(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001109
(43)【公開日】2024-01-09
(54)【発明の名称】JAK阻害化合物のキシナホ酸塩
(51)【国際特許分類】
C07D 295/15 20060101AFI20231226BHJP
A61P 43/00 20060101ALN20231226BHJP
【FI】
C07D295/15 CSP
A61P43/00 105
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023171327
(22)【出願日】2023-10-02
(62)【分割の表示】P 2021502626の分割
【原出願日】2019-07-17
(31)【優先権主張番号】62/699,955
(32)【優先日】2018-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/866,013
(32)【優先日】2019-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】391008951
【氏名又は名称】アストラゼネカ・アクチエボラーグ
【氏名又は名称原語表記】ASTRAZENECA AKTIEBOLAG
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】アンナ・マティルダ・アンニェリカ・ペッテルセン
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムズ・マッケイブ
(72)【発明者】
【氏名】カール-ヨハン・アウレル
(57)【要約】 (修正有)
【課題】化合物およびその製造方法を提供する。
【解決手段】化合物4-[(1R)-1-カルボキシ-2-メトキシエチル]-1-メチルピペラジン-1-イウム(2R,3R)-3-カルボキシ-2,3-ジヒドロキシプロパノアート水和物(1:1:2):
およびその製造方法を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
【請求項2】
結晶形態である、請求項1に記載の塩。
【請求項3】
薬学的に許容可能な賦形剤、希釈剤又は担体と関連して請求項1に記載のキシナホ酸塩を含む、薬学的に許容可能な組成物。
【請求項4】
薬学的に許容可能な賦形剤、希釈剤又は担体と関連して請求項2に記載のキシナホ酸塩を含む、薬学的に許容可能な組成物。
【請求項5】
式(I)の化合物の形態A。
【請求項6】
15.0°及び21.0°及び22.6°(±0.1°)の特異的ピークを有するX線粉末回折パターンを特徴とする、請求項5に記載の形態A。
【請求項7】
約8.2、8.9、11.2、14.2、15.0、15.3、16.2、17.5、21.0、22.6、23.0、23.7、24.6及び26.2°(±0.1°)の特異的ピークを有するX線粉末回折パターンを特徴とする、請求項5に記載の形態A。
【請求項8】
(vii)5-((5-メチル-2-((3,4,5-トリメチルフェニル)アミノ)ピリミジン-4-イル)アミノ)-ベンゾ[d]オキサゾール-2(3H)-オン遊離塩基をDMSOなどの適切な溶媒中に溶解させるステップと、
(viii)キシナホ酸をDMSOなどの適切な溶媒中に溶解させるステップと、
(ix)2つの溶液を混合するステップと、
(x)任意選択的に、5-((5-メチル-2-((3,4,5-トリメチルフェニル)アミノ)ピリミジン-4-イル)アミノ)-ベンゾ[d]オキサゾール-2(3H)-オンのキシナホ酸塩の種結晶を添加するステップと、
(xi)5-((5-メチル-2-((3,4,5-トリメチルフェニル)アミノ)ピリミジン-4-イル)アミノ)-ベンゾ[d]オキサゾール-2(3H)-オンのキシナホ酸塩を結晶化させるステップと、
(xii)5-((5-メチル-2-((3,4,5-トリメチルフェニル)アミノ)ピリミジン-4-イル)アミノ)-ベンゾ[d]オキサゾール-2(3H)-オンのキシナホ酸塩を単離するステップと
を含む、請求項1に記載のキシナホ酸塩の調製方法。
【請求項9】
薬剤として使用するための、請求項1に記載のキシナホ酸塩。
【請求項10】
それを必要としている対象においてJAKキナーゼ媒介性疾患を処置する方法であって、有効量の式(Ia)のキシナホ酸塩を前記対象に投与することを含む方法。
【請求項11】
前記JAKキナーゼ媒介性疾患が喘息又はCOPDである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
それを必要としている対象においてJAKキナーゼ媒介性疾患を処置する方法であって、有効量の式(Ia)の形態Aを前記対象に投与することを含む方法。
【請求項13】
前記JAKキナーゼ媒介性疾患が喘息又はCOPDである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
それを必要としている対象においてJAKキナーゼ媒介性疾患を処置するのに使用するための、式(Ia)のキシナホ酸塩。
【請求項15】
前記JAKキナーゼ媒介性疾患が喘息又はCOPDである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
それを必要としている対象においてJAKキナーゼ媒介性疾患を処置するのに使用するための、式(Ia)の化合物の形態A。
【請求項17】
前記JAKキナーゼ媒介性疾患が喘息又はCOPDである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
それを必要としている対象においてJAKキナーゼ媒介性疾患を処置するのに使用するための薬剤の製造における、式(Ia)のキシナホ酸塩。
【請求項19】
前記JAKキナーゼ媒介性疾患が喘息又はCOPDである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
それを必要としている対象においてJAKキナーゼ媒介性疾患を処置するのに使用するための薬剤の製造における、式(Ia)の化合物の形態A。
【請求項21】
前記JAKキナーゼ媒介性疾患が喘息又はCOPDである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
化合物4-[(1R)-1-カルボキシ-2-メトキシエチル]-1-メチルピペラジン-1-イウム(2R,3R)-3-カルボキシ-2,3-ジヒドロキシプロパノアート水和物(1:1:2):
【化2】
【請求項23】
化合物1-[(1R)-1-カルボキシ-2-メトキシエチル]-4-メチルピペラジン-1,4-ジイウムジクロリド:
【化3】
【請求項24】
4-[(1R)-1-カルボキシ-2-メトキシエチル]-1-メチルピペラジン-1-イウム(2R,3R)-3-カルボキシ-2,3-ジヒドロキシプロパノアート水和物(1:1:2)及び1-[(1R)-1-カルボキシ-2-メトキシエチル]-4-メチルピペラジン-1,4-ジイウムジクロリドの調製のための方法であって、
(i)リチウム3-メトキシ-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)プロパノアートを蒸留水中にpH4で溶解させるステップと、
(ii)L-(+)-酒石酸を蒸留水中に溶解させるステップと、
(iii)ステップ(i)及びステップ(ii)からの2つの溶液をエタノールなどの適切な溶媒中で混合して、結晶化を誘導するステップと、
(iv)ステップ(iii)の混合物を室温で20時間攪拌するステップと、
(v)エタノールなどの適切な溶媒をステップ(iv)の混合物に添加し、冷却後にろ過して、生成物4-[(1R)-1-カルボキシ-2-メトキシエチル]-1-メチルピペラジン-1-イウム(2R,3R)-3-カルボキシ-2,3-ジヒドロキシプロパノアート水和物(1:1:2)を生じさせるステップと、
(vi)ステップ(v)の生成物を収集し、減圧下で72時間乾燥させるステップと、
(vii)ステップ(vi)の生成物を蒸留水中に溶解させるステップと、
(viii)ステップ(vii)の生成物に対してカチオン性イオン交換を実施するステップと、
(ix)ステップ(viii)の生成物を2MのHClで溶出させ、その溶液を蒸発乾固させ、1-[(1R)-1-カルボキシ-2-メトキシエチル]-4-メチルピペラジン-1,4-ジイウムジクロリドの結晶化を誘導するステップと
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本開示の式(I)の新規の塩は、JAK1、JAK2、JAK3及びTYK2を含む細胞質タンパク質チロシンキナーゼのファミリーであるヤヌスキナーゼ(JAnus Kinase)(又はJAK)により単独で又は部分的に媒介される状態の処置又は予防のために有用であることが予想される。複数のJAKキナーゼが特定のサイトカイン又はシグナル伝達経路によって影響され得るが、JAKキナーゼのそれぞれは特定のサイトカインの受容体に対して選択的である。研究により、JAK3は種々のサイトカイン受容体の共通ガンマ鎖(γc)に関連していることが示唆される。特に、JAK3は、IL-2、IL-4、IL-7、IL-9、IL-15及びIL-21の受容体に選択的に結合し、そのサイトカインシグナル伝達経路の一部である。キナーゼJAK1は、特に、サイトカインIL-2、IL-4、IL-7、IL-9及びIL-21の受容体と相互作用をする。特定のサイトカインがその受容体へ結合すると(例えば、IL-2、IL-4、IL-7、IL-9、IL-15及びIL-21)、受容体のオリゴマー化が起こり、関連のJAKキナーゼの細胞質側末端が近接するようになり、JAKキナーゼ上のチロシン残基のトランス-リン酸化が促進される。このトランス-リン酸化は、JAKキナーゼの活性化をもたらす。
【0002】
リン酸化JAKキナーゼは、種々のシグナル伝達性転写因子(STAT)タンパク質に結合する。チロシン残基のリン酸化により活性化されたDNA結合タンパク質であるこれらのSTATタンパク質は、シグナル伝達分子及び転写因子の両方の役割を果たし、最終的に、サイトカイン応答性遺伝子のプロモータ中に存在する特異的なDNA配列に結合する(非特許文献1)。JAK/STATのシグナル伝達は、多くの異常免疫応答、例えば、アレルギー、喘息、自己免疫疾患,例えば、移植片(同種移植片)拒絶、関節リウマチ、筋萎縮性側索硬化症及び多発性硬化症、並びに固形及び血液悪性腫瘍、例えば、白血病及びリンパ腫の媒介に関与している。JAK/STAT経路の薬剤介入の概説については、(非特許文献2)及び(非特許文献3)及び(非特許文献4)及び(非特許文献5)を参照されたい。
【0003】
