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特開2024-110920ビーム装置制御システムおよびビーム装置制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110920
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】ビーム装置制御システムおよびビーム装置制御方法
(51)【国際特許分類】
   A61N 5/10 20060101AFI20240808BHJP
【FI】
A61N5/10 H
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023197342
(22)【出願日】2023-11-21
(31)【優先権主張番号】112103962
(32)【優先日】2023-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】518296517
【氏名又は名称】禾榮科技股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】HERON NEUTRON MEDICAL CORP.
【住所又は居所原語表記】No.66-2, Shengyi 5th Rd., Zhubei City, Hsinchu County, Taiwan
(74)【代理人】
【識別番号】100206335
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 和宏
(72)【発明者】
【氏名】林 志中
(72)【発明者】
【氏名】劉 嘯青
(72)【発明者】
【氏名】邱 顯浩
【テーマコード(参考)】
4C082
【Fターム(参考)】
4C082AA01
4C082AC05
4C082AC07
4C082AE01
4C082AG02
4C082AR01
4C082AR05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ビーム装置制御システムおよびビーム装置制御方法を提供する。
【解決手段】サイクロトロンシステムを制御するビーム装置制御システムであって、陽子線調節モジュールが、前記サイクロトロンシステムに第1の陽子線を生成させるかを決定するステップと、陽子線調節ステップが完了したことをマークするステップとを実行し、中性子線調節モジュールが、前記サイクロトロンシステムに第1の中性子線を生成させるステップと、前記第1の中性子線が仕様を満たしていることを確認するステップと、中性子線調節ステップが完了したことをマークするステップとを実行し、且つ治療調節モジュールが、前記サイクロトロンシステムに第2の中性子線を生成するように命令するステップと、前記第2の中性子線が治療ニーズを満たしているかどうかを確認するステップと、治療調節ステップが完了したことをマークするステップとを実行するビーム装置制御システム。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サイクロトロンシステムを制御するビーム装置制御システムであって、前記ビーム装置制御システムは、
治療制御アプリケーションプログラムを記憶するように構成された記憶装置、および
前記治療制御アプリケーションプログラムを実行して以下のモジュール、陽子線調節モジュール、中性子線調節モジュール、および治療調節モジュールを実行するように構成された少なくとも1つのプロセッサを含み、
前記陽子線調節モジュールが実行されるとき、以下のステップ、
前記サイクロトロンシステムに第1の陽子線を生成させるかどうかを決定するステップと、
前記第1の陽子線が第1の陽子線の仕様を満たしていることを確認した後、前記サイクロトロンシステムに前記第1の陽子線の出力を停止させ、陽子線調節ステップが完了したことをマークするステップとを実行し、
前記中性子線調節モジュールが実行されるとき、以下のステップ、
前記陽子線調節ステップが完了したとしてマークされ、前記サイクロトロンシステムの状態が中性子線生成条件を満たしていることを確認した後、前記サイクロトロンシステムに第1の中性子線を生成させるステップと、
前記第1の中性子線が第1の中性子線の仕様を満たしていることを確認するステップと、
前記サイクロトロンシステムに前記第1の中性子線の出力を停止させた後、中性子線調節ステップが完了したことをマークするステップとを実行し、且つ
治療調節モジュールが実行されるとき、以下のステップ、
前記中性子線調節ステップが完了したとしてマークされ、前記サイクロトロンシステムの状態が治療線生成条件を満たしていることを確認した後、前記サイクロトロンシステムに第2の中性子線を生成するように命令するステップと、
前記第2の中性子線が治療ニーズを満たしているかどうかを確認するステップと、
前記サイクロトロンシステムに前記第2の中性子線の出力を停止させた後、治療調節ステップが完了したことをマークするステップとを実行するビーム装置制御システム。
【請求項2】
前記サイクロトロンシステムが前記第1の陽子線を生成するための陽子線生成条件は、第1のファラデーカップがオンであり、第2のファラデーカップがオフであることを含み、
前記サイクロトロンシステムが前記第1の中性子線を生成するための陽子線生成条件は、第1のファラデーカップがオンであり、第2のファラデーカップがオンであることを含み、且つ
前記サイクロトロンシステムが前記第2の中性子線を生成するための治療線生成条件は、第1のファラデーカップがオンであり、第2のファラデーカップがオンであることを含む請求項1に記載のビーム装置制御システム。
【請求項3】
前記第1の陽子線が前記第1の陽子線の仕様を満たしていることを確認する前記陽子線調節モジュールは、第1のビームプロファイルモニタおよび第2のビームプロファイルモニタの測定結果が前記第1の陽子線の仕様を満たしているかどうかを確認することを含む請求項1に記載のビーム装置制御システム。
