(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110935
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】ストリング付きステントの製造方法、ストリング付きステント及びステントデリバリー装置
(51)【国際特許分類】
A61F 2/844 20130101AFI20240808BHJP
A61F 2/95 20130101ALI20240808BHJP
【FI】
A61F2/844
A61F2/95
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024007199
(22)【出願日】2024-01-22
(31)【優先権主張番号】P 2023015509
(32)【優先日】2023-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000200035
【氏名又は名称】SBカワスミ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介
(72)【発明者】
【氏名】向井 智和
(72)【発明者】
【氏名】宮久 優子
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA41
4C267AA47
4C267BB19
4C267BB40
4C267CC09
4C267CC23
4C267CC24
4C267EE03
4C267FF05
4C267GG33
4C267HH08
(57)【要約】
【課題】ステントを正確に留置させることを可能とする。
【解決手段】ストリング付きステント4の製造方法は、ストリング6に第1曲げ部12aを形成し、第1曲げ部12aよりもストリング6の他端側6hにある部位を、ステント5の周回方向一方の回りに、第1曲げ部12aとステント5との間に通して第1結び目11aを形成する第1結び目形成工程と、第1曲げ部12aとステント5の間に通された部位に第2曲げ部12bを形成し、第2曲げ部12bよりもストリング6の他端側6hにある部位を、第1曲げ部12aに通した方向と逆方向である、ステント5の周回方向他方の回りに、第2曲げ部12bとステント5との間に通して第2結び目11bを形成する第2結び目形成工程と、を備える。ステント5の軸線方向AX視における第1側5xに第1結び目11aを形成し、第1側5xとは逆側にある第2側5yに第2結び目11bを形成する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の体内の管状部内に通されて、自身の弾性により拡張して前記管状部に留置可能なステントと、
前記管状部への前記ステントの挿入時に、収縮した前記ステントの拡張を制限して収縮状態を維持するように、前記ステントの周囲を縛るストリングと、を用意して、
前記ストリングの一端側から前記ストリングの他端側に複数の結び目を形成するストリング付きステントの製造方法であって、
該ストリングに第1曲げ部を形成し、
該第1曲げ部を前記ステントに沿わせ、前記第1曲げ部よりも前記ストリングの前記他端側にある部位を、前記ステントの周回方向一方の回りに、前記第1曲げ部と前記ステントとの間に通して第1結び目を形成する第1結び目形成工程と、
前記第1曲げ部と前記ステントの間に通された部位に第2曲げ部を形成し、
前記第2曲げ部よりも前記ストリングの他端側にある部位を、前記第1曲げ部に通した方向と逆方向である、前記ステントの周回方向他方の回りに、前記第2曲げ部と前記ステントとの間に通して第2結び目を形成する第2結び目形成工程と、を備え、
前記第1結び目形成工程において、前記ステントの軸線方向視における第1側に第1結び目を形成し、
前記第2結び目形成工程において、前記ステントの軸線方向視における前記第1側とは逆側にある第2側に第2結び目を形成し、
前記第1結び目形成工程と前記第2結び目形成工程を交互に繰り返し行って、前記ストリングによって前記ステントを縛ることを特徴とするストリング付きステントの製造方法。
【請求項2】
前記ストリングを前記ステントに仮止めを行う仮止め工程を更に備え、
該仮止め工程において、
前記第1結び目を形成した後に、前記ストリングにおける前記第1曲げ部と前記ステントとの間に通された部位に第3曲げ部を形成し、
該第3曲げ部よりも前記ストリングの前記他端側にある部位を、前記第1曲げ部に通した方向と同じ方向である、前記ステントの周回方向一方の回りに、前記第3曲げ部と前記第1結び目との間に通して仮止め部を形成して、前記第3曲げ部と前記ステントの間に通された部位に前記第1曲げ部を再度形成する請求項1に記載のストリング付きステントの製造方法。
【請求項3】
前記ストリングを前記ステントに仮止めを行う仮止め工程を更に備え、
該仮止め工程において、
前記第2結び目を形成した後に、前記ストリングにおける前記第2曲げ部と前記ステントとの間に通された部位に第4曲げ部を形成し、
該第4曲げ部よりも前記ストリングの他端側にある部位を、前記第2曲げ部に通した方向と同じ方向である、前記ステントの周回方向他方の回りに、前記第4曲げ部と前記第2結び目との間に通して仮止め部を形成して、前記第4曲げ部と前記ステントの間に通された部位に前記第2曲げ部を再度形成する請求項1に記載のストリング付きステントの製造方法。
【請求項4】
前記仮止め工程は、前記ステントの軸線方向における同じ位置において、前記第1結び目及び前記第2結び目を交互に1以上形成した後に行われる請求項2又は3に記載のストリング付きステントの製造方法。
【請求項5】
被験者の体内の管状部内に通されて、自身の弾性により拡張して前記管状部に留置可能なステントと、
前記管状部への前記ステントの挿入時に、収縮した前記ステントの拡張を制限して収縮状態を維持するように、前記ステントの周囲を縛るストリングと、を備え、
該ストリングは、
前記ステントの軸線方向視における第1側に形成された第1結び目と、
前記ステントの軸線方向視における前記第1側とは逆側にある第2側に形成された第2結び目と、を備えることを特徴とするストリング付きステント。
【請求項6】