JAKキナーゼの重要性を考慮すれば、JAK経路を調節する化合物は、リンパ球、マクロファージ、又はマスト細胞の機能が関係する疾患又は状態を処置するために有用であり得る(非特許文献6;非特許文献7)。JAK経路のターゲティング又はJAKキナーゼの調節が治療的に有用であると考えられる状態には、白血病、リンパ腫、移植片拒絶(例えば、膵島移植片拒絶、骨髄移植適用(例えば、移植片対宿主病)、自己免疫疾患(例えば、糖尿病)、及び炎症(例えば、喘息、アレルギー反応)が含まれる。
【0004】
JAK経路の調節を含む処置により利益を得ると考えられる多数の状態を考慮して、JAK経路を調節する新しい化合物及び新しい形態の化合物,並びにこれらの化合物を使用する方法が、様々な種類の患者に対してかなりの治療効果を提供するはずであることは明らかである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Leonard et al.,(2000),J.Allergy Clin.Immunol.105:877-888
【非特許文献2】Frank,(1999),Mol.Med.5:432:456
【非特許文献3】Seidel et al.,(2000),Oncogene 19:2645-2656
【非特許文献4】Vijayakriishnan et al,Trends Pharmacol.Sci 2011,32,25-34
【非特許文献5】Flanagan et al,J.Med.Chem.2014,57,5023-5038
【非特許文献6】Kudlacz et al.,(2004)Am.J.Transplant 4:51-57
【非特許文献7】Changelian(2003)Science 302:875-878
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、式(I):
【化1】
の新規の塩、式(I)の塩を含有する医薬組成物、及びそれを使用する方法に関する。
【0007】
式(I)の化合物は、JAK阻害化合物の種類を開示する国際特許出願PCT/EP2018/051038号明細書に記載されており、(R)-N-(3-(5-フルオロ-2-((2-フルオロ-3-(メチルスルホニル)フェニル)アミノ)ピリミジン-4-イル)-1H-インドール-7-イル)-3-メトキシ-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)プロパンアミドが含まれる(実施例35を参照)。国際特許出願PCT/EP2018/051038号明細書には、(R)-N-(3-(5-フルオロ-2-((2-フルオロ-3-(メチルスルホニル)フェニル)アミノ)ピリミジン-4-イル)-1H-インドール-7-イル)-3-メトキシ-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)プロパンアミドの種々の塩を含む追加のJAK阻害化合物が記載されている。
【0008】
本明細書には、JAK経路のターゲティング又はJAKキナーゼ、特にJAK1の阻害が有用である状態の処置において有用である、新規の塩として調製される式(I)の化合物が開示される。
【0009】
少なくとも1つの実施形態において、本開示は、キシナホ酸(1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸)塩(式(Ia))として調製される式(I)の化合物を含む。
【化2】
4-{(2R)-1-[(3-{5-フルオロ-2-[2-フルオロ-3-(メタンスルホニル)アニリノ]ピリミジン-4-イル}-1H-インドール-7-イル)アミノ]-3-メトキシ-1-オキソプロパン-2-イル}-1-メチルピペラジン-1-イウム;1-ヒドロキシナフタレン-2-カルボキシラート
【0010】
本開示のキシナホ酸塩は、1:1のキシナホ酸化学量論を有する(上記に示されるとおり)。また本明細書には、式(Ia)のキシナホ酸塩の調製方法も開示される。さらに、式(Ia)のキシナホ酸塩、及び薬学的に許容可能な希釈剤、賦形剤又は担体を含む医薬組成物も開示される。別の実施形態では、それを必要としている対象においてJAK関連障害を処置する方法であって、有効量の式(Ia)のキシナホ酸塩を対象に投与することを含む方法が開示される。別の実施形態では、JAK関連障害を処置するのに使用するための式(Ia)のキシナホ酸塩が開示される。別の実施形態では、JAK関連障害を処置するのに使用するための、式(Ia)のキシナホ酸塩を含む医薬組成物が開示される。別の実施形態では、JAK関連障害を処置するための薬剤の製造における、式(Ia)のキシナホ酸塩の使用が開示される。また、式(Ia)のキシナホ酸塩の新規の調製方法、並びに2つの新規の中間体:
- 以下に示される4-[(1R)-1-カルボキシ-2-メトキシエチル]-1-メチルピペラジン-1-イウム(2R,3R)-3-カルボキシ-2,3-ジヒドロキシプロパノアート水和物(1:1:2):
【化3】
- 以下に示される1-[(1R)-1-カルボキシ-2-メトキシエチル]-4-メチルピペラジン-1,4-ジイウムジクロリド:
【化4】
も開示される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】4-{(2R)-1-[(3-{5-フルオロ-2-[2-フルオロ-3-(メタンスルホニル)アニリノ]ピリミジン-4-イル}-1H-インドール-7-イル)アミノ]-3-メトキシ-1-オキソプロパン-2-イル}-1-メチルピペラジン-1-イウム;1-ヒドロキシナフタレン-2-カルボキシラートのX線粉末回折パターン(XRPD)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
いくつかの実施形態では、式(I)及び(Ia)の化合物の固体形態が開示される。「固体形態」という用語には、式(I)及び(Ia)の化合物の多形体、結晶塩、溶媒和物、水和物及び非晶質形態が含まれる。本開示の少なくとも1つの実施形態によると、本開示の塩は結晶性である。塩は、溶媒和形態及び非溶媒和形態、例えば、水和形態などで存在することもできる。本開示が、式(I)の化合物のこのような溶媒和形態及び非溶媒和形態を全て包含することは理解されるべきである。「溶媒和物」という用語は、同じ化学物質であるが、結晶構造の分子充填内に溶媒の分子を取り込んだ結晶構造を含む。「水和物」という用語は、同じ化学物質であるが、結晶構造の分子充填内に水の分子を取り込んだ結晶構造を含む。
【0013】
化合物は、多形体として知られている種々の結晶構造形態として存在し得る。本明細書で使用される場合、「多形体」は、同じ化学組成を有するが、結晶を形成する分子、原子、及び/又はイオンの異なる空間的配置を有する結晶形態を意味すると理解される。多形体は同じ化学組成を有するが、異なる幾何学的配置を有することができ、したがって、異なる物理的特性、例えば、密度、硬度、融点、可撓性、耐久性、安定性、溶解(dissolution)などを示し得る。
【0014】
固体材料は、X線粉末回折(XRPD)、示差走査熱量測定(DSC)、熱重量分析(TGA)、拡散反射フーリエ変換赤外(DRIFT)分光法、近赤外(NIR)分光法、溶液及び/又は固体状態核磁気共鳴分光法などの従来の技術を用いて特徴付けされ得ることが一般に知られている。このような固体材料の含水量は、カールフィッシャー分析によって決定され得る。
【0015】
本明細書に記載される固体形態は、図面に示されるXRPDパターンと実質的に同じXRPDパターンを提供し、本明細書に包含される表に示される種々の2-シータ(2θ)値を有する。当業者は、使用される装置又は機械などの記録条件に応じて1つ又は複数の測定誤差を有するXRPDパターン又はディフラクトグラムが得られることを理解するであろう。同様に、XRPDパターンの強度は、好ましい配向の結果として、測定条件又はサンプル調製に応じて変動し得ることが一般に知られている。XRPDの当業者は、ピークの相対強度が、例えば、30μmを超えるサイズの粒子及び非単位のアスペクト比によっても影響され得ることにさらに気付くであろう。当業者は、反射の位置が、回折計内でサンプルが位置する正確な高さによって、また回折計のゼロ較正によっても影響され得ることを理解する。サンプルの表面の平面性もわずかな影響を有し得る。
【0016】
これらのことを考えて、提示される回折パターンデータは絶対値と見なされるべきではない(Jenkins,R & Snyder,R.L.’Introduction to X-Ray Powder Diffractometry’ John Wiley & Sons 1996;Bunn,C.W.(1948),’Chemical Crystallography’,Clarendon Press,London;Klug,H.P.& Alexander,L.E.(1974),’X-Ray Diffraction Procedures’)。本明細書において具体化される固体形態が、図面に示されるXRPDパターンと同一であるXRPDパターンを提供するものに限定されず、図面に示されるものと実質的に同じXRPDパターンを提供するあらゆる固体形態が、対応する実施形態の範囲内にあることも理解されるべきである。XRPDの当業者は、XRPDパターンの実質的な同一性を判断することができる。一般に、XRPDにおける回折角の測定誤差は約2θ(±0.2°)であり、このような測定誤差の度合いは、図面中のX線粉末回折パターンを分析する際、及び本明細書中に包含される表中に含有されるデータを読み取る際に考慮されるべきである。
【0017】
形態A
少なくとも1つの実施形態において、形態Aの4-{(2R)-1-[(3-{5-フルオロ-2-[2-フルオロ-3-(メタンスルホニル)アニリノ]ピリミジン-4-イル}-1H-インドール-7-イル)アミノ]-3-メトキシ-1-オキソプロパン-2-イル}-1-メチルピペラジン-1-イウム;1-ヒドロキシナフタレン-2-カルボキシラートのキシナホ酸塩が開示される。
【0018】
いくつかの実施形態では、形態Aは、実質的に
図1に示されるようなX線粉末回折(XRPD)パターンを提供することを特徴とする。
【0019】
いくつかの実施形態では、形態Aは、表1に記載されるピークから選択される2-シータ(±2°)で表される少なくとも1つのピークを含むXRPDパターンを有する。X線粉末回折パターンの2-シータ値は、機械によって、又はサンプルによってわずかに異なることがあり、したがって、引用される値が絶対的であると解釈されてはならないことは理解されるであろう。
【0020】
いくつかの実施形態では、形態Aは、CuKα放射線を用いて測定される以下の2θ値:15.0°及び21.0°及び22.6°のうちの少なくとも1つを提供することを特徴とする。
【0021】
いくつかの実施形態では、形態Aは、CuKα放射線を用いて測定される以下の2θ値:8.2、8.9、11.2、14.2、15.0、15.3、16.2、17.5、21.0、22.6、23.0、23.7、24.6及び26.2°のうちの少なくとも1つを提供することを特徴とする。
【0022】