【請求項4】
前記第1の陽子線が前記第1の陽子線の仕様を満たしていることを確認する前記陽子線調節モジュールは、第1の連続波変流器の電流値と第2の連続波変流器の電流値が前記第1の陽子線の仕様を満たすかどうかを確認することを含む請求項1に記載のビーム装置制御システム。
【請求項5】
前記第1の中性子線が前記第1の中性子線の仕様を満たしていることを確認する前記中性子線調節モジュールは、中性子強度検出器の測定結果が第1の中性子線の仕様を満たしているかどうかを確認することを含む請求項1に記載のビーム装置制御システム。
【請求項6】
前記第2の中性子線が治療ニーズを満たしているかどうかを確認する前記治療調節モジュールは、サイクロトロンシステムの中性子計数率が予め設定された中性子数条件を満たしているかどうかを確認することを含む請求項1に記載のビーム装置制御システム。
【請求項7】
前記陽子線調節モジュールは、前記ビーム装置制御システムが、前記陽子線が生成されるようにする前に、安全条件が満たされているかどうかを確認する請求項1に記載のビーム装置制御システム。
【請求項8】
サイクロトロンシステムを制御するビーム装置制御方法であって、前記ビーム装置制御方法は、
前記サイクロトロンシステムに第1の陽子線を生成させるかどうかを決定するステップと、
前記第1の陽子線が第1の陽子線の仕様を満たしていることを確認した後、前記サイクロトロンシステムに前記第1の陽子線の出力を停止させ、陽子線調節ステップが完了したことをマークするステップとを含む陽子線調節ステップ、
前記陽子線調節ステップが完了したとしてマークされ、前記サイクロトロンシステムの状態が中性子線生成条件を満たしていることを確認した後、前記サイクロトロンシステムに第1の中性子線を生成するようにさせるステップと、
前記第1の中性子線が第1の中性子線の仕様を満たしていることを確認するステップと、
前記サイクロトロンシステムに前記第1の中性子線の出力を停止させた後、中性子線調節ステップが完了したことをマークするステップとを含む中性子線調節ステップ、および
前記中性子線調節ステップが完了したとしてマークされ、前記サイクロトロンシステムの状態が治療線生成条件を満たしていることを確認した後、前記サイクロトロンシステムに第2の中性子線を生成するように命令するステップと、
前記第2の中性子線が治療ニーズを満たしているかどうかを確認するステップと、
前記サイクロトロンシステムに前記第2の中性子線の出力を停止させた後、治療調節ステップが完了したことをマークするステップとを含む治療調節ステップを含むビーム装置制御方法。
【請求項9】
前記サイクロトロンシステムが前記第1の陽子線を生成するための陽子線生成条件は、第1のファラデーカップがオンであり、第2のファラデーカップがオフであることを含み、
前記サイクロトロンシステムが前記第1の中性子線を生成するための陽子線生成条件は、第1のファラデーカップがオンであり、第2のファラデーカップがオンであることを含み、且つ
前記サイクロトロンシステムが前記第2の中性子線を生成するための治療線生成条件は、第1のファラデーカップがオンであり、第2のファラデーカップがオンであることを含む請求項8に記載のビーム装置制御方法。
【請求項10】
前記第1の陽子線が前記第1の陽子線の仕様を満たしていることを確認するステップは、第1のビームプロファイルモニタおよび第2のビームプロファイルモニタの測定結果が前記第1の陽子線の仕様を満たしているかどうかを確認することを含む請求項1に記載のビーム装置制御システム。
【請求項11】
前記第1の陽子線が前記第1の陽子線の仕様を満たしていることを確認するステップは、第1の連続波変流器の電流値と第2の連続波変流器の電流値が前記第1の陽子線の仕様を満たすかどうかを確認することを含む請求項8に記載のビーム装置制御方法。
【請求項12】
前記第1の中性子線が前記第1の中性子線の仕様を満たしていることを確認するステップは、中性子強度検出器の測定結果が第1の中性子線の仕様を満たしているかどうかを確認することを含む請求項8に記載のビーム装置制御方法。
【請求項13】
前記第2の中性子線が治療ニーズを満たしているかどうかを確認するステップは、サイクロトロンシステムの中性子計数率が予め設定された中性子係数率を満たしているかどうかを確認することを含む請求項8に記載のビーム装置制御方法。
【請求項14】
前記陽子線調節ステップでは、前記サイクロトロンシステムに第1の中性子線を生成させる前に、安全条件が満たされているかどうかの確認が行われる請求項8に記載のビーム装置制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2023年2月4日に出願された台湾特許出願番号第112103962号についての優先権を主張するものであり、これらの全ては引用によって本願に援用される。
【0002】
本発明は、ビーム装置制御システムおよびビーム装置制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
ビーム装置は、エネルギーを持ったビームを生成させる装置である。これらは、ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)などの医療分野でよく用いられる。ビームには透過性があり、一定の危険性があるため、ビーム装置の使用は、安全な状態で用いられることを確実にするように規制される必要がある。
【0004】
ビームを用いて治療が行なわれるとき、陽子線と中性子線の品質保証(QA)と品質管理(QC)を継続的に行い、治療用中性子線が安定して安全であることを確保する必要がある。試験用の陽子線および試験用の中性子線の全てがQA/QCを完了した後、治療用中性子線が生成され、照射治療を行うことができる。しかしながら、現在の従来技術では、陽子線および中性子線のQA/QC手順制御を実行できるシステムがない。従って、実際には、安全上のリスク、時間とエネルギーの浪費、または機械的故障につながる可能性のある手順の誤りによって損害が生じる可能性のある状況がある。
