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特開2024-110992N末端ドメインアンドロゲン受容体阻害剤の固体形態およびその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110992
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】N末端ドメインアンドロゲン受容体阻害剤の固体形態およびその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/505 20060101AFI20240808BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240808BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240808BHJP
   A61P 35/00 20060101ALN20240808BHJP
【FI】
A61K31/505
A61K45/00
A61P43/00 121
A61P35/00
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024091400
(22)【出願日】2024-06-05
(62)【分割の表示】P 2022562715の分割
【原出願日】2021-04-16
(31)【優先権主張番号】63/011,671
(32)【優先日】2020-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】521150765
【氏名又は名称】エッサ ファーマ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ジョウ, ハン-ジエ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィルシク, ピーター
(57)【要約】
【課題】
アンドロゲン受容体調節因子
【解決手段】
本発明は、化合物Iの結晶形態、その塩、溶媒和物、もしくは溶媒和塩、または化合物Iの非結晶形態、その塩、溶媒和物、もしくはその溶媒和塩に関する。本発明はまた、結晶形態および/または非結晶形態を含む組成物、結晶形態および/または非結晶形態、およびそれらを含む組成物の治療用途を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物Iの結晶形態、
【化1】
または、その薬学的に許容される塩、溶媒和物、または溶媒和塩。
【請求項2】
化合物Iが、無水または非溶媒和である、請求項1に記載の結晶形態。
【請求項3】
化合物Iが、薬学的に許容される塩として存在しない、請求項1または2に記載の結晶形態。
【請求項4】
約17.48±0.2、20.78±0.2、および21.80±0.2度2シータのピークを含むX線粉末回折(XRPD)パターンを呈する、請求項1~3のいずれか一項に記載の結晶形態。
【請求項5】
前記XRPDパターンが、約5.19±0.2および12.94±0.2度2シータのピークをさらに含む、請求項4に記載の結晶形態。
【請求項6】
前記XRPDパターンが、約17.80±0.2、18.74±0.2、19.57±0.2、22.59±0.2、25.28±0.2、または29.95±0.2度2シータから選択される少なくとも二つのピークをさらに含む、請求項4または5に記載の結晶形態。
【請求項7】
表1Bのピークを含むXRPDパターンを呈する、請求項4~6のいずれか一項に記載の結晶形態。
【請求項8】
約5.19±0.2、12.94±0.2、17.48±0.2、20.78±0.2、および21.80±0.2度2シータの前記XRPDピークが、少なくとも35%のピーク強度を有する、請求項4または5に記載の結晶形態。
【請求項9】
27.3±0.2および31.7±0.2度2シータのピークが除外されるならば、図1と実質的に類似するXRPDパターンを呈する形態Aである、請求項1~8のいずれか一項に記載の結晶形態。
【請求項10】
約182℃で開始される吸熱ピークを含む示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムを呈する、請求項1~9のいずれか一項に記載の結晶形態。
【請求項11】
約284℃で開始される勾配の変化を含む熱重量分析(TGA)サーモグラムを呈する、請求項1~10のいずれか一項に記載の結晶形態。
【請求項12】
前記結晶形態が、約80%~約99%の範囲の純度を有する、請求項1~11のいずれか一項に記載の結晶形態。
【請求項13】
前記結晶形態が、約95%以上の純度を有する、請求項1~11のいずれか一項に記載の結晶形態。
【請求項14】
前記結晶形態が、約99%以上の純度を有する、請求項1~11のいずれか一項に記載の結晶形態。
【請求項15】
化合物Iの非結晶形態、
【化2】
または、その薬学的に許容される塩、溶媒和物、または溶媒和塩。
【請求項16】
化合物Iが、無水または非溶媒和である、請求項15に記載の非結晶形態。
【請求項17】
化合物Iが、薬学的に許容される塩として存在しない、請求項15または16に記載の非結晶形態。
【請求項18】
27.3±0.2および31.7±0.2度2シータのピークが除外されるならば、図7(下から3番目のスペクトラム)と実質的に類似するXRPDパターンを呈する、請求項15~17のいずれか一項に記載の非結晶形態。
【請求項19】
約91℃の発熱ピークを含む示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムを呈する、請求項15~18のいずれか一項に記載の非結晶形態。
【請求項20】
