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特開2024-110829電力指令変換装置、電力指令変換方法、及び電力指令変換プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110829
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】電力指令変換装置、電力指令変換方法、及び電力指令変換プログラム
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20240808BHJP
【FI】
H02M7/48 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023015668
(22)【出願日】2023-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】佐田 岳士
(72)【発明者】
【氏名】堀畑 晴美
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770BA02
5H770BA11
5H770CA03
5H770DA03
5H770DA41
5H770EA01
5H770GA19
5H770HA02Y
5H770HA03Y
5H770HA05Y
(57)【要約】
【課題】既存のインバータを、他の装置で再利用可能にすることができる。
【解決手段】電力指令変換装置は、
第1の電力供給対象への電力供給用として用いられていたインバータ及び前記インバータの制御用であるインバータ制御装置に接続された、前記第1の電力供給対象と異なる第2の電力供給対象に対して、前記インバータから出力された電圧の電圧値と、前記第2の電力供給対象に要求される第2の出力要求値と、に基づいて、前記第2の出力要求値を、前記第1の電力供給対象に要求される第1の出力要求値に変換する変換部と、前記変換部により変換された前記第1の出力要求値を前記インバータ制御装置に出力する出力部と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電力供給対象への電力供給用として用いられていたインバータ(20)及び前記インバータの制御用であるインバータ制御装置(30)に接続された、前記第1の電力供給対象と異なる第2の電力供給対象(70)に対して、前記インバータから出力された電圧の電圧値と、前記第2の電力供給対象に要求される第2の出力要求値と、に基づいて、前記第2の出力要求値を、前記第1の電力供給対象に要求される第1の出力要求値に変換する変換部(41)と、
前記変換部により変換された前記第1の出力要求値を前記インバータ制御装置に出力する出力部(41)と、
を備えた電力指令変換装置(40)。
【請求項2】
前記インバータ制御装置は、前記第1の出力要求値と、前記インバータを制御するための電流指令値と、の対応関係を表す第1のマップデータを記憶し、
前記変換部は、
前記第1のマップデータの逆関数で表される第2のマップデータを記憶し、前記第2の出力要求値を前記電圧値で除算して電流値を算出する除算部(42)と、
前記第2の出力要求値に対応する前記第1の出力要求値を前記第2のマップデータから取得する出力要求値取得部(41)と、
を備えた請求項1記載の電力指令変換装置。
【請求項3】
前記第1のマップデータ及び前記第2のマップデータは、外部装置から書き換え可能である、
請求項2記載の電力指令変換装置。
【請求項4】
前記変換部は、前記第2の出力要求値と、前記インバータから出力された電圧及び電流と、に基づいて、前記第1の出力要求値と前記第2の出力要求値との対応関係を表すマップデータを生成し、前記第2の出力要求値に対応する前記第1の出力要求値を前記マップデータから取得する
請求項1記載の電力指令変換装置。
【請求項5】
前記インバータから出力された電圧の基本波成分を演算する基本波電圧演算部(81)、前記電圧の高調波成分を演算する高調波電圧演算部(82)、及び前記電圧の周波数成分を演算する電圧周波数成分演算部(83)の少なくとも1つの演算部と、
前記基本波成分、前記高調波成分、及び前記周波数成分の少なくとも一つの変化の度合いが予め定めた閾値以上であるか否かを判定することにより、前記第2の電力供給対象が遮断されたか否かを判定し、前記第2の電力供給対象が遮断されたと判定した場合、前記インバータの単独運転が防止されるように、無効電力が増大する電力指令値を演算する電力指令演算部(84)と、
