(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110844
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】ガスセンサ
(51)【国際特許分類】
G01N 27/419 20060101AFI20240808BHJP
G01N 27/409 20060101ALI20240808BHJP
G01N 27/41 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
G01N27/419 327H
G01N27/409 100
G01N27/41 325H
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023015692
(22)【出願日】2023-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113022
【弁理士】
【氏名又は名称】赤尾 謙一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142686
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 浩貴
(72)【発明者】
【氏名】野村 昌史
(72)【発明者】
【氏名】米津 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】松山 大介
(72)【発明者】
【氏名】猪瀬 優人
【テーマコード(参考)】
2G004
【Fターム(参考)】
2G004BC02
2G004BF01
2G004BF11
2G004BJ03
2G004ZA04
(57)【要約】
【課題】排気管への取付け性への悪影響を低減しつつ放熱性を向上させたガスセンサを提供する。
【解決手段】ガスセンサ素子120と、ガスセンサ素子120を保持する主体金具110と、主体金具110から後端側に延び、後端に開口を有する筒状の外筒103と、開口を塞ぐシール部材191と、外筒103を取り囲む筒状の遮熱部材104と、を備え、遮熱部材104は、外筒103および主体金具110の少なくとも一方に取付けられる取付け部104Aと、取付け部に接続し後端に向かって伸びる主部104Bと、からなるガスセンサであって、主部104Bの少なくとも一部の厚みは、取付け部104Aの厚みに比べて大きい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定ガス中の特定ガスの濃度を検出するガスセンサ素子と、
前記ガスセンサ素子を保持する主体金具と、
前記主体金具から後端側に延び、後端に開口を有する筒状の外筒と、
前記開口を塞ぐシール部材と、
前記外筒を取り囲む筒状の遮熱部材と、を備え、
前記遮熱部材は、前記外筒および前記主体金具の少なくとも一方に取付けられる取付け部と、前記取付け部に接続し後端に向かって伸びる主部と、からなるガスセンサであって、
前記主部の少なくとも一部の厚みは、前記取付け部の厚みに比べて大きいことを特徴とするガスセンサ。
【請求項2】
前記主体金具は、自身の周囲に雄ねじが形成されたねじ部と、該ねじ部より後端側に形成された多角形状の工具係合部と、を備え、
前記取付け部は前記工具係合部の先端面に取り付けられる、請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項3】
前記主体金具は、自身の周囲に雄ねじが形成されたねじ部と、該ねじ部より後端側に形成された多角形状の工具係合部と、を備え、
前記取付け部は、前記工具係合部よりも後端側において前記主体金具および前記外筒の少なくとも一方の外周に取り付けられる、請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項4】
前記主部は、先端側に向かって厚みが小さくなる、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のガスセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の排気ガス中の特定成分(酸素、NOx等)の濃度を検出するためのガスセンサとして、例えば、特許文献1に記載のガスセンサが知られている。このガスセンサは、軸線方向に延びるガスセンサ素子と、ガスセンサ素子の外周を取り囲んで保持するとともに排気管に取り付けるための主体金具と、主体金具の後端側に固定されて軸線方向の後方に延びる筒状の外筒と、外筒に接しつつ外筒の後端部の内側に配置されるグロメットと、を備えている。外筒の外周には筒状の保護部材が取り付けられているため、飛石等が外筒に衝突することを防止できる。