約178℃で開始される吸熱ピークを含む示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムを呈する、請求項15~19のいずれか一項に記載の非結晶形態。
【請求項21】
約61℃のガラス転移温度を呈する、請求項15~20のいずれか一項に記載の非結晶形態。
【請求項22】
約280℃で開始される勾配の変化を含む熱重量分析(TGA)サーモグラムを呈する、請求項15~21のいずれか一項に記載の非結晶形態。
【請求項23】
前記非結晶形態が、約80%~約99%の範囲の純度を有する、請求項15~22のいずれか一項に記載の非結晶形態。
【請求項24】
前記非結晶形態が、約95%以上の純度を有する、請求項15~22のいずれか一項に記載の非結晶形態。
【請求項25】
前記非結晶形態が、約99%以上の純度を有する、請求項15~22のいずれか一項に記載の非結晶形態。
【請求項26】
前記非結晶形態が、図13および15に示されるパターンのいずれか一つに実質的に類似するX線粉末回折(XRPD)パターンを呈する、請求項15に記載の非結晶形態。
【請求項27】
図13のSDD-A、SDD-B、SDD-C、SDD-D、もしくはSDD-Eと標識されたパターン、または図15のSDD-H、SDD-I、SDD-J、SDD-N、SDD-O、SDD-O、SDD-P、SDD-Q、もしくはSDD-Rと標識されたパターンと実質的に類似したXRPDパターンを呈する、請求項26に記載の非結晶形態。
【請求項28】
図15のSDD-H、SDD-I、SDD-J、SDD-N、SDD-O、SDD-O、SDD-P、SDD-Q、またはSDD-Rと標識されたパターンと実質的に類似したXRPDパターンを呈する、請求項26に記載の非結晶形態。
【請求項29】
示差走査熱量計によって測定される、約60℃~約180℃の範囲のガラス転移温度(Tg)を呈する、請求項26~28のいずれか一項に記載の非結晶形態。
【請求項30】
示差走査熱量計によって測定される、約60℃~約90℃の範囲のガラス転移温度(Tg)を呈する、請求項26~28のいずれか一項に記載の非結晶形態。
【請求項31】
示差走査熱量計によって測定される、約60℃~約80℃の範囲のガラス転移温度(Tg)を呈する、請求項26~28のいずれか一項に記載の非結晶形態。
【請求項32】
約80%~約99%の範囲の純度を有する、請求項26~31のいずれか一項に記載の非結晶形態。
【請求項33】
約95%以上の純度を有する、請求項26~31のいずれか一項に記載の非結晶形態。
【請求項34】
約99%以上の純度を有する、請求項26~31のいずれか一項に記載の非結晶形態。
【請求項35】
化合物Iの結晶形態またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、立体異性体、またはプロドラッグの10%未満を含む、請求項26~34のいずれか一項に記載の非結晶形態。
【請求項36】
化合物Iの結晶形態またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、立体異性体、またはプロドラッグの5%未満を含む、請求項26~34のいずれか一項に記載の非結晶形態。
【請求項37】
請求項1~14のいずれか一項に記載の結晶形態および薬学的に許容される担体を含む、組成物。
【請求項38】
前記結晶形態が形態Aである、請求項37に記載の組成物。
【請求項39】
化合物Iの非結晶形態またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、または溶媒和塩をさらに含む、請求項37または38に記載の組成物。
【請求項40】
請求項15~36のいずれか一項に記載の非結晶形態および薬学的に許容される担体を含む、組成物。
【請求項41】
前記組成物が、医薬固体分散体組成物である、請求項40に記載の組成物。
【請求項42】
一つ以上の追加の治療薬をさらに含む、請求項37~41のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項43】
請求項1~14のいずれか一項に記載の結晶形態を、それを必要とする対象に投与することを含む、癌を治療する方法。
【請求項44】
請求項15~36のいずれか一項に記載の非結晶形態を、それを必要とする対象に投与することを含む、癌を治療する方法。
【請求項45】
前記癌が、前立腺癌、乳癌、卵巣癌、膀胱癌、膵癌、肝細胞癌、子宮内膜癌、または唾液腺癌から選択される、請求項43または44に記載の方法。
【請求項46】
前記癌が前立腺癌である、請求項43または44に記載の方法。
【請求項47】
前記前立腺癌が、原発性または限局性の前立腺癌、局所進行性前立腺癌、再発性前立腺癌、進行性前立腺癌、転移性前立腺癌、非転移性去勢抵抗性前立腺癌、転移性去勢抵抗性前立腺癌、およびホルモン感受性前立腺癌である、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記前立腺癌が、転移性去勢抵抗性前立腺癌である、請求項46に記載の方法。
【請求項49】
前記前立腺癌が、全長アンドロゲン受容体または短縮アンドロゲン受容体スプライス変異体を発現する、請求項46に記載の方法。
【請求項50】
請求項1~14のいずれか一項に記載の結晶形態を、それを必要とする対象に投与することを含む、アンドロゲン受容体活性の調節方法。
【請求項51】
請求項15~36のいずれか一項に記載の非結晶形態を、それを必要とする対象に投与することを含む、アンドロゲン受容体活性の調節方法。
【請求項52】
