(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110830
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 29/78 20060101AFI20240808BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20240808BHJP
H01L 29/12 20060101ALI20240808BHJP
H01L 29/739 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
H01L29/78 652H
H01L29/78 658E
H01L29/78 658A
H01L29/78 652T
H01L29/78 655A
H01L29/78 652F
H01L29/78 652S
H01L29/78 652Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023015669
(22)【出願日】2023-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 純
(57)【要約】
【課題】コラム領域の幅のばらつきに対する耐圧のロバスト性を向上させることができる半導体装置を提供する。
【解決手段】各コラム領域は、複数のエピタキシャル層のうちの最上層のエピタキシャル層内から最下層のエピタキシャル層内まで延びており、複数のエピタキシャル層は、他のエピタキシャル層の膜厚よりも膜厚が大きい1つの厚膜エピタキシャル層と、厚膜エピタキシャル層以外の複数の薄膜エピタキシャル層とを含み、各薄膜エピタキシャル層は、所定の基準膜厚を有しており、半導体層の下端から半導体層の厚さの54%の長さだけ上方の位置までの範囲内に厚膜エピタキシャル層が存在しており、厚膜エピタキシャル層の基準膜厚に対する膜厚増加分の、基準膜厚に対する割合を膜厚増加率とすると、膜厚増加率が14.6%以上16.7%以下である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のエピタキシャル層の積層膜からなり、上面および下面を有する第1導電型の半導体層と、
前記半導体層の前記上面に一方向に間隔を空けて形成された複数の素子構造と、
前記半導体層内に形成されたスーパージャンクション構造とを含み、
前記スーパージャンクション構造が、前記半導体層内に前記一方向に間隔を空けて形成され、前記半導体層の厚さ方向に延びる複数の第2導電型のコラム領域を含み、
前記各コラム領域は、前記複数のエピタキシャル層のうちの最上層のエピタキシャル層内から最下層のエピタキシャル層内まで延びており、
前記複数のエピタキシャル層は、他のエピタキシャル層の膜厚よりも膜厚が大きい1つの厚膜エピタキシャル層と、前記厚膜エピタキシャル層以外の複数の薄膜エピタキシャル層とを含み、
前記各薄膜エピタキシャル層は、所定の基準膜厚を有しており、
前記半導体層の下面から前記半導体層全体の厚さの54%の長さだけ上方の位置までの範囲内に前記厚膜エピタキシャル層が存在しており、
前記厚膜エピタキシャル層の前記基準膜厚に対する膜厚増加分の、前記基準膜厚に対する割合を膜厚増加率とすると、前記膜厚増加率が14.6%以上16.7%以下である、半導体装置。
【請求項2】
複数のエピタキシャル層の積層膜からなり、上面および下面を有する第1導電型の半導体層と、
前記半導体層の前記上面に一方向に間隔を空けて形成された複数の素子構造と、
前記半導体層内に形成されたスーパージャンクション構造とを含み、
前記スーパージャンクション構造が、前記半導体層内に前記一方向に間隔を空けて形成され、前記半導体層の厚さ方向に延びる複数の第2導電型のコラム領域を含み、
前記各コラム領域は、前記複数のエピタキシャル層のうちの最上層のエピタキシャル層内から最下層のエピタキシャル層内まで延びており、
前記複数のエピタキシャル層は、他のエピタキシャル層の膜厚よりも膜厚が大きい1つの厚膜エピタキシャル層と、前記膜厚エピタキシャル層以外の複数の薄膜エピタキシャル層とを含み、
前記各薄膜エピタキシャル層は、所定の基準膜厚を有しており、
前記半導体層の下面から前記半導体層の厚さの45%の長さだけ上方の位置までの範囲内に前記厚膜エピタキシャル層が存在しており、
前記厚膜エピタキシャル層の前記基準膜厚に対する膜厚増加分の、前記基準膜厚に対する割合を膜厚増加率とすると、前記膜厚増加率が14.6%以上20.8%以下である、半導体装置。
【請求項3】
複数のエピタキシャル層の積層膜からなり、上面および下面を有する第1導電型の半導体層と、
前記半導体層の前記上面に一方向に間隔を空けて形成された複数の素子構造と、
前記半導体層内に形成されたスーパージャンクション構造とを含み、
前記スーパージャンクション構造が、前記半導体層内に前記一方向に間隔を空けて形成され、前記半導体層の厚さ方向に延びる複数の第2導電型のコラム領域を含み、
前記各コラム領域は、前記複数のエピタキシャル層のうちの最上層のエピタキシャル層内から最下層のエピタキシャル層内まで延びており、
前記複数のエピタキシャル層は、他のエピタキシャル層の膜厚よりも膜厚が大きい1つの厚膜エピタキシャル層と、前記膜厚エピタキシャル層以外の複数の薄膜エピタキシャル層とを含み、
前記各薄膜エピタキシャル層は、所定の基準膜厚を有しており、
前記半導体層の下面から前記半導体層の厚さの27%の長さだけ上方の位置までの範囲内に前記厚膜エピタキシャル層が存在しており、
前記厚膜エピタキシャル層の前記基準膜厚に対する膜厚増加分の、前記基準膜厚に対する割合を膜厚増加率とすると、前記膜厚増加率が14.6%以上25%以下である、半導体装置。
【請求項4】
複数のエピタキシャル層の積層膜からなり、上面および下面を有する第1導電型の半導体層と、
前記半導体層の前記上面に一方向に間隔を空けて形成された複数の素子構造と、
前記半導体層内に形成されたスーパージャンクション構造とを含み、
前記スーパージャンクション構造が、前記半導体層内に前記一方向に間隔を空けて形成され、前記半導体層の厚さ方向に延びる複数の第2導電型のコラム領域を含み、
前記各コラム領域は、前記複数のエピタキシャル層のうちの最上層のエピタキシャル層内から最下層のエピタキシャル層内まで延びており、
前記複数のエピタキシャル層は、他のエピタキシャル層の膜厚よりも膜厚が大きい1つの厚膜エピタキシャル層と、前記膜厚エピタキシャル層以外の複数の薄膜エピタキシャル層とを含み、
前記各エピタキシャル層は、所定の基準膜厚を有しており、
前記半導体層の下面から前記半導体層の厚さの18%の長さだけ上方の位置までの範囲内に前記厚膜エピタキシャル層が存在しており、
前記厚膜エピタキシャル層の前記基準膜厚に対する膜厚増加分の、前記基準膜厚に対する割合を膜厚増加率とすると、前記膜厚増加率が14.6%以上29.2%以下である、半導体装置。
【請求項5】
前記各コラム領域は、前記各エピタキシャル層に含まれるコラム部分からなる複数のコラム部分を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記素子構造が、前記半導体層の前記上面側の表層部に形成された第2導電型のボディ領域と、前記ボディ領域の表層部に形成された第1導電型の第1領域とを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記コラム領域は、前記ボディ領域から前記半導体層の下面に向かって延びている、請求項6に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記ボディ領域の表層部に形成され、前記ボディ領域の第2導電型不純物濃度を超える第2導電型不純物濃度を有する第2導電型のボディコンタクト領域をさらに含む、請求項6に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記半導体層内の第1導電型領域をドリフト領域とすると、
