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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110953
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】金属酸化合物含有液
(51)【国際特許分類】
   C01G 33/00 20060101AFI20240808BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20240808BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20240808BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20240808BHJP
【FI】
C01G33/00 A
C09D5/02
C09D201/00
C09D7/61
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024015041
(22)【出願日】2024-02-02
(31)【優先権主張番号】P 2023015420
(32)【優先日】2023-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006183
【氏名又は名称】三井金属鉱業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094536
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 隆二
(74)【代理人】
【識別番号】100129805
【弁理士】
【氏名又は名称】上野 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100189315
【弁理士】
【氏名又は名称】杉原 誉胤
(72)【発明者】
【氏名】元野 隆二
【テーマコード(参考)】
4G048
4J038
【Fターム(参考)】
4G048AA02
4G048AA03
4G048AB02
4G048AD04
4G048AD10
4G048AE05
4G048AE08
4J038CG011
4J038HA216
4J038JB01
4J038MA08
4J038MA10
4J038NA12
4J038PC08
(57)【要約】
【課題】多様な基材、特にプラスチックフィルム基材に対する成膜性、又は密着性に優れた金属酸化合物含有液を提供する。
【解決手段】本発明の金属酸化合物含有液は、Nb、Ta、Ti、Mo、W、Zr、Hf、Si、希土類元素からなる群より選ばれる1種以上の金属酸化合物と、樹脂と、溶媒と、を有し、動的光散乱法を用いた粒子径分布測定による粒子径D50が1000nm以下である。また、本発明の金属酸化合物含有液は、Nb、Ta、Ti、Mo、W、Zr、Hf、Si、希土類元素からなる群より選ばれる1種以上の金属酸化合物と、樹脂と、溶媒と、を有し、波長550nm~700nm領域における透過率の最大値が70%T以上である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Nb、Ta、Ti、Mo、W、Zr、Hf、Si、希土類元素からなる群より選ばれる1種以上の金属酸化合物と、
樹脂と、
溶媒と、
を有し、
動的光散乱法を用いた粒子径分布測定による粒子径D50が1000nm以下であることを特徴とする金属酸化合物含有液。
【請求項2】
Nb、Ta、Ti、Mo、W、Zr、Hf、Si、希土類元素からなる群より選ばれる1種以上の金属酸化合物と、
樹脂と、
溶媒と、
を有し、
波長550nm~700nm領域における透過率の最大値が70%T以上であることを特徴とする金属酸化合物含有液。
【請求項3】
前記樹脂が、アニオン性水溶性樹脂、およびまたは、ノニオン性水溶性樹脂であることを特徴とする請求項1、又は2に記載の金属酸化合物含有液。
【請求項4】
前記樹脂が、アクリルポリマー、ウレタンポリマー、スチレンポリマー、オレフィンポリマー、アミドポリマー、シロキサンポリマー、エポキシポリマー、塩化ビニルポリマー、酢酸ビニルポリマーからなる群より選ばれる水溶性ホモポリマー、およびまたは、これら2種以上のポリマーからなる水溶性コポリマーを1種以上含むことを特徴とする請求項3に記載の金属酸化合物含有液。
【請求項5】
前記金属酸化合物含有液中の金属酸含有量がメタル換算で0.1質量%以上50質量%以下であることを特徴とする請求項1、又は2に記載の金属酸化合物含有液。
【請求項6】
前記金属酸化合物含有液中の樹脂含有量が0.1質量%以上60質量%以下であることを特徴とする請求項1、又は2に記載の金属酸化合物含有液。
【請求項7】
前記溶媒は水であることを特徴とする請求項1、又は2に記載の金属酸化合物含有液。
【請求項8】
前記金属酸化合物含有液のpHが7超であることを特徴とする請求項1、又は2に記載の金属酸化合物含有液。
【請求項9】
アンモニアをさらに含有することを特徴とする請求項1、又は2に記載の金属酸化合物含有液。
【請求項10】
有機窒素化合物、およびまたは、過酸化水素をさらに含有することを特徴とする請求項1、又は2に記載の金属酸化合物含有液。
【請求項11】
請求項1、又は2に記載の金属酸化合物含有液中の金属酸化合物と樹脂とを含有することを特徴とする金属酸化合物含有膜。
【請求項12】
請求項1、又は2に記載の金属酸化合物含有液を含有することを特徴とするコーティング剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属酸化合物含有液に関する。
【背景技術】
【0002】
ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、ケイ素(Si)、希土類元素等のレアメタルや半金属元素を含有するコーティング剤は、基材の表面に塗布し、薄膜を形成することにより、用途に応じた機能を付与することができる。例えば、酸化ニオブは、高い屈折率及び誘電率を有していることから、半導体材料、表面保護剤、反射防止剤、屈折率調整剤、触媒等として、用いられている。各種部品の表面に酸化ニオブを含有する薄膜を形成するには、特許文献1に開示されたような、ニオブ酸化合物からなる微粒子が分散媒に分散したニオブ酸水溶液がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開2022/138539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されたようなニオブ酸水溶液は、部品の表面の素材によって、基材の表面に均一な薄膜を形成できたとしても、基材との密着性が不十分となり、剥離しやすいものが見られた。特に、基材がPET等のプラスチックフィルムに対する成膜性や、密着性に課題があった。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みて、多様な基材、特にプラスチックフィルム基材に対する成膜性、又は密着性に優れた金属酸化合物含有液を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためになされた本発明の金属酸化合物含有液は、Nb、Ta、Ti、Mo、W、Zr、Hf、Si、希土類元素からなる群より選ばれる1種以上の金属酸化合物と、樹脂と、溶媒と、を有し、動的光散乱法を用いた粒子径分布測定による粒子径D50が1000nm以下であることを特徴とする。
本発明の金属酸化合物含有液は、Nb、Ta、Ti、Mo、W、Zr、Hf、Si、希土類元素からなる群より選ばれる1種以上の金属酸化合物と、樹脂と、溶媒と、を有し、動的光散乱法を用いた粒子径分布測定による粒子径D50が1000nm以下であることにより、多様な基材、特にプラスチックフィルム基材に対する成膜性、又は密着性に優れる。
【0007】
本発明の金属酸化合物含有液中の金属酸化合物は、Nb、Ta、Ti、Mo、W、Zr、Hf、Si、希土類元素からなる群より選ばれる1種以上の金属原子、又は半金属原子と酸素原子とが含有液中で多段縮合化したポリ金属酸多核錯体イオンとして溶液中に存在するものと推測する。さらに、当該金属酸化合物は、これらの金属酸化物と、リチウム等のアルカリ金属とイオン結合した状態のイオンとして当該含有液中に存在するものも含む。なお、本明細書において、Siの酸化合物は、特段の説明がない限り、金属酸化合物として説明する。
【0008】
また、本発明の金属酸化合物含有液は、樹脂と溶媒とを有する。樹脂が、金属酸化合物と均一に相溶し、基材に対して、付着する働きをすることにより、多様な基材、例えばプラスチックフィルム基材に対する成膜性、密着性が向上する。当該金属酸化合物含有液に含まれる樹脂として、ポリオレフィン系化合物、ポリビニル系化合物等が挙げられる。なお、本発明の金属酸化合物含有液に含まれる樹脂については、さらに後述する。
【0009】
さらに、動的光散乱法を用いた粒子径分布測定において、本発明の金属酸化合物含有液中の粒子の粒子径D50が1000nm以下であると、基材への成膜性が良好である観点で好ましい。また、当該金属酸化合物含有液中の粒子の粒子径(D50)がより小径であると、経時変化が少ないため安定し、また成膜時における被覆されていない箇所のない良好な塗膜形成や、十分な被膜重量を確保できる観点から好ましい。当該金属酸化合物含有液中の粒子の粒子径(D50)が、900nm以下であるとより好ましく、800nm以下であるとさらに好ましく、700nm以下であると特に好ましく、また600nm以下であるとより好ましく、また500nm以下であるとさらに好ましく、また400nm以下であると特に好ましく、さらに300nm以下であるとより好ましく、さらに200nm以下であるとさらに好ましく、さらに100nm以下であると特に好ましく、加えて80nm以下であるとより好ましく、加えて50nm以下であるとさらに好ましく、加えて30nm以下であると特に好ましく、さらに加えて20nm以下であるとより好ましく、さらに加えて10nm以下であるとさらに好ましく、さらに加えて5nm以下であると特に好ましく、3nm以下であると最も好ましい。このように、本発明の金属酸化合物含有液中の粒子の粒子径(D50)が、動的光散乱法を用いて測定した結果、粒子の粒子径(D50)が1000nm以下である状態の液を、本発明の「金属酸化合物含有液」とする。
【0010】
ここで、動的光散乱法とは、懸濁溶液などの溶液にレーザ光などの光を照射することにより、ブラウン運動する粒子群からの光散乱強度を測定し、その強度の時間的変動から粒子径と分布を求める方法である。具体的には、粒度分布の評価方法は、ゼータ電位・粒径・分子量測定システム(大塚電子株式会社製:ELSZ-2000ZS)を用いて、JIS Z 8828:2019「粒子径解析-動的光散乱法」に準拠して実施する。なお、測定直前に測定対象である溶液中の埃等を除去するため、2μm孔径のフィルタで当該溶液を濾過し、超音波洗浄機(アズワン社製:VS-100III)にて28kHz、3分間の超音波処理を実施する。なお、粒子径(D50)は、積算分布曲線の50%積算値を示す粒子径であるメジアン径(D50)をいう。また、本明細書において、特段の説明がない限り、「粒子径(D50)」は、生成された直後に液温25℃に調整した本発明の金属酸化合物含有液中の粒子の粒子径(D50)を示す「初期粒子径D50」、及び室温25℃に設定した恒温器内で、本発明の金属酸化合物含有液が生成された日から20日間静置した後の金属酸化合物含有液中の粒子の粒子径(D50)を示す「経時粒子径D50」の両方を含むものである。
【0011】
なお、本発明における「含有液」とは、溶質が溶媒中に単分子の状態で分散又は混合しているものに限られず、複数の分子が分子間の相互作用により引き合った集合体、例えば(1)多量体分子、(2)溶媒和分子、(3)分子クラスター、(4)コロイド粒子などが溶媒に分散しているものも含まれる。
【0012】
また、本発明の金属酸化合物含有液は、Nb、Ta、Ti、Mo、W、Zr、Hf、Si、希土類元素からなる群より選ばれる1種以上の金属酸化合物と、樹脂と、溶媒と、を有し、波長550nm~700nm領域における透過率の最大値が70%T以上であることを特徴とする。
本発明の金属酸化合物含有液は、Nb、Ta、Ti、Mo、W、Zr、Hf、Si、希土類元素からなる群より選ばれる1種以上の金属酸化合物と、樹脂と、溶媒と、を有し、波長550nm~700nm領域における透過率の最大値が70%T以上であることにより、多様な基材、特にプラスチックフィルム基材に対する成膜性、又は密着性に優れる。
【0013】
本発明の金属酸化合物含有液中の金属酸化合物、樹脂、及び溶媒は、上述した通りであるため、説明は省略する。
【0014】
さらに、本発明の金属酸化合物含有液は、波長550nm~700nm領域における透過率の最大値が70%T以上であると、分散度が高く液中成分の均一性が優れる点で好ましい。波長550nm~700nm領域における透過率の最大値が、75%T以上であるとより好ましく、80%T以上であるとさらに好ましく、85%T以上であると特に好ましく、また90%T以上であるとより好ましく、また95%T以上であるとさらに好ましく、また98%T以上であると特に好ましく、さらに99%T以上であるとより好ましく、100%Tであると最も好ましい。なお、透過率の測定に用いた分光光度計の測定誤差等により測定値が100%Tを超える場合は100%Tとみなす。
【0015】
また、本発明の金属酸化合物含有液は、波長550nm、600nm、650nm、700nmにおける透過率の少なくとも1つ以上が70%T以上であると好ましく、75%T以上であるとより好ましく、80%T以上であるとさらに好ましく、85%T以上であると特に好まし、また90%T以上であるとより好ましく、また95%T以上であるとさらに好ましく、また98%T以上であると特に好ましく、さらに99%T以上であるとより好ましく、100%Tであると最も好ましい。なお、透過率の測定に用いた分光光度計の測定誤差等により測定値が100%Tを超える場合は100%Tとみなす。
【0016】
さらに、本発明の金属酸化合物含有液は、波長550nm~700nm領域における透過率の最小値が70%T以上であると好ましく、75%T以上であるとより好ましく、80%T以上であるとさらに好ましく、85%T以上であると特に好ましく、また90%T以上であるとより好ましく、また95%T以上であるとさらに好ましく、また98%T以上であると特に好ましく、さらに99%T以上であるとより好ましく、100%Tであると最も好ましい。なお、透過率の測定に用いた分光光度計の測定誤差等により測定値が100%Tを超える場合は100%Tとみなす。
【0017】
このように、本発明の金属酸化合物含有液は、波長550nm~700nm領域における透過率の最大値が70%Tである状態の液を、本発明の「金属酸化合物含有液」とする。また、本明細書において、特段の説明がない限り、「透過率」は、生成された直後に液温25℃に調整した本発明の金属酸化合物含有液の透過率を示す「初期透過率」、及び室温25℃に設定した恒温器内で、本発明の金属酸化合物含有液が生成された日から1カ月静置した後の金属酸化合物含有液の透過率を示す「経時透過率」の両方を含むものである。
【0018】
ここで、波長550nm~700nm領域における透過率は、本発明の金属酸化合物含有液について、以下の透過率測定条件に従って、JIS K 0115、2004「吸光光度分析方法通則」に準拠し、分光光度計を用いて測定する。
【0019】
=透過率測定条件=
・測定装置:紫外可視近赤外分光光度計UH4150形(株式会社日立ハイテクサイエンス製)
・測定モード:波長スキャン
・データモード:%T(透過)
・測定波長範囲:200nm~2000nm
・スキャンスピード:600nm/min
・サンプリング間隔:2nm
【0020】
また、本発明の金属酸化合物含有液は、前記樹脂が、アニオン性水溶性樹脂、およびまたは、ノニオン性水溶性樹脂であることを特徴とする。
本発明の金属酸化合物含有液に含まれる樹脂が、アニオン性水溶性樹脂、およびまたは、ノニオン性水溶性樹脂であると、アニオン性水溶性樹脂、およびまたは、ノニオン性水溶性樹脂が、上述した金属酸化合物と均一に相溶し、基材に対して、付着する働きをすることにより、プラスチックフィルム基材に対する成膜性、及び密着性が向上する。
【0021】
ここで、カチオン性水溶性樹脂とは、ポリマー中に、pH=7の水中にて正の電荷を有し、例えばアミノ基、イミノ基、3級アミン基、4級アンモニウム基、ヒドラジノ基の何れかの官能基を有する樹脂である。また、アニオン性水溶性樹脂とは、ポリマー中に、pH=7の水中にて負の電荷を有し、例えばカルボキシル基、スルホン基、硫酸エステル基、リン酸エステル基の何れかの官能基を有する樹脂である。さらに、ノニオン性水溶性樹脂とは、上述したカチオン性水溶性樹脂、又はアニオン性水溶性樹脂に該当せず、例えばポリマー中に、ヒドロキシ基、エーテル基、アミド基の何れかの官能基を有する樹脂である。
【0022】
さらに、これら樹脂が、アクリルポリマー、ウレタンポリマー、スチレンポリマー、オレフィンポリマー、アミドポリマー、シロキサンポリマー、エポキシポリマー、塩化ビニルポリマー、酢酸ビニルポリマーからなる群より選ばれる水溶性ホモポリマー、およびまたは、これら2種以上のポリマーからなる水溶性コポリマーを1種以上含むものであるとよい。特に、アクリルポリマー、スチレンポリマー、及びオレフィンポリマーの水溶性ホモポリマー、およびまたは、これら2種以上のポリマーからなる水溶性コポリマーを1種以上含むものであると好ましい。
【0023】
また、本発明の金属酸化合物含有液は、前記金属酸化合物含有液中の金属酸含有量がメタル換算で0.1質量%以上50質量%以下であることを特徴とする
本発明の金属酸化合物含有液中の金属酸含有量がメタル換算で0.1質量%以上50質量%以下であると、本発明の金属酸化合物含有液の安定性が向上する点で好ましい。当該金属酸化合物含有液中の金属酸含有量が、メタル換算で、0.1質量%以上45質量%以下であるとより好ましく、0.15質量%以上40質量%以下であるとさらに好ましく、0.15質量%以上35質量%以下であると特に好ましく、さらに0.15質量%以上30質量%以下であるとより好ましく、さらに0.1質量%以上25質量%以下であるとさらに好ましく、さらに0.15質量%以上20質量%以下であると特に好ましく、0.15質量%以上15質量%以下であると最も好ましい。なお、本発明の金属酸化合物含有液中の金属酸含有量は、メタル換算ではなく、酸化物換算で表すこともでき、酸化物換算で表した当該金属酸含有量は、酸素相当分大きくなる。
【0024】