【0005】
上述の問題に鑑み、本開示は、陽子線と中性子線の生成を共に制御して、各治療の過程の手順が正しいことを保証し、安全性を向上させ、人身傷害や装置損傷のリスクを低減することができるビーム装置制御システムおよび方法を提供する。また、本開示で開示されたビーム装置制御システムおよび方法を用いることにより、無駄な時間消費やエネルギー消費が減少され、精度が向上されることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ビーム装置制御システムおよびビーム装置制御方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態は、サイクロトロンシステムを制御するビーム装置制御システムを提供する。ビーム装置制御システムは、治療制御アプリケーションプログラムを記憶するように構成された記憶装置と、治療制御アプリケーションプログラムを実行して以下のモジュール、陽子線調節モジュール、中性子線調節モジュール、および治療調節モジュールを実行するように構成された少なくとも1つのプロセッサとを含む。実行されるとき、陽子線調節モジュールは以下のステップ、サイクロトロンシステムに第1の陽子線を生成させるかどうかを決定するステップと、第1の陽子線が第1の陽子線の仕様を満たしていることを確認した後、サイクロトロンシステムに第1の陽子線の出力を停止させ、陽子線調節ステップが完了したことをマークするステップとを実行する。実行されるとき、中性子線調節モジュールは以下のステップ、陽子線調節ステップが完了したとしてマークされ、サイクロトロンシステムの状態が中性子線生成条件を満たしていることを確認した後、サイクロトロンシステムに第1の中性子線を生成させるステップと、第1の中性子線が第1の中性子線の仕様を満たしていることを確認するステップと、サイクロトロンシステムに第1の中性子線の出力を停止させた後、中性子線調節ステップが完了したことをマークするステップとを実行する。実行されるとき、治療調節モジュールは以下のステップ、中性子線調節ステップが完了したとしてマークされ、サイクロトロンシステムの状態が治療線生成条件を満たしていることを確認した後、サイクロトロンシステムに第2の中性子線を生成するように命令するステップと、第2の中性子線が治療ニーズを満たしているかどうかを確認するステップと、サイクロトロンシステムに第2の中性子線の出力を停止させた後、治療調節ステップが完了したことをマークするステップとを実行する。
【0008】
本発明の実施形態は、サイクロトロンシステムを制御するビーム装置制御方法を提供する。ビーム装置制御方法は、陽子線調節ステップ、中性子線調節ステップ、および治療調節ステップを含む。陽子線調節ステップは、サイクロトロンシステムに第1の陽子線を生成させるかどうかを決定するステップと、第1の陽子線が第1の陽子線の仕様を満たしていることを確認した後、サイクロトロンシステムに第1の陽子線の出力を停止させ、陽子線調節ステップが完了したことをマークするステップとを含む。中性子線調節ステップは、陽子線調節ステップが完了したとしてマークされ、サイクロトロンシステムの状態が中性子線生成条件を満たしていることを確認した後、サイクロトロンシステムに第1の中性子線を生成するようにさせるステップと、第1の中性子線が第1の中性子線の仕様を満たしていることを確認するステップと、サイクロトロンシステムに第1の中性子線の出力を停止させた後、中性子線調節ステップが完了したことをマークするステップとを含む。治療調節ステップは、中性子線調節ステップが完了したとしてマークされ、サイクロトロンシステムの状態が治療線生成条件を満たしていることを確認した後、サイクロトロンシステムに第2の中性子線を生成するように命令するステップと、第2の中性子線が治療ニーズを満たしているかどうかを確認するステップと、サイクロトロンシステムに第2の中性子線の出力を停止させた後、治療調節ステップが完了したことをマークするステップとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の実施形態1のビーム装置制御システム1のブロック図を示している。
図2図2は、サイクロトロンシステム13の構造概略図を示している。
図3図3は、本発明の実施形態2の陽子線装置制御方法の陽子線の調節(regulatory)ステップのフローチャートを示している。
図4図4は、本発明の実施形態2のビーム装置制御方法の中性子線の調節ステップのフローチャートを示している。
図5図5は、本発明の実施形態2のビーム装置制御方法の治療の調節ステップのフローチャートを示している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。開示された実施形態は単なる例示であり、本発明の範囲はそれらに限定されない。
【0011】
本発明の実施形態1が図1を参照のために説明される。本発明の実施形態1は、ビーム装置制御システム1である。ビーム装置制御システム1は、処理装置11により記憶装置12に記憶されたビーム装置制御プログラムを実行し、陽子線調節モジュール111、中性子線調節モジュール112、および治療調節モジュール113を実現し、サイクロトロンシステム13を制御することができる。
【0012】
処理装置11は、例えば、中央処理装置(Central Processing Unit; CPU)、デジタル信号プロセッサ(Digital Signal Processor; DSP)、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit; ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array; FPGA)などのハードウェアの論理演算装置である。あるいは、処理装置11は、マイクロコントローラユニット(MCU)、単一チップ、単一回路、複合回路、プログラマブルプロセッサ、並列プログラマブルプロセッサ、論理IC、またはゲートアレイ(GA)などによって実装されるなど、電子回路によって実装されてもよい。