前記第1結び目と、前記第2結び目と、は交互に複数形成されており、それぞれ前記ステントの軸線方向に沿って配置されている請求項5に記載のストリング付きステント。
【請求項7】
前記ストリングにおける前記第1結び目と前記第2結び目との間には、前記ステントの軸線方向に直線的に延在する部位が非形成である請求項6に記載のストリング付きステント。
【請求項8】
請求項4に記載のストリング付きステントの製造方法で製造されたストリング付きステントであって、
前記仮止め部は、複数の前記第1結び目及び複数の前記第2結び目が設けられている領域の端部に設けられている請求項7に記載のストリング付きステント。
【請求項9】
請求項5から7のいずれか一項に記載のストリング付きステントと、
該ストリング付きステントをデリバリーするデリバリー部と、を備えることを特徴とするステントデリバリー装置。
【請求項10】
前記ストリングは複数設けられており、
複数の前記ストリングの少なくとも一部は、前記ステントの軸線方向の異なる領域を縛り付けている請求項9に記載のステントデリバリー装置。
【請求項11】
前記ストリング付きステントは、消化器管内に留置されるものであり、
複数の前記ストリングは、牽引されたときに、肛門側から口側に解けるように、前記第1結び目及び前記第2結び目が形成されている請求項9に記載のステントデリバリー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体管腔の内部に留置されるストリング付きステントに係り、ストリング付きステントの製造方法、ストリング付きステント及びステントデリバリー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ステントは、生体管腔内に生じた狭窄部や閉塞部、癒着部(以下、「狭窄部等」という場合がある。)等に留置して用いられる。ステントは一般に拡張可能な網目状の小さな金属製の筒として形成される。ステントには、超弾性金属で作成され、外周からストリングで縛り付けられることにより縮径された状態で、癒着部等に搬送された後に、ストリングによる拘束を解除することにより拡張する自己拡張型のステントがある。
【0003】
例えば、特許文献1には、ストリング(同文献には、線材と記載。)により縮径した状態に保持されたステントが記載されており、このストリングの動端側線材を引くことにより容易にステントを拡張可能なストリングの縛り方が開示されている。特許文献1のステントを縛るストリングは、ステントの軸線方向に延在する部位と、ステントの周方向に延在する部位と、これら部位を掛け結びして交差する十字状の交差部と、を有し、複数の交差部がステントの周方向における一箇所において軸線方向に直線状に並んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ステントを拡張すると、ステントに接触する狭窄部等からの反力がステントに加わる。特許文献1のストリングにおいては、上記のように、複数の交差部がステントの周方向における一箇所において軸線方向に直線状に並んでいる。
このため、特許文献1のステントに対するストリングの縛り方によると、ステントを拡張する際に、ステントの周方向における一箇所が先に拡張することになる。このため、ステントにおいて先に拡張した部位が狭窄部等を先に押圧することになり、当該部位に対して狭窄部等から反力が加わることになる。
よって、特許文献1の技術では、狭窄部等からの反力に左右されずに留置目標位置に対してステントを正確に留置させることについて、改善の余地があった。
【0006】
本発明は上述のような課題に鑑みてなされたものであり、留置目標位置に対してステントを正確に留置させることが可能なストリング付きステントの製造方法、ストリング付きステント及びステントデリバリー装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のストリング付きステントの製造方法は、被験者の体内の管状部内に通されて、自身の弾性により拡張して前記管状部に留置可能なステントと、前記管状部への前記ステントの挿入時に、収縮した前記ステントの拡張を制限して収縮状態を維持するように、前記ステントの周囲を縛るストリングと、を用意して、前記ストリングの一端側から前記ストリングの他端側に複数の結び目を形成するストリング付きステントの製造方法であって、該ストリングに第1曲げ部を形成し、該第1曲げ部を前記ステントに沿わせ、前記第1曲げ部よりも前記ストリングの前記他端側にある部位を、前記ステントの周回方向一方の回りに、前記第1曲げ部と前記ステントとの間に通して第1結び目を形成する第1結び目形成工程と、前記第1曲げ部と前記ステントの間に通された部位に第2曲げ部を形成し、前記第2曲げ部よりも前記ストリングの他端側にある部位を、前記第1曲げ部に通した方向と逆方向である、前記ステントの周回方向他方の回りに、前記第2曲げ部と前記ステントとの間に通して第2結び目を形成する第2結び目形成工程と、を備え、前記第1結び目形成工程において、前記ステントの軸線方向視における第1側に第1結び目を形成し、前記第2結び目形成工程において、前記ステントの軸線方向視における前記第1側とは逆側にある第2側に第2結び目を形成し、前記第1結び目形成工程と前記第2結び目形成工程を交互に繰り返し行って、前記ストリングによって前記ステントを縛ることを特徴とする。
【0008】
本発明のストリング付きステントは、網体で構成され、被験者の体内の管状部内に通されて、自身の弾性により拡張して前記管状部に留置可能なステントと、前記管状部への前記ステントの挿入時に、収縮した前記ステントの拡張を制限して収縮状態を維持するように、前記ステントの周囲を縛るストリングと、を備え、該ストリングは、前記ステントの軸線方向視における第1側に形成された第1結び目と、前記ステントの軸線方向視における前記第1側とは逆側にある第2側に形成された第2結び目と、を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明のステントデリバリー装置は、上記のストリング付きステントと、該ストリング付きステントをデリバリーするデリバリー部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明のストリング付きステントの製造方法、ストリング付きステント及びステントデリバリー装置によれば、留置目標位置に対して、ステントを正確に留置させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態に係るステントデリバリー装置を示す模式的な全体図である。
