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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110927
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】アダプタを有する外科的洗浄装置
(51)【国際特許分類】
   A46B 11/00 20060101AFI20240808BHJP
   A46B 11/06 20060101ALI20240808BHJP
   A46B 15/00 20060101ALI20240808BHJP
   A61F 2/30 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
A46B11/00 101
A46B11/06
A46B15/00 Z
A61F2/30
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024000901
(22)【出願日】2024-01-06
(31)【優先権主張番号】23154817.3
(32)【優先日】2023-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】510340506
【氏名又は名称】ヘレウス メディカル ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】フォーグト,セバスチャン
(72)【発明者】
【氏名】クルーゲ,トーマス
【テーマコード(参考)】
3B202
4C097
【Fターム(参考)】
3B202AA00
3B202AB30
3B202BA12
3B202CA09
3B202EA01
3B202EB17
3B202EC06
3B202EF06
3B202EG01
3B202FA15
3B202FB03
3B202GA03
4C097AA03
4C097BB10
4C097MM06
(57)【要約】      (修正有)
【課題】DAIR処置の範囲内で感染した関節内部人工器官の機械的洗浄及び灌注のための使い捨て装置として使用可能であり得る外科的洗浄装置を提供する。
【解決手段】感染したインプラントの外科的洗浄、複数の毛103を有する毛領域102を含むブラシヘッド101と、洗浄液をブラシヘッドに搬送するように構成された供給要素104と、ブラシヘッドから液体を除去するように構成された排出要素105と、供給要素及び排出要素を外部洗浄装置に解除可能に接続するように構成された接続要素106とを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
感染したインプラントの外科的洗浄のための装置(100)であって、
複数の毛(103)を有する毛領域(102)を含むブラシヘッド(101)と、洗浄液を前記ブラシヘッド(101)に搬送するように構成された供給要素(104)と、前記ブラシヘッド(101)から液体を除去するように構成された排出要素(105)と、前記供給要素(104)及び前記排出要素(105)を外部洗浄装置(200)に解除可能に接続するように構成された接続要素(106)と、
を備える、装置。
【請求項2】
前記装置は、前記供給要素(104)の送達速度に対する前記排出要素(105)の送達速度の比率が少なくとも1になるように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記ブラシヘッド(101)は、前記毛(103)に振動力を加えるように構成されている、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記装置は、前記振動力を生成するための駆動要素(120)を備え、前記駆動要素(120)は、好ましくは、前記供給要素(104)を通る前記洗浄液の流れによって駆動するように構成されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記接続要素(106)と前記ブラシヘッド(101)との間に配置されており、かつ、前記供給要素(104)を通る洗浄液の流れを制御するように構成されている、弁(107)を更に備える、請求項1から4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記ブラシヘッド(101)は、アンダーカットの前記洗浄を容易にするために異なる長さの毛(103)を備え、前記毛(103)は、好ましくは、前記毛領域(102)内に弧状に配置されている、請求項1から5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記供給要素(104)は、前記毛領域(102)内に配置された出口開口部(108)を備える、請求項1から6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記排出要素(105)は、前記毛領域(102)の前記近位端に配置された吸引開口部(109)を備える、請求項1から7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