(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110922
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】積層型電子部品
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20240808BHJP
【FI】
H01G4/30 201M
H01G4/30 201K
H01G4/30 201L
H01G4/30 515
H01G4/30 511
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023204219
(22)【出願日】2023-12-01
(31)【優先権主張番号】10-2023-0015100
(32)【優先日】2023-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チョイ、ホ サム
(72)【発明者】
【氏名】シム、キュ ジェオン
(72)【発明者】
【氏名】パク、ジュン ジン
(72)【発明者】
【氏名】チョイ、ヒョ スン
(72)【発明者】
【氏名】リー、ジョン ホ
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AE02
5E001AE03
5E001AE04
5E082AB03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】耐電圧性及び信頼性特性を向上させる積層型電子部品を提供する。
【解決手段】積層型電子部品は、第1方向に交互に配置される誘電体層111及び内部電極121、122を含む容量形成部並びに容量形成部の第1方向に対向する両端面上に配置されるカバー部112、113を含む本体110と、本体の外部に配置され、内部電極と連結される外部電極131、132とを含む。カバー部は、容量形成部に隣接した第1領域112a、113a及びカバー部の外側に隣接した第2領域112b、13bを含み、第2領域112b、113bがフッ素を含み、第2領域に含まれたフッ素(F)の含量は、第1領域に含まれたフッ素(F)の含量より大きい。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に交互に配置される誘電体層及び内部電極を含む容量形成部、並びに前記容量形成部の前記第1方向に対向する両端面上に配置されるカバー部を含む本体と、
前記本体の外部に配置され、前記内部電極と連結される外部電極と、を含み、
前記カバー部は、前記容量形成部に隣接した第1領域及び前記カバー部の外側に隣接した第2領域を含み、
前記第2領域に含まれたフッ素(F)の含量は、前記第1領域に含まれたフッ素(F)の含量より大きい、積層型電子部品。
【請求項2】
前記第2領域は、複数の誘電体結晶粒及び隣接した誘電体結晶粒の間に配置され、フッ素(F)を含む結晶粒界を含む、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項3】
前記第1領域に含まれた誘電体結晶粒の平均サイズをA1、前記第2領域に含まれた誘電体結晶粒の平均サイズをA2とするとき、A2>A1を満たす、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項4】
前記A2は180m以上270nm以下である、請求項3に記載の積層型電子部品。
【請求項5】
前記第1領域に含まれた誘電体結晶粒のBa/Tiのモル比をM1、前記第2領域に含まれた誘電体結晶粒のBa/Tiのモル比をM2とするとき、M1>M2を満たす、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項6】
前記M1は0.999以上1.05以下である、請求項5に記載の積層型電子部品。
【請求項7】
前記第2領域は、飛行時間型二次イオン質量分析(TOF-SIMS)によるアニオン分析時に、フッ素イオン(F-)が検出される、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項8】
前記第1領域の飛行時間型二次イオン質量分析(TOF-SIMS)によるアニオン分析において、全アニオンの検出強度に対する前記フッ素イオン(F-)の検出強度の比率をI1、前記第2領域の飛行時間型二次イオン質量分析(TOF-SIMS)によるアニオン分析において、全アニオンの検出強度に対する前記フッ素イオン(F-)の検出強度の比率をI2とするとき、I2>I1を満たす、請求項7に記載の積層型電子部品。
【請求項9】
前記第2領域は、BaTiO3系を主成分として含み、Ca、Al、Li、Co、Zn、Mn、Mg、及びSのうち少なくとも一つをさらに含む、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項10】
前記第1領域の平均厚さをT1、前記第2領域の平均厚さをT2とするとき、T2/T1は1以上4以下である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項11】
前記誘電体層はフッ素(F)を含む、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項12】
前記誘電体層は、フッ素(F)を含まないか、又は前記第2領域に含まれたフッ素(F)の含量より小さい含量のフッ素(F)を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の積層型電子部品。
【請求項13】
第1方向に交互に配置される誘電体層及び内部電極を含む容量形成部、並びに前記容量形成部の前記第1方向に対向する両端面上に配置されるカバー部を含む本体と、
前記本体の外部に配置され、前記内部電極と連結される外部電極と、を含み、