【
図2】ステントについてのストリングによる縛り領域を示す模式図である。
【
図3】第1曲げ部を有する仮止め部を形成した状態を示す模式図である。
【
図4】
図3に示す状態の後に、第2曲げ部を形成している状態を示す模式図である。
【
図5】
図4に示す状態の後に、第1曲げ部を形成している状態を示す模式図である。
【
図6】
図5に示す状態の後に、第2曲げ部を形成している状態を示す模式図である。
【
図7】
図6に示す状態の後に、第1曲げ部を形成している状態を示す模式図である。
【
図8】仮止め部を形成する手順を示すもので、第1曲げ部を有するストリングをステントに沿わせた状態を示す模式図である。
【
図9】
図8を軸線方向視した図を示す模式図である。
【
図10】
図8に示す状態の後に、第3曲げ部を形成している状態を示す模式図である。
【
図12】
図10に示す状態の後に、第1曲げ部を形成している状態を示す模式図である。
【
図14】変形例に係る仮止め部を形成する手順を示すもので、
図8に示す状態の後に、第4曲げ部を形成している状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、以下に説明する部材の形状、寸法、配置等については、本発明の趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【0013】
なお、本発明の各種の構成要素は、個々に独立した存在である必要はなく、複数の構成要素が単一の構成要素として構成されていること、一つの構成要素が複数の構成要素に分割されて形成されていること、ある構成要素が他の構成要素の一部であること、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等を許容する。
また、すべての図面において、同様な構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
【0014】
本願の図面に記載の各部位の太さや大きさについて、説明を容易にするための変更が適宜加えられており、実物の縮尺と合わせたものに限定されるものではない。
また、デリバリー装置1を使用する術者に近い側を近位側、遠い側を遠位側というものとする。
【0015】
なお、後述のステント5は、複数のワイヤが網状に交差して形成されているものであるが、図示の簡略化のため、網状に見える部分を省略し、全体としての外形のみを示している。
【0016】
<概要>
はじめに、本実施形態に係るストリング付きステント4の製造方法の概要を、主に
図1から
図7を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係るステントデリバリー装置(デリバリー装置1)を示す模式的な全体図である。
図2は、ステント5についてのストリング6による縛り領域Rを示す模式図である。
図3は、第1曲げ部12aを有する仮止め部13を形成した状態を示す模式図、
図4は、
図3に示す状態の後に、第2曲げ部12bを形成している状態を示す模式図である。
図5は、
図4に示す状態の後に、第1曲げ部12aを形成している状態を示す模式図、
図6は、
図5に示す状態の後に、第2曲げ部12bを形成している状態を示す模式図、
図7は、
図6に示す状態の後に、第1曲げ部12aを形成している状態を示す模式図である。
【0017】
なお、
図1において、複数のストリング6を明瞭に区別するため、近位側ストリング6aを点線、中間ストリング6bを破線、遠位側ストリング6cを実線で示している。
また、
図1において、ストリング6の縛り形状については、ひし形の格子状に簡略化して示している。
【0018】
また、
図2において、ステント5は、両端部に設けられた仮止め部13によって縛られた部位が選択的に縮径しているように示しているが、実際には、ステント5はストリング6によって全体的に縮径される。ステント5を全体的に縮径する方法としては、2つ目の仮止め部13を形成する前に、ストリング6の他端側6hを牽引し、縛り領域Rにおけるストリング6の長さを短くして、縛り荷重を大きくすることが挙げられる。
【0019】
図1及び
図2に示すように、本実施形態に係るストリング付きステント4の製造方法は、網体で構成され、被験者の体内の管状部内に通されて、自身の弾性により拡張して管状部に留置可能なステント5と、管状部へのステント5の挿入時に、収縮したステント5の拡張を制限して収縮状態を維持するように、ステント5の周囲を縛るストリング6と、を用意して、ストリング6の一端側6gからストリング6の他端側6hに複数の結び目を形成するものである。
【0020】
図3から
図5に示すように、ストリング付きステント4の製造方法は、ストリング6に第1曲げ部12aを形成し、第1曲げ部12aをステント5に沿わせ、第1曲げ部12aよりもストリング6の他端側6hにある部位を、ステント5の周回方向反時計回り(一方の回り)に、第1曲げ部12aとステント5との間に通して第1結び目11aを形成する第1結び目形成工程と、
図4に示すように、第1曲げ部12aとステント5の間に通された部位に第2曲げ部12bを形成し、
図5及び
図6に示すように、第2曲げ部12bよりもストリング6の他端側6hにある部位を、第1曲げ部12aに通した方向と逆方向である、ステント5の周回方向時計回り(他方の回り)に、第2曲げ部12bとステント5との間に通して第2結び目11bを形成する第2結び目形成工程と、を備える。
【0021】
図5に示すように、第1結び目形成工程において、ステント5の軸線方向AX視における第1側5xに第1結び目11aを形成する。
図6に示すように、第2結び目形成工程において、ステント5の軸線方向AX視における第1側5xとは逆側にある第2側5yに第2結び目11bを形成する。
ストリング付きステント4の製造方法は、
