IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社半導体エネルギー研究所の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110948
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】発光デバイス
(51)【国際特許分類】
   H10K 50/12 20230101AFI20240808BHJP
   H10K 50/15 20230101ALI20240808BHJP
   H10K 85/00 20230101ALI20240808BHJP
   H10K 101/30 20230101ALN20240808BHJP
【FI】
H10K50/12
H10K50/15
H10K85/00
H10K101:30
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024014066
(22)【出願日】2024-02-01
(31)【優先権主張番号】P 2023015612
(32)【優先日】2023-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】大澤 信晴
(72)【発明者】
【氏名】木戸 裕允
(72)【発明者】
【氏名】瀬尾 哲史
(72)【発明者】
【氏名】吉住 英子
【テーマコード(参考)】
3K107
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107BB02
3K107BB06
3K107BB07
3K107CC04
3K107CC07
3K107CC21
3K107DD53
3K107DD59
3K107DD64
3K107DD66
3K107DD68
3K107DD69
3K107DD72
3K107DD78
3K107FF06
3K107FF13
3K107FF19
3K107FF20
(57)【要約】
【課題】発光効率、信頼性および色純度の高い発光デバイスを提供する。
【解決手段】第1の電極と、第2の電極と、有機化合物層と、を有し、前記有機化合物層は、前記第1の電極と、前記第2の電極との間に位置し、前記有機化合物層は、発光層を有し、前記発光層は、第1の物質と、第2の物質と、を有し、前記第1の物質は二重項励起状態から発光する物質であり、前記第1の物質の二重項励起準位が、前記第2の物質の一重項励起準位より低く、且つ、三重項励起準位より高く、前記第1の物質が発光する発光デバイスを提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電極と、第2の電極と、有機化合物層と、を有し、
前記有機化合物層は、前記第1の電極と、前記第2の電極との間に位置し、
前記有機化合物層は、第1の層と、発光層と、を有し、
前記第1の層は、前記第1の電極と、前記発光層と、の間に位置し、
前記第1の層と、前記発光層は接しており、
前記発光層は、第1の物質を有し、
前記第1の層は、第2の物質を有し、
前記第1の物質は、二重項励起状態から発光する物質であり、
前記第1の物質の二重項励起準位が、前記第2の物質の一重項励起準位より低く、且つ、三重項励起準位より高い発光デバイス。
【請求項2】
第1の電極と、第2の電極と、有機化合物層と、を有し、
前記有機化合物層は、前記第1の電極と、前記第2の電極との間に位置し、
前記有機化合物層は、第1の層と、発光層と、を有し、
前記第1の層は、前記第1の電極と、前記発光層と、の間に位置し、
前記第1の層と、前記発光層は接しており、
前記発光層は、第1の物質を有し、
前記第1の層は、第2の物質を有し、
前記第1の物質は、二重項励起状態から発光する物質であり、
前記第1の物質の室温におけるPLスペクトルの短波長側の発光端が、前記第2の物質の4Kから77Kまでの範囲のいずれかの温度におけるPLスペクトルにおける燐光成分の短波長側の発光端よりも短波長側に位置し、且つ前記第2の物質の室温におけるPLスペクトルの短波長側の発光端よりも長波長側に位置する発光デバイス。
【請求項3】
第1の電極と、第2の電極と、有機化合物層と、を有し、
前記有機化合物層は、前記第1の電極と、前記第2の電極との間に位置し、
前記有機化合物層は、第1の層と、発光層と、を有し、
前記第1の層は、前記第1の電極と、前記発光層と、の間に位置し、
前記第1の層と、前記発光層は接しており、
前記発光層は、第1の物質を有し、
前記第1の層は、第2の物質を有し、
前記第1の物質は、二重項励起状態から発光する物質であり、
前記第1の物質の吸収スペクトルの吸収端が、前記第2の物質の4Kから77Kまでの範囲のいずれかの温度におけるPLスペクトルにおける燐光成分の短波長側の発光端よりも短波長側に位置し、且つ前記第2の物質の室温におけるPLスペクトルの短波長側の発光端よりも長波長側に位置する発光デバイス。
【請求項4】
第1の電極と、第2の電極と、有機化合物層と、を有し、
前記有機化合物層は、前記第1の電極と、前記第2の電極との間に位置し、
前記有機化合物層は、第1の層と、発光層と、を有し、
前記第1の層は、前記第1の電極と、前記発光層と、の間に位置し、
前記第1の層と、前記発光層は接しており、
前記発光層は、第1の物質を有し、
前記第1の層は、第2の物質を有し、
前記第1の物質は、二重項励起状態から発光する物質であり、
前記第1の物質の吸収スペクトルの吸収端が、前記第2の物質の4Kから77Kまでの範囲のいずれかの温度におけるPLスペクトルにおける燐光成分の短波長側の発光端よりも短波長側に位置し、且つ前記第2の物質の吸収スペクトルの吸収端よりも長波長側に位置する発光デバイス。
【請求項5】
第1の電極と、第2の電極と、有機化合物層と、を有し、
前記有機化合物層は、前記第1の電極と、前記第2の電極との間に位置し、
前記有機化合物層は、第1の層と、発光層と、を有し、
前記第1の層は、前記第1の電極と、前記発光層と、の間に位置し、
前記第1の層と、前記発光層は接しており、
前記発光層は、第1の物質と、第3の物質と、を有し、
前記第1の層は、第2の物質を有し、
前記第1の物質は、二重項励起状態から発光する物質であり、
前記第1の物質の二重項励起準位が、前記第2の物質の一重項励起準位より低く、且つ、三重項励起準位より高く、
前記第1の物質の二重項励起準位が、前記第3の物質の一重項励起準位より低く、且つ、三重項励起準位より高い発光デバイス。
【請求項6】
第1の電極と、第2の電極と、有機化合物層と、を有し、
前記有機化合物層は、前記第1の電極と、前記第2の電極との間に位置し、
前記有機化合物層は、第1の層と、発光層と、を有し、
前記第1の層は、前記第1の電極と、前記発光層と、の間に位置し、
前記第1の層と、前記発光層は接しており、
前記発光層は、第1の物質と、第3の物質と、を有し、
前記第1の層は、第2の物質を有し、
前記第1の物質は、二重項励起状態から発光する物質であり、
前記第1の物質の室温におけるPLスペクトルの短波長側の発光端が、前記第2の物質の4Kから77Kまでの範囲のいずれかの温度におけるPLスペクトルにおける燐光成分の短波長側の発光端よりも短波長側に位置し、且つ前記第2の物質の室温におけるPLスペクトルの短波長側の発光端よりも長波長側に位置し、
前記第1の物質の室温におけるPLスペクトルの短波長側の発光端が、前記第3の物質の4Kから77Kまでの範囲のいずれかの温度におけるPLスペクトルにおける燐光成分の短波長側の発光端よりも短波長側に位置し、且つ前記第3の物質の室温におけるPLスペクトルの短波長側の発光端よりも長波長側に位置する発光デバイス。
【請求項7】
第1の電極と、第2の電極と、有機化合物層と、を有し、
前記有機化合物層は、前記第1の電極と、前記第2の電極との間に位置し、
前記有機化合物層は、第1の層と、発光層と、を有し、
前記第1の層は、前記第1の電極と、前記発光層と、の間に位置し、
前記第1の層と、前記発光層は接しており、
前記発光層は、第1の物質と、第3の物質と、を有し、
前記第1の層は、第2の物質を有し、
前記第1の物質は、二重項励起状態から発光する物質であり、
前記第1の物質の吸収スペクトルの吸収端が、前記第2の物質の4Kから77Kまでの範囲のいずれかの温度におけるPLスペクトルにおける燐光成分の短波長側の発光端よりも短波長側に位置し、且つ前記第2の物質の室温におけるPLスペクトルの短波長側の発光端よりも長波長側に位置し、
前記第1の物質の吸収スペクトルの吸収端が、前記第3の物質の4Kから77Kまでの範囲のいずれかの温度におけるPLスペクトルにおける燐光成分の短波長側の発光端よりも短波長側に位置し、且つ前記第3の物質の室温におけるPLスペクトルの短波長側の発光端よりも長波長側に位置する発光デバイス。
【請求項8】
第1の電極と、第2の電極と、有機化合物層と、を有し、
前記有機化合物層は、前記第1の電極と、前記第2の電極との間に位置し、
前記有機化合物層は、第1の層と、発光層と、を有し、
前記第1の層は、前記第1の電極と、前記発光層と、の間に位置し、
前記第1の層と、前記発光層は接しており、
前記発光層は、第1の物質と、第3の物質と、を有し、
前記第1の層は、第2の物質を有し、
前記第1の物質は、二重項励起状態から発光する物質であり、
前記第1の物質の吸収スペクトル吸収端が、前記第2の物質の4Kから77Kまでの範囲のいずれかの温度におけるPLスペクトルにおける燐光成分の短波長側の発光端よりも短波長側に位置し、且つ前記第2の物質の吸収スペクトルの吸収端よりも長波長側に位置し、
前記第1の物質の吸収スペクトル吸収端が、前記第3の物質の4Kから77Kまでの範囲のいずれかの温度におけるPLスペクトルにおける燐光成分の短波長側の発光端よりも短波長側に位置し、且つ前記第3の物質の吸収スペクトルの吸収端よりも長波長側に位置する発光デバイス。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれか一項において、
前記第1の物質から発光が得られる発光デバイス。
【請求項10】
請求項1乃至請求項4のいずれか一項において、
前記発光層が、さらに蛍光発光物質を有し、
前記蛍光発光物質が一重項励起状態から発光を呈する物質であり、
前記蛍光発光物質の一重項励起準位が前記第1の物質の二重項励起準位よりも低く、
前記蛍光発光物質から発光が得られる発光デバイス。
【請求項11】
請求項5乃至請求項8のいずれか一項において、
前記発光層が、さらに蛍光発光物質を有し、
前記蛍光発光物質が一重項励起状態から発光を呈する物質であり、
前記蛍光発光物質の一重項励起準位が前記第1の物質の二重項励起準位よりも低く、
前記蛍光発光物質から発光が得られる発光デバイス。
【請求項12】
請求項11において、
前記蛍光発光物質の三重項励起準位が、
前記第2の物質の三重項励起準位よりも高く、且つ前記第3の物質の三重項励起準位よりも高い発光デバイス。
【請求項13】
請求項1乃至請求項8のいずれか一項において、
前記発光層が、さらに蛍光発光物質を有し、
前記蛍光発光物質が一重項励起状態から発光を呈する物質であり、
前記蛍光発光物質の室温におけるPLスペクトルの短波長側の発光端が、前記第1の物質の室温におけるPLスペクトルの短波長側の発光端よりも長波長側に位置し、
前記蛍光発光物質から発光が得られる発光デバイス。
【請求項14】
請求項1乃至請求項8のいずれか一項において、
前記発光層が、さらに蛍光発光物質を有し、
前記蛍光発光物質が一重項励起状態から発光を呈する物質であり、
前記蛍光発光物質の吸収スペクトルの吸収端が、前記第1の物質の吸収スペクトルの吸収端よりも長波長側に位置し、
前記蛍光発光物質から発光が得られる発光デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、有機化合物、有機半導体素子、発光デバイス、フォトダイオードセンサ、ディスプレイモジュール、照明モジュール、表示装置、電子機器、照明装置および電子デバイスに関する。なお、本発明の一態様は、上記の技術分野に限定されない。本明細書等で開示する発明の一態様の技術分野は、物、方法、または、製造方法に関するものである。または、本発明の一態様は、プロセス、マシン、マニュファクチャ、または、組成物(コンポジション・オブ・マター)に関するものである。そのため、より具体的に本明細書で開示する本発明の一態様の技術分野としては、半導体装置、表示装置、液晶表示装置、照明装置、蓄電装置、記憶装置、撮像装置、それらの駆動方法、または、それらの製造方法、を一例として挙げることができる。
【背景技術】
【0002】
有機化合物を用いたエレクトロルミネッセンス(EL:Electroluminescence)を利用する発光デバイス(有機EL素子ともいう)の実用化が進んでいる。これら発光デバイスの基本的な構成は、一対の電極間に発光材料を含む有機化合物層を挟んだものである。このデバイスに電圧を印加して、キャリアを注入し、当該キャリアの再結合エネルギーを利用することにより、発光材料からの発光を得ることができる。
【0003】
発光デバイスは自発光型であるため、当該発光デバイスを画素として用いた表示装置は、液晶表示装置に比べ視認性が高く、また、バックライトが不要である。また、このような発光デバイスを用いた表示装置は、薄型軽量に作製できることも大きな利点である。さらに非常に応答速度が速いことも特徴の一つである。
【0004】
また、これらの発光デバイスは発光層を平面状に連続して形成することが可能であるため、面状に発光を得ることができる。これは、白熱電球、LEDに代表される点光源、あるいは蛍光灯に代表される線光源では得難い特色であるため、照明等に応用できる面光源としての利用価値も高い。
【0005】
このように発光デバイスを用いた表示装置、照明装置はさまざまな電子機器に好適であるが、より良好な特性を有する発光デバイスを求めて研究開発が進められている。
【0006】
例えば非特許文献1では、発光ドーパントとしてランタノイドの錯体を用いた発光デバイスに関して報告がなされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Liding Wang、他6名、” Review on the Electroluminescence Study of Lanthanide Complexes”、Advanced Optical Materials、2019年,7,1801256
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の一態様では、発光効率の高い発光デバイスを提供することを目的とする。または、本発明の一態様では、信頼性の良好な発光デバイスを提供することを目的とする。または、本発明の一態様では、色純度の高い発光デバイスを提供することを目的とする。または、消費電力の小さい表示装置、電子機器および照明装置のいずれかを提供することを目的とする。または、信頼性の高い表示装置、電子機器および照明装置のいずれかを提供することを目的とする。または、色純度の高い表示装置、電子機器および照明装置のいずれかを提供することを目的とする。
【0009】
本発明は上述の課題のうちいずれか一を解決すればよいものとする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、第1の電極と、第2の電極と、有機化合物層と、を有し、有機化合物層は、第1の電極と、第2の電極との間に位置し、有機化合物層は、第1の層と、発光層と、を有し、第1の層は、第1の電極と、発光層と、の間に位置し、第1の層と、発光層は接しており、発光層は、第1の物質を有し、第1の層は、第2の物質を有し、第1の物質は、二重項励起状態から発光する物質であり、第1の物質の二重項励起準位が、第2の物質の一重項励起準位より低く、且つ、三重項励起準位より高い発光デバイスである。
【0011】
または、本発明の他の一態様は、第1の電極と、第2の電極と、有機化合物層と、を有し、有機化合物層は、第1の電極と、第2の電極との間に位置し、有機化合物層は、第1の層と、発光層と、を有し、第1の層は、第1の電極と、発光層と、の間に位置し、第1の層と、発光層は接しており、発光層は、第1の物質を有し、第1の層は、第2の物質を有し、第1の物質は、二重項励起状態から発光する物質であり、第1の物質の室温におけるPLスペクトルの短波長側の発光端が、第2の物質の4Kから77Kまでの範囲のいずれかの温度におけるPLスペクトルにおける燐光成分の短波長側の発光端よりも短波長側に位置し、且つ第2の物質の室温におけるPLスペクトルの短波長側の発光端よりも長波長側に位置する発光デバイスである。
【0012】
または、本発明の他の一態様は、第1の電極と、第2の電極と、有機化合物層と、を有し、有機化合物層は、第1の電極と、第2の電極との間に位置し、有機化合物層は、第1の層と、発光層と、を有し、第1の層は、第1の電極と、発光層と、の間に位置し、第1の層と、発光層は接しており、発光層は、第1の物質を有し、第1の層は、第2の物質を有し、第1の物質は、二重項励起状態から発光する物質であり、第1の物質の吸収スペクトルの吸収端が、第2の物質の4Kから77Kまでの範囲のいずれかの温度におけるPLスペクトルにおける燐光成分の短波長側の発光端よりも短波長側に位置し、且つ第2の物質の室温におけるPLスペクトルの短波長側の発光端よりも長波長側に位置する発光デバイスである。
【0013】
または、本発明の他の一態様は、第1の電極と、第2の電極と、有機化合物層と、を有し、有機化合物層は、第1の電極と、第2の電極との間に位置し、有機化合物層は、第1の層と、発光層と、を有し、第1の層は、第1の電極と、発光層と、の間に位置し、第1の層と、発光層は接しており、発光層は、第1の物質を有し、第1の層は、第2の物質を有し、第1の物質は、二重項励起状態から発光する物質であり、第1の物質の吸収スペクトルの吸収端が、第2の物質の4Kから77Kまでの範囲のいずれかの温度におけるPLスペクトルにおける燐光成分の短波長側の発光端よりも短波長側に位置し、且つ第2の物質の吸収スペクトルの吸収端よりも長波長側に位置する発光デバイスである。
【0014】
または、本発明の他の一態様は、第1の電極と、第2の電極と、有機化合物層と、を有し、有機化合物層は、第1の電極と、第2の電極との間に位置し、有機化合物層は、第1の層と、発光層と、を有し、第1の層は、第1の電極と、発光層と、の間に位置し、第1の層と、発光層は接しており、発光層は、第1の物質と、第3の物質と、を有し、第1の層は、第2の物質を有し、第1の物質は、二重項励起状態から発光する物質であり、第1の物質の二重項励起準位が、第2の物質の一重項励起準位より低く、且つ、三重項励起準位より高く、第1の物質の二重項励起準位が、第3の物質の一重項励起準位より低く、且つ、三重項励起準位より高い発光デバイスである。
【0015】
または、本発明の他の一態様は、第1の電極と、第2の電極と、有機化合物層と、を有し、有機化合物層は、第1の電極と、第2の電極との間に位置し、有機化合物層は、第1の層と、発光層と、を有し、第1の層は、第1の電極と、発光層と、の間に位置し、第1の層と、発光層は接しており、発光層は、第1の物質と、第3の物質と、を有し、第1の層は、第2の物質を有し、第1の物質は、二重項励起状態から発光する物質であり、第1の物質の室温におけるPLスペクトルの短波長側の発光端が、第2の物質の4Kから77Kまでの範囲のいずれかの温度におけるPLスペクトルにおける燐光成分の短波長側の発光端よりも短波長側に位置し、且つ第2の物質の室温におけるPLスペクトルの短波長側の発光端よりも長波長側に位置し、第1の物質の室温におけるPLスペクトルの短波長側の発光端が、第3の物質の4Kから77Kまでの範囲のいずれかの温度におけるPLスペクトルにおける燐光成分の短波長側の発光端よりも短波長側に位置し、且つ第3の物質の室温におけるPLスペクトルの短波長側の発光端よりも長波長側に位置する発光デバイスである。
【0016】
または、本発明の他の一態様は、第1の電極と、第2の電極と、有機化合物層と、を有し、有機化合物層は、第1の電極と、第2の電極との間に位置し、有機化合物層は、第1の層と、発光層と、を有し、第1の層は、第1の電極と、発光層と、の間に位置し、第1の層と、発光層は接しており、発光層は、第1の物質と、第3の物質と、を有し、第1の層は、第2の物質を有し、第1の物質は、二重項励起状態から発光する物質であり、第1の物質の吸収スペクトルの吸収端が、第2の物質の4Kから77Kまでの範囲のいずれかの温度におけるPLスペクトルにおける燐光成分の短波長側の発光端よりも短波長側に位置し、且つ第2の物質の室温におけるPLスペクトルの短波長側の発光端よりも長波長側に位置し、第1の物質の吸収スペクトルの吸収端が、第3の物質の4Kから77Kまでの範囲のいずれかの温度におけるPLスペクトルにおける燐光成分の短波長側の発光端よりも短波長側に位置し、且つ第3の物質の室温におけるPLスペクトルの短波長側の発光端よりも長波長側に位置する発光デバイスである。
【0017】
または、本発明の他の一態様は、第1の電極と、第2の電極と、有機化合物層と、を有し、有機化合物層は、第1の電極と、第2の電極との間に位置し、有機化合物層は、第1の層と、発光層と、を有し、第1の層は、第1の電極と、発光層と、の間に位置し、第1の層と、発光層は接しており、発光層は、第1の物質と、第3の物質と、を有し、第1の層は、第2の物質を有し、第1の物質は、二重項励起状態から発光する物質であり、第1の物質の吸収スペクトルの吸収端が、第2の物質の4Kから77Kまでの範囲のいずれかの温度におけるPLスペクトルにおける燐光成分の短波長側の発光端よりも短波長側に位置し、且つ第2の物質の吸収スペクトルの吸収端よりも長波長側に位置し、第1の物質の吸収スペクトルの吸収端が、第3の物質の4Kから77Kまでの範囲のいずれかの温度におけるPLスペクトルにおける燐光成分の短波長側の発光端よりも短波長側に位置し、且つ第3の物質の吸収スペクトルの吸収端よりも長波長側に位置する発光デバイスである。
【0018】
または、本発明の他の一態様は、上記構成において、第1の物質から発光が得られる発光デバイスである。
【0019】
または、本発明の他の一態様は、上記構成において、発光層が、さらに蛍光発光物質を有し、蛍光発光物質が一重項励起状態から発光を呈する物質であり、蛍光発光物質の一重項励起準位が第1の物質の二重項励起準位よりも低く、蛍光発光物質から発光が得られる発光デバイスである。
【0020】
または、本発明の他の一態様は、上記構成において、蛍光発光物質の三重項励起準位が、第2の物質の三重項励起準位よりも高く、且つ第3の物質の三重項励起準位よりも高い発光デバイスである。
【0021】
または、本発明の他の一態様は、上記構成において、発光層が、さらに蛍光発光物質を有し、蛍光発光物質が一重項励起状態から発光を呈する物質であり、蛍光発光物質の室温におけるPLスペクトルの短波長側の発光端が、第1の物質の室温におけるPLスペクトルの短波長側の発光端よりも長波長側に位置し、蛍光発光物質から発光が得られる発光デバイスである。
【0022】
または、本発明の他の一態様は、上記構成において、発光層が、さらに蛍光発光物質を有し、蛍光発光物質が一重項励起状態から発光を呈する物質であり、蛍光発光物質の吸収スペクトルの吸収端が、第1の物質の吸収スペクトルの吸収端よりも長波長側に位置し、蛍光発光物質から発光が得られる発光デバイスである。
【0023】
または、本発明の他の一態様は、上記構成において、第3の物質の4Kから77Kまでの範囲のいずれかの温度におけるPLスペクトルの短波長側の発光端が、第2の物質の4Kから77Kまでの範囲のいずれかの温度におけるPLスペクトルの短波長側の発光端よりも短波長側に位置する発光デバイスである。
【0024】
または、本発明の他の一態様は、上記構成において、第1の物質が、f-d遷移に基づく二重項励起状態からの発光を呈する物質である発光デバイスである。
【0025】
または、本発明の他の一態様は、上記構成において、第1の物質が、希土類元素を有する有機錯体である発光デバイスである。
【0026】
または、本発明の他の一態様は、上記構成において、第1の物質が、3価のセリウムを有する有機錯体である発光デバイスである。
【0027】
または、本発明の他の一態様は、上記構成において、第3の物質が熱活性化遅延蛍光を呈する物質である発光デバイスである。
【0028】
または、本発明の他の一態様は、上記いずれかに記載の発光デバイスを備えた表示装置である。
【0029】
または、本発明の他の一態様は、上記発光デバイスと、センサ、操作ボタン、スピーカ、または、マイクと、を有する電子機器である。
【0030】
または、本発明の他の一態様は、上記発光デバイスと、筐体と、を有する照明装置である。
【発明の効果】
【0031】
本発明の一態様では、発光効率の高い発光デバイスを提供することができる。または、本発明の一態様では、信頼性の良好な発光デバイスを提供することができる。または、消費電力の小さい表示装置、電子機器および照明装置のいずれかを提供することができる。または、信頼性の高い表示装置、電子機器および照明装置のいずれかを提供することができる。
【0032】
なお、これらの効果の記載は、他の効果の存在を妨げるものではない。なお、本発明の一態様は、必ずしも、これらの効果の全てを有する必要はない。なお、これら以外の効果は、明細書、図面、請求項などの記載から、自ずと明らかとなるものであり、明細書、図面、請求項などの記載から、これら以外の効果を抽出することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1図1(A)および図1(B)は、本発明の一態様の発光デバイスのエネルギーバンド図である。
図2図2(A)乃至図2(C)は、本発明の一態様の発光デバイスの模式図である。
図3図3(A)および図3(B)は、本発明の一態様の表示装置を表す図である。
図4図4(A)、及び図4(B)は、本発明の一態様の表示装置を表す図である。
図5図5(A)乃至5(E)は、表示装置の作製方法の一例を示す断面図である。
図6図6(A)乃至図6(D)は、表示装置の作製方法の一例を示す断面図である。
図7図7(A)乃至図7(D)は、表示装置の作製方法の一例を示す断面図である。
図8図8(A)乃至図8(C)は、表示装置の作製方法の一例を示す断面図である。
図9図9(A)乃至図9(C)は、表示装置の作製方法の一例を示す断面図である。
図10図10(A)乃至図10(C)は、表示装置の作製方法の一例を示す断面図である。
図11図11(A)、及び図11(B)は、表示モジュールの構成例を示す斜視図である。
図12図12(A)、及び図12(B)は、表示装置の構成例を示す断面図である。
図13図13は、表示装置の構成例を示す斜視図である。
図14図14は、表示装置の構成例を示す断面図である。
図15図15は、表示装置の構成例を示す断面図である。
図16図16は、表示装置の構成例を示す断面図である。
図17図17(A)乃至図17(D)は、電子機器の一例を示す図である。
図18図18(A)乃至図18(F)は、電子機器の一例を示す図である。
図19図19(A)乃至図19(G)は、電子機器の一例を示す図である。
図20図20は、発光デバイス1、発光デバイス2および比較発光デバイス1の輝度-電流密度特性を示す図である。
図21図21は、発光デバイス1、発光デバイス2および比較発光デバイス1の輝度-電圧特性を示す図である。
図22図22は、発光デバイス1、発光デバイス2および比較発光デバイス1の電流効率-輝度特性を示す図である。
図23図23は、発光デバイス1、発光デバイス2および比較発光デバイス1の電流密度-電圧特性を示す図である。
図24図24は、発光デバイス1、発光デバイス2および比較発光デバイス1の電力効率-輝度特性を示す図である。
図25図25は、発光デバイス1、発光デバイス2および比較発光デバイス1の外部量子効率-輝度特性を示す図である。
図26図26は、発光デバイス1、発光デバイス2および比較発光デバイス1の電界発光スペクトルを示す図である。
図27図27(A)および図27(B)は、発光デバイス1の発光物質の吸収スペクトル、フォトルミネッセンス(PL)スペクトル(室温)、ホスト材料及び第2の正孔輸送層のPLスペクトル(室温)および(10K)を示した図を示す図である。
図28図28(A)および図28(B)は、発光デバイス2の発光物質の吸収スペクトル、フォトルミネッセンス(PL)スペクトル(室温)、ホスト材料及び第2の正孔輸送層のPLスペクトル(室温)および(10K)を示した図を示す図である。
図29図29は、比較発光デバイス1の発光物質の吸収スペクトル、フォトルミネッセンス(PL)スペクトル(室温)、ホスト材料のPLスペクトル(室温)および(10K)を示した図を示す図である。
図30図30(A)および図30(B)は、S準位、T準位およびD準位の算出方法について説明した図である。
図31図31は、発光デバイス3乃至発光デバイス5の輝度-電流密度特性を示す図である。
図32図32は、発光デバイス3乃至発光デバイス5の輝度-電圧特性を示す図である。
図33図33は、発光デバイス3乃至発光デバイス5の電流効率-輝度特性を示す図である。
図34図34は、発光デバイス3乃至発光デバイス5の電流密度-電圧特性を示す図である。
図35図35は、発光デバイス3乃至発光デバイス5の電力効率-輝度特性を示す図である。
図36図36は、発光デバイス3乃至発光デバイス5の外部量子効率-輝度を示す図である。
図37図37は、発光デバイス3乃至発光デバイス5の電界発光スペクトルを示す図である。
図38図38は、発光デバイス3および発光デバイス8の発光物質の吸収スペクトル、フォトルミネッセンス(PL)スペクトル(室温)、ホスト材料のPLスペクトル(室温)および(10K)を示した図を示す図である。
図39図39(A)および図39(B)は、発光デバイス4の発光物質の吸収スペクトル、フォトルミネッセンス(PL)スペクトル(室温)、ホスト材料及び第2の正孔輸送層のPLスペクトル(室温)および(10K)を示した図を示す図である。
図40図40(A)および図40(B)は、発光デバイス5の発光物質の吸収スペクトル、フォトルミネッセンス(PL)スペクトル(室温)、ホスト材料及び第2の正孔輸送層のPLスペクトル(室温)および(10K)を示した図を示す図である。
図41図41は、発光デバイス6乃至発光デバイス8の輝度-電流密度特性を示す図である。
図42図42は、発光デバイス6乃至発光デバイス8の電流効率-輝度特性を示す図である。
図43図43は、発光デバイス6乃至発光デバイス8の輝度-電圧特性を示す図である。
図44図44は、発光デバイス6乃至発光デバイス8の電流密度-電圧特性を示す図である。
図45図45は、発光デバイス6乃至発光デバイス8のブルーインデックス-輝度特性を示す図である。
図46図46は、発光デバイス6乃至発光デバイス8の外部量子効率-輝度特性を示す図である。
図47図47は、発光デバイス6乃至発光デバイス8の電界発光スペクトルを示す図である。
図48図48(A)および図48(B)は、発光デバイス6の発光物質およびエネルギードナーの吸収スペクトル、フォトルミネッセンス(PL)スペクトル(室温)、ホスト材料のPLスペクトル(室温)および(10K)を示した図を示す図である。
図49図49(A)および図49(B)は、発光デバイス7の発光物質およびエネルギードナーの吸収スペクトル、フォトルミネッセンス(PL)スペクトル(室温)、ホスト材料のPLスペクトル(室温)および(10K)を示した図を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施の態様について図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0035】
なお、本明細書等において、メタルマスク、またはFMM(ファインメタルマスク、高精細なメタルマスク)を用いて作製されるデバイスをMM(メタルマスク)構造のデバイスと呼称する場合がある。また、本明細書等において、メタルマスク、またはFMMを用いることなく作製されるデバイスをMML(メタルマスクレス)構造のデバイスと呼称する場合がある。
【0036】
(実施の形態1)
有機EL素子(以下発光デバイスともいう)を表示素子として用いたディスプレイ(有機ELディスプレイ)が実用化されて久しい。当該ディスプレイには、フルカラー表示を実現するために、通常、赤、緑、青の少なくとも3つの色の光を呈する画素が備えられている。
【0037】
当該画素には、それぞれの発光色毎に発光デバイスが設けられ、Side by Side方式、いわゆる塗分け方式のディスプレイにおいては、各発光デバイスは、対応する画素の発光色に応じて異なる発光物質を有している。また、白色光、または青色もしくは青色よりも短波長の光をカラーフィルタまたは色変換層を用いて所望の色の光とするカラーフィルタ方式、または色変換方式の場合はディスプレイに搭載する発光デバイスが有する発光物質を同一とすることもできる。
【0038】
このような発光デバイスに用いられる発光物質としては、一重項励起状態から一重項基底状態に戻る際に光を発する蛍光材料、三重項励起状態から一重項基底状態に戻る際に光を発する燐光材料、三重項励起状態から一重項励起状態への逆項間交差の過程を含み、一重項励起状態から一重項基底状態に戻る際に光を発する熱活性化遅延蛍光(Thermally Activated Delayed Fluorescence:TADF)材料、などが主に用いられ、盛んに研究されている。
【0039】
ここで、電流励起の有機ELデバイスにおいては、一重項励起状態と三重項励起状態の生成比率が1:3である。そのため、一重項励起状態しか発光に用いることができない蛍光材料を発光物質として用いた発光デバイスの内部量子効率の理論限界は、25%であることが知られている。一方で、燐光材料は項間交差により一重項励起状態を三重項励起状態に変換することができることから、理論上100%の内部量子効率を示す発光デバイスを実現できる。このため、燐光材料を発光物質として用いた発光デバイスは、蛍光材料を発光物質として用いた発光デバイスと比較して発光効率の高い発光デバイスとすることができる。このような理由により、現状実用化されている多くの有機ELディスプレイにおける赤色と緑色の発光を呈する発光デバイスでは、燐光材料が発光物質として用いられている。
【0040】
しかし、赤色および緑色の発光を呈する発光デバイスの発光物質に燐光材料が用いられているディスプレイであっても、青色の発光を呈する発光デバイスの発光物質には効率の劣る蛍光材料が用いられていることが多い。この理由は、主として信頼性にある。燐光材料を青色発光物質として用いた発光デバイスは、おしなべて駆動寿命が短く、良好な信頼性を有する発光デバイスを得ることが困難なのである。このため、現状市販されているほとんど全ての有機ELディスプレイに用いられている青色発光デバイスは、蛍光発光デバイスである。
【0041】
駆動寿命の問題が解決されれば、発光効率に優れた青色燐光材料を青色発光デバイスに適用することで、有機ELディスプレイの性能を大きく向上させることができる。しかし、青色燐光デバイスの駆動寿命が短い理由には、2つの本質的な要因がある。
【0042】
一つ目の要因としては、通常の化合物においては、三重項状態のエネルギーが一重項状態のエネルギーよりも低いことが挙げられる。青色の光は赤色および緑色の光よりもエネルギーが高い光であるため、三重項励起状態から青色の光を得ようとすると(青色燐光を得ようとすると)、赤色燐光材料および緑色燐光材料よりも高い三重項励起準位を有する化合物が必要となる。
【0043】
上述したように、通常有機ELデバイスに用いられる化合物における三重項状態のエネルギーは一重項状態のエネルギーより低いため、青色燐光材料の一重項励起準位は、既に高い位置に存在する三重項励起準位よりもさらに高い位置に存在することになる。高い励起準位を有する物質は、低い励起準位を有する物質よりも不安定であることから、青色燐光デバイスは、赤色または緑色燐光デバイス、および蛍光デバイスよりも良好な信頼性を得ることが難しくなってしまうのである。また、青色燐光材料に近い位置で使用される周辺材料の状況はより深刻である。当該周辺材料は、発光物質(青色燐光材料)の励起エネルギーを失活させないよう、青色燐光材料の三重項励起準位、および一重項励起準位よりも高いエネルギーレベルに位置する三重項励起準位、および一重項励起準位を各々有する物質である必要があるからである。
【0044】
二つ目の要因としては、燐光材料の発光寿命(燐光寿命、励起子寿命ともいう)が長いことが挙げられる。基本的には三重項励起状態から一重項基底状態への遷移はスピン禁制であり、一重項励起状態から一重項基底状態への遷移はスピン許容であることから、燐光は蛍光と比較して非常に長い発光寿命を有する(燐光寿命:~μs、蛍光寿命:~ns)。燐光寿命が長いということは、三重項励起子の寿命が長いということを意味する。そのため、燐光発光デバイスでは、発光物質がエネルギーの高い励起状態に長くあり続けることとなり、発光物質自身の劣化または周辺材料の劣化が促進されてしまうのである。
【0045】
加えて、青色燐光材料は、上述のように赤色または緑色燐光材料よりも三重項励起状態のエネルギーが高いため、青色燐光デバイスは励起子寿命が長いことの悪影響が非常に大きく、実用に耐えうる信頼性を得ることが未だ難しい状況となっている。
【0046】
なお、TADF材料は一重項励起状態から発光するため蛍光材料の一種であるが、一重項励起準位と三重項励起準位が非常に近い物質であるために室温での逆項間交差を可能としている。このことから、三重項励起エネルギーを一重項励起エネルギーに変換することが可能となり、TADF材料を発光物質として用いた発光デバイスは、燐光材料を用いた発光デバイスと同様に、理論的には100%の内部量子効率を実現可能である。しかし、TADF材料を用いた青色発光デバイスにおいては、青色燐光デバイスと同様に三重項励起準位が高いという問題があるため、青色燐光デバイスと同じく周辺材料の信頼性および選択に難があり、信頼性の確保が困難である。また、逆項間交差が禁制であることから青色燐光デバイスと同様に励起子寿命も長いため、この点でも同様に信頼性の確保が現状困難となっている。
【0047】
ここで、励起状態の形成が中心元素のf軌道とd軌道の間の遷移である4f-5d遷移であり、当該励起状態から発光する希土類元素の有機錯体が知られている(例えば非特許文献1参照)。希土類元素はその多くが4f-4f遷移による励起であり、4f-4f遷移はパリティ禁制であることから励起子寿命が長い(~ms)ものが多い。しかし、希土類元素の一部に、上述のように4f-5d遷移による励起となるCe3+、Sm2+、Eu2+、Tm2+、Yb2+などのイオンが存在する。f-d遷移はパリティ許容遷移であることから遷移が比較的速く、f-d遷移により形成された励起状態の寿命は比較的短い(~μs)。結果として、当該イオンおよびその錯体の励起子寿命は比較的短いものとなる。