前記カバー部は、前記容量形成部に隣接した第1領域及び前記カバー部の外側に隣接した第2領域を含み、
前記第2領域はフッ素(F)を含み、
前記第1領域に含まれた誘電体結晶粒の平均サイズをA1、前記第2領域に含まれた誘電体結晶粒の平均サイズをA2とするとき、A2>A1を満たす、積層型電子部品。
【請求項14】
前記A2は180nm以上270nm以下である、請求項13に記載の積層型電子部品。
【請求項15】
前記第1領域に含まれた誘電体結晶粒のBa/Tiのモル比をM1、前記第2領域に含まれた誘電体結晶粒のBa/Tiのモル比をM2とするとき、M1>M2を満たす、請求項13又は14に記載の積層型電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
積層型電子部品の一つである積層セラミックキャパシタ(MLCC:Multi-Layered Ceramic Capacitor)は、液晶表示装置(LCD:Liquid Crystal Display)及びプラズマ表示装置パネル(PDP:Plasma Display Panel)等の映像機器、コンピュータ、スマートフォン、及び携帯電話等の様々な電子製品の印刷回路基板に装着され、電気を充電又は放電させる役割を果たすチップ型のコンデンサである。
【0003】
このような積層セラミックキャパシタは、小型でありながらも高容量が保障され、実装が容易であるという利点により、様々な電子装置の部品として使用されることができる。コンピュータ、モバイル機器等、各種の電子機器が小型化、高出力化するにつれて、積層セラミックキャパシタに対する小型化及び高容量化への要求が増大している。
【0004】
積層セラミックキャパシタは、一般的に、誘電体層及び内部電極が交互に配置されて容量が形成される容量形成部と、上記容量形成部を保護するためのカバー部とを含む。一方、積層セラミックキャパシタの超小型化及び超高容量化を実現するために誘電体層を薄層化することにより、積層セラミックキャパシタの耐電圧及び信頼性特性が劣化するという問題点が発生することがある。このような問題点を解決するために、カバー部の緻密度を向上させ、カバー部に含まれた誘電体結晶粒のサイズを小さくする方法を考えることができる。
【0005】
但し、カバー部に含まれた誘電体結晶粒のサイズを小さくすると、耐電圧及び信頼性特性の確保には有利であり得るものの、外部からの衝撃によるクラック(crack)発生等の副効果を引き起こす可能性がある。したがって、積層セラミックキャパシタの耐電圧及び信頼性特性を向上させながらも外部からの衝撃によるクラックの発生を防止することができるカバー部の構造に関する研究が必要な実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明のいくつかの目的の一つは、積層型電子部品の耐電圧性及び信頼性特性を向上させることである。
【0007】
本発明のいくつかの目的の一つは、積層型電子部品にクラックが発生することを防止することである。
【0008】
但し、本発明の目的は上述の内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でより容易に理解することができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態は、第1方向に交互に配置される誘電体層及び内部電極を含む容量形成部、並びに上記容量形成部の上記第1方向に対向する両端面上に配置されるカバー部を含む本体と、上記本体の外部に配置され、上記内部電極と連結される外部電極とを含み、上記カバー部は、上記容量形成部に隣接した第1領域及び上記カバー部の外側に隣接した第2領域を含み、上記第2領域に含まれたフッ素(F)の含量は、上記第1領域に含まれたフッ素(F)の含量より大きい積層型電子部品を提供する。
【0010】
本発明の一実施形態は、第1方向に交互に配置される誘電体層及び内部電極を含む容量形成部、並びに上記容量形成部の上記第1方向に対向する両端面上に配置されるカバー部を含む本体と、上記本体の外部に配置され、上記内部電極と連結される外部電極とを含み、上記カバー部は、上記容量形成部に隣接した第1領域及び上記カバー部の外側に隣接した第2領域を含み、上記第2領域はフッ素(F)を含み、上記第1領域に含まれた誘電体結晶粒の平均サイズをA1、上記第2領域に含まれた誘電体結晶粒の平均サイズをA2とするとき、A2>A1を満たす積層型電子部品を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の様々な効果の一つとして、積層型電子部品の耐電圧及び信頼性特性を向上させることができる。
【0012】
本発明の様々な効果の一つとして、積層型電子部品にクラックが発生することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態による積層型電子部品を概略的に示す斜視図である。
【
図2】
図1のI-I'線に沿った切断断面を概略的に示す断面図である。
【
図3】
図1のII-II'線に沿った切断断面を概略的に示す断面図である。
【
図5】実験例の第1領域を走査電子顕微鏡(SEM)で撮影したイメージである。
【
図6】実験例の第2領域を走査電子顕微鏡(SEM)で撮影したイメージである。
【
図7】比較例の耐湿信頼性の評価結果を示すグラフである。
【
図8】実験例の耐湿信頼性の評価結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、具体的な実施形態及び添付の図面を参照して本発明の実施形態について説明する。しかし、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形することができ、本発明の範囲が以下で説明する実施形態に限定されるものではない。また、本発明の実施形態は、通常の技術者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及び大きさ等は、より明確な説明のために誇張されることがあり、図面上の同じ符号で示される要素は同じ要素である。
