(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110899
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】射出成形グレードPVCチューブ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 27/06 20060101AFI20240808BHJP
C08L 51/06 20060101ALI20240808BHJP
C08L 25/12 20060101ALI20240808BHJP
C08K 5/57 20060101ALI20240808BHJP
B29C 45/00 20060101ALI20240808BHJP
F16L 9/127 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
C08L27/06
C08L51/06
C08L25/12
C08K5/57
B29C45/00
F16L9/127
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082498
(22)【出願日】2023-05-18
(31)【優先権主張番号】112103763
(32)【優先日】2023-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】501296612
【氏名又は名称】南亞塑膠工業股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】NAN YA PLASTICS CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】廖徳超
(72)【発明者】
【氏名】許漢卿
(72)【発明者】
【氏名】陳春来
(72)【発明者】
【氏名】呉文義
【テーマコード(参考)】
3H111
4F206
4J002
【Fターム(参考)】
3H111AA01
3H111BA15
3H111CB02
3H111CB14
3H111CB29
3H111DA11
3H111DA26
3H111EA05
4F206AA15
4F206AB06
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4F206JN03
4J002BB254
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4J002BD041
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4J002BN163
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4J002DE238
4J002EJ067
4J002EZ046
4J002FD010
4J002FD018
4J002FD033
4J002FD066
4J002FD077
4J002FD174
4J002FD312
4J002GL00
4J002HA09
(57)【要約】
【課題】本発明は、射出成形グレードPVCチューブ及びその製造方法を提供する。
【解決手段】前記射出成形グレードPVCチューブは、PVC樹脂100重量部と、熱安定剤2重量部~8重量部と、第1の添加剤1重量部~20重量部と、第2の添加剤0.7重量部~15重量部とを含む。前記第1の添加剤は、加工改質剤及び耐熱剤を含み、前記加工改質剤と前記耐熱剤との重量比(前記加工改質剤:前記耐熱剤)は、1:6.67~1:10である。前記第2の添加剤は、滑剤、酸化防止剤又は充填剤を少なくとも含む。前記PVC樹脂、前記熱安定剤、前記第1の添加剤及び前記第2の添加剤はいずれも粉状を呈する。前記射出成形グレードPVCチューブは、前記PVC樹脂、前記熱安定剤、前記第1の添加剤及び前記第2の添加剤をホットメルト押し出した後、直接に射出成形によって形成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合度が600~1000のPVC樹脂100重量部と、熱安定剤2重量部~8重量部と、第1の添加剤1重量部~20重量部と、第2の添加剤0.7重量部~15重量部とを含む射出成形グレードPVCチューブであって、
前記熱安定剤は、有機スズ、カルシウム亜鉛安定剤、ヒドロタルサイト安定剤、及び希土類安定剤からなる群の少なくとも1つから選択され、