前記半導体層の上面の上に形成され、前記ドリフト領域、前記ボディ領域および前記第1領域に対向するゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜の上に形成され、前記ゲート絶縁膜を挟んで前記ドリフト領域、前記ボディ領域および前記第1領域に対向するゲート電極とをさらに含む、請求項6に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記半導体層の上面の上で前記ゲート電極に電気的に接続されたゲート端子電極をさらに含む、請求項9に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記半導体層の上で前記第1領域に電気的に接続された第1端子電極をさらに含む、請求項10に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記半導体層の下面側に配置された第1導電型の半導体基板を含み、
前記半導体基板における前記半導体層とは反対側の表面に形成された第2端子電極をさらに含む、請求項11に記載の半導体装置。
【請求項13】
前記第1領域がソース領域であり、
前記第1端子電極がソース端子電極であり、
前記第2端子電極がドレイン端子電極である、請求項12に記載の半導体装置。
【請求項14】
前記半導体層の下面側に配置された第1導電型の半導体基板を含み、
前記複数のコラム領域は、前記半導体基板から前記半導体層の上面側に間隔を空けて前記半導体層内に形成されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項15】
前記半導体基板は、前記半導体層の厚さを超える厚さを有している、請求項14に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、MOSFETを開示している。当該MOSFETでは、n+型の不純物が含有された半導体基板と、p型の不純物が含有されたベース層との間にスーパージャンクション構造が設けられている。スーパージャンクション構造は、n型の不純物が含有された第1半導体層(ドリフト領域)と、p型の不純物が含有された第2半導体層(コラム領域)とが、半導体基板とベース層とが対向する方向と交差する方向に交互に繰り返し配置されて構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の一実施形態の目的は、コラム領域の幅のばらつきに対する耐圧のバスト性を向上させることができる半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一実施形態は、複数のエピタキシャル層の積層膜からなり、上面および下面を有する第1導電型の半導体層と、前記半導体層の前記上面に一方向に間隔を空けて形成された複数の素子構造と、前記半導体層内に形成されたスーパージャンクション構造とを含み、前記スーパージャンクション構造が、前記半導体層内に前記一方向に間隔を空けて形成され、前記半導体層の厚さ方向に延びる複数の第2導電型のコラム領域を含み、前記各コラム領域は、前記複数のエピタキシャル層のうちの最上層のエピタキシャル層内から最下層のエピタキシャル層内まで延びており、前記複数のエピタキシャル層は、他のエピタキシャル層の膜厚よりも膜厚が大きい1つの厚膜エピタキシャル層と、前記厚膜エピタキシャル層以外の複数の薄膜エピタキシャル層とを含み、前記各薄膜エピタキシャル層は、所定の基準膜厚を有しており、前記半導体層の下面から前記半導体層全体の厚さの54%の長さだけ上方の位置までの範囲内に前記厚膜エピタキシャル層が存在しており、前記厚膜エピタキシャル層の前記基準膜厚に対する膜厚増加分の、前記基準膜厚に対する割合を膜厚増加率とすると、前記膜厚増加率が14.6%以上16.7%以下である、半導体装置を提供する。
【0006】
この構成では、コラム領域の幅のばらつきに対する耐圧のバスト性を向上させることができる。
【0007】
本開示の一実施形態は、複数のエピタキシャル層の積層膜からなり、上面および下面を有する第1導電型の半導体層と、前記半導体層の前記上面に一方向に間隔を空けて形成された複数の素子構造と、前記半導体層内に形成されたスーパージャンクション構造とを含み、前記スーパージャンクション構造が、前記半導体層内に前記一方向に間隔を空けて形成され、前記半導体層の厚さ方向に延びる複数の第2導電型のコラム領域を含み、前記各コラム領域は、前記複数のエピタキシャル層のうちの最上層のエピタキシャル層内から最下層のエピタキシャル層内まで延びており、前記複数のエピタキシャル層は、他のエピタキシャル層の膜厚よりも膜厚が大きい1つの厚膜エピタキシャル層と、前記膜厚エピタキシャル層以外の複数の薄膜エピタキシャル層とを含み、前記各薄膜エピタキシャル層は、所定の基準膜厚を有しており、前記半導体層の下面から前記半導体層の厚さの45%の長さだけ上方の位置までの範囲内に前記厚膜エピタキシャル層が存在しており、前記厚膜エピタキシャル層の前記基準膜厚に対する膜厚増加分の、前記基準膜厚に対する割合を膜厚増加率とすると、前記膜厚増加率が14.6%以上20.8%以下である、半導体装置を提供する。
【0008】
この構成では、コラム領域の幅のばらつきに対する耐圧のバスト性を向上させることができる。
【0009】
本開示の一実施形態は、複数のエピタキシャル層の積層膜からなり、上面および下面を有する第1導電型の半導体層と、前記半導体層の前記上面に一方向に間隔を空けて形成された複数の素子構造と、前記半導体層内に形成されたスーパージャンクション構造とを含み、前記スーパージャンクション構造が、前記半導体層内に前記一方向に間隔を空けて形成され、前記半導体層の厚さ方向に延びる複数の第2導電型のコラム領域を含み、前記各コラム領域は、前記複数のエピタキシャル層のうちの最上層のエピタキシャル層内から最下層のエピタキシャル層内まで延びており、前記複数のエピタキシャル層は、他のエピタキシャル層の膜厚よりも膜厚が大きい1つの厚膜エピタキシャル層と、前記膜厚エピタキシャル層以外の複数の薄膜エピタキシャル層とを含み、前記各薄膜エピタキシャル層は、所定の基準膜厚を有しており、前記半導体層の下面から前記半導体層の厚さの27%の長さだけ上方の位置までの範囲内に前記厚膜エピタキシャル層が存在しており、前記厚膜エピタキシャル層の前記基準膜厚に対する膜厚増加分の、前記基準膜厚に対する割合を膜厚増加率とすると、前記膜厚増加率が14.6%以上25%以下である、半導体装置を提供する。
【0010】
この構成では、コラム領域の幅のばらつきに対する耐圧のバスト性を向上させることができる。
【0011】
本開示の一実施形態は、複数のエピタキシャル層の積層膜からなり、上面および下面を有する第1導電型の半導体層と、前記半導体層の前記上面に一方向に間隔を空けて形成された複数の素子構造と、前記半導体層内に形成されたスーパージャンクション構造とを含み、前記スーパージャンクション構造が、前記半導体層内に前記一方向に間隔を空けて形成され、前記半導体層の厚さ方向に延びる複数の第2導電型のコラム領域を含み、前記各コラム領域は、前記複数のエピタキシャル層のうちの最上層のエピタキシャル層内から最下層のエピタキシャル層内まで延びており、前記複数のエピタキシャル層は、他のエピタキシャル層の膜厚よりも膜厚が大きい1つの厚膜エピタキシャル層と、前記膜厚エピタキシャル層以外の複数の薄膜エピタキシャル層とを含み、前記各エピタキシャル層は、所定の基準膜厚を有しており、前記半導体層の下面から前記半導体層の厚さの18%の長さだけ上方の位置までの範囲内に前記厚膜エピタキシャル層が存在しており、前記厚膜エピタキシャル層の前記基準膜厚に対する膜厚増加分の、前記基準膜厚に対する割合を膜厚増加率とすると、前記膜厚増加率が14.6%以上29.2%以下である、半導体装置を提供する。
【0012】
この構成では、コラム領域の幅のばらつきに対する耐圧のバスト性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態に係る半導体装置の模式的な平面図である。
【
図2】
図2は、
図1の二点鎖線IIで囲まれた領域の拡大図である。
【
図4】
図4は、第1~第10エピタキシャル層の表面に注入されるp型不純物のドーズ量の目標値の一例を示すグラフである。
【
図6】
図6は、比較例モデルREFおよびモデルM1(5.5)~M7(5.5)それぞれに対するシミュレーション結果を示すグラフである。
【
図7】
図7は、比較例モデルREFおよびモデルM1(5.5)~M7(5.5)それぞれに対する600V超え領域幅AWを示すグラフである。
【
図8】
図8は、比較例モデルREFおよびモデルM1(6)~M7(6)それぞれに対するシミュレーション結果を示すグラフである。
【
図9】
図9は、比較例モデルREFおよびM1(6)~M7(6)それぞれに対する600V超え領域幅AWを示すグラフである。