【0048】
特に、Ce3+は、その基底状態および励起状態がいずれも二重項状態であり、Ce3+の錯体は、二重項励起状態から発光する物質とすることができる。そのため、Ce3+の錯体は、基底状態と励起状態間の遷移が、パリティ許容遷移であるというだけでなく、スピン許容遷移でもあり励起子寿命がさらに短い(~ns)物質とすることができる。このことから、Ce3+の錯体は、燐光材料またはTADF材料で問題になったような高エネルギーの励起子が引き起こす自身の劣化、および周辺物質の劣化が起こりにくい。
【0049】
また、Ce3+の錯体は上述したように基底状態も励起状態も二重項状態とすることができるため、電流励起であってもスピン選択則による制約を受けず、二重項励起状態を100%生成可能である。このことからCe3+の錯体は、燐光材料と同様に内部量子効率100%が可能となり、非常に発光効率の良好な発光デバイスを作製することができる発光物質である。
【0050】
さらに、Ce3+の錯体を発光物質として発光デバイスに用いる場合の大きな特徴として、二重項状態から三重項状態へのエネルギー移動が禁制であることが挙げられる。
【0051】
分子間におけるエネルギーの移動機構には、大きく分けてフェルスター機構とデクスター機構の2種類がある。そのうちフェルスター機構によるエネルギー移動は、励起状態のエネルギードナーが基底状態に戻る際と、基底状態の発光物質が励起状態に変化する際の電子遷移が共に許容遷移である際に許容となる。
【0052】
そのため、蛍光材料から二重項励起状態から発光する物質への、フェルスター機構によるエネルギー移動は、当該蛍光材料の一重項励起状態からのみ許容され、三重項励起状態からのエネルギー移動は起こらない。なぜなら、蛍光材料は通常、室温で三重項励起状態に対応する発光スペクトルがない、もしくは極めて微弱だからである。
【0053】
また、二重項励起状態から発光する物質の二重項励起状態から、他の蛍光材料へのフェルスター機構によるエネルギー移動は、一重項状態へのみ許容され、三重項状態へのエネルギー移動は起こらない。なぜなら、蛍光材料は通常、三重項励起状態に対応する吸収スペクトルがない、もしくは極めて微弱だからである。
【0054】
なお、発光デバイス(有機ELデバイス)に用いられる有機化合物は通常、蛍光材料であることから、発光層およびその周辺に形成される層に用いられる材料は、特に目的を持って燐光材料を狙って選ばない限り蛍光材料である。また、上述の二重項励起状態から発光する物質も、二重項励起状態から二重項基底状態への遷移の際に発光するため、厳密には蛍光材料であるが、本明細書中においては、蛍光材料は一重項励起状態から一重項基底状態への遷移の際に発光する材料を示すものとし、二重項励起状態から発光する物質は蛍光材料と区別して議論するものとする。
【0055】
一方、デクスター機構によるエネルギー移動の許容条件は、エネルギー移動前後で全スピン多重度の和が一致していることである。
【0056】
Ce3+の錯体の場合、励起状態も基底状態も二重項とすることができる(二重項励起状態:D、二重項基底状態:D)。また、蛍光材料の基底状態は一重項基底状態(S)、励起状態は一重項励起状態(S)と三重項励起状態(T)である。したがって、二重項励起状態から発光する物質のDからデクスター機構により蛍光材料へエネルギーが移動する場合、エネルギー移動が許容であるのは一重項状態へのみとなる(式(1))。すなわち、デクスター機構によるエネルギー移動においても、二重項励起状態から発光する物質のDから、蛍光材料の三重項状態へのエネルギー移動は禁制であり(式(2))起こらない。
【0057】
また、蛍光材料から、デクスター機構により二重項励起状態から発光する物質へエネルギーが移動する場合、移動が許容であるのは蛍光材料のSからのみとなる(式(3)、式(4)参照)。すなわち、デクスター機構によるエネルギー移動においても、蛍光材料のTから二重項励起状態から発光する物質の二重項状態へのエネルギー移動は禁制であり、起こらない。
【0058】
+S→D+S (許容) ・・・ (1)
+S→D+T (禁制) ・・・ (2)
+D→S+D (許容) ・・・ (3)
+D→S+D (禁制) ・・・ (4)
【0059】
また、Eu2+の場合は、励起状態は八重項または六重項、基底状態は八重項であることから、同様に、蛍光材料へエネルギー移動の際、三重項励起状態へのエネルギー移動は禁制であり起こらず、蛍光材料からのエネルギー移動も三重項励起状態からは禁制であり起こらない。そのため、Ce3+の場合と同様に考えることができる。
【0060】
以上のように、f-d遷移に基づく発光を示す物質、特に二重項励起状態から発光する物質(Ce3+の錯体)と、他の蛍光材料との間のエネルギー移動は、主なエネルギー移動機構であるフェルスター機構およびデクスター機構のいずれにおいても、二重項状態と一重項状態との間のエネルギー移動のみが許容であり、二重項状態と三重項状態との間のエネルギー移動は禁制となる。
【0061】
すなわち、二重項励起状態から発光する物質を発光物質として用いた発光デバイスでは、発光物質に近い位置で使用する周辺材料の最低三重項励起準位(T準位)が二重項励起状態から発光する物質の最低二重項励起準位(D準位)より低くても、エネルギー移動は起こらないことに本発明者らは着目した。
【0062】
これは、二重項励起状態から発光する物質を発光物質として用いた発光デバイスでは、燐光発光デバイスと異なり、周辺材料としてT準位が発光物質の励起準位よりも高い材料を、選ぶ必要がないことを意味する。
【0063】
すなわち、二重項励起状態から発光する物質を発光物質として用いた発光デバイスでは、最低一重項励起準位(S準位)が発光物質の励起準位(D準位)よりも高く、T準位が発光物質の励起準位(D準位)よりも低い物質を、周辺材料として選ぶことができる。結果として、二重項励起状態から発光する物質を発光物質として用いた発光デバイスは、燐光材料を発光物質とした発光デバイスと同程度の発光効率を有しつつ、蛍光材料を発光物質として用いた発光デバイスと同程度の比較的安定な有機化合物を周辺材料として用いることが可能となり、信頼性の良好な発光デバイスを得ることが可能となる。
【0064】
周辺材料としては具体的には、発光層に接して形成するキャリア輸送層、またはキャリアブロック層を構成する材料が挙げられる。発光層に接して形成するキャリア輸送層、またはキャリアブロック層は発光層に含まれる発光物質に隣接するため、励起準位が発光物質よりも低い材料を用いると発光物質から励起エネルギーが移動してしまい、発光効率の低下につながってしまう。そのため、燐光発光デバイスではS準位、T準位共に発光物質のS準位、T準位よりもそれぞれ高い材料を用いざるを得なかった。(なお、蛍光発光デバイスでは、T準位は発光に寄与せず、もともと発光効率が低いため、周辺材料はS準位のみ発光物質のS準位より高ければ発光効率の低下は起こらない。)しかし、S準位、T準位共に青色燐光材料のS準位、T準位よりもそれぞれ高い材料は、不安定であり、信頼性の低下につながる。また、そのような材料は数も少ないため、材料の選択の余地も狭かった。
【0065】
本発明の構成では、周辺材料として発光物質の励起準位よりもT準位の低い安定な材料を用いることが可能でありつつ、発光効率の良好な発光デバイスを得ることができる。そのため、発光効率が良好で、且つ信頼性の良好な発光デバイスを得ることができる。なお、特に本発明の一態様では、青色発光デバイスであっても発光効率が良好で、信頼性の良好な発光デバイスを得ることができることが特徴である。また、材料の選択の余地も広がるため、ニーズに合わせてより特性の良好な発光デバイスを得ることが容易となる。
【0066】
なお、周辺材料としては、キャリア輸送層、またはキャリアブロック層を構成する材料の他に、発光層におけるホスト材料も該当する。従来の構成では、ホスト材料として励起準位が発光物質の発光に関わる励起準位よりも低い材料を用いると発光物質から励起エネルギーが移動してしまい、発光効率の低下につながるため、特に燐光発光デバイスではT準位が発光物質のT準位よりも高い材料を用いなければならず、不安定な材料を用いざるを得なかった。また、材料の選択の余地も狭かった。本発明の一態様の発光デバイスでは、発光物質として二重項励起状態から発光する物質を用い、ホスト材料を含む周辺材料として発光物質のD準位よりもT準位の低い安定な材料を用いることができるため、特性の良好な発光デバイスを得ることができる。また、材料の選択の余地も広がるため、ニーズに合わせてより特性の良好な発光デバイスを得ることが容易となる。
【0067】
なお、二重項励起状態から発光する物質を有する発光層にさらに蛍光材料を添加して、発光物質として当該蛍光材料を用い、二重項励起状態から発光する物質をエネルギードナーとして用いることも可能である。この構成とすることで、蛍光材料を発光物質として用いつつ、燐光発光デバイス並みに発光効率の良好な蛍光発光デバイスを得ることができる。
【0068】
つまり、二重項励起状態から発光する物質をエネルギードナーとする場合、蛍光材料のS準位は二重項励起状態から発光する物質のD準位と同等またはよりも低いものを選択するため、当該蛍光材料のT準位は必然的にD準位よりも低くなるが、D準位から蛍光材料の三重項状態へのエネルギー移動は起こらないためS準位のみにエネルギー移動させることが可能となり、発光効率の良好な発光デバイスを提供することが可能となる。
【0069】
なお、蛍光材料は、半値幅の狭い、良好な色純度を有する発光を呈するものが多く開発済みであることから、発光効率が良好で且つ色純度も良好な発光デバイスを提供することができる。
【0070】
なお、各励起準位に関しては、吸収スペクトルの吸収端、または室温(例えば290-300K程度(17℃-27℃)、好ましくは298K(25℃)付近)におけるフォトルミネッセンス(PL)スペクトルの短波長側の発光端におけるエネルギーをS準位およびD準位のエネルギーとみなすことができ、低温(4Kから77Kまでの範囲のいずれかの温度)のPLスペクトルにおける燐光スペクトル(燐光成分)の短波長側の発光端をT準位のエネルギーとみなすことができる。
【0071】
ここで、各スペクトルの測定は、薄膜状態で測定してもよいし、溶液状態で測定してもよい。ただし、スペクトル同士の比較を行う場合は、可能な限り薄膜の測定結果同士あるいは溶液の測定結果同士のように同じサンプル形状で取得したデータで比較を行うものとする。
【0072】
溶液状態で測定を行う場合、溶媒としては、ヘキサン、ベンゼン、トルエン、ジエチルエーテル、酢酸エチル、クロロホルム、クロロベンゼン、ジクロロメタン、2-メチルテトラヒドロフラン(2-MeTHF)、などを用いることができ、トルエン、ジクロロメタン、2-MeTHFが好ましい。また、低温で燐光成分を観測する際に、良好なガラス状態を形成できることから、ヨードベンゼン:ジクロロメタン:トルエン=20%:40%:40%の混合溶媒などを用いてもよい。
【0073】
なお、溶液にて燐光発光スペクトルを観測する場合、液体窒素の温度である77Kで測定することが好ましい。また、薄膜にて燐光発光スペクトルを観測する場合、液体ヘリウムの温度が4Kなので、4Kから10K程度の間で測定することが好ましい。また、低温で発光スペクトルを測定する場合、燐光発光スペクトルに加えて遅延蛍光スペクトルが現れる場合がある。この場合は、室温での発光スペクトル(蛍光スペクトル)との比較を行い、蛍光発光スペクトルと同様の波長にピークを有する発光スペクトルが遅延蛍光スペクトルであると判断することができる。
【0074】
以上のように、本発明の一態様の発光デバイスは、発光層に含まれる、二重項励起状態から発光する物質(第1の物質)の最低二重項励起準位(D準位)が、発光層に接する第1の層を構成する材料(第2の物質)の最低三重項励起準位(T準位)よりも高く、最低一重項励起準位(S準位)よりも低い発光デバイスである。すなわち、発光層に含まれる二重項励起状態から発光する物質(第1の物質)の室温におけるPLスペクトルの短波長側の発光端が、第2の物質の低温におけるPLスペクトルの短波長側の発光端よりも短波長側に位置し、且つ第2の物質の室温におけるPLスペクトルの短波長側の発光端よりも長波長側に位置する発光デバイスということができる。なお、当該発光デバイスのELスペクトルの短波長側の発光端を、二重項励起状態から発光する物質の室温におけるPLスペクトルの短波長側の発光端と同様とみなしてもよい。
【0075】
または、本発明の一態様の発光デバイスは、発光層に含まれる二重項励起状態から発光する物質(第1の物質)の吸収スペクトルの吸収端が、第2の物質の4Kから77Kまでの範囲のいずれかの温度におけるPLスペクトルの短波長側の発光端よりも短波長側に位置し、且つ第2の物質の室温におけるPLスペクトルの短波長側の発光端よりも長波長側に位置する発光デバイスと言うことができる。
【0076】
または、本発明の一態様の発光デバイスは、発光層に含まれる二重項励起状態から発光する物質(第1の物質)の吸収スペクトルの吸収端が、第2の物質の4Kから77Kまでの範囲のいずれかの温度におけるPLスペクトルの短波長側の発光端よりも短波長側に位置し、且つ第2の物質の吸収スペクトルの吸収端よりも長波長側に位置する発光デバイスということができる。
【0077】
本発明の一態様の発光デバイスは、発光層に含まれる、二重項励起状態から発光する物質(第1の物質)の最低二重項励起準位(D準位)が、発光層に接する第1の層を構成する材料(第2の物質)および発光層に含まれるホスト材料(第3の物質)のいずれの最低三重項励起準位(T準位)よりも高く、いずれの最低一重項励起準位(S準位)よりも低い発光デバイスである。すなわち、発光層に含まれる二重項励起状態から発光する物質(第1の物質)の室温におけるPLスペクトルの短波長側の発光端が、第2の物質および第3の物質のどちらの低温におけるPLスペクトルの短波長側の発光端よりも短波長側に位置し、且つ第2の物質および第3の物質のどちらの室温におけるPLスペクトルの短波長側の発光端よりも長波長側に位置する発光デバイスということができる。なお、当該発光デバイスのELスペクトルの短波長側の発光端を、二重項励起状態から発光する物質の室温におけるPLスペクトルの短波長側の発光端と同様とみなしてもよい。
【0078】
または、本発明の一態様の発光デバイスは、発光層に含まれる二重項励起状態から発光する物質(第1の物質)の吸収スペクトルの吸収端が、第2の物質および第3の物質のどちらの4Kから77Kまでの範囲のいずれかの温度におけるPLスペクトルの短波長側の発光端よりも短波長側に位置し、且つ第2の物質および第3の物質のどちらの室温におけるPLスペクトルの短波長側の発光端よりも長波長側に位置する発光デバイスと言うことができる。
【0079】
または、本発明の一態様の発光デバイスは、発光層に含まれる二重項励起状態から発光する物質(第1の物質)の吸収スペクトル吸収端が、第2の物質および第3の物質のどちらの4Kから77Kまでの範囲のいずれかの温度におけるPLスペクトルの短波長側の発光端よりも短波長側に位置し、且つ第2の物質および第3の物質のどちらの吸収スペクトルの吸収端よりも長波長側に位置する発光デバイスということができる。
【0080】
なお、Ce3+の錯体は、配位子を適切に選択することによって青色発光に十分な励起エネルギーを得ることが可能であることから、青色発光材料として用いることができる。
【0081】
このように、Ce3+の錯体に代表される二重項励起状態から発光する材料は、励起子寿命が短く劣化を引き起こしにくい、電流励起においてスピン選択則の制約を受けず100%の内部量子効率が可能である、三重項励起準位が低い周辺材料を用いることができる、青色の発光が可能であるという特徴を有し、Ce3+の錯体を用いた発光デバイスは、発光効率が高く、信頼性が良好な青色発光デバイスとすることが可能となる。
【0082】
有機化合物のD準位、S準位の算出に関しては、蛍光スペクトルにおけるピークの短波長側の傾きが最大となる値において接線を引き、その接線と横軸(波長)あるいはベースラインとの交点の波長のエネルギーをD準位またはS準位とすればよい。また、有機化合物のT準位の算出に関しては、燐光スペクトルにおけるピークの短波長側の傾きが最大となる値において接線を引き、その接線と横軸(波長)あるいはベースラインとの交点のエネルギーをT準位とすればよい(例えば、Daisaku TANAKA他,「Ultra High Efficiency Green Organic Light-Emitting Devices」,Japanese Journal of Applied Physics,Vol.46,No.1,2007,pp.L10-L12参照)。また、他の方法として、蛍光スペクトルまたは燐光スペクトルにおいて基底状態と励起状態の振動準位間におけるν=0→ν=0遷移(0→0帯)が明確に観測される場合、当該0→0帯を用いてD準位、S準位またはT準位を算出することもできる。(Nicholas J. Turro,V.Ramamurthy,J.C. Scaiano著,「MODERN MOLECULAR PHOTOCHEMISTRY OF ORGANIC MOLECULES」,UNIVERSITY SCIENCE BOOKS,2010年2月10日発行,pp.204-208)。本明細書においては、前者の接線を引く方法で各準位の算出を行っている。また、準位同士の比較を行う場合は、同じ方法で算出した準位での比較を行うものとする。
【0083】
また、吸収スペクトルにおける最も長波長に位置する吸収端は、薄膜状態またはマトリクス材料中に対象の物質をドーピングした薄膜における対象物質の吸収スペクトルを測定し、直接遷移を仮定したTaucプロットから求めることができる。マトリクス材料中に対象の物質をドーピングした薄膜を用いて測定を行う場合、当該マトリクス材料としては、ポリメチルメタクリレート(略称:PMMA)のようなポリマーマトリクス材料、1,3-ビス(N-カルバゾリル)ベンゼン(略称:mCP)のような低分子ワイドギャップ材料を用いればよい。また、吸収スペクトルにおける最も長波長に位置する吸収端は、溶液の吸収スペクトルからも求めることができる。この場合、対象物質の溶液の吸収スペクトルを測定し、吸収スペクトルの最も長波長に観測されるピークもしくはショルダーピークの長波長側の傾きが負に最も大きくなる点において接線を引き、その接線と横軸(波長)あるいはベースラインとの交点から吸収端を算出してもよい。当該溶液の溶媒としては、比較を行う吸収端の値が同じ溶媒を用いて算出された値であれば特に制限はないが、トルエンおよびクロロホルムなど、比較的極性の小さい溶媒が好ましい。
【0084】
吸収端はいずれの方法により求めても構わないが、比較を行う場合は、同じサンプル形状で測定した値を用いて比較を行うものとする。なお、吸収端は溶液の吸収スペクトルを用いて算出することが、精度が高く好ましい。
【0085】
図1(A)に、本発明の一態様の発光デバイスにおけるエネルギー移動図を示す。
【0086】
まず、本発明の一態様の発光デバイスは、発光層に二重項励起状態から発光する物質(DE)を発光物質として有し、その周辺材料(上記第2の物質および第3の物質に相当)として、材料A(M)を有する発光デバイスである。なお、Mは蛍光材料であるものとする。
【0087】
の最低一重項励起準位(SA1準位)はDEの最低二重項励起準位(D準位)よりも高いエネルギーレベルに位置し、Mの最低三重項励起準位(TA1準位)は、D準位よりも低いエネルギー準位に位置している。SA1準位はD準位よりも高いエネルギーレベルに位置しているため、D準位からエネルギー移動は起こらない(ルートETSA)。また、TA1準位はD準位よりも低いエネルギーレベルに位置しているが、二重項励起状態から三重項状態へのエネルギー移動は禁制であるため、D準位からTA1準位へのエネルギー移動も起こらない(ルートETTA)。このように、本発明の一態様の発光デバイスでは、発光物質として二重項励起状態から発光する物質を用いることで、周辺材料にMのような三重項励起準位の低い安定な材料を用いることができるようになり、また、二重項励起状態から発光する物質が内部量子効率100%を実現しうる発光物質であることから、発光効率が高く且つ信頼性の良好な発光デバイスを提供することが可能となる。
【0088】
図1(B)には燐光材料(PH)を発光物質として有し、周辺材料として材料A(M)または材料B(M)を用いた燐光発光デバイスにおけるエネルギー移動図を示す。なお、Mは、上記と同様に、PHの励起準位よりもSA1準位が高く、TA1準位が低い物質である。すなわち、SA1準位はPHの最低一重項励起準位(SP1準位)よりも高いエネルギー準位に位置し、TA1準位は、PHの最低三重項励起準位(TP1準位)よりも低いエネルギー準位に位置している。一方、Mは、PHの励起準位より、S準位もT準位も高い物質である。すなわちMの最低一重項励起準位(SB1準位)および最低三重項励起準位(TB1準位)は、各々SP1準位およびTP1準位よりも高いエネルギー準位に位置する物質である。
【0089】
実用化されている燐光発光デバイスにおける周辺材料には、Mのように、SP1準位より高いSB1準位およびTP1準位よりも高いTB1準位を有する材料が用いられている。このような材料を用いることによって、PHからMへの励起エネルギーの移動を抑制し、PHから効率よく燐光を得ることができる。しかし、図からもわかるように、MはPHおよびMと比較して励起準位のエネルギーが高く不安定な物質である。
【0090】
ここで、PHとMとの間におけるエネルギー移動を考えると、SA1準位がSP1準位よりも高いため、PHの一重項励起準位からMの一重項準位へエネルギーは移動しない。また、TA1準位はSP1準位よりも低いエネルギー準位に位置するが、一重項励起準位から三重項準位へのエネルギー移動は禁制であるため、エネルギー移動は起こらない(ルートETSTA)。このため、PHの一重項励起エネルギーは、Mには移動しないことがわかる。
【0091】
一方、PHは燐光材料であるため、一重項状態と三重項状態との間のエネルギー移動が可能であることから、SP1準位の励起エネルギーは、TP1準位に移動することができる(項間交差:ルートIC)。また、TP1準位とSP0準位との間のエネルギー移動が許容であることから、TP1準位のエネルギーがSP0準位に移動する際に燐光を発する(ルートEm)。このように、PHでは、SP1準位のエネルギーをTP1準位に移動することができ、TP1準位のエネルギーがSP0準位に移動する際に燐光を発することから、非常に効率よく発光することがわかる。しかし、周辺材料としてMが存在すると、TA1準位がTP1準位より低いエネルギー準位に位置することから、TP1準位の励起エネルギーが一部TA1準位に移動してしまう(ルートETTA)。TA1準位に移動したエネルギーは、Mが蛍光材料であることから無放射失活(ルートDA)し、発光に関与しない。そのため、PHの周辺材料としてMを用いた発光デバイスではエネルギーの大きなロスが発生する。
【0092】
このように、本発明の一態様の発光デバイスでは、発光物質として二重項励起状態から発光する物質(DE)を用いることで、最低三重項励起準位(T準位)の低い安定した物質を周辺材料に用いることができ、信頼性の良好な発光デバイスとすることができる。また、材料の選択の幅が広くなるため、より適した特性を有する物質を周辺材料として用いることができるようになり、発光デバイスの特性が向上する。
【0093】
なお、発光層がホスト材料をさらに有する構成も本発明の一態様の発光デバイスとして存在する。発光層がホスト材料を有する場合、ホスト材料も周辺材料に該当する。すなわち、ホスト材料にもMのような材料を用いることができる。これにより、最低三重項励起準位(T準位)の低い安定した物質をホスト材料に用いることができ、信頼性の良好な発光デバイスとすることができる。また、材料の選択の幅が広くなるため、より適した特性を有する物質をホスト材料として用いることができるようになり、発光デバイスの特性が向上する。
【0094】
しかしこの場合、キャリアが再結合することで生じたエネルギーによって、ホスト材料が励起され、ホスト材料の一重項励起準位および三重項励起準位が形成される場合がある。
【0095】
この場合、ホスト材料の一重項励起準位と三重項励起準位は1:3の割合で生成する。最低一重項励起状態から発光物質の二重項励起準位へのエネルギー移動は許容であるので、ホスト材料の一重項励起準位のエネルギーは二重項励起準位へ移動し発光する。しかし一方で、生成した三重項励起準位は、発光に寄与することなく無放射失活しエネルギーロスとなる。そのため、本発明の発光デバイスでは、ホスト材料で再結合が起こるのではなく、発光物質である二重項励起状態から発光する物質(DE)でキャリアが再結合する構成であることが好ましい。
【0096】
発光層において、二重項励起状態から発光する物質(DE)でキャリアが再結合するためには、ホスト材料のHOMO準位は低いことが好ましく、発光層の陽極側に接する層(ホール輸送層)が有する材料のHOMO準位よりホスト材料のHOMOが低くなるようホスト材料を選択すればよい。そうすることで、ホール輸送層から発光層へホールが注入されるとき、ホールが発光物質である二重項励起状態から発光する物質(DE)へ注入されやすくなるため、二重項励起状態から発光する物質(DE)でキャリアが再結合する構成とすることができる。
【0097】
前述したように、電流励起によって二重項基底状態(D)から二重項励起状態(D)が生成する確率は理論上100%が可能であることから、二重項励起状態から発光する物質(DE)でキャリアが再結合することによって内部量子効率100%の発光デバイスを実現することが可能となる。
【0098】
以上のように、本発明の一態様の発光デバイスは、100%の内部量子効率が可能である、三重項励起準位が低い周辺材料を用いることができる、青色の発光が可能であるという特徴を有し、さらに励起子寿命が短く劣化を引き起こしにくいことから発光効率が高く、信頼性が良好な青色発光デバイスとすることが可能となる。
【0099】
また、本発明の一態様の発光デバイスは、発光層にさらに蛍光材料を含み、二重項励起状態から発光する物質(DE)から蛍光材料(一重項励起状態から一重項基底状態への遷移に基づき発光を呈する物質)へのエネルギー移動により蛍光材料が発光する構成としてもよい。この際、当該発光デバイスは、二重項励起状態から発光する物質(DE)の二重項励起エネルギーが、蛍光材料(FL)の一重項励起エネルギーよりも大きくなるように作製する。これは、発光層に含まれる、二重項励起状態から発光する物質(DE)の最低二重項励起準位(D準位)は、蛍光材料(FL)の最低一重項励起準位(S準位)よりも高い発光デバイスである。すなわち、発光層に含まれる二重項励起状態から発光する物質(DE)の室温におけるPLスペクトルの短波長側の発光端が、蛍光材料(FL)の室温におけるPLスペクトルの短波長側の発光端よりも短波長側に位置する発光デバイスということができる。または、二重項励起状態から発光する物質(DE)から蛍光材料(FL)へ効率よくエネルギー移動するためには、当該二重項励起状態から発光する物質の発光スペクトル(PLスペクトル)が、当該蛍光材料(FL)の吸収スペクトルにおける最も長波長に位置する吸収帯と重なることが好ましい。したがって、本発明の一態様の発光デバイスは、発光層に含まれる二重項励起状態から発光する物質(DE)の室温におけるPLスペクトルの短波長側の発光端が、蛍光材料(FL)の吸収スペクトルの吸収端よりも短波長側に位置する発光デバイスということができる。
【0100】
前述したように、二重項励起状態からは三重項励起状態へのエネルギー移動が起こらず、一重項励起状態へのエネルギー移動のみが起こる。このため、二重項励起状態から発光する物質からは蛍光材料の発光に寄与しない三重項励起状態へのエネルギー移動は起こらず、励起エネルギーを効率的に蛍光材料の発光に変換できる。
【0101】
何らかのエネルギードナーから蛍光材料へのエネルギー移動という観点では、TADF材料または燐光材料からのエネルギー移動が種々検討されているが、これらにおいては、本質的に、望ましくない蛍光材料の三重項励起状態へのエネルギー移動が生じてしまう問題がある。すなわち、TADF材料の三重項励起状態から蛍光発光物質の三重項励起状態へのデクスター移動は許容であるし、燐光材料の三重項励起状態から蛍光発光物質の三重項励起状態へのデクスター移動も許容である。一方で、例えば上述したような二重項励起状態から発光する物質(DE:代表的にはCe3+の錯体)から蛍光発光物質へのエネルギー移動においては、望ましくない蛍光材料の三重項励起状態へのエネルギー移動(ルートETTf)が抑制されるのであるから、このようなエネルギー移動の形態は特筆すべき特徴を備えていると言える。
【0102】
このことは、本発明の一態様においては、エネルギー移動する前に発光層中で生じる励起子を二重項励起状態に集約し、その励起エネルギーを蛍光発光物質に受け渡せることを意味する。つまり、二重項励起状態から発光する物質(代表的にはCe3+の錯体)から蛍光材料へのエネルギー移動を利用する本発明の一態様は、スピン選択則を打破し、100%の内部量子効率が可能である。
【0103】
また、二重項励起状態から発光する物質をエネルギードナーとし、蛍光材料を発光させる構成では、蛍光材料は長い歴史を持ち、ディスプレイ用途に適した色度および色純度を有する物質が多く開発されている。事実、Ce3+の錯体の発光スペクトルと比べて、半値幅の狭い発光スペクトルを有する蛍光材料は豊富に存在する。よって二重項励起状態から発光する物質から蛍光材料へのエネルギー移動により蛍光材料が発光する構成とすることによって、色純度の良好な発光デバイスを得ることができる。
【0104】
なお、これは、二重項励起状態から発光する物質の発光スペクトルの半値幅よりも、蛍光材料の発光スペクトルの半値幅を小さくすることで達成される。したがって、本発明の一態様は、二重項励起状態から発光する物質(代表的にはCe3+の錯体)の発光スペクトルの半値幅よりも、蛍光材料の発光スペクトルの半値幅の方が小さい発光デバイスである。なお、半値幅を比較する発光スペクトルとしては、各物質のフォトルミネッセンススペクトルを用いればよい。PLスペクトルを測定・比較する際の試料形態は、薄膜であっても溶液であってもよいが、孤立分子の状態を検証する観点で、溶液が好ましい。当該溶液の溶媒としては、同じ溶媒を用いて比較するのであれば特に制限はないが、トルエンまたはクロロホルムなど、比較的極性の小さい溶媒が好ましい。
【0105】
また、基本的に青色蛍光材料は、発光が一重項励起状態からであることもあって比較的安定であり、種類も豊富である。二重項励起状態から発光する物質から蛍光材料へのエネルギー移動により蛍光材料が発光する構成とすることによって、色純度が良好で、より信頼性の高い発光デバイスを得ることができる。
【0106】
ここで、二重項励起状態から発光する物質は、ブロードな発光になるものも存在する。これを発光物質として使う場合は色純度の観点でデメリットとなるが、エネルギー移動の媒体としては逆にメリットとなる。つまり、当該二重項励起状態から発光する物質の発光スペクトル(PLスペクトル)の最大ピークが、当該蛍光材料の最も長波長に位置する吸収帯のピーク(吸収スペクトルの最も長波長に位置するピークもしくはショルダーピーク)よりも長波長に位置していたとしても、スペクトルがブロードであるがゆえに、当該発光スペクトルが十分にその吸収帯と重なり、エネルギー移動が効率よく可能となる。このような状態においては、駆動電圧をさらに低減できる効果がある。したがって本発明の一態様においては、当該二重項励起状態から発光する物質の発光スペクトル(PLスペクトル)の最大ピークが、当該蛍光材料の吸収スペクトルの最も長波長に位置するピークもしくはショルダーピークよりも長波長に位置することが好ましい。これにより、駆動電圧を低減できるとともに、青色のようなエネルギーの高い発光を得る際に、発光デバイスの駆動寿命を長寿命化することができる。
【0107】
同様の観点で、二重項励起状態から発光する物質をエネルギードナーとし、蛍光材料を発光させる構成においては、当該二重項励起状態から発光する物質の発光スペクトル(PLスペクトル)の最大ピークが、当該蛍光材料の発光スペクトル(PLスペクトル)の最大ピークよりも長波長に位置することがさらに好ましい。これにより、駆動電圧を大きく低減できるとともに、青色のようなエネルギーの高い発光を得る際に、発光デバイスの寿命を大きく長寿命化することができる。なおこの時、当該二重項励起状態から発光する物質の発光スペクトル(PLスペクトル)が長波長に行きすぎるとエネルギー移動ができなくなるため、当該二重項励起状態から発光する物質の発光スペクトル(PLスペクトル)は、当該蛍光材料の吸収スペクトルと重なることが好ましい。これらのPLスペクトル、吸収スペクトルは、溶液での測定結果を用いることが好ましい。当該溶液の溶媒としては、同じ溶媒を用いて比較するのであれば特に制限はないが、トルエンおよびクロロホルムなど、比較的極性の小さい溶媒が好ましい。また、薄膜状態のスペクトルを用いてもよく、その場合、PMMAのようなポリマーまたはマトリクス材料、mCPのような低分子ワイドギャップホスト材料中に対象の材料をドーピングし、吸収スペクトルまたはPLスペクトル測定してもよい。
【0108】
なお、先に蛍光材料において励起子が形成されてしまうと、本発光デバイスでは発光に利用できない三重項励起準位が生成してしまうことから、二重項励起状態から発光する物質をエネルギードナーとし、蛍光材料を発光させる構成を有する本発明の一態様の発光デバイスでは、蛍光材料に優先し、二重項励起状態から発光する物質において励起子が形成されることが好ましい。このことから、二重項励起状態から発光する物質をエネルギードナーとし、蛍光材料を発光させる構成を有する本発明の一態様の発光デバイスにおいては、発光層における二重項励起状態から発光する物質の割合が、蛍光材料の割合よりも大きいことが好ましい。具体的には、二重項励起状態から発光する物質が、蛍光材料に対して質量比で2倍以上、好ましくは5倍以上、より好ましくは10倍以上、さらに好ましくは20倍以上含まれる構成である。
【0109】
以上のように、二重項励起状態から発光する物質をエネルギードナーとし、蛍光材料を発光させる構成を有する本発明の一態様の発光デバイスは、100%の内部量子効率が可能である、三重項励起準位が低いホスト材料を用いることができる、色純度の良好な青色の発光が可能であるという特徴を有し、さらに励起子寿命が短く劣化を引き起こしにくいことから発光効率が高く、信頼性が良好な青色発光デバイスとすることが可能となる。
【0110】
二重項励起状態から発光する物質としては、Ce3+の錯体、特にCe3+の有機錯体を挙げることができる。青色から緑色の発光を得るためには、配位子としては、三重項励起エネルギー準位が高い分子構造が好ましく、例えば複素六員環、複素五員環を有する有機化合物を用いることができ、特に、イミダゾール環、ピラゾール環、トリアゾール環、ピラジン環またはトリアジン環を有する有機化合物であることが好ましく、イミダゾール環またはピラゾール環を有するホウ素化合物であることがさらに好ましい。このような物質としては、例えば以下のようなものが挙げられる。
【0111】
【化1】
【0112】
【化2】
【0113】
また、一般式(G1)で表される有機金属錯体も用いることができる。
【0114】
【化3】
【0115】
一般式(G1)中、Xは炭素または窒素を表し、炭素は水素、重水素、置換または無置換の炭素数1乃至10のアルキル基、置換または無置換の炭素数3乃至10のシクロアルキル基、および置換または無置換の炭素数6乃至30のアリール基のいずれか一と結合する。また、R乃至Rは、それぞれ独立に水素、重水素、置換または無置換の炭素数1乃至10のアルキル基、置換または無置換の炭素数3乃至10のシクロアルキル基、および置換または無置換の炭素数6乃至30のアリール基のいずれか一を表す。また、nは1以上4以下の整数を表す。また、それぞれのボレート配位子は互いに同じであっても異なっていてもよい。また、それぞれのボレート配位子のnは互いに同じであっても異なっていてもよい。また、nが2以上の場合、それぞれのボレート配位子のXは互いに同じであっても異なっていてもよく、それぞれのボレート配位子のRは互いに同じであっても異なっていてもよく、それぞれのボレート配位子のRは互いに同じであっても異なっていてもよい。また、nが2以下の場合、それぞれのボレート配位子のRは互いに同じであっても異なっていてもよい。
【0116】
なお、上記一般式(G1)において、Xは窒素であることが好ましい。
【0117】
また、上記一般式(G1)において、3つのnの合計が7以上9以下とすることが好ましく、8とすることがより好ましい。
【0118】
また、下記一般式(G3)で表される金属錯体も用いることが可能である。
【0119】
【化4】
【0120】
一般式(G3)中、X乃至Xはそれぞれ独立に、炭素または窒素を表し、炭素はそれぞれ独立に水素、重水素、置換または無置換の炭素数1乃至10のアルキル基、置換または無置換の炭素数3乃至10のシクロアルキル基、および置換または無置換の炭素数6乃至30のアリール基のいずれか一と結合する。また、R11乃至R13、R21乃至R23およびR31乃至R33はそれぞれ独立に、水素、重水素、置換または無置換の炭素数1乃至10のアルキル基、置換または無置換の炭素数3乃至10のシクロアルキル基、および置換または無置換の炭素数6乃至30のアリール基のいずれか一を表す。また、j、k、およびpはそれぞれ独立に1以上4以下の整数を表す。なお、jが2以上の場合、それぞれのXは互いに同じであっても、異なっていてもよく、それぞれのR11は互いに同じであっても、異なっていてもよく、それぞれのR12は互いに同じであっても、異なっていてもよい。また、kが2以上の場合、それぞれのXは互いに同じであっても、異なっていてもよく、それぞれのR21は互いに同じであっても、異なっていてもよく、それぞれのR22は互いに同じであっても、異なっていてもよい。また、pが2以上の場合、それぞれのXは互いに同じであっても、異なっていてもよく、それぞれのR31は互いに同じであっても、異なっていてもよく、それぞれのR32は互いに同じであっても、異なっていてもよい。また、jが2以下の場合、それぞれのR13は互いに同じであっても異なっていてもよい。また、kが2以下の場合、それぞれのR23は互いに同じであっても異なっていてもよい。また、pが2以下の場合、それぞれのR33は互いに同じであっても異なっていてもよい。
【0121】