【0015】
そして、図面において本発明を明確に説明するために、説明と関係のない部分は省略し、図面に示した各構成の大きさ及び厚さは説明の便宜上、任意に示しているため、本発明は必ずしも図示したものに限定されない。なお、同一思想の範囲内の機能が同一である構成要素に対しては、同一の参照符号を用いて説明する。さらに、明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」と言うとき、これは特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0016】
図面において、第1方向は厚さT方向、第2方向は長さL方向、第3方向は幅W方向と定義することができる。
【0017】
積層型電子部品
図1は、本発明の一実施形態による積層型電子部品を概略的に示す斜視図であり、
図2は、
図1のI-I'線に沿った切断断面を概略的に示す断面図であり、
図3は、
図1のII-II'線に沿った切断断面を概略的に示す断面図であり、
図4は、
図3のK1領域の拡大図である。
【0018】
以下、
図1~
図4を参照して、本発明の一実施形態による積層型電子部品100について詳細に説明する。また、積層型電子部品の一例として積層セラミックキャパシタ(Multi-layered Ceramic Capacitor、以下「MLCC」という)について説明するが、本発明がこれに限定されるものではなく、様々な積層型電子部品、例えば、インダクタ、圧電体 素子、バリスタ、又はサーミスタ等にも適用することができる。
【0019】
本発明の一実施形態による積層型電子部品100は、第1方向に交互に配置される誘電体層111及び内部電極121、122を含む容量形成部Ac、並びに上記容量形成部の上記第1方向に対向する両端面上に配置されるカバー部112、113を含む本体110と、上記本体の外部に配置され、上記内部電極と連結される外部電極131、132とを含み、上記カバー部は、上記容量形成部に隣接した第1領域112a、113a及び上記カバー部の外側に隣接した第2領域112b、113bを含み、上記第2領域に含まれたフッ素(F)の含量は、上記第1領域に含まれたフッ素(F)の含量より大きいことができる。
【0020】
本発明の一実施形態によれば、第2領域112b、113bに含まれたフッ素(F)が低温焼結助剤の役割を果たすことにより、第2領域112b、113bに含まれた誘電体結晶粒G2の粒成長及び緻密化を誘導することができる。これにより、カバー部112、113の外側に隣接した第2領域112b、113bの靭性(toughness)を向上させ、外部からの衝撃によるクラックの発生を防止することができる。
【0021】
また、第2領域112b、113bに含まれたフッ素(F)の含量は、第1領域112a、113aに含まれたフッ素(F)の含量より大きくてもよく、これにより第2領域112b、113bの靭性(toughness)を向上させながらも、容量形成部Acと隣接した第1領域112a、113aの粒成長を制御して積層型電子部品100の耐電圧及び信頼性特性を確保することができる。
【0022】
以下、本発明の一実施形態による積層型電子部品100に含まれるそれぞれの構成についてより詳細に説明する。
【0023】
本体110の具体的な形状に特に制限はないが、図示のように、本体110は六面体形状又はこれと類似の形状からなることができる。焼成過程で本体110に含まれたセラミック粉末の収縮や角部の研磨により、本体110は完全な直線を有する六面体形状ではないが、実質的に六面体形状を有することができる。
【0024】
本体110は、第1方向に対向する第1及び第2面1、2、上記第1及び第2面1、2と連結され、第2方向に対向する第3及び第4面、第1~第4面1、2、3、4と連結され、第3方向に対向する第5及び第6面5、6を有することができる。
【0025】
本体110は誘電体層111及び内部電極121、122が交互に積層されていてもよい。本体110を形成する複数の誘電体層111は焼成された状態であって、隣接する誘電体層111間の境界は走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を利用せずには確認しにくいほど一体化することができる。
【0026】
誘電体層111は、セラミック粉末、有機溶剤及びバインダーを含むセラミックスラリーを製造し、上記スラリーをキャリアフィルム(carrier film)上に塗布及び乾燥してセラミックグリーンシートを設けた後、上記セラミックグリーンシートを焼成することにより形成することができる。セラミック粉末は、十分な静電容量が得られる限り特に制限されないが、例えば、チタン酸バリウム系材料、鉛複合ペロブスカイト系材料又はチタン酸ストロンチウム系材料等を使用することができ、上記セラミック粉末の例示として、BaTiO3、BaTiO3にCa(カルシウム)、Zr(ジルコニウム)等が一部固溶した(Ba1-xCax)TiO3(0<x<1)、Ba(Ti1-yCay)O3(0<y<1)、(Ba1-xCax)(Ti1-yZry)O3(0<x<1、0<y<1)又はBa(Ti1-yZry)O3(0<y<1)などが挙げられる。
【0027】
一実施形態において、誘電体層111はフッ素(F)を含むことができる。低温焼結助剤であるフッ素(F)を含むことにより、誘電体層111に含まれる誘電体結晶粒の粒成長を誘導することができ、これにより、積層型電子部品の容量面で有利な利点があり得る。但し、誘電体層111に含まれた誘電体結晶粒が過度に粒成長すると、温度及びDC電圧による容量変化率が増加する可能性があり、誘電体層当たりの誘電体層結晶粒の個数の減少により信頼性が低下するおそれがある。したがって、誘電体層111は、フッ素(F)を含まなくてもよく、又は第2領域112b、113bに含まれたフッ素(F)の含量より少ない含量のフッ素(F)を含んでもよい。