前記第1の添加剤は、塩化ビニルグラフト共重合体である加工改質剤と、α-メチルスチレンアクリロニトリル共重合体である耐熱剤とを含み、前記加工改質剤と前記耐熱剤との重量比(前記加工改質剤:前記耐熱剤)は、1:6.67~1:10であり、
前記第2の添加剤は、滑剤、酸化防止剤又は充填剤を少なくとも含み、
前記PVC樹脂、前記熱安定剤、前記第1の添加剤及び前記第2の添加剤はいずれも粉状を呈し、
前記射出成形グレードPVCチューブは、前記PVC樹脂、前記熱安定剤、前記第1の添加剤及び前記第2の添加剤をホットメルト押し出した後、直接に射出成形によって形成されることを特徴とする、射出成形グレードPVCチューブ。
【請求項2】
前記塩化ビニルグラフト共重合体は、塩化ビニル、第1のグラフト官能基及び第2のグラフト官能基を含み、
前記第1のグラフト官能基は、エチレン及び塩化ビニリデンであり、前記第2のグラフト官能基は、酢酸ビニル及び第三級炭酸ビニルである、請求項1に記載の射出成形グレードPVCチューブ。
【請求項3】
前記塩化ビニルグラフト共重合体の総重量を100wt%として、前記塩化ビニルの含有量は65wt%~85wt%であり、前記第1のグラフト官能基の含有量は10wt%~15wt%であり、前記第2のグラフト官能基の含有量は5wt%~15wt%である、請求項2に記載の射出成形グレードPVCチューブ。
【請求項4】
前記第1の添加剤の粒子径は30μm~120μmであり、前記第1の添加剤において、前記加工改質剤の含有量は0.5重量部~5重量部であり、前記耐熱剤の含有量は0.5重量部~15重量部である、請求項1に記載の射出成形グレードPVCチューブ。
【請求項5】
前記第2の添加剤の粒子径は0.1μm~100μmであり、前記第2の添加剤において、前記滑剤の含有量は0.5重量部~3重量部であり、前記酸化防止剤の含有量は0.1重量部~2重量部であり、前記充填剤の含有量は0.1重量部~3重量部である、請求項1に記載の射出成形グレードPVCチューブ。
【請求項6】
前記滑剤は、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、脂肪酸系滑剤、金属石鹸系滑剤、シリコーン系滑剤からなる群の少なくとも1つから選択される、請求項1に記載の射出成形グレードPVCチューブ。
【請求項7】
前記酸化防止剤は、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、亜リン酸エステル系酸化防止剤からなる群の少なくとも1つから選択される、請求項1に記載の射出成形グレードPVCチューブ。
【請求項8】
50.6MPa~51.4MPaの引張強度、30.4J/m~31.3J/mの耐衝撃強さ、及び85.8℃~90.6℃のビカット軟化温度を有する、請求項1に記載の射出成形グレードPVCチューブ。
【請求項9】
重合度が600~1000のPVC樹脂100重量部、熱安定剤2重量部~8重量部、第1の添加剤1重量部~20重量部、及び第2の添加剤0.7重量部~15重量部を提供する、準備工程と、
100℃~120℃の温度で前記PVC樹脂、前記熱安定剤、前記第1の添加剤及び前記第2の添加剤を添加した後に、35℃~50℃に冷却する過程において続いて混合して、混合PVC樹脂材料を得る、混合工程と、
170℃~200℃の温度で射出成形機を用いて前記混合PVC樹脂材料をホットメルトした後に、射出成形して射出成形グレードPVCチューブを得る、射出成形工程と、を含む射出成形グレードPVCチューブの製造方法であって、
前記熱安定剤は、有機スズ、カルシウム亜鉛安定剤、ヒドロタルサイト安定剤、希土類安定剤からなる群の少なくとも1つから選択され、
前記第1の添加剤は、塩化ビニルグラフト共重合体である加工改質剤と、α-メチルスチレンアクリロニトリル共重合体である耐熱剤とを含み、
前記加工改質剤と前記耐熱剤との重量比(前記加工改質剤:前記耐熱剤)は、1:6.67~1:10であり、
前記第2の添加剤は、滑剤、酸化防止剤又は充填剤を少なくとも含み、
前記PVC樹脂、前記熱安定剤、前記第1の添加剤及び前記第2の添加剤はいずれも粉状を呈することを特徴とする、射出成形グレードPVCチューブの製造方法。
【請求項10】
前記塩化ビニルグラフト共重合体は、塩化ビニル、第1のグラフト官能基及び第2のグラフト官能基を含み、前記第1のグラフト官能基は、エチレン及び塩化ビニリデンであり、前記第2のグラフト官能基は、酢酸ビニル及び第三級炭酸ビニルである、請求項9に記載の射出成形グレードPVCチューブの製造方法。
