(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110930
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】計測システム、及び計測方法
(51)【国際特許分類】
G01C 15/00 20060101AFI20240808BHJP
【FI】
G01C15/00 103Z
G01C15/00 102C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024005772
(22)【出願日】2024-01-18
(31)【優先権主張番号】P 2023015234
(32)【優先日】2023-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】390023249
【氏名又は名称】国際航業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001335
【氏名又は名称】弁理士法人 武政国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 匠
(57)【要約】
【課題】本願発明の課題は、従来の問題を解決することであり、すなわち2地点間の計測対象の座標を迅速に把握することができる計測システムと、これを用いた計測方法を提供することである。
【解決手段】本願発明の計測システムは、ラインレーザスキャナによって2地点間の計測対象の座標を計測するシステムであって、第1地点に設置される第1計測装置と、第2地点に設置される第2計測装置、空間演算装置を備えたものである。空間演算装置は、第1ラインレーザスキャナが受信した計測対象からの反射波に基づいて第1ラインレーザスキャナを基準とする第1座標を求め、第2ラインレーザスキャナが受信した計測対象からの反射波に基づいて第2ラインレーザスキャナを基準とする第2座標を求める。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2地点に配置されたラインレーザスキャナによって、2地点間の計測対象の座標を計測するシステムであって、
第1地点に設置される第1計測装置と、
第2地点に設置される第2計測装置と、
空間演算装置と、を備え、
前記第1計測装置は、第1支持体と、第1ラインレーザスキャナと、測位衛星からの電波を受信する第1受信機と、を有し、
前記第2計測装置は、第2支持体と、第2ラインレーザスキャナと、測位衛星からの電波を受信する第2受信機と、を有し、
前記第1ラインレーザスキャナと前記第1受信機は、前記第1支持体に取り付けられ、
前記第2ラインレーザスキャナと前記第2受信機は、前記第2支持体に取り付けられ、
前記空間演算装置は、前記第1受信機が測位衛星から受信した電波に基づいて前記第1ラインレーザスキャナの座標を求めるとともに、前記第2受信機が測位衛星から受信した電波に基づいて前記第2ラインレーザスキャナの座標を求め、
また前記空間演算装置は、前記第1ラインレーザスキャナの座標と前記第2ラインレーザスキャナの座標に基づいて前記第1地点と前記第2地点との方向を求めたうえで、該第1ラインレーザスキャナが受信した前記計測対象からの反射波に基づいて該第1ラインレーザスキャナを基準とする第1座標を求めるとともに、該第2ラインレーザスキャナが受信した該計測対象からの反射波に基づいて該第2ラインレーザスキャナを基準とする第2座標を求める、
ことを特徴とする計測システム。
【請求項2】
前記第1計測装置は、前記第1支持体に取り付けられる2以上の第1ターゲットを、さらに有し、
前記第2計測装置は、前記第2支持体に取り付けられる2以上の第2ターゲットを、さらに有し、
前記空間演算装置は、前記第1ラインレーザスキャナからの照射波が前記第2ターゲットで反射した反射波に基づいて該第2ターゲットの座標を求めるとともに前記第2ラインレーザスキャナの傾斜を求め、前記第2ラインレーザスキャナからの照射波が前記第2ターゲットで反射した反射波に基づいて該第1ターゲットの座標を求めるとともに前記第1ラインレーザスキャナの傾斜を求め、
また前記空間演算装置は、前記第1ラインレーザスキャナの傾斜に基づいて前記第1座標を求めるとともに、前記第2ラインレーザスキャナの傾斜に基づいて前記第2座標を求める、
ことを特徴とする請求項1記載の計測システム。
【請求項3】
前記第1座標と前記第2座標との距離があらかじめ定めた近傍閾値を下回るときであって、該第1座標と該第2座標との高低差があらかじめ定めた高低閾値を上回るとき、照射距離が短い該第1座標又は該第2座標を修正座標として設定する座標修正手段を、さらに備えた、
ことを特徴とする請求項1記載の計測システム。
【請求項4】
2地点に配置されたラインレーザスキャナによって、2地点間の計測対象の座標を計測するシステムであって、
第1地点に設置される第1計測装置と、
第2地点に設置される第2計測装置と、
空間演算装置と、を備え、
前記第1計測装置は、第1支持体と、第1ラインレーザスキャナと、測位衛星からの電波を受信する第1受信機と、を有し、
前記第2計測装置は、第2支持体と、2以上の第2ターゲットと、測位衛星からの電波を受信する第2受信機と、を有し、
前記第1ラインレーザスキャナと前記第1受信機は、前記第1支持体に取り付けられ、
前記第2ターゲットと前記第2受信機は、前記第2支持体に取り付けられ、