前記アンドロゲン受容体活性の調節が、前立腺癌、乳癌、卵巣癌、膀胱癌、膵癌、肝細胞癌、子宮内膜癌、唾液腺癌、脱毛、にきび、多毛症、卵巣嚢胞、多嚢胞性卵巣疾患、早発思春期、球脊髄性筋萎縮症、または加齢黄斑変性症から選択される状態または疾患を治療するためのものである、請求項50または51に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年4月17日出願の米国仮出願第63/011,671号の利益を主張し、当該仮出願の開示内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、化合物Iの固体形態、またはその薬学的に許容される塩および/または溶媒和物、結晶形態を含む医薬組成物、およびその治療用途に関する。特に、本開示は、前立腺癌などの癌を含む様々な疾患を治療するために有用な、化合物Iの固体形態またはその薬学的に許容される塩および/または溶媒和物に関する。
【背景技術】
【0003】
アンドロゲンはアンドロゲン受容体(AR)を介してその効果を媒介する。アンドロゲンは、広範な発生的および生理学的応答において役割を果たし、雄性性分化、精子形成の維持、および雄性ゴナドトロピン制御に関与している(R.K.Ross,G.A.Coetzee,C.L.Pearce,J.K.Reichardt,P.Bretsky,L.N.Kolonel,B.E.Henderson,E.Lander,D.Altshuler & G.Daley,Eur Urol 35,355-361(1999);A.A.Thomson,Reproduction 121,187-195(2001);N.Tanji,K.Aoki & M.Yokoyama,Arch Androl 47,1-7(2001))。いくつかの証拠は、アンドロゲンが前立腺の発癌の発生と関連していることを示している。第一に、アンドロゲンは、げっ歯類モデルで、前立腺癌発癌を誘発し(R.L.Noble,Cancer Res 37,1929-1933(1977);R.L.Noble,Oncology 34,138-141(1977))、およびタンパク質同化ステロイドの形態でアンドロゲンを受けている男性は、前立腺癌の発生率が高い(J.T.Roberts & D.M.Essenhigh,Lancet 2,742(1986);J.A.Jackson,J.Waxman & A.M.Spiekerman,Arch Intern Med 149,2365-2366(1989);P.D.Guinan,W.Sadoughi,H.Alsheik,R.J.Ablin,D.Alrenga & I.M.Bush,Am J Surg 131,599-600(1976))。第二に、ヒトまたはイヌが思春期前に去勢された場合、前立腺癌は発生しない(J.D.Wilson & C.Roehrborn,J Clin Endocrinol Metab 84,4324-4331(1999);G.Wilding,Cancer Surv 14,113-130(1992))。成人男性の去勢は、前立腺の退縮および前立腺上皮のアポトーシスを引き起こし、一方で他の男性の外性器には効果を生じさせない(E.M.Bruckheimer & N.Kyプリアノウ、Cell Tissue Res 301,153‐162(2000);J.T.Isaacs,Prostate 5,545‐557(1984))。アンドロゲンに対するこの依存は、アンドロゲンアブレーション療法(ABT)またはアンドロゲン除去療法(ADT)としても知られる化学的または外科的去勢を用いて前立腺癌を治療する基礎となる根拠を提供する。
【0004】
アンドロゲン受容体(AR)は、乳癌細胞において二つの役割を果たす転写因子であり、エストロゲン受容体-アルファの発現および活性に応じて増殖を促進または阻害する。ARの発現は、すべての乳癌の最大90%で検出される。
【0005】
アンドロゲンは、多嚢胞性卵巣症候群などの女性疾患ならびに癌においても役割を果たす。一つの例は、アンドロゲンのレベル上昇が、卵巣癌の発症リスクの増加と関連している卵巣癌である(K.J.Helzlsouer,A.J.Alberg,G.B.Gordon,C.Longcope,T.L.Bush,S.C.Hoffman & G.W.Comstock,JAMA 274,1926-1930(1995);R.J.Edmondson,J.M.Monaghan & B.R.Davies,Br J Cancer 86,879-885(2002))。ARは、卵巣癌の大部分(H.A.Risch,J Natl Cancer Inst 90,1774-1786(1998);B.R.Rao & B.J.Slotman,Endocr Rev 12,14-26(1991);G.M.Clinton & W.Hua,Crit Rev Oncol Hematol 25,1-9(1997))で検出されており、一方、エストロゲン受容体‐アルファ(ERa)およびプロゲステロン受容体は、卵巣腫瘍の50%未満で検出されている。
【0006】
進行性前立腺癌に利用可能な唯一の有効な治療は、前立腺管腔細胞の生存に必要不可欠なアンドロゲンの離脱である。アンドロゲンアブレーション療法は、血清前立腺特異的抗原(PSA)の減少と同時に、腫瘍量の一時的な減少を引き起こす。残念なことに、前立腺癌は、精巣アンドロゲンの非存在下で最終的に再び増加し得る(去勢抵抗性疾患)(Huber et al 1987 Scand J.Urol Nephrol.104,33‐39)。ARによってなお駆動される去勢抵抗性前立腺癌は、血清PSAの上昇力価によって症状の発症前に生化学的に特徴付けられる(Miller et al 1992 J.Urol.147,956‐961)。一度疾患が去勢抵抗性になると、ほとんどの患者が二年以内に疾患に屈する。
【0007】