前記第2の出力要求値と、前記電力指令値と、を加算して、前記変換部へ出力する加算部(44)と、
を備えた請求項1記載の電力指令変換装置。
【請求項6】
前記第1の電力供給対象は、車両の駆動用のモータである
請求項1記載の電力指令変換装置。
【請求項7】
前記第2の電力供給対象は、系統電力装置である
請求項1~6の何れか1項に記載の電力指令変換装置。
【請求項8】
少なくとも1つのプロセッサが、
第1の電力供給対象への電力供給用として用いられていたインバータ及び前記インバータの制御用であるインバータ制御装置に接続された、前記第1の電力供給対象と異なる第2の電力供給対象に対して、前記インバータから出力された電圧の電圧値と、前記第2の電力供給対象に要求される第2の出力要求値と、に基づいて、前記第2の出力要求値を、前記第1の電力供給対象に要求される第1の出力要求値に変換し、
変換された前記第1の出力要求値を前記インバータ制御装置に出力する
ことを含む処理を実行する電力指令変換方法。
【請求項9】
少なくとも1つのプロセッサに、
第1の電力供給対象への電力供給用として用いられていたインバータ及び前記インバータの制御用であるインバータ制御装置に接続された、前記第1の電力供給対象と異なる第2の電力供給対象に対して、前記インバータから出力された電圧の電圧値と、前記第2の電力供給対象に要求される第2の出力要求値と、に基づいて、前記第2の出力要求値を、前記第1の電力供給対象に要求される第1の出力要求値に変換し、
変換された前記第1の出力要求値を前記インバータ制御装置に出力する
ことを含む処理を実行させる電力指令変換プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力指令変換装置、電力指令変換方法、及び電力指令変換プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、直流電源の電圧を変換して電源ラインにシステム電圧を発生させる変換手段と、前記電源ラインに接続されたインバータ及び該インバータで駆動される交流モータからなる少なくとも1つのモータ駆動ユニット(以下「MGユニット」と表記する)とを備えた電気自動車の制御装置において、前記電源ラインにかかる電力を操作して前記システム電圧の変動を抑制するようにシステム電圧安定化制御を実行するシステム電圧制御手段と、前記交流モータのトルクと前記MGユニットの入力電力とを独立に制御する電流制御手段と、前記変換手段の入力電力又は出力電力(以下「変換電力」という)を制御する変換電力制御を実行する変換電力制御手段と、前記変換手段の出力電圧を制御する変換電圧制御を実行する変換電圧制御手段と、前記変換電力制御と前記変換電圧制御のうちのいずれか一方を実行するように選択すると共に前記変換電圧制御の実行が選択される場合に前記システム電圧安定化制御の実行を禁止する選択手段とを備え、前記システム電圧制御手段は、前記電源ラインにかかる電力の目標操作量(以下「目標電力操作量」という)を演算する目標電力操作量演算手段と、該目標電力操作量演算手段で演算した目標電力操作量を前記MGユニット制御用のMG電力操作量指令値と前記変換電力制御用の変換電力操作量補正値とに分配する分配手段とを備え、前記変換電力制御手段は、前記分配手段により分配された変換電力操作量補正値を用いて前記変換電力を制御し、前記電流制御手段は、前記分配手段により分配されたMG電力操作量指令値を用いて前記MGユニットを制御することを特徴とする電気自動車の制御装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-43179号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
循環型経済の実現に際し、再生可能エネルギーの発電機や蓄電池と系統電力とを接続するための系統連系用のインバータとして、例えばハイブリッド車両等を駆動するモータの出力制御を行うインバータを再利用することが有効である。
【0005】
しかしながら、車両のモータ駆動用のインバータは、モータの出力要求値を入力する必要があるため、そのままでは系統連系用のインバータとして再利用することが出来ない。
【0006】