前記空間演算装置は、前記第1受信機が測位衛星から受信した電波に基づいて前記第1ラインレーザスキャナの座標を求めるとともに、前記第2受信機が測位衛星から受信した電波に基づいて前記第2ターゲットの座標を求め、
また前記空間演算装置は、前記第1ラインレーザスキャナの座標と前記第2ターゲットの座標に基づいて前記第1地点と前記第2地点との方向を求めたうえで、該第1ラインレーザスキャナが受信した前記計測対象からの反射波に基づいて該計測対象の座標を求める、
ことを特徴とする計測システム。
【請求項5】
第1計測装置と第2計測装置を有する計測システムを用いて、2地点間の計測対象の座標を計測する方法であって、
第1支持体と、該第1支持体に取り付けられた第1ラインレーザスキャナと、該第1支持体に取り付けられた第1受信機と、を有する前記第1計測装置を、第1地点に配置する第1装置配置工程と、
第2支持体と、該第2支持体に取り付けられた第2ラインレーザスキャナと、該第2支持体に取り付けられた第2受信機と、を有する前記第2計測装置を、前記第1地点より前方にある第2地点に配置する第2装置配置工程と、
前記第1受信機が測位衛星から電波を受信することによって前記第1ラインレーザスキャナの座標を求める第1器械測位工程と、
前記第2受信機が測位衛星から電波を受信することによって前記第2ラインレーザスキャナの座標を求める第2器械測位工程と、
前記第1ラインレーザスキャナの座標と前記第2ラインレーザスキャナの座標に基づいて前記第1地点と前記第2地点との方向を求めたうえで、前記第1ラインレーザスキャナが前記計測対象で反射した反射波を受信することによって該計測対象の第1座標を取得する第1座標測位工程と、
前記第1ラインレーザスキャナの座標と前記第2ラインレーザスキャナの座標に基づいて前記第1地点と前記第2地点との方向を求めたうえで、前記第2ラインレーザスキャナが前記計測対象で反射した反射波を受信することによって該計測対象の第2座標を取得する第2座標測位工程と、を備え、
前記第1地点と前記第2地点の間における前記計測対象の座標を取得する、
ことを特徴とする計測方法。
【請求項6】
第1計測装置と第2計測装置を有する計測システムを用いて、2地点間の計測対象の座標を計測する方法であって、
第1支持体と、該第1支持体に取り付けられた第1ラインレーザスキャナと、該第1支持体に取り付けられた第1受信機と、を有する前記第1計測装置を、第1地点に配置する第1装置配置工程と、
第2支持体と、該第2支持体に取り付けられた2以上の第2ターゲットと、該第2支持体に取り付けられた第2受信機と、を有する前記第2計測装置を、前記第1地点より前方にある第2地点に配置する第2装置配置工程と、
前記第1受信機が測位衛星から電波を受信することによって前記第1ラインレーザスキャナの座標を求める第1器械測位工程と、
前記第2受信機が測位衛星から電波を受信することによって前記第2ターゲットの座標を求める第2ターゲット測位工程と、
前記第1ラインレーザスキャナの座標と前記第2ターゲットの座標に基づいて前記第1地点と前記第2地点との方向を求めたうえで、前記第1ラインレーザスキャナが前記計測対象で反射した反射波を受信することによって該計測対象の座標を取得する第1座標測位工程と、を備え、
前記第1地点と前記第2地点の間における前記計測対象の座標を取得する、
ことを特徴とする計測方法。
【請求項7】
前記第1地点と前記第2地点の間における前記計測対象の座標を取得した後、前記第1計測装置を前記第2地点より前方にある第3地点に移設する第1装置移設工程を、さらに備え、
前記第1装置移設工程の後に、改めて前記第1器械測位工程を行ったうえで、前記第2地点と前記第3地点の間における前記計測対象の座標を取得する、
ことを特徴とする請求項5又は請求項6記載の計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、道路面や地盤面などを対象とした計測技術に関するものであり、より具体的には、2地点に設置されたラインレーザスキャナによって2地点間にある対象物の座標を計測する計測システムと、これを用いた計測方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
都市部における道路トンネルや地下鉄道トンネル、電力線等をまとめて収容する共同溝などは、通常、道路の地下に設置される。この道路トンネルなどは、シールド工法や推進工法によって掘進したトンネルを利用するのが一般的である。
【0003】
トンネルは地中に空洞を形成したものであるから、シールド工法等によって掘進していく際にその上部の地盤が沈下するケースもある。そこで通常は、トンネル掘削を行っているときには、併せて掘削上部の地表面も監視している。継続的に地表面を計測することによって、異常な沈下がないか監視し、仮に大きな沈下が認められれば早急に対策を講じるわけである。
【0004】
従来、地表面を計測して座標を得るにはトータルステーション(TS:Total Station)を用いた手法が主流であったが、近年では全球測位衛星システム(GNSS:Global Navigation Satellite System)を利用した手法や、3Dレーザスキャナを用いた手法、合成開口レーダ(SAR:Synthetic Aperture Radar)を利用した手法などによって計測されることも少なくない。
【0005】
トータルステーションによる計測は、高精度で座標を取得することができるものの、ターゲットを移動しながら複数個所の計測点を計測し、また器械点を特定するためにバックサイト(既知点)を視準するなど、手間と時間がかかるうえに相当の知識や技量を有する者を確保しなければならない。