【0013】
記憶装置12は、データを記憶する装置である。記憶装置12の具体例は、固体撮像素子(Solid State Drive; SSD)、ハードディスクドライブ(Hard Disk Drive; HDD)、フラッシュメモリなどを含む。ビーム装置制御アプリケーションプログラムは、記憶装置12に記憶され、処理装置11によりロードされ、陽子線調節モジュール111、中性子線調節モジュール112、治療調節モジュール113を実現する。
【0014】
また、ビーム装置制御アプリケーションプログラムは、まず記憶装置12からデータを一時的に記憶するメモリ(図示せず)にロードされ、次いで、処理装置11によって実行されることもできる。メモリの具体例は、スタティックランダムアクセスメモリ(SRAM)またはダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)を含む。
【0015】
安全で効果的な治療中性子線を生成するために、試験陽子線と試験中性子線が正しく生成されていることを確保する必要がある。ビーム装置制御システム1は、まず、サイクロトロンシステム13により生成された試験陽子線(第1の陽子線P1)が陽子線調節モジュール111を介して仕様を満たしていることを確認する。次いで、ビーム装置制御システム1は、サイクロトロンシステム13により生成された試験中性子線(第1の中性子線)が中性子線調節モジュール112を介して仕様を満たしていることを確認する。サイクロトロンシステム13は、試験陽子線および試験中性子線が継続的に完了されたことを確認した後にのみ、治療調節モジュール113を介して治療中性子線(第2の中性子線)を生成させることができる。陽子線調節モジュール111、中性子線調節モジュール112、および治療調節モジュール113で実行されるステップが以下に詳細に説明される。
【0016】
まず、陽子線調節モジュール111により実行されるステップが説明される。サイクロトロンシステム13がビーム装置制御システム1に第1の陽子線の生成の要求を送信したとき、ビーム装置制御システム1は陽子線調節モジュール111を起動する。陽子線調節制御モジュール111は、安全条件に従って第1の陽子線の生成の要求が許可されるかどうかを判断することができる。例えば、安全条件とは、ユーザが、環境が安全であることを確認した後、処理装置11に接続された入力装置(図示せず)を用いて、例えば、キーボードによる特定のパラメータの入力、またはマウスによるディスプレイ上の特定のボタンのクリックなどの入力を実行することであることができる。あるいは、サイクロトロンシステム13が複数の照射室を有する場合、安全条件は、サイクロトロンシステム13が他の照射室によって占有されていないことであってもよい。例えば、サイクロトロンシステム13が他の治療コースによって占有されているとき、陽子線調節モジュール111は、サイクロトロンシステム13の要求を拒否し、第1の陽子線を生成する。このとき、サイクロトロンシステム13は、陽子線調節モジュール111が第1の陽子線を生成させることを待つ。
【0017】
陽子線調節モジュール111がサイクロトロンシステム13に第1の陽子線を生成させた後、サイクロトロンシステム13は、現在の状態が陽子線生成条件を満たし、陽子線生成条件が、サイクロトロンシステム13が陽子線を生成するのに適した条件であることを確認する。即ち、サイクロトロンシステム13は、陽子線が生成可能な状態に調整される。以下、本実施形態のサイクロトロンシステム13および陽子線生成条件は、以下に説明される。
【0018】
本実施形態のサイクロトロンシステム13の構成概略図は、図2に示されている。四重極磁石Q1X、Q1Y、Q2X、およびQ2Yは、イオン源ISISによって生成されたイオンビームを集束するように構成されている。連続波変流器CWCT1およびCWCT2は電流曲線を監視するように構成される。ビームプロファイルモニタBPM1およびBPM2はビームのプロファイルをモニターするように構成される。第1のファラデーカップFC1のスイッチング状態は、サイクロトロンシステム13が陽子線を生成できるかどうかを決める。第1のファラデーカップFC1および第2のファラデーカップFC2のスイッチング状態は、サイクロトロンシステム13のイオン源ISISによって生成されたビームがベリリウムターゲットを通過して、ベリリウムターゲットに当たり、中性子線を生成できるかどうかを決める。
【0019】
本実施形態では、陽子線生成条件は、第1のファラデーカップFC1のオン、および第2のファラデーカップFC2のオフを含む。陽子線生成条件はこれに限定されない。サイクロトロンシステム13が陽子線を生成できる条件であればどのような条件でも陽子線生成条件であることができる。
【0020】
サイクロトロンシステム13が一定時間内に陽子線生成条件を満たすことができないとき、ビーム装置制御システム1は、サイクロトロンシステム13を維持および調整するように通知することができる(例えば、ビーム装置制御システム1が警告を送信し、システムに異常があることをユーザに通知する)。サイクロトロンシステム13は、陽子線生成条件が満たされていることを確認したとき、サイクロトロンシステム13は、イオン源ISISを制御して電流を注入し、試験用の第1の陽子線P1として電流陽子線を生成する。
【0021】
次に、サイクロトロンシステム13は、第1の陽子線P1が第1の陽子線の仕様を満たしているかどうかを確認する。本実施形態では、第1の陽子線の仕様は、連続波変流器CWCT1およびCWCT2の値が設定値に達し、ビームプロファイルモニタBPM1およびBPM2が仕様を満たしていることを含む。サイクロトロンシステム13は、第1の陽子線P1が一定期間内に第1の陽子線の仕様を満たしていないことを確認したとき、ビーム装置制御システム1に、サイクロトロンシステム13を維持および調整するように通知することができる。サイクロトロンシステム13は、第1の陽子線P1が第1の陽子線の仕様を満たしていることを確認したとき、第1の陽子線P1のQA/QCが完了したことを示す結果をビーム装置制御システム1に報告する。
