(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011086
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】連続発電装置及び連続発電システム
(51)【国際特許分類】
F03B 13/26 20060101AFI20240118BHJP
F03B 3/04 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
F03B13/26
F03B3/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022112784
(22)【出願日】2022-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】521209742
【氏名又は名称】株式会社島村技建コンサルタント
(74)【代理人】
【識別番号】100160543
【弁理士】
【氏名又は名称】河野上 正晴
(74)【代理人】
【識別番号】100170874
【弁理士】
【氏名又は名称】塩川 和哉
(72)【発明者】
【氏名】島村 義隆
【テーマコード(参考)】
3H072
3H074
【Fターム(参考)】
3H072AA09
3H072AA23
3H072AA26
3H072BB33
3H074AA06
3H074AA12
3H074BB10
3H074CC16
(57)【要約】
【課題】水位差が小さくても、多量の水の位置エネルギーを利用して発電することができる発電装置を提供する。
【解決手段】複数のケーシング、及び前記ケーシング内に直列に並んだ複数の発電機を含み、前記発電機は、前記ケーシング内を流れる水流の向きに応じて回転可能な回転軸を有して前記ケーシング内に配置され、前記複数のケーシングは互いに平行に配置される、連続発電装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のケーシング、及び
前記ケーシング内に直列に並んだ複数の発電機
を含み、
前記発電機は、前記ケーシング内を流れる水流の向きに応じて回転可能な回転軸を有して前記ケーシング内に配置され、
前記複数のケーシングは互いに平行に配置される、
連続発電装置。
【請求項2】
前記複数の発電機のうち少なくとも一部の発電機のブレードの回転方向が、残りの発電機のブレードの回転方向に対して逆方向である、請求項1に記載の連続発電装置。
【請求項3】
複数のケーシング、
前記ケーシング内に直列に並んだ複数の発電機、及び
前記ケーシングの両端部を挟む仕切り板
を含み、
前記発電機は、前記ケーシング内を流れる水流の向きに応じて回転可能な回転軸を有して前記ケーシングに配置され、
前記複数のケーシングは互いに平行に配置され、
前記ケーシングと前記仕切り板との間のなす角度が、0度超~90度未満である、
連続発電システム。
【請求項4】
前記複数の発電機のうち少なくとも一部の発電機のブレードの回転方向が、残りの発電機のブレードの回転方向に対して逆方向である、請求項3に記載の連続発電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続発電装置及び連続発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、火力発電には大量の化石燃料が必要であり、地球温暖化の原因である二酸化炭素を多量に排出する等の問題が認識されている。原子力発電には様々なリスクがあり、施設建設から廃炉、再処理コストまで含めると多大なコストがかかることからその効率性にも疑義が生じている。
【0003】
このようなエネルギー問題及び環境問題が注目されてきており、2015年には、国連サミットにおける「持続可能な開発のための2030アジェンダ」(持続可能な開発目標(SDGs))が採択され、従来の環境影響が大きいエネルギー源を代替する再生可能エネルギーの活用が求められている。
【0004】
しかしながら、従来のエネルギーに代えて再生可能エネルギーを主に活用していくには多くのハードルがある。太陽光発電は天候に大きく影響され、夜間は発電できない等の問題がある。風力発電は無風時には発電できないことや、風速によって発電量に影響が出る等の問題がある。従来の水力発電は、ダム建設による自然環境破壊、降雨量、貯水量により発電量が左右される等の問題がある。
【0005】