記装置は、前記毛(103)を通して前記供給要素(104)から洗浄液を導通し、前記毛の先端(110)において前記洗浄液を放出するように構成されている、請求項1から8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記装置はポンプを備えていない、前記請求項1から9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記供給要素(104)、及び好ましくは前記排出要素(105)も、前記接続要素(106)を通して案内される、請求項1から10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記接続要素(106)と前記ブラシヘッド(101)との間に配置されているハンドル要素(111)を更に備え、前記ハンドル要素(111)は、ユーザが前記装置を手動で案内するように構成されている、請求項1から11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記ハンドル要素(111)を前記ブラシヘッド(101)に接続するステム要素(112)を更に備える、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記ステム要素(112)は、5~10cmの長さを備えており、かつ/又は最大でも10mmの直径を備える、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記供給要素(104)は、可撓性チューブを備え、かつ/又は少なくとも80cmの長さを備える、請求項1から14のいずれか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療技術の分野に関し、特に、感染組織の外科的洗浄に使用するための装置及び方法に関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
本発明の主題は、特に、DAIR処置の範囲内で感染した関節内部人工器官の機械的洗浄及び灌注のための使い捨て装置として使用可能であり得る外科的洗浄装置である。洗浄装置は、関節内部人工器官の表面を手動でブラッシングするのに好適である。機械的に分離された汚染物質は、洗浄装置から出る洗浄液ジェットによって同時に除去することができる。洗浄液は、従来のジェット洗浄システムに接続することができ、それによって洗浄液を洗浄装置に圧送することができる。洗浄液は、好ましくは、パルス様式で洗浄装置から出ることができる。
【0003】
敗血症性骨手術では、感染した関節内部人工器官の再置換における清拭された骨及び軟組織の領域の洗浄(cleaning)、並びに洗浄(lavage)による感染した骨接合プレートの洗浄(cleaning)が知られている。この目的のために、医療用灌注装置、いわゆる洗浄システムが使用される。これらの洗浄システムは、本明細書では「洗浄装置」とも呼ばれる。洗浄液としては、生理食塩水、リンゲル液、乳酸リンゲル液が知られている。洗浄の目的は、感染組織の残留物、バイオフィルム残留物、血液、及び創傷分泌物を除去することである。洗浄システムは以前から知られている。欧州特許第3187208号、米国特許第4583531号、米国特許第5779702号、米国特許第6059754号及び米国特許出願公開第2019151531号による装置がその例である。しかしながら、強固に付着しているバイオフィルム、特にアンダーカット領域におけるバイオフィルムが、従来のジェット洗浄システムによって条件付きでしか分離できないか、又は更には全く分離できないことが課題である。
【0004】
敗血症手術では、感染した膝関節内部人工器官、股関節内部人工器官及び肩関節内部人工器官を治療するためのいわゆるDAIR処置(デブリドマン、抗生物質及びインプラント保持(debridement, antibiotics and implant retention))が増えている。この外科的技法の目的は、人工関節が温存されるように、デブリドマン及びその後の抗生物質の局所適用によって、関節を開いた後の関節内部人工器官及び周囲組織の感染と戦うことである。費用がかかり、患者に負担をかける再置換関節内部人工器官のインプラントは回避すべきである。
【0005】
これらの処置、特に、初期段階で感染した人工関節の内部人工器官の場合に使用される。PEインレーなどの移動可能なインプラント構成要素は、最初に人工関節から取り外される。感染組織を清拭し、関節内部人工器官の金属表面に付着しているバイオフィルムを、ブラッシング及び洗浄によって可能な限り完全に除去する試みがなされる。次いで、PEインレーなどの新しい移動可能な関節構成要素が、洗浄された関節内部人工器官に挿入される。ここで問題となるのは、金属表面上、特に膝関節の関節丘上のバイオフィルムの除去である。バイオフィルムは、非常に粘着性かつ付着性であり得る。これは、ブラッシング及びその後の洗浄にもかかわらず、バイオフィルム又はバイオフィルム残留物が金属表面上に残存し得ることを意味する。これらのバイオフィルム残留物は、生きている微生物を含有しており、関節内部人工器官及び周囲組織の再感染を引き起こす可能性がある。