【0006】
GNSSによる計測は、やはり高い精度で座標を取得することができるものの、複数の位置を計測するには相応の受信機を設置する必要があるため相当の手間や費用がかかり、都市部や住宅地であればそもそも受信機を設置できないケースもある。
【0007】
3Dレーザスキャナによる計測は、比較的新しい手法で、航空機に搭載していた3Dレーザスキャナを地上の三脚に据えて計測する手法であり、計測距離によるものの高精度で座標を取得することができる。他方、3Dレーザスキャナは著しく高価であって簡単には調達することができず、また必要以上に膨大な数のデータを取得するためその処理は困難を極め、トンネル掘削に伴う地表監視など迅速に結果を把握したいときには採用し難い。
【0008】
SAR(特に干渉SAR)による計測は、広域かつ面的に変位を計測することができるものの、上記した手法に比べて計測精度が劣るうえ、衛星の周期に依存することから短い期間で繰り返し計測するケースでは採用し難い。
【0009】
このように従来の計測手法にはそれぞれ短所があることから、その短所を改善することができる種々の計測手法がこれまで提案されている。例えば特許文献1では、干渉SARによる結果に加え、対象エリアに設置された基準点を直接計測した変位を利用する、いわばハイブリッドの計測手法について提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1に開示される発明は、広域かつ面的に計測することができるという干渉SARの特長と、高い精度で座標を取得することができるというGNSSの特長を併せ持つものであり、比較的長い周期で定期的に結果を得るには好適な計測技術である。しかしながら、トンネル掘削に伴う地表監視など迅速に結果を把握したいケースではやはり採用し難い。
【0012】
本願発明の課題は、従来の問題を解決することであり、すなわち2地点間の計測対象の座標を迅速に把握することができる計測システムと、これを用いた計測方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願発明は、2地点で向かい合ったラインレーザスキャナを使用するとともに、それぞれラインレーザスキャナの位置をGNSSによって計測する、という点に着目したものであり、従来にはなかった発想に基づいてなされた発明である。
【0014】
本願発明の計測システムは、2地点に配置されたラインレーザスキャナによって2地点間の計測対象の座標を計測するシステムであって、第1地点に設置される第1計測装置と、 第2地点に設置される第2計測装置、空間演算装置を備えたものである。第1計測装置は、第1支持体と、第1支持体に取り付けられる第1ラインレーザスキャナ、測位衛星からの電波を受信する第1受信機を有しており、第2計測装置は、第2支持体と、第2支持体に取り付けられる第2ラインレーザスキャナ、測位衛星からの電波を受信する第2受信機を有している。空間演算装置は、第1受信機が測位衛星から受信した電波に基づいて第1ラインレーザスキャナの座標を求めるとともに、第2受信機が測位衛星から受信した電波に基づいて第2ラインレーザスキャナの座標を求める。また空間演算装置は、第1ラインレーザスキャナの座標と第2ラインレーザスキャナの座標に基づいて第1地点と第2地点との方向を求めたうえで、第1ラインレーザスキャナが受信した計測対象からの反射波に基づいて第1ラインレーザスキャナを基準とする第1座標を求めるとともに、第2ラインレーザスキャナが受信した計測対象からの反射波に基づいて第2ラインレーザスキャナを基準とする第2座標を求める。
【0015】
本願発明の計測システムは、第1支持体に取り付けられる2以上の第1ターゲットと、第2支持体に取り付けられる2以上の第2ターゲットをさらに備えたものとすることもできる。この場合、空間演算装置は、第1ラインレーザスキャナからの照射波が第2ターゲットで反射した反射波に基づいて第2ターゲットの座標を求めるとともに第2ラインレーザスキャナの傾斜を求め、第2ラインレーザスキャナからの照射波が第2ターゲットで反射した反射波に基づいて第1ターゲットの座標を求めるとともに第1ラインレーザスキャナの傾斜を求め、さらに第1ラインレーザスキャナの傾斜に基づいて第1座標を求めるとともに、第2ラインレーザスキャナの傾斜に基づいて第2座標を求める。
【0016】
本願発明の計測システムは、座標修正手段をさらに備えたものとすることもできる。この座標修正手段は、第1座標と第2座標との距離があらかじめ定めた近傍閾値を下回るときであって、第1座標と第2座標との高低差があらかじめ定めた高低閾値を上回るとき、照射距離が短い方に係る座標(第1座標又は第2座標)を修正座標として設定する手段である。
【0017】
本願発明の計測システムは、2以上の第2ターゲットが設けられた第2計測装置を備えたものとすることもできる。この場合、空間演算装置は、第2受信機が測位衛星から受信した電波に基づいて第2ターゲットの座標を求めるとともに、第1ラインレーザスキャナの座標と第2ターゲットの座標に基づいて第1地点と第2地点との方向を求めたうえで、第1ラインレーザスキャナが受信した計測対象からの反射波に基づいて計測対象の座標を求める。
【0018】