いくつかの実施形態では、形態Aの結晶化度は約60%よりも高く、例えば、約80%よりも高く、例えば、約90%よりも高く、少なくとも1つの実施形態では、約95%よりも高い。さらに別の実施形態では、結晶化度は約98%よりも高い。
【0023】
本開示のさらなる態様によると、
(i)5-((5-メチル-2-((3,4,5-トリメチルフェニル)アミノ)ピリミジン-4-イル)アミノ)-ベンゾ[d]オキサゾール-2(3H)-オン遊離塩基をDMSOなどの適切な溶媒中に溶解させるステップと、
(ii)キシナホ酸をDMSOなどの適切な溶媒中に溶解させるステップと、
(iii)2つの溶液を混合するステップと、
(iv)任意選択的に、5-((5-メチル-2-((3,4,5-トリメチルフェニル)アミノ)ピリミジン-4-イル)アミノ)-ベンゾ[d]オキサゾール-2(3H)-オンのキシナホ酸塩の種結晶を添加するステップと、
(v)5-((5-メチル-2-((3,4,5-トリメチルフェニル)アミノ)ピリミジン-4-イル)アミノ)-ベンゾ[d]オキサゾール-2(3H)-オンのキシナホ酸塩を結晶化させるステップと、
(vi)5-((5-メチル-2-((3,4,5-トリメチルフェニル)アミノ)ピリミジン-4-イル)アミノ)-ベンゾ[d]オキサゾール-2(3H)-オンのキシナホ酸塩を単離するステップと
を含む、形態Aの調製方法が提供されている。
【0024】
本開示のさらなる態様によると、2つの新規の中間体の4-[(1R)-1-カルボキシ-2-メトキシエチル]-1-メチルピペラジン-1-イウム(2R,3R)-3-カルボキシ-2,3-ジヒドロキシプロパノアート水和物(1:1:2)及び1-[(1R)-1-カルボキシ-2-メトキシエチル]-4-メチルピペラジン-1,4-ジイウムジクロリドの調製のための方法であって、
(i)リチウム3-メトキシ-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)プロパノアートを蒸留水中にpH4で溶解させるステップと、
(ii)L-(+)-酒石酸を蒸留水中に溶解させるステップと、
(iii)ステップ(i)及びステップ(ii)からの2つの溶液をエタノールなどの適切な溶媒中で混合して、結晶化を誘導するステップと、
(iv)ステップ(iii)の混合物を室温で20時間攪拌するステップと、
(v)エタノールなどの適切な溶媒をステップ(iv)の混合物に添加し、冷却後にろ過して、生成物4-[(1R)-1-カルボキシ-2-メトキシエチル]-1-メチルピペラジン-1-イウム(2R,3R)-3-カルボキシ-2,3-ジヒドロキシプロパノアート水和物(1:1:2)を生じさせるステップと、
(vi)ステップ(v)の生成物を収集し、減圧下で72時間乾燥させるステップと、
(vii)ステップ(vi)の生成物を蒸留水中に溶解させるステップと、
(viii)ステップ(vii)の生成物に対してカチオン性イオン交換を実施するステップと、
(ix)ステップ(viii)の生成物を2MのHClで溶出させ、その溶液を蒸発乾固させ、1-[(1R)-1-カルボキシ-2-メトキシエチル]-4-メチルピペラジン-1,4-ジイウムジクロリドの結晶化を誘導するステップと
を含む方法が提供されている。
【0025】
医薬組成物&使用方法
本明細書中の新規の塩は、任意の付加的な賦形剤、希釈剤又は担体を全く用いずに、微粉化固体粒子として吸入により投与され得る。少なくとも1つの実施形態では、薬学的に許容可能な希釈剤又は担体と関連して形態Aを含む医薬組成物が開示される。
【0026】
本開示の組成物は、吸入による投与(例えば、微粉又は液体エアロゾルとして)、又は適切なデバイスを用いたガス注入による投与(例えば、微粉として)に適した形態であり得る。
【0027】
本開示の組成物は、当該技術分野において周知である従来の医薬品賦形剤を用いて従来の手順によって得ることができる。例えば、吸入用である組成物は、例えば、組成物の約90w/w%までの量の微粉化したラクトース又は他の適切な賦形剤を含有し得る。
【0028】
必要であれば、新規の塩は、均一な粒径分布を提供するために製剤の前に粉砕又は微粉化され得る。例えば、形態Aは、約1μm~3μmの平均粒径を提供するように粉砕され得る。適切な粉砕及び微粉化方法は周知である(Midoux et al.,(1999),Powder Technology,104:113-120)。
【0029】
本開示の形態Aは、JAK、特にJAK1により単独で又は部分的に媒介される疾患又は医学的状態の処置において有用であることが予想され、すなわち、形態Aは、このような処置を必要としている温血動物においてJAK阻害効果をもたらすために使用され得る。例えば、本開示の形態Aは、JAKキナーゼ活性により完全に又は部分的に媒介される疾患(本明細書では「JAKキナーゼ媒介性疾患」と称される)の処置又は予防に対する治療的アプローチとして、生体内でJAKキナーゼを阻害するために使用することができる。処置又は予防することができるJAKキナーゼ媒介性疾患の非限定的な例としては、あらゆる種類、病因、又は病原性の閉塞性、拘束性又は炎症性気道疾患、特に、上記のように、喘息、特に、アトピー性喘息、アレルギー性喘息、非アトピー性喘息、気管支喘息、非アレルギー性喘息、気腫性喘息、運動誘発性喘息、感情誘発性喘息、環境因子によって引き起こされる外因性喘息、細菌、真菌、原生動物及び/又はウィルス感染に関連する感染型喘息、細気管支炎、咳喘息、薬物性喘息などを含む、閉塞性、拘束性又は炎症性気道疾患、季節性アレルギー性鼻炎、通年性アレルギー性鼻炎、血管運動性鼻炎、急性、慢性、篩骨、前面上顎骨(frontal maxillary)又は蝶形骨の副鼻腔炎を含む副鼻腔炎を限定することなく含む、種々の病因の鼻炎又は副鼻腔炎;慢性気管支炎、肺気腫、気管支拡張症、嚢胞性線維症、閉塞性細気管支炎を限定することなく含む、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、慢性閉塞性肺疾患(COLD)、慢性閉塞性気道疾患(COAD)又は小さい気道閉塞;急性気管支炎、急性喉頭気管支炎、慢性気管支炎、乾性気管支炎、湿性気管支炎、感染性喘息性気管支炎、ブドウ球菌又は連鎖球菌気管支炎、及び水疱性(vesicular)気管支炎を特に含む、気管支炎の処置が挙げられる。
【0030】
したがって、本開示の1つの態様では、それを必要としている対象においてJAKキナーゼ媒介性疾患を処置する方法であって、有効量の式(Ia)の化合物のキシナホ酸塩、又は有効量の形態Aを対象に投与することを含む方法が開示される。また、それを必要としている対象においてJAKキナーゼ媒介性疾患を処置する方法であって、有効量の式(Ia)の化合物,又は有効量の形態Aを含む薬学的に許容可能な組成物を対象に投与することを含む方法も開示される。
【0031】
1つの態様では、それを必要としている対象においてJAKキナーゼ媒介性疾患を処置するのに使用するための式(Ia)の化合物のキシナホ酸塩も開示される。別の態様では、それを必要としている対象においてJAKキナーゼ媒介性疾患を処置するのに使用するための、式(Ia)の化合物のキシナホ酸塩を含む薬学的に許容可能な組成物が開示される。1つの態様では、それを必要としている対象においてJAKキナーゼ媒介性疾患を処置するのに使用するための形態Aも開示される。別の態様では、それを必要としている対象においてJAKキナーゼ媒介性疾患を処置するのに使用するための、形態Aを含む薬学的に許容可能な組成物が開示される。
【0032】
1つの態様では、それを必要としている対象においてJAKキナーゼ媒介性疾患を処置するのに使用するための薬剤の製造における、式(Ia)の化合物のキシナホ酸塩の使用も開示される。1つの態様では、それを必要としている対象においてJAKキナーゼ媒介性疾患を処置するのに使用するための薬剤の製造における形態Aの使用も開示される。
【0033】
本開示の1つの態様では、それを必要としている対象において喘息を処置する方法であって、有効量の式(Ia)の化合物のキシナホ酸塩、又は有効量の形態Aを対象に投与することを含む方法が開示される。また、それを必要としている対象において喘息を処置する方法であって、有効量の式(Ia)の化合物のキシナホ酸塩、又は有効量の形態Aを含む薬学的に許容可能な組成物を対象に投与することを含む方法も開示される。
【0034】
1つの態様では、それを必要としている対象において喘息を処置するのに使用するための、式(Ia)の化合物のキシナホ酸塩も開示される。別の態様では、それを必要としている対象において喘息を処置するのに使用するための、式(Ia)の化合物のキシナホ酸塩を含む薬学的に許容可能な組成物が開示される。1つの態様では、それを必要としている対象において喘息を処置するのに使用するための形態Aも開示される。別の態様では、それを必要としている対象において喘息を処置するのに使用するための、形態Aを含む薬学的に許容可能な組成物が開示される。
【0035】
1つの態様では、それを必要としている対象において喘息を処置するのに使用するための薬剤の製造における、式(Ia)の化合物のキシナホ酸塩の使用も開示される。1つの態様では、それを必要としている対象において喘息を処置するのに使用するための薬剤の製造における形態Aの使用も開示される。
【0036】
したがって、本開示の1つの態様では、それを必要としている対象においてCOPDを処置する方法であって、有効量の式(Ia)の化合物のキシナホ酸塩、又は有効量の形態Aを対象に投与することを含む方法が開示される。また、それを必要としている対象においてCOPDを処置する方法であって、有効量の式(Ia)の化合物のキシナホ酸塩、又は有効量の形態Aを含む薬学的に許容可能な組成物を対象に投与することを含む方法も開示される。
【0037】
1つの態様では、それを必要としている対象においてCOPDを処置するのに使用するための、式(Ia)の化合物のキシナホ酸塩も開示される。別の態様では、それを必要としている対象においてCOPDを処置するのに使用するための、式(Ia)の化合物のキシナホ酸塩を含む薬学的に許容可能な組成物が開示される。1つの態様では、それを必要としている対象においてCOPDを処置するのに使用するための形態Aも開示される。別の態様では、それを必要としている対象においてCOPDを処置するのに使用するための、形態Aを含む薬学的に許容可能な組成物が開示される。
【0038】
1つの態様では、それを必要としている対象においてCOPDを処置するのに使用するための薬剤の製造における、式(Ia)の化合物のキシナホ酸塩の使用も開示される。1つの態様では、それを必要としている対象においてCOPDを処置するのに使用するための薬剤の製造における形態Aの使用も開示される。
【実施例0039】
本開示は、本開示のいくつかの実施形態を詳述することが意図される以下の実施例によってさらに説明される。これらの実施例は本開示の範囲を限定することは意図されず、本開示の範囲を限定すると解釈されてはならない。本開示が,本明細書に具体的に記載される以外で実行され得ることは明らかであろう。本明細書中の教示を考慮して、本開示の多数の修正及び変更が可能であり、したがって、これらは本開示の範囲内に含まれる。