【0003】
保護部材は、外筒の外周にレーザー溶接等により接続される接続部と、接続部から後端側に延びつつ外筒の外周から離間する主部と、を備えている。ガスセンサの熱は、外筒から接続部に伝わり、接続部から主部へ放熱されるため、外筒からグロメットへ伝わる熱を低減できる。
【0004】
また特許文献2に記載のガスセンサの取り付け構造では、ガスセンサの工具係合部と被測定ガスが流通される配管との間に保護部材の一部が位置するように取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-95223号公報
【特許文献2】特開2010-286332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、近年従来よりも高温環境下での使用が可能なガスセンサが求められており、さらなる放熱性の向上が求められている。そこでグロメットに伝わる熱量を低減させるために保護部材の厚みを大きくし、外筒から保護部材へ伝わる伝熱量を増やすことが考えられるが、一方で保護部材が大型化し、排気管への取付け性が悪くなるおそれがある。
したがって、本発明は、排気管への取付け性への悪影響を低減しつつ放熱性を向上させたガスセンサの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のガスセンサは、被測定ガス中の特定ガスの濃度を検出するガスセンサ素子と、前記ガスセンサ素子を保持する主体金具と、前記主体金具から後端側に延び、後端に開口を有する筒状の外筒と、前記開口を塞ぐシール部材と、前記外筒を取り囲む筒状の遮熱部材と、を備え、前記遮熱部材は、前記外筒および主体金具の少なくとも一方に取付けられる取付け部と、前記取付け部に接続し後端に向かって伸びる主部と、からなるガスセンサであって、前記主部の少なくとも一部の厚みは、前記取付け部の厚みに比べて大きいことを特徴とするガスセンサである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ガスセンサにおいて、排気管への取付け性を損なうことなく、遮熱部材への伝熱量を増加させる、つまりシール部材に伝わる熱量を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】排気管に取り付けられた本発明の実施形態1にかかるガスセンサの内部構造を示した断面図である。
【
図2】実施形態1にかかる遮熱部材の斜視図である。
【
図3】実施形態1にかかる遮熱部材の断面図である。
【
図4】排気管に取り付けられた本発明の実施形態2にかかるガスセンサの内部構造を示した断面図である。
【
図5】実施形態2にかかる遮熱部材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本発明の実施形態の説明]
最初に本発明の実施形態を列記して説明する。
(1)本発明のガスセンサは、被測定ガス中の特定ガスの濃度を検出するガスセンサ素子と、前記ガスセンサ素子を保持する主体金具と、前記主体金具から後端側に延び、後端に開口を有する筒状の外筒と、前記開口を塞ぐシール部材と、前記外筒を取り囲む筒状の遮熱部材と、を備え、前記遮熱部材は、前記外筒および主体金具の少なくとも一方に取付けられる取付け部と、前記取付け部に接続し後端に向かって伸びる主部と、からなるガスセンサであって、前記主部の少なくとも一部の厚みは、前記取付け部の厚みに比べて大きいことを特徴とする、ガスセンサである。
【0011】
(2)前記主体金具は、自身の周囲に雄ねじが形成されたねじ部と、該ねじ部より後端側に形成された多角形状の工具係合部と、を備え、前記取付け部は前記工具係合部の先端面に取り付けられる、ガスセンサである。
本実施形態のガスセンサでは、工具係合部先端側と接触し取り付けられる取付け部の厚みが主部に比べ小さいことで、ガスセンサの突き出し量を維持したまま遮熱部材への伝熱量を大きくすることができる。
【0012】
