(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110984
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】易接着性ポリエステルフィルムおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20240808BHJP
C08J 7/043 20200101ALI20240808BHJP
B32B 27/36 20060101ALI20240808BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20240808BHJP
B32B 27/40 20060101ALI20240808BHJP
C09D 5/00 20060101ALI20240808BHJP
C09D 175/06 20060101ALI20240808BHJP
C09D 7/65 20180101ALI20240808BHJP
C09D 167/00 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
B32B27/00 C
C08J7/043 A CFD
B32B27/36
B32B7/023
B32B27/40
C09D5/00 D
C09D175/06
C09D7/65
C09D167/00
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024090631
(22)【出願日】2024-06-04
(62)【分割の表示】P 2020505286の分割
【原出願日】2020-01-16
(31)【優先権主張番号】P 2019015237
(32)【優先日】2019-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山口 洋平
(72)【発明者】
【氏名】多喜 博
(72)【発明者】
【氏名】瀧井 功
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 勝也
(57)【要約】
【課題】キズ欠点の少なく、かつ製品ロール保管時での巻締まりなどに起因する外観欠点が発生しない易接着性ポリエステルフィルムおよびその効率的な製造方法を提供すること。
【解決手段】ポリエステルフィルムを基材フィルムとし、前記基材フィルムの少なくとも片面上に易接着層を有する易接着性ポリエステルフィルムであって、前記基材フィルムが、平均粒子径0.1μm以上2μm以下の粒子を基材フィルムの質量に対して1質量%以下含有し、前記易接着層が、共重合ポリエステル樹脂(A)、ブロックイソシアネート基を有するウレタン樹脂(B)、およびシリコーン系界面活性剤(C)を含有する組成物が硬化されてなる易接着性ポリエステルフィルム。及び、インラインコート法による易接着性ポリエステルフィルムの製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルフィルムを基材フィルムとし、前記基材フィルムの少なくとも片面上に易接着層を有する易接着性ポリエステルフィルムであって、
前記基材フィルムが、平均粒子径0.1μm以上2μm以下の粒子を基材フィルムの質量に対して1質量%以下含有し、
前記易接着層が、共重合ポリエステル樹脂(A)、ブロックイソシアネート基を有するウレタン樹脂(B)、およびシリコーン系界面活性剤(C)を含有する組成物が硬化されてなり、
前記シリコーン系界面活性剤(C)はポリオキシアルキレン変性シリコーンであり、
前記シリコーン系界面活性剤(C)の含有量が、前記共重合ポリエステル樹脂(A)と前記ブロックイソシアネート基を有するウレタン樹脂(B)の固形分合計100質量部に対して、0.01から0.3質量部であり、
前記易接着層が、粒子を含有し、
前記易接着層中の前記粒子の含有量は、共重合ポリエステル樹脂(A)とブロックイソシアネート基を含有するウレタン樹脂(B)の固形分合計100質量部に対して、その固形分が0.2質量部以上20質量部以下であり、
前記易接着性ポリエステルフィルムは、ヘイズが2%以下である、
易接着性ポリエステルフィルム。
【請求項2】
易接着層を構成する組成物中の共重合ポリエステル樹脂(A)、ブロックイソシアネート基を有するウレタン樹脂(B)の固形分質量比(A)/(B)が、28/72から72/28である請求項1に記載の易接着性ポリエステルフィルム。
【請求項3】
前記易接着層を形成する組成物は、界面活性剤としてフッ素系界面活性剤を含まない、請求項1に記載の易接着性ポリエステルフィルム。
【請求項4】