【
図10】
図10は、全てのシミュレーションモデルそれぞれに対する600V超え領域幅を示す表である。
【
図11】
図11は、厚膜エピタキシャル層が第1~第7エピタキシャル層のいずれかである場合に、当該厚膜エピタキシャル層の膜厚を基準膜厚に対して何%厚膜化すれば、600V超え領域幅AWが比較例モデルREFよりも大きくなるかを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下では、添付図面を参照して、本開示の実施形態を詳細に説明する。
【0015】
図1は、本開示の一実施形態に係る半導体装置1を示す平面図である。
図2は、
図1に示す領域IIの拡大図である。
図3は、
図2に示すIII-III線に沿う断面図である。
図1では、領域IIにおいて半導体装置1の内部構造の一部が透過して示されている。
【0016】
図1~
図3を参照して、半導体装置1は、絶縁ゲート型のトランジスタの一例としてのMISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)を含む半導体スイッチングデバイスである。半導体装置1は、直方体形状に形成されたチップ2を含む。
【0017】
チップ2は、一方側の第1主面(上面)3、他方側の第2主面(下面)4、ならびに、第1主面3および第2主面4を接続する側面5A、5B、5C、5Dを含む。側面5A~5Dは、より具体的には、第1側面5A、第2側面5B、第3側面5Cおよび第4側面5Dを含む。
【0018】
第1主面3および第2主面4は、それらの法線方向(以下、「Z方向」という。)から見た平面視(以下、単に「平面視」という。)において四角形状に形成されている。なお、Z方向は、チップ2の厚さ方向でもある。第1側面5Aおよび第2側面5Bは、X方向に沿って延び、X方向に交差するY方向に対向している。Y方向は、より具体的には、X方向に直交している。第3側面5Cおよび第4側面5Dは、Y方向に沿って延び、X方向に対向している。
【0019】
半導体装置1は、第1主面3の上に配置されたゲート端子電極(ゲートパッド)6を含む。ゲート端子電極6は、第1主面3の上において第3側面5Cに沿う領域に配置されている。ゲート端子電極6は、この形態では、第1主面3の上において第3側面5Cの中央部に沿う領域に配置されている。ゲート端子電極6は、平面視においてチップ2の任意の角部に沿う領域に配置されていてもよい。ゲート端子電極6は、平面視において四角形状に形成されていてもよい。
【0020】
半導体装置1は、第1主面3の上においてゲート端子電極6に接続されたゲート配線電極(ゲートフィンガー)7を含む。ゲート配線電極7は、ゲート端子電極6から帯状に引き出されている。ゲート配線電極7は、この実施形態では、ゲート端子電極6から第1側面5A、第2側面5Bおよび第3側面5Cに沿って帯状に延び、チップ2の内方領域を3方向から区画している。
【0021】
半導体装置1は、チップ2の第1主面3の上に配置されたソース端子電極8を含む。ソース端子電極8は、ゲート端子電極6およびゲート配線電極7によって区画された領域に配置されている。ソース端子電極8は、ゲート端子電極6およびゲート配線電極7から間隔を空けて第1主面3の上に配置されている。
【0022】
ゲート端子電極6、ゲート配線電極7およびソース端子電極8は、Ti層、TiN層、Ni層、Pd層、Au層、Al層、Cu層、AlSiCu合金層、AlSi合金層およびAlCu合金層のうちの少なくとも1種をそれぞれ含んでいてもよい。
【0023】
ゲート端子電極6、ゲート配線電極7およびソース端子電極8は、Ti層、TiN層、Ni層、Pd層、Au層、Al層、Cu層、AlSiCu合金層、AlSi合金層またはAlCu合金層からなる単層構造をそれぞれ有していてもよい。ゲート端子電極6、ゲート配線電極7およびソース端子電極8は、Ti層、TiN層、Ni層、Pd層、Au層、Al層、Cu層、AlSiCu合金層、AlSi合金層およびAlCu合金層のうちの1つまたは2つ以上を任意の態様で積層させた積層構造をそれぞれ有していてもよい。
【0024】
図3を参照して、チップ2は、この実施形態では、半導体基板11と、半導体基板11上に形成された半導体層12とを含む。
【0025】
半導体基板11は、この実施形態では、n+型の半導体基板(たとえばシリコン基板)からなっていてもよい。その他、SiC基板、GaN基板など、一般的にトランジスタに採用される基板であってもよい。n+型の半導体基板11は、n型不純物をドープしながら結晶成長させた半導体基板であってもよい。半導体基板11は、ドレイン領域と称してもよい。
【0026】
n型不純物としては、P(リン)、As(ヒ素)、Sb(アンチモン)などを適用できる。また、n+型の半導体基板11の不純物濃度は、たとえば、1.0×1018cm-3~5.0×1020cm-3程度であってもよい。
【0027】
半導体基板11の厚さは、50μm以上450μm以下であってもよい。半導体基板11の厚さは、50μm以上150μm以下、150μm以上250μm以下、250μm以上350μm以下、または350μm以上450μm以下であってもよい。半導体基板11の厚さは、150μm以上350μm以下であることが好ましい。
【0028】
半導体層12は、上面41と下面42とを有する。半導体層12の上面41は、チップ2の第1主面3でもある。半導体層12は、
図3に破線で示すように、マルチエピタキシャル成長法によって形成された複数のn
-型のエピタキシャル層12A~12Kを有している。各エピタキシャル層12A~12Kは、n型不純物を注入しながらエピタキシャル成長されたn
-型の層である。n型不純物の例は、前述のとおりである。
【0029】
半導体層12は、この実施形態では、11層のエピタキシャル層12A~12Kを有している。11層のエピタキシャル層12A~12Kを、最下層から順に、第1エピタキシャル層12A、第2エピタキシャル層12B、…、第10エピタキシャル層12Jおよび第11エピタキシャル層12Kということにする。半導体層12におけるn-型の領域は、n-型のドリフト領域13と称してもよい。
【0030】
半導体層12は、半導体基板11の厚さよりも小さい厚さを有している。具体的には、半導体層12は、10μm以上100μm以下の厚さを有していてもよい。半導体層12の厚さは、10μm以上25μm以下、25μm以上50μm以下、50μm以上75μm以下、または75μm以上100μm以下であってもよい。半導体層12の厚さは、45μm以上70μm以下であることが好ましい。
【0031】
半導体装置1は、第2主面4の上(半導体基板11の下面)に形成されたドレイン端子電極14を含む。ドレイン端子電極14は、半導体基板(ドレイン領域)11に電気的に接続されている。ドレイン端子電極14は、Ti層、Ni層、Au層、Ag層およびAl層のうちの少なくとも1種を含んでいてもよい。ドレイン端子電極14は、Ti層、Ni層、Au層、Ag層またはAl層を含む単層構造を有していてもよい。ドレイン端子電極14は、Ti層、Ni層、Au層、Ag層およびAl層のうちの1つまたは2つ以上を任意の態様で積層させた積層構造を有していてもよい。
【0032】
半導体装置1は、半導体層12の表層部、より具体的には第11エピタキシャル層12Kの表層部に形成されたp型の複数のボディ領域15を含む。複数のボディ領域15は、第1主面3から露出している。ボディ領域15は、n-型の半導体層12に対してp型不純物をイオン注入することによって形成されたp型の半導体層であってもよい。p型不純物としては、B(ホウ素)、Al(アルミニウム)、Ga(ガリウム)などを適用できる。ボディ領域15のp型不純物濃度は、1×1016cm-3以上1×1020cm-3以下であってもよい。
【0033】
複数のボディ領域15は、半導体層12の表層部においてX方向に間隔を空けて形成され、Y方向に沿って延びる帯状にそれぞれ形成されている。これにより、複数のボディ領域15は、平面視において全体としてストライプ状に形成されている。各ボディ領域15は、半導体層12の下面42から上面41(第1主面3)側に間隔を空けて形成されている。これにより、各ボディ領域15の底部は、第1主面3および半導体層12の底部の間の領域に位置している。この実施形態では、各ボディ領域15の底部は、第1主面3および第11エピタキシャル層12Kの底部の間の領域に位置している。
【0034】
