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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110917
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】多層疎水膜
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/316 20060101AFI20240808BHJP
【FI】
H01L21/316 X
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023195791
(22)【出願日】2023-11-17
(31)【優先権主張番号】18/105,828
(32)【優先日】2023-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】512221197
【氏名又は名称】エスピーティーエス テクノロジーズ リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マイケル グライムス
(72)【発明者】
【氏名】ユーユアン リン
【テーマコード(参考)】
5F058
【Fターム(参考)】
5F058BB04
5F058BB06
5F058BC03
5F058BE10
5F058BF02
5F058BF27
5F058BF29
5F058BF37
5F058BJ04
(57)【要約】
【課題】薄膜前駆体分子の重合を制御して特定用途向けに改善された薄膜特性を提供する。
【解決手段】不活性被覆を基板の表面の全体未満に付加することによって、その不活性被覆間にてその基板上に露出領域を形成する。前駆体をその基板の周辺に導入することによって、ポリマ被覆を、その基板の露出領域上に直に形成する。そのポリマ被覆を、その基板の露出領域上に吸着されたものとすることができる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
堆積方法であって、
基板の表面の全体未満に不活性被覆を付加することによって、その不活性被覆間にてその基板上に露出領域を形成し、且つ、
前記基板の周辺に前駆体を導入することによって、その基板の前記露出領域上に直にポリマ被覆を形成する、
堆積方法。
【請求項2】
請求項1に記載の堆積方法であって、前記ポリマ被覆が前記基板の前記露出領域上にのみ形成される堆積方法。
【請求項3】
請求項1に記載の堆積方法であって、前記ポリマ被覆が、前記基板の前記露出領域上に形成され且つ露出領域間にて前記不活性被覆上にかけ延設される堆積方法。
【請求項4】
請求項1に記載の堆積方法であって、前記ポリマ被覆が前記基板の前記露出領域上に吸着される堆積方法。
【請求項5】
請求項1に記載の堆積方法であって、前記不活性被覆がN,N-ジメチルトリメチルシリルアミン、N,N-ジエチルトリメチルシリルアミン、クロロトリメチルシラン、メトキシトリメチルシラン、エトキシトリメチルシラン、トリメチルシリルトリフルオロメタンスルホナート、トリメチルシリルフルオロスルホナート又はトリメチルシリルクロライドである堆積方法。
【請求項6】
請求項1に記載の堆積方法であって、前記前駆体にジメチルジクロロシラン(DDMS)、ジメチルジメトキシシラン、ジエトキシジメチルシラン又はc,1,3-ジクロロ-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンが含まれる堆積方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法であって、前記付加が分子気相堆積である方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法であって、前記付加が気相堆積である方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法であって、前記付加が液相堆積である方法。
【請求項10】
請求項1に記載の堆積方法であって、前記露出領域の大きさが前記表面の10%超であり、且つ、前記ポリマ被覆に、そのポリマ被覆におけるポリマの水平成長分が含まれる堆積方法。
【請求項11】
請求項1に記載の堆積方法であって、前記基板がシリコン又は酸化アルミニウムである堆積方法。
【請求項12】
基板と、
前記基板の全体未満の上に配置された不活性被覆であり、その基板の露出領域がその不活性被覆間に形成されている不活性被覆と、
前記基板の前記露出領域上に直に形成されたポリマ被覆と、
を備えるデバイス。
【請求項13】
請求項12に記載のデバイスであって、前記基板がシリコン又は酸化アルミニウムであるデバイス。