図2及び
図7に示すように、第1結び目形成工程と第2結び目形成工程を交互に繰り返し行って、ストリング6によってステント5を縛ることを特徴とする。
【0022】
上記の「管状部」としては、本実施形態においては大腸について説明するが、胆管、大腸又は小腸等の消化器管、その他に血管等がある。
また、上記の第2結び目11bが、第1結び目11aが形成された第1側5xとは逆側である第2側5yに形成されていることについて、具体的には、ステント5の軸線方向AX視において、第2結び目11bと、ステント5の中心軸と、直前に形成された第1結び目11aと、を結ぶ中心角が±90度以内の範囲にないこと(中心角が±90度超、±180度以内にあること)を意味する。
換言すれば、ステント5の軸線方向において互いに隣り合う第1結び目11aと第2結び目11bとは、ステント5の周方向において互いに異なる位置に配置されており、ステント5の軸線方向AX視において、ステント5の中心と当該第1結び目11aとを結ぶ線分(ステント5の半径方向に延在する線分)と、ステント5の中心と当該第2結び目11bとを結ぶ線分(ステント5の半径方向に延在する線分)と、のなす角度が90度を超えている。
【0023】
本実施形態において、「第1結び目11a」及び「第2結び目11b」のそれぞれは、ストリング6の部位同士がそれぞれ折り返されることによって絡んでいる構成をいう。
換言すれば、「第1結び目11a」及び「第2結び目11b」のそれぞれは、ループ形状となっているストリング6の一部分と、ループ形状となっているストリング6の他の一部分とが、互いのループをくぐり、且つ、各々の延在する向きが反転している箇所で互いにフックする(絡む)ことによって、形成されている。
【0024】
また、「第1曲げ部12aとステント5との間」とは、具体的には、ステント5とステント5に巻き付けられるストリング6とが接触する部位と、第1曲げ部12aとによって画定される空間を意味する。
同様に「第2曲げ部12bとステント5との間」とは、具体的には、ステント5とステント5に巻き付けられるストリング6とが接触する部位と、第2曲げ部12bとによって画定される空間を意味する。
【0025】
上記のストリング付きステント4の製造方法は、第1結び目形成工程と、第2結び目形成工程と、を交互に行うことを規定するものである。
このため、ストリング付きステント4の製造方法は、第1結び目形成工程から第2結び目形成工程の順に進めることに必ずしも限定されず、第2結び目形成工程から第1結び目形成工程の順に進めてもよい。
【0026】
上記構成によれば、第1結び目11aがステント5の軸線方向AX視における第1側5x、第2結び目11bがステント5の軸線方向AX視における第2側5yに形成されることで、ストリング6を牽引することにより、ステント5を第1側5xと第2側5yとに交互に展開(拡張)できる。このため、狭窄部等からステント5に加わる反力の方向が第2側5yと第1側5xとに交互に代わることとなる。したがって、その反力の方向が一定の場合と比較して、ステント5の留置目標位置に対して、拡張時のステント5の位置ズレが生じることを抑制できる。
【0027】
また、
図2に示すように、本実施形態に係るストリング付きステント4は、網体で構成され、被験者の体内の管状部内に通されて、自身の弾性により拡張して管状部に留置可能なステント5と、管状部へのステント5の挿入時に、収縮したステント5の拡張を制限して収縮状態を維持するように、ステント5の周囲を縛るストリング6と、を備える。
ストリング6は、ステント5の軸線方向AX視における第1側5xに形成された第1結び目11aと、ステント5の軸線方向AX視における第1側5xとは逆側にある第2側5yに形成された第2結び目11bと、を備えることを特徴とする。
【0028】
上記構成によれば、第1結び目11aがステント5の第1側5x、第2結び目11bがステント5の第2側5yに形成されることで、ストリング付きステント4の製造方法に関して説明したように、ステント5を第1側5xと第2側5yとに展開でき、ステント5の留置目標位置に対して、狭窄部等からステント5に加わる反力による拡張時のステント5の位置ズレが生じることを抑制できる。
【0029】
図1に示すように、本実施形態に係るステントデリバリー装置(デリバリー装置1)は、上記のストリング付きステント4と、ストリング付きステント4をデリバリーするデリバリー部10と、を備える。
上記構成によれば、デリバリー装置1によってストリング付きステント4の効果を享受できる。
【0030】
<ステントデリバリー装置>
次に、ステント5を生体管内にデリバリーするステントデリバリー装置(デリバリー装置1)について、
図1を主に参照して説明する。
デリバリー装置1は、上述のように、ストリング付きステント4と、ストリング付きステント4をデリバリーするデリバリー部10と、を備える。
デリバリー部10は、ストリング付きステント4が周囲に取り付けられるインナーシース2と、インナーシース2及びストリング付きステント4の外周を覆い、インナーシース2に対して軸心方向に相対移動可能に構成されたアウターシース3と、を主に備える。
【0031】
また、デリバリー部10は、ステント5の近位側への移動を制限するストッパ7と、術者が把持するハンドル8と、アウターシース3が固定され、ハンドル8に対して軸心方向に相対的に摺動可能なスライダ9と、を更に備える。
インナーシース2は、PEEK(ポリ・エーテル・エーテル・ケトン)チューブによって形成されている。
【0032】
本実施形態に係るステント5は、樹脂膜の無いベアステントであるが、樹脂膜付きのカバードステントであってもよい。本実施形態に係る自然状態におけるステント5の長さは、例えば120mmであり、自然状態におけるステント5の外径は例えば22mmである。ステント5のワイヤ線径は、例えば直径0.17mmである。
ステント5の長さは、60、80又は100mm等、任意の長さでよく、ステント5の外径は、22mmの他に18mm等、任意の大きさでよい。
【0033】
<ストリング>
ストリング6は、ステント5を搬送する際にアウターシース3内にステント5が収容されるように、ステント5を縮径状態に縛るためのものである。ストリング6は、ステント5を拡張させる際には、術者に牽引されることによって、ステント5の縛りが解除される。