ARは、カルボキシ末端リガンド結合ドメイン(LBD)、二つの亜鉛フィンガーモチーフを含むDNA結合ドメイン(DBD)、および活性化機能-1(AF-1)内に二つの転写活性化ユニット(tau1およびtau5)を含むN末端ドメイン(NTD)を含む、別個の機能ドメインを有する。アンドロゲン(リガンド)のARのLBDへの結合は、PSAなどの「正常に」アンドロゲンが制御する遺伝子のプロモーターおよびエンハンサー領域上のアンドロゲン応答要素(ARE)と呼ばれるその特定のDNAコンセンサス部位に受容体が効果的に結合して転写を開始するように、その活性化をもたらす。ARは、アンドロゲンの非存在下で、cAMP依存性プロテインキナーゼ(PKA)経路の刺激、インターロイキン‐6(IL‐6)を用いておよび様々な成長因子によって活性化され得る(Culig et al 1994 Cancer Res.54,5474‐5478;Nazareth et al 1996 J.Biol.Chem.271,19900‐19907;Sadar 1999 J.Biol.Chem.274,7777‐7783、Ueda et al 2002 A J.Biol.Chem.277、7076‐7085、およびUeda et al 2002 B J.Biol.Chem.277,38087-38094)。ARのリガンド非依存性形質転換のメカニズムは、1)核転座を示唆する核ARタンパク質の増加、2)AR/ARE複合体形成の増加、および3)AR-NTDを含むと示されている(Sadar 1999 J.Biol.Chem.274,7777-7783;Ueda et al 2002 A J.Biol.Chem.277,7076-7085;and Ueda et al 2002 B J.Biol.Chem.277,38087-38094)。ARは、去勢抵抗性疾患における代替的なシグナル伝達経路によって精巣アンドロゲンの非存在下で活性化することができ、これは、核ARタンパク質が二次前立腺癌腫瘍に存在するという研究結果と一致する(Kim et al 2002 Am.J.Pathol.160,219-226;and van der Kwast et al 1991 Inter.J.Cancer 48,189-193)。
【0008】
臨床的に利用可能なARの阻害剤には、ビカルタミド(Casodex(商標))、ニルタミド、フルタミド、およびエンザルタミドなどの非ステロイド性抗アンドロゲン剤が含まれる。酢酸シプロテロンおよびスピロノラクトンなどのステロイド性抗アンドロゲン剤のクラスも存在する。ステロイド性および非ステロイド性抗アンドロゲン剤の両方が、ARのLBDを標的とし、恐らく、これらの同一の抗アンドロゲン薬による、ARの活性化につながる乏しい親和性および変異により(Taplin,M.E.,Bubley,G.J.,Kom Y.J.,Small E.J.,Uptonm M.,Rajeshkumarm B.,Balkm S.P.,Cancer Res.,59,2511-2515(1999))、および構造的に活性なARスプライス変異体により、大部分は失敗する。抗アンドロゲン薬は、リガンド結合ドメイン(LBD)を欠き、去勢再発性前立腺癌と関連し(Dehm SM,Schmidt LJ,Heemers HV,Vessella RL,Tindall DJ.,Cancer Res 68,5469-77,2008;Guo Z,Yang X,Sun F,Jiang R,Linn DE,Chen H,Chen H,Kong X,Melamed J,Tepper CG,Kung HJ,Brodie AM,Edwards J,Qiu Y.,Cancer Res.69,2305-13,2009;Hu et al 2009 Cancer Res.69,16-22;Sun et al 2010 J Clin Invest.2010 120,2715-30)、かつアビラテロンおよびエンザルタミドに耐性がある(Antonarakis et al.,N Engl J Med.2014,371,1028-38;Scher et al JAMA Oncol.2016 doi:10.1001)、構造的に活性なARスプライス変異体には効果がない。従来の療法は、そのC末端ドメインを介したARのアンドロゲン依存性活性化に集中してきた。
【0009】
現在開発中の全長ARおよび/または短縮ARスプライス変異体に結合する、以前に報告されたその他の関連するAR拮抗剤(WO2010/000066、WO2011/082487、WO2011/082488、WO2012/145330、WO2015/031984、WO2016/058080、およびWO2016/058082を参照)には、ニクロサミドなどのAR分解物(Liu C et al 2014)、ガレテロン(Njar et al 2015、Yu Z al 2014)、およびARV-330/アンドロゲン受容体PROTAC(Neklesa et al 2016 J Clin Oncol 34 suppl 2S、abstr 267)、AR DBD阻害剤VPC-14449(Dalal K et al 2014 J Biol Chem.289(38):26417-29;Li H et al 2014 J Med Chem.57(15):6458-67)、抗アンドロゲンアパルタミド(Clegg NJ et al 2012)、ODM-201(Moilanen AM et al 2015)、ODM-204(Kallio et al J Clin Oncol 2016 vol.34 no.2_suppl 230)、TAS3681(Minamiguchi et al 2015 J Clin Oncol 33,suppl 7;abstr 266)、およびAR NTD阻害剤3E10-AR441bsAb(Goicochea NL et al 2015)、およびシントカミド(Sadar et al 2008、Banuelos et al 2016)が含まれる。
【0010】