少なくとも共重合ポリエステル樹脂(A)、ブロックイソシアネート基を有するウレタン樹脂(B)、およびシリコーン系界面活性剤(C)を含有する組成物を溶剤で希釈して塗布液を製造し、前記溶剤が水とアルコールを含んでなり、前記水/アルコール質量比が100/0から85/15であり、前記基材フィルムの製造工程中における未延伸状態のフィルムまたは一軸延伸後のフィルムの少なくとも片面上に、前記塗布液をグラビアコーティング法またはバーコーティング法により塗布後、延伸されていない少なくとも一軸方向に延伸し、熱処理し、易接着層を設ける請求項1~3のいずれかに記載の易接着性ポリエステルフィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、易接着性ポリエステルフィルムおよびその製造方法に関し、更に詳しくは、フィルム製膜工程上で発生するキズ欠点が少なく、製品ロール保管時に生じる巻締まりなどに起因する外観欠点の発生が少なく、酸化重合型インキ、UV硬化型インキ、ハードコート用樹脂などとの接着性に優れた易接着性ポリエステルフィルムおよびその効率的な製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年におけるノート型パソコンやタブレット端末および携帯用電話機器の小型軽量化の普及は著しいものがある。また、例えばカラー液晶ディスプレイを用いた商品としては、ノート型パソコンに限らず、液晶テレビ、携帯用通信機器(タブレット端末など)の如く、多種多様の商品が実用化されて、高解像度化が進んでいる。
【0003】
高解像度化が進むにつれて、ブラックマトリクス領域の面積が増えることで画素における開口率が低下するため、バックライトユニットの輝度調整が重要となる。
【0004】
バックライトユニットの光学的効率を改善する方法としては、片面にプリズム列のレンズ単位を多数形成したレンズシート、あるいはレンチキュラー列のレンズ単位を多数形成したシートなどのレンズシートをバックライトの導光体の出射光面側に設けたバックライトなどが提案されている。
【0005】
これらのレンズシートは、バックライトからの出射光を屈折作用によりディスプレイ正面方向へ向けて、正面輝度を向上させるものである。通常、レンズシートはその成形性の良さからポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂などの透明プラスチック樹脂を基材(ベースフィルム)とする。中でもポリエステル系樹脂は、優れた透明性、寸法安定性、耐薬品性の観点から、広く採用されているが、輝度調整に伴ってフィルムの欠点に対する管理が強化されている傾向がある。
【0006】
二軸延伸ポリエステルフィルムは一般に、ポリエステル樹脂を溶融押し出してシート化した後、搬送ロールを経て、フィルムの巻取り方向(MD方向)と幅方向(TD方向)に二軸延伸される。延伸方式としては逐次二軸延伸法や同時二軸延伸法が一般的に採用されるが、逐次二軸延伸法が最も広く採用されている。逐次二軸延伸法は搬送ロール間の速度差を利用してMD方向に延伸した後、テンタークリップによりTD方向に延伸する。
【0007】
製膜工程中の搬送ロールをフィルムが通過する際、搬送ロール上にある異物によりフィルムに微小なキズが発生することがある。これらの異物は、製膜工程中で発生するオリゴマー等が主な原因であり、高品位のフィルムを得るために、定期的なロール掃除や、特許文献1に記載されるように低オリゴマー原料の使用等の対策が提案されている。
【0008】
また、フィルム表面へ突起を付与することで、微小キズを低減させることが検討されている。キズに対する効果は、一般的に表面粗さの指標であるSRa(中心面平均粗さ)と対応していて、SRaが高いほどキズに対する効果が高いことが知られている。フィルム表面へ突起を付与する方策としては、フィルムを3層構造にし、不活性粒子をフィルム表層部に付与する方法がある。しかし不活性粒子をフィルム中に付与すると、不活性粒子と樹脂との屈折率に差があることから、フィルムの透明性の指標となるヘイズが高くなり透明性を損なう。
【0009】
これらの問題に対して特許文献2、3では、粒子径が異なる不活性粒子を使用して、透明性と耐スクラッチ性を両立させることが提案されている。また、特許文献4では、3層構造の表層部を非常に薄くすることにより、突起に寄与しない粒子の数を少なくし、透明性を向上させることが提案されている。
【0010】
光学欠点となるキズ、異物の低減については、特許文献1の開示などの提案により、従来、問題なく利用されていた。ところが、ディスプレイの高精細化は飛躍的に進展しており、従来問題とされない程度の微小なキズ、異物が光学欠点として認識されるようになると考えられた。
【0011】
加えて、生産性の向上から、加工工程や製膜工程におけるライン速度が飛躍的に向上しており、高速加工条件下においても光学欠点の低減が必要となった。そのため、特許文献2~4に記載されるようにフィルム表面に突起をもたせることで、微小キズによる光学欠点の低減を図ることが検討された。しかしながら、特許文献2、3に記載されるように平均粒子径1μm以下の多孔質微小粒子を用いると、微小粒子の凝集により、樹脂中に均一に分散することができず、凝集粒子によりフィッシュアイ状の欠点が発生し、上記課題を解決するレベルにまで光学欠点の抑制することができなかった。
【0012】