ストリング6は、天然繊維又は化学繊維の両方も若しくは一方を撚り合わせた糸である。しかしながらこのような構成に限定されず、ストリング6を縛ることができる線状のものであれば、金属製のものであってもよい。
【0034】
図1に示すように、本実施形態に係るストリング6は、複数(近位側ストリング6a、中間ストリング6b及び遠位側ストリング6c)設けられており、複数のストリング6の少なくとも一部は、ステント5の軸線方向AXの異なる領域を縛り付けている。
近位側ストリング6aは、ステント5の近位側を縛っており、中間ストリング6bは、ステント5の中間部分を縛っており、遠位側ストリング6cは、ステント5の遠位側を縛っている。
【0035】
上記構成のように、複数のストリング6がステント5の異なる領域を縛り付けていることで、別のタイミングで複数のストリング6の縛りを解除することにより、ステント5のセグメンタルリリースが可能となる。このため、ステント5を狭窄部に好適に留置しやすくなる。
【0036】
特に、ストリング6は、3つ設けられていると、不図示の狭窄部等を挟み込むようにしてストリング6の遠位側及び近位側を拡張させた後で、中間部分を拡張できるため好適であるが、このような構成に限定されない。例えば、ストリング6は、近位側ストリング6aと遠位側ストリング6cの2本構成であってもよく、さらには、セグメンタルリリースが不要である場合には、1本構成であってもよい。
【0037】
本実施形態においては、近位側ストリング6aの縛り領域Rの遠位端部と中間ストリング6bの縛り領域Rの近位端部とは、ステント5の軸線方向において互いに隣接している。同様に、中間ストリング6bの縛り領域Rの遠位端部と遠位側ストリング6cの縛り領域Rの近位端部とは、ステント5の軸線方向において互いに隣接している。
【0038】
本実施形態に係るストリング付きステント4は、消化器管内(例えば大腸内)に留置されるものである。本実施形態に係るストリング付きステント4を構成する複数のストリング6は、牽引されたときに、例えば肛門側から口側に解けるように、第1結び目11a及び第2結び目11bが形成されている。
【0039】
換言すると、製造者は、
図1に示すデリバリー装置1の遠位側である口側から、その逆側の近位側である肛門側に複数のストリング6をステント5に対して縛っていくように、第1結び目11a及び第2結び目11bを形成する。そして、製造者は、後述するように、ステント5へのストリング6の縛り工程の最後に形成される仮止め部13を肛門側に配置することで、ストリング6が肛門側から口側に解ける構成となる。
【0040】
つまり、近位側ストリング6a、中間ストリング6b及び遠位側ストリング6cは、例えば、いずれも縛り終わりが縛り領域Rの近位側に位置しており、それぞれの縛り領域Rの近位側からステント5が開かれる構成となっている。
【0041】
上記構成によれば、肛門側から解けるようにすることで、ストリング6をステント5の軸線方向AXに折返さずに、肛門からだすことができ、ストリング6を短くすることができる。
【0042】
なお、「肛門側から口側に解ける」というのはあくまでも一例であって、逆から解ける構成を排除するものではない。
つまり、ステント5の縛り終わりを縛り領域Rの遠位側にし、ストリング6をUターンさせるようにインナーシース2上に配置して、縛り領域の遠位側からステント5を開く(つまり、口側から肛門側に解ける)ようにしてもよい。
【0043】
例えば、本実施形態に係るストリング付きステント4のように、軸線方向AXに異なる位置に設けられた複数のストリング6を備える構成である場合には、ステント5の口側(遠位側)は最先端(遠位側)から開き、肛門側は基端側(近位側)から開くように構成されていると好適である。
【0044】
[ストリングの中央部分に係る構成]
次に、ストリング6を代表して、遠位側ストリング6cに係る中央部分に係る構成及び両端部分に係る構成について
図2を主に参照して説明する。近位側ストリング6a及び中間ストリング6bは、遠位側ストリング6cと同様に構成されている。
【0045】
本実施形態に係るストリング付きステント4において、
図2に示すように、遠位側ストリング6cに設けられた第1結び目11aと、第2結び目11bと、は交互に複数形成されており、それぞれステント5の軸線方向AXに沿って配置されている。
なお、第1結び目11a、第2結び目11bの詳細については、後述のストリング6の縛り方において説明する。
【0046】
つまり、複数の第1結び目11aは、軸線方向AX視における第1側5x(
図2に示す側面視において上側)に、軸線方向AXに沿って並んで設けられており、複数の第2結び目11bは、軸線方向AX視における第2側5y(
図2に示す側面視において下側)に、軸線方向AXに沿って並んで設けられている。
【0047】
上記における「軸線方向AXに沿って設けられている」とは、軸線方向AXに完全に平行に設けられているものに限定されない。具体的には、ステント5の軸線方向AX視において、軸線方向AXに隣接する第1結び目11aとステント5の中心軸とを結ぶ中心角が60度の範囲内にあるものを軸線方向AXに沿って設けられているものとする。
すなわち、ステント5の軸線方向AX視において、ステント5の軸中心と一の第1結び目11aとを結ぶ線分(ステント5の半径方向に延在する線分)と、ステント5の軸中心と他の第1結び目11aとを結ぶ線分(ステント5の半径方向に延在する線分)と、のなす角度が60度以下である。ここでいう「一の第1結び目11a」と「他の第1結び目11a」とは、複数の第1結び目11aのうち、ステント5の軸線方向AXにおいて互いに隣接する第1結び目11aである。
【0048】
上記構成によれば、ステント5の軸線方向AXに沿って、第1結び目11aと第2結び目11bとを交互に展開することができ、ステント5の展開の際に、不図示の狭窄部等からの反力によってステント5が目標留置位置からズレることを抑制することができる。
【0049】
図2に示すように、ストリング6における第1結び目11aと第2結び目11bとの間には、ステント5の軸線方向AXに直線的に延在する部位が非形成である。