(3)前記主体金具は、自身の周囲に雄ねじが形成されたねじ部と、該ねじ部より後端側に形成された多角形状の工具係合部と、を備え、前記取付け部は、前記工具係合部よりも後端側において前記主体金具および外筒の少なくとも一方の外周に取り付けられる、ガスセンサである。
本実施形態のガスセンサでは、取付け部の厚みが主部に比べ小さいことで、ガスセンサを排気管に取り付ける際に邪魔になりにくく、かつ、遮熱部材への伝熱量を大きくすることができる。
【0013】
(4)前記主部は、先端側に向かって厚みが小さくなる、ガスセンサである。
本実施形態のガスセンサでは、前記取付け部に近い先端側の厚みを小さくすることで、取付け時により取付け工具とのクリアランスを確保することができる。
【0014】
[本発明の実施形態1の詳細]
本発明の実施形態1のガスセンサ100の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0015】
<ガスセンサの構成>
ガスセンサ100は、内燃機関の排気管10に装着される酸素センサである。ガスセンサ100は、測定ガスである排気ガス中の酸素濃度を、リッチ領域からリーン領域にわたってリニアに検知する、いわゆる全領域空燃比センサである。
【0016】
図1の軸線AXはガスセンサ100の仮想中心軸である。ガスセンサ100は、軸線AX方向に沿って延伸された形状を有している。ガスセンサ100は、ガスセンサ素子120と、主体金具110と、外筒103と、シール部材191と、遮熱部材104と、を備える。ガスセンサ素子120は、酸素濃度に応じた信号を出力する。
【0017】
<主体金具の構成>
主体金具110は軸線AX方向に沿った貫通孔H1を有する筒状の金属部材である。主体金具110はガスセンサ素子120の径方向外側に配され、かつガスセンサ素子120の周囲に配される。主体金具110は、ガスセンサ素子120を保持する役割と、ガスセンサ100を排気管10に対して固定的に取り付ける役割と、を有する。
【0018】
主体金具110は、ねじ部110Aと、ねじ部110Aの後端側(紙面上側)に配された工具係合部110Bと、ねじ部110Aの先端側(紙面下側)に配されたプロテクタ接続部110Cと、工具係合部110Bの後端側に配された外筒取付け部110Dと、を備える。一方、排気管10は、ガスセンサ100の取り付けのためのネジ溝20を備える。ねじ部110Aが排気管10のネジ溝20に締結されることにより、ガスセンサ100が排気管10に固定される。
【0019】
工具係合部110Bは、ガスセンサ100の後端側から見て正六角形の外周形状を有している。工具係合部110Bは、ガスセンサ100の車両への取り付けの際にスパナやソケットレンチ等の工具(図示せず)により係合される。工具が工具係合部110Bに係合した状態で回動することにより、ねじ部110Aがネジ溝20に締結される。
【0020】
<プロテクタの構成>
主体金具110のプロテクタ接続部110Cには、一対のプロテクタ101,102が溶接部106においてレーザー溶接により一体に固定されている。一対のプロテクタ101,102は、内部プロテクタ101と、外部プロテクタ102と、を備え、外部プロテクタ102の内部に内部プロテクタ101が配されている。内部プロテクタ101は後端側に開口した有底筒状をなしている。一方、外部プロテクタ102は先端側と後端側とに開口した筒状をなしている。内部プロテクタ101と外部プロテクタ102はいずれも、複数の導入孔101C,102Cを有している。複数の導入孔101Cは内部プロテクタ101の周壁部に設けられ、複数の導入孔102Cは外部プロテクタ102の周壁部に設けられている。
【0021】
ガスセンサ100が車両の排気管10に取り付けられた状態では、排気管10内の排気ガスが外部プロテクタ102の導入孔102Cを通って外部プロテクタ102の内部に導入される。外部プロテクタ102の内部に導入された排気ガスは、内部プロテクタ101の導入孔101Cを通って内部プロテクタ101の内部に導入される。
【0022】
<外筒の構成>
外筒103は、先端側から順に、接続部103Aと、セパレーター収容部103Bと、リード線収容部103Cと、シール部材保持部103Dと、を備える。また、外筒103は、接続部103Aの後端とセパレーター収容部103Bの先端とを連結する連結部103Gを備える。連結部103Gは、軸線AX方向と直交する方向に延びる形態とされている。
【0023】