【0040】
我々は、式(I)の新規の塩が、例えば、式(I)の遊離塩基の化合物と比べて有利な特性を有することを見出した。例えば、キシナホ酸塩は、有利な機械的及び生理化学的特性(すなわち,非吸湿性)を有する。
【0041】
実施例において、他に言及されない限り、
(i)収率は説明のために与えられるだけであり、必ずしも到達できる最大値ではない。
(ii)与えられる場合、NMRデータは、他に記載されない限り、溶媒として過重水素化(perdeuterio)ジメチルスルホキシド(DMSO-d6)を用いて百万分率(ppm)で与えられる主要な特徴的なプロトンのデルタ値の形態であり、以下の略語を使用した:s、一重線;d、二重線;t、三重線;q、四重線;m、多重線;br、幅広線。
(iii)化学記号はその通常の意味を有し、SI単位及び記号が使用される。
(iv)溶媒比は体積:体積(v/v)により示される。
(v)X線粉末回折分析は、実施例に記載されるように実行した。
(vi)以下に示される実施例において、記載されるモル数及び収率は、100%w/wの原材料及び試薬に関連し、したがって、使用される材料の純度が考慮される。
【0042】
実施例1
中間体1:7-ニトロ-3-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-1-トシル-1H-インドール
ステップ1
水(1500mL)中のNaOH(599g、14986.55mmol)の溶液を、DCM(3000mL)中の7-ニトロ-1H-インドール(243g、1498.65mmol)及び硫酸水素テトラブチルアンモニウム(50.9g、149.87mmol)の攪拌した混合物に、25℃において空気下で5分間にわたって添加した。得られた混合物を25℃で20分間攪拌した。塩化4-メチルフェニルスルホニル(371g、1948.25mmol)を空気下で添加し、得られた混合物を25℃で16時間攪拌した。反応混合物をDCM(2000mL)で希釈し、水(2x500mL)、10%のK2CO3水(2x500mL)、及び1MのHCl(2x500mL)及び飽和NaCl(2x500mL)により順次洗浄した。有機層をNa2SO4上で乾燥させ、ろ過し、蒸発させた。約200mLのDCMが残ったときに、EtOAc(500mL)を添加した。溶媒を減圧下で除去した。約200mLのEtOAcが残ったときに、MTBE(1000mL)を添加した。沈殿物をろ過により収集し、MTBE(1000mL)で洗浄し、真空下で乾燥させて、7-ニトロ-1-トシル-1H-インドール(402g、85%)を白色固体として得た。
1H NMR(300MHz,DMSO-d6)δ 2.39(s,3H),7.09(d,1H),7.40-7.55(m,3H),7.75-7.85(m,3H),7.95-8.00(m,1H),8.06(d,1H).
m/z(ES+),[M+H]+=317.
【0043】
ステップ2
臭素(81mL、1580mmol)を、CCl4(1000mL)中の7-ニトロ-1-トシル-1H-インドール(50g、158mmol)に80℃で滴下した。得られた溶液を80℃で6時間攪拌した。混合物を室温まで冷却し、真空で濃縮し、残渣をEtOAcで洗浄して、3-ブロモ-7-ニトロ-1-トシル-1H-インドール(53g、85%)を茶色の固体として得た。
1H NMR(300MHz,DMSO-d6)δ 2.41(s,3H),7.55-7.62(m,2H),7.57(t,1H),7.85-7.92(m,3H),7.96(d,1H),8.49(s,1H).
m/z(ES-),[M-H]+=393.
【0044】
ステップ3
1,4-ジオキサン(1500mL)中の3-ブロモ-7-ニトロ-1-トシル-1H-インドール(200g、506mmol)、4,4,4’,4’,5,5,5’,5’-オクタメチル-2,2’-ビ(1,3,2-ジオキサボロラン)(193g、759mmol)、酢酸カリウム(99g、1012mmol)及びPdCl2(dppf)(18.5g、25.3mmol)の溶液を窒素により3回脱気し、反応混合物を90℃で8時間攪拌した。混合物を室温まで冷却し、真空で濃縮した。固体を水で処理し、ろ過し、メタノールで洗浄し、真空で乾燥させて、7-ニトロ-3-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-1-トシル-1H-インドール(150g、67%)を灰色の固体として得た。
1H NMR(400MHz,CDCl3)δ 1.41(s,12H),2.47(s,3H),7.38-7.43(m,3H),7.66(d,1H),7.87(d,2H),8.24(s,1H),8.29 -8.32(d,1H). m/z(ES+),[M+H]+=443.
【0045】
中間体2:2-フルオロ-3-(メチルスルホニル)アニリン
ステップ1
1,4-ジオキサン(10mL)中の3-ブロモ-2-フルオロアニリン(5g、26.31mmol)、N1,N2-ジメチルエタン-1,2-ジアミン(0.464g、5.26mmol)及びヨウ化ナトリウム(7.89g、52.63mmol)に、25℃において窒素下で1分間にわたって、ヨウ化銅(I)(1.002g、5.26mmol)を一度に添加した。得られた懸濁液を110℃で1日間攪拌した。反応混合物をセライトによりろ過し、真空で濃縮した。移動相として石油エーテル中5~30%のEtOAcの勾配を用いて、粗生成物をフラッシュシリカクロマトグラフィにより精製した。純粋な画分を真空で蒸発させて、2-フルオロ-3-ヨードアニリン(5.00g、80%)を茶色の油として得た。
1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ 5.32(bs,2H),6.59-6.83(m,2H),6.83-6.93(m,1H).
m/z(ES+),[M+H]+=238.
【0046】
ステップ2
DMSO(20mL)中の2-フルオロ-3-ヨードアニリン(5.00g、21.10mmol)、メタンスルフィン酸ナトリウム(3.23g、31.64mmol)、N1,N2-ジメチルエタン-1,2-ジアミン(0.558g、6.33mmol)に、窒素下で、ヨウ化銅(I)(0.402g、2.11mmol)を添加した。得られた懸濁液を95℃で18時間攪拌した。反応混合物をEtOAc(50mL)で希釈し、水(50mL)及び塩水(50mL)で洗浄した。有機層をNa2SO4上で乾燥させ、ろ過し、真空で蒸発させた。EtOAc/石油エーテル1:1を用いる分取TLCによって残渣を精製して、2-フルオロ-3-(メチルスルホニル)アニリン(3.20g、80%)を無色の油として得て、これは静置により凝固した。
1H NMR(400MHz,CDCl3)δ 3.20(s,3H),3.96(bs,2H),6.97-7.13(m,2H),7.20-7.31(m,1H).m/z(ES+),[M+H]+=190.
【0047】
中間体18:3-(5-フルオロ-2-((2-フルオロ-3-(メチルスルホニル)フェニル)アミノ)ピリミジン-4-イル)-1H-インドール-7-アミン
ステップ1
温度計及び窒素入口を備えた1Lの反応器に、炭酸カリウムの溶液(40.9mL、678.28mmol)を入れた。混合物を室温(23℃)でN2により3回脱気した。7-ニトロ-3-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-1-トシル-1H-インドール、中間体1(100g、226.09mmol)、2,4-ジクロロ-5-フルオロピリミジン(49.1g、293.92mmol)及びメチルTHF(1000mL)を添加し、室温で10分間攪拌した。得られた混合物を窒素により3回脱気した。ジクロロ[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウムジクロロメタン付加生成物(9.23g、11.30mmol)を反応混合物に添加し、得られた混合物を脱気し、再度バックフィルし(3xN2)、23℃で一晩攪拌して、黄色の沈殿物を得た。ヘプタン(500mL)を室温で反応混合物に加え、10分間攪拌した。その後攪拌を停止し、沈殿物を沈下させた。反応混合物を5℃まで冷却し、1時間攪拌した。沈殿物をガラス漏斗によりろ過し、水が中性pHになる(13体積、置換洗浄液、1.3L)まで水で洗浄した。次に、ろ過ケークを室温のEtOAc/ヘプタン混合物1:1(5x2体積、1L)、ヘプタン(2x200mL、2x2体積)で洗浄し、固体を真空下において35℃で一晩乾燥させて、3-(2-クロロ-5-フルオロピリミジン-4-イル)-7-ニトロ-1-トシル-1H-インドール(97g、有効収率89%)を得た。
1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ 2.41(s,3H),7.51(d,2H),7.69(t,1H),7.95(d,2H),8.01(dd,1H),8.75(d,1H),8.81(dd,1H),9.01(d,1H).m/z(ES+),[M+H]+=447.2.
【0048】
ステップ2
3-(2-クロロ-5-フルオロピリミジン-4-イル)-7-ニトロ-1-トシル-1H-インドール(89.5g、200.30mmol)、2-フルオロ-3-(メチルスルホニル)アニリン塩酸塩、中間体2(54.2g、240.36mmol)、Pd2(dba)3(9.17g、10.01mmol)及び2’-(ジシクロヘキシルホスフィノ)-N,N-ジメチル-[1,1’-ビフェニル]-2-アミン(7.88g、20.03mmol)を窒素下で2Lの反応器に添加した。脱気した2-2-メチルテトラヒドロフラン(1000mL)、及び水(450mL)中の炭酸セシウム溶液(137g、420.62mmol)を室温で添加し、反応混合物を脱気した(x7)。次に、反応を72.6℃まで加熱してから、一晩攪拌した。反応を4~5℃まで冷却し、少なくとも30分間攪拌した。固体をブフナー漏斗でろ過し、冷2-2-メチルテトラヒドロフラン(300mL、3体積)、水(3x300mL、3体積)及びEtOAc/ヘプタン混合物1:2(3x300mL、3体積)で洗浄し、40℃において真空下で乾燥させて、5-フルオロ-N-(2-フルオロ-3-(メチルスルホニル)フェニル)-4-(7-ニトロ-1-トシル-1H-インドール-3-イル)ピリミジン-2-アミン(77.89g、有効収率65%)を茶色の固体として得た。
1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ 2.56-2.64(m,3H),3.42(d,3H),7.52-7.64(m,4H),7.73(t,1H),7.98-8.09(m,3H),8.22(t,1H),8.71(s,1H),8.79(d,1H),8.94(d,1H),9.89(s,1H).
m/z(ES+),[M+H]+=600.2.