【請求項11】
前記塩化ビニルグラフト共重合体の総重量を100wt%として、前記塩化ビニルの含有量は65wt%~85wt%であり、前記第1のグラフト官能基の含有量は10wt%~15wt%であり、前記第2のグラフト官能基の含有量は5wt%~15wt%である、請求項10に記載の射出成形グレードPVCチューブの製造方法。
【請求項12】
前記第1の添加剤の粒子径は30μm~120μmであり、前記第1の添加剤において、前記加工改質剤の含有量は0.5重量部~5重量部であり、前記耐熱剤の含有量は0.5重量部~15重量部である、請求項9に記載の射出成形グレードPVCチューブの製造方法。
【請求項13】
前記第2の添加剤の粒子径は0.1μm~100μmであり、前記第2の添加剤において、前記滑剤の含有量は0.5重量部~3重量部であり、前記酸化防止剤の含有量は0.1重量部~2重量部であり、前記充填剤の含有量は0.1重量部~3重量部であり、
前記滑剤は、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、脂肪酸系滑剤、金属石鹸系滑剤、シリコーン系滑剤からなる群の少なくとも1つから選択され、
前記酸化防止剤は、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、亜リン酸エステル系酸化防止剤からなる群の少なくとも1つから選択される、請求項9に記載の射出成形グレードPVCチューブの製造方法。
【請求項14】
前記射出成形グレードPVCチューブは、50.6MPa~51.4MPaの引張強度、30.4J/m~31.3J/mの耐衝撃強さ、及び85.8℃~90.6℃のビカット軟化温度を有する、請求項9に記載の射出成形グレードPVCチューブの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PVCチューブ及びその製造方法に関し、特に、射出成形グレードPVCチューブ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
PVC樹脂(ポリ塩化ビニル樹脂)で主に構成された従来の射出成形グレードチューブは、耐熱性が不足する問題を有するため、高温環境に応用することができない。
【0003】
CPVC樹脂(塩素化塩ビ樹脂)で主に構成された従来の射出成形グレードチューブは優れた耐熱性を有する。しかしながら、CPVC樹脂の分子間の作用力が大きく塩素の含有量が高いため、CPVC樹脂で構成された従来の射出成形グレードチューブの溶融体粘度が高すぎ、流動性が劣り、加工が困難であると共に、分解しやすくなる。また、CPVC樹脂で主に構成された従来の射出成形グレードチューブに要求された高加工トルクによって、一般のPVC成形装置を採用することができないため、生産の困難さに繋がる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする技術の課題は、従来技術の不足に対し、従来の射出成形グレードPVCチューブの耐熱性が劣り、かつ加工の困難を改良する、射出成形グレードPVCチューブ及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の技術的課題を解決するために、本発明が採用する一つの技術的手段は、射出成形グレードPVCチューブを提供する。射出成形グレードPVCチューブは、重合度が600~1000のPVC樹脂100重量部と、熱安定剤2重量部~8重量部と、第1の添加剤1重量部~20重量部と、第2の添加剤0.7重量部~15重量部とを含み、前記熱安定剤は、有機スズ、カルシウム亜鉛安定剤、ヒドロタルサイト安定剤、希土類安定剤からなる群の少なくとも1つから選択され、前記第1の添加剤は、塩化ビニルグラフト共重合体である加工改質剤と、α-メチルスチレンアクリロニトリル共重合体である耐熱剤とを含み、前記加工改質剤と前記耐熱剤との重量比(前記加工改質剤:前記耐熱剤)は、1:6.67~1:10であり、前記第2の添加剤は、滑剤、酸化防止剤又は充填剤を少なくとも含み、前記PVC樹脂、前記熱安定剤、前記第1の添加剤及び前記第2の添加剤はいずれも粉状を呈し、前記射出成形グレードPVCチューブは、前記PVC樹脂、前記熱安定剤、前記第1の添加剤及び前記第2の添加剤をホットメルト押し出した後、直接に射出成形によって形成される。
【0006】