【0006】
好ましい実施形態
本発明の目的は、従来技術の上記及び他の課題の1つ以上を解決することである。本発明の目的は、インプラント表面をブラッシングすることによってバイオフィルムを分離し、同時に、分離されたバイオフィルム残留物を洗浄液を使用してインプラント表面から除去することである。結果として、機械的に分離された後、粘着性のバイオフィルムは、インプラント表面に再び付着することができない。本発明の更なる目的は、洗浄液と混合されたバイオフィルム残留物を関節部位から直ちに除去することであり、その結果、分離されたバイオフィルム残留物の周囲組織、関節包への堆積を効果的に防止することができる。
【0007】
装置は、好ましくは、アンダーカットにおいても手動ブラッシングを可能にすることができ、同時に、ブラッシングによって分離されるバイオフィルム残留物などの汚染物質は、灌注液の噴射によって直ちに除去することができ、その結果、汚染物質は、洗浄された表面に付着することができない。装置自体は、好ましくは、それ自身の能動駆動装置がなくてもよく、またポンプがなくてもよい。装置は、好ましくは、プラスチック部品から可能な限り単純かつ費用効果的に製造することができる。更に、装置は、好ましくは、エチレンオキシド滅菌又はガンマ線滅菌によって滅菌することができる。
【0008】
いくつか又は全ての目的は、本明細書に記載される方法及び装置、特に特許請求の範囲に記載される方法及び装置によって達成される。
【0009】
本発明の好ましい実施形態を以下に記載する。
【0010】
第1の実施形態は、感染したインプラントの外科的洗浄のための装置であって、
複数の毛を有する毛領域を含むブラシヘッドと、
洗浄液をブラシヘッドに搬送するように構成された供給要素と、
ブラシヘッドから液体を除去するように構成された排出要素と、
供給要素及び排出要素を外部洗浄装置に解除可能に接続するように構成された接続要素と、
を含む、装置を説明する。
【0011】
第2の実施形態は、装置が、供給要素の送達速度に対する排出要素の送達速度の比率が少なくとも1になるように構成されている、第1の実施形態による装置を説明する。
【0012】
第3の実施形態は、ブラシヘッドが毛に振動力を加えるように構成されている、第1又は第2の実施形態による装置を説明する。
【0013】
第4の実施形態は、装置が、振動力を生成するための駆動要素を備え、駆動要素が、好ましくは、供給要素を通る洗浄液の流れによって駆動するように構成されている、第1から第3の実施形態のいずれか1つによる装置を説明する。
【0014】
第5の実施形態は、接続要素とブラシヘッドとの間に配置されており、かつ、供給要素を通る洗浄液の流れを制御するように構成されている、弁を更に備える、第1から第4の実施形態のいずれか1つによる装置を説明する。
【0015】
第6の実施形態は、ブラシヘッドが、アンダーカットの洗浄を容易にするために異なる長さの毛を備え、毛が、好ましくは、毛領域内に弧状に配置されている、第1から第5の実施形態のいずれか1つによる装置を説明する。
【0016】
第7の実施形態は、供給要素が、毛領域内に配置された出口開口部を備える、第1から第6の実施形態のいずれか1つによる装置を説明する。
【0017】
第8の実施形態は、排出要素が、毛領域の近位端に配置された吸引開口部を有する、第1から第7の実施形態のいずれか1つによる装置を説明する。
【0018】
第9の実施形態は、装置が、毛を通して供給要素から洗浄液を案内し、毛の先端において前記洗浄液を放出するように構成されている、第1から第8の実施形態のいずれか1つによる装置を説明する。
【0019】
第10の実施形態は、装置がポンプを備えていない、第1から第9の実施形態のいずれか1つによる装置を説明する。
【0020】
第11の実施形態は、供給要素、及び好ましくは排出要素も、接続要素を通して案内される、第1から第10の実施形態のいずれか1つによる装置を説明する。
【0021】
第12の実施形態は、接続要素と毛要素との間に配置されたハンドル要素を更に備え、ハンドル要素は、ユーザが装置を手動で案内するように構成されている、第1から第11の実施形態のいずれか1つによる装置を説明する。
【0022】
第13の実施形態は、ハンドル要素をブラシヘッドに接続するステム要素を更に備える、第12の実施形態による装置を説明する。
【0023】
第14の実施形態は、ステム要素が5~10cmの長さを有し、かつ/又は最大でも10mmの直径を有する、第13の実施形態による装置を説明する。
【0024】
第15の実施形態は、供給要素が可撓性チューブを備え、かつ/又は少なくとも80cmの長さを有する、第1から第14の実施形態のいずれか1つによる装置を説明する。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本明細書に記載される実施形態に関して、その要素は特定の特徴(例えば、材料)を「含有する(contain)」又は「備える(comprise)」は、原則として、関連する要素がその特徴のみからなる、すなわち、他の構成要素を備えていない更なる実施形態が常に企図される。用語「備える(comprise)」又は「備えている(comprising)」は、本明細書において、用語「含有する(contain)」又は「含有している(containing)」と同義的に使用される。
