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2024-110926電極製造装置、電極製造システム、電極製造方法、プログラム及び蓄電デバイス製造装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110926
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】電極製造装置、電極製造システム、電極製造方法、プログラム及び蓄電デバイス製造装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/04 20060101AFI20240808BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20240808BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20240808BHJP
【FI】
H01M4/04 Z
H01M4/139
H01M4/13
【審査請求】未請求
【請求項の数】28
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023215932
(22)【出願日】2023-12-21
(31)【優先権主張番号】P 2023014945
(32)【優先日】2023-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】桜田 裕一
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050BA14
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA05
5H050CA08
5H050CA09
5H050CA11
5H050CB01
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050CB18
5H050FA04
5H050GA22
5H050GA29
(57)【要約】
【課題】従来の技術では、電極を構成する電極合材層に対する工程によっては電極合材層の長さに誤差が生じたものが搬送される場合があり、電極合材層上又は集電体上に機能層を形成する際に、その誤差に応じてリアルタイムで機能層の形成を制御する必要が生じるため電極製造装置の処理負荷が増大する、という課題がある。
【解決手段】電極製造装置3は、集電体320の搬送に伴い移動する電極合材層の端部をセンサ335からの検出結果である電極合材層(メディア)の先端を示すセンサ出力を検出し(ステップS16-2)、センサ335による電極合材層の端部に係る検出結果に基づき、印刷画像データに対して液体吐出ヘッド350による少なくとも電極合材層上又は集電体320上への機能層形成処理を行う(ステップS16-3)。
【選択図】図16
【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電体上に設けられた電極合材層上又は前記集電体上に機能層を形成する電極製造装置であって、
前記集電体の搬送に伴い移動する前記電極合材層の端部を検出する検出手段と、
前記検出手段による前記電極合材層の端部に係る検出結果に基づき、少なくとも前記電極合材層上又は前記集電体上に前記機能層を形成する層形成手段と、
を備える、
ことを特徴とする電極製造装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電極製造装置であって、更に、
前記検出手段による前記電極合材層の端部の検出前に第1の処理を行う処理手段、
を備える、
ことを特徴とする電極製造装置。
【請求項3】
前記処理手段は、
前記検出手段による前記電極合材層の先端を示す端部の検出を起点として、前記層形成手段が前記電極合材層を覆う前記機能層を形成するための第2の処理を実行する、
ことを特徴とする請求項2に記載の電極製造装置。
【請求項4】
前記処理手段は、
前記第1の処理として、前記集電体の搬送において前記検出手段により検出される前記電極合材層の長さよりも長い長さに対応する第1の画像処理を行う、
ことを特徴とする請求項2に記載の電極製造装置。
【請求項5】
前記処理手段は、
前記第2の処理として、前記第1の処理に用いられる画像データを繰り返して読み出すことが可能な単位で画像を処理する、
ことを特徴とする請求項2に記載の電極製造装置。
【請求項6】
前記処理手段は、
前記第1の画像処理として、階調処理を含む処理を実行する、
ことを特徴とする請求項4又は5に記載の電極製造装置。
【請求項7】
前記処理手段は、
前記第2の処理として、前記検出手段により検出された前記電極合材層の前記搬送方向の先端情報及び後端情報を含む検出結果に基づいて算出された、前記電極合材層の周辺を覆うための前記機能層を形成するための第2の画像処理を行う、
ことを特徴とする請求項3に記載の電極製造装置。
【請求項8】
前記処理手段は、
前記第2の画像処理を実行する際、前記電極合材層を形成するための画像データごとに分けられた複数の領域に対して画像処理を実行し、前記集電体の搬送において前記検出手段により検出される前記電極合材層の長さよりも長い長さに対応する第1の画像処理で実行される画像サイズと、前記第2の画像処理で実行される画像サイズと、の差分を非吐出領域となるようなデータで埋める、
ことを特徴とする請求項7に記載の電極製造装置。
【請求項9】
請求項1に記載の電極製造装置は、更に、
前記層形成手段が前記機能層を形成するための処理を行う処理手段、
を備え、
前記機能層の一部が、前記電極合材層の搬送方向の先端よりも前方の領域及び前記電極合材層の搬送方向の後端よりも後方の領域の少なくとも一方の領域に形成される部分を含む場合、
前記処理手段は、前記検出手段による前記電極合材層の端部に係る検出結果に基づき、前記機能層の搬送方向長を前記電極合材層の搬送方向の先端及び後端の間の範囲において調整し、
前記層形成手段は、前記処理手段により前記搬送方向長が調整された前記機能層の画像データと、前記検出手段による前記電極合材層の端部に係る検出結果に基づき、少なくとも前記集電体上に前記機能層を形成する、
ことを特徴とする電極製造装置。
【請求項10】
前記機能層は、前記電極合材層の全周を囲む枠状に形成される、
ことを特徴とする請求項9に記載の電極製造装置。
【請求項11】
前記機能層が、前記電極合材層の搬送方向の後端よりも後方の領域に形成される後枠部分を少なくとも含む後端画像と、前記電極合材層に対して搬送方向とは交差する方向に位置する横枠部分のみを含む中間画像と、を有する場合、
前記処理手段は、前記検出手段による前記電極合材層の端部に係る検出結果に基づき、前記後端画像又は前記中間画像の搬送方向長を前記電極合材層の搬送方向の先端及び後端の間の範囲において調整する請求項9に記載の電極製造装置。
【請求項12】
請求項1に記載の電極製造装置は、更に、
前記層形成手段が前記機能層を形成するための処理を行う処理手段、
を備え、
前記処理手段は、前記検出手段が前記電極合材層の端部を検出してから次の前記電極合材層の端部を検出する際又はその前に、先の前記電極合材層の端部に係る検出結果を初期化する、
ことを特徴とする請求項1に記載の電極製造装置。
【請求項13】
集電体上に設けられた電極合材層上又は前記集電体上に機能層を形成する電極製造装置と、前記電極製造装置と通信可能な情報管理装置と、を有する電極製造システムであって、前記情報管理装置は、
前記機能層を形成するための画像データ、並びに、前記電極合材層に係る前記集電体の搬送方向長及び印刷長を含む印刷関連情報の入力を受け付ける受付手段と、
受け付けられた前記印刷関連情報を前記電極製造装置に対して送信する送信手段と、
を備え、
前記電極製造装置は、
前記情報管理装置が送信した前記印刷関連情報を受信する受信手段と、
前記集電体の搬送に伴い移動する前記電極合材層の端部を検出する検出手段と、
前記印刷関連情報及び前記検出手段による前記電極合材層の端部に係る検出結果に基づき、少なくとも前記電極合材層上又は前記集電体上に前記機能層を形成する層形成手段と、
を備える、
ことを特徴とする電極製造システム。
【請求項14】
前記電極製造装置は、前記層形成手段が前記機能層を形成するための処理を行う処理手段を備え、
前記機能層の一部が、前記電極合材層の搬送方向の先端よりも前方の領域及び前記電極合材層の搬送方向の後端よりも後方の領域の少なくとも一方の領域に形成される部分を含む場合、
前記処理手段は、前記検出手段による前記電極合材層の端部に係る検出結果に基づき、前記機能層の搬送方向長を前記電極合材層の搬送方向の先端及び後端の間の範囲において調整し、
前記層形成手段は、前記処理手段により前記搬送方向長が調整された前記機能層の画像データと、前記検出手段による前記電極合材層の端部に係る検出結果に基づき、少なくとも前記集電体上に前記機能層を形成する、
ことを特徴とする請求項13に記載の電極製造システム。
【請求項15】
前記機能層は、前記電極合材層の全周を囲む枠状に形成される、
ことを特徴とする請求項14に記載の電極製造システム。
【請求項16】
前記機能層が、前記電極合材層の搬送方向の後端よりも後方の領域に形成される後枠部分を少なくとも含む後端画像と、前記電極合材層に対して搬送方向とは交差する方向に位置する横枠部分のみを含む中間画像と、を有する場合、
前記処理手段は、前記検出手段による前記電極合材層の端部に係る検出結果に基づき、前記後端画像又は前記中間画像の搬送方向長を前記電極合材層の搬送方向の先端及び後端の間の範囲において調整する請求項14に記載の電極製造システム。
【請求項17】
前記受付手段は、前記枠状に形成される前記機能層の幅を含む情報の入力を受け付ける、
ことを特徴とする請求項15に記載の電極製造システム。
【請求項18】
前記電極製造装置は、前記層形成手段が前記機能層を形成するための処理を行う処理手段を備え、
前記処理手段は、前記検出手段が前記電極合材層の端部を検出してから次の前記電極合材層の端部を検出する際又はその前に、先の前記電極合材層の端部に係る検出結果を初期化する、
ことを特徴とする請求項13に記載の電極製造システム。
【請求項19】
集電体上に設けられた電極合材層上又は前記集電体上に機能層を形成する電極製造装置が実行する電極製造方法であって、
前記集電体の搬送に伴い移動する前記電極合材層の端部を検出する検出ステップと、
前記検出ステップによる前記電極合材層の端部に係る検出結果に基づき、少なくとも前記電極合材層上又は前記集電体上に前記機能層を形成する層形成ステップと、
を実行する、
ことを特徴とする電極製造方法。
【請求項20】
前記機能層の一部が、前記電極合材層の搬送方向の先端よりも前方の領域及び前記電極合材層の搬送方向の後端よりも後方の領域の少なくとも一方の領域に形成される部分を含む場合、
前記検出ステップによる前記電極合材層の端部に係る検出結果に基づき、前記機能層の搬送方向長を前記電極合材層の搬送方向の先端及び後端の間の範囲において調整する調整ステップを実行し、
前記調整ステップにより前記搬送方向長が調整された前記機能層の画像データと、前記検出ステップによる前記電極合材層の端部に係る検出結果に基づき、少なくとも前記集電体上に前記機能層を形成する層形成ステップを実行する、
ことを特徴とする請求項19に記載の電極製造方法。
【請求項21】
前記機能層は、前記電極合材層の全周を囲む枠状に形成される、
ことを特徴とする請求項20に記載の電極製造。
【請求項22】
前記機能層が、前記電極合材層の搬送方向の後端よりも後方の領域に形成される後枠部分を少なくとも含む後端画像と、前記電極合材層に対して搬送方向とは交差する方向に位置する横枠部分のみを含む中間画像と、を有する場合、
前記調整ステップにおいて、前記検出ステップによる前記電極合材層の端部に係る検出結果に基づき、前記後端画像又は前記中間画像の搬送方向長を前記電極合材層の搬送方向の先端及び後端の間の範囲において調整する請求項20に記載の電極製造方法。
【請求項23】
前記検出ステップを実行してから次の前記検出ステップを実行する際又はその前に、先の前記検出ステップに係る検出結果を初期化する初期化ステップを含む、
ことを特徴とする請求項19に記載の電極製造方法。
【請求項24】
集電体上に設けられた電極合材層上又は前記集電体上に機能層を形成する電極製造装置に、
前記集電体の搬送に伴い移動する前記電極合材層の端部を検出する検出ステップと、
前記検出ステップによる前記電極合材層の端部に係る検出結果に基づき、少なくとも前記電極合材層上又は前記集電体上に前記機能層を形成する層形成ステップと、
を実行させるプログラム。
【請求項25】
前記機能層の一部が、前記電極合材層の搬送方向の先端よりも前方の領域及び前記電極合材層の搬送方向の後端よりも後方の領域の少なくとも一方の領域に形成される部分を含む場合、
前記検出ステップによる前記電極合材層の端部に係る検出結果に基づき、前記機能層の搬送方向長を前記電極合材層の搬送方向の先端及び後端の間の範囲において調整する調整ステップと、
前記調整ステップにより前記搬送方向長が調整された前記機能層の画像データと、前記検出ステップによる前記電極合材層の端部に係る検出結果に基づき、少なくとも前記集電体上に前記機能層を形成する層形成ステップと、
を実行させる請求項24に記載のプログラム。
【請求項26】
前記機能層が、前記電極合材層の搬送方向の後端よりも後方の領域に形成される後枠部分を少なくとも含む後端画像と、前記電極合材層に対して搬送方向とは交差する方向に位置する横枠部分のみを含む中間画像と、を有する場合、
前記調整ステップにおいて、前記検出ステップによる前記電極合材層の端部に係る検出結果に基づき、前記後端画像又は前記中間画像の搬送方向長を前記電極合材層の搬送方向の先端及び後端の間の範囲において調整する処理を実行させる請求項25に記載のプログラム。
【請求項27】
前記検出ステップを実行してから次の前記検出ステップを実行する際又はその前に、先の前記検出ステップに係る検出結果を初期化する初期化ステップ、
を実行させる請求項24に記載のプログラム。
【請求項28】
請求項1に記載の電極製造装置を有する、
ことを特徴とする蓄電デバイス製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極製造装置、電極製造システム、電極製造方法、プログラム及び蓄電デバイス製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット技術を用いて、自由な形状でリチウムイオン二次電池用電極などの電気化学素子用部材を製造する技術が知られている。例えば、電極基体2上に活物質層14を形成し、活物質層14の周辺部及び活物質層14の表面に密着した樹脂層12bを電極基体2の表面に沿う方向に有し、樹脂層12bの単一(1つ)の層が積層されている薄膜電極で、活物質層14の周辺部を樹脂層12bで覆うことで、電池の初期不良を小さくする技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、活物質(電極合材層の一例)を高密度化させるために、活物質を塗布し乾燥させた芯材(電極部材、ワーク)をプレスし、活物質を高密度化させた後、スリット工程において、芯材から複数のテープ状電極材を形成するように長さ方向に沿って裁断後、テープ状電極材を所定の長さに裁断することにより正極電極を得る技術が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
一方、記録材にインクを吐出して画像を記録するインクジェット記録装置として、画像記録装置10が、センサ31により記録材Pのページ間距離(ラベル間距離3d)を測定し、測定値に応じた空白ラスタデータを挿入することで、連続する画像データとして作成する画像データ作成手段と、画像データ作成手段により作成された画像データに基づいて記録材Pに画像を記録する記録ヘッド21と、を有する構成が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の技術では、電極を構成する電極合材層に対する工程によっては電極合材層の長さに誤差が生じたものが搬送される場合があり、電極合材層上又は集電体上に機能層を形成する際に、その誤差に応じてリアルタイムで機能層の形成を制御する必要が生じるため電極製造装置の処理負荷が増大する、という課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、請求項1に係る発明は、集電体上に設けられた電極合材層上又は前記集電体上に機能層を形成する電極製造装置であって、前記集電体の搬送に伴い移動する前記電極合材層の端部を検出する検出手段と、前記検出手段による前記電極合材層の端部に係る検出結果に基づき、少なくとも前記電極合材層上又は前記集電体上に前記機能層を形成する層形成手段と、を備える、ことを特徴とする電極製造装置を提供する。
【発明の効果】
【0007】
以上説明したように本発明によれば、電極を構成する電極合材層の長さに誤差が生じたものが搬送される場合があっても、電極合材層上又は集電体上に機能層を形成する際の電極製造装置の処理負荷の増大を抑制することが可能になる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】電極を構成する層構造の一例を示す図である。
図2】電気化学素子の構成の一例を示す図である。
図3】電極製造装置の全体構成(側面図)の一例を示す図である。
図4】電極製造装置のインクジェット作像部を含む構成(上面図)の一例を示す図である。
図5】センサによって検出される電極合材層の形状の一例を示す図である。
図6】実施形態に係る検出器の構成の一例を示す図である。
図7】実施形態に係る検出器が備える光センサの構成の一例を示す図である。
図8】実施形態に係る印刷タイミングの一例を示すタイムチャートである。
図9】実施形態に係る第1の画像処理及び第2の画像処理の関係を示す図であり、(a)はページを複数の面に分割した場合の第1の画像処理と第2の画像処理とのデータの差分を示す概念図、(b)は第1の画像処理を繰返し処理する場合の概念図である。
図10】実施形態に係る電極製造システムの全体構成の一例を示す図である。
図11】実施形態に係る情報管理装置のハードウエア構成の一例を示す図である。
図12】実施形態に係る電極製造装置の制御部を含むハードウエア構成の一例を示す図である。
図13A】実施形態に係る電極製造システムの機能構成の一例を示す図であり、特に情報管理装置の機能構成を示す図である。
図13B】実施形態に係る電極製造システムの機能構成の一例を示す図であり、特に電極製造装置の機能構成を示す図である。
図14】実施形態に係る印刷関連情報管理テーブルの一例を示す概念図である。
図15】実施形態に係るエンコーダ検出管理テーブルの一例を示す概念図である。
図16】実施形態に係るページ印刷処理を含むシーケンス図である。
図17】実施形態に係るページ印刷処理の一例を示すフローチャートである。
図18】全固体電池の発電要素の積層構造を示す図である。
図19】正極合材層の周囲に形成される絶縁枠を示す平面図である。
図20】絶縁枠の後端部分の搬送方向長が短く形成された状態を示す平面図である。
図21】中間画像(5面)の搬送方向長を短く調整する例を示す平面部である。
図22】後端画像(6面)の搬送方向長を短く調整する例を示す平面図である。
図23】絶縁枠の搬送方向長を調整する範囲を示す平面部である。
図24】絶縁枠の前枠部分及び後枠部分が太い場合の、中間画像(5面)の搬送方向長を短く調整する例を示す平面部である。
図25】絶縁枠の前枠部分及び後枠部分が太い場合の、後端画像(6面)の搬送方向長を短く調整する例を示す平面図である。
図26】中間画像(5面)を短くすることによって絶縁枠の搬送方向長を調整する場合の印刷処理及び動作のタイミングチャートを示す図である。
図27】後端画像(6面)を短くすることによって絶縁枠の搬送方向長を調整する場合の印刷処理及び動作のタイミングチャートを示す図である。
図28】絶縁枠を形成する際のページ印刷処理を含むシーケンス図である。
図29】絶縁枠を形成する際のページ印刷処理の一例を示すフローチャートである。
図30】入力される枠情報の一例を示す図である。
図31】入力される枠情報の他の例を示す図である。
図32】入力される絶縁枠の画像データの一例を示すイメージ図である。
図33】面数の算出を行うために用いられる項目を示す図である。
図34】調整用画像の各種パラメータを算出するために用いられる項目を示す図である。
図35】処理部の詳細を示すブロック図である。
図36】中間画像(5面)を短く調整する場合の第2のリアルタイム処理における調整処理のタイミングチャートを示す図である。
図37】第2のリアルタイム処理における調整処理の別のタイミングチャートを示す図である。
図38】第2のリアルタイム処理における調整処理のさらに別のタイミングチャートを示す図である。
図39】長さが異なる電極合材層が搬送される場合の各電極合材層の搬送方向長と、そのときのセンサ信号及びヘッド吐出動作のタイミングチャートと、各電極合材層の搬送方向長を記憶する記憶部の記憶情報を示す図である。
図40】初期化ステップを採用した実施形態に係るセンサ信号及びヘッド吐出動作のタイミングチャートと、記憶部の記憶情報を示す図である。
図41】転写方式を採用した印刷部の一例を示す図であり、(a)はドラム状の中間転写体を用いた印刷部を示す図、(b)は無端ベルト状の中間転写体を用いた印刷部を示す図である。
