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  • 特開-堆肥可能なラップフィルム 図1
  • 特開-堆肥可能なラップフィルム 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110889
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】堆肥可能なラップフィルム
(51)【国際特許分類】
   B65D 65/02 20060101AFI20240808BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20240808BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20240808BHJP
   C08K 5/101 20060101ALI20240808BHJP
   C08L 67/02 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
B65D65/02 E BRQ
B32B27/36 ZBP
B32B27/18 Z
C08K5/101
C08L67/02
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023067030
(22)【出願日】2023-04-17
(31)【優先権主張番号】112103795
(32)【優先日】2023-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】501296612
【氏名又は名称】南亞塑膠工業股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】NAN YA PLASTICS CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】廖徳超
(72)【発明者】
【氏名】馬登科
(72)【発明者】
【氏名】袁敬堯
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
4J002
【Fターム(参考)】
3E086AB01
3E086AB02
3E086AC22
3E086AD13
3E086BA02
3E086BA04
3E086BA15
3E086BB22
3E086BB59
3E086BB85
3E086CA01
3E086DA03
3E086DA08
4F100AH02C
4F100AH03A
4F100AH03B
4F100AK09A
4F100AK09B
4F100AK41A
4F100AK41B
4F100AK41C
4F100BA03
4F100BA06
4F100DD31A
4F100DD31B
4F100EH17A
4F100EH17B
4F100EH17C
4F100EJ94
4F100GB15
4F100JA07A
4F100JA07B
4F100JA07C
4F100JC00
4F100JK02
4F100JK03
4F100JK08
4F100JN01
4J002CF031
4J002CF032
4J002EH076
4J002FD206
4J002GF00
4J002GG02
(57)【要約】
【課題】良好な機能特性と良好なコンポスト化効果を有する堆肥可能なラップフィルムを提供する。
【解決手段】本発明は、総重量が100重量%である堆肥可能なラップフィルムには、90重量%以上のポリブチレンアジペートを含み、堆肥可能なラップフィルムの断面構造において、内層領域と表層領域とを備え、表層領域が内層領域を完全に包んでいる。添加される化合物として、内層領域ではオレイン酸エステル化合物、表層領域ではエーテル化合物を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
総重量が100wt%として、90wt%以上のポリブチレンアジペートテレフタレートを含み、断面において、内層領域と、前記内層領域を完全に包んでいる表層領域があり、前記内層領域にはオレイン酸エステル化合物が添加され、前記表層領域にはエーテル化合物が添加される、
ことを特徴とする、堆肥可能なラップフィルム。
【請求項2】
前記オレイン酸エステル化合物は、分子量が350g/モル~450g/モルである、請求項1に記載の堆肥可能なラップフィルム。
【請求項3】
前記エーテル化合物は、150g/モル~250g/モルの分子量を有する、請求項1に記載の堆肥可能なラップフィルム。
【請求項4】