さらに特許文献4に記載されるように、粒子に対して樹脂層を薄くしすぎると、加工や製膜における高速加工により粒子の脱落が発生し、これらが新たな光学欠点の要因となることが懸念された。特許文献5のようにフィルム中に添加する粒子径2μm以上の不定形塊状シリカを0.030質量%以下の添加量とし、かつ易接着層に0.5μm程度の粒子を添加する方法では製膜ライン上ではキズが発生しないが、製品ロール経時変化によるロールの巻締まりでフィルムに微細なズレが発生することで易接着層の粒子が脱落し、白ムラ上の外観欠点が発生することが判明している。
【0013】
このように、高精細化および生産性の向上に対応しうるような、光学欠点が少ない、高品位な光学用フィルムを安定的に得るための方策は未だ確立されていないことが分かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2007-130984号公報
【特許文献2】特開平10-46012号公報
【特許文献3】特開平8-73623号公報
【特許文献4】特開2003-231229号公報
【特許文献5】特開2011-5648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上記の従来技術の問題点に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、キズ欠点の少なく、かつ製品ロール保管時での巻締まりなどに起因する外観欠点が発生しない易接着性ポリエステルフィルムおよびその効率的な製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
即ち、本発明は以下の構成よりなる。
1. ポリエステルフィルムを基材フィルムとし、前記基材フィルムの少なくとも片面上に易接着層を有する易接着性ポリエステルフィルムであって、前記基材フィルムが、平均粒子径0.1μm以上2μm以下の粒子を基材フィルムの質量に対して1質量%以下含有し、前記易接着層が、共重合ポリエステル樹脂(A)、ブロックイソシアネート基を有するウレタン樹脂(B)、およびシリコーン系界面活性剤(C)を含有する組成物が硬化されてなる易接着性ポリエステルフィルム。
2. 易接着層が、平均粒子径20nm以上200nm以下の粒子を含有する上記第1に記載の易接着性ポリエステルフィルム。
3. 易接着層を構成する組成物中の共重合ポリエステル樹脂(A)、ブロックイソシアネート基を有するウレタン樹脂(B)の固形分質量比(A)/(B)が、28/72から72/28である上記第1または第2に記載の易接着性ポリエステルフィルム。
4. 少なくとも共重合ポリエステル樹脂(A)、ブロックイソシアネート基を有するウレタン樹脂(B)、およびシリコーン系界面活性剤(C)を含有する組成物を溶剤で希釈して塗布液を製造し、前記溶剤が水とアルコールを含んでなり、前記水/アルコール質量比が100/0から85/15であり、前記基材フィルムの製造工程中における未延伸状態のフィルムまたは一軸延伸後のフィルムの少なくとも片面上に、前記塗布液をグラビアコーティング法またはバーコーティング法により塗布後、延伸されていない少なくとも一軸方向に延伸し、熱処理し、易接着層を設ける上記第1~第3のいずれかに記載の易接着性ポリエステルフィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、キズ欠点の少なく、かつ製品ロール保管時での巻締まりなどに起因する外観欠点が発生しない易接着性ポリエステルフィルムおよびその効率的な製造方法の提供が可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(基材フィルム)
本発明における基材フィルムであるポリエステルフィルムを構成するポリエステル系樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレン-1,2-ジフェノキシエタン-4,4’-ジカルボキシレートおよびポリエチレン-2,6-ナフタレート、もしくはこれらの樹脂の構成ポリマー成分を主成分として、他の任意のエステル構成単位を共重合体した共重合ポリエステルが用いられ得る。
【0019】
基材フィルムは、平均粒子径0.1μm以上2μm以下の粒子を基材フィルムの質量に対して1質量%以下含有することが好ましい。かかる平均粒子径の粒子を1質量%以下含有させることにより、製膜工程における延伸および/または乾燥のロール上でキズ欠点の発生が抑制されて好ましい。粒子の平均粒子径2μm以下であり、含有量が1質量%以下であると、ヘイズを低く調節でき透明性が良好となることからも好ましい。平均粒子径は、好ましくは1.5μm以下、より好ましくは1.0μm以下である。粒子の含有量は、更に好ましくは0.2質量%以下、特に好ましくは0.1質量%以下、最も好ましくは0.05質量%以下である。粒子の含有量の下限は、0.001質量%以上であることが好ましい。より好ましくは0.005質量%以上であるが、この範囲に限定されるものではない。