図42】液体吐出ヘッドの一例を示す概略分解図である。
図43】液体吐出ヘッドの流路構成の一例を示す説明図である。
図44】液体吐出ヘッドの流路構成の一例を示す断面斜視図である。
図45】平行四辺形状のノズル板を備えたヘッドの一例を示す構成図である。
図46図45のヘッドを複数並べた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を用いて、発明を実施するための形態について説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する部分があればその説明を省略する。
【0010】
〔実施形態〕
以下、図1乃至図15を用いて本実施形態について説明する。
【0011】
〔電極を構成する層構造〕
本実施形態では、電極製造装置の一例として電極印刷装置について説明する。但し、以降の説明においては、電極製造装置として記載する。電極製造装置は、集電体と、集電体上に設けられた電極合材層と、少なくとも電極合材層上または集電体上に設けられた機能層と、を有する電極を製造するための装置である。具体的には、電極製造装置は、樹脂層又は無機層を形成するための液体組成物を用いて、集電体Bの表面上に形成された電極合材層L1の表面における一部若しくは全体、又は集電体上の少なくとも一部、または電極合材層L1の表面における一部若しくは全体および集電体の少なくとも一部に機能層L2としての樹脂層又は無機層を形成するものである。なお、電極合材層L1は活物質を含み、集電体と、当該集電体上に形成された電極合材層L1と、を有する電極基体は液体吐出対象に対応する。電極合材層L1は第1の膜領域に対応し、樹脂層又は無機層を含む機能層L2は第2の膜領域に対応する。また、この材料は、例えば絶縁性材料である。なお本明細書及び特許請求の範囲において機能層とは、電極又は上述した電極を有する電気化学素子としたときに、絶縁性や電気化学素子特性、例えば出力特性やサイクル特性等に寄与する機能を発現する層である。
【0012】
なお、液体を吐出することで電極基体上に機能層(樹脂層又は無機層)を形成するとは、液体を吐出することのみで電極基体上に機能層(樹脂層又は無機層)を形成する場合だけでなく、液体を吐出することで機能層前駆体(樹脂層前駆体又は無機層前駆体)が形成され、その後の工程(例えば、加熱工程等)で機能層(樹脂層又は無機層)が形成される場合等も含む。以下、電極を構成する各構成要素について説明する。
【0013】
<電極基体>
電極基体は、集電体と、当該集電体上に設けられた電極合材層と、を有する。
【0014】
<集電体>
集電体は、例えばアルミ箔、銅箔などで構成される。
【0015】
<電極合材層>
電極合材層L1は、集電体上に設けられた活物質を含む層である。電極合材層L1は、粉体状の活性物質や触媒組成物を液体中に分散及び又は溶解し、この液体を集電体B上に塗布、固定、乾燥することによって形成されている。電極合材層L1を形成するには、スプレー、ディスペンサ、ダイコータや引き上げ塗工等を用いられ、塗布後に乾燥して電極合材層を形成する。
【0016】
更に電極合材層L1は、例えば電子写真方式や、液体現像型電子写真等のオンデマンド印刷によって形成される場合、電極形状が自由に変えられることに加えて、更に、集電体がアルミ箔のような薄い導電性箔である場合、非接触で特定のパターンを位置制御して印刷できることから、液体吐出ヘッドを用いたインクジェット法や、ディスペンサ、ジェットノズル等、液体吐出系の手法で印刷することが好ましく、特にインクジェット法は好ましいものとなる。
【0017】
正極活物質は、アルカリ金属イオンを可逆的に吸蔵及び放出できる材料であれば特に限定されない。典型的には、アルカリ金属含有遷移金属化合物を正極用活物質として使用できる。例えばリチウム含有遷移金属化合物として、コバルト、マンガン、ニッケル、クロム、鉄及びバナジウムからなる群より選ばれる少なくとも一つの元素とリチウムとを含む複合酸化物が挙げられる。例えば、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム等のリチウム含有遷移金属酸化物、LiFePO4等のオリビン型リチウム塩、二硫化チタン、二硫化モリブデン等のカルコゲン化合物、二酸化マンガン等が挙げられる。
【0018】
リチウム含有遷移金属酸化物は、リチウムと遷移金属とを含む金属酸化物又は該金属酸化物中の遷移金属の一部が異種元素によって置換された金属酸化物である。異種元素としては、例えばNa、Mg、Se、Y、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Al、Cr、Pb、Sb、B等が挙げられ、なかでもMn、Al、Co、Ni及びMgが好ましい。異種元素は、1種でもよく又は2種以上でもよい。これらの正極活物質は単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。ニッケル水素電池における上記活物質としては水酸化ニッケル等が挙げられる。
【0019】
負極活物質は、アルカリ金属イオンを可逆的に吸蔵及び放出できる材料であれば特に限定されない。典型的には、結晶構造を有するグラファイトを含む炭素材料を負極活物質として使用できる。そのような炭素材料としては、天然黒鉛、球状又は繊維状の人造黒鉛、難黒鉛化性炭素(ハードカーボン)、易黒鉛化性炭素(ソフトカーボン)等が挙げられる。炭素材料以外の材料としては、チタン酸リチウムが挙げられる。また、リチウムイオン電池のエネルギー密度を高める観点から、シリコン、錫、シリコン合金、錫合金、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化錫等の高容量材料も負極活物質として好適に使用できる。
【0020】
ニッケル水素電池における上記活物質としては水素吸蔵合金としては、Zr-Ti-Mn-Fe-Ag-V-Al-WやTi15Zr21V15Ni29Cr5Co5Fe1Mn8等で代表されるAB2系或いはA2B系の水素吸蔵合金が例示される。
【0021】
正極又は負極の結着剤には、例えばPVDF、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレン、ポリプロピレン、アラミド樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアクリルニトリル、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸メチルエステル、ポリアクリル酸エチルエステル、ポリアクリル酸ヘキシルエステル、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸メチルエステル、ポリメタクリル酸エチルエステル、ポリメタクリル酸ヘキシルエステル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリエーテル、ポリエーテルサルフォン、ヘキサフルオロポリプロピレン、スチレンブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロース等が使用可能である。また、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル、フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン、エチレン、プロピレン、ペンタフルオロプロピレン、フルオロメチルビニルエーテル、アクリル酸、ヘキサジエンより選択された2種以上の材料の共重合体を用いてもよい。また、これらのうちから選択された2種以上を混合して用いてもよい。
【0022】
電極に含ませる導電剤には、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛のグラファイト類、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック類、炭素繊維や金属繊維等の導電性繊維類、フッ化カーボン、アルミニウム等の金属粉末類、酸化亜鉛やチタン酸カリウム等の導電性ウィスカー類、酸化チタン等の導電性金属酸化物、フェニレン誘導体、グラフェン誘導体等の有機導電性材料等が用いられる。
【0023】
燃料電池での活物質は、一般に、カソード電極やアノード電極の触媒として、白金、ルテニウム或いは白金合金等の金属微粒子をカーボン等の触媒担体に担持させたものを用いる。触媒担体の表面に触媒粒子を担持させるには、例えば触媒担体を水中に懸濁させ、触媒粒子の前駆体を添加、(塩化白金酸、ジニトロジアミノ白金、塩化第二白金、塩化第一白金、ビスアセチルアセトナート白金、ジクロロジアンミン白金、ジクロロテトラミン白金、硫酸第二白金塩化ルテニウム酸、塩化イリジウム酸、塩化ロジウム酸、塩化第二鉄、塩化コバルト、塩化クロム、塩化金、硝酸銀、硝酸ロジウム、塩化パラジウム、硝酸ニッケル、硫酸鉄、塩化銅等の合金成分を含むものを用い)懸濁液中に溶解させアルカリを加え金属の水酸化物を生成させると共に、触媒担体表面に担持させた触媒担体を得る。かかる触媒担体を電極上に塗布し、水素雰囲気下等で還元させることで、表面に触媒粒子(活物質)が塗布された電極を得る。
【0024】
<樹脂層及び無機層>
樹脂層又は無機層は、集電体上に形成されている電極合材層、または集電体に、液体吐出ヘッドにより液体組成物を吐出することにより形成される機能層の一例である。本実施形態に係る機能層は、蓄電デバイスとしたときに電極同士を物理的に絶縁し、短絡の発生を抑制する絶縁層としての機能を有するが、絶縁層としての機能を奏する範囲であれば、絶縁層としての機能以外の機能を更に有していてもよい。なお、集電体に、まず、比較的正確な精度をもつ塗工方法、例えばスクリーン印刷やグラビア塗工、インクジェット塗工やディスペンサ描画等によって、絶縁性枠状等の所望の電極形状のパターンの樹脂層又は無機層を形成してもよい。この場合、樹脂層又は無機層を形成した後、上記活物質をスラリー状にしたものを上記パターン上に塗布し、乾燥する。これにより、電極合材層の形成速度を極端に上昇させたり、或いは粘度の限られたスラリーから比較的厚い膜を形成したりする場合にも、後の乾燥工程での所望のサイズ幅の活物質が、集電体上に常に接する状態を作れることにより、結果として目的とする塗工寸法が常に実現できるため、好ましいものとなる。
【0025】
従って、かかる樹脂層又は無機層に要求される性能は、集電体に対して、正確に塗布乾燥できることと、上記活物質や、最終的にデバイスにしたときに用いられる電解液に対して反応又は溶解しないものであることが好ましい。即ち、電極合材層の周辺部の樹脂層又は無機層は、絶縁性膜であることを特徴とするものである。ここでいう絶縁性膜は、通常厚さ方向で、メガオーム[/cm]以上の絶縁性を有するものであることが好ましい。また、デバイスの中において長く絶縁性を保つ必要があるため、上記電解液に溶解しにくい必要がある。従って、通常の有機溶媒に溶解した樹脂のみではこれらの性能を達成することは難しく、塗布した後に、熱や電離放射線等によって架橋不要化性能等を有する樹脂群が好ましい。或いは、無機材料は絶縁性を有する微粒子であり、微粒子が溶媒に分散していて、塗布後に乾燥させ絶縁性を有する膜であることが好ましい。また、無機材料は固体電解質材料や半固体電解質材料であってもよい。更に、この樹脂層又は無機層は、電極加工の過程で、最大250[kN]程度の線圧によるプレス工程等が存在するため、上記線圧に対して耐性を有することが好ましい。
【0026】
なお集電体上において電極合材層を形成する領域の周囲(枠領域)に先に樹脂層又は無機層を形成しておき、枠領域に樹脂層又は無機層が形成されている集電体上に活物質をスラリー状にしたものを塗布し、乾燥させてもよい。これにより、電極合材層の形成速度を極端に上昇させたり、或いは粘度の限られたスラリーから比較的厚い膜を形成したりする場合にも、後の乾燥工程における所望のサイズ幅の活物質が、集電体上に常に接する状態を作ることができる。その結果、目的とする塗工寸法が常に実現できるため、好ましいものとなる。従って、樹脂層又は無機層に要求される性能は、集電体に対して、正確に塗布乾燥できることと、活物質や、最終的にデバイスにしたときに用いられる電解液に対して溶解しないものであることが好ましい。即ち、電極合材層の周辺部の樹脂層又は無機層は、上述したように絶縁性膜で構成される。
【0027】
<樹脂形成用液体組成物>
次に、上述の樹脂層を形成するため液体組成物である、樹脂及び該樹脂の前駆体(モノマー)の少なくとも何れか一方(樹脂又は該樹脂の前駆体)と、溶媒と、を含む樹脂層形成用液体組成物を先に説明する。
【0028】
樹脂及び該樹脂の前駆体としては、分子内に電離放射線や赤外線(熱)によって架橋性の構造を保有する樹脂類やオリゴマー類を液体である有機溶剤(有機溶媒)に溶解せしめたものが好ましい。樹脂及び該樹脂の前駆体としては、例えば、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂のうち低分子量のオリゴマー前駆体や、その一部に例えば脂肪族不飽和結合を有する炭化水素基で修飾したものが好ましく、例えばアクリル系共重合体の一部の側鎖にアリル基、アリルオキシ基、アクリロイル基、ブテニル基、シンナミル基、シンナモイル基、クロトメイル基、シクロヘキサジェニル基、インプロペニル基、メタクリロイル基、ペンテニル基、プロペニル基、スチリル基、ビニル基、ブタジェニル基等の不飽和結合を有するもの等が好ましい。
【0029】
更にポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリアクリルニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリエーテルケトン、ポリエチレンナフタレート、ポリスルホン、ポリイミド、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリオキシメチレン、ポリアミド、ポリビニルピロリドン、及びセルロース等についても分子量1万以下の比較的低分子量の分散前駆体やセルロースナノファイバーを用い、それらを電離放射線や赤外線によって加熱することにより定着後の不溶性及び架橋性を高めることができる。
【0030】
更にこれらの前駆体は、架橋性を高めるために最大30重量部程度のアジド化合物を含有させても構わない。例えば、3.3′-ジクロロ-4.4′-ジアジドジフェニルメタン、4.4′-ジアジドジフェニルエーテル、4.4′-ジアジドジフェニルジスルフィド、4.4′-ジアジドジフェニルスルフィド、4.4′-ジアジドジフェニルスルホン、4-アジドカルコン、4-アジド-4′-ヒドロキシカルコン、4-アジド-4′-メトキシカルコン、4-アジド-4′-モルホリノカルコン、4-ジメチルアミノ-4′-アジドカルコン、2.6-ビス(4′-アジドベンザル)-4-メチルシクロヘキサノン、2.6-ビス(4′-アジドベンザル)-シクロヘキサノン、シンナミリデン-4-アジドアセトフェノン、4-アジドシンナミリデンアセトフェノン、4-アジド-4′-ジメチルアミノシンナミリデンアセトフェノン、シンナミリデン-4-アジドシンナミリデンアセトン、2.6-ビス(4′-アジドシンナミリデン)-4-メチルシクロヘキサノン、2.6-ビス(4′-アジドシンナミリデン)-シクロヘキサノン、1.4′-アジドベンジリデンインデン、1.4′-アジドベンジリデンインデン、1.4′-アジドベンジリデン-3-α-ヒドロキシ-4″-アジドベンジルインデン、9.4′-アジドベンジリデンフルオレン、9.4′-アジドシンナミリデンフルオレン、4.4′-ジアジドスチルベン-2.2′-ジスルホニル-N-(p-メトキシフェニル)アミド、4.4′-ジアジドスチルベン-2.2′-ジスルホニル-N-(p-ヒドロキシエチルフェニル)アミド、4.4′-ジアジドスチルベン-2.2′-ジスルホニル-N-(p-ヒドロキシフェニル)アミド、4.4′-ジアジドスチルベン-2.2′-ジスルホニルアミド、4.4′-ジアジドベンゾフェノン、4.4′-ジアジドスチルベン、4.4′-ジアジドカルコン、4.4′-ジアジドベンザルアセトン、6-アジド-2-(4'-アジドスチリル)ベンゾイミダゾール、3-アジドベンジリデンアニリン-N-オキシp~(4-アジドベンジリデンアミド)安息香酸、1.4-ビス(3′-アジ1ζスチリル)ベンゼン、3.3′-ジアジドジフェニルスルホン、4.4′-ジアジドジフェニルメタン等が挙げられる。
【0031】
なかでも特に2.6-ビス-(4′アジドベンザル)-4-メチルシクロヘキサノン等を好適に用いることができる。これらの材料が溶解される溶媒は特に規定されるものではないが、上記化合物が溶解できて沸点や表面張力が後の塗布や乾燥工程に対して好適なものを単独又は混合して調整し用いることができる。
【0032】
<無機層形成用液体組成物>
次に、上述の無機層を形成するため液体組成物である、無機粒子と、溶媒と、を含む無機層形成用液体組成物を説明する。
【0033】
無機粒子を構成する無機酸化物としては、例えば、酸化アルミニウム、二酸化チタン、チタン酸バリウム、二酸化ジルコニウム、酸化ニッケル、酸化マンガン、二酸化バナジウム、二酸化ケイ素、ゼオライトなどの鉱物資源由来物質、又はこれらの人造物等が挙げられる。中でも、電気抵抗の大きさや安定性の観点から、酸化アルミニウム、二酸化チタンが好ましく、酸化アルミニウムがより好ましく、α-アルミナがさらに好ましい。
【0034】
溶媒としては、上述した無機酸化物を分散可能な溶媒であることが好ましい。
【0035】
また、無機層形成用液体組成物は、必要に応じて無機粒子同士を結着するバインダーを含んでいてもよい。
【0036】
<電気化学素子の構成>
続いて、電気化学素子(電池)の構成について説明する。図2は、電気化学素子の構成の一例を示す図である。電気化学素子100が液系の電気化学素子である場合は、電極素子140に電解質水溶液又は非水電解質を注入することにより電解質層151が形成されており、外装152により封止されている。電気化学素子100において、引き出し線141及び142は、外装152の外部に引き出されている。また電気化学素子100が固体電気化学素子である場合は、セパレータを固体電解質又はゲル電解質に置き換えればよい。
【0037】
なお、電気化学素子100の形状としては特に制限はない。電気化学素子100の形状は、例えば、ラミネートタイプ、シート電極及びセパレータをスパイラル状にしたシリンダタイプ、ペレット電極及びセパレータを組み合わせたインサイドアウト構造のシリンダタイプ、ペレット電極及びセパレータを積層したコインタイプ等が挙げられる。
【0038】
<電気化学素子の用途>
また、電気化学素子の用途としても特に制限はない。例えば、車両、スマートフォン、ノートパソコン、ペン入力パソコン、モバイルパソコン、電子ブックプレーヤ、携帯電話、携帯ファクシミリ、携帯コピー、携帯プリンタ、ヘッドホンステレオ、ビデオムービー、液晶テレビ、ハンディークリーナ、ポータブルCD、ミニディスク、トランシーバ、電子手帳、電卓、メモリーカード、携帯テープレコーダ、ラジオ、バックアップ電源、モータ、照明器具、玩具、ゲーム機器、時計、ストロボ、カメラ等の電気機器などが挙げられる。これらの中でも、車両、電気機器が特に好ましい。車両としては、例えば、普通自動車、大型特殊自動車、小型特殊自動車、トラック、大型自動二輪車、普通自動二輪車などが挙げられる。
【0039】
〔電極製造装置の装置構成〕
続いて、図3及び図4を用いて、実施形態に係る電極製造装置の装置構成について説明する。
【0040】
まず電極製造装置の全体構成について説明する。図3は、電極製造装置の全体構成(側面図)の一例を示す図である。図3は、電極製造装置3をXYZ軸の-Y方向からみた側面図であり、電極製造装置3は、集電体上に設けられた電極合材層の少なくとも一部又は集電体の少なくとも一部に機能層を形成する。具体的には、電極製造装置3は、巻出しモジュールから巻き出された集電体320を含む電極基体を、図3の右から左(XYZ座標軸の-Y方向から見て+X方向(右)から-X方向(左))へ搬送する。更に電極製造装置3は、液体吐出ヘッド350(吐出ヘッドA,B,C,D)及びセンサ335を含む作像部、光源360、乾燥炉370を経由させて巻取りモジュールにて巻き取る。但し、図3に示した電極製造装置3の構成は一例であり、これに限らない。
【0041】
例えば、巻き出しモジュールと、吐出ヘッドA,B,C,D及びセンサ335と、の間に巻き出しモジュールで巻き出された集電体上に電極合材層を付与するための活物質層形成部を設けてもよい。この活物質層形成部においては、電極合材層を形成するための組成物を付与する付与部の他、付与された組成物を高密度化させるためのプレス部を含んでいてもよい。また、液体吐出ヘッド350から吐出される液体組成物が光重合性化合物(光重合性モノマー)を含まないような、光源を必要としない場合、作像部と乾燥部との間の光源360を設けなくてもよい。
【0042】