AR-NTDはまた、薬剤開発の標的でもあり(例えば、WO2000/001813、Myung et al.J.Clin.Invest 2013,123,2948を参照)、これは、NTDが、AR転写活性化に必要な必須領域である活性化機能-1(AF-1)を含むためである(Jenster et al 1991.Mol Endocrinol.5,1396-404)。AR-NTDは、アンドロゲンの非存在下でARの活性化において重要な役割を果たす(Sadar,M.D.1999 J.Biol.Chem.274,7777‐7783;Sadar MD et al 1999 Endocr Relat Cancer.6,487‐502;Ueda et al 2002 J.Biol.Chem.277,7076‐7085;Ueda 2002 J.Biol.Chem.277,38087-38094;Blaszczyk et al 2004 Clin Cancer Res.10,1860‐9;Dehm et al 2006 J Biol Chem.28,27882‐93;Gregory et al 2004 J Biol Chem.279,7119‐30)。AR-NTDは、デコイ分子の適用によって示されるように、前立腺癌のホルモン進行において重要である(Quayle et al 2007,Proc Natl Acad Sci U S A .104,1331-1336)。
【0011】
AR C末端LBDの結晶構造は解決されているが、その高い柔軟性と溶液の内在的ディスオーダーのため、これはNTDには当てはまらず(Reid et al 2002 J.Biol.Chem.277,20079‐20086)、このため仮想ドッキング創薬アプローチが阻害されている。NTDドメインとの相互作用を介してARを調節する可能性のある化合物は、公開されたPCT番号WO2010/000066、WO2011/082487、WO2011/082488、WO2012/145330、WO2012/139039、WO2012/145328、WO2013/028572、WO2013/028791、WO2014/179867、WO2015/031984、WO2016/058080、WO2016/058082、WO2016/112455、WO2016/141458、WO2017/177307、WO2017/210771、WO2018/045450、WO2019/226991、WO2020/081999、およびWO2020/198710で開示されるビスフェノール化合物が含まれ、これらは、参照により本明細書において全体が組み入れられたものとする。
【0012】
転写活性アンドロゲン受容体は、アンドロゲンの血液レベルの低下にもかかわらず、CRPCにおいて主要な役割を果たす(Karantanos,T.et al Oncogene 2013,32,5501-5511;Harris,W.P.et al Nature Clinical Practice Urology,2009,6,76-85)。ADTに対する耐性のARメカニズムには、ARの過剰発現(Visakorpi,T.et al Nature Genetics 1995,9,401-406;Koivisto,P.et al Scandinavian Journal of Clinical and Laboratory Investigation Supplementum 1996,226,57-63)、AR LBDの機能獲得変異(Culig Z.et al Molecular Endocrinology 1993,7,1541-1550)、腫瘍内アンドロゲン合成(Cai,C.et al Cancer Research 2011,71,6503-6513)、ARコアクチベーターの変更された発現および機能(Ueda,T.et al The Journal of Biological Chemistry 2002,277,38087-38094;Xu J.et al Nature Reviews Cancer 2009,9,615-630)、ARの翻訳後修飾異常(Gioeli D.et al Molecular and Cellular Endocrinology 2012,352,70-78;van der Steen T.et al International Journal of Molecular Sciences 2013,14,14833-14859)、およびリガンド結合ドメイン(LBD)を欠くARスプライス変異体(AR-Vs)の発現(Karantanos,T.et al Oncogene 2013,32,5501-5511;Andersen R.J.et al Cancer Cell 2010,17,535-546;Myung J.K.et al The Journal of Clinical Investigation 2013,123,2948-2960;Sun S.et al The Journal of Clinical Investigation 2010,120,2715-2730)、が含まれる。ビカルタミドおよびエンザルタミド標的AR LBDなどの抗アンドロゲン剤は、AR-V7などの短縮構造的活性AR-Vには効果を有しない(Li Y.et al Cancer Research 2013,73,483-489)。AR-V7の発現は、現在のホルモン療法に対する耐性と関連している(Li Y.et al Cancer Research 2013,73,483-489;Antonarakis E.S.et al The New England Journal of Medicine 2014,371,1028-1038)。
【発明の概要】
【0013】
本開示は、アンドロゲン受容体調節因子、化合物Iの結晶形態、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、または溶媒和塩に関する。
【化1】
【0014】
一実施形態では、化合物Iはアンドロゲン受容体N末端ドメイン阻害剤である。
【0015】
本開示は、化合物Iの結晶形態、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、または溶媒和塩に関する。一実施形態では、結晶形態は、無水または非溶媒和である。結晶形態の一実施形態では、化合物Iは薬学的に許容される塩として存在しない。
