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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110880
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】航空機
(51)【国際特許分類】
   B64C 27/26 20060101AFI20240808BHJP
【FI】
B64C27/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023015746
(22)【出願日】2023-02-05
(71)【出願人】
【識別番号】503456854
【氏名又は名称】一般財団法人日本鯨類研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100205589
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 和将
(74)【代理人】
【識別番号】100187838
【弁理士】
【氏名又は名称】黒住 智彦
(72)【発明者】
【氏名】渡部 高臣
(57)【要約】
【課題】固定翼と回転翼の両方を装備する航空機の安定した飛行を確保する。
【解決手段】前後方向に延在する胴体と、一対の固定翼である主翼と、一対の固定翼であり、前記主翼の下方に設置された下翼、および前記下翼に支持された複数の回転翼から成る、下翼回転翼複合体と、を備え、前記回転翼は、前記主翼の下方に設置され、前記主翼と回転翼との高低差が略150ミリメートルであり、前記下翼回転翼複合体は、当該下翼が、連結部材を介して前記主翼と連結されることによって、前記航空機に装備される。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向に延在する胴体と、
一対の固定翼である主翼と、
一対の固定翼であり、前記主翼の下方に設置された下翼、および前記下翼に支持された複数の回転翼から成る、下翼回転翼複合体と、を備え、
前記回転翼は、前記主翼の下方に設置されていることを特徴とする航空機。
【請求項2】
前記主翼と回転翼との高低差が略150ミリメートルであることを特徴とする、請求項1記載の航空機。
【請求項3】
前記下翼回転翼複合体は、当該下翼が、連結部材を介して前記主翼と連結されることによって、前記航空機に装備されている、ことを特徴とする請求項1または2記載の航空機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、固定翼と回転翼との両方を装備する航空機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の航空機の技術に係る固定翼、または回転翼の何れか一方のみを装備する航空機において、固定翼を装備する航空機(以下、固定翼航空機)は、高速飛行が可能で、航続時間が長い、言い換えれば航行距離が長いという利点がある。
【0003】
これに対し、回転翼を装備する航空機(以下、回転翼航空機)は、垂直離着陸が可能であるという利点がある。従って、滑走路が敷ける広大な場所が必要なく、例えばドローンであるならビルの谷間のような極めて狭小な空間でも離着陸することができる。
【0004】
また、従来の航空機にかかる技術として、固定翼と回転翼の両方を装備する航空機(以下、複合型航空機)があり、係る航空機は典型的な形態として、多くが左右固定翼各々の前後に回転翼を配置する構成を採る。複合型航空機は、離着陸時は回転翼を用いてこれを行い、巡航時は主として固定翼を用いることによって、前述した固定翼と回転翼両方の利点を兼ね備えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2014-528382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、当該複合型航空機においては、固定翼の近傍に回転翼が配置される。また、回転翼による飛行を安定させるために、重心が回転翼のよりもできるだけ下方に位置するように設計される結果、固定翼が回転翼より下方に配置されることが多い。このため、回転翼を稼働させて巡航飛行する場合に、回転翼から下向きに発生する気流が、固定翼の上下近傍を水平に流れる気流に干渉し、これを乱れさせることによって飛行が不安定となる。
【0007】