前記オレイン酸エステル化合物の含有量が、前記堆肥可能なラップフィルムの総重量100wt%を基準として、0.3wt%~1.5wt%である、請求項1に記載の堆肥可能なラップフィルム。
【請求項5】
前記エーテル化合物の含有量は、前記堆肥可能なラップフィルムの総重量100wt%を基準として、0.3wt%~1.5wt%である、請求項1に記載の堆肥可能なラップフィルム。
【請求項6】
前記堆肥可能なラップフィルムの総重量を100wt%として、3wt%~7wt%のポリブチレンサクシネートをさらに含有する、請求項1に記載の堆肥可能なラップフィルム。
【請求項7】
前記内層領域は、前記堆肥可能なラップフィルムの全厚みを100%として、60%以上90%以下を占める、請求項1に記載の堆肥可能なラップフィルム。
【請求項8】
前記表層領域が、200g/モル~500g/モルの分子量を有するアミド化合物でさらに追加する、請求項1に記載の堆肥可能なラップフィルム。
【請求項9】
前記アミド化合物が、前記堆肥可能なラップフィルムの総重量に対して0.1wt%~0.3wt%の量で添加されている、請求項8に記載の堆肥可能なラップフィルム。
【請求項10】
前記表層領域は、200g/モル~10,000g/モルの分子量を有するポリイソブチレンをさらに追加する、請求項1に記載の堆肥可能なラップフィルム。
【請求項11】
前記ポリイソブチレンが、前記堆肥可能なラップフィルムの総重量100wt%を基準として0.5wt%~1.5wt%の範囲の量で添加される、請求項10に記載の堆肥可能なラップフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラップフィルムに関し、特に堆肥可能なラップフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ラップフィルムは、料理の鮮度を保ち、冷蔵庫に入れた後に他の臭いが混じるのを防ぐために、よく使われる食品包装アイテムである。しかし、このフィルムは使い捨ての包装材であり、使用後は廃棄する必要がある。長い目で見れば、廃棄されるラップフィルムは環境に負荷を与えることになる。
【0003】
また、現在市販されているラップフィルムの多くは、石油化学系のプラスチック(PVCやポリエチレンなど)を原料としており、自然環境ではほとんど分解されないため、環境に配慮したラップフィルムの使用が望まれている。
【0004】
ラップフィルムが分解されにくいことに鑑み、使い捨てプラスチックによる環境汚染を解決するために、プラスチックの自然分解を促進させる研究が進められている。
【0005】
一部のラップフィルムは、酸化分解添加剤を使用して製造され、酸化分解性があることを謳っている。しかし、フィルムが分解してプラスチック片になることはあっても、プラスチック片自体が環境中で分解されず、重金属を含み、より深刻な環境破壊を引き起こすことが欧州連合で証明されている。そのため、酸化分解添加剤の使用は禁止されている。
【0006】
そのため、素材改良によるラップフィルムの生分解性向上は、本事業の最重要課題の一つとなっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする技術的課題は、既存技術の欠点を解消した堆肥化可能なラップフィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記技術的課題を解決するために、本発明で採用される技術的解決策の一つは、堆肥化可能なラップフィルムを提供することである。この堆肥可能なラップフィルムは、総重量が100wt%として、堆肥可能なラップフィルムを形成する材料は、90wt%以上のポリブチレンアジペートテレフタレートを含み、堆肥可能なラップフィルムの断面において、内層領域と表層領域があり、表層領域は内層領域を完全に包んでいる。内層領域にはオレイン酸エステル化合物が添加され、あるいは表層領域にはエーテル化合物が添加される。
【0009】
いくつかの実施形態において、オレイン酸エステル化合物の分子量は、350g/モルから450g/モルの範囲である。
【0010】
いくつかの実施形態において、エーテル化合物の分子量は、150g/mol~250g/molである。
【0011】
いくつかの実施形態において、総重量が100wt%の堆肥可能なラップフィルムでは、0.3wt%~1.5wt%のオレイン酸エステル化合物を有する。
【0012】
いくつかの実施形態では、総重量が100wt%の堆肥可能なラップフィルムでは、0.3wt%から1.5wt%のエーテル化合物を有する。
【0013】
