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特開2024-110871センサモジュール、センサモジュールの制御方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110871
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】センサモジュール、センサモジュールの制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20240808BHJP
   G06F 3/044 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
G06F3/041 580
G06F3/044 124
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023015723
(22)【出願日】2023-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】中西 貴之
(57)【要約】      (修正有)
【課題】センサアレイと入力手段の接触面との距離が離れている場合でもタッチの感度を向上させるセンサモジュール及びその制御方法を提供する。
【解決手段】タッチセンサシステム10において、センサモジュール200は、カバー部材214Aと、複数のセンサ電極216を有するセンサ領域を備え、カバー部材と重畳して設けられる非接触式のセンサ基板212と、センサ基板から出力される検出信号をに基づいて3次元の座標データを生成するセンサ制御部230と、を備える。センサ制御部は、センサ領域に入力手段290が近接すると、入力手段のセンサ領域における位置を示す3次元の座標データを生成し、データのうち、センサ領域からの高さを表すZ座標が第1閾値以下であり、Z座標が第1閾値よりも小さい第2閾値以下であるか否かを判定し、Z座標が第1閾値よりも小さい第2閾値以下であると判定すると、センサ領域の位置に対応する制御信号を出力する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カバー部材と、
複数のセンサ電極を有するセンサ領域を備え、前記カバー部材と重畳して設けられる非接触式のセンサ基板と、
前記センサ基板から出力される検出信号を受信し、前記検出信号に基づいて3次元の座標データを生成する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記センサ領域に入力手段が近接すると、前記入力手段の前記センサ領域における位置を示す3次元の座標データを生成する座標演算部と、
前記3次元の座標データのうち、前記センサ領域からの高さを表すZ座標が第1閾値以下である場合であって、前記Z座標が前記第1閾値よりも小さい第2閾値以下であるか否かを判定する高さ条件判定部と、
前記高さ条件判定部が、前記前記Z座標が前記第1閾値よりも小さい第2閾値以下であると判定する場合、前記センサ領域の位置に対応する制御信号を出力する出力部と、を含む、センサモジュール。
【請求項2】
前記制御部は、前記制御信号を出力した後に、タッチ状態に移行させるタッチ操作処理部をさらに有する、請求項1に記載のセンサモジュール。
【請求項3】
前記高さ条件判定部は、前記タッチ状態に移行した状態において、前記Z座標が前記第1閾値を超えると判定する場合、
前記タッチ操作処理部は、前記タッチ状態から非タッチ状態に移行させる、請求項2に記載のセンサモジュール。
【請求項4】
前記制御部は、前記高さ条件判定部が、前記Z座標が前記第2閾値を超えると判定する場合、
前記3次元の座標データのうち、直近の複数フレームにおいて、前記Z座標のばらつきまたは水平面を表すXY座標のばらつきの少なくとも一方が所定の範囲内にあるか否かを判定するばらつき判定部、をさらに含む、請求項2に記載のセンサモジュール。
【請求項5】
前記ばらつき判定部は、前記Z座標のばらつきまたは前記センサ領域に対する水平面を表すXY座標のばらつきの少なくとも一方が所定の範囲外にあると判定する場合、及び
前記直近の複数のフレームにおいて、前記Z座標のばらつきまたは前記XY座標のばらつきの少なくとも一方が所定の範囲外にあると判定する場合、
前記タッチ操作処理部は、前記タッチ状態から非タッチ状態に移行させる、請求項4に記載のセンサモジュール。
【請求項6】
前記カバー部材の厚さは、1mm以上100mm以下である、請求項1に記載のセンサモジュール。
【請求項7】
前記センサ基板において、前記センサ領域を囲むように設けられたスペーサをさらに有し、
前記センサ領域の上に前記スペーサを介してカバー部材が配置される、請求項1に記載のセンサモジュール。
【請求項8】
カバー部材と、複数のセンサ電極を有するセンサ領域を備え、前記カバー部材に重畳する非接触式のセンサ基板から出力される検出信号を検出するセンサモジュールの制御方法であって、
前記センサ領域に入力手段が近接すると、前記センサ基板から出力される前記検出信号に基づいて、前記入力手段の前記センサ領域における位置を示す3次元の座標データを生成し、
前記3次元の座標データのうち、前記センサ領域からの高さを表すZ座標が第1閾値以下である場合であって、前記Z座標が前記第1閾値よりも小さい第2閾値以下であるとき、前記センサ領域の位置に対応する制御信号を出力する、センサモジュールの制御方法。
【請求項9】
前記制御信号を出力した後に、タッチ状態に移行する、請求項8に記載のセンサモジュールの制御方法。
【請求項10】
前記タッチ状態に移行した状態において、前記Z座標が前記第1閾値を超える場合、
前記タッチ状態から非タッチ状態に移行する、請求項9に記載のセンサモジュールの制御方法。
【請求項11】
前記Z座標が前記第2閾値を超える場合、
前記3次元の座標データのうち、直近の複数フレームにおいて、前記Z座標のばらつきまたは水平面を表すXY座標のばらつきの少なくとも一方が所定の範囲内にあるとき、前記制御信号を出力する、請求項9に記載のセンサモジュールの制御方法。
【請求項12】
前記Z座標のばらつきまたは前記センサ領域に対する水平面を表すXY座標のばらつきの少なくとも一方が所定の範囲外にある場合、
前記直近の複数のフレームにおいて、前記Z座標のばらつきまたは前記XY座標のばらつきの少なくとも一方が所定の範囲外にあるとき、前記タッチ状態から非タッチ状態に移行する、請求項11に記載のセンサモジュールの制御方法。
【請求項13】
請求項10乃至12のいずれか一項に記載のセンサモジュールの制御方法を、センサモジュールが有する制御部に実行させるためのプログラム。
【請求項14】
請求項10乃至12のいずれか一項に記載のセンサモジュールの制御方法を、前記センサモジュールと接続されたコンピューティングデバイスの制御部に実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態の一つは、センサモジュール、センサモジュールの制御方法、プログラム、センサモジュールを備える表示装置、及びセンサシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