【請求項14】
請求項12に記載のデバイスであって、前記不活性被覆がN,N-ジメチルトリメチルシリルアミン、N,N-ジエチルトリメチルシリルアミン、クロロトリメチルシラン、メトキシトリメチルシラン、エトキシトリメチルシラン、トリメチルシリルトリフルオロメタンスルホナート、トリメチルシリルフルオロスルホナート又はトリメチルシリルクロライドであるデバイス。
【請求項15】
請求項12に記載のデバイスであって、前記前駆体がジメチルジクロロシラン(DDMS)、ジメチルジメトキシシラン、ジエトキシジメチルシラン又はc,1,3-ジクロロ-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンを含んでいるデバイス。
【請求項16】
請求項12に記載のデバイスであって、前記ポリマ被覆が前記基板の前記露出領域上にのみ形成されているデバイス。
【請求項17】
請求項12に記載のデバイスであって、前記ポリマ被覆が、前記基板の前記露出領域上に形成され且つ露出領域間の前記不活性被覆上にかけ延設されているデバイス。
【請求項18】
請求項12に記載のデバイスであって、前記ポリマ被覆が前記基板の前記露出領域上に吸着されているデバイス。
【請求項19】
請求項12に記載のデバイスであって、前記露出領域の大きさが前記表面の10%超であるデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件開示は疎水膜に関し、より具体的には半導体デバイスにて用いられる疎水膜に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造におけるデバイス寸法縮小には新規な処理手法が必須である。そうした手法の一つが選択的堆積(成長)であり、半導体製造業者らの間でますます注目を得てきている。選択的堆積は様々なやり方で役立てられよう。例えば、選択的堆積によりリソグラフィ及びエッチング工程の回数低減が可能になるので、製造コストを低減することができる。選択的堆積により、狭幅構造におけるスケーリング増強を実現することもできる。
【0003】
原子層堆積(ALD)は半導体産業で既知なプロセスであり、それにより基板上、例えばシリコンウェハ上に素材薄膜を形成することができる。ALDは気相堆積の一種であり、複数サイクルに亘り実行される自己飽和性表面反応を通じ膜が構築されるものである。ALDプロセスでは、気相前駆体(前駆物質)が交互的且つ反復的に基板へと供給され、それによりその基板上に素材薄膜が形成される。そのウェハ上に、自制的プロセスにて一種類の反応物質が吸着される。後続の反応物質パルスがその吸着物質と反応することで、その所望物質の分子層が形成される。その後続パルスによって、その吸着層からリガンド(配位子)を減らし又はゲッタすること、そうしたリガンドを置換すること、或いは他の要領で原子を付加することができる(例.酸化、窒化等)。典型的なALD反応では、1サイクル当たりせいぜい1個の分子単層しか形成されない。サイクルをより複雑なものにし、3種類以上の反応物質が順に関わるものとすることができる。認知されているALDの長所のなかには低温処理とほぼ完ぺきなコンフォーマリティとがあり、その点でALDが半導体処理にて注目されている。
【0004】
ALD以外にも、基板上に素材薄膜を形成しうる他のプロセスが存在している。そうしたプロセスの一つが化学気相堆積(CVD)であり、このプロセスでは基板を一種類又は複数種類の揮発性前駆体に対し露出させその前駆体がその基板上で反応及び/又は分解することで薄膜が形成される。ALD及びCVDの両者はその露出面に対し敏感である。その前駆体及び堆積条件次第で、気相堆積プロセスにより、様々な面上で良好にも貧弱にも核形成することができる。
【0005】
基板表面上での重合がある種の処理中に生じうる。様々な技術が、基板の表面上での重合を制御するのに用いられてきた。例えば、温度、蒸気圧及び反応時間の変更が、有機薄膜堆積プロセス中に、重合を制御するのに用いられてきた。外部種の導入も、ポリマ(重合体)成長を制御するため、行われてきた。例えば、触媒をポリマ前駆体と併せ投与することで、基板表面上における重合或いは接着層の堆積を助長することができる。
【0006】
ある種の薄膜に関しては、従来技術を用いた重合の制御でもまだ十分でない。場合によっては、様々な薄膜成長モードが、あるものが他のものに比べエネルギ的に顕著に好適なものでないために、同様のシステムエネルギにてもたらされることさえある。一例として、図1に、ジメチルジクロロシラン(DDMS)前駆体を堆積させることで形成される膜内に同居しうる三種類の潜在的薄膜構造(タイプ1、タイプ2及びタイプ3)を示す。薄膜構造が一種類だけであることが望ましかろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第8293658号