本開示は、既存のインバータを、他の装置で再利用可能にすることができる電力指令変換装置、電力指令変換方法、及び電力指令変換プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第1態様に係る電力指令変換装置は、第1の電力供給対象への電力供給用として用いられていたインバータ及び前記インバータの制御用であるインバータ制御装置に接続された、前記第1の電力供給対象と異なる第2の電力供給対象に対して、前記インバータから出力された電圧の電圧値と、前記第2の電力供給対象に要求される第2の出力要求値と、に基づいて、前記第2の出力要求値を、前記第1の電力供給対象に要求される第1の出力要求値に変換する変換部と、前記変換部により変換された前記第1の出力要求値を前記インバータ制御装置に出力する出力部と、を備える。
【0008】
第2態様に係る電力指令変換方法は、少なくとも1つのプロセッサが、第1の電力供給対象への電力供給用として用いられていたインバータ及び前記インバータの制御用であるインバータ制御装置に接続された、前記第1の電力供給対象と異なる第2の電力供給対象に対して、前記インバータから出力された電圧の電圧値と、前記第2の電力供給対象に要求される第2の出力要求値と、に基づいて、前記第2の出力要求値を、前記第1の電力供給対象に要求される第1の出力要求値に変換し、変換された前記第1の出力要求値を前記インバータ制御装置に出力することを含む処理を実行する。
【0009】
第3態様に係る電力指令変換プログラムは、少なくとも1つのプロセッサに、第1の電力供給対象への電力供給用として用いられていたインバータ及び前記インバータの制御用であるインバータ制御装置に接続された、前記第1の電力供給対象と異なる第2の電力供給対象に対して、前記インバータから出力された電圧の電圧値と、前記第2の電力供給対象に要求される第2の出力要求値と、に基づいて、前記第2の出力要求値を、前記第1の電力供給対象に要求される第1の出力要求値に変換し、変換された前記第1の出力要求値を前記インバータ制御装置に出力することを含む処理を実行させる。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、既存のインバータを、他の装置で再利用可能にすることができる、という効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態に係るインバータ制御システムの構成図である。
図2】第1実施形態に係るインバータ制御装置及び電力指令変換装置の構成図である。
図3】トルク指令値と電流指令値との対応関係を示す線図である。
図4】電流指令値とトルク指令値との対応関係を示す線図である。
図5】第2実施形態に係る電力指令変換装置のハードウエア構成を示す図である。
図6】第2実施形態に係る電力指令変換処理のフローチャートである。
図7】第3実施形態に係るインバータ制御装置及び電力指令変換装置の構成図である。
図8】第4実施形態に係るインバータ制御装置及び電力指令変換装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本開示の技術を実施するための形態を詳細に説明する。
【0013】
<第1実施形態>
【0014】
図1に示すように、本実施形態に係るインバータ制御システム10は、インバータ20、インバータ制御装置30、及び電力指令変換装置40を備える。
【0015】
インバータ20は、例えばハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、及び電気自動車等の車両の駆動に用いられるモータの駆動用のインバータである。なお、車両の駆動に用いられるモータは、第1の電力供給対象の一例である。
【0016】
インバータ20は、インバータ制御装置30により制御される。インバータ20及びインバータ制御装置30は、元々は車両に搭載され、車両の駆動に用いられるモータの駆動に用いられていたものである。
【0017】
本実施形態において、インバータ20は、車両の駆動に用いられるモータの駆動用として用いられるのではなく、他の電力供給対象への電力供給用として用いられる。具体的には、図1に示すように、インバータ20は、発電装置50から供給された直流電圧を3相の交流電圧に変換して、系統接続装置60を介して系統電力装置70に供給する。
【0018】
なお、発電装置50は、例えば太陽光等の再生可能エネルギーを利用して発電する発電装置が適用されるが、これに限られるものではない。
【0019】
このように、本実施形態では、元々車両の駆動用のモータに用いられていたインバータ20及びインバータ制御装置30を、系統電力装置70への電力供給の駆動用に再利用したものである。なお、系統電力装置70は、第2の電力供給対象の一例である。
【0020】