半導体装置1は、複数のボディ領域15の表層部にそれぞれ形成されたn+型の複数のソース領域16を含む。ソース領域16は、本開示における「第1領域」の一例である。
この実施形態では、2つのソース領域16が、各ボディ領域15の表層部に形成されている。複数のソース領域16は、第1主面3から露出している。
【0035】
ソース領域16は、ボディ領域15にn型不純物を選択的にイオン注入することによって形成されていてもよい。n型不純物の例は、前述のとおりである。ソース領域16の不純物濃度は、ドリフト領域13よりも高く、たとえば、1.0×1019cm-3~5.0×1021cm-3程度であってもよい。
【0036】
複数のソース領域16は、各ボディ領域15の表層部においてX方向に間隔を空けて形成され、Y方向に沿って延びる帯状にそれぞれ形成されている。各ソース領域16は、ボディ領域15の底部から第1主面3側に間隔を空けて形成されている。これにより、各ソース領域16の底部は、第1主面3およびボディ領域15の底部の間の領域に位置している。
【0037】
各ソース領域16は、各ボディ領域15の縁部から間隔を空けて各ボディ領域15の内方に形成されている。各ソース領域16は、各ボディ領域15の表層部においてドリフト領域13との間でチャネル領域17を画定している。
【0038】
半導体装置1は、複数のボディ領域15の表層部にそれぞれ形成されたp+型の複数のボディコンタクト領域18を含む。この形態では、1つのボディコンタクト領域18が、各ボディ領域15の表層部において互いに隣り合う複数のソース領域16の間の領域に形成されている。複数のボディコンタクト領域18は、ボディ領域15のp型不純物濃度を超えるp型不純物濃度を有している。複数のボディコンタクト領域18のp型不純物濃度は、1×1017cm-3以上1×1021cm-3以下であってもよい。
【0039】
複数のボディコンタクト領域18は、Y方向に沿って延びる帯状に形成されている。各ボディコンタクト領域18は、ボディ領域15の底部から第1主面3側に間隔を空けて形成されている。これにより、各ボディコンタクト領域18の底部は、第1主面3およびボディ領域15の底部の間の領域に位置している。
【0040】
ボディ領域15、ソース領域16およびボディコンタクト領域18によって、MISFETの素子構造51が構成されている。この実施形態では、半導体層12の表層部に、X方向に等間隔を空けて複数の素子構造51が形成されている。
【0041】
半導体装置1は、半導体層12内に形成されたp型の複数のコラム領域20を含む。各コラム領域20は、
図3に示すように、Z方向に延びており、たとえば、半導体層12の上部からZ方向における半導体層12の中央部を越えて延びている。
【0042】
この実施形態では、複数のコラム領域20は、複数のボディ領域15から半導体層12の下面42に向かって延びるように形成されている。複数のコラム領域20は、各ボディ領域15の底部および半導体層12の底部の間の領域に形成されている。複数のコラム領域20は、ドリフト領域13との間でpn接合部をそれぞれ形成している。
【0043】
これにより、複数のコラム領域20は、ドリフト領域13との間でスーパージャンクション(Super Junction)構造52を形成している。つまり、スーパージャンクション構造52は、p型のコラム領域20とn-型のドリフト領域13とが、半導体層12の厚さ方向(Z方向)に直交する方向(本実施形態ではX方向)に交互に繰り返し配置されることによって構成されている。
【0044】
コラム領域20は、半導体層12に対してp型不純物をイオン注入することによって形成されたp型の半導体層であってもよい。p型不純物の例は、前述のとおりである。この実施形態では、後述するように、各コラム領域20内のp型不純物濃度は、Z方向の位置に応じて変化するように設定されている。
【0045】
複数のコラム領域20は、X方向に間隔を空けて形成され、Y方向に沿って延びる帯状にそれぞれ形成されている。この実施形態では、複数のコラム領域20は、複数のボディ領域15に対して1対1対応の関係で形成されている。これにより、複数のコラム領域20は、平面視において全体としてストライプ状に形成されている。
【0046】
この実施形態では、各コラム領域20は、平面視において各ボディ領域15の中央部に重なる領域に形成されている。各コラム領域20は、各ボディ領域15の一部を挟んでボディコンタクト領域18に対向している。この実施形態では、各コラム領域20のX方向の幅WCは、各ボディ領域15のX方向の幅WB未満(WC<WB)である。各幅WCは、各コラム領域20において最も広い領域の幅である。以下において、コラム領域20のX方向の幅WCを、「コラム幅WC」という場合がある。
【0047】
この実施形態では、各コラム領域20は、対応するボディ領域15に接続されている。各コラム領域20は、半導体層12の下面42からボディ領域15側に間隔を空けて形成されている。各コラム領域20は、より具体的には、第2主面4側の第1端部(下端部)および第1主面3側の第2端部(上端部)を有している。
【0048】
各コラム領域20の第1端部は、半導体層12の下面42から第1主面3側に間隔を空けて形成されている。各コラム領域20の第2端部は、対応するボディ領域15に接続されている。これにより、各コラム領域20の底部は、半導体層12の底部およびボディ領域15の底部の間の領域に位置している。
【0049】
各コラム領域20は、複数のコラム部分がZ方向に沿って積層された積層構造を有している。複数のコラム部分は、積層方向に互いに接続されており、全体として1つのコラム領域20を形成している。複数のコラム部分は、p型不純物の導入工程およびエピタキシャル成長工程を交互に行うマルチエピタキシャル成長法によって形成されている。
【0050】
各コラム領域20は、最上層のエピタキシャル層12K内から最下層のエピタキシャル層12A内まで延びている。各コラム領域20は、各エピタキシャル層12A~12Kに含まれるコラム部分からなる複数のコラム部分20A~20Kを含む。つまり、各コラム領域20は、11層のエピタキシャル層12A~12Kそれぞれに対応した11層のコラム部分20A~20Kをそれぞれ含む。11層のコラム部分20A~20Kを、最下層から順に、第1コラム部分20A、第2コラム部分20B、…、第10コラム部分20Jおよび第11コラム部分20Kということにする。
【0051】
第2コラム部分20Bから第10コラム部分20Jまでの各コラム部分の膜厚は、それに対応するエピタキシャル層12B~12Jの膜厚と等しい。第1コラム部分20Aの膜厚は、それに対応する第1エピタキシャル層12Aの膜厚よりも薄い。第11コラム部分20Kの膜厚は、それに対応する第11エピタキシャル層12Kの膜厚よりも薄い。
【0052】
第2~第11エピタキシャル層12B~12Kをそれぞれ成長させる前には、その直前に成長された第1~第10エピタキシャル層12A~12Jの表面において、コラム領域20を形成すべき位置にp型不純物が選択的に注入される(後述する
図5A~
図5C参照)。第1~第10エピタキシャル層12A~12Jの表面に注入されるp型不純物のドーズ量の目標値[cm
-2]は予め設定されている。
【0053】
図4は、第1~第10エピタキシャル層12A~12Jの表面に注入されるp型不純物のドーズ量の目標値の一例を示すグラフである。
図4の横軸は、エピタキシャル層12A~12Jの下からの層番号を示し、縦軸はp型不純物のドーズ量の目標値を示している。層番号1は、第1エピタキシャル層12Aを示し、層番号10は、第10エピタキシャル層12Jを示す。
【0054】
図4に示すように、第1~第10エピタキシャル層12A~12Jの表面に注入されるp型不純物のドーズ量の目標値は各層12A~12Jの表面のZ方向位置に応じて変化しているので、各コラム領域20内のp型不純物濃度がZ方向の位置に応じて変化する。
【0055】
本実施形態の特徴は、コラム幅WCのばらつきに対する耐圧のロバスト性を向上させるために、複数のエピタキシャル層12A~12Fのうちの1つのエピタキシャル層の膜厚が、他のエピタキシャル層の膜厚よりも大きくされることにある。以下において、他のエピタキシャル層の膜厚よりも大きくされている1つのエピタキシャル層を「厚膜エピタキシャル層」といい、「厚膜エピタキシャル層」以外のエピタキシャル層を「薄膜エピタキシャル層」という場合がある。
【0056】