本願発明の計測方法は、本願発明の計測システムを用いて2地点間の計測対象の座標を計測する方法であって、第1装置配置工程と第2装置配置工程、第1器械測位工程、第2器械測位工程、第1座標測位工程、第2座標測位工程を備えた方法である。このうち第1装置配置工程では、第1計測装置を第1地点に配置し、第2装置配置工程では、第2計測装置を第1地点より前方にある第2地点に配置し、第1器械測位工程では、第1受信機が測位衛星から電波を受信することによって第1ラインレーザスキャナの座標を求め、第2器械測位工程では、第2受信機が測位衛星から電波を受信することによって第2ラインレーザスキャナの座標を求める。また第1座標測位工程と第2座標測位工程では、第1ラインレーザスキャナの座標と第2ラインレーザスキャナの座標に基づいて第1地点と第2地点との方向を求める。そして第1座標測位工程では、第1ラインレーザスキャナが計測対象で反射した反射波を受信することによって計測対象の第1座標を取得し、第2座標測位工程では、第2ラインレーザスキャナが計測対象で反射した反射波を受信することによって計測対象の第2座標を取得する。これにより、第1地点と第2地点の間における計測対象の座標を取得することができる。
【0019】
本願発明の計測方法は、本願発明の計測システムを用いて2地点間の計測対象の座標を計測する方法であって、第1装置配置工程と第2装置配置工程、第1器械測位工程、第2器械測位工程、第1座標測位工程、第2座標測位工程を備えた方法である。
【0020】
本願発明の計測方法は、2以上の第2ターゲットが設けられた第2計測装置を第2地点に配置する方法とすることもできる。この場合、第2ターゲット測位工程では、第2受信機が測位衛星から電波を受信することによって第2ターゲットの座標を求める。また第1座標測位工程では、第1ラインレーザスキャナの座標と第2ターゲットの座標に基づいて第1地点と第2地点との方向を求めたうえで、第1ラインレーザスキャナが計測対象で反射した反射波を受信することによって計測対象の座標を取得する。
【0021】
本願発明の計測システム、及び計測方法には、次のような効果がある。
(1)2地点間の計測対象の座標を迅速かつ容易に取得することができる。その結果、仮に大きな沈下が認められれば早急に対策を講じることができる。
(2)比較的高い密度でしかも高い精度で2点間の座標を取得することができる。
(3)第1計測装置と第2計測装置それぞれにターゲットを設けることによって、ラインレーザスキャナの仰角を補正したうえで2点間の座標を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本願発明の計測システムの主な構成を示すブロック図。
【
図2】第1計測装置や第2計測装置を模式的に示す正面図。
【
図3】第1ラインレーザスキャナによって地盤面を計測し、第2ラインレーザスキャナによって地盤面を計測している状況を模式的に示す側面図。
【
図4】(a)は第1ラインレーザスキャナによって第2ターゲットを計測し、第2ラインレーザスキャナによって第1ターゲットを計測している状況を模式的に示す側面図、(b)は第2支持体が傾いた第2計測装置を模式的に示す側面図。
【
図5】本願発明の単独式計測システムの主な構成を示すブロック図。
【
図6】第1ラインレーザスキャナによって地盤面を計測している状況を模式的に示す側面図。
【
図7】本願発明の計測方法の主な手順の流れを示すフロー図。
【
図8】本願発明の計測方法の主な手順の流れを示すステップ図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本願発明の計測システム、及び計測方法の実施形態の一例を、図に基づいて説明する。なお、本願発明は2点間にある対象物(以下、「計測対象」という。)を計測する技術であって様々な計測対象を計測することができるが、便宜上ここでは2点間の地盤面を計測対象とする例で説明する。
【0024】
1.計測システム
はじめに、本願発明の計測システムについて説明する。なお、本願発明の計測方法は、本願発明の計測システムを用いて計測対象を計測する方法である。したがって、まずは本願発明の計測システムについて説明し、その後に本願発明の計測方法について説明することとする。
【0025】
図1は、本願発明の計測システム100の主な構成を示すブロック図である。この図に示すように本願発明の計測システム100は、第1計測装置110Aと第2計測装置110B、空間演算装置120を含んで構成され、さらに座標修正手段を含んで構成することもできる。このうち第1計測装置110Aは第1地点に設置され、第2計測装置110Bは第2地点に設置され、そして第1地点と第2地点を結ぶ直線(線分)上の地盤面が計測される。なお便宜上ここでは、
図1に示すように第1地点側のことを「後方」と、第2地点側のことを「前方」として説明する。
【0026】
また第1計測装置110Aは、第1ラインレーザスキャナ111Aと第1受信機112A、第1支持体114Aを含んで構成され、さらに第1ターゲット113Aを含んで構成することもできる。同様に第2計測装置110Bは、第2ラインレーザスキャナ111Bと第2受信機112B、第2支持体114Bを含んで構成され、さらに第2ターゲット113Bを含んで構成することもできる。なお便宜上ここでは、第1計測装置110Aと第2計測装置110Bを総称するときは単に「計測装置110」ということとする。同様に、第1ラインレーザスキャナ111Aと第2ラインレーザスキャナ111Bを総称するときは単に「ラインレーザスキャナ111」と、第1受信機112Aと第2受信機112Bを総称するときは単に「受信機112」と、第1ターゲット113Aと第2ターゲット113Bを総称するときは単に「ターゲット113」と、第1支持体114Aと第2支持体114Bを総称するときは単に「支持体114」ということとする。
【0027】