つまり、ストリング6は、第1結び目11aと第2結び目11bとの間において、ステント5の周回方向成分及び軸線方向AX成分を有して斜めに延在している(つまり、ステント5の外周面に沿って螺進している)。
【0050】
上記構成によれば、ストリング6において、ステント5を縛るものとして機能しないステント5の軸線方向AXに直線的に延在する部位が非形成であることで、ステント5を周回方向に縛るストリング6の長さを短くすることができる。
【0051】
[ストリングの両端部分に係る構成]
図2に示すように、ストリング6の仮止め部13は、複数の第1結び目11a及び複数の第2結び目11bが設けられている縛り領域Rの端部(本実施形態においては両端部)に設けられている。仮止め部13は、ストリング6が牽引されても解かれないように固定されているものではなく、自然状態では解かれないが、術者がストリング6を牽引したときには解かれる構成を意味する。
なお、仮止め部13の詳細については、後述のストリング6の縛り方において説明する。
【0052】
上記構成によれば、ステント5の軸線方向AXにおける異なる位置でストリング6が仮止めされていることで、ストリング6の解除を容易に行うことができる。
仮止め部13は、上記のようにステント5の縛り領域Rの両端部に形成されていると好適であるが、このような構成に限定されない。仮止め部13は、ステント5の任意の位置に形成することが可能であり、例えば、ストリング6の縛り領域Rが軸線方向AXに長い場合には、縛り領域Rの両端間の中央部に仮止め部13を追加的に設けるようにしてもよい。
【0053】
<縛り方>
次に、ステント5に対するストリング6(遠位側ストリング6c)の縛り方について、
図2から
図7に加え、
図8から
図13を主に参照して説明する。
図8は、仮止め部13を形成する手順を示すもので、第1曲げ部12aを有するストリング6をステント5に沿わせた状態を示す模式図、
図9は、
図8を軸線方向視した図を示す模式図である。
図10は、
図8に示す状態の後に、第3曲げ部12cを形成している状態を示す模式図、
図11は、
図10を軸線方向AX視した図を示す模式図である。
図12は、
図10に示す状態の後に、第1曲げ部12aを形成している状態を示す模式図、
図13は、
図12を軸線方向AX視した図を示す模式図である。
なお、以下に説明する各工程を行う間、ストリング6の一端側6g及び他端側6hは、常にステント5に対して同一側(
図2から
図15において上側)に位置する状態を維持することが好ましい。
【0054】
[ストリングの一端側における縛り方]
図3、及び
図8から
図13に示すように、ストリング付きステント4の製造方法は、ストリング6をステント5に仮止めを行う仮止め工程を備える。
まず、
図8及び
図9に示すように、仮止め工程において、ストリング6をステント5の側周面に沿わせ、
図8に示す側面視において、ストリング6の曲げ部12(第1曲げ部12a)がステント5から外側にはみ出すように、ストリング6を配置する。
なお、ストリング6の一端側6gにおける縛り方では、ステント5の周方向一方の周りを時計回りとし、ステント5の周方向他方の周りを反時計回り(後述)とするが、一例であってこれに限られるものではない。
【0055】
第1曲げ部12aよりもストリング6の他端側6hにある部位を、ステント5の周回方向時計回り(例えば、
図11のブロック矢印で示す時計回り)に、
図10及び
図11に示すように、第1曲げ部12aとステント5との間に通して第1結び目11aを形成する。
【0056】
第1結び目11aを形成した後に、
図10に示すようにストリング6における第1曲げ部12aとステント5との間に通された部位に第3曲げ部12cを形成する。
第3曲げ部12cよりもストリング6の他端側6hにある部位を、第1曲げ部12aに通した方向と同じ方向である、ステント5の周回方向時計回り(例えば、
図13に示す時計回り)に、
図12及び
図13に示すように、第3曲げ部12cと第1結び目11aとの間に通して仮止め部13を形成する。さらに、第3曲げ部12cとステント5の間に通された部位に第1曲げ部12aを再度形成する。
【0057】
より厳密には、仮止め部13を形成する際に、第3曲げ部12cよりもストリング6の他端側6hにあり、第1結び目11aよりも他端側6hの部位を、第3曲げ部12cと第1結び目11aとの間に通す。
このようにして、
図3に示す仮止め部13が形成される。
以上の工程により、例えば、ストリング6における一端と他端との中間の部分が、ステント5の周方向における他方周りにステント5に対して巻き付けられ(例えば半周程度巻き付けられ)、その巻き付けられた部分の先端側部分(
図8における下端部)が曲げ部12(第1曲げ部12a:以下、第1ループ部と称する場合がある)となる。更に、例えば、ストリング6における第1ループ部よりも他端側6hの部位が、ステント5の周方向における一方周りにステント5に対して巻き付けられる(例えば1周程度巻き付けられる)とともに、第1ループ部とステント5との間に通され、その通された部分が新たな曲げ部12(
図10に示される第3曲げ部12c:以下、第2ループ部と称する場合がある)となる。更に、例えば、ストリング6における第2ループ部よりも他端側6hの部位が第2ループ部に通され、その通された部分が新たな曲げ部12(
図12、
図13に示される下側の第1曲げ部12a:以下、第3ループ部と称する場合がある)となる。このようにステント5に巻き付けられたストリング6を、第3ループ部が残るようにステント5に対して縛り付けることによって、仮止め部13が形成される。
上記構成によれば、仮止め部13を形成することで、ストリング6の縛り付けの作業性を高めることができる。
【0058】
[ストリングの中央部分における縛り方]
続いて、
図4に示すように、仮止め部13に設けられて第1結び目11aから飛び出ている第1曲げ部12a(第3ループ部)を、ステント5の軸線方向に沿わせる。そして、この第1曲げ部12aよりもストリング6の他端側6hにある部位を、ステント5の周回方向反時計回りに、第1曲げ部12aとステント5との間に通して第1結び目11aを形成する(第1結び目形成工程)。