これに対して、天候に左右されにくく且つ環境への影響が小さい再生可能エネルギー源の一つとして、潮の干満差を利用する潮汐力発電が注目されている。潮汐力発電は、クリーン再生可能エネルギーであること、水の密度が大きいことによりエネルギー集中が可能なこと、及び潮汐現象を利用するため風力発電と異なり予測出力による安定した電力供給が可能であることから、利用が期待されている。特に、陸地面積に比して海岸線の長い日本等の国において効率的な潮汐力発電が実現された場合、その効果は非常に大きいものと期待されている。
【0006】
潮汐力発電として、高水位水域と低水位水域を仕切る堤防と、高水位水域の水を汲み上げる汲み上げ装置と、汲み上げた水の貯水槽と、貯水槽の水による運転する発電機用水車とを有する潮汐発電装置(特許文献1)や、潮位によって上下動する浮きタンクの動きを油圧シリンダのピストンに伝達し、ピストンの上下動により油圧ポンプを回転させて発電する方法(特許文献2)が提案されている。また、潮汐力発電の設備利用率を向上させる技術も提案されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開昭58-132179号公報
【特許文献2】特開平11-351120号公報
【特許文献3】国際公開第2019/244754号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、潮汐力発電は、現実的には、一部の国で実用化が進められているに過ぎない。水力発電は水位差(落差)が重要視されてきたが、大きな水位差を得にくい地形では潮汐力発電の活用が難しかった。
【0009】
したがって、水位差(落差)が小さくても発電が可能な発電装置が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の要旨は以下のとおりである。
(1)複数のケーシング、及び
前記ケーシング内に直列に並んだ複数の発電機
を含み、
前記発電機は、前記ケーシング内を流れる水流の向きに応じて回転可能な回転軸を有して前記ケーシング内に配置され、
前記複数のケーシングは互いに平行に配置される、
連続発電装置。
(2)前記複数の発電機のうち少なくとも一部の発電機のブレードの回転方向が、残りの発電機のブレードの回転方向に対して逆方向である、上記(1)に記載の連続発電装置。
(3)複数のケーシング、
前記ケーシング内に直列に並んだ複数の発電機、及び
前記ケーシングの両端部を挟む仕切り板
を含み、
前記発電機は、前記ケーシング内を流れる水流の向きに応じて回転可能な回転軸を有して前記ケーシングに配置され、
前記複数のケーシングは互いに平行に配置され、
前記ケーシングと前記仕切り板との間のなす角度が、0度超~90度未満である、
連続発電システム。
(4)前記複数の発電機のうち少なくとも一部の発電機のブレードの回転方向が、残りの発電機のブレードの回転方向に対して逆方向である、上記(3)に記載の連続発電システム。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、水位差が小さくても、多量の水の位置エネルギーを利用して発電することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】
図2は、本システムを適用した上面模式図である。
【
図3】
図3は、本システムを適用した上面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示は、複数のケーシング、及び前記ケーシング内に直列に並んだ複数の発電機を含み、前記発電機は、前記ケーシング内を流れる水流の向きに応じて回転可能な回転軸を有して前記ケーシング内に配置され、前記複数のケーシングは互いに平行に配置される、連続発電を対象とする。
【0014】
本開示の装置を、図面を参照して説明する。
図1に本装置100の断面模式図を示す。本装置100は、本開示は、複数のケーシング10、及びケーシング10内に直列に並んだ複数の発電機20を含む。
図1においては、ケーシング10は一つしか表示していないが、本装置100は、複数のケーシング10を含み、複数のケーシングは互いに平行に配置される。発電機20は、ケーシング10内を流れる水流の向きに応じて回転可能な回転軸21を有してケーシング10内に配置される。
【0015】