【0026】
一実施形態では、要素が単数形で示される場合、2つ以上のそのような要素が存在する実施形態も企図される。複数形の要素に対する用語の使用は、基本的に、単一の対応する要素のみが含まれる実施形態も包含する。
【0027】
別段の指示がない限り、又は文脈によって明確に除外されない限り、異なる実施形態の特徴が、本明細書に記載される他の実施形態にも存在し得ることが原理的に可能であり、本明細書によって明確に企図される。同様に、方法に関連して本明細書に記載される全ての特徴は、本明細書に記載される製品及び装置にも適用可能であり、逆もまた同様であることが原理的に企図される。単に説明を簡潔にするために、全てのそのような考慮される組み合わせは、全ての事例において明示的に列挙されているわけではない。本明細書に記載される特徴と同等であることが知られている技術的解決手段もまた、本発明の範囲によって原理的に包含されることが意図されている。
【0028】
本発明の第1の態様は、感染したインプラントの外科的洗浄のための装置であって、装置は、
複数の毛を有する毛領域を含むブラシヘッドと、
洗浄液をブラシヘッドに搬送するように構成された供給要素と、
ブラシヘッドから液体を除去するように構成された排出要素と、
供給要素及び排出要素を外部洗浄装置に解除可能に接続するように構成された接続要素と、
を含む、装置を説明する。
【0029】
この装置は、特に、例えば外科処置中に細菌感染組織を洗浄するために提供される。装置は、好ましくは感染したインプラントを洗浄するために使用することができる。
【0030】
装置は、複数の毛が毛領域に配置されたブラシヘッドを備える。毛は、好ましくは、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミドなどの生体適合性ポリマーから形成される。
【0031】
装置は、洗浄液を搬送するように構成されている供給要素を備える。特に、洗浄液は、ブラシヘッドの領域において放出されるために、供給要素によって接続要素からブラシヘッドに案内され得る。
【0032】
装置は、液体を受け入れ、搬送するように設計されている、排出要素を備える。排出要素は、使用済みの又は汚染された状態の洗浄液を除去するために使用することができ、洗浄液は、最初に、供給要素を介してブラシヘッドにおいて放出されている。それによって、感染組織及びバイオフィルムを患者から除去することができ、その結果、病原体が患者の体内に残存する、又は更には分散するリスクがなくなる。特に、バイオフィルムからインプラントへの細菌の再付着を回避することができる。
【0033】
本明細書に記載される装置は、外部洗浄装置を用いた動作に特に好適である。本明細書に記載される装置を動作させることができる洗浄装置の例は、例えば、欧州特許出願公開第2662146(A2)号、米国特許第4,583,531(A)号、米国特許第4,278,078(A)号、及び米国特許第5,542,918(A)号に記載されている。このような洗浄装置は、例えば、電気モータ又は圧縮空気モータを備えることができるポンプを備えることができる。本明細書に記載される装置は、好ましくは、スプレーのパルスバーストを生成することができる洗浄装置と共に動作することができる。洗浄装置は、例えば、欧州特許出願公開第2619415(A1)号、欧州特許出願公開第2910270(A1)号又は欧州特許出願公開第2873856(A1)号に記載されているようなポンプを含むことができる。
【0034】
本明細書に記載される装置は、このような洗浄装置に接続するための接続要素を備えている。接続要素は、形状閉鎖接続又は力閉鎖接続で外部洗浄装置に接続可能であり得る。例えば、接続要素は、装置を洗浄装置に接続するためにラッチ要素を含むことができる。接続要素は、特に、供給要素及び排出要素を洗浄装置に液体を導通する様式で接続するように構成することができる。接続要素は、特に、排出要素から洗浄装置に液体を分注するように構成された開口部を備えることができる。接続要素は、洗浄液を供給要素内へと案内するために、洗浄装置から洗浄液を受け入れるように構成された開口部を更に備えることができる。
【0035】
この理由により、本明細書に記載される装置自体は、ポンプを必要としない。したがって、本明細書で説明される装置は、好ましくは、それ自身のポンプを有しない。ポンプは、搬送される液体の圧力を能動的に変化させることによって液体の搬送をもたらすことができる装置である。
【0036】
いくつかの実施形態では、装置は、少なくとも1の供給要素の送達速度に対する排出要素の送達速度の比率を達成するように構成されている。これは、装置が、供給要素を介してブラシヘッドにおいて放出されるのと少なくとも同じ量の液体を排出要素を介して同時に排出するように構成されていることを意味する。これにより、緩んだバイオフィルム及び分離された感染組織を患者から効果的に除去できることをより保証することができる。いくつかの実施形態では、供給要素の送達速度に対する排出要素の送達速度の比率は、少なくとも1.0、1.2、1.5、又は少なくとも2である。これは、例えば、排出要素の内径が供給要素の内径と比較して、対応してより大きくなるように寸法決めされるという点で達成され得る。
