテリ等の搭載によりフロア位置が高くなる一方、車内空間部は担保する必要があり、シートクッションパッド(パッド材)においてさらなる薄肉化が求められている。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、パッド材をさらに薄肉化した場合であっても底付きを抑制することが可能なシートクッション及び車両用シートを得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様に係るシートクッションは、着座乗員の臀部及び大腿部を支持するシートクッション本体における少なくともシート上部側を構成するパッド材と、前記着座乗員の臀部のシート下方側かつ前記パッド材のシート下方側に離間して設けられ、当該シートクッション本体の底付きを抑制する底付き抑制部材と、前記着座乗員の臀部のシート下方側かつ前記パッド材と前記底付き抑制部材の間に設けられ、前記着座乗員に対する衝撃を緩和可能な緩衝部と、を備えている。
【0007】
第1の態様に係るシートクッションでは、パッド材、底付き抑制部材及び緩衝部を備えており、パッド材は、着座乗員の臀部及び大腿部を支持するシートクッション本体(シートクッション)における少なくともシート上部側を構成している。
【0008】
一方、底付き抑制部材は、着座乗員の臀部のシート下方側かつパッド材のシート下方側に離間して設けられており、当該底付き抑制部材によりシートクッションの底付きが抑制される。また、緩衝部は、着座乗員の臀部のシート下方側かつパッド材と底付き抑制部材の間に設けられており、当該緩衝部により着座乗員に対する衝撃が緩和可能とされる。
【0009】
例えば、車両の前面衝突等により着座乗員に対して衝撃荷重が入力された場合、着座乗員の臀部(特に座骨部)には応力が集中する可能性がある。このため、本態様では、シートクッションにおける着座乗員の臀部のシート下方側をパッド材、緩衝部及び底付き抑制部材からなる3層構造としている。
【0010】
パッド材によって着座乗員に対する衝撃が吸収される。また、当該パッド材のシート下方側かつ着座乗員の臀部のシート下方側には、底付き抑制部材が設けられており、底付き抑制部材によって、シートクッションの底付きを抑制することが可能となる。
【0011】
ここで、パッド材と底付き抑制部材の間には緩衝部が設けられており、当該緩衝部によって着座乗員に対する衝撃を緩和可能としている。これにより、本態様では、シートクッションの底付きをさらに抑制することが可能となる。その結果、パッド材をさらに薄肉化することが可能となる。
【0012】
第2の態様に係るシートクッションは、第1の態様に係るシートクッションにおいて、前記シートクッション本体に設けられ、前記パッド材をシート下方側から支持する支持部材が設けられ、前記支持部材における前記着座乗員の臀部のシート下方側に開口部が形成され、前記開口部の内側に前記緩衝部及び前記底付き抑制部材が設けられている。
【0013】
第2の態様に係るシートクッションでは、シートクッション本体には支持部材が設けられており、当該支持部材によってパッド材がシート下方側から支持される。また、支持部材における着座乗員の臀部のシート下方側には開口部が形成されており、当該開口部の内側に緩衝部及び底付き抑制部材が設けられている。
【0014】
ここで、パッド材は支持部材によって支持されるため、パッド材に対して着座乗員を介して衝撃力が入力された場合、パッド材は支持部材によって反力を得て圧縮方向に変形し、これにより、着座乗員に対する衝撃が吸収される。
【0015】
一方、支持部材における着座乗員の臀部のシート下方側には開口部が形成されている。このため、パッド材に対して着座乗員を介して衝撃力が入力された場合、パッド材は開口部内においてさらにシート下方側へ向かって変形(撓む)が可能とされる。当該開口部の内側には、緩衝部及び底付き抑制部材が設けられている。
【0016】
このため、パッド材に対して着座乗員を介して衝撃力が入力された場合、パッド材がシート下方側へ向かって撓むと、緩衝部によって着座乗員に対する衝撃が緩和されると共に、底付き抑制部材によって着座乗員に対する衝撃を吸収され、シートクッションの底付きが抑制される。
【0017】
