(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011092
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】吊下げ装置
(51)【国際特許分類】
E04G 3/30 20060101AFI20240118BHJP
E04G 21/32 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
E04G3/30 301B
E04G3/30 301D
E04G21/32 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022112797
(22)【出願日】2022-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】513327492
【氏名又は名称】株式会社外装専科
(71)【出願人】
【識別番号】000133319
【氏名又は名称】株式会社ダイケン
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】弁理士法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 岳
(72)【発明者】
【氏名】山田 悟朗
(72)【発明者】
【氏名】下村 卓
【テーマコード(参考)】
2E003
【Fターム(参考)】
2E003EA02
2E003EA04
2E003EB05
(57)【要約】
【課題】簡素な構成であり、作業者が簡単に横移動し得る吊下げ装置を提供する。
【解決手段】吊下げ装置1は、強度部材2と、保持具3と、レール4と、吊り具5とを備える。強度部材2は、建物Bの上部Uに設置される。保持具3は、強度部材2に連結される。レール4は、建物Bの外壁Eに横方向に沿うように、保持具3により保持される。吊り具5は、外壁Eに対して作業する作業者Wをレール4から吊る。吊り具5は、レール4に案内されて手動により移動する移動部50を有する。保持具3は、移動部50の移動を妨げない位置に配置される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の上部に設置される強度部材と、
前記強度部材に連結される保持具と、
前記建物の外壁に横方向に沿うように前記保持具により保持されるレールと、
前記外壁に対して作業する作業者を前記レールから吊る吊り具と
を備え、
前記吊り具は、前記レールに案内されて手動により移動する移動部を有し、
前記保持具は、前記移動部の移動を妨げない位置に配置される、吊下げ装置。
【請求項2】
前記レールから下方の位置で前記外壁に横方向に沿うように張られる金属紐材と、
一端が前記金属紐材に摺動するように接続されて、他端が前記作業者に接続される墜落制止具と
をさらに備える請求項1に記載の吊下げ装置。
【請求項3】
前記移動部は、前記レールの内部を走行する滑車を有する、請求項1又は2に記載の吊下げ装置。
【請求項4】
前記強度部材は、
組み上げられた複数の金属桁材と、
前記金属桁材を前記建物に固定するアンカーボルト又はクランプと
を有する、請求項1又は2に記載の吊下げ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吊下げ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の吊下げ装置は、建物の屋上に設置されたレールと、レールを走行する搬送車とを備える。搬送車は、作業者を吊下げるロープと、車輪と、車輪の駆動手段であるブレーキ付きのモータとを有する。ロープに吊下げられた作業者は、建物の外壁に対して作業する際に、モータを操作することで横方向に移動できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記特許文献1に記載の吊下げ装置は、モータを使用するので、必然的に構成が複雑になってしまう。さらに、前記特許文献1に記載の吊下げ装置では、作業者が横移動するのに、モータを制御する必要がある。したがって、作業者は、簡単に横移動ができないという課題もある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、簡素な構成であり、作業者が簡単に横移動し得る吊下げ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一局面によれば、吊下げ装置は、強度部材と、保持具と、レールと、吊り具とを備える。強度部材は、建物の上部に設置される。保持具は、強度部材に連結される。レールは、建物の外壁に横方向に沿うように、保持具により保持される。吊り具は、外壁に対して作業する作業者をレールから吊る。吊り具は、レールに案内されて手動により移動する移動部を有する。保持具は、移動部の移動を妨げない位置に配置される。
【発明の効果】
【0007】
本発明の吊下げ装置によれば、簡素な構成であり、作業者が簡単に横移動し得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る吊下げ装置の概略斜視図である。
【
図4】吊下げ装置を正面下から見上げた写真である。
【
図5】吊下げ装置の強度部材と建物の躯体との固定を示す斜視図である。
【