情報端末に情報を入力するためのインタフェースの一つとして、タッチセンサが広く用いられている。現在主流のタッチセンサは、人の指や掌、あるいはタッチペンなどの入力用治具(以下、これらを入力手段とも記す。)がタッチセンサに直接接触した位置を特定する。例えば、特許文献1には、指及びペンによる入力を受け付けるタッチパネルにおいて、適切な精度でタッチ位置を検出するタッチパネルシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-97820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のタッチセンサでは、例えば、複数のセンサ電極が設けられたセンサアレイと入力手段との間に厚い物体が配置される場合や、センサアレイと入力手段との間に空間が設けられている場合には、センサアレイと入力手段との距離が離れて過ぎていることで、十分な感度を得ることができず、タッチの検知ができないという問題が生じている。
【0005】
そこで、本発明の一実施形態では、センサアレイと入力手段の接触面との距離が離れている場合であっても、タッチの感度を向上させることを目的の一つとする。
【0006】
本発明の一実施形態に係るセンサモジュールは、カバー部材と、複数のセンサ電極を有するセンサ領域を備え、カバー部材と重畳して設けられる非接触式のセンサ基板と、センサ基板から出力される検出信号を受信し、検出信号に基づいて3次元の座標データを生成する制御部と、を備え、制御部は、センサ領域に入力手段が近接すると、入力手段のセンサ領域における位置を示す3次元の座標データを生成する座標演算部と、3次元の座標データのうち、センサ領域からの高さを表すZ座標が第1閾値以下である場合であって、Z座標が第1閾値よりも小さい第2閾値以下であるか否かを判定する高さ条件判定部と、高さ条件判定部が、Z座標が第1閾値よりも小さい第2閾値以下であると判定する場合、センサ領域の位置に対応する制御信号を出力する出力部と、を含む。
【0007】
本発明の一実施形態に係るセンサモジュールの制御方法は、カバー部材と、複数のセンサ電極を有するセンサ領域を備え、カバー部材に重畳する非接触式のセンサ基板から出力される検出信号を検出するセンサモジュールの制御方法であって、センサ領域に入力手段が近接すると、センサ基板から出力される検出信号に基づいて、入力手段のセンサ領域における位置を示す3次元の座標データを生成し、3次元の座標データのうち、センサ領域からの高さを表すZ座標が第1閾値以下である場合であって、Z座標が第1閾値よりも小さい第2閾値以下であるとき、カバー部材にタッチしていると判定し、センサ領域の位置に対応する制御信号を出力する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係るタッチセンサシステムの断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係るタッチセンサシステムの斜視図である。
図3】本発明の一実施形態に係るタッチセンサシステムのハードウェアのブロック図である。
図4】本発明の一実施形態に係るセンサモジュールの制御方法を説明するソフトウェアのブロック図である。
図5】センサモジュールにおけるZ座標における第1閾値及び第2閾値を説明する図である。
図6】本発明の一実施形態に係るセンサモジュールの制御方法を説明するフローチャートである。
図7】本発明の一実施形態に係るセンサモジュールの斜視図である。
図8】本発明の一実施形態に係るタッチセンサシステムの断面図である。
図9】本発明の一実施形態に係るタッチセンサシステムのハードウェアのブロック図である。
図10】本発明の一実施形態に係るタッチセンサシステムの断面図である。
図11】本発明の一実施形態に係るタッチセンサシステムの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の各実施形態について、図面などを参照しつつ説明する。ただし、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲において様々な態様で実施することができ、以下に例示する実施形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0010】
図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状などについて模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。本明細書と各図において、既出の図に関して説明したものと同様の機能を備えた要素には、同一の符号を付して、重複する説明を省略することがある。同一、あるいは類似する複数の構造を総じて表す際にはこの符号が用いられ、これらを個々に表す際には符号の後にハイフンと自然数が加えられる。
【0011】
本明細書および請求項において、ある構造体の上に他の構造体を配置する態様を表現するにあたり、単に「上に」と表記する場合、特に断りの無い限りは、ある構造体に接するように、直上に他の構造体を配置する場合と、ある構造体の上方に、さらに別の構造体を介して他の構造体を配置する場合との両方を含むものとする。
【0012】
(第1実施形態)
本発明の一実施形態に係るタッチセンサシステムについて、図1図7を参照して説明する。
【0013】
1.タッチセンサシステムの構成
図1は、本発明の一実施形態に係るタッチセンサシステム10の断面模式図である。図2は、本発明の一実施形態に係るセンサモジュール200及び表示モジュール100の展開図である。図1に示すように、タッチセンサシステム10は、センサモジュール200と、表示モジュール100と、コンピューティングデバイス300と、を備える。
【0014】
2.表示モジュール
表示モジュール100は、表示パネル110と表示制御部120とを有する。表示パネル110は、アレイ基板112、アレイ基板112の上に形成される複数の画素116、及び複数の画素116を覆う対向基板114を基本的な構成として備える。複数の画素116が設けられる領域は、表示領域118とも呼ばれる。図2に示すように、複数の画素116は、複数の行と列を有するマトリクス状に配置される。各画素116は表示素子を備えており、色情報を提供する最小単位として機能する。表示素子として、液晶素子、無機電界発光素子(LED)、または有機電界発光素子(OLED)が用いられる。液晶素子を用いる場合には、表示パネル110の裏面に図示しない光源(バックライト)が設けられる。表示制御部120は、フレキシブル印刷回路(FPC)基板などのコネクタ140を介して、コンピューティングデバイス300に接続される。表示制御部120は、コネクタ140を介してコンピューティングデバイス300から供給される電源と映像信号に従って動作し、映像信号に基づく階調で特定の色の光を提供するように、ICドライバ150を介して複数の画素116を制御する。ICドライバ150は、複数の画素116を駆動するためのゲート線駆動回路とソース線駆動回路とのいずれか一方又は両方を含む。また、これらの駆動回路をアレイ基板上に設ける構成も採用可能である。映像信号に基づいて複数の画素116の動作を制御することで、表示領域118上に映像を表示することができる。複数の画素116は、映像がセンサモジュール200を介して視認できる配置となるように構成される。