第3の態様に係るシートクッションは、第1の態様又は第2の態様に係るシートクッションにおいて、前記パッド材、前記緩衝部及び前記底付き抑制部材における反発弾性率は、前記パッド材、前記底付き抑制部材よりも前記緩衝部の方が低くなるように設定されている。
【0018】
第3の態様に係るシートクッションでは、パッド材、緩衝部及び底付き抑制部材における反発弾性率は、パッド材、底付き抑制部材よりも緩衝部の方が低くなるように設定され、パッド材、緩衝部、底付き抑制部材の中では、緩衝部の反発弾性率が一番低くなっている。
【0019】
つまり、パッド材及び底付き抑制部材の硬度は緩衝部よりも高くなっている。ここで、当該パッド材の硬度を上げることによって、本態様では、パッド材の硬度が低い場合と比較して、着座乗員は、パッド材によるホールド感が得られ、身体のぐらつきを防止して良好な座り心地が確保される。
【0020】
第4の態様に係るシートクッションは、第1の態様~第3の態様の何れか1の態様に係るシートクッションにおいて、前記緩衝部は、前記パッド材と前記底付き抑制部材の間で形成された空洞部とされている。
【0021】
第4の態様に係るシートクッションでは、パッド材と底付き抑制部材の間で形成された空洞部が緩衝部とされている。パッド材に対して着座乗員を介して衝撃力が入力されると、当該空洞部を介してパッド材がシート下方側へ向かって撓むことができる。つまり、当該空洞部によって、パッド材の変形ストロークを得ることが可能となり、その分、着座乗員に対する衝撃が吸収される。
【0022】
第5の態様に係るシートクッションは、第1の態様~第4の態様の何れか1の態様に係るシートクッションにおいて、前記空洞部内には、前記着座乗員に対する衝撃を吸収可能なバネ部材がさらに設けられている。
【0023】
第5の態様に係るシートクッションでは、空洞部内にはバネ部材が設けられており、当該バネ部材によって着座乗員に対する衝撃がさらに吸収可能とされる。
【0024】
第6の態様に係るシートクッションは、第1の態様~第5の態様の何れか1の態様に係るシートクッションにおいて、前記緩衝部は、前記底付き抑制部材よりも反発弾性率が小さい軟質部材によって形成されている。
【0025】
第6の態様に係るシートクッションでは、底付き抑制部材よりも反発弾性率が小さい軟質部材によって緩衝部が形成されている。パッド材に対して着座乗員を介して衝撃力が入力され、当該パッド材がシート下方側へ向かって撓んだとき、パッド材によって衝撃を吸収すると共に、軟質部材が圧縮方向に変形し、これによっても着座乗員に対する衝撃が吸収される。
【0026】
第7の態様に係るシートクッションは、第1の態様~第6の態様の何れか1の態様に係るシートクッションにおいて、フロントシートの骨格部材とされたクッションフレームに取り付けられたクッションパンによって前記パッド材はシート下方側から支持されている。
【0027】
第7の態様に係るシートクッションでは、支持部材は、クッションパンとされている。クッションパンは、フロントシートの骨格部材とされたクッションフレームに取り付けられているため、常に良好な体圧分布が得られ、座り心地が向上する。
【0028】
第8の態様に係る車両用シートは、第1の態様~第7の態様の何れか1の態様に係るシートクッションと、前記着座乗員の背部をシート後方側から支持するシートバックと、を備えている。
【0029】
請求項8に記載の車両用シートでは、第1の態様~第7の態様の何れか1の態様に係るシートクッションを用いたことによって得られる効果を享受することが可能となる。
【発明の効果】
【0030】
以上説明したように、本発明によれば、パッド材をさらに薄肉化した場合であっても底付きを抑制することが可能なシートクッション及び車両用シートを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本実施形態に係る車両用シートのシートクッションが適用されたリヤシートを示す平面図である。
【
図2】
図1に示すA-A’線に沿って切断された状態を示す概略断面図である。
【
図3】(A)は、比較例を説明するための要部を示す断面図であり、(B)は、本実施形態に係る車両用シートのシートクッションの作用を説明するための要部を示す断面図である。
【
図4】本実施形態に係る車両用シートのシートクッションの変形例1を示す
図2に対応する断面図である。
【