計測システム100を構成する各手段のうち、空間演算装置120と座標修正手段は、専用のものとして製造することもできるし、汎用的なコンピュータ装置を利用することもできる。すなわち、所定のプログラムによってコンピュータ装置に演算処理を実行させることで、それぞれの手段特有の処理を行うわけである。このコンピュータ装置は、CPU等のプロセッサ、ROMやRAMといったメモリを具備しており、さらにマウスやキーボード等の入力手段やディスプレイを含むものもあり、例えばパーソナルコンピュータ(PC)やサーバなどによって構成することができる。
【0028】
図2は、計測装置110(第1計測装置110Aや第2計測装置110B)を模式的に示す正面図である。この図に示すように計測装置110は、支持体114にラインレーザスキャナ111と受信機112、ターゲット113を取り付けられたものである。このうちラインレーザスキャナ111は、略同一(同一を含む)の平面内にレーザを照射し、何らかの物に反射したパルス(以下、単に「反射波」という。)を受信するものである。ただし本実施形態では地盤面を計測することから、レーザが略鉛直面(
図1)内に照射されるようラインレーザスキャナ111は配置される。なお
図2の例では支持体114に支持板PSを取り付け、この支持板PS上にラインレーザスキャナ111を載置しているが、支持体114にラインレーザスキャナ111を直接取り付けることもできる。
【0029】
受信機112は、GNSS測位に用いられるものであり、すなわち測位衛星からの電波(搬送波)を受信する機器である。そのため受信機112は、使用時における支持体114の頂部に取り付けるとよい。この受信機112としては、キネマティック測位(特に、リアルタイムキネマティック測位)に対応するものを採用することができ、そのほかスタティック測位に対応するものや、単独測位に対応するもの、あるいはスタティック測位とキネマティック測位の両方に対応するものを採用することもできる。
【0030】
ターゲット113は、ラインレーザスキャナ111によって照射されたパルス(以下、単に「照射波」という。)を反射するものである。より詳しくは、第2ラインレーザスキャナ111Bからの照射波を第1ターゲット113Aが反射し、第1ラインレーザスキャナ111Aからの照射波を第2ターゲット113Bが反射する。このターゲット113は高い反射強度で照射波を反射することから、その反射強度によって他の対象物(例えば、地盤面)とは異なる物、つまりターゲット113であることを判別することができる。なお支持体114は、作業者が支えたり、三脚を利用したり、他の支持治具を用いたりすることで、その軸方向が略鉛直(鉛直)となるように配置することが望ましいが、状況によってはやや傾くことも考えられる。そのため、支持体114の傾斜を把握することができるように、一つの支持体114には2以上(図では2つ)のターゲット113を取り付けるとよい。
【0031】
ラインレーザスキャナ111からレーザが照射されるとその照射時刻が記録されるとともに、反射波の受信時刻が記録され、またレーザ照射角(この場合、仰角)も記録される。したがって、照射時刻と受信時刻との時間差(その半分)によって計測点(照射波が反射した地点)までの距離(以下、「照射距離」という。)が得られ、またレーザパルス照射時における照射姿勢も記録されていることから、レーザパルスの照射点(つまり、計測点)の座標を得ることができる。なおここで得られる座標は、ラインレーザスキャナ111がレーザを照射する位置(以下、「レーザ照射点」という。)からの水平距離と高低差からなる座標であり、つまり鉛直面に設定されレーザ照射点を原点とする座標系(以下、「2次元座標系」という。)の座標であって、いわば任意座標(以下、単に「2次元任意座標」という。)である。例えば、第1地点と第2地点を結ぶ軸を「X軸」、鉛直軸を「Z軸」として2次元座標系を設定した場合、2次元任意座標としては(X,Z)が取得されるわけである。
【0032】
一方、受信機112が測位衛星からの搬送波を受信する測位、つまりGNSS測位によって得られる受信機112の位置座標(以下、「受信機座標」という。)は3次元座標であり、日本測地系や世界測地系など広範囲に設定される座標系(以下、「絶対座標系」という。)に基づくいわゆる絶対座標(以下、単に「3次元絶対座標」という。)である。GNSS測位によって得られる3次元絶対座標を利用することによって、レーザ照射点の3次元絶対座標を求めることができる。
【0033】
レーザ照射点の3次元絶対座標を求めるにあたっては、受信機112とレーザ照射点が十分接近しているとして、GNSS測位によって得られる受信機座標をそのままレーザ照射点の座標(3次元絶対座標)とみなすことができる。あるいは支持体114が略鉛直姿勢であると考え、受信機112とレーザ照射点との間隔L(
図2)で補正する(つまり、受信機座標のうちZ座標から間隔Lを差し引く)ことによってレーザ照射点の3次元絶対座標を求めることもできる。
【0034】
図3は、第1計測装置110Aの第1ラインレーザスキャナ111Aによって地盤面を計測し、第2計測装置110Bの第2ラインレーザスキャナ111Bによって地盤面を計測している状況を模式的に示す側面図である。この図に示すように、第1ラインレーザスキャナ111Aと第2ラインレーザスキャナ111Bが互いに向き合うように、換言すれば第1ラインレーザスキャナ111Aの照射面(
図1)と第2ラインレーザスキャナ111Bの照射面(