各薄膜エピタキシャル層の厚さは、ほぼ等しい。各薄膜エピタキシャル層の膜厚を、基準膜厚ということにする。
【0057】
図3は、第1エピタキシャル層12A~第11エピタキシャル層12Kのうち第2エピタキシャル層12Bの膜厚が、他の10層のエピタキシャル層12A、12C~12Kの膜厚よりも厚く形成された例を示している。第1および第3~第11エピタキシャル層12A、12C~12Kの膜厚(基準膜厚)は、4.8μmであるのに対し、第2エピタキシャル層12Bの膜厚は、5.5μmである。
【0058】
つまり、
図3は、第2エピタキシャル層12Bが厚膜エピタキシャル層であり、他の10層のエピタキシャル層12A、12C~12Kが薄膜エピタキシャル層である例を示している。
図3の例では、基準膜厚が4.8μmであり、厚膜エピタキシャル層の膜厚が5.5μmである。
【0059】
厚膜エピタキシャル層を複数のエピタキシャル層12A~12Kのうちのいずれのエピタキシャル層に設定することが好ましいか、厚膜エピタキシャル層の膜厚を基準膜厚に対してどの程度厚くすることが好ましいかについては、後述する。
【0060】
半導体装置1は、チップ2の第1主面3の上に形成された複数のプレーナゲート構造31(ゲート構造)を含む。複数のプレーナゲート構造31は、X方向に間隔を空けて形成され、Y方向に沿って延びる帯状にそれぞれ形成されている。
【0061】
複数のプレーナゲート構造31は、互いに隣り合う複数のボディ領域15の間の領域にそれぞれ配置されている。これにより、複数のプレーナゲート構造31は、平面視において全体としてストライプ状に形成されている。
【0062】
複数のプレーナゲート構造31は、ゲート絶縁膜32およびゲート電極33をそれぞれ含む。ゲート絶縁膜32は、ドリフト領域13、ボディ領域15、ソース領域16およびチャネル領域17を被覆している。ゲート絶縁膜32は、より具体的には、ドリフト領域13を挟んで互いに隣り合う2つのボディ領域16に跨って形成されている。
【0063】
ゲート絶縁膜32は、一方のボディ領域15側においてソース領域16およびチャネル領域17を被覆し、他方のボディ領域15側においてソース領域16およびチャネル領域17を被覆している。
【0064】
ゲート絶縁膜32は、たとえば、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、シリコン酸窒化膜、ハフニウム酸化膜、アルミナ膜、タンタル酸化膜などからなっていてもよい。ゲート絶縁膜32がシリコン酸化膜からなる場合、MISFETは、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)と称してもよい。ゲート絶縁膜32は、たとえば、300Å~700Åの厚さを有していてもよい。
【0065】
ゲート電極33は、ゲート絶縁膜32の上に形成されている。ゲート電極33は、ゲート絶縁膜32を挟んで、ドリフト領域13、ボディ領域15、ソース領域16およびチャネル領域17に対向している。
【0066】
ゲート電極33は、導電性ポリシリコン、タングステン、アルミニウム、銅、アルミニウム合金および銅合金のうちの少なくとも1種を含んでいてもよい。ゲート電極33は、この実施形態では、不純物を注入して形成された導電性ポリシリコンを含む。ゲート電極33は、n型ポリシリコンまたはp型ポリシリコンを含んでいてもよい。
【0067】
半導体装置1は、第1主面3の上において複数のプレーナゲート構造31を一括して被覆する層間絶縁膜34を含む。層間絶縁膜34は、たとえば、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、TEOS(テトラエトキシシラン)などの絶縁材料からなっていてもよい。層間絶縁膜34には、複数のコンタクト孔35が形成されている。複数のコンタクト孔35は、複数のボディ領域15に対して1対1対応の関係で形成されている。
【0068】
各コンタクト孔35は、対応するボディ領域15内に形成された複数のソース領域16およびボディコンタクト領域18を露出させている。この実施形態では、各コンタクト孔35は、平面視においてコラム領域20に重なっている。
【0069】
ソース端子電極8は、層間絶縁膜34の上に形成されている。ソース端子電極8は、層間絶縁膜34の上から各コンタクト孔35内に入り込んでいる。ソース端子電極8は、各コンタクト孔35内において複数のソース領域16およびコンタクト領域18に電気的に接続されている。
【0070】
層間絶縁膜34において図示しない領域には、ゲート電極33を露出させるゲートコンタクト孔(図示せず)が形成されている。前述のゲート配線電極7は、ゲートコンタクト孔を介してゲート電極33に接続されている。これにより、前述のゲート端子電極6は、ゲート配線電極7を介してゲート電極33に電気的に接続されている。
【0071】
図5A~
図5Gは、半導体装置1の製造工程を工程順に示す図である。
【0072】
半導体装置1を製造するには、まず、
図5Aを参照して、半導体基板11上に、エピタキシャル成長によって第1エピタキシャル層12Aが形成される。次に、第1エピタキシャル層12Aの表面に、コラム領域20を形成すべき領域にp型不純物61が選択的に注入される。p型不純物61の注入は、次のようにして行われる。第1エピタキシャル層12Aの表面に、コラム領域20を形成すべき領域に開口を有するイオン注入マスク(図示略)が形成される。そして、第1エピタキシャル層12Aの表面に、イオン注入マスクを介して、p型不純物61が選択的に注入される。イオン注入マスクの開口幅(X方向の長さ)は、形成すべきコラム領域20の幅WCに応じた所定幅に設定さる。この後、イオン注入マスクが除去される。
【0073】
次に、
図5Bを参照して、第1エピタキシャル層12Aの上に、エピタキシャル層を形成した後にコラム領域20を形成すべき領域にp型不純物61を選択的に注入する工程を繰り返すマルチエピタキシャル成長によって、第2~第10エピタキシャル層12B~12Jを積層させる。p型不純物61の注入は、コラム領域20を形成すべき領域に開口を有するイオン注入マスクを用いて行われる。各イオン注入マスクの開口幅は、前述したマスクの開口幅と同じ幅に設定される。
【0074】
さらに、
図5Cを参照して、最上層のエピタキシャル層12Kを積層させる。これにより、第1~第11エピタキシャル層12A~12Kと第1エピタキシャル層12Aとが一体化されて、半導体層12(ドリフト領域13)が形成される。
【0075】
次に、
図5Dを参照して、アニール処理(1000℃~1200℃)を行うことによって、第1~第10エピタキシャル層12A~12J内のp型不純物をドライブ拡散させる。これにより、半導体層12内に、コラム領域20が形成される。
【0076】
次に、
図5Eを参照して、第11エピタキシャル層12Kの表層部に選択的にp型不純物が注入されることによって、ボディ領域15が形成される。複数のボディ領域15がコラム領域20に接続される。
【0077】
次に、ボディ領域15の表層部に選択的にn型不純物が注入されることによって、ソース領域16が形成される。次に、ボディ領域15の表層部に選択的にp型不純物が注入されることによって、ボディコンタクト領域18が形成される。
【0078】
次に、
図5Fを参照して、半導体層12上に、ゲート絶縁膜32が形成される。ゲート絶縁膜32は、半導体結晶表面の熱酸化によって酸化膜を成長させた後、当該酸化膜をパターニングすることによって形成されてもよい。
【0079】
次に、ゲート絶縁膜32上にゲート電極33が形成される。ゲート電極33の形成は、たとえば、不純物を添加したポリシリコン膜を全表面に形成し、その後、そのポリシリコン膜をフォトリソグラフィによって選択的にエッチングすることによって行ってもよい。次に、ゲート絶縁膜32およびゲート電極33を含むプレーナゲート構造31を覆うように、層間絶縁膜34が形成される。次に、層間絶縁膜34に、フォトリソグラフィによって、コンタクト孔35が形成される。
【0080】
次に、
図5Gを参照して、半導体基板11が、チップ2の第2主面4側から研削されて平坦化される。研削量は、特に制限されないが、たとえば、研削後の半導体基板11が90μm~310μmの厚さとなるようにすることが好ましい。次に、層間絶縁膜34上に、ソース端子電極8、ゲート端子電極6(図示せず)およびゲート配線電極7(図示せず)が形成される。
【0081】
この後、チップ2の第2主面4(半導体基板11の下面)にドレイン端子電極14が形成されることによって、前述の半導体装置1を得ることができる。