ここで、本発明の金属酸化合物含有液中の金属酸含有量は、当該含有液を必要に応じて希塩酸で適度に希釈し、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP発光分析(アジレント・テクノロジー社製:AG-5110))を用いて、JIS K0116:2014に準拠し、メタル換算のNb、Ta、Ti、Mo、W、Zr、Hf、Si、希土類元素からなる群より選ばれる1種以上の金属酸の総質量分率を測定して算出する。
【0025】
また、本発明の金属酸化合物含有液は、前記金属酸化合物含有液中の樹脂含有量が0.1質量%以上60質量%以下であることを特徴とする。
本発明の金属酸化合物含有液中の樹脂含有量が0.1質量%以上60質量%以下であると、微細な金属酸化合物が凝集するのを抑制することができる点で好ましい。当該樹脂含有量が0.15質量%以上40質量%以下であるとより好ましく、0.2質量%以上30質量%以下であるとさらに好ましく、0.25質量%以上20質量%以下であると特に好ましい。
【0026】
ここで、本発明の金属酸化合物含有液中の樹脂含有量は、例えば以下のように求めることができる。本発明の金属酸化合物含有液を大気雰囲気下で100℃~200℃にて乾燥させることによって、得られた乾燥物の固形分量を測定する。その後、当該乾燥物を大気雰囲気下で500℃~1000℃にて焼成し、当該乾燥物の樹脂成分を揮発させることによって、得られた焼成物の固形分量を測定する。そして、乾燥物の固形分量と焼成物の固形分量との差分を、本発明の金属酸化合物含有液中の樹脂含有量として算出することができる。その他、液体クロマトグラフィー(LC)や、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により算出することもできる。
【0027】
また、本発明の金属酸化合物含有液は、前記溶媒は水であることを特徴とする。
本発明の金属酸化合物含有液は、水への分散性が高く、水に対する溶解性が良好であるため、溶媒として水を用いることができる。また、水に対する溶解性を損なわない範囲で有機溶媒を用いることができ、水と有機溶媒との混合溶媒を用いることもできる。有機溶媒として、例えばアルコール系溶媒、ケトン系溶媒などが挙げられ、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、アセトン、メチルエチルケトン等から選ばれる1種以上を用いることもできる。
【0028】
また、本発明の金属酸化合物含有液は、前記金属酸化合物含有液のpHが7超であることを特徴とする。
本発明の金属酸化合物含有液のpHが7超であると、本発明の金属酸化合物含有液の安定性が向上する点で好ましい。また、本発明の金属酸化合物含有液のpHが7.5以上であるとより好ましく、8以上であるとさらに好ましく、8.5以上であると特に好ましい。一方、本発明の金属酸化合物含有液のpHが13以下であると好ましく、12.5以下であるとより好ましく、12以下であるとさらに好ましい。なお、本明細書において、特段の説明がない限り、「pH」は、生成された直後に液温25℃に調整した本発明の金属酸化合物含有液のpHである「初期pH」、及び室温25℃に設定した恒温器内で、本発明の金属酸化合物含有液が生成された日から1カ月静置した後の金属酸化合物含有液のpHである「経時pH」の両方を示す。
【0029】
ここで、本発明の金属酸化合物含有液のpHの測定は、本発明の金属酸化合物含有液にpHメータ(HORIBA製:ガラス電極式水素イオン濃度指示器 D-51)の電極(HORIBA製:スタンダード ToupH 電極 9615S-10D)を浸漬し、液温が25℃に安定したことを確認した後、実施する。
【0030】
また、本発明の金属酸化合物含有液は、アンモニアをさらに含有することを特徴とする。
本発明の金属酸化合物含有液は、当該金属酸化合物含有液に含まれる金属酸化合物が、その製造工程において、酸性の金属酸溶液をアンモニア水に添加する逆中和法を経て、生成されることから、アンモニウムイオンを含むアンモニアが陽イオンとして当該含有液中に存在すると考えられる。
【0031】
当該含有液中に存在するアンモニア濃度の測定方法は、当該含有液に水酸化ナトリウムを加えてアンモニアを蒸留分離し、イオンメータによりアンモニア濃度を定量する方法、ガス化した試料中のN分を熱伝導度計で定量する方法、ケルダール法、ガスクロマトグラフィー(GC)、イオンクロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー・質量分析(GC-MS)などが挙げられる。特に、イオンメータによる定量する方法が好ましい。
【0032】
本発明の金属酸化合物含有液に含まれるアンモニウムイオンを含むアンモニアのアンモニア濃度は、0.001質量%以上25質量%以下であると好ましく、0.003質量%以上15質量%以下であるとより好ましい。当該アンモニア濃度は、0.1質量%以上10質量%以下であってもよく、0.5質量%以上10質量%以下であってもよく、1質量%以上8質量%以下であってもよい。
【0033】
また、本発明の金属酸化合物含有液は、有機窒素化合物、およびまたは、過酸化水素をさらに含有することを特徴とする。
本発明の金属酸化合物含有液に含まれる金属酸化合物が、その製造方法において、有機窒素化合物、およびまたは、過酸化水素水が用いられていることから、本発明の金属酸化合物含有液が、有機窒素化合物、およびまたは、過酸化水素を含有してもよい。
【0034】
本発明の金属酸化合物含有液中の有機窒素化合物は、金属酸とイオン結合した状態のイオンとして当該含有液中に存在するものと推測する。
【0035】
ここで、有機窒素化合物としては、脂肪族アミン、芳香族アミン、アミノアルコール、アミノ酸、ポリアミン、4級アンモニウム、グアニジン化合物、アゾール化合物が挙げられる。
【0036】
脂肪族アミンとしては、例えば、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、メチルエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、ジメチルエチルアミン、n-プロピルアミン、ジn-プロピルアミン、トリn-プロピルアミン、iso-プロピルアミン、ジiso-プロピルアミン、トリiso-プロピルアミン、n-ブチルアミン、ジn-ブチルアミン、トリn-ブチルアミン、iso-ブチルアミン、ジiso-ブチルアミン、トリiso-ブチルアミンおよびtert-ブチルアミン、n-ペンタアミン、n-ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、ピペリジンなどが挙げられる。
【0037】
芳香族アミンとしては、例えば、アニリン、フェニレンジアミン、ジアミノトルエンなどが挙げられる。さらに、アミノアルコールとしては、例えば、メタノールアミン、エタノールアミン、プロパノールアミン、ブタノールアミン、ペンタノールアミン、ジメタノールアミン、ジエタノールアミン、トリメタノールアミン、メチルメタノールアミン、メチルエタノールアミン、メチルプロパノールアミン、メチルブタノールアミン、エチルメタノールアミン、エチルエタノールアミン、エチルプロパノールアミン、ジメチルメタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジメチルプロパノールアミン、メチルジメタノールアミン、メチルジエタノールアミン、ジエチルメタノールアミン、トリスヒドロキシメチルアミノメタン、ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノトリス(ヒドロキシメチル)メタンおよびアミノフェノールなどが挙げられる。また、アミノ酸としては、例えば、アラニン、アルギニン、アスパラギン酸、EDTAなどが挙げられる。さらに、ポリアミンとしては、例えば、ポリアミン、ポリエーテルアミンなどが挙げられる。
【0038】
4級アンモニウムとしては、例えば、アルキルイミダゾリウム、ピリジニウム、ピロリジウム、テトラアルキルアンモニウムなどが挙げられる。ここで、アルキルイミダゾリウムの具体例としては、1-メチル-3-メチルイミダゾリウム、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム、1-プロピル-3-メチルイミダゾリウム、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウム、1-メチル-2,3-ジメチルイミダゾリウム、1-エチル-2,3-ジメチルイミダゾリウム、1-プロピル-2,3-ジメチルイミダゾリウム、1-ブチル-2,3-ジメチルイミダゾリウムなどが挙げられる。また、ピリジニウム、ピロリジウムの具体例としては、N-ブチル-ピリジニウム、N-エチル-3-メチル-ピリジニウム、N-ブチル-3-メチル-ピリジニウム、N-ヘキシル-4-(ジメチルアミノ)-ピリジニウム、N-メチル-1-メチルピロリジニウム、N-ブチル-1-メチルピロリジニウムなどが挙げられる。さらに、テトラアルキルアンモニウムの具体例としては、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、エチル-ジメチル-プロピルアンモニウム、コリンが挙げられる。なお、上述したカチオンと塩を形成するアニオンとしては、OH、Cl、Br、I、BF 、HSO などが挙げられる。
【0039】
グアニジン化合物としては、グアニジン、ジフェニルグアニジン、ジトリルグアニジンなどが挙げられる。また、アゾール化合物としては、イミダゾール化合物、トリアゾール化合物などが挙げられる。ここで、イミダゾール化合物の具体例としては、イミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾールなどが挙げられる。また、トリアゾール化合物の具体例としては、1,2,4-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール-3-カルボン酸メチル、1,2,3-ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。
【0040】
ここで、有機窒素化合物は、脂肪族アミンであると、揮発性が高く、低毒性でもあるから好ましい。具体的には、炭素数1以上4以下の脂肪族アミンであるとより好ましく、炭素数1以上2以下の脂肪族アミンであると特に好ましい。例えば、メチルアミン、ジメチルアミンなどが挙げられる。
【0041】
また、有機窒素化合物は、4級アンモニウムであると、溶解性が高いだけでなく、高い結晶化抑制や、高いゾル化抑制を有する点で好ましい。例えば、テトラアルキルアンモニウム塩が好ましく、水酸化テトラアルキルアンモニウム塩がより好ましく、水酸化テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウムが特に好ましく、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)がまた特に好ましい。
【0042】
さらに、有機窒素化合物は、脂肪族アミン、芳香族アミン、アミノアルコール、アミノ酸、ポリアミン、4級アンモニウム、グアニジン化合物、アゾール化合物から選択された1種ではなく、2種以上を混合したものであってもよい。例えば、脂肪族アミンと4級アンモニウムとの2種を混合したものであれば、毒性が上がらないように添加量を抑えつつ、溶解度をあげることができる点で好ましい。
【0043】
具体的には、メチルアミン及び水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)、ジメチルアミン及び水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)、メチルアミン及びジメチルアミンのように2種の有機窒素化合物を混合したものや、メチルアミン、ジメチルアミン及び水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)のように3種の有機窒素化合物を混合したものが挙げられる。
【0044】
なお、本発明の金属酸化合物含有液中に存在する有機窒素化合物濃度の測定方法は、ガスクロマトグラフィー(GC)、液体クロマトグラフィー(LC)、質量分析(MS)、ガスクロマトグラフィー・質量分析(GC-MS)、液体クロマトグラフィー・質量分析(LC-MS)などが挙げられる。特に、液体クロマトグラフィー(LC)、液体クロマトグラフィー・質量分析(LC-MS)による測定が好ましい。
【0045】
上述した通り、本発明の金属酸化合物含有液に含まれる有機窒素化合物が、メチルアミン、ジメチルアミン、エチルアミン、トリメチルアミン、又はそれらの混合物である脂肪族アミン、または水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)、又は水酸化テトラエチルアンモニウム(TEAH)である4級アンモニウム化合物であると好ましい。
【0046】
本発明の金属酸化合物含有液中の過酸化水素の検出方法は、例えば標準添加法を用いて、過酸化水素の標準液との吸光度の相対強度を測定することにより、当該含有液中の過酸化水素の含有量を確認することができる。具体的には、既知濃度、例えば1質量%過酸化水素を含む標準液と、過酸化水素が無添加の標準液とにおけるそれぞれの紫外可視吸収スペクトルから、ペルオキソ錯体形成に伴う吸光度の変化が観測される波長領域を見出し、その波長領域における過酸化水素が無添加の標準液と過酸化水素濃度が不明な試料との吸光度の差が1%未満であれば、過酸化水素濃度が不明な試料に過酸化水素が実質的に含まれていないことを確認することができる。当該含有液中に過酸化水素が含まれている場合、過酸化水素は金属のポリ酸と反応し、ペルオキソ錯体を形成することから、上述したように過酸化水素が無添加の標準液の吸光度の差を確認することにより、当該含有液中に過酸化水素が含まれていないことを確認できる。また、上述した標準添加法以外にも、例えば市販の過酸化水素測定キットを用いて、当該含有液に過酸化水素と呈色反応する試薬を加え、その発色を測定する方法や、当該含有液に過酸化水素と蛍光反応する試薬を加え、その発光を測定することによって、当該含有液中の過酸化水素を定性分析及び定量分析を行ってもよい。
【0047】
また、本発明の金属酸化合物含有液は、さらに、高沸点溶媒を含有するものであってもよい。高沸点溶媒は、1気圧における沸点が180℃以上の溶媒であると好ましく、多価アルコール系溶媒、グリコール系溶媒等が挙げられる。
【0048】
ここで、多価アルコール系溶媒とは、グリセリン(沸点:290℃)、1,6-ヘキサンジオール(沸点:250℃)、1,7-ヘプタンジオール(沸点:259℃)などが挙げられる。また、グリコール系溶媒とは、エチレングリコール(沸点:197.3℃)、プロピレングリコール(沸点:188.2℃)、ジエチレングリコール(沸点:244.3℃)、トリエチレングリコール(沸点:287.4℃)、オリゴエチレングリコール(沸点:287℃~460℃)、ポリエチレングリコール(PEG)(沸点:460℃以上)、ポリエチレングリコール(PEG)-ポリプロピレングリコール(PPG)コポリマー(沸点:460℃以上)、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル(沸点:260℃)、ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル(沸点:260℃以上)、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(沸点:321℃以上)、その他アニオン性フッ素系界面活性剤(沸点:180℃以上)、両性フッ素系界面活性剤(沸点:180℃以上)、ノニオン性フッ素系界面活性剤(沸点:180℃以上)、アミンオキシド(沸点:180℃以上)などが挙げられる。特に好ましくは、グリセリンが挙げられる。上述した沸点は、1気圧における沸点である。
【0049】
なお、高沸点溶媒は、沸点が高い特性であることから、1気圧における沸点が過度に高い場合、沸騰の前に高沸点溶媒が分解してしまい、正確な沸点が測定できない場合がある。このような場合、減圧時の沸点を測定し、汎用的な沸点換算表を用いて1気圧における沸点を換算してもよい。
【0050】
さらに、本発明の金属酸化合物含有液は、その作用効果を阻害しない範囲で、Nb、Ta、Ti、Mo、W、Zr、Hf、Si、希土類元素からなる群より選ばれる1種以上の金属酸化合物に由来する成分や、樹脂、アンモニア、有機窒素化合物、及び過酸化水素に由来する成分以外の成分(「他成分」という。)を、不可避不純物として含まれることがある。
【0051】
なお、本発明の金属酸化合物含有液は、適宜用途に合わせて、分散剤、pH調整剤、着色剤、増粘剤、湿潤剤、バインダー樹脂等を添加してもよい。
【0052】
また、本発明の複合金属酸化合物含有液は、本発明の金属酸化合物含有液と、Li、Na、Ma、Al、K、Ca、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Sn、Sr、Baからなる群より選択される少なくとも1種の元素Aとを有するものを特徴とする。
本発明の複合金属酸化合物含有液は、本発明の金属酸化合物と元素Aとがイオン結合した状態のイオンとして当該複合金属酸化合物含有液中に存在するものと推測する。
【0053】
元素Aとして、Li、Na、Mg、Al、K、Ca、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Sn、Sr、Baなどの化合物を含有してもよい。ここで、化合物とは、例えば酸化物、金属酸アルカリ金属塩、金属酸アルカリ土類金属塩、塩化物、金属酸アルコキシド、ポリオキソメタレート等が挙げられる。また、本発明の複合金属酸化合物含有液における元素Aの含有量は、元素Aである各元素のメタル換算における総含有mol数をXとしたとき、Nb、Ta、Ti、Mo、W、Zr、Hf、Si及び希土類元素からなる群より選ばれる1種以上の金属酸化合物のメタル換算における総モル数(M)に対する元素Aである各元素のメタル換算における総モル数(X)のモル比X/Mは、0超~3.0が好ましく、0.0002~2.0であるとより好ましい。また、当該モル比X/Mは、0.001~1.0であってもよく、0.005~0.8であってもよく、0.01~0.5であってもよく、0.1~0.4であってもよく、0.2~0.3であってもよい。さらに、本発明の複合金属酸化合物含有液は、均一な含有液であることから、これらの化合物が懸濁状態であっても、均一性の向上、反応性(反応率)の向上が見込まれる。また、これらの化合物が本発明の複合金属酸化合物含有液に溶解し、均一な含有液となれば、最も反応性が良好な状態にすることができる。
【0054】
本発明の金属酸化合物含有膜は、上述した本発明の金属酸化合物含有液中の金属酸化合物と樹脂とを含有することを特徴とする。