基材フィルム中に含有される粒子の種類としては特に限定されないが、例えば、シロキサン共重合アクリル樹脂、架橋ポリスチレン、ポリスチレン-ジビニルベンゼン、ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレート共重合体、メチルメタクリレート共重合架橋体、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリアクリロニトリル、ベンゾグアナミン樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂等の如き有機粒子、シリカ、アルミナ、二酸化チタン、酸化ジルコニウム、カオリン、タルク、グラファイト、炭酸カルシウム、長石、二硫化モリブデン、カーボンブラック、硫酸バリウム等の如き無機粒子のいずれも用いることができる。また内外部のそれぞれの性質が異なる物質で構成される多層構造のコア・シェル型粒子を用いてもよい。滑剤としての種々の好ましい特性からシリカ粒子が特に好ましく使用される。
【0020】
基材フィルムは、一軸延伸フィルムでも二軸延伸フィルムでも良いが、二軸延伸フィルムが力学的特性などから好ましい。延伸方法は同時二軸延伸でも構わないが、逐次二軸延伸フィルムの製造工程が好適に使用できる。
【0021】
本発明の易接着性ポリエステルフィルムは、ヘイズが2%以下であることが好ましい。2%以下であると、光学的分野で使用する際や、印刷されて用いられる際、光学特性や外観が良好となり好ましい。より好ましくは1.5%以下であり、更に好ましくは1.0%以下である。ヘイズは小さいほど好ましいと言えるが、0.1%以上でも構わず、0.3%以上でも構わない。
【0022】
(易接着層)
本発明においては、インキやハードコート材料などの接着性を向上させるため、共重合ポリエステル樹脂(A)、ブロックイソシアネート基を有するウレタン樹脂(B)、およびシリコーン系界面活性剤(C)を有する易接着層を前記基材フィルムの少なくとも片面上に設ける。本発明において、「易接着層が、共重合ポリエステル樹脂(A)、ブロックイソシアネート基を有するウレタン樹脂(B)、およびシリコーン系界面活性剤(C)を含有する組成物が硬化されてなる」との表現を用いているが、硬化された後の易接着層の組成を正確に表現することは極めて困難であるため、前記の表現としている。
【0023】
共重合ポリエステル樹脂(A)の重合に用いられるグリコール成分(ジオール成分)は分岐した構造を有するものであることが好ましく、分岐したグリコール成分としては、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-2-イソプロピル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-2-ブチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-2-n-ヘキシル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-2-n-ブチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-2-n-ヘキシル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジ-n-ブチル-1,3-プロパンジオール、2-n-ブチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオールおよび2,2-ジ-n-ヘキシル-1,3-プロパンジオールなどが挙げられる。上記の分岐したグリコール成分は、全グリコール成分(全ジオール成分)の中に、好ましくは10モル%以上の割合で、さらに好ましくは20モル%以上の割合で含有される。共重合ポリエステル樹脂(A)に含有される上記化合物以外のグリコール成分としては、エチレングリコールが最も好ましい。少量であれば、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオールまたは1,4-シクロヘキサンジメタノールなどを混用しても良い。
【0024】
共重合ポリエステル樹脂(A)に構成成分として含有される、ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸およびイソフタル酸が最も好ましい。少量であれば、他のジカルボン酸成分、例えば、アジピン酸、セバシン酸およびアゼライン酸などの脂肪酸ジカルボン酸;ジフェニルジカルボン酸および2,6-ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸を加えて共重合させてもよい。
【0025】
上記ジカルボン酸成分の他に、水分散性を付与させるため、スルホン酸基を有するテレフタル酸や、スルホン酸基を有するイソフタル酸を全ジカルボン酸成分に対して1~10モル%の範囲で混用するのが好ましく、例えば、4-スルホイソフタル酸、スルホテレフタル酸、5-スルホイソフタル酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸、4-スルホナフタレンー2,7-ジカルボン酸および5-(4-スルホフェノキシ)イソフタル酸等を好ましく用いることができる。