なお、ストリング6の中央部分における縛り方では、ステント5の周方向一方の周りを反時計回りとし、ステント5の周方向他方の周りを時計回りとするが、一例であってこれに限られるものではない。
【0059】
図4に示すように、第1曲げ部12aとステント5の間に通された部位に第2曲げ部12bを形成する。
図5及び
図6に示すように、第2曲げ部12bよりもストリング6の他端側6hにある部位を、第1曲げ部12aに通した方向と逆方向である、ステント5の周回方向時計回りに、第2曲げ部12bとステント5との間に通して第2結び目11bを形成する(第2結び目形成工程)。
以上の工程により、例えば、ストリング6における第3ループ部よりも他端側6hの部位が、ステント5の周方向における他方周りに1周未満螺進しながらステント5に対して巻き付けられ且つ第3ループ部とステント5との間に通され、その通された部分が新たな曲げ部12(第2曲げ部12b:以下、第4ループ部と称する場合がある)となる(
図4)。
更に、例えば、ストリング6における第4ループ部よりも他端側6hの部位が、ステント5の周方向における一方周りに1周未満螺進しながらステント5に対して巻き付けられ且つ第4ループ部とステント5との間に通され、その通された部分が新たな曲げ部12(
図5に示される下側の第1曲げ部12a:以下、第5ループ部と称する場合がある)となり、その際、
図5に示される第1結び目11aも形成される。
更に、例えば、ストリング6における第5ループ部よりも他端側6hの部位が、ステント5の周方向における他方周りに1周未満螺進しながらステント5に対して巻き付けられ且つ第5ループ部とステント5との間に通され、その通された部分が新たな曲げ部12(
図6に示される右側の第2曲げ部12b:以下、第6ループ部と称する場合がある)となり、その際、
図6に示される第2結び目11bも形成される。
【0060】
そして、
図6及び
図7に示すように、ステント5の近位側(他端側)に向かって、上記の第1結び目形成工程及び第2結び目形成工程を繰返し行うことにより、ストリング6の中央部分によってステント5を縛る。
なお、第1結び目形成工程の回数(ストリング6の中央部分における第1結び目11aの個数)と第2結び目形成工程の回数(ストリング6の中央部分における第2結び目11bの個数)とは互いに同数であってもよいし、どちらかが他方よりも1回(1個)多くてもよい。
【0061】
[他端側の仮止め]
ストリング6の他端側においても、上記した一端側の仮止め部13と同様の仮止め部13(他端側の仮止め部13については図示省略)を形成する。
この仮止め部13から引き出された他端側6hは、ハンドル8まで延在している。このため、術者は、ハンドル8においてストリング6の他端側6hを牽引することで、仮止め部13、第1結び目11a及び第2結び目11bを解き、ステント5を拡張させることが可能である。より詳細には、ストリング6の他端側6hが牽引されることにより、先ず、2つの仮止め部13のうち他端側6hの仮止め部13が解かれ、次いで、ストリング6の中央部分が解かれ、最後に、一端側6gの仮止め部13が解かれる。
特に、本実施形態においては、ハンドル8において、近位側ストリング6a、中間ストリング6b及び遠位側ストリング6cをそれぞれ別個に牽引可能に構成されている。
【0062】
<変形例>
上記実施形態に係るストリング6の縛り方は一例であり、各種変更が可能である。
一例として、変形例に係る仮止め部について、
図14及び
図15を主に参照して説明する。
図14は、変形例に係る仮止め部を形成する手順を示すもので、
図8に示す状態の後に、第4曲げ部12dを形成している状態を示す模式図、
図15は、
図14を軸線方向AX視した図を示す模式図である。
【0063】
変形例に係る仮止め部を形成する工程においては、
図10及び
図11に示す手順と同様に、
図8に示す状態の後に、第1曲げ部12aとステント5との間の空間に、第1曲げ部12aよりもストリング6の他端側6hにある部位を、
図15に示す軸線方向AX視において時計回りに通して、第1結び目11aを形成する。第1結び目11aを形成しつつ第2曲げ部12b(
図10に示す第3曲げ部12cと同様)を形成する。さらに、第2曲げ部12bとステント5との間の空間に、第2曲げ部12bよりもストリング6の他端側6hにある部位を、
図15に示す軸線方向AX視において反時計回りに通して、第2結び目11bを形成する。
【0064】
図14及び
図15に示すように、第2結び目11bを形成した後に、第2曲げ部12bとステント5の間に通された部位に第4曲げ部12dを形成する。そして、第4曲げ部12dよりもストリング6の他端側6hにある部位を、第2曲げ部12bに通した方向と同じ方向である、ステント5の周回方向反時計回り(
図15に示す反時計回り)に、第4曲げ部12dと第2結び目11bとの間に通して仮止め部(
図12及び
図13に示す仮止め部13と、ストリング6の他端側6hにある部位の通し方向以外同様のもの)を形成する。さらに、第4曲げ部12dとステント5の間に通された部位に第2曲げ部12bを再度形成する。
より厳密には、仮止め部を形成する際に、第4曲げ部12dよりもストリング6の他端側6hにあり、第2結び目11bよりも他端側6hの部位を、第4曲げ部12dと第1結び目11aとの間に通す。
【0065】
図14及び
図15に示すように、仮止め工程は、ステント5の軸線方向AXにおける同じ位置において、第1結び目11a及び第2結び目11bを交互に1以上形成した後に行われる。
【0066】
第1結び目11a及び第2結び目11bを交互に1以上形成する位置としての「軸線方向AXにおける同じ位置」とは、仮止め部の縛る力が加わる一定領域において同じ位置であることを意味し、ある程度の長さで同じ位置であることを意味する。
上記構成によれば、同じ位置に第1結び目11a及び第2結び目11bを交互に1以上形成した後に仮止めを行うことで、局所的に縛り強度を高めることができる。
【0067】