本発明の金属酸化合物含有膜は、本発明の金属酸化合物含有液を基材の表面に塗布した後、乾燥、例えば真空乾燥などによって得られる乾燥膜と、得られた乾燥膜を焼成することにより得られる焼成膜とを包含する。また、本発明の金属酸化合物含有膜は、本発明の金属酸化合物含有を乾燥、例えば真空乾燥や、焼成することによって生じる、結晶構造等の物性の異なる金属酸化合物含有膜も包含し、アモルファス構造であってもよく、単結晶構造であってもよく、多結晶構造であってもよい。なお、本発明の金属酸化合物含有膜の製造方法は、後述する。
【0055】
また、本発明の複合金属酸化合物含有膜は、複合金属酸化合物含有液に含まれる複合金属酸化合物粒子を含有することを特徴とする。
本発明の複合金属酸化合物含有膜は、本発明の複合金属酸化合物含有液を基材の表面に塗布した後、乾燥、例えば真空乾燥などによって得られる乾燥膜と、得られた乾燥膜をさらに焼成することにより得られる焼成膜とを包含する。また、本発明の複合金属酸化合物含有膜は、本発明の複合金属酸化合物含有液を真空乾燥や、焼成することによって生じる、結晶構造等の物性の異なる金属酸化合物含有膜も包含し、アモルファス構造であってもよく、単結晶構造であってもよく、多結晶構造であってもよい。
【0056】
本発明のコーティング剤は、上述した本発明の金属酸化合物含有液を含有することを特徴とする。
本発明のコーティング剤は、水への分散性が高く、水に対する溶解性が良好で、且つ保存安定性に優れた本発明の金属酸化合物含有液を含有しており、例えば、金属、セラミック、ガラス、及びプラスチックフィルムといった基材の表面に塗布することにより、均一な塗膜を形成することが可能である。
【0057】
上述した本発明の金属酸化合物含有液の製造方法について、以下説明する。
【0058】
本発明の金属酸化合物含有液の製造方法は、Nb、Ta、Ti、Mo、W、Zr、Hf、Si、希土類元素からなる群より選ばれる1種以上の金属酸化合物と、樹脂と、溶媒とを、それぞれ所定の割合となるように秤量し、それらを混合し、30分間撹拌することにより、本発明の金属酸化合物含有液が得られる。
【0059】
ここで、本発明の金属酸化合物含有液の製造方法で用いられる金属酸化合物であるニオブ酸含有液の製造方法について、以下説明する。
【0060】
ニオブ酸含有液の製造方法は、ニオブを含有する酸性ニオブ溶液を生成する工程と、前記酸性ニオブ溶液をアンモニア水に添加する逆中和法によりニオブを含有する沈殿スラリーを得る工程と、得られた前記ニオブを含有する沈殿スラリーとアミン及びアンモニアから選択される少なくとも1種とを混合した混合物を撹拌し、ニオブ酸含有液を得る工程と、を有する。
【0061】
ニオブを含有する酸性ニオブ溶液を生成する工程において、酸性ニオブ溶液は、ニオブがフッ化水素酸を含む酸性溶液に溶解した溶解液を溶媒抽出することにより得られたフッ化物イオンを含有する酸性ニオブ溶液をいう。
【0062】
ここで、フッ化物イオンを含有する酸性ニオブ溶液、例えばフッ化ニオブ水溶液は、水(例えば純水)を加えてニオブをNb換算で1~100g/L含有するように調整すると好ましい。この際、ニオブ濃度がNb換算で1g/L以上であると、水に溶けやすいニオブ酸化合物水和物となることから好ましく、生産性を考えた場合、10g/L以上がより好ましく、20g/L以上であるとさらに好ましい。他方、ニオブ濃度がNb換算で100g/L以下であれば、水に溶けやすいニオブ酸化合物水和物になることから好ましく、より確実に水に溶けやすいニオブ酸化合物水和物を合成するには、90g/L以下であるとより好ましく、80g/L以下であるとさらに好ましく、70g/L以下であると特に好ましい。なお、フッ化ニオブ水溶液のpHは、ニオブ乃至ニオブ酸化物を完全溶解させる観点から、2以下であると好ましく、1以下であるとより好ましい。
【0063】
次に、前記酸性ニオブ溶液をアンモニア水に添加する逆中和法によりニオブを含有する沈殿スラリーを得る工程(以下、逆中和工程という。)では、フッ化物イオンを含有する酸性ニオブ溶液を所定濃度のアンモニア水中に添加、すなわち逆中和法により、ニオブを含有する沈殿スラリーを得るのが好ましい。
【0064】
逆中和に用いるアンモニア水のアンモニア濃度は10質量%~30質量%であると好ましい。当該アンモニア濃度が10質量%であると、ニオブが溶け残りにくくなり、ニオブ乃至ニオブ酸を水に完全に溶解させることができる。他方、当該アンモニア濃度が30質量%以下であると、アンモニアの飽和水溶液付近であるから好ましい。
【0065】
かかる観点から、アンモニア水のアンモニア濃度は10質量%以上であると好ましく、15質量%以上であるとより好ましく、20質量%以上であるとさらに好ましく、25質量%であると特に好ましい。他方、当該アンモニア濃度は30質量%以下であると好ましく、29質量%以下であるとより好ましく、28質量%以下であるとさらに好ましい。
【0066】
逆中和工程の際、アンモニア水に添加するフッ化ニオブ水溶液の添加量は、NH/Nbのモル比が95以上500以下とするのが好ましく、100以上450以下とするのがより好ましく、110以上400以下とするのがさらに好ましい。また、アンモニア水に添加するフッ化ニオブ水溶液の添加量は、アミンや薄いアンモニア水に溶けるニオブ酸化合物が生成する観点から、NH/HFのモル比が3.0以上とするのが好ましく、4.0以上とするとより好ましく、5.0以上とするとさらに好ましい。他方、コスト低減の観点から、NH/HFのモル比が100以下とするのが好ましく、50以上とするとより好ましく、40以上とするとさらに好ましい。
【0067】
逆中和工程において、フッ化ニオブ水溶液のアンモニア水への添加に係る時間は、1分以内であると好ましく、30秒以内であるとより好ましく、10秒以内であるとさらに好ましい。すなわち、時間をかけて徐々にフッ化ニオブ水溶液を添加するのではなく、例えば一気に投入するなど、出来るだけ短い時間でアンモニア水へ投入し、中和反応させると好適である。また、逆中和工程では、アルカリ性のアンモニア水へ、酸性のフッ化ニオブ水溶液を添加することから、高いpHを保持したまま中和反応させることができる。なお、フッ化ニオブ水溶液及びアンモニア水は、常温のまま用いることができる。
【0068】
また、ニオブ酸含有液の製造方法は、逆中和法により得られたニオブを含有する沈殿スラリーからフッ化物イオンを除去し、フッ化物イオンが除去されたニオブ含有沈殿物を得る工程を有する。逆中和法により得られたニオブを含有する沈殿スラリーには、不純物として、フッ化アンモニウムなどのフッ素化合物が存在するため、これらを除去することが好ましい。
【0069】
フッ素化合物の除去方法は任意であるが、例えばアンモニア水や純水を用いた逆浸透ろ過、限外ろ過、精密ろ過などの膜を用いたろ過による方法や、遠心分離、その他の公知の方法を採用することができる。なお、ニオブを含有する沈殿スラリーからフッ化物イオンを除去する際、温度調節は特に必要なく、常温で実施してもよい。
【0070】
具体的には、逆中和法により得られたニオブを含有する沈殿スラリーを、遠心分離機を用いてデカンテーションし、遊離したフッ化物イオン量が100mg/L以下になるまで洗浄を繰り返すことにより、フッ化物イオンが除去されたニオブ含有沈殿物が得らえる。
【0071】
フッ化物イオンの除去に用いられる洗浄液はアンモニア水であると好適である。具体的には、5.0質量%以下のアンモニア水が好ましく、4.0質量%以下のアンモニア水がより好ましく、3.0質量%以下のアンモニア水がさらに好ましく、2.5質量%のアンモニア水が特に好ましい。5.0質量%以下のアンモニア水であると、アンモニウムイオンを含むアンモニアがフッ化物イオンに対して適切であり不要なコストの増加を回避することができる。
【0072】
このようにして、得られたフッ化物イオンが除去されたニオブ含有沈殿物を純水などで希釈することにより、フッ化物イオンが除去された、ニオブを含有する沈殿スラリーが得られる。なお、当該ニオブを含有する沈殿スラリーのニオブ濃度は、当該スラリーの一部を採取し、110℃で24時間乾燥させた後、1,000℃で4時間焼成し、Nbを生成する。このように生成したNbの重量を測定し、その重量から当該スラリーのニオブ濃度を算出することができる。
【0073】
そして、フッ化物イオンが除去された、前記ニオブを含有する沈殿スラリーとアミン及びアンモニアから選択される少なくとも1種とを混合した混合物を撹拌することにより、ニオブ酸含有液が得られる。
【0074】
前記ニオブを含有する沈殿スラリーと混合するアミン及びアンモニアから選択される少なくとも1種は、アルキルアミン、コリン([(CHNCHCHOH])、水酸化コリン([(CHNCHCHOH]OH)などが好ましい。
【0075】
アルキルアミンは、アルキル基を1~4個有するものであると好ましい。アルキル基を2~4個有する場合、2~4個のアルキル基は全部同じものでもよいし、また異なるものを含んでいてもよい。アルキルアミンのアルキル基としては、溶解性の観点から、アルキル基の炭素数1~6のものが好ましく、4以下のものがより好ましく、3以下ものがさらに好ましく、2以下のものが特に好ましい。
【0076】
アルキルアミンの具体例として、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、水酸化テトラメチルアンモニウム、エチルアミン、メチルエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、ジメチルエチルアミン、水酸化テトラエチルアンモニウム、n-プロピルアミン、ジn-プロピルアミン、トリn-プロピルアミン、iso-プロピルアミン、ジiso-プロピルアミン、トリiso-プロピルアミン、n-ブチルアミン、ジn-ブチルアミン、トリn-ブチルアミン、iso-ブチルアミン、ジiso-ブチルアミン、トリiso-ブチルアミンおよびtert-ブチルアミン、n-ペンタアミン、n-ヘキサアミンなどが挙げられる。特に、溶解性の点からは、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、水酸化テトラメチルアンモニウム、エチルアミン、メチルエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、ジメチルエチルアミンおよび水酸化テトラエチルアンモニウムがより好ましく、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、水酸化テトラメチルアンモニウムがさらに好ましく、メチルアミンが特に好ましい。
【0077】
また、本発明の金属酸化合物含有液の製造方法で用いられる金属酸化合物であるタンタル酸含有液の製造方法について、以下説明する。
【0078】
タンタル酸含有液の製造方法は、過酸化水素を、フッ化タンタル水溶液に添加し、タンタル化合物水溶液を生成する反応工程と、前記タンタル化合物水溶液を、アルカリ性水溶液に添加し、タンタル含有沈殿物を生成する逆中和工程と、生成されたタンタル含有沈殿物と有機窒素化合物と混合する工程と、を有する。
【0079】
先ず、フッ化タンタル水溶液は、タンタル、タンタル酸化物又は水酸化タンタルを、フッ化水素酸水溶液などのフッ酸(HF)と反応させてフッ化タンタル(HTaF)とし、これを水に溶解して作製することができる。
【0080】
ここで、フッ化物イオンを含有する酸性タンタル溶液、例えばフッ化タンタル水溶液は、水(例えば純水)を加えてタンタルをTa換算で1~100g/L含有するように調整すると好ましい。この際、タンタル濃度がTa換算で1g/L以上であると、水に溶けやすいタンタル酸化合物水和物となることから好ましく、生産性を考えた場合、10g/L以上がより好ましく、20g/L以上であるとさらに好ましい。他方、タンタル濃度がTa換算で100g/L以下であれば、水に溶けやすいタンタル酸化合物水和物になることから好ましく、より確実に水に溶けやすいタンタル酸化合物水和物を合成するには、90g/L以下であるとより好ましく、80g/L以下であるとさらに好ましく、70g/L以下であると特に好ましい。なお、フッ化タンタル水溶液のpHは、タンタル乃至タンタル酸化物を完全溶解させる観点から、2以下であると好ましく、1以下であるとより好ましい。
【0081】
次に、過酸化水素を、フッ化タンタル水溶液に添加し、タンタル化合物水溶液を生成する反応工程では、過酸化水素水をフッ化タンタル水溶液に添加して、混合することにより、タンタル化合物水溶液が得られる。なお、得られたタンタル化合物水溶液の少なくとも一部は、ペルオキソ錯体を形成していると推測する。
【0082】
ここで、フッ化タンタル水溶液に添加される過酸化水素水の過酸化水素濃度は、0.5質量%~35質量%であると好ましい。また、過酸化水素は、過酸化水素とタンタルとのモル比H/Taが0.6以上1.5以下となるように添加すると好ましく、過酸化水素が混合中に分解する可能性があることから、0.7以上1.2以下であるとより好ましい。
【0083】
得られたタンタル化合物水溶液を、アルカリ性水溶液に添加し、タンタル酸含有沈殿物を生成する逆中和工程では、タンタル化合物水溶液を、アルカリ性水溶液、例えばアンモニア水に添加、すなわち逆中和法により、タンタルを含有する沈殿スラリーが得られる。そして、得られたタンタルを含有する沈殿スラリーからフッ化物イオンを除去することにより、フッ化物イオンが除去されたタンタル含有沈殿物が得られる。
【0084】
逆中和に用いるアンモニア水のアンモニア濃度は10質量%~30質量%であると好ましい。当該アンモニア濃度が10質量%であると、タンタルが溶け残りにくくなり、タンタル乃至タンタル酸を水に完全に溶解させることができる。他方、当該アンモニア濃度が30質量%以下であると、アンモニアの飽和水溶液付近であるから好ましい。
【0085】
かかる観点から、アンモニア水のアンモニア濃度は10質量%以上であると好ましく、15質量%以上であるとより好ましく、20質量%以上であるとさらに好ましく、25質量%以上であると特に好ましい。他方、当該アンモニア濃度は30質量%以下であると好ましく、29質量%以下であるとより好ましく、28質量%以下であるとさらに好ましい。
【0086】
逆中和工程の際、アンモニア水に添加するフッ化タンタル水溶液の添加量は、NH/Taのモル比が95以上500以下とするのが好ましく、100以上450以下とするのがより好ましく、110以上400以下とするのがさらに好ましい。また、アンモニア水に添加するフッ化タンタル水溶液の添加量は、アミンや薄いアンモニア水に溶けるタンタル酸化合物が生成する観点から、NH/HFのモル比が3.0以上とするのが好ましく、4.0以上とするとより好ましく、5.0以上とするとさらに好ましい。他方、コスト低減の観点から、NH/HFのモル比が100以下とするのが好ましく、50以下とするとより好ましく、40以下とするとさらに好ましい。
【0087】
逆中和工程において、フッ化タンタル水溶液のアンモニア水への添加に係る時間は、10分以内であると好ましく、8分以内であるとより好ましく、5分以内であるとさらに好ましい。すなわち、時間をかけて徐々にフッ化タンタル水溶液を添加するのではなく、例えば一気に投入するなど、出来るだけ短い時間でアンモニア水へ投入し、中和反応させると好適である。また、逆中和工程では、アルカリ性のアンモニア水へ、酸性のフッ化タンタル水溶液を添加することから、高いpHを保持したまま中和反応させることができる。なお、フッ化タンタル水溶液及びアンモニア水は、常温のまま用いることができる。
【0088】
そして、逆中和工程では、逆中和法により得られたタンタルを含有する沈殿スラリーからフッ化物イオンを除去することにより、フッ化物イオンが除去されたタンタル含有沈殿物を得ることができる。逆中和法により得られたタンタルを含有する沈殿スラリーには、不純物として、フッ化アンモニウムなどのフッ素化合物が存在するため、これらを除去することが好ましい。
【0089】
フッ素化合物の除去方法は任意であるが、例えばアンモニア水や純水を用いた逆浸透ろ過、限外ろ過、精密ろ過などの膜を用いたろ過による方法や、遠心分離、その他の公知の方法を採用することができる。なお、タンタルを含有する沈殿スラリーからフッ化物イオンを除去する際、温度調節は特に必要なく、常温で実施することが可能である。
【0090】
具体的には、逆中和法により得られたタンタルを含有する沈殿スラリーを、遠心分離機を用いてデカンテーションし、遊離したフッ化物イオン量が100mg/L以下になるまで洗浄を繰り返すことにより、フッ化物イオンが除去されたタンタル含有沈殿物が得られる。なお、当該洗浄を繰り返すことにより、反応工程で、添加された過酸化水素も除去される。
【0091】
フッ化物イオンの除去に用いられる洗浄液はアンモニア水であると好適である。具体的には、1質量%以上35質量%以下のアンモニア水が好ましい。このようなアンモニア水であると、アンモニア、アンモニウムイオンがフッ素に対して適切であり不要なコストの増加を回避することができる。
【0092】
上述した反応工程、及び逆中和工程を経て、生成されたフッ化物イオンが除去されたタンタル含有沈殿物を純水などで希釈することにより、フッ化物イオンが除去された、タンタル含有沈殿スラリーが得られる。なお、タンタル含有沈殿スラリーのタンタル濃度は、タンタル含有沈殿スラリーの一部を採取し、110℃で24時間乾燥させた後、1,000℃で4時間焼成し、Taを生成する。このように生成したTaの重量を測定し、その重量からタンタル含有沈殿スラリーのタンタル濃度を算出することができる。
【0093】
そして、フッ化物イオンが除去された、タンタル含有沈殿スラリーと、有機窒素化合物と、純水とを混合した混合物を撹拌しながら5℃~90℃、0.1時間~48時間保持することにより、タンタル酸含有液が得られる。
【0094】
タンタル含有沈殿スラリーと混合する有機窒素化合物は、上述したように脂肪族アミン、芳香族アミン、アミノアルコール、アミノ酸、ポリアミン、4級アンモニウム、グアニジン化合物、アゾール化合物であれば好ましく、特に脂肪族アミン、およびまたは、4級アンモニウム化合物であるとより好ましい。
【0095】
脂肪族アミンは、溶解性の観点から、タンタル含有沈殿スラリー中の脂肪族アミン濃度が40質量%以下になるように混合するのが好ましく、20質量%以下であるとより好ましい。また、同様な観点から、タンタル含有沈殿スラリー中の脂肪族アミン濃度が0.1質量%以上になるように混合するのが好ましく、1質量%以上になるように混合するのがより好ましく、また5質量%以上であってもよく、10質量%以上であってもよい。なお、脂肪族アミンは、メチルアミン、又はジメチルアミンであるとより好ましい。
【0096】
また、4級アンモニウム化合物は、溶解性の観点から、タンタル含有沈殿スラリー中の4級アンモニウム化合物濃度が40質量%以下になるように混合するのが好ましく、20質量%以下であるとより好ましい。また、同様な観点から、タンタル含有沈殿スラリー中の4級アンモニウム化合物濃度が0.1質量%以上になるように混合するのが好ましく、1質量%以上になるように混合するのがより好ましく、また5質量%以上であってもよく、10質量%以上であってもよい。なお、4級アンモニウム化合物は、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)や水酸化テトラエチルアンモニウム(TEAH)であるとより好ましい。