【0037】
いくつかの実施形態では、ブラシヘッドは、毛に振動力を加えるように構成されている。例えば、ブラシヘッドは、例えば装置の弾性材料特性に起因して、又はジョイントの組み込みに起因して移動可能であり得る。これにより、毛を振動させることができる。これにより、感染組織又はバイオフィルムのより良好な分離を達成することができる。
【0038】
いくつかの実施形態では、装置は、そのような振動力を生成するための駆動要素を備える。駆動要素は、能動駆動要素、例えば電気モータとすることができ、又は受動駆動要素を使用することができる。受動駆動要素の一例は、供給要素を通る洗浄液の流れによって動作する振動モータである。例えば、液体流によって駆動され、かつ、非対称な質量分布を有する、翼車をこの目的のために使用することができる。
【0039】
駆動要素の更なる例は、ボール振動モータ及びローラ振動モータである。球状質量体の円運動は、ステム要素及び/又はブラシヘッドの振動をもたらす不均衡を生成することができ、その結果として、洗浄効果を強化することができる。
【0040】
振動力は、洗浄液のスプレーのバーストによっても発生させることができる。この目的のために、装置は、洗浄液のパルス分注を可能にする洗浄装置に接続されることができる。この目的のために、外部洗浄装置は、ポンプと、そのようなパルス動作を可能にするコントローラとを備えることができる。
【0041】
いくつかの実施形態では、装置は、供給要素を通る洗浄液の流れを制御するように構成された弁を備える。弁は、好ましくは、接続要素とブラシヘッドとの間に配置することができる。
【0042】
ブラシヘッドは、アンダーカットの洗浄を容易にするために異なる長さの毛を備えることができる。例えば、異なる長さの毛は、例えば図3に示すように、ブラシヘッド上に弧状に配置することができる。例えば、ブラシヘッドの遠位領域の毛は、ブラシヘッドの近位領域の毛よりも長くすることができる。ブラシヘッドの遠位領域は、接続要素から最も遠く離れて配置される側である。ブラシヘッドの近位領域は、ハンドル要素(存在する場合)及び接続要素の方向を向く側である。
【0043】
いくつかの実施形態では、供給要素は、毛領域内に配置された出口開口部を備える。装置は、好ましくは、複数の出口開口部を備える。出口開口部は、ブラシヘッド上の毛の近傍に、好ましくは毛領域内に、又は毛自体の上に、あるいはその両方に配置することができる。毛は、洗浄液の搬送を可能にするために中空であってもよい。装置は、毛を通して供給要素から洗浄液を案内し、毛の先端において洗浄液を放出するように構成することができる。
【0044】
供給要素及び/又は排出要素は、好ましくは、接続要素を通して案内される。それらは、好ましくは、接続要素内に延び、それによって、損傷又は妨害に対してより良好に保護される。
【0045】
装置は、ユーザが装置を手動で案内するように構成されたハンドル要素を備えることができる。ハンドル要素は、接続要素とブラシヘッドとの間に配置することができる。ハンドル要素を使用すると、ユーザは、ブラシヘッドを確実に把持し、保持することができ、使用中に好適な方法でブラシヘッドを手動で位置決めし、案内することができる。
【0046】
装置は、ハンドル要素をブラシヘッドに接続するステム要素を更に備えることができる。したがって、ステム要素は、ハンドル要素とブラシヘッドとの間に配置されている。ステム要素は、好ましくは、上でより詳細に説明したように、ブラシヘッドの移動を可能にするために可撓性であり得る。ステム要素は、例えば、5~10cmの長さを有することができる。ステム要素は、10mm以下、例えば9mm未満又は7mm未満の直径を有することができる。これは、例えば感染した膝関節内部人工器官に対するDAIR処置の場合に、アクセスすることが困難な身体領域にユーザがより容易に到達することを可能にする。ステム要素は、好ましくは、排出要素よりも大きい外径を有する。
【0047】
好ましくは、ステム要素及び排出要素は、互いに平行に配置される。好ましくは、ステム要素及び排出要素は、互いに直接接続される。ステム要素及び排出要素は、好ましくは可撓性である。
【0048】
いくつかの実施形態では、装置は、部分的又は完全にプラスチックから作製される。特に、ブラシヘッド、ステム要素、ハンドル要素、及び/又は接続要素は各々、プラスチックを含む、又は完全にプラスチックからなることができる。
【0049】
いくつかの実施形態では、装置は、エチレンオキシド滅菌又はガンマ線滅菌を使用して滅菌するように構成され、すなわち、それは、機能的障害なしに言及された方法によって滅菌され得る。
【0050】
供給要素は、可撓性チューブを備えることができる。供給要素は、少なくとも80cmの長さを有することができる。いくつかの実施形態では、接続要素とハンドル要素又はブラシヘッドとの間の領域における供給要素の長さは、少なくとも80cmである。これは、外部洗浄装置を同時に移動させる必要なく、装置のより良好な可動性をユーザに提供する。