好ましくは、前記塩化ビニルグラフト共重合体は、塩化ビニル、第1のグラフト官能基及び第2のグラフト官能基を含み、前記第1のグラフト官能基は、エチレン及び塩化ビニリデンであり、前記第2のグラフト官能基は、酢酸ビニル及び第三級炭酸ビニル(vinyl tertiary carbonate)である。
【0007】
好ましくは、前記塩化ビニルグラフト共重合体の総重量を100wt%として、前記塩化ビニルの含有量は65wt%~85wt%であり、前記第1のグラフト官能基の含有量は10wt%~15wt%であり、前記第2のグラフト官能基の含有量は5wt%~15wt%である。
【0008】
好ましくは、前記第1の添加剤の粒子径は30μm~120μmであり、前記第1の添加剤において、前記加工改質剤の含有量は0.5重量部~5重量部であり、前記耐熱剤の含有量は0.5重量部~15重量部である。
【0009】
好ましくは、前記第2の添加剤の粒子径は0.1μm~100μmであり、前記第2の添加剤において、前記滑剤の含有量は0.5重量部~3重量部であり、前記酸化防止剤の含有量は0.1重量部~2重量部であり、前記充填剤の含有量は0.1重量部~3重量部である。
【0010】
好ましくは、前記滑剤は、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、脂肪酸系滑剤、金属石鹸系滑剤、シリコーン系滑剤からなる群の少なくとも1つから選択される。
【0011】
好ましくは、前記酸化防止剤は、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、亜リン酸エステル系酸化防止剤からなる群の少なくとも1つから選択される。
【0012】
好ましくは、前記射出成形グレードPVCチューブは、50.6MPa~51.4MPaの引張強度、30.4J/m~31.3J/mの耐衝撃強さ、及び85.8℃~90.6℃のビカット軟化温度を有する。
【0013】
上記の技術的課題を解決するために、本発明が採用するもう一つの技術的手段は、射出成形グレードPVCチューブの製造方法を提供する。前記射出成形グレードPVCチューブの製造方法は、重合度が600~1000のPVC樹脂100重量部、熱安定剤2重量部~8重量部、第1の添加剤1重量部~20重量部、及び第2の添加剤0.7重量部~15重量部を提供する、準備工程と、100℃~120℃の温度で前記PVC樹脂、前記熱安定剤、前記第1の添加剤及び前記第2の添加剤を添加した後に、35℃~50℃に冷却する過程において続いて混合して、混合PVC樹脂材料を得る、混合工程と、170℃~200℃の温度で射出成形機を用いて前記混合PVC樹脂材料をホットメルトした後に、射出成形して射出成形グレードPVCチューブを得る、射出成形工程と、を含み、前記熱安定剤は、有機スズ、カルシウム亜鉛安定剤、ヒドロタルサイト安定剤、希土類安定剤からなる群の少なくとも1つから選択され、前記第1の添加剤は、塩化ビニルグラフト共重合体である加工改質剤と、α-メチルスチレンアクリロニトリル共重合体である耐熱剤とを含み、前記加工改質剤と前記耐熱剤との重量比(前記加工改質剤:前記耐熱剤)は、1:6.67~1:10であり、前記第2の添加剤は、滑剤、酸化防止剤又は充填剤を少なくとも含み、前記PVC樹脂、前記熱安定剤、前記第1の添加剤及び前記第2の添加剤はいずれも粉状を呈する。
【0014】
好ましくは、前記塩化ビニルグラフト共重合体は、塩化ビニル、第1のグラフト官能基及び第2のグラフト官能基を含み、前記第1のグラフト官能基は、エチレン及び塩化ビニリデンであり、前記第2のグラフト官能基は、酢酸ビニル及び第三級炭酸ビニル(vinyl tertiary carbonate)である。
【0015】
好ましくは、前記塩化ビニルグラフト共重合体の総重量を100wt%として、前記塩化ビニルの含有量は65wt%~85wt%であり、前記第1のグラフト官能基の含有量は10wt%~15wt%であり、前記第2のグラフト官能基の含有量は5wt%~15wt%である。
【0016】
好ましくは、前記第1の添加剤の粒子径は30μm~120μmであり、前記第1の添加剤において、前記加工改質剤の含有量は0.5重量部~5重量部であり、前記耐熱剤の含有量は0.5重量部~15重量部である。
【0017】