図4は、電極製造装置のインクジェット作像部を含む構成(上面図)の一例を示す図である。具体的には、図4は、XYZ軸の+Z方向からみた電極製造装置3の上面図であり、電極製造装置3は、機能層を形成するための液体組成物(インク)を吐出する液体吐出ヘッド350(ヘッドA,B,C,D)が配置される。なお、特に指定の無い場合は、以下、単に「液体吐出ヘッド350」と呼ぶ。また、液体吐出ヘッド350の上流側には、センサ335が配置される。センサ335は、搬送機構によって搬送される集電体320の搬送に伴い移動する集電体320上に位置する電極合材層(メディア)の先端、後端を示す端部を検出する検出手段の一例である。なお、図4では、センサ335が電極合材層(メディア)に接して配置されているように見えるが、実際にはセンサ335は電極合材層と接しておらず、電極合材層から+Z方向に所定距離離れて設けられている。このような構成において、集電体320上に設けられた電極合材層は、図3の右から左(XYZ座標軸の-Y方向から見て+X方向(右)から-X方向(左))へ搬送される。
【0043】
図3図4に示したように、本実施形態では、XYZ軸におけるX軸は、集電体(電極基体)の搬送方向(MD: Media Direction)を示す方向である。またY軸は、集電体(電極基体)の搬送方向を示すX軸と直行する方向、すなわち集電体(電極基体)を矩形とみた場合の幅方向(CMD:Cross Media Direction)を示す方向である。またZ軸は、電極製造装置3を地面(床面等)に設置した場合の鉛直方向を示す方向と定義する。
【0044】
なお、本実施形態では、集電体320上に設けられた電極合材層上又は集電体320上に塗布され、機能層を形成させるための液体組成物層の膜を含めて、「被塗布材」と呼ぶ。
【0045】
特許文献2に示されているように、活物質(電極合材層の一例)を高密度化させるために、活物質を塗布し乾燥させた芯材(電極部材、ワーク)をプレスするプレス工程が開示されているが、プレスにより、複数の電極合材層の搬送方向長さに製造バラつきが発生する場合がある。つまり、所定の搬送方向長さが与えられた複数の電極合材層領域(ページ)の間で、誤差が生じる場合がある(電極を形成するために用いられるスプレーやダイコータによる塗工の位置精度は、よいものでも数百[μm]程度である)。そのため、電極基体上の1つの電極合材層の長さ、電極合材層同士の間隔が所望の位置からずれる場合がある。これにより、電極合材層同士の位置が所望の位置からずれることになる。また、電極製造装置3に搭載されたCPU等の制御部について、設計上の理由から比較的低速なCPUが採用される場合がある。そのような場合、搬送方向長さがずれた電極合材層ごとに搬送方向長さを変えて機能層を形成させようとした場合、CPUの処理負荷が増大するだけでなく、生産性に影響を及ぼす可能性がある。
【0046】
そこで、本実施形態では、集電体の搬送に伴い移動する電極合材層の端部を検出するセンサ335と、センサ335による電極合材層の端部に係る検出結果に基づき、電極合材層の少なくとも一部又は集電体320の少なくとも一部に機能層を形成する層形成部330と、を備える、ことを特徴とする電極製造装置3を提供する。これにより、電極を構成する電極合材層の長さに誤差が生じたものが搬送される場合があっても、電極合材層の少なくとも一部又は集電体の少なくとも一部に機能層を形成する際の電極製造装置の処理負荷の増大を抑制することを可能にする。
【0047】
<センサによって検出される電極合材層の形状>
図5は、センサによって検出される電極合材層の形状の一例を示す図である。図5に示した例では、点線と各図形の交点を端部として検出することにより、各電極合材層(メディア)に合わせた印刷を行うことができる。例えば、三角形の先端(頂点あるいは辺)を検出したらリアルタイム処理を開始し、後端を検出したら終了する。このとき、画像は事前処理によって予め角形状に合わせた所定のものを準備しておくによって実現してもよい。またセンサ335は、電極合材層の角を検出してもよいし、電極合材層の外周部(外縁部)のいずれかを検出してもよい。なお、電極合材層の形状は矩形に限定されず、三角形、円形、楕円形等の形状であってもよい。これにより、印刷処理に係る画像データを第1の画像処理としての事前処理によって予め角形状に合わせた所定のものを準備しておくにより、印刷処理を実現することができる。このような構成をとることで生産性良く、様々な形状の電極を製造することが可能となる。
【0048】
<検出器の構成及び検出情報>
次に、図6及び図7を用いて、実施形態に係る検出器の構成について説明する。図6は、実施形態に係る検出器の構成の一例を示す図である。図7は、実施形態に係る検出器が備える光センサの構成の一例を示す図である。図6において、電極合材層322aは、Y方向に沿って電極合材層領域3221から電極合材層領域3223の三つの電極合材層領域を含んでいる。電極合材層領域3221及び電極合材層領域3223それぞれは、平面視が長方形状であり、X方向に沿って延伸する領域である。電極合材層領域3222は、それぞれ平面視が長方形状である七つに分離した領域が、X方向に沿って配列している領域である。
【0049】
センサ335は、光センサ3351から光センサ3359の9個の光センサを含んでいる。なお、光センサ3351から光センサ3359は、配置されている位置、検出領域又は検出領域面における光の形状が異なっている。以降で区別しない場合には、光センサ335と総称表記する。
【0050】
図7に示すように、光センサ3350は、半導体レーザ等の発光素子3350aと、フォトダイオード等の受光素子3350bと、を含んでいる。発光素子3350aの波長は、集電体320に対する吸光度と、電極合材層322aに対する吸光度と、の差が2倍以上となる波長であることが好ましい。また、基体が銅を含む集電体である場合、発光素子3350aから発光される光の波長は530~630nmの範囲、すなわち600nm近傍の近赤外線であることが好ましい。
【0051】
検出領域面において、発光素子3350aから照射された光を受光する領域(光スポット)の形状はY方向が長手方向であり、X方向が短手方向となるようなライン形状であることが好ましい。Y方向を長手方向とすることにより、ダイコータなどのスラリーを塗布することで電極合材層を形成した場合に、形成される凹凸形状をY方向で平均化することが可能となる。そのため、より正確に検出することができる。また、X方向を短手方向とすることにより、タイミング検出誤差を小さくすることができる。なお、発光素子3350aから照射された光の検出領域面における形状は、略円形であってもよい。
【0052】
光センサ3350は、電極基体に向けて、電極基体の性状が異なる点が光スポット内に含まれるように発光素子40aから光スポットを照射し、電極基体により反射された光を受光素子により受光する。光スポットの最大径は、集電体320と電極合材層322aの境界における、電極合材層322aの形状変化の最小周期以上に大きいことが好ましい。
【0053】
また、光センサ3350は、設置角度は可変な構成であること、即ち発光素子3350aから照射された光の電極基体における入射角度、又は電極基体において反射された光の受光素子への入射角度は可変とできる構成であることが好ましい。例えば、吸光度の大きい集電体320及び吸光度の大きい電極合材層322aを検出対象とする場合、図7において電極基体に対する半導体レーザ等の発光素子3350aの角度と、フォトダイオード等の受光素子3350bの角度と、が略同じとなるよう配置されると、発光素子3350aから射出された光が正反射した光が受光素子3350bに入りやすくなり、SN比が小さくなってしまう。光センサ3350の設置角度を可変にすると、図7において電極基体に対する半導体レーザ等の発光素子3350aの角度と、フォトダイオード等の受光素子3350bの角度と、が異なるように配置できる。これにより、発光素子3350aの正反射光(入射角と反射角が同一である光)が受光素子3350bに入りづらい配置とすることができ、SN比を大きくすることができる。この結果、検出したときに大きな落差が見えるため、エッジ部分の検出精度を向上させることができる。
【0054】
一方、吸光度の小さい集電体320と、吸光度の大きい電極合材層322aと、を検出対象とする場合、図7において電極基体に対する半導体レーザ等の発光素子3350aの角度と、フォトダイオード等の受光素子3350bの角度と、が異なるように配置されると、発光素子3350aから射出された光が正反射した光が受光素子3350bに入りにくくなるため、SN比が小さくなってしまう。光センサ3350の設置角度を可変にすると、図7において電極基体に対する半導体レーザ等の発光素子3350aの角度と、フォトダイオード等の受光素子3350bの角度と、が略同じとなるように配置できる。これにより、発光素子3350aから射出された光が正反射した光(入射角と反射角が同一である光)が受光素子3350bに入りやすい構成とすることができ、SN比を大きくすることができる。この結果、検出したときに大きな落差が見えるため、エッジ部分の検出精度を向上することができる。
【0055】
上述したように、光センサ3350の設置角度を可変にする機構を設けることにより、集電体320及び電極合材層322aの性状による変化へ対応可能とすることが望ましい。
【0056】
光センサ3350は、電極基体による反射光の光強度に応じた時系列の電気信号を出力する。なお、レンズ3350cは、発光素子3350aにより発せられた光を集光照射するためのレンズである。
【0057】
図6において、9個の光センサ3350を示す白丸は、光センサ3350が照射する光スポットの形状が円形である場合を表している。本実施形態では、光センサ3350は、電極基体上において、電極合材層322aが形成されていない領域と電極合材層322aが形成されている領域との間の境界を、性状が異なる点として検出可能に配置されている。電極合材層322aは集電体320と比較して反射率が異なるため、例えば、電極合材層322aに比べ集電体320の反射率が大きい場合、電極基体の+X方向への搬送に応じ、光スポット内において電極合材層322aが形成されていない領域に対して電極合材層322aが形成されている領域の比率が大きくなると、反射光の光強度が低くなるように変化する。
【0058】
上述したセンサ335は、電極基体の+X方向への搬送に伴う反射光の光強度に応じた時系列の電気信号を検出情報として出力する。電極製造装置3は、センサ335による検出情報に基づき、電極基体の+X方向への搬送に応じた境界位置の変化を検出できる。境界を検出可能な位置は、例えば、液体吐出ヘッド350の位置である。具体的には、センサ335は、液体吐出ヘッド350に設けられており液体組成物を吐出するノズルの位置を基準にして、検出可能な位置を定めることができる。
【0059】
図6に示すように、光センサ3351は、Y方向における電極合材層領域3221の中央近傍に配置され、電極合材層領域3221のX方向における境界を検出する。光センサ3352は、Y方向における電極合材層領域3222の中央近傍に配置され、電極合材層領域3222のX方向における境界を検出する。光センサ3353は、Y方向における電極合材層領域3223の中央近傍に配置され、電極合材層領域3223のX方向における境界を検出する。なお、中央近傍とは、電極合材層領域のY方向に沿った辺の中央より電極合材層領域のY方向に沿った辺長の10%以内の範囲である。
【0060】
光センサ3354は、電極合材層領域3221の+Y方向における集電体320との境界を検出可能に配置されている。光センサ3355は、電極合材層領域3321の-Y方向における集電体320との境界を検出可能に配置されている。光センサ3356は、電極合材層領域3323の+Y方向における集電体320との境界を検出可能に配置されている。
【0061】
光センサ3357は、光センサ3354から+X方向にずれた位置において、電極合材層領域3221の+Y方向における集電体320との境界を検出可能に配置されている。光センサ3358は、光センサ3355から+X方向にずれた位置において、電極合材層領域3221の-Y方向における集電体320との境界を検出可能に配置されている。光センサ3359は、光センサ3356から+X方向にずれた位置において、電極合材層領域3223の+Y方向における集電体320との境界を検出可能に配置されている。
【0062】
光センサ3354から光センサ3359は、電極基体の+X方向への搬送に応じたY方向における各境界位置の変化を検出する。
【0063】
光センサ3354から光センサ3359は、電極合材層領域と集電体320との間におけるX方向に延伸する一つの境界線のみを光スポット内に含む(一つの境界線を光スポットが跨ぐ)ように配置されることが好ましい。光スポット内に複数の境界線が含まれず、一つの境界線のみが含まれていることにより、光センサ3350は、境界の変化をより正確に検出することができる。Y方向における光スポットの幅は、Y方向における電極合材層同士の間隔以下、換言すると、電極合材層同士の間において電極合材層が形成されていない集電体320の幅以下であることが好ましい。これにより、光スポットは、X方向に延伸する一つの境界線のみを含むことができる。
【0064】
<印刷タイミング>
次に、印刷タイミングについて説明する。図8は、実施形態に係る印刷タイミングの一例を示すタイムチャートである。まず、電極製造装置3では、後述する第1の画像処理としての事前処理を印刷開始前に済ませておく。或いは、後述する第2の画像処理としてのリアルタイム処理前までに済ませておく。
【0065】
続いて、電極合材層(メディア)が搬送され電極合材層がセンサ335の下方に到達すると、図8のようにセンサ信号が“Hi”(High)状態となる。
【0066】
続いて、センサ335が電極合材層(メディア)の先端を検出すると、電極製造装置3は、第2の画像処理としてのリアルタイム処理を行う。このときのリアルタイム処理量はメディアサイズに従う。その後、電極合材層(メディア)の搬送の継続に伴い電極合材層(メディア)の後端がセンサ335によって検出された場合、センサ信号は、“Hi”状態から“Lo”(Low)状態に変化する。但し、動作の仕様決定上、“Hi”、“Lo”のどちらをアクティブレベルとするかは適宜変更してもかまわない。
【0067】
リアルタイム処理の実行に応じて、電極製造装置3は印刷処理を実行する。このときのタイミングは、リアルタイム処理の開始タイミングから、後述する電極製造装置3内部の処理時間だけ遅れて開始されることになる。
【0068】
なお、印刷処理の実行は上述したヘッドA,B,C,Dにより行われるが、センサ335よりも下流に配置されているため、センサ335によって検出されたセンサ信号よりも時間的に後から行われることになる。
【0069】
<事前処理及びリアルタイム処理におけるメディアサイズ>
図9は、実施形態に係る第1の画像処理及び第2の画像処理の関係を示す図であり、(a)はページをZ方向から視て、X方向に沿って複数の面に分割した場合の第1の画像処理と第2の画像処理とのデータの差分を示す概念図、(b)は第1の画像処理を繰返し処理する場合の概念図である。ここで、事前処理及びリアルタイム処理における各面について説明する。1面、2面等の面とは、機能層を形成する異なる画像データを区別するためのものであり、これら異なる画像データを所定のライン数(例えば、1224ライン)で処理することをいう。つまり、事前処理の1面とは、1224ライン×4面=4896ライン(約5000ライン)に相当する量をいう。リアルタイム処理サイズが例えば4800ラインの場合は、4面目の最終96ラインは白データ(非吐出領域となるようなデータ。以下、単に「白データ」と呼ぶ)で埋める処理を行う。この非吐出領域となるようなデータで埋める処理は、差分となる4面目の最終96ライン分に対して、機能層を形成するための液体組成物を吐出しない処理としてもよい。これにより、白データは、ブランクデータとして扱われてもよい。上述した各面の画像データは、印刷する画像に応じて適宜設定、変更が可能である。
【0070】
図9(a)では、リアルタイム処理の4面目が他の面よりもメディアサイズを構成するデータ量(ライン数)が少ない。これは、事前処理ではメディアサイズ以上の長さの画像処理を行うためである。メディアサイズは印刷前に利用者により設定される。そのため、その情報を元に処理量を決定して処理が行われる。また、メディアサイズをはみ出して印刷を行う場合は、はみ出し量も考慮して処理長が決定される。上述した例で、は単位画像を複数面に分けて生成している。また、リアルタイム処理では事前処理を行った画像をセンサ335からの検出情報を元にメディアサイズ分だけ処理する。メディアサイズを超えた画像に対しては、電極製造装置3は、白データで埋める処理を行う。
【0071】
図9(b)では第1の画像処理を繰返し処理する場合を表す。この場合、事前処理では繰返し処理するための画像(リピート画像)を生成する例が示されている。事前処理では、単位画像を2面分生成するが、単位画像のサイズは自由に設定することができる。また、リアルタイム処理では事前処理を行った2面の画像を交互に処理し、メディアサイズ分だけ処理したら終了し、ページ間は図9(a)と同様に白データで埋める処理を行う。
【0072】
〔電極製造システムの全体構成〕
続いて、電極製造システムの全体構成について説明する。図10は、実施形態に係る電極製造システムの全体構成の一例を示す図である。図10に示されているように、電極製造システム1は、情報管理装置2及び上述した電極製造装置3を有している。更に、電極製造システム1では、情報管理装置2及び電極製造装置3は、通信ネットワーク150を介してそれぞれ互いに接続されている。
【0073】
通信ネットワーク150は、不特定多数の通信が行われる通信ネットワークであり、インターネット、イントラネット、LAN(Local Area Network)等によって構築されている。なお、通信ネットワーク150には、有線通信だけでなく、4G(4th Generation)、5G(5th Generation)、WiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)、LTE(Long Term Evolution)等の無線通信による通信ネットワークが含まれてもよい。なお、情報管理装置2及び電極製造装置3は、専用の有線ケーブルで直接接続されていてもよい。
【0074】
ここで、情報管理装置2の役割について説明する。電池電極製造に係る本実施形態では、情報管理装置2は、図8に示した電極製造システム1における電極製造装置3の各種データ(情報)の一括管理を行うことも可能である。したがって、後述するように、電極製造システム1は、情報管理装置2が、電極製造装置3で管理されるデータテーブル及び各種画像データを一括管理するようなシステムとして構築されてもよい。
【0075】
なお、情報管理装置2では、ストレージ等の各部(機能又は手段)を分割して任意に割り当てられた複数のコンピュータによって構築されてもよい。また、情報管理装置2の機能の全てまたは一部は、クラウド環境に存在するサーバコンピュータであってもよいし、オンプレミス環境に存在するサーバコンピュータであってもよい。情報管理装置2は、更に、ブラウザソフトウエア等のソフトウエアを動作させることが可能な通信装置又は通信端末が用いられてもよい。
【0076】
また、情報管理装置2は、電極製造装置3に対してプッシュ通知(送信)によりデータ(情報)を通知(送信)してもよい。その場合、情報管理装置2は、例えば、プッシュ通知サーバの一例であるFCM(Firebase Cloud Messaging)を介してプッシュ通知が行われるようにしてよい。
【0077】
上述したような電極製造システムを構築することにより、本実施形態では、従来のように電極を構成する電極合材層の長さに誤差が生じたものが搬送される場合があっても、電極合材層上又は集電体上に機能層を形成する際の電極製造装置の処理負荷の増大を抑制する電極製造装置又は電極製造システムを提供する。
【0078】
〔ハードウエア構成〕
続いて、図11及び図12を用いて、実施形態に係る情報処理システムを構成する通信端末又は装置のハードウエア構成について説明する。なお、図11及び図12に示されている各装置のハードウエア構成は、必要に応じて構成要素が追加又は削除されてもよい。
【0079】
<情報管理装置のハードウエア構成>
図11は、実施形態に係る情報管理装置のハードウエア構成の一例を示す図である。図11に示されているように、情報管理装置2は、例えばコンピュータによって構築されており、CPU201、ROM202、RAM203、EEPROM204、HD(Hard Disk)205、HDD(Hard Disk Drive)コントローラ206、ディスプレイ207、近距離通信I/F208、CMOSセンサ209、撮像素子I/F210を備えている。情報管理装置2は更に、ネットワークI/F211、キーボード212、ポインティングデバイス213、メディアI/F215、外部機器接続I/F216、音入出力I/F217、マイク218、スピーカ219及びバスライン220を備えている。
【0080】
これらのうち、CPU201は、情報管理装置2全体の動作を制御する。ROM202は、CPU201の駆動に用いられるプログラム等を記憶する。RAM203は、CPU201のワークエリアとして使用される。EEPROM204は、CPU201の制御にしたがって、アプリ等の各種データの読出し又は書込みを行う。HD205は、プログラム等の各種データを記憶する。HDDコントローラ206は、CPU201の制御にしたがってHD205に対する各種データの読出し又は書込みを制御する。ここで、情報管理装置2は、HD205及びHDDコントローラ206に代えて、SSD(Solid State Drive)を搭載したハードウエア構成であってもよい。ディスプレイ207は、カーソル、メニュー、ウィンドウ、文字又は画像などの各種情報を表示する。本実施形態において、ディスプレイ207は、表示手段の一例として機能する。近距離通信I/F208は、NFC(Near Field Communication)、Bluetooth(登録商標。以下省略)、Wi-Fi(登録商標。以下省略)等の無線通信インターフェイスを備える通信装置又は通信端末等とデータ通信を行うための通信回路である。CMOSセンサ209は、CPU201の制御にしたがって被写体を撮像して画像データ又は動画データを得る内蔵型の撮像手段の一種である。なお、撮像手段は、CMOSセンサではなく、CCD(Charge Coupled Device)センサ等で構成される撮像手段であってもよい。撮像素子I/F210は、CMOSセンサ209の駆動を制御する回路である。