また、回転翼を支持するために機体本体から延出された支柱等の部材が、巡航時に空気抵抗を生み、飛行の効率を下げる、または飛行を不安定にするという弊害を生ずる。
【0008】
また、回転翼を用いた飛行においては、各回転軸の水平面における位置的な中心と機体の重心が水平方向において一致していないと飛行が安定しない。回転翼航空機においては、通常は各回転軸が同一円周上に等間隔に配置されており、係る構造上、前記中心と重心を一致させることは容易であるが、複合型航空機においては、通常、胴体部が前後において非対称に設計されているため、前記中心と重心を一致させることが困難となる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前期課題を解決するために、本発明に係る航空機は、前後方向に延在する胴体と、一対の固定翼である主翼と、一対の固定翼であり、前記主翼の下方に設置された下翼、および前記下翼に支持された複数の回転翼から成る、下翼回転翼複合体と、を備え、前記回転翼は、前記主翼の下方に設置されていることを特徴とする。
【0010】
加えて、前期課題を解決するために、本発明に係る航空機は、前記主翼と回転翼との高低差が略150ミリメートルであることを特徴とすることができる。
【0011】
さらに加えて、前期課題を解決するために、本発明に係る航空機において、前記下翼回転翼複合体は、当該下翼が、連結部材を介して前記主翼と連結されることによって、前記航空機に装備されている、ことを特徴とすることができる。
【発明の効果】
【0012】
回転翼を固定翼の下方に位置させることによって、回転翼から下向きに発生する気流が、固定翼の上下近傍を水平方向に流れる気流に干渉することを回避し、飛行を安定させることができる。
【0013】
但し、回転翼と固定翼が必要以上に離れると、重心が回転翼に対して上方にあることによる影響が大きくなり、却って飛行が不安定となる。そこで、本発明にかかる航空機においては、主翼と回転翼との高低差が略150ミリメートルとすることによって、前記下向きの気流が水平方向に流れる気流に干渉しない効果を最大限に発揮することができる。
【0014】
本発明の特徴として、下翼を装備したことにおいて、回転翼を主翼の下方に配置するために、回転翼を支持する部材として、主翼の下方にフレーム部材等を用いた支柱を配置するのではなく、代わりに固定翼を配置し、その内部に支柱を通して回転翼を支持する構造とした。
【0015】
係る構成によって、支柱が空気抵抗を発生させることを回避することができるばかりか、下翼がある程度の揚力を発生させることができるという2重の効果を生むことできる。
【0016】
前記の下翼と回転翼の一体化構造に加えて、下翼が胴体部から延出する構造ではなく、下翼と胴体部を分離させた上で、下翼と胴体部をフレーム部材等で連結させる構造を採ることで機体の重心を容易に調整することができるようになる。すなわち、当該連結部材の連結角度を変えることだけで下翼・回転翼複合体は航空機本体に対する位置関係をずらすことができる。また、回転翼は航空機本体に対して相当の重量割合を持っているので、位置を少量ずらすだけで十分な重心位置の調整を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係る航空機の平面図である。
図2】本発明の実施形態に係る航空機の背面図である。
図3】本発明の実施形態に係る航空機の側面図である。
図4】本発明の実施形態に係る航空機の斜視図である。
図5】本発明の実施形態に係る航空機の制御系統を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態に係る航空機1の外観を図1乃至図4に示す。航空機1は胴体部2、主翼部3、下翼・回転翼複合体4、回転翼部5、尾翼部6から成る。胴体部2には制御部7、及び電源部8が内蔵される。下翼・回転翼複合体4は、下翼部41、回転翼部42、連結部43、および回転翼支持部44から成る。
【0019】
主翼部3は左右の固定翼である主翼3a、3bから成り、各々フラップ31a、31bを有する。フラップ31a、31bは主翼3a、3bと各々回転可能に連結し、下方に向けて所定角度だけ回転する。フラップ31a、31bの当該動作は制御部7によって制御される。
【0020】
回転翼部5は、胴体部2の尾部に翼の回転面が進行方向と垂直となるように配置され、機体の前後方向に平行な回転軸を有するモーター51と、当該回転軸から放射状に延出する複数の回転翼からなる。モーター51の動作は制御部7によって制御される。