好ましくは、前記第2の添加剤の粒子径は0.1μm~100μmであり、前記第2の添加剤において、前記滑剤の含有量は0.5重量部~3重量部であり、前記酸化防止剤の含有量は0.1重量部~2重量部であり、前記充填剤の含有量は0.1重量部~3重量部であり、前記滑剤は、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、脂肪酸系滑剤、金属石鹸系滑剤、シリコーン系滑剤からなる群の少なくとも1つから選択され、前記酸化防止剤は、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、亜リン酸エステル系酸化防止剤からなる群の少なくとも1つから選択される。
【0018】
好ましくは、前記射出成形グレードPVCチューブは、50.6MPa~51.4MPaの引張強度、30.4J/m~31.3J/mの耐衝撃強さ、及び85.8℃~90.6℃のビカット軟化温度を有する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の有利な効果として、本発明に係る射出成形グレードPVCチューブ及びその製造方法は、「前記第1の添加剤は、塩化ビニルグラフト共重合体である加工改質剤と、α-メチルスチレンアクリロニトリル共重合体である耐熱剤とを含み、前記加工改質剤と前記耐熱剤との重量比(前記加工改質剤:前記耐熱剤)は、1:6.67~1:10であり、前記第2の添加剤は、滑剤、酸化防止剤又は充填剤を少なくとも含む」及び「前記PVC樹脂、前記熱安定剤、前記第1の添加剤及び前記第2の添加剤はいずれも粉状を呈する」といった技術特徴によって、従来の射出成形グレードPVCチューブの耐熱性が不良であり、かつ加工困難を改善する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施形態に係る射出成形グレードPVCチューブの製造方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の特徴及び技術内容がより一層分かるように、以下の本発明に関する詳細な説明と添付図面を参照されたい。しかし、提供される添付図面は参考と説明のために提供するものに過ぎず、本発明の請求の範囲を制限するためのものではない。
【0022】
以下、所定の具体的な実施態様によって本発明の実施形態に係る「射出成形グレードPVCチューブ及びその製造方法」を説明し、当業者は、本明細書に開示された内容に基づいて本発明の利点と効果を理解することができる。本発明は、他の異なる具体的な実施態様によって実行または適用でき、本明細書における各細部についても、異なる観点と用途に基づいて、本発明の構想から逸脱しない限り、各種の修正と変更を行うことができる。また、事前に説明するように、本発明の添付図面は、簡単な模式的説明であり、実際のサイズに基づいて描かれたものではない。以下の実施形態に基づいて本発明に係る技術内容を更に詳細に説明するが、開示される内容によって本発明の保護範囲を制限することはない。
【0023】
理解すべきことは、本明細書では、「第1」、「第2」、「第3」といった用語を用いて各種の素子又は信号を叙述することがあるが、これらの素子又は信号は、これらの用語によって制限されるものではない。これらの用語は主に、1つの素子ともう1つの素子、又は1つの信号ともう1つの信号を区別するためのものである。また、本明細書において使用される「または」という用語は、実際の状況に応じて、関連して挙げられる項目におけるいずれか1つ又は複数の組み合わせを含むことがある。
【0024】
[射出成形グレードPVCチューブ]
本発明の実施形態において、射出成形グレードPVCチューブを提供する。前記射出成形グレードPVCチューブは、PVC樹脂100重量部と、熱安定剤2重量部~8重量部と、第1の添加剤1重量部~20重量部と、第2の添加剤0.7重量部~15重量部とを含む。
【0025】
前記PVC樹脂、前記熱安定剤、前記第1の添加剤及び前記第2の添加剤はいずれも粉状を呈する。前記第1の添加剤の粒子径は30μm~120μmであると共に、前記第2の添加剤の粒子径は0.1μm~100μmである。換言すると、本実施形態に係る前記射出成形グレードPVCチューブの各成分はいずれも、粉状を呈してもよい。他の状態(例えば、液体)の成分を含む他のPVCチューブが本実施形態に係る前記射出成形グレードPVCチューブに対応することは適切でない。
【0026】
前記射出成形グレードPVCチューブは、前記PVC樹脂、前記熱安定剤、前記第1の添加剤及び前記第2の添加剤をホットメルト押し出した後に、直接に射出成形によって形成される。説明すべきことは、従来のPVCチューブは通常、押し出しと、造粒と、射出成形とをこの順に製造される。それに対し、本発明に係る前記射出成形グレードPVCチューブは、押し出し造粒のプロセスを経る必要がなく、プロセスを簡単化する効果を果たせる。