【0049】
ステップ3
5-フルオロ-N-(2-フルオロ-3-(メチルスルホニル)フェニル)-4-(7-ニトロ-1-トシル-1H-インドール-3-イル)ピリミジン-2-アミン(97.7g、129.87mmol)を室温で5Lの反応器に入れた。THF(100mL)及び3.8MのNaOH(水)(1000mL)の混合物を添加して、茶色の不溶性混合物を得た。混合物を75℃に加熱還流させ、週末にかけて攪拌した。THF(10体積)及びヘプタン(10体積)を反応混合物に加えた。次に、40分間かけてこれを17℃まで冷却させ、60分間攪拌し、固体をブフナー漏斗でろ過した。ろ過ケークを1Mのクエン酸(citic acid)(500mL、pHが中性になるまで)、水(5x300mL、pHが中性になるまで)で洗浄した後、ヘプタン/EtOAc(4x400mL)で洗浄した。固体を真空下で乾燥させて、5-フルオロ-N-(2-フルオロ-3-(メチルスルホニル)フェニル)-4-(7-ニトロ-1H-インドール-3-イル)ピリミジン-2-アミン(55.0g、95%)を得た。
1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ 3.27-3.38(m,3H),7.30(t,1H),7.47(t,1H),7.64(t,1H),8.11-8.29(m,3H),8.52(d,1H),8.98(d,1H),9.60(s,1H),12.57(s,1H).
m/z(ES+),[M+H]+=446.2.
【0050】
ステップ4
THF/EtOH 2:1(600mL)中の5-フルオロ-N-(2-フルオロ-3-(メチルスルホニル)フェニル)-4-(7-ニトロ-1H-インドール-3-イル)ピリミジン-2-アミン(59.5g、123.5mmol、92.5%Wt)の攪拌した懸濁液に、室温及び窒素下で、10%Pd/C(12.0g、123.5mmol、50%wet)、及びギ酸アンモニウム(46.8g、741.4mmol)の水(50mL)中の溶液を添加した。反応混合物を70℃までゆっくり加熱し、30分間攪拌した。12gの活性炭を添加し、混合物を15分間攪拌した。反応混合物を40℃まで冷却し、窒素下においてブフナー漏斗(紙)でろ過した。ろ過ケークをTHF/EtOH(160mL)で洗浄した。ろ液を4体積まで濃縮し、得られたスラリーを室温まで冷却し、窒素下でろ過した。固体を水(2体積)、エタノール(2体積)で洗浄し、40℃において窒素/真空下で乾燥させて、3-(5-フルオロ-2-((2-フルオロ-3-(メチルスルホニル)フェニル)アミノ)ピリミジン-4-イル)-1H-インドール-7-アミン(44.3g、86%)を薄茶色の固体として得た。
1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ 3.28(s,3H),5.20(bs,2H),6.43(dd,1H),6.78(t,1H),7.44(t,1H),7.57-7.63(m,1H),7.66(d,1H),8.09-8.25(m,2H),8.38(d,1H),9.34(s,1H),11.57(s,1H).m/z(ES+),[M+H]+=416.3.
【0051】
中間体28:メチル3-メトキシ-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)プロパノアート
1-メチルピペラジン(100g、988.4mmol)及び炭酸カリウム(164g、1186mmol)を窒素下で乾燥アセトニトリル(800mL)中でスラリー化した。50~60℃において40分間にわたってメチル2-ブロモ-3-メトキシプロパノアート(201g、988.4mmol)をスラリーに添加した。得られた混合物を窒素下において61℃で23時間加熱してから、20℃に冷却した。固体をろ過した。油状残渣になるまでろ液を蒸発させ、これを1MのHCl(1000mL)中に溶解させた。次に、4MのHCl(約300mL)を用いてpHを1に調整した。得られた溶液をDCM(200mL)で抽出した。飽和Na2CO3(1000mL)を用いて水溶液をpH9まで塩基性にし、DCM(2x500mL)で抽出した。次に、水酸化ナトリウムを用いて水相のpHを10~11まで上昇させ、DCM(2x500mL)で抽出した。4つの有機相を合わせ、真空で蒸発させて、メチル3-メトキシ-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)プロパノアート(181g、85%)を得た。
1H NMR(400MHz,CDCl3)δ 2.07(s,3H),2.14-2.34(m,4H),2.39-2.52(m,4H),3.14(s,3H),3.22(dd,1H),3.42(dd,1H),3.48-3.56(m,4H).
【0052】
中間体48:リチウム3-メトキシ-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)プロパノアート
THF(5mL)中のメチル3-メトキシ-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)プロパノアート、中間体28(1.93g、8.92mmol)の溶液に、水酸化リチウム(0.321g、13.39mmol)の水(5mL)中の溶液を添加した。反応混合物が透明になるまで、数滴のMeOHを添加した。反応を40℃で24時間加熱した。有機物を真空で蒸発させた。残渣を水で希釈し、凍結乾燥(x3)して、リチウム3-メトキシ-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)プロパノアート(1.92g、103%)を固体として得た。
1H NMR(500MHz,D2O)δ 2.06(s,3H),2.48(bs,8H),2.99(t,1H),3.20(s,3H),3.46-3.57(m,2H).
【0053】
式(Ia)の遊離塩基化合物の合成
リチウム3-メトキシ-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)プロパノアート、中間体48(430mg、2.06mmol)、2-(3H-[1,2,3]トリアゾロ[4,5-b]ピリジン-3-イル)-1,1,3,3-テトラメチルイソウロニウムヘキサフルオロホスファート(V)(785mg、2.06mmol)及びDIPEA(1.068mL、6.11mmol)をDMF(10mL)中に溶解させ、室温で5分間攪拌してから、3-(5-フルオロ-2-((2-フルオロ-3-(メチルスルホニル)フェニル)アミノ)ピリミジン-4-イル)-1H-インドール-7-アミン、中間体18(635mg、1.53mmol)を添加した。
【0054】
反応を室温で2時間攪拌してから、DCM(75mL)及び5%のNa2CO3(水)(50mL)で希釈し、振とうさせ、相を分離した。水相をDCM(2x50mL)で抽出した。合わせた有機相を相分離器で乾燥させ、ろ過し、真空で蒸発させた。100mL/分の流量で20分間にわたってH2O/ACN/NH395/5/0.2緩衝液中15~65%のアセトニトリルの勾配を用いて、XBridge C18カラム(10μm、250x50mm)における分取HPLCによって化合物を精製した。220nmのUVにより化合物を検出した。生成物ピークを収集し、凍結乾燥した。次に、アセトニトリルから結晶化させ、ろ過により固体を収集し、最小量のアセトニトリルで洗浄し、真空で乾燥させた。
【0055】
140mL/分の流量で150バールのCO2中25%のIPA/DEA 100:0.5を用いて、CelluCoat(250x30mm、5μm)カラムにおけるキラル-SFCによりエナンチオマーを分離した。270nmのUVによりエナンチオマーを検出した。最初に溶出するエナンチオマーを収集し、凍結乾燥して、N-(3-(5-フルオロ-2-((2-フルオロ-3-(メチルスルホニル)フェニル)アミノ)ピリミジン-4-イル)-1H-インドール-7-イル)-3-メトキシ-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)プロパンアミドを得た。
【0056】
2番目に溶出するエナンチオマーを収集し、凍結乾燥した。油浴を用い、種を添加して、70℃に加熱したEtOH/水(3:1)(5mL)中の懸濁液を攪拌することによって残渣を再結晶させた。次に、油浴温度を23℃に設定し、懸濁液をゆっくり室温に到達させた。攪拌を5日間継続して、より長い針状結晶と混ざり合った短い針状結晶を含有する乳状のスラリーを得た。懸濁液を攪拌しながら70℃まで加熱してから、加熱及び攪拌を停止し、混合物をゆっくり室温に到達させた(2x)。良好な長い針状結晶のみ。懸濁液を攪拌せずにさらに1週間静置させた。固体をろ過し、40℃において真空で乾燥させて、(R)-N-(3-(5-フルオロ-2-(2-フルオロ-3-(メチルスルホニル)フェニルアミノ)ピリミジン-4-イル)-1H-インドール-7-イル)-3-メトキシ-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)プロパンアミド(186mg、20%、99.4%ee)を白色針状結晶として得た。
1H NMR(500MHz,DMSO-d6)δ 2.14(s,3H),2.23-2.45(m,4H),2.57-2.67(m,2H),2.69-2.78(m,2H),3.26-3.34(m,6H),3.50(t,1H),3.67(dd,1H),3.79(dd,1H),7.03(t,1H),7.4-7.55(m,2H),7.62(t,1H),8.13-8.33(m,3H),8.44(d,1H),9.46(s,1H),9.84(s,1H),11.48(s,1H).19F NMR(470MHz,DMSO-d6)δ -120.52,-147.75.m/z(ES+),[M+H]+=600.5.