【特許文献2】米国特許第10378105号
【特許文献3】米国特許出願公開第2021/0351031号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そのため、技術及びデバイスの改善が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1実施形態では方法が提供される。不活性被覆が基板の表面の全体未満に付加され、それによってその不活性被覆間にてその基板上に露出領域が形成される。前駆体がその基板の周辺に導入され、それによってその基板の露出領域上に直にポリマ被覆が形成される。
【0010】
そのポリマ被覆が、その基板の露出領域上にのみ形成されるのでもよい。
【0011】
そのポリマ被覆が、その基板の露出領域上に形成され且つ露出領域間にて不活性被覆上にかけ延設されるのでもよい。
【0012】
そのポリマ被覆が、その基板の露出領域上に吸着されていてもよい。
【0013】
その不活性被覆が、N,N-ジメチルトリメチルシリルアミン、N,N-ジエチルトリメチルシリルアミン、クロロトリメチルシラン、メトキシトリメチルシラン、エトキシトリメチルシラン、トリメチルシリルトリフルオロメタンスルホナート、トリメチルシリルフルオロスルホナート又はトリメチルシリルクロライドであってもよい。
【0014】
その前駆体が、ジメチルジクロロシラン(DDMS)、ジメチルジメトキシシラン、ジエトキシジメチルシラン又はc,1,3-ジクロロ-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンを含んでいてもよい。
【0015】
前記付加を、分子気相堆積、気相堆積又は液相堆積とすることができる。
【0016】
その露出領域の大きさを表面の10%超とすることができる。そのポリマ被覆を、そのポリマ被覆におけるポリマの水平成長(横成長)分を含むものとすることができる。
【0017】
その基板が、シリコン又は酸化アルミニウムであってもよい。
【0018】
第2実施形態ではデバイスが提供される。本デバイスは、基板と、その基板の全体未満の上に配置された不活性被覆と、その基板の露出領域上に直に形成されたポリマ被覆と、を有する。その基板の露出領域がその不活性被覆間に形成される。
【0019】
その基板が、シリコン又は酸化アルミニウムであってもよい。
【0020】
その不活性被覆が、N,N-ジメチルトリメチルシリルアミン、N,N-ジエチルトリメチルシリルアミン、クロロトリメチルシラン、メトキシトリメチルシラン、エトキシトリメチルシラン、トリメチルシリルトリフルオロメタンスルホナート、トリメチルシリルフルオロスルホナート又はトリメチルシリルクロライドとすることができる。
【0021】
その前駆体が、ジメチルジクロロシラン(DDMS)、ジメチルジメトキシシラン、ジエトキシジメチルシラン又はc,1,3-ジクロロ-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンを含んでいてもよい。
【0022】
そのポリマ被覆が、その基板の露出領域上にのみ形成されていてもよい。
【0023】
そのポリマ被覆が、その基板の露出領域上に形成され且つ露出領域間にて不活性被覆上にかけ延設されていてもよい。
【0024】
そのポリマ被覆が、その基板の露出領域上に吸着されていてもよい。
【0025】
その露出領域の大きさを表面の10%超とすることができる。
【0026】
本件開示の性質及び目的についてのより遺漏なき理解のためには、後掲の詳細記述と併せ、以下の添付図面を参照すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】従来薄膜を示す図である。
図2】本件開示に係る方法の一実施形態のフローチャートである。
図3】本件開示に係るデバイスの一実施形態の断面図である。
図4】本件開示に係るデバイスの他の実施形態の断面図である。
図5】本件開示に係る薄膜の他の例を示す図である。
図6】水接触角(WCA)をサイクルに対応付けて示す図である。
図7】Al厚をサイクルに対応付けて示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
特定の諸実施形態により特許請求の範囲記載の主題につき記述するが、本願中で説明される諸利益及び諸特徴が全ては提供されない諸実施形態を含め、他の諸実施形態も本件開示の技術的範囲内にある。様々な構造的、論理的、処理ステップ的及び電子的改変を、本件開示の技術的範囲から離隔することなくなすことができる。従って、本件開示の技術的範囲は別項の特許請求の範囲への参照によってのみ画定される。
【0029】