【0015】
表示パネル110の大きさには制約はなく、例えば、4インチ(約10cm)サイズの携帯通信端末などに利用される大きさでもよく、コンピュータに接続されるモニタやテレビ、サイネージなどに好適な大きさ(例えば、14.1インチ(36cm)サイズから32インチ(81cm)サイズ)でもよく、さらに大きなサイズであってもよい。より具体的には、車載表示装置のほか、金銭登録器(レジ)や現金自動預払機に組み込まれる表示装置に適合するサイズを採用してもよい。
【0016】
3.センサモジュール
センサモジュール200は、表示モジュール100の上に配置される。センサモジュール200は、表示モジュール100との間に空間(エアギャップ)を有するように配置されてもよい。または、センサモジュール200は、表示モジュール100と図示しない接着層によって互いに固定されてもよい。
【0017】
センサモジュール200は非接触式センサモジュール(ホバーセンサ)である。センサモジュール200は、指や掌、先端に樹脂が配置されたタッチペンなどの入力手段290がセンサモジュール200に直接接触したときのみならず、入力手段290がセンサモジュール200に接することなく近づいた際にも入力手段290を検出し、センサモジュール200上における入力手段290の位置(以下、入力位置とも記す。)を特定する機能を備える。センサモジュール200が入力手段290を検知する距離は適宜設定することができ、後に説明するセンサ電極の表面から5mm以内、20mm以内、50mm以内、または100mm以内の範囲に設定することができる。センサモジュール200が入力手段290を検知する距離は、入力手段290がカバー部材214に接触することでタッチを検出するように設定してもよいし、入力手段290がカバー部材214に接触しなくてもタッチを検出するように設定してもよい。本実施形態では、入力手段290がカバー部材214に接触することでタッチを検出するように、入力手段290を検知する距離が設定される。
【0018】
センサモジュール200は、センサパネル210、検出器220、センサ制御部230を有する。センサパネル210は、センサ基板212、センサ基板212の上に形成される複数のセンサ電極216、及び複数のセンサ電極216を覆うカバー部材214を備える。複数のセンサ電極216は、複数の行と列を有するマトリクス状に配置される。複数のセンサ電極216が配置される領域はセンサ領域218と呼ばれる。センサ領域218が形成されたセンサ基板212を、センサアレイとも呼ぶ。センサ領域218が表示領域118と重なるようにセンサ電極216が配置される。センサ電極216の数(すなわち、行と列の数)や大きさ(面積)は、表示領域118の大きさ、センサモジュール200に要求される検出精度などに応じて適宜設定すればよい。行と列の数は、例えばそれぞれ5以上10以下、5以上15以下でもよい。図2から理解されるように、各センサ電極216は、画素116よりも大きな面積を有しており、複数の画素116と重なるように設けられる。
【0019】
複数のセンサ電極216には、センサ配線(図示しない)が接続され、センサ配線を介して、駆動信号が供給される。駆動信号は、パルス電圧であってもよい。センサ電極216に入力手段290である導体(例えば、人の指など)が接近すると、該センサ電極216と入力手段との間に疑似的なコンデンサが形成される。その結果、該センサ電極216の静電容量が変化する。静電容量の変化は検出信号として出力されてもよい。また、センサ電極の静電容量の大きさが検出信号として出力されてもよい。
【0020】
各センサ電極216からは、センサ電極216と電気的に接続されるセンサ配線(図示しない)がセンサ基板212の一辺まで延伸し、端部において端子217を形成する。端子217にはフレキシブル印刷回路(FPC)基板などのコネクタ270が電気的に接続される。コネクタ270は、プリント回路基板(PCB)等のコネクタ280と接続されている。コネクタ280には、検出器220、センサ制御部230、及びI/F240が設けられている。複数のセンサ電極216から検出された信号は、検出器220、センサ制御部230、及びI/F240を介してコンピューティングデバイス300に送信される。なお、複数のセンサ電極216によって検出された検出信号の処理については、後に詳細に説明する。
【0021】
センサ基板212及びカバー部材214は、いずれも絶縁性の材料であり、例えば、ガラス、石英、ポリイミド、ポリアミド、又はポリカーボネートなどの高分子材料で構成される。また、センサ基板212及び/又はカバー部材214は、任意に変形できる程度の可撓性を有していてもよく、塑性変形しない程度に低い可撓性を有していてもよい。本実施形態では、カバー部材202の厚さは、センサ領域218が入力手段を検知する距離に応じた厚さでもよく、例えば、1mm以上100mm以下の厚さであってもよい。または、カバー部材214の厚さは、5mm以下の厚さであってもよい。
【0022】
センサ電極216は、例えば、インジウム-スズ混合酸化物(ITO)やインジウム-亜鉛混合酸化物(IZO)などの透光性酸化物を含む。または、センサ電極216は、チタンやモリブデン、タングステン、アルミニウム、銅などの金属(0価の金属)、またはこれらの金属の一つまたは複数を含む合金を含んでもよい。金属又は合金を用いる場合には、透光性を確保するため、複数の開口を有するメッシュ状にセンサ電極216を形成すればよい。なお、センサ基板212とカバー部材214とは、センサ電極216の上に設けられた接着材215、例えば、OCA(Optical Clear Adhesive)によって接着されている。
【0023】
センサ基板212のセンサ電極216が設けられる第1面とは反対側の第2面には、電気的な影響を遮蔽するためのノイズシールド層213を設けることが好ましい。ノイズシールド層213は、第2面の全面に亘って設けられている。ノイズシールド層213として、ITOもしくはIZOなどの透光性を有する金属酸化物、または金属を用いる。ノイズシールド層213は、フレキシブルプリント回路などのコネクタ271が電気的に接続される。ノイズシールド層213には、センサ電極216に印加される電位と同相のパルス状の交流電圧が印加される。これにより、ノイズシールド層213は、センサ電極216と常時等電位となる。また、センサ基板の第2面に設けられたコネクタ271と、センサ基板の第1面に設けられたコネクタ270とは、半田119によって接続されている。