【0022】
陽子線調節モジュール111は、「第1の陽子線P1のQA/QCが完了した」という結果を受信した後、陽子線調節モジュール111は、サイクロトロンシステム13に第1の陽子線の出力を停止させる。次に、陽子線調節モジュール111は、陽子線制御ステップが完了したことをマークする。ステップが完了したことをマークする方法は、例えば、陽子線調節ステップ、中性子線調節ステップ、および治療調節ステップが完了したかどうかをマークするためのメモリ空間を処理装置11の読み取り可能なメモリ内に作成し、値0および1によりマークすることを含むことができる。完了したステップは1としてマークされ、完了していないステップは0としてマークされ、デフォルト値は0である。あるいは、上述のマーキングは記憶装置12に記憶されることもできる。陽子線調節モジュール111が、陽子線調節ステップが完了したことをマークした後、サイクロトロンシステム13は第1の陽子線P1を生成させることを取り消す。
【0023】
次に、中性子線調節モジュール112により実行されるステップを説明する。陽子線制御モジュール111が陽子線調節ステップが完了したとしてマークされた後、ビーム装置制御システム1は中性子線調節モジュール112を起動する。中性子線調節モジュール112は、陽子線調節ステップが完了したとしてマークされたことをまず確認する必要がある。次に、中性子線調節モジュール112は、サイクロトロンシステム13に第1の中性子線の生成を要求する。サイクロトロンシステム13は、現在の状態が中性子線生成条件を満たしていることを確認する。中性子線生成条件は、サイクロトロンシステム13が中性子線を生成するのに適した条件である。本実施形態では、中性子線生成条件は、第1のファラデーカップFC1のオン、第2のファラデーカップFC2のオンを含む。中性子線生成条件はこれに限定されない。サイクロトロンシステム13が中性子線を生成できる条件であればどのような条件でも中性子線生成条件であることができる。
【0024】
サイクロトロンシステム13は、一定時間内に中性子線生成条件を満たすことができないと判断したとき、ビーム装置制御システム1に、サイクロトロンシステム13を維持および調整するように通知する。サイクロトロンシステム13は、中性子線生成条件が満たされていることを確認したとき、サイクロトロンシステム13は、イオン源ISISを制御して電流を注入し、試験用の中性子線として第1の中性子線を生成する。
【0025】
次に、中性子線調節モジュール112は、第1の中性子線が第1の中性子線の仕様を満たしているかどうかを確認する。本実施形態では、第1の中性子線の仕様は、中性子強度の仕様を含む。中性子線調節モジュール112は、中性子強度検出器14を介して、第1の中性子線が中性子強度を満たすかどうかを確認することができる。本実施形態では、中性子強度検出器14は、サイクロトロンシステム13により生成された中性子線を検出できるように構成されており、中性子線の中性子強度を検出した後、その検出結果をビーム装置制御システム1に送信し、これにより、中性子線調節モジュール112と治療調節モジュール113が検出結果を読み取ることができるようにする。
【0026】
第1の中性子線が一定期間内に第1の中性子線の仕様を満たさないとき、ビーム装置制御システム1は、この異常状態をサイクロトロンシステム13に通知し、サイクロトロンシステム13を維持および調整する。第1の中性子線が第1の中性子線の仕様を満たしているとき、ビーム装置制御システム1は、この結果をサイクロトロンシステム13に通知し、サイクロトロンシステム13に第1の中性子線の出力を停止させ、中性子線の試験を終了する。サイクロトロンシステム13に第1の中性子線の出力を停止させたとき、例えば、ビーム装置制御システム1は、サイクロトロンシステム13に、第1の中性子線の生成をさせることを取り消すように通知し、イオン源ISIS、第1のファラデーカップFC1、および第2のファラデーカップFC2をオフにする。イオン源ISIS、第1のファラデーカップFC1、および第2のファラデーカップFC2がオフになった後、サイクロトロンシステム13は ビーム装置制御システム1にサイクロトロンシステム13がオフになったことを通知する。中性子線調節モジュール112は、中性子線調節ステップが完了したことをマークする。
【0027】
次に、処理調節モジュール113により実行されるステップが説明される。中性子線調節モジュール112が中性子線調節ステップが完了したことをマークした後、ビーム装置制御システム1は処理調節モジュール113を起動する。治療調節モジュール113は、まず、陽子線調節のステップおよび中性子線調節のステップが完了したとしてマークされ、サイクロトロンシステム13の現在の状態が治療線生成条件を満たしていることを確認する。治療線生成条件は、サイクロトロンシステム13が待機しており、いつでも中性子線照射治療を開始できる状態である。本実施形態では、治療線生成条件は、第1のファラデーカップFC1がオン、第2のファラデーカップFC2がオン、およびサイクロトロンシステム13のスタンバイ状態(即ち、イオン源ISISを制御して、いつでも電流を注入し、治療用中性子線を生成させることができる状態)にある。
【0028】