【0028】
誘電体層111の平均厚さtdは特に限定する必要はない。但し、誘電体層111の厚さが薄くなるほど、積層型電子部品の耐電圧及び信頼性特性が劣化する可能性があり、電圧の印加時に発生する応力によりクラックが発生しやすいという問題点がある。一方、本発明の一実施形態による積層型電子部品の場合、第2領域112b、113bがフッ素を含み、第2領域112b、113bに含まれたフッ素(F)の含量が第1領域112a、113aに含まれたフッ素(F)の含量より大きいことにより、誘電体層111の平均厚さtdが0.4μm以下である場合にも、積層型電子部品の信頼性を向上させることができる。
【0029】
ここで、誘電体層111の平均厚さtdとは、内部電極121、122の間に配置される誘電体層111の第1方向のサイズを意味する。誘電体層111の平均厚さは、本体110の第1方向及び第2方向の断面を1万倍率の走査電子顕微鏡(SEM)でスキャンして測定することができる。より具体的に、一つの誘電体層111の複数の地点、例えば、第2方向に等間隔である30個の地点でその厚さを測定して平均値を測定することができる。上記等間隔である30個の地点は、後述する容量形成部Acで指定することができる。また、このような平均値の測定を10個の誘電体層111に拡張して平均値を測定すると、誘電体層111の平均厚さをさらに一般化することができる。
【0030】
内部電極121、122は誘電体層111と交互に配置されることができ、例えば、互いに異なる極性を有する一対の電極である第1内部電極121と第2内部電極122とが誘電体層111を挟んで互いに対向するように配置されることができる。第1内部電極121及び第2内部電極122は、それらの間に配置された誘電体層111によって互いに電気的に分離されることができる。
【0031】
第1内部電極121は、第4面4と離隔して第3面3と連結されるように配置されてもよい。また、第2内部電極122は、第3面3と離隔して第4面4と連結されるように配置されてもよい。
【0032】
内部電極121、122に含まれる導電性金属は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、錫(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)及びこれらの合金のうち一つ以上であってもよいが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0033】
内部電極121、122は、セラミックグリーンシート上に所定の厚さで導電性金属を含む内部電極用導電性ペーストを塗布して焼成することにより形成されることができる。内部電極用導電性ペーストの印刷方法としては、スクリーン印刷法又はグラビア印刷法などを使用することができるが、本発明がこれに限定されるものではない。
【0034】
内部電極121、122の平均厚さteは特に限定する必要はない。但し、本発明の一実施形態による積層型電子部品の場合、第2領域112b、113bがフッ素を含み、第2領域112b、113bに含まれたフッ素(F)の含量が第1領域112a、113aに含まれたフッ素(F)の含量より大きいことにより、内部電極121、122の平均厚さteが0.4μm以下である場合にも積層型電子部品の信頼性を確保することができる。
【0035】
内部電極121、122の平均厚さteとは、内部電極121、122の第1方向のサイズを意味する。ここで、内部電極121、122の平均厚さは、本体110の第1方向及び第2方向の断面を1万倍率の走査電子顕微鏡(SEM)でスキャンして測定することができる。より具体的に、一つの内部電極121、122の複数の地点、例えば、第2方向に等間隔である30個の地点でその厚さを測定して平均値を測定することができる。上記等間隔である30個の地点は、後述する容量形成部Acで指定することができる。また、このような平均値の測定を10個の内部電極121、122に拡張して平均値を測定すると、内部電極121、122の平均厚さをさらに一般化することができる。
【0036】
本体110は、本体110の内部に配置され、誘電体層111を挟んで互いに交互に配置される第1及び第2内部電極121、122を含んで容量が形成される容量形成部Acと、容量形成部Acの第1方向に対向する両端面上にそれぞれ配置される第1カバー部112及び第2カバー部113とを含むことができる。カバー部112、113は、基本的に物理的又は化学的ストレスによる内部電極の損傷を防止する役割を果たすことができる。
【0037】
カバー部112、113は、容量形成部Acに隣接した第1領域112a、113a、及び上記カバー部の外側に隣接した第2領域112b、113bを含むことができる。第1領域112a、113a及び第2領域112b、113bは、誘電体層111と類似の構成を有することができ、これにより、BaTiO3系を主成分として含むことができる。このとき、第2領域112b、113bは、複数の誘電体結晶粒G2及び隣接した誘電体結晶粒上に配置され、フッ素(F)を含む結晶粒界GB2を含むことができる。
【0038】
上記第2領域112b、113bに含まれたフッ素(F)は、カバー部112、113の焼成過程で低温焼結助剤としての役割を果たすことができる。したがって、第2領域112b、113bは、フッ素(F)により低い温度から焼成が進行することができ、これにより第2領域112b、113bに含まれた誘電体結晶粒G2の粒成長及び緻密化を誘導することができる。結果的に、カバー部112、113の外側に隣接した第2領域112b、113bの靭性(toughness)を向上させ、外部からの衝撃によるクラックを防止することができる。
【0039】