【0024】
4.コンピューティングデバイス
コンピューティングデバイス300は、計算機能を有する電子デバイスであり、例えばデスクトップ型コンピュータの本体部が挙げられる。コンピューティングデバイス300のI/F340aは、表示モジュール100のI/F141と接続手段341によって接続される。コンピューティングデバイス300のI/F340bは、センサモジュール200の1/F240と接続手段342によって接続される。なお、当該コンピューティングデバイス300と表示モジュール100とを一体化させたノート型パーソナルコンピュータやタブレット、スマートフォンなどの携帯通信端末をコンピューティングデバイス300と称しても構わない。或いは、上記コンピューティングデバイス300、表示モジュール100及びセンサモジュール200を一体化させた端末装置をコンピューティングデバイス300と称しても構わない。
【0025】
従来のタッチセンサでは、例えば、複数のセンサ電極が設けられたセンサ基板と入力手段との間に厚い物体が配置される場合や、センサ基板と入力手段との間に空間が設けられている場合には、センサ基板と入力手段との距離が離れて過ぎていることで、十分な感度を得ることができず、タッチの検知ができないという問題が生じている。
【0026】
センサモジュールとしてホバーセンサを用いることで、センサ基板の上に厚い物体が配置されていても、入力手段を検知することができる。物体の上を入力手段がタッチしたことを検出する方法として、ホバーセンサによって得られた入力手段の3次元の座標データのうちのZ座標により、物体の上をタッチしたか否かを判定すればよい。しかしながら、静電容量式のセンサモジュールを用いる場合、センサ領域におけるZ座標は、センサ電極と入力手段との容量、つまり、検出信号の強度に依存する。そのため、タッチを検出するための入力手段の大きさにより検出信号の強度に差が生じてしまい、検出信号から得られるZ座標に差異が生じる。そのため、一定の閾値のみでタッチを検出しようとすると、指が大きい人の場合、厚い物体の表面から隙間を空けて指が接触していない状態であっても、タッチしていると判定されてしまう場合がある。または、一定の閾値のみでタッチを検出しようとすると、指が小さい人の場合、厚い物体の表面に指が接触していても、タッチしていないと判定されてしまう場合がある。このように、入力手段の大きさによって正しくタッチを検知することができないという問題が生じている。
【0027】
そこで、本発明の一実施形態では、センサ基板と入力手段の接触面との距離が離れている場合であっても、タッチの感度を向上させることを目的の一つとする。
【0028】
具体的には、入力手段290がカバー部材214に接触せずともある程度近接しているときと、カバー部材214に実際に接触しているときとの違いを精度よく識別可能な構成とすればよい。入力手段290がカバー部材に近接している状態であって、接触していない場合、入力手段290又は当該入力手段290の先端部は、空中に位置しているため位置が安定せず、結果、検出信号から得られる入力手段290の3次元の座標データのばらつきとなって表れる。なお、入力手段290がカバー部材214に接触している場合には、当該入力手段290はカバー部材214に支持されているため、上記近接状態と比べると位置が安定している。つまり、この場合、検出信号から得られる入力手段290の3次元の座標データのばらつきが小さくなる。このように、3次元の座標データのばらつきを用いることで、センサ基板と入力手段の接触面との距離が離れている場合であっても、入力手段のカバー部材への接触の有無を精度よく識別できる。
【0029】
5.タッチセンサシステムのハードウェア
図3は、本発明の一実施形態に係るタッチセンサシステム10のハードウェアを説明するブロック図である。図3に示すように、センサモジュール200は、センサパネル210の他、検出器220、センサ制御部230、I/F240、電源回路250を有する。
【0030】
検出器220は、アナログフロントエンド(AFE:Analog Front End)とも呼ばれ、信号検出部221とアナログ/デジタル変換部(A/D変換部222)を含む。信号検出部221は、センサ電極216の容量の変化を電位変動としてアナログ信号で検出する。A/D変換部222は、アナログデジタル回路を有し、電位変動を示すアナログ信号を、デジタル信号に変換して検出信号とする。
【0031】
センサ制御部230は、例えば、MCU(Micro Controller Unit)とも呼ばれ、演算部231、ROM232(Read Only Memory)、RAM233(Random Access Memory)、I/Oインタフェース234を少なくとも有する。演算部231は、演算回路を有し、具体的には、CPU(中央処理装置)であり、ROM232に記憶されたプログラムを実行する。ここで、プログラムとは、後に詳述するセンサモジュールの制御方法を実現するためのプログラムである。また、ROM232には、入力手段290を検知する距離が格納されている。RAM233は、例えば、検出器220から取得した信号を記憶し、演算部231で演算された検出信号の演算結果を記憶する。I/O234は、演算部231から出力された信号を、I/F240を介して、コンピューティングデバイス300に送信する。
【0032】
I/F240はコンピューティングデバイス300との接続に用いられ、ユニバーサル・シリアル・バス(USB)やシリアル・ペリフェラル・インタフェース(SPI)などの規格に基づいて構成される。
【0033】
電源回路250は、図示しない外部電源からコンピューティングデバイス300を介して供給される電源をパルス状の交流電圧(交流矩形波)に変換し、この交流電圧を端子217とセンサ配線を介して各センサ電極216に供給する。
【0034】
コンピューティングデバイス300は、制御部310、記憶部320、通信部330、I/F340、電源部350を有する。また、コンピューティングデバイス300は、I/F340を介して、外部出力機器である表示装置410、音声出力装置420、及び発光装置430の少なくとも一つと接続されていてもよい。コンピューティングデバイス300と、表示装置410、音声出力装置420、及び発光装置430とは、I/F340によって有線又は無線で接続される。また、コンピューティングデバイス300は、他のコンピューティングデバイスと、通信部330によって接続されていてもよい。
【0035】
制御部310は、CPUを搭載するMPU(Micro Processor Unit)又はMCU(Micro Controller Unit)である。制御部310は、記憶部320に記憶されたプログラムをCPUにより実行して、各種機能を実現させる。記憶部320に記憶されたプログラムとは、例えば、表示装置410、音声出力装置420、又は発光装置430を制御するためのアプリケーションプログラムである。制御部310は、センサ制御部230から受信した制御信号に基づいて、アプリケーションプログラムを実行して、表示装置410、音声出力装置420、又は発光装置430に各種制御信号を出力する。制御部310で実行されたアプリケーションプログラムによって、例えば、表示装置410の表示を制御してもよいし、音声出力装置から音声を出力してもよいし、発光装置を点灯させてもよい。