【0026】
ブロックイソシアネート基を含有するウレタン樹脂(B)は、末端イソシアネート基を親水性基で封鎖(以下ブロックと言う)した、熱反応型の水溶性ウレタンであることが好ましい。
【0027】
上記イソシアネート基のブロック剤としては、重亜硫酸塩類およびスルホン基を含有したフェノール類、アルコール類、ラクタム類、オキシム類および活性メチレン化合物類等が挙げられる。ブロック化されたイソシアネート基は、ウレタンプレポリマーを親水化あるいは水溶化する。フィルム製造時の乾燥あるいは熱セットの過程で、上記ブロックイソシアネート基を含有するウレタン樹脂(B)に熱エネルギーが与えられると、ブロック剤がイソシアネート基からはずれるため、ウレタン樹脂(B)は自己架橋した網目に、混合した共重合ポリエステル樹脂(A)を固定化するとともに、前記共重合ポリエステル樹脂(A)の末端基等とも反応する。塗布液調製時のウレタン樹脂(B)は、親水性であるため耐水性が良くないが、塗布、乾燥および熱セットして熱反応が完了すると、ウレタン樹脂(B)の親水基すなわちブロック剤がはずれるため、耐水性が良好な塗膜が得られる。
【0028】
上記に説明したブロックイソシアネート基を含有するウレタン樹脂(B)の一例としては、第一工業製薬(株)製の商品名エラストロン(登録商標)が例示される。
【0029】
本発明で使用される共重合ポリエステル樹脂(A)およびブロックイソシアネート基を有するウレタン樹脂(B)を混合して塗布液を調製する場合、共重合ポリエステル樹脂(A)とブロックイソシアネート基を有するウレタン樹脂(B)の質量比は(A):(B)=28:72~72:28が好ましい。この範囲内であると、インキとの易接着性、ハードコート材料との易接着性、ヘイズなどをバランスよく具備させることができて好ましい。
【0030】
本発明では易接着層を形成するための組成物中にシリコーン系界面活性剤(C)を含有させる。シリコーン系界面活性剤(C)の含有量は、共重合ポリエステル樹脂(A)とブロック型イソシアネート基を含有する樹脂(B)の固形分合計100質量部に対して、0.01から0.3質量部を例示できる。シリコーンの構成などは特に制限ないが、フィルム表面を平滑に、かつ高透明とするために適宜、種類や添加量は本発明の範囲内で選択できる。信越シリコーン製や東レダウコーニング製、モメンティブ製のシリコーン系界面活性剤を好適に使用できる。シリコーン系界面活性剤を使用することで、コート層中の粒子の分散性が向上し、粒子の凝集が抑えられる。また低分子量の界面活性剤は、疎水性粒子や疎水性樹脂などの表面張力変化に対する拡散能力が高く、粒子周辺のコート厚みを維持しやすく、粒子の脱落しにくさに寄与していると考えられる。
【0031】
シリコーン系界面活性剤(C)は、pH変化に左右されにくいノニオン型シリコーン系界面活性剤であることが好ましく、特にポリオキシアルキレン変性シリコーンを用いることができる。具体的には下記平均組成式(I)で示されるものである。
R1xR2ySiO(4-x-y)/2 (I)
〔式中、R1は脂肪族不飽和結合を有しない非置換又は置換の炭素数1~10、好ましくは1~8の1価炭化水素基、R2は一般式-CfH2fO(CgH2gOh)R3(R3は水素原子、脂肪族不飽和基を有しない非置換又は置換の炭素数1~8、特に1~4のアルキル基等の1価炭化水素基、又はアセチル基であり、fは2~12、特に2~6の整数、gは2~4の整数、hは1~200、好ましくは1~100、更に好ましくは1~50の整数である。)で表される有機基である。x及びyはそれぞれ0≦x<3.0、0<y<3.0であり、0<x+y≦3.0を満たす正の数であり、好ましくはxは0.1~2、yは0.2~2、x+yは0.3~3である。〕
更に、ポリオキシアルキレン変性シリコーン中のポリオキシエチレン含有量が、30~80質量%であることが好ましい。
【0032】
上記シリコーン系界面活性剤(C)としては、例えば下記構造式(1)~(3)のようなものが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0033】
【0034】
【0035】
【0036】
共重合ポリエステル樹脂(A)、ブロックイソシアネート基を有するウレタン樹脂(B)及びシリコーン系界面活性剤(C)を上述した含有量で組成物中に含ませることで、キズ欠点のないフィルムとすることができる。
【0037】