また、上記一般式(G3)において、jは1以上3以下の整数であることが好ましい。
【0122】
また、上記一般式(G3)において、Xは、窒素であることが好ましい。
【0123】
また、下記一般式(G5)で表される金属錯体を用いることができる。
【0124】
【化5】
【0125】
一般式(G5)中、X11乃至X13、X21乃至X23、X24およびX25はそれぞれ独立に、炭素または窒素を表し、炭素はそれぞれ独立に水素、重水素、置換または無置換の炭素数1乃至10のアルキル基、置換または無置換の炭素数3乃至10のシクロアルキル基、および置換または無置換の炭素数6乃至30のアリール基のいずれか一と結合する。また、R41乃至R47、R51乃至R57およびR61乃至R66はそれぞれ独立に、水素、重水素、置換または無置換の炭素数1乃至10のアルキル基、置換または無置換の炭素数3乃至10のシクロアルキル基、および置換または無置換の炭素数6乃至30のアリール基のいずれか一を表す。
【0126】
また、上記一般式(G1)、(G3)および(G5)において、炭素数3乃至10のシクロアルキル基の具体例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、メチルシクロブチル基、シクロペンチル基、メチルシクロペンチル基、イソプロピルシクロペンチル基、tert-ブチルシクロプロピル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、イソプロピルシクロヘキシル基、tert-ブチルシクロヘキシル基、シクロヘプチル基、メチルシクロヘプチル基、イソプロピルシクロヘプチル基、シクロオクチル基、メチルシクロオクチル基、シクロノニル基、メチルシクロノニル基、シクロデシル基等が挙げられる。なお、炭素数3乃至10のシクロアルキル基が置換基を有する場合、当該置換基は、炭素数1乃至4のアルキル基、炭素数3乃至6のシクロアルキル基、または炭素数6乃至13のアリール基とする。
【0127】
また、上記一般式(G1)、(G3)および(G5)において、炭素数3乃至10のシクロアルキル基の具体例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、メチルシクロブチル基、シクロペンチル基、メチルシクロペンチル基、イソプロピルシクロペンチル基、tert-ブチルシクロプロピル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、イソプロピルシクロヘキシル基、tert-ブチルシクロヘキシル基、シクロヘプチル基、メチルシクロヘプチル基、イソプロピルシクロヘプチル基、シクロオクチル基、メチルシクロオクチル基、イソプロピルシクロヘキシル基、シクロノニル基、メチルシクロノニル基、シクロデシル基等が挙げられる。なお、炭素数3乃至10のシクロアルキル基が置換基を有する場合、当該置換基は、炭素数1乃至4のアルキル基、炭素数3乃至6のシクロアルキル基、または炭素数6乃至13のアリール基とする。
【0128】
また、上記一般式(G1)、(G3)および(G5)において、炭素数6乃至30のアリール基としては、フェニル基、o-トリル基、m-トリル基、p-トリル基、メシチル基、o-ビフェニル基、m-ビフェニル基、p-ビフェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、フルオレニル基、9,9-ジメチルフルオレニル基、9,9-ジフェニルフルオレニル基、スピロフルオレニル基、フェナントレニル基、ターフェニル基、アントラセニル基、フルオランテニル基等が挙げられる。なお、炭素数6乃至30のアリール基が置換基を有する場合、当該置換基は、炭素数1乃至4のアルキル基、炭素数3乃至6のシクロアルキル基、または炭素数6乃至13のアリール基とする。
【0129】
なお、上記一般式(G1)、(G3)および(G5)で表される有機金属錯体のうち、以下の構造式で表される化合物がより好ましい。
【0130】
【化6】
【0131】
本実施の形態は、他の形態と任意に組み合わせて用いることが可能である。
【0132】
(実施の形態2)
本実施の形態では、本発明の一態様の発光デバイスについて詳しく説明する。図2(A)に、本発明の一態様の発光デバイスを表す図を示す。本発明の一態様の発光デバイスは、第1の電極101と第2の電極102との間に有機化合物層103を有している。有機化合物層103は、少なくとも発光層113と発光層113に接する、第1の層160を有している。有機化合物層103は、発光層113の他の機能層をさらに備えていてもよい。図2(A)および(B)では、例として正孔注入層111、正孔輸送層112、電子輸送層114および電子注入層115をさらに備えた例を示したが、キャリアブロック層、励起子ブロック層、電荷発生層などを有していてもよい。
【0133】
第1の層160は、発光層113に接する層であり、第1の層を構成する材料は、実施の形態1で説明した周辺材料(第2の物質)に相当する。第1の層160はキャリア輸送層(正孔輸送層112または電子輸送層114)、キャリアブロック層(電子ブロック層、正孔ブロック層)、励起子ブロック層の一部または全部でありうる。すなわち、発光層113に接している層が第1の層160となる。例えば、発光層113に接してキャリア輸送層が設けられ、当該キャリア輸送層が単層構造であった場合は、当該キャリア輸送層が第1の層160となり、発光層に接して設けられたキャリア輸送層が異なる材料よりなる二層構造であった場合、そのうち発光層113により近い方の層が第1の層160となる。発光層113に接してキャリアブロック層が設けられている場合も、キャリアブロック層が単層構造であれば当該キャリアブロック層が第1の層160となる。
【0134】
なお、第1の層160は、第1の電極101側と第2の電極102側のどちらにも存在しうるが、本発明の一態様の発光デバイスでは、発光層113を構成する材料によって、優勢となるキャリアの輸送性があるため、どちらか一方に第1の層160が設けられていればよい。もちろん、第1の層160は、第1の電極101側と第2の電極102側の両方に設けられていてもよい。
【0135】
本実施の形態では、第1の電極101が陽極、第2の電極102が陰極として機能する電極である場合を図示しているが、これは逆でも構わない。
【0136】
陽極である第1の電極101は、仕事関数の大きい(具体的には4.0eV以上)金属、合金、導電性化合物、およびこれらの混合物などを用いて形成することが好ましい。具体的には、例えば、酸化インジウム-酸化スズ(ITO:Indium Tin Oxide)、ケイ素若しくは酸化ケイ素を含有した酸化インジウム-酸化スズ、酸化インジウム-酸化亜鉛、酸化タングステン及び酸化亜鉛を含有した酸化インジウム(IWZO)等が挙げられる。これらの導電性金属酸化物膜は、通常スパッタリング法により成膜されるが、ゾル-ゲル法などを応用して作製しても構わない。作製方法の例としては、酸化インジウム-酸化亜鉛は、酸化インジウムに対し1~20wt%の酸化亜鉛を加えたターゲットを用いてスパッタリング法により形成する方法などがある。また、酸化タングステン及び酸化亜鉛を含有した酸化インジウム(IWZO)は、酸化インジウムに対し酸化タングステンを0.5~5wt%、酸化亜鉛を0.1~1wt%含有したターゲットを用いてスパッタリング法により形成することもできる。この他、金(Au)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、または金属材料の窒化物(例えば、窒化チタン)等が挙げられる。グラフェンも用いることができる。なお、後述する複合材料を陽極と接する層に用いることで、仕事関数に関わらず、電極材料を選択することができるようになる。
【0137】
正孔注入層111は、アクセプタ性を有する物質を含む層である。アクセプタ性を有する物質としては、有機化合物と無機化合物のいずれも用いることが可能である。
【0138】
アクセプタ性を有する物質としては、電子吸引基(ハロゲン基、シアノ基など)を有する化合物を用いることができ、7,7,8,8-テトラシアノ-2,3,5,6-テトラフルオロキノジメタン(略称:F-TCNQ)、クロラニル、2,3,6,7,10,11-ヘキサシアノ-1,4,5,8,9,12-ヘキサアザトリフェニレン(略称:HAT-CN)、1,3,4,5,7,8-ヘキサフルオロテトラシアノ-ナフトキノジメタン(略称:F6-TCNNQ)、2-(7-ジシアノメチレン-1,3,4,5,6,8,9,10-オクタフルオロ-7H-ピレン-2-イリデン)マロノニトリル等を挙げることができる。特に、HAT-CNのように複素原子を複数有する縮合芳香環に電子吸引基が結合している化合物が、熱的に安定であり好ましい。また、電子吸引基(特にフルオロ基のようなハロゲン基、シアノ基など)を有する[3]ラジアレン誘導体は、電子受容性が非常に高いため好ましく、具体的にはα,α’,α’’-1,2,3-シクロプロパントリイリデントリス[4-シアノ-2,3,5,6-テトラフルオロベンゼンアセトニトリル]、α,α’,α’’-1,2,3-シクロプロパントリイリデントリス[2,6-ジクロロ-3,5-ジフルオロ-4-(トリフルオロメチル)ベンゼンアセトニトリル]、α,α’,α’’-1,2,3-シクロプロパントリイリデントリス[2,3,4,5,6-ペンタフルオロベンゼンアセトニトリル]などが挙げられる。アクセプタ性を有する物質としては以上で述べた有機化合物以外にも、モリブデン酸化物、バナジウム酸化物、ルテニウム酸化物、タングステン酸化物、マンガン酸化物等を用いることができる。この他、フタロシアニン(略称:HPc)、銅フタロシアニン(略称:CuPc)等のフタロシアニン系の化合物または錯体化合物、4,4’-ビス[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DPAB)、N,N’-ビス[4-ビス(3-メチルフェニル)アミノフェニル]-N,N’-ジフェニル-4,4’-ジアミノビフェニル(略称:DNTPD)等の芳香族アミン化合物、或いはポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホン酸(略称:PEDOT/PSS)等の高分子等によっても正孔注入層111を形成することができる。アクセプタ性を有する物質は、隣接する正孔輸送層(あるいは正孔輸送材料)から、電界の印加により電子を引き抜くことができる。
【0139】
また、正孔注入層111として、正孔輸送性を有する材料に上記アクセプタ性物質を含有させた複合材料を用いることもできる。なお、正孔輸送性を有する材料にアクセプタ性物質を含有させた複合材料を用いることにより、仕事関数に依らず電極を形成する材料を選ぶことができる。つまり、陽極として仕事関数の大きい材料だけでなく、仕事関数の小さい材料も用いることができるようになる。
【0140】
複合材料に用いる正孔輸送性を有する材料としては、芳香族アミン化合物、カルバゾール誘導体、芳香族炭化水素、高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)など、種々の有機化合物を用いることができる。なお、複合材料に用いる正孔輸送性を有する材料としては、1×10-6cm/Vs以上の正孔移動度を有する物質であることが好ましい。以下では、複合材料における正孔輸送性を有する材料として用いることのできる有機化合物を具体的に列挙する。
【0141】
複合材料に用いることのできる芳香族アミン化合物としては、N,N’-ジ(p-トリル)-N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン(略称:DTDPPA)、4,4’-ビス[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DPAB)、N,N’-ビス[4-ビス(3-メチルフェニル)アミノフェニル]-N,N’-ジフェニル-4,4’-ジアミノビフェニル(略称:DNTPD)、1,3,5-トリス[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]ベンゼン(略称:DPA3B)等を挙げることができる。カルバゾール誘導体としては、具体的には、3-[N-(9-フェニルカルバゾール-3-イル)-N-フェニルアミノ]-9-フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA1)、3,6-ビス[N-(9-フェニルカルバゾール-3-イル)-N-フェニルアミノ]-9-フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA2)、3-[N-(1-ナフチル)-N-(9-フェニルカルバゾール-3-イル)アミノ]-9-フェニルカルバゾール(略称:PCzPCN1)、4,4’-ジ(N-カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)、1,3,5-トリス[4-(N-カルバゾリル)フェニル]ベンゼン(略称:TCPB)、9-[4-(10-フェニル-9-アントラセニル)フェニル]-9H-カルバゾール(略称:CzPA)、1,4-ビス[4-(N-カルバゾリル)フェニル]-2,3,5,6-テトラフェニルベンゼン等を用いることができる。芳香族炭化水素としては、例えば、2-tert-ブチル-9,10-ジ(2-ナフチル)アントラセン(略称:t-BuDNA)、2-tert-ブチル-9,10-ジ(1-ナフチル)アントラセン、9,10-ビス(3,5-ジフェニルフェニル)アントラセン(略称:DPPA)、2-tert-ブチル-9,10-ビス(4-フェニルフェニル)アントラセン(略称:t-BuDBA)、9,10-ジ(2-ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、9,10-ジフェニルアントラセン(略称:DPAnth)、2-tert-ブチルアントラセン(略称:t-BuAnth)、9,10-ビス(4-メチル-1-ナフチル)アントラセン(略称:DMNA)、2-tert-ブチル-9,10-ビス[2-(1-ナフチル)フェニル]アントラセン、9,10-ビス[2-(1-ナフチル)フェニル]アントラセン、2,3,6,7-テトラメチル-9,10-ジ(1-ナフチル)アントラセン、2,3,6,7-テトラメチル-9,10-ジ(2-ナフチル)アントラセン、9,9’-ビアントリル、10,10’-ジフェニル-9,9’-ビアントリル、10,10’-ビス(2-フェニルフェニル)-9,9’-ビアントリル、10,10’-ビス[(2,3,4,5,6-ペンタフェニル)フェニル]-9,9’-ビアントリル、アントラセン、テトラセン、ルブレン、ペリレン、2,5,8,11-テトラ(tert-ブチル)ペリレン等が挙げられる。また、この他、ペンタセン、コロネン等も用いることができる。ビニル骨格を有していてもよい。ビニル基を有している芳香族炭化水素としては、例えば、4,4’-ビス(2,2-ジフェニルビニル)ビフェニル(略称:DPVBi)、9,10-ビス[4-(2,2-ジフェニルビニル)フェニル]アントラセン(略称:DPVPA)等が挙げられる。
【0142】
また、ポリ(N-ビニルカルバゾール)(略称:PVK)、ポリ(4-ビニルトリフェニルアミン)(略称:PVTPA)、ポリ[N-(4-{N’-[4-(4-ジフェニルアミノ)フェニル]フェニル-N’-フェニルアミノ}フェニル)メタクリルアミド](略称:PTPDMA)、ポリ[N,N’-ビス(4-ブチルフェニル)-N,N’-ビス(フェニル)ベンジジン](略称:Poly-TPD)等の高分子化合物を用いることもできる。
【0143】
複合材料に用いられる正孔輸送性を有する材料としては、カルバゾール骨格、ジベンゾフラン骨格、ジベンゾチオフェン骨格およびアントラセン骨格のいずれかを有していることがより好ましい。特に、ジベンゾフラン環またはジベンゾチオフェン環を含む置換基を有する芳香族アミン、ナフタレン環を有する芳香族モノアミン、または9-フルオレニル基がアリーレン基を介してアミンの窒素に結合する芳香族モノアミンであっても良い。なお、これら正孔輸送性を有する材料が、N,N-ビス(4-ビフェニル)アミノ基を有する物質であると、寿命の良好な発光デバイスを作製することができるため好ましい。以上のような正孔輸送性を有する材料としては、具体的には、N-(4-ビフェニル)-6,N-ジフェニルベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン-8-アミン(略称:BnfABP)、N,N-ビス(4-ビフェニル)-6-フェニルベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン-8-アミン(略称:BBABnf)、4,4’-ビス(6-フェニルベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン-8-イル)-4’’-フェニルトリフェニルアミン(略称:BnfBB1BP)、N,N-ビス(4-ビフェニル)ベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン-6-アミン(略称:BBABnf(6))、N,N-ビス(4-ビフェニル)ベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン-8-アミン(略称:BBABnf(8))、N,N-ビス(4-ビフェニル)ベンゾ[b]ナフト[2,3-d]フラン-4-アミン(略称:BBABnf(II)(4))、N,N-ビス[4-(ジベンゾフラン-4-イル)フェニル]-4-アミノ-p-ターフェニル(略称:DBfBB1TP)、N-[4-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]-N-フェニル-4-ビフェニルアミン(略称:ThBA1BP)、4-(2-ナフチル)-4’,4’’-ジフェニルトリフェニルアミン(略称:BBAβNB)、4-[4-(2-ナフチル)フェニル]-4’,4’’-ジフェニルトリフェニルアミン(略称:BBAβNBi)、4,4’-ジフェニル-4’’-(6;1’-ビナフチル-2-イル)トリフェニルアミン(略称:BBAαNβNB)、4,4’-ジフェニル-4’’-(7;1’-ビナフチル-2-イル)トリフェニルアミン(略称:BBAαNβNB-03)、4,4’-ジフェニル-4’’-(7-フェニル)ナフチル-2-イルトリフェニルアミン(略称:BBAPβNB-03)、4,4’-ジフェニル-4’’-(6;2’-ビナフチル-2-イル)トリフェニルアミン(略称:BBA(βN2)B)、4,4’-ジフェニル-4’’-(7;2’-ビナフチル-2-イル)トリフェニルアミン(略称:BBA(βN2)B-03)、4,4’-ジフェニル-4’’-(4;2’-ビナフチル-1-イル)トリフェニルアミン(略称:BBAβNαNB)、4,4’-ジフェニル-4’’-(5;2’-ビナフチル-1-イル)トリフェニルアミン(略称:BBAβNαNB-02)、4-(4-ビフェニリル)-4’-(2-ナフチル)-4’’-フェニルトリフェニルアミン(略称:TPBiAβNB)、4-(3-ビフェニリル)-4’-[4-(2-ナフチル)フェニル]-4’’-フェニルトリフェニルアミン(略称:mTPBiAβNBi)、4-(4-ビフェニリル)-4’-[4-(2-ナフチル)フェニル]-4’’-フェニルトリフェニルアミン(略称:TPBiAβNBi)、4-フェニル-4’-(1-ナフチル)トリフェニルアミン(略称:αNBA1BP)、4,4’-ビス(1-ナフチル)トリフェニルアミン(略称:αNBB1BP)、4,4’-ジフェニル-4’’-[4’-(カルバゾール-9-イル)ビフェニル-4-イル]トリフェニルアミン(略称:YGTBi1BP)、4’-[4-(3-フェニル-9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]トリス(ビフェニル-4-イル)アミン(略称:YGTBi1BP-02)、4-[4’-(カルバゾール-9-イル)ビフェニル-4-イル]-4’-(2-ナフチル)-4’’-フェニルトリフェニルアミン(略称:YGTBiβNB)、N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-N-[4-(1-ナフチル)フェニル]-9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]-2-アミン(略称:PCBNBSF)、N,N-ビス(ビフェニル-4-イル)-9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]-2-アミン(略称:BBASF)、N-(ビフェニル-2-イル)-N-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]-4-アミン(略称:oFBiSF)、N-(ビフェニル-4-イル)-N-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)ジベンゾフラン-4-アミン(略称:FrBiF)、N-[4-(1-ナフチル)フェニル]-N-[3-(6-フェニルジベンゾフラン-4-イル)フェニル]-1-ナフチルアミン(略称:mPDBfBNBN)、4-フェニル-4’-(9-フェニルフルオレン-9-イル)トリフェニルアミン(略称:BPAFLP)、4-フェニル-3’-(9-フェニルフルオレン-9-イル)トリフェニルアミン(略称:mBPAFLP)、4-フェニル-4’-[4-(9-フェニルフルオレン-9-イル)フェニル]トリフェニルアミン(略称:BPAFLBi)、4-フェニル-4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBA1BP)、4,4’-ジフェニル-4’’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBBi1BP)、4-(1-ナフチル)-4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBANB)、4,4’-ジ(1-ナフチル)-4’’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBNBB)、N-フェニル-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]-2-アミン(略称:PCBASF)、N-(ビフェニル-4-イル)-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-アミン(略称:PCBBiF)、N,N-ビス(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-9,9’-スピロビ-9H-フルオレン-4-アミン、N,N-ビス(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-9,9’-スピロビ-9H-フルオレン-3-アミン、N,N-ビス(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-9,9’-スピロビ-9H-フルオレン-2-アミン、N,N-ビス(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-9,9’-スピロビ-9H-フルオレン-1-アミン等を挙げることができる。
【0144】
なお、複合材料に用いられる正孔輸送性を有する材料はそのHOMO準位が-5.7eV以上-5.4eV以下の比較的深いHOMO準位を有する物質であることがさらに好ましい。複合材料に用いられる正孔輸送性を有する材料が比較的深いHOMO準位を有することによって、正孔輸送層112への正孔の注入が容易となり、また、寿命の良好な発光デバイスを得ることが容易となる。
【0145】
なお、上記複合材料にさらにアルカリ金属又はアルカリ土類金属のフッ化物を混合(好ましくは当該層中のフッ素原子の原子比率が20%以上)することによって、当該層の屈折率を低下させることができる。これによっても、有機化合物層103内部に屈折率の低い層を形成することができ、発光デバイスの外部量子効率を向上させることができる。
【0146】
正孔注入層111を形成することによって、正孔の注入性が良好となり、駆動電圧の小さい発光デバイスを得ることができる。また、アクセプタ性を有する有機化合物は蒸着が容易で成膜がしやすいため、用いやすい材料である。
【0147】
正孔輸送層112は、正孔輸送性を有する材料を含んで形成される。正孔輸送性を有する材料としては、1×10-6cm/Vs以上の正孔移動度を有していることが好ましい。
【0148】
正孔輸送層112に用いることができる有機化合物としては、4,4’-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPB)、N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-4,4’-ジアミノビフェニル(略称:TPD)、N,N’-ビス(9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]-2-イル)-N,N’-ジフェニル-4,4’-ジアミノビフェニル(略称:BSPB)、4-フェニル-4’-(9-フェニルフルオレン-9-イル)トリフェニルアミン(略称:BPAFLP)、4-フェニル-3’-(9-フェニルフルオレン-9-イル)トリフェニルアミン(略称:mBPAFLP)、4-フェニル-4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBA1BP)、4,4’-ジフェニル-4’’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBBi1BP)、4-(1-ナフチル)-4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBANB)、4,4’-ジ(1-ナフチル)-4’’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBNBB)、9,9-ジメチル-N-フェニル-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]フルオレン-2-アミン(略称:PCBAF)、N-フェニル-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]-2-アミン(略称:PCBASF)などの芳香族アミン骨格を有する化合物、1,3-ビス(N-カルバゾリル)ベンゼン(略称:mCP)、4,4’-ジ(N-カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)、3,6-ビス(3,5-ジフェニルフェニル)-9-フェニルカルバゾール(略称:CzTP)、9,9’-ジフェニル-9H,9’H-3,3’-ビカルバゾール(略称:PCCP)、9-[3-(トリフェニルシリル)フェニル]-3,9′-ビ-9H-カルバゾール(略称:PSiCzCz)、9’-フェニル-9’H-9,3’:6’,9’’-ターカルバゾール(略称:PhCzGI)、12-[3-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]-5,12-ジヒドロ-5-フェニル-インドロ[3,2-a]カルバゾール(略称:mCzPICz)などのカルバゾール骨格を有する化合物、4,4’,4’’-(ベンゼン-1,3,5-トリイル)トリ(ジベンゾチオフェン)(略称:DBT3P-II)、2,8-ジフェニル-4-[4-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]ジベンゾチオフェン(略称:DBTFLP-III)、4-[4-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]-6-フェニルジベンゾチオフェン(略称:DBTFLP-IV)などのチオフェン骨格を有する化合物、4,4’,4’’-(ベンゼン-1,3,5-トリイル)トリ(ジベンゾフラン)(略称:DBF3P-II)、4-{3-[3-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]フェニル}ジベンゾフラン(略称:mmDBFFLBi-II)などのフラン骨格を有する化合物が挙げられる。上述した中でも、芳香族アミン骨格を有する化合物、カルバゾール骨格を有する化合物は、信頼性が良好であり、また、正孔輸送性が高く、駆動電圧低減にも寄与するため好ましい。なお、正孔注入層111の複合材料に用いることが可能な有機化合物として挙げた物質も正孔輸送層112を構成する材料として好適に用いることができる。
【0149】
なお、正孔輸送層112に用いる有機化合物は、アルキル基を有する芳香族アミンであることが正孔輸送層112の屈折率を低下させることができ、光の取り出し効率を向上させることができるため好ましい。また、当該アルキル基が一分子内に複数ある有機化合物がより好ましい。このような材料としては、例えば、N,N-ビス(4-シクロヘキシルフェニル)-9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-アミン(略称:dchPAF)、N-[(4’-シクロヘキシル)ビフェニル-4-イル]-N-(4-シクロヘキシルフェニル)-9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-アミン(略称:chBichPAF)、N,N-ビス(4-シクロヘキシルフェニル)-N-(スピロ[シクロヘキサン-1,9’-[9H]フルオレン]-2’-イル)アミン(略称:dchPASchF)、N-[(4’-シクロヘキシル)ビフェニル-4-イル]-N-(4-シクロヘキシルフェニル)-N-(スピロ[シクロヘキサン-1,9’-[9H]フルオレン]-2’-イル)アミン(略称:chBichPASchF)、N-(4-シクロヘキシルフェニル)ビス(スピロ[シクロヘキサン-1,9’-[9H]フルオレン]-2’-イル)アミン(略称:SchFB1chP)、N-[(3’,5’-ジターシャリーブチル)ビフェニル-4-イル]-N-(4-シクロヘキシルフェニル)-9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-アミン(略称:mmtBuBichPAF)、N,N-ビス(3’,5’-ジターシャリーブチル-ビフェニル-4-イル)-9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-アミン(略称:dmmtBuBiAF)、N-(3,5-ジターシャリーブチルフェニル)-N-(3’,5’-ジターシャリーブチル-ビフェニル-4-イル)-9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-アミン(略称:mmtBuBimmtBuPAF)、N,N-ビス(4-シクロヘキシルフェニル)-9,9-ジプロピル-9H-フルオレン-2-アミン(略称:dchPAPrF)、N-[(3’,5’-ジシクロヘキシル)ビフェニル-4-イル]-N-(4-シクロヘキシルフェニル)-9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-アミン(略称:mmchBichPAF)、N-(3,3’’,5,5’’-テトラ-t-ブチル-1,1’:3’,1’’-ターフェニル-5’-イル)-N-(4-シクロヘキシルフェニル)-9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-アミン(略称:mmtBumTPchPAF)、N-(4-シクロドデシルフェニル)-N-(4-シクロヘキシルフェニル)-9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-アミン(略称:CdoPchPAF)、N-(3,3’’,5,5’’-テトラ-t-ブチル-1,1’:3’,1’’-ターフェニル-5’-イル)-N-フェニル-9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-アミン(略称:mmtBumTPFA)、N-(ビフェニル-4-イル)-N-(3,3’’,5,5’’-テトラ-t-ブチル-1,1’:3’,1’’-ターフェニル-5’-イル)-9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-アミン(略称:mmtBumTPFBi)、N-(ビフェニル-2-イル)-N-(3,3’’,5,5’’-テトラ-t-ブチル-1,1’:3’,1’’-ターフェニル-5’-イル)-9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-アミン(略称:mmtBumTPoFBi)、N-[(3,3’,5’-トリ-t-ブチル)ビフェニル-5-イル]-N-(4-シクロヘキシルフェニル)-9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-アミン(略称:mmtBumBichPAF)、N-(ビフェニル-2-イル)-N-[(3,3’,5’-トリ-t-ブチル)ビフェニル-5-イル]-9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-アミン(略称:mmtBumBioFBi)、N-(4-tert-ブチルフェニル)-N-(3,3’’,5,5’’-テトラ-t-ブチル-1,1’:3’,1’’-ターフェニル-5’-イル)-9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-アミン(略称:mmtBumTPtBuPAF)、N-(3,3’’,5’,5’’-テトラ-tert-ブチル-1,1’:3’,1’’-ターフェニル-5-イル)-N-フェニル-9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-アミン(略称:mmtBumTPFA-02)、N-(ビフェニル-4-イル)-N-(3,3’’,5’,5’’-テトラ-tert-ブチル-1,1’:3’,1’’-ターフェニル-5-イル)-9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-アミン(略称:mmtBumTPFBi-02)、N-(ビフェニル-2-イル)-N-(3,3’’,5’,5’’-テトラ-tert-ブチル-1,1’:3’,1’’-ターフェニル-5-イル)-9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-アミン(略称:mmtBumTPoFBi-02)、N-(4-シクロヘキシルフェニル)-N-(3,3’’,5’,5’’-テトラ-tert-ブチル-1,1’:3’,1’’-ターフェニル-5-イル)-9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-アミン(略称:mmtBumTPchPAF-02)、N-(ビフェニル-2-イル)-N-(3’’,5’,5’’-トリ-tert-ブチル-1,1’:3’,1’’-ターフェニル-5-イル)-9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-アミン(略称:mmtBumTPoFBi-03)、N-(4-シクロヘキシルフェニル)-N-(3’’,5’,5’’-トリ-tert-ブチル-1,1’:3’,1’’-ターフェニル-5-イル)-9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-アミン(略称:mmtBumTPchPAF-03)、N-(ビフェニル-2-イル)-N-(3’’,5’,5’’-トリ-tert-ブチル-1,1’:3’,1’’-ターフェニル-4-イル)-9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-アミン(略称:mmtBumTPoFBi-04)、N-(4-シクロヘキシルフェニル)-N-(3’’,5’,5’’-トリ-tert-ブチル-1,1’:3’,1’’-ターフェニル-4-イル)-9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-アミン(略称:mmtBumTPchPAF-04)、N-(ビフェニル-2-イル)-N-(3,3’’,5’’-トリ-tert-ブチル-1,1’:4’,1’’-ターフェニル-5-イル)-9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-アミン(略称:mmtBumTPoFBi-05)、N-(4-シクロヘキシルフェニル)-N-(3,3’’,5’’-トリ-tert-ブチル-1,1’:4’,1’’-ターフェニル-5-イル)-9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-アミン(略称:mmtBumTPchPAF-05)、N-(3’,5’-ジターシャリーブチル-ビフェニル-4-イル)-N-(ビフェニル-2-イル)-9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-アミン(略称:mmtBuBioFBi)などが好ましい。
【0150】
また、正孔輸送層112に用いる有機化合物は、フルオレン骨格または、スピロフルオレン骨格を有する有機化合物であることが好ましい。
【0151】
また、正孔輸送層112に用いる有機化合物は、カルバゾール骨格を有する有機化合物であることが好ましい。
【0152】
なお、正孔輸送層を発光層に接して設ける場合、当該正孔輸送層が第1の層160となりうる。第1の層160となる正孔輸送層は、実施の形態1で述べたような第2の物質を含んで形成されることにより、発光効率が高く、信頼性の良好な発光デバイスとすることができる。
【0153】
正孔輸送層を第1の層160とする場合、第2の物質は上に述べた物質または既知の物質の中から、第2の物質としての条件に合致するものを選択して用いればよい。
【0154】
また、正孔輸送層112を構成する有機化合物は、HOMO準位が-5.45eVから-5.20eVの範囲の有機化合物であることが、正孔注入層または陽極からのホール注入性が良好となるため好ましい。これにより当該発光デバイスは低電圧で駆動することが可能である。
【0155】