本願開示の諸実施形態により、薄膜前駆体分子の重合を制御することができる。重合を制御することで様々な表面原子構造をもたらすことができ、それにより特定用途向けに改善された薄膜特性を提供することができる。本願開示の諸実施形態では基板上に第1層が堆積される。その上で第2層が堆積される。第2層によりポリマが形成され、それが選択的に核形成することとなる。例えば、第2層により、基板表面のうち第1層により覆われていないエリア上にポリマを形成することができる。第2層の重合は第1層の構造に影響される。
【0030】
図2は方法100の一実施形態のフローチャートである。101では、不活性被覆が基板の表面の全体未満に付加される。その不活性被覆によって、不活性被覆間に基板上の露出領域が形成される。例えば、その不活性被覆内に開口その他のパターンを設け、それにより基板に露出面を残すことができる。その基板は、例えばシリコン又は酸化アルミニウム(Al)とすることができる。
【0031】
その不活性被覆の付加には、分子気相堆積(MVD)、その他の気相堆積(例.化学気相堆積(CVD)、物理気相堆積(PVD)又は蒸着ベース技術)、或いは液相堆積を用いることができる。液相堆積に際し、前駆体(例.N,N-ジメチルトリメチルシリルアミン(TMSDMA))を有機溶媒例えばアセトン中に溶解させることができる。その溶液中にある期間に亘り基板を漬けることで、TMSDMAによりその基板を被覆させることができる。
【0032】
その不活性被覆のパターンを、前駆体構造及び基板の表面により制御することができる。反応条件を適宜構成することで、その面と専ら部分的に反応し又はその面の構成部分が遮蔽されるようにすることができる。即ち、反応時間、投与量その他の変数を適宜構成することで、その不活性被覆によりその基板の表面のうち幾ばくかが遮蔽されるようにしつつ、後続するポリマのより多大な成長を可能とすることができる。
【0033】
その基板表面をベアSi面とすることができる。選択性、覆率及び均一度は、他の面上では変わりうる。例えばSi製のコンポーネントをこの被覆と共にその上に堆積させる。その上で、そのコンポーネントを、モジュールになるように他の諸部品と組み合わせることができる。Alがそのモジュール全体の上に後に堆積された場合、そのSiコンポーネントでは遅延堆積がなされることとなり、他の諸エリアでは通常堆積がなされることとなる。
【0034】
その不活性被覆は、例えばTMSDMA、N,N-ジエチルトリメチルシリルアミン(TMSDEA)、クロロトリメチルシラン(TMCS)、メトキシトリメチルシラン(TMSOMe)、エトキシトリメチルシラン(TMSOEt)、トリメチルシリルトリフルオロメタンスルホナート(TMSOTf)、トリメチルシリルフルオロスルホナート(TMSOFs)、トリメチルシリルクロライド(TMSCl)、それらの混合物、或いはその他の種とすることができる。その他の種たり得るものには、1個又は複数個の疎水テール基を伴うオルガノシランがある。その不活性被覆は、例えば2オングストローム~50オングストロームの厚みを有するものとすることができる(1オングストローム=10-10m)。
【0035】
その不活性被覆種のヘッド基は、様々な反応性を有するものとすることができる。反応性が高い順に並べると、その不活性被覆種に含まれうるものには、例えばアミノシラン、クロロシラン、メトキシシラン又はエトキシシランがある。本例を用いて言えば、エトキシシランにより成長させた不活性被覆よりも、アミノシランを用いたそれの方が、短い反応時間で以て表面覆率が高くなる。即ち、エトキシシランならより大きな開口をもたらすことができ、より大きなシリコン露出面がポリマ層向けに実現される。
【0036】
102では前駆体が基板の周辺に導入される。これにより、ポリマ被覆が、その基板の露出領域上に直に形成される。そのポリマ被覆を、その基板の露出領域上に吸着されたものとすることができる。熱力学的には、不活性被覆は低い表面エネルギを有していて、安定な表面とすることができる。そうでなくても界面エネルギが高すぎるため、不活性被覆上ではポリマ被覆の核形成が生じ得ない。成長は、不活性被覆により覆われていないエリア上で選好的に起きることとなる。動力学的には、そのポリマ被覆を構成する前駆体は、不活性被覆に対し無視しうるほどの反応性しか呈し得ない。
【0037】
その前駆体に含まれうるもののなかには、ジメチルジクロロシラン(DDMS)、ジメチルジメトキシシラン、ジエトキシジメチルシラン、c,1,3-ジクロロ-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、或いはそれらの混合物がある。その他、前駆体たり得るものには、2個の反応性官能基を有していて重合によりポリマ鎖を形成することが可能なオルガノシランモノマがある。その他の前駆体も採用可能であるので、これらは例に過ぎない。