次に、ビーム装置制御システム1は、治療起動コマンドを待つ。治療起動コマンドは、ユーザ(例えば、医療従事者)によって入力される。例えば、ユーザは、特定のパラメータを入力、または特定のボタンを押して、治療起動コマンドをビーム装置制御システム1に入力する。さらに、治療起動コマンドを待っている間、治療調節モジュール113は、ユーザに治療ニーズ(treatment needs)を入力することを要求することもできる。治療要件は、治療中性子線(第2の中性子線)の仕様であり、医師により指示された治療計画に従って決定される。本実施形態では、治療調節モジュール113は、治療の必要に応じて医師より指示された腫瘍処方量および治療計画を入力することをユーザに要求する。治療調節モジュールは、ユーザにより入力された治療ニーズに従って、必要な治療時間を計算する。しかしながら、照射時間は、実際の照射状況に応じて任意に調整されることができるため、本実施形態における治療ニーズおよび後述する治療ニーズが満たされているかどうかの判定方法は、あくまで一例である。治療ニーズと治療ニーズを達成する方法は、実際のニーズに応じて異なって設計されることができる。例えば、医師により処方された正常組織の処方量が治療ニーズとして用いられることもでき、後述するサイクロトロンシステム13の動作中にパラメータが検査され、照射時間が調整される。
【0029】
ビーム装置制御システム1は、ユーザにより出された治療起動コマンドを受信したとき、ビーム装置制御システム1が治療ニーズをサイクロトロンシステム13に送信した後、サイクロトロンシステム13が、イオン源ISISを制御して電流を注入し、治療用中性子線(第2の中性子線)を生成するように命令する。
【0030】
サイクロトロンシステム13が作動し、第2の中性子線の発生を開始する。サイクロトロンシステム13が一定時間内に正常に動作できない場合、ビーム装置制御システム1に通知する必要がある。ユーザ(例えば、医療従事者)は、受信した情報に従って、治療を停止する(即ち、治療調節モジュール113に治療の実行を停止させる)かどうかを決定する。サイクロトロンシステム13が正常に動作した後、治療調節モジュール113は、生成された第2の中性子線が治療ニーズを満たしているかどうかを継続的に確認する。いくつかの実施形態では、連続波変流器CWCT1およびCWCT2は、サイクロトロンシステム13により生成された陽子数をそれぞれ測定し、陽子数に対応する第1の電流値または第2の電流値を得るように用いられることができる。その後、第1の電流値または第2の電流値は、予め設定された第1の電流値または予め設定された第2の電流値と比較され、予め設定された第1の電流値または予め設定された第2の電流値は、治療ニーズが満たされるかどうかの基準として機能する。あるいは、中性子強度検出器が用いられ、サイクロトロンシステム13により生成された中性子数を測定し、中性子計数率を得ることもできる。中性子計数率は、予め設定された中性子数条件と比較され、予め設定された中性子数条件は、治療ニーズが満たされるかどうかの基準として機能する。本明細書では、「中性子計数率」という用語は、比例計数管などの装置により測定された中性子数を指す。いくつかの実施形態では、中性子数は、比例計数管で測定された脈動数から導き出されることができる。また、本明細書では、中性子数条件は、中性子数が導き出されることができる条件または値である。例えば、中性子計数率は陽子電流に関連している。電流が大きいほど、より多くの中性子が発生する。従って、電流の観測は中性子の数の量を知ることもできる。本明細書では、中性子数条件は、中性子計数率、後述する中性子収率因子(neutron yield factor)、中性子束、または中性子数に関連する任意の値であることができる。本実施形態では、照射時間が終了する前に、処理調節モジュール113は、中性子計数率を第1の電流値で除算し、第1の中性子収率因子を得て、第1の中性子収率因子を第1の予め設定された中性子収率因子と比較する。第1の中性子収率因子と第1の予め設定された中性子収率因子との差が第1の中性子収率因子の閾値以上であるとき、治療調節モジュール113は通知を送信する。治療を停止する(即ち、治療調節モジュール113に治療の実行を停止させる)かどうかを決定するのはユーザ(例えば、医療関係者)次第である。いくつかの実施形態では、第1の中性子収率因子の閾値は、第1の予め設定された中性子収率因子の5%であることができるが、本開示はこれに限定されない。あるいは、中性子計数率は、まず中性子束に変換され、中性子束が第1の電流値で除算され、第1の中性子収率を得てもよい。本明細書では、「中性子束」という用語は、単位時間当たりに単位面積を通過する中性子の数を指す。いくつかの実施形態では、「中性子束」は、中性子密度とその平均速度の積に等しい。次に、第1の中性子収率が第1の予め設定された中性子収率と比較されることができる。第1の中性子収率と第1の予め設定された中性子収率との差が第1の中性子収率因子の閾値以上であるとき、治療調節モジュール113は通知を送信する。治療を停止する(即ち、治療調節モジュール113に治療の実行を停止させる)かどうかを決定するのはユーザ(例えば、医療関係者)次第である。さらに、中性子強度検出器により中性子計数率が治療ニーズを満たしているかどうかを確認し、第2の中性子線が治療ニーズを満たしているかどうかを確認する。
【0031】
照射時間が終了した後、治療調節モジュール113はサイクロトロンシステム13に第2の中性子線の出力を停止するよう命令し、サイクロトロンシステム13が第2の中性子線の出力を停止したかどうかを検出する。サイクロトロンシステム13が第2の中性子線の出力を停止した後、治療調節モジュール113は、治療調節ステップが完了したことをマークする。
【0032】
以下、本発明の実施形態2について説明する。本発明の実施形態2は、サイクロトロンシステムを制御するビーム装置制御方法である。ビーム装置制御方法は、陽子線調節ステップ、中性子線調節ステップ、および治療調節ステップを含む。上述のステップは、サイクロトロンシステムに接続されたビーム装置制御システムにより実現されることができる。ビーム装置制御システムは処理装置を含み、処理装置は記憶装置に記憶されたソフトウェアを実行するように構成されている。
【0033】