図5】本実施形態に係る車両用シートのシートクッションの変形例3を示すフロントシートの斜視図である。
【
図6】
図5に示すB-B’線に沿って切断された状態を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を用いて、本発明の実施形態に係るシートクッションが適用された車両用シートについて説明する。なお、これらの図において適宜示される矢印FRは、車両用シートの前方向(着座者の向く方向)を示しており、矢印UPは車両用シートの上方向を示し、矢印RHは車両用シートの右方向、矢印LHは車両用シートの左方向をそれぞれ示している。以下、単に前後、上下、左右の方向を用いて説明する場合は、特に断りのない限り、車両用シートの前後、車両用シートの上下、進行方向を向いた場合の車両用シートの左右を示すものとする。
【0033】
<車両用シートの構成>
まず、本実施形態に係る車両用シートの構成について説明する。
【0034】
例えば、
図1に示す本実施形態に係る車両用シート10は、フロントシート(図示省略)よりも車両前後方向の後方側に配置されたリヤシートに適用されており、
図1にはシートクッション(シートクッション本体)12の平面図が示されている。
【0035】
車両用シート10は、着座乗員Pの臀部P1(
図2参照)及び大腿部P2(
図2参照)をシート下方側から支持するシートクッション(シートクッション本体)12と、図示はしないが着座乗員の背部をシート後方側から支持するシートバックと、着座乗員の頭部をシート後方側から支持するヘッドレストと、を備えている。
【0036】
なお、当該ヘッドレストは、左右セパレートタイプの車両用シートに適用されてもよいし、ベンチシートタイプの車両用シートに適用されてもよい。このため、ヘッドレストは、適用されるシートに応じて、その形状は適宜変更可能である。勿論、ヘッドレストについては必ずしも必要ではない。
【0037】
図2に示されるように、本実施形態におけるシートクッション12は、骨格部材であるシートクッションフレーム(図示省略)と、シートクッション12のシート上部側に設けられたシートクッションパッド(パッド材)16と、当該シートクッションパッド16を被覆するシートクッション表皮18と、を含んで構成されている。
【0038】
シートクッションフレームは、例えば、鋼板、アルミニウム合金等の金属によって形成されており、シートクッションパッド16は、例えば、ウレタンフォーム等の発泡材によって形成され、着座乗員Pの臀部P1及び大腿部P2を弾性的に支持する。一方、シートクッション表皮18は、例えば布材、皮革、合成皮革又はPVC等によって形成されており、シートクッション表皮18によってシートクッションパッド16は被覆されている。
【0039】
ここで、
図1、
図2に示されるように、シートクッション12は、シート幅方向の中央部に設けられ着座乗員Pの臀部P1及び大腿部P2を下方側から支持するメイン部20と、メイン部20を中心にシート幅方向の両側に設けられ着座乗員Pの臀部P1及び大腿部P2に対して側方側からの支持を可能とするサイド部22と、を含んで構成されている。
【0040】
当該メイン部20において、シートクッションパッド16のシート下方側には、当該シートクッションパッド16の下面の形状に沿って形成されシートクッション12の下端部を構成する構造部材(支持部材)24が設けられている。つまり、構造部材24は、着座乗員Pの臀部P1のシート下方側まで設けられている。なお、構造部材24は、例えば、EPP(発泡ポリプロピレン)や他の樹脂等によって形成されている。
【0041】
当該構造部材24には、着座乗員Pの臀部P1のシート下方側に対応する部位に開口部26が形成されており、開口部26内には、構造部材24の肉厚よりも薄く形成された底付き抑制部材28が配置されている。この底付き抑制部材28は、緩衝部材とされ、例えば、ゲル体(αゲル等)、発泡ウレタン、軟質ゴム等によって形成されたシート状部材が用いられる。このような底付き抑制部材28によって、着座乗員Pに対する衝撃が吸収可能とされると共に、シートクッション12の底付きが抑制可能とされる。
【0042】