インバータ20は、一例として6個のスイッチング素子S1~S6を含む。インバータ20は、直列接続されたスイッチング素子S1及びスイッチング素子S2と、直列接続されたスイッチング素子S3及びスイッチング素子S4と、直列接続されたスイッチング素子S5及びスイッチング素子S6と、が並列接続された構成である。
【0021】
また、スイッチング素子S1及びスイッチング素子S2の接続点C1は、系統接続装置60に接続されている。同様に、スイッチング素子S3及びスイッチング素子S4の接続点C2は、系統接続装置60に接続され、スイッチング素子S5及びスイッチング素子S6の接続点C3は、系統接続装置60に接続されている。
【0022】
なお、スイッチング素子S1~S6を区別しない場合は、単にスイッチング素子Sと称する場合がある。スイッチング素子Sとしては、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)が用いられるが、これに限られるものではない。
【0023】
スイッチング素子Sは、インバータ制御装置30により制御される。具体的には、インバータ制御装置30は、スイッチング制御信号Suによりスイッチング素子S1、S2をスイッチング制御する。また、インバータ制御装置30は、スイッチング制御信号Svによりスイッチング素子S3、S4をスイッチング制御する。また、インバータ制御装置30は、スイッチング制御信号Swによりスイッチング素子S5、S6をスイッチング制御する。
【0024】
インバータ20には、発電装置50から直流電圧が供給される。インバータ制御装置30がスイッチング素子S1~S6を各々スイッチング制御することにより、インバータ20は、発電装置50から供給された直流電圧を3相の交流電圧に変換して系統接続装置60に出力する。
【0025】
3相の交流電流の電流値Iu、Iv、Iwは、電流センサ21u、21v、21wによって各々検出され、インバータ制御装置30に出力される。また、接続点C3から系統接続装置60に出力された電圧は、電圧センサ22によって検出され、検出された電圧の電圧値Vaは、インバータ制御装置30及び電力指令変換装置40に出力される。
【0026】
電力指令変換装置40は、系統電力装置70が出力する電力について要求される出力要求値、すなわち電力指令値と、電圧センサ22によって検出された電圧の電圧値Vaと、に基づいて、トルク指令値Tqを生成し、インバータ制御装置30に出力する。
【0027】
なお、前述したようにインバータ20及びインバータ制御装置30は、元々は車両のモータ駆動用であり、インバータ制御装置30には、元々はモータのトルク指令値が出力要求値として入力される仕様となっている。このため、電力指令変換装置40は、系統電力装置70の電力指令値をモータのトルク指令値に変換してインバータ制御装置30に出力する。なお、トルク指令値は、第1の出力要求値の一例であり、電力指令値は、第2の出力要求値の一例である。
【0028】
インバータ制御装置30は、3相の交流電流の電流値Iu、Iv、Iwと、電圧値Vaと、に基づいて、スイッチング素子S1~S6をスイッチング制御することでフィードバック制御を行う。
【0029】
次に、インバータ制御装置30及び電力指令変換装置40の具体的な構成について説明する。
【0030】
図2に示すように、インバータ制御装置30は、電流指令値取得部31、3相/2相変換部32、減算部33A、33B、PI制御部34A、34B、2相/3相変換部35、PWM信号生成部36、及び位相検出部37を備える。
【0031】
電流指令値取得部31は、マップデータ31Aを記憶する。マップデータ31Aは、例えば図3に示すように、インバータ20が元々接続されていた車両のモータの出力要求値としてのトルク指令値と、d軸電流指令値Idと、q軸電流指令値Iqと、の対応関係を表すテーブルデータである。マップデータ31Aは、第1のマップデータの一例である。なお、マップデータ31Aは、外部装置から書き換え可能であってもよい。
【0032】
電流指令値取得部31は、電力指令変換装置40から入力されたトルク指令値に対応するd軸電流指令値Id及びq軸電流指令値Iqをマップデータ31Aを参照して取得し、d軸電流指令値Idは減算部33Aへ出力し、q軸電流指令値Iqは減算部33Bへ出力する。
【0033】
3相/2相変換部32は、電流センサ21u、21v、21wで検出された電流値Iu、Iv、Iwと、位相検出部37から入力された電圧Vaの位相と、に基づいて、3相の電流値Iu、Iv、Iwを2相の電流値Ix、Iyに変換して、それぞれ減算部33A、33Bへ出力する。
【0034】