図1)が概ね一致するように、第1計測装置110Aと第2計測装置110Bは設置される。つまり、第1ラインレーザスキャナ111Aは第2地点に向かってレーザを照射し、第2ラインレーザスキャナ111Bは第1地点に向かってレーザを照射するわけである。
【0035】
支持体114が略鉛直姿勢であると考えることができれば、第1地点と第1受信機112Aは同じ平面位置(水平面における位置)となり、第2地点と第2受信機112Bは同じ平面位置となる。したがって、第1受信機112Aの受信機座標(特に、平面座標)と第2受信機112Bの受信機座標(特に、平面座標)に基づいて、第1地点から第2地点を見た方位(あるいは、第2地点から第1地点を見た方位)を求めることができる。つまり、第1ラインレーザスキャナ111Aや第2ラインレーザスキャナ111Bによる照射方向(特に、水平投影面の方向)を求めることができ、ラインレーザスキャナ111測位に係る2次元座標系のうち水平軸(X軸)の方位を決定することができる。
【0036】
このようにラインレーザスキャナ111の照射方向(X軸)の方位を決定することができれば、ラインレーザスキャナ111測位に係る2次元座標系を、GNSS測位に係る絶対座標系に合致するように回転(水平回転)することができる。また、第1ラインレーザスキャナ111Aに係るレーザ照射点(以下、「第1レーザ照射点」という。)の3次元絶対座標や、第2ラインレーザスキャナ111Bに係るレーザ照射点(以下、「第2レーザ照射点」という。)の3次元絶対座標を用いることによって、ラインレーザスキャナ111測位に係る2次元座標系を、GNSS測位に係る絶対座標系に合致するように移動することができる。すなわち、第1受信機112Aの受信機座標と第2受信機112Bの受信機座標、第1レーザ照射点の3次元絶対座標、第2レーザ照射点の3次元絶対座標を得ることができれば、ラインレーザスキャナ111測位によって取得される2次元任意座標を、3次元絶対座標に変換することができるわけである。例えば、ラインレーザスキャナ111によって得られる照射距離とレーザ照射角、照射方向(X軸)の方位に基づいて、換言すればレーザ照射点を中心とする球面上の位置を、「レーザ照射点の3次元絶対座標」として求めることができる。
【0037】
ここまで説明した各座標を算出する処理は、空間演算装置120(
図1)によって実行される。すなわち、受信機112が受信した情報を空間演算装置120が受信し、その受信した情報に基づいて空間演算装置120が第1受信機112Aや第2受信機112Bの受信機座標を算出する。また空間演算装置120は、受信機座標と、受信機112とレーザ照射点との間隔Lに基づいて、第1レーザ照射点や第2レーザ照射点に係る3次元絶対座標を算出する。さらに空間演算装置120は、ラインレーザスキャナ111測位によって得られた情報を受信し、その受信した情報に基づいて地盤面の計測点の2次元任意座標を算出するともに、その2次元任意座標を3次元絶対座標に変換する。
【0038】
第1計測装置110Aが第1ターゲット113Aを備え、第2計測装置110Bが第2ターゲット113Bを備える場合、
図4(a)に示すようにラインレーザスキャナ111は互いのターゲット113を照射してその座標を取得する。
図4(a)は、第1計測装置110Aの第1ラインレーザスキャナ111Aによって第2計測装置110Bの第2ターゲット113Bを計測し、第2計測装置110Bの第2ラインレーザスキャナ111Bによって第1計測装置110Aの第1ターゲット113Aを計測している状況を模式的に示す側面図である。
【0039】
既述したように支持体114は、その軸方向が略鉛直(鉛直)となるように配置することが望ましいが、状況によってはやや傾くことも考えられる。例えば
図4(b)では、第1計測装置110Aの第1支持体114Aは略鉛直に配置されているものの、第2計測装置110Bの第2支持体114Bは第1計測装置110Aの方にやや傾いて配置されている。このように支持体114が傾斜していると、ラインレーザスキャナ111も傾斜することとなり、その傾斜に係る情報が与えられなければ空間演算装置120は正確な座標を算出することができない。
【0040】
この場合、支持体114に取り付けられた2以上のターゲット113を計測してそれぞれ座標を取得するとよい。具体的には
図4に示すように、第1ラインレーザスキャナ111Aによって上下2つの第2ターゲット113Bを計測してそれぞれの座標を取得し、第2ラインレーザスキャナ111Bによって上下2つの第1ターゲット113Aを計測してそれぞれの座標を取得する。そして空間演算装置120が、ターゲット113の座標に基づいて第1支持体114Aや第2支持体114Bの傾斜(例えば、鉛直軸からの傾き)を求める。さらに空間演算装置120は、第1支持体114Aの傾斜に基づいて第1ラインレーザスキャナ111Aの照射方向(つまり、支持体114の傾斜に対して垂直方向)を求め、第2支持体114Bの傾斜に基づいて第2ラインレーザスキャナ111Bの照射方向を求め、それぞれの照射方向を勘案したうえで地盤面上の計測点の3次元絶対座標を算出する。なお、第1支持体114Aや第2支持体114Bの傾斜を求めるにあたっては、ラインレーザスキャナ111測位による2次元任意座標を用いることもできるし、空間演算装置120によって変換された3次元絶対座標を用いることもできる。
【0041】
図3に示すように、第1ラインレーザスキャナ111Aが2地点(第1地点と第2地点)間の地盤面を計測して計測点の3次元絶対座標(以下、単に「第1座標」という。)を取得するとともに、第2ラインレーザスキャナ111Bが2地点間の地盤面を計測して計測点の3次元絶対座標(以下、単に「第2座標」という。)を取得する。このように両方からレーザを照射することによって密な計測点が得られ、すなわち2地点間の地盤面を漏れなく計測することができる。