【0081】
ネットワークI/F211は、通信ネットワーク150を利用してデータ通信をするためのインターフェイスである。キーボード212は、文字、数値、各種指示などの入力のための複数のキーを備えた入力手段の一種である。なお、キーボード212に代えて又は加えて、所定のボタン、アイコン等を操作するタッチパネル等の入力手段を用いてもよい。ポインティングデバイス213は、各種指示の選択や実行、処理対象の選択、カーソルの移動などを行う入力手段の一種である。メディアI/F215は、フラッシュメモリ等のメディア214に対するデータの読出し又は書込み(記憶)を制御する。外部機器接続I/F216は、各種の外部機器を接続するためのインターフェイスであり、電極製造装置3と専用の有線ケーブルを用いて接続される。なお、外部機器は、USB(Universal Serial Bus)メモリ等であってもよい。音入出力I/F217は、CPU201の制御にしたがってマイク218及びスピーカ219との間で音信号の入出力を処理する回路である。マイク218は、音を電気信号に変える内蔵型の回路であり、外部のスピーカ等から発する音声や音波を取得し電気信号を用いた情報を取得する。スピーカ319は、電気信号を物理振動に変えて音楽や音声などの音を生み出す内蔵型の回路である。バスライン220は、CPU201等の各構成要素を電気的に接続するためのアドレスバスやデータバス等である。
【0082】
<電極製造装置のハードウエア構成>
図12は、実施形態に係る電極製造装置の制御部を含むハードウエア構成の一例を示す図である。電極製造装置3は、例えばコンピュータによって構築されており、制御部300、層形成部330、センサ335、エンコーダ380及び操作部390を備えている。
【0083】
制御部300は、搬送機構340に含まれる液体吐出ヘッド350、光源360、ヒータ370等の動作を制御すると共に、センサ335により出力される電極合材層(メディア)の端部に係る検出結果情報等を処理する。なお制御部300は、電極製造装置3との間において信号又はデータの送受が可能であれば、電極製造装置3の内部又は外部のいずれに配置されていてもよいし、電極製造装置3から離れた遠隔場所に配置されていてもよい。
【0084】
制御部300は更に、CPU301、ROM302、RAM303、HDD304、I/F305、SSD(Solid State Drive)306及びバスライン310を備えている。
【0085】
これらのうち、CPU301は、電極製造装置3全体の動作を制御する。ROM302は、CPU301の駆動に用いられるプログラム等を記憶する。RAM303は、CPU301のワークエリアとして使用される。HDD304は、CPU301の制御にしたがって、アプリ等の各種データの読出し又は書込みを行う。I/F305は、NFC(Near Field Communication)、Bluetooth(登録商標。以下省略)、Wi-Fi(登録商標。以下省略)等の無線通信インターフェイスを備える通信装置又は通信端末等とデータ通信を行うための通信回路である。I/F305は更に、専用の有線ケーブルを介して接続された装置(情報管理装置2)とデータ通信を行うための通信回路である。SSD(Solid State Drive)306は、CPU301の制御にしたがって、HDD304の補助的な記憶装置として利用されてよく、印刷画像データ等を記憶し繰り返し使うようにしてもよい。
【0086】
集電体320は、Y方向に沿って延伸する長尺シート状の導電性箔である。導電性箔は、例えばアルミ箔、銅箔である。集電体320と、集電体320上に設けられた電極合材層と、を有する電極基体は、集電体上に、性状が異なる点を+Y方向と交差するX方向に沿って複数有する。この性状には、電極基体の厚み、色及び反射率等が挙げられるが、これらの少なくとも一つが含まれることが好ましい。具体的には、集電体320上には電極合材層が形成されている。そのため、電極基体において、電極合材層が形成されている領域と形成されていない領域との間では厚み、色及び反射率の少なくとも一つが異なっている。性状が異なる点は、電極合材層が形成されている領域と、電極合材層が形成されていない領域と、の境界に含まれる点である。
【0087】
層形成部330は、搬送機構340、液体吐出ヘッド350(インクジェットヘッド)、光源360及びヒータ370を備え、センサ335による電極合材層の端部に係る検出結果に基づき、少なくとも電極合材層上又は集電体320上に機能層を形成する。
【0088】
搬送機構340は、駆動ローラ340aと従動ローラ340bとにより、集電体320、又は集電体320と集電体320上に設けられた電極合材層とを有する電極基体をX方向に搬送する。搬送機構340は更に、駆動ローラ340aと、従動ローラ340bと、駆動ローラ340aの回転角度信号を出力するエンコーダ380と、駆動ローラ340aを駆動させるモータと、を含んでいる。電極基体は、少なくとも駆動ローラ340a及び従動ローラ340bに架け回されており、駆動ローラ340aの回転に従ってX方向に走行することによって搬送される。なお、搬送機構340は、電極基体の移動を補助するガイド部材等を更に備えてもよい。
【0089】
液体吐出ヘッド350は、X方向に搬送される電極基体が有する集電体320上に形成されている電極合材層上に液体組成物を吐出して付与することにより、電極基体上に機能層としての樹脂層を形成する液体吐出手段の一例である。
【0090】
液体吐出ヘッド350(インクジェットヘッド)は、機能層としての樹脂層を形成するための元データとなる画像データに基づいて液体組成物を吐出し、樹脂層の前駆状態である樹脂前駆層を形成する。
【0091】
液体吐出ヘッド350としては、X方向における電極基体の幅以上の幅を有するライン状に並べたヘッドを使用することができる。液体吐出ヘッド350から液体組成物を吐出する圧力発生手段及び駆動方法には特に制限はない。例えば、発熱体の熱により発生する蒸気の圧力を利用して液体組成物滴を飛翔させるサーマルアクチュエータ、圧電素子によって発生する機械的な圧力パルスを利用して液体組成物滴を飛翔させる圧電アクチュエータ、或いは、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータ等を使用することができる。液体吐出ヘッド350は更に、必要に応じて液体組成物の供給系を圧力オンオフすることにより液体組成物を飛翔させてもよい。
【0092】
光源360は、電極基体上に形成された液体組成物層(樹脂前駆層)に光を照射し、樹脂前駆層に含まれるモノマーの重合を促進させることで、液体組成物層を樹脂層に硬化させる。光源としては、例えば、低、中、高圧水銀ランプのような水銀ランプ、タングステンランプ、アーク灯、エキシマランプ、エキシマレーザ、半導体レーザ、高出力UV-LED、YAGレーザ、レーザと非線形光学結晶とを組み合わせたレーザシステム、高周波誘起紫外線発生装置、EBキュア等の電子線照射装置、X線照射装置等を使用することができる。但し、システムを簡便化できる観点では、高周波誘起紫外線発生装置、高・低圧水銀ランプ、半導体レーザ等を使用することが好ましい。また、光源に集光用ミラーや走査光学系を設けてもよい。
【0093】
光源の例として、例えばライトハンマーシリーズ(フュージョンUVシステムズ社製)等が例示される。また、日亜化学工業株式会社に代表されるLEDメーカから1W以上の高輝度のUV-LEDやレーザーダイオード等が販売されており、これらを線又は平面上に並べることによって好適に用いることができる。また、活物質粉体の隙間にしみ込んだり(入り込んだり)して光が届きにくい場合には、電子線、X線照射装置等を光源として用いることができる。この場合、例えば岩崎電気株式会社製の小型EB射装置等が好適に用いられる。
【0094】
ヒータ370は、電極基体上に形成された樹脂層形成用液体組成物の吐出によって形成される樹脂前駆層を加熱することにより、硬化の促進、溶媒の除去、乾燥等を行う。ヒータ370としては、例えば、赤外ランプ、発熱体を内蔵したローラ(熱ローラ)、温風又は熱風を吹き出すブロワ、水蒸気等を用いたボイラー型熱風を導入した炉等を使用することができる。
【0095】
なお、ヒータ370は、熱源として知られ制御可能なものであればいかなるものでもよい。例えば、光源として、可視光に加えて赤外光を発生し得るものを使用した場合には、光照射と同時に加熱を行うことができる。この場合にはヒータ370は硬化、即ち樹脂前駆層に含まれるモノマーの重合を促進させることができるため、より好ましい。なお、樹脂前駆層に光を照射すると、光源から発生する熱によって樹脂前駆層が加熱されるため、加熱手段は、ヒータ370のように必ずしも独立した部材として設ける必要はない。しかし、光源からの熱のみにより常温で放置して樹脂前駆層を完全に硬化させるには長時間を要する。したがって、常温放置は、完全硬化までに充分に長い時間を確保できる用途に適用することが望まれる。
【0096】
エンコーダ380は、上述したように駆動ローラ340aの回転角度信号を出力する。
【0097】
電極製造装置3は更に、操作部390を備えている。操作部390は、タッチパネル等により構成されており、電極製造装置3のユーザ(利用者)による電極製造装置3への操作入力を受け付けると共に、電極製造装置3の状態情報、設定情報等を操作部390の画面上に表示する。
【0098】
なお、本実施形態に係る電極製造装置3は、必要に応じて液体吐出ヘッド350の前段又は後段に各種工程を実行する装置を備えることで蓄電デバイス製造装置としてもよい。
【0099】
上記の蓄電デバイス製造装置は、電極基体に液体を付与する電極製造装置3を有し、更に、例えば、樹脂層又は無機層が形成された電極基体をセル(電池)化に向けて加工する電極基体加工部などを含む。
【0100】
<電極基体加工部>
電極基体加工部は、液体吐出ヘッド350よりも下流において、樹脂層又は無機層が形成された電極基体を加工する。電極基体加工部は、裁断、折り畳み、及び貼り合わせの少なくとも一つを実施してもよい。電極基体加工部は、例えば、樹脂層又は無機層が形成された電極基体を裁断し、電極基体積層体を作製することができる。電極基体加工部は、樹脂層又は無機層が形成された電極基体を巻回又は積層することができる。絶縁層が融点又はガラス転移点を有する材料を含む場合、電極基体加工部では、例えば、一の電極基体積層体と他の電極基体積層体は、加熱により少なくとも一部が接着される。
【0101】
電極基体加工部は、例えば、電極基体加工装置を有し、樹脂層又は無機層が形成された電極基体の裁断やつづら折り、積層や巻回、積層や巻回後の電極基体間の熱接着等を目的の電池形態に応じて実施する。電極基体加工部において樹脂層又は無機層が形成された電極基体の加工が行われるときは、加工後の電極基体にシワ等のダメージを低減させることが可能となる理由から、電極基体の搬送速度は比較的遅いことが好ましい。
【0102】
電極基体加工部によって行われる電極基体加工工程は、例えば、液体吐出ヘッド350よりも下流において、樹脂層又は無機層が形成された電極基体を加工する工程である。電極基体加工工程は、裁断工程、折り畳み工程、及び貼り合わせ工程の少なくとも一つを含んでもよい。
【0103】
なお、上記プログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルで、コンピュータで読取り可能な記録媒体に記録、又はネットワークを介してダウンロードを行い流通させるようにしてもよい。記録媒体の例として、CD-R(Compact Disc Recordable)、DVD(Digital Versatile Disk)、Blu-ray Disc(Blu-rayは登録商標。以下省略)、SDカード、USBメモリ等が挙げられる。また、記録媒体は、プログラム製品(Program Product)として、国内又は国外へ提供されることができる。例えば、電極製造装置3は、本発明に係るプログラムが実行されることで、本発明に係る電極製造方法を実現する。
【0104】
〔電極製造システムの機能構成〕
次に、図13乃至図15を用いて、本実施形態の機能構成について説明する。図13Aは、実施形態に係る電極製造システムの機能構成の一例を示す図であり、特に情報管理装置の機能構成を示す図である。図13Bは、実施形態に係る電極製造システムの機能構成の一例を示す図であり、特に電極製造装置の機能構成を示す図である。なお、図13は、図10に示されている情報管理装置2又は電極製造装置3のうち、後述する処理又は動作に関連するものを示す。
【0105】
<情報管理装置の機能構成>
次に、情報管理装置の機能構成について説明する。図13Aに示されているように、情報管理装置2は、送受信部21、操作受付部22、取得部23、表示制御部24、生成部27及び記憶読出部29を有する。これら各機能部は、図11に示された各ハードウエア資源のいずれかが、ROM202、EEPROM204、HD205及びメディア214のうち少なくとも一つからRAM203に展開された情報管理装置2用のプログラムに従ったCPU201からの命令により動作することで実現される機能又は手段である。また、情報管理装置2は、図11に示されているROM202、EEPROM204、HD205及びメディア214のうち少なくとも一つにより構築される記憶部2000を有している。更に、記憶部2000には、電極製造装置3と通信ネットワーク150を介して通信を行うための通信プログラム(通信アプリ)、印刷アプリ、ブラウザアプリ等が記憶されている。
【0106】
<<情報管理装置の各機能構成>>
次に、情報管理装置2の各機能構成について詳細に説明する。図13Aに示されている情報管理装置2の送受信部21は、主に、ネットワークI/F211及び近距離通信I/F208に対するCPU201の処理によって実現され、通信ネットワーク150を介して電極製造装置3との間で各種データ(又は情報)の送受信を行う。また、送受信部21は、操作受付部22によって受け付けられた印刷関連情報を電極製造装置3に対して送信する。本実施形態において送受信部21は、送信手段及び受信手段のうち少なくとも一方の手段の一例として機能する。
【0107】
操作受付部22は、主に、ディスプレイ207、キーボード212及びポインティングデバイス213のうち少なくとも一方が受け付けた各種操作により生成された信号をCPU201が処理することによって実現される。なお、操作受付部22は、ディスプレイ207及びポインティングデバイス213に代えて、タッチパネル等の入力手段が受け付けた各種操作により生成された信号が用いられてもよい。本実施形態において操作受付部22は、受付手段の一例として機能する。
【0108】
取得部23は、主に、CPU201の処理によって実現され、送受信部21によって受信された印刷完了通知に含まれる各種情報を取得する。本実施形態において取得部23は、取得手段の一例として機能する。
【0109】
表示制御部24は、主に、ディスプレイ207に対するCPU201の処理によって実現され、情報管理装置2における各種画面及び情報(データ)の表示制御を行う。また、表示制御部24は、例えば、ブラウザを用いて、HTML等により生成された表示画面を、ディスプレイ207に表示させる。本実施形態において表示制御部24は、表示制御手段の一例として機能する。
【0110】
生成部27は、主に、CPU201の処理によって実現され、電極製造装置3に対して送信される印刷実行要求に含まれる各種情報を生成する。本実施形態において生成部27は、生成手段の一例として機能する。
【0111】
記憶読出部29は、主に、ROM202、EEPROM204、HD205及びメディア214のうち少なくとも一つに対するCPU201の処理によって実現され、記憶部2000に各種データ(又は情報)を記憶したり、記憶部2000から各種データ(又は情報)を読み出したりする。本実施形態において記憶読出部29は、記憶読出手段の一例として機能する。
【0112】
<電極製造装置の機能構成>
続いて、電極製造装置の機能構成について説明する。図13Bに示されているように、電極製造装置3は、制御部300に、送受信部31、計測部32、取得部33、判定部35、処理部36、生成部37及び記憶読出部39を有する。また、電極製造装置3は、制御部300に、層形成制御部40を有する。層形成制御部40は更に、搬送制御部41、吐出制御部42、照射制御部43、加熱制御部44、操作制御部49を有する。これら各機能部は、図12に示された各ハードウエア資源のいずれかが、ROM302、HDD304及びSSD306のうち少なくとも一つからRAM303に展開された電極製造装置3用のプログラムに従ったCPU301からの命令により動作することで実現される機能又は手段である。また、電極製造装置3は、図12に示されているROM302、HDD304及びSSD306のうち少なくとも一つにより構築される記憶部3000を有している。更に、記憶部3000には、情報管理装置2と通信ネットワーク150を介して通信を行うための通信プログラム(通信アプリ)、ブラウザアプリ等が記憶されている。
【0113】
<<電極製造装置の各機能構成>>
次に、電極製造装置3の各機能構成について詳細に説明する。図13Bに示されている電極製造装置3の制御部300は、電極合材層上又は集電体320上に液体組成物層の膜(機能層の一例としての樹脂層又は無機層)を形成するよう、層形成部330を制御する。本実施形態において制御部300は、制御手段の一例として機能する。
【0114】
一方、層形成制御部40は、層形成部330を制御して電極合材層上又は集電体320上に機能層を形成する。本実施形態において層形成制御部40は、層形成制御手段の一例として機能する。
【0115】
以下、制御部300に含まれる各機能について説明する。送受信部31は、主に、I/F305に対するCPU301の処理によって実現され、通信ネットワーク150を介して情報管理装置2との間で各種データ(又は情報)の送受信を行う。また送受信部31は、情報管理装置2が送信した印刷関連情報を受信する。ここで、印刷関連情報には、機能層を形成するための画像データ、並びに、電極合材層に係る集電体320の搬送方向長及び印刷長が含まれる。本実施形態において送受信部31は、送信手段及び受信手段のうち少なくとも一方の手段の一例として機能する。
【0116】
計測部32は、主に、CPU301の処理によって実現され、CPU301のクロックをカウントすることにより時間を計測し、時間計測結果を得る。計測部32は更に、エンコーダ380から入力した駆動ローラ340aの回転角度信号に基づき、電極基体が搬送された距離(走行した距離)を計測し、搬送距離計測結果を取得部33に出力することもできる。本実施形態において計測部32は、計測手段の一例として機能する。
【0117】
取得部33は、主に、CPU301の処理によって実現され、情報管理装置2が送信した印刷実行要求を取得する。また取得部33は、ユーザにより操作部390に対して操作入力された各種情報を取得する。取得部33は更に、センサ335及びエンコーダ380からの検出結果を含む各種情報を取得する。本実施形態において取得部33は、取得手段の一例として機能する。
【0118】
判定部35は、主に、CPU301の処理によって実現され、電極製造装置3における各種判定(判断)を行う。本実施形態において判定部35は、判定手段の一例として機能する。
【0119】
処理部36は、主に、CPU301の処理によって実現される。処理部36は、センサ335による電極合材層の端部の検出前に第1の処理を行う。また処理部36は、センサ335による電極合材層の先端を示す端部の検出を起点として、層形成部330が電極合材層を覆う機能層を形成するための第2の処理を実行する。また処理部36は、第1の処理として、集電体320の搬送においてセンサ335により検出される電極合材層の長さよりも長い長さに対応する第1の画像処理を行う。また処理部36は、第2の処理として、第1の処理に用いられる画像データを繰り返して読み出すことが可能な単位で画像を処理する。また処理部36は、第1の画像処理として、階調処理を含む処理を実行する。また処理部36は、第2の処理として、センサ335により検出された電極合材層の搬送方向の先端情報及び後端情報を含む検出結果に基づいて算出された、電極合材層の周辺を覆うための機能層を形成するための第2の画像処理を行う。処理部36は更に、第2の画像処理を実行する際、電極合材層を形成するための画像データごとに分けられた複数の領域に対して画像処理を実行し、集電体320の搬送においてセンサ335により検出される電極合材層の長さよりも長い長さに対応する第1の画像処理で実行される画像サイズと、第2の画像処理で実行される画像サイズと、の差分を白データで埋める。なお、処理部36で実行される第1の画像処理は、センサ335による電極合材層の端部の検出前に行われる事前処理である。処理部36は事前処理を実行する際、RAM303又はSSD306から画像データを読み出し、階調処理等を行いRAM303へ保持する。処理部36で実行される第2の画像処理は、センサ335による電極合材層の端部(先端)の検出を契機に行われるリアルタイム処理である。処理部36はリアルタイム処理を実行する際、事前処理において処理された画像データを読み出し、センサ335入力される検出結果情報に従い画像処理を行い、吐出制御部42へ転送する。なお処理部36は、事前処理及びリアルタイム処理を全てCPU301で行っているが、それに限定されない。例えば、リアルタイム処理の全部及び一部を、制御部300を構成する吐出制御部42で行うことも可能である。このとき、吐出制御部42は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のハードウエア資源により実現されるものであってもよい。本実施形態において処理部36は、処理手段の一例として機能する。