一実施形態において、第2領域112b、113bは、Ca、Al、Li、Co、Zn、Mn、Mg及びSのうち少なくとも一つを含むことができる。第2領域112b、113bに含まれたフッ素(F)は、上記元素と結合して一種の化合物を形成することができ、上記化合物が誘電体結晶粒の緻密化を誘導することにより、本発明の靭性(toughness)向上効果がさらに顕著になり得る。
【0040】
一方、本発明の一実施形態によれば、第2領域112b、113bに含まれたフッ素(F)の含量は、第1領域112a、113aに含まれたフッ素(F)より大きくてもよい。これにより、第2領域112b、113bに含まれた誘電体結晶粒G2に比べて容量形成部Acに隣接した第1領域112a、113aに含まれた誘電体結晶粒G1の粒成長を制御することにより、積層型電子部品の耐電圧及び信頼性を向上させることができる。
【0041】
第1領域112a、113aに含まれたフッ素(F)の含量は、第2領域112b、113bに含まれたフッ素(F)の含量より小さければよいため、第1領域112a、113aの結晶粒界GB1はフッ素(F)を含むことができるが、本発明はこれに限定されるものではなく、第1領域112a、113aはフッ素(F)を含まなくてもよい。
【0042】
カバー部112、113は、例えば、容量形成部Ac上に第1領域112a、113aを形成する第1誘電体パターンを1つ以上積層し、第2領域112b、113bを形成する第2誘電体パターンを1つ以上積層した後、焼成することにより形成することができる。このとき、上記第2領域を形成する第2誘電体パターンに低温焼結助剤であるフッ素(F)成分を添加することにより、上記第2領域に含まれたフッ素(F)の含量が上記第1領域に含まれたフッ素(F)の含量より大きいことができる。ここで、上記第2誘電体パターンに添加されるフッ素(F)成分は、例えば、帯電防止剤としての役割を果たすフッ素系化合物の形態であってもよいが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0043】
第1領域112a、113aに含まれたフッ素(F)の含量及び第2領域112b、113bに含まれたフッ素(F)の含量を測定する方法は特に限定する必要はない。例えば、第1領域112a、113aに含まれたフッ素(F)及び第2領域112b、113bに含まれたフッ素(F)は、飛行時間型二次イオン質量分析(TOF-SIMS)によるアニオン分析によって測定することができる。
【0044】
例えば、本体110の第3方向の中央で切断した第1及び第2方向の断面、又は本体110の第2方向の中央で切断した第1及び第3方向の断面において、第1領域112a、113a及び第2領域112b、113bが配置された領域に対して飛行時間型二次イオン質量分析(TOF-SIMS)を行うことにより、第1領域112a、113a及び第2領域112b、113bに含まれたフッ素(F)を測定することができる。このとき、第2領域112b、113bは、飛行時間型二次イオン質量分析(TOF-SIMS)によるアニオン分析時に、フッ素イオン(F-)が検出されることができる。フッ化物(F)の含有量は、モル比であってもよいし、重量比であってもよい。
【0045】
一方、第2領域112b、113bに含まれたフッ素(F)の含量は、第1領域112a、113aに含まれたフッ素(F)の含量より大きいため、第1領域112a、113aの飛行時間型二次イオン質量分析(TOF-SIMS)によるアニオン分析において、全アニオンの検出強度に対する上記フッ素イオン(F-)の検出強度の比率をI1、第2領域112b、113bの飛行時間型二次イオン質量分析(TOF-SIMS)によるアニオン分析において、全アニオンの検出強度に対する上記フッ素イオン(F-)の検出強度の比率をI2とするとき、I2>I1を満たすことができる。
【0046】
但し、第1領域112a、113a及び第2領域112b、113bに含まれたフッ素(F)を測定する方法はこれに限定されるものではなく、例えば、X線光電子分光法、赤外線分光法など、多様な検出装置によって測定することもできる。
【0047】
一実施形態において、第1領域112a、113aに含まれた誘電体結晶粒G1の平均サイズをA1、第2領域112b、113bに含まれた誘電体結晶粒G2の平均サイズをA2とするとき、A2>A1を満たすことができる。A1及びA2を調節する方法は特に限定する必要はないが、誘電体結晶粒の粒成長を誘導するフッ素(F)の含量差により、第2領域112b、113bに含まれた誘電体結晶粒G2の平均サイズA2が第1領域112a、113aに含まれた誘電体結晶粒G1の平均サイズA1より大きくなるように調節することができる。A2>A1を満たすことにより、上述した第2領域112b、113bの靭性向上効果及び積層型電子部品の耐電圧及び信頼性の向上効果がさらに顕著になり得る。
【0048】
上記A1及びA2は、例えば、本体110の第3方向の中央で切断した第1及び第2方向の断面、又は本体110の第2方向の中央で切断した第1及び第3方向の断面において、第1領域112a、113a及び第2領域112b、113bを走査電子顕微鏡(SEM)で50,000倍拡大したイメージを得た後、上記イメージをイメージ分析プログラム、例えば、Zootos社のZootos Programを用いて分析して得られた誘電体結晶粒サイズの平均値を意味することができる。あるいは、Sigma scan Programを用いて誘電体結晶粒の平均サイズを測定することもできる。
【0049】
上記A2は特に限定する必要はないが、例えば、180nm以上270nm以下であってもよい。上記A2が180nm未満の場合、上述した第2領域112b、113bの靭性向上効果が僅かである可能性がある。また、A2が270nmを超える場合、第2領域112b、113bの過焼成による収縮の増加により応力が増加し、クラックや変形不良などが発生するおそれがある。A1は特に限定されないが、例えば160nm以上210nm以下であってもよい。