減算部33Aは、電流指令値取得部31から入力されたd軸電流指令値Idから、3相/2相変換部32から出力された電流値Ixを減算したd軸電流指令値Id’をPI制御部34Aへ出力する。
【0035】
減算部33Bは、電流指令値取得部31から入力されたq軸電流指令値Iqから、3相/2相変換部32から出力された電流値Iyを減算したq軸電流指令値Iq’をPI制御部34Bへ出力する。
【0036】
PI制御部34Aは、減算部33Aから入力されたd軸電流指令値Id’をPI制御(比例積分制御)により電圧指令値Vdに変換して2相/3相変換部35に出力する。
【0037】
PI制御部34Bは、減算部33Bから入力されたq軸電流指令値Iq’をPI制御により電圧指令値Vqに変換して2相/3相変換部35に出力する。
【0038】
2相/3相変換部35は、位相検出部37から入力された電圧Vaの位相に基づいて、PI制御部34Aから入力された電圧指令値Vd及びPI制御部34Bから入力された電圧指令値Vqを3相の電圧指令値Vu、Vv、Vwに変換してPWM信号生成部36に出力する。
【0039】
PWM信号生成部36は、2相/3相変換部35から入力された電圧指令値Vu、Vv、Vwに基づいて、インバータ20をスイッチング制御するためのスイッチング制御信号Su、Sv、Swを生成してインバータ20へ出力する。なお、スイッチング制御信号Su、Sv、Swは、パルス幅変調(PWM:Pulse Width Modulation)信号である。
【0040】
位相検出部37は、電圧センサ22により検出された電圧の位相を検出し、3相/2相変換部32及び2相/3相変換部35に出力する。
【0041】
また、図2に示すように、電力指令変換装置40は、トルク指令値取得部41及び除算部42を備える。
【0042】
トルク指令値取得部41は、インバータ制御装置30の電流指令値取得部31に記憶されているマップデータ31Aの逆関数で表されるマップデータ41Aを備える。具体的には、図4に示すように、マップデータ41Aは、電流指令値Iaとトルク指令値Tqとの対応関係を表すテーブルデータである。マップデータ41Aは、第1のマップデータの一例である。なお、マップデータ41Aは、外部装置から書き換え可能であってもよい。トルク指令値取得部41は、変換部、出力部、及び出力要求値取得部の一例である。
【0043】
除算部42は、図示しない上位装置から入力された電力指令値Pcを、例えば電圧センサ22で検出された電圧値Vaで除算することにより、電流指令値Iaを算出する。なお、電圧センサ22で検出された電圧値Vaではなく、任意に設定した電圧指令値Vaを用いて電流指令値Iaを算出してもよい。そして、算出した電流指令値Iaをトルク指令値取得部41へ出力する。ここで、電流指令値Iaは、次式で表される。
Ia=(Id*2+Iq*21/2 ・・・(1)
【0044】
このように、本実施形態では、電力指令変換装置40が、入力された電力指令値に対応するトルク指令値Tqを取得してインバータ制御装置30の電流指令値取得部31に出力する。これにより、元々は車両のモータ駆動用であった既存のインバータ20を、系統電力装置70用に再利用することができる。また、電力指令変換装置40を追加すればよいので、インバータ20及びインバータ制御装置30を変更する必要がない。
【0045】
<第2実施形態>
【0046】
次に、第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同一部分については同一符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0047】
第2実施形態では、電力指令変換装置40がソフトウェア処理によってトルク指令値Tqを生成してインバータ制御装置30に出力する場合について説明する。
【0048】
図5は、電力指令変換装置40のハードウエア構成を示すブロック図である。図6に示すように、電力指令変換装置40は、コントローラ45を備える。
【0049】
コントローラ45は、CPU(Central Processing Unit)45A、ROM(Read Only Memory)45B、RAM(Random Access Memory)45C、及び入出力インターフェース(I/O)45Dを備える。そして、CPU45A、ROM45B、RAM45C、及びI/O45Dがバス45Eを介して各々接続されている。バス45Eは、コントロールバス、アドレスバス、及びデータバスを含む。I/O45Dには、通信部46及び記憶部47が接続されている。
【0050】
通信部46は、インバータ制御装置30等とデータ通信を行うためのインターフェースである。