外筒103は金属製とされ、本実施形態ではSUS304によって形成されている。外筒103は、全体として筒状をなしている。接続部103Aはセパレーター収容部103Bよりも径寸法が大きく、セパレーター収容部103Bはリード線収容部103Cよりも径寸法が大きく、リード線収容部103Cはシール部材保持部103Dよりも径寸法が大きい。セパレーター収容部103Bとリード線収容部103Cは段差部103Fを介して接続されている。接続部103Aの内周面は主体金具110の外筒取付け部110Dの外周面に接触している。接続部103Aは外筒取付け部110Dに対して溶接部105においてレーザー溶接により固定されている。
【0024】
外筒103のシール部材保持部103Dの後端には開口103Eが形成されている。外筒103の内部には、開口103Eから3本のセンサ用リード線193と、2本のヒータ用リード線194とが導入されている。各リード線193,194はガスセンサ100と外部の制御回路とを電気的に接続する役割を有する。なお、
図1においては各リード線を1本ずつ図示し、その他のリード線は省略している。
【0025】
外筒103のシール部材保持部103Dにはグロメット等のシール部材191が取り付けられている。シール部材191は例えばシリコンゴムやフッ素ゴム等のゴム製とされ、本実施形態ではフッ素ゴム製とされている。外筒103の開口103Eはシール部材191によって塞がれており、これにより外筒103の内部が封止されている。各リード線193,194はシール部材191を貫通して外筒103のリード線収容部103Cを通ってセパレーター収容部103Bに導入されている。
【0026】
<ガスセンサ素子の構成>
ガスセンサ素子120は、細長形状の板部材を積層した積層構造を有している。ガスセンサ素子120は、軸線AXに垂直な断面が略矩形形状となる四角柱形状を有している。ガスセンサ素子120は、主体金具110の貫通孔H1の位置で主体金具110に固定されている。ガスセンサ素子120は、ガスセンサ100の内部において、軸線AX方向に沿って収容される。ガスセンサ素子120と主体金具110の工具係合部110Bとは同軸に配置されている。工具係合部110Bはガスセンサ素子120を取り囲む配置とされている。
【0027】
ガスセンサ素子120の先端側の端部には、ガス検出部121が設けられている。ガス検出部121は、排気ガス中の酸素濃度を検出可能に構成されている。ガス検出部121は、内部プロテクタ101の内部に配置されている。ガスセンサ100が車両の排気管10に取り付けられた状態では、ガス検出部121は、複数の導入孔101C,102Cを通って内部プロテクタ101の内部に導入された排気ガスに曝される。これにより、排気ガス中の酸素濃度がガス検出部121によって検出される。
【0028】
ガスセンサ素子120の後端部には、3つのセンサ用の電極パッド(図示せず)と、2つのヒータ用の電極パッド(図示せず)と、が設けられており、3つのセンサ用接続端子182と、2つのヒータ用接続端子183とが、各電極パッドと接続している。各接続端子182,183はガスセンサ100の先端側から後端側に向かって折り曲げられた板バネを有しており、板バネの弾性力によって対応する各電極パッドに弾性的に接続している。
【0029】
<セパレーターの構成>
外筒103のセパレーター収容部103Bの内部には、アルミナ(Al2O3)製のセパレーター181が収容されている。セパレーター181は、貫通孔H2を有する筒状の絶縁部材である。貫通孔H2は軸線AX方向に沿って配されている。セパレーター181の外周には筒状の付勢金具190が配置されている。セパレーター181は付勢金具190によってシール部材191側に付勢されている。これにより、セパレーター181は外筒103の段差部103Fに押圧された状態で、セパレーター収容部103Bに保持されている。ガスセンサ素子120の後端側の端部は、セパレーター181の貫通孔H2に収容されている。
【0030】
セパレーター181の内部には、3つのセンサ用接続端子182と、2つのヒータ用接続端子183と、が収容されている。各接続端子182,183は、セパレータ181内にて対応する各リード線193,194に電気的に接続されている。
【0031】
<ガスセンサ素子の固定構造>
ガスセンサ素子120は以下のようにして主体金具110に固定されている。主体金具110の貫通孔H1には、セラミックホルダ111、粉末充填層112、セラミックスリーブ113がこの順に先端側から後端側にかけて積層配置されている。
【0032】