【0038】
ある例ではポリマ被覆が基板の露出領域上にのみ形成される(即ち不活性被覆上にはされない)。別例ではポリマ被覆が基板の露出領域上に形成され、且つその基板の露出領域間にて不活性被覆上にかけ延設される。即ち、ポリマ被覆におけるポリマの成長には、基板表面の露出領域から退く方向への垂直成長(縦成長)も、不活性被覆上にかけての水平成長(横成長)も含まれうる。
【0039】
それら露出領域の大きさは基板表面の10%超とすることができる。この露出面比率は変えることができる。例えば、それら露出領域をその基板の15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、98%又は99%よりも大きくすることができる。その露出面比率を変えることで、後続するポリマ成長の特性を修正することができる。プロセスパラメタ、例えば反応時間、プラズマ前処理条件、水触媒量その他のパラメタを変えることで、不活性被覆の局所覆率を制御することができる。
【0040】
その不活性被覆及びポリマ層に係る堆積温度は室温~150℃とすることができる。例えば、その堆積温度を20℃~150℃とすることや約35℃とすることができる。
【0041】
前駆体注入前の基本圧力を0.01Torrとすることができる。ある例では前駆体投与が0.5~2Torr、水投与が0.5~4Torrで行われる。
【0042】
その基板上におけるポリマ被覆の表面覆率は、1%未満~90%未満、例えば10%超や約1%~50%とすることができる。
【0043】
露出領域のサイズは、0.2nm~1nmの幅又は長さとすることができる。露出領域のサイズを調整することでポリマ成長モードを調整することができる。これには立体障害がもととなるものがあろう。露出エリアのサイズが10nmでありモノマの分子サイズに比べ大きければ、そのポリマは水平方向に成長しうる。但し、直線的成長を想定すると、その鎖長は10nmの露出エリアにより制限される。露出エリアのサイズが1nmであれば、そのポリマは水平モードで成長しにくい。それにより垂直モードでの重合が強いられる。
【0044】
原理的には、ポリマ前駆体が専らそれ自体と反応して環状又は線状ポリマが形成されることがありうる。基板の露出エリアのサイズを制御することで、水平成長を調整することができ、且つ第2層に垂直的な重合や単一分子の形成を強いることができる。即ち、水平、垂直及び単分子モードという3個の別々な成長モードが存在しうる。露出エリアのサイズを制御することでは単分子モードを回避し得ない。
【0045】
ある例によれば、その基板構造がアモルファスであるために不活性被覆のパターンを設けられないことがある。基板の素材は不活性被覆に影響しうる。その不活性被覆のパターンが表面フィーチャの周期性たりうる。その結果、アモルファス構造では規則的なパターンを呈さないこととなる。
【0046】
図3及び図4はデバイス200の断面図である。本デバイスは基板201及び不活性被覆202を有しており、その不活性被覆202が基板201の表面の全体未満上に存している。不活性被覆202間にある露出領域204がポリマ被覆203で以て満たされている。ポリマ被覆203内のポリマは基板201上に吸着させることができる。ポリマ被覆203は、基板201の露出領域204上に直に、選好形成されている。露出領域204の大きさは基板201の表面の10%超とすることができる。
【0047】
ある最低限量のポリマ被覆203を不活性被覆202上に形成することができる。例えばポリマ前駆体を不活性被覆202上に物理吸着させることができる。その上で、ポリマをその物理吸着分子から成長させることができる。不活性被覆202上におけるポリマ被覆203の成長は、何れも、共有表面結合によるものとならない。不活性被覆202上でポリマ被覆203が形成されるエリアは、その不活性被覆の表面エリアのうち10%未満、5%未満、2%未満又は1%未満とされよう。
【0048】
ある例では、ポリマ被覆203が、不活性被覆202間にて基板201の露出領域204上のみに形成される。これが図3に示されており、垂直成長分を有している。とはいえ、ポリマ被覆203を、図4に示されている通り露出領域204間の不活性被覆202上にかけ形成することもできる。図4中のポリマ被覆203は、垂直成長分及び水平成長分双方を有している。図4では、不活性被覆202を完全に横切るよう延設されてはいない態で示されているが、ポリマ被覆203は、様々な露出領域204間をつなぐように延設することもできる。
【0049】
ポリマ被覆203の厚みは20nm以下とすることができる。例えばこの被覆を1nm~5nmとすることができる。
【0050】