本装置100は、干満による水位差が生じる海、好ましくは沖側以外が囲まれた湾で用いられる。複数のケーシング10は、干満による水位差に伴い、海水がケーシング10内を流れるように設置される。本装置100によれば、複数のケーシング10にそれぞれ複数の発電機20を備え、複数の発電機20がケーシング10内を流れる水流の向きに応じて回転可能な回転軸21を有してケーシングに配置されるので、水位差が小さくても多量の水があれば、その位置エネルギーを利用して複数のケーシングが備える複数の発電機により発電が可能である。
【0016】
位置エネルギーは、物体の質量と高さと重力加速度の積で得られるので、例えば、発電機よりも上方1m以上に囲い込んだ水量が100万m3あるとき、囲い込まれた水は100万トンに発電機からの高さと重力加速度とを乗じた位置エネルギーを有する。複数のケーシングが備える複数の発電機により、例えば上方1m以上という低い水位差でも多量の水を活用した発電が可能である。従来、水力発電は高さ(落差)が重要視されてきたが、本装置は、高さ(落差)が小さくても多量の質量に伴う位置エネルギーを有する水を活用することができる。
【0017】
本装置100が含むケーシング10の本数は、好ましくは10~1000本、より好ましくは30~500本、さらに好ましくは50~250本、さらにより好ましくは70~150本である。
【0018】
複数のケーシング10はそれぞれ、内部に直列に並んだ複数の発電機20を有する。一つのケーシングに含まれる発電機20の数は、好ましくは10~1000台、より好ましくは20~600台、さらに好ましくは40~300台、さらにより好ましくは60~200台、さらにより好ましくは80~150台である。
【0019】
ケーシング10の長さは、好ましくは30~300m、より好ましくは50~250m、さらに好ましくは70~200m、さらにより好ましくは90~150mである。前記好ましい長さを備えるケーシング10に、長さが例えば0.15~0.5mの発電機20を直列に複数配置することができる。
【0020】
ケーシング10の材料は、複数の発電機20を内部に配置して、内部に海水を流すことができるものであれば特に限定されず、例えば鋼管製であることができる。
【0021】
ケーシング10の長手方向に対して垂直方向の断面は、円形状、楕円形状、矩形状、またはそれらの組み合わせであることができ、好ましくは、水平方向が長手方向となる楕円形状である。ケーシング10の長手方向に対して垂直方向の断面が、水平方向が長手方向となる楕円形状を有する場合、水流の向きが変わるときに発電機20が水平方向に回転するためのスペースをケーシング10内に確保することができる。
【0022】
ケーシング10は、好ましくは、両端部に開閉部を備える。開閉部を閉じることによりケーシング10内を水が流れることを防止して、ケーシング10の岸側と沖側とで水位差を発生させるために使用される。干潮から満潮になるときに開閉部を閉めることにより、ケーシング10の沖側の水位を高めることができる。満潮から干潮になるときに開閉部を閉めることにより、ケーシング10の岸側の水位を高めることができる。
【0023】
好ましくは、ケーシングは、発電機の交換及びメンテナンス用に、上部に複数の開閉部を有する。例えば、大潮の干潮時にケーシング内から海水が排出されたときに発電機のメンテナンスを行うことができる。
【0024】
発電機20は、ケーシング10内を流れる水流の向きに応じて回転可能な回転軸21を有してケーシング10内に配置される。発電機20は、回転軸21を中心に、風見鶏効果で水流に対して自動的に回転する。
【0025】
発電機20は、好ましくは2枚または3枚のブレード(羽根)22を有する。ブレード22の直径は、例えば、100~500mmφ、150~450mmφ、200~400mmφ、または250~350mmφである。ケーシング10の内径は、例えば、120~520mmφ、170~470mmφ、220~420mmφ、または270~370mmφである。ケーシング10の外径は、200~700mmφ、250~650mmφ、300~500mmφ、または350~450mmφである。
【0026】
発電機20は、一方の面積が、他方の面積より大きく、発電機20に水流があたると、面積が大きい方がより大きな水圧を受けるため、面積が大きい方を水流に対して後方に押しやるように回転する構成を有してもよい。発電機20が風見鶏効果で水流に対して自動的に回転することにより、潮がひきつつあるときまたは潮が満ちつつあるときの両方向の水流に対して発電することができる。発電機20は、ブレード22が水流の上流側に向くタイプ、またはブレード22が水流の下流側に向くタイプであることができる。すなわち、ブレード22が水流の上流側に向くタイプは、ブレード22が回転軸21の上流側に向き、ブレード22が水流の下流側に向くタイプは、ブレード22が回転軸21の下流側に向く。本願で、上流及び下流とは、水が流れる方向に基づき、満ち潮のときと引き潮のときで水が流れる方向によって変わる。