電子ブロック層を設ける場合は、発光層113に接して設けることが好ましい。電子ブロック層が発光層113に接して設けられている場合は、電子ブロック層が第1の層160となりうる。電子ブロック層は、上述の正孔輸送層112の材料として用いることができる物質として挙げた中から、LUMO準位が、発光層を構成する材料(少なくともホスト材料)のLUMO準位よりも高い材料、好ましくは0.30eV以上高い材料を用いて形成することが好ましい。なお、電子ブロック層は、正孔を輸送することから、正孔輸送層112の一部としてみなすこともできる。
【0156】
発光層113は発光物質である二重項励起状態から発光する物質(代表的にはCe3+の有機錯体)とホスト材料を有している。なお、発光層113は、その他の材料を同時に含んでいても構わない。また、組成の異なる2層の積層であっても良い。
【0157】
発光層のホスト材料としては、正孔輸送性を有する材料または電子輸送性を有する材料を用いることができる。また、バイポーラ性を有する材料を用いることもできる。
【0158】
このうち、ホスト材料として、一重項励起準位が二重項励起状態から発光する物質よりも高く、三重項励起準位が二重項励起状態から発光する物質よりも低い材料(第3の物質)を用いることにより、信頼性の良好な発光デバイスを得ることができる。なお、ホスト材料が複数の物質により構成される場合は、少なくとも一の物質が第3の物質であれば良い。また、ホスト材料が複数の物質により構成される場合、当該ホスト材料を構成する全ての物質の一重項励起準位が二重項励起状態から発光する物質よりも高く、三重項励起準位が二重項励起状態から発光する物質よりも低い材料であることが好ましい。
【0159】
正孔輸送性を有する材料としては、アミン骨格、π電子過剰型複素芳香環骨格を有する有機化合物などが好ましい。π電子過剰型複素芳香環としては、アクリジン骨格、フェノキサジン骨格、フェノチアジン骨格、フラン骨格、チオフェン骨格、及びピロール骨格の少なくともいずれか1を環に含む縮合芳香環が好ましく、具体的にはカルバゾール環、ジベンゾチオフェン環あるいはそれらにさらに芳香環または複素芳香環が縮合した環が好ましい。
【0160】
このような正孔輸送性を有する有機化合物としては、カルバゾール骨格、ジベンゾフラン骨格、ジベンゾチオフェン骨格およびアントラセン骨格のいずれかを有していることがより好ましい。特に、ジベンゾフラン環またはジベンゾチオフェン環を含む置換基を有する芳香族アミン、ナフタレン環を有する芳香族モノアミン、または9-フルオレニル基がアリーレン基を介してアミンの窒素に結合する芳香族モノアミンであっても良い。なお、これら正孔輸送性を有する有機化合物が、N,N-ビス(4-ビフェニル)アミノ基を有する物質であると、寿命の良好な発光デバイスを作製することができるため好ましい。
【0161】
このような有機化合物としては、例えば、4,4’-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPB)、N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-4,4’-ジアミノビフェニル(略称:TPD)、N,N’-ビス(9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]-2-イル)-N,N’-ジフェニル-4,4’-ジアミノビフェニル(略称:BSPB)、4-フェニル-4’-(9-フェニルフルオレン-9-イル)トリフェニルアミン(略称:BPAFLP)、4-フェニル-3’-(9-フェニルフルオレン-9-イル)トリフェニルアミン(略称:mBPAFLP)、4-フェニル-4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBA1BP)、4,4’-ジフェニル-4’’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBBi1BP)、4-(1-ナフチル)-4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBANB)、4,4’-ジ(1-ナフチル)-4’’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBNBB)、9,9-ジメチル-N-フェニル-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]フルオレン-2-アミン(略称:PCBAF)、N-フェニル-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]-2-アミン(略称:PCBASF)などの芳香族アミン骨格を有する化合物、1,3-ビス(N-カルバゾリル)ベンゼン(略称:mCP)、4,4’-ジ(N-カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)、3,6-ビス(3,5-ジフェニルフェニル)-9-フェニルカルバゾール(略称:CzTP)、9,9’-ジフェニル-9H,9’H-3,3’-ビカルバゾール(略称:PCCP)、9-[3-(トリフェニルシリル)フェニル]-3,9′-ビ-9H-カルバゾール(略称:PSiCzCz)、9’-フェニル-9’H-9,3’:6’,9’’-ターカルバゾール(略称:PhCzGI)、12-[3-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]-5,12-ジヒドロ-5-フェニル-インドロ[3,2-a]カルバゾール(略称:mCzPICz)などのカルバゾール骨格を有する化合物、4,4’,4’’-(ベンゼン-1,3,5-トリイル)トリ(ジベンゾチオフェン)(略称:DBT3P-II)、2,8-ジフェニル-4-[4-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]ジベンゾチオフェン(略称:DBTFLP-III)、4-[4-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]-6-フェニルジベンゾチオフェン(略称:DBTFLP-IV)などのチオフェン骨格を有する化合物、4,4’,4’’-(ベンゼン-1,3,5-トリイル)トリ(ジベンゾフラン)(略称:DBF3P-II)、4-{3-[3-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]フェニル}ジベンゾフラン(略称:mmDBFFLBi-II)などのフラン骨格を有する化合物が挙げられる。上述した中でも、芳香族アミン骨格を有する化合物、カルバゾール骨格を有する化合物は、信頼性が良好であり、また、正孔輸送性が高く、駆動電圧低減にも寄与するため好ましい。
【0162】
電子輸送性を有する材料としては、例えば、ビス(10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(II)(略称:BeBq)、ビス(2-メチル-8-キノリノラト)(4-フェニルフェノラト)アルミニウム(III)(略称:BAlq)、ビス(8-キノリノラト)亜鉛(II)(略称:Znq)、ビス[2-(2-ベンゾオキサゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnPBO)、ビス[2-(2-ベンゾチアゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnBTZ)などの金属錯体、π電子不足型複素芳香環骨格を有する有機化合物が好ましい。π電子不足型複素芳香環骨格を有する有機化合物としては、例えばポリアゾール骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物、ピリジン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物、ジアジン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物およびトリアジン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物を挙げることができる。
【0163】
中でも、ジアジン骨格(ピリミジン骨格、ピラジン骨格、ピリダジン骨格)を有する複素芳香環を含む有機化合物またはピリジン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物、トリアジン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物は、信頼性が良好であり好ましい。特に、ジアジン(ピリミジンまたはピラジン)骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物、トリアジン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物は、電子輸送性が高く、駆動電圧低減にも寄与する。また、ベンゾフロピリミジン骨格、ベンゾチエノピリミジン骨格、ベンゾフロピラジン骨格、ベンゾチエノピラジン骨格はアクセプター性が高く、信頼性が良好なため好ましい。
【0164】
π電子不足型複素芳香環骨格を有する有機化合物としては、例えば、2-(4-ビフェニリル)-5-(4-tert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール(略称:PBD)、3-(4-ビフェニリル)-4-フェニル-5-(4-tert-ブチルフェニル)-1,2,4-トリアゾール(略称:TAZ)、1,3-ビス[5-(p-tert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]ベンゼン(略称:OXD-7)、9-[4-(5-フェニル-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル)フェニル]-9H-カルバゾール(略称:CO11)、2,2’,2’’-(1,3,5-ベンゼントリイル)トリス(1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール)(略称:TPBI)、2-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]-1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール(略称:mDBTBIm-II)などのポリアゾール骨格を有する複素環化合物、2-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mDBTPDBq-II)、2-[3’-(ジベンゾチオフェン-4-イル)ビフェニル-3-イル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mDBTBPDBq-II)、2-[3’-(9H-カルバゾール-9-イル)ビフェニル-3-イル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mCzBPDBq)、4,6-ビス[3-(フェナントレン-9-イル)フェニル]ピリミジン(略称:4,6mPnP2Pm)、4,6-ビス[3-(4-ジベンゾチエニル)フェニル]ピリミジン(略称:4,6mDBTP2Pm-II)、9,9’-[ピリミジン-4,6-ジイルビス(ビフェニル-3,3’-ジイル)]ビス(9H-カルバゾール)(略称:4,6mCzBP2Pm)、6-(ビフェニル-3-イル)-4-[3,5-ビス(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]-2-フェニルピリミジン(略称:6mBP-4Cz2PPm)、4-[3,5-ビス(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]-2-フェニル-6-(ビフェニル-4-イル)ピリミジン(略称:6BP-4Cz2PPm)、2-{3-[3-(N-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-9H-カルバゾール-9-イル]フェニル}ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mPCCzPDBq)などのジアジン骨格を有する複素環化合物、2-[3’-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)ビフェニル-3-イル]-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(略称:mFBPTzn)、2-(ビフェニル-4-イル)-4-フェニル-6-(9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]-2-イル)-1,3,5-トリアジン(略称:BP-SFTzn)、2-{3-[3-(ベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン-8-イル)フェニル]フェニル}-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(略称:mBnfBPTzn)、2-{3-[3-(ベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン-6-イル)フェニル]フェニル}-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(略称:mBnfBPTzn-02)、2-(ビフェニル-4-イル)-4-フェニル-6-(9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]-2-イル)-1,3,5-トリアジン(略称:BPSFTzn)、3-[9-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-2-ジベンゾフラニル]-9-フェニル-9H-カルバゾール(略称:PCDBfTzn)、2-(ビフェニル-3-イル)-4-フェニル-6-{8-[(1,1’:4’,1’’-ターフェニル)-4-イル]-1-ジベンゾフラニル}-1,3,5-トリアジン(略称:mBP-TPDBfTzn)、2-{3-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]フェニル}-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(略称:mDBtBPTzn)、9,9’-{6-[3-(トリフェニルシリル)フェニル]-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル}ビス(9H-カルバゾール)(略称:SiTrzCz2)、2,4,6-トリス(9H-カルバゾール-9-イル)-1,3,5-トリアジン(略称:CzT)、9-{3-[3-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)フェニル]フェニル}-9H-カルバゾール(略称:mCzBPTzn)、9’-[4-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)フェニル]-9,3’:6’,9’’-トリ-9H-カルバゾール(略称:BCC-TPTA)、9,9’-[5-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-1,3-フェニレン]ビス(9H-カルバゾール)(略称:DCzTrz)、3,6-ビス(ジフェニルアミノ)-9-[4-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)フェニル]-9H-カルバゾール(略称:DACT-II)、9-[5’-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)(1,1’:3’,1’’-ターフェニル)-2’-イル]-3,6-ジフェニル-9H-カルバゾール(略称:DPhCzmTPTzn)、2-[4-(2-ナフタレニル)フェニル]-4-フェニル-6-スピロ[9H-フルオレン-9,9’-[9H]キサンテン]-4-イル-1,3,5-トリアジン(略称:βNP-SFx(4)Tzn)、2-フェニル-4,6-ビス[3-(トリフェニルシリル)フェニル]-1,3,5-トリアジン(略称:mSiTrz)などのトリアジン骨格を有する複素環化合物、3,5-ビス[3-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]ピリジン(略称:35DCzPPy)、1,3,5-トリ[(3-ピリジル)-フェニル-3-イル]ベンゼン(略称:TmPyPB)などのピリジン骨格を有する複素環化合物が挙げられる。上述した中でも、ジアジン骨格を有する複素環化合物、トリアジン骨格を有する複素環化合物、ピリジン骨格を有する複素環化合物は、信頼性が良好であり好ましい。特に、ジアジン(ピリミジン、ピラジンなど)骨格を有する複素環化合物は、電子輸送性が高く、駆動電圧低減にも寄与する。
【0165】
また、TADF材料もホスト材料として用いることができる。ホスト材料として用いることが可能なTADF材料としては、例えばフラーレン及びその誘導体、アクリジン及びその誘導体、エオシン誘導体等を用いることができる。またマグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)、スズ(Sn)、白金(Pt)、インジウム(In)、もしくはパラジウム(Pd)等を含む金属含有ポルフィリンが挙げられる。該金属含有ポルフィリンとしては、例えば、以下の構造式に示されるプロトポルフィリン-フッ化スズ錯体(SnF(Proto IX))、メソポルフィリン-フッ化スズ錯体(SnF(Meso IX))、ヘマトポルフィリン-フッ化スズ錯体(SnF(Hemato IX))、コプロポルフィリンテトラメチルエステル-フッ化スズ錯体(SnF(Copro III-4Me))、オクタエチルポルフィリン-フッ化スズ錯体(SnF(OEP))、エチオポルフィリン-フッ化スズ錯体(SnF(Etio I))、オクタエチルポルフィリン-塩化白金錯体(PtClOEP)等も挙げられる。
【0166】
【化7】
【0167】
また、以下の構造式に示される2-(ビフェニル-4-イル)-4,6-ビス(12-フェニルインドロ[2,3-a]カルバゾール-11-イル)-1,3,5-トリアジン(略称:PIC-TRZ)、9-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-9’-フェニル-9H,9’H-3,3’-ビカルバゾール(略称:PCCzTzn)、9-[4-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)フェニル]-9’-フェニル-9H,9’H-3,3’-ビカルバゾール(略称:PCCzPTzn)、2-[4-(10H-フェノキサジン-10-イル)フェニル]-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(略称:PXZ-TRZ)、3-[4-(5-フェニル-5,10-ジヒドロフェナジン-10-イル)フェニル]-4,5-ジフェニル-1,2,4-トリアゾール(略称:PPZ-3TPT)、3-(9,9-ジメチル-9H-アクリジン-10-イル)-9H-キサンテン-9-オン(略称:ACRXTN)、ビス[4-(9,9-ジメチル-9,10-ジヒドロアクリジン)フェニル]スルホン(略称:DMAC-DPS)、10-フェニル-10H,10’H-スピロ[アクリジン-9,9’-アントラセン]-10’-オン(略称:ACRSA)、等のπ電子過剰型複素芳香環とπ電子不足型複素芳香環の一方または両方を有する複素環化合物も用いることができる。該複素環化合物は、π電子過剰型複素芳香環及びπ電子不足型複素芳香環を有するため、電子輸送性及び正孔輸送性が共に高く、好ましい。中でも、π電子不足型複素芳香環を有する骨格のうち、ピリジン骨格、ジアジン骨格(ピリミジン骨格、ピラジン骨格、ピリダジン骨格)、およびトリアジン骨格は、安定で信頼性が良好なため好ましい。特に、ベンゾフロピリミジン骨格、ベンゾチエノピリミジン骨格、ベンゾフロピラジン骨格、ベンゾチエノピラジン骨格はアクセプター性が高く、信頼性が良好なため好ましい。また、π電子過剰型複素芳香環を有する骨格の中でも、アクリジン骨格、フェノキサジン骨格、フェノチアジン骨格、フラン骨格、チオフェン骨格、及びピロール骨格は、安定で信頼性が良好なため、当該骨格の少なくとも一を有することが好ましい。なお、フラン骨格としてはジベンゾフラン骨格が、チオフェン骨格としてはジベンゾチオフェン骨格が、それぞれ好ましい。また、ピロール骨格としては、インドール骨格、カルバゾール骨格、インドロカルバゾール骨格、ビカルバゾール骨格、3-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-9H-カルバゾール骨格が特に好ましい。なお、π電子過剰型複素芳香環とπ電子不足型複素芳香環とが直接結合した物質は、π電子過剰型複素芳香環の電子供与性とπ電子不足型複素芳香環の電子受容性が共に強くなり、S準位とT準位のエネルギー差が小さくなるため、熱活性化遅延蛍光を効率よく得られることから特に好ましい。なお、π電子不足型複素芳香環の代わりに、シアノ基のような電子吸引基が結合した芳香環を用いても良い。また、π電子過剰型骨格として、芳香族アミン骨格、フェナジン骨格等を用いることができる。また、π電子不足型骨格として、キサンテン骨格、チオキサンテンジオキサイド骨格、オキサジアゾール骨格、トリアゾール骨格、イミダゾール骨格、アントラキノン骨格、フェニルボラン、ボラントレン等の含ホウ素骨格、ベンゾニトリルまたはシアノベンゼン等のニトリル基またはシアノ基を有する芳香環、複素芳香環、ベンゾフェノン等のカルボニル骨格、ホスフィンオキシド骨格、スルホン骨格等を用いることができる。このように、π電子不足型複素芳香環およびπ電子過剰型複素芳香環の少なくとも一方の代わりにπ電子不足型骨格およびπ電子過剰型骨格を用いることができる。
【0168】
【化8】
【0169】
なお、TADF材料とは、S準位とT準位との差が小さく、逆項間交差によって三重項励起エネルギーから一重項励起エネルギーへエネルギーを変換することができる機能を有する材料である。そのため、三重項励起エネルギーをわずかな熱エネルギーによって一重項励起エネルギーにアップコンバート(逆項間交差)が可能で、一重項励起状態を効率よく生成することができる。また、三重項励起エネルギーを発光に変換することができる。
【0170】
なお、T準位の指標としては、低温(例えば4Kから77Kまでの範囲のいずれかの温度)で観測される燐光スペクトルを用いればよい。TADF材料としては、その蛍光スペクトルの短波長側の裾において接線を引き、その外挿線の波長のエネルギーをS準位とし、燐光スペクトルの短波長側の裾において接線を引き、その外挿線の波長のエネルギーをT1準位とした際に、そのSとTの差が0.3eV以下であることが好ましく、0.2eV以下であることがさらに好ましい。
【0171】
また、ホスト材料は単独の材料から構成される場合と、複数の材料から構成される場合がある。ホスト材料を複数の材料で構成する場合、輸送性の異なる材料を組み合わせることで、発光層113のキャリアバランスを調整することが可能となり、再結合領域の制御も簡便に行うことができる。正孔輸送性を有する材料と電子輸送性を有する材料の含有量の重量比は、正孔輸送性を有する材料:電子輸送性を有する材料=1:19~19:1とすればよい。
【0172】
また、ホスト材料を構成する複数の材料が励起錯体を形成しても良い。当該励起錯体は発光物質の最も低エネルギー側の吸収帯の波長と重なるような発光を呈する励起錯体を形成するような組み合わせを選択することで、エネルギー移動がスムーズとなり、効率よく発光が得られるため好ましい。また、当該構成を用いることで駆動電圧も低下するため好ましい。
【0173】
また、励起錯体は、S準位とT準位との差が極めて小さく、三重項励起エネルギーを一重項励起エネルギーに変換することが可能なTADF材料としての機能も有する。
【0174】
効率よく励起錯体を形成する材料の組み合わせとしては、正孔輸送性を有する材料のHOMO準位が電子輸送性を有する材料のHOMO準位以上であると好ましい。また、正孔輸送性を有する材料のLUMO準位が電子輸送性を有する材料のLUMO準位以上であると好ましい。なお、材料のLUMO準位およびHOMO準位は、サイクリックボルタンメトリ(CV)測定によって測定される材料の電気化学特性(還元電位および酸化電位)から導出することができる。
【0175】
なお、励起錯体の形成は、例えば正孔輸送性を有する材料の発光スペクトル、電子輸送性を有する材料の発光スペクトル、およびこれら材料を混合した混合膜の発光スペクトルを比較し、混合膜の発光スペクトルが、各材料の発光スペクトルよりも長波長シフトする(あるいは長波長側に新たなピークを持つ)現象を観測することにより確認することができる。あるいは、正孔輸送性を有する材料の過渡フォトルミネッセンス(PL)、電子輸送性を有する材料の過渡PL、及びこれら材料を混合した混合膜の過渡PLを比較し、混合膜の過渡PL寿命が、各材料の過渡PL寿命よりも長寿命成分を有する、あるいは遅延成分の割合が大きくなるなどの過渡応答の違いを観測することにより、確認することができる。また、上述の過渡PLは過渡エレクトロルミネッセンス(EL)と読み替えても構わない。すなわち、正孔輸送性を有する材料の過渡EL、電子輸送性を有する材料の過渡EL及びこれらの混合膜の過渡ELを比較し、過渡応答の違いを観測することによっても、励起錯体の形成を確認することができる。
【0176】
なお、発光層113はさらに一重項励起状態から発光を呈する蛍光材料を有し、二重項励起状態から発光する物質(代表的にはCe3+の有機錯体)をエネルギードナーとし、当該蛍光材料から発光を得る構成であってもよい。なお、この際、当該蛍光材料の一重項励起準位は、エネルギードナーであるCe3+の有機錯体の二重項励起準位よりも低いことが好ましい。発光層113において、このように用いることが可能な材料としては、例えば以下のような蛍光材料が挙げられる。また、これ以外の蛍光材料も用いることができる。
【0177】
5,6-ビス[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-2,2’-ビピリジン(略称:PAP2BPy)、5,6-ビス[4’-(10-フェニル-9-アントリル)ビフェニル-4-イル]-2,2’-ビピリジン(略称:PAPP2BPy)、N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス[4-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]ピレン-1,6-ジアミン(略称:1,6FLPAPrn)、N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-N,N’-ビス[3-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]ピレン-1,6-ジアミン(略称:1,6mMemFLPAPrn)、N,N’-ビス[4-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]-N,N’-ジフェニルスチルベン-4,4’-ジアミン(略称:YGA2S)、4-(9H-カルバゾール-9-イル)-4’-(10-フェニル-9-アントリル)トリフェニルアミン(略称:YGAPA)、4-(9H-カルバゾール-9-イル)-4’-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)トリフェニルアミン(略称:2YGAPPA)、N,9-ジフェニル-N-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:PCAPA)、ペリレン、2,5,8,11-テトラ-tert-ブチルペリレン(略称:TBP)、4-(10-フェニル-9-アントリル)-4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBAPA)、N,N’’-(2-tert-ブチルアントラセン-9,10-ジイルジ-4,1-フェニレン)ビス(N,N’,N’-トリフェニル-1,4-フェニレンジアミン)(略称:DPABPA)、N,9-ジフェニル-N-[4-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:2PCAPPA)、N-[4-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)フェニル]-N,N’,N’-トリフェニル-1,4-フェニレンジアミン(略称:2DPAPPA)、N,N,N’,N’,N’’,N’’,N’’’,N’’’-オクタフェニルジベンゾ[g,p]クリセン-2,7,10,15-テトラアミン(略称:DBC1)、クマリン30、N-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)-N,9-ジフェニル-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:2PCAPA)、N-[9,10-ビス(ビフェニル-2-イル)-2-アントリル]-N,9-ジフェニル-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:2PCABPhA)、N-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)-N,N’,N’-トリフェニル-1,4-フェニレンジアミン(略称:2DPAPA)、N-[9,10-ビス(ビフェニル-2-イル)-2-アントリル]-N,N’,N’-トリフェニル-1,4-フェニレンジアミン(略称:2DPABPhA)、9,10-ビス(ビフェニル-2-イル)-N-[4-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]-N-フェニルアントラセン-2-アミン(略称:2YGABPhA)、N,N,9-トリフェニルアントラセン-9-アミン(略称:DPhAPhA)、クマリン545T、N,N’-ジフェニルキナクリドン(略称:DPQd)、ルブレン、5,12-ビス(ビフェニル-4-イル)-6,11-ジフェニルテトラセン(略称:BPT)、2-(2-{2-[4-(ジメチルアミノ)フェニル]エテニル}-6-メチル-4H-ピラン-4-イリデン)プロパンジニトリル(略称:DCM1)、2-{2-メチル-6-[2-(2,3,6,7-テトラヒドロ-1H,5H-ベンゾ[ij]キノリジン-9-イル)エテニル]-4H-ピラン-4-イリデン}プロパンジニトリル(略称:DCM2)、N,N,N’,N’-テトラキス(4-メチルフェニル)テトラセン-5,11-ジアミン(略称:p-mPhTD)、7,14-ジフェニル-N,N,N’,N’-テトラキス(4-メチルフェニル)アセナフト[1,2-a]フルオランテン-3,10-ジアミン(略称:p-mPhAFD)、2-{2-イソプロピル-6-[2-(1,1,7,7-テトラメチル-2,3,6,7-テトラヒドロ-1H,5H-ベンゾ[ij]キノリジン-9-イル)エテニル]-4H-ピラン-4-イリデン}プロパンジニトリル(略称:DCJTI)、2-{2-tert-ブチル-6-[2-(1,1,7,7-テトラメチル-2,3,6,7-テトラヒドロ-1H,5H-ベンゾ[ij]キノリジン-9-イル)エテニル]-4H-ピラン-4-イリデン}プロパンジニトリル(略称:DCJTB)、2-(2,6-ビス{2-[4-(ジメチルアミノ)フェニル]エテニル}-4H-ピラン-4-イリデン)プロパンジニトリル(略称:BisDCM)、2-{2,6-ビス[2-(8-メトキシ-1,1,7,7-テトラメチル-2,3,6,7-テトラヒドロ-1H,5H-ベンゾ[ij]キノリジン-9-イル)エテニル]-4H-ピラン-4-イリデン}プロパンジニトリル(略称:BisDCJTM)、N,N’-ジフェニル-N,N’-(1,6-ピレン-ジイル)ビス[(6-フェニルベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン)-8-アミン](略称:1,6BnfAPrn-03)、3,10-ビス[N-(9-フェニル-9H-カルバゾール-2-イル)-N-フェニルアミノ]ナフト[2,3-b;6,7-b’]ビスベンゾフラン(略称:3,10PCA2Nbf(IV)-02)、3,10-ビス[N-(ジベンゾフラン-3-イル)-N-フェニルアミノ]ナフト[2,3-b;6,7-b’]ビスベンゾフラン(略称:3,10FrA2Nbf(IV)-02)などが挙げられる。特に、1,6FLPAPrn、1,6mMemFLPAPrn、1,6BnfAPrn-03のようなピレンジアミン化合物に代表される縮合芳香族ジアミン化合物は、ホールトラップ性が高く、発光効率、信頼性に優れているため好ましい。
【0178】
また、5,9-ジフェニル-5,9-ジアザ-13b-ボラナフト[3,2,1-de]アントラセン(略称:DABNA1)、9-(ビフェニル-3-イル)-N,N,5,11-テトラフェニル-5H,9H-[1,4]ベンズアザボリノ[2,3,4-kl]フェナザボリン-3-アミン(略称:DABNA2)、2,12-ジ(tert-ブチル)-5,9-ジ(4-tert-ブチルフェニル)-N,N-ジフェニル-5H,9H-[1,4]ベンズアザボリノ[2,3,4-kl]フェナザボリン-7-アミン(略称:DPhA-tBu4DABNA)、2,12-ジ(tert-ブチル)-N,N,5,9-テトラ(4-tert-ブチルフェニル)-5H,9H-[1,4]ベンズアザボリノ[2,3,4-kl]フェナザボリン-7-アミン(略称:tBuDPhA-tBu4DABNA)、2,12-ジ(tert-ブチル)-5,9-ジ(4-tert-ブチルフェニル)-7-メチル-5H,9H-[1,4]ベンズアザボリノ[2,3,4-kl]フェナザボリン(略称:Me-tBu4DABNA)、N,N,N13,N13,5,9,11,15-オクタフェニル-5H,9H,11H,15H-[1,4]ベンズアザボリノ[2,3,4-kl][1,4]ベンズアザボリノ[4’,3’,2’:4,5][1,4]ベンズアザボリノ[3,2-b]フェナザボリン-7,13-ジアミン(略称:ν-DABNA)、2-(4-tert-ブチルフェニル)ベンズ[5,6]インドロ[3,2,1-jk]ベンゾ[b]カルバゾール(略称:tBuPBibc)などの窒素とホウ素を含む縮合複素芳香族化合物、特にジアザ-ボラナフト-アントラセン骨格有する化合物が発光スペクトルの幅が狭く、色純度の良好な青色発光を得られるため好適に用いることができる。
【0179】
また、これらの他、9,10,11-トリス[3,6-ビス(1,1-ジメチルエチル)-9H-カルバゾール-9-イル]-2,5,15,18-テトラキス(1,1-ジメチルエチル)インドロ[3,2,1-de]インドロ[3’,2’,1’:8,1][1,4]ベンズアザボリノ[2,3,4-kl]フェナザボリン(略称:BBCz-G)、9,11-ビス[3,6-ビス(1,1-ジメチルエチル)-9H-カルバゾール-9-イル]-2,5,15,18-テトラキス(1,1-ジメチルエチル)インドロ[3,2,1-de]インドロ[3’,2’,1’:8,1][1,4]ベンズアザボリノ[2,3,4-kl]フェナザボリン(略称:BBCz-Y)などを好適に用いる事ができる。
【0180】
二重項励起状態のエネルギードナーから蛍光材料の一重項励起状態へのエネルギー移動は、非常に効率的に起こる。その上、蛍光材料の励起子寿命も短い。以上より、本構成を有する発光デバイスは、信頼性が良好であり、且つ高効率で発光する発光デバイスとすることができる。また、それに加えて、蛍光材料から発光を得るため色度および色純度の良好な発光デバイスを得ることができる。
【0181】
電子輸送層114は、電子輸送性を有する物質を含む層である。電子輸送性を有する物質としては、上記ホスト材料に用いることが可能な電子輸送性を有する物質として挙げたものを用いることができる。
【0182】
なお、電子輸送層114は電界強度[V/cm]の平方根が600における電子移動度が1×10-7cm/Vs以上5×10-5cm/Vs以下であることが好ましい。電子輸送層114における電子の輸送性を落とすことにより発光層への電子の注入量を制御することができ、発光層が電子過多の状態になることを防ぐことができる。この構成は、特に正孔注入層を複合材料として形成し、当該複合材料における正孔輸送性を有する材料のHOMO準位が-5.7eV以上-5.4eV以下の比較的深いHOMO準位を有する物質である場合に、寿命が良好となるため特に好ましい。なお、この際、電子輸送性を有する材料は、そのHOMO準位が-6.0eV以上であることが好ましい。また、当該電子輸送性を有する材料はアントラセン骨格を有する有機化合物であることが好ましく、アントラセン骨格と複素環骨格の両方を含む有機化合物であることがより好ましい。当該複素環骨格としては、含窒素5員環骨格または含窒素6員環骨格が好ましく、これら複素環骨格としては、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環などのように2つの複素原子を環に含む含窒素5員環骨格または含窒素6員環骨格を有することが特に好ましい。
【0183】
電子輸送層は電子輸送性を有する材料と、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の単体、化合物もしくは錯体を含んでいてもよい。アルカリ金属またはアルカリ土類金属の単体、化合物もしくは錯体としては、8-ヒドロキシキノリナト構造を含むことが好ましい。具体的には、例えば8-ヒドロキシキノリナト-リチウム(略称:Liq)、8-ヒドロキシキノリナト-ナトリウム(略称:Naq)などを挙げることができる。特に、一価の金属イオンの錯体、中でもリチウムの錯体が好ましく、Liqがより好ましい。なお、8-ヒドロキシキノリナト構造を含む場合、そのメチル置換体(例えば2-メチル置換体または5-メチル置換体)などを用いることもできる。また、電子輸送層中においてアルカリ金属またはアルカリ土類金属の単体、化合物もしくは錯体は、その厚さ方向において濃度差(0である場合も含む)が存在することが好ましい。
【0184】