【0120】
生成部37は、主に、CPU301の処理によって実現され、電極製造装置3における各種情報を生成する。本実施形態において生成部37は、生成手段の一例として機能する。
【0121】
記憶読出部39は、主に、ROM302、HDD304及びSSD306のうち少なくとも一つに対するCPU301の処理によって実現され、記憶部3000に各種データ(又は情報)を記憶したり、記憶部3000から各種データ(又は情報)を読み出したりする。本実施形態において記憶読出部39は、記憶読出手段の一例として機能する。
【0122】
次に、層形成制御部40の各機能について説明する。搬送制御部41は、主に、CPU301の処理によって実現され、搬送機構340を制御して巻出部341及び巻取部342による被塗布材の搬送の開始及び停止、並びに被塗布材の搬送速度等を制御する。本実施形態において搬送制御部41は、搬送制御手段の一例として機能する。
【0123】
吐出制御部42は、主に、CPU301の処理によって実現され、メディアの搬送位置を検出するエンコーダ380に同期して送られた画像データを受け取り、液体吐出ヘッド350における吐出条件を制御する。吐出制御部42は、処理部36から入力した補正後の画像データに基づいて、液体吐出ヘッド350による吐出条件(液体組成物の吐出タイミング、吐出量等)を制御する。本実施形態において吐出制御部42は、吐出制御手段の一例として機能する。
【0124】
照射制御部43は、主に、CPU301の処理によって実現され、光源360による樹脂前駆層への光の照射を制御する。本実施形態において照射制御部43は、照射制御手段の一例として機能する。
【0125】
加熱制御部44は、主に、CPU301の処理によって実現され、ヒータ370による樹脂前駆層への加熱を制御する。本実施形態において加熱制御部44は、加熱制御手段の一例として機能する。
【0126】
操作制御部49は、主に、CPU301の処理によって実現され、操作部390に対する各種操作により生成された信号をCPU301が処理することによって実現される。本実施形態において操作制御部49は、操作制御手段の一例として機能する。
【0127】
また、上述した層形成制御部40によって制御される層形成部330は、搬送機構340、液体吐出ヘッド350、光源360及びヒータ370をそれぞれ制御して、少なくとも電極合材層上又は集電体上に層を形成する。また層形成部330は、センサ335による電極合材層の端部に係る検出結果に基づき、少なくとも電極合材層上又は集電体320上に機能層を形成する。本実施形態において層形成部330は、層形成手段の一例として機能する。
【0128】
●印刷関連情報標管理テーブル●
図14は、印刷関連情報管理テーブルの一例を示す概念図である。なお、以下に説明するデータテーブルは一例であり、これに限るものではない。記憶部3000には、図14に示されているような印刷関連情報管理テーブルによって構成された印刷関連情報管理DB3001が構築されている。印刷関連情報管理テーブルでは、印刷ジョブIDごとに、印刷関連情報に含まれる印刷画像データ、ページサイズ及びページ数(印刷長)が関連付けられて記憶、管理されている。これらのうち、印刷ジョブIDは、電極製造装置3において実行される電極を製造するための印刷ジョブを識別する識別情報である。印刷画像データは、機能層を形成する際に吐出制御部42が液体吐出ヘッド350に対して送る印刷画像データの種類を表し、「90%ベタ画像」「80%ベタ画像」等のデータが管理される。ページサイズは、電極合材層の搬送方向長さを表し、液体吐出ヘッド350で制御されるライン数等で表される。本実施形態では、ライン数は、液体吐出ヘッド350における1回の吐出が1ラインとなる。ページ数は、印刷ジョブIDで示される印刷ジョブで印刷実行される電極合材層(ページ)の数を表す。なお、印刷関連情報管理テーブルで管理される印刷関連情報は、上記に限らない。
【0129】
本実施形態において印刷関連情報管理テーブル(印刷関連情報管理DB3001)は、印刷関連情報管理手段の一例として機能する。
【0130】
●エンコーダ検出位置管理テーブル●
図15は、エンコーダ検出位置管理テーブルの一例を示す概念図である。なお、以下に説明するデータテーブルは一例であり、これに限るものではない。記憶部3000には、図15に示されているようなエンコーダ検出位置管理テーブルによって構成されたエンコーダ検出位置管理DB3002が構築されている。エンコーダ検出位置管理テーブルでは、印刷ジョブIDごとに、ページ数(印刷長)、エッジ位置、エンコーダ検出位置及びメディアサイズ(電極合材層)が関連付けられて記憶、管理されている。このエンコーダ検出位置管理テーブルでは、センサ335により検出された電極合材層(メディア)の搬送方向における先端部及び後端部の通過タイミングにおいて、エンコーダ380により検出されたエンコーダ検出位置の履歴データが管理されている。これらのうち、エッジ位置は、センサ335によって検出された電極合材層の先端及び後端を表す。エンコーダ検出位置は、センサ335によって検出された電極合材層の先端及び後端のそれぞれの位置を表し、ページサイズと同様に、液体吐出ヘッド350で制御されるライン数等で表される。メディアサイズ(電極合材層)は、エンコーダ検出位置で管理される、エッジ位置後端に対応する値からエッジ位置先端に対応する値を引いた差分として与えられる。これにより、同一の電極合材層(メディア)の各ページにおける先端及び後端のエンコーダ検出位置の差分より、エンコーダ単位での電極合材層(メディア)のサイズ(以下、単に「メディアサイズ」と呼ぶ)がわかる。この情報を元に、上述したリアルタイム処理を行うことで、メディアサイズに合わせた画像形成を行うことが可能になる。具体的には、1ページ目ではエンコーダ検出位置の先端の値が102、後端の値が1105であるため、メディアサイズとしてはその差分値である1003となる。この情報により前述のリアルタイムで処理を行うライン数が決定する。2ページ以降も同様である。
【0131】
本実施形態においてエンコーダ検出位置管理テーブル(エンコーダ検出位置管理DB3002)は、エンコーダ検出位置管理手段の一例として機能する。
【0132】
〔実施形態の処理又は動作〕
次に、図16及び図17を用いて、実施形態に係る電極製造システムにおける各処理又は動作を説明する。
【0133】
<情報管理装置と電極製造装置との間で実行されるシーケンス処理>
図16は、実施形態に係るページ印刷処理を含むシーケンス図である。なお、以下に示すシーケンス図では、情報管理装置2と電極製造装置3との間において予め必要な通信セッション等が確立し、通信可能な状態であることを前提とする。
【0134】
まず、情報管理装置2の操作受付部22は、利用者(ユーザ)により印刷画像データの入力を受け付ける(ステップS11)。具体的には、操作受付部22は、例えば、利用者が使用する通信端末等の情報管理装置2のディスプレイ207上に起動された印刷アプリ上で、印刷画像データの入力を受け付ける。
【0135】
次に、操作受付部22は、ページサイズの入力を受け付ける(ステップS12)。具体的には、操作受付部22は、各印刷ジョブで実行される印刷画像データのページサイズの入力を受け付ける。
【0136】
続いて、操作受付部22は。ページ数(印刷長)の入力を受け付ける(ステップS13)。具体的には、操作受付部22は、各印刷ジョブで実行される印刷画像データのページ数(印刷長)の入力を受け付ける。ステップS12及びS13において、利用者は、「ページサイズ+α」の設定値を予め決まっている印刷長として与えるようにしてもよい。
【0137】
なお、上述したステップS11-S13までの処理は、図8等で説明した第1の画像処理(事前処理)に相当し、事前処理に関して、操作受付部22は、1回の入力操作として受け付けてもよいし、他の項目の入力を追加で受け付けてもよい。そして、事前処理では、利用者は、予め印刷において予めわかっている(算出された)値を用いて情報管理装置2に対して入力することになる。
【0138】
次に、送受信部21は、電極製造装置3に対して印刷実行要求を送信する(ステップS14)。これにより、電極製造装置3の送受信部31は、情報管理装置2が送信した印刷実行要求を受信する。このとき、印刷実行要求には、印刷ジョブを識別する印刷ジョブID、ステップS11-S13で入力された印刷画像データ、ページサイズ情報、ページ数(印刷長)情報が含まれる。
【0139】
次に、電極製造装置3の記憶読出部39は、ステップS14で受信した印刷実行要求に含まれる印刷関連情報を記憶する(ステップS15)。具体的には、記憶読出部39は、印刷実行要求に含まれる印刷ジョブID、印刷画像データ、ページサイズ情報、ページ数(印刷長)情報を、印刷関連情報管理DB3001(図14参照)の印刷ジョブIDに対応する項目にそれぞれ記憶する。
【0140】
<ページ印刷処理>
続いて、電極製造装置3で行われるページ印刷処理について説明する。ステップS16では、ステップS15により記憶された印刷関連情報に基づいて、第2の画像処理としてのリアルタイム処理を含むページ印刷処理が実行される。
【0141】
<<ページ印刷処理の詳細>>
ここで、ステップS16のページ印刷処理の詳細について説明する。図17は、実施形態に係るページ印刷処理の一例を示すフローチャートである。なお、以降に示すフローチャートは、本実施形態を説明するための一例であり、これに限らない。
【0142】
まず、電極製造装置3の処理部36は、第1の処理としての事前処理を行う(ステップS16-1)。具体的には、処理部36は記憶読出部39を介して印刷関連情報管理DB3001(図14参照)に記憶された印刷ジョブIDに関連付けられた印刷関連情報を読み出し、図8に示した所定のタイミングで事前処理を実行する。このとき、処理部36は、事前処理として、所定の印刷ジョブIDに関連付けられた全ページ分の事前処理を行っておく。
【0143】
次に、判定部35は、ページ先端を検出したかを判定する(ステップS16-2)。具体的には、判定部35は、センサ335からの検出結果である電極合材層(メディア)の先端を示すセンサ出力を検出したかを判定(判断)する。ここで、ページとは、上述したように、所定の印刷ジョブで印刷実行される電極合材層(メディア)と同様の意味をもつ。
【0144】
ページ先端を検出したと判定した場合(ステップS16-2:YES)、処理部36は、第2の画像処理としてのリアルタイム処理及び印刷実行処理を実行する(ステップS16-3)。具体的には、処理部36は、ステップS16-1で実行した事前処理に係る画像データに対して、リアルタイム処理として印刷画像データの生成、及び液体吐出ヘッド350による機能層形成のための処理を行う。このとき、処理部36は記憶読出部39を介してエンコーダ検出位置管理DB3002(図15参照)で管理されている印刷ジョブIDに関連付けられた各項目に、センサ335によって検出された検出結果(検出位置)を記憶する。続いて、処理部36は、検出された電極合材層の先端及び後端の各検出結果からメディアサイズを算出して対応するメディアサイズ(電極合材層)の項目に記憶する。
【0145】
その後、処理部36は、層形成部330が層形成制御部40を介して、生成した印刷画像データの液体吐出ヘッド350による機能層形成処理を行うよう処理をする。このとき、リアルタイム処理に係る画像データの各ページのメディアサイズは、ステップS16-3で記憶されたエンコーダ検出位置管理DB3002(図15参照)で記憶したメディアサイズ(電極合材層)の各ページに対応する値が読み出されて用いられる。
【0146】
他方、ページ先端を検出していないと判定した場合(ステップS16-2:NO)、処理部36は、ステップS16-2の処理に戻る。
【0147】
次に、判定部35は、ページ後端を検出したかを判定する(ステップS16-4)。具体的には、判定部35は、取得部33を介して取得された電極合材層(メディア)の後端を示すセンサ出力を検出したかを判定する。
【0148】
ページ後端を検出したと判定した場合(ステップS16-4:YES)、判定部35は、次のステップへ移行する。
【0149】
他方、ページ後端を検出していないと判定した場合(ステップS16-4:NO)、処理部36は、ステップS16-3の処理に戻る。
【0150】
続いて、判定部35は、全ページ分印刷したかを判定する(ステップS16-5)。全ページ分印刷したと判定した場合(ステップS16-5:YES)、判定部35は処理部36を介して印刷実行を終了させてこのフローを抜ける。
【0151】
他方、全ページ分印刷していないと判定した場合(ステップS16-5:NO)、判定部35はステップS16-2の処理に戻り、次のページに対するリアルタイム処理を待つ。
【0152】
図16に戻り、送受信部31は情報管理装置2に対して、ステップS14で受信した印刷実行要求に対する応答として、印刷実行が終了したことを示す印刷実行応答を送信する(ステップS17)。これにより、情報管理装置2の送受信部21は、電極製造装置3が送信した印刷実行応答を受信する。但し、ステップS17の処理は省略されてもよい。なお、ここまでに説明した図16に示したシーケンス図は一例であり、これに限らない。
【0153】
本実施形態に係る電極製造システムでは、例えば、上述したステップS14及びS17の各処理が通信ネットワーク150を介して実行される場合、情報管理装置2と電極製造装置3との間に他の装置等が存在してもよい。つまり、情報管理装置2と電極製造装置3との間で送受信される各情報(データ)は、一度他の装置等を介して送受信されるような構成であってもよい。上述した構成は、情報管理装置2と電極製造装置3との間に他の処理ステップが存在した場合でも適用することが可能である。
【0154】
〔実施形態の主な効果〕
以上説明したように本実施形態によれば、電極製造装置3は、集電体320の搬送に伴い移動する電極合材層の端部をセンサ335からの検出結果である電極合材層(メディア)の先端を示すセンサ出力を検出し(ステップS16-2)、センサ335による電極合材層の端部に係る検出結果に基づき、印刷画像データに対して液体吐出ヘッド350による電極合材層の少なくとも一部又は集電体320の少なくとも一部への機能層形成処理を行う(ステップS16-3)。これにより、電極を構成する電極合材層の長さに誤差が生じたものが搬送される場合があっても、電極合材層上又は集電体上に機能層を形成する際の電極製造装置の処理負荷の増大を抑制することが可能になる、という効果を奏する。
【0155】
<枠状の機能層を形成する場合の課題>
続いて、上記実施形態に係る方法を用いて、電極合材層の周囲に枠状の機能層を形成する場合の課題について説明する。
【0156】
上記実施形態によれば、搬送される電極合材層の搬送方向の長さ(以下、「搬送方向長」という。)に誤差が生じる場合であっても、センサによって電極合材層の端部を検出することにより、各電極合材層に合わせた機能層の形成を行うことができると共に、機能層を形成する際の電極製造装置の処理負荷の増大を抑制することができる。しかしながら、斯かる実施形態の方法を用いて電極合材層の周囲に枠状の機能層を形成する場合、次のような課題が生じる。
【0157】
例えば、液体電解質を固体電解質に変えた全固体電池においては、図18に示されるように、正極層400と負極層600が電解質層501を介して交互に積層されることにより発電要素が構成される。この場合、正極層400は、2つの正極合材層401a,401bと、これらの間に介在する正極集電層402とによって構成され、負極層600は、2つの負極合材層601a,601bと、これらの間に介在する負極集電層602とによって構成される。また、正極合材層401a,401bの周囲には、正極合材層401a,401bと負極合材層601a,601bとの短絡を防止するため、機能層としての絶縁枠700が形成される。
【0158】
図19に示されるように、絶縁枠700は、電極合材層である正極合材層401a(401b)の全周を囲むように形成される。また、絶縁枠700は、正極合材層401a(401b)との間に隙間を介在させて形成されてもよいが、基本的に正極合材層401a(401b)に対して隙間なく形成される。また、絶縁枠700は、発電要素を構成する各層がプレスされることなどによって、正極合材層401a(401b)に対して部分的に重なるように配置されてもよい。
【0159】
ここで、このような絶縁枠700を正極合材層401a(401b)の周囲に形成する方法として、正極合材層401a(401b)の形状に合致する絶縁枠700をあらかじめ作成しておき、あらかじめ作成した絶縁枠700を正極合材層401a(401b)の周囲に配置する方法がある。しかしながら、この方法の場合は、正極合材層401a(401b)の縁に対して絶縁枠700を高精度に位置合わせすることは難しいため、高品質な電極が得られにくい課題がある。また、この方法の場合、絶縁枠700を、正極合材層401a(401b)のサイズに応じて個別に作成しておく必要があるため、現実的な方法として採用し難いといった課題もある。
【0160】
これに対して、上記実施形態のように、インクジェット技術を用いる方法によれば、絶縁枠700を正極合材層401a(401b)の周囲に高精度に位置合わせして形成することが可能である。また、正極合材層401a(401b)のサイズ(搬送方向長)にばらつきに対しても、センサによって正極合材層401a(401b)の端部を検出することにより、正極合材層401a(401b)のサイズに合わせた絶縁枠700を形成できるので、正極合材層401a(401b)のサイズごとに絶縁枠700をあらかじめ用意しておく必要がなくなる。
【0161】
しかしながら、上記実施形態に係る方法により絶縁枠700を形成すると、絶縁枠700の搬送方向の後端部分が短くなり、所望の枠幅が得られない課題が生じ得る。すなわち正極合材層401a(401b)の搬送方向長が基準長さよりも長さβ分だけ短い場合に、図20に示されるように、絶縁枠700の後端部分の搬送方向長を、正極合材層401a(401b)の搬送方向長に応じて長さβ分だけ短くすると、絶縁枠700の後端部分の幅W1が所望の枠幅(搬送方向長)W0よりも小さくなる。この場合、絶縁枠700による所望の絶縁機能が得られなくなる虞がある。
【0162】
そこで、以下に説明する本発明の実施形態においては、絶縁枠の搬送方向長を正極合材層の搬送方向長に合わせつつ、絶縁枠の後端部分の搬送方向長(幅)を適正に確保できるように、図21又は図22に示される方法により絶縁枠を形成する。以下、図21図22に基づき、本発明の実施形態における絶縁枠の形成方法について説明する。
【0163】
〔絶縁枠の形成方法〕
図21及び図22において、(a)は、正極合材層の搬送方向長が基準長である場合の複数に分割された絶縁枠700の画像データの概念図、(b)は、正極合材層の搬送方向長が基準長よりも短い場合の分割された絶縁枠700の画像データの概念図である。ここでは、絶縁枠700の画像データが、搬送方向に渡って分割された複数の面により構成される。なお、ここでいう「面」とは、図9に示される1面、2面等と同じ定義の面を意味する。具体的に、図21及び図22の各例においては、絶縁枠700の画像データが、先端画像である1面と、中間画像である2面~5面と、後端画像である6面の、合計6つの面の各画像データにより構成される。
【0164】
先端画像(1面)は、正極合材層の搬送方向の先端よりも前方の領域に形成される前枠部分70aを少なくとも含む画像である。一方、後端画像(6面)は、正極合材層の搬送方向の後端よりも後方の領域に形成される後枠部分70bを少なくとも含む画像である。また、中間画像(2面~5面)は、前枠部分70a及び後枠部分70bを含まず、正極合材層に対して搬送方向とは交差する方向に位置する横枠部分70cのみを含む画像である。
【0165】
まず、図21の例について説明すると、この例においては、絶縁枠700を正極合材層の搬送方向長に応じて短くするにあたって、図21(b)のように、4つの中間画像(2面~5面)のうち、搬送方向の前方から4番目の中間画像(5面)の搬送方向長を短くしている。
【0166】
このように、絶縁枠700を短くする際、絶縁枠700の後端画像(6面)の搬送方向長を短くするのではなく、中間画像(5面)の搬送方向長を短くすることにより、後端画像(6面)における後枠部分70bの搬送方向長(幅)W0を変えることなく、絶縁枠700の搬送方向長を調整できる。
【0167】