【0051】
いくつかの実施形態では、ブラシヘッドは、傾斜した流出チャネルを備える。毛の向きに関して、流出チャネルは、15°を超える角度、例えば約45°の角度で配置することができる。これにより、ブラシの洗浄性能を向上させるために、洗浄液のスプレーのバーストをブラシヘッドの隣にある領域へと放出することができる。洗浄液は、流出開口部を介して流出チャネルの外側端部において放出され得る。
【0052】
更なる態様は、バイオフィルム又は感染組織を除去するために本明細書に記載される装置が使用される治療方法に関する。この場合、バイオフィルム又は感染組織は、毛によって、及び供給要素を介して放出される洗浄液によって除去され、洗浄液は、除去される物質と共に排出要素を介して患者から取り出される。装置は、外部洗浄装置に接続することができる。一実施形態では、洗浄液のスプレーの脈動バーストがブラシヘッドを介して放出される。一実施形態では、本明細書に記載されるように、毛を介して振動力が加えられる。
【0053】
洗浄液は、洗剤、緩衝物質、及び/又は抗菌活性物質を含むことができる。洗浄液は、生理食塩水、リンゲル液又は乳酸リンゲル液を含むことができる。
【0054】
この装置は、デブリドマン、特にDAIR処置に使用することができる。装置は、例えば、膝関節手術又は股関節手術に関連して、特に再置換手術の場合に使用することができる。
【実施例0055】
以下、実施例により本発明を更に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではないことを理解されたい。ここで説明した特徴の代わりに他の同等の手段を同様に使用できることは、当業者には明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0056】
図1図1は、例として、本発明による装置100の実施形態を示す。装置は、ブラシヘッド101を備える。ブラシヘッド101は、毛領域102を有するステム要素112を備える。複数の毛103は、毛領域102において房状に配置される。ステム要素112は、毛領域102に隣接する吸引開口部109を備える。吸引開口部109は、本発明による装置と共に使用されることによって、感染組織又はバイオフィルムを分離した洗浄液を受け入れ、除去する役割を果たすことができる。ブラシヘッド101は、ハンドル要素111に解除可能に接続される。ハンドル要素111は、供給要素104を制御するための弁を更に備える。供給要素104は、ハンドル要素111及びブラシヘッド101内で案内される。供給要素104は、ブラシヘッド101内へと洗浄液を供給する役割を果たす。更に、装置は、吸引開口部109によって受け入れられた洗浄液を排出する働きをすることができる排出要素105を備える。供給要素104及び排出要素105は各々、外部洗浄装置への接続のために提供されている接続要素106に案内される。この目的のために、接続要素106は、洗浄装置に接続することができるラッチ要素125を備える。
図2図2は、本発明による装置100の外部洗浄装置200への接続を示す。このプロセスにおいて、装置100の接続要素106は、形状閉鎖接続で洗浄装置200に接続され、供給要素104及び排出要素105は、洗浄装置200の対応する接続部に液密な様式で接続される。
図3図3は、本発明による装置のブラシヘッドの一部分の断面図を示す。供給要素104は、洗浄液を毛領域102に案内するように構成されている。ここに示す例では、毛領域102は、液体を導通する様式で供給要素104に接続されている中空の毛103を含む。したがって、洗浄液を、中空の毛103を通して毛の先端110にある出口開口部108に案内することができ、出口開口部108から洗浄液を放出することができる。出口開口部から放出された洗浄液は、ここでは液滴の形態で象徴的に示されている。この例では、毛103は異なる長さのものである。毛103は、ブラシヘッドの近位端(図3の右に示される)よりもブラシヘッドの遠位端(図3の左に示される)においてより長い長さを有し、その結果、毛の先端に対して全体的に弓形の配置が生じる。そのような幾何形状は、アクセスすることが困難な身体領域のゾーン、特にアンダーカットの領域におけるバイオフィルム及び細菌負荷を受けた組織を除去するのに有利であり得る。この例は、感染した膝関節内部人工器官に対するDAIR処置であり、洗浄はまた、特に関節の大腿骨構成要素と脛骨構成要素との間の間隙において必要とされる。
図4図4は、図3に示されるブラシヘッド101の一部分の平面図を示す。複数の毛103が毛領域102内に配置され、毛は各々、供給要素104から毛の先端にある出口開口部108まで洗浄液を案内することができる空洞を備える。
図5a図5aは、弁107を備えている本発明による装置100の実施形態の断面図を示す。弁は、供給要素104を通る洗浄液の流れを制御するように設定される。図5aは、外部洗浄装置200から供給要素104を通ってブラシヘッド101への洗浄液の自由な流れを可能にする開放構成の弁107を示す。したがって、洗浄液は、ブラシヘッド101の領域内で放出され得る。