【0027】
前記PVC樹脂の重合度は、600~1000である。特筆すべきことは、前記PVC樹脂の重合度が高すぎると(例えば、1000を超える)、前記射出成形グレードPVCチューブに含まれた成分は、混合及びホットメルトを行った後の流動性が不良となり、加工の困難に繋がる。
【0028】
また、CPVC樹脂で主に構成された従来の射出成形グレードチューブは優れた耐熱性を有する。しかしながら、CPVC樹脂の分子間の作用力が大きく塩素の含有量が高いため、CPVC樹脂で構成された従来の射出成形グレードチューブの溶融体粘度が高すぎ、流動性が劣り、加工が困難であると共に、分解しやすくなる。それに対して、本実施形態に係る前記射出成形グレードPVCチューブは、CPVC樹脂を含まなくてもよく、また、CPVC樹脂を含む従来の射出成形グレードチューブが本実施形態に係る前記射出成形グレードPVCチューブに対応することは適切でない。
【0029】
前記熱安定剤は、有機スズ、カルシウム亜鉛安定剤、ヒドロタルサイト安定剤、希土類安定剤からなる群の少なくとも1つから選択される。好ましくは、前記熱安定剤は、マレイン酸ブチルスズである。
【0030】
前記第1の添加剤は、加工改質剤と、耐熱剤とを含む。前記加工改質剤は、塩化ビニルグラフト共重合体であり、前記耐熱剤は、α-メチルスチレンアクリロニトリル共重合体である。前記加工改質剤と前記耐熱剤との重量比(前記加工改質剤:前記耐熱剤)を1:6.67~1:10にすることによって、前記射出成形グレードPVCチューブは、高い耐熱性を有すると共に、加工しやすくなる。換言すると、前記加工改質剤と前記耐熱剤との重量比が高すぎ、若しくは低すぎると、前記射出成形グレードPVCチューブは、所望の耐熱性及び加工性を得られない。本実施形態において、前記加工改質剤の含有量は0.5重量部~5重量部であると共に、前記耐熱剤の含有量は0.5重量部~15重量部である。
【0031】
更に説明すると、前記塩化ビニルグラフト共重合体は、塩化ビニル、第1のグラフト官能基及び第2のグラフト官能基を含む。前記第1のグラフト官能基は、エチレン及び塩化ビニリデンであると共に、前記第2のグラフト官能基は、酢酸ビニル及び第三級炭酸ビニル(vinyl tertiary carbonate)である。
【0032】
より具体的に、前記塩化ビニルグラフト共重合体の総重量を100wt%として、前記塩化ビニルの含有量は65wt%~85wt%であり、前記第1のグラフト官能基の含有量は10wt%~15wt%であり、前記第2のグラフト官能基の含有量は5wt%~15wt%である。また、本実施形態の前記第1のグラフト官能基において、前記エチレンと前記塩化ビニリデンとの重量比(前記エチレン:前記塩化ビニリデン)は、1:0.5~1:3であると共に、前記第2のグラフト官能基において、前記酢酸ビニルと前記第三級炭酸ビニル(前記酢酸ビニル:前記第三級炭酸ビニル)との重量比は、1:0.2~1:4である。
【0033】
本実施形態において、前記塩化ビニルグラフト共重合体は、Zhong Plastic Union New Material Technology Hubei Co製のSRCなどであってもよく、前記耐熱剤は例えば、米国コンプトンBlendex 587S、Hannanotech POLYB H810又はPOLYMER NR-188であってもよいが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0034】
前記第2の添加剤は、滑剤、酸化防止剤又は充填剤を少なくとも含む。本実施形態の前記第2の添加剤において、前記滑剤の含有量は0.5重量部~3重量部であり、前記酸化防止剤の含有量は0.1重量部~2重量部であり、前記充填剤の含有量は0.1重量部~3重量部である。
【0035】
好ましくは、前記滑剤は、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、脂肪酸系滑剤、金属石鹸系滑剤、シリコーン系滑剤からなる群の少なくとも1つから選択され、前記酸化防止剤は、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、亜リン酸エステル系酸化防止剤からなる群の少なくとも1つから選択されると共に、前記充填剤は、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、ナノ炭酸カルシウム、タルク粉末、カーボンブラック、有機顔料からなる群の少なくとも1つから選択される。また、関連する規範と要件を遵守するために、前記充填剤の比重は1.47未満であることが好ましい。