搬送方向長を短くする中間画像は、搬送方向の前方から4番目の中間画像(5面)である場合に限らず、他の中間画像(2面~4面)のいずれかであってもよい。また、短くする部分は、中間画像の先端側の部分であってもよいし、後端側の部分であってもよい。ただし、中間画像をリアルタイム処理する際の処理時間の余裕度の観点から、短く処理される中間画像は、搬送方向において最も後方の中間画像であることが好ましく、さらに、短く処理される部分は、最も後方の中間画像のうちの後端側の部分であることが好ましい。
【0168】
次に、図22の例について説明する。
【0169】
図22の例においては、絶縁枠700を正極合材層の搬送方向長に応じて短くするにあたって、中間画像(2面~5面)ではなく、後端画像(6面)の搬送方向長を短くしている。ただし、短くする部分は、後端画像(6面)の後枠部分70bではなく、後枠部分70bを除く先端側の部分としている。
【0170】
このように、後端画像(6面)の先端側の部分を短くして、絶縁枠700の搬送方向長を調整してもよい。すなわち、後端画像(6面)の先願側の部分であれば短くしても、後端画像(6面)における後枠部分70bの搬送方向長W0に影響が出ないので、後枠部分70bの搬送方向長(幅)W0を変えることなく、絶縁枠700の搬送方向長を調整できる。
【0171】
以上のように、図21及び図22の各例においては、絶縁枠700搬送方向長を正極合材層の長さに合わせて調整する場合に、中間画像(2面~5面)のいずれか、又は、後端画像(6面)の先端側の部分を短くすることにより、後端画像(6面)における後枠部分70bの搬送方向長W0を変えることなく適正に確保できる。
【0172】
ところで、絶縁枠700の絶縁機能を確保するには、後端画像(6面)における後枠部分70bの搬送方向長ほか、先端画像(1面)における前枠部分70aの搬送方向長も適正に確保する必要がある。従って、本実施形態においては、図23に示される前枠部分70a及び後枠部分70bを除く、正極合材層401の搬送方向の先端及び後端の間の範囲Hにおいて、絶縁枠700の搬送方向長を調整する。
【0173】
このように、正極合材層401の搬送方向の先端及び後端の間の範囲Hにおいて、絶縁枠700の搬送方向長を調整することにより、前枠部分70a及び後枠部分70bのそれぞれの搬送方向長に影響を与えることなく、絶縁枠700を正極合材層の搬送方向長に応じて形成できるようになる。これにより、所望の幅の絶縁枠700が得られるようになるので、正極合材層のサイズに応じた良好な絶縁機能を確保できるようになる。
【0174】
続いて、図24及び図25は、絶縁枠700の前枠部分70a及び後枠部分70bが太い場合の、絶縁枠700の形成方法を示す図である。
【0175】
この場合、絶縁枠700の画像データを構成する面の数は、図21及び図22と同じ6つであるが、先端画像及び後端画像がそれぞれ2つの面の画像データにより構成される。すなわち、この場合の絶縁枠700の画像データは、先端画像である1面及び2面と、中間画像である3面及び4面と、後端画像である5面及び6面の各画像データにより構成される。
【0176】
このように、先端画像及び後端画像がそれぞれ2つの面の画像データにより構成される場合であっても、絶縁枠700搬送方向長を正極合材層の長さに合わせて調整する場合は、図21及び図22の例と同じように、前枠部分70a及び後枠部分70bを除く、これらの間の範囲において搬送方向長を調整すればよい。例えば、図24(b)のように、2つの中間画像(3面、4面)のうちの、後方の中間画像(4面)の搬送方向長を短くしたり、図25(b)のように、2つの後端画像(5面、6面)のうちの、前方の後端画像(5面)の先端側の部分を短くしたりすればよい。これにより、絶縁枠700の前枠部分70a及び後枠部分70bのそれぞれの搬送方向長に影響を与えることなく、これらの搬送方向長を適正に確保できるようになる。また、先端画像及び後端画像が3つ以上の面の画像データにより構成される場合も、同じようにすればよい。
【0177】
<印刷処理及び動作のタイミング>
続いて、本実施形態に係る電極製造装置によって絶縁枠を形成する際の各処理又は動作のタイミングについて説明する。
【0178】
図26は、図21のように、中間画像(5面)を短くすることによって絶縁枠700の搬送方向長を調整する場合の印刷処理及び動作のタイミングチャートを示す図である。
【0179】
図26に示されるように、印刷処理が開示されると、まず、電極製造装置3の処理部36(図13B参照)によって、第1の画像処理としての事前処理が行われる。事前処理においては、絶縁枠700の画像データを構成する6つの画像データ(1面~6面)の階調処理を含む画像処理が行われる。なお、事前処理は、印刷開始前、あるいは、第2の処理としてのリアルタイム処理前までに完了する。
【0180】
その後、正極合材層(メディア)が搬送され、正極合材層の搬送方向の先端がセンサ335(図4参照)の下方に到達すると、センサ信号が“Hi”(High)状態となる。
【0181】
センサ信号が“Hi”(High)状態になると、処理部36が、第2の処理として、第1のリアルタイム処理を開始する。第1のリアルタイム処理は、上述のリアルタイム処理と基本的に同じ処理である。すなわち、第1のリアルタイム処理においては、事前処理に用いられる画像データを繰り返して読み出すことが可能な単位で画像が処理される。
【0182】
その後、正極合材層(メディア)の後端がセンサ335によって検出され、センサ信号が“Hi”状態から“Lo”(Low)状態に変化すると、処理部36が、センサ335の検出情報に基づき、正極合材層(メディア)の搬送方向長に合った絶縁枠700の搬送方向長を算出する第2の処理としての第2のリアルタイム処理を行う。具体的に、第2のリアルタイム処理においては、正極合材層(メディア)の搬送方向長に基づいて、短くする画像の面番号の算出(特定)及び中間画像から後端画像への切替タイミングの設定などの処理が行われる。すなわち、センサ335によって正極合材層(メディア)の後端が検出されると、その時点で不足している中間画像の画像データ及び後端画像のデータのほか、中間画像から後端画像への切替タイミング、搬送方向長を調整すべき(短くすべき)面番号がわかるので、これらの情報に基づいて、処理部36が、どの画像データを短くし、どのタイミングで中間画像から後端画像へ切り替えるべきかを決定する第2のリアルタイム処理を行う。この場合は、算出された搬送方向長に基づいて、4つの中間画像(面2~面5)のうち、搬送方向の前方から4番目の中間画像(5面)の搬送方向長を短くする処理が行われる。
【0183】
続いて、第2のリアルタイム処理の実行に応じて、液体吐出ヘッド350から正極合材層(メディア)の周囲へ絶縁枠700を形成するための液体組成物の吐出動作が開始される。このとき、液体吐出ヘッド350の吐出動作が、第2のリアルタイム処理による調整後の画像データに基づいて制御されることにより、正極合材層(メディア)の搬送方向長に合った絶縁枠700が形成される。
【0184】
図27は、図22のように、後端画像(6面)を短くすることによって絶縁枠700の搬送方向長を調整する場合の印刷処理及び動作のタイミングチャートを示す図である。
【0185】
この場合、第2のリアルタイム処理において、後端画像(6面)の搬送方向長を短くする処理が行われる点のみ、上記図26のタイミングチャートと異なる。それ以外は、図26のタイミングチャートと同じである。
【0186】
〔絶縁枠を形成する際の処理又は動作〕
続いて、図28及び図29を参照しつつ、実施形態に係る電極製造システムにおいて絶縁枠を形成する際の各処理又は動作について説明する。
【0187】
<情報管理装置と電極製造装置との間で実行されるシーケンス処理>
まず、図28のように、情報管理装置2の操作受付部22(図13A参照)は、利用者による正極合材層(メディア)の印刷画像データ、ページサイズ、ページ数(印刷長)の入力を受け付ける処理を行う(ステップS21、ステップS22、ステップS23)。これらの情報の受付処理の詳細は、図16のステップS11、ステップS12、ステップS13と同じであるので説明を省略する。
【0188】
また、操作受付部22は、利用者による絶縁枠の枠情報の入力と、絶縁枠の画像データの入力も受け付ける処理を行う(ステップS24、ステップS25)。このとき、操作受付部22は、正極合材層(メディア)の印刷画像データ、ページサイズ、ページ数(印刷長)の各種情報と合わせて1回の入力操作により受け付けてもよいし、入力の追加により受け付けてもよい。また、正極合材層(メディア)の印刷と絶縁枠の印刷の両方が行われる場合は、それぞれの画像データを合成してもよい。
【0189】
次に、情報管理装置2の送受信部21(図13A参照)は、電極製造装置3に対して印刷実行要求を送信する(ステップS26)。これにより、電極製造装置3の送受信部31(図13B参照)は、情報管理装置2が送信した印刷実行要求を受信する。このとき、印刷実行要求には、印刷ジョブを識別する印刷ジョブID、ステップS21-S25で入力された印刷画像データ、ページサイズ情報、ページ数(印刷長)情報、絶縁枠の枠情報及び絶縁枠の画像データが含まれる。
【0190】
そして、電極製造装置3の記憶読出部39(図13B参照)は、ステップS26で受信した印刷実行要求に含まれる印刷関連情報を記憶する(ステップS27)。具体的には、記憶読出部39は、印刷実行要求に含まれる印刷ジョブID、印刷画像データ、ページサイズ情報、ページ数(印刷長)情報、絶縁枠の枠情報及び絶縁枠の画像データを、印刷関連情報管理DB3001に記憶する。そして、ステップS27により記憶された印刷関連情報に基づいて、第1の画像処理としての事前処理と、第2の画像処理としてのリアルタイム処理を含むページ印刷処理が実行される(ステップS28)。
【0191】
<<ページ印刷処理の詳細>>
ここで、ステップS28のページ印刷処理の詳細について説明する。図29は、実施形態に係るページ印刷処理の一例を示すフローチャートである。
【0192】
図29に示されるように、まず、電極製造装置3の処理部36は、第1の処理としての事前処理を行う(ステップS28-1)。具体的には、処理部36が記憶読出部39を介して印刷関連情報管理DB3001に記憶された印刷ジョブIDに関連付けられた印刷関連情報を読み出し、所定の印刷ジョブIDに関連付けられた絶縁枠の事前処理を実行する。
【0193】
事前処理においては、図12に示されるCPU301がSSD306又はRAM303から画像データを読み出して次の処理を行う。事前処理において行われる処理は、絶縁枠の先端画像、中間画像、後端画像の生成と、これらの画像データの階調処理などの基本的な画像処理と、先端画像及び後端画像の各面数の算出である。生成された先端画像、中間画像、後端画像の各画像データはRAM303へ保存される。
【0194】
次に、電極製造装置3の判定部35(図13B参照)は、正極合材層(メディア)のページ先端を検出したかを判定する(ステップS28-2)。すなわち、判定部35は、センサ335からの検出結果である正極合材層(メディア)の先端を示すセンサ出力を検出したかを判定(判断)する。
【0195】
判定部35がページ先端を検出したと判定した場合(ステップS28-2:YES)、処理部36は、第1のリアルタイム処理を実行する(ステップS28-3)。具体的には、処理部36は、ステップS28-1で実行した事前処理に係る画像データに対して、第1のリアルタイム処理として印刷画像データの生成、及び液体吐出ヘッド350による絶縁枠形成のための処理を行う。このとき、処理部36は記憶読出部39を介してエンコーダ検出位置管理DB3002で管理されている印刷ジョブIDに関連付けられた各項目に、センサ335によって検出された検出結果(検出位置)を記憶する。続いて、処理部36は、検出された電極合材層の先端及び後端の各検出結果からメディアサイズを算出して対応するメディアサイズ(正極合材層)の項目に記憶する。
【0196】
他方、判定部35がページ先端を検出していないと判定した場合(ステップS28-2:NO)、処理部36は、ステップS28-2の処理に戻る。
【0197】
次に、判定部35は、ページ後端を検出したかを判定する(ステップS28-4)。具体的には、判定部35は、取得部33(図13B参照)を介して取得された正極合材層(メディア)の後端を示すセンサ出力を検出したかを判定する。
【0198】
判定部35がページ後端を検出したと判定した場合(ステップS28-4:YES)、処理部36は、第2のリアルタイム処理を実行する(ステップS28-5)。他方、判定部35がページ後端を検出していないと判定した場合(ステップS28-4:NO)、処理部36は、ステップS28-3の処理に戻る。
【0199】
第2のリアルタイム処理へ移行した場合、処理部36は、絶縁枠の搬送方向長の算出ステップ(ステップS28-5a)と、絶縁枠の搬送方向長を正極合材層の搬送方向長に合わせて調整するための各種パラメータの算出ステップ(ステップS28-5b)と、絶縁枠の各種設定及び処理ステップ(ステップS28-5c)を実行する。
【0200】
絶縁枠の搬送方向長の算出ステップ(ステップS28-5a)においては、処理部36が、センサ335の検出情報に基づいて行う。すなわち、センサ335が正極合材層(メディア)の搬送方向の後端を検出すると、正極合材層(メディア)の搬送方向長が決定されるので、処理部36が、センサ335の検出情報に基づき、正極合材層(メディア)の搬送方向長に合った絶縁枠の搬送方向長を算出する。なお、算出される絶縁枠の搬送方向長は、正極合材層(メディア)の搬送方向長に一致する長さに限らず、正極合材層の搬送方向長よりも長い値としてもよい。
【0201】
各種パラメータの算出ステップ(ステップS28-5b)は、ページ後端を検出する検出ステップ(ステップ28-4)による検出結果に基づいて、絶縁枠の搬送方向長を正極合材層(メディア)の搬送方向に応じて調整(短く)する調整ステップである。具体的に、各種パラメータの算出ステップにおいては、処理部36が、絶縁枠の全面数、搬送方向長が調整される調整用画像の面番号、最も前方に位置する後端画像の面番号、印刷画像を中間画像から後端画像へ切り替えるタイミング、調整用画像の調整後のライン数などの各種パラメータを算出する。
【0202】
絶縁枠の各種設定及び処理ステップ(ステップS28-5c)においては、処理部36が、各種パラメータの算出ステップによって算出された調整用画像の面番号、調整用画像の調整後のライン数を、絶縁枠の形成に用いるパラメータとして設定する。また、処理部36は、各種パラメータ算出ステップによって算出された中間画像から後端画像への切替タイミングに基づいて、印刷画像を中間画像から後端画像へ切り替える処理を行う。
【0203】
続いて、絶縁枠の各種設定及び処理ステップによって設定された各種パラメータ及び画像切替タイミングに基づいて、層形成部330が絶縁枠を形成(印刷)する層形成ステップが行われる(ステップ28-6)。すなわち、処理部36は、第2リアルタイム処理によって調整された画像データに基づいて層形成部330を制御し、液体吐出ヘッド350が機能層形成処理を行うよう処理をする。これにより、正極合材層(メディア)の搬送方向長に応じて調整された絶縁枠が形成される。
【0204】
その後、判定部35が全ページ分の絶縁枠の印刷が終了したと判定した場合(ステップS28-7:YES)、判定部35は処理部36を介して印刷実行を終了させてこのフローを抜ける。
【0205】
他方、判定部35が全ページ分印刷されていないと判定した場合(ステップS28-7:NO)、判定部35はステップS28-2の処理に戻り、次のページに対するリアルタイム処理を待つ。
【0206】
また、図28に戻り、送受信部31は情報管理装置2に対して、ステップS26で受信した印刷実行要求に対する応答として、印刷実行が終了したことを示す印刷実行応答を送信する(ステップS29)。これにより、情報管理装置2の送受信部21は、電極製造装置3が送信した印刷実行応答を受信する。なお、ステップS29の処理は省略されてもよい。
【0207】
<絶縁枠の枠情報の例>
図30は、入力される枠情報の一例を示す図である。
【0208】
図30のように、枠情報としては、絶縁枠700の先端側、後端側、左端側、右端側のそれぞれの部分の枠幅Wa,Wb,Wc,Wdが挙げられる。これらの枠幅Wa,Wb,Wc,Wdの情報に基づいて、処理部36が事前処理とリアルタイム処理とを含むページ印刷処理(図28のステップS28)を実行することにより、所定の枠幅の絶縁枠700が形成される。また、入力された枠幅に基づいて、絶縁枠700の先端画像及び後端画像のそれぞれの面数も算出される。具体的には、絶縁枠700の先端画像の面数は、入力された先端側の幅、搬送速度、液体吐出ヘッドの駆動周波数(吐出周波数)に基づいて算出される。同じように、絶縁枠700の後端画像の面数も、入力された後端側の幅、搬送速度、液体吐出ヘッドの駆動周波数(吐出周波数)に基づいて算出される。
【0209】
図31は、入力される枠情報の他の例を示す図である。
【0210】
図31のように、絶縁枠700は、内側に円弧状の角部を有する形状であってもよい。この場合、枠情報として、絶縁枠700の先端左側の角部、後端左側の角部、先端右側の角部、後端右側の角部のそれぞれの曲率半径Ra,Rb,Rc,Rdが利用者により入力される。これらの曲率半径Ra,Rb,Rc,Rdの情報に基づいて、処理部36が事前処理とリアルタイム処理とを含むページ印刷処理(図28のステップS28)を実行することにより、所定の曲率半径の角部を有する絶縁枠700が形成される。
【0211】
<絶縁枠の画像データの例>
図32は、入力される絶縁枠の画像データの一例を示すイメージ図である。
【0212】
図32のように、絶縁枠700の形状が、矩形などのあらかじめ設定された形状とは異なる形状の枠である場合は、利用者が用意した絶縁枠700の画像データを入力する。この場合、画像解析ソフトなどにより絶縁枠700の先端側及び後端側の各枠幅Wa,Wbを検出し、検出された枠幅Wa,Wbが枠情報として設定される。
【0213】
<絶縁枠の先端画像及び後端画像の各面数の算出方法>
続いて、事前処理として行われる絶縁枠の面数の算出方法の一例について説明する。
【0214】
絶縁枠の面数は、あらかじめ決定されている枠幅及び各種印刷条件などを用いて算出される。具体的には、処理部36が、図33に示される1面あたりのライン数、搬送速度、液体吐出ヘッドの駆動周波数(吐出周波数)を参照し、これらの値に基づき、1面あたりの搬送方向長を算出する。次いで、処理部36が、1面あたりの搬送方向長で枠幅設定値を除算することにより、絶縁枠を構成する面の数が算出される。
【0215】
<調整用画像の各種パラメータの算出方法>
続いて、第2のリアルタイム処理によって算出される各種パラメータの算出方法の一例について説明する。
【0216】
まず、処理部36は、図34に示される絶縁枠の1面あたりのライン数及び搬送方向長を参照し、これらの値に基づき絶縁枠の全面数を算出する。そして、処理部36は、算出された全面数から後端画像の面数を減算することにより、短く調整される調整用画像の面番号を算出する。このとき、処理部36は、絶縁枠の先端画像又は後端画像の搬送方向長(幅)が短くならないように、センサ335による正極合材層の端部に係る検出結果(正極合材層の前端と後端の各位置)に基づき、正極合材層の搬送方向の先端及び後端の間の範囲において絶縁枠の搬送方向長を調整できる面番号を選択する。なお、図34の例では、調整用画像の面番号を、複数の中間画像のうちの、最も後方の中間画像の面番号としている。
【0217】
また、処理部36は、算出された全面数から後端画像の面数を減算してから面数を1つ加算することにより、後端画像のうち、最も前方に位置する後端画像の面番号を算出する。この後端画像の面番号に基づき、印刷画像を中間画像から後端画像へ切り替えるタイミングが算出される。さらに、処理部36は、下記式(1)を用いて調整用画像(この場合、短くする中間画像)の調整後のライン数を算出する。これにより、調整用画像の搬送方向長が決定される。
【0218】
調整用画像の調整後のライン数=(搬送方向長)-(1面当たりのライン数)×{(全面数)-1}・・・式(1)
【0219】
<処理部の詳細>
図35は、処理部36の詳細を示すブロック図である。
【0220】
図35に示されるように、処理部36は、第1の画像処理である事前処理を行う事前処理部800と、第2の画像処理であるリアルタイム処理を行うリアルタイム処理部900とを有する。
【0221】
事前処理部800は、絶縁枠を構成する画像データの階調処理などの画像処理を行う主処理部801と、絶縁枠の面数の算出を行う面数算出部802とを含む。
【0222】
リアルタイム処理部900は、事前処理に用いられる画像データを繰り返して読み出すことが可能な単位で画像を処理する第1のリアルタイム処理部901と、絶縁枠の搬送方向長を正極合材層の搬送方向長に合わせて調整するための各種パラメータの算出及び設定などを行う第2のリアルタイム処理部902とを含む。また、第2のリアルタイム処理部902には、パラメータ算出部903と、パラメータ設定部904と、画像切替部905とが含まれる。
【0223】
パラメータ算出部903は、面数算出部によって算出された面数と絶縁枠の搬送方向長に基づいて調整用画像の各種パラメータを算出する。パラメータ算出部903によって算出される各種パラメータには、絶縁枠の全面数、調整用画像の面番号、最も前方に位置する後端画像の面番号、印刷画像を中間画像から後端画像へ切り替えるタイミング、調整用画像の調整後のライン数などが含まれる。また、パラメータ算出部903は、調整用画像の面番号を算出する際、絶縁枠の前枠部分及び後枠部分の搬送方向長(幅)が短くならないように、正極合材層の搬送方向の先端及び後端の間の範囲において絶縁枠の搬送方向長を調整できる面番号を選択する。