本発明においては、易接着層中に平均粒子径20nm以上200nm以下の粒子を含有させることで、よりキズ欠点の少ないフィルムを作製すること容易となる。粒子の平均粒子径は、好ましくは30nm以上150nm以下、より好ましくは、40nm以上100nm以下である。塗布する易接着層の厚みにも依るが、易接着層の厚みの3倍以上の平均粒子径を持つ粒子を使用する場合は、ロール製品巻締まり時の円周方向の応力で易接着層から脱落するリスクが高くなり望ましくない。易接着層中に含有される粒子の種類としては特に限定されないが、例えば、シロキサン共重合アクリル樹脂、架橋ポリスチレン、ポリスチレン-ジビニルベンゼン、ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレート共重合体、メチルメタクリレート共重合架橋体、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリアクリロニトリル、ベンゾグアナミン樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂等の如き有機粒子、シリカ、アルミナ、二酸化チタン、酸化ジルコニウム、カオリン、タルク、グラファイト、炭酸カルシウム、長石、二硫化モリブデン、カーボンブラック、硫酸バリウム等の如き無機粒子のいずれも用いることができる。また内外部のそれぞれの性質が異なる物質で構成される多層構造のコア・シェル型粒子を用いてもよい。滑剤としての種々の好ましい特性からシリカ粒子が特に好ましく使用され、球状粒子であるコロイダルシリカが分散性の観点から最も望ましい。
【0038】
なお、本発明における基材フィルム中および易接着層中の粒子の平均粒子径の測定方法は、フィルムの断面の粒子を走査型電子顕微鏡で観察を行い、粒子30個を観察し、その平均値をもって平均粒子径とする方法で行った。
【0039】
本発明の目的を満たすものであれば、不定形の粒子の粒径は円相当径として計算することができる。円相当径は、観察された粒子の面積をπで除し、平方根を算出し2倍した値である。
【0040】
易接着層中の粒子の含有量は、共重合ポリエステル樹脂(A)とブロックイソシアネート基を含有するウレタン樹脂(B)の固形分合計100質量部に対して、その固形分が0.3質量部以上であることが好ましい。より好ましくは0.5質量部以上、更に好ましくは1.0質量部以上である。0.3質量部以上であると、滑り性が向上し、キズ欠点を抑制し易くなり好ましい。易接着層中の粒子の含有量は、共重合ポリエステル樹脂(A)とブロックイソシアネート基を含有するウレタン樹脂(B)の固形分合計100質量部に対して、18質量部以下であることが好ましい。より好ましくは15質量部以下であり、更に好ましくは8質量部以下である。18質量部以下であると、ヘイズを低くして透明性を向上させることができ好ましい。
【0041】
易接着層の厚みは、例えば、5nm~500nmを例示でき、10nm~300nmが好ましく、20nm~150nmがより好ましい。
【0042】
本発明のポリエステル系積層フィルムにおける易接着層の積層方法は特に限定されるものではなく、いわゆるインラインコーティング、あるいは二軸延伸後のポリエステルフィルムに加工を行う、いわゆるオフラインコーティングのいずれの方法でも良い。また公知のコーティング法であれば、どのようなコーティング法で塗布しても良い。好ましくは、上記のような共重合ポリエステル樹脂(A)、ブロックイソシアネート基を有するウレタン樹脂(B)、およびシリコーン系界面活性剤(C)を含有する組成物を溶媒で希釈した塗布液を、基材ポリエステルフィルムの製造工程中における未延伸状態のフィルムまたは1軸配向したフィルム上に、グラビアコーティング法またはバーコーティング法により塗布した後、延伸されていない少なくとも一軸方向に延伸し熱セットするインラインコーティング法により効率的に得ることができる。得られた易接着性ポリエステルフィルムは、各種インキの密着性、特にUV硬化インキおよび酸化重合(または溶剤タイプ)のインキの密着性に優れた、ラベル用等の2次加工用にも適したものとなる。
【0043】
前記塗布液に用いる溶媒は水、または水とアルコールの混合溶媒を使用できる。水とアルコールの質量比率は、水/アルコールとして表すと、100/0から85/15までの範囲で選ぶことが好ましい。アルコールの質量比率が水とアルコールの合計質量に対して15質量部以下であると、通常の二軸延伸フィルム製膜装置で容易に製造でき好ましい。水/アルコールの質量比率が98/2~90/10までの範囲では、アルコール添加によって塗布液の表面張力がコントロールできるため易接着層の外観調整がしやすく望ましい。
【0044】
本発明においては、上記のようにグラビアコーティング法またはバーコーティング法が好適に使用でき、通常の二軸延伸フィルム製膜装置を使用して、高透明でキズ欠点の少ない、易接着フィルムを作製できる。
【0045】
製膜時のキズ防止の観点から、塗布後から巻き上げまでのロール本数をできるだけ少なくすることが望まれるため、塗布工程からはロールを介さずに乾燥工程に投入し、かつ乾燥工程から熱固定までを一連の乾燥炉内で実施することが望ましい。
【実施例0046】
以下、具体的実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。まず、本発明おいて用いる評価方法を説明する。
【0047】
(評価方法)
(1)インキ密着性の評価