いくつかの実施形態では、堆肥可能なラップフィルムを形成する材料は、堆肥可能なラップフィルムの総重量100wt%において、3wt%から7wt%のポリブチレンサクシネートをさらに含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、堆肥可能なラップフィルムの全厚みを100%とすると、内層領域は堆肥可能なラップフィルムの全厚みの60%から90%を占める。
【0015】
いくつかの実施形態において、表層領域は、200g/モル~500g/モルの分子量を有するアミド化合物でさらに添加される。
【0016】
いくつかの実施形態では、堆肥可能なラップフィルムの総重量100wt%において、0.1wt%~0.3wt%のアミド化合物をさらに含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、200g/モル~10,000g/モルの分子量を有するポリイソブチレンが、表層領域にさらに加えられる。
【0018】
いくつかの実施形態において、ポリイソブチレンの添加量は、100wt%の堆肥可能なラップフィルムの総重量に対して、0.5wt%~1.5wt%である。
【発明の効果】
【0019】
本発明の有益な効果の一つは、「ポリブチレンアジペートテレフタレートを90wt%以上含む材料で堆肥可能なラップフィルムを形成し」、「内層領域にオレイン酸エステル化合物を、または表層領域にエーテル化合物を添加する」という技術的解決策によって、良好な機能特性とコンポスト効果を有する堆肥可能なラップフィルムを提供することである。この堆肥可能なラップフィルムは、「内層領域にオレイン酸エステル化合物、または表層領域にエーテル化合物を添加する」という技術的解決により、良好な機能特性と良好なコンポスト化効果を有している。
【0020】
発明の特徴及び技術内容がより一層分かるように、以下本発明に関する詳細な説明と添付図面を参照する。しかし、提供される添付図面は参考と説明のために提供するものに過ぎず、本発明の特許請求の範囲を制限するためのものではない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】堆肥可能なラップフィルムの発明を示す透視模式図である。
図2図1のII-II断面に沿った断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
下記より、本願による「堆肥化可能なラップフィルム」にかかる具体的な実施例で本発明が開示する実施形態を説明する。当業者は本明細書の公開内容により本発明のメリット及び効果を理解し得る。本発明は他の異なる実施形態により実行又は応用できる。本明細書における各細節も様々な観点又は応用に基づいて、本発明の精神を逸脱しない限りに、均等の変形と変更を行うことができる。また、本発明の図面は簡単で模式的に説明するためのものであり、実際的な寸法を示すものではない。以下の実施形態において、さらに本発明に係る技術事項を説明するが、公開された内容は本発明を限定するものではない。また、本明細書に用いられる「又は」という用語は、実際の状況に応じて、関連する項目中の何れか一つ又は複数の組合せを含み得る。
【0023】
本発明は、既存のラップフィルムの分解性が悪く、環境に負荷を与えるという問題を克服するために、堆肥化可能なラップフィルムを提供する。EN13432/ASTMD6400試験法によると、このフィルムは堆肥化後180日以内に完全に分解することができる。また、本フィルムには金属添加物が含まれていないため、分解後の環境に対する二次汚染の心配もない。
【0024】
本発明の堆肥可能なラップフィルムは、堆肥可能なラップフィルムに良好なコンポスト効果を付与するために、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)を主材として形成されている。堆肥可能なラップフィルムの総重量は100wt%として、ポリブチレンアジペートテレフタレートの含有量は90wt%以上である。例えば:91wt%、92wt%、93wt%、94wt%、95wt%、96wt%又は97wt%である。
【0025】
堆肥可能なラップフィルムを形成するための材料は、ポリブチレンアジペートテレフタレートに加えて、ポリブチレンサクシネート(PBS)をさらに含むことができる。ポリブチレンサクシネートを加えることにより、フィルムにある程度の硬さが得られるが、ポリブチレンサクシネートを多く加えすぎると、原料コストが高くなり過ぎる。堆肥可能なラップフィルムの総重量を100wt%として、ポリブチレンサクシネートの含有量は3wt%~7wt%、例えば4wt%、5wt%、6wt%の範囲である。
【0026】
用途に応じて、良好な透明性、防曇性、包装特性(以下、機能性)を付与するために、一般的に機能性添加剤がラップフィルムに添加されることが多い。
【0027】