【0082】
以下、本願発明者が行ったシミュレーションについて説明する。
【0083】
エピタキシャル層の総数が11であり、基準膜厚が4.8μmであり、厚膜エピタキシャル層の膜厚が5.5μmであり、厚膜エピタキシャル層の層位置が異なる7種類の複数のシミュレーションモデルM1(5.5)~M7(5.5)を作成した。
【0084】
モデルM1(5.5)は、厚膜エピタキシャル層が第1エピタキシャル層12Aであるモデルである。モデルM2(5.5)は、厚膜エピタキシャル層が第2エピタキシャル層12Bであるモデルである。モデルM3(5.5)は、厚膜エピタキシャル層が第3エピタキシャル層12Cであるモデルである。モデルM4(5.5)は、厚膜エピタキシャル層が第4エピタキシャル層12Dであるモデルである。
【0085】
モデルM5(5.5)は、厚膜エピタキシャル層が第5エピタキシャル層12Eであるモデルである。モデルM6(5.5)は、厚膜エピタキシャル層が第6エピタキシャル層12Fであるモデルである。モデルM7(5.5)は、厚膜エピタキシャル層が第7エピタキシャル層12Gであるモデルである。
【0086】
以下において、
図1~
図3に示す半導体装置1と構造がほぼ同様であるが、各エピタキシャル層12A~12Kの膜厚が、全て4.8μmである半導体装置を比較例といい、比較例のシミュレーションモデルを比較例モデルREFということにする。
【0087】
比較例モデルおよびモデルM1(5.5)~M7(5.5)それぞれに対して、コラム幅WC(前記イオン注入マスクの開口幅)を変化させた場合のブレークダウン電圧BVDSS[V]をシミュレーションにより計算した。
【0088】
図6は、比較例モデルREFおよびモデルM1(5.5)~M7(5.5)それぞれに対するシミュレーション結果を示すグラフである。
図6の横軸は、コラム幅WC[μm]を示し、縦軸は、ブレークダウン電圧BVDSS[V]を示している。
【0089】
図6において、M1~M7で示される折線は、それぞれモデルM1(5.5)~M7(5.5)に対するシミュレーション結果を示している。また、
図6において、REFで示される折線は、比較例モデルREに対するシミュレーション結果を示している。
【0090】
各シミュレーションモデルのシミュレーション結果において、ブレークダウン電圧BVDSSが600V以上となるコラム幅WCの範囲の最小値から最大値までの長さを、そのモデルに対する600V超え領域幅AW[μm]ということにする。
【0091】
図7は、比較例モデルREFおよびモデルM1(5.5)~M7(5.5)それぞれに対する600V超え領域幅AWを示すグラフである。
図7の横軸は、シミュレーションモデルの種類を示し、縦軸は、600V超え領域幅AW[μm]を示している。
【0092】
図7から、モデルM1(5.5)~モデルM7(5.5)のうち、モデルM1(5.5)~モデルM6(5.5)の600V超え領域幅AWは、比較例モデルREFの600V超え領域幅AWよりも大きいことがわかる。
【0093】
つまり、基準膜厚が4.8μmであり、厚膜エピタキシャル層の膜厚が5.5μmである場合には、厚膜エピタキシャル層を、第1エピタキシャル層12A~第6エピタキシャル層12Fのうちの1つに設定することにより、比較例に比べて、コラム幅WCのばらつきに対する耐性のロバスト性を向上させることができることがわかる。
【0094】
耐圧ロバスト性が向上する理由は、モデルM1(5.5)~モデルM6(5.5)では、コラム領域20内の電界が集中する領域の電界が、比較例モデルREFのそれよりも小さくなるからであると考えられる。
【0095】
次に、エピタキシャル層の総数が11であり、基準膜厚が4.8μmであり、厚膜エピタキシャル層の膜厚が6μmであり、厚膜エピタキシャル層の層位置が異なる7種類の複数のシミュレーションモデルモデルM1(6)~M7(6)を作成した。
【0096】
モデルM1(6)は、厚膜エピタキシャル層が第1エピタキシャル層12Aであるモデルである。モデルM2(6)は、厚膜エピタキシャル層が第2エピタキシャル層12Bであるモデルである。モデルM3(6)は、厚膜エピタキシャル層が第3エピタキシャル層12Cであるモデルである。モデルM4(6)は、厚膜エピタキシャル層が第4エピタキシャル層12Dであるモデルである。
【0097】
モデルM5(6)は、厚膜エピタキシャル層が第5エピタキシャル層12Eであるモデルである。モデルM6(6)は、厚膜エピタキシャル層が第6エピタキシャル層12Fであるモデルである。モデルM7(6)は、厚膜エピタキシャル層が第7エピタキシャル層12Gであるモデルである。
【0098】
そして、比較例モデルREFおよびモデルM1(6)~M7(6)それぞれに対して、コラム幅WCを変化させた場合のブレークダウン電圧BVDSS[V]をシミュレーションにより計算した。
【0099】
図8は、比較例モデルREFおよびモデルM1(6)~M7(6)それぞれに対するシミュレーション結果を示すグラフである。
図8の横軸は、コラム幅WC[μm]を示し、縦軸は、ブレークダウン電圧BVDSS[V]を示している。
図8において、折れ線M1~M7は、それぞれモデルM1(6)~M7(6)に対するシミュレーション結果を示している。
【0100】
図9は、比較例モデルREFおよびM1(6)~M7(6)それぞれに対する600V超え領域幅AWを示すグラフである。
図9の横軸は、シミュレーションモデルの種類を示し、縦軸は、600V超え領域幅[μm]を示している。
【0101】
図9から、モデルM1(6)~モデルM7(6)のうちモデルM1(6)~M3(6)の600V超え領域幅AWは、比較例モデルREFの600V超え領域幅AWよりも大きいことがわかる。
【0102】
つまり、基準膜厚が4.8μmであり、厚膜エピタキシャル層の膜厚が6μmである場合には、厚膜エピタキシャル層を、第1エピタキシャル層12A~第3エピタキシャル層12Cのうちの1つに設定することにより、比較例に比べて、コラム幅WCのばらつきに対する耐性のロバスト性を向上させることができることがわかる。
【0103】
さらに、以下のような複数のシミュレーションモデルに対して、同様なシミュレーションを行って、600V超え領域幅を計算した。以下のモデルにおいても、エピタキシャル層の総数は11であり、基準膜厚は、4.8μmである。
【0104】
厚膜エピタキシャル層が第1エピタキシャル層12Aであり、その膜厚がそれぞれ6.2μm、6.4μmおよび6.6μmである3種類のモデルM1(6.2)、M1(6.4)およびM1(6.6)。
【0105】
厚膜エピタキシャル層が第2エピタキシャル層12Bであり、その膜厚がそれぞれ6.2μm、6.4μmおよび6.6である3種類のモデルM2(6.2)、M2(6.4)およびM2(6.6)。
【0106】
厚膜エピタキシャル層が第3エピタキシャル層12Cであり、その膜厚がそれぞれ6.2μm、6.4μmおよび6.6μmである3種類のモデルM3(6.2)、M3(6.4)およびM3(6.6)。
【0107】
厚膜エピタキシャル層が第4エピタキシャル層12Dであり、その膜厚がそれぞれ5.6μmおよび5.8μmである2種類のモデルM4(5.6)およびM4(5.8)。
【0108】
厚膜エピタキシャル層が第5エピタキシャル層12Eであり、その膜厚がそれぞれ5.6μmおよび5.8μmである2種類のモデルM5(5.6)およびM5(5.8)。
【0109】
厚膜エピタキシャル層が第6エピタキシャル層12Fであり、その膜厚がそれぞれ5.6μmおよび5.8μmである2種類のモデルM6(5.6)およびM6(5.8)。
【0110】
厚膜エピタキシャル層が第7エピタキシャル層12Gであり、その膜厚がそれぞれ5μm、5.2μmおよび5.4μmである3種類のモデルM7(5)、M7(5.2)およびM7(5.4)。
【0111】
図10は、前述した全てのシミュレーションモデルそれぞれに対する600V超え領域幅AWを示す表である。
【0112】
図10において、厚み[μm]は、4.8[μm]を除いて、厚膜エピタキシャル層の膜厚を示している。厚み[μm]が4.8μmの行は、比較例モデルに対するデータを示している。比較例モデルに対する600V超え領域幅AWは、0.064313μmである。
【0113】
また、
図10において、膜厚増加率[%]は、基準膜厚に対する厚膜エピタキシャル層の膜厚の増加分の、基準膜厚に対する割合[%]であり、次式(1)で表される。