【0016】
本開示の一実施形態では、化合物Iの結晶形態またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、または溶媒和塩は、約17.48±0.2、20.78±0.2、および21.80±0.2度2シータのピークを含むX線粉末回折(XRPD)パターンを呈する。一実施形態では、XRPDパターンは、約5.19±0.2および12.94±0.2度2シータのピークをさらに含む。一実施形態では、XRPDパターンは、約17.80±0.2、18.74±0.2、19.57±0.2、22.59±0.2、25.28±0.2、または29.95±0.2度2シータから選択される少なくとも二つのピークをさらに含む。
【0017】
本開示の一実施形態では、化合物Iの結晶形態またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、または溶媒和塩は、表1Bのピークを含むXRPDパターンを呈する。一実施形態では、約5.19±0.2、12.94±0.2、17.48±0.2、20.78±0.2、および21.80±0.2度2シータのXRPDピークは、少なくとも35%のピーク強度を有する。
【0018】
本開示の一実施形態では、化合物Iの結晶形態は、27.3±0.2および31.7±0.2度2シータのピークが除外されるならば、図1と実質的に類似したXRPDパターンを呈する形態Aである。
【0019】
本開示の一実施形態では、化合物Iの結晶形態またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、または溶媒和塩は、約182℃で開始される吸熱ピークを含む示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムを呈する。
【0020】
本開示の一実施形態では、化合物Iの結晶形態またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、または溶媒和塩は、約284℃で開始される勾配の変化を含む熱重量分析(TGA)サーモグラムを呈する。
【0021】
本開示の一実施形態では、化合物Iの結晶形態またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、または溶媒和塩は、約80%~約99%の範囲の純度を有する。本開示の一実施形態では、化合物Iの結晶形態またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、または溶媒和塩は、約95%以上の純度を有する。一実施形態では、結晶形態は、約97%以上の純度を有する。一実施形態では、結晶形態は、約99%以上の純度を有する。
【0022】
本開示は、化合物Iの非結晶形態またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、または溶媒和塩に関する。一実施形態では、非結晶形態は、無水または非溶媒和である。非結晶形態の一実施形態では、化合物Iは薬学的に許容される塩として存在しない。別の実施形態では、化合物Iの非結晶形態またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、または溶媒和塩は、医薬組成物中に存在する。特定の実施形態では、医薬組成物は、固体分散体中の化合物Iを含む。
【0023】
本開示の一実施形態では、化合物Iの非結晶形態は、27.3±0.2および31.7±0.2度2シータのピークが除外されるならば、図7(下からの三番目のスペクトル)と実質的に類似したXRPDパターンを呈する。
【0024】
本開示は、約91℃の発熱ピークを含む示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムを呈す、化合物Iの非結晶形態またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、または溶媒和塩に関する。一実施形態では、非結晶形態は、約178℃で開始される吸熱ピークを含む示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムを呈する。
【0025】
本開示は、約61℃でガラス転移温度を呈する、化合物Iの非結晶形態またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、または溶媒和塩に関する。
【0026】
本開示は、約280℃で開始される勾配の変化を含む熱重量分析(TGA)サーモグラムを呈する、化合物Iの非結晶形態またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、または溶媒和塩に関する。
【0027】
本開示の一実施形態では、化合物Iの非結晶形態またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、または溶媒和塩は、約80%~約99%の範囲の純度を有する。本開示の一実施形態では、化合物Iの非結晶形態またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、または溶媒和塩は、約95%以上の純度を有する。一実施形態では、非結晶形態は、約97%以上の純度を有する。一実施形態では、非結晶形態は、約99%以上の純度を有する。
【0028】
本開示はまた、本明細書に開示される化合物Iの結晶形態もしくは非結晶形態またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、または溶媒和塩のいずれか一つを含む組成物、および薬学的に許容される担体に関する。
【0029】