【0097】
また、本発明の金属酸化合物含有液の製造方法で用いられる金属酸化合物であるチタン酸含有液の製造方法について、以下説明する。
【0098】
チタン酸含有液の製造方法は、チタン塩溶液とアミン水溶液とを混合して中和反応液を得る中和工程と、前記中和反応液中に生じたチタン含有沈殿物を洗浄する洗浄工程と、洗浄後のチタン含有沈殿物と4級アンモニウム塩と水とを混合してチタン酸含有液を得る溶解工程と、を有する。
【0099】
チタン塩溶液は、チタンが溶解している溶液であればよい。例えば硫酸チタニル水溶液、塩化チタン水溶液、フッ化チタン水溶液などを挙げることができる。また、塩化チタン水溶液は、塩化チタン(TiCl)を少量のメタノールに溶かし、さらに水を加えることにより生成される。さらに、硫酸チタニル水溶液は、硫酸チタニルを熱水に溶解することにより生成される。当該硫酸チタニル水溶液中のチタン含有量は、TiO換算で8~15質量%となるように調製するとよい。
【0100】
中和工程では、上述したチタン塩溶液とアミン水溶液とを混合して反応させることにより中和反応液が得られる。当該中和工程では、硫酸チタニル水溶液などのチタン塩溶液を、アミン水溶液に加えて反応させる逆中和とするのが好ましい。このように逆中和することによって、チタン乃至チタン酸の構造が水に溶けやすい構造になると推測する。
【0101】
中和工程で用いるアミン水溶液のアミンは、アルキルアミンなどが好ましい。アルキルアミンは、アルキル基を1~3個有するものであると好ましい。アルキル基を2~3個有する場合、3個のアルキル基は全部同じものでもよいし、また異なるものを含んでいてもよい。アルキルアミンのアルキル基としては、溶解性の観点から、アルキル基の炭素数1~6のものが好ましく、4以下のものがより好ましく、3以下ものがさらに好ましく、2以下のものが特に好ましい。
【0102】
アルキルアミンの具体例として、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、メチルエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、ジメチルエチルアミン、n-プロピルアミン、ジn-プロピルアミン、トリn-プロピルアミン、iso-プロピルアミン、ジiso-プロピルアミン、トリiso-プロピルアミン、n-ブチルアミン、ジn-ブチルアミン、トリn-ブチルアミン、iso-ブチルアミン、ジiso-ブチルアミン、トリiso-ブチルアミンおよびtert-ブチルアミン、n-ペンタアミン、n-ヘキサアミンなどが挙げられる。特に、溶解性の点からは、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、メチルエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミンおよびジメチルエチルアミンが好ましく、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミンがより好ましい。
【0103】
また、中和工程では、分散性を高める観点から、前記チタン塩溶液を、当該チタン塩溶液に含まれる硫酸とモル比で等量以上すなわち1以上のアミンを含有するアミン水溶液に加えることが好ましく、1.2以上のアミンを含有するアミン水溶液に加えることがより好ましく、1.4以上のアミンを含有するアミン水溶液に加えることがさらに好ましい。他方、廃液量が多くなる観点から、前記チタン塩溶液を、該記チタン塩溶液に含まれる硫酸とモル比で2以下のアミンを含有するアミン水溶液に加えることが好ましく、1.8以下のアミンを含有するアミン水溶液に加えることがより好ましく、1.6以下のアミンを含有するアミン水溶液に加えることがさらに好ましい。
【0104】
さらに、中和工程では、硫酸チタニル水溶液などのチタン塩溶液を、アミン水溶液に加える際、1分以内に中和反応させるのが好ましい。すなわち、時間をかけて徐々に前記チタン塩溶液を加えるのではなく、例えば一気に投入するなど、1分以内の時間で投入して中和反応させるのが好ましい。この際、前記チタン塩溶液の添加時間は、1分以内とするのが好ましく、30秒以内とするのがより好ましく、10秒以内とするのがさらに好ましい。
【0105】
次に、洗浄工程における洗浄方法は、例えば、アンモニア水や純水を用いた逆浸透ろ過、限外ろ過、精密ろ過などの膜を用いたろ過による方法のほか、遠心分離、その他の公知の方法を採用することができる。なお、洗浄工程は、常温で行えばよく、それぞれの温度調整は特に必要ない。
【0106】
上述した中和工程で得られた中和反応液、中でもそのチタン含有沈殿物には、不純物として、硫酸アンモニウムなどの硫酸化合物など、チタン乃至チタン酸の水和物乃至イオン及びアミン以外の不要な成分が水中に存在するため、当該不要な成分を洗浄し、除去すると好ましい。
【0107】
そして、溶解工程では、洗浄工程で洗浄されて得たチタン含有沈殿物、例えば硫酸除去して得られたチタン含有沈殿物は、水などの分散媒を加えると共に、4級アンモニウム塩を加えて、必要に応じて攪拌することにより、チタン酸含有液が得られる。
【0108】
ここで、4級アンモニウム塩は、例えば水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化メチルトリプロピルアンモニウム、水酸化メチルトリブチルアンモニウム、水酸化テトラペンチルアンモニウム、水酸化テトラヘキシルアンモニウム水酸化エチルトリメチルアンモニウム、水酸化ジメチルジエチルアンモニウム、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウム、水酸化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、又は、水酸化(2-ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウムなどが挙げられる。なお、上述した4級アンモニウム塩に代えて、1~3級アミン又はこれらの塩を加えた場合、水溶液化することができない。
【0109】
4級アンモニウム塩の添加量は、上述したように、4級アンモニウムの量が多ければ、チタン乃至チタン酸の水に対する溶解性を高めることができることから、前記溶解工程では、前記洗浄後のチタン含有沈殿物に含まれるチタン1モルに対して0.44モル以上の4級アンモニウムを含む4級アンモニウム塩を混合すると好ましい。他方、4級アンモニウムが多過ぎると、製膜性の障害になったり、触媒作用を阻害したりするなどの不具合を生じる可能性がある観点から、前記溶解工程では、前記洗浄後のチタン含有沈殿物に含まれるチタンに1モル対して1.0モル以下の4級アンモニウムを有する4級アンモニウム塩を混合すると好ましい。
【0110】
また、本発明の金属酸化合物含有液の製造方法で用いられる金属酸化合物であるモリブデン酸含有液の製造方法について、以下説明する。
【0111】
モリブデン酸含有液の製造方法は、モリブデンをMoO換算で、1~100g/L含有する酸性モリブデン水溶液を、10~30質量%アンモニア水溶液に添加し、モリブデン含有沈殿を生成する工程と、前記モリブデン含有沈殿をスラリー状としたモリブデン含有沈殿スラリーに有機窒素化合物を添加し、モリブデン酸含有液を生成する工程と、を有することを特徴とする。
【0112】
先ず、モリブデンをMoO換算で、1~100g/L含有する酸性モリブデン水溶液を、10~30質量%アンモニア水溶液に添加し、モリブデン含有沈殿を生成する工程において、酸性モリブデン水溶液は、モリブデンが硫酸を含む酸性水溶液に溶解した溶解液を溶媒抽出することにより得られた硫酸モリブデン水溶液をいう。なお、本明細書で言及するモリブデンは、特段の説明がない限り、モリブデン酸化物を含むものである。
【0113】
ここで、硫酸モリブデン水溶液は、水(例えば純水)を加えてモリブデンをMoO換算で1~100g/L含有するように調整すると好ましい。この際、モリブデン濃度がMoO換算で1g/L以上であると、水に溶けやすいモリブデン酸化合物水和物となることから好ましく、生産性を考えた場合、10g/L以上がより好ましく、20g/L以上であるとさらに好ましい。他方、モリブデン濃度がMoO換算で100g/L以下であれば、水に溶けやすいモリブデン酸化合物水和物になることから好ましく、より確実に水に溶けやすいモリブデン酸化合物水和物を合成するには、90g/L以下であるとより好ましく、80g/L以下であるとさらに好ましく、70g/L以下であると特に好ましい。なお、硫酸モリブデン水溶液のpHは、モリブデン乃至モリブデン酸化物を完全溶解させる観点から、2以下であると好ましく、1以下であるとより好ましい。
【0114】
硫酸モリブデン水溶液をアンモニア水溶液に添加する際、いわゆる逆中和法では、硫酸モリブデン水溶液を10質量%~30質量%のアンモニア水溶液中に添加し、すなわち逆中和法により、モリブデン酸化合物水和物のスラリー、いわゆるモリブデン含有沈殿物のスラリーを得るのが好ましい。
【0115】
逆中和に用いるアンモニア水溶液のアンモニア濃度は10質量%~30質量%であると好ましい。当該アンモニア濃度が10質量%であると、モリブデンが溶け残りにくくなり、モリブデン乃至モリブデン酸化物を水に完全に溶解させることができる。他方、当該アンモニア濃度が30質量%以下であると、アンモニアの飽和水溶液付近であるから好ましい。
【0116】
かかる観点から、アンモニア水溶液のアンモニア濃度は10質量%以上であると好ましく、15質量%以上であるとより好ましく、20質量%以上であるとさらに好ましく、25質量%であると特に好ましい。他方、当該アンモニア濃度は30質量%以下であると好ましく、29質量%以下であるとより好ましく、28質量%以下であるとさらに好ましい。
【0117】
逆中和の際、アンモニア水に添加する硫酸モリブデン水溶液の添加量は、NH/MoOのモル比が0.1以上300以下とするのが好ましく、5以上200以下とするのがより好ましい。また、アンモニア水に添加する硫酸モリブデン水溶液は、アミンや薄いアンモニア水に溶けるモリブデン酸化合物が生成する観点から、NH/SO 2-のモル比が3.0以上とするのが好ましく、10.0以上とするとより好ましく、20.0以上とするとさらに好ましい。他方、コスト低減の観点から、NH/SO 2-のモル比が200以下とするのが好ましく、150以下とするとより好ましく、100以下とするとさらに好ましい。
【0118】
逆中和において、硫酸モリブデン水溶液のアンモニア水への添加に係る時間は、1分以内であると好ましく、30秒以内であるとより好ましく、10秒以内であるとさらに好ましい。すなわち、時間をかけて徐々に硫酸モリブデン水溶液を添加するのではなく、例えば一気に投入するなど、出来るだけ短い時間でアンモニア水へ投入し、中和反応させると好適である。また、逆中和では、アルカリ性のアンモニア水へ、酸性の硫酸モリブデン水溶液を添加することから、高いpHを保持したまま中和反応させることができる。なお、硫酸モリブデン水溶液及びアンモニア水は、常温のまま用いることができる。
【0119】
そして、逆中和法により得られたモリブデン含有沈殿物のスラリーから硫黄分を除去し、硫黄分が除去されたモリブデン含有沈殿を生成する。逆中和法により得られたモリブデン含有沈殿物のスラリーには、不純物として、モリブデン乃至モリブデン酸化物と反応せず残った硫酸イオン、及び硫酸水素イオンの硫黄分が存在するため、これらを除去することが好ましい。
【0120】
硫黄分の除去方法は任意であるが、例えばアンモニア水や純水を用いた逆浸透ろ過、限外ろ過、精密ろ過などの膜を用いたろ過による方法や、遠心分離、その他の公知の方法を採用することができる。なお、モリブデン含有沈殿物のスラリーから硫黄分を除去する際、温度調節は特に必要なく、常温で実施してもよい。
【0121】
具体的には、逆中和法により得られたモリブデン含有沈殿物のスラリーを、遠心分離機を用いてデカンテーションし、モリブデン含有沈殿物のスラリーの導電率が500μS/cm以下になるまで洗浄を繰り返すことにより、硫黄分が除去されたモリブデン含有沈殿物が得られる。当該導電率は、モリブデン含有沈殿物のスラリーの液温を25℃に調整し、導電率計(アズワン社製:ASCON2)の測定部を当該沈殿物のスラリーの上澄み液に浸漬され、導電率の値が安定してから、その数値を読み取った。
【0122】
硫黄分の除去に用いられる洗浄液はアンモニア水であると好適である。具体的には、5.0質量%以下のアンモニア水が好ましく、4.0質量%以下のアンモニア水がより好ましく、3.0質量%以下のアンモニア水がさらに好ましく、2.5質量%のアンモニア水が特に好ましい。5.0質量%以下のアンモニア水であると、アンモニア、アンモニウムイオンが硫黄分に対して適切であり不要なコストの増加を回避することができる。
【0123】
次に、前記モリブデン含有沈殿をスラリー状としたモリブデン含有沈殿スラリーに有機窒素化合物を添加し、モリブデン酸含有液を生成する工程において、モリブデン含有沈殿スラリーは、上述したように硫黄分が除去されたモリブデン含有沈殿を純水などで希釈し、スラリー状としたものである。なお、硫黄分が除去された、モリブデン含有沈殿スラリーのモリブデン濃度は、当該スラリーの一部を採取し、110℃で24時間乾燥させた後、1,000℃で4時間焼成し、MoOを生成する。このように生成したMoOの重量を測定し、その重量から当該スラリーのモリブデン濃度を算出することができる。
【0124】
そして、硫黄分が除去されたモリブデン含有沈殿スラリーに有機窒素化合物を混合することにより、モリブデン酸含有液が得られる。
【0125】
具体的には、最終的な混合物のモリブデン濃度がMoO換算で0.1~40質量%となるように、得られたモリブデン含有沈殿スラリーを、有機窒素化合物に加え、純水と混合し、当該混合物を撹拌しながら、液温を室温(25℃)に1時間保持することにより、無色透明なモリブデン酸含有液が得られる。
【0126】
モリブデン含有沈殿スラリーと混合する有機窒素化合物は、脂肪族アミン、およびまたは、4級アンモニウムであると好ましい。
【0127】
ここで、脂肪族アミンは、溶解性の観点から、モリブデン含有沈殿スラリー中の脂肪族アミン濃度が40質量%以下になるように混合するのが好ましい。また、同様な観点から、モリブデン含有沈殿スラリー中の脂肪族アミン濃度が0.1質量%以上になるように混合するのが好ましく、20質量%以上になるように混合するのがより好ましい。なお、脂肪族アミンは、メチルアミン、又はジメチルアミンであるとより好ましく、メチルアミンであると特に好ましい。
【0128】
他方、4級アンモニウムは、溶解性の観点から、モリブデン含有沈殿スラリー中の4級アンモニウム濃度が40質量%以下になるように混合するのが好ましい。また、同様な観点から、モリブデン含有沈殿スラリー中の4級アンモニウム濃度が0.1質量%以上になるように混合するのが好ましく、20質量%以上になるように混合するのがより好ましい。なお、4級アンモニウムは、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)であるとより好ましい。
【0129】
さらに、モリブデン含有沈殿スラリーと混合する有機窒素化合物は、脂肪族アミン、または4級アンモニウムの何れかの1種ではなく、2種以上を混合したものでもよい。例えば、メチルアミン及び水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)、ジメチルアミン及び水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)、メチルアミン及びジメチルアミンのように2種以上の有機窒素化合物を混合したものや、メチルアミン、ジメチルアミン及び水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)のように3種以上の有機窒素化合物を混合したものが挙げられ、用途に合わせて適宜変更してもよい。
【0130】
また、本発明の金属酸化合物含有液の製造方法で用いられる金属酸化合物であるタングステン酸含有液の製造方法について、以下説明する。
【0131】
タングステン酸含有液の製造方法は、タングステンをWO換算で、1~100g/L含有する酸性タングステン水溶液を、10~30質量%アンモニア水溶液に添加し、タングステン含有沈殿を生成する工程と、前記タングステン含有沈殿をスラリー状としたタングステン含有沈殿スラリーに有機窒素化合物を添加し、タングステン酸含有液を生成する工程と、を有することを特徴とする。
【0132】
先ず、タングステンをWO換算で、1~100g/L含有する酸性タングステン水溶液を、10~30質量%アンモニア水溶液に添加し、タングステン含有沈殿を生成する工程において、酸性タングステン水溶液は、タングステンが硫酸を含む酸性水溶液に溶解した溶解液を溶媒抽出することにより得られた硫酸タングステン水溶液をいう。なお、本明細書で言及するタングステンは、特段の説明がない限り、タングステン酸化物を含むものである。
【0133】
ここで、硫酸タングステン水溶液は、水(例えば純水)を加えてタングステンをWO換算で1~100g/L含有するように調整すると好ましい。この際、タングステン濃度がWO換算で1g/L以上であると、水に溶けやすいタングステン酸化合物水和物となることから好ましく、生産性を考えた場合、10g/L以上がより好ましく、20g/L以上であるとさらに好ましい。他方、タングステン濃度がWO換算で100g/L以下であれば、水に溶けやすいタングステン酸化合物水和物になることから好ましく、より確実に水に溶けやすいタングステン酸化合物水和物を合成するには、90g/L以下であるとより好ましく、80g/L以下であるとさらに好ましく、70g/L以下であると特に好ましい。なお、硫酸タングステン水溶液のpHは、タングステン乃至タングステン酸化物を完全溶解させる観点から、2以下であると好ましく、1以下であるとより好ましい。
【0134】
硫酸タングステン水溶液をアンモニア水溶液に添加する際、いわゆる逆中和法では、硫酸タングステン水溶液を10質量%~30質量%のアンモニア水溶液中に添加し、すなわち逆中和法により、タングステン酸化合物水和物のスラリー、いわゆるタングステン含有沈殿物のスラリーを得るのが好ましい。
【0135】
逆中和に用いるアンモニア水溶液のアンモニア濃度は10質量%~30質量%であると好ましい。当該アンモニア濃度が10質量%であると、タングステンが溶け残りにくくなり、タングステン乃至タングステン酸化物を水に完全に溶解させることができる。他方、当該アンモニア濃度が30質量%以下であると、アンモニアの飽和水溶液付近であるから好ましい。