【0021】
回転翼部5は、相当の推進力を得られるものならば他の物(例:ジェットエンジン)で代替されてもよい。また、回転翼部5は必ずしも現位置に配置されていなくてもよい。例えば1または複数対となって、胴体部2の側面、主翼の下部等に配置されてもよい。
【0022】
尾翼部6は平面が水平面の左右方向に対して45度となり、かつ左右対称となるように配置された左右一対の尾翼6a、及び6bから成り、各々フラップ61a、61bを有する。尾翼6a、6bは進行方向に見て山形となるように上部で連結している。尾翼部6は下翼部41から後方に延出する一対の支柱によって機体に連結される。フラップ61a、61bは尾翼6a、6bと各々回転可能に連結し、垂直下向きに対して45度内側を向いた方向に所定角度だけ回転する。フラップ61a、61bの当該動作は制御部7によって制御される。
【0023】
尾翼部6は、胴体部2の尾部に1枚の垂直尾翼と一対の水平尾翼が配置された構造でもよい。この場合、垂直尾翼には機体を左右に操舵するラダーが配置され、水平尾翼には機体を上下に操舵するエレベータが配置される。
【0024】
下翼部41は、1対の固定翼である下翼41a、41bから成る。回転翼部42は下翼部41の前後左右に配置された4機の回転翼部42から成る。各回転翼部42は期待の上下方向に平行な回転軸を有するモーター421と、当該回転軸から放射状に延出する複数の回転翼とから成る。
【0025】
連結部43は、下翼部41を胴体部2の下部に連結する1対のフレーム部材である連結部材43a,43bから成る。連結部43は、胴体部2、および/または下翼部41との接合位置、および/または連結部材43a,43bを構成する支柱の角度を変更することで、胴体部2と下翼・回転翼複合体4との前後の相対的位置関係を容易に調整することができる。
【0026】
回転翼支持部44は各々一対の支柱であるかんざし441a,441b、およびアダプター442a,442bから成る。かんざし441a,441bは下翼部41の内部に配置される。かんざし441a,441bは下翼部41の中心部から略左右方向に延出し、下翼41a、41bの内部を貫通して当該下翼41a、41bの末端部に至る。アダプター442a,442bは機体の前後方向に延在し、各々の側面でかんざし441a,441bの末端部と接合する。アダプター442a,442bは各々の両端部で回転翼部42を支持する。
【0027】
図5は本発明の実施形態に係る航空機1の飛行制御の流れを模式的に示すものである。制御部7は、フライトコントローラー71(以下、FC71)、および電子スピードコントローラー72(以下、ESC72)、並びに各種センサーであるGPS73、ジャイロ74、およびコンパス75から成る。ESC72は動作を制御する個々の部材の数に応じて複数存在する。
【0028】
制御部7は、航空機1の飛行制御を行う。FC71は各種センサー(GPS73、ジャイロ74、およびコンパス75)から機体の位置、姿勢、向き、及びその他の情報を取得し、それに基づいて機体の飛行制御(姿勢維持、操舵、及びスピード調整等)の計算を行う。次に前記計算結果に基いて制御情報を決定し、各ESC72に送る。ESC72は受け取った制御情報に応じて各々が担当するモーターを動作させる。各モーターが回転するとモーターに連結された回転翼、およびフラップが所定の量動作し、機体の飛行が制御される。なお、ESC72は通常、制御するモーターの近傍に配置される。
【0029】
電源部8は、分電装置81、およびバッテリー82から成る。分電装置はFC71からの制御情報に基づいて各種モーターに供給すべき電力を適切に分配する。
【0030】
本実施形態に係る航空機1はの操縦方法としては、通常、無線通信を介した遠隔操作にてこれを行う。この場合、航空機1本体にはカメラを装備し、撮影した動画映像をリアルタイムで操縦端末に送信する。操縦者は、前記送信されてきた映像を確認しながら、航空機1を遠隔操縦する。
【0031】
実施の形態で説明された航空機は一例であり、趣旨を逸脱しない限り、種々
の変形も本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0032】
1 航空機
2 胴体部
3 主翼部
4 下翼・回転翼複合体
41 下翼部
42 回転翼部
43 連結部
44 回転翼支持部
5 回転翼部
6 尾翼部
7 制御部
71 フライトコントローラー
72 電子スピードコントローラー
8 電源部
81 分電装置
82 バッテリー
図1
図2
図3
図4
図5