【0027】
複数の発電機20は、蓄電装置と接続され得る。発電機20で発電した電気を蓄電装置に蓄電し、必要なときに蓄電した電気を外部に送電することができる。
【0028】
好ましくは、複数の発電機20のうち少なくとも一部の発電機20のブレード22の回転方向が、残りの発電機20のブレード22の回転方向に対して逆方向である。すなわち、同じケーシング10内に、水流に対して右回転するブレード22を有する発電機20と左回転するブレード22を有する発電機20とが配置される。水流に対して直列に並べて配置される発電機20のブレード22が全て同じ方向に回転すると、ケーシング10内で渦流が発生し、渦が偏心するとケーシング10に負荷がかかり、またケーシング10を移動させる力が発生し得るので、ケーシング10の強度を高め且つ強固に設置する必要がある。これに対して、回転方向が異なる発電機20を同じケーシング10内に配置することによって、ケーシング10内の渦発生を抑制し、ケーシング10の偏心を抑制することができる。これにより、ケーシングの耐久性を高め、また、大がかりな固定を行わずにケーシングの設置を容易に行うことができる。
【0029】
より好ましくは、同じケーシング10内に配置される右回転するブレード22を有する発電機20と左回転するブレード22を有する発電機20との数が実質的に同等である。これにより、ケーシング10内の渦流の発生をより抑制することができる。
【0030】
さらに好ましくは、同じケーシング10内において、右回転するブレード22を有する発電機20と左回転するブレード22を有する発電機20とが交互に配置される。すなわち、右回転するブレード22を有する発電機20の隣には、左回転するブレード22を有する発電機20が配置され、その隣には右回転するブレード22を有する発電機20が配置される。これにより、ケーシング10内の渦流の発生をさらに抑制することができる。
【0031】
発電機20は、引き潮のときに流れる一方向の水流若しくは満ち潮のときに流れる一方向の水流に対して発電可能な一方向型の発電機、または引き潮及び満ち潮のときに流れる双方向の水流に対して発電可能な双方向型の発電機であることができる。双方向型の発電機は、相反転方式発電機であることができる。
【0032】
本開示はまた、複数のケーシング、前記ケーシング内に直列に並んだ複数の発電機、及び前記ケーシングの両端部を挟む仕切り板を含み、前記発電機は、前記ケーシング内を流れる水流の向きに応じて回転可能な回転軸を有して前記ケーシングに配置され、前記複数のケーシングは互いに平行に配置され、前記ケーシングと前記仕切り板との間のなす角度が、0度超~90度未満である、連続発電システムを対象とする。
【0033】
本システムを、図面を参照して説明する。
図2に、本システム200を、湾構造を有する海に適用した上面模式図を示す。本装置100は、本開示は、複数のケーシング10、ケーシング10内に直列に並んだ複数の発電機、ケーシング10の両端部を挟む仕切り板30を含む。仕切り板30は、ケーシングの両端部の位置に孔を有し、ケーシング10内を海水が流れることができる。発電機(図示せず)は、ケーシング10内を流れる水流の向きに応じて回転可能な回転軸を有してケーシング10内に配置される。複数のケーシング10は互いに平行に配置され、ケーシング10と仕切り板30との間のなす角度(鋭角側)は、0度超~90度未満である。
【0034】
本システム200は、干満による水位差が生じる海、好ましくは沖側以外が囲まれた湾で用いられる。
図2は、沖側以外が岸50で囲まれた湾に本システム200を適用したときの上面模式図である。岸50と仕切り板30とで囲まれた領域には、ケーシング10を介して水(海水)70が出入りすることができる。ケーシング10の沖側は海に面している。
【0035】
図3は、湾ではなく、岸50と仕切り板31とで囲まれた領域に、本システム200を適用したときの上面模式図である。本システム200の設置費用の観点から、仕切り板31を要しない
図2の実施形態が好ましいが、岸50で囲まれた湾がないエリアでは、
図3の実施形態を適用し得る。
【0036】