【0057】
式(Ia)のキシナホ酸塩の合成
(R)-N-(3-(5-フルオロ-2-((2-フルオロ-3-(メチルスルホニル)フェニル)アミノ)ピリミジン-4-イル)-1H-インドール-7-イル)-3-メトキシ-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)プロパンアミド(345g、563.82mmol)を、酢酸エチル(20体積)(7L)及びメタノール(4体積)(1.4L)(「SM溶液」)と共に、10Lの反応器に入れた。ジャケット温度を65℃に設定した。1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸(106g、563.82mmol)を、2Lの反応器内でメタノール(1,5体積)(0.7L)及び酢酸エチル(1,5体積)(0.7L)中に溶解させ、50℃に加熱した。キシナホ酸溶液をセライトによりポリッシュろ過(polish filter)して、不溶性物質を除去し、EtOAc/MeOH(2:1、150ml)で洗い流した。SM溶液をセライトフィルタによりポリッシュろ過し、フィルタ内ではなく受入容器内で冷却によりSMを結晶化させた。約9Lの場合にろ過時間は30分であった。SM懸濁液を反応器に再度入れ、65℃に加熱して再溶解させた。キシナホ酸溶液を20Lの反応器に添加し、ジャケット温度を70℃に設定した。溶液(SM溶液+キシナホ酸溶液)に、(R)-N-(3-(5-フルオロ-2-((2-フルオロ-3-(メチルスルホニル)フェニル)アミノ)ピリミジン-4-イル)-1H-インドール-7-イル)-3-メトキシ-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)プロパンアミドの結晶性材料の種を入れ、即座に結晶化が開始された。ヘッドスペースを通して窒素空気流を凝縮器に通過させ、MeOHを蒸留除去した。酢酸エチル(2L)を5分にわたって添加して、共沸混合物への損失を補償し、約3Lを蒸留除去した。蒸留を完了させた(5Lを収集した)。600分にわたる75℃~10℃の冷却勾配を開始させ、次に10℃に保持した。P3焼結ガラス漏斗を用いて固体をろ過した。ろ過は非常に速かった。酢酸エチル(2L)を含む反応器によって固体を洗浄し、漏斗内に放置して窒素空気流の下で乾燥させた。固体を乾燥バットに移し、40℃の真空オーブン内で乾燥させた。
質量スタート(mass start):426g
(4-{(2R)-1-[(3-{5-フルオロ-2-[2-フルオロ-3-(メタンスルホニル)アニリノ]ピリミジン-4-イル}-1H-インドール-7-イル)アミノ]-3-メトキシ-1-オキソプロパン-2-イル}-1-メチルピペラジン-1-イウム;1-ヒドロキシナフタレン-2-カルボキシラート(420g、95%)をオフホワイトの結晶性固体として得た。
1H NMR(400MHz,DMSO)δ 0.97(s,0H),1.78(s,0H),2.29(s,3H),2.58-3.03(m,8H),3.09(s,7H),3.37-3.72(m,3H),3.83(s,0H),6.69-6.97(m,2H),7.11-7.36(m,4H),7.42(s,1H),7.54(t,2H),7.86-8.16(m,4H),8.24(s,1H),9.26(s,1H),9.86(s,1H),11.52(s,1H).
【0058】
XRPDのために、Theta-Theta Bruker D8 Advance(X線の波長1.5418Å ニッケルフィルタをかけたCu放射線、電圧40kV、フィラメント放出40mA)を用いて、シリコン単結晶(SSC)ウェハマウントの上にサンプルを取り付け、粉末X線回折を記録した。2.5°ソーラースリット及び3mmの散乱防止スリットを使用し、測定中にサンプルを回転させた。0.02°ステップ幅及び0.04°s-1時間/ステップの測定時間を使用し、LynxEye 3°PSD検出器(10.5mmの検出器スリット)を用いて、2~50°2-シータでサンプルを走査した
【0059】
【0060】
実施例2
式(Ia)の遊離塩基化合物の結晶構造(単結晶X線回折SXRDを用いて実施)から、この形態は不定比の水和物であることが決定された。これは、0~80%の相対湿度で2%w/wの水の取込みが観察され、化合物が室温(RT)~120℃で5%w/wの重量損失を示したので、重量蒸気吸着分析(gravimetric vapor sorption analysis)(GVS)によってもさらに裏付けられた。
【0061】
したがって、塩スクリーニングを実施し、試験した20個の対イオンから、3個の塩(リン酸塩、硫酸塩及びキシナホ酸塩)をスケールアップ(5g)し、さらなる分析を実施した。リン酸塩及び硫酸塩は、キシナホ酸塩と比べて少ない結晶化度を示し、3.2%w/w RT-120℃(硫酸塩)、及び5.4%w/w RT-120℃(リン酸塩)の重量損失を示した。これらの2つの塩はキシナホ酸と比べてこのような不利な固体状態の特性を示し、遊離塩基と同様か又はそれよりも悪かったので、これらにおいて重量吸着分析は実施されない。
【0062】
キシナホ酸塩の(SXRDからの)結晶構造は、この塩が、式(Ia)の遊離塩基化合物の不定比の水和物ではなく無水形態である1:1塩であることを示した。SXRDからの模擬粉末パターンを実験的な粉末X線回折データ(PXRD)と重ね合わせ、単結晶構造がバルクと同じであることが示された。
【0063】
独立して、多形体スクリーニングにより、式(Ia)の遊離塩基化合物の不定比水和物は周囲条件下で特定される最も安定した形態であり、無水の遊離形態を得る機会は非常に低いと考えるべきであることが示された。110を超える溶媒及び非溶媒に基づくスクリーニング実験を含むスクリーニングは、Almacにおいて実施した。キシナホ酸塩は、式(1a)の化合物の非吸湿性形態であり、0~80%の相対湿度の間で0.2%w/wの吸収を示し、化合物をRT~120℃の間に加熱すると0.2%w/wの重量損失を示すことが見出されたが、式(Ia)の遊離塩基化合物は、わずかに吸湿性であり、0~80%相対湿度で1.7%w/wの吸収を示し、室温(RT)から120℃までに5%w/wの重量損失を示すことが見出された。
【0064】
【0065】
実施例3
式(Ia)のキシナホ酸塩の代替的な合成はさらに以下に記載される:
【化5】
ステップ1:2-フルオロ-3-(メチルスルホニル)アニリン(2)
不活性化した反応器に、2-フルオロ-3-ブロモアニリン(1)(930g、1当量、4.9mol)及びメタンスルフィン酸ナトリウム(3当量、1.5kg)を添加した後、DMSO(5L)を添加した。反応器の内容物を5回不活性化し、20~30℃で30分間攪拌した。ヨウ化銅(I)(0.2当量、187g)及び1,2-ジメチルエチレンジアミン(0.4当量、173g)を反応器に添加してから、これを3回不活性化した。反応混合物を110~120℃で17時間攪拌した後、これは、すぐにワークアップできると見なされた。混合物を20~30℃まで冷却し、水(10L)を添加した後、酢酸エチル(10L)を添加した。混合物を30分間攪拌し、有機層を分離し、水相を酢酸エチルで2回(2x10L)抽出した。合わせた有機相を蒸発乾固させ、2Lの酢酸エチル中に溶解させた。粗生成物溶液を短いシリカカラムによりろ過し、カラムを10Lの酢酸エチル/石油エーテルの1:1混合物で洗浄した。次に、溶出液を2Lまで濃縮した。この溶液にヘプタン(1L)を20~30℃で2時間かけてゆっくり添加した。沈殿した生成物をろ過し、減圧下40~50℃で乾燥させて、0.6kg、65%の所望の生成物を得た。
【化6】
【0066】
ステップ2:
7-ニトロ-3-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-1-トシル-1H-インドール(4)
不活性化した反応器に、3-ブロモ-7-ニトロ-1-(p-トリルスルホニル)インドール(3)(1.2kg、3mol)及びビス(ピナコラト)ジボラン(1.14kg、4.5mol、1.5当量)を添加した後、酢酸カリウム(590g、6mol、2当量)を添加した。次に、反応器の内容物を不活性化し、8.4Lの1,4-ジオキサンを加えた。反応器を3回不活性化した後、Pd(PPh3)4(0.01当量、35g)を添加した。反応混合物を95~100℃に加熱し、18時間攪拌した。HPLCサンプルを取り、混合物を20~30℃に冷却した。2-メチル-THF(8.4L)及び8.4Lの水を反応混合物に添加し、次にこれを30分間攪拌した。有機層を分離し、10%の塩化ナトリウム(水)(8.4L)で3回洗浄した。有機溶液を蒸発乾固させ、アセトニトリル(6L)と共蒸発させた。最後に、6Lのアセトニトリルを添加し、混合物を20~30℃で2時間攪拌してから、0~5℃に冷却し、2時間攪拌した後、ろ過した。ろ過した生成物を減圧下40~50℃で乾燥させて、1kg(75%)の所望の生成物(4)を得た。
【0067】
ステップ3:
3-(2-クロロ-5-フルオロピリミジン-4-イル)-7-ニトロ-1-トシル-1H-インドール(6)
不活性化した反応器に、7-ニトロ-3-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-1-トシル-1H-インドール(4)(1kg、2.26mol)及び2,4-ジクロロ-5-フルオロピリミジン(5)(442g、1.2当量)を添加した後、4Lの2-MeTHFを添加した。2Lの水中の炭酸カリウム(937g)(3当量)の溶液を反応器に入れ、次にこれを5回不活性化した。触媒Pd(dppf)Cl
2-DCM(92g、0.05当量)(113mmol)を反応器に添加し、次にこれを3回不活性化し、混合物を20~30℃で17時間攪拌した。LCMS用サンプルを取り、20~30℃で2時間にわたって4Lのn-ヘプタンを反応器に添加した。沈殿物をさらに30分間攪拌した後、生成物をろ過し、ろ液が中性(pH7~8)になるまで水(7L)で洗浄した。湿ったろ過ケークを酢酸エチル(3L)(3体積)中でスラリー化し、ろ過した。最後に、ろ過ケークを1Lの酢酸エチルで洗浄し、減圧下40~50℃で乾燥させて、0.9kg(89%)の所望の生成物(6)を得た。
【化7】
【0068】
ステップ4:
5-フルオロ-N-(2-フルオロ-3-(メチルスルホニル)フェニル)-4-(7-ニトロ-1-トシル-1H-インドール-3-イル)ピリミジン-2-アミン(7)
不活性化した反応器に、Pd2(dba)3(124g)(0.05当量)及びDavePhos(106g)(0.1当量)を添加した後、2-メチルテトラヒドロフラン(3L)を添加した。反応器を3回不活性化し、20~30℃で30分間攪拌した。3-(2-クロロ-5-フルオロピリミジン-4-イル)-7-ニトロ-1-トシル-1H-インドール(6)(1当量、1.2kg、2.7mol)及び2-フルオロ-3-(メチルスルホニル)アニリン塩酸塩(2)(1当量、610g、2.7mol)を、その後2-メチルテトラヒドロフラン(3L)を反応器に加えた。その後、水(2.4L)中の炭酸セシウム(1.1当量、970g)を反応器に添加し、次にこれを再度3回不活性化した。完了したと見なされたら、反応混合物を75~80℃で18時間攪拌した。反応混合物を20~30℃に冷却し、沈殿した生成物をろ過した。ろ過ケークを2-メチルテトラヒドロフラン(5L)で、その後水(5L)で、最後にアセトン(5L)で洗浄した。生成物を減圧下40~50℃で乾燥させて、1.3kgの所望の生成物(7)(80%)を得た。1H NMR(400MHz,DMSO)δ 2.40(s,3H),3.32(s,3H),7.43-7.54(m,4H),7.65(t,1H),7.93(dd,3H),8.13(t,1H),8.57-8.66(m,1H),8.69(d,1H),8.84(d,1H),9.79(s,1H).