なお、電子輸送層を発光層に接して設ける場合、当該電子輸送層が第1の層160となりうる。第1の層160となる電子輸送層は、実施の形態1で述べたような第2の物質を含んで形成されることにより、発光効率が高く、信頼性の良好な発光デバイスとすることができる。
【0185】
電子輸送層を第1の層160とする場合、第2の物質は上に述べた物質または既知の物質の中から、第2の物質としての条件に合致するものを選択して用いればよい。
【0186】
正孔ブロック層を設ける場合は、発光層113と第2の電極102との間に設けられ、発光層113に接して設けることが好ましい。正孔ブロック層が発光層113に接して設けられている場合は、正孔ブロック層が第1の層160となりうる。正孔ブロック層は、上述の電子輸送層114の材料として用いることができる物質として挙げた中から、HOMO準位が、発光層を構成する材料(少なくともホスト材料)のHOMO準位よりも低い材料、好ましくは0.30eV以上低い材料を用いて形成することが好ましい。なお、正孔ブロック層は、電子を輸送することから、電子輸送層114の一部としてみなすこともできる。
【0187】
電子輸送層114と陰極との間に、電子注入層115として、フッ化リチウム(LiF)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化カルシウム(CaF)、8-ヒドロキシキノリナト-リチウム(略称:Liq)等のようなアルカリ金属又はアルカリ土類金属又はそれらの化合物を含む層を設けても良い。電子注入層115は、電子輸送性を有する物質からなる層中にアルカリ金属又はアルカリ土類金属又はそれらの化合物を含有させたものまたは、エレクトライドを用いてもよい。エレクトライドとしては、例えば、カルシウムとアルミニウムの混合酸化物に電子を高濃度添加した物質等が挙げられる。
【0188】
なお、電子注入層115として、電子輸送性を有する物質(好ましくはビピリジン骨格を有する有機化合物)に上記アルカリ金属又はアルカリ土類金属のフッ化物を微結晶状態となる濃度以上(50wt%以上)含ませた層を用いることも可能である。当該層は、屈折率の低い層であることから、より外部量子効率の良好な発光デバイスを提供することが可能となる。
【0189】
また、電子注入層115の代わりに電荷発生層116を設けても良い(図2(B))。電荷発生層116は、電位をかけることによって当該層の陰極側に接する層に正孔を、陽極側に接する層に電子を注入することができる層のことである。電荷発生層116には、少なくともP型層117が含まれる。P型層117は、上述の正孔注入層111を構成することができる材料として挙げた複合材料を用いて形成することが好ましい。またP型層117は、複合材料を構成する材料として上述したアクセプタ材料を含む膜と正孔輸送材料を含む膜とを積層して構成しても良い。P型層117に電位をかけることによって、電子輸送層114に電子が、陰極に正孔が注入され、発光デバイスが動作する。
【0190】
なお、電荷発生層116はP型層117の他に電子リレー層118及び電子注入バッファ層119のいずれか一又は両方がもうけられていることが好ましい。
【0191】
電子リレー層118は少なくとも電子輸送性を有する物質を含み、電子注入バッファ層119とP型層117との相互作用を防いで電子をスムーズに受け渡す機能を有する。電子リレー層118に含まれる電子輸送性を有する物質のLUMO準位は、P型層117におけるアクセプタ性物質のLUMO準位と、電子輸送層114における電荷発生層116に接する層に含まれる物質のLUMO準位との間であることが好ましい。電子リレー層118に用いられる電子輸送性を有する物質におけるLUMO準位の具体的なエネルギー準位は-5.0eV以上、好ましくは-5.0eV以上-3.0eV以下とするとよい。なお、電子リレー層118は、フタロシアニン化合物を含むことが好ましい。フタロシアニン化合物としては、フタロシアニン並びに金属フタロシアニンおよびそれらの誘導体を挙げることができる。金属フタロシアニンが有する金属としては、亜鉛、コバルト、鉄、クロム、ニッケル、バナジウム、チタン、錫等が好ましい。フタロシアニン化合物としては、具体的には、フタロシアニン(略称:H2Pc)、銅フタロシアニン(略称:CuPc)、亜鉛フタロシアニン(略称:ZnPc)、コバルトフタロシアニン(略称:CoPc)、鉄フタロシアニン(略称:FePc)、錫フタロシアニン(略称:SnPc)、酸化錫フタロシアニン(略称:SnOPc)、酸化チタンフタロシアニン(略称:TiOPc)、酸化バナジウムフタロシアニン(略称:VOPc)等を例示することができる。
【0192】
電子注入バッファ層119には、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、およびこれらの化合物(アルカリ金属化合物(酸化リチウム等の酸化物、ハロゲン化物、炭酸リチウム、炭酸セシウム等の炭酸塩を含む)、アルカリ土類金属化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む)、または希土類金属の化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む))等の電子注入性の高い物質を用いることが可能である。
【0193】
また、電子注入バッファ層119が、電子輸送性を有する物質とドナー性物質を含んで形成される場合には、ドナー性物質として、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、およびこれらの化合物(アルカリ金属化合物(酸化リチウム等の酸化物、ハロゲン化物、炭酸リチウム、炭酸セシウム等の炭酸塩を含む)、アルカリ土類金属化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む)、または希土類金属の化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む))の他、テトラチアナフタセン(略称:TTN)、ニッケロセン、デカメチルニッケロセン等の有機化合物を用いることもできる。なお、電子輸送性を有する物質としては、先に説明した電子輸送層114を構成する材料と同様の材料を用いて形成することができる。
【0194】
陰極を形成する物質としては、仕事関数の小さい(具体的には3.8eV以下)金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物などを用いることができる。このような陰極材料の具体例としては、リチウム(Li)、セシウム(Cs)等のアルカリ金属、およびマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)等の元素周期表の第1族または第2族に属する元素、およびこれらを含む合金(MgAg、AlLi)、ユウロピウム(Eu)、イッテルビウム(Yb)等の希土類金属およびこれらを含む合金等が挙げられる。しかしながら、陰極と電子輸送層との間に、電子注入層を設けることにより、仕事関数の大小に関わらず、Al、Ag、ITO、ケイ素若しくは酸化ケイ素を含有した酸化インジウム-酸化スズ等様々な導電性材料を陰極として用いることができる。これら導電性材料は、真空蒸着法、スパッタリング法などの乾式法、インクジェット法、スピンコート法等を用いて成膜することが可能である。また、ゾル-ゲル法を用いて湿式法で形成しても良いし、金属材料のペーストを用いて湿式法で形成してもよい。
【0195】
また、有機化合物層103の形成方法としては、乾式法、湿式法を問わず、種々の方法を用いることができる。例えば、真空蒸着法、グラビア印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法、インクジェット法またはスピンコート法など用いても構わない。
【0196】
また上述した各電極または各層を異なる成膜方法を用いて形成しても構わない。
【0197】
なお、第1の電極101と第2の電極102との間に設けられる層の構成は、上記のものには限定されない。しかし、発光領域と電極またはキャリア注入層に用いられる金属とが近接することによって生じる消光が抑制されるように、第1の電極101および第2の電極102から離れた部位に正孔と電子とが再結合する発光領域を設けた構成が好ましい。
【0198】
続いて、複数の発光ユニットを積層した構成の発光デバイス(積層型素子、タンデム型素子ともいう)の態様について、図2(C)を参照して説明する。この発光デバイスは、陽極と陰極との間に、複数の発光ユニットを有する発光デバイスである。一つの発光ユニットは、図2(A)で示した有機化合物層103とほぼ同様な構成を有する。つまり、図2(C)で示す発光デバイスは複数の発光ユニットを有する発光デバイスであり、図2(A)又は図2(B)で示した発光デバイスは、1つの発光ユニットを有する発光デバイスであるということができる。
【0199】
図2(C)において、第1の電極501と第2の電極502との間には、第1の発光ユニット511と第2の発光ユニット512が積層されており、第1の発光ユニット511と第2の発光ユニット512との間には電荷発生層513が設けられている。第1の電極501と第2の電極502はそれぞれ図2(A)における第1の電極101と第2の電極102に相当し、図2(A)の説明で述べたものと同じものを適用することができる。また、第1の発光ユニット511と第2の発光ユニット512は同じ構成であっても異なる構成であってもよい。
【0200】
電荷発生層513は、第1の電極501と第2の電極502に電圧を印加したときに、一方の発光ユニットに電子を注入し、他方の発光ユニットに正孔を注入する機能を有する。すなわち、図2(C)において、陽極の電位の方が陰極の電位よりも高くなるように電圧を印加した場合、電荷発生層513は、第1の発光ユニット511に電子を注入し、第2の発光ユニット512に正孔を注入するものであればよい。
【0201】
電荷発生層513は、図2(B)にて説明した電荷発生層116と同様の構成で形成することが好ましい。有機化合物と金属酸化物の複合材料は、キャリア注入性、キャリア輸送性に優れているため、低電圧駆動、低電流駆動を実現することができる。なお、発光ユニットの陽極側の面が電荷発生層513に接している場合は、電荷発生層513が発光ユニットの正孔注入層の役割も担うことができるため、発光ユニットは正孔注入層を設けなくとも良い。
【0202】
また、電荷発生層513に電子注入バッファ層119を設ける場合、当該電子注入バッファ層119が陽極側の発光ユニットにおける電子注入層の役割を担うため、陽極側の発光ユニットには必ずしも電子注入層を形成する必要はない。
【0203】
図2(C)では、2つの発光ユニットを有する発光デバイスについて説明したが、3つ以上の発光ユニットを積層した発光デバイスについても、同様に適用することが可能である。本実施の形態に係る発光デバイスのように、一対の電極間に複数の発光ユニットを電荷発生層513で仕切って配置することで、電流密度を低く保ったまま、高輝度発光を可能とし、さらに長寿命な素子を実現できる。
【0204】
また、それぞれの発光ユニットの発光色を異なるものにすることで、発光デバイス全体として、所望の色の発光を得ることができる。例えば、2つの発光ユニットを有する発光デバイスにおいて、第1の発光ユニットで赤と緑の発光色、第2の発光ユニットで青の発光色を得ることで、発光デバイス全体として白色発光する発光デバイスを得ることも可能である。
【0205】
また、上述の有機化合物層103、第1の発光ユニット511、第2の発光ユニット512及び電荷発生層などの各層および電極は、例えば、蒸着法(真空蒸着法を含む)、液滴吐出法(インクジェット法ともいう)、塗布法、グラビア印刷法等の方法を用いて形成することができる。また、それらは低分子材料、中分子材料(オリゴマー、デンドリマーを含む)、または高分子材料を含んでも良い。
【0206】
(実施の形態3)
本実施の形態では、実施の形態1および実施の形態2に記載の発光デバイスを用いた表示装置について説明する。
【0207】
本実施の形態では、実施の形態1および実施の形態2に記載の発光デバイスを用いて作製された表示装置について図3を用いて説明する。なお、図3(A)は、表示装置を示す上面図、図3(B)は図3(A)をA-BおよびC-Dで切断した断面図である。この表示装置は、発光デバイスの発光を制御するものとして、点線で示された駆動回路部(ソース線駆動回路)601、画素部602、駆動回路部(ゲート線駆動回路)603を含んでいる。また、604は封止基板、605はシール材であり、シール材605で囲まれた内側は、空間607になっている。
【0208】
なお、引き回し配線608はソース線駆動回路601及びゲート線駆動回路603に入力される信号を伝送するための配線であり、外部入力端子となるFPC(フレキシブルプリントサーキット)609からビデオ信号、クロック信号、スタート信号、リセット信号等を受け取る。なお、ここではFPCしか図示されていないが、このFPCにはプリント配線基板(PWB)が取り付けられていても良い。本明細書における表示装置には、表示装置本体だけでなく、それにFPCもしくはPWBが取り付けられた状態をも含むものとする。
【0209】
次に、断面構造について図3(B)を用いて説明する。素子基板610上には駆動回路部及び画素部が形成されているが、ここでは、駆動回路部であるソース線駆動回路601と、画素部602中の一つの画素が示されている。
【0210】
素子基板610はガラス、石英、有機樹脂、金属、合金、半導体などからなる基板の他、FRP(Fiber Reinforced Plastics)、PVF(ポリビニルフロライド)、ポリエステルまたはアクリル樹脂等からなるプラスチック基板を用いて作製すればよい。
【0211】
画素および駆動回路に用いられるトランジスタの構造は特に限定されない。例えば、逆スタガ型のトランジスタとしてもよいし、スタガ型のトランジスタとしてもよい。また、トップゲート型のトランジスタでもボトムゲート型トランジスタでもよい。トランジスタに用いる半導体材料は特に限定されず、例えば、シリコン、ゲルマニウム、炭化シリコン、窒化ガリウム等を用いることができる。または、In-Ga-Zn系金属酸化物などの、インジウム、ガリウム、亜鉛のうち少なくとも一つを含む酸化物半導体を用いてもよい。
【0212】
トランジスタに用いる半導体材料の結晶性についても特に限定されず、非晶質半導体、結晶性を有する半導体(微結晶半導体、多結晶半導体、単結晶半導体、又は一部に結晶領域を有する半導体)のいずれを用いてもよい。結晶性を有する半導体を用いると、トランジスタ特性の劣化を抑制できるため好ましい。
【0213】
ここで、上記画素および駆動回路に設けられるトランジスタの他、後述するタッチセンサ等に用いられるトランジスタなどの半導体装置には、酸化物半導体を適用することが好ましい。特にシリコンよりもバンドギャップの広い酸化物半導体を適用することが好ましい。シリコンよりもバンドギャップの広い酸化物半導体を用いることで、トランジスタのオフ状態における電流を低減できる。
【0214】
上記酸化物半導体は、少なくともインジウム(In)又は亜鉛(Zn)を含むことが好ましい。また、In-M-Zn系酸化物(MはAl、Ti、Ga、Ge、Y、Zr、Sn、La、CeまたはHf等の金属)で表記される酸化物を含む酸化物半導体であることがより好ましい。
【0215】
特に、半導体層として、複数の結晶部を有し、当該結晶部はc軸が半導体層の被形成面、または半導体層の上面に対し垂直に配向し、且つ隣接する結晶部間には粒界を有さない酸化物半導体膜を用いることが好ましい。
【0216】
半導体層としてこのような材料を用いることで、電気特性の変動が抑制され、信頼性の高いトランジスタを実現できる。
【0217】
また、上述の半導体層を有するトランジスタはその低いオフ電流により、トランジスタを介して容量に蓄積した電荷を長期間に亘って保持することが可能である。このようなトランジスタを画素に適用することで、各表示領域に表示した画像の階調を維持しつつ、駆動回路を停止することも可能となる。その結果、極めて消費電力の低減された電子機器を実現できる。
【0218】
トランジスタの特性安定化等のため、下地膜を設けることが好ましい。下地膜としては、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜などの無機絶縁膜を用い、単層で又は積層して作製することができる。下地膜はスパッタリング法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法(プラズマCVD法、熱CVD法、MOCVD(Metal Organic CVD)法など)、ALD(Atomic Layer Deposition)法、塗布法、印刷法等を用いて形成できる。なお、下地膜は、必要で無ければ設けなくてもよい。
【0219】
なお、FET623は駆動回路部601に形成されるトランジスタの一つを示すものである。また、駆動回路は、種々のCMOS回路、PMOS回路もしくはNMOS回路で形成すれば良い。また、本実施の形態では、基板上に駆動回路を形成したドライバ一体型を示すが、必ずしもその必要はなく、駆動回路を基板上ではなく外部に形成することもできる。
【0220】
また、画素部602はスイッチング用FET611と、電流制御用FET612とそのドレインに電気的に接続された第1の電極613とを含む複数の画素により形成されているが、これに限定されず、3つ以上のFETと、容量素子とを組み合わせた画素部としてもよい。
【0221】
なお、第1の電極613の端部を覆って絶縁物614が形成されている。ここでは、ポジ型の感光性アクリル樹脂膜を用いることにより形成することができる。
【0222】
また、後に形成する有機化合物層等の被覆性を良好なものとするため、絶縁物614の上端部または下端部に曲率を有する曲面が形成されるようにする。例えば、絶縁物614の材料としてポジ型の感光性アクリル樹脂を用いた場合、絶縁物614の上端部のみに曲率半径(0.2μm~3μm)を有する曲面を持たせることが好ましい。また、絶縁物614として、ネガ型の感光性樹脂、或いはポジ型の感光性樹脂のいずれも使用することができる。
【0223】
第1の電極613上には、有機化合物層616、および第2の電極617がそれぞれ形成されている。ここで、陽極として機能する第1の電極613に用いる材料としては、仕事関数の大きい材料を用いることが望ましい。例えば、ITO膜、またはケイ素を含有したインジウム錫酸化物膜、2~20wt%の酸化亜鉛を含む酸化インジウム膜、窒化チタン膜、クロム膜、タングステン膜、Zn膜、Pt膜などの単層膜の他、窒化チタン膜とアルミニウムを主成分とする膜との積層、窒化チタン膜とアルミニウムを主成分とする膜と窒化チタン膜との3層構造等を用いることができる。なお、積層構造とすると、配線としての抵抗も低く、良好なオーミックコンタクトがとれ、さらに陽極として機能させることができる。
【0224】
また、有機化合物層616は、蒸着マスクを用いた蒸着法、インクジェット法、スピンコート法等の種々の方法によって形成される。有機化合物層616は、実施の形態1および実施の形態2で説明したような構成を含んでいる。また、有機化合物層616を構成する他の材料としては、低分子化合物、または高分子化合物(オリゴマー、デンドリマーを含む)であっても良い。
【0225】
さらに、有機化合物層616上に形成され、陰極として機能する第2の電極617に用いる材料としては、仕事関数の小さい材料(Al、Mg、Li、Ca、またはこれらの合金および化合物(MgAg、MgIn、AlLi等)等)を用いることが好ましい。なお、有機化合物層616で生じた光が第2の電極617を透過させる場合には、第2の電極617として、膜厚を薄くした金属薄膜と、透明導電膜(ITO、2~20wt%の酸化亜鉛を含む酸化インジウム、ケイ素を含有したインジウム錫酸化物、酸化亜鉛(ZnO)等)との積層を用いるのが良い。
【0226】
なお、第1の電極613、有機化合物層616、第2の電極617でもって、発光デバイスが形成されている。当該発光デバイスは実施の形態1および実施の形態2に記載の発光デバイスである。なお、画素部は複数の発光デバイスが形成されてなっているが、本実施の形態における表示装置では、実施の形態1および実施の形態2に記載の発光デバイスと、それ以外の構成を有する発光デバイスの両方が混在していても良い。
【0227】
さらにシール材605で封止基板604を素子基板610と貼り合わせることにより、素子基板610、封止基板604、およびシール材605で囲まれた空間607に発光デバイス618が備えられた構造になっている。なお、空間607には、充填材が充填されており、不活性気体(窒素、アルゴン等)が充填される場合の他、シール材で充填される場合もある。封止基板には凹部を形成し、そこに乾燥材を設けることで水分の影響による劣化を抑制することができ、好ましい構成である。
【0228】
なお、シール材605にはエポキシ樹脂、ガラスフリットを用いるのが好ましい。また、これらの材料はできるだけ水分および酸素を透過しない材料であることが望ましい。また、封止基板604に用いる材料としてガラス基板、石英基板の他、FRP(Fiber Reinforced Plastics)、PVF(ポリビニルフロライド)、ポリエステルまたはアクリル樹脂等からなるプラスチック基板を用いることができる。
【0229】
図3には示されていないが、第2の電極上に保護膜を設けても良い。保護膜は有機樹脂膜、無機絶縁膜で形成すればよい。また、シール材605の露出した部分を覆うように、保護膜が形成されていても良い。また、保護膜は、一対の基板の表面及び側面、封止層、絶縁層、等の露出した側面を覆って設けることができる。
【0230】
保護膜には、水などの不純物を透過しにくい材料を用いることができる。したがって、水などの不純物が外部から内部に拡散することを効果的に抑制することができる。
【0231】
保護膜を構成する材料としては、酸化物、窒化物、フッ化物、硫化物、三元化合物、金属またはポリマー等を用いることができ、例えば、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、ハフニウムシリケート、酸化ランタン、酸化珪素、チタン酸ストロンチウム、酸化タンタル、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ニオブ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化イットリウム、酸化セリウム、酸化スカンジウム、酸化エルビウム、酸化バナジウムまたは酸化インジウム等を含む材料、窒化アルミニウム、窒化ハフニウム、窒化珪素、窒化タンタル、窒化チタン、窒化ニオブ、窒化モリブデン、窒化ジルコニウムまたは窒化ガリウム等を含む材料、チタンおよびアルミニウムを含む窒化物、チタンおよびアルミニウムを含む酸化物、アルミニウムおよび亜鉛を含む酸化物、マンガンおよび亜鉛を含む硫化物、セリウムおよびストロンチウムを含む硫化物、エルビウムおよびアルミニウムを含む酸化物、イットリウムおよびジルコニウムを含む酸化物等を含む材料を用いることができる。
【0232】
保護膜は、段差被覆性(ステップカバレッジ)の良好な成膜方法を用いて形成することが好ましい。このような手法の一つに、原子層堆積(ALD:Atomic Layer Deposition)法がある。ALD法を用いて形成することができる材料を、保護膜に用いることが好ましい。ALD法を用いることで緻密な、クラック、ピンホールなどの欠陥が低減された、または均一な厚さを備える保護膜を形成することができる。また、保護膜を形成する際に加工部材に与える損傷を、低減することができる。
【0233】
例えばALD法を用いて保護膜を形成することで、複雑な凹凸形状を有する表面、タッチパネルの上面、側面及び裏面にまで均一で欠陥の少ない保護膜を形成することができる。
【0234】
以上のようにして、実施の形態1および実施の形態2に記載の発光デバイスを用いて作製された表示装置を得ることができる。
【0235】
本実施の形態における表示装置は、実施の形態1および実施の形態2に記載の発光デバイスを用いているため、良好な特性を備えた表示装置を得ることができる。具体的には、実施の形態1および実施の形態2に記載の発光デバイスは発光効率が高いため、消費電力の小さい表示装置とすることが可能である。また、実施の形態1および実施の形態2に記載の発光デバイスは、信頼性が良好であることから、信頼性の良好な表示装置とすることができる。また、それに加えて実施の形態1および実施の形態2に記載の発光デバイスは、色度および色純度の良好な発光デバイスとすることができることから、表示品質の良好な表示装置とすることができる。
【0236】
また、本実施の形態は他の実施の形態と自由に組み合わせることができる。
【0237】
(実施の形態4)
発光デバイスは図4(A)および図4(B)に例示したように、絶縁層175上に複数形成され表示装置を構成する。本実施の形態では、本発明の他の一態様の表示装置について詳しく説明する。
【0238】
表示装置100は、複数の画素178がマトリクス状に配列された画素部177を有する。画素178は、副画素110R、副画素110G、及び副画素110Bを有する。
【0239】
本明細書等において、例えば副画素110R、副画素110G、及び副画素110Bに共通する事項を説明する場合には、副画素110と呼称して説明する場合がある。アルファベットで区別する他の構成要素についても、これらに共通する事項を説明する場合には、アルファベットを省略した符号を用いて説明する場合がある。
【0240】
副画素110Rは赤色の光を呈し、副画素110Gは緑色の光を呈し、副画素110Bは青色の光を呈する。これにより、画素部177に画像を表示することができる。なお、本実施の形態では、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の3色の副画素を例に挙げて説明するが、その他の色の副画素の組み合わせを用いてもよい。また、副画素は3つに限られず、4つ以上としてもよい。4つの副画素としては、例えば、R、G、B、白色(W)の4色の副画素、R、G、B、Yの4色の副画素、及び、R、G、B、赤外光(IR)の4つの副画素、等が挙げられる。
【0241】
本明細書等において、行方向をX方向、列方向をY方向という場合がある。X方向とY方向は交差し、例えば垂直に交差する。
【0242】
図4(A)では、異なる色の副画素がX方向に並べて配置されており、同じ色の副画素が、Y方向に並べて配置されている例を示す。なお、異なる色の副画素がY方向に並べて配置され、同じ色の副画素が、X方向に並べて配置されていてもよい。
【0243】
画素部177の外側には、接続部140が設けられ、領域141が設けられていてもよい。領域141が設けられる場合、領域141は画素部177と接続部140の間に設けられる。領域141が設けられる場合、領域141には、有機化合物層が設けられる。また、接続部140には、導電層151Cが設けられる。
【0244】
図4(A)では、領域141、及び接続部140が画素部177の右側に位置する例を示すが、領域141、及び接続部140の位置は特に限定されない。また、領域141、及び接続部140は、単数であっても複数であってもよい。
【0245】
図4(B)は、図4(A)における一点鎖線A1-A2間の断面図の例である。図4(B)に示すように、表示装置100は、絶縁層171と、絶縁層171上の導電層172と、絶縁層171上、及び導電層172上の絶縁層173と、絶縁層173上の絶縁層174と、絶縁層174上の絶縁層175と、を有する。絶縁層171は、基板(図示せず)上に設けられる。絶縁層175、絶縁層174、及び絶縁層173には、導電層172に達する開口が設けられ、当該開口を埋め込むようにプラグ176が設けられている。
【0246】
画素部177において、絶縁層175及びプラグ176上に、発光デバイス130が設けられる。また、発光デバイス130を覆うように、保護層131が設けられている。保護層131上には、樹脂層122によって基板120が貼り合わされている。また、隣り合う発光デバイス130の間には、無機絶縁層125と、無機絶縁層125上の絶縁層127と、が設けられていることが好ましい。
【0247】
図4(B)では、無機絶縁層125及び絶縁層127の断面が複数示されているが、表示装置100を上面から見た場合、無機絶縁層125及び絶縁層127は、それぞれ1つに繋がっていることが好ましい。
【0248】
図4(B)では、発光デバイス130として、発光デバイス130R、発光デバイス130G、及び発光デバイス130Bを示している。発光デバイス130R、発光デバイス130G、及び発光デバイス130Bは、互いに異なる色の光を発するものとする。例えば、発光デバイス130Rは赤色の光を発することができ、発光デバイス130Gは緑色の光を発することができ、発光デバイス130Bは青色の光を発することができる。また、発光デバイス130R、発光デバイス130G、又は発光デバイス130Bは、他の可視光又は赤外光を発してもよい。
【0249】
本発明の一態様の表示装置は、例えば発光デバイスが形成されている基板とは反対方向に光を射出する上面射出型(トップエミッション型)とすることができる。なお、本発明の一態様の表示装置は、下面射出型(ボトムエミッション型)であってもよい。
【0250】
発光デバイス130Rは、実施の形態1および実施の形態2に示したような構成を有する。導電層151Rと導電層152Rとからなる第1の電極(画素電極)と、第1の電極上の有機化合物層103Rと、有機化合物層103R上の共通層104と、共通層104上の第2の電極(共通電極)102と、を有する。なお、共通層104は、設けられていても設けられていなくても構わないが、設けられていることが加工時の有機化合物層103Rへのダメージを低減できることから好ましい。共通層104が設けられている場合、共通層104は、電子注入層であることが好ましい。また、共通層104が設けられている場合、有機化合物層103Rと共通層104との積層構造が、実施の形態2における有機化合物層103に相当する。
【0251】
発光デバイス130Gは、実施の形態1および実施の形態2に示したような構成を有する。導電層151Gと導電層152Gとからなる第1の電極(画素電極)と、第1の電極上の有機化合物層103Gと、有機化合物層103G上の共通層104と、共通層104上の第2の電極(共通電極)102と、を有する。なお、共通層104は、設けられていても設けられていなくても構わないが、設けられていることが加工時の有機化合物層103Gへのダメージを低減できることから好ましい。共通層104が設けられている場合、共通層104は、電子注入層であることが好ましい。また、共通層104が設けられている場合、有機化合物層103Gと共通層104との積層構造が、実施の形態2における有機化合物層103に相当する。
【0252】
発光デバイス130Bは、実施の形態1および実施の形態2に示したような構成を有する。導電層151Bと導電層152Bとからなる第1の電極(画素電極)と、第1の電極上の有機化合物層103Bと、有機化合物層103B上の共通層104と、共通層104上の第2の電極(共通電極)102と、を有する。なお、共通層104は、設けられていても設けられていなくても構わないが、設けられていることが加工時の有機化合物層103Bへのダメージを低減できることから好ましい。共通層104が設けられている場合、共通層104は、電子注入層であることが好ましい。また、共通層104が設けられている場合、有機化合物層103Bと共通層104との積層構造が、実施の形態2における有機化合物層103に相当する。
【0253】
発光デバイスが有する画素電極と共通電極のうち、一方は陽極として機能し、他方は陰極として機能する。以下では、特に断りが無い場合は、画素電極が陽極として機能し、共通電極が陰極として機能するものとして説明する。
【0254】
有機化合物層103R、有機化合物層103G、及び有機化合物層103Bは、各々または、発光色毎に島状に独立している。有機化合物層103を発光デバイス130ごとに島状に設けることで、高精細な表示装置においても隣接する発光デバイス130間のリーク電流を抑制できる。これにより、クロストークを防ぐことができ、コントラストの極めて高い表示装置を実現できる。特に、低輝度における電流効率の高い表示装置を実現できる。
【0255】
島状の有機化合物層103は、EL膜を成膜し、当該EL膜をフォトリソグラフィ法を用いて加工することにより形成する。
【0256】
有機化合物層103は、発光デバイス130の第1の電極(画素電極)の上面及び側面を覆うように設けられることが好ましい。これにより、有機化合物層103の端部が画素電極の端部よりも内側に位置する構成に比べて、表示装置100の開口率を高めることが容易となる。また、発光デバイス130の画素電極の側面を有機化合物層103で覆うことで、画素電極と第2の電極102とが接することを抑制できるため、発光デバイス130のショートを抑制できる。
【0257】
また、本発明の一態様の表示装置では、発光デバイスの第1の電極(画素電極)を、積層構成とすることが好ましい。例えば、図4(B)に示す例では、発光デバイス130の第1の電極を、導電層151と、導電層152と、の積層構成としている。
【0258】
導電層151として、例えば金属材料を用いることができる。具体的には、例えばアルミニウム(Al)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)、インジウム(In)、スズ(Sn)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、パラジウム(Pd)、金(Au)、白金(Pt)、銀(Ag)、イットリウム(Y)、ネオジム(Nd)等の金属、及びこれらを適宜組み合わせて含む合金を用いることもできる。
【0259】
導電層152として、インジウム、錫、亜鉛、ガリウム、チタン、アルミニウム、及びシリコンの中から選ばれるいずれか一又は複数を有する酸化物を用いることができる。例えば、酸化インジウム、インジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化亜鉛、ガリウムを含む酸化亜鉛、酸化チタン、ガリウムを含むインジウム亜鉛酸化物、アルミニウムを含むインジウム亜鉛酸化物、シリコンを含むインジウム錫酸化物、及びシリコンを含むインジウム亜鉛酸化物等のいずれか一又は複数を含む導電性酸化物を用いることが好ましい。特に、シリコンを含むインジウム錫酸化物は仕事関数が大きい、例えば仕事関数が4.0eV以上であるため、導電層152として好適に用いることができる。
【0260】
導電層151は、異なる材料を有する複数の層の積層構成であってもよく、導電層152は、異なる材料を有する複数の層の積層構成であってもよい。この場合、導電層151が、導電性酸化物等の導電層152に用いることができる材料を用いた層を有してもよく、また、導電層152が、金属材料等の導電層151に用いることができる材料を用いた層を有してもよい。例えば、導電層151が2層以上の積層構成である場合は、導電層152と接する層は、導電層152に用いることができる材料を用いた層とすることができる。
【0261】
なお、導電層151の側面は、テーパ形状を有することが好ましい。具体的には、導電層151の側面は、テーパ角90°未満のテーパ形状を有することが好ましい。この場合、導電層151の側面に沿って設けられる導電層152もテーパ形状を有する。導電層152の側面をテーパ形状とすることで、導電層152の側面に沿って設けられる有機化合物層103の被覆性を高めることができる。
【0262】
続いて図4(A)に示す構成を有する表示装置100の作製方法の例を図5乃至図10を用いて説明する。
【0263】
[作製方法例]
表示装置を構成する薄膜(絶縁膜、半導体膜、及び、導電膜等)は、スパッタリング法、化学気相堆積(CVD:Chemical Vapor Deposition)法、真空蒸着法、パルスレーザー堆積(PLD:Pulsed Laser Deposition)法、又はALD法等を用いて形成できる。
【0264】
また、表示装置を構成する薄膜(絶縁膜、半導体膜、及び、導電膜等)は、スピンコート、ディップ、スプレー塗布、インクジェット、ディスペンス、スクリーン印刷、オフセット印刷、ドクターナイフ法、スリットコート、ロールコート、カーテンコート、又はナイフコート等の湿式の成膜方法により形成できる。
【0265】
また、表示装置を構成する薄膜を加工する際には、例えばフォトリソグラフィ法を用いて加工できる。
【0266】
フォトリソグラフィ法において、露光に用いる光は、例えばi線(波長365nm)、g線(波長436nm)、h線(波長405nm)、又はこれらを混合させた光を用いることができる。そのほか、紫外線、KrFレーザ光、又はArFレーザ光等を用いることもできる。また、液浸露光技術により露光を行ってもよい。また、露光に用いる光として、極端紫外(EUV:Extreme Ultra-violet)光、又はX線を用いてもよい。また、露光に用いる光に換えて、電子ビームを用いることもできる。
【0267】
薄膜のエッチングには、ドライエッチング法、ウェットエッチング法、又はサンドブラスト法等を用いることができる。
【0268】
まず、図5(A)に示すように、基板(図示せず)上に絶縁層171を形成する。続いて、絶縁層171上に導電層172、及び導電層179を形成し、導電層172、及び導電層179を覆うように絶縁層171上に絶縁層173を形成する。続いて、絶縁層173上に絶縁層174を形成し、絶縁層174上に絶縁層175を形成する。
【0269】
基板としては、少なくとも後の熱処理に耐えうる程度の耐熱性を有する基板を用いることができる。例えばガラス基板、石英基板、サファイア基板、セラミック基板、又は有機樹脂基板、シリコン又は炭化シリコン等を材料とした単結晶半導体基板、多結晶半導体基板、シリコンゲルマニウム等の化合物半導体基板、SOI基板等の半導体基板を用いることができる。
【0270】
続いて、絶縁層175、絶縁層174、及び絶縁層173に、導電層172に達する開口を形成する。続いて、当該開口を埋め込むように、プラグ176を形成する。
【0271】
続いて、プラグ176上、及び絶縁層175上に、後に導電層151R、導電層151G、導電層151B、及び導電層151Cとなる導電膜151fを形成する。導電膜151fとして、例えば金属材料を用いることができる。
【0272】
続いて、導電膜151f上にレジストマスク191を形成する。レジストマスク191は、感光性材料(フォトレジスト)を塗布し、露光及び現像を行うことで形成できる。
【0273】