図6】吊下げ装置の強度部材と建物の内周側パラペットとの固定を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図中、同一又は相当部分については同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。また、以下に記載される説明において、「上」、「下」、「左」、「右」、「前」又は「後」の特定の位置と方向とを意味する用語が用いられる場合があっても、これらの用語は、実施形態の内容を理解することを容易にするために便宜上用いられるものであり、実際に実施される際の方向とは関係しないものである。
【0010】
図1~
図6を参照して、本発明の実施形態に係る吊下げ装置1ついて説明する。
図1は、実施形態に係る吊下げ装置1の概略斜視図である。
図2は、吊下げ装置1の右側面図である。
図3は、吊下げ装置1の正面図である。
図4は、吊下げ装置1を正面下から見上げた写真である。
図5は、吊下げ装置1の強度部材2と建物Bの躯体u1との固定を示す斜視図である。
図6は、吊下げ装置1の強度部材2と建物Bの内周側パラペットu2との固定を示す斜視図である。
【0011】
図1に示されるように、吊下げ装置1は、簡素な構成であり、建物Bの外壁Eに対して作業する作業者Wが簡単に横移動し得る装置である。吊下げ装置1は、強度部材2と、保持具3と、レール4と、吊り具5とを備える。強度部材2は、建物Bの上部Uに設置される。保持具3は、強度部材2に連結される。レール4は、建物Bの外壁Eに横方向に沿うように、保持具3により保持される。吊り具5は、外壁Eに対して作業する作業者Wを、レール4から吊る。また、吊り具5は、レール4に案内されて手動により移動する移動部50を有する。保持具3は、移動部50の移動を妨げない位置に配置される。
【0012】
保持具3が移動部50の移動を妨げない位置に配置されることにより、吊り具5の移動部50は、建物Bの外壁Eに横方向に沿うレール4に滑らかに案内される。したがって、吊下げ装置1は、簡素な構成であり、吊り具5に吊られる作業者Wが作業する外壁Eに対して横方向に簡単に移動することができる。
【0013】
次に、吊下げ装置1の好ましい形態について説明する。なお、以下では、作業者Wが作業する外壁Eから外方を後方向とし、その逆方向を前方向とする。すなわち、作業者Wが作業する外壁Eは、上下左右方向に至る面である。
【0014】
図1~
図3に示されるように、強度部材2が設置される建物Bの上部Uは、建物Bの屋上、又は、建物Bの屋根等を含む。強度部材2は、組み上げられた複数の金属桁材20を有する。強度部材2が組み上げられた複数の金属桁材20を有することにより、簡素な構成で十分な強度が得られるとともに、建物Bの上部Uへの設置及び撤去が容易になる。金属桁材20は、型鋼など金属製の桁材であれば特に制限されないが、例えば、鋼製パイプ20である。鋼製パイプ20は、高い断面性能から十分な強度を有するとともに、建物Bの上部Uへの設置及び撤去を一層容易にする。なお、組み上げられた鋼製パイプ20同士の固定には、例えば、所定の強度を担保するためのジョイント(不図示)が使用される。
【0015】
強度部材2を構成する鋼製パイプ20は、例えば、縦パイプ21、左右横パイプ22、前後横パイプ23、緩傾斜パイプ24、急傾斜パイプ25及び吊りパイプ26である。縦パイプ21は、建物Bの上部Uに鉛直に固定される。左右横パイプ22は、建物Bの外壁Eに沿う方向に水平に配置される。前後横パイプ23は、建物Bの外壁Eに直交する方向に水平に配置される。緩傾斜パイプ24は、一端(後端)が建物Bの外壁Eから外方(後方)に位置するとともに、他端(前端)が建物Bの上部Uにある躯体u1等に固定される。緩傾斜パイプ24は、一端(後端)側が他端(前端)側よりも高くなるように、例えば水平に対して0°超30°未満の角度で緩やかに傾斜している。急傾斜パイプ25は、一端(後端)が建物Bの外壁Eから外方(後方)に位置するとともに、他端(前端)が縦パイプ21に固定される。急傾斜パイプ25は、一端(後端)側が他端(前端)側よりも遙かに高くなるように、例えば水平に対して45°超90°未満の角度で急に傾斜している。急傾斜パイプ25は、金属紐材6(後述する)を案内する案内部60を有する。吊りパイプ26は、建物Bの外壁Eに沿う方向に水平に配置される。吊りパイプ26は、緩傾斜パイプ24及び急傾斜パイプ25の一端(後端)側に固定される。
【0016】
強度部材2に連結された保持具3は、吊りパイプ26の下方でレール4を保持するものに制限されず、吊りパイプ26の側下方、側方又は側上方でレール4を保持してもよい。しかしながら、保持具3は、吊りパイプ26の下方でレール4を保持するものであることが、強度の上で好ましい。保持具3は、吊りパイプ26に所定間隔で連結される。保持具3は、例えば、吊りパイプ26に連結される連結部30と、連結部30の下方でレール4を保持する保持部31とを有する。
【0017】
保持具3により保持されたレール4は、水平であることに制限されず、±10°の傾斜を許容する。また、レール4は、外壁Eに平行であることに制限されず、±10°の傾斜を許容する。しかしながら、レール4は、実質的に水平で且つ外壁Eに平行であることが、機能の上で好ましい。レール4は、例えば、内部を囲う形状であり、下部が左右方向に開口40している。レール4の開口40は、吊り具5を通すとともに、吊り具5の左右方向への移動を可能にする。
【0018】
吊り具5が有する移動部50は、手動により移動する。ここで、手動とは、機械等の動力ではなく、人の力によることを意味する。したがって、手動には、手の力に限られず、足の力によることも含む。移動部50は、例えば、前後方向の軸により前後に配置された2輪の滑車51を有する。2輪の滑車51は、レール4の内部を左右方向に走行する。言い換えれば、2輪の滑車51は、レール4に囲われているので、走行が天候の影響を受けにくい。したがって、吊り具5に吊られる作業者Wは、作業する外壁Eに対して、横方向に十分且つ簡単に移動することができる。