【0224】
パラメータ設定部904は、パラメータ算出部903によって算出された調整用画像の面番号、調整用画像の調整後のライン数を、絶縁枠の形成に用いるパラメータとして設定する。設定されたパラメータに基づき、液体吐出ヘッド350から液体組成物が吐出されることにより、正極合材層の搬送方向長に応じて調整された絶縁枠が形成される。
【0225】
画像切替部905は、パラメータ算出部903によって算出された中間画像から後端画像への切替タイミングに基づいて、印刷画像を中間画像から後端画像へ切り替える処理を行う。
【0226】
以上のように、本発明の実施形態においては、絶縁枠の搬送方向長を正極合材層の長さに合わせて調整する際、絶縁枠の前枠部分及び後枠部分の搬送方向長(幅)が短くならないように、正極合材層の搬送方向の先端及び後端の間の範囲において絶縁枠の搬送方向長を調整することにより、前枠部分及び後枠部分の搬送方向長を適正に確保できるようになる。これにより、所望の幅の絶縁枠が得られるようになり、良好な絶縁機能を確保できるようになる。
【0227】
なお、本発明の実施形態は、正極合材層の周囲に枠状の機能層(絶縁枠)を形成する場合に限らず、枠状以外の機能層を形成する場合にも適用可能である。すなわち、機能層の一部が、電極合材層の搬送方向の先端よりも前方の領域、及び、電極合材層の搬送方向の後端よりも後方の領域の少なくとも一方の領域に形成される部分を含む構成であれば、電極合材層の搬送方向の先端及び後端の間の範囲において機能層の搬送方向長を調整することにより、機能層の先端側の部分及び後端側の部分の搬送方向長を変化させずに確保することが可能である。従って、本発明は、枠状以外の機能層の形成にも適用可能である。
【0228】
<画像調整処理のタイミング>
以下、第2のリアルタイム処理における画像調整処理のタイミングについて説明する。
【0229】
図36は、中間画像(5面)を短く調整する場合の第2のリアルタイム処理における調整処理のタイミングチャートを示す図である。この場合、第2のリアルタイム処理による中間画像(面5)の調整処理は、センサ335による正極合材層の後端検出タイミングt1から行えるようになる。すなわち、正極合材層の後端が検出されると、その時点で搬送方向長を調整すべき(短くすべき)面番号がわかるので、正極合材層の後端検出タイミングt1から中間画像(面5)の調整処理が行えるようになる。但し、中間画像(面5)の調整処理は、中間画像(面5)の印刷が開始される前に完了する必要がある。
【0230】
また、この例においては、第1のリアルタイム処理及び第2のリアルタイム処理を行う記憶媒体(メモリ)として、最大で4面分の画像処理が可能な比較的小さい容量の記憶媒体を用いている。このため、記憶媒体によって4面分の画像情報が記憶されている場合は、それ以降に記憶領域に空き容量が生じた時点で画像処理が可能となる。従って、第2のリアルタイム処理による中間画像(面5)の調整処理は、先端画像(1面)の印刷処理が実行されてその分の空き容量が生じたタイミングt2から開始可能となる。すなわち、記憶媒体を用いて1面~4面までの第1のリアルタイム処理を行った場合は、その後、先端画像(1面)の印刷処理が実行されることにより、記憶領域に1面分の空き容量が生じるので、その空き容量を用いて第2のリアルタイム処理による中間画像(面5)の調整処理を行うことが可能となる。
【0231】
しかしながら、上記の通り、中間画像(面5)の調整処理は、センサ335による正極合材層の後端検出タイミングt1からしか行えない制約がある。このため、この場合における中間画像(面5)の調整処理開始タイミングt3は、早くても、正極合材層の後端検出タイミングt1となる。
【0232】
次に、図37は、第2のリアルタイム処理における調整処理の別のタイミングチャートを示す図である。
【0233】
この場合、図36の例に比べて、先端画像(面1)の印刷開始タイミングがセンサ335による正極合材層の後端検出タイミングt1よりも遅くなっている。すなわち、センサ335から液体吐出ヘッド350までの搬送距離が長い場合、あるいは、正極合材層の搬送速度が遅い場合は、センサ335によって正極合材層の先端が検出されてから正極合材層の先端が液体吐出ヘッド350へ至るまでの時間が長くなるため、先端画像(面1)の印刷開始タイミングがセンサ335による正極合材層の後端検出タイミングt1よりも遅くなる。従って、この場合、先端画像(面1)の印刷処理が開始され、記憶領域にその分の空き容量が生じるタイミングt2も、センサ335による正極合材層の後端検出タイミングt1の後となる。
【0234】
一方で、図37の例においても、第2のリアルタイム処理による中間画像(面5)の調整処理は、基本的にセンサ335による正極合材層の後端検出タイミングt1から行えるようになる。しかしながら、この場合、正極合材層の後端が検出されても、記憶領域に空き容量が生じなければ、第2のリアルタイム処理による中間画像(面5)の処理を開始できない。従って、図37の例においては、先端画像(面1)の印刷処理が行われることによってその分の空き容量が発生したタイミングt2から、第2リアルタイム処理による中間画像(面5)の調整処理が行えるようになる(タイミングt3)。
【0235】
図38は、第2のリアルタイム処理における調整処理のさらに別のタイミングチャートを示す図である。
【0236】
この場合は、第1のリアルタイム処理及び第2のリアルタイム処理に用いる記憶媒体として、比較的容量の大きい媒体を用いている。このため、上記のような、面1の印刷処理によって生じた空き容量を利用するといった制約がない。従って、先端画像(面1)の印刷処理が開始される前t2から、第2リアルタイム処理による中間画像(面5)の調整処理を開始することが可能である。
【0237】
しかしながら、中間画像(面5)の調整処理開始タイミングは、正極合材層の後端検出タイミングt1以降でなければならない制約があるので、この場合は、第2リアルタイム処理による中間画像(面5)の調整処理は、センサ335による正極合材層の後端検出タイミングt1からとなる(タイミングt3)。
【0238】
<長さが異なる電極合材層上に機能層を形成する場合の課題>
続いて、長さが異なる電極合材層上に機能層を形成する場合の課題について説明する。
【0239】
図39は、長さが異なる電極合材層322A,322Bが搬送される場合の各電極合材層322A,322Bの搬送方向長La,Lbと、そのときのセンサ信号及びヘッド吐出動作のタイミングチャートと、各電極合材層322A,322Bの搬送方向長La,Lbを記憶する記憶部の記憶情報を示す図である。
【0240】
図39に示されるように、この場合、長さ(搬送方向長)が異なる電極合材層322A,322Bが搬送され、センサによって各電極合材層322A,322Bの先端及び後端が検出されると、各電極合材層322A,322Bの搬送方向長La,Lbに応じた機能層が形成される。
【0241】
しかしながら、長さが大きく異なる電極合材層322A,322Bが交互に搬送される場合、電極合材層の搬送方向長に合った機能層が形成されない場合がある。より具体的には、図39のように、短い電極合材層322Aの次に長い電極合材層322Bが搬送されると、2番目の電極合材層322B上に形成される機能層が短くなる場合がある。以下、このようになる原因について説明する。
【0242】
まず、短い電極合材層322Aが搬送され、その電極合材層322Aの先端及び後端がセンサによって検出されると、その検出結果から算出される電極合材層322Aの搬送方向長Laが記憶部によって記憶される。続いて、センサによる電極合材層322Aの先端検出タイミングに基づいて、液体吐出ヘッドの吐出動作が開始され、電極合材層322Aの先端位置に合わせて機能層の形成が開始される。そして、記憶部に記憶されている搬送方向長Laの情報に基づいて液体吐出ヘッドの吐出動作が終了し、電極合材層322A上にその搬送方向Laに対応した長さの機能層が形成される。
【0243】
続いて、長い電極合材層322Bが搬送されると、その電極合材層322Bの先端がセンサによって検出されることにより、液体吐出ヘッドの吐出動作が開始される。ここで、2番目の電極合材層322Bに対する吐出動作の終了は、本来、センサによる電極合材層322Bの後端検出時点で確定する搬送方向長Lbに基づいて制御されるが、2番目の電極合材層322Bの搬送方向長が長いことから、センサによる2番目の電極合材層322Bの後端検出の前に、最初の電極合材層322Aの搬送方向長Laに基づく吐出終了タイミングが到来し、その時点で、液体吐出ヘッドの吐出動作が終了する。すなわち、記憶部に記憶される搬送方向長の情報は、センサによる電極合材層の後端の出があった時点で更新されるので、それまでは、更新前の搬送方向長に基づいて液体吐出ヘッドの動作が制御される。その結果、2番目に搬送される電極合材層322Bにおいては、本来、図39の点線で示されるタイミングで吐出動作が制御されるところ、それよりも短いタイミングで吐出動作が終了し、電極合材層322Bの搬送方向長Lbよりも短い機能層が形成されることになる。
【0244】
そこで、次に説明する本発明の実施形態においては、機能層が先の検出結果に基づいて形成されるのを回避するため、先の検出結果を初期化する初期化ステップを採用している。以下、本実施形態に係る初期化ステップについて説明する。
【0245】
<初期化ステップ>
図40は、初期化ステップを採用した実施形態に係るセンサ信号及びヘッド吐出動作のタイミングチャートと、記憶部の記憶情報を示す図である。
【0246】
図40に示される実施形態においては、先に搬送される電極合材層322Aの後端をセンサによって検出する検出ステップを実行してから、次に搬送される電極合材層322Bの先端をセンサによって検出する検出ステップを実行する際又はその前に、先の検出ステップに係る検出結果を初期化する初期化ステップを行う。初期化ステップは、図13Bに示される処理部36が、記憶部3000に記憶されている電極合材層の搬送方向長を、別の初期化用の搬送方向長へ変更することにより行われる。初期化用の搬送方向長としては、例えば、10[km]など、搬送される各種電極合材層のいずれの搬送方向長よりも長い数値であればよい。
【0247】
本実施形態において、2番目の電極合材層322Bが搬送されると、センサにより2番目の電極合材層322Bの先端及び後端を検出する検出ステップが行われるが、その検出ステップが実行される際又はその前に、初期化ステップが行われる。これにより、記憶部3000に記憶されている搬送方向長に関する情報が初期化される。すなわち、記憶部3000には、先の検出ステップにより得られた1番目の電極合材層322Aの搬送方向長Laが記憶されているが、初期化ステップが実行されると、記憶されている搬送方向長Laが初期化用の搬送方向長へ変更される。その後、センサによる2番目の電極合材層322Bの先端検出タイミングに基づいて液体吐出ヘッドの吐出動作が開始されるが、初期化用の搬送方向長はいずれの搬送方向長よりも長い数値であるので、1番目の電極合材層322Aの搬送方向長Laに基づく吐出終了タイミングが到来しても、吐出動作が終了することなく継続される。その後、センサによって2番目の電極合材層322Bの後端が検出されると、その時点で、記憶部3000に記憶される搬送方向長の情報が初期化用の搬送方向長から2番目の電極合材層322Bの搬送方向長Lbへ更新される。そして、更新された搬送方向長Lbに基づいて液体吐出ヘッドの吐出終了タイミングが制御されることにより、電極合材層322Bの搬送方向長Lbに対応した機能層が形成される。以降、同じように、次の出ステップが実行される際又はその前に、初期化ステップが行われることにより、各電極合材層の搬送方向長に対応した機能層が形成される。
【0248】
このように、本発明の実施形態においては、先の検出ステップを実行してから次の出ステップが実行される際又はその前に、初期化ステップを行うことにより、機能層が先の出ステップに係る検出結果に基づいて形成されるのを回避することができ、各電極合材層の搬送方向長に対応した機能層を形成できるようになる。
【0249】
なお、このような初期化するステップを含む実施形態は、電極合材層上に機能層を形成する場合のほか、電極合材層(正極合材層)の周囲に機能層としての絶縁枠を形成する場合にも適用可能である。また、本発明の実施形態は、電極合材層の少なくとも一部又は集電体の少なくとも一部に機能層を形成する場合に限らず、電極合材層及び集電体以外の基材上に機能層以外の層を形成する場合にも適用可能である。すなわち、初期化ステップを含む実施形態は、搬送される部材の搬送方向長に応じて異なる長さの層を形成する製造システムであれば、電極製造システム以外のシステムにも適用可能である。
【0250】
〔その他の実施形態〕
次に、その他の実施形態について図41乃至図46を用いて説明する。
【0251】
<転写方式を採用した印刷部>
図41は、転写方式を採用した印刷部の一例を示す構成図であり、(a)は、ドラム状の中間転写体を用いた印刷部を示す図、(b)は、無端ベルト状の中間転写体を用いた印刷部を示す図である。
【0252】
図41(a)に示した印刷部400´は、中間転写体4001を介して基材に液体組成物を転写することで基材の表面に機能層を形成する、インクジェットプリンタである。
【0253】
印刷部400´は、インクジェット部420、転写ドラム4000、前処理ユニット4002、吸収ユニット4003、加熱ユニット4004及び清掃ユニット4005を備える。
【0254】
インクジェット部420は、複数のヘッド101を保持したヘッドモジュール422を備える。ヘッド101は、転写ドラムに4000に支持された中間転写体4001に液体インクを吐出し、中間転写体4001上にインク層を形成する。各ヘッド101は、ラインヘッドであり、使用可能な最大サイズの基材の記録領域の幅をカバーする範囲にノズルが配列されている。ヘッド101は、その下面に、ノズルが形成されたノズル面を有しており、ノズル面は、微小間隙を介して中間転写体4001の表面と対向している。本実施形態の場合、中間転写体4001は円軌道上を循環移動する構成であるため、複数のヘッド101は、放射状に配置される。
【0255】
転写ドラム4000は、圧胴621と対向し、転写ニップ部を形成する。前処理ユニット4002は、ヘッド101によるインクの吐出前に、例えば、中間転写体4001上に、インクの粘度を高めるための反応液を付与する。吸収ユニット4003は、転写前に、中間転写体4001上のインク層から液体成分を吸収する。加熱ユニット4004は、転写前に、中間転写体4001上のインク層を加熱する。インク層を加熱することで、インク層中の樹脂が溶融し、基材への転写性が向上する。清掃ユニット4005は、転写後に中間転写体4001上を清掃し、中間転写体4001上に残留したインクやごみ等の異物を除去する。
【0256】
圧胴621の外周面は、中間転写体4001に圧接しており、圧胴621と中間転写体4001との転写ニップ部を基材が通過するときに、中間転写体4001上のインク層が基材に転写される。なお、圧胴621は、その外周面に基材の先端部を保持するグリップ機構を少なくとも一つ備えた構成としてもよい。
【0257】
図41(b)に示した印刷部400´´は、中間転写ベルト4006を介して基材に液体組成物を転写することで基材の表面に機能層を形成する、インクジェットプリンタである。
【0258】
印刷部400´´は、インクジェット部420に設けた複数のヘッド101からインク滴を吐出して、中間転写ベルト4006の外周表面上にインク層を形成する。中間転写ベルト4006に形成されたインク層は、乾燥ユニット4007によって乾かされ、インク層は中間転写ベルト4006上で膜化する。
【0259】
中間転写ベルト4006が転写ローラ622と対向する転写ニップ部において、中間転写ベルト4006上の膜化したインク層は基材に転写される。転写後の中間転写ベルト4006の表面は、清掃ローラ4008によって清掃される。
【0260】
中間転写ベルト4006は、駆動ローラ4009a、対向ローラ4009b、複数(本例では4つ)の形状維持ローラ4009c,4009d,4009e,4009f、及び複数(本例では4つ)の支持ローラ4009gに架け渡され、図中矢印方向に移動する。ヘッド101に対向して設けられる支持ローラ4009gは、ヘッド101からインク滴が吐出される際の中間転写ベルト4006の引張状態を維持する。
【0261】
<液体吐出ヘッドの一例を示す概略分解図>
次に、図42乃至図44を用いて液体吐出ヘッドの構成を説明する。図42は、液体吐出ヘッドの一例を示す概略分解図、図43は、液体吐出ヘッドの流路構成の一例を示す説明図、図44は、液体吐出ヘッドの流路構成の一例を示す断面斜視図である。ヘッド3601は、ノズル板3510、流路板(個別流路部材)3520、振動板部材3530、共通流路部材3550、ダンパ部材3560、フレーム部材3580及び駆動回路3604を実装した基板(フレキシブル配線基板)3605などを備える。
【0262】
ノズル板3510は、インクを吐出する複数のノズル3537を備え、複数のノズル3537は、ノズル板短手方向及びこれと直交するノズル板長手方向に二次元状に並んで配置されている。
【0263】
流路板3520には、複数のノズル3537に各々連通する複数の液室(個別圧力室)3526と、複数の液室3526に各々通じる複数の供給流路(個別供給流路)3527及び回収流路(個別回収流路)3528とが設けられている。なお、以降の説明では便宜上、一つの液室3526と、当該液室3526に通じる供給流路3527及び回収流路3528と、を併せて個別流路3525とも称する。
【0264】
振動板部材3530は、液室3526の変形が可能な壁面である振動板3535を形成し、振動板3535には圧電素子3536が一体に設けられている。振動板部材3530には、供給流路3527に通じる供給側開口3532と、回収流路3528に通じる回収側開口3533と、が形成されている。圧電素子3536は、振動板3535を変形させて液室26内のインクを加圧する。
【0265】
なお、流路板3520と振動板部材3530は、別部材であることに限定されるものではない。例えばSOI(Silicon on Insulator)基板を使用して流路板3520及び振動板部材3530を同一部材で一体に形成することも可能である。
【0266】
つまり、シリコン基板上に、シリコン酸化膜、シリコン層、シリコン酸化膜の順に成膜されたSOI基板を使用し、シリコン基板を流路板3520とし、シリコン酸化膜、シリコン層及びシリコン酸化膜で振動板3535を形成できる。この構成では、SOI基板のシリコン酸化膜、シリコン層及びシリコン酸化膜の層構成が振動板部材3530となる。このように、振動板部材3530は流路板3520の表面に成膜された材料で構成されるものを含む。
【0267】
共通流路部材3550は、2以上の供給流路3527に通じる複数の共通供給流路支流52と、2以上の回収流路3528に通じる複数の共通回収流路支流3553とを、ノズル板長手方向において交互に隣接して形成している。共通流路部材3550には、供給流路3527の供給側開口3532と共通供給流路支流3552を通じる供給口3554となる貫通孔と、回収流路3528の回収側開口3533と共通回収流路支流3553を通じる回収口3555となる貫通孔が形成されている。
【0268】
共通流路部材3550は、複数の共通供給流路支流3552に通じる1又は複数の共通供給流路本流3556と、複数の共通回収流路支流3553に通じる1又は複数の共通回収流路本流3557を形成している。
【0269】
ダンパ部材3560は、共通供給流路支流3552の供給口3554と対面する供給側ダンパ3562と、共通回収流路支流3553の回収口3555と対面する回収側ダンパ3563を備える。共通供給流路支流3552及び共通回収流路支流3553は、同じ部材である共通流路部材3550に交互に並べて配列された溝部を、ダンパ部材3560の供給側ダンパ3562又は回収側ダンパ3563で封止することで構成している。なお、ダンパ部材3560のダンパ材料としては、有機溶剤に強い金属薄膜又は無機薄膜を用いることが好ましい。ダンパ部材3560の供給側ダンパ3562、回収側ダンパ3563の部分の厚みは10[μm]以下が好ましい。
【0270】
共通供給流路支流3552と共通回収流路支流3553の内壁面、及び共通供給流路本流3556と共通回収流路本流3557との内壁面には、流路内を流れるインクに対して内壁面を保護するための保護膜が形成されている。例えば、共通供給流路支流3552と共通回収流路支流3553との内壁面、及び共通供給流路本流3556と共通回収流路本流3557との内壁面は、Si基板が熱処理されることで、表面に酸化シリコン膜が形成される。酸化シリコン膜の上にはインクに対してSi基板の表面を保護するタンタルシリコン酸化膜が形成される。
【0271】
フレーム部材3580は、その上部に供給ポート3581と排出ポート3582を備える。供給ポート3581は共通供給流路本流3556にインクを供給し、排出ポート3582は共通回収流路本流3557より排出されるインクを排出する。
【0272】
上述のようにヘッド3601は、インクを吐出するノズル3537、ノズル3537に通じる液室3526、液室3526にインクを供給する供給流路3527、及び液室3526からインクを回収する回収流路3528を有する。ここで、ヘッド3601は「液体吐出ヘッド」の一例、液室3526は「液室」の一例、供給流路3527は「供給流路」の一例、回収流路3528は「回収流路」の一例である。