【0051】
記憶部47は、例えば不揮発性メモリで構成される。図5に示すように、記憶部47は、電力指令変換プログラム47A及びマップデータ41A等を記憶する。
【0052】
CPU45Aは、プロセッサの一例である。ここでいうプロセッサとは、広義的なプロセッサを指し、汎用的なプロセッサ(例えば、CPU)、又は、専用のプロセッサ(例えば、GPU:Graphics Processing Unit、ASIC:Application Specific Integrated Circuit、FPGA:Field Programmable Gate Array、プログラマブル論理デバイス、等)を含むものである。
【0053】
なお、電力指令変換プログラム47Aは、不揮発性の非遷移的(non-transitory)記録媒体に記憶して、又はネットワークを介して配布して、電力指令変換装置40に適宜インストールされてもよい。
【0054】
不揮発性の非遷移的記録媒体の例としては、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、光磁気ディスク、HDD(ハードディスクドライブ)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、フラッシュメモリ、メモリカード等が挙げられる。
【0055】
次に、図6を参照して、電力指令変換装置40のCPU45Aで実行される電力指令変換処理のフローチャートについて説明する。CPU45Aが記憶部47に記憶された電力指令変換プログラム47Aを読み込んで実行することにより図6に示す電力指令変換処理が実行される。なお、図6の処理は繰り返し実行される。
【0056】
ステップS100では、CPU45Aが、除算部42として、図示しない上位装置から入力された電力指令値Pcを、電圧センサ22で検出された電圧値Vaで除算することにより、電流指令値Iaを算出する。なお、電圧センサ22で検出された電圧値Vaではなく、任意に設定した電圧指令値Vaを用いて電流指令値Iaを算出してもよい。
【0057】
ステップS101では、CPU45Aが、トルク指令値取得部41として、ステップS100で取得した電流指令値Iaに対応するトルク指令値Tqを、マップデータ41Aを参照して取得する。
【0058】
ステップS102では、CPU45Aが、トルク指令値取得部41として、ステップS101で取得した電流指令値Iaをインバータ制御装置30へ出力する。
【0059】
このように、本実施形態では、電力指令変換装置40のCPU45Aが、記憶部47に記憶された電力指令変換プログラム47Aを読み込んで実行することにより電力指令変換処理を実行する。これにより、電力指令値Pcに対応するトルク指令値Tqがインバータ制御装置30に出力される。このため、元々は車両のモータ駆動用であった既存のインバータ20を、系統電力装置70用に再利用することができる。
【0060】
<第3実施形態>
【0061】
次に、第3実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同一部分には同一符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0062】
第1実施形態では、電力指令変換装置40が、インバータ制御装置30の電流指令値取得部31が記憶するマップデータ31Aの逆関数を表すマップデータ41Aを備えた場合について説明したが、インバータ制御装置30は、元々車両のモータ駆動用として用いられていたものであるため、マップデータ31Aの内容が不明な場合もある。
【0063】
そこで、図7に示すように、本実施形態に係る電力指令変換装置40Aは、図2に示す電力指令変換装置40と比べて、トルク指令値取得部41及び除算部42に代えて、マップデータ生成部43を備えている。
【0064】
マップデータ生成部43は、マップデータ43Aを記憶する。マップデータ43Aは、電力指令値Pcとトルク指令値Tqとの対応関係を表すテーブルデータである。マップデータ31Aの内容が不明なので、予め定めた電力指令値Pcとトルク指令値Tqとの対応関係を表すマップデータ43Aを記憶しておく。また、マップデータ生成部43には、電流センサ21wにより検出された電流値Iwと電圧センサ22により検出された電圧値Vaが入力され、入力された電流値Iw及び電圧値Vaに基づいて、実際の電力値Pc’を算出する。そして、マップデータ43Aの電力指令値Pcを電力値Pc’に置き換える。これを繰り返すことにより、マップデータ43Aが逐次更新される。