【0042】
ところで、第1ラインレーザスキャナ111Aと第2ラインレーザスキャナ111Bが略同じ位置を計測することもある。換言すれば、平面座標が近似した第1座標と第2座標が得られることもある。この場合、それぞれの標高が近似していれば、両者ともに採用することもできるし、あるいは平均した値を採用することもできる。これに対して、互いの標高が大きく相違している場合、いずれか一方(第1座標か第2座標)の精度が十分でないいわゆるノイズであることが考えられる。一般的に、レーザの反射角度が小さいほど測位精度が劣ることが知られており、つまり
図3に示すように照射距離が長いほど測位精度が劣ることとなり、ノイズとなりやすいわけである。
【0043】
座標修正手段は、このようなノイズを排除して適正な座標を設定する手段である。以下、座標修正手段が適正な座標を設定する処理について説明する。まず座標修正手段は、第1座標と第2座標それぞれの平面座標に基づいて2点間距離(特に、水平距離)を算出する。次に、第1座標と第2座標との距離があらかじめ定めた閾値(以下、「近傍閾値」という。)を下回る(あるいは以下である)第1座標と第2座標からなる組み合わせを抽出する。続いて、近傍閾値を基準として抽出された第1座標と第2座標それぞれの標高に基づいて高低差を算出する。そして、その高低差があらかじめ定めた閾値(以下、「高低閾値」という。)を上回る(あるいは以上である)とき、第1座標と第2座標のうちその照射距離が長い方を排除するとともに、照射距離が短い方を修正座標として設定する。
【0044】
ここまで、第1計測装置110Aと第2計測装置110Bがいずれもラインレーザスキャナ111を備える形態について説明してきたが、本願発明の計測システム100は一方の計測装置110のみがラインレーザスキャナ111を備えるもの(以下、特に「単独式計測システム100A」という。)とすることもできる。
図5は、単独式計測システム100Aの主な構成を示すブロック図である。この図に示すように単独式計測システム100Aは、ここまで説明してきた計測システム100と同様、第1地点に設置される第1計測装置110Aと、第2地点に設置される第2計測装置110B、空間演算装置120を含んで構成される。このうち第2計測装置110Bは、第2受信機112Bと、2以上の第2ターゲット113B、第2支持体114Bを含んで構成され、第2受信機112Bと第2ターゲット113Bが第2支持体114Bに取り付けられたものである。
【0045】
単独式計測システム100Aは、第1計測装置110Aのみが第1ラインレーザスキャナ111Aを備えていることから、直接的にはこの第1計測装置110Aによって盤面の計測が行われる。しかしながら、第1ラインレーザスキャナ111Aの照射方向(X軸)の方位が不明であれば、レーザ照射点の3次元絶対座標(つまり、地盤面の計測点)を得ることができない。そこで単独式計測システム100Aでは、第2計測装置110Bの第2ターゲット113Bを利用して、第1ラインレーザスキャナ111Aの照射方向を求めることとした。以下、単独式計測システム100Aが地盤面の3次元絶対座標を求める手順について説明する。
【0046】
まず、第1受信機112Aが測位衛星から受信した電波に基づいて第1ラインレーザスキャナ111Aの3次元絶対座標を求め、同様に、第2受信機112Bが測位衛星から受信した電波に基づいて第2ターゲット113Bの3次元絶対座標を求める。第2ターゲット113Bの3次元絶対座標を求めるにあたっては、第2受信機112Bと第2ターゲット113Bとの間隔に基づいて第2ターゲット113Bの3次元絶対座標を求めることができる。第1ラインレーザスキャナ111Aによって、2以上の第2ターゲット113Bの2次元任意座標がそれぞれ得られていることから、第2支持体114Bの傾斜(例えば、鉛直軸からの傾き)を求めることができる。したがって、第2受信機112Bの3次元絶対座標を基準とし、第2受信機112Bと第2ターゲット113Bとの間隔と、第2支持体114Bの傾斜を用いれば、第2ターゲット113Bの3次元絶対座標を求めることができるわけである。
【0047】
第1ラインレーザスキャナ111Aと第2ターゲット113Bの3次元絶対座標が得られると、これらの3次元絶対座標に基づいて第1ラインレーザスキャナ111Aの照射方向の方位を求める。既述したとおりターゲット113は高い反射強度で照射波を反射することから、ラインレーザスキャナ111が受信した信号のうち第2ターゲット113Bで反射した信号を選出することができる。つまり、第2ターゲット113Bで反射した信号を確認することができれば第1ラインレーザスキャナ111Aは正しく第2地点に向かって照射していると判断することができ、これに対して第2ターゲット113Bの反射を確認できないときは第2地点に向かって照射していないと判断することができる。その場合、第2地点に向かって照射するように、第1ラインレーザスキャナ111Aの向きを調整するとよい。
【0048】