一実施形態では、本明細書に開示される組成物は、形態Aの結晶形態を含む。一実施形態では、組成物は、化合物Iの非結晶形態またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、もしくは溶媒和塩をさらに含む。
【0030】
一実施形態では、本明細書に開示される組成物のいずれか一つは、追加の治療薬をさらに含むことができる。一実施形態では、本明細書に開示される組成物のいずれか一つは、一つ以上の追加の治療薬をさらに含むことができる。
【0031】
本開示はまた、本明細書に開示される化合物Iの結晶形態もしくは非結晶形態またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、または溶媒和塩のうちのいずれか一つを投与することを含む、癌を治療する方法に関する。一実施形態では、癌は、前立腺癌、乳癌、卵巣癌、膀胱癌、膵癌、肝細胞癌、子宮内膜癌、または唾液腺癌から選択される。一実施形態では、癌は前立腺癌である。一実施形態では、前立腺癌は、原発性または限局性の前立腺癌、局所進行性前立腺癌、再発性前立腺癌、進行性前立腺癌、転移性前立腺癌、非転移性去勢抵抗性前立腺癌、転移性去勢抵抗性前立腺癌、およびホルモン感受性前立腺癌である。一実施形態では、前立腺癌は、転移性去勢抵抗性前立腺癌である。一実施形態では、前立腺癌は、全長アンドロゲン受容体または短縮アンドロゲン受容体スプライス変異体を発現する。
【0032】
本開示はまた、本明細書に開示される化合物Iの結晶形態もしくは非結晶形態またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、または溶媒和塩のうちのいずれか一つを投与することを含む、アンドロゲン受容体活性を調節する方法に関する。一実施形態では、アンドロゲン受容体活性の調節は、前立腺癌、乳癌、卵巣癌、膀胱癌、膵癌、肝細胞癌、子宮内膜癌、唾液腺癌、抜け毛、にきび、多毛症、卵巣嚢胞、多嚢胞性卵巣疾患、早発思春期、球脊髄性筋萎縮症、または加齢黄斑変性症から選択される状態または疾患を治療するためのものである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1図1は、化合物Iの結晶形態AのX線粉末回折(XRPD)スペクトルを示す。
【0034】
図2図2は、化合物Iの結晶形態Aの熱重量分析(TGA)/示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムを示す。
【0035】
図3図3は、化合物Iの結晶形態Aの動的水蒸気吸着(DVS)プロファイルを示す。
【0036】
図4図4は、結晶形態A、結晶形態Aを有する材料C、材料B、および材料Dにおける化合物IのXRPDスペクトルオーバーレイを示す。
【0037】
図5図5は、化合物Iの材料Dの熱重量分析(TGA)/示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムを示す。
【0038】
図6図6は、結晶形態A、乾燥前の材料D、および50~52℃の真空下で3日間乾燥後の材料Dにおける化合物IのXRPDスペクトルオーバーレイを示す。
【0039】
図7図7は、NaCl、化合物Iの非結晶形態、化合物Iのディスオーダー形態A、および化合物Iのディスオーダー形態のXRPDスペクトルオーバーレイを示す。
【0040】
図8図8は、化合物Iの非結晶形態の温度変調DSCサーモグラムを示す。
【0041】
図9図9は、化合物Iの非結晶形態のTGAサーモグラムを示す。
【0042】
図10図10は、ディスオーダー形態Aおよび非結晶ならびにディスオーダーな化合物Iの結晶化実験から得られた形態AのXRPDスペクトルオーバーレイを示す。
【0043】
図11図11は、実験的に取得された化合物の形態Aおよび単結晶データからの形態Aの計算されたパターンのXRPDスペクトルオーバーレイを示す。
【0044】
図12図12は、LNCaP腫瘍を有するオスのNCGマウスへの代表的な化合物の経口投与の実験終了時に測定された、ベースラインからの個々の腫瘍体積の変化を示す。
【0045】
図13図13は、化合物IのSDD組成物A~Eおよび形態AのXRPDスペクトルオーバーレイを示す。
【0046】
図14図14は、化合物IのSDD組成物A~Eの変調DSCサーモグラムオーバーレイを示す。
【0047】
図15図15は、化合物IのSDD組成物H~JおよびN~RのXRPDスペクトルオーバーレイを示す。
【0048】
図16図16は、化合物Iの非結晶形態の溶解性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0049】
その中の図面および付録を含むすべての刊行物、特許、および特許出願は、各刊行物、特許または特許出願、図面、または付録が、すべての目的に対してその全体が参照により組み込まれることを具体的かつ個別に示したのと同じ程度で、すべての目的に対してその全体が参照により組み込まれる。
【0050】
定義
以下の用語は、当業者によって十分理解されていると思われるが、以下の定義は、本開示の主題の説明を容易にするために記載される。
【0051】
化合物Iは、以下に示される構造を有するN-{4-[(4-{2-[3-クロロ-4-(2-クロロエトキシ)-5-シアノフェニル〕プロパン-2-イル}フェノキシ)メチル〕ピリミジン-2-イル}メタンスルホンアミドである。化合物Iは、WO2020/081999に開示されており、これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。一実施形態では、化合物Iはアンドロゲン受容体N末端ドメイン阻害剤である。
【化2】
【0052】
本明細書全体を通して、用語「約」および/または「およそ」は、数値および/または範囲と併せて使用され得る。用語「約」は、列挙された値に近いそれらの値を意味すると理解される。さらに、「約(ある値)未満」、または「約(ある値)超」という言葉は、本明細書に提供される「約」という用語の定義を考慮して理解されるべきである。用語「約」および「およそ」は、互換的に使用され得る。