【0069】
ステップ5:
5-フルオロ-N-(2-フルオロ-3-(メチルスルホニル)フェニル)-4-(7-ニトロ-1-トシル-1H-インドール-3-イル)ピリミジン-2-アミン(8)
不活性化した反応器に、5-フルオロ-N-(2-フルオロ-3-(メチルスルホニル)フェニル)-4-(7-ニトロ-1-トシル-1H-インドール-3-イル)ピリミジン-2-アミン(7)(1.10kg、1当量、1.84mol)を添加した後、THF(5.5L)を添加した。反応器に4MのNaOH水(2.2L)を添加し、得られた混合物を65~70℃で45時間攪拌し、その後、完全な加水分解が達成された。15~25℃でMTBE(6.6L)を攪拌しながら3時間かけて添加し、細かい沈殿物が生じた。混合をろ過し、ろ過ケークを中性になるまで水で洗浄した。最後にケークをメタノール(2.2L)で洗浄した。所望の生成物を減圧下40~50℃で乾燥させ、0.70kg(84%)の所望の生成物(8)を得た。1H NMR(400MHz,DMSO)δ 3.33(s,3H),7.30(t,1H),7.47(t,1H),7.64(ddd,1H),8.06-8.26(m,3H),8.51(d,1H),8.97(d,1H),9.60(s,1H),12.56(s,1H).
【0070】
ステップ6:
3-(5-フルオロ-2-((2-フルオロ-3-(メチルスルホニル)フェニル)アミノ)ピリミジン-4-イル)-1H-インドール-7-アミン(9)
55℃に予熱した25Lの不活性化した反応器に、5-フルオロ-N-(2-フルオロ-3-(メチルスルホニル)フェニル)-4-(7-ニトロ-1H-インドール-3-イル)ピリミジン-2-アミン(8)(578g、1.26mol)を入れた後、THF(8.5L)を入れた。この懸濁液に2.3Lの水中のギ酸アンモニウム(ammonium formiate)(475g、7.53mol)を添加した後、Pd/C(170g、80mmol Pd)を添加し、最後に4.3Lのエタノールを5分間添加した。最終混合物を室温から43℃まで加熱した。ガス発生が認められるエタノールの添加により反応を開始させた。UPLC-MSによりモニターされるように、1時間以内に転化は完了した。反応混合物を高温ろ過して、Pd/Cを除去した。反応器を3Lの高温THF/エタノール2:1(55℃)で洗い流し、これもフィルタを通して収集した。半固体の混合物になるまでろ液を蒸発させ、これを窒素下で一晩、2.5Lのエタノールで粉末化(triturate)した。生成物をろ過し、真空において40℃で乾燥させた。収率:508g、アッセイ100%。m.p.:236C(オンセットDSC)、HRMS(ESI
+):[M+H]
+m/z C
19H
15F
2N
5O
2Sの計算値416.0987;実測値416.0996。
1H NMR(400MHz,DMSO)δ 3.29(s,3H),5.20(s,2H),6.44(d,1H),6.79(t,1H),7.45(t,1H),7.56-7.75(m,2H),8.08-8.25(m,2H),8.39(d,1H),9.35(s,1H),11.58(s,1H).
19F NMR(376MHz,DMSO)δ -147.61,-120.58.
【化8】
【0071】
ステップ7:
メチル3-メトキシ-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)プロパノアート(10)
窒素下のガラス反応器に、炭酸カリウム(396g、1.3当量)を添加した後、1.8Lの乾燥アセトニトリル、Sigma-Aldrich 34851N(0.004%の水)及び1-メチルピペラジン(99%、234g、2.3mol、1.05当量)を添加した。ジャケットを60℃に設定した。得られたスラリーに、200mlの乾燥アセトニトリル中のメチル2-ブロモ-3-メトキシプロパノアート(448g、97%、2.2mol、300ml)を60℃で1時間にわたって添加し、反応温度を還流温度よりも低く保持した。19時間後に、NMRにより99%の転化率が証明された。24時間後に反応をワークアップした。反応器の内容物をセライトディッシュフィルタによりろ過した。ろ過ケークを500mlのアセトニトリルで洗浄し、合わせた有機物を油になるまで蒸発させた。粗生成物油を1Lの酢酸イソプロピル中に溶解させ、200mlの水で抽出して、塩を除去した。生成物は水中に非常に溶けやすく、材料を回収するために、酢酸イソプロピルによる逆洗浄が必要とされる(たくさんの余分な作業を生じ、わずかに改善された生成物純度しかもたらさないので、この水洗は省略することができる)。合わせた酢酸イソプロピル抽出物を60℃において減圧で蒸発させた。これにより、表題の化合物(10)が黄色の油として得られた(471g、99%w/w、収率98%)。1H NMR(400MHz,CDCl3)δ 2.16(s,3H),2.33(m,4H),2.55(m,4H),3.23(s,3H),3.31(dd,1H),3.51(dd,1H),3.60(dd,1H),3.61(s,3H).13C NMR(101MHz,CDCl3)δ 45.97,50.01,51.32,55.20,59.09,67.03,70.71,170.85 .HRMS(ESI+):[M+H]+m/z C10H21N2O3の計算値217.1552;実測値217.1547。
【0072】
ステップ8:
リチウム3-メトキシ-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)プロパノアート(11)
窒素下の5Lの反応器内の1Lの純水中の87gのLiOHxH2O(98%)(1.07当量)の溶液に、1LのTHF及び300mlのメタノール中のメチル3-メトキシ-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)プロパノアート(441g、2000mmol)の溶液を添加した。反応混合物を40℃で72時間加熱し、その後、NMRにより完全な転化が証明された。反応混合物を蒸発させて油にし、これは、40℃の真空中での乾燥後に泡状物質として凝固し、表題の化合物(11)が得られた(435g、97%w/w、収率93%)。1H NMR(400MHz,CDCl3)δ 2.24(s,3H),2.45(m,4H),2.64(m,4H),3.02(dd,1H),3.63(dd,1H),3.72(dd,1H).13C NMR(101MHz,DMSO)δ 45.9,49.76,55.01,57.91,70.18,72.18..HRMS(ESI+):[Macid+H]+m/z C9H19N2O3の計算値203.1396;実測値203.1388。
【0073】
ステップ9:
クロマトグラフィ
120バール、30℃、420g/分の流量でCO2中25%MeOH/NH3 100/0.5の移動相を用いるLux Cellulose-4(5μm、250x50mm)、及び215nmでの検出を使用して、キラル超臨界流体クロマトグラフィにより11のエナンチオマー(180g、865mmol)を分離した。2番目に溶出した化合物を収集し、蒸発させて、表題の化合物の(R)-3-メトキシ-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)プロパン酸(80g、99.6%ee)を得た。
【0074】
ステップ9a:
塩の分割
(R)-3-メトキシ-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)プロパン酸のL-(+)-酒石酸塩
窒素下で、攪拌した反応器において、625mlの蒸留水中にリチウム3-メトキシ-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)プロパノアート(208g、1mol)を溶解させ、3.8MのHCl(340ml)を用いてpHを4に調整した。温度は周囲温度から33℃に上昇した。L-(+)-酒石酸(145g、0.97mol)を170mlの蒸留水中に溶解させ、先の溶液に添加した後、300mlのエタノール(99.5%w/w)を添加した。種を加えることにより結晶化が誘導され得るが、室温(20~21℃)で一晩の攪拌も結晶化を誘導した。ろ過の前に、200mlのエタノール(99.5%w/w)をゆっくり添加し、反応混合物を10℃まで冷却し、攪拌を1時間継続させた。生成物をろ過し、300mlの冷エタノール(99.5%w/w)で洗浄した。収集した生成物結晶を真空中40℃で72時間乾燥させた。収量144g、Mw=388.37(x線結晶構造分析によると2個の結晶水)、0.37mol、74%。m.p.139℃(ピーク、DSC)。1H NMR(400MHz,D2O)δ 2.98(s,3H),δ 2.84(s,3H),δ 3.45-3.71(m,8H),δ 3.84(t,1H),δ 3.92(dd,2H),δ 4.53(s,4H),δ 4.79(s,4H)+溶媒からの付加的な水。
結晶データ。C13H28N2O11、Mr=388.37、斜方晶、P212121(No.19)、a=7.1515(4)Å、b=13.9607(7)Å、c=17.6138(11)Å、α=β=γ=90°、V=1758.56(17)Å3、T=100(2)K、Z=4、Z’=1、μ(CuKα)=1.109、測定した反射10608、3096ユニーク(Rint=0.0898)、これらを全ての計算において使用した。最終wR2は0.2209(全データ)であり、R1は0.0670(I>2(I))であった。
【0075】
ステップ9b:
(R)-3-メトキシ-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)プロパン酸ビス塩酸塩(12)