ところで、シートクッションパッド16と構造部材24は、例えば、一体成形、又は溶着、接着剤等による後付けにより一体化可能とされる。このため、底付き抑制部材28は、シートクッションパッド16と構造部材24が一体化された状態で、構造部材24に対して取り付けられる。
【0043】
例えば、図示はしないが、底付き抑制部材28は、その裏面側に当該底付き抑制部材28の外形からはみ出すヒレを周囲に設け、このヒレを構造部材24に対してタッカ留めすることによって底付き抑制部材28が構造部材24に対して一体化されてもよい。このように、シートクッションパッド16と構造部材24が一体化されると共に構造部材24と底付き抑制部材28が一体化された状態で、シートクッションパッド16と構造部材24の間には空洞部(緩衝部)30が形成される。
【0044】
つまり、本実施形態では、シートクッション12における着座乗員Pの臀部P1のシート下方側をシートクッションパッド16、空洞部30及び底付き抑制部材28からなる3層構造としている。そして、シートクッションパッド16、空洞部30及び底付き抑制部材28における反発弾性率は、シートクッションパッド16、底付き抑制部材28よりも空洞部30の方が低くなる。厳密には、反発弾性率は、シートクッションパッド16≧底付き抑制部材28>空洞部30となっており、空洞部30の硬度は他の部材よりも低くなる。
【0045】
ここで、反発弾性率は、入力される荷重方向における反発弾性率であり、反発弾性率は、反発弾性、剛性、或いは強度を示す指標とされ、弾性及び復元性の程度を示すものとしている。つまり、反発弾性率が低いほど衝撃や振動に対する吸収性が良いということになる。なお、この反発弾性率は、日本工業規格JIS K 6400-3に準拠した方法で測定された値である。
【0046】
<車両用シートの作用及び効果>
次に、本実施形態に係る車両用シートの作用及び効果について説明する。
【0047】
本実施形態では、
図2に示されるように、シートクッションパッド16のシート下方側に構造部材24が設けられ、構造部材24における着座乗員Pの臀部P1のシート下方側に対応する部位に開口部26が形成され、開口部26内には、空洞部30及び底付き抑制部材28が設けられている。
【0048】
シートクッションパッド16は、着座乗員Pの臀部P1及び大腿部P2を支持するシートクッション12の上部側を構成し、底付き抑制部材28は、シートクッションパッド16のシート下方側かつ着座乗員Pの臀部P1のシート下方側に設けられ、シートクッション12の底付きを抑制する。
【0049】
本実施形態では、前述のように、着座乗員Pの臀部P1のシート下方側においてシートクッションパッド16には開口部26が形成されると共に、当該開口部26内には底付き抑制部材28が設けられ、当該底付き抑制部材28とシートクッションパッド16の間に空洞部30が設けられ、この空洞部30によって着座乗員Pに対する衝撃が緩衝される。
【0050】
例えば、車両の前面衝突等により着座乗員Pに対して衝撃荷重が入力された場合、着座乗員Pにおいて、いわゆるヒップポイントHPの直下の臀部P1(特に座骨部)には応力が集中する可能性がある。このため、本実施形態では、シートクッション12における着座乗員Pの臀部P1のシート下方側をシートクッションパッド16、空洞部30及び底付き抑制部材28からなる3層構造としている。
【0051】
すなわち、シートクッションパッド16は、例えば、前述のように、ウレタンフォームの発泡材等、衝撃を吸収可能な材料が用いられているため、シートクッションパッド16に対して着座乗員Pを介して衝撃力が入力された場合、当該シートクッションパッド16によって着座乗員Pに対する衝撃が吸収(緩和)される。
【0052】
また、底付き抑制部材28は、EPP、樹脂等によって形成され、当該シートクッションパッド16のシート下方側かつ着座乗員Pの臀部P1のシート下方側には設けられている。このため、シートクッションパッド16に対して着座乗員Pを介して衝撃力が入力された場合、シートクッションパッド16は底付き抑制部材28によって反力を得て圧縮方向に変形し、これにより、着座乗員Pに対する衝撃が吸収され、着座乗員Pの臀部P1に対する応力集中が回避される。
【0053】