続いて、図5(B)に示すように、例えばレジストマスク191と重ならない領域の導電膜151fを除去する。これにより、導電層151が形成される。
【0274】
続いて、図5(C)に示すように、レジストマスク191を除去する。レジストマスク191は、例えば、酸素プラズマを用いたアッシングにより除去できる。
【0275】
続いて、図5(D)に示すように、導電層151R上、導電層151G上、導電層151B上、導電層151C上、及び絶縁層175上に、後に絶縁層156R、絶縁層156G、絶縁層156B、及び絶縁層156Cとなる絶縁膜156fを形成する。
【0276】
絶縁膜156fには、酸化絶縁膜、窒化絶縁膜、酸化窒化絶縁膜、又は窒化酸化絶縁膜等の無機絶縁膜、例えば、酸化窒化シリコンを用いることができる。
【0277】
続いて、図5(E)に示すように、絶縁膜156fを加工することにより、絶縁層156R、絶縁層156G、絶縁層156B、及び絶縁層156Cを形成する。
【0278】
続いて、図6(A)に示すように、導電層151R上、導電層151G上、導電層151B上、導電層151C上、絶縁層156R上、絶縁層156G上、絶縁層156B上、絶縁層156C上、及び絶縁層175上に、導電膜152fを形成する。導電膜152fとして、例えば導電性酸化物を用いることができる。導電膜152fは積層であってもよい。
【0279】
続いて、図6(B)に示すように、導電膜152fを加工し、導電層152R、導電層152G、導電層152B、及び導電層152Cを形成する。
【0280】
続いて、図6(C)に示すように、EL膜103Rfを、導電層152R上、導電層152G上、導電層152B上、及び絶縁層175上に形成する。なお、図6(C)に示すように、導電層152C上には、EL膜103Rfを形成していない。
【0281】
続いて、図6(C)に示すように、犠牲膜158Rf、マスク膜159Rfを形成する。
【0282】
EL膜103Rf上に犠牲膜158Rfを設けることで、表示装置の作製工程中にEL膜103Rfが受けるダメージを低減し、発光デバイスの信頼性を高めることができる。
【0283】
犠牲膜158Rfには、EL膜103Rfの加工条件に対する耐性の高い膜、具体的には、EL膜103Rfとのエッチングの選択比が大きい膜を用いる。マスク膜159Rfには、犠牲膜158Rfとのエッチングの選択比が大きい膜を用いる。
【0284】
また、犠牲膜158Rf及びマスク膜159Rfは、EL膜103Rfの耐熱温度よりも低い温度で形成する。犠牲膜158Rf及びマスク膜159Rfを形成する際の基板温度としては、それぞれ、代表的には、200℃以下、好ましくは150℃以下、より好ましくは120℃以下、より好ましくは100℃以下、さらに好ましくは80℃以下である。
【0285】
犠牲膜158Rf及びマスク膜159Rfには、ウェットエッチング法により除去できる膜を用いることが好ましい。
【0286】
なお、EL膜103Rf上に接して形成される犠牲膜158Rfは、マスク膜159Rfよりも、EL膜103Rfへのダメージが少ない形成方法を用いて形成されることが好ましい。例えば、スパッタリング法よりも、ALD法又は真空蒸着法が好ましい。
【0287】
犠牲膜158Rf及びマスク膜159Rfとしては、それぞれ、例えば、金属膜、合金膜、金属酸化物膜、半導体膜、有機絶縁膜、及び、無機絶縁膜等のうち一種又は複数種を用いることができる。
【0288】
犠牲膜158Rf及びマスク膜159Rfには、それぞれ、例えば、金、銀、白金、マグネシウム、ニッケル、タングステン、クロム、モリブデン、鉄、コバルト、銅、パラジウム、チタン、アルミニウム、イットリウム、ジルコニウム、及びタンタル等の金属材料、又は該金属材料を含む合金材料を用いることができる。特に、アルミニウム又は銀等の低融点材料を用いることが好ましい。犠牲膜158Rf及びマスク膜159Rfの一方又は双方に紫外線を遮蔽することが可能な金属材料を用いることで、EL膜103Rfに紫外線が照射されることを抑制でき、EL膜103Rfの劣化を抑制できるため、好ましい。
【0289】
また、犠牲膜158Rf及びマスク膜159Rfには、それぞれ、In-Ga-Zn酸化物、酸化インジウム、In-Zn酸化物、In-Sn酸化物、インジウムチタン酸化物(In-Ti酸化物)、インジウムスズ亜鉛酸化物(In-Sn-Zn酸化物)、インジウムチタン亜鉛酸化物(In-Ti-Zn酸化物)、インジウムガリウムスズ亜鉛酸化物(In-Ga-Sn-Zn酸化物)、シリコンを含むインジウムスズ酸化物等の金属酸化物を用いることができる。
【0290】
なお、上記金属酸化物においてガリウムに代えて元素M(Mは、アルミニウム、シリコン、ホウ素、イットリウム、銅、バナジウム、ベリリウム、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、又はマグネシウムから選ばれた一種又は複数種)を用いてもよい。
【0291】
犠牲膜158Rf及びマスク膜159Rfとしては、例えば、シリコン又はゲルマニウム等の半導体材料を用いることが、半導体の製造プロセスと親和性が高いため好ましい。又は、上記半導体材料を含む化合物を用いることができる。
【0292】
また、犠牲膜158Rf及びマスク膜159Rfとしては、それぞれ、各種無機絶縁膜を用いることができる。特に、酸化絶縁膜は、窒化絶縁膜に比べてEL膜103Rfとの密着性が高く好ましい。
【0293】
続いて、図6(C)に示すように、レジストマスク190Rを形成する。レジストマスク190Rは、感光性材料(フォトレジスト)を塗布し、露光及び現像を行うことで形成できる。
【0294】
レジストマスク190Rは、導電層152Rと重なる位置に設ける。レジストマスク190Rは、導電層152Cと重なる位置にも設けることが好ましい。これにより、導電層152Cが表示装置の作製工程中にダメージを受けることを抑制できる。
【0295】
続いて、図6(D)に示すように、レジストマスク190Rを用いて、マスク膜159Rfの一部を除去し、マスク層159Rを形成する。マスク層159Rは、導電層152R上と、導電層152C上と、に残存する。その後、レジストマスク190Rを除去する。続いて、マスク層159Rをマスク(ハードマスクともいう)に用いて、犠牲膜158Rfの一部を除去し、犠牲層158Rを形成する。
【0296】
ウェットエッチング法を用いることで、ドライエッチング法を用いる場合に比べて、犠牲膜158Rf及びマスク膜159Rfの加工時に、EL膜103Rfに加わるダメージを低減できる。ウェットエッチング法を用いる場合、例えば、現像液、水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液(TMAH)、希フッ酸、シュウ酸、リン酸、酢酸、硝酸、又はこれらの混合液体を用いた薬液等を用いることが好ましい。
【0297】
また、犠牲膜158Rfの加工においてドライエッチング法を用いる場合は、エッチングガスに酸素を含むガスを用いないことで、EL膜103Rfの劣化を抑制できる。
【0298】
レジストマスク190Rは、レジストマスク191と同様の方法で除去できる。
【0299】
続いて、図6(D)に示すように、EL膜103Rfを加工して、有機化合物層103Rを形成する。例えば、マスク層159R及び犠牲層158Rをハードマスクに用いて、EL膜103Rfの一部を除去し、有機化合物層103Rを形成する。
【0300】
これにより、図6(D)に示すように、導電層152R上に、有機化合物層103R、犠牲層158R、及び、マスク層159Rの積層構造が残存する。また、導電層152G及び導電層152Bは露出する。
【0301】
EL膜103Rfの加工は、異方性エッチングにより行うことが好ましい。特に、異方性のドライエッチングが好ましい。又は、ウェットエッチングを用いてもよい。
【0302】
ドライエッチング法を用いる場合は、エッチングガスに酸素を含むガスを用いないことで、EL膜103Rfの劣化を抑制できる。
【0303】
また、エッチングガスに酸素を含むガスを用いてもよい。エッチングガスが酸素を含むことで、エッチングの速度を速めることができる。したがって、エッチング速度を十分な速さに維持しつつ、低パワーの条件でエッチングを行うことができる。このため、EL膜103Rfに与えるダメージを抑制できる。さらに、エッチング時に生じる反応生成物の付着等の不具合を抑制できる。
【0304】
ドライエッチング法を用いる場合、例えば、H、CF、C、SF、CHF、Cl、HO、BCl、又はHe、Ar等の第18族元素のうち、一種以上を含むガスをエッチングガスに用いることが好ましい。又は、これらの一種以上と、酸素を含むガスをエッチングガスに用いることが好ましい。又は、酸素ガスをエッチングガスに用いてもよい。
【0305】
続いて、図7(A)に示すように、後に有機化合物層103GとなるEL膜103Gfを形成する。
【0306】
EL膜103Gfは、EL膜103Rfの形成に用いることができる方法と同様の方法で形成できる。また、EL膜103Gfは、EL膜103Rfと同様の構成とすることができる。
【0307】
続いて、犠牲膜158Gfとマスク膜159Gfとを順に形成する。その後、レジストマスク190Gを導電層152Gと重なる位置に形成する。犠牲膜158Gf及びマスク膜159Gfの材料及び形成方法は、犠牲膜158Rf及びマスク膜159Rfに適用できる条件と同様である。レジストマスク190Gの材料及び形成方法は、レジストマスク190Rに適用できる条件と同様である。
【0308】
続いて、図7(B)に示すように、レジストマスク190Gを用いて、マスク膜159Gfの一部を除去し、マスク層159Gを形成する。マスク層159Gは、導電層152G上に残存する。その後、レジストマスク190Gを除去する。続いて、マスク層159Gをマスクに用いて、犠牲膜158Gfの一部を除去し、犠牲層158Gを形成する。続いて、EL膜103Gfを加工して、有機化合物層103Gを形成する。
【0309】
続いて、図7(C)に示すように、EL膜103Bfを形成する。EL膜103Bfは、EL膜103Rfの形成に用いることができる方法と同様の方法で形成できる。また、EL膜103Bfは、EL膜103Rfと同様の構成とすることができる。
【0310】
続いて、図7(C)に示すように、犠牲膜158Bfとマスク膜159Bfとを順に形成する。その後、レジストマスク190Bを導電層152Bと重なる位置に形成する。犠牲膜158Bf及びマスク膜159Bfの材料及び形成方法は、犠牲膜158Rf及びマスク膜159Rfに適用できる条件と同様である。レジストマスク190Bの材料及び形成方法は、レジストマスク190Rに適用できる条件と同様である。
【0311】
続いて、図7(D)に示すように、レジストマスク190Bを用いて、マスク膜159Bfの一部を除去し、マスク層159Bを形成する。マスク層159Bは、導電層152B上に残存する。その後、レジストマスク190Bを除去する。続いて、マスク層159Bをマスクに用いて、犠牲膜158Bfの一部を除去し、犠牲層158Bを形成する。続いて、EL膜103Bfを加工して、有機化合物層103Bを形成する。例えば、マスク層159B及び犠牲層158Bをハードマスクに用いて、EL膜103Bfの一部を除去し、有機化合物層103Bを形成する。
【0312】
これにより、導電層152B上に、有機化合物層103B、犠牲層158B、及び、マスク層159Bの積層構造が残存する。また、マスク層159R、及びマスク層159Gは露出する。
【0313】
なお、有機化合物層103R、有機化合物層103G、有機化合物層103Bの側面は、それぞれ、被形成面に対して垂直又は概略垂直であることが好ましい。例えば、被形成面と、これらの側面との成す角度を、60度以上90度以下とすることが好ましい。
【0314】
上記のように、フォトリソグラフィ法を用いて形成した有機化合物層103R、有機化合物層103G、及び有機化合物層103Bのうち隣接する2つの間の距離は、8μm以下、5μm以下、3μm以下、2μm以下、又は、1μm以下にまで狭めることができる。ここで、当該距離とは、例えば、有機化合物層103R、有機化合物層103G、及び有機化合物層103Bのうち、隣接する2つの対向する端部の間の距離で規定できる。このように、島状の有機化合物層の間の距離を狭めることで、高い精細度と、大きな開口率を有する表示装置を提供できる。また、隣り合う発光デバイス間における第1の電極同士の距離も、狭めることができ、例えば10μm以下、8μm以下、5μm以下、3μm以下、2μm以下とすることができる。なお、隣り合う発光デバイス間における第1の電極同士の距離は2μm以上5μm以下であることが好ましい。
【0315】
続いて、図8(A)に示すように、マスク層159R、マスク層159G、及びマスク層159Bを除去することが好ましい。
【0316】
マスク層の除去工程には、マスク層の加工工程と同様の方法を用いることができる。特に、ウェットエッチング法を用いることで、ドライエッチング法を用いる場合に比べて、マスク層を除去する際に、有機化合物層103に加わるダメージを低減できる。
【0317】
また、マスク層を、水又はアルコール等の溶媒に溶解させることで除去してもよい。アルコールとしては、エチルアルコール、メチルアルコール、イソプロピルアルコール(IPA)、又はグリセリン等が挙げられる。
【0318】
マスク層を除去した後に、表面に吸着する水を除去するため、乾燥処理を行ってもよい。例えば、不活性ガス雰囲気又は減圧雰囲気下における加熱処理を行うことができる。加熱処理は、基板温度として50℃以上200℃以下、好ましくは60℃以上150℃以下、より好ましくは70℃以上120℃以下の温度で行うことができる。減圧雰囲気とすることで、より低温で乾燥が可能であるため好ましい。
【0319】
続いて、図8(B)に示すように、無機絶縁膜125fを形成する。
【0320】
続いて、図8(C)に示すように、無機絶縁膜125f上に、後に絶縁層127となる絶縁膜127fを形成する。
【0321】
無機絶縁膜125f及び絶縁膜127fを形成する際の基板温度としては、それぞれ、60℃以上、80℃以上、100℃以上、又は、120℃以上、かつ、200℃以下、180℃以下、160℃以下、150℃以下、又は140℃以下であることが好ましい。
【0322】
無機絶縁膜125fとしては、上記の基板温度の範囲で、3nm以上、5nm以上、又は、10nm以上、かつ、200nm以下、150nm以下、100nm以下、又は、50nm以下の厚さの絶縁膜を形成することが好ましい。
【0323】
無機絶縁膜125fは、例えば、ALD法を用いて形成することが好ましい。ALD法を用いることで、成膜ダメージを小さくすることができ、また、被覆性の高い膜を成膜可能なため好ましい。無機絶縁膜125fとしては、例えば、ALD法を用いて、酸化アルミニウム膜を形成することが好ましい。
【0324】
絶縁膜127fは、前述の湿式の成膜方法を用いて形成することが好ましい。絶縁膜127fは、例えば、スピンコートにより、感光性材料を用いて形成することが好ましく、より具体的には、アクリル樹脂を含む感光性の樹脂組成物を用いて形成することが好ましい。
【0325】
続いて、露光を行って、絶縁膜127fの一部に、可視光線又は紫外線を感光させる。絶縁層127は、導電層152R、導電層152G、及び導電層152Bのいずれか2つに挟まれる領域、及び、導電層152Cの周囲に形成される。
【0326】
絶縁膜127fへの露光領域によって、後に形成する絶縁層127の幅を制御できる。本実施の形態では、絶縁層127が導電層151の上面と重なる部分を有するように加工する。
【0327】
露光に用いる光は、i線(波長365nm)を含むことが好ましい。また、露光用いる光は、g線(波長436nm)、及びh線(波長405nm)の少なくとも一方を含んでいてもよい。
【0328】
続いて、図9(A)に示すように、現像を行って、絶縁膜127fの露光させた領域を除去し、絶縁層127aを形成する。
【0329】
続いて、図9(B)に示すように、絶縁層127aをマスクとして、エッチング処理を行って、無機絶縁膜125fの一部を除去し、犠牲層158R、犠牲層158G、及び犠牲層158Bの一部の膜厚を薄くする。これにより、絶縁層127aの下に、無機絶縁層125が形成される。また、犠牲層158R、犠牲層158G、及び犠牲層158Bの膜厚が薄い部分の表面が露出する。なお、以下では、絶縁層127aをマスクに用いたエッチング処理を、第1のエッチング処理ということがある。
【0330】
第1のエッチング処理は、ドライエッチング又はウェットエッチングによって行うことができる。なお、無機絶縁膜125fを、犠牲層158R、犠牲層158G、及び犠牲層158Bと同様の材料を用いて成膜していた場合、第1のエッチング処理を一括で行うことができるため、好ましい。
【0331】
ドライエッチングを行う場合、塩素系のガスを用いることが好ましい。塩素系ガスとしては、Cl、BCl、SiCl、及びCCl等を、単独又は2以上のガスを混合して用いることができる。また、上記塩素系ガスに、酸素ガス、水素ガス、ヘリウムガス、及びアルゴンガス等を、単独又は2以上のガスを混合して、適宜添加できる。ドライエッチングを用いることにより、犠牲層158R、犠牲層158G、及び犠牲層158Bの膜厚が薄い領域を、良好な面内均一性で形成できる。
【0332】
ドライエッチング装置としては、高密度プラズマ源を有するドライエッチング装置を用いることができる。高密度プラズマ源を有するドライエッチング装置は、例えば、誘導結合型プラズマ(ICP:Inductively Coupled Plasma)エッチング装置を用いることができる。又は、平行平板型電極を有する容量結合型プラズマ(CCP:Capacitively Coupled Plasma)エッチング装置を用いることができる。
【0333】
また、第1のエッチング処理をウェットエッチングで行うことが好ましい。ウェットエッチング法を用いることで、ドライエッチング法を用いる場合に比べて、有機化合物層103R、有機化合物層103G、及び有機化合物層103Bに加わるダメージを低減できる。例えば、ウェットエッチングは、アルカリ溶液または酸溶液を用いて行うことができる。
【0334】
第1のエッチング処理では、犠牲層158R、犠牲層158G、及び犠牲層158Bを完全に除去せず、膜厚が薄くなった状態でエッチング処理を停止することが好ましい。このように、有機化合物層103R、有機化合物層103G、及び有機化合物層103B上に、対応する犠牲層158R、犠牲層158G、及び犠牲層158Bを残存させておくことで、後の工程の処理で、有機化合物層103R、有機化合物層103G、及び有機化合物層103Bが損傷することを防ぐことができる。
【0335】
続いて、基板全体に露光を行い、可視光線又は紫外線を絶縁層127aに照射することが好ましい。当該露光のエネルギー密度は、0mJ/cmより大きく、800mJ/cm以下とすることが好ましく、0mJ/cmより大きく、500mJ/cm以下とすることがより好ましい。現像後にこのような露光を行うことで、絶縁層127aの透明度を向上させることができる場合がある。また、後の工程における、絶縁層127aをテーパ形状に変形させる加熱処理に必要とされる基板温度を低下させることができる場合がある。
【0336】
ここで、犠牲層158R、犠牲層158G、及び犠牲層158Bとして、酸素に対するバリア絶縁層(例えば、酸化アルミニウム膜等)が存在することで、有機化合物層103R、有機化合物層103G、及び有機化合物層103Bに酸素が拡散することを低減できる。
【0337】
続いて、加熱処理(ポストベークともいう)を行う。加熱処理を行うことで、絶縁層127aを、側面にテーパ形状を有する絶縁層127に変形させることができる(図9(C))。当該加熱処理は、有機化合物層の耐熱温度よりも低い温度で行う。加熱処理は、基板温度として50℃以上200℃以下、好ましくは60℃以上150℃以下、より好ましくは70℃以上130℃以下の温度で行うことができる。加熱雰囲気は、大気雰囲気であってもよく、不活性ガス雰囲気であってもよい。また、加熱雰囲気は、大気圧雰囲気であってもよく、減圧雰囲気であってもよい。これにより、絶縁層127と無機絶縁層125との密着性を向上させ、絶縁層127の耐食性も向上させることができる。
【0338】
第1のエッチング処理にて、犠牲層158R、犠牲層158G、及び犠牲層158Bを完全に除去せず、膜厚が薄くなった状態の犠牲層158R、犠牲層158G、及び犠牲層158Bを残存させておくことで、当該加熱処理において、有機化合物層103R、有機化合物層103G、及び有機化合物層103Bがダメージを受けて劣化することを防ぐことができる。したがって、発光デバイスの信頼性を高めることができる。
【0339】
続いて、図10(A)に示すように、絶縁層127をマスクとして、エッチング処理を行って、犠牲層158R、犠牲層158G、及び犠牲層158Bの一部を除去する。これにより、犠牲層158R、犠牲層158G、及び犠牲層158Bそれぞれに開口が形成され、有機化合物層103R、有機化合物層103G、有機化合物層103B、及び導電層152Cの上面が露出する。なお、以下では、このエッチング処理を、第2のエッチング処理ということがある。
【0340】
無機絶縁層125の端部は絶縁層127で覆われている。また、図10(A)では、犠牲層158Gの端部の一部(具体的には、第1のエッチング処理により形成されたテーパ形状の部分)を絶縁層127が覆い、第2のエッチング処理により形成されたテーパ形状の部分は露出している例を示す。
【0341】
第2のエッチング処理はウェットエッチングで行う。ウェットエッチング法を用いることで、ドライエッチング法を用いる場合に比べて、有機化合物層103R、有機化合物層103G、及び有機化合物層103Bに加わるダメージを低減できる。ウェットエッチングは、例えばアルカリ溶液または酸性溶液を用いて行うことができる。
【0342】
続いて、図10(B)に示すように、有機化合物層103R上、有機化合物層103G上、有機化合物層103B上、導電層152C上、及び絶縁層127上に共通電極155を形成する。共通電極155は、スパッタリング法、又は真空蒸着法等の方法で形成できる。
【0343】
続いて、図10(C)に示すように、共通電極155上に保護層131を形成する。保護層131は、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法、又はALD法等の方法で形成できる。
【0344】
続いて、樹脂層122を用いて、保護層131上に、基板120を貼り合わせることで、表示装置を作製できる。前述のように、本発明の一態様の表示装置の作製方法では、導電層151の側面と重なる領域を有するように絶縁層156を設け、且つ導電層151及び絶縁層156を覆うように導電層152を形成する。これにより、表示装置の歩留まりを高め、また不良の発生を抑制できる。
【0345】
以上のように、本実施の形態における表示装置の作製方法では、島状の有機化合物層103R、島状の有機化合物層103G、及び島状の有機化合物層103Bは、ファインメタルマスクを用いて形成されるのではなく、膜を一面に成膜した後にフォトリソグラフィ法により加工することで形成されるため、島状の層を均一の厚さで形成できる。また、高精細な表示装置又は高開口率の表示装置を実現できる。また、精細度又は開口率が高く、副画素間の距離が極めて短くても、隣接する副画素において、有機化合物層103R、有機化合物層103G、及び、有機化合物層103Bが互いに接することを抑制できる。したがって、副画素間にリーク電流が発生することを抑制できる。これにより、クロストークを防ぐことができ、コントラストの極めて高い表示装置を実現できる。また、フォトリソグラフィ法を用いて作製されたタンデム型の発光デバイスを有する表示装置であっても、良好な特性の表示装置を提供することができる。
【0346】
(実施の形態5)
本実施の形態では、本発明の一態様の表示装置について説明する。
【0347】
本実施の形態の表示装置は、高精細な表示装置とすることができる。したがって、本実施の形態の表示装置は、例えば、腕時計型、及び、ブレスレット型等の情報端末機(ウェアラブル機器)の表示部、並びに、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)等のVR向け機器、及び、メガネ型のAR向け機器等の頭部に装着可能なウェアラブル機器の表示部に用いることができる。
【0348】
また、本実施の形態の表示装置は、高解像度な表示装置又は大型な表示装置とすることができる。したがって、本実施の形態の表示装置は、例えば、テレビジョン装置、デスクトップ型もしくはノート型のパーソナルコンピュータ、コンピュータ用等のモニタ、デジタルサイネージ、及び、パチンコ機等の大型ゲーム機等の比較的大きな画面を備える電子機器の他、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、及び、音響再生装置の表示部に用いることができる。
【0349】
[表示モジュール]
図11(A)に、表示モジュール280の斜視図を示す。表示モジュール280は、表示装置100Aと、FPC290と、を有する。なお、表示モジュール280が有する表示装置は表示装置100Aに限られず、後述する表示装置100B乃至表示装置100Eのいずれかであってもよい。
【0350】
表示モジュール280は、基板291及び基板292を有する。表示モジュール280は、表示部281を有する。表示部281は、表示モジュール280における画像を表示する領域であり、後述する画素部284に設けられる各画素からの光を視認できる領域である。
【0351】
図11(B)に、基板291側の構成を模式的に示した斜視図を示している。基板291上には、回路部282と、回路部282上の画素回路部283と、画素回路部283上の画素部284と、が積層されている。また、基板291上の画素部284と重ならない部分に、FPC290と接続するための端子部285が設けられている。端子部285と回路部282とは、複数の配線により構成される配線部286により電気的に接続されている。
【0352】
画素部284は、周期的に配列した複数の画素284aを有する。図11(B)の右側に、1つの画素284aの拡大図を示している。画素284aには、先の実施の形態で説明した各種構成を適用できる。
【0353】
画素回路部283は、周期的に配列した複数の画素回路283aを有する。
【0354】
1つの画素回路283aは、1つの画素284aが有する複数の素子の駆動を制御する回路である。
【0355】
回路部282は、画素回路部283の各画素回路283aを駆動する回路を有する。例えば、ゲート線駆動回路、及び、ソース線駆動回路の一方又は双方を有することが好ましい。このほか、演算回路、メモリ回路、及び電源回路等の少なくとも一つを有していてもよい。
【0356】
FPC290は、外部から回路部282にビデオ信号又は電源電位等を供給するための配線として機能する。また、FPC290上にICが実装されていてもよい。
【0357】
表示モジュール280は、画素部284の下側に画素回路部283及び回路部282の一方又は双方が積層された構成とすることができるため、表示部281の開口率(有効表示面積比)を極めて高くすることができる。
【0358】
このような表示モジュール280は、極めて高精細であることから、HMD等のVR向け機器又はメガネ型のAR向け機器に好適に用いることができる。例えば、レンズを通して表示モジュール280の表示部を視認する構成の場合であっても、表示モジュール280は極めて高精細な表示部281を有するためにレンズで表示部を拡大しても画素が視認されず、没入感の高い表示を行うことができる。また、表示モジュール280はこれに限られず、比較的小型の表示部を有する電子機器に好適に用いることができる。
【0359】
[表示装置100A]
図12(A)に示す表示装置100Aは、基板301、発光デバイス130R、発光デバイス130G、発光デバイス130B、容量240、及び、トランジスタ310を有する。
【0360】
基板301は、図11(A)及び図11(B)における基板291に相当する。トランジスタ310は、基板301にチャネル形成領域を有するトランジスタである。基板301としては、例えば単結晶シリコン基板等の半導体基板を用いることができる。トランジスタ310は、基板301の一部、導電層311、低抵抗領域312、絶縁層313、及び、絶縁層314を有する。導電層311は、ゲート電極として機能する。絶縁層313は、基板301と導電層311の間に位置し、ゲート絶縁層として機能する。低抵抗領域312は、基板301に不純物がドープされた領域であり、ソース又はドレインとして機能する。絶縁層314は、導電層311の側面を覆って設けられる。
【0361】
また、基板301に埋め込まれるように、隣接する2つのトランジスタ310の間に素子分離層315が設けられている。
【0362】
また、トランジスタ310を覆って絶縁層261が設けられ、絶縁層261上に容量240が設けられている。
【0363】
容量240は、導電層241と、導電層245と、これらの間に位置する絶縁層243を有する。導電層241は、容量240の一方の電極として機能し、導電層245は、容量240の他方の電極として機能し、絶縁層243は、容量240の誘電体として機能する。
【0364】
導電層241は絶縁層261上に設けられ、絶縁層254に埋め込まれている。導電層241は、絶縁層261に埋め込まれたプラグ271によってトランジスタ310のソース又はドレインの一方と電気的に接続されている。絶縁層243は導電層241を覆って設けられる。導電層245は、絶縁層243を介して導電層241と重なる領域に設けられている。
【0365】
容量240を覆って、絶縁層255が設けられ、絶縁層255上に絶縁層174が設けられ、絶縁層174上に絶縁層175が設けられている。絶縁層175上に発光デバイス130R、発光デバイス130G、及び、発光デバイス130Bが設けられている。隣り合う発光デバイスの間の領域には、絶縁物が設けられる。
【0366】
導電層151Rの側面と重なる領域を有するように絶縁層156Rが設けられ、導電層151Gの側面と重なる領域を有するように絶縁層156Gが設けられ、導電層151Bの側面と重なる領域を有するように絶縁層156Bが設けられる。また、導電層151R及び絶縁層156Rを覆うように導電層152Rが設けられ、導電層151G及び絶縁層156Gを覆うように導電層152Gが設けられ、導電層151B及び絶縁層156Bを覆うように導電層152Bが設けられる。有機化合物層103R上には、犠牲層158Rが位置し、有機化合物層103G上には、犠牲層158Gが位置し、有機化合物層103B上には、犠牲層158Bが位置する。
【0367】
導電層151R、導電層151G、及び導電層151Bは、絶縁層243、絶縁層255、絶縁層174、及び絶縁層175に埋め込まれたプラグ256、絶縁層254に埋め込まれた導電層241、及び、絶縁層261に埋め込まれたプラグ271によってトランジスタ310のソース又はドレインの一方と電気的に接続されている。プラグには各種導電材料を用いることができる。
【0368】
また、発光デバイス130R、発光デバイス130G、及び、発光デバイス130B上には保護層131が設けられている。保護層131上には、樹脂層122によって基板120が貼り合わされている。発光デバイス130から基板120までの構成要素についての詳細は、実施の形態4を参照できる。基板120は、図11(A)における基板292に相当する。
【0369】
図12(B)は、図12(A)に示す表示装置100Aの変形例である。図12(B)に示す表示装置は、着色層132R、着色層132G、及び着色層132Bを有し、発光デバイス130が着色層132R、着色層132G、及び着色層132Bのうち一つと重なる領域を有する。図12(B)に示す表示装置において、発光デバイス130は、例えば白色光を発することができる。また、例えば着色層132Rは赤色の光を透過し、着色層132Gは緑色の光を透過し、着色層132Bは青色の光を透過できる。
【0370】
[表示装置100B]
図13に、表示装置100Bの斜視図を示し、図14に、表示装置100Cの断面図を示す。
【0371】
表示装置100Bは、基板352と基板351とが貼り合わされた構成を有する。図13では、基板352を破線で示している。
【0372】
表示装置100Bは、画素部177、接続部140、回路356、及び配線355等を有する。図13では表示装置100BにIC354及びFPC353が実装されている例を示している。このため、図13に示す構成は、表示装置100Bと、IC(集積回路)と、FPCと、を有する表示モジュールということもできる。ここで、表示装置の基板に、FPC等のコネクタが取り付けられたもの、又は当該基板にICが実装されたものを、表示モジュールと呼ぶ。
【0373】
接続部140は、画素部177の外側に設けられる。接続部140は、単数であっても複数であってもよい。接続部140は、発光デバイスの共通電極と、導電層とが電気的に接続されており、共通電極に電位を供給できる。
【0374】
回路356としては、例えば走査線駆動回路を用いることができる。
【0375】
配線355は、画素部177及び回路356に信号及び電力を供給する機能を有する。当該信号及び電力は、FPC353を介して外部から、又はIC354から配線355に入力される。
【0376】
図13では、COG(Chip On Glass)方式又はCOF(Chip on Film)方式等により、基板351にIC354が設けられている例を示す。IC354は、例えば走査線駆動回路又は信号線駆動回路等を有するICを適用できる。なお、表示装置100B及び表示モジュールは、ICを設けない構成としてもよい。また、ICを、例えばCOF方式により、FPCに実装してもよい。
【0377】
図14に、図13における表示装置100Bの、FPC353を含む領域の一部、回路356の一部、画素部177の一部、接続部140の一部、及び、端部を含む領域の一部をそれぞれ切断したときの断面の一例を表示装置100Cとして示す。
【0378】
[表示装置100C]
図14に示す表示装置100Cは、基板351と基板352の間に、トランジスタ201、トランジスタ205、赤色の光を発する発光デバイス130R、緑色の光を発する発光デバイス130G、及び、青色の光を発する発光デバイス130B等を有する。
【0379】
発光デバイス130R、発光デバイス130G、及び発光デバイス130Bの詳細は実施の形態4を参照できる。
【0380】
発光デバイス130Rは、導電層224Rと、導電層224R上の導電層151Rと、導電層151R上の導電層152Rと、を有する。発光デバイス130Gは、導電層224Gと、導電層224G上の導電層151Gと、導電層151G上の導電層152Gと、を有する。発光デバイス130Bは、導電層224Bと、導電層224B上の導電層151Bと、導電層151B上の導電層152Bと、を有する。
【0381】
導電層224Rは、絶縁層214に設けられた開口を介して、トランジスタ205が有する導電層222bと接続されている。導電層224Rの端部よりも外側に導電層151Rの端部が位置している。導電層151Rの側面と接する領域を有するように絶縁層156Rが設けられ、導電層151R及び絶縁層156Rを覆うように導電層152Rが設けられる。
【0382】
発光デバイス130Gにおける導電層224G、導電層151G、導電層152G、絶縁層156G、及び発光デバイス130Bにおける導電層224B、導電層151B、導電層152B、絶縁層156Bについては、発光デバイス130Rにおける導電層224R、導電層151R、導電層152R、絶縁層156Rと同様であるため詳細な説明は省略する。
【0383】
導電層224R、導電層224G、及び導電層224Bには、絶縁層214に設けられた開口を覆うように凹部が形成される。当該凹部には、層128が埋め込まれている。
【0384】
層128は、導電層224R、導電層224G、及び導電層224Bの凹部を埋め、平坦化する機能を有する。導電層224R、導電層224G、及び導電層224B及び層128上には、導電層224R、導電層224G、及び導電層224Bと電気的に接続される導電層151R、導電層151G、及び導電層151Bが設けられている。したがって、導電層224R、導電層224G、及び導電層224Bの凹部と重なる領域も発光領域として使用でき、画素の開口率を高めることができる。
【0385】
層128は、絶縁層であってもよく、導電層であってもよい。層128には、各種無機絶縁材料、有機絶縁材料、及び導電材料を適宜用いることができる。特に、層128は、絶縁材料を用いて形成されることが好ましく、有機絶縁材料を用いて形成されることが特に好ましい。層128には、例えば前述の絶縁層127に用いることができる有機絶縁材料を適用できる。
【0386】
発光デバイス130R、発光デバイス130G、及び発光デバイス130B上には保護層131が設けられている。保護層131と基板352は接着層142を介して接着されている。基板352には、遮光層157が設けられている。発光デバイス130の封止には、固体封止構造又は中空封止構造等が適用できる。図14では、基板352と基板351との間の空間が、接着層142で充填されており、固体封止構造が適用されている。又は、当該空間を不活性ガス(窒素又はアルゴン等)で充填し、中空封止構造を適用してもよい。このとき、接着層142は、発光デバイスと重ならないように設けられていてもよい。また、当該空間を、枠状に設けられた接着層142とは異なる樹脂で充填してもよい。
【0387】
図14では、接続部140が、導電層224R、導電層224G、及び導電層224Bと同一の導電膜を加工して得られた導電層224Cと、導電層151R、導電層151G、及び導電層151Bと同一の導電膜を加工して得られた導電層151Cと、導電層152R、導電層152G、及び導電層152Bと同一の導電膜を加工して得られた導電層152Cと、を有する例を示している。また、図14では、導電層151Cの側面と重なる領域を有するように絶縁層156Cが設けられる例を示している。
【0388】
表示装置100Cは、トップエミッション型である。発光デバイスが発する光は、基板352側に射出される。基板352には、可視光に対する透過性が高い材料を用いることが好ましい。画素電極は可視光を反射する材料を含み、対向電極(共通電極155)は可視光を透過する材料を含む。
【0389】