図5b図5bは、弁107が閉鎖構成にある、図5aに示される装置を示す。洗浄装置200から装置100に圧送される洗浄液は、供給要素104を介して、閉じた弁107までしか導通することができず、ブラシヘッド101の領域に到達することができない。したがって、弁107が閉じられているとき、洗浄液はブラシヘッド101では放出されない。
図6図6は、本発明による装置のブラシヘッド101の断面図である。この例では、全ての毛が実質的に同じ長さを有する。吸引開口部109は、毛領域102に隣接して配置される。吸引開口部は、使用済みの洗浄液、及び除去されるべき汚染物質を受け入れ、排出要素105を介して排出することを可能にする。搬送される液体の流れ方向は矢印で示されている。
図7図7は、本発明による装置100の断面図である。搬送される液体の流れ方向は矢印で示されている。前記液体は、吸引開口部109から接続要素106に向かって排出要素105を通過し、そこで前記液体を外部洗浄装置によって受け入れることができる。
図8図8は、取り外し可能なブラシヘッド101を有する本発明による装置の一実施形態を示す。グロメット114上に嵌合することによって、ブラシヘッド101を、装置のハンドル要素111に取り外し可能に接続することができる。供給要素104及び排出要素105は、グロメット114を通して案内され、ブラシヘッド101への形状閉鎖接続を可能にするために、その端部においてグロメットを越えて突出する。
図9図9は、ハンドル要素111の等角断面図を示す。この例では、ハンドル要素は、ラッチ要素115を介して互いに接続される2つのハーフシェルから形成される。供給要素104及び排出要素105は、ハンドル要素111の内部を通して、かつ、ハンドル要素のハウジング開口部にあるグロメット114を通して案内される。
図10図10は、駆動要素120を備えた本発明による装置の実施形態を示す。駆動要素120は、装置の洗浄性能を高めるために、ブラシヘッド101、特に毛103に伝達することができる振動力を生成するように構成されている。駆動要素120及び弁107は、ハンドル要素111上に配置される。装置は、接続要素106によって外部洗浄装置に接続することができ、供給要素104及び排出要素105は、液体を導通する様式で洗浄装置に接続される。
図11図11は、駆動要素120を通る断面の平面図を示す。この例では、駆動要素は、それ自身の電源を必要としない受動駆動要素であるが、その代わりに、流れている洗浄液によって駆動することができる。この目的のために、駆動要素120は供給要素104に液体を導通する様式で接続されており、その結果、洗浄液は流入開口部121を通って駆動要素120内に導通され、駆動要素内のチャネルを通って流れ、それによってボール123を円形経路上で移動させ、流出開口部122を通って再び供給要素104内に通過する。洗浄液の流れ方向は矢印で示されている。この機能原理は、空気圧ボール振動モータにおいても同様に使用される。
図12図12は、駆動要素120を通る断面の側面図を示す。洗浄液は、外部供給源から供給要素104を通って駆動要素120の流入開口部121へと流れ、流出開口部122を介して更に装置のブラシヘッドに向かって流れる。ハンドル要素111の2つのハーフシェルは、ラッチ要素115によって一緒に保持される。
図13a図13aは、傾斜した流出チャネル124を有するブラシヘッド101の断面図を示す。毛の向きに関して、流出チャネル124は、15°を超える角度、この例では約45°の角度で配置される。これにより、ブラシの洗浄性能を向上させるために、洗浄液のスプレーのバーストをブラシヘッドの隣にある領域へと放出することができる。洗浄液は、流出開口部122を介して流出チャネル124の外側端部において放出され得る。
図13b図13bは、図13aに示されるブラシヘッドの平面図を示す。流出開口部は、毛領域102においてブラシヘッドの側縁に沿って配置される。
図14a図14aは、ブラシヘッド101の断面図を示しており、このブラシヘッドは、供給要素104を液体を導通する様式で毛103に接続する配置された流出チャネル124を有しており、毛103は、液体を導通する空洞を備えており、その結果、洗浄液は、毛103の先端110にある流出開口部122へと放出され得る。
図14b図14bは、図14aに示されるブラシヘッドの平面図を示す。
【0057】
図13及び図14に示される変形例は、本発明による装置において代替的に又は組み合わせて使用することができる。
【0058】
適用例1
外科処置中、装置は、例えば、デブリドマンのために以下のように使用することができ、以下のステップa)~l)、すなわち、
a)洗浄装置を洗浄液リザーバに接続するステップ、
b)装置のアダプタを洗浄装置に接続するステップ、
c)洗浄装置のモータを始動させるステップ、
d)洗浄装置によって、洗浄液を供給要素を通して装置のブラシヘッドに圧送するステップ、
e)ハンドル要素内の弁を開くステップ、
f)結果として、灌注液をステム要素に沿ってブラシヘッド内に導入するステップ、
g)洗浄される表面を手動でブラッシングし、同時に洗浄液がスプレージェットの形態でブラシヘッド又は中空の毛から出るステップ、
h)洗浄液によって、洗浄される表面から分離された汚染物質を洗い流すステップ、