【0114】
膜厚増加率={(厚膜エピタキシャル層の膜厚-基準膜厚)/基準膜厚}×100…(1)
図10において、明確化の観点から、600V超え領域幅AWが、比較例モデルの0.064313μmよりも大きいセルには、グレーを付して示す。
【0115】
図11は、厚膜エピタキシャル層が第1~第7エピタキシャル層12A~12Gのいずれかである場合に、当該厚膜エピタキシャル層の膜厚を基準膜厚に対して何%厚膜化すれば、600V超え領域幅AWが比較例モデルREFよりも大きくなるかを示すグラフである。
図11の横軸は、膜厚増加率[%]を示し、縦軸は、600V超え領域幅[μm]を示している。
【0116】
図11のグラフは、
図10の表に基づいて作成されている。
図11において、M1~M7で示される折線は、それぞれ、厚膜エピタキシャル層が1層目(第1エピタキシャル層12A)~第7層目(第7エピタキシャル層12G)である前記シミュレーションモデルに対する600V超え領域幅AWを示している。
【0117】
図10および
図11から、厚膜エピタキシャル層が第1エピタキシャル層12Aまたは第2エピタキシャル層12Bである場合には、厚膜エピタキシャル層の膜厚が5.5μm以上6.2μm以下の範囲内で、600V超え領域幅AWが0.064313μmよりも大きくなることがわかる。言い換えれば、厚膜エピタキシャル層が第1エピタキシャル層12Aまたは第2エピタキシャル層12Bである場合には、膜厚増加率が14.6%以上29.2%以下の範囲内で、600V超え領域幅AWが比較例モデルREFよりも大きくなることがわかる。
【0118】
また、厚膜エピタキシャル層が第3エピタキシャル層12Cである場合には、厚膜エピタキシャル層の膜厚が5.5μm以上6μm以下の範囲内で、600V超え領域幅AWが0.064313μmよりも大きくなることがわかる。言い換えれば、厚膜エピタキシャル層が第3エピタキシャル層12Cである場合には、膜厚増加率が14.6%以上25%以下の範囲内で、600V超え領域幅が比較例モデルREFよりも大きくなることがわかる。
【0119】
また、厚膜エピタキシャル層が第4エピタキシャル層12Dまたは第5エピタキシャル層12Eである場合には、厚膜エピタキシャル層の膜厚が5.5μm以上5.8μm以下の範囲内で、600V超え領域幅AWが0.064313μmよりも大きくなることがわかる。言い換えれば、厚膜エピタキシャル層が第4エピタキシャル層12Dまたは第5エピタキシャル層12Eである場合には、膜厚増加率が14.6%以上20.8%以下の範囲内で、600V超え領域幅AWが比較例モデルREFよりも大きくなることがわかる。
【0120】
また、厚膜エピタキシャル層が第6エピタキシャル層12Fである場合には、厚膜エピタキシャル層の膜厚が5.5μm以上5.6μm以下の範囲内で、600V超え領域幅Awが0.064313μmよりも大きくなることがわかる。言い換えれば、厚膜エピタキシャル層が第6エピタキシャル層12Fである場合には、膜厚増加率が14.6%以上16.7%以下の範囲内で、600V超え領域幅AWが比較例モデルREFよりも大きくなることがわかる。
【0121】
また、厚膜エピタキシャル層が第7エピタキシャル層12Gである場合には、厚膜エピタキシャル層を4.8μmよりも大きくしても、600V超え領域幅AWが0.064313μmよりも大きくならないことがわかる。
【0122】
以上のことから、厚膜エピタキシャル層を第1~第6エピタキシャル層12A~12Fのいずれかに設定した場合には、膜厚増加率が14.6%以上16.7%以下の範囲内で、600V超え領域幅AWが比較例モデルREFよりも大きくなることがわかる。したがって、半導体層12の下面42から半導体層12の厚さの54{=(6/11)×100}%の長さだけ上方の位置までの範囲内に1つの厚膜エピタキシャル層を設定し、膜厚増加率を14.6%以上16.7%以下に設定することが好ましい。
【0123】
また、厚膜エピタキシャル層を第1~第5エピタキシャル層12A~12Eのいずれかに設定した場合には、膜厚増加率が14.6%以上20.8%以下の範囲内で、600V超え領域幅AWが比較例モデルREFよりも大きくなることがわかる。したがって、半導体層12の下面42から半導体層12の厚さの45{=(5/11)×100}%の長さだけ上方の位置までの範囲内に1つの厚膜エピタキシャル層を設定し、膜厚増加率を14.6%以上20.8%以下に設定することが好ましい。
【0124】
また、厚膜エピタキシャル層を第1~第3エピタキシャル層12A~12Cのいずれかに設定した場合には、膜厚増加率が14.6%以上25%以下の範囲内で、600V超え領域幅AWが比較例モデルREFよりも大きくなることがわかる。したがって、半導体層12の下面42から半導体層12の厚さの27{=(3/11)×100}%の長さだけ上方の位置までの範囲内に1つの厚膜エピタキシャル層を設定し、膜厚増加率を14.6%以上25%以下に設定することが好ましい。
【0125】
また、厚膜エピタキシャル層を第1または第2エピタキシャル層12A、12Bのいずれかに設定した場合には、膜厚増加率が14.6%以上29.2%以下の範囲内で、600V超え領域幅AWが比較例モデルREFよりも大きくなることがわかる。したがって、半導体層12の下面42から半導体層12の厚さの18{=(2/11)×100}%の長さだけ上方の位置までの範囲内に1つの厚膜エピタキシャル層を設定し、膜厚増加率を14.6%以上29.2%以下に設定することが好ましい。
【0126】
本開示の実施形態について説明したが、本開示の実施形態は他の形態で実施できる。たとえば、前述の実施形態では、シリコンからなるチップ2が採用された例について説明した。しかし、前述の実施形態においてワイドバンドギャップ半導体からなるチップ2が採用されてもよい。チップ2は、ワイドバンドギャップ半導体の一例としてのSiC(炭化シリコン)からなっていてもよい。
【0127】
前述の実施形態において、各半導体部分の導電型が反転された構造が採用されてもよい。つまり、p型の部分がn型とされ、n型の部分がp型とされてもよい。
【0128】
前述の実施形態において、半導体基板(ドレイン領域)11に代えてp+型の不純物領域が採用されてもよい。この構造によれば、MOSFETに代えて、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)を提供できる。この場合、前述の実施形態において、MISFETの「ソース」がIGBTの「エミッタ」に読み替えられ、MISFETの「ドレイン」がIGBTの「コレクタ」に読み替えられる。
【0129】
また、前述の実施形態では、複数のコラム領域20は、それぞれ複数のボディ領域15の下方に配置されている。しかしながら、複数のコラム領域20のうちの一部またはすべてのコラム領域20が、ボディ領域15の下方に配置されていなくてもよい。たとえば、複数のコラム領域20のうちの一部のコラム領域20が、平面視においてボディ領域15の下方に配置され、複数のコラム領域20のうちの一部のコラム領域20が、X方向に隣り合う2つのボディ領域15の間位置に配置されていてもよい。
【0130】
以上、本開示の実施形態について詳細に説明してきたが、これらは本開示の技術的内容を明らかにするために用いられた具体例に過ぎず、本開示はこれらの具体例に限定して解釈されるべきではなく、本開示の範囲は添付の請求の範囲によってのみ限定される。
【0131】
この明細書および図面の記載から以下に付記する特徴が抽出され得る。
【0132】
[付記1-1]
複数のエピタキシャル層(12A~12K)の積層膜からなり、上面(41)および下面(42)を有する第1導電型の半導体層(12)と、
前記半導体層(12)の前記上面(41)に一方向に間隔を空けて形成された複数の素子構造(51)と、
前記半導体層内に形成されたスーパージャンクション構造(52)とを含み、
前記スーパージャンクション構造(52)が、前記半導体層内に前記一方向に間隔を空けて形成され、前記半導体層(12)の厚さ方向に延びる複数の第2導電型のコラム領域(20)を含み、
前記各コラム領域(20)は、前記複数のエピタキシャル層(12A~12K)のうちの最上層のエピタキシャル層内から最下層のエピタキシャル層内まで延びており、
前記複数のエピタキシャル層(12A~12K)は、他のエピタキシャル層の膜厚よりも膜厚が大きい1つの厚膜エピタキシャル層と、前記厚膜エピタキシャル層以外の複数の薄膜エピタキシャル層とを含み、