後述する実施例および比較例で得られた易接着性ポリエステルフィルムの易接着層上に、酸化重合(あるいは溶剤)タイプのインキの場合は、250メッシュのスクリーン印刷を行い、1日風乾し、またUV硬化タイプのインキの場合は、300メッシュのスクリーン印刷を行い、UV露光装置により500mj/cm2のUV露光を与えUVインキを硬化させる。次に、各々のインキ面にカッターナイフで2mm目100マスのクロスカット面を入れ、その上にニチバンセロテープ(登録商標)(25mm幅)を気泡の入らないように粘着し、さらにその上をこすり充分に密着させ、上記インキ面のセロテープ(登録商標)が密着されていない前後の両端部を手で押え、セロテープ(登録商標)の上の方向(角度90度方向)に急速に剥離し、剥離後のインキ面を観察し、インキ残留率で密着性を判定する。
【0048】
<使用インキ銘柄>
1)酸化重合(あるいは溶剤)タイプインキ
(ア)セイコーアドバンスKK製 RAM 黒
(イ)東洋インキKK製 PVC用 SS-8 白
2)UV硬化タイプ
(ウ)インキ東洋インキKK製 FDSS 黒
(エ)セイコーアドバンスKK製 UVA 黒
<判定法>クロスカット面を剥離後、インキ残留率を以下の4段階の基準で評価した。
◎: 残留率100%で全く剥離しない
○: 〃 90%以上で実用上問題なく使用できる
△: 〃 80%以上で条件調整次第で使用できる
×: 〃 80%未満で使用に適さない
【0049】
(2)ハードコート樹脂の接着性評価
易接着性ポリエステルフィルムの易接着層上に下記のハードコート塗布液Aをワイヤーバーを用いて乾燥後の塗布厚が2μmになるように塗布し、温度80℃の熱風で60秒乾燥し、出力120W/cm2の高圧水銀灯下20cmの位置を10m/minのスピードで通過させてハードコートフィルムを得た。ハードコート層の屈折率は1.48であった。
塗布液は下記の材料を下記に示す質量比で混合し、30分以上攪拌して溶解させた。
次いで、公称ろ過精度が1μmのフィルターを用いて未溶解物を除去して、ハードコート塗布液Aを作製した。
(塗布液A)
・メチルエチルケトン 64.48質量%
・ペンタエリスリトールトリアクリレート 11.45質量%
(新中村化学製、NKエステル A-TMM-3LM-N、官能基数3)
・トリプロピレングリコールジアクリレート 5.73質量%
(新中村化学製、NKエステル APG-200、官能基数2)
・ジメチルアミノエチルメタクリレート 5.72質量%
(共栄社化学製、ライトエステルDM、官能基数1)
・シリカ微粒子 11.45質量%
(日産化学工業製、MEK-ST-L、固形分比率:30質量%、平均粒子径:50nm)
・光重合開始剤 1.14質量%
(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製イルガキュア184)
・シリコーン系界面活性剤0.03質量% (東レ・ダウコーニング製、DC57)
得られたハードコート層を具体的には、隙間間隔2mmのカッターガイドを用いて、ハードコート層を貫通して基材フィルムに達する100個のマス目状の切り傷をハードコート層面につける。次に、セロハン粘着テープ(ニチバン社製、405番;24mm幅)をマス目状の切り傷面に貼り付け、消しゴムでこすって完全に密着させた。その後、垂直にセロハン粘着テープを成型用ハードコートフィルムのハードコート層面から引き剥がして、基材フィルムのハードコート層面から剥がれたマス目の数を目視で数え、下記の式からハードコート層と基材フィルムとの密着性を求めた。なお、マス目の中で部分的に剥離しているものも剥がれたマス目として数え、下記の基準で4段階でランク分けをした。
密着性(%)=(1-剥がれたマス目の数/100)×100
◎:100%
○:90%以上100%未満
△:80%以上90%未満
×:80%未満
【0050】
(3)易接着性ポリエステルフィルムのヘイズ
易接着性ポリエステルフィルムのヘイズはJIS K 7136:2000に準拠し、濁度計(日本電色製、NDH2000)を用いて測定した。
【0051】
(4)キズ欠点の評価
易接着層を設けたフィルム A4サイズに切りだし、ブロムライトを当て、0.5mm以上のキズを数えた。判定評価は、以下のとおりとした。
◎:0個
○:1~5個
×:6個以上
【0052】
(5)白ムラ欠点の評価
巻芯の加圧状態を再現するため、易接着層を設けたフィルムを10cm角サイズに切り出し、10枚セットにして上下を5mm厚みのSUSプレートに挟み込み、加圧プレス機で50kgf/cm2を24時間保持した後のフィルム外観を評価した。
判定評価は以下のとおりとした。
◎:処理前と変化なし。
○:5%以下の面積領域で白化(白ムラ)が観察される。
△:10%以下の領域で白化(白ムラ)が観察される。
×:10%を超える領域で白化(白ムラ)が観察される。
【0053】
(実施例1)
(1)塗布液の調合
本発明に用いる塗布液を以下の方法に従って調製した。ジメチルテレフタレート95質量部、ジメチルイソフタレート95質量部、エチレングリコール35質量部、ネオペンチルグリコール145質量部、酢酸亜鉛0.1質量部および三酸化アンチモン0.1質量部を反応容器に仕込み、180℃で3時間かけてエステル交換反応を行った。次に、5-ナトリウムスルホイソフタル酸6.0質量部を添加し、240℃で1時間かけてエステル化反応を行った後、250℃で減圧下(10~0.2mmHg)、2時間かけて重縮合反応を行い、数平均分子量19,500、軟化点60℃の共重合ポリエステル樹脂(A)を得た。