一方、底付き抑制部材28における着座乗員Pの臀部P1のシート下方側には開口部26が形成されている。シートクッションパッド16に対して着座乗員Pを介して衝撃力が入力された場合、着座乗員Pの臀部P1の周辺部のシート下方側では、シートクッションパッド16は底付き抑制部材28の反力を得て圧縮方向に変形するが、着座乗員Pの臀部P1のシート下方側では、シートクッションパッド16はシート下方側へ向かって撓む。
【0054】
当該開口部26の内側には、空洞部30及び底付き抑制部材28が設けられている。このため、シートクッションパッド16に対して着座乗員Pを介して衝撃力が入力され、シートクッションパッド16がシート下方側へ向かって撓むと、空洞部30によって着座乗員Pに対する衝撃が緩和されると共に、底付き抑制部材28によって着座乗員Pに対する衝撃を吸収され、シートクッション12の底付きが抑制される。
【0055】
具体的に説明すると、本実施形態では、シートクッションパッド16と底付き抑制部材28の間に空洞部30が設けられている。シートクッションパッド16に対して着座乗員Pを介して衝撃力が入力されると、当該空洞部30を介してシートクッションパッド16がシート下方側へ向かって撓むことができる。つまり、当該空洞部30によって、シートクッションパッド16の変形ストロークを得ることが可能となり、その分、着座乗員Pに対する衝撃が吸収される。
【0056】
また、シートクッションパッド16に対して着座乗員Pを介して衝撃力が入力されシートクッションパッド16が下方側へ向かって撓んだとき、空洞部30内の空気が圧縮されると、その分着座乗員Pに対する衝撃が吸収(減衰)される。
【0057】
以上のような構成により、本実施形態は、シートクッション12の底付きをさらに抑制することが可能となる。その結果、本実施形態では、シートクッションパッド16をさらに薄肉化することが可能となる。つまり、本実施形態では、シートクッションパッド16が薄くなっても空洞部30によってシートクッションパッド16の変形ストロークを稼ぐことで、シートクッション12の底付きを抑制することが可能となる。
【0058】
また、本実施形態では、シートクッションパッド16、空洞部30及び底付き抑制部材28における反発弾性率は、シートクッションパッド16、底付き抑制部材28よりも空洞部30の方が低い(厳密には、シートクッションパッド16≧底付き抑制部材28>空洞部30)。つまり、空洞部30の硬度は、シートクッションパッド16及び底付き抑制部材28よりも低くなっており、空洞部30は、他よりも最も柔らかい層となっている。
【0059】
このため、シートクッションパッド16として、反発弾性率の高い(硬い)部材を採用しても、空洞部30を介して十分なたわみ量を確保することが可能となる。なお、底付き抑制部材28として、EPPに代えて、樹脂等シリコーンゴム、低反発クロロプレンゴム等の軟質ゴムシート、発泡ウレタン、発泡樹脂シート(発泡ポリエチレン等)のようないわゆる軟質衝撃吸収部材が用いられてもよい。この場合、シートクッションパッド16の硬度をさらに上げることができる。
【0060】
ここで、当該シートクッションパッド16の硬度を上げることによって、本実施形態では、シートクッションパッド16の硬度が低い場合と比較して、着座乗員Pは、シートクッションパッド16によるホールド感が得られ、身体のぐらつきを防止して良好な座り心地が確保される。一方、衝撃荷重の入力(いわゆる大入力)に対しては、シートクッションパッド16が反発弾性率の低い(硬度の低い)底付き抑制部材28に当接することによって衝撃が吸収され、着座乗員Pを柔らかく受け止めることができる。
【0061】
例えば、比較例として、図示はしないが、シートクッションパッド16のみで衝撃を吸収させようとすると、シートクッションパッド16の変形ストロークをその分確保する必要が生じる。この場合、シートクッションパッド16の硬度を低くしてシートクッションパッド16を柔らかくすることになる。しかしながら、この場合、シートクッションパッド16において座り心地が損なわれてしまう。なお、シートクッションパッド16の硬度が高過ぎても座り心地は損なわれてしまう。
【0062】
これに対して、本実施形態では、シートクッションパッド16の下方側に空洞部30が設けられている。空洞部30は、シートクッションパッド16と比較して反発弾性率が低いため、当該空洞部30によってシートクッションパッド16の変形ストロークを確保することが可能となる。また、シートクッションパッド16が空洞部30側へ向かって撓んだとき、空洞部30内の空気が圧縮されるため、これにより、着座乗員Pに対する衝撃が緩衝(減衰)される。