前記各薄膜エピタキシャル層は、所定の基準膜厚を有しており、
前記半導体層(12)の下面(42)から前記半導体層全体の厚さの54%の長さだけ上方の位置までの範囲内に前記厚膜エピタキシャル層が存在しており、
前記厚膜エピタキシャル層の前記基準膜厚に対する膜厚増加分の、前記基準膜厚に対する割合を膜厚増加率とすると、前記膜厚増加率が14.6%以上16.7%以下である、半導体装置。
【0133】
[付記1-2]
複数のエピタキシャル層(12A~12K)の積層膜からなり、上面(41)および下面(42)を有する第1導電型の半導体層(12)と、
前記半導体層(12)の前記上面(41)に一方向に間隔を空けて形成された複数の素子構造(51)と、
前記半導体層内に形成されたスーパージャンクション構造(52)とを含み、
前記スーパージャンクション構造(52)が、前記半導体層内に前記一方向に間隔を空けて形成され、前記半導体層(12)の厚さ方向に延びる複数の第2導電型のコラム領域(20)を含み、
前記各コラム領域(20)は、前記複数のエピタキシャル層(12A~12K)のうちの最上層のエピタキシャル層内から最下層のエピタキシャル層内まで延びており、
前記複数のエピタキシャル層(12A~12K)は、他のエピタキシャル層の膜厚よりも膜厚が大きい1つの厚膜エピタキシャル層と、前記膜厚エピタキシャル層以外の複数の薄膜エピタキシャル層とを含み、
前記各薄膜エピタキシャル層は、所定の基準膜厚を有しており、
前記半導体層(12)の下面(42)から前記半導体層(12)の厚さの45%の長さだけ上方の位置までの範囲内に前記厚膜エピタキシャル層が存在しており、
前記厚膜エピタキシャル層の前記基準膜厚に対する膜厚増加分の、前記基準膜厚に対する割合を膜厚増加率とすると、前記膜厚増加率が14.6%以上20.8%以下である、半導体装置。
【0134】
[付記1-3]
複数のエピタキシャル層(12A~12K)の積層膜からなり、上面(41)および下面(42)を有する第1導電型の半導体層(12)と、
前記半導体層(12)の前記上面(41)に一方向に間隔を空けて形成された複数の素子構造(51)と、
前記半導体層内に形成されたスーパージャンクション構造(52)とを含み、
前記スーパージャンクション構造(52)が、前記半導体層内に前記一方向に間隔を空けて形成され、前記半導体層(12)の厚さ方向に延びる複数の第2導電型のコラム領域(20)を含み、
前記各コラム領域(20)は、前記複数のエピタキシャル層(12A~12K)のうちの最上層のエピタキシャル層内から最下層のエピタキシャル層内まで延びており、
前記複数のエピタキシャル層(12A~12K)は、他のエピタキシャル層の膜厚よりも膜厚が大きい1つの厚膜エピタキシャル層と、前記膜厚エピタキシャル層以外の複数の薄膜エピタキシャル層とを含み、
前記各薄膜エピタキシャル層は、所定の基準膜厚を有しており、
前記半導体層(12)の下面(42)から前記半導体層(12)の厚さの27%の長さだけ上方の位置までの範囲内に前記厚膜エピタキシャル層が存在しており、
前記厚膜エピタキシャル層の前記基準膜厚に対する膜厚増加分の、前記基準膜厚に対する割合を膜厚増加率とすると、前記膜厚増加率が14.6%以上25%以下である、半導体装置。
【0135】
[付記1-4]
複数のエピタキシャル層(12A~12K)の積層膜からなり、上面(41)および下面(42)を有する第1導電型の半導体層(12)と、
前記半導体層(12)の前記上面(41)に一方向に間隔を空けて形成された複数の素子構造(51)と、
前記半導体層内に形成されたスーパージャンクション構造(52)とを含み、
前記スーパージャンクション構造(52)が、前記半導体層内に前記一方向に間隔を空けて形成され、前記半導体層(12)の厚さ方向に延びる複数の第2導電型のコラム領域(20)を含み、
前記各コラム領域(20)は、前記複数のエピタキシャル層(12A~12K)のうちの最上層のエピタキシャル層内から最下層のエピタキシャル層内まで延びており、
前記複数のエピタキシャル層(12A~12K)は、他のエピタキシャル層の膜厚よりも膜厚が大きい1つの厚膜エピタキシャル層と、前記膜厚エピタキシャル層以外の複数の薄膜エピタキシャル層とを含み、
前記各エピタキシャル層は、所定の基準膜厚を有しており、
前記半導体層(12)の下面(42)から前記半導体層(12)の厚さの18%の長さだけ上方の位置までの範囲内に前記厚膜エピタキシャル層が存在しており、
前記厚膜エピタキシャル層の前記基準膜厚に対する膜厚増加分の、前記基準膜厚に対する割合を膜厚増加率とすると、前記膜厚増加率が14.6%以上29.2%以下である、半導体装置。
【0136】
[付記1-5]
前記各コラム領域(20)は、前記各エピタキシャル層(12A~12K)に含まれるコラム部分からなる複数のコラム部分(20A~20K)を含む、[付記1-1]~[付記1-4]のいずれかに記載の半導体装置。
【0137】
[付記1-6]
前記素子構造(51)が、前記半導体層(12)の前記上面側の表層部に形成された第2導電型のボディ領域(15)と、前記ボディ領域(15)の表層部に形成された第1導電型の第1領域(16)とを含む、[付記1-1]~[付記1-5]のいずれかに記載の半導体装置。
【0138】
[付記1-7]
前記コラム領域(20)は、前記ボディ領域(15)から前記半導体層(12)の下面(42)に向かって延びている、[付記1-6]に記載の半導体装置。
【0139】
[付記1-8]
前記ボディ領域(15)の表層部に形成され、前記ボディ領域(15)の第2導電型不純物濃度を超える第2導電型不純物濃度を有する第2導電型のボディコンタクト領域(18)をさらに含む、[付記1-6]または[付記1-7]に記載の半導体装置。
【0140】
[付記1-9]
前記半導体層内の第1導電型領域をドリフト領域(13)とすると、
前記半導体層(12)の上面(41)の上に形成され、前記ドリフト領域(13)、前記ボディ領域(15)および前記第1領域(16)に対向するゲート絶縁膜(32)と、
前記ゲート絶縁膜(32)の上に形成され、前記ゲート絶縁膜(32)を挟んで前記ドリフト領域(13)、前記ボディ領域(15)および前記第1領域(16)に対向するゲート電極(33)とをさらに含む、[付記1-6]~[付記1-8]のいずれかに記載の半導体装置。
【0141】
[付記1-10]
前記半導体層(12)の上面(41)の上で前記ゲート電極(33)に電気的に接続されたゲート端子電極(6)をさらに含む、[付記1-9]に記載の半導体装置。
【0142】
[付記1-11]
前記半導体層(12)の上で前記第1領域(16)に電気的に接続された第1端子電極(8)をさらに含む、[付記1-10]に記載の半導体装置。
【0143】
[付記1-12]
前記半導体層(12)の下面側に配置された第1導電型の半導体基板(11)を含み、
前記半導体基板(11)における前記半導体層(12)とは反対側の表面に形成された第2端子電極(14)をさらに含む、[付記1-11]に記載の半導体装置。
【0144】
[付記1-13]
前記第1領域(16)がソース領域であり、
前記第1端子電極(8)がソース端子電極であり、
前記第2端子電極(14)がドレイン端子電極である、[付記1-12]に記載の半導体装置。
【0145】
[付記1-14]
前記半導体層(12)の下面側に配置された第1導電型の半導体基板(11)を含み、
前記複数のコラム領域(20)は、前記半導体基板(11)から前記半導体層(12)の上面側に間隔を空けて前記半導体層内に形成されている、[付記1-1]~[付記1-13]のいずれかに記載の半導体装置。
【0146】
[付記1-15]
前記半導体基板(11)は、前記半導体層(12)の厚さを超える厚さを有している、[付記1-14]に記載の半導体装置。
【符号の説明】
【0147】
1 半導体装置
2 チップ
3 第1主面
4 第2主面
5A~5D 側面
6 ゲート端子電極
7 ゲート配線電極
8 ソース端子電極
11 半導体基板
12 半導体層
12A~12K エピタキシャル層
13 ドリフト領域
14 ドレイン端子電極
15 ボディ領域
16 ソース領域
17 チャネル領域
18 ボディコンタクト領域
20 コラム領域
20A~20K コラム部分
21 スーパージャンクション構造
31 プレーナゲート構造
32 ゲート絶縁膜
33 ゲート電極
34 層間絶縁膜
35 コンタクト孔
41 上面
42 下面
51 素子構造
52 スーパージャンクション構造
61 p型不純物