【0050】
一実施形態において、第1領域112a、113aに含まれた誘電体結晶粒G1のBa/Tiのモル比をM1、第2領域112b、113bに含まれた誘電体結晶粒G2のBa/Tiのモル比をM2とするとき、M1>M2を満たすことができる。M1>M2を満たす場合、第2領域112b、113bに含まれた誘電体結晶粒G2に対する、第1領域112a、113aに含まれた誘電体結晶粒G1の粒成長を抑制することができる。また、第1領域112a、113aに含まれた誘電体結晶粒G1の散布を制御することにより、積層型電子部品の耐電圧特性及び信頼性を向上させることができる。
【0051】
上記M1は特に限定する必要はないが、例えば、0.999以上1.05以下であってもよい。上記M1が0.999未満の場合、誘電体結晶粒の粒成長制御効果が僅かである可能性がある。また、上記M1が1.05を超える場合、第1領域112a、113a内にポア(pore)が増加して緻密度が低下するという問題点が発生する可能性がある。M2は特に限定されないが、例えば0.998以上1.02以下であってもよい。
【0052】
上記M1を調節する方法は特に限定する必要はない。例えば、第1領域112a、113aを形成するセラミックスラリーに、Baを含む酸化物及び/又は炭酸塩などのようなBa添加剤を添加することにより、Ba/Tiのモル比を増加させることができる。
【0053】
上記M1及びM2を測定する方法は特に限定する必要はないが、例えば、本体110の第3方向の中央で切断した第1及び第2方向の断面、又は本体110の第2方向の中央で切断した第1及び第3方向の断面において、第1領域112a、113a及び第2領域112b、113bをX線マイクロアナライザ(EPMA)を備えた走査電子顕微鏡(SEM)又は透過電子顕微鏡(TEM) を用いて測定するか、又はXRF等を用いて上記M1及びM2を測定することができる。
【0054】
一実施形態において、第1領域112a、113aの平均厚さをT1、第2領域112b、113bの平均厚さをT2とするとき、T2/T1は1以上4以下であってもよい。上記T2/T1が上記範囲を満たす場合、本発明の靭性(toughness)向上効果、耐電圧特性及び信頼性の向上効果がさらに顕著になり得る。
【0055】
第1領域112a、113aの平均厚さT1は、第1領域112a、113aの第1方向への平均サイズを意味することができ、第2領域112b、113bの平均厚さT2は、第2領域112b、113bの第1方向への平均サイズを意味することができる。また、上記T1は、本体110の第3方向の中央で切断した第1方向及び第2方向の断面、又は本体110の第2方向の中央で切断した第1方向及び第3方向の断面において、等間隔である5個の地点で測定した第1領域112a、113aの第1方向のサイズを平均した値であることができ、上記T2は、本体110の第3方向の中央で切断した第1方向及び第2方向の断面、又は本体110の第2方向の中央で切断した第1方向及び第3方向の断面において、等間隔である5個の地点で測定した第2領域112b、113bの第1方向のサイズを平均した値であることができる。第1領域112a、113a及び第2領域112b、113b間の境界は、フッ素(F)の含量、誘電体結晶粒のサイズ及び/又は誘電体結晶粒のBa/Tiのモル比が急激に変化する地点であることができ、上記T1及びT2は上記境界を基準にして測定されることができる。
【0056】
カバー部112、113の平均厚さは特に限定する必要はない。但し、本発明の一実施形態による積層型電子部品の場合、第2領域112b、113bがフッ素を含み、第2領域112b、113bに含まれたフッ素(F)の含量が、第1領域112a、113aに含まれたフッ素(F)の含量より大きいことにより、カバー部112、113の平均厚さが20μm以下である場合にも、積層型電子部品の信頼性を確保することができる。
【0057】
ここで、カバー部112、113の平均厚さとは、第1カバー部112及び第2カバー部113のそれぞれの平均厚さを意味する。また、カバー部112、113の平均厚さは、カバー部112、113の第1方向への平均サイズを意味することができ、本体110の第1方向及び第2方向の断面で等間隔である5個の地点で測定した第1方向のサイズを平均した値であることができる。
【0058】
本体110は、容量形成部Acの第3方向に対向する両面上に配置されるマージン部114、115を含むことができる。すなわち、マージン部114、115とは、本体110を第1方向及び第3方向に切断した断面において、内部電極121、122の両端と本体110の境界面との間の領域を意味することができる。このとき、マージン部114、115は、本体110の第5面5側に配置された第1マージン部114、及び本体110の第6面6側に配置された第2マージン部115を含むことができる。
【0059】
マージン部114、115は、内部電極121、122を含まないことを除いては、誘電体層111と同じ材料を含むことができる。マージン部114、115は、基本的に物理的又は化学的ストレスによる内部電極121、122の損傷を防止する役割を果たすことができる。
【0060】
マージン部114、115は、セラミックグリーンシート上にマージン部が形成される箇所を除き、内部電極用導電性ペーストを塗布して焼成することにより形成されたものであってもよい。あるいは、内部電極121、122による段差を抑制するために、積層後の内部電極121、122が本体の第5面及び第6面5、6と連結されるように切断した後、単一の誘電体層又は2つ以上の誘電体層を容量形成部Acの第3方向に対向する両面上に積層することにより、マージン部114、115を形成することもできる。
【0061】