【0036】
記憶部320は、揮発性の主記憶装置および不揮発性の補助記憶装置によって構成される。主記憶装置は、RAMやDRAMなどであり、補助記憶装置としてはROM、フラッシュメモリ、ハードディスクドライブなどが例示される。上記アプリケーションプログラムは記憶部320を構成する補助記憶装置に記憶される。
【0037】
通信部330は、制御部310の制御により、ネットワークと接続して、ネットワークに接続された他のコンピューティングデバイス、又はサーバなど、他の装置と情報の送信および受信を行う無線通信モジュールである。
【0038】
電源部350はリチウムイオンバッテリなどの二次電池であり、外部電源から電力の供給を受けて蓄電し、外部電源が利用できないときには電源を制御部310に供給する。
【0039】
I/F340には、表示装置410、音声出力装置420及び発光装置430の少なくとも一つが、USB等によって接続されている。
【0040】
表示装置410は、図1及び図2で説明した表示モジュール100を含む。表示装置410は、センサ制御部230から出力された制御信号によって、表示領域118に表示画像が制御される。音声出力装置420は種々の音を発生する機能を有するスピーカーである。音声出力装置420は、センサ制御部230から出力された制御信号によって、出力される音声が制御される。また、発光装置430は、例えば、LEDなどの照明である。発光装置430は、センサ制御部230から出力された制御信号によって、発光が制御される。
【0041】
6.センサモジュールを制御するためのソフトウェア
図4は、本発明の一実施形態に係るセンサモジュール200を制御するためのソフトウェアを説明するブロック図である。センサモジュール200の制御方法は、センサ制御部230の演算部231にて実行される。演算部231は、信号処理部2311、座標演算部2312、高さ条件判定部2313、タッチ状態判定部2314、ばらつき判定部2315、終了条件判定部2316、出力部2317、及びタッチ操作処理部2318を有する。
【0042】
信号処理部2311は、信号処理回路を有し、検出器220のA/D変換部222から検出信号を取得すると、検出信号のベースラインを補正する。また、ベースラインを補正した検出信号に対して、線形変換を実行した後の信号S(n)を座標演算部2312に送信する。
【0043】
座標演算部2312は、座標演算回路を有し、信号S(n)に基づいて入力手段290のセンサ領域218における位置を示す3次元の座標データをフレーム毎に生成し、RAM233に格納する。座標データとして、X座標データ、Y座標データ、及びZ座標データを含む。1フレームを8msecとしてセンサモジュールを駆動する場合、RAM233には35~40程度の座標データが格納される。また、最新の座標データが格納されるたびに最も古い座標データは消去される。
【0044】
座標演算部2312は、RAM233に格納されているこれらの座標データ群を用いてフレーム毎に、X座標のばらつきの度合い、Y座標のばらつきの度合い、Z座標のばらつきの度合いを演算する。詳述すると、フレームが更新されるたびに新規の座標データがRAM233に格納されることとなるが、当該最新の座標データと当該最新座標データから遡及する複数(本実施形態では、例えば36)の座標データを用いて各座標データのばらつきを演算する。ここで、ばらつきの度合いとして、分散を計算してもよいし、座標の変位の積算を計算してもよい。所定の期間は、例えば、300msec以内であることが好ましい。すなわち、8msec毎に座標データが更新される場合、最新の座標データを含む37の座標データ(8×37=296msec)を用いてばらつきを演算することが好ましい。300msecを超えると、タッチを検知する反応が遅れたり、入力手段290として指を用いた場合、タッチの期間が終了してしまう。検出結果の解像度を高めるべく、所定の期間を240msec以下とすることが好ましい。同様に、所定の期間を、160msec以下、或いは80msec以下とすることが好ましい。このようにして、最新の座標データのばらつきが演算され、当該演算結果もばらつきデータとしてRAM233に格納される。当該最新の座標データに対するばらつきデータはフレーム毎に取得されることになるが、RAM233は複数フレーム分、少なくとも4フレーム分のばらつきデータを格納する。当該ばらつきデータも、最新の座標データが更新されるたびに最新のばらつきデータが格納され、最も古い座標データが消去されることは言うまでもない。
【0045】
高さ条件判定部2313は、高さ条件判定回路を有し、最新の座標データのZ座標が第1の高さ条件、及び第2高さ条件を満たすか否かを判定する。第1の高さ条件とは、センサ領域218からの高さを表すZ座標が第1閾値以下であるか否かである。高さ条件判定部2313が、Z座標が第1閾値以下であると判定する場合、入力手段290がセンサ領域218にある程度(例えば高さ方向で見てセンサ領域から100mm以内)近接している状態である。このとき、入力手段290はカバー部材214に接触していなくてもよい。高さ条件判定部2313が、Z座標が第1閾値以下ではない(第1閾値を超える)と判定する場合、入力手段290がセンサ領域218に近接していない状態である。
【0046】
また、第2の高さ条件とは、第1の高さ条件を満たす場合に、センサ領域218からの高さを表すZ座標が第2閾値以下であるか否かである。高さ条件判定部2313が、Z座標が第2閾値以下であると判定する場合、タッチ状態であると判定する。本実施形態では、高さ条件判定部2313が、Z座標が第2閾値以下であると判定する場合、入力手段290がカバー部材214に確実に接触している状態である。第2閾値は、第1閾値よりも小さい。高さ条件判定部2313が、Z座標が第2閾値以下ではない(第2閾値を超える)と判定する場合、入力手段290はカバー部材214に接触していない可能性がある。
【0047】
図5は、センサモジュールにおけるZ座標における第1閾値及び第2閾値を説明する図である。センサモジュールのセンサ領域218を基準として、カバー部材214の表面までの高さが第2閾値Hth2であり、カバー部材214の表面から離れた高さが第1閾値Hth1である。図5では、入力手段290は、第1閾値Hth1以下であり、第2閾値Hth2を超えている様子を示している。図5では、座標演算部によって演算された3次元の座標データR(x、y、z)を示している。
【0048】
タッチ状態判定部2314は、タッチ状態判定回路を有し、入力手段290がカバー部材214にタッチ状態であるか否かを判定する。
【0049】