【0036】
本実施形態において、前記射出成形グレードPVCチューブは、50.6MPa~51.4MPaの引張強度、30.4J/m~31.3J/mの耐衝撃強さ、及び85.8℃~90.6℃のビカット軟化温度を有する。前記ビカット軟化温度は、熱可塑性プラスチックを液体熱伝達媒体に放置させて、一定の荷重をかけ、温度を一定に上昇させた条件で、1mm2の圧子でサンプルを1mmに押し込んだ時の温度であると共に、材料の耐熱性、並びに反応製品の加熱条件での物理的及び機械的特性の指標である。
【0037】
[射出成形グレードPVCチューブの製造方法]
図1に示すように、本発明の実施形態は、射出成形グレードPVCチューブの製造方法を提供する。前記射出成形グレードPVCチューブは、前記射出成形グレードPVCチューブの製造方法を実施することによって得るものであってもよいが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0038】
前記射出成形グレードPVCチューブの製造方法は、準備工程S110と、混合工程S120と、射出成形工程S130とを、含む。
【0039】
前記準備工程S110において、PVC樹脂100重量部と、熱安定剤2重量部~8重量部と、第1の添加剤1重量部~20重量部と、第2の添加剤0.7重量部~15重量部と、を準備する。前記PVC樹脂の重合度は600~1000である。前記熱安定剤は、有機スズ、カルシウム亜鉛安定剤、ヒドロタルサイト安定剤、希土類安定剤からなる群の少なくとも1つから選択される。前記第1の添加剤は、塩化ビニルグラフト共重合体である加工改質剤と、α-メチルスチレンアクリロニトリル共重合体である耐熱剤とを含み、前記加工改質剤と前記耐熱剤との重量比(前記加工改質剤:前記耐熱剤)は、1:6.67~1:10である。前記第2の添加剤は、滑剤、酸化防止剤又は充填剤を少なくとも含む。前記PVC樹脂、前記熱安定剤、前記第1の添加剤及び前記第2の添加剤はいずれも粉状を呈する。前記第1の添加剤の粒子径は30μm~120μmであり、前記第2の添加剤の粒子径は0.1μm~100μmである。
【0040】
前記混合工程S120において、100℃~120℃の温度で前記PVC樹脂、前記熱安定剤、前記第1の添加剤及び前記第2の添加剤を添加した後に、35℃~50℃に冷却する過程において続いて混合して、混合PVC樹脂材料を得る。具体的に説明すると、前記混合工程S120において、100℃~120℃の温度で前記PVC樹脂、前記熱安定剤、前記第1の添加剤及び前記第2の添加剤を600秒~800秒混合した後に、冷却筒に導入して35℃~50℃に冷却する過程において、300秒~500秒続いて混合することによって、前記PVC樹脂材料を得る。
【0041】
前記射出成形工程S130において、170℃~200℃の温度で射出成形機を用いて前記混合PVC樹脂材料をホットメルトした後に、射出成形して射出成形グレードPVCチューブを得る。また、射出成形グレードPVCチューブの製造方法は、前記射出成形工程S130を行った後に、他の工程を更に含んでもよい。例えば、保圧工程、冷却定形工程及びゲートをトリミングする工程を含んでよいが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0042】
具体的に説明すると、前記塩化ビニルグラフト共重合体は、塩化ビニル、第1のグラフト官能基及び第2のグラフト官能基を含み、前記第1のグラフト官能基は、エチレン及び塩化ビニリデンであり、前記第2のグラフト官能基は、酢酸ビニル及び第三級炭酸ビニルである。前記塩化ビニルグラフト共重合体の総重量を100wt%として、前記塩化ビニルの含有量は65wt%~85wt%であり、前記第1のグラフト官能基の含有量は10wt%~15wt%であり、前記第2のグラフト官能基の含有量は5wt%~15wt%である。
【0043】
前記加工改質剤の含有量は0.5重量部~5重量部であり、前記耐熱剤の含有量は0.5重量部~15重量部である。
【0044】