仕切り板30、31は、海水を仕切ることができるものであれば特に限定されないが、好ましくはシートパイルである。
【0037】
複数のケーシング10は、干満による水位差に伴い、海水がケーシング10内を流れるように仕切り板30の間に設置される。本システム200によれば、複数のケーシング10にそれぞれ複数の発電機を備え、複数の発電機がケーシング10内を流れる水流の向きに応じて回転可能な回転軸を有してケーシングに配置されるので、水位差が小さくても多量の水があれば、その位置エネルギーを利用して複数のケーシングが備える複数の発電機により発電が可能である。本システムは、高さ(落差)が小さくても多量の質量に伴う位置エネルギーを有する水を活用することができる。
【0038】
ケーシング10は、仕切り板30に対して斜めに配置される。ケーシング10と仕切り板30とのなす角度θは、0度超~90度未満、より好ましくは10~80度、さらに好ましくは20~70度、さらにより好ましくは30~60度、さらにより好ましくは40~50度である。このような角度で仕切り板30に対してケーシング10を配置することにより、ケーシング10と仕切り板30とのなす角度が90度の場合と同じ水位差及び同数の発電機を使用しつつ、仕切り板で囲む領域の面積を小さくすることができるので、ケーシング10の下部の埋め戻しに関する土木工事費を低減することができる。
【0039】
図4~
図11に、本システム200の断面模式図を示す。
図4~11を参照して、干満に伴う本システムの動作の一例を説明する。
【0040】
図4は、満潮時で、岸側の水位がAであり、沖側の水位がA’の状態を示す。岸側の水位がAを、岸側の第1の水位ともいう。A’を、沖側の第1の水位ともいう。
図4~11において、AとA’は、同じ高さである。BとB’、CとC’、DとD’、EとE’、FとF’についてもそれぞれ、同じ高さである。
【0041】
複数のケーシング10は互いに平行に水平方向に配置される。複数のケーシング10は、積み重ねるようにして配置されてもよい。
【0042】
ケーシング10は、岸側から沖側に向かって傾斜する海底面に接するように配置してもよいが、好ましくは
図4に例示するように水平に設置され、より好ましくはケーシングの底部が海底面から高さYの位置に設置される。高さYは、好ましくは0~0.5m、より好ましくは0.1~0.4m、さらに好ましくは0.2~0.3mの位置に配置される。ケーシングが海底面から離れていることにより、土等がケーシング内に入ることを抑制することができる。ケーシング10を水平に設置する場合またはケーシングの底部が海底面から高さYの位置に設置する場合、ケーシング10の底部と海底面との間は埋め戻し部12で構成され得る。
【0043】
ケーシング10または仕切り板30は、ケーシング10の両端部を開閉するための開閉部を備えることができる。開閉部はケーシング10内を水が流れることを防止して、仕切り板の岸側と沖側とで水位差を発生させるために使用される。干潮から満潮になるときに開閉部を閉めることにより、ケーシング10の沖側(仕切り板30の沖側)の水位を相対的に高めることができる。満潮から干潮になるときに開閉部を閉めることにより、ケーシング10の岸側(仕切り板30の岸側)の水位を相対的に高めることができる。ケーシング10内を水が流れることを防止することができれば、ケーシング自体が開閉部を備えてもよく、仕切り板が開閉部を備えてもよい。構造の容易さの観点から、ケーシングが開閉部を備えることが好ましい。
【0044】
図4の岸側の水位がAであり沖側の水位がA’の満潮時にケーシング10の開閉部を閉め、潮が引き始めると、岸側の水位はAのままで、沖側の水位がB’になる。B’を、沖側の第2の水位ともいう。このとき、岸側の水位Aと沖側の水位B’との水位差がXになる。岸側と沖側との水位差Xが生じたときに、ケーシングの開閉部を開けてケーシング内に水を流して発電機を動作させることにより、発電することができる。水位差Xは、好ましくは1m以上である。1m以上の水位差が生じたときの水を発電に用いることで、効率的に発電を行うことができる。
【0045】
図5の状態から、発電を継続すると、
図6に示すように、岸側の水位はA→B→Cに変化する。岸側の水位がCになると、ケーシング10に対する高さがXとなるので、ここで発電を終了することができる。このとき、沖側の水位はB’→C’→D’に変化するが、沖側の水位の変化に対して岸側の水位の変化を同じか小さくすることが好ましい。岸側及び沖側の水位差X以上を維持することにより、効率的に発電を継続することができる。