【0273】
なお、ヘッド3601の構成として、ノズル板3510のノズル面(ノズル3537が形成された面)の形状は長方形に限らず、台形、ひし形、平行四辺形など、長方形以外の形状であってもよい。その一例を、図45及び図46を用いて説明する。図45は、平行四辺形状のノズル板を備えたヘッドの一例を示す構成図、図46は、図45のヘッドを複数並べた状態を示す図である。ヘッド1001Rは、ノズル板短手方向に対して角度θ傾斜した外形(稜線)を有し、ヘッド1001Rの液体吐出部1101R及びノズル板1010Rもこの稜線に沿う形状に形成されている。つまり、液体吐出部1101Rは、外形形状が平行四辺形をしたノズル板1010Rを有し、ノズル板1010Rには複数のノズルが規則的に二次元状に配列されている。ノズルの配列は、例えば、N個のノズルによって1列のノズル列が構成され、このノズル列を、上述の稜線と平行に、且つノズル板短手方向と直交するノズル板長手方向に複数列設けた配列となっている。
【0274】
上述した構成のヘッド101Rは、図46に示すように複数のヘッド1001Ra,1001Rbをノズル板長手方向に1列に並べることが可能であり、これにより、使用する基材の記録幅に合わせて、所望の長さのラインヘッドを得ることができる。
【0275】
実施形態に係る液体吐出装置は、電極製造装置に限定されるものではない。例えば、実施形態に係る液体吐出装置は、用紙等の記録媒体に画像を形成する画像形成装置等であってもよい。
【0276】
〔実施形態の補足〕
上述した実施形態の各機能は、一又は複数の処理回路によって実現することが可能である。ここで、本明細書における「処理回路」とは、電子回路により実装されるプロセッサのようにソフトウエアによって各機能を実行するようプログラミングされたデバイスを含むものとする。このデバイスとは、例えば、プロセッサ、上記で説明した各機能を実行するよう設計されたASIC(Application Specific Integrated Circuit)、DSP(digital signal processor)、FPGA(field programmable gate array)、SOC(System on a chip)、GPU(Graphics Processing Unit)、及び従来の回路モジュール等をいう。
【0277】
これまで本発明の実施形態に係る電極製造装置、電極製造システム、電極製造方法、プログラム及び蓄電デバイス製造装置について説明してきたが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態の追加、変更又は削除等、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。なお、上述した各構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、例示することを意図したものである。
【0278】
■まとめ■
本発明に係る態様は、例えば、以下のとおりである。
【0279】
<第1態様>
第1態様としての集電体320上に設けられた電極合材層上又は集電体320上に機能層を形成する電極製造装置3(電極製造装置の一例。以下省略)は、集電体320の搬送に伴い移動する電極合材層の端部を検出するセンサ335(検出手段の一例。以下省略)と、センサ335による電極合材層の端部に係る検出結果に基づき、少なくとも電極合材層上又は集電体320上に機能層を形成する層形成部330(層形成手段の一例。以下省略)と、を備える。
【0280】
第1態様によれば、電極を構成する電極合材層の長さに誤差が生じたものが搬送される場合があっても、電極合材層上又は集電体上に機能層を形成する際の電極製造装置の処理負荷の増大を抑制することが可能になる。
【0281】
<第2態様>
第2態様としての電極製造装置3は、第1態様において、センサ335による電極合材層の端部の検出前に第1の処理を行う処理部36(処理手段の一例。以下省略)、を備える。
【0282】
第2態様によれば、予め機能層を形成するための処理を実行しておくので、第1態様と同様に電極製造装置の処理負荷の増大を抑制することが可能になる。
【0283】
<第3態様>
第3態様としての電極製造装置3の処理部36は、第2態様において、センサ335による電極合材層の先端を示す端部の検出を起点として、層形成部330が電極合材層を覆う機能層を形成するための第2の処理を実行する。
【0284】
第3態様によれば、第2態様による効果に加えて、より正確なタイミングでの印刷処理を行うことが可能になる。
【0285】
<第4態様>
第4態様としての電極製造装置3の処理部36は、第2態様において、第1の処理として、集電体320の搬送においてセンサ335により検出される電極合材層の長さよりも長い長さに対応する第1の画像処理を行う。
【0286】
第4態様によれば、電極合材層の周辺を覆うための機能層を確実に形成(印刷)することが可能になる。
【0287】
<第5態様>
第5態様としての電極製造装置3の処理部36は、第2態様において、第2の処理として、第1の処理に用いられる画像データを繰り返して読み出すことが可能な単位で画像を処理する。
【0288】
第5態様によれば、処理部36の処理負荷を軽減させることが可能になる。また、ページサイズが未知のメディアに対しても対応することが可能となる。つまり、検出したページ長に応じて繰返しの読出し回数を制御することで達成することができる。
【0289】
<第6態様>
第6態様としての電極製造装置3の処理部36は、第4態様又は第5態様において、第1の画像処理として、階調処理を含む処理を実行する。
【0290】
第6態様によれば、電極合材層の周辺を覆うための機能層を構成する画像データに係る画像処理の精度を向上させることが可能になる。
【0291】
<第7態様>
第7態様としての電極製造装置3の処理部36は、第3態様において、第2の処理として、センサ335により検出された電極合材層の搬送方向の先端情報及び後端情報を含む検出結果に基づいて算出された、電極合材層の周辺を覆うための機能層を形成するための第2の画像処理を行う。
【0292】
第7態様によれば、第3態様による効果と同様に、より正確なタイミングでの印刷処理を行うことが可能になる。
【0293】
<第8態様>
第8態様としての電極製造装置3の処理部36は、第2の画像処理を実行する際、電極合材層を形成するための画像データごとに分けられた複数の領域に対して画像処理を実行し、集電体320の搬送においてセンサ335より検出される電極合材層の長さよりも長い長さに対応する第1の画像処理で実行される画像サイズと、第2の画像処理で実行される画像サイズと、の差分を非吐出領域となるようなデータで埋める。
【0294】
第8態様によれば、リアルタイム処理に係る処理負荷の低減及び処理時間の短縮が可能となる。
【0295】
<第9態様>
第9態様としての電極製造装置3は、第1態様において、層形成部330が機能層を形成するための処理を行う処理部36(処理手段の一例。以下省略)、を備え、機能層の一部が、電極合材層の搬送方向の先端よりも前方の領域及び電極合材層の搬送方向の後端よりも後方の領域の少なくとも一方の領域に形成される部分を含む場合、処理部36は、センサ335による電極合材層の端部に係る検出結果に基づき、機能層の搬送方向長を電極合材層の搬送方向の先端及び後端の間の範囲において調整し、層形成部330は、処理部36により搬送方向長が調整された機能層の画像データと、センサ335による電極合材層の端部に係る検出結果に基づき、少なくとも集電体320上に機能層を形成する。
【0296】
第9態様によれば、機能層の搬送方向長を、電極合材層の搬送方向の先端及び後端の間の範囲において調整することにより、機能層の先端側の部分又は後端側の部分の搬送方向長を変えることなく、所定の長さ確保することができる。
【0297】
<第10態様>
第10態様は、第9の態様における機能層が、電極合材層の全周を囲む枠状である。
【0298】
第10態様のように、機能層が枠状である場合も、機能層の搬送方向長を、電極合材層の搬送方向の先端及び後端の間の範囲において調整することにより、機能層の先端側の部分又は後端側の部分の搬送方向長を変えることなく、所定の長さ確保することができる。
【0299】
<第11態様>
第11態様は、第9態様における機能層が、電極合材層の搬送方向の後端よりも後方の領域に形成される後枠部分を少なくとも含む後端画像と、電極合材層に対して搬送方向とは交差する方向に位置する横枠部分のみを含む中間画像と、を有する場合、処理部36は、センサ335による電極合材層の端部に係る検出結果に基づき、後端画像又は中間画像の搬送方向長を電極合材層の搬送方向の先端及び後端の間の範囲において調整する。
【0300】
第11態様によれば、後端画像の後枠部分の搬送方向長を変えることなく、機能層を電極合材層の搬送方向長に応じた長さに形成できる。
【0301】
<第12態様>
第12態様としての電極製造装置3は、第1態様乃至第11態様のいずれかの電極製造装置3において、層形成部330が機能層を形成するための処理を行う処理部36を備え、処理部36は、センサ335が電極合材層の端部を検出してから次の電極合材層の端部を検出する際又はその前に、先の電極合材層の端部に係る検出結果を初期化する。
【0302】
第12態様によれば、機能層が先の検出結果に基づいて形成されるのを回避でき、電極合材層の搬送方向長に対応した機能層を形成できるようになる。
【0303】
<第13態様>
第13態様としての電極製造システム1(電極製造システムの一例。以下省略)は、集電体320上に設けられた電極合材層上又は集電体320上に機能層を形成する電極製造装置3(電極製造装置の一例。以下省略)と、電極製造装置3と通信可能な情報管理装置2(情報管理装置の一例。以下省略)と、を有し、情報管理装置2は、機能層を形成するための画像データ、並びに、電極合材層に係る集電体320の搬送方向長及び印刷長を含む印刷関連情報の入力を受け付ける操作受付部22(受付手段の一例。以下省略)と、受け付けられた印刷関連情報を電極製造装置3に対して送信する送受信部21(送信手段の一例。以下省略)と、を備え、電極製造装置3は、情報管理装置2が送信した印刷関連情報を受信する送受信部31(受信手段の一例。以下省略)と、集電体320の搬送に伴い移動する電極合材層の端部を検出するセンサ335(検出手段の一例。以下省略)と、印刷関連情報及びセンサ335による電極合材層の端部に係る検出結果に基づき、少なくとも電極合材層上又は集電体320上に機能層を形成する層形成部330(層形成手段の一例。以下省略)と、を備える。
【0304】
第13態様によれば、第1態様による効果と同様に、電極を構成する電極合材層の長さに誤差が生じたものが搬送される場合があっても、電極合材層上又は集電体上に機能層を形成する際の電極製造装置の処理負荷の増大を抑制することが可能になる。
【0305】
<第14態様>
第14態様としての電極製造システムの電極製造装置3は、第13態様において、層形成部330が機能層を形成するための処理を行う処理部36(処理手段の一例。以下省略)を備え、機能層の一部が、電極合材層の搬送方向の先端よりも前方の領域及び電極合材層の搬送方向の後端よりも後方の領域の少なくとも一方の領域に形成される部分を含む場合、処理部36は、センサ335による電極合材層の端部に係る検出結果に基づき、機能層の搬送方向長を電極合材層の搬送方向の先端及び後端の間の範囲において調整し、層形成部330は、処理部36により搬送方向長が調整された機能層の画像データと、センサ335による電極合材層の端部に係る検出結果に基づき、少なくとも集電体320上に機能層を形成する、
【0306】
第14態様によれば、第9態様による効果と同様に、機能層の搬送方向長を、電極合材層の搬送方向の先端及び後端の間の範囲において調整することにより、機能層の先端側の部分又は後端側の部分の搬送方向長を変えることなく、所定の長さ確保することができる。
【0307】
<第15態様>
第15態様は、第14の態様における機能層が、電極合材層の全周を囲む枠状である。
【0308】
第15態様のように、機能層が枠状である場合も、機能層の搬送方向長を、電極合材層の搬送方向の先端及び後端の間の範囲において調整することにより、機能層の先端側の部分又は後端側の部分の搬送方向長を変えることなく、所定の長さ確保することができる。
【0309】
<第16態様>
第16態様は、第14態様における機能層が、電極合材層の搬送方向の後端よりも後方の領域に形成される後枠部分を少なくとも含む後端画像と、電極合材層に対して搬送方向とは交差する方向に位置する横枠部分のみを含む中間画像と、を有する場合、処理部36は、センサ335による電極合材層の端部に係る検出結果に基づき、後端画像又は中間画像の搬送方向長を電極合材層の搬送方向の先端及び後端の間の範囲において調整する。
【0310】
第16態様によれば、後端画像の後枠部分の搬送方向長を変えることなく、機能層を電極合材層の搬送方向長に応じた長さに形成できる。
【0311】
<第17態様>
第17態様としての電極製造システム1の操作受付部22は、第15態様において、枠状に形成される機能層の幅を含む情報の入力を受け付ける。
【0312】
第17態様によれば、所望の幅の機能層を形成できる。
【0313】
<第18態様>
第18態様としての電極製造システムの電極製造装置3は、第13態様乃至第17態様のいずれかにおいて、層形成部330が機能層を形成するための処理を行う処理部36(処理手段の一例。以下省略)を備え、処理部36は、センサ335が電極合材層の端部を検出してから次の電極合材層の端部を検出する際又はその前に、先の電極合材層の端部に係る検出結果を初期化する。
【0314】
第18態様によれば、第12態様による効果と同様に、機能層が先の検出結果に基づいて形成されるのを回避でき、電極合材層の搬送方向長に対応した機能層を形成できるようになる。
【0315】
<第19態様>
第19態様としての電極製造装置3(電極製造装置の一例。以下省略)が実行する電極製造方法は、集電体の搬送に伴い移動する電極合材層の端部を検出する検出ステップと、検出ステップによる電極合材層の端部に係る検出結果に基づき、少なくとも電極合材層上又は集電体320上に機能層を形成する層形成ステップと、を実行する、第19態様によれば、第1態様と同様に、電極を構成する電極合材層の長さに誤差が生じたものが搬送される場合があっても、電極合材層上又は集電体上に機能層を形成する際の電極製造装置の処理負荷の増大を抑制することが可能になる。
【0316】
<第20態様>
第20態様としての電極製造方法は、第19態様において、機能層の一部が、電極合材層の搬送方向の先端よりも前方の領域及び電極合材層の搬送方向の後端よりも後方の領域の少なくとも一方の領域に形成される部分を含む場合、検出ステップによる電極合材層の端部に係る検出結果に基づき、機能層の搬送方向長を電極合材層の搬送方向の先端及び後端の間の範囲において調整する調整ステップを実行し、調整ステップにより搬送方向長が調整された機能層の画像データと、検出ステップによる電極合材層の端部に係る検出結果に基づき、少なくとも集電体320上に機能層を形成する層形成ステップを実行する。
【0317】
第20態様によれば、第9態様による効果と同様に、機能層の搬送方向長を、電極合材層の搬送方向の先端及び後端の間の範囲において調整することにより、機能層の先端側の部分又は後端側の部分の搬送方向長を変えることなく、所定の長さ確保することができる。
<第21態様>
第21態様は、第20の態様における機能層が、電極合材層の全周を囲む枠状である。
【0318】
第21態様のように、機能層が枠状である場合も、機能層の搬送方向長を、電極合材層の搬送方向の先端及び後端の間の範囲において調整することにより、機能層の先端側の部分又は後端側の部分の搬送方向長を変えることなく、所定の長さ確保することができる。
【0319】
<第22態様>
第22態様は、第20態様における機能層が、電極合材層の搬送方向の後端よりも後方の領域に形成される後枠部分を少なくとも含む後端画像と、電極合材層に対して搬送方向とは交差する方向に位置する横枠部分のみを含む中間画像と、を有する場合、調整ステップにおいて、検出ステップによる電極合材層の端部に係る検出結果に基づき、後端画像又は中間画像の搬送方向長を電極合材層の搬送方向の先端及び後端の間の範囲において調整する。
【0320】
第22態様によれば、後端画像の後枠部分の搬送方向長を変えることなく、機能層を電極合材層の搬送方向長に応じた長さに形成できる。
【0321】
<第23態様>
第23態様としての電極製造方法は、第19態様乃至第22態様のいずれかにおいて、検出ステップを実行してから次の検出ステップを実行する際又はその前に、先の検出ステップに係る検出結果を初期化する初期化ステップを含む。
【0322】
第23態様によれば、第12態様による効果と同様に、機能層が先の検出結果に基づいて形成されるのを回避でき、電極合材層の搬送方向長に対応した機能層を形成できるようになる。
【0323】
<第24態様>
第21態様としての電極製造装置3(電極製造装置の一例。以下省略)に実行させるプログラムは、集電体の搬送に伴い移動する電極合材層の端部を検出する検出ステップと、検出ステップによる電極合材層の端部に係る検出結果に基づき、少なくとも電極合材層上又は集電体320上に機能層を形成する層形成ステップと、を実行させる。
【0324】
第24態様によれば、第1態様と同様に、電極を構成する電極合材層の長さに誤差が生じたものが搬送される場合があっても、電極合材層上又は集電体上に機能層を形成する際の電極製造装置の処理負荷の増大を抑制することが可能になる。
【0325】
<第25態様>
第25態様としてのプログラムは、第24態様において、機能層の一部が、電極合材層の搬送方向の先端よりも前方の領域及び電極合材層の搬送方向の後端よりも後方の領域の少なくとも一方の領域に形成される部分を含む場合、検出ステップによる電極合材層の端部に係る検出結果に基づき、機能層の搬送方向長を電極合材層の搬送方向の先端及び後端の間の範囲において調整する調整ステップと、調整ステップにより搬送方向長が調整された機能層の画像データと、検出ステップによる電極合材層の端部に係る検出結果に基づき、少なくとも集電体320上に機能層を形成する層形成ステップと、を実行させる。
【0326】
第25態様によれば、第9態様による効果と同様に、機能層の搬送方向長を、電極合材層の搬送方向の先端及び後端の間の範囲において調整することにより、機能層の先端側の部分又は後端側の部分の搬送方向長を変えることなく、所定の長さ確保することができる。
【0327】
<第26態様>
第26態様は、第25態様における機能層が、電極合材層の搬送方向の後端よりも後方の領域に形成される後枠部分を少なくとも含む後端画像と、電極合材層に対して搬送方向とは交差する方向に位置する横枠部分のみを含む中間画像と、を有する場合、調整ステップにおいて、検出ステップによる電極合材層の端部に係る検出結果に基づき、後端画像又は中間画像の搬送方向長を電極合材層の搬送方向の先端及び後端の間の範囲において調整する処理を実行させる。
【0328】
第26態様によれば、後端画像の後枠部分の搬送方向長を変えることなく、機能層を電極合材層の搬送方向長に応じた長さに形成できる。
【0329】
<第27態様>
第27態様してのプログラムは、第24態様又は第26態様において、検出ステップを実行してから次の検出ステップを実行する際又はその前に、先の検出ステップに係る検出結果を初期化する初期化ステップ、を実行させる。
【0330】
第27態様によれば、第12態様による効果と同様に、機能層が先の検出結果に基づいて形成されるのを回避でき、電極合材層の搬送方向長に対応した機能層を形成できるようになる。
【0331】
<第28態様>
第28態様としての蓄電デバイス製造装置は、第1態様乃至第12態様のいずれかにおいて記載の電極製造装置3(電極製造装置の一例。以下省略)を有する。
【0332】
第28態様によれば、第1態様と同様に、電極を構成する電極合材層の長さに誤差が生じたものが搬送される場合があっても、電極合材層上又は集電体上に機能層を形成する際の電極製造装置の処理負荷の増大を抑制することが可能な蓄電デバイス製造装置を提供することが可能になる。
【符号の説明】
【0333】
1 電極製造システム
2 情報管理装置
3 電極製造装置
21 送受信部(送信手段の一例、受信手段の一例)
22 操作受付部(受付手段の一例)
31 送受信部(送信手段の一例、受信手段の一例)
32 計測部(計測手段の一例)
33 受付取得部(受付手段の一例、取得手段の一例)
35 判定部(判定手段の一例)
36 処理部(処理手段の一例)
37 生成部(生成手段の一例)
39 記憶読出部(記憶読出手段の一例)
40 層形成制御部(層形成制御手段の一例)
300 制御部(制御手段の一例)
330 層形成部(層形成手段の一例)
380 センサ(検出手段の一例)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0334】
【特許文献1】特開2019-061943号公報
【特許文献2】特開2011-181391号公報
【特許文献3】特開2019-030984号公報
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