【0136】
かかる観点から、アンモニア水溶液のアンモニア濃度は10質量%以上であると好ましく、15質量%以上であるとより好ましく、20質量%以上であるとさらに好ましく、25質量%であると特に好ましい。他方、当該アンモニア濃度は30質量%以下であると好ましく、29質量%以下であるとより好ましく、28質量%以下であるとさらに好ましい。
【0137】
逆中和の際、アンモニア水に添加する硫酸タングステン水溶液の添加量は、NH/WOのモル比が0.1以上300以下とするのが好ましく、5以上200以下とするのがより好ましい。また、アンモニア水に添加する硫酸タングステン水溶液は、アミンや薄いアンモニア水に溶けるタングステン酸化合物が生成する観点から、NH/SO 2-のモル比が3.0以上とするのが好ましく、10.0以上とするとより好ましく、20.0以上とするとさらに好ましい。他方、コスト低減の観点から、NH/SO 2-のモル比が200以下とするのが好ましく、150以下とするとより好ましく、100以下とするとさらに好ましい。
【0138】
逆中和において、硫酸タングステン水溶液のアンモニア水への添加に係る時間は、1分以内であると好ましく、30秒以内であるとより好ましく、10秒以内であるとさらに好ましい。すなわち、時間をかけて徐々に硫酸タングステン水溶液を添加するのではなく、例えば一気に投入するなど、出来るだけ短い時間でアンモニア水へ投入し、中和反応させると好適である。また、逆中和では、アルカリ性のアンモニア水へ、酸性の硫酸タングステン水溶液を添加することから、高いpHを保持したまま中和反応させることができる。なお、硫酸タングステン水溶液及びアンモニア水は、常温のまま用いることができる。
【0139】
そして、逆中和法により得られたタングステン含有沈殿物のスラリーから硫黄分を除去し、硫黄分が除去されたタングステン含有沈殿を生成する。逆中和法により得られたタングステン含有沈殿物のスラリーには、不純物として、タングステン乃至タングステン酸化物と反応せず残った硫酸イオン、及び硫酸水素イオンの硫黄分が存在するため、これらを除去することが好ましい。
【0140】
硫黄分の除去方法は任意であるが、例えばアンモニア水や純水を用いた逆浸透ろ過、限外ろ過、精密ろ過などの膜を用いたろ過による方法や、遠心分離、その他の公知の方法を採用することができる。なお、タングステン含有沈殿物のスラリーから硫黄分を除去する際、温度調節は特に必要なく、常温で実施してもよい。
【0141】
具体的には、逆中和法により得られたタングステン含有沈殿物のスラリーを、遠心分離機を用いてデカンテーションし、タングステン含有沈殿物のスラリーの導電率が500μS/cm以下になるまで洗浄を繰り返すことにより、硫黄分が除去されたタングステン含有沈殿物が得られる。当該導電率は、タングステン含有沈殿物のスラリーの液温を25℃に調整し、導電率計(アズワン社製:ASCON2)の測定部を当該沈殿物のスラリーの上澄み液に浸漬され、導電率の値が安定してから、その数値を読み取った。
【0142】
硫黄分の除去に用いられる洗浄液はアンモニア水であると好適である。具体的には、5.0質量%以下のアンモニア水が好ましく、4.0質量%以下のアンモニア水がより好ましく、3.0質量%以下のアンモニア水がさらに好ましく、2.5質量%のアンモニア水が特に好ましい。5.0質量%以下のアンモニア水であると、アンモニア、アンモニウムイオンが硫黄分に対して適切であり不要なコストの増加を回避することができる。
【0143】
次に、前記タングステン含有沈殿をスラリー状としたタングステン含有沈殿スラリーに有機窒素化合物を添加し、タングステン酸含有液を生成する工程において、タングステン含有沈殿スラリーは、上述したように硫黄分が除去されたタングステン含有沈殿を純水などで希釈し、スラリー状としたものである。なお、硫黄分が除去された、タングステン含有沈殿スラリーのタングステン濃度は、当該スラリーの一部を採取し、110℃で24時間乾燥させた後、1,000℃で4時間焼成し、WOを生成する。このように生成したWOの重量を測定し、その重量から当該スラリーのタングステン濃度を算出することができる。
【0144】
そして、硫黄分が除去されたタングステン含有沈殿スラリーに有機窒素化合物を混合することにより、タングステン酸含有液が得られる。
【0145】
具体的には、最終的な混合物のタングステン濃度がWO換算で0.1~40質量%となるように、得られたタングステン含有沈殿スラリーを、有機窒素化合物に加え、純水と混合し、当該混合物を撹拌しながら、液温を室温(25℃)に1時間保持することにより、無色透明なタングステン酸含有液が得られる。
【0146】
タングステン含有沈殿スラリーと混合する有機窒素化合物は、脂肪族アミン、およびまたは、4級アンモニウムであると好ましい。
【0147】
ここで、脂肪族アミンは、溶解性の観点から、タングステン含有沈殿スラリー中の脂肪族アミン濃度が40質量%以下になるように混合するのが好ましい。また、同様な観点から、タングステン含有沈殿スラリー中の脂肪族アミン濃度が0.1質量%以上になるように混合するのが好ましく、20質量%以上になるように混合するのがより好ましい。なお、脂肪族アミンは、メチルアミン、又はジメチルアミンであるとより好ましい。
【0148】
他方、4級アンモニウムは、溶解性の観点から、タングステン含有沈殿スラリー中の4級アンモニウム濃度が40質量%以下になるように混合するのが好ましい。また、同様な観点から、タングステン含有沈殿スラリー中の4級アンモニウム濃度が0.1質量%以上になるように混合するのが好ましく、20質量%以上になるように混合するのがより好ましい。なお、4級アンモニウムは、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)であるとより好ましい。
【0149】
さらに、タングステン含有沈殿スラリーと混合する有機窒素化合物は、脂肪族アミン、または4級アンモニウムの何れかの1種ではなく、2種以上を混合したものでもよい。例えば、メチルアミン及び水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)、ジメチルアミン及び水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)、メチルアミン及びジメチルアミンのように2種以上の有機窒素化合物を混合したものや、メチルアミン、ジメチルアミン及び水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)のように3種以上の有機窒素化合物を混合したものが挙げられ、用途に合わせて適宜変更してもよい。
【0150】
また、本発明の金属酸化合物含有液の製造方法で用いられる金属酸化合物であるジルコニウム酸含有液の製造方法について、以下説明する。
【0151】
ジルコニウム酸含有液の製造方法は、ジルコニウムをZrO換算で、1~100g/L含有する酸性ジルコニウム水溶液に、過酸化水素を添加し、得られた前記過酸化水素が添加された前記酸性ジルコニウム水溶液を、10~30質量%アンモニア水溶液に添加し、ジルコニウム含有沈殿を生成する工程と、前記ジルコニウム含有沈殿をスラリー状としたジルコニウム含有沈殿スラリーに有機窒素化合物を添加し、ジルコニウム酸含有液を生成する工程と、を有する。
【0152】
先ず、ジルコニウムをZrO換算で、1~100g/L含有する酸性ジルコニウム水溶液に、過酸化水素を添加し、得られた前記過酸化水素が添加された前記酸性ジルコニウム水溶液を、10~30質量%アンモニア水溶液に添加し、ジルコニウム含有沈殿を生成する工程において、酸性ジルコニウム水溶液は、ジルコニウムが硫酸を含む酸性水溶液に溶解した溶解液を溶媒抽出することにより得られた硫酸ジルコニウム水溶液や、オキシ塩化ジルコニウム(8水和物)水溶液などをいう。なお、本明細書で言及するジルコニウムは、特段の説明がない限り、ジルコニウム酸化物を含むものである。
【0153】
ここで、硫酸ジルコニウム水溶液は、水(例えば純水)を加えてジルコニウムをZrO換算で1~100g/L含有するように調整すると好ましい。この際、ジルコニウム濃度がZrO換算で1g/L以上であると、水に溶けやすいジルコニウム酸化合物水和物となることから好ましく、生産性を考えた場合、10g/L以上がより好ましく、20g/L以上であるとさらに好ましい。他方、ジルコニウム濃度がZrO換算で100g/L以下であれば、水に溶けやすいジルコニウム酸化合物水和物になることから好ましく、より確実に水に溶けやすいジルコニウム酸化合物水和物を合成するには、90g/L以下であるとより好ましく、80g/L以下であるとさらに好ましく、70g/L以下であると特に好ましい。なお、硫酸ジルコニウム水溶液のpHは、ジルコニウム乃至ジルコニウム酸化物を完全溶解させる観点から、2以下であると好ましく、1以下であるとより好ましい。
【0154】
次に、硫酸ジルコニウム水溶液に、過酸化水素を添加することにより、ジルコニウムを含むアニオン種が錯化し、溶解安定性に優れたペルオキソ錯体となる。ここで、硫酸ジルコニウム水溶液に添加する過酸化水素の添加量は、H/ZrOのモル比が、溶解性に優れる点で、1.0以上であると好ましく、2.5以上であるとより好ましい。一方、H/ZrOのモル比が、5.0以下であると、安全性に優れる点で好ましい。
【0155】
このようにして、得られた過酸化水素が添加された硫酸ジルコニウム水溶液をアンモニア水溶液に添加する際、いわゆる逆中和法では、過酸化水素が添加された硫酸ジルコニウム水溶液を10質量%~30質量%のアンモニア水溶液中に添加されることにより、ジルコニウム酸化合物水和物のスラリー、いわゆるジルコニウム含有沈殿物のスラリーを得るのが好ましい。
【0156】
逆中和に用いるアンモニア水溶液のアンモニア濃度は10質量%~30質量%であると好ましい。当該アンモニア濃度が10質量%であると、ジルコニウムが溶け残りにくくなり、ジルコニウム乃至ジルコニウム酸化物を水に完全に溶解させることができる。他方、当該アンモニア濃度が30質量%以下であると、アンモニアの飽和水溶液付近であるから好ましい。
【0157】
かかる観点から、アンモニア水溶液のアンモニア濃度は10質量%以上であると好ましく、15質量%以上であるとより好ましく、20質量%以上であるとさらに好ましく、25質量%であると特に好ましい。他方、当該アンモニア濃度は30質量%以下であると好ましく、29質量%以下であるとより好ましく、28質量%以下であるとさらに好ましい。
【0158】
逆中和の際、アンモニア水に添加する、過酸化水素が添加された硫酸ジルコニウム水溶液の添加量は、溶解性に優れるという点で、NH/ZrOのモル比が70以上300以下とするのが好ましく、100以上300以下とするのがより好ましく、140以上300以下とするのがさらに好ましい。また、アンモニア水に添加する過酸化水素が添加された硫酸ジルコニウム水溶液は、アミンや薄いアンモニア水に溶けるジルコニウム酸化合物が生成する観点から、NH/SO 2-のモル比が3.0以上とするのが好ましく、10.0以上とするとより好ましく、20.0以上とするとさらに好ましい。他方、コスト低減の観点から、NH/SO 2-のモル比が200以下とするのが好ましく、150以下とするとより好ましく、100以下とするとさらに好ましい。
【0159】
逆中和において、過酸化水素が添加された硫酸ジルコニウム水溶液のアンモニア水への添加に係る時間は、1分以内であると好ましく、30秒以内であるとより好ましく、10秒以内であるとさらに好ましい。すなわち、時間をかけて徐々に過酸化水素が添加された硫酸ジルコニウム水溶液を添加するのではなく、例えば一気に投入するなど、出来るだけ短い時間でアンモニア水へ投入し、中和反応させると好適である。また、逆中和では、アルカリ性のアンモニア水へ、酸性の過酸化水素が添加された硫酸ジルコニウム水溶液を添加することから、高いpHを保持したまま中和反応させることができる。なお、過酸化水素が添加された硫酸ジルコニウム水溶液及びアンモニア水は、常温のまま用いることができる。
【0160】
そして、逆中和法により得られたジルコニウム含有沈殿物のスラリーから硫黄分を除去し、硫黄分が除去されたジルコニウム含有沈殿を生成する。逆中和法により得られたジルコニウム含有沈殿物のスラリーには、不純物として、ジルコニウム乃至ジルコニウム酸化物と反応せず残った硫酸イオン、及び硫酸水素イオンの硫黄分が存在するため、これらを除去することが好ましい。なお、添加された過酸化水素は除去されず、ジルコニウム含有沈殿と共に、残存する。
【0161】
硫黄分の除去方法は任意であるが、例えばアンモニア水や純水を用いた逆浸透ろ過、限外ろ過、精密ろ過などの膜を用いたろ過による方法や、遠心分離、その他の公知の方法を採用することができる。なお、ジルコニウム含有沈殿物のスラリーから硫黄分を除去する際、温度調節は特に必要なく、常温で実施してもよい。
【0162】
具体的には、逆中和法により得られたジルコニウム含有沈殿物のスラリーを、遠心分離機を用いてデカンテーションし、ジルコニウム含有沈殿物のスラリーの導電率が500μS/cm以下になるまで洗浄を繰り返すことにより、硫黄分が除去されたジルコニウム含有沈殿物が得られる。当該導電率は、ジルコニウム含有沈殿物のスラリーの液温を25℃に調整し、導電率計(アズワン社製:ASCON2)の測定部を当該沈殿物のスラリーの上澄み液に浸漬され、導電率の値が安定してから、その数値を読み取った。
【0163】
硫黄分の除去に用いられる洗浄液はアンモニア水であると好適である。具体的には、5.0質量%以下のアンモニア水が好ましく、4.0質量%以下のアンモニア水がより好ましく、3.0質量%以下のアンモニア水がさらに好ましく、2.5質量%のアンモニア水が特に好ましい。5.0質量%以下のアンモニア水であると、アンモニア、アンモニウムイオンが硫黄分に対して適切であり不要なコストの増加を回避することができる。
【0164】
次に、前記ジルコニウム含有沈殿をスラリー状としたジルコニウム含有沈殿スラリーに有機窒素化合物を添加し、ジルコニウム酸含有液を生成する工程において、ジルコニウム含有沈殿スラリーは、上述したように硫黄分が除去されたジルコニウム含有沈殿を純水などで希釈し、スラリー状としたものである。なお、硫黄分が除去された、ジルコニウム含有沈殿スラリーのジルコニウム濃度は、当該スラリーの一部を採取し、110℃で24時間乾燥させた後、1,000℃で4時間焼成し、ZrOを生成する。このように生成したZrOの重量を測定し、その重量から当該スラリーのジルコニウム濃度を算出することができる。
【0165】
そして、硫黄分が除去されたジルコニウム含有沈殿スラリーに有機窒素化合物を混合することにより、ジルコニウム酸含有液が得られる。
【0166】
具体的には、最終的な混合物のジルコニウム濃度がZrO換算で0.1~10質量%となるように、得られたジルコニウム含有沈殿スラリーを、有機窒素化合物に加え、純水と混合し、当該混合物を撹拌しながら、液温を室温(25℃)に1時間保持することにより、黄色、又は無色透明なジルコニウム酸含有液が得られる。
【0167】
ジルコニウム含有沈殿スラリーと混合する有機窒素化合物は、4級アンモニウムであると好ましい。
【0168】
ここで、4級アンモニウムは、溶解性の観点から、ジルコニウム含有沈殿スラリー中の4級アンモニウム濃度が40質量%以下になるように混合するのが好ましい。また、同様な観点から、ジルコニウム含有沈殿スラリー中の4級アンモニウム濃度が0.1質量%以上になるように混合するのが好ましく、20質量%以上になるように混合するのがより好ましい。
【0169】
また、4級アンモニウムは、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)であるとより好ましい。ジルコニウム含有沈殿スラリーに添加される水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)の添加量は、TMAH/ZrOのモル比が1.5以上であると、溶解性と安定性に優れる点で好ましく、2.0以上であるとさらに安定性に優れる点でより好ましい。他方、TMAH/ZrOのモル比が5.0以下であると安全性に優れる点で好ましい。なお、TMAH/ZrOのモル比が1.0未満では、ジルコニウム含有沈殿スラリーが溶解せず、1.0~1.4ではジルコニウム含有沈殿スラリーは溶解するがゲル化してしまう。
【0170】
さらに、ジルコニウム含有沈殿スラリーと混合する有機窒素化合物は、4級アンモニウムの1種ではなく、2種以上を混合したものでもよい。例えば、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)及びメチルアミン、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)及びジメチルアミンのように2種以上の有機窒素化合物を混合したものや、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)、メチルアミン、及びジメチルアミンのように3種以上の有機窒素化合物を混合したものが挙げられ、用途に合わせて適宜変更してもよい。
【0171】
また、本発明の金属酸化合物含有液の製造方法で用いられる金属酸化合物であるハフニウム酸含有液の製造方法について、以下説明する。
【0172】
先ず、ハフニウム、又はハフニウム酸化物を、フッ化水素酸水溶液などのフッ酸(HF)と反応させてフッ化ハフニウム(HHfF)とし、これを水に溶解することにより、酸性金属水溶液である、フッ化ハフニウム水溶液が得られる。
【0173】
ここで、フッ化ハフニウム水溶液は、水(例えば純水)を加えてハフニウムをHfO換算で1~100g/L含有するように調整すると好ましい。この際、ハフニウム濃度がHfO換算で1g/L以上であると、水に溶けやすいハフニウム酸化合物水和物となることから好ましく、生産性を考えた場合、10g/L以上がより好ましく、20g/L以上であるとさらに好ましい。他方、ハフニウム濃度がHfO換算で100g/L以下であれば、水に溶けやすいハフニウム酸化合物水和物になることから好ましく、より確実に水に溶けやすいハフニウム酸化合物水和物を合成するには、90g/L以下であるとより好ましく、80g/L以下であるとさらに好ましく、70g/L以下であると特に好ましい。なお、フッ化ハフニウム水溶液のpHは、ハフニウム乃至ハフニウム酸化物を完全溶解させる観点から、2以下であると好ましく、1以下であるとより好ましい。
【0174】
次に、フッ化ハフニウム水溶液を、アルカリ性水溶液を用いて中和反応させることにより、フッ素含有ハフニウム水和物ケーキが得られる。ここで、フッ化ハフニウム水溶液を中和するために用いられるアルカリ性水溶液は、10質量%~30質量%アンモニア水であると好ましい。
【0175】