【0046】
沖側の水位の変化に対して岸側の水位の変化を同じか小さくするために、複数のケーシングからの沖側への吐出量を抑えるように、ケーシングの直径、ケーシングの本数、及びケーシング内の発電機の数を決めてもよい。岸側の水位の変化が大きいときは、開閉部を開けるタイミングを遅らせて、水位差X以上を維持することが好ましい。別法では、岸側の仕切り板30と沖側の仕切り板30とが水位計を備え、水位計で測定した水位データに基づいて、水位差X以上を維持できるときは開閉部を開け、水位差X未満になるときに開閉部を閉めてもよい。水位計と開閉部との間の通信は、有線または無線で行うことができ、水位計と開閉部との間にサーバーを設けて、サーバーが水位計のデータを受信し、受信したデータに基づいてサーバーが開閉部の開閉を制御してもよい。
【0047】
図6の状態で発電を終了しても、沖側の水位はさらに下がり、D’→E’→F’に低下する。それにともない、岸側の水位も低下し水位はEとなる
図7の状態になる。この状態で、ケーシング10の開閉部を閉める。
【0048】
図7でケーシング10の開閉部を閉めた状態から、沖側で潮が満ち始め沖側の水位がC’の位置まで上昇して
図8の状態になる。沖側の水位とケーシング10との水位差がXとなるので、ケーシング10の開閉部を開いて発電を開始することができる。
【0049】
図8の状態から、発電を継続すると、
図9に示すように、沖側の水位はC’→B’→A’に変化し、それにともない、岸側の水位もD→C→Bに変化するが、沖側の水位の変化に対して岸側の水位の変化を同じか小さくすることが好ましい。岸側及び沖側の水位差X以上を維持することにより、効率的に発電を継続することができる。水位差X以上を維持する方法は、引き潮の場合と同様である。
【0050】
開閉部を閉めて仕切り板の岸側と沖側との水位差を発生させた状態から開閉部を開けるタイミングは、潮が満ちつつあるときは、沖側から岸側にケーシング内を水が流れて沖側の水位がケーシング内の水位と同じにならないように、沖側の水位がケーシングよりも所定の高さ以上であるときが好ましい。
【0051】
岸側の水位がBになり
図10の状態になると、岸側と沖側との水位差がXとなるので、ここで発電を終了することができる。この状態から満潮までに岸側の水位がAとなり、
図4の状態に戻り上記プロセスを繰り返して発電を連続的に行うことができる。
【0052】
上記実施形態においては、岸側と沖側とで2枚の仕切り板30を用いているので、仕切り板30で囲まれた領域で作業員がケーシングや発電機を点検、交換等行うことができる。岸側と沖側とで2枚の仕切り板30を用いる代わりに、1枚の仕切り板を用いてもよい。1枚の仕切り板を用いる場合、ケーシングの中央付近にケーシングが貫通する仕切り板を配置し、岸側と沖側とで水位差を発生させて発電することができる。
【0053】
発電機は、例えば、小水力発電機(相反転方式落差型小水力発電装置、株式会社協和コンサルタンツ製)、軽水力発電機(Cappa(登録商標)、株式会社茨木製作所)等であることができる。上記発電機は、例えば、150L/秒の水量で発電することができる。
【0054】
仕切り板30の岸側に囲い込む水量は、好ましくは、60~100万m3である。一例を示すと、1つのケーシング10に含まれる発電機を動作させる水量は、1日あたり4時間発電させる場合、150L/秒×60×60×4時間=2160トンであり、100本のケーシングに含まれる発電機を動作させる水量は、216000トンである。例えば、深さ3mで上部1mの水を発電に用いる場合、全体の必要水量は216000×3=648000トン(約65万m3)と算出される。深さ3mで前記必要水量を囲い込むためには、およそ500m×500mの領域が必要になる。
【符号の説明】
【0055】
100 連続発電装置
200 連続発電システム
10 ケーシング
12 埋め戻し部
20 発電機
21 回転軸
22 ブレード(羽根)
30 仕切り板
40 水(海水)
50 岸
70 水(海水)
80 海底面
A 岸側の満潮時水位(岸側の第1の水位)
B 岸側の第2の水位
C 岸側の第3の水位
D 岸側の第4の水位
E 岸側の第5の水位
F 岸側の第6の水位
A’ 沖側の満潮時水位(沖側の第1の水位)
B’ 沖側の第2の水位
C’ 沖側の第3の水位
D’ 沖側の第4の水位
E’ 沖側の第5の水位
F’ 沖側の干潮時水位(沖側の第6の水位)
X 発電に必要な最小限の水位差
Y ケーシング底部と海底面との間の距離