【0065】
このように、本実施形態では、マップデータ生成部43が電流値Iw及び電圧値Vaに基づいて電力値Pc’を算出し、算出した電力値Pc’によりマップデータ43Aを更新する。このため、インバータ制御装置30のマップデータ31Aの内容が不明の場合でも、マップデータ43Aを自ら構築することができる。
【0066】
<第4実施形態>
【0067】
次に、第4実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同一部分には同一符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0068】
インバータ20を系統連系用のインバータとして用いる場合、系統電力装置70で異常が発生して上位系統が遮断された場合、保安上、インバータ20が単独で運転しないように上位系統の遮断動作を検出し、動作を停止する必要がある(単独運転防止機能)。
【0069】
図8に示すように、本実施形態に係る電力指令変換装置40Bは、インバータ20の単独運転を防止するための機能として、電圧変動検出部80及び加算部44を備える。
【0070】
図8に示すように、電圧変動検出部80は、基本波電圧演算部81、高調波電圧演算部82、電圧周波数演算部83、及び電力指令演算部84を備える。
【0071】
基本波電圧演算部81は、電圧センサ22で検出された電圧値Vaの基本波成分を演算する。
【0072】
高調波電圧演算部82は、電圧センサ22で検出された電圧値Vaの高調波成分を演算する。
【0073】
電圧周波数演算部83は、電圧センサ22で検出された電圧値Vaの周波数成分を演算する。
【0074】
電力指令演算部84は、基本波電圧演算部81で演算された電圧値Vaの基本波成分、高調波電圧演算部82で演算された電圧値Vaの高調波成分、及び電圧周波数演算部83で演算された電圧値Vaの周波数成分の少なくとも1つの変化の度合いが予め定めた閾値以上であるか否かを判定することにより、上位系統が遮断されたか否かを判定する。また、電力指令演算部84は、電圧値Vaの基本波成分、高調波電圧演算部82で演算された電圧値Vaの高調波成分、及び電圧周波数演算部83で演算された電圧値Vaの周波数成分の少なくとも1つの変化の度合いに基づき、無効電力が増大するような電力指令値を演算して加算部44に出力する。加算部44は、図示しない上位装置から入力された電力指令値Pcに電力指令演算部84で演算された電力指令値を加算して除算部42に出力する。これにより、トルク指令値取得部41から無効電力が増大するようなトルク指令値Tqが出力され、上位系統の遮断といった異常を検知する精度が向上し、インバータ20の単独運転を効率的に防止することが出来る。
【0075】
なお、本開示は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。
【0076】
その他、上記実施形態で説明したインバータ制御システム10の構成は一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において不要な部分を削除したり、新たな部分を追加したりしてもよいことは言うまでもない。
【0077】
また、第2実施形態で説明した電力指令変換プログラム47Aの処理の流れ(図6参照)も一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において不要なステップを削除したり、新たなステップを追加したり、処理順序を入れ替えたりしてもよいことは言うまでもない。
【0078】
本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサを構成する専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の装置及びその手法は、専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成する専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の装置及びその手法は、コンピュータプログラムを実行するプロセッサと一つ以上のハードウエア論理回路との組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【0079】
本開示の技術に関して、以下の付記を開示する。
【0080】
<付記>
(付記1)