上述した中和反応の際、添加量は、NH/Hfのモル比が95以上500以下とするのが好ましく、100以上450以下とするのがより好ましく、110以上400以下とするのがさらに好ましい。また、当該添加量は、アミンや薄いアンモニア水に溶けるにハフニウム酸化合物が生成する観点から、NH/HFのモル比が3.0以上とするのが好ましく、4.0以上とするとより好ましく、5.0以上とするとさらに好ましい。他方、コスト低減の観点から、NH/HFのモル比が100以下とするのが好ましく、50以下とするとより好ましく、40以下とするとさらに好ましい。
【0176】
上述した中和反応における添加時間は、10分以内であると好ましく、8分以内であるとより好ましく、5分以内であるとさらに好ましい。
【0177】
上述した中和反応により、得られたフッ素含有ハフニウム水和物ケーキを希アンモニア水で、遠心分離機を用いてデカンテーションし、遊離したフッ化物イオン量が100mg/L以下になるまで洗浄を繰り返すことにより、フッ素含有ハフニウム水和物ケーキからフッ化物イオンを除去し、ハフニウム含有沈殿物が得られる。上述した中和反応により得られたフッ素含有ハフニウム水和物ケーキには、不純物として、フッ化アンモニウムなどのフッ素化合物が存在するため、これらを除去することが好ましい。なお、フッ化物イオンの除去に用いられる洗浄液は、希アンモニア水であると好適である。
【0178】
得られたハフニウム含有沈殿物のハフニウム濃度は、ハフニウム含有沈殿物の一部を採取し、110℃で24時間乾燥させた後、1000℃で4時間焼成し、HfOを生成する。このように生成したHfOの重量を測定し、その重量からハフニウム含有沈殿物のハフニウム濃度を算出することができる。
【0179】
そして、得られたハフニウム含有沈殿物に対し、3級アミン化合物、及び純水を添加して、10分間撹拌することにより、ハフニウム含有混合液が得られる。その後、ハフニウム含有混合液に、35質量%過酸化水素を添加して、30分間撹拌することにより、ハフニウム酸化合物含有液が得られる。
【0180】
3級アミン化合物は、ハフニウム含有混合液中の3級アミン化合物濃度が0.1質量%以上30質量%以下になるように混合するのが好ましい。また、3級アミン化合物は、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリn-プロピルアミンの中から選ばれる1種以上であると好ましい。
【0181】
過酸化水素水の過酸化水素濃度は、0.5質量%~35質量%であると好ましい。また、過酸化水素は、過酸化水素とハフニウムとのモル比H/Hfが0.6以上1.5以下となるように添加すると好ましく、過酸化水素が混合中に分解する可能性があることから、0.7以上1.2以下であるとより好ましい。
【0182】
また、本発明の金属酸化合物含有液の製造方法で用いられる半金属酸化合物であるケイ素酸含有液の製造方法について、以下説明する。
【0183】
ケイ素酸含有液の製造方法は、ケイ素を含む原料物質に、酸性水溶液を添加し、15℃以上50℃以下で撹拌し、ケイ素化合物の前駆体を含む混合液を得る混合工程と、前記混合液に、有機窒素化合物を含む溶液を添加し、15℃以上50℃以下で撹拌し、ケイ素化合物含有液を生成する撹拌工程と、を有する。
【0184】
先ず、混合工程において、ケイ素を含む原料物質に、酸性水溶液を添加し、15℃以上50℃以下で撹拌し、ケイ素化合物の前駆体を含む混合液を得る。
【0185】
ケイ素を含む原料物質としては、テトラエトキシシラン(TEOS)、テトラメトキシシラン(TMOS)、ケイ酸ナトリウム(珪酸ソーダ)等が挙げられる。そして、ケイ素を含む原料物質は、ケイ素を含む原料物質が、テトラエトキシシラン、ケイ酸ナトリウムの少なくとも1種を含むと好ましい。
【0186】
酸性水溶液としては、酢酸、塩酸、硫酸、リン酸等が挙げられる。そして、酸性水溶液は、酢酸、塩酸、リン酸の少なくとも1種を含むと好ましい。
【0187】
酸性水溶液が酢酸の場合、酢酸含有量は0.001質量%~3.0質量%であると好ましい。当該酢酸含有量が0.001質量%以上であると、ケイ素を含む原料物質がTEOSである場合、効率よくTEOS中のシラノールエステル基Si-O-CH-OHを加水分解して、Si-OH構造を形成することができる。他方、酢酸含有量が3.0質量%以下であると、最終生成物であるケイ素酸含有液に含まれる酢酸含有量が低減できるため好ましい。かかる観点から、酢酸含有量は0.001質量%以上であると好ましく、0.005質量%以上であるとより好ましく、0.01質量%以上であるとさらに好ましい。他方、酢酸含有量は3.0質量%以下であると好ましく、2.5質量%以下であるとより好ましく、2.0質量%以下であるとさらに好ましく、1.5質量%以下であると特に好ましく、1.0質量%以下であるとより特に好ましく、0.5質量%以下であるとさらに特に好ましく、0.1質量%以下であるとまた特に好ましく、0.05質量%以下であると殊更に好ましく、0.04質量%以下であるとより殊更に好ましく、0.03質量%以下であるとさらに殊更に好ましく、0.02質量%以下であるとまた殊更に好ましい。本明細書で記述した酢酸含有量は、特段の説明がない限り、混合工程において、ケイ素を含む原料物質に添加する際の含有量である。
【0188】
また、ケイ素酸含有液中の酢酸含有量は、0.02質量%~10質量%であると好ましい。当該酢酸含有量は、0.05質量%以上であるとより好ましく、0.1質量%以上であるとさらに好ましく、0.15質量%以上であると特に好ましく、0.2質量%以上であるとより特に好ましい。他方、当該酢酸含有量は、5質量%以下であるとより好ましく、3質量%以下であるとさらに好ましく、1質量%以下であると特に好ましく、0.5質量%以下であると特に好ましい。
【0189】
さらに、ケイ素を含む原料物質に添加される酢酸の添加量は、CHCOOH/Siのモル比が0.01以上0.3以下であると好ましく、0.02以上0.25以下であるとより好ましく、0.03以上0.2以下であるとさらに好ましい。さらに、ケイ素を含む原料物質に添加される酢酸の添加に係る時間は、5分以内であると好ましく、3分以内であるとより好ましく、1分以内であるとさらに好ましい。また、ケイ素酸含有液中の酢酸含有量は、CHCOOH/Siのモル比が0.01以上0.3以下であると好ましく、0.02以上0.25以下であるとより好ましく、0.03以上0.2以下であるとさらに好ましい。
【0190】
ケイ素を含む原料物質に添加される酸性水溶液が塩酸の場合、塩酸含有量は0.001質量%~3.0質量%であると好ましい。当該塩酸含有量が0.001質量%以上であると、ケイ素を含む原料物質がケイ酸ナトリウムである場合、効率的にケイ酸ナトリウムから塩化ナトリウムを生成することができる。他方、当該塩酸含有量が3.0質量%以下であると、最終生成物であるケイ素酸含有液に塩素が残留しにくくなるため好ましい。かかる観点から、当該塩酸含有量は0.001質量%以上であると好ましく、0.005質量%以上であるとより好ましく、0.01質量%以上であるとさらに好ましい。他方、当該塩酸含有量は3.0質量%以下であると好ましく、2.5質量%以下であるとより好ましく、2.0質量%以下であるとさらに好ましく、1.5質量%以下であると特に好ましく、1.0質量%以下であるとより特に好ましく、0.5質量%以下であるとさらに特に好ましく、0.1質量%以下であるとまた特に好ましく、0.05質量%以下であると殊更に好ましく、0.04質量%以下であるとより殊更に好ましく、0.03質量%以下であるとさらに殊更に好ましく、0.02質量%以下であるとまた殊更に好ましい。本明細書で記述した塩酸含有量は、特段の説明がない限り、混合工程において、ケイ素を含む原料物質に添加する際の含有量であって、0.5N塩酸水溶液中のHClの重量で換算した値である。
【0191】
また、ケイ素酸含有液中の塩酸含有量は、0.02質量%~10質量%であると好ましい。当該塩酸含有量は、0.05質量%以上であるとより好ましく、0.1質量%以上であるとさらに好ましく、0.15質量%以上であると特に好ましく、0.2質量%以上であるとより特に好ましい。他方、当該塩酸含有量は、5質量%以下であるとより好ましく、3質量%以下であるとさらに好ましく、1質量%以下であると特に好ましく、0.5質量%以下であると特に好ましい。
【0192】
また、ケイ素を含む原料物質に添加される塩酸の添加量は、HCl/Siのモル比が0.5以上1.5以下であると好ましく、0.55以上1.3以下であるとより好ましく、0.6以上1.1以下であるとさらに好ましい。さらに、ケイ素を含む原料物質に添加される塩酸の添加に係る時間は、10分以内であると好ましく、5分以内であるとより好ましく、3以内であるとさらに好ましい。さらに、ケイ素酸含有液中の塩酸含有量は、HCl/Siのモル比が0.5以上1.5以下であると好ましく、0.55以上1.3以下とであるとより好ましく、0.6以上1.1以下とであるとさらに好ましい。
【0193】
また、混合工程において、ケイ素を含む原料物質に、酸性水溶液を添加した後、撹拌の際の当該混合液の液温は、15℃以上50℃以下とするのが好ましく、20℃以上45℃以下とするのがより好ましく、25℃以上40℃以下とするのがさらに好ましい。当該混合液の液温が50℃を超えると当該混合液中の水分が蒸発しすぎてしまい、当該混合液中でSi-OH同士が脱水縮合して、SiO微粒子が部分的に形成し、撹拌工程の際、有機窒素化合物を含む溶液を添加した際、溶解しなくなるおそれがある。
【0194】
さらに、混合工程において、ケイ素を含む原料物質に、酸性水溶液を添加した後、撹拌に係る時間は、ケイ素を含む原料物質の種類、酸性水溶液の添加量、減圧条件等によって、異なる。
【0195】
具体的には、ケイ素を含む原料物質がTEOSであって、酸性水溶液が酢酸の場合、撹拌に係る時間は30分以上24時間以下とするのが好ましく、1時間以上15時間以下とするのがより好ましく、2時間以上12時間以下とするのがさらに好ましい。
【0196】
また、ケイ素を含む原料物質がケイ酸ナトリウムであって、酸性水溶液が塩酸の場合、撹拌に係る時間は10分以上10時間以下とするのが好ましく、30分以上7時間以下とするのがより好ましく、1時間以上5時間以下とするのがさらに好ましい。
【0197】
このようにして、ケイ素を含む原料物質に、酸性水溶液を添加し、15℃以上50℃以下で撹拌することにより、ケイ素化合物の前駆体を含む混合液が得られる。
【0198】
ケイ素化合物の前駆体は、ケイ素を含む原料物質に、酸性水溶液を添加することにより、生成されるケイ酸の構造が直鎖状の構造が多くなると推測される。これは、フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)により測定された赤外分光スペクトルで、Si-OH伸縮振動に帰属する吸収最大強度が大きくなることから推測する。
【0199】
さらに、ケイ素を含む原料物質がテトラエトキシシランであって、酸性水溶液が酢酸の場合、得られたケイ素化合物の前駆体を含む混合液については、次の撹拌工程に進む。
【0200】
一方、ケイ素を含む原料物質がケイ酸ナトリウムであって、酸性水溶液が塩酸の場合、得られたケイ素化合物の前駆体を含む混合液については、次の撹拌工程に進む前処理として、以下の処理が必要となる。上述した撹拌中に、ケイ酸ナトリウムの一部のNaと、塩酸の一部のClとが反応し、生成されたNaClがケイ素化合物の前駆体中に含まれるため、当該ケイ素化合物の前駆体からNaClを除去するとよい。当該NaClを除去する方法としては、先ず当該ケイ素化合物の前駆体を含む混合液を遠沈管に入れ、遠心分離(4500rpm、10分間)することにより、沈殿した透明ゲルを回収する。次に、回収した透明ゲルに水を加え、遠沈管に入れ、遠心分離(4500rpm、20分間)を、水を入れかえ、複数回実施することにより、当該ケイ素化合物の前駆体からNaClを除去することができる。
【0201】
次に、撹拌工程において、ケイ素化合物の前駆体を含む混合液に、有機窒素化合物を含む溶液を添加し、15℃以上50℃以下で撹拌し、ケイ素酸含有液を生成する。
【0202】
また、有機窒素化合物としては、1級アミン、2級アミン、3級アミン、4級アンモニウム塩等が挙げられる。そして、有機窒素化合物は、1級アミン、2級アミン、4級アンモニウム塩の少なくとも1種を含むと好ましく、具体的には、メチルアミン、エチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等が挙げられる。なお、ケイ素化合物の前駆体を含む混合液に、有機窒素化合物ではなく、有機酸を含む溶液を添加してもよい。
【0203】
ケイ素化合物の前駆体を含む混合液に添加する有機窒素化合物の添加量は、アミン/Siのモル比が0.5以上15以下とするのが好ましく、1以上10以下とするのがより好ましく、1.5以上5以下とするのがさらに好ましい。また、ケイ素化合物の前駆体を含む混合液に添加する有機窒素化合物の添加量は、有機窒素化合物に溶けるケイ素化合物が生成する観点から、アミン/Siのモル比が1.7以上とするのが好ましく、1.3以上とするとより好ましく、1.3以上とするとさらに好ましい。他方、コスト低減の観点から、アミン/Siのモル比が1.5以下とするのが好ましく、1.2以下とするとより好ましく、1以下とするとさらに好ましい。
【0204】
ケイ素化合物の前駆体を含む混合液に添加する有機窒素化合物の添加に係る時間は、60分以内であると好ましく、30分以内であるとより好ましく、10分以内であるとさらに好ましい。
【0205】
また、撹拌工程において、ケイ素化合物の前駆体を含む混合液に、有機窒素化合物を含む溶液を添加した後、撹拌の際の液温は、15℃以上50℃以下とするのが好ましく、20℃以上45℃以下とするのがより好ましく、25℃以上40℃以下とするのがさらに好ましい。ここで、撹拌の際の液温が50℃を超えると、有機窒素化合物等が蒸発するため、ケイ素化合物の前駆体が溶解しにくくなり、ケイ素化合物の前駆体が残存する可能性が高くなる。
【0206】
さらに、撹拌工程において、ケイ素化合物の前駆体を含む混合液に、有機窒素化合物を含む溶液を添加した後、撹拌に係る時間は10分以上24時間以下とするのが好ましく、30分以上20時間以下とするのがより好ましく、1時間以上15時間以下とするのがさらに好ましい。
【0207】
このように、ケイ素化合物の前駆体を含む混合液に、有機窒素化合物を含む溶液を添加し、15℃以上50℃以下で撹拌することにより、ケイ素酸含有液を生成することができる。上述したように、ケイ素化合物の前駆体はSi-OH構造を多く含むことにより、Si酸水溶化しやすくなると推測する。
【0208】
また、本発明の金属酸化合物含有液の製造方法で用いられる金属酸化合物である希土類元素酸含有液の製造方法について、以下説明する。
【0209】
先ず、希土類元素、又は希土類元素酸化物を、フッ化水素酸水溶液などのフッ酸(HF)と反応させてフッ化希土類元素とし、これを水に溶解することにより、酸性金属水溶液である、フッ化希土類元素水溶液が得られる。
【0210】
ここで、フッ化希土類元素水溶液は、水(例えば純水)を加えて希土類元素を希土類元素酸化物換算で1~100g/L含有するように調整すると好ましい。この際、希土類元素濃度が希土類元素酸化物換算で1g/L以上であると、水に溶けやすい希土類元素酸化合物水和物となることから好ましく、生産性を考えた場合、10g/L以上がより好ましく、20g/L以上であるとさらに好ましい。他方、希土類元素濃度が希土類元素酸化物換算で100g/L以下であれば、水に溶けやすい希土類元素酸化合物水和物になることから好ましく、より確実に水に溶けやすい希土類元素酸化合物水和物を合成するには、90g/L以下であるとより好ましく、80g/L以下であるとさらに好ましく、70g/L以下であると特に好ましい。なお、フッ化希土類元素水溶液のpHは、希土類元素乃至希土類元素酸化物を完全溶解させる観点から、2以下であると好ましく、1以下であるとより好ましい。
【0211】
次に、フッ化希土類元素水溶液を、アルカリ性水溶液を用いて中和反応させることにより、フッ素含有希土類元素水和物ケーキが得られる。ここで、フッ化希土類元素水溶液を中和するために用いられるアルカリ性水溶液は、10質量%~30質量%アンモニア水であると好ましい。
【0212】
上述した中和反応の際、添加量は、NH/希土類元素のモル比が95以上500以下とするのが好ましく、100以上450以下とするのがより好ましく、110以上400以下とするのがさらに好ましい。また、当該添加量は、アミンや薄いアンモニア水に溶けるに希土類元素酸化合物が生成する観点から、NH/HFのモル比が3.0以上とするのが好ましく、4.0以上とするとより好ましく、5.0以上とするとさらに好ましい。他方、コスト低減の観点から、NH/HFのモル比が100以下とするのが好ましく、50以下とするとより好ましく、40以下とするとさらに好ましい。
【0213】
上述した中和反応における添加時間は、10分以内であると好ましく、8分以内であるとより好ましく、5分以内であるとさらに好ましい。
【0214】
上述した中和反応により、得られたフッ素含有希土類元素水和物ケーキを希アンモニア水で、遠心分離機を用いてデカンテーションし、遊離したフッ化物イオン量が100mg/L以下になるまで洗浄を繰り返すことにより、フッ素含有希土類元素水和物ケーキからフッ化物イオンを除去し、希土類元素含有沈殿物が得られる。上述した中和反応により得られたフッ素含有希土類元素水和物ケーキには、不純物として、フッ化アンモニウムなどのフッ素化合物が存在するため、これらを除去することが好ましい。なお、フッ化物イオンの除去に用いられる洗浄液は、希アンモニア水であると好適である。
【0215】
得られた希土類元素含有沈殿物の希土類元素濃度は、希土類元素含有沈殿物の一部を採取し、110℃で24時間乾燥させた後、1000℃で4時間焼成し、希土類元素酸化物を生成する。このように生成した希土類元素酸化物の重量を測定し、その重量から希土類元素含有沈殿物の希土類元素濃度を算出することができる。
【0216】
そして、得られた希土類元素含有沈殿物に対し、3級アミン化合物、及び純水を添加して、10分間撹拌することにより、希土類元素含有混合液が得られる。その後、希土類元素含有混合液に、35質量%過酸化水素を添加して、30分間撹拌することにより、希土類元素酸化合物含有液が得られる。
【0217】
3級アミン化合物は、希土類元素含有混合液中の3級アミン化合物濃度が0.1質量%以上30質量%以下になるように混合するのが好ましい。また、3級アミン化合物は、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリn-プロピルアミンの中から選ばれる1種以上であると好ましい。
【0218】
過酸化水素水の過酸化水素濃度は、0.5質量%~35質量%であると好ましい。また、過酸化水素は、過酸化水素と希土類元素とのモル比H/Hfが0.6以上1.5以下となるように添加すると好ましく、過酸化水素が混合中に分解する可能性があることから、0.7以上1.2以下であるとより好ましい。
【0219】