i)ステップh)からの使用済み洗浄液を、吸引要素及び接続要素を通して洗浄装置内に吸引するステップ、
j)洗浄装置の圧送機能をオフに切り替えるステップ、
k)接続要素を洗浄装置から分離するステップ、
l)装置を処分するステップ、
が、示された順序で実行される。
【符号の説明】
【0059】
100 装置
101 ブラシヘッド
102 毛領域
103 毛
104 供給要素
105 排出要素
106 接続要素
107 弁
108 出口開口部
109 吸引開口部
110 毛の先端
111 ハンドル要素
112 ステム要素
114 グロメット
115 (ハンドル要素上の)ラッチ要素
120 駆動要素
121 流入開口部
122 流出開口部
123 ボール
124 流出チャネル
125 (接続要素上の)ラッチ要素
200 洗浄装置
図1
図2
図3
図4
図5a
図5b
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13a
図13b
図14a
図14b
【手続補正書】
【提出日】2024-01-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
感染したインプラントの外科的洗浄のための装置(100)であって、
複数の毛(103)を有する毛領域(102)を含むブラシヘッド(101)と、
洗浄液を前記ブラシヘッド(101)に搬送するように構成された供給要素(104)と、
前記ブラシヘッド(101)から液体を除去するように構成された排出要素(105)と、
前記供給要素(104)及び前記排出要素(105)を外部洗浄装置(200)に解除可能に接続するように構成された接続要素(106)と、
を備える、装置。
【請求項2】
前記装置は、前記供給要素(104)の送達速度に対する前記排出要素(105)の送達速度の比率が少なくとも1になるように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記ブラシヘッド(101)は、前記毛(103)に振動力を加えるように構成されている、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記装置は、前記振動力を生成するための駆動要素(120)を備え、前記駆動要素(120)は、好ましくは、前記供給要素(104)を通る前記洗浄液の流れによって駆動するように構成されている、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項5】
前記接続要素(106)と前記ブラシヘッド(101)との間に配置されており、かつ、前記供給要素(104)を通る洗浄液の流れを制御するように構成されている、弁(107)を更に備える、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項6】
前記ブラシヘッド(101)は、アンダーカットの前記洗浄を容易にするために異なる長さの毛(103)を備え、前記毛(103)は、好ましくは、前記毛領域(102)内に弧状に配置されている、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項7】
前記供給要素(104)は、前記毛領域(102)内に配置された出口開口部(108)を備える、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項8】
前記排出要素(105)は、前記毛領域(102)の前記近位端に配置された吸引開口部(109)を備える、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項9】
前記装置は、前記毛(103)を通して前記供給要素(104)から洗浄液を導通し、前記毛の先端(110)において前記洗浄液を放出するように構成されている、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項10】
前記装置はポンプを備えていない、前記請求項1又は2に記載の装置。
【請求項11】
前記供給要素(104)、及び好ましくは前記排出要素(105)も、前記接続要素(106)を通して案内される、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項12】
前記接続要素(106)と前記ブラシヘッド(101)との間に配置されているハンドル要素(111)を更に備え、前記ハンドル要素(111)は、ユーザが前記装置を手動で案内するように構成されている、
請求項1又は2に記載の装置。
【請求項13】
前記ハンドル要素(111)を前記ブラシヘッド(101)に接続するステム要素(112)を更に備える、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記ステム要素(112)は、5~10cmの長さを備えており、かつ/又は最大でも10mmの直径を備える、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記供給要素(104)は、可撓性チューブを備え、かつ/又は少なくとも80cmの長さを備える、請求項1又は2に記載の装置。