セラミックホルダ111は、アルミナによって構成されている。セラミックスリーブ113と主体金具110の後端部との間には、かしめリング114が配置されている。セラミックホルダ111の中央には矩形状の貫通孔H3が形成されている。セラミックホルダ111の貫通孔H3は軸線AX方向に沿って配されている。ガスセンサ素子120はセラミックホルダ111の貫通孔H3に挿通されている。
【0033】
粉末充填層112は、ガスセンサ素子120が挿通された状態のセラミックホルダ111の上に滑石粉末を充填することにより形成される。粉末充填層112の上にはセラミックスリーブ113が配置されている。セラミックスリーブ113の中央には、矩形状の貫通孔H4が軸線AX方向に沿って形成されている。ガスセンサ素子120はセラミックスリーブ113の貫通孔H4に挿通されている。セラミックスリーブ113は、アルミナによって構成されている。セラミックスリーブ113は、主体金具110の後端側の端部を径方向内側に屈曲させてかしめることにより、かしめリング114を介して粉末充填層112側に押圧されている。このようにしてガスセンサ素子120は、セラミックホルダ111、粉末充填層112、およびセラミックスリーブ113と一体化された状態で、主体金具110に固定されている。
【0034】
<遮熱部材の構成>
図2(a)に示すように、遮熱部材104は、主体金具110に取り付けられた取付け部104Aと、取付け部104Aに接続し後端に向かって延びる主部104Bと、を備えている。取付け部104Aは、輪形の板状をなしている。また、
図2(b)に示すように、主部104Bの後端は開放している。
図1に示すように、主部104Bは、主体金具110の工具係合部110Bから外筒103のリード線収容部103Cの一部までを径方向に取り囲む筒状をなしている。遮熱部材104は金属製とされ、本実施形態では外筒103の材質と同じSUS304によって形成されている。
【0035】
遮熱部材104において、取付け部104Aは工具係合部110Bの先端面に接するように配置されている。本実施形態では
図1に記載のように、遮熱部材104において、主部104Bの厚みはいずれの位置においても、取付け部104Aの厚みよりも大きくなるように形成されている。ここで、
図3に遮熱部材104の断面を拡大して示す。遮熱部材104の断面において、内側面107と外側面108中心線Lに対し垂直に引いた線Dの長さが遮熱部材104の厚みに相当する。また、ガスセンサは工具が工具係合部110Bに係合した状態で回動することにより排気管に締結されるため、工具係合部110Bと主部104Bの内側面107との間には工具が入り込める隙間を設けると良い。
【0036】
<遮熱部材の作用>
遮熱部材104による保護作用は以下のとおりである。遮熱部材104の取付け部104Aが工具係合部110Bの先端面に接続され、主部104Bがセパレーター収容部103Bを覆い、セパレーター収容部103Bが主部104Bによって保護される。これにより、セパレーター収容部103Bの内側の付勢金具190に衝撃が加わることが防止され、ひいては付勢金具190に保持されたセパレーター181に衝撃が伝わってセパレーター181が破損したり、セパレーター181に取り付けられた各接続端子182、183がずれて各電極パッドとの電気的接続が切断されることを防止できる。
【0037】
遮熱部材104による放熱作用は以下のとおりである。ガスセンサ100の熱は、工具係合部110Bの先端面から遮熱部材104の取付け部104Aを介して主部104Bに伝わる。このため、ガスセンサ100の先端側からの熱は、主部104Bから外部に放熱される。したがって、シール部材保持部103Dへ伝わる熱が低減されてシール部材191の熱劣化が抑制される。
【0038】
さらに、遮熱部材104において、主部104Bの厚みは取付け部104Aの厚みよりも大きいため、ガスセンサ100を排気管10に装着する際に、取付け部104Aの厚みによって、ガスセンサ100の先端側の排気管に突出する量を小さくすることなく、遮熱部材104による伝熱量を増加することができる。また、取付け部104Aは工具係合部110Bの先端面に対し面で接しているため、効率よく遮熱部材への伝熱が行われる。
【0039】
<本実施形態の効果>