マージン部114、115の平均厚さは特に限定する必要はない。但し、積層型電子部品の小型化及び高容量化のために、マージン部114、115の平均厚さは20μm以下であってもよい。上述したように、マージン部114、115の平均厚さが20μm以下である場合にも、第2領域112b、113bがフッ素を含み、第2領域112b、113bに含まれたフッ素(F)の含量が第1領域112a、113aに含まれたフッ素(F)の含量より大きいことにより、積層型電子部品の信頼性を確保することができる。
【0062】
ここで、マージン部114、115の平均厚さとは、第1マージン部114及び第2マージン部115のそれぞれの平均厚さを意味する。マージン部114、115の平均厚さは、マージン部114、115の第3方向の平均サイズを意味することができ、本体110の第1方向及び第3方向の断面において等間隔である5個の地点で測定した第3方向のサイズを平均した値であることができる。
【0063】
外部電極131、132は本体110の外部に配置され、内部電極121、122と連結されることができる。外部電極131、132は、第3面3に配置され、第1内部電極121と連結される第1外部電極131及び第4面4に配置され、第2内部電極122と連結される第2外部電極132を含むことができる。外部電極131、132は、第1面、第2面、第5面及び第6面1、2、5、6の一部上に延長して配置されることができる。
【0064】
外部電極131、132は、内部電極121、122と連結される第1電極層131a、132a、及び上記第1電極層上に配置される第2電極層131b、132bを含むことができる。第1電極層131a、132aは金属及びガラスを含むことができ、上記ガラスは本体110と外部電極131、132との間の接合力を向上させる役割を果たすことができる。
【0065】
第1電極層131a、132aは、本体110の第3面及び第4面3、4を導電性金属及びガラスを含む外部電極用導電性ペーストにディッピング(dipping)した後、焼成することにより形成されることができる。あるいは、導電性金属及びガラスを含むシートを転写する方式で形成されてもよい。
【0066】
第1電極層131a、132aに含まれる導電性金属は、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、金(Au)、銀(Ag)、鉛(Pb)及び/又はこれを含む合金などを含むことができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0067】
第2電極層131b、132bは実装特性を向上させることができる。第2電極層131b、132bの種類は特に限定されず、ニッケル(Ni)、錫(Sn)、パラジウム(Pd)及び/又はこれを含む合金等を含むめっき層であってもよく、複数の層で形成されてもよい。第2電極層131b、132bは、例えば、ニッケル(Ni)めっき層又は錫(Sn)めっき層であってもよく、ニッケル(Ni)めっき層及び錫(Sn)めっき層が順次形成された形態であってもよい。また、第2電極層131b、132bは、複数のニッケル(Ni)めっき層及び/又は複数の錫(Sn)めっき層を含むこともできる。
【0068】
図面では、積層型電子部品100が2つの外部電極131、132を有する構造について説明しているが、これに限定されるものではなく、外部電極131、132の個数や形状などは、内部電極121、122の形態やその他の目的に応じて変更することができる。
【0069】
以下、本発明の他の一実施形態による積層型電子部品について説明する。但し、本発明の一実施形態による積層型電子部品は、上述した本発明の一実施形態による積層型電子部品と同様の構成を有することができる。したがって、上述した本発明の一実施形態と重複する説明は省略する。
【0070】
本発明の一実施形態による積層型電子部品100は、第1方向に交互に配置される誘電体層111及び内部電極121、122を含む容量形成部Ac、並びに上記容量形成部の上記第1方向に対向する両端面上に配置されるカバー部112、113を含む本体110と、上記本体の外部に配置され、上記内部電極と連結される外部電極131、132とを含み、上記カバー部は、上記容量形成部に隣接した第1領域112a、112b、及び上記カバー部の外側に隣接した第2領域112b、113bを含み、上記第2領域はフッ素(F)を含み、上記第1領域に含まれた誘電体結晶粒G1の平均サイズをA1、上記第2領域に含まれた誘電体結晶粒G2の平均サイズをA2とするとき、A2>A1を満たすことができる。
【0071】
上述したように、第2領域112b、113bに含まれたフッ素(F)は、カバー部112、113の焼成過程で低温焼結助剤としての役割を果たすことにより第2領域112b、113bに含まれた誘電体結晶粒G2の粒成長及び緻密化を誘導することができる。これにより、カバー部112、113の外側に隣接した第2領域112b、113bの靭性(toughness)を向上させ、外部からの衝撃によるクラックを防止することができる。
【0072】
また、A2>A1を満たすことにより、カバー部112、113の外側に隣接した第2領域112b、113bの靭性を向上させ、外部からの衝撃によるクラックを防止しながらも、容量形成部Acと隣接した第1領域112a、113aの粒成長を制御して、積層型電子部品の耐電圧特性及び信頼性を確保することができる。
【0073】
(実験例)
<第1領域及び第2領域に含まれた誘電体結晶粒のサイズの比較>
まず、誘電体層及び内部電極が積層された容量形成部を形成した後、上記容量形成部の第1方向に対向する両端面上に第1領域を形成する第1誘電体パターンを積層し、第2領域を形成する第2誘電体パターンを積層した後、焼成してカバー部を含む本体を設けた。
【0074】
このとき、上記第1及び第2誘電体パターンは、BaTiO3系粉末、バインダー、有機溶剤及び分散剤などを含むセラミックスラリーをキャリアフィルム(carrier film)上に印刷及び乾燥することにより形成した。このとき、第1誘電体パターンを形成するセラミックスラリーにはフッ素系化合物を添加せず、Ba添加剤を添加することにより、焼成後の第1領域に含まれた誘電体結晶粒のBa/Tiのモル比が0.999~1.05となるようにした。また、第2誘電体パターンを形成するセラミックスラリーには帯電防止剤としてフッ素系化合物を添加した。