40gの(R)-3-メトキシ-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)プロパン酸のL-(+)-酒石酸塩を200mlの温かい蒸留水中に溶解させ、カラム内の300mlのDowex 50WX2-100カチオン性イオン交換樹脂(そのH形態で約200g)(蒸留水で中性になるまで洗浄)に負荷した。添加後に完全に中性になるまで、蒸留水(約700ml、2~3カラム体積)でカラムを溶出させた。次に、2MのHCl(900ml)(3カラム体積)でアミノ酸を溶出させて、28g、90%(乾燥重量)のアミノ酸HCl塩を油として得た。これはすぐに結晶化した。イオン交換に連結された検出器はなかったので、いくらかの物質はまだカラム上に存在するかもしれない。NMR.アッセイ93%、含水量2.24%(KF)。21gの生成物を5体積の還流する無水エタノール(材料が非結晶性であれば、3体積で十分である)(100ml)中に溶解させ、放置して周囲温度まで冷却した。結晶化が終了したら、3体積のMTBE(60ml)をゆっくり添加して、塩の溶解性を低下させた。生成物をろ過し、減圧下40℃で17時間乾燥させた。融点141.6(DSC、オンセット、3C/分)。含水量6.12%(6.18% 1つの結晶水分子)NMRアッセイ97.5%。収率70%、14g。塩はエタノール中で溶解性を有し、これにより再結晶(recryst)の完全な溶媒ではなくなるが、水を塩に添加する。母液は、欠損(missing)30%を含有し、これは回収することができる。
1H NMR(400MHz,D
2O)δ 2.99(s,3H),δ 3.33(s,3H),δ 3.53(t,2H),δ 3.66(m,2H),δ 3.85(t,2H),δ 3.96(m,1),δ 3.98(d,2H),δ 4.32(t,1H),δ 4.79(s,2H)+溶媒からの付加的な水。
【化9】
【0076】
ステップ10:
(R)-N-(3-(5-フルオロ-2-((2-フルオロ-3-(メチルスルホニル)フェニル)アミノ)ピリミジン-4-イル)-1H-インドール-7-イル)-3-メトキシ-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)プロパンアミド(13)
10Lの不活性化したクライオ(cryo)反応器に、室温で、(R)-3-メトキシ-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)プロパン酸、2HCl(12)(430g、1187,6mmol)を入れた後、3LのDMF(6体積)を入れた。薄茶色の溶液に3-(5-フルオロ-2-((2-フルオロ-3-(メチルスルホニル)フェニル)アミノ)ピリミジン-4-イル)-1H-インドール-7-アミン(9)(449g、1079,6mmol)を加えた。得られた暗茶色の透明溶液を-20℃まで冷却(ジャケットを-30℃に設定)した。ピリジン(1.3L)を5分間で反応器に添加した。有意な発熱は観察されなかった。-20℃において、DMF中のプロパンホスホン酸無水物(T3P)(1,9L、3239mmol)を、-13℃を超えずに非常にゆっくり添加した。発熱反応のためにジャケットを-40℃に設定した。75分後に添加を終了した。添加の2/3が終了したら、サンプルを採取し、SFC-MSを実行し、ほぼ完全な転化であった。完全な添加後に完全に転化した。最終分析UPLC-MS。-15℃で1時間、水をゆっくり添加することにより、反応混合物をクエンチした。クエンチした混合物を-15℃でさらに30分間攪拌した。より大きい反応器において、8.5%のNaHCO3(14L)を前もって調製し、泡の発生を最小限にするために+5℃に冷却した。冷却クエンチした反応混合物を、圧力下で短い管を適用することにより、8.5%のNaHCO3(14L)を含有する反応器にゆっくり移した。1時間添加した後、さらに18Lの飽和重炭酸塩溶液を添加し、それにより、透明溶液から生成物が沈殿し始めた。沈殿した生成物の混合物を+5℃で30分間攪拌した。クレイ状の粗生成物をろ過した。ろ過した生成物は不十分であり、手順は実施するのにかなりの時間を要した。生成物を減圧下40℃で72時間乾燥させた。収量665g、87%(81%)のアッセイ。
【0077】
乾燥した粗材料665g(87%のアッセイ)を不活性化した反応器に入れ、13Lのアセトニトリルを添加した。混合物を周囲温度から開始して、還流させて攪拌した。アセトニトリル(2L)を添加して、生成物の溶解性を改善した。非透明溶液を透明ろ過し、それによりいくらかの結晶化が開始された。ろ過は困難であり、不溶性材料がフィルタを目詰まりさせた。目詰まりが生じたら、フィルタ内の生成物溶液を反応器へ戻さなければならなかった。全体で、ろ過中に体積は倍増され、長時間を要した。透明ろ過した有機物を別の反応器に移し、体積を13Lまで低下させた。24時間にわたって5℃まで徐冷して、還流(透明溶液)から結晶化を開始させた。生成物をろ過し、2体積の冷アセトニトリルで洗浄した。生成物を減圧下40℃で一晩乾燥させた。収率:364g、63%、純度98%(NMR)
HRMS(ESI+):[M+H]+m/z C28H31F2N7O4Sの計算値600.2204;実測値600.2199。1H NMR(400MHz,DMSO)δ 2.14(s,3H),2.35(s,4H),2.55-2.68(m,2H),2.68-2.85(m,2H),3.29(s,3H),3.30(s,3H),3.51(t,1H),3.67(dd,1H),3.79(dd,1H),7.04(t,1H),7.39-7.57(m,2H),7.62(td,1H),8.11-8.33(m,3H),8.44(d,1H),9.46(s,1H),9.88(s,1H),11.53(s,1H).
【0078】
ステップ11:
(R)-N-(3-(5-フルオロ-2-((2-フルオロ-3-(メチルスルホニル)フェニル)アミノ)ピリミジン-4-イル)-1H-インドール-7-イル)-3-メトキシ-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)プロパンアミドキシナホ酸塩(14)
(R)-N-(3-(5-フルオロ-2-((2-フルオロ-3-(メチルスルホニル)フェニル)アミノ)ピリミジン-4-イル)-1H-インドール-7-イル)-3-メトキシ-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)プロパンアミド(13)(345g、563.82mmol)を不活性化した10Lの反応器に入れた。酢酸エチル(7L、20体積)及びメタノール(1.4L、4体積)を加えた。全てが溶解するまで混合物を65℃に加熱した。溶液をセライトフィルタにより高温ポリッシュろ過した。ろ液中で結晶化が生じた。スラリー状のろ液を反応器に戻し、完全に再溶解するまで60℃に加熱した。1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸(106g、563.82mmol)を不活性化した2Lの反応器に入れた。メタノール(0.7L、1.5体積)及び酢酸エチル(0.7L、1.5体積)を加え、全てが溶解するまで混合物を50℃に加熱した。溶液をポリッシュろ過し、フィルタをEtOAc/MeOH(2:1、150ml)で洗い流した。得られた溶液を60℃で10Lの反応器に添加して、透明溶液が得られ、これを10分間攪拌した。先のバッチからの結晶性材料(7g)を用いて溶液に種を入れた。即座に結晶化が始まった。ヘッドスペースを通る窒素流を用いて、周囲圧力及び75℃のジャケット温度で、還流温度が70℃を超えるまで溶媒を蒸留した。5Lの留出物を収集し、EtOAc(2L)を反応器に添加して、体積損失を補償した。10時間かけて反応器をゆっくり10℃まで冷却し、その温度を4時間維持した。固体をろ過し、酢酸エチル(2L)を含む反応器によって洗浄した。固体を真空下40℃で乾燥させた。(R)-N-(3-(5-フルオロ-2-((2-フルオロ-3-(メチルスルホニル)フェニル)アミノ)ピリミジン-4-イル)-1H-インドール-7-イル)-3-メトキシ-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)プロパンアミドキシナホ酸塩(14)(420g、収率95%)をオフホワイトの結晶性固体として得た。純度(NMR)97.7%
1H NMR(400MHz,DMSO)δ 2.29(s,3H),2.58-3.03(m,8H),3.09(s,7H),3.37-3.72(m,3H),6.69-6.97(m,2H),7.11-7.36(m,4H),7.42(s,1H),7.54(t,2H),7.86-8.16(m,4H),8.24(s,1H),9.26(s,1H),9.86(s,1H),11.52(s,1H).19F NMR(376MHz,DMSO)δ -147.71,-120.45.融点:189℃(DSC、ピーク)
HRMS(ESI+):[M+H]+m/z C28H31F2N7O4Sの計算値600.2204;実測値600.2199(親)
4-[(1R)-1-カルボキシ-2-メトキシエチル]-1-メチルピペラジン-1-イウム(2R,3R)-3-カルボキシ-2,3-ジヒドロキシプロパノアート水和物(1:1:2)及び1-[(1R)-1-カルボキシ-2-メトキシエチル]-4-メチルピペラジン-1,4-ジイウムジクロリドの調製のための方法であって、
(i)リチウム3-メトキシ-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)プロパノアートを蒸留水中にpH4で溶解させるステップと、
(ii)L-(+)-酒石酸を蒸留水中に溶解させるステップと、
(iii)ステップ(i)及びステップ(ii)からの2つの溶液をエタノールなどの適切な溶媒中で混合して、結晶化を誘導するステップと、
(iv)ステップ(iii)の混合物を室温で20時間攪拌するステップと、
(v)エタノールなどの適切な溶媒をステップ(iv)の混合物に添加し、冷却後にろ過して、生成物4-[(1R)-1-カルボキシ-2-メトキシエチル]-1-メチルピペラジン-1-イウム(2R,3R)-3-カルボキシ-2,3-ジヒドロキシプロパノアート水和物(1:1:2)を生じさせるステップと、
(vi)ステップ(v)の生成物を収集し、減圧下で72時間乾燥させるステップと、
(vii)ステップ(vi)の生成物を蒸留水中に溶解させるステップと、
(viii)ステップ(vii)の生成物に対してカチオン性イオン交換を実施するステップと、
(ix)ステップ(viii)の生成物を2MのHClで溶出させ、その溶液を蒸発乾固させ、1-[(1R)-1-カルボキシ-2-メトキシエチル]-4-メチルピペラジン-1,4-ジイウムジクロリドの結晶化を誘導するステップと
を含む方法。