以上のように本実施形態のガスセンサ100は、被測定ガス中の特定ガスの濃度を検出するガスセンサ素子120と、ガスセンサ素子120を保持する主体金具と、主体金具110から後端側に延び、後端に開口を有する筒状の外筒103と、開口を塞ぐシール部材191と、外筒を取り囲む筒状の遮熱部材104と、を備え、遮熱部材104は、外筒および主体金具の一方に取付けられる取付け部104Aと、取付け部に接続し後端に向かって伸びる主部104Bと、からなるガスセンサであって、主部の少なくとも一部の厚みは、取付け部の厚みに比べて大きい構成とした。
【0040】
このような構成によると、ガスセンサ100先端からの熱を、遮熱部材104を介して外部に放熱できるため、ガスセンサ100の後端への伝熱を抑制できる。ここで、主部の少なくとも一部の厚みは、取付け部の厚みに比べて大きいため、取付け性が悪化することを回避しつつ、遮熱部材104への伝熱量を増加させることができる。この結果、ガスセンサ100の後端部の、特にシール部材191が熱の影響を受けることを抑制できる。
【0041】
図1に示すように、主部104Bは先端側に向かって厚みが小さくなる形状とされることが好ましい。
工具係合部110Bと遮熱部材104の主部104Bとの間のクリアランスを確保しつつ、伝熱量を大きくすることができる。
【0042】
[本発明の実施形態2の詳細]
本発明の実施形態2のガスセンサ200の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0043】
図4に示すように、本発明の実施形態2のガスセンサ200は、実施形態1の遮熱部材104の形状を一部変更したものであって、その他の構成については実施形態1と同じであるため、その説明を省略する。また、実施形態1と同じ構成については実施形態1と同一の符号を用いるものとし、実施形態1と対応する構成については実施形態1の符号のうち百の位の数字を1から2に変更した符号を用いるものとする。
【0044】
本発明の実施形態2の遮熱部材204は先端側と後端側とに開口する円筒状をなし、
図5に示すように、先端側に位置して円筒状をなす取付け部204Aと、取付け部204Aの後端から後方に延びる主部204Bと、を備えて構成されている。
図5に示すように、取付け部204Aは外筒103の外周に取り付けられている。
【0045】
本発明の実施形態2では
図5に記載のように、遮熱部材204において、取付け部204Aの厚みが主部204Bに比べ小さいことで、ガスセンサを排気管に取り付ける際に作業者の手や取付工具と干渉して邪魔になることを抑制しつつ、伝熱量を大きくすることができる。
【0046】
[他の実施形態]
(1)実施形態2では、遮熱部材204の先端部を主体金具にレーザー溶接により一体に固定しているものの、抵抗溶接等、他の溶接方法によって固定してもよい。
(2)実施形態1、2では、主部104B、204Bと外筒103は接触していないが、周方向の一部が接触していてもよい。
(3)実施形態1、2では、ガスセンサ100、200の種類として全領域空燃比セン
サを例示したが、ラムダセンサやNOxセンサ等その種類は限られない。
(4)遮熱部材104,204は、自身の内周側と外周側を連通する開口を有していてもよい。
(5)実施形態1,2では、主部104B、204Bが後端側に向かって厚みが増していくように形成されているものの、取付け部104A、104Bの厚みよりも大きければ、一定の厚みであってもよい。
【符号の説明】
【0047】
10 排気管
20 ネジ溝
100…ガスセンサ
101…内部プロテクタ 101C…導入孔
102…外部プロテクタ 102C…導入孔
103…外筒 103A…接続部(大径部) 103B…セパレーター収容部(小径部) 103C…リード線収容部 103D…シール部材保持部 103E…開口 103F…段差部 103G…連結部
104…遮熱部材 104A…取付け部 104B…主部
105…溶接部
106…溶接部
107…内側面
108…外側面
110…主体金具 110A…ねじ部 110B…工具係合部 110C…プロテクタ接続部 110D…外筒取付け部
111…セラミックホルダ
112…粉末充填層
113…セラミックスリーブ
114…かしめリング
120…ガスセンサ素子
121…ガス検出部
181…セパレーター
182…センサ用接続端子
183…ヒータ用接続端子
190…付勢金具
191…シール部材
193…センサ用リード線
194…ヒータ用リード線
200…ガスセンサ
204…遮熱部材 204A…取付け部 204B…主部
AX…軸線
L…中心線
H1…貫通孔 H2…貫通孔 H3…貫通孔 H4…貫通孔