【0063】
つまり、本実施形態では、当該空洞部30が設けられていない場合と比較して、シートクッションパッド16の変形ストロークを短くすることが可能となる。言い換えると、本実施形態では、変形ストロークを確保しつつ、クッション性のある硬いシートクッションパッド16の使用を実現することが可能となる。
【0064】
そして、本実施形態では、シートクッションパッド16の撓み変形、空洞部30内の空気の圧縮、底付き抑制部材28の圧縮変形等によって着座乗員Pに対する衝撃を吸収すると共にシートクッションパッド16の底付きを抑制する。したがって、本実施形態では、当該シートクッションパッド16をさらに薄肉化した場合であっても底付きの抑制が可能となる。
【0065】
また、比較例として、
図3(A)に示されるように、例えば、空洞部30(
図3(B)参照)が存在しない場合、つまり、シートクッションパッド100と底付き抑制部材102が接触している場合、大入力時、荷重Fによるシートクッションパッド100と底付き抑制部材102が接触する接触面に沿った滑り方向(矢印A方向)の入力によって、シートクッションパッド100と底付き抑制部材102との間で生じる摩擦力によりいわゆる位相ズレが生じ、底付き抑制部材102を持ち上げる力が発生する等、予期せぬ変形が発生する可能性が生じる。このような場合、乗員に対して違和感を与え乗り心地が悪くなる。
【0066】
これに対して、本実施形態では、
図3(B)に示されるように、シートクッションパッド16と底付き抑制部材28の間に空洞部30が設けられるため、大入力時、荷重Fにより変形した入力部20Aのみが底付き抑制部材28に対して接触し、矢印A方向に対して荷重の移動をスムーズに行うことができる。このため、乗員に対して違和感を与えることなく、乗り心地を確保することが可能となる。
【0067】
<本実施形態の変形例>
本実施形態では、
図2に示されるように、シートクッション12における着座乗員Pの臀部P1のシート下方側をシートクッションパッド16、空洞部30及び底付き抑制部材28からなる3層構造とし、反発弾性率において、シートクッションパッド16、底付き抑制部材28よりも空洞部30の方が低くなるように設定されているが、この構造に限るものではない。なお、以下の変形例の説明において、本実施形態と略同じ部材については同じ符号を用いその説明は割愛する。
【0068】
(変形例1)
例えば、変形例1では、
図4に示されるように、シートクッション36における構造部材24に形成された開口部26内において、空洞部30(
図2参照)内に軟質部材(緩衝部)38が設けられている。この軟質部材38として、例えば、発泡ウレタン、軟質ゴム、綿材、布材等が用いられ、反発弾性率は、シートクッションパッド16、底付き抑制部材28よりも軟質部材38の方が低くなるように設定される(厳密には、シートクッションパッド16≧底付き抑制部材28>軟質部材38)。
【0069】
つまり、底付き抑制部材28よりも低い反発弾性率を有していれば空洞部30(
図2参照)内に軟質部材38が用いられてもよい。変形例1では、底付き抑制部材よりも反発弾性率が小さい軟質部材38によって緩衝部が形成されている。
【0070】
このように、空洞部30内に軟質部材38を設けることによって、シートクッションパッド16に対して着座乗員Pを介して衝撃力が入力され当該シートクッションパッド16が下方側へ向かって撓んだとき、シートクッションパッド16によって衝撃を吸収すると共に、軟質部材38が圧縮方向に変形し、これによっても着座乗員Pに対する衝撃が吸収される。
【0071】
当該軟質部材38は空洞部30よりも反発弾性率は高いため、その分、空洞部30の場合よりも硬度は高くなるが、軟質部材38自体による衝撃の吸収が可能であるため、シートクッションパッド16において、着座時の変形量を調整し、より詳細な姿勢出し、座り心地の調整等が可能となる。
【0072】
(変形例2)
また、
図2に示す本実施形態では、シートクッションパッド16、空洞部30及び底付き抑制部材28における反発弾性率が、シートクッションパッド16≧底付き抑制部材28>空洞部30となるように設定されているが、これに限るものではない。