なお、本発明の金属酸化合物含有液に含まれる金属酸化合物は、上述したニオブ酸含有液、タンタル酸含有液、チタン酸含有液、モリブデン酸含有液、タングステン酸含有液、ジルコニウム酸含有液、ハフニウム酸含有液、希土類元素酸含有液といった金属酸含有液や、ケイ素酸含有液といった半金属酸含有液に限定されず、Nb、Ta、Ti、Mo、W、Zr、Hf、Si、希土類元素からなる群より選ばれる1種以上の金属酸や、アルカリ金属イオン(例えば、リチウムイオン)とがイオン結合した金属酸塩含有液も含む。
【0220】
また、本発明の金属酸化合物含有液の製造方法で用いられる金属酸化合物の内、例えばニオブ酸含有液は、上述したニオブ酸含有液の製造方法の他に、下記製造方法によっても、製造することができる。
【0221】
先ず、ニオブ、ニオブ酸化物、又は水酸化ニオブを、フッ化水素酸水溶液などのフッ酸(HF)と反応させてフッ化ニオブ(HNbF)とし、これを水に溶解することにより、酸性金属水溶液である、フッ化ニオブ水溶液が得られる。なお、塩化ニオブの場合、フッ酸に溶解させる工程を省略し、塩化ニオブに水を加えることにより、酸性ニオブ水溶液を生成することが可能である。
【0222】
ここで、フッ化ニオブ水溶液は、水(例えば純水)を加えてニオブをNb換算で1~100g/L含有するように調整すると好ましい。この際、ニオブ濃度がNb換算で1g/L以上であると、水に溶けやすいニオブ酸化合物水和物となることから好ましく、生産性を考えた場合、10g/L以上がより好ましく、20g/L以上であるとさらに好ましい。他方、ニオブ濃度がNb換算で100g/L以下であれば、水に溶けやすいニオブ酸化合物水和物になることから好ましく、より確実に水に溶けやすいニオブ酸化合物水和物を合成するには、90g/L以下であるとより好ましく、80g/L以下であるとさらに好ましく、70g/L以下であると特に好ましい。なお、フッ化ニオブ水溶液のpHは、ニオブ乃至ニオブ酸化物を完全溶解させる観点から、2以下であると好ましく、1以下であるとより好ましい。
【0223】
次に、フッ化ニオブ水溶液を、アルカリ性水溶液を用いて中和反応させることにより、フッ素含有ニオブ水和物ケーキが得られる。ここで、フッ化ニオブ水溶液を中和するために用いられるアルカリ性水溶液は、10質量%~30質量%アンモニア水であると好ましい。
【0224】
中和に用いるアンモニア水のアンモニア濃度は10質量%~30質量%であると好ましい。当該アンモニア濃度が10質量%であると、ニオブが溶け残りにくくなり、ニオブ乃至ニオブ酸を水に完全に溶解させることができる。他方、当該アンモニア濃度が30質量%以下であると、アンモニアの飽和水溶液付近であるから好ましい。
【0225】
かかる観点から、アンモニア水のアンモニア濃度は10質量%以上であると好ましく、15質量%以上であるとより好ましく、20質量%以上であるとさらに好ましく、25質量%以上であると特に好ましい。他方、当該アンモニア濃度は30質量%以下であると好ましく、29質量%以下であるとより好ましく、28質量%以下であるとさらに好ましい。
【0226】
上述した中和反応の際、添加量は、NH/Nbのモル比が95以上500以下とするのが好ましく、100以上450以下とするのがより好ましく、110以上400以下とするのがさらに好ましい。また、当該添加量は、アミンや薄いアンモニア水に溶けるにニオブ酸化合物が生成する観点から、NH/HFのモル比が3.0以上とするのが好ましく、4.0以上とするとより好ましく、5.0以上とするとさらに好ましい。他方、コスト低減の観点から、NH/HFのモル比が100以下とするのが好ましく、50以下とするとより好ましく、40以下とするとさらに好ましい。
【0227】
上述した中和反応における添加時間は、10分以内であると好ましく、8分以内であるとより好ましく、5分以内であるとさらに好ましい。すなわち、時間をかけて徐々に添加するのではなく、例えば一気に投入するなど、出来るだけ短い時間で、中和反応させると好適である。なお、フッ化ニオブ水溶液及びアンモニア水は、常温のまま用いることができる。
【0228】
上述した中和反応により、得られたフッ素含有ニオブ水和物ケーキを希アンモニア水で、遠心分離機を用いてデカンテーションし、遊離したフッ化物イオン量が100mg/L以下になるまで洗浄を繰り返すことにより、フッ素含有ニオブ水和物ケーキからフッ化物イオンを除去し、ニオブ含有沈殿物が得られる。上述した中和反応により得られたフッ素含有ニオブ水和物ケーキには、不純物として、フッ化アンモニウムなどのフッ素化合物が存在するため、これらを除去することが好ましい。
【0229】
得られたニオブ含有沈殿物のニオブ濃度は、ニオブ含有沈殿物の一部を採取し、110℃で24時間乾燥させた後、1000℃で4時間焼成し、Nbを生成する。このように生成したNbの重量を測定し、その重量からニオブ含有沈殿物のニオブ濃度を算出することができる。
【0230】
フッ化物イオンの除去に用いられる洗浄液は、希アンモニア水であると好適である。具体的には、1質量%以上35質量%以下の希アンモニア水が好ましい。このような希アンモニア水であると、アンモニア、アンモニウムイオンがフッ素に対して適切であり不要なコストの増加を回避することができる。
【0231】
なお、フッ素化合物の除去方法は任意であるが、例えばアンモニア水や純水を用いた逆浸透ろ過、限外ろ過、精密ろ過などの膜を用いたろ過による方法や、遠心分離、その他の公知の方法を採用することができる。また、フッ素含有ニオブ水和物ケーキからフッ化物イオンを除去する際、温度調節は特に必要なく、常温で実施することが可能である
【0232】
そして、得られたニオブ含有沈殿物に対し、3級アミン化合物、及び純水を添加して、10分間撹拌することにより、ニオブ含有混合液が得られる。その後、ニオブ含有混合液に、35質量%過酸化水素を添加して、30分間撹拌することにより、ニオブ酸化合物含有液が得られる。
【0233】
3級アミン化合物は、溶解性の観点から、ニオブ含有混合液中の3級アミン化合物濃度が30質量%以下になるように混合するのが好ましく、20質量%以下であるとより好ましい。また、同様な観点から、ニオブ含有混合液中の3級アミン化合物濃度が0.1質量%以上になるように混合するのが好ましく、1質量%以上になるように混合するのがより好ましく、また5質量%以上であってもよく、10質量%以上であってもよい。さらに、3級アミン化合物は、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリn-プロピルアミンの中から選ばれる1種以上であると好ましい。
【0234】
過酸化水素水の過酸化水素濃度は、0.5質量%~35質量%であると好ましい。また、過酸化水素は、過酸化水素とニオブとのモル比H/Nbが0.6以上1.5以下となるように添加すると好ましく、過酸化水素が混合中に分解する可能性があることから、0.7以上1.2以下であるとより好ましい。
【0235】
また、上述したニオブ酸化合物含有液の製造方法は、得られたニオブ酸化合物含有液から過酸化水素を除去する工程を有すると好ましい。ニオブ酸化合物含有液に過酸化水素が含まれると、密閉した容器内部で過酸化水素が分解したガスが充満し、当該容器が膨張したり、最悪の場合破裂する危険性が想定されるからである。
【0236】
過酸化水素の除去方法は任意であるが、例えば開放・減圧条件下での撹拌や、減圧乾燥が挙げられる。
【0237】
また、タンタル酸含有液は、上述したタンタル酸含有液の製造方法の他に、下記製造方法によっても、製造することができる。なお、上述したニオブ酸含有液の製造方法と重複する箇所については、説明を省略する。
【0238】
先ず、タンタル、タンタル酸化物、水酸化タンタル、又はタンタルアルコキシドを、フッ化水素酸水溶液などのフッ酸(HF)と反応させてフッ化タンタル(HTaF)とし、これを水に溶解することにより、酸性金属水溶液である、フッ化タンタル水溶液が得られる。なお、塩化タンタルの場合、フッ酸に溶解させる工程を省略し、塩化タンタルに水を加えることにより、酸性タンタル水溶液を生成することが可能である。
【0239】
ここで、フッ化タンタル水溶液は、水(例えば純水)を加えてタンタルをTa換算で1~100g/L含有するように調整すると好ましい。この際、タンタル濃度がTa換算で1g/L以上であると、水に溶けやすいタンタル酸化合物水和物となることから好ましく、生産性を考えた場合、10g/L以上がより好ましく、20g/L以上であるとさらに好ましい。他方、タンタル濃度がTa換算で100g/L以下であれば、水に溶けやすいタンタル酸化合物水和物になることから好ましく、より確実に水に溶けやすいタンタル酸化合物水和物を合成するには、90g/L以下であるとより好ましく、80g/L以下であるとさらに好ましく、70g/L以下であると特に好ましい。なお、フッ化タンタル水溶液のpHは、タンタル乃至タンタル酸化物を完全溶解させる観点から、2以下であると好ましく、1以下であるとより好ましい。
【0240】
次に、フッ化タンタル水溶液を、アルカリ性水溶液を用いて中和反応させることにより、フッ素含有タンタル水和物ケーキが得られる。ここで、フッ化タンタル水溶液を中和するために用いられるアルカリ性水溶液は、10質量%~30質量%のアンモニア水であると好ましい。
【0241】
上述した中和反応の際、添加量は、NH/Taのモル比が95以上500以下とするのが好ましく、100以上450以下とするのがより好ましく、110以上400以下とするのがさらに好ましい。また、当該添加量は、アミンや薄いアンモニア水に溶けるタンタル酸化合物が生成する観点から、NH/HFのモル比が3.0以上とするのが好ましく、4.0以上とするとより好ましく、5.0以上とするとさらに好ましい。他方、コスト低減の観点から、NH/HFのモル比が100以下とするのが好ましく、50以下とするとより好ましく、40以下とするとさらに好ましい。
【0242】
上述した中和反応における添加時間は、10分以内であると好ましく、8分以内であるとより好ましく、5分以内であるとさらに好ましい。
【0243】
上述した中和反応により、得られたフッ素含有タンタル水和物ケーキを希アンモニア水で、遠心分離機を用いてデカンテーションし、遊離したフッ化物イオン量が100mg/L以下になるまで洗浄を繰り返すことにより、フッ素含有タンタル水和物ケーキからフッ化物イオンを除去し、タンタル含有沈殿物が得られる。上述した中和反応により得られたフッ素含有タンタル水和物ケーキには、不純物として、フッ化アンモニウムなどのフッ素化合物が存在するため、これらを除去することが好ましい。なお、フッ化物イオンの除去に用いられる洗浄液は、希アンモニア水であると好適である。
【0244】
得られたタンタル含有沈殿物のタンタル濃度は、タンタル含有沈殿物の一部を採取し、110℃で24時間乾燥させた後、1000℃で4時間焼成し、Taを生成する。このように生成したTaの重量を測定し、その重量からタンタル含有沈殿物のタンタル濃度を算出することができる。
【0245】
そして、得られたタンタル含有沈殿物に対し、3級アミン化合物、及び純水を添加して、10分間撹拌することにより、タンタル含有混合液が得られる。その後、タンタル含有混合液に、35質量%過酸化水素を添加して、30分間撹拌することにより、タンタル酸化合物含有液が得られる。
【0246】
3級アミン化合物は、溶解性の観点から、タンタル含有混合液中の3級アミン化合物濃度が0.1質量%以上30質量%以下になるように混合するのが好ましい。また、3級アミン化合物は、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリn-プロピルアミンの中から選ばれる1種以上であると好ましい。
【0247】
過酸化水素水の過酸化水素濃度は、0.5質量%~35質量%であると好ましい。また、過酸化水素は、過酸化水素とタンタルとのモル比H/Taが0.6以上1.5以下となるように添加すると好ましく、過酸化水素が混合中に分解する可能性があることから、0.7以上1.2以下であるとより好ましい。
【0248】
また、上述したニオブ酸化合物含有液の製造方法と同様に、得られたタンタル酸化合物含有液から過酸化水素を除去する工程を有すると好ましい。
【0249】
なお、ニオブ酸含有液、タンタル酸含有液以外のチタン酸含有液、モリブデン酸含有液、タングステン酸含有液、ジルコニウム酸含有液、ハフニウム酸含有液、ケイ素酸含有液、希土類元素酸含有液も、同様な製造方法により製造することができる。さらに、ニオブ酸含有液、タンタル酸含有液、チタン酸含有液、モリブデン酸含有液、タングステン酸含有液、ジルコニウム酸含有液、ハフニウム酸含有液、ケイ素酸含有液、希土類元素酸含有液を2種以上含有した金属酸化合物含有液や、これら金属酸化合液とアルカリ金属イオン(例えば、リチウムイオン)とがイオン結合した金属酸塩含有液も、同様な製造方法により製造することができる。
【0250】
本発明の金属酸化合物含有液の製造方法で用いられる樹脂は、アニオン性水溶性樹脂、およびまたは、ノニオン性水溶性樹脂であると好ましい。さらに、当該樹脂は、アクリルポリマー、ウレタンポリマー、スチレンポリマー、オレフィンポリマー、アミドポリマー、シロキサンポリマー、エポキシポリマー、塩化ビニルポリマー、酢酸ビニルポリマーからなる群より選ばれる水溶性ホモポリマー、およびまたは、これら2種以上のポリマーからなる水溶性コポリマーを1種以上含むものであるとよい。特に、アクリルポリマー、スチレンポリマー、及びオレフィンポリマーの水溶性ホモポリマー、およびまたは、これら2種以上のポリマーからなる水溶性コポリマーを1種以上含むものであると好ましい。
【0251】
本発明の金属酸化合物含有液の製造方法で用いられる溶媒は、水を用いることができる。
【0252】
上述した金属酸化合物と、樹脂と、溶媒とを、それぞれ所定の割合となるように秤量し、それらを混合し、30分間撹拌することにより、本発明の金属酸化合物含有液を得ることができる。
【0253】
本発明の複合金属酸化合物含有液の製造方法は、上述した本発明の金属酸化合物含有液の製造方法により生成された本発明の金属酸化合物含有液と、Li、Na、Ma、Al、K、Ca、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Sn、Sr、Baからなる群より選択される少なくとも1種の元素Aとを混合し、複合金属酸化合物含有液を生成する工程と、を有することを特徴とする。
【0254】
具体的には、上述した本発明の金属酸化合物含有液の製造方法により製造された本発明の金属酸化合物含有液と、当該群より選択される少なくとも1種の元素Aとを混合し、撹拌しながら、その液温を適切な温度に所定時間保持することにより、本発明の複合金属酸化合物含有液が得られる。ここで、上述した本発明の金属酸化合物含有液の製造方法により生成された本発明の金属酸化合物含有液と混合される、当該群より選択される少なくとも1種の元素は、ポリオキソメタレート、ペルオキソ錯体からなる酸化物、水酸化物、金属錯体、塩といった種々の形態であってもよい。
【0255】
本発明の金属酸化合物含有膜の製造方法は、本発明の金属酸化合物含有液を基材に塗布し、乾燥し、およびまたは、焼成する工程を有する。
本発明の金属酸化合物含有膜の製造方法で用いられる本発明の金属酸化合物含有液は、上述した本発明の金属酸化合物含有液の製造方法により生成されるものであってもよい。
【0256】
本発明の金属酸化合物含有膜の内、本発明の金属酸化合物含有乾燥膜の製造方法は、金属酸化合物含有液を、基材の表面に塗布する塗布工程と、前記基材の表面に塗布された前記金属酸化合物含有液を乾燥し、乾燥膜を得る膜乾燥工程とを有する。
【0257】
具体的には、上述した本発明の金属酸化合物含有液の製造方法により得られた金属酸化合物含有液を、必要に応じて、例えば2μm孔径のフィルタで濾過しながらシリンジを用いて基材の表面上に滴下し、スピンコート(700rpm、10秒、その後1500rpm、15秒)により、塗布する。次に、110℃で30分間乾燥させることにより、基材の表面上に本発明の金属酸化合物含有乾燥膜を形成させる。
【0258】
本発明の金属酸化合物含有膜の内、本発明の金属酸化合物含有焼成膜の製造方法は、金属酸化合物含有液を、基材の表面に塗布する塗布工程と、前記基材の表面に塗布された前記金属酸化合物含有液を乾燥し、乾燥膜を得る膜乾燥工程と、当該乾燥膜を大気下で、焼成温度が300℃以上1,200℃以下で、焼成時間が1時間以上12時間以下で焼成し、焼成膜を得る膜焼成工程とを、有する。
【0259】
具体的には、上述したように金属酸化合物含有液を、基材の表面に塗布し、乾燥させることにより得られた金属酸化合物含有乾燥膜が形成された基材を、静置炉内に載置し、大気下、焼成温度が300℃以上1,200℃以下で、焼成時間が1時間以上12時間以下で焼成することにより、基材の表面上に本発明の金属酸化合物含有焼成膜を形成させる。
【0260】
本発明の複合金属酸化合物含有膜の製造方法は、本発明の複合金属酸化合物含有液を基材に塗布し、乾燥し、およびまたは、焼成する工程を有する。
本発明の複合金属酸化合物含有膜の製造方法で用いられる本発明の複合金属酸化合物含有液は、上述した本発明の複合金属酸化合物含有液の製造方法により生成されるものであってもよい。
【0261】
本発明の複合金属酸化合物含有膜の内、本発明の複合金属酸化合物含有乾燥膜の製造方法は、本発明の金属酸化合物含有乾燥膜の製造方法と同様に、本発明の複合金属酸化合物含有液を、基材の表面に塗布する塗布工程と、前記基材の表面に塗布された前記複合金属酸化合物含有液を乾燥し、乾燥膜を得る膜乾燥工程とを有する。
【0262】
本発明の複合金属酸化合物含有膜の内、本発明の複合金属酸化合物含有焼成膜の製造方法は、本発明の金属酸化合物含有焼成膜の製造方法と同様に、本発明の複合金属酸化合物含有液を、基材の表面に塗布する塗布工程と、前記基材の表面に塗布された前記複合金属酸化合物含有液を乾燥し、乾燥膜を得る膜乾燥工程と、当該乾燥膜を大気下で、焼成温度が300℃以上1,200℃以下で、焼成時間が1時間以上12時間以下で焼成し、焼成膜を得る膜焼成工程とを、有する。
【0263】
なお、本明細書において「X~Y」(X,Yは任意の数字)と表現する場合、特に断らない限り、「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」或いは「好ましくはYより小さい」旨の意も包含する。また、「X以上」(Xは任意の数字)或いは「Y以下」(Yは任意の数字)と表現する場合、「Xより大きいことが好ましい」或いは「Y未満であることが好ましい」旨の意図も包含する。
【発明の効果】
【0264】
本発明の金属酸化合物含有液は、微細な金属酸化合物が凝集せず、多様な基材、特にプラスチックフィルム基材に対する成膜性、又は密着性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0265】
図1】本発明の実施例1~19、及び比較例1に係る金属酸化合物含有液の物性値の一覧表である。