【0075】
次に、本体の外部に内部電極と連結される外部電極を形成することにより、実験例のサンプルチップを設けた。比較例のサンプルチップは実験例と同様の方法で製造し、且つ比較例のサンプルチップはフッ素系化合物を添加せず、容量形成部に隣接した領域とカバー部の外側に隣接した領域とを区分していない単一のカバー部で作製した。
【0076】
次に、上記第1領域及び第2領域に含まれた誘電体結晶粒の平均サイズA1、A2を測定した。本体の第3方向の中央で切断した第1及び第2方向の断面において、カバー部の第2方向の中央領域を走査電子顕微鏡(SEM)で50,000倍拡大したイメージを観察した。
【0077】
図5は、実験例の第1領域を走査電子顕微鏡(SEM)で撮影したイメージである。
図6は、実験例の第2領域を走査電子顕微鏡(SEM)で撮影したイメージである。
図5及び
図6を参照すると、実験例の第2領域は、第1領域に比べて誘電体結晶粒の平均サイズが大きいことが確認できる。これは、第2領域に含まれたフッ素(F)が低温焼結助剤としての役割を果たし、第2領域に含まれた誘電体結晶粒の粒成長を誘導したと予想される。
【0078】
<第2領域の靭性(toughness)評価>
次に、各サンプルチップの第2領域について、飛行時間型二次イオン質量分析(TOF-SIMS)によるアニオン分析を行った。このとき、全アニオンの検出強度に対するフッ素イオン(F-)の検出強度の比率を測定し、下記表1に記載した。また、各サンプルチップの第2領域に対する飛行時間型二次イオン質量分析(TOF-SIMS)は、各サンプルチップの第1面又は第2面に配置された第2領域の外表面を約10nmエッチングした後、第2方向のサイズ×第3方向のサイズ=100μm×100μmである領域に対して行った。
【0079】
また、第1面又は第2面に配置された第2領域の外表面についてビッカース硬度計(Vickers hardness Tester)を用いて第2領域の靭性(toughness)を測定し、下記表1に記載した。
【0080】
【0081】
上記表1を参照すると、実験例の場合、第2領域がフッ素(F)を含むため、飛行時間型二次イオン質量分析(TOF-SIMS)時に強いフッ素イオンの検出強度が高いことが確認できる。また、低温焼結助剤としての役割を果たし得るフッ素(F)を含むことにより、カバー部の第2領域に含まれた誘電体結晶粒の粒成長及び緻密化を誘導し、靭性(toughness)が向上したことが確認できる。
【0082】
一方、比較例の場合、飛行時間型二次イオン質量分析(TOF-SIMS)時に、フッ素イオンの検出強度が実験例に比べて非常に低いことが確認でき、これにより、実験例に比べて靭性(toughness)が低いことを確認できる。比較例の場合、第2領域を形成する際に、フッ素系化合物を添加していないが、ノイズ(noise)によって微量のフッ素イオン(F-)が検出されたと予想される。
【0083】
<耐湿信頼性の評価>
次に、実験例及び比較例のサンプルチップに対する耐湿信頼性の評価を行った。耐湿信頼性の評価は、実験例及び比較例のそれぞれ400個のサンプルチップについて、温度85℃、湿度85%、1.5Vrの電圧を12時間の間印加した後、絶縁抵抗値の変化を測定したものである。
【0084】
図7は、比較例の耐湿信頼性の評価結果を示すグラフであり、
図8は、実験例の耐湿信頼性の評価結果を示すグラフである。
図7及び
図8を参照すると、実験例の場合、絶縁抵抗が10
7Ω以下に低下したサンプルチップは存在しなかったが、比較例の場合、絶縁抵抗が10
7Ω以下に低下したサンプルが多数存在した。第2領域がフッ素(F)を含むことにより、第2領域に含まれた誘電体結晶粒の粒成長を誘導して靭性(toughness)が増加し、緻密度が向上してチップの内部に浸透する外部からの水分を防止し、耐湿信頼性を 改善できることを確認した。
【0085】
本発明は、上述した実施形態及び添付の図面によって限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲によって限定されるものとする。したがって、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から逸脱しない範囲内で、当技術分野における通常の知識を有する者により様々な形態の置換、変形及び変更が可能であり、これも本発明の範囲に属すると言える。
【0086】
また、「一実施形態」という表現は、互いに同一の実施形態を意味するものではなく、それぞれ互いに異なる固有の特徴を強調して説明するために提供されたものである。しかし、上記提示された一実施形態は、他の一実施形態の特徴と結合して実現されることを排除しない。例えば、特定の一実施形態で説明された事項が他の一実施形態に説明されていなくても、他の一実施形態においてその事項と反対又は矛盾する説明がない限り、他の一実施形態に関連する説明として理解することができる。
【0087】
なお、第1、第2などの表現は、ある構成要素と他の構成要素とを区分するために使用されるものであって、当該構成要素の順序及び/又は重要度などを限定しない。場合によっては、権利範囲を逸脱しない範囲内で、第1構成要素は第2構成要素と命名されてもよく、同様に第2構成要素は第1構成要素と命名されてもよい。
【符号の説明】
【0088】
100:積層型電子部品
110:本体
111:誘電体層
112、113:カバー部
112a、113a:第1領域
112b、113b:第2領域
114、115:マージン部
121、122:内部電極
131、132:外部電極
131a、132a:第1電極層
131b、132b:第2電極層
G1、G2:誘電体結晶粒
GB1、GB2:結晶粒界