第1の電力供給対象への電力供給用として用いられていたインバータ及び前記インバータの制御用であるインバータ制御装置に接続された、前記第1の電力供給対象と異なる第2の電力供給対象に対して、前記インバータから出力された電圧の電圧値と、前記第2の電力供給対象に要求される第2の出力要求値と、に基づいて、前記第2の出力要求値を、前記第1の電力供給対象に要求される第1の出力要求値に変換する変換部と、
前記変換部により変換された前記第1の出力要求値を前記インバータ制御装置に出力する出力部と、
を備えた電力指令変換装置。
【0081】
(付記2)
前記インバータ制御装置は、前記第1の出力要求値と、前記インバータを制御するための電流指令値と、の対応関係を表す第1のマップデータを記憶し、
前記変換部は、
前記第1のマップデータの逆関数で表される第2のマップデータを記憶し、前記第2の出力要求値を前記電圧値で除算して電流値を算出する除算部と、
前記第2の出力要求値に対応する前記第1の出力要求値を前記第2のマップデータから取得する出力要求値取得部と、
を備えた請求項1記載の電力指令変換装置。
【0082】
(付記3)
前記第1のマップデータ及び前記第2のマップデータは、外部装置から書き換え可能である、
付記2記載の電力指令変換装置。
【0083】
(付記4)
前記変換部は、前記第2の出力要求値と、前記インバータから出力された電圧及び電流と、に基づいて、前記第1の出力要求値と前記第2の出力要求値との対応関係を表すマップデータを生成し、前記第2の出力要求値に対応する前記第1の出力要求値を前記マップデータから取得する
付記1記載の電力指令変換装置。
【0084】
(付記5)
前記インバータから出力された電圧の基本波成分を演算する基本波電圧演算部、前記電圧の高調波成分を演算する高調波電圧演算部、及び前記電圧の周波数成分を演算する電圧周波数成分演算部の少なくとも1つの演算部と、
前記基本波成分、前記高調波成分、及び前記周波数成分の少なくとも一つの変化の度合いが予め定めた閾値以上であるか否かを判定することにより、前記第2の電力供給対象が遮断されたか否かを判定し、前記第2の電力供給対象が遮断されたと判定した場合、前記インバータの単独運転が防止されるように、無効電力が増大する電力指令値を演算する電力指令演算部と、
前記第2の出力要求値と、前記電力指令値と、を加算して、前記変換部へ出力する加算部と、
を備えた付記1~4の何れかに記載の電力指令変換装置。
【0085】
(付記6)
前記第1の電力供給対象は、車両の駆動用のモータである
付記1~5の何れかに記載の電力指令変換装置。
【0086】
(付記7)
前記第2の電力供給対象は、系統電力装置である
付記1~6の何れかに記載の電力指令変換装置。
【0087】
(付記8)
少なくとも1つのプロセッサが、
第1の電力供給対象への電力供給用として用いられていたインバータ及び前記インバータの制御用であるインバータ制御装置に接続された、前記第1の電力供給対象と異なる第2の電力供給対象に対して、前記インバータから出力された電圧の電圧値と、前記第2の電力供給対象に要求される第2の出力要求値と、に基づいて、前記第2の出力要求値を、前記第1の電力供給対象に要求される第1の出力要求値に変換し、
変換された前記第1の出力要求値を前記インバータ制御装置に出力する
ことを含む処理を実行する電力指令変換方法。
【0088】
(付記9)
少なくとも1つのプロセッサに、
第1の電力供給対象への電力供給用として用いられていたインバータ及び前記インバータの制御用であるインバータ制御装置に接続された、前記第1の電力供給対象と異なる第2の電力供給対象に対して、前記インバータから出力された電圧の電圧値と、前記第2の電力供給対象に要求される第2の出力要求値と、に基づいて、前記第2の出力要求値を、前記第1の電力供給対象に要求される第1の出力要求値に変換し、
変換された前記第1の出力要求値を前記インバータ制御装置に出力する
ことを含む処理を実行させる電力指令変換プログラム。
【符号の説明】
【0089】
10 インバータ制御システム
20 インバータ
30、30A インバータ制御装置
31 電流指令値取得部
31A マップデータ
40、40A、40B 電力指令変換装置
41 トルク指令値取得部
41A マップデータ
42 除算部
43 マップデータ生成部
43A マップデータ
44 加算部
47A 電力指令変換プログラム
50 発電装置
60 系統接続装置
70 系統電力装置
80 電圧変動検出部
81 基本波電圧演算部
82 高調波電圧演算部
83 電圧周波数演算部
84 電力指令演算部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8