そこで、本発明では、フィルムの堆肥化効果と機能特性を両立させるために、特定の化合物を選択し、フィルムの特定の部位に添加する。このようにして、本発明の堆肥可能なラップフィルムは、フィルムの機能特性を保持したまま、より堆肥可能なものとなる。
【0028】
図1及び図2を併せて参照すると、本発明の堆肥可能なラップフィルムZは、断面形状が内層領域1及び表層領域2を有し、表層領域2が内層領域1を完全に包んでいる。
【0029】
内層領域1と表層領域2の形成に使用される材料は、大抵同じであり、どちらもポリブチレンアジペートテレフタレートを主材料とし、任意でポリブチレンサクシネートを追加したものであることに注目されたい。内層領域1と表層領域2の違いは、異なる特定の化合物を添加することにある。
【0030】
このように、製品の外観上は内層領域1と表層領域2が一体化しているが、実際に製品の組成を分析すると、堆肥可能なラップフィルムZを内層領域1と表層領域2に区別することが可能であることがわかる。
【0031】
例示的な実施形態では、堆肥化可能なフィルムZの厚さは、5ミクロンから20ミクロンの間、例えば、7ミクロン、9ミクロン、11ミクロン、13ミクロン、15ミクロン、17ミクロン又は19ミクロンである。堆肥可能なラップフィルムZの全厚みを100%とすると、内層領域1は、堆肥可能なラップフィルムZの全厚みの60%~90%を占めている。例えば、内層領域1は、堆肥可能なラップフィルムZの全厚みの70%又は80%を占める。
【0032】
本発明では、内層領域1にオレイン酸エステル化合物、表層領域2にエーテル化合物、どちらかを任意に添加することができるか、あるいは内層領域1にオレイン酸エステル化合物、表層領域2にエーテル化合物、どちらも添加することもできる。これにより、良好な機能性を有し、コンポスト効果を有する堆肥可能なラップフィルムZを得ることができる。
【0033】
オレイン酸エステル化合物およびエーテル化合物は、ポリブチレンアジペートテレフタレートと完全には相溶しないため、オレイン酸エステル化合物およびエーテル化合物は、時間の経過と共に堆肥可能なラップフィルムZの表面にゆっくりと移行し、そこで効果を発揮しない。オレイン酸およびエーテル化合物が堆肥可能なラップフィルムZに確実に存在するように、オレイン酸およびエーテル化合物の分子量を別々に制御して、移動速度を遅くすることができる。
【0034】
具体的には、オレイン酸エステル化合物の分子量は、エーテル化合物の分子量よりも大きい。オレイン酸エステル化合物の分子量は350g/モル~450g/モルであってよく、例えば、オレイン酸エステル化合物は375g/モル、400g/モルまたは425g/モルの分子量を有することができる。エーテル化合物の分子量は、150g/モル~250g/モルであってもよく、例えば、エーテル化合物の分子量は、175g/モル、200g/モルまたは225g/モルであってもよい。
【0035】
オレイン酸エステル化合物およびエーテル化合物の異なる領域における分布は、オレイン酸エステル化合物およびエーテル化合物が堆肥可能なラップフィルムZに存在する時間にも影響する。オレイン酸エステル化合物は内層領域1に存在するため、表層領域2に存在するエーテル化合物よりも長い時間堆肥可能なラップフィルムZに存在することができる。このように、オレイン酸塩が内層領域1に存在し、エーテルが表層領域2に存在すると、堆肥可能なラップフィルムZは、より長い期間、良好な機能特性を有するようになる。
【0036】
いくつかの実施形態において、堆肥可能なラップフィルムは、100wt%の総重量として、0.3wt%~1.5wt%のオレイン酸エステル化合物を有する。
【0037】
他の実施形態では、堆肥可能なラップフィルムの総重量は100wt%として、エーテル化合物は0.3wt%から1.5wt%の間である。
【0038】
さらに、本発明では、より親水性の高いオレイン酸エステルやエーテルを使用する。このようにして、堆肥可能なラップフィルムは、フィルム表面を覆う水がない状態、またはフィルム表面を部分的に覆う小さな水滴のみがある状態で低温で冷蔵することができ、フィルム表面に大きな面積の水滴が付着することはないはずである。例示的な一実施形態では、オレイン酸エステル化合物はソルビタンモノオレエート(sorbitan monooleate)であってもよく、エーテル化合物はポリオキシエチレンエーテル(polyoxyethylene ether)であってもよい。
【0039】
例示的な適用では、堆肥可能なラップフィルムZの機能特性を高めるために、さらなるアミド、ステアリン酸カルシウム、有機シリコーン化合物またはそれらの混合物を、任意に表層領域2に添加することができる。
【0040】