ばらつき判定部2315は、ばらつき判定回路を有し、RAM233に格納されているばらつきデータを読み出し、最新のばらつきデータに対して、Z座標のばらつき(高さばらつき)と、X座標のばらつき及びY座標のばらつきと(平面ばらつき)の少なくとも一方が、所定の範囲内であるか否かを判定する。また、ばらつき判定部236は、高さばらつきと、平面ばらつきの少なくとも一方が所定の範囲内ではない(ばらつきが大きい)と判定する場合、さらに当該フレームを含む直近に算出された複数のフレーム(例えば、直近含め連続する4フレーム)におけるばらつきが所定の閾値以上であるか否かを判定する。当該判定は、これら4フレームにおけるばらつきデータの全てが閾値以上であるか否かで判定してもよく、これら4フレームにおけるばらつきデータにおいて、閾値以上となるばらつきデータが半数を超えるか否かで判定するとしてもよく、これら4フレームにおけるばらつきデータにおいて、2連続又は3連続で閾値以上となるか否かで判定してもよい。
【0050】
タッチ操作処理部2318は、タッチ操作処理回路を有し、高さ条件判定部2313、ばらつき判定部2315、又はタッチ状態判定部2314の判定に応じて、タッチ状態に移行させるか、非タッチ状態に移行させる。本実施形態では、タッチ状態とは、入力手段290がカバー部材214に接触している状態であり、非タッチ状態とは、入力手段290がカバー部材214から離れている状態である。
【0051】
本実施形態においては、入力手段290とセンサ電極216との間の容量の大きさ(検出強度)に基づいて高さ位置を検出する。ここで、当該検出強度は入力手段290の大きさ(指の大きさ)等にも依存するものであるため、当該検出強度にのみに基づいて入力手段290の正確な高さ情報を得ることは難しい。また、本実施形態においては、カバー部材214上にセンサ電極等を設けるものではない。このため、カバー部材214表面に入力手段290が接しているか否かを判定する材料を上記高さ情報のみ(検出強度に基づくZ座標データ)とし、当該高さ情報が当該カバー部材214表面の高さ位置に一致する(あるいはそれ以下)であることのみを以てカバー部材214表面に入力手段290が接触していると判定する場合、実際には当該カバー部材214の表面に入力手段290が接触しているのにもかかわらず、接触していないと判定されてしまうケースやその逆のケースも想定し得る。
【0052】
他方、実際に入力手段290がカバー部材214表面に接触している場合、高さ位置と平面位置の少なくとも一方は長期に亘って(少なくとも数フレームに亘って)安定する。すなわち、当該入力手段290がカバー部材214表面に接触している場合、長期に亘って高さばらつきと平面ばらつきの少なくとも一方(あるいは両方)が小さくなる。そこで、本実施形態においては、最新のZ座標データの数値に基づいて一次的にカバー部材214表面への入力手段290の接触を判定し、且つ、当該Z座標の数値によってはさらにばらつき判定部2315により高さばらつきと平面ばらつきを参照し、最終的な入力手段290の接触状態を判定する。このように段階的に入力手段290のカバー部材214への接触状態を判定することにより、入力手段290の接触状態をより正確に判定することができるものとなっている。
【0053】
終了条件判定部2316は、終了判定回路を有し、センサモジュールの制御方法の終了条件を満たすか否かを判定する。終了条件とは、例えば、センサモジュールの制御方法が開始されてから所定の時間が経過したか否か、センサモジュールの制御方法の終了が選択されたか否か、を判定する。
【0054】
出力部2317は、出力回路を有し、センサ領域218の位置に対応する制御信号をI/F240に出力する。I/F230から、コンピューティングデバイス300のI/Fに制御信号が送信される。そして、制御部310において、制御信号に基づいてアプリケーションプログラムが実行されて、表示装置410等が制御される。
【0055】
7.センサモジュールの制御方法
図6は、本発明の一実施形態に係るセンサモジュール200の制御方法を示すフローチャートである。センサ制御部230の演算部231は、センサモジュール200の制御方法が開始され、入力手段290がセンサ領域218に近づくと、信号処理部2311は検出器220からデジタルの検出信号を取得する。なお、センサモジュール200の制御方法が開始されてから、一度もタッチの認識が行われていない初期状態は、非タッチ状態である。
【0056】
図7は、本発明の一実施形態に係るセンサモジュール200の斜視図である。図7では、入力手段290がセンサモジュール200に近づく様子を示している。このとき、信号処理部2311は、デジタルの検出信号に対してベースラインを補正し、線形変換を実行した信号S(n)を座標演算部2312に送信する。座標演算部2312が信号S(n)に基づいて3次元の座標データR(x1,y1,z1)を生成すると、高さ条件判定部2313に3次元の座標データを送信する。
【0057】
次に、高さ条件判定部2313は、3次元の座標データRを取得すると(ステップS101)、高さを表すZ座標(ここでは、z1)が第1閾値以下であるか否かを判定する(ステップS102)。高さ条件判定部2313が、Z座標が第1閾値以下であると判定する場合(ステップS102;Yes)、入力手段290がセンサ領域218に近接していると判定する。次に、ステップS103において、座標演算部2312は、RAM233から3次元の座標データを連続する数フレームに亘って読み出し、X座標のばらつき、Y座標のばらつき、及びZ座標のばらつきを演算する。また、当該演算結果はばらつきデータとしてRAM233に格納される。
【0058】
次に、高さ条件判定部2313は、当該Z座標(最新のZ座標)が第2閾値以下であるか否かを判定する(ステップS104)。高さ条件判定部2313において当該Z座標が第2閾値以下であると判定されると(ステップS104;Yes)、タッチ状態判定部2314は、入力手段290がカバー部材214にタッチしている(タッチ状態である)と判定する(ステップS105)。当該第2閾値以下であれば確実に入力手段290がカバー部材214に接触していると判定するべく、当該第2閾値は、センサ領域218表面からカバー部材214の表面までの高さと同じ高さ相当の値乃至当該値よりもやや小さい(よりセンサ電極216表面に近い)値が採用される。次に、ステップS106において、出力部2317から制御信号を出力する。その後、ステップS107において、タッチ操作処理部2318は、タッチ状態に移行させる。
【0059】
終了条件判定部2316は、センサモジュール200の制御方法が終了条件を満たすか否かを判定する。終了条件判定部2316が、センサモジュール200の制御方法の終了条件を満たすと判定する場合(ステップS108;Yes)、センサモジュール200の制御方法を終了する(END)。終了条件判定部2316が、センサモジュール200の制御方法の終了条件を満たさないと判定する場合(ステップS108;No)、ステップS101の処理に戻る。ここでは、タッチ状態のまま、ステップS101の処理に戻る。
【0060】