基板351上には、絶縁層211、絶縁層213、絶縁層215、及び絶縁層214がこの順で設けられている。絶縁層211は、その一部が各トランジスタのゲート絶縁層として機能する。絶縁層213は、その一部が各トランジスタのゲート絶縁層として機能する。絶縁層215は、トランジスタを覆って設けられる。絶縁層214は、トランジスタを覆って設けられ、平坦化層としての機能を有する。なお、ゲート絶縁層の数及びトランジスタを覆う絶縁層の数は限定されず、それぞれ単層であっても2層以上であってもよい。
【0390】
絶縁層211、絶縁層213、及び絶縁層215としては、それぞれ、無機絶縁膜を用いることが好ましい。
【0391】
平坦化層として機能する絶縁層214には、有機絶縁層が好適である。
【0392】
トランジスタ201及びトランジスタ205は、ゲートとして機能する導電層221、ゲート絶縁層として機能する絶縁層211、ソース及びドレインとして機能する導電層222a及び導電層222b、半導体層231、ゲート絶縁層として機能する絶縁層213、並びに、ゲートとして機能する導電層223を有する。
【0393】
基板351の、基板352が重ならない領域には、接続部204が設けられている。接続部204では、トランジスタ201のソース電極またはドレイン電極が導電層166及び接続層242を介してFPC353と電気的に接続されている。導電層166は、導電層224R、導電層224G、及び導電層224Bと同一の導電膜を加工して得られた導電膜と、導電層151R、導電層151G、及び導電層151Bと同一の導電膜を加工して得られた導電膜と、導電層152R、導電層152G、及び導電層152Bと同一の導電膜を加工して得られた導電膜と、の積層構造である例を示す。接続部204の上面では、導電層166が露出している。これにより、接続部204とFPC353とを接続層242を介して電気的に接続できる。
【0394】
基板352の基板351側の面には、遮光層157を設けることが好ましい。遮光層157は、隣り合う発光デバイスの間、接続部140、及び、回路356等に設けることができる。また、基板352の外側には各種光学部材を配置できる。
【0395】
基板351及び基板352としては、それぞれ、基板120に用いることができる材料を適用できる。
【0396】
接着層142としては、樹脂層122に用いることができる材料を適用できる。
【0397】
接続層242としては、異方性導電フィルム(ACF:Anisotropic Conductive Film)、又は異方性導電ペースト(ACP:Anisotropic Conductive Paste)等を用いることができる。
【0398】
[表示装置100D]
図15に示す表示装置100Dは、ボトムエミッション型の表示装置である点で、図14に示す表示装置100Cと主に相違する。
【0399】
発光デバイスが発する光は、基板351側に射出される。基板351には、可視光に対する透過性が高い材料を用いることが好ましい。一方、基板352に用いる材料の透光性は問わない。
【0400】
基板351とトランジスタ201との間、基板351とトランジスタ205との間には、遮光層317を形成することが好ましい。図15では、基板351上に遮光層317が設けられ、遮光層317上に絶縁層153が設けられ、絶縁層153上にトランジスタ201、205などが設けられている例を示す。
【0401】
発光デバイス130Rは、導電層112Rと、導電層112R上の導電層126Rと、導電層126R上の導電層129Rと、を有する。
【0402】
発光デバイス130Bは、導電層112Bと、導電層112B上の導電層126Bと、導電層126B上の導電層129Bと、を有する。
【0403】
導電層112R、112B、126R、126B、129R、129Bには、それぞれ、可視光に対する透過性が高い材料を用いる。第2の電極102には可視光を反射する材料を用いることが好ましい。
【0404】
なお、図15では、発光デバイス130Gを図示していないが、発光デバイス130Gも設けられている。
【0405】
また、図15などでは、層128の上面が平坦部を有する例を示すが、層128の形状は、特に限定されない。
【0406】
[表示装置100E]
図16に示す表示装置100Eは、図14に示す表示装置100Cの変形例であり、着色層132R、着色層132G、及び着色層132Bを有する点で、表示装置100Cと主に相違する。
【0407】
表示装置100Eにおいて、発光デバイス130は、着色層132R、着色層132G、及び着色層132Bのうち一つと重なる領域を有する。着色層132R、着色層132G、及び着色層132Bは、基板352の基板351側の面に設けることができる。着色層132Rの端部、着色層132Gの端部、及び着色層132Bの端部は、遮光層157と重ねることができる。
【0408】
表示装置100Eにおいて、発光デバイス130は、例えば白色光を発することができる。また、例えば着色層132Rは赤色の光を透過し、着色層132Gは緑色の光を透過し、着色層132Bは青色の光を透過できる。なお、表示装置100Eは、保護層131と接着層142の間に着色層132R、着色層132G、及び着色層132Bを設ける構成としてもよい。
【0409】
本実施の形態は、他の実施の形態、又は実施例と適宜組み合わせることができる。また、本明細書において、1つの実施の形態の中に、複数の構成例が示される場合は、構成例を適宜組み合わせることが可能である。
【0410】
(実施の形態6)
本実施の形態では、本発明の一態様の電子機器について説明する。
【0411】
本実施の形態の電子機器は、表示部に本発明の一態様の表示装置を有する。本発明の一態様の表示装置は消費電力が低く、信頼性が高い。したがって、様々な電子機器の表示部に用いることができる。
【0412】
電子機器としては、例えば、テレビジョン装置、デスクトップ型もしくはノート型のパーソナルコンピュータ、コンピュータ用等のモニタ、デジタルサイネージ、パチンコ機等の大型ゲーム機等の比較的大きな画面を備える電子機器の他、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、等が挙げられる。
【0413】
図17(A)乃至図17(D)を用いて、頭部に装着可能なウェアラブル機器の一例を説明する。
【0414】
図17(A)に示す電子機器700A、及び、図17(B)に示す電子機器700Bは、それぞれ、一対の表示パネル751と、一対の筐体721と、通信部(図示しない)と、一対の装着部723と、制御部(図示しない)と、撮像部(図示しない)と、一対の光学部材753と、フレーム757と、一対の鼻パッド758と、を有する。
【0415】
表示パネル751には、本発明の一態様の表示装置を適用できる。したがって信頼性が高い電子機器とすることができる。
【0416】
電子機器700A、及び、電子機器700Bは、それぞれ、光学部材753の表示領域756に、表示パネル751で表示した画像を投影できる。光学部材753は透光性を有するため、使用者は光学部材753を通して視認される透過像に重ねて、表示領域に表示された画像を見ることができる。
【0417】
電子機器700A、及び、電子機器700Bには、撮像部として、前方を撮像することのできるカメラが設けられていてもよい。また、電子機器700A、及び、電子機器700Bは、それぞれ、ジャイロセンサ等の加速度センサを備えることで、使用者の頭部の向きを検知して、その向きに応じた画像を表示領域756に表示することもできる。
【0418】
通信部は無線通信機を有し、当該無線通信機により例えば映像信号を供給できる。なお、無線通信機に代えて、又は無線通信機に加えて、映像信号及び電源電位が供給されるケーブルを接続可能なコネクタを備えていてもよい。
【0419】
また、電子機器700A、及び、電子機器700Bには、バッテリが設けられており、無線及び有線の一方又は双方によって充電できる。
【0420】
筐体721には、タッチセンサモジュールが設けられていてもよい。
【0421】
タッチセンサモジュールとしては、様々なタッチセンサを適用できる。例えば、静電容量方式、抵抗膜方式、赤外線方式、電磁誘導方式、表面弾性波方式、又は光学方式等、種々の方式を採用できる。特に、静電容量方式又は光学方式のセンサを、タッチセンサモジュールに適用することが好ましい。
【0422】
図17(C)に示す電子機器800A、及び、図17(D)に示す電子機器800Bは、それぞれ、一対の表示部820と、筐体821と、通信部822と、一対の装着部823と、制御部824と、一対の撮像部825と、一対のレンズ832と、を有する。
【0423】
表示部820には、本発明の一態様の表示装置を適用できる。したがって信頼性が高い電子機器とすることができる。
【0424】
表示部820は、筐体821の内部の、レンズ832を通して視認できる位置に設けられる。また、一対の表示部820に異なる画像を表示させることで、視差を用いた3次元表示を行うこともできる。
【0425】
電子機器800A、及び、電子機器800Bは、それぞれ、レンズ832及び表示部820が、使用者の目の位置に応じて最適な位置となるように、これらの左右の位置を調整可能な機構を有していることが好ましい。
【0426】
装着部823により、使用者は電子機器800A又は電子機器800Bを頭部に装着できる。
【0427】
撮像部825は、外部の情報を取得する機能を有する。撮像部825が取得したデータは、表示部820に出力できる。撮像部825には、イメージセンサを用いることができる。また、望遠、及び広角等の複数の画角に対応可能なように複数のカメラを設けてもよい。
【0428】
電子機器800Aは、骨伝導イヤフォンとして機能する振動機構を有していてもよい。
【0429】
電子機器800A、及び、電子機器800Bは、それぞれ、入力端子を有していてもよい。入力端子には映像出力機器等からの映像信号、及び、電子機器内に設けられるバッテリを充電するための電力等を供給するケーブルを接続できる。
【0430】
本発明の一態様の電子機器は、イヤフォン750と無線通信を行う機能を有していてもよい。
【0431】
また、電子機器がイヤフォン部を有していてもよい。図17(B)に示す電子機器700Bは、イヤフォン部727を有する。イヤフォン部727と制御部とをつなぐ配線の一部は、筐体721又は装着部723の内部に配置されていてもよい。
【0432】
同様に、図17(D)に示す電子機器800Bは、イヤフォン部827を有する。例えば、イヤフォン部827と制御部824とは、互いに有線接続されている構成とすることができる。
【0433】
このように、本発明の一態様の電子機器としては、メガネ型(電子機器700A、及び、電子機器700B等)と、ゴーグル型(電子機器800A、及び、電子機器800B等)と、のどちらも好適である。
【0434】
図18(A)に示す電子機器6500は、スマートフォンとして用いることのできる携帯情報端末機である。
【0435】
電子機器6500は、筐体6501、表示部6502、電源ボタン6503、ボタン6504、スピーカ6505、マイク6506、カメラ6507、及び光源6508等を有する。表示部6502はタッチパネル機能を備える。
【0436】
表示部6502に、本発明の一態様の表示装置を適用できる。したがって信頼性が高い電子機器とすることができる。
【0437】
図18(B)は、筐体6501のマイク6506側の端部を含む断面概略図である。
【0438】
筐体6501の表示面側には透光性を有する保護部材6510が設けられ、筐体6501と保護部材6510に囲まれた空間内に、表示パネル6511、光学部材6512、タッチセンサパネル6513、プリント基板6517、及びバッテリ6518等が配置されている。
【0439】
保護部材6510には、表示パネル6511、光学部材6512、及びタッチセンサパネル6513が接着層(図示しない)により固定されている。
【0440】
表示部6502よりも外側の領域において、表示パネル6511の一部が折り返されており、当該折り返された部分にFPC6515が接続されている。FPC6515には、IC6516が実装されている。FPC6515は、プリント基板6517に設けられた端子に接続されている。
【0441】
表示パネル6511には本発明の一態様の表示装置を適用できる。このため、極めて軽量な電子機器を実現できる。また、表示パネル6511が極めて薄いため、電子機器の厚さを抑えつつ、大容量のバッテリ6518を搭載することもできる。また、表示パネル6511の一部を折り返して、画素部の裏側にFPC6515との接続部を配置することにより、狭額縁の電子機器を実現できる。
【0442】
図18(C)にテレビジョン装置の一例を示す。テレビジョン装置7100は、筐体7171に表示部7000が組み込まれている。ここでは、スタンド7173により筐体7171を支持した構成を示している。
【0443】
表示部7000に、本発明の一態様の表示装置を適用できる。したがって信頼性が高い電子機器とすることができる。
【0444】
図18(C)に示すテレビジョン装置7100の操作は、筐体7171が備える操作スイッチ、及び、別体のリモコン操作機7151により行うことができる。
【0445】
図18(D)に、ノート型パーソナルコンピュータの一例を示す。ノート型パーソナルコンピュータ7200は、筐体7211、キーボード7212、ポインティングデバイス7213、及び外部接続ポート7214等を有する。筐体7211に、表示部7000が組み込まれている。
【0446】
表示部7000に、本発明の一態様の表示装置を適用できる。したがって信頼性が高い電子機器とすることができる。
【0447】
図18(E)及び図18(F)に、デジタルサイネージの一例を示す。
【0448】
図18(E)に示すデジタルサイネージ7300は、筐体7301、表示部7000、及びスピーカ7303等を有する。さらに、LEDランプ、操作キー(電源スイッチ、又は操作スイッチを含む)、接続端子、各種センサ、マイクロフォン等を有することができる。
【0449】
図18(F)は円柱状の柱7401に取り付けられたデジタルサイネージ7400である。デジタルサイネージ7400は、柱7401の曲面に沿って設けられた表示部7000を有する。
【0450】
図18(E)及び図18(F)において、表示部7000に、本発明の一態様の表示装置を適用できる。したがって信頼性が高い電子機器とすることができる。
【0451】
表示部7000が広いほど、一度に提供できる情報量を増やすことができる。また、表示部7000が広いほど、人の目につきやすく、例えば、広告の宣伝効果を高めることができる。
【0452】
また、図18(E)及び図18(F)に示すように、デジタルサイネージ7300又はデジタルサイネージ7400は、使用者が所持するスマートフォン等の情報端末機7311又は情報端末機7411と無線通信により連携可能であることが好ましい。
【0453】
図19(A)乃至図19(G)に示す電子機器は、筐体9000、表示部9001、スピーカ9003、操作キー9005(電源スイッチ、又は操作スイッチを含む)、接続端子9006、センサ9007(力、変位、位置、速度、加速度、角速度、回転数、距離、光、液、磁気、温度、化学物質、音声、時間、硬度、電場、電流、電圧、電力、放射線、流量、湿度、傾度、振動、におい又は赤外線を測定する機能を含むもの)、マイクロフォン9008、等を有する。
【0454】
図19(A)乃至図19(G)に示す電子機器は、様々な機能を有する。例えば、様々な情報(静止画、動画、テキスト画像等)を表示部に表示する機能、タッチパネル機能、カレンダー、日付又は時刻等を表示する機能、様々なソフトウェア(プログラム)によって処理を制御する機能、無線通信機能、記録媒体に記録されているプログラム又はデータを読み出して処理する機能、等を有することができる。
【0455】
図19(A)乃至図19(G)に示す電子機器の詳細について、以下説明を行う。
【0456】
図19(A)は、携帯情報端末9171を示す斜視図である。携帯情報端末9171は、例えばスマートフォンとして用いることができる。なお、携帯情報端末9171は、スピーカ9003、接続端子9006、又はセンサ9007等を設けてもよい。また、携帯情報端末9171は、文字及び画像情報をその複数の面に表示できる。図19(A)では3つのアイコン9050を表示した例を示している。また、破線の矩形で示す情報9051を表示部9001の他の面に表示することもできる。情報9051の一例としては、電子メール、SNS、電話等の着信の通知、電子メール又はSNS等の題名、送信者名、日時、時刻、バッテリの残量、電波強度等がある。又は、情報9051が表示されている位置にはアイコン9050等を表示してもよい。
【0457】
図19(B)は、携帯情報端末9172を示す斜視図である。携帯情報端末9172は、表示部9001の3面以上に情報を表示する機能を有する。ここでは、情報9052、情報9053、情報9054がそれぞれ異なる面に表示されている例を示す。例えば使用者は、洋服の胸ポケットに携帯情報端末9172を収納した状態で、携帯情報端末9172の上方から観察できる位置に表示された情報9053を確認することもできる。
【0458】
図19(C)は、タブレット端末9173を示す斜視図である。タブレット端末9173は、一例として、移動電話、電子メール、文章閲覧及び作成、音楽再生、インターネット通信、コンピュータゲーム等の種々のアプリケーションの実行が可能である。タブレット端末9173は、筐体9000の正面に表示部9001、カメラ9002、マイクロフォン9008、スピーカ9003を有し、筐体9000の左側面には操作用のボタンとしての操作キー9005、底面には接続端子9006を有する。
【0459】
図19(D)は、腕時計型の携帯情報端末9200を示す斜視図である。携帯情報端末9200は、例えばスマートウォッチ(登録商標)として用いることができる。また、表示部9001はその表示面が湾曲して設けられ、湾曲した表示面に沿って表示を行うことができる。また、携帯情報端末9200は、例えば無線通信可能なヘッドセットと相互通信することによって、ハンズフリーで通話することもできる。また、携帯情報端末9200は、接続端子9006により、他の情報端末と相互にデータ伝送を行うこと、及び、充電を行うこともできる。なお、充電動作は無線給電により行ってもよい。
【0460】
図19(E)乃至図19(G)は、折り畳み可能な携帯情報端末9201を示す斜視図である。また、図19(E)は携帯情報端末9201を展開した状態、図19(G)は折り畳んだ状態、図19(F)は図19(E)と図19(G)の一方から他方に変化する途中の状態の斜視図である。携帯情報端末9201は、折り畳んだ状態では可搬性に優れ、展開した状態では継ぎ目のない広い表示領域により表示の一覧性に優れる。携帯情報端末9201が有する表示部9001は、ヒンジ9055によって連結された3つの筐体9000に支持されている。例えば、表示部9001は、曲率半径0.1mm以上150mm以下で曲げることができる。
【0461】
本実施の形態は、他の実施の形態、又は実施例と適宜組み合わせることができる。また、本明細書において、1つの実施の形態の中に、複数の構成例が示される場合は、構成例を適宜組み合わせることが可能である。
【実施例0462】
本実施例では、本発明の一態様の発光デバイスである発光デバイス1および発光デバイス2と、比較の発光デバイスである比較発光デバイス1の作製方法および特性について、詳しく説明する。発光デバイス1、発光デバイス2および比較発光デバイス1に用いた主な化合物の構造式を以下に示す。
【0463】
【化9】
【0464】
(発光デバイス1の作製方法)
まず、ガラス基板上に、酸化ケイ素を含むインジウム錫酸化物(ITSO)を70nm、スパッタリング法により積層し、2mm×2mmの大きさで第1の電極101を形成した。なお、ITSOは陽極として機能する。
【0465】
次に、基板上に発光デバイスを形成するための前処理として、基板表面を水で洗浄した。
【0466】
その後、約1×10-4Paまで内部が減圧された真空蒸着装置に基板を導入し、真空蒸着装置内の加熱室において、170℃で30分間の真空焼成を行った後、基板を約30分放冷した。
【0467】
次に、第1の電極101が形成された面が下方となるように、基板を真空蒸着装置内に設けられたホルダーに固定し、無機絶縁膜および第1の電極101上に、蒸着法により上記構造式(i)で表されるN,N-ビス(4-ビフェニル)-6-フェニルベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン-8-アミン(略称:BBABnf)と分子量672でフッ素を含む電子アクセプタ材料(OCHD-003)とを、重量比で1:0.1(=BBABnf:OCHD-003)となるように10nm共蒸着して正孔注入層111を形成した。
【0468】
正孔注入層111上に、BBABnfを25nm蒸着して第1の正孔輸送層を形成し、続いて上記構造式(ii)で表される、9,9’-ジフェニル-9H,9’H-3,3’-ビカルバゾール(略称:PCCP)を10nm蒸着して第2の正孔輸送層を形成して、正孔輸送層112を形成した。なお、発光デバイス1における第2の正孔輸送層は、実施の形態1および実施の形態2に記載の第1の層160に相当する。
【0469】
続いて、正孔輸送層112上に、上記構造式(iii)で表される9-[3-(トリフェニルシリル)フェニル]-3,9′-ビ-9H-カルバゾール(略称:PSiCzCz)と、上記構造式(iv)で表されるジ-μ-オキソビス[ビス(3,5-ジメチル-1H-ピラゾラト-κN1)ハイドロボラート(1-)-κN2,κN2’]ビス[トリス(3,5-ジメチル-1H-ピラゾラト-κN1)ハイドロボラート(1-)-κN2,κN2’,N2’’]ジセリウム(III)(略称:[Ce(bmpz)(bmpz)O])とを、重量比で1:0.1(=PSiCzCz:[Ce(bmpz)(bmpz)O])となるように30nm共蒸着して発光層113を形成した。
【0470】
こののち、上記構造式(v)で表される3,5-ビス[3-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]ピリジン(略称:35DCzPPy)を10nmとなるように蒸着し、続いて上記構造式(vi)で表される1,3,5-トリ[(3-ピリジル)-フェニル-3-イル]ベンゼン(略称:TmPyPB)を15nmとなるように蒸着して、電子輸送層114を形成した。
【0471】
続いて、フッ化リチウム(LiF)を1nm蒸着して電子注入層115を形成し、アルミニウム(Al)を200nm蒸着し第2の電極102を形成した。
【0472】
続いて窒素雰囲気のグローブボックス内において、発光デバイスが大気に曝されないようにガラス基板により封止する作業(UV硬化性のシール材を素子の周囲への塗布、発光デバイスには照射しないようにシール材のみにUVを照射する処理、および大気圧下で80℃にて1時間熱処理)を行い、発光デバイス1を形成した。
【0473】
(発光デバイス2の作製方法)
発光デバイス2は、発光デバイス1におけるPCCPを、上記構造式(vii)で表されるN-(ビフェニル-2-イル)-N-(3,3’’,5’,5’’-テトラ-tert-ブチル-1,1’:3’,1’’-ターフェニル-5-イル)-9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-アミン(略称:mmtBumTPoFBi-02)に変えた他は発光デバイス1と同様に作製した。なお、発光デバイス2における第2の正孔輸送層は、実施の形態1および実施の形態2に記載の第1の層160に相当する。
【0474】
(比較発光デバイス1の作製方法)
比較発光デバイス1は、発光デバイス1におけるPCCPをPSiCzCzに変えた他は発光デバイス1と同様に作製した。なお、比較発光デバイス1における第2の正孔輸送層は、実施の形態1および実施の形態2に記載の第1の層160に相当しない。
【0475】
発光デバイス1、発光デバイス2および比較発光デバイス1のデバイス構造を以下に示す。
【0476】
【表1】
【0477】
発光デバイス1、発光デバイス2および比較発光デバイス1の輝度-電流密度特性を図20に、輝度-電圧特性を図21に、電流効率-輝度特性を図22に、電流密度-電圧特性を図23に、電力効率-輝度特性を図24に、外部量子効率-輝度特性を図25に、電界発光スペクトルを図26に示した。また、1000cd/cm付近における電圧、電流、電流密度、CIE色度、電流効率、外部量子効率、ブルーインデックスの値を以下に示した。なお、輝度、CIE色度、及び電界発光スペクトルの測定には分光放射計(トプコン社製、SR-UL1R)を用い、常温で測定した。また、外部量子効率は、分光放射計を用いて測定した輝度と電界発光スペクトルを用い、配光特性が等方性(ランバーシアン型)であると仮定し算出した。
【0478】
なお、ブルーインデックス(BI)とは、電流効率(cd/A)をさらにCIE(x,y)色度のy値で割った値であり、青色発光の発光特性を表す指標の一つである。青色発光は、色度y値が小さいほど色純度の高い発光となる傾向にある。色度y値が小さく色純度の高い青色発光を用いることで、ディスプレイにおいて広い色度範囲の青色を表現することが可能となり、ディスプレイにおいて白色を表現するために必要な青色の輝度が低下することから、ディスプレイの消費電力を低減する効果が得られる。そのため、青色純度の指標の一つとなる色度y値を考慮した電流効率であるBIが青色発光の効率を表す手段として好適に用いられる場合があり、BIが高い発光デバイスほどディスプレイに用いられる青色発光デバイスとしての効率が良好であるということができる。
【0479】
【表2】
【0480】
図20乃至図26より、発光デバイス1、発光デバイス2および比較発光デバイス1は、いずれも良好な特性を有する発光デバイスであることがわかった。特に、発光デバイス1および発光デバイス2は、電圧が低く、ブルーインデックスが良好な発光デバイスであることがわかった。
【0481】
ここで、発光デバイス1の発光物質の吸収スペクトル、フォトルミネッセンス(PL)スペクトル(室温)、ホスト材料のPLスペクトル(室温および10K)、第2の正孔輸送層を構成する材料のPLスペクトル(室温および10K)を示した図を図27に示した。同様に、発光デバイス2の発光層及び第2の正孔輸送層に用いた材料のスペクトルを図28に、比較発光デバイス1の発光層及び第2の正孔輸送層に用いた材料のスペクトルを図29に示した。なお、これらスペクトルの測定は、全て薄膜状態(蒸着膜、50nm)で行い、吸収スペクトルの測定には紫外可視分光光度計U-4100((株)日立ハイテクノロジーズ製)、蛍光スペクトルの測定には蛍光光度計FP-8600DS((株)日本分光製)、燐光スペクトルの測定には、顕微PL装置 LabRAM HR-PL((株)堀場製作所)を用いた。
【0482】
燐光スペクトルまたは蛍光スペクトルの発光端の波長(またはエネルギー)は、燐光スペクトルまたは蛍光スペクトルの最も短波長に位置するピークよりも短波長側のスペクトルの傾きが最大になる点における接線とベースラインとの交点として算出することができる。同様に吸収端の波長(またはエネルギー)は、吸収スペクトルにおける最も長波長に位置するピークよりも長波長側のスペクトルの傾きが負に最大になる点における接線とベースラインとの交点として算出することができる。なお、スペクトルにノイズがある場合は、スムージングまたはフィッティングをしたデータを用いて算出してもよい。
【0483】
図27に示したスペクトルにおける接線の引き方の具体例を図30(A)および(B)に示す。りん光スペクトルの発光端および蛍光スペクトルの発光端は、燐光発光のピークまたは蛍光発光のピークの短波長側の稜線において、傾きが最大になる点で接線を引き、その接線と横軸の交わる点の波長であり、この値からT準位またはS準位を見積もることができる。例えば、図30(A)に示すPCCPの蛍光スペクトル(PCCP(室温))の場合は、最も短波長側のピーク(395nm)よりも短波長側のスペクトルにおける傾きが最大になる点で接線を引き、横軸と交わる点(378nm)を発光端とする。そして、この値からPCCPのS準位が378nmすなわち3.28eVと求まる。同様に、PCCPの燐光スペクトル(PCCP(10K))の場合は、最も短波長側のピーク(466nm)よりも短波長側のスペクトルにおける傾きが最大になる点で接線を引き、横軸と交わる点(456nm)を発光端とする。そして、この値からPCCPのT準位が456nmすなわち2.72eVと求まる。同様に、[Ce(bmpz)(bmpz)O]の蛍光スペクトル([Ce(bmpz)(bmpz)O](PL))の場合は、最も短波長側のピーク(481nm)よりも短波長側のスペクトルにおける傾きが最大になる点で接線を引き、横軸と交わる点(431nm)を発光端とする。そして、この値から[Ce(bmpz)(bmpz)O]のD準位を見積もることができる。
【0484】
また、吸収スペクトルの吸収端の波長は、吸収スペクトルにおける最も長波長に位置するピーク(ショルダーピークを含む)よりも長波長側のスペクトルの傾きが負に最大になる点における接線とベースラインとの交点として算出することができる。例えば、図30(B)に示す[Ce(bmpz)(bmpz)O]の吸収スペクトル([Ce(bmpz)(bmpz)O](吸収))の場合は、最も長波長に位置するピーク(400nm)よりも長波長側のスペクトルにおける傾きが負に最大になる点で接線を引き、横軸と交わる点(432nm)を発光端とする。そして、この値から[Ce(bmpz)(bmpz)O]のD準位を見積もることができる。
【0485】
図27(A)より、発光デバイス1において、発光物質である[Ce(bmpz)(bmpz)O]の室温における発光スペクトル(蛍光スペクトル)の短波長側の発光端は431nmであり、ホスト材料であるPSiCzCzの10Kでの発光スペクトルにおける燐光スペクトルの短波長側の発光端(418nm)、および、室温でのPSiCzCzの発光スペクトル(蛍光スペクトル)の短波長側の発光端(360nm)のどちらよりも長波長に位置している。
【0486】
また、図27(B)より、発光デバイス1において、発光物質である[Ce(bmpz)(bmpz)O]の室温における発光スペクトル(蛍光スペクトル)の短波長側の発光端(431nm)は、第2の正孔輸送層を構成する材料であるPCCPの10Kでの発光スペクトルにおける燐光スペクトルの短波長側の発光端(456nm)より短波長に位置し、室温でのPCCPの発光スペクトル(蛍光スペクトル)の短波長側の発光端(378nm)より長波長に位置している。
【0487】
もしくは、発光デバイス1は、発光物質である[Ce(bmpz)(bmpz)O]の吸収スペクトルにおける最も長波長に位置する吸収端は432nmであり、ホスト材料であるPSiCzCzの10Kでの発光スペクトルにおける燐光スペクトルの短波長側の発光端(418nm)および、吸収スペクトルにおける最も長波長に位置する吸収端(372nm)のどちらよりも長波長に位置している。
【0488】
また、発光デバイス1は、発光物質である[Ce(bmpz)(bmpz)O]の吸収スペクトルにおける最も長波長に位置する吸収端(432nm)が、第2の正孔輸送層を構成する材料であるPCCPの10Kでの発光スペクトルにおける燐光スペクトルの短波長側の発光端(456nm)より短波長に位置し、吸収スペクトルにおける最も長波長に位置する吸収端(370nm)より長波長に位置している。
【0489】
表3に、上で求めた蛍光スペクトルの発光端の波長、吸収スペクトルの吸収端の波長および燐光スペクトルの発光端の波長をまとめた。また、これらの波長をエネルギーに換算した値も同時に示した。
【0490】
【表3】
【0491】
なお、蛍光スペクトルの短波長側の発光端のエネルギー、または吸収スペクトルの最も長波長に位置する吸収端のエネルギーは化合物のD準位またはS準位のエネルギーとみなすことができる。また、燐光スペクトルの短波長側のエネルギーは化合物のT準位のエネルギーとみなすことができる。
【0492】
すなわち、表3より、発光デバイス1は、発光物質のD準位が、ホスト材料のS準位、およびT準位のどちらよりも低く、第2の正孔輸送層を構成する材料のS準位よりも低く、T準位よりも高い発光デバイスであると言うことができる。
【0493】
なお、蛍光スペクトルの発光端で見積もったS準位と、吸収スペクトルの吸収端で見積もったS準位では多少その値が異なるが、発光物質のD準位に対する大小関係が変化するほど大きな違いは生じないことから、どちらの値を判断に用いても構わない。なお、D準位とS準位の比較を行う場合は、同じ方法で見積もった値を比較することが好ましい。
【0494】
発光デバイス2では、図28(A)より、発光物質である[Ce(bmpz)(bmpz)O]の室温における発光スペクトル(蛍光スペクトル)の短波長側の発光端(431nm)は、ホスト材料であるPSiCzCzの10Kでの発光スペクトルにおける燐光スペクトルの短波長側の発光端(418nm)、および、室温での発光スペクトル(蛍光スペクトル)の短波長側の発光端(360nm)のどちらよりも長波長に位置していることがわかる。
【0495】
また、図28(B)より、発光物質である[Ce(bmpz)(bmpz)O]の室温における発光スペクトル(蛍光スペクトル)の短波長側の発光端(431nm)は、第2の正孔輸送層を構成する材料であるmmtBumTPoFBi-02の10Kでの発光スペクトルにおける燐光スペクトルの短波長側の発光端(478nm)よりも短波長に位置し、室温での発光スペクトル(蛍光スペクトル)の短波長側の発光端(376nm)よりも長波長に位置していることがわかる。
【0496】
もしくは、図28(A)より、発光デバイス2は、発光物質である[Ce(bmpz)(bmpz)O]の吸収スペクトルにおける最も長波長に位置する吸収端(432nm)が、ホスト材料であるPSiCzCzの10Kでの発光スペクトルにおける燐光スペクトルの短波長側の発光端(418nm)、および吸収スペクトルおける最も長波長に位置する吸収端(372nm)のどちらよりも長波長に位置している。
【0497】
また、図28(B)より、発光物質である[Ce(bmpz)(bmpz)O]の吸収スペクトルにおける最も長波長に位置する吸収端(432nm)が、第2の正孔輸送層を構成する材料であるmmtBumTPoFBi-02の10Kでの発光スペクトルにおける燐光スペクトルの短波長側の発光端(478nm)よりも短波長に位置し、吸収スペクトルにおける最も長波長に位置する吸収端(385nm)よりも長波長に位置していることがわかる。
【0498】
表4に、上で求めた蛍光スペクトルの発光端の波長、吸収スペクトルの吸収端の波長および燐光スペクトルの発光端の波長をまとめた。また、これらの波長をエネルギーに換算した値も同時に示した。
【0499】
【表4】
【0500】
すなわち、表4より、発光デバイス2は、発光物質のD準位が、ホスト材料のS準位、およびT準位のどちらよりも低く、且つ第2の正孔輸送層を構成する材料のS準位よりも低く、T準位よりも高い発光デバイスであると言うことができる。なお、ホスト材料であるPSiCzCzのHOMO準位は-5.70eV、電子ブロック層でもある第2の正孔輸送層を構成するmmtBumTPoFBi-02のHOMO準位は-5.43eVであり、ホスト材料のHOMO準位が電子ブロック層のHOMO準位よりも低いことが、発光デバイス2がより高い発光効率が得られている理由の一つである。
【0501】
HOMO準位およびLUMO準位の値は、サイクリックボルタンメトリ(CV)測定により求めた。サイクリックボルタンメトリ(CV)測定において、HOMO準位およびLUMO準位の値(E)は、参照電極に対する作用電極の電位を変化させることで得られる酸化ピーク電位(Epa)、および還元ピーク電位(Epc)を元に、算出した。測定において、正方向の電位走査からHOMO準位を求め、負方向の電位走査からLUMO準位を求めた。また、測定におけるスキャン速度は、0.1V/sとした。具体的には、材料のサイクリックボルタモグラムより得られる酸化ピーク電位(Epa)、および還元ピーク電位(Epc)から、標準酸化還元電位(Eo)(=(Epa+Epc)/2)を求め、参照電極の真空準位に対するポテンシャルエネルギー(Ex)から減算することにより、HOMO準位およびLUMO準位の値(E)(=Ex-Eo)をそれぞれ求めた。なお、上記は可逆な酸化還元波が得られる場合を示したが、不可逆な酸化還元波が得られる場合は、HOMO準位の算出には、酸化ピーク電位(Epa)に一定の値(0.1eV)を減算した値を還元ピーク電位(Epc)と仮定し、標準酸化還元電位(Eo)を小数点以下1桁まで求める。また、LUMO準位の算出には、還元ピーク電位(Epc)に一定の値(0.1eV)を加算した値を酸化ピーク電位(Epa)と仮定し、標準酸化還元電位(Eo)を小数点以下1桁まで求めた。
【0502】
比較発光デバイス1では、図29より、発光物質である[Ce(bmpz)(bmpz)O]の室温における発光スペクトル(蛍光スペクトル)の短波長側の発光端(431nm)は、ホスト材料および電子ブロック材料であるPSiCzCzの10Kでの発光スペクトルにおける燐光スペクトルの短波長側の発光端(418nm)、および、室温でのPSiCzCzの発光スペクトル(蛍光スペクトル)の短波長側の発光端(360nm)のどちらよりも長波長に位置していることがわかる。
【0503】
もしくは、図29より、比較発光デバイス1は、発光物質である[Ce(bmpz)(bmpz)O]の吸収スペクトルにおける最も長波長に位置する吸収端(432nm)が、ホスト材料および電子ブロック材料であるPSiCzCzの10Kでの発光スペクトルにおける燐光スペクトルの短波長側の発光端(418nm)、および、吸収スペクトルおける最も長波長に位置する吸収端(372nm)のどちらよりも長波長に位置していることがわかる。
【0504】
表5に、上で求めた蛍光スペクトルの発光端の波長、吸収スペクトルの吸収端の波長および燐光スペクトルの発光端の波長をまとめた。また、これらの波長をエネルギーに換算した値も同時に示した。
【0505】
【表5】
【0506】
すなわち、表5より、比較発光デバイス1は、発光物質のD準位が、ホスト材料および電子ブロック材料のS準位、およびT準位のどちらよりも低い発光デバイスであると言うことができる。
【0507】
このように、本発明の一態様の発光デバイスである発光デバイス1および発光デバイス2は、二重項励起状態から発光する物質のD準位よりも、周辺材料(第2の正孔輸送層を構成する材料)のT準位が低い構成を有する発光デバイスであるにも関わらず、周辺材料のT準位、S準位がどちらも発光物質のD準位より高い構成を有する比較発光デバイス1と同様の良好な特性を得られていることがわかった。
【0508】
このことから、励起エネルギーの高すぎない周辺材料を使用することができているため、発光デバイス1および発光デバイス2は、比較発光デバイス1と比較して信頼性の良好な発光デバイスとすることが可能となる。