表層領域2にアミド、ステアリン酸カルシウム、有機シリコーン化合物またはそれらの混合物を添加することにより、得られる堆肥可能なラップフィルムZを容易に分離して容易に巻き取ることができる。分離のしやすさは堆肥可能なラップフィルムZの表面特性であるため、表層領域2にアミド、ステアリン酸カルシウム、有機シリコーン化合物またはそれらの混合物を添加するだけで、堆肥可能なラップフィルムZを容易に分離できるようにすることができる。このように、特定の成分のみをフィルムの特定の領域に添加するという技術的手段により、アミド、ステアリン酸カルシウム、有機シリコーン化合物またはそれらの混合物の使用量を低減させることができる。
【0041】
好ましい実施形態では、表層領域2には、オレイン酸アミド、エルカ酸アミドなどのアミド化合物が添加される。ステアリン酸カルシウムや有機ケイ素化合物と比較して、アミドは親水性が高く、細菌の分解速度を加速させるため、コンポストの分解を促進する。堆肥化可能なラップフィルムの総重量100wt%に対して、アミド化合物の含有量は0.1wt%~0.3wt%、例えば0.15wt%、0.20wt%または0.25wt%の範囲である。
【0042】
例示的な実施形態では、アミド化合物の分子量は、200g/モルから500g/モルの間である。例えば、アミド化合物の分子量は、250g/モル、300g/モル、350g/モル、400g/モルまたは450g/モルである。
【0043】
例示的な実施形態では、堆肥可能なラップフィルムZの機能特性を高めるために、ポリイソブチレンを表層領域2にさらに添加することができる。堆肥可能なラップフィルムの総重量100wt%のうち、ポリイソブチレン含有量は、0.5wt%~1.5wt%、例えば、0.75wt%、1.0wt%又は1.25wt%である。
【0044】
表層領域2にポリイソブチレンを添加することにより、得られる堆肥可能なラップフィルムZが粘性を有し、食品の包装または密封を容易にすることができる。包装のしやすさは堆肥可能なラップフィルムZの表面的な特性であるため、表層領域2へのポリイソブチレンの添加は、堆肥可能なラップフィルムZに包装のしやすさを付与するために必要なことである。このように、フィルムの特定の領域に特定の成分のみを添加するという技術的手段は、ポリイソブチレンの使用量を減らすという効果を有する。
【0045】
例示的な実施形態において、ポリイソブチレンは、200g/モル~10000g/モルの分子量を有する。例えば、ポリイソブチレンは、500g/モル、1000g/モル、1500g/モル、2000g/モル、3000g/モル、4000g/モル、5000g/モル、6000g/モル、7000g/モル、8000g/モル又は9000g/モルの分子量を有している。
【0046】
本発明は、フィルムをブローして作る一体型堆肥可能なラップフィルムである。まず、特定量のプラスチックペレット(PBAT、PBS)を重量供給機(lost in weight feeder)で秤量し、ミキサーで溶融して混合する。本発明では、内層領域1と表層領域2に異なる化合物を添加するため、内層材配合と表層材配合を別々に配合することになる。
【0047】
その後、幅に応じて押出機の回転数を制御し、冷却空気の風量や温度を調整することで、フィルムを上方に吹き上げる。ブローとカットの後、フィルムはクランプホイールで固定され、ホイールの速度を制御してフィルムを引き込み、ロールのテンションを制御してフィルムを前後に巻き取る。
【0048】
内層領域と表層領域の配合をそれぞれ用いて内層膜と表層膜を形成した後、内層領域と表層領域が同じ素材であるため、内層膜を2つの表層膜の間に封入することにより、内層領域と表層領域を一体化するように共圧着して堆肥化可能フィルムZを製造する。かつ、内層膜が2つの表層膜の間に封入される、内層膜が内層領域1を形成し、2つの表層膜が組み合わされて表層領域2を形成する。
【0049】
本発明の堆肥可能なラップフィルムZが機能性と堆肥可能な性を両立できることを証明するために、表1の配合に従い、上記のブロー工程およびコプレス工程を順次経て、実施例1~3の堆肥可能なラップフィルムZおよび比較例1、2のラップフィルムを製造した。
【0050】
次に、実施例1~3の堆肥可能なラップフィルムZ及び比較例1、2のラップフィルムの物性を測定し、その結果を表2に示す。なお、表2の物性は、GB/T 10457-2021の規格に従って試験した。また、防曇性の評価基準において、「優良」とは、防曇効果が優れており、内容物を明確に観察できることを意味し、「良好」とは、防曇効果が良好であるが、若干の曇りがあることを意味し、「不良」とは、防曇効果が悪く、曇りが濃く、内容物を明確に見ることができないことを示している。
【0051】