【0054】
得られた共重合ポリエステル系樹脂64質量部とブチルセロソルブ144質量部、水114質量部を加熱しながら6時間以上撹拌し、均一な淡白色の固形分濃度30%の水分散液を得た。
【0055】
以上の処理をして得られた共重合ポリエステル樹脂(A)、ブロックしたイソシアネート基を含有する自己架橋型ポリウレタン系樹脂(第一工業製薬製、エラストロン(登録商標)H-3DF)(B)を11.3質量部、シリコーン系界面活性剤(東レ・ダウコーニング製 67Additive)(C1)、コロイダルシリカ(日産化学工業製、スノーテックスOL;平均粒子径40nm)(P1)をそれぞれ固形分の質量比で(A)/(B)/(C1)/(P1)=50/50/0.1/5とし、それを溶媒中に分散させ、固形分7質量%の塗布液(X)とした。なお溶媒は、水とイソプロピルアルコールを95/5で混合したものとした。
【0056】
(2)積層ポリエステルフィルムの製造
原料ポリマーとして、粒子を含有していない、固有粘度が0.62dl/gのポリエチレンテレフタレート樹脂ペレットを、135℃で6時間減圧乾燥(133.3Pa)した。次いで、ポリエチレンテレフタレート樹脂を押出機Iに、同ポリエチレンテレフタレートに平均粒子径が1.5μmのシリカ粒子を0.10%添加した樹脂ペレットを押出機IIにそれぞれ投入し、厚み比がII/I/II=5/90/5となるように285℃で溶融押出し、表面温度25℃の金属ロール上で急冷固化し、キャストフィルムを得た。
【0057】
得られたキャストフィルムを、加熱されたロール群及び赤外線ヒーターで95℃に加熱し、次いで、前記塗布液Xをグラビアコーターで40m/分の速度で走行する一軸配向PETフィルムの片面に塗布した。また、塗布量は最終的な固形分量として0.08g/m2になるようにした。その後テンターで120℃ 4倍横延伸し、引き続きテンター内で220℃で3%横方向に緩和しながら熱処理して、フィルムの全体厚みが50μmの易接着性ポリエステルフィルムを得た。易接着層の厚みは80nmであった。
【0058】
(実施例2~5)
表1のように共重合ポリエステル樹脂(A)/ブロックイソシアネート基を有するウレタン樹脂(B)の固形分質量比率を30/70、70/30、25/75、75/25に変更した以外は、実施例1と同様の方法で易接着性ポリエステルフィルムを得た。
【0059】
(実施例6~8、比較例1)
表1のように塗布液のシリコーン系界面活性剤(C1)を信越シリコーン製 KF-6012(C2)に変更したもの、モメンティブ製L-77(C3)に変更したもの、東レダウコーニング製502Additive(C4)の各々シリコーン系界面活性剤に変更したもの、及び界面活性剤を何も使用しないものとした以外は、各々実施例1と同様の方法で易接着性ポリエステルフィルムを得た。
【0060】
(比較例2、実施例9)
表1のように塗布液のシリコーン界面活性剤(C1)をDIC製フッ素系界面活性剤F-470(C5)に変更し添加量を調整したもの、およびシリコーン界面活性剤(C1)のままで添加量を5倍添加したものとした以外は、各々実施例1と同様の方法で易接着性ポリエステルフィルムを得た。
【0061】
(実施例10、11)
表1のように塗布液のコロイダルシリカ(P1)を日産化学製スノーテックスZL(P2、平均粒子径100nm)に変更したもの、日産化学製MP2040(P3、平均粒子径200nm)に変更し、含有量を調節したこと以外は、実施例1と同様の方法で易接着性ポリエステルフィルムを得た。なお、P2、P3共にP1と同様シリカ粒子である。
【0062】
(実施例12、13)
表1のように塗布液のコロイダルシリカ(P1)について、共重合ポリエスエル(A)とブロックイソシアネート基を有するウレタン樹脂(B)の固形分質量の合計に対する添加量を20質量部としたもの、0.2質量部としたものに変更した以外は、各々実施例1と同様の方法で易接着性ポリエステルフィルムを得た。
【0063】
(実施例14~17、比較例3)
基材フィルムとして、ポリエチレンテレフタレートに含有する平均粒子径、含有量を表1のように変化させた以外は、実施例1と同様の方法で易接着性ポリエステルフィルムを得た。
【0064】
(実施例18、19、比較例4)
表1に記載されるように、基材フィルムとして、ポリエチレンテレフタレートに平均粒子径が0.5μmのシリカ粒子を0.10%添加した樹脂ペレットを押出機IIに投入した層のみ、また平均粒子径が0.8μmのシリカ粒子を0.02%添加した樹脂ペレットを押出機IIに投入した層のみ、およびポリエチレンテレフタレート樹脂のみを押出機Iに投
入した層のみで作製した単層のものに各々変更した以外は、実施例1と同様の方法で易接着性ポリエステルフィルムを得た。
【0065】
各実施例及び各比較例のフィルム作製条件及び評価結果を、以下の表1、2に整理する。
【0066】
【0067】
本発明によれば、キズ欠点の少なく、かつ製品ロール保管時での巻締まりなどに起因する外観欠点が発生しない易接着性ポリエステルフィルムおよびその効率的な製造方法の提供が可能となった。