図2】本発明の実施例1~19、及び比較例1に係る金属酸化合物含有液の測定結果の一覧表である。
図3】本発明の実施例2~6、13、15、17~19、及び比較例1に係る金属酸化合物含有液の物性値及び測定結果の一覧表である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0266】
以下、本発明に係る実施形態の金属酸化合物含有液について、以下の実施例によりさらに説明する。但し、以下の実施例は、本発明を限定するものではない。
【0267】
(実施例1)
実施例1では、金属酸化合物として、動的光散乱法を用いた粒子径分布測定による粒子径D50が5nm以下であり、ニオブ濃度がメタル換算(Nb換算)で7.0質量%であり、且つ溶媒が純水であるニオブ酸含有液と、樹脂固形物として、アニオン性アクリル系樹脂(荒川化学社製J-127)とを、金属酸化合物の含有量/(樹脂固形物の含有量+金属酸化合物の含有量)=0.70、且つ樹脂固形物の含有量+金属酸化合物の含有量=0.05を満たすように秤量し、これらを混合し、撹拌することにより、実施例1に係る金属酸化合物含有液を得た。
【0268】
具体的には、実施例1に係る金属酸化合物含有液を100質量%としたとき、ニオブ濃度がメタル換算(Nb換算)で2.45質量%と、アニオン性アクリル系樹脂(荒川化学社製J-127)1.5質量%と、メチルアミンが0.7質量%と、残部が純水となるように秤量し、これらを混合し、25℃で30分間撹拌することにより、実施例1に係る金属酸化合物含有液を得た。
【0269】
(実施例2)
実施例2では、実施例1のアニオン性アクリル系樹脂(荒川化学社製:J-127)を、アニオン性アクリル系樹脂(荒川化学社製:WC-M-1212)に置き換えたこと以外、実施例1と同様な製造方法を実施し、実施例2に係る金属酸化合物含有液を得た。
【0270】
(実施例3)
実施例3では、実施例1のアニオン性アクリル系樹脂(荒川化学社製:J-127)を、アクリル系樹脂(トーヨーケム社製:トークリルX-4402)に置き換えたこと以外、実施例1と同様な製造方法を実施し、実施例3に係る金属酸化合物含有液を得た。
【0271】
(実施例4)
実施例4では、実施例1のアニオン性アクリル系樹脂(荒川化学社製:J-127)を、アクリル系樹脂(トーヨーケム社製:トークリルX-4403)に置き換えたこと以外、実施例1と同様な製造方法を実施し、実施例4に係る金属酸化合物含有液を得た。
【0272】
(実施例5)
実施例5では、実施例1のアニオン性アクリル系樹脂(荒川化学社製:J-127)を、アニオン性スチレン系樹脂(荒川化学社製:WC-M-1216)に置き換えたこと以外、実施例1と同様な製造方法を実施し、実施例5に係る金属酸化合物含有液を得た。
【0273】
(実施例6)
実施例6では、実施例1のアニオン性アクリル系樹脂(荒川化学社製:J-127)を、アニオン性オレフィン系樹脂(荒川化学社製:WC-M-1201)に置き換えたこと以外、実施例1と同様な製造方法を実施し、実施例6に係る金属酸化合物含有液を得た。
【0274】
(実施例7)
実施例7では、実施例1のアニオン性アクリル系樹脂(荒川化学社製:J-127)を、ノニオン性共重合ポリアミド樹脂(住友精化社製:セポルジョンPA200)に置き換えたこと以外、実施例1と同様な製造方法を実施し、実施例7に係る金属酸化合物含有液を得た。
【0275】
(実施例8)
実施例8では、実施例1のアニオン性アクリル系樹脂(荒川化学社製:J-127)を、ノニオン性共重合ポリアミド樹脂(住友精化社製:セポルジョンPA150)に置き換えたこと以外、実施例1と同様な製造方法を実施し、実施例8に係る金属酸化合物含有液を得た。
【0276】
(実施例9)
実施例9では、実施例1のアニオン性アクリル系樹脂(荒川化学社製:J-127)を、ノニオン性ポリアミドエラストマー樹脂(住友精化社製:セポルジョンNE205N)に置き換えたこと以外、実施例1と同様な製造方法を実施し、実施例9に係る金属酸化合物含有液を得た。
【0277】
(実施例10)
実施例10では、実施例1のアニオン性アクリル系樹脂(荒川化学社製:J-127)を、スチレンアクリル系樹脂(トーヨーケム社製:トークリルBCX-3101)に置き換えたこと以外、実施例1と同様な製造方法を実施し、実施例10に係る金属酸化合物含有液を得た。
【0278】
(実施例11)
実施例11では、実施例1のアニオン性アクリル系樹脂(荒川化学社製:J-127)を、スチレンアクリル系樹脂(トーヨーケム社製:トークリルW-172)に置き換えたこと以外、実施例1と同様な製造方法を実施し、実施例11に係る金属酸化合物含有液を得た。
【0279】
(実施例12)
実施例12では、実施例1のアニオン性アクリル系樹脂(荒川化学社製:J-127)を、スチレンアクリル系樹脂(トーヨーケム社製:トークリルW-463)に置き換えたこと以外、実施例1と同様な製造方法を実施し、実施例12に係る金属酸化合物含有液を得た。
【0280】
(実施例13)
実施例13では、実施例1のアニオン性アクリル系樹脂(荒川化学社製:J-127)を、スチレンアクリル系樹脂(トーヨーケム社製:トークリルM-4340)に置き換えたこと以外、実施例1と同様な製造方法を実施し、実施例13に係る金属酸化合物含有液を得た。
【0281】
(実施例14)
実施例14では、実施例1のアニオン性アクリル系樹脂(荒川化学社製:J-127)、アニオン性エチレン-アクリル酸共重合体アンモニウム塩系樹脂(住友精化社製:ザイクセンAC)に置き換えたこと以外、実施例1と同様な製造方法を実施し、実施例14に係る金属酸化合物含有液を得た。
【0282】
(実施例15)
実施例15では、実施例1のアニオン性アクリル系樹脂(荒川化学社製:J-127)を、ノニオン性エチレン-アクリル酸共重合体樹脂(住友精化社製:ザイクセンA)に置き換えたこと以外、実施例1と同様な製造方法を実施し、実施例15に係る金属酸化合物含有液を得た。
【0283】
(実施例16)
実施例16では、実施例1のアニオン性アクリル系樹脂(荒川化学社製:J-127)を、ノニオン性エチレン-アクリル酸共重合体樹脂(住友精化社製:ザイクセンAC-HW-10)に置き換えたこと以外、実施例1と同様な製造方法を実施し、実施例16に係る金属酸化合物含有液を得た。
【0284】
(実施例17)
実施例17では、実施例1のアニオン性アクリル系樹脂(荒川化学社製:J-127)を、ノニオン性カルボキシル基含有ポリエチレン系樹脂(住友精化社製:ザイクセンL)に置き換えたこと以外、実施例1と同様な製造方法を実施し、実施例17に係る金属酸化合物含有液を得た。
【0285】
(実施例18)
実施例18では、実施例1のアニオン性アクリル系樹脂(荒川化学社製:J-127)を、ポリシロキサン-アクリル系樹脂(DIC社製:セラネートWHW-822)に置き換えたこと以外、実施例1と同様な製造方法を実施し、実施例18に係る金属酸化合物含有液を得た。
【0286】
(実施例19)
実施例19では、実施例1のニオブ酸含有液を、動的光散乱法を用いた粒子径分布測定による粒子径D50が5nm以下であり、金属元素濃度(ニオブ濃度、タンタル濃度、チタン濃度、モリブデン濃度、及びタングステン濃度)がメタル換算(Nb換算、Ta換算、Ti換算、Mo換算、及びW換算)で7.0質量%であり、且つ溶媒が純水である、ニオブ酸含有液、タンタル酸含有液、チタン酸含有液、モリブデン酸含有液、及びタングステン酸含有液と、動的光散乱法を用いた粒子径分布測定による粒子径D50が100nm以下であり、ジルコニウム濃度がメタル換算(Zr換算)で7.0質量%であり、且つ溶媒が純水である、ジルコニウム酸含有液を、メタル換算重量比で当量ずつ含有する金属酸混合液に置き換え、また有機窒素化合物としてメチルアミン0.7質量%をTMAH0.7質量%に置き換えしたこと以外、実施例1と同様な製造方法を実施し、実施例19に係る金属酸化合物含有液を得た。
【0287】
(比較例1)
比較例1では、動的光散乱法を用いた粒子径分布測定による粒子径D50が5nm以下であり、ニオブ濃度がメタル換算(Nb換算)で7.0質量%であり、且つ溶媒が純水であるニオブ酸含有液を、比較例1に係る金属酸化合物含有液100質量%としたとき、ニオブ濃度がメタル換算(Nb換算)で2.45質量%と、メチルアミンが0.7質量%と、残部が純水となるように秤量し、これらを混合し、25℃で30分間撹拌することにより、比較例1に係る金属酸化合物含有液を得た。
【0288】
そして、実施例1~19、及び比較例1において得られた金属酸化合物含有液について、次のような物性を測定した。以下、測定した物性値、及びその物性値の測定方法を示すとともに、測定結果を図1~3に示す。
【0289】
〈元素分析〉
必要に応じて試料を希塩酸で適度に希釈し、ICP発光分析(アジレント・テクノロジー社製:AG-5110)を用いて、JIS K0116:2014に準拠し、Nb換算のNb重量分率、Ta換算のTa重量分率、Ti換算のTi重量分率、Mo換算のMo重量分率、W換算のW重量分率、Zr換算のZr重量分率、Hf換算のHf重量分率、Si換算のSi重量分率、又は希土類元素換算の希土類元素重量分率を測定した。
【0290】
〈動的光散乱法〉
粒度分布の評価は、ゼータ電位・粒径・分子量測定システム(大塚電子株式会社製:ELSZ-2000)を用いて、JIS Z 8828:2019「粒子径解析-動的光散乱法」に準拠して実施した。また、測定直前に測定対象である溶液中の埃等を除去するため、2μm孔径のフィルタで当該溶液を濾過し、超音波洗浄機(アズワン社製:VS-100III)にて28kHz、3分間の超音波処理を実施した。なお、粒子径(D50)は、積算分布曲線の50%積算値を示す粒子径であるメジアン径(D50)をいう。
【0291】
〈DLS径相溶性試験〉
実施例1~19、及び比較例1に係る金属酸化合物含有液中の粒子の初期粒子径(D50)を、上述した動的光散乱法を用いた粒子径分布測定により算出した。そして、当該初期粒子径(D50)が100nm以下であるものを「〇〇(VERY GOOD)」と評価し、100nm超1000nm以下であるものを「〇(GOOD)」と評価し、1000nm超であるものを「×(BAD)」と評価した。
【0292】
〈DLS径経時安定性試験〉
実施例1~19、及び比較例1に係る金属酸化合物含有液中の粒子の初期粒子径(D50)と、室温25℃に設定した恒温器内で20日間静置した後の金属酸化合物含有液中の粒子の経時粒子径(D50)とを算出し、初期粒子径(D50)に対する経時粒子径(D50)の増加量が10倍以下であるものを「〇(GOOD)」と評価し、10倍以上であるものを「×(BAD)」と評価した。なお、上述したフィルタリングは、「初期粒子径D50(nm)」の測定時に行ったが、「経時粒子径D50(nm)」の測定時は行わず、超音波処理のみを実施した。
【0293】
〈経時安定性試験〉
実施例1~19、及び比較例1に係る金属酸化合物含有液を室温25℃で20日間静置した後、白色沈殿やゲル化の有無を目視観察することにより行った。白色沈殿やゲル化が一つも観察されなかったものは経時安定性を有するとして「○(GOOD)」と評価し、白色沈殿やゲル化が一つでも観察されたものは経時安定性を有しないとして「×(BAD)」と評価した。ここで、ゲル化の判定は、各金属酸化合物含有液をプラスチック容器に入れ、当該容器を逆さまにした際、速やかに落下しない分散液をゲル化していると判定した。
【0294】
〈透過率測定〉
実施例1~19、及び比較例1に係る金属酸化合物含有液4mlを、光路長5.0mmの石英セルに入れ、実施例1~19、及び比較例1に係る金属酸化合物含有液の波長550nm~700nm領域における透過率(具体的には、波長550nm、600nm、650nm、700nmにおける透過率)は、分光光度計を用いて、上述した透過率測定条件に従って、測定した。そして、波長550nm、600nm、650nm、700nmにおける透過率が70%T以上であるものを「〇(GOOD)」と評価し、70%未満であるものを「×(BAD)」と評価した。図2の「初期透過率」とは、生成された直後に液温25℃に調整した金属酸化合物含有液の透過率をいう。また、図2の「経時透過率」とは、室温25℃に設定した恒温器内で1カ月静置した後の金属酸化合物含有液の透過率をいう。
【0295】
〈pH測定〉
実施例1~19、及び比較例1において得られた金属酸化合物含有液にpHメータ(HORIBA製:ガラス電極式水素イオン濃度指示器 D-51)の電極(HORIBA製:スタンダード ToupH 電極 9615S-10D)、液温が25℃に安定したことを確認した後、pHを測定した。図2の「初期pH」とは、生成された直後に液温25℃に調整した金属酸化合物含有液のpHをいう。また、図2の「経時pH」とは、室温25℃に設定した恒温器内で1カ月静置した後の金属酸化合物含有液のpHをいう。
【0296】
〈成膜性試験(ガラス)〉
集電板の代替品であるガラス基板の表面に形成した塗膜の外観評価を光学顕微鏡で観察することによって行った。実施例1~19、及び比較例1の金属酸化合物含有液を2μm孔径のフィルタで濾過しながらシリンジを用いて、アセトンにより脱脂洗浄した後、乾燥を行った50mm×50mmのガラス基板に滴下し、スピンコート(1,500rpm、15秒)により、塗布した。そして、塗布した箇所を、自然乾燥することにより、ガラス基板上に塗膜を形成した。形成した塗膜の中央15mm×15mmの範囲において、光学顕微鏡(倍率:40倍)で当該ガラス基板を観察し、気泡、塗工ムラ、ひび割れが、一つも観察されなかったものは成膜性に優れているとして「○(GOOD)」と評価し、一つでも観察されたものを成膜性に優れていないとして「×(BAD)」と評価した。
【0297】
〈密着性試験(ガラス)〉
上述した成膜性試験(ガラス)と同様にして形成されたガラス基板上の塗膜面にJIS Z 1522:2009で定められたセロハン粘着テープを貼付した。当該セロハン粘着テープを上から指でしごいた後、素早く当該塗膜面に対して垂直方向に剥がし、当該ガラス基板上の塗膜剥がれの有無を観察した。塗膜剥がれが一切観察されなかったものを密着性に優れているとして「〇(GOOD)」と評価し、塗膜剥がれが観察されたものを密着性に優れていないとして「×(BAD)」と評価した。なお、密着性試験(ガラス)で用いたサンプルは、塗工後1日経過したものを用いた。
【0298】
〈成膜性試験(PET)〉
PET基板の表面に形成した塗膜の外観評価を光学顕微鏡で観察することによって行った。実施例2~6、13、15、17~19、及び比較例1の金属酸化合物含有液を2μm孔径のフィルタで濾過しながらシリンジを用いて、アセトンにより脱脂洗浄した後、乾燥を行った50mm×50mmのPET基板に滴下し、スピンコート(1,500rpm、15秒)により、塗布した。そして、塗布した箇所を、自然乾燥することにより、PET基板上に塗膜を形成した。形成した塗膜の中央15mm×15mmの範囲において、光学顕微鏡(倍率:40倍)で当該PET基板を観察し、気泡、塗工ムラ、ひび割れが、一つも観察されなかったものは成膜性に優れているとして「○(GOOD)」と評価し、一つでも観察されたものを成膜性に優れていないとして「×(BAD)」と評価した。
【0299】
〈密着性試験(PET)〉
上述した成膜性試験(PET)と同様にして形成されたPET基板上の塗膜面の塗膜面にJIS Z 1522:2009で定められたセロハン粘着テープを貼付した。当該セロハン粘着テープを上から指でしごいた後、素早く当該塗膜面と垂直方向に剥がし、当該PET基板上の塗膜剥がれの有無を観察した。塗膜剥がれが一切観察されなかったものを密着性に優れているとして「〇(GOOD)」と評価し、塗膜剥がれが観察されたものを密着性に優れていないとして「×(BAD)」と評価した。なお、密着性試験(PET)で用いたサンプルは、塗工後1日経過したものを用いた。
【0300】
図1に示す通り、実施例1~19に係る金属酸化合物含有液は、Nb、Ta、Ti、Mo、W、Zr、Hf、Si、希土類元素からなる群より選ばれる1種以上の金属酸化合物と、樹脂と、溶媒と、を有し、動的光散乱法を用いた粒子径分布測定による粒子径D50が1000nm以下であると、ガラス基材への成膜性が良好であった。
【0301】
また、実施例1~19に係る金属酸化合物含有液は、Nb、Ta、Ti、Mo、W、Zr、Hf、Si、希土類元素からなる群より選ばれる1種以上の金属酸化合物と、樹脂と、溶媒と、を有し、波長550nm~700nm領域における透過率の最大値が70%T以上であると、分散度が高く液中成分の均一性が優れ、また経時安定性に優れていた。
【0302】
また、実施例1~19に係る金属酸化合物含有液は、当該金属酸化合物含有液中の金属酸含有量がメタル換算で0.1質量%以上50質量%以下であると、安定性が良好であった。
【0303】
また、実施例1~19に係る金属酸化合物含有液は、当該金属酸化合物含有液中の樹脂含有量が0.1質量%以上60質量%以下であると、安定性が良好であった。
【0304】
また、実施例1~19に係る金属酸化合物含有液は、当該金属酸化合物含有液のpHが7超であると、安定性が良好であった。
【0305】
さらに、図3に示す通り、実施例2~6、13、15、17~19に係る金属酸化合物含有液は、Nb、Ta、Ti、Mo、W、Zr、Hf、Si、希土類元素からなる群より選ばれる1種以上の金属酸化合物と、樹脂と、溶媒と、を有し、動的光散乱法を用いた粒子径分布測定による粒子径D50が1000nm以下であると、PETフィルム基材への成膜性が良好であった。
【0306】
また、図3に示す通り、実施例2~6、13、15、17~19に係る金属酸化合物含有液は、Nb、Ta、Ti、Mo、W、Zr、Hf、Si、希土類元素からなる群より選ばれる1種以上の金属酸化合物と、樹脂と、溶媒と、を有し、波長550nm~700nm領域における透過率の最大値が70%T以上であると、PETフィルム基材への成膜性が良好であった。
【0307】
本明細書開示の発明は、各発明や実施形態の構成の他に、適用可能な範囲で、これらの部分的な構成を本明細書開示の他の構成に変更して特定したもの、或いはこれらの構成に本明細書開示の他の構成を付加して特定したもの、或いはこれらの部分的な構成を部分的な作用効果が得られる限度で削除して特定した上位概念化したものを含む。
【産業上の利用可能性】
【0308】
本発明に係る金属酸化合物含有液は、多様な基材、特にプラスチックフィルム基材に対する成膜性、又は密着性に優れており、基材へのコーティング剤として好適である。また、本発明に係る金属酸化合物含有液は、成膜性、又は密着性に優れていることから、従来よりも長期間同等の性能を発揮することができたり、成膜性の悪い不良サンプルの発生を抑制することができることから、廃棄物の量を減らすことができ、製造時及び廃棄時の処分におけるエネルギーコストを削減することが可能となる。このように、天然資源の持続可能な管理及び効率的な利点、並びに脱炭素(カーボンニュートラル)化を達成することにつながる。
図1
図2
図3