図5はデバイスの別例を示す図である。本例では気相堆積がMVDチャンバ内で実行されている。不活性層がTMSDMAにより形成されている。TMSDMA分子がMVDチャンバに注入され、そこでそれら分子が1枚又は複数枚の基板上に堆積されている。その反応時間は、通常は1サイクル当たり約15分である。不活性ガス、例えばN又はArを用いて、未反応前駆体ガス及び反応副産物をパージすることができる。
【0051】
本例では、第1分子により不活性層が形成された後に、ポリマ前駆体分子DDMS及びHOがMVDチャンバ内へと注入される。反応サイクルが完了するまで、そのチャンバ内でDDMS及びHO双方が保持される。各反応サイクルには約15分がかかろう。反応サイクルが完遂された後に、不活性ガス例えばN又はArを用い未反応ガス及び反応副産物がパージされる。薄膜を生成するには、複数回の反応サイクルが必要となろう。
【0052】
本例に従い方法100の技術を用いることでDDMS膜がもたらされ、また基板の頂部上での水平重合が最小限となる。TMSDMA膜には、そのTMSDMA膜の頂部上で成長させた他の薄膜の核形成を遅らせる、という改良的特性がある。試験結果によれば、本願開示の如くDDMSを用いることで、DDMS単一層のみを用いる従来方法に比べ、約1.5×サイクル回数倍、Al成長を遅らせることができる。本願開示の如くTMSDMAを用いることで、TMSDMA単一層のみを用いる従来方法に比べ、約2×サイクル回数倍、Al成長を遅らせることができる。この改良された核形成遅延特性には、エリア選択的堆積での用途がある。
【0053】
例えば、本願開示の諸実施形態をエリア選択的堆積に用いることができる。先に言及した通り、TMSDMA層の使用後に堆積されたDDMS膜により、改良された核形成遅延特性をもたらすことができる。このTMSDMA・DDMS組合せ膜を、デバイスシステムのうち一部のデバイス/エリア上に付加する一方、他の諸デバイス/エリアをその膜により覆われないままとすることができる。他の物質、例えばAlの堆積は、TMSDMA・DDMS組合せ膜により覆われていないデバイス/エリア上でのみ起きることとなる。従って、これによりエリア選択的堆積をもたらすことができる。
【0054】
Alの成長速度は、TMSDMA膜(DDMSにより修飾されたもの)がある領域内で低下しうる。除去工程があるので全堆積は達成できない。エリア選択的堆積により、不連続(Al)膜を有する保護エリアをもたらすことができるが、非保護エリアには連続膜を設けることができる。不連続膜を除去する方が容易たりうる。
【0055】
Al以外の酸化物、例えばZnO、TiO、HfO、SiOも、選択的に堆積させることができる。他の種、例えば窒化物(例.TiN又はHfN)、金属(例.Ru、Pd又はPt)又は有機素材(例.ポリ(アルコキシシラン))も、選択的に堆積させることができる。
【0056】
選択的堆積は多くの用途で望ましいことである。例えば、集積回路製造時のパターニングには、費用がかかるリソグラフィ及び/又はマスキングプロセスが必要なことが多い。本手法により形成される有機層により保護されない一部のエリア上に、薄膜を選択的に堆積させうるのであれば、一部のマスキング及び/又はリソグラフィプロセスを省略することができる。これにより半導体製造コストが低減される。
【0057】
不活性被覆及びポリマ被覆の双方を疎水性のものとすることができる。多層形成にそれら不活性被覆及びポリマ被覆を組み込むことができる。
【0058】
以下の諸例は例証目的で提示されるものであり、限定たることを意図していない。
【0059】
図6にWCAをサイクルに対応付けて示す。図7にAl厚をサイクルに対応付けて示す。これらの結果を得るため、ベアシリコン基板(12オングストロームの自然酸化物付)を対象にして、或いは基板上のAlを対象にして、MVDを実行した。第1層はTMSDMAとし、Nパージを行った。そのサイクルは約15分とし、サイクルを4回とした。第2層はDDMS及びHOとし、Nパージを行った。そのサイクルは約15分とし、サイクルは4回とした。即ち、それら2種類の工程を、4回ずつ交互に反復した。
【0060】
AlのALDに際しては、プラズマによる前処理を行わなかった。TMAの堆積及びArパージに、HO及びArパージを後続させた。このプロセスを60℃で生起させ、1サイクルを実行した。
【0061】
Al堆積に関する付加的な試験データを以下の表に示す。
【0062】
【表1】
【0063】
1個又は複数個の具体的実施形態との関連で本件開示を記述してきたが、ご理解頂けるように、本件開示の技術的範囲から離隔することなく、本件開示の他の諸実施形態をなすことができる。従って、本件開示は、添付する特許請求の範囲及びその合理的解釈によってのみ限定されるものと考えられる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7