【実施例0509】
本実施例では、本発明の一態様の発光デバイスである発光デバイス3乃至発光デバイス5の作製方法および特性について、詳しく説明する。発光デバイス3乃至発光デバイス5に用いた化合物の構造式を以下に示す。
【0510】
【化10】
【0511】
(発光デバイス3の作製方法)
まず、ガラス基板上に、酸化ケイ素を含むインジウム錫酸化物(ITSO)を70nm、スパッタリング法により積層し、2mm×2mmの大きさで第1の電極101を形成した。なお、ITSOは陽極として機能する。
【0512】
次に、基板上に発光デバイスを形成するための前処理として、基板表面を水で洗浄した。
【0513】
その後、約1×10-4Paまで内部が減圧された真空蒸着装置に基板を導入し、真空蒸着装置内の加熱室において、170℃で30分間の真空焼成を行った後、基板を約30分放冷した。
【0514】
次に、第1の電極101が形成された面が下方となるように、基板を真空蒸着装置内に設けられたホルダーに固定し、無機絶縁膜および第1の電極101上に、蒸着法により上記構造式(i)で表されるN,N-ビス(4-ビフェニル)-6-フェニルベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン-8-アミン(略称:BBABnf)と分子量672でフッ素を含む電子アクセプタ材料(OCHD-003)とを、重量比で1:0.1(=BBABnf:OCHD-003)となるように10nm共蒸着して正孔注入層111を形成した。
【0515】
正孔注入層111上に、BBABnfを25nm蒸着して第1の正孔輸送層を形成し、続いて上記構造式(ii)で表される、9,9’-ジフェニル-9H,9’H-3,3’-ビカルバゾール(略称:PCCP)を10nm蒸着して第2の正孔輸送層を形成し、正孔輸送層112を形成した。なお、発光デバイス3における第2の正孔輸送層は、実施の形態1および実施の形態2に記載の第1の層160に相当する。
【0516】
続いて、正孔輸送層112上に、PCCPと、上記構造式(iv)で表されるジ-μ-オキソビス[ビス(3,5-ジメチル-1H-ピラゾラト-κN1)ハイドロボラート(1-)-κN2,κN2’]ビス[トリス(3,5-ジメチル-1H-ピラゾラト-κN1)ハイドロボラート(1-)-κN2,κN2’,N2’’]ジセリウム(III)(略称:[Ce(bmpz)(bmpz)O])とを、重量比で1:0.1(=PCCP:[Ce(bmpz)(bmpz)O])となるように30nm共蒸着して発光層113を形成した。
【0517】
こののち、上記構造式(v)で表される3,5-ビス[3-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]ピリジン(略称:35DCzPPy)を10nmとなるように蒸着し、続いて上記構造式(vi)で表される1,3,5-トリ[(3-ピリジル)-フェニル-3-イル]ベンゼン(略称:TmPyPB)を15nmとなるように蒸着して、電子輸送層114を形成した。
【0518】
続いて、フッ化リチウム(LiF)を1nmとなるように蒸着して電子注入層115を形成し、アルミニウム(Al)を200nm蒸着し第2の電極102を形成した。
【0519】
続いて窒素雰囲気のグローブボックス内において、発光デバイスが大気に曝されないようにガラス基板により封止する作業(UV硬化性のシール材を素子の周囲への塗布、発光デバイスには照射しないようにシール材のみにUVを照射する処理、および大気圧下で80℃にて1時間熱処理)を行い、発光デバイス3を形成した。
【0520】
(発光デバイス4の作製方法)
発光デバイス4は、発光デバイス3における第2の正孔輸送層のPCCPを上記構造式(vii)で表されるN-(ビフェニル-2-イル)-N-(3,3’’,5’,5’’-テトラ-tert-ブチル-1,1’:3’,1’’-ターフェニル-5-イル)-9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-アミン(略称:mmtBumTPoFBi-02)に変えた他は発光デバイス3と同様に作製した。なお、発光デバイス3における第2の正孔輸送層は、実施の形態1および実施の形態2に記載の第1の層160に相当する。
【0521】
(発光デバイス5の作製方法)
発光デバイス5は、発光デバイス3における第2の正孔輸送層のPCCPを上記構造式(ix)で表される4,4’-ジフェニル-4’’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBBi1BP)に変えた他は発光デバイス3と同様に作製した。なお、発光デバイス5における第2の正孔輸送層は、実施の形態1および実施の形態2に記載の第1の層160に相当する。
【0522】
発光デバイス3乃至発光デバイス5のデバイス構造を以下に示す。
【0523】
【表6】
【0524】
発光デバイス3乃至発光デバイス5の輝度-電流密度特性を図31に、輝度-電圧特性を図32に、電流効率-輝度特性を図33に、電流密度-電圧特性を図34に、電力効率-輝度特性を図35に、外部量子効率-輝度特性を図36に、電界発光スペクトルを図37に示した。また、1000cd/cm付近における電圧、電流、電流密度、CIE色度、電流効率、外部量子効率の値を以下に示した。なお、輝度、CIE色度、及び電界発光スペクトルの測定には分光放射計(トプコン社製、SR-UL1R)を用い、常温で測定した。また、外部量子効率は、分光放射計を用いて測定した輝度と電界発光スペクトルを用い、配光特性が等方性(ランバーシアン型)であると仮定し算出した。
【0525】
【表7】
【0526】
図31乃至図37より、発光デバイス3乃至発光デバイス5はいずれも良好な特性を有する発光デバイスであることがわかった。
【0527】
ここで、各発光デバイスの発光物質の吸収スペクトル、フォトルミネッセンス(PL)スペクトル(室温)、ホスト材料並びに第2の正孔輸送層のPLスペクトル(室温および10K)を示した図を図38(発光デバイス3)、図39(発光デバイス4)、および図40(発光デバイス5)に示した。なお、これらスペクトルの測定は、全て薄膜状態(蒸着膜、50nm)で行い、吸収スペクトルの測定には紫外可視分光光度計U-4100((株)日立ハイテクノロジーズ製)、蛍光スペクトルの測定には蛍光光度計FP-8600DS((株)日本分光製)、燐光スペクトルの測定には、顕微PL装置 LabRAM HR-PL((株)堀場製作所)を用いた。
【0528】
図38より、発光デバイス3において、発光物質である[Ce(bmpz)(bmpz)O]の室温における発光スペクトル(蛍光スペクトル)の短波長側の発光端(431nm)は、ホスト材料および第2の正孔輸送層を構成する材料であるPCCPの10Kでの発光スペクトルにおける燐光スペクトルの短波長側の発光端(456nm)より短波長に位置し、室温での発光スペクトル(蛍光スペクトル)の短波長側の発光端(378nm)より長波長に位置している。
【0529】
もしくは、図38より、発光デバイス3は、発光物質である[Ce(bmpz)(bmpz)O]の吸収スペクトルにおける最も長波長に位置する吸収端(432nm)が、ホスト材料および第2の正孔輸送層を構成する材料であるPCCPの10Kでの発光スペクトルにおける燐光スペクトルの短波長側の発光端(456nm)より短波長に位置し、吸収スペクトルにおける最も長波長に位置する吸収端(370nm)より長波長に位置している。
【0530】
表8に、上で求めた蛍光スペクトルの発光端の波長、吸収スペクトルの吸収端の波長および燐光スペクトルの発光端の波長をまとめた。また、これらの波長をエネルギーに換算した値も同時に示した。
【0531】
【表8】
【0532】
なお、蛍光スペクトルの短波長側の発光端のエネルギー、または吸収スペクトルの最も長波長に位置する吸収端のエネルギーは化合物のD準位またはS準位のエネルギーとみなすことができる。また、燐光スペクトルの短波長側のエネルギーは化合物のT準位のエネルギーとみなすことができる。
【0533】
すなわち、表8より、発光デバイス3は、発光物質のD準位が、ホスト材料および電子ブロック材料両方のS準位よりも低く、T準位よりも高い発光デバイスであると言うことができる。
【0534】
なお、蛍光スペクトルの発光端で見積もったS準位と、吸収スペクトルの吸収端で見積もったS準位では多少その値が異なるが、発光物質のD準位に対する大小関係が変化するほど大きな違いは生じないことから、どちらの値を判断に用いても構わない。なお、D準位とS準位の比較を行う場合は、同じ方法で見積もった値を比較することが好ましい。
【0535】
発光デバイス4では、図39(A)より、発光物質である[Ce(bmpz)(bmpz)O]の室温における発光スペクトル(蛍光スペクトル)の短波長側の発光端(431nm)は、ホスト材料であるPCCPの10Kでの発光スペクトルにおける燐光スペクトルの短波長側の発光端(456nm)より短波長に位置し、室温での発光スペクトル(蛍光スペクトル)の短波長側の発光端(378nm)より長波長に位置している。
【0536】
また、発光デバイス4では、図39(B)より、発光物質である[Ce(bmpz)(bmpz)O]の室温における発光スペクトル(蛍光スペクトル)の短波長側の発光端(431nm)は、第2の正孔輸送層を構成する材料であるmmtBumTPoFBi-02の10Kでの発光スペクトルにおける燐光スペクトルの短波長側の発光端(478nm)よりも短波長に位置し、室温での発光スペクトル(蛍光スペクトル)の短波長側の発光端(376nm)よりも長波長に位置していることがわかる。
【0537】
もしくは、発光デバイス4は、発光物質である[Ce(bmpz)(bmpz)O]の吸収スペクトルにおける最も長波長に位置する吸収端(432nm)が、ホスト材料であるPCCPの10Kでの発光スペクトルにおける燐光スペクトルの短波長側の発光端(456nm)より短波長に位置し、吸収スペクトルにおける最も長波長に位置する吸収端(370nm)より長波長に位置している。
【0538】
また、発光デバイス4は、発光物質である[Ce(bmpz)(bmpz)O]の吸収スペクトルにおける最も長波長に位置する吸収端(432nm)が、第2の正孔輸送層を構成する材料であるmmtBumTPoFBi-02の10Kでの発光スペクトルにおける燐光スペクトルの短波長側の発光端(478nm)よりも短波長に位置し、吸収スペクトルにおける最も長波長に位置する吸収端(385nm)よりも長波長に位置していることがわかる。
【0539】
表9に、上で求めた蛍光スペクトルの発光端の波長、吸収スペクトルの吸収端の波長および燐光スペクトルの発光端の波長をまとめた。また、これらの波長をエネルギーに換算した値も同時に示した。
【0540】
【表9】
【0541】
すなわち、表9より、発光デバイス4は、発光物質のD準位が、ホスト材料および電子ブロック材料両方のS準位よりも低く、T準位よりも高い発光デバイスであると言うことができる。
【0542】
発光デバイス5は、図40(A)より、発光物質である[Ce(bmpz)(bmpz)O]の室温における発光スペクトル(蛍光スペクトル)の短波長側の発光端(431nm)は、ホスト材料であるPCCPの10Kでの発光スペクトルにおける燐光スペクトルの短波長側の発光端(456nm)より短波長に位置し、室温での発光スペクトル(蛍光スペクトル)の短波長側の発光端(378nm)より長波長に位置している。
【0543】
また、発光デバイス5では、図40(B)より、発光物質である[Ce(bmpz)(bmpz)O]の室温における発光スペクトル(蛍光スペクトル)の短波長側の発光端(431nm)は、第2の正孔輸送層を構成する材料であるPCBBi1BPの10Kでの発光スペクトルにおける燐光スペクトルの短波長側の発光端(496nm)よりも短波長に位置し、室温での発光スペクトル(蛍光スペクトル)の短波長側の発光端(387nm)よりも長波長に位置していることがわかる。
【0544】
もしくは、発光デバイス5は、図40(A)より、発光物質である[Ce(bmpz)(bmpz)O]の吸収スペクトルにおける最も長波長に位置する吸収端(432nm)が、ホスト材料であるPCCPの10Kでの発光スペクトルにおける燐光スペクトルの短波長側の発光端(456nm)より短波長に位置し、吸収スペクトルにおける最も長波長に位置する吸収端(370nm)より長波長に位置している。
【0545】
また、発光デバイス5は、図40(B)より、発光物質である[Ce(bmpz)(bmpz)O]の吸収スペクトルにおける最も長波長に位置する吸収端(432nm)が、第2の正孔輸送層を構成する材料であるPCBBi1BPの10Kでの発光スペクトルにおける燐光スペクトルの短波長側の発光端(496nm)よりも短波長に位置し、吸収スペクトルにおける最も長波長に位置する吸収端(395nm)よりも長波長に位置していることがわかる。
【0546】
表10に、上で求めた蛍光スペクトルの発光端の波長、吸収スペクトルの吸収端の波長および燐光スペクトルの発光端の波長をまとめた。また、これらの波長をエネルギーに換算した値も同時に示した。
【0547】
【表10】
【0548】
すなわち、表10より、発光デバイス5は、発光物質のD準位が、ホスト材料および電子ブロック材料両方のS準位よりも低く、T準位よりも高い発光デバイスであると言うことができる。
【0549】
このように、本発明の一態様の発光デバイスである発光デバイス3乃至発光デバイス5は、いずれも駆動電圧が低く、ブルーインデックスが良好な発光デバイスであることがわかった。加えて、発光物質のD準位よりも、周辺材料(ホスト材料および第2の正孔輸送層を構成する材料)のS準位が高く、且つT準位が低い構成を有することから、励起エネルギーの高すぎない周辺材料を使用することができているため、信頼性の良好な発光デバイスを提供することができる。
【実施例0550】
本実施例では、本発明の一態様の発光デバイスである発光デバイス6乃至発光デバイス8の作製方法および特性について、詳しく説明する。発光デバイス6乃至発光デバイス8に用いた化合物の構造式を以下に示す。
【0551】
【化11】
【0552】
(発光デバイス6の作製方法)
まず、ガラス基板上に、酸化ケイ素を含むインジウム錫酸化物(ITSO)を70nm、スパッタリング法により積層し、2mm×2mmの大きさで第1の電極101を形成した。なお、ITSOは陽極として機能する。
【0553】
次に、基板上に発光デバイスを形成するための前処理として、基板表面を水で洗浄した。
【0554】
その後、約1×10-4Paまで内部が減圧された真空蒸着装置に基板を導入し、真空蒸着装置内の加熱室において、170℃で30分間の真空焼成を行った後、基板を約30分放冷した。
【0555】
次に、第1の電極101が形成された面が下方となるように、基板を真空蒸着装置内に設けられたホルダーに固定し、無機絶縁膜および第1の電極101上に、蒸着法により上記構造式(i)で表されるN,N-ビス(4-ビフェニル)-6-フェニルベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン-8-アミン(略称:BBABnf)と分子量672でフッ素を含む電子アクセプタ材料(OCHD-003)とを、重量比で1:0.1(=BBABnf:OCHD-003)となるように10nm共蒸着して正孔注入層111を形成した。
【0556】
正孔注入層111上に、BBABnfを25nm蒸着して第1の正孔輸送層を形成し、続いて上記構造式(ii)で表される、9,9’-ジフェニル-9H,9’H-3,3’-ビカルバゾール(略称:PCCP)を10nm蒸着して第2の正孔輸送層を形成して、正孔輸送層112を形成した。
【0557】
続いて、正孔輸送層112上に、PCCPと、上記構造式(iv)で表されるジ-μ-オキソビス[ビス(3,5-ジメチル-1H-ピラゾラト-κN1)ハイドロボラート(1-)-κN2,κN2’]ビス[トリス(3,5-ジメチル-1H-ピラゾラト-κN1)ハイドロボラート(1-)-κN2,κN2’,N2’’]ジセリウム(III)(略称:[Ce(bmpz)(bmpz)O])と、上記構造式(viii)で表されるN,N’-ビス(3,5-ジ-トリメチルシリル)-N,N’-ビス[3,5-ビス(3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)フェニル]ピレン-1,6-ジアミン(略称:1,6mmtBuTMSDPhAPrn-02)とを、重量比で1:0.1:0.01(=PCCP:[Ce(bmpz)(bmpz)O]:1,6mmtBuTMSDPhAPrn-02)となるように35nm共蒸着して発光層113を形成した。
【0558】
こののち、上記構造式(v)で表される3,5-ビス[3-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]ピリジン(略称:35DCzPPy)を10nmとなるように蒸着し、続いて上記構造式(vi)で表される1,3,5-トリ[(3-ピリジル)-フェニル-3-イル]ベンゼン(略称:TmPyPB)を15nmとなるように蒸着して、電子輸送層114を形成した。
【0559】
続いて、フッ化リチウム(LiF)を1nmとなるように蒸着して電子注入層115を形成し、アルミニウム(Al)を200nm蒸着し第2の電極102を形成した。
【0560】
続いて窒素雰囲気のグローブボックス内において、発光デバイスが大気に曝されないようにガラス基板により封止する作業(UV硬化性のシール材を素子の周囲への塗布、発光デバイスには照射しないようにシール材のみにUVを照射する処理、および大気圧下で80℃にて1時間熱処理)を行い、発光デバイス6を形成した。
【0561】
(発光デバイス7の作製方法)
発光デバイス7は、発光デバイス6における1,6mmtBuTMSDPhAPrn-02を上記構造式(ix)で表される2,12-ジ(tert-ブチル)-5,9-ジ(4-tert-ブチルフェニル)-N,N-ジフェニル-5H,9H-[1,4]ベンズアザボリノ[2,3,4-kl]フェナザボリン-7-アミン(略称:DPhA-tBu4DABNA)に変えた他は発光デバイス6と同様に作製した。なお、発光デバイス7における第2の正孔輸送層は、実施の形態1および実施の形態2に記載の第1の層160に相当する。
【0562】
(発光デバイス8の作製方法)
発光デバイス8は、発光デバイス6における発光層を、1,6mmtBuTMSDPhAPrn-02を用いずに作製した他は発光デバイス6と同様に作製した。なお、発光デバイス8における第2の正孔輸送層は、実施の形態1および実施の形態2に記載の第1の層160に相当する。
【0563】
発光デバイス6乃至発光デバイス8のデバイス構造を以下に示す。
【0564】
【表11】
【0565】
発光デバイス6乃至発光デバイス8の輝度-電流密度特性を図41に、電流効率-輝度特性を図42に、を輝度-電圧特性図43に、電流密度-電圧特性を図44に、ブルーインデックス-輝度特性を図45に、外部量子効率-輝度特性を図46に、電界発光スペクトルを図47に示した。また、1000cd/cm付近における電圧、電流、電流密度、CIE色度、電流効率、外部量子効率、及びブルーインデックスの値を以下に示した。なお、輝度、CIE色度、及び電界発光スペクトルの測定には分光放射計(トプコン社製、SR-UL1R)を用い、常温で測定した。また、外部量子効率は、分光放射計を用いて測定した輝度と電界発光スペクトルを用い、配光特性が等方性(ランバーシアン型)であると仮定し算出した。
【0566】
【表12】
【0567】
図41乃至図47より、発光デバイス6乃至発光デバイス8はいずれも良好な特性を有する発光デバイスであることがわかった。
【0568】
ここで、各発光デバイスの発光物質の吸収スペクトル、フォトルミネッセンス(PL)スペクトル(室温)、ホスト材料並びに第2の正孔輸送層のPLスペクトル(室温および10K)を示した図を図48(発光デバイス6)、図49(発光デバイス7)、および図38(発光デバイス8)に示した。なお、これらスペクトルの測定は、1,6mmtBuTMSDPhAPrn-02、及びDPhA-tBu4DABNAはトルエン溶液で、それ以外は全て薄膜状態(蒸着膜、50nm)で行い、吸収スペクトルの測定には溶液は紫外可視分光光度計V-550DS((株)日本分光製)、薄膜は紫外可視分光光度計U-4100((株)日立ハイテクノロジーズ製)、蛍光スペクトルの測定には蛍光光度計FP-8600DS((株)日本分光製)、燐光スペクトルの測定には、顕微PL装置 LabRAM HR-PL((株)堀場製作所)を用いた。
【0569】
図48(A)および(B)より、発光デバイス6において、エネルギードナーである[Ce(bmpz)(bmpz)O]の室温における発光スペクトル(蛍光スペクトル)の短波長側の発光端(431nm)は、ホスト材料および第2の正孔輸送層を構成する材料であるPCCPの10Kでの発光スペクトルにおける燐光スペクトルの短波長側の発光端(456nm)より短波長に位置し、室温での発光スペクトル(蛍光スペクトル)の短波長側の発光端(378nm)より長波長に位置している。また、発光物質である1,6mmtBuTMSDPhAPrn-02の室温における発光スペクトル(蛍光スペクトル)の短波長側の発光端は443nmであり、[Ce(bmpz)(bmpz)O]の室温における発光スペクトル(蛍光スペクトル)の短波長側の発光端(431nm)よりも長波長に位置することがわかった。
【0570】
もしくは、図48(A)および(B)より、発光デバイス6においては、エネルギードナーである[Ce(bmpz)(bmpz)O]の吸収スペクトルにおける最も長波長に位置する吸収端(432nm)が、ホスト材料および第2の正孔輸送層を構成する材料であるPCCPの10Kでの発光スペクトルにおける燐光スペクトルの短波長側の発光端(456nm)より短波長に位置し、PCCPの吸収スペクトルにおける最も長波長に位置する吸収端(370nm)より長波長に位置していることがわかった。また、発光物質である1,6mmtBuTMSDPhAPrn-02の吸収スペクトルにおける最も長波長に位置する吸収端は463nmであり、[Ce(bmpz)(bmpz)O]の吸収スペクトルにおける最も長波長に位置する吸収端(432nm)よりも長波長に位置することがわかった。
【0571】
また、図48(B)より、1,6mmtBuTMSDPhAPrn-02の吸収スペクトルにおける最も長波長に位置する吸収端は463nmであり、[Ce(bmpz)(bmpz)O]の室温におけるPLスペクトル(蛍光スペクトル)の短波長側の発光端は431nmであるため、1,6mmtBuTMSDPhAPrn-02の吸収が、[Ce(bmpz)(bmpz)O]の発光と重なっており、エネルギードナーである[Ce(bmpz)(bmpz)O]から、発光物質である1,6mmtBuTMSDPhAPrn-02へ効率的に励起エネルギーを移動させることが可能であることがわかった。図47より、発光デバイス6の発光スペクトルは、[Ce(bmpz)(bmpz)O]を発光物質としたデバイスである発光デバイス8と大きく形状が異なっており、発光デバイス6は、1,6mmtBuTMSDPhAPrn-02が発光していることがわかる。これにより、発光デバイス6は、半値幅の狭い、良好な色純度の青色発光を呈する発光デバイスとすることができた。
【0572】
なお、[Ce(bmpz)(bmpz)O]の発光スペクトルがブロードであることから、1,6mmtBuTMSDPhAPrn-02の吸収との重なりが大きく、[Ce(bmpz)(bmpz)O]から1,6mmtBuTMSDPhAPrn-02へエネルギー移動が効率よく可能である。さらに、エネルギードナーである[Ce(bmpz)(bmpz)O]のPLスペクトルにおけるピーク波長(481nm)が、発光物質のピーク波長(464nm)よりも長波長に位置していることから、発光デバイス6は駆動電圧が低く、信頼性の良い発光デバイスとすることができる。
【0573】
表13に、上で求めた蛍光スペクトルの発光端の波長、吸収スペクトルの吸収端の波長および燐光スペクトルの発光端の波長をまとめた。また、これらの波長をエネルギーに換算した値も同時に示した。
【0574】
【表13】
【0575】
なお、蛍光スペクトルの短波長側の発光端のエネルギー、または吸収スペクトルの最も長波長に位置する吸収端のエネルギーは化合物のD準位またはS準位のエネルギーとみなすことができる。また、燐光スペクトルの短波長側のエネルギーは化合物のT準位のエネルギーとみなすことができる。
【0576】
すなわち、表13より、発光デバイス6は、エネルギードナーである[Ce(bmpz)(bmpz)O]のD準位が、ホスト材料および電子ブロック材料両方のS準位よりも低く、T準位よりも高い発光デバイスであると言うことができる。また、発光物質である1,6mmtBuTMSDPhAPrn-02の吸収が、[Ce(bmpz)(bmpz)O]の発光と重なっており、エネルギードナーから発光物質へのエネルギー移動が効率的に起こる発光デバイスであることがわかった。なお、エネルギードナーが二重項励起状態から発光する物質であることから、エネルギードナーから発光物質へのエネルギー移動では、発光物質の一重項励起状態のみ生成し、さらに、二重項励起状態から発光する物質は、電流励起されると二重項励起状態が100%生成することから、発光デバイス6は発光効率の高い発光デバイスとすることが可能である。図46からも、発光デバイス6の外部量子効率の最大値は15%を超えており、発光効率の高い発光デバイスであることがわかった。
【0577】
なお、蛍光スペクトルの発光端で見積もったS準位と、吸収スペクトルの吸収端で見積もったS準位では多少その値が異なるが、発光物質のD準位に対する大小関係が変化するほど大きな違いは生じないことから、どちらの値を判断に用いても構わない。なお、D準位とS準位の比較を行う場合は、同じ方法で見積もった値を比較することが好ましい。
【0578】
発光デバイス7では、図49(A)および(B)より、エネルギードナーである[Ce(bmpz)(bmpz)O]の室温における発光スペクトル(蛍光スペクトル)の短波長側の発光端(431nm)は、ホスト材料および第2の正孔輸送層を構成する材料であるPCCPの10Kでの発光スペクトルにおける燐光スペクトルの短波長側の発光端(456nm)より短波長に位置し、室温での発光スペクトル(蛍光スペクトル)の短波長側の発光端(378nm)より長波長に位置している。また、発光物質であるDPhA-tBu4DABNAの室温における発光スペクトル(蛍光スペクトル)の短波長側の発光端は436nmであり、[Ce(bmpz)(bmpz)O]の室温における発光スペクトル(蛍光スペクトル)の短波長側の発光端(431nm)よりも長波長に位置することがわかった。
【0579】
もしくは、発光デバイス7においては、エネルギードナーある[Ce(bmpz)(bmpz)O]の吸収スペクトルにおける最も長波長に位置する吸収端(432nm)が、ホスト材料および第2の正孔輸送層を構成する材料であるPCCPの10Kでの発光スペクトルにおける燐光スペクトルの短波長側の発光端(456nm)より短波長に位置し、吸収スペクトルにおける最も長波長に位置する吸収端(370nm)より長波長に位置している。また、発光物質であるDPhA-tBu4DABNAの吸収スペクトルにおける最も長波長に位置する吸収端は452nmであり、[Ce(bmpz)(bmpz)O]の吸収スペクトルにおける最も長波長に位置する吸収端(432nm)よりも長波長に位置することがわかった。
【0580】
また、図49(B)より、DPhA-tBu4DABNAの吸収スペクトルにおける最も長波長に位置する吸収端は452nmであり、[Ce(bmpz)(bmpz)O]の室温におけるPLスペクトル(蛍光スペクトル)の短波長側の発光端は431nmであるため、DPhA-tBu4DABNAの吸収が、[Ce(bmpz)(bmpz)O]の発光と重なっており、エネルギードナーである[Ce(bmpz)(bmpz)O]から、発光物質であるDPhA-tBu4DABNAへ効率的に励起エネルギーを移動させることが可能であることがわかった。図47より、発光デバイス6の発光スペクトルは、[Ce(bmpz)(bmpz)O]を発光物質としたデバイスである発光デバイス8と大きく形状が異なっており、発光デバイス7は、DPhA-tBu4DABNAが発光していることがわかる。これにより、発光デバイス7は、半値幅の狭い、非常に良好な色純度の青色発光を呈する発光デバイスとすることができた。
【0581】
なお、[Ce(bmpz)(bmpz)O]の発光スペクトルがブロードであることから、DPhA-tBu4DABNAの吸収との重なりが大きく、[Ce(bmpz)(bmpz)O]からDPhA-tBu4DABNAへエネルギー移動が効率よく可能である。さらに、エネルギードナーである[Ce(bmpz)(bmpz)O]のPLスペクトルにおけるピーク波長(481nm)が、発光物質のピーク波長(451nm)よりも長波長に位置していることから、発光デバイス7は駆動電圧が低く、信頼性の良い発光デバイスとすることができる。
【0582】
表14に、上で求めた蛍光スペクトルの発光端の波長、吸収スペクトルの吸収端の波長および燐光スペクトルの発光端の波長をまとめた。また、これらの波長をエネルギーに換算した値も同時に示した。
【0583】
【表14】
【0584】
すなわち、表14より、発光デバイス7は、エネルギードナーである[Ce(bmpz)(bmpz)O]のD準位が、ホスト材料および電子ブロック材料両方のS準位よりも低く、T準位よりも高い発光デバイスであると言うことができる。また、発光物質であるDPhA-tBu4DABNAの吸収が、[Ce(bmpz)(bmpz)O]の発光と重なっており、エネルギードナーから発光物質へのエネルギー移動が効率的に起こる発光デバイスであることがわかった。なお、エネルギードナーが二重項励起状態から発光する物質であることから、エネルギードナーから発光物質へのエネルギー移動では、発光物質の一重項励起状態のみ生成し、さらに、二重項励起状態から発光する物質は、電流励起されると二重項励起状態が100%生成することから、発光デバイス7は発光効率の高い発光デバイスとすることが可能である。図46からも、発光デバイス7の外部量子効率の最大値は20%を超える、発光効率の高い発光デバイスであることがわかった。また、発光デバイス7は発光デバイス8より高いブルーインデックスを示している。これは、二重項励起状態を形成するエネルギードナーと発光スペクトルの半値幅が狭い蛍光発光物質を有することで、高い外部量子効率かつ色度yが小さく色純度の高い青色発光を呈することができるためである。そのため、発光デバイス7は、ディスプレイの青色画素に好適である。
【0585】
発光デバイス8は、発光層の膜厚以外は、実施例2における発光デバイス3と同じ構成を有する発光デバイスである。すなわち、図38より、発光物質である[Ce(bmpz)(bmpz)O]の室温における発光スペクトル(蛍光スペクトル)の短波長側の発光端(431nm)は、ホスト材料および第2の正孔輸送層を構成する材料であるPCCPの10Kでの発光スペクトルにおける燐光スペクトルの短波長側の発光端(456nm)より短波長に位置し、室温での発光スペクトル(蛍光スペクトル)の短波長側の発光端(378nm)より長波長に位置している。
【0586】
もしくは、発光デバイス8は、図38より、発光物質である[Ce(bmpz)(bmpz)O]の吸収スペクトルにおける最も長波長に位置する吸収端(432nm)が、ホスト材料および第2の正孔輸送層を構成する材料であるPCCPの10Kでの発光スペクトルにおける燐光スペクトルの短波長側の発光端(456nm)より短波長に位置し、吸収スペクトルにおける最も長波長に位置する吸収端(370nm)より長波長に位置している。
【0587】
表15に、上で求めた蛍光スペクトルの発光端の波長、吸収スペクトルの吸収端の波長および燐光スペクトルの発光端の波長をまとめた。また、これらの波長をエネルギーに換算した値も同時に示した。
【0588】
【表15】
【0589】
すなわち、表15より、発光デバイス8は、発光物質のD準位が、ホスト材料および電子ブロック材料両方のS準位よりも低く、T準位よりも高い発光デバイスであるということができる。
【0590】
このように、本発明の一態様の発光デバイスである発光デバイス6乃至発光デバイス8は、いずれも駆動電圧が低く、ブルーインデックスが良好な発光デバイスであることがわかった。加えて、発光物質のD準位よりも、周辺材料(ホスト材料および第2の正孔輸送層を構成する材料)のS準位が高く、且つT準位が低い構成を有することから、励起エネルギーの高すぎない周辺材料を使用することができているため、信頼性の良好な発光デバイスを提供することができる。また、特に、エネルギードナーとして、[Ce(bmpz)(bmpz)O]を用い、蛍光発光物質を発光させている発光デバイス6および発光デバイス7は、良好な効率を保ちつつ、半値幅が狭く、発光ピーク波長がより短波長に位置する、色純度の良好な青色発光を呈する発光デバイスとすることができた。
【符号の説明】
【0591】
100A 表示装置
100B 表示装置
100C 表示装置
100D 表示装置
100E 表示装置
100 表示装置
101 第1の電極
102 第2の電極
103B 有機化合物層
103Bf EL膜
103G 有機化合物層
103Gf EL膜
103R 有機化合物層
103Rf EL膜
103 有機化合物層
104 共通層
110B 副画素
110G 副画素
110R 副画素
110 副画素
111 正孔注入層
112B 導電層
112R 導電層
112 正孔輸送層
113 発光層
114 電子輸送層
115 電子注入層
116 電荷発生層
117 P型層
118 電子リレー層
119 電子注入バッファ層
120 基板
122 樹脂層
125f 無機絶縁膜
125 無機絶縁層
126B 導電層
126R 導電層
127a 絶縁層
127f 絶縁膜
127 絶縁層
128 層
129B 導電層
129R 導電層
130B 発光デバイス
130G 発光デバイス
130R 発光デバイス
130 発光デバイス
131 保護層
132B 着色層
132G 着色層
132R 着色層
140 接続部
141 領域
142 接着層
151B 導電層
151C 導電層
151f 導電膜
151G 導電層
151R 導電層
151 導電層
152B 導電層
152C 導電層
152f 導電膜
152G 導電層
152R 導電層
152 導電層
153 絶縁層
155 共通電極
156B 絶縁層
156C 絶縁層
156f 絶縁膜
156G 絶縁層
156R 絶縁層
156 絶縁層
157 遮光層
158B 犠牲層
158Bf 犠牲膜
158G 犠牲層
158Gf 犠牲膜
158R 犠牲層
158Rf 犠牲膜
159B マスク層
159Bf マスク膜
159G マスク層
159Gf マスク膜
159R マスク層
159Rf マスク膜
160 第1の層
166 導電層
171 絶縁層
172 導電層
173 絶縁層
174 絶縁層
175 絶縁層
176 プラグ
177 画素部
178 画素
179 導電層
190B レジストマスク
190G レジストマスク
190R レジストマスク
191 レジストマスク
201 トランジスタ
204 接続部
205 トランジスタ
211 絶縁層
213 絶縁層
214 絶縁層
215 絶縁層
221 導電層
222a 導電層
222b 導電層
223 導電層
224B 導電層
224C 導電層
224G 導電層
224R 導電層
231 半導体層
240 容量
241 導電層
242 接続層
243 絶縁層
245 導電層
254 絶縁層
255 絶縁層
256 プラグ
261 絶縁層
271 プラグ
280 表示モジュール
281 表示部
282 回路部
283a 画素回路
283 画素回路部
284a 画素
284 画素部
285 端子部
286 配線部
290 FPC
291 基板
292 基板
301 基板
310 トランジスタ
311 導電層
312 低抵抗領域
313 絶縁層
314 絶縁層
315 素子分離層
317 遮光層
351 基板
352 基板
353 FPC
354 IC
355 配線
356 回路
501 第1の電極
502 第2の電極
511 第1の発光ユニット
512 第2の発光ユニット
513 電荷発生層
601 ソース線駆動回路, 駆動回路部
602 画素部
603 ゲート線駆動回路
604 封止基板
605 シール材
607 空間
608 引き回し配線
610 素子基板
611 スイッチング用FET
612 電流制御用FET
613 第1の電極
614 絶縁物
616 有機化合物層
617 第2の電極
618 発光デバイス
623 FET
700A 電子機器
700B 電子機器
721 筐体
723 装着部
727 イヤフォン部
750 イヤフォン
751 表示パネル
753 光学部材
756 表示領域
757 フレーム
758 鼻パッド
800A 電子機器
800B 電子機器
820 表示部
821 筐体
822 通信部
823 装着部
824 制御部
825 撮像部
827 イヤフォン部
832 レンズ
6500 電子機器
6501 筐体
6502 表示部
6503 電源ボタン
6504 ボタン
6505 スピーカ
6506 マイク
6507 カメラ
6508 光源
6510 保護部材
6511 表示パネル
6512 光学部材
6513 タッチセンサパネル
6515 FPC
6516 IC
6517 プリント基板
6518 バッテリ
7000 表示部
7100 テレビジョン装置
7151 リモコン操作機
7171 筐体
7173 スタンド
7200 ノート型パーソナルコンピュータ
7211 筐体
7212 キーボード
7213 ポインティングデバイス
7214 外部接続ポート
7300 デジタルサイネージ
7301 筐体
7303 スピーカ
7311 情報端末機
7400 デジタルサイネージ
7401 柱
7411 情報端末機
9000 筐体
9001 表示部
9002 カメラ
9003 スピーカ
9005 操作キー
9006 接続端子
9007 センサ
9008 マイクロフォン
9050 アイコン
9051 情報
9052 情報
9053 情報
9054 情報
9055 ヒンジ
9171 携帯情報端末
9172 携帯情報端末
9173 タブレット端末
9200 携帯情報端末
9201 携帯情報端末
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38
図39
図40
図41
図42
図43
図44
図45
図46
図47
図48
図49