その後、ステップS101において、信号処理部2311は検出器220から新たなデジタルの検出信号を取得する。このとき、信号処理部2311は、デジタルの検出信号に対してベースラインを補正し、線形変換を実行した信号S(n)を座標演算部2312に送信する。座標演算部2312が信号S(n)に基づいて3次元の座標データを生成すると、高さ条件判定部2313に3次元の座標データを送信する。
【0061】
次に、高さ条件判定部2313は、3次元の座標データを受信すると、Z座標が第1閾値以下か否かを判定する。ここで、Z座標が第1閾値以下ではないと判定されると、(ステップS102;No)、ステップS111において、タッチ状態判定部2314は、入力手段290が非タッチ状態であると判定する。そして、タッチ操作処理部2318は、タッチ状態を解除(非タッチ状態に移行)して(ステップS112)、ステップS108に進む。
【0062】
ところで、ステップS104において、高さ条件判定部2313が、Z座標が第2閾値よりも大きいと判定する場合(ステップS104;No)、ばらつき判定部2315は、RAM233に格納しているばらつきデータのうち、最新の高さばらつきと最新の平面ばらつきの少なくとも一方が所定の範囲内であるか否かを判定する(ステップS109)。なお、最新の高さばらつきとは最新のZ座標を含めて遡及される複数個(本実施形態では37個)のZ座標のばらつきのうち、当該最新のZ座標に対するばらつきである。最新の平面ばらつきについても同様である。ばらつきが所定の範囲内であると判定する場合(ステップS109;Yes)、タッチ状態判定部2314は、入力手段290がカバー部材214にタッチしていると判定する(ステップS105)。その後、ステップS106に進み、出力部2317から制御信号を出力する。
【0063】
座標のばらつきが所定の範囲外であると判定する場合(ステップS109;No)、ばらつき判定部2315は、所定の期間における座標のばらつきが大きいか否かを判定する(ステップS110)。より具体的には、上述の最新の高さばらつき(Z座標のばらつき)をDZとする場合、DZn-1、DZn-2、…、DZn-k(本実施形態においてはk=3)のばらつきが所定の範囲内であるか否かを判定する。同様に、上述の最新の平面ばらつき(XY座標のばらつき)をDXYとする場合、DXYn-1、DXYn-2、…、DXYn-k(本実施形態においてはk=3)のばらつきが所定の範囲内であるか否かを判定する。これらを判定した結果、ばらつきの程度が大きいと判定する場合(ステップS110;Yes)、ステップS111において、タッチ状態判定部2314は、入力手段290が非タッチ状態であると判定する。その後、非タッチ状態に移行(タッチ状態を解除)して(ステップS112)、ステップS108に進む。
【0064】
他方、ばらつき判定部2315において、上記複数のばらつきデータを判定した結果、ばらつきが所定の範囲内(ばらつきの程度が小さい)と判定する場合(ステップS110;No)、タッチ状態は変更されることなくステップS108に進む。なお、ばらつき判定部2315におけるばらつきの程度が大きい又は小さいを判定するには、様々な判定基準が設定可能である。例えば、DZ~DZn-kの全てが所定の範囲内であるか否かをという基準を用いてもよいし、これらばらつきのうち連続する2つ又それ以上が連続して所定の範囲内にあるか否かという基準を用いてもよいし、所定の範囲内にある個数が全体の半数以上であるか否かで判定しても構わない。平面ばらつきについても同様である。また、所定の範囲についても、ステップS109における判定の際に設定された所定の範囲と異なる範囲、例えば当該範囲よりも少し大きい範囲を採用しても構わない。
【0065】
以上説明した通り、本発明の一実施形態に係るタッチセンサシステム10の制御方法によれば、入力手段の位置に対応する検出信号に基づく3次元の座標データを用いて、入力手段290の位置におけるゆらぎを表す座標のばらつきによって、タッチしたか否かを判定する。これにより、入力手段290の大きさ、例えば、指の大きさに依存する検出信号の強度によらず、タッチしたか否かを判定することができるため、タッチの感度を向上させることができる。このように、ホバーセンサを用いたセンサシステム10において、センサ基板と、入力手段の接触面との距離が離れている場合であっても、タッチ状態の感度を向上させることができる。
【0066】
(第2実施形態)
本実施形態では、センサモジュール200の制御方法が、コンピューティングデバイス300の制御部310において実行される場合について説明する。
【0067】
図8は、本発明の一実施形態に係るタッチセンサシステム10の断面模式図である。図8に示すように、センサモジュール200において、検出器及びセンサ制御部、プリント回路基板が省略されている点で、第1実施形態と異なる。センサ基板212の第1面に設けられた端子217は、コネクタ270が接続されている。コンピューティングデバイス300のI/F340bは、センサモジュール200の1/F240と接続手段342によって接続される。
【0068】
図9は、本発明の一実施形態に係るタッチセンサシステム10Aのハードウェアを説明するブロック図である。図9に示すように、コンピューティングデバイス300に、検出器220が含まれており、検出器220から制御部310に座標データが送信される。
【0069】
センサパネル210から取得した信号Det(n)は、I/F340を介して、検出器220に送信される。検出器220において、信号検出部221によってセンサ電極216の容量の変化が電位変動として検出され、A/D変換部222によってこの電位変動がデジタル化されて検出信号に変換される。検出信号は、制御部310に送信される。
【0070】
記憶部320には、第1実施形態で説明したセンサモジュール200の制御方法を、制御部310に実行させるためのプログラムが格納されている。また、記憶部320には、各種アプリケーションプログラムが格納されている。
【0071】
制御部310は、記憶部320から第1実施形態で説明したセンサモジュール200の制御方法を実現するプログラムを読み出し、当該プログラムを実行する。つまり、図6で説明したセンサモジュール200の制御方法を制御部310において実行する。また、制御部310は、外部出力装置を制御するためのアプリケーションプログラムを読み出し、当該プログラムを実行する。制御部310から出力された制御信号に基づいて、アプリケーションプログラムが実行されて、例えば、表示装置410の表示を制御してもよいし、音声出力装置420から音声を出力してもよいし、発光装置430を点灯させてもよい。
【0072】
<変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の一実施形態は、以下のように様々な形態に変形することもできる。また、上述した実施形態および以下に説明する変形例とは、矛盾を生じない限り、それぞれ互いに組み合わせて適用することもできる。さらに、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0073】