なお、上記のように、仮止め部13及び変形例に係る仮止め部は、ストリング6の他端側6hにある部位を、曲げ部12と第1結び目11a又は第2結び目11bに対して、ステント5の周回方向の同じ方向に連続して通すことで形成される。このため、ストリング6の他端側6hにある部位をこれらに連続して通す前において、第1結び目11a及び第2結び目11bを形成する回数については任意に設定することができる。第1結び目11a及び第2結び目11bを多く形成することで、作業工数がかかるが、仮止め部による縛り力はより強固となる。
【0068】
また、ストリング6は、仮止め部13及び変形例に係る仮止め部によって固定されていると、他のものを使用するよりも、作業の手間がかからず好適である。しかしながら、仮止め部13及び変形例に係る仮止め部は、この手段によって形成されるものに限定されず、接着剤等によって行われるものであってもよい。
【0069】
上記実施形態は、以下の技術思想を包含するものである。
(1)
被験者の体内の管状部内に通されて、自身の弾性により拡張して前記管状部に留置可能なステントと、
前記管状部への前記ステントの挿入時に、収縮した前記ステントの拡張を制限して収縮状態を維持するように、前記ステントの周囲を縛るストリングと、を用意して、
前記ストリングの一端側から前記ストリングの他端側に複数の結び目を形成するストリング付きステントの製造方法であって、
該ストリングに第1曲げ部を形成し、
該第1曲げ部を前記ステントに沿わせ、前記第1曲げ部よりも前記ストリングの前記他端側にある部位を、前記ステントの周回方向一方の回りに、前記第1曲げ部と前記ステントとの間に通して第1結び目を形成する第1結び目形成工程と、
前記第1曲げ部と前記ステントの間に通された部位に第2曲げ部を形成し、
前記第2曲げ部よりも前記ストリングの他端側にある部位を、前記第1曲げ部に通した方向と逆方向である、前記ステントの周回方向他方の回りに、前記第2曲げ部と前記ステントとの間に通して第2結び目を形成する第2結び目形成工程と、を備え、
前記第1結び目形成工程において、前記ステントの軸線方向視における第1側に第1結び目を形成し、
前記第2結び目形成工程において、前記ステントの軸線方向視における前記第1側とは逆側にある第2側に第2結び目を形成し、
前記第1結び目形成工程と前記第2結び目形成工程を交互に繰り返し行って、前記ストリングによって前記ステントを縛ることを特徴とするストリング付きステントの製造方法。
(2)
前記ストリングを前記ステントに仮止めを行う仮止め工程を更に備え、
該仮止め工程において、
前記第1結び目を形成した後に、前記ストリングにおける前記第1曲げ部と前記ステントとの間に通された部位に第3曲げ部を形成し、
該第3曲げ部よりも前記ストリングの前記他端側にある部位を、前記第1曲げ部に通した方向と同じ方向である、前記ステントの周回方向一方の回りに、前記第3曲げ部と前記第1結び目との間に通して仮止め部を形成して、前記第3曲げ部と前記ステントの間に通された部位に前記第1曲げ部を再度形成する(1)に記載のストリング付きステントの製造方法。
(3)
前記ストリングを前記ステントに仮止めを行う仮止め工程を更に備え、
該仮止め工程において、
前記第2結び目を形成した後に、前記ストリングにおける前記第2曲げ部と前記ステントとの間に通された部位に第4曲げ部を形成し、
該第4曲げ部よりも前記ストリングの他端側にある部位を、前記第2曲げ部に通した方向と同じ方向である、前記ステントの周回方向他方の回りに、前記第4曲げ部と前記第2結び目との間に通して仮止め部を形成して、前記第4曲げ部と前記ステントの間に通された部位に前記第2曲げ部を再度形成する(1)に記載のストリング付きステントの製造方法。
(4)
前記仮止め工程は、前記ステントの軸線方向における同じ位置において、前記第1結び目及び前記第2結び目を交互に1以上形成した後に行われる(2)又は(3)に記載のストリング付きステントの製造方法。
(5)
被験者の体内の管状部内に通されて、自身の弾性により拡張して前記管状部に留置可能なステントと、
前記管状部への前記ステントの挿入時に、収縮した前記ステントの拡張を制限して収縮状態を維持するように、前記ステントの周囲を縛るストリングと、を備え、
該ストリングは、
前記ステントの軸線方向視における第1側に形成された第1結び目と、
前記ステントの軸線方向視における前記第1側とは逆側にある第2側に形成された第2結び目と、を備えることを特徴とするストリング付きステント。
(6)
前記第1結び目と、前記第2結び目と、は交互に複数形成されており、それぞれ前記ステントの軸線方向に沿って配置されている(5)に記載のストリング付きステント。
(7)
前記ストリングにおける前記第1結び目と前記第2結び目との間には、前記ステントの軸線方向に直線的に延在する部位が非形成である(5)又は(6)に記載のストリング付きステント。
(8)
(4)に記載のストリング付きステントの製造方法で製造されたストリング付きステントであって、
前記仮止め部は、複数の前記第1結び目及び複数の前記第2結び目が設けられている領域の端部に設けられている(7)に記載のストリング付きステント。
(9)
(5)から(8)のいずれか一項に記載のストリング付きステントと、
該ストリング付きステントをデリバリーするデリバリー部と、を備えることを特徴とするステントデリバリー装置。
(10)
前記ストリングは複数設けられており、
複数の前記ストリングの少なくとも一部は、前記ステントの軸線方向の異なる領域を縛り付けている(9)に記載のステントデリバリー装置。
(11)
前記ストリング付きステントは、消化器管内に留置されるものであり、
複数の前記ストリングは、牽引されたときに、肛門側から口側に解けるように、前記第1結び目及び前記第2結び目が形成されている(9)又は(10)に記載のステントデリバリー装置。
【符号の説明】
【0070】
1 デリバリー装置(ステントデリバリー装置)
2 インナーシース
3 アウターシース
4 ストリング付きステント
5 ステント
5x 第1側
5y 第2側
6 ストリング
6a 近位側ストリング
6b 中間ストリング
6c 遠位側ストリング
6g 一端側
6h 他端側
7 ストッパ
8 ハンドル
9 スライダ
10 デリバリー部
11a 第1結び目
11b 第2結び目
12 曲げ部
12a 第1曲げ部
12b 第2曲げ部
12c 第3曲げ部
12d 第4曲げ部
13 仮止め部
AX 軸線方向
R 領域