処理装置は、例えば、中央処理装置(Central Processing Unit; CPU)、デジタル信号プロセッサ(Digital Signal Processor; DSP)、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit; ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array; FPGA)などのハードウェアの論理演算装置である。あるいは、処理装置11は、マイクロコントローラユニット(MCU)、単一チップ、単一回路、複合回路、プログラマブルプロセッサ、並列プログラマブルプロセッサ、論理IC、またはゲートアレイ(GA)などによって実装されるなど、電子回路によって実装されてもよい。記憶装置は、例えば、ソリッドステートドライブ(Solid State Drive; SSD)、ハードディスクドライブ(Hard Disk Drive; HDD)、フラッシュメモリ、スタティックランダムアクセスメモリ(Static Random Access Memory; SRAM)、またはダイナミックランダムアクセスメモリ(Dynamic Random Access Memory; DRAM)などである。
【0034】
以下、本発明の実施形態2について、図3図5を参照して詳細に説明する。
【0035】
図3に示すように、本発明の実施形態2の陽子線調節ステップを説明する。
【0036】
サイクロトロンシステムがビーム装置制御システムに第1の陽子線の生成の要求を送信したとき、ビーム装置制御システムはサイクロトロンシステムに第1の陽子線を生成させる(ステップS11)。ビーム装置制御システムは、まず安全条件が満たされているかどうかを確認し、安全条件が満たされているとき、サイクロトロンシステムに第1の陽子線を生成させることができる。例えば、安全条件とは、ユーザが、環境が安全であることを確認した後、ビーム装置制御システムに接続された入力装置を用いて入力を実行することである。あるいは、安全条件は、サイクロトロンシステムが他の治療コースまたは照射室により占有されていないことであってもよい。
【0037】
ビーム装置制御システムが第1の陽子線を生成させた後、サイクロトロンシステムは現在の状態が陽子線生成条件を満たしていることを確認する(ステップS12)。即ち、サイクロトロンシステムは、現在、陽子線が生成されることができる状態であることを確認している。図2に示されたサイクロトロンシステムを例にとると、陽子線生成条件は、第1のファラデーカップFC1がオン、第2のファラデーカップFC2がオフであることを含む。また、サイクロトロンシステムが一定時間内に陽子線生成条件を満たすことができないとき、ビーム装置制御システムに、サイクロトロンシステムを維持および調整するように通知することができる(ステップS17)。
【0038】
サイクロトロンシステムは、現在の状態が中性子線生成条件を満たしていることを確認した後、サイクロトロンシステムは、第1の陽子線を生成する(ステップS13)。サイクロトロンシステムは、イオン源を制御して電流を注入し、試験用の第1の陽子線として電流陽子線を生成する。
【0039】
次に、サイクロトロンシステムは、第1の陽子線が第1の陽子線の仕様を満たしているかどうかを確認する(ステップS14)。本実施形態では、第1の陽子線の仕様は、連続波変流器の値が設定値に達し、ビームプロファイルモニタの値が仕様を満たしていることを含む。第1の陽子線が一定期間内に第1の陽子線の仕様を満たしていないとき、ビーム装置制御システムは、サイクロトロンシステムを維持および調整するように通知することができる(ステップS17)。
【0040】
サイクロトロンシステムは、第1の陽子線が第1の陽子線の仕様を満たしていることを確認したとき、第1の陽子線の仕様が満たされたことをビーム装置制御システムに報告する(ステップS15)。次に、ビーム装置制御システムは、サイクロトロンシステム13に第1の陽子線の出力を停止させ(サイクロトロンが第1の陽子線を生成させることを取り消し、サイクロトロンシステムをオフにし)、次いで、陽子線調節ステップが完了したことをマークする(ステップS16)。ステップが完了したことをマークする方法は、例えば、陽子線調節ステップ、中性子線調節ステップ、および治療調節ステップが完了したかどうかをマークするためのメモリ空間を処理装置11の読み取り可能なメモリ内に作成し、値0および1によりマークすることを含むことができる。完了したステップは1としてマークされ、完了していないステップは0としてマークされ、デフォルト値は0である。あるいは、上述のマーキングは記憶装置12に記憶されることもできる。
【0041】
陽子線調節のステップが完了したとしてマークされた後、中性子線調節のステップに入る。ビーム装置制御システムは、サイクロトロンシステムに第1の中性子線の生成を要求する(ステップS21)。このとき、サイクロトロンシステムは、現在の状態が中性子線生成条件を満たしていることを確認する(ステップS22)。図2に示されたサイクロトロンシステムを例にとると、中性子線生成条件は、第1のファラデーカップFC1がオン、第2のファラデーカップFC2がオンであることを含む。
【0042】
サイクロトロンシステムが一定時間内に中性子線生成条件を満たすことができないとき、ビーム装置制御システムに、サイクロトロンシステムを維持および調整するように通知することができる(ステップS27)。サイクロトロンシステムが、中性子線生成条件が満たされていると確認したとき、サイクロトロンシステムは、イオン源ISISを制御して電流を注入し、試験用の中性子線として第1の中性子線を生成する(ステップS23)。
【0043】
次に、ビーム装置制御システムは、第1の中性子線が第1の中性子線の仕様を満たしているかどうかを確認する(ステップS24)。本実施形態では、第1の中性子線の仕様は、中性子強度を含む。第1の中性子線が中性子強度を満たしているかどうかは、ビーム装置制御システムに接続された中性子強度検出器を用いて確認することができる。
【0044】