(1)上述した実施形態では、カバー部材214として1mm以上100mm以下の厚さの材料を用いる場合について説明したが、カバー部材214の厚さはこれに限定されない。
【0074】
図10は、本発明の一実施形態に係るタッチセンサシステム10Bの断面図である。図10に示すように、センサ基板212とカバー部材214Aとの間にエアギャップ209を設けてもよい。センサ基板212とカバー部材214Aとの間には、接着材としても機能するスペーサ208が設けられる。スペーサ208は、センサ領域218を囲むように設けられている。カバー部材214の厚さとエアギャップ209の厚さとの厚さの合計は、1mm以上100mm以下であればよい。そのため、エアギャップ209の厚さによっては、カバー部材214の厚さは、5mm未満であってもよい。
【0075】
(2)上述した実施形態では、タッチセンサシステム10の制御方法において、高さ条件判定部2313の第1閾値は、カバー部材214の厚さと同じである場合について説明したが、本発明の一実施形態はこれに限定されない。第1閾値は、カバー部材214の厚さよりも大きくてもよい。つまり、カバー部材214と接触していない状態で、タッチ状態を検知してもよい。この場合、カバー部材214の厚さは、100mm未満であることが好ましい。
【0076】
(3)上述した実施形態では、座標演算部2312において、3次元の座標データを用いてばらつきの度合いと、所定の期間におけるばらつきを演算する場合にてついて説明したが、本発明の一実施形態はこれに限定されない。例えば、信号処理部2311において、指のある位置、すなわちセンサ領域において最もSignal値(又は検出信号(Rawdata))が高い位置及びその周囲のSignal値のばらつきの度合いを計算してもよい。
【0077】
(4)タッチセンサシステム10、10Bにおいて、表示モジュール100、センサモジュール200、及びコンピューティングデバイス300の各々は、異なる筐体に備えられていてもよい。この場合、表示モジュール100を含む表示装置及びセンサモジュール200を含むセンサ装置が、コンピューティングデバイス300にUSBによって接続されていてもよい。または、タッチセンサシステム10、10Bにおいて、センサモジュール200は、表示モジュール100とともに、表示装置に組み込まれていてもよい。この場合、表示装置がコンピューティングデバイス300にUSBによって接続されていてもよい。または、タッチセンサシステム10、10Bにおいて、表示モジュール100、センサモジュール200、及びコンピューティングデバイス300の各々は、一つの筐体に備えられていてもよい。また、センサモジュール200を格納する筐体は、いわゆるケーシングであってもよいし、テーブルであってもよい。センサモジュール200は、センサ領域218と入力手段290との距離が離れていてもタッチを検出することができるため、カバー部材214をテーブルの天板として用いることもできる。センサモジュール200は、センサモジュール200は壁に埋め込まれていてもよい。
【0078】
図11は、本発明の一実施形態に係るタッチセンサシステム10Cの断面図である。図1では、表示モジュール100の上に、センサモジュール200が設けられる構成について説明したが、本発明はこれに限定されない。タッチセンサシステム10は、図1に記載されたタッチセンサシステム10と比較して、表示モジュール100が省略された構成であってもよい。すなわち、タッチセンサシステム10は、センサモジュール200及びコンピューティングデバイス300で構成されていてもよい。図11に示すタッチセンサシステム10Cでは、センサモジュール200を介して画像を表示する必要がないため、カバー部材214Aが透光性を有していなくてもよい。カバー部材214Aとして、絶縁性の材料であればよく、例えば、木材などを用いてもよい。また、図2では、センサ電極216は、複数の開口を有するメッシュ状で形成されることについて説明したが、本発明はこれに限定されない。図11では、センサモジュール200を介して画像を表示する必要がないため、センサ電極216の構成は、メッシュ状ではない島状の導電層であってもよい。タッチセンサシステム10Cにおいて、センサモジュール200をテーブルに組み込むことで、カバー部材214をテーブルの天板として用いることや、センサモジュール200を壁に埋め込むことができる。これにより、センサモジュール200をテーブルの天板の裏側や壁の裏側に隠すことができるため、デザインの自由度を向上させることができる。なお、テーブルや壁は一例であって、センサシステム10Cを適用できる家具などには限定はない。この場合、これらテーブルや壁は、センサモジュール200のセンサ領域218に対応する部分についてタッチを促すマーク(例えば照明をオン/オフを促すボタンマーク)等が設けられていても構わない。
【0079】
本発明の実施形態として上述した各実施形態及び各変形例は、相互に矛盾しない限りにおいて、適宜組み合わせて実施することができる。また、各実施形態のセンサシステムを基にして、当業者が適宜構成要素の追加、削除もしくは設計変更を行ったもの、又は、工程の追加、省略もしくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【0080】
上述した各実施形態の態様によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、又は、当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。
【符号の説明】
【0081】
10、10A、10B:タッチセンサシステム、100:表示モジュール、110:表示パネル、112:アレイ基板、114:対向基板、116:画素、118:表示領域、119:半田、120:表示制御部、140:コネクタ、150:ドライバ、200:センサモジュール、208:スペーサ、209:エアギャップ、210:センサパネル、212:センサ基板、213:ノイズシールド層、214:カバー部材、214A:カバー部材、215:接着材、216:センサ電極、217:端子、218:センサ領域、220:検出器、221:信号検出部、222:変換部、230:センサ制御部、231:演算部、232:ROM、233:RAM、234:I/Oインタフェース、240:コネクタ、250:電源回路、270:コネクタ、280:コネクタ、290:入力手段、300:コンピューティングデバイス、310:制御部、320:記憶部、330:通信部、341:接続手段、350:電源部、410:表示装置、420:音声出力装置、430:発光装置、430:発光装置、2311:信号処理部、2312:座標演算部、2313:高さ条件判定部、2314:タッチ状態判定部、2315:ばらつき判定部、2316:終了条件判定部、2317:出力部、2318:タッチ操作処理部
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