前記第2の添加剤において、前記滑剤は、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、脂肪酸系滑剤、金属石鹸系滑剤、シリコーン系滑剤からなる群の少なくとも1つから選択される。前記酸化防止剤は、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、亜リン酸エステル系酸化防止剤からなる群の少なくとも1つから選択されると共に、前記充填剤は、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、ナノ炭酸カルシウム、タルク粉末、カーボンブラック、有機顔料からなる群の少なくとも1つから選択される。
【0045】
前記射出成形グレードPVCチューブは、50.6MPa~51.4MPaの引張強度、30.4J/m~31.3J/mの耐衝撃強さ、及び85.8℃~90.6℃のビカット軟化温度を有する。
【0046】
[実験データの測定]
実施例1~4及び比較例1~2に係る前記フィルム除去液の各成分の配合、引張強度、耐衝撃強さ、ビカット軟化温度、ゲル化時間及びゲルトルクは、下表1に示す通りである。また、測定方法について、以下にて説明する。
【0047】
引張強度:ASTM D638によれば、プラスチック材料の引張試験を行うことによって、プラスチック材料の引張強度を得る。
【0048】
耐衝撃強さの測定:ASTM D256によるノッチ付きのアイゾット曲げ衝撃試験に基づいて、厚みに関連するエネルギー値の形式で、耐衝撃強さ及び高い応変率でのノッチ感度の特徴値を表す。当該測定は通常、プラスチックの耐衝撃強さ及びノッチ付き衝撃強度を測定するように、23℃/50%相対湿度の通常の気候条件で行う。
【0049】
ビカット軟化温度:耐熱温度の測定は、GB/T1633の「熱可塑性ビカット軟化温度(VST)の測定」、GB8802の「未可塑化ポリ塩化ビニル(PVC-U)パイプおよび継手のビカット軟化温度の測定」及びASTM1525に基づいて、ビカット熱変形温度試験装置を用いてヴィカー軟化温度(VST)の測定を行うことができる。
【0050】
ゲル化時間及びゲルトルクの測定:プラスチック速度の測定方法は、トルクレオメーター(HAAKE PolyLab OS)を用いて特定の温度(170℃~200℃)及び特定の回転速度(45rpm~60rpm)でレオロジー試験を行い、測定された配合のゲル化時間及びバランストルクを配合の生産性の根拠とした。
【0051】
【0052】
[測定結果の検討]
実施例1と比較例1との比較によれば、実施例1において塩化ビニルグラフト共重合体で、ゲル化を促進するためのACR加工助剤に取り変わり、ゲル化時間を維持するだけでなく、加工トルクを低減することができるため、機械の負荷を減らし、射出成形の加工性を改善し、ビカット軟化温度をわずかに上げた。
【0053】
実施例1と比較例2及び実施例2との比較によれば、実施例1において塩化ビニルグラフト共重合体で、ゲル化を促進するためのACR加工助剤及び強靭化剤に取り変わったことによって、その耐衝撃性が向上され、塩化ビニルグラフト共重合体が配合に添加することが、ゲル化及び強靭化機能を両立することができた。
【0054】
実施例3、4と比較例1、2との比較によれば、塩化ビニルグラフト共重合体及び耐熱剤を同時に添加することによって、同等の可塑化機能を維持し、且つ耐衝撃強さを向上すると共に、射出成形グレードPVCのビカット軟化温度を大幅に向上させることができた。
【0055】
[実施形態による有利な効果]
本発明の有利な効果として、本発明に係る射出成形グレードPVCチューブ及びその製造方法は、「前記第1の添加剤は、塩化ビニルグラフト共重合体である加工改質剤と、α-メチルスチレンアクリロニトリル共重合体である耐熱剤とを含み、前記加工改質剤と前記耐熱剤との重量比(前記加工改質剤:前記耐熱剤)は、1:6.67~1:10であり、前記第2の添加剤は、滑剤、酸化防止剤又は充填剤を少なくとも含む」、及び「前記PVC樹脂、前記熱安定剤、前記第1の添加剤及び前記第2の添加剤はいずれも粉状を呈する」といった技術特徴によって、従来の射出成形グレードPVCチューブの耐熱性が不良であり、かつ加工困難を改善する。
【0056】
以上に開示された内容は、ただ本発明の好ましい実行可能な実施態様であり、本発明の請求の範囲はこれに制限されない。そのため、本発明の明細書及び図面内容を利用して成される全ての等価な技術変更は、いずれも本発明の請求の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0057】
S110…準備工程
S120…混合工程
S130…射出成形工程