第1の中性子線が一定時間内に第1の中性子線の仕様を満たさないとき、ビーム装置制御システムは、第1の中性子線の生成をさせることを取り消し、警報を出す(ステップS28)。本実施形態では、警告を受け取った後、ユーザは、中性子強度検出器からの情報に基づいて次のステップを決定することができる。第1の中性子線が第1の中性子線の仕様を満たしているとき、ビーム装置制御システムは、サイクロトロンシステムに第1の中性子ビームの出力を停止させる(ビーム装置制御システムは、第1の中性子線を生成させることを取り消し、サイクロトロンシステムにオフにするように通知する)(ステップS25)。イオン源、第1のファラデーカップ、および第2のファラデーカップがオフになった後、サイクロトロンシステムは、サイクロトロンシステムがオフになったことをビーム装置制御システムに通知する。ビーム装置制御システムは、中性子線調節のステップが完了したことをマークする(ステップS26)。
【0045】
陽子線調節のステップおよび中性子線調節のステップが完了したとしてマークされた後、治療調節ステップに入る。まず、陽子線調節のステップおよび中性子線調節のステップが完了したとしてマークされ、サイクロトロンシステムの現在の状態が治療線生成条件を満たしていることを確認する(ステップS31)。
【0046】
次に、ビーム装置制御システムは、ユーザからの治療起動コマンドを待つ(ステップS32)。例えば、ビーム装置制御システムは、ユーザが特定のパラメータを入力するか、または特定のボタンを押して治療起動コマンドをビーム装置制御システムに入力することを待つ。さらに、治療起動コマンドを待っている間、ビーム装置制御システムはユーザに治療ニーズを入力するように要求することもできる。治療ニーズは、治療中性子線(第2の中性子線)の仕様であり、医師により指示された治療計画に従って決定される。本実施形態では、治療ニーズは、医師により指示された腫瘍の処方量および治療計画である。さらに、ビーム装置制御システムは、ユーザにより入力された治療ニーズに応じて、必要な治療時間を計算することができる。
【0047】
ビーム装置制御システムは、ユーザにより出された治療起動コマンドを受信したとき、ビーム装置制御システムは、サイクロトロンシステムが、イオン源ISISを制御して電流を注入し、治療ニーズをサイクロトロンシステムに送信し、サイクロトロンシステムに第2の中性子線の生成を開始させるように命令する(ステップS33)。このとき、サイクロトロンシステムが正常に動作するかどうかが確認される(ステップS34)。サイクロトロンシステムが一定時間内に正常に動作しなくなった場合、サイクロトロンシステムはビーム装置制御システムに通知する。ユーザ(例えば、医療関係者)は、受け取った情報に従って治療を停止するかどうかを決定する。
【0048】
サイクロトロンシステムが正常に動作している場合、サイクロトロンシステムは、陽子数と中性子数が一致しているかどうかを確認する(ステップS35)。いくつかの実施形態では、連続波変流器CWCT1およびCWCT2を介して陽子数をそれぞれ測定し、第1の電流値または第2の電流値を得ることができる。中性子強度検出器を介して中性子数を測定し、中性子計数率を得ることもできる。いくつかの実施形態では、中性子数は、比例計数管で測定された脈動数から導き出すことができる。また、予め設定された照射時間が終了する前に、ビーム装置制御システムは、生成された第2の中性子線が治療ニーズを満たしているかどうかを中性子強度検出器を介して継続的に確認する(ステップS36)。
【0049】
照射時間が予め設定された照射時間に達したとき、ビーム装置制御システムはユーザに治療調節ステップを停止するかどうかを問い合わせる(ステップS37)。ユーザは必要に応じて照射時間を延長し、ステップS35に戻ることができる。
【0050】
ユーザがビーム装置制御システムに治療停止命令を出した場合、ビーム装置制御システムは、サイクロトロンシステムに、停止手順に入るように命令し、第2の中性子線の出力を停止する(ステップS38)。本実施形態では、停止手順は、サイクロトロンシステムが第2の中性子線の出力を停止したかどうかを検出することを含む。さらに、サイクロトロンシステムが第2の中性子線の出力を停止した後、ビーム装置制御システムは処理調節ステップが完了したことをマークする。
【0051】
停止手順を実現するのに用いられることができるさまざまな方法がある。例えば、ビーム装置制御システムは、サイクロトロンシステムに停止を継続的に命令し、サイクロトロンシステムがオフになったかどうかを検出することができる。サイクロトロンシステムが一定時間内(例えば2分)内にオフにされなかった場合、緊急停止手順が開始される。停止手順はこれに限定されず、要件に応じて異なる停止手順を設計することもできる。
【0052】
複数の実施形態を個別に説明したが、上述の実施形態は組み合わせて実施されることもできる。あるいは、複数の実施形態のうちの1つが部分的に実施されてもよい。また、複数の実施形態は、部分的に組み合わされてもよい。また、上述の複数の実施形態で説明した構成およびステップは、必要に応じて部分的に変更することができる。
【0053】
上述の実施形態のさまざまな態様は、本発明の理解を容易にするために書かれたものであり、上述の説明は本発明を限定することを意図するものではない。従って、上述の実施形態のさまざまな態様の各々に開示された各要素は、本発明の技術的範囲内の全ての設計上の変形例または同等物を含むことを意図している。
【符号の説明】
【0054】
1 ビーム装置制御システム
11 処理装置
111 陽子線調節モジュール
112 中性子線調節モジュール
113 治療調節モジュール
12 記憶装置
13 サイクロトロンシステム
14 中性子強度検出器
BPM1、BPM2 ビームプロファイルモニタ
CWCT1、CWCT2 連続波変流器
FC1 第1のファラデーカップ
FC2 第2のファラデーカップ
ISIS イオン源
Q1X、Q1Y、Q2X、Q2Y 四重極磁石
S11~S17 フローチャートのステップ
S21~S27 フローチャートのステップ
S31~S37 フローチャートのステップ
図1
図2
図3
図4
図5