【0019】
吊り具5は、さらに、吊り板53と、シャックル55と、吊り紐56と、長さ調整具57と、ブランコ58とを有する。吊り板53は、滑車51の軸から下げられて、レール4の開口40に通される。シャックル55は、レール4の外部(下方)で吊り板53に形成された穴に通される。吊り紐56は、シャックル55に締結される。長さ調整具57は、吊り紐56の長さを調整する。ブランコ58は、吊り紐56に吊られて、外壁Eに対して作業する作業者Wに腰掛けられる。
【0020】
ここで、移動部50の移動を妨げない保持具3は、レール4の開口40を左右に移動する吊り板53に接触しない。保持具3がレール4の開口40を左右に移動する吊り板53に接触しないことにより、作業者Wは、作業する外壁Eに対して、横方向により十分且つ簡単に移動することができる。
【0021】
吊下げ装置1は、金属紐材6と、墜落制止具7とをさらに備える。金属紐材6は、レール4から下方の位置で、外壁Eに横方向に沿うように張られる。墜落制止具7は、一端が金属紐材6に摺動するように接続されて、他端が作業者Wに接続される。
【0022】
レール4の下方に張られた金属紐材6から墜落制止具7が接続されることにより、作業者Wが左右に移動しても、墜落制止具7がレール4に干渉しない。したがって、作業者Wは、作業する外壁Eに対して、横方向により十分且つ簡単に移動することができる。
【0023】
金属紐材6は、金属製の紐材であれば特に制限されないが、例えば、ワイヤーロープ6である。墜落制止具7は、シャックル75と、吊り紐76と、長さ調整具77とを有する。シャックル75は、金属紐材6が通される。吊り紐76は、一端がシャックル75に締結されて、他端が作業者Wに締結される。長さ調整具77は、吊り紐76の長さを調整する。
【0024】
吊り具5及び墜落制止具7が長さ調整具57,77を有することにより、作業者Wは、作業する外壁Eに対して、横方向だけでなく縦方向にも簡単に移動することができる。
【0025】
図3及び
図4に示されるように、作業者Wが作業する外壁Eを横方向へ移動するには、例えば、作業者Wが外壁Eを横方向に歩くように足を動かす。これにより、横方向への力が吊り具5の移動部50に伝わることで、吊り具5の移動部50が横方向に移動する。結果として、吊り具5に吊られている作業者Wが横方向に移動する。
【0026】
以下、建物Bの上部Uに設置された強度部材2と、建物Bとの固定について、
図1、
図5及び
図6に基づき詳細に説明する。
【0027】
まず、
図1に示されるように、建物Bの上部Uに躯体u1が有る場合について説明する。
図1の符号Aの箇所を拡大した
図5に示されるように、緩傾斜パイプ24の他端(前端)は、最も前側の左右横パイプ22に、ジョイント29により固定される。最も前側の左右横パイプ22は、躯体u1にアンカーボルト81により固定される。
【0028】
強度部材2を構成する最も前側の左右横パイプ22がアンカーボルト81により固定されるので、建物Bの上部Uへの強度部材2の設置及び撤去を容易にすることができる。
【0029】
次に、建物Bの上部Uに躯体u1が無いが、
図6に示されるように、建物Bの上部Uに内周側パラペットu2が有る場合について説明する。
図6に示されるように、緩傾斜パイプ24の他端(前端)は、内周側パラペットu2に、クランプ82により固定される。クランプ82は、内周側パラペットu2を前後から挟み込む。
【0030】
強度部材2を構成する緩傾斜パイプ24がクランプ82により固定されるので、建物Bの上部Uへの強度部材2の設置及び撤去を容易にすることができる。勿論、吊下げ装置1は、アンカーボルト81及びクランプ82の両方を有してもよい。
【0031】
以上、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明した。但し、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能である。また、上記の実施形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることによって、種々の発明の形成が可能である。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。図面は、理解しやすくするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示しており、図示された各構成要素の厚み、長さ、個数、間隔等は、図面作成の都合上から実際とは異なる場合もある。また、上記の実施形態で示す各構成要素の材質、形状、寸法等は一例であって、特に限定されるものではなく、本発明の効果から実質的に逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、吊下げ装置を提供するものであり、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0033】
B 建物
E 外壁
U 上部
W 作業者
1 吊下げ装置
2 強度部材
3 保持具
4 レール
5 吊り具
6 金属紐材(ワイヤーロープ)
7 墜落制止具
20 金属桁材(鋼製パイプ)
30 連結部
31 保持部
50 移動部
51 滑車
53 吊り板
55 シャックル
56 吊り紐
58 ブランコ
81 アンカーボルト
82 クランプ