【0073】
例えば、変形例2として、底付き抑制部材28≧シートクッションパッド16>空洞部30となるように設定されてもよい。例えば、シートクッションパッド16の反発弾性率が底付き抑制部材28よりも低くなるように設定することによって、シートクッションパッド16を底付き抑制部材28よりも柔らかくすることができる。
【0074】
つまり、シートクッション12において、着座面側に柔らかく振動吸収性を良くすることができる。これにより、体圧の分散、表面ソフト感が向上し、高荷重域でもシートクッションパッド16が柔らかく撓むことによって底付きを防止することが可能となる。
【0075】
変形例2では、底付き抑制部材28はシートクッションパッド16の硬度よりも高くなるため、着座乗員PのヒップポイントHPの確保が可能となる。また、底付き抑制部材28において、シートクッションパッド16よりも反発弾性率を高くする(反発を強くする)ことによって、大入力時においてシートクッションパッド16と底付き抑制部材28の間で生じる位相ズレを軽減し、車両において段差等を乗り越える際のシートクッション12に伝達される不快感が軽減される。
【0076】
(変形例3)
また、本実施形態における車両用シート10として、リヤシートに適用された例について説明したが、
図5に示されるように、フロントシート40に適用されてもよい。フロントシート40の場合、
図6に示されるように、シートクッション42の下端部において、クッションフレーム44に対してクッションパン46が取り付けられる場合がある。
【0077】
クッションパン46は、鋼板、アルミニウム合金等の金属によって形成されており、全体として浅底な角皿状に形成されている。このように、クッションパン46が設けられることによって、フロントシート40において、常に良好な体圧分布が得られ、座り心地が向上する。なお、フロントシート40において、このクッションパン46は、必ずしも必要ではない。
【0078】
変形例3では、このクッションパン46の上に底付き抑制部材28が設けられる。なお、この場合、クッションパン46には、当該クッションパン46の側壁46Aの底面46B側には、内側へ向かって張り出す突起46C等を設け、突起46Cと底面46Bの間に底付き抑制部材28が嵌まるように設定されることによって、底付き抑制部材28のズレを抑制することが可能となる。
【0079】
底付き抑制部材28のシート上方側には、シートクッションパッド16との間に空洞部30が設けられている。これにより、シートクッションパッド16が薄くなっても空洞部30で当該シートクッションパッド16の変形ストロークを稼ぐことが可能となり、シートクッションパッド16の反発力を任意に設定しつつ、ヒップポイントの位置合わせが可能となる。また、大入力時においては、底付きを抑制することができる。
【0080】
なお、空洞部30内において、着座乗員Pに対する衝撃を吸収可能なバネ部材(図示省略)が設けられてもよい。このバネ部材によって、着座乗員Pに対する衝撃をさらに吸収可能とすることが可能となる。ここで、バネ部材は、ゴムコーティングした金属バネ、メッシュバネ等が用いられ、金属同士の接触による異音の発生を抑制する。
【0081】
また、シートクッションパッド16の裏面には、図示はしないが、フェルト等が設けられてもよい。このように、フェルト材を設けることによってシートクッションパッド16との摩擦低減を図ると共に、シートクッションパッド16の剛性を向上させることができる。
【0082】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、その主旨を逸脱しない範囲内において上記以外にも種々変形して実施することが可能である。また、本発明の権利範囲が上記実施形態に限定されないことはいうまでもない。
【符号の説明】
【0083】
10 車両用シート
12 シートクッション(シートクッション本体)
16 シートクッションパッド(パッド材)
24 構造部材(支持部材)
26 開口部
28 底付き抑制部材
30 空洞部(緩衝部)
36 シートクッション
38 軟質部材(緩衝部)
40 フロントシート
42 シートクッション
44 クッションフレーム
46 クッションパン
P 着座乗員
P1 臀部
P2 大腿部