【表1】
【0052】
【表2】
【0053】
表1および表2の結果から、本発明の堆肥可能なラップフィルムは、高い光透過率と低ヘイズ特性を有し、用途に必要な引張強度、伸度、直角引裂強度、自己粘着性、巻き戻し性、防曇性を有することが判る。このように、本発明の堆肥可能なラップフィルムは、市販のフィルムと同等の機能を有している。
【0054】
これに対し、比較例1のラップフィルムは、オレイン酸エステル化合物及びエーテル化合物が添加されておらず、防曇性に劣る。比較例2のラップフィルムは、ポリイソブチレンが添加されておらず、自己粘着性が低く、具材や容器をうまく包むことができない。
【0055】
実施例2の堆肥可能なラップフィルムは、EN13432/ASTM D6400に従って分解試験を行った結果、180日以内に分解できることがわかり、欧州ではDIN CERTCO、米国ではBPIの認証を取得した。
【0056】
[実施形態による有益の効果]
本発明の有益な効果の一つは、「ポリブチレンアジペートテレフタレートを90wt%以上含む材料で堆肥可能なラップフィルムを形成し」、「内層領域にオレイン酸エステル化合物を、または表層領域にエーテル化合物を添加する」という技術的解決策によって、良好な機能特性とコンポスト効果を有する堆肥可能なラップフィルムを提供することである。この堆肥可能なラップフィルムは、「内層領域にオレイン酸エステル化合物、または表層領域にエーテル化合物を添加する」という技術的解決により、良好な機能特性と良好なコンポスト化効果を有している。
【0057】
さらに、特定の化合物を選択し、それをラップフィルムの特定の領域に添加するという技術的手段は、堆肥可能なラップフィルムの機能特性を拡張するだけでなく、原料のコストを削減することができる。
【0058】
上記の開示は、本発明の好ましい実施形態および実現可能な実施形態の例に過ぎず、本発明の特許出願の範囲を限定することを意図するものではない。したがって、本発明の明細書および図面の内容を用いたすべての同等の技術的変形は、本発明の特許出願の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0059】
1: 内層領域
2: 表層領域
Z: 堆肥可能なラップフィルム
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2024-03-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
総重量が100wt%として、90wt%以上のポリブチレンアジペートテレフタレートを含み、断面において、内層領域と、前記内層領域を完全に包んでいる表層領域があり、前記表層領域には、200g/モル~10,000g/モルの分子量を有するポリイソブチレンが添加され、
前記内層領域にはオレイン酸エステル化合物が添加されること及び/又は、前記表層領域にはエーテル化合物が更に添加される、
ことを特徴とする、堆肥可能なラップフィルム。
【請求項2】
前記オレイン酸エステル化合物は、分子量が350g/モル~450g/モルである、請求項1に記載の堆肥可能なラップフィルム。
【請求項3】
前記エーテル化合物は、150g/モル~250g/モルの分子量を有する、請求項1に記載の堆肥可能なラップフィルム。
【請求項4】
前記オレイン酸エステル化合物の含有量が、前記堆肥可能なラップフィルムの総重量100wt%を基準として、0.3wt%~1.5wt%である、請求項1に記載の堆肥可能なラップフィルム。
【請求項5】
前記エーテル化合物の含有量は、前記堆肥可能なラップフィルムの総重量100wt%を基準として、0.3wt%~1.5wt%である、請求項1に記載の堆肥可能なラップフィルム。
【請求項6】
前記堆肥可能なラップフィルムの総重量を100wt%として、3wt%~7wt%のポリブチレンサクシネートをさらに含有する、請求項1に記載の堆肥可能なラップフィルム。
【請求項7】
前記内層領域は、前記堆肥可能なラップフィルムの全厚みを100%として、60%以上90%以下を占める、請求項1に記載の堆肥可能なラップフィルム。
【請求項8】
前記表層領域が、200g/モル~500g/モルの分子量を有するアミド化合物でさらに追加する、請求項1に記載の堆肥可能なラップフィルム。
【請求項9】
前記アミド化合物が、前記堆肥可能なラップフィルムの総重量に対して0.1wt%~0.3wt%の量で添加されている、請求項8に記載の堆肥可能なラップフィルム。
【請求項10】
前記ポリイソブチレンが、前記堆肥可能なラップフィルムの総重量100wt%を基準として0.5wt%~1.5wt%の範囲の量で添加される、請求項に記載の堆肥可能なラップフィルム。