図6は、第1計測装置110Aの第1ラインレーザスキャナ111Aによって地盤面を計測している状況を模式的に示す側面図である。この図に示すように、第1ラインレーザスキャナ111Aと第2ターゲット113Bが互いに向き合うように第1計測装置110Aと第2計測装置110Bは設置され、そして第1ラインレーザスキャナ111Aが第2地点に向かってレーザを照射する。ここで、第1ラインレーザスキャナ111Aの照射方向(X軸)の方位が得られていることから、第1ラインレーザスキャナ111Aの測位に係る2次元座標系を、GNSS測位に係る絶対座標系に変換することができるわけである。例えば、第1ラインレーザスキャナ111Aによって得られる照射距離とレーザ照射角、照射方向(X軸)の方位に基づいて、換言すればレーザ照射点を中心とする球面上の位置を、「レーザ照射点の3次元絶対座標」として求めることができる。
【0049】
2.計測方法
続いて、本願発明の計測方法ついて
図7と
図8を参照しながら説明する。なお、本願発明の計測方法は、ここまで説明した計測システム100を用いて計測対象を計測する方法である。したがって、計測システム100で説明した内容と重複する説明は避け、本願発明の計測方法に特有の内容のみ説明することとする。すなわち、ここに記載されていない内容は、「2.計測システム」で説明したものと同様である。
【0050】
図7は本願発明の計測方法の主な手順の流れを示すフロー図であり、
図8は本願発明の計測方法の主な手順の流れを示すステップ図である。本願発明の計測システム100を用いて2地点(第1地点と第2地点)間の地盤面を計測するにあたっては、まず
図8(a)に示すように第1地点に第1計測装置110Aを設置し(
図7のStep201)、
図8(b)に示すように第2地点に第2計測装置110Bを設置する(
図7のStep202)。
【0051】
第1計測装置110Aと第2計測装置110Bを設置すると、
図8(c)に示すように第1受信機112Aが測位衛星STから受信した搬送波に基づいて空間演算装置120が第1受信機112Aの受信機座標を算出するとともに、
図8(d)に示すように第2受信機112Bが測位衛星STから受信した搬送波に基づいて空間演算装置120が第2受信機112Bの受信機座標を算出する(
図7のStep203)。
【0052】
それぞれの受信機座標が得られると、
図8(e)に示すように第1ラインレーザスキャナ111Aによって第2ターゲット113Bを測定するとともに、
図8(f)に示すように第2ラインレーザスキャナ111Bによって第1ターゲット113Aを測定する(
図7のStep204)。そして空間演算装置120が、ターゲット113の座標に基づいて支持体114の傾斜を求めるとともに、ラインレーザスキャナ111の照射方向を求める。
【0053】
単独式計測システム100Aを利用する場合、第1ラインレーザスキャナ111Aによって第2ターゲット113Bを測定することで第2支持体114Bの傾斜を求め、第2受信機112Bの3次元絶対座標と、第2受信機112Bと第2ターゲット113Bとの間隔、第2支持体114Bの傾斜を用いて第2ターゲット113Bの3次元絶対座標を求める。そして、第1ラインレーザスキャナ111Aと第2ターゲット113Bの3次元絶対座標に基づいて、第1ラインレーザスキャナ111Aの照射方向の方位を求める。
【0054】
それぞれラインレーザスキャナ111の照射方向が得られると、
図8(g)に示すように第1ラインレーザスキャナ111Aによって地盤面を計測して第1座標を取得し、
図8(h)に示すように第2ラインレーザスキャナ111Bよって地盤面を計測して第2座標を取得する。単独式計測システム100Aを利用する場合は、第1ラインレーザスキャナ111Aによって地盤面を計測して座標を取得する。ここまでの一連の処理(
図7のStep201~205)を、定期的に繰り返し行うことによって、第1地点と第2地点と間の地盤面に変化(特に標高)がないか監視していく。
【0055】
「第1地点と第2地点」の前方の区間となる「第2地点と第3地点」を計測する場合、第1計測装置110Aと第2計測装置110Bをともに移設することもできるし、第1計測装置110Aのみを移設することもできる(
図7のStep206)。この場合、
図8(i)に示すように第1計測装置110Aを第1地点から第3地点に移設するとともに、第2地点に設置されたままの第2計測装置110Bの向きを変える。そして、後方(第2地点)の第2計測装置110Bと前方(第3地点)の第1計測装置110Aが互いに向き合った状態で、一連の処理(
図7のStep201~205)を行う。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本願発明の計測システムは、掘進中のトンネル上部を監視するために利用できるほか、地すべりなど地盤の変状を監視するためなど、種々の監視に利用することができる。本願発明を利用すれば、建設事故や地すべり等に伴う自然災害を事前に回避することができることを考えれば、産業上利用できるうえに社会的にも貢献が期待できる発明といえる。
【符号の説明】
【0057】
100 本願発明の計測システム
100A 単独式本願発明の計測システム
110 (計測システムの)計測装置
111 (計測装置の)ラインレーザスキャナ
112 (計測装置の)受信機
113 (計測装置の)ターゲット
114 (計測装置の)支持体
110A (計測システムの)第1計測装置
111A (第1計測装置の)第1ラインレーザスキャナ
112A (第1計測装置の)第1受信機
113A (第1計測装置の)第1ターゲット
114A (第1計測装置の)第1支持体
110B (計測システムの)第2計測装置
111B (第2計測装置の)第2ラインレーザスキャナ
112B (第2計測装置の)第2受信機
113B (第2計測装置の)第2ターゲット
114B (第2計測装置の)第2支持体
120 (計測システムの)空間演算装置
PS 支持板
ST 測位衛星