【0053】
本明細書全体を通して、一定の量に対して数値範囲が提供される。これらの範囲は、その中の全ての部分範囲を含むと理解されるべきである。したがって、範囲「50~80」は、その中の全ての可能な範囲(例えば、51~79、52~78、53~77、54~76、55~75、60~70など)を含む。さらに、所与の範囲内のすべての値は、それによって包含される範囲に対する終点であってもよい(例えば、範囲50~80は、55~80、50~75などの終点を有する範囲を含む)。
【0054】
用語「a」または「an」は、その実体のうちの一つ以上を指し、例えば“アンドロゲン受容体調節因子”は、一つ以上のアンドロゲン受容体調節因子または少なくとも一つのアンドロゲン受容体調節因子を指す。そのため、用語「a」(または「an」)、「一つ以上」および「少なくとも一つ」は、本明細書では互換的に使用される。さらに、不定冠詞「a」または「an」による「阻害剤」への言及は、文脈上明らかに阻害剤が一つだけ存在することを要求しない限り、一つ以上の阻害剤が存在する可能性を排除するものではない。
【0055】
本明細書で使用される場合、本明細書および特許請求の範囲において使用される「含む」という動詞およびその活用形は、その非限定的な意味で使用され、単語に続く項目を含み、具体的に言及されていない項目も除外されないことを意味する。本発明は、請求項に記載されるステップ、要素、および/または試薬を、適切に「含む」、「からなる」、または「本質的にからなる」ことができる。
【0056】
さらに、任意の選択要素を除外するために、特許請求の範囲を起草してもよいことに留意されたい。そのため、本陳述書は、請求要素の列挙、または「否定」の制限の使用に関連して、「ただ」、「のみ」などのそのような排他的な用語の使用のための先行的基礎としての役割を果たすことを意図している。
【0057】
用語「薬学的に許容される塩」は、酸および塩基付加塩の両方を含む。薬学的に許容される塩には、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、メタンスルホン酸、カンファ―スルホン酸、シュウ酸、マレイン酸、コハク酸、クエン酸、ギ酸、臭化水素酸、安息香酸、酒石酸、フマル酸、サリチル酸、マンデル酸、カルボン酸などの塩を形成するために、無機または有機酸で塩基として機能する活性化合物を反応させることによって得られるものが含まれる。当業者であれば、酸付加塩は、多くの公知の方法のいずれかを介して、化合物を適切な無機または有機酸と反応させることによって調製され得ることをさらに認識するであろう。
【0058】
本明細書で使用される場合、「溶媒和物」は、溶媒和(溶媒分子と本発明の活性剤の分子またはイオンとの組み合わせ)、または一つ以上の溶媒分子を有する溶質イオンまたは分子(本発明の活性剤)からなる凝集体を意味する。本発明では、好ましい溶媒和物は水和物である。水和物の例としては、限定するものではないが、半水和物、一水和物、二水和物、三水和物、六水和物などが挙げられる。当業者は、本化合物の薬学的に許容される塩も溶媒和物形態(溶媒和塩)で存在し得ることを理解すべきである。溶媒和物は、典型的には、本化合物の調製の一部であるか、または本発明の無水化合物による水分の自然吸収のいずれかである水和を介して形成される。水和物を含む溶媒和物は、理論混合比で、例えば、溶媒和物当たりまたは水和物分子当たり、二、三、四個の塩分子で形成され得る。別の可能性としては、例えば、二個の塩分子が、三、五、七個の溶媒または水和物分子に化学量論的に関連する。結晶化に使用される溶媒、例えばアルコール、特にメタノールおよびエタノール、アルデヒド、ケトン、特にアセトン、エステル、例えばエチルアセテートは、結晶格子に埋め込まれてもよい。好ましいのは、薬学的に許容される溶媒である。
【0059】
用語「治療する」は、対象の状態の少なくとも一つの症状を軽減、緩和、遅延、低減、改善、または管理する、のうちの一つ以上を意味する。また、用語「治療する」は、発症を停滞させる、遅らせる(すなわち、病態の臨床症状の前の期間)、または病態の発症もしくは悪化のリスクを低減する、のうちの一つ以上を意味し得る。
【0060】
「有効量」は、状態、障害、または状態を治療するために患者に投与される場合、そのような治療に十分である、本発明による製剤の量を意味する。「有効量」は、活性成分、治療される状態、障害、または状態ならびにその重症度、および治療される哺乳類の年齢、体重、身体状態、および応答性に応じて変化するであろう。
【0061】
用量または量に適用される「療法的に有効」という用語は、それを必要とする患者に投与した後に所望の臨床的利益をもたらすのに十分な化合物または医薬製剤の量を指す。
【0062】
本明細書で使用される場合、「対象」は、ヒト、非ヒト霊長類、哺乳類、ラット、マウス、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ、などであり得る。対象は、前立腺癌、乳癌、卵巣癌、唾液腺癌、もしくは子宮内膜癌などの癌を有するか、または癌を有するリスクを有する疑いがあり得、または、にきび、多毛症、脱毛症、良性前立腺過形成、卵巣嚢胞、多嚢胞性卵巣疾患、早発思春期、球脊髄性筋萎縮症、または加齢黄斑変性症を有するか、または有するリスクを有する疑いがあり得る。前立腺癌、乳癌、卵巣癌、膀胱癌、膵癌、肝細胞癌、唾液腺癌、または子宮内膜癌などの様々な癌の診断方法、およびにきび、多毛症、脱毛症、良性前立腺過形成、卵巣嚢胞、多嚢胞性卵巣疾患、早発思春期、球脊髄性筋萎縮症、または加齢黄斑変性症の癌の診断方法および前立腺癌、乳癌、卵巣癌、膀胱癌、膵癌、肝細胞癌、唾液腺癌、または子宮内膜癌などの癌の臨床的描写、にきび、多毛症、脱毛症、良性前立腺過形成、卵巣嚢胞、多嚢胞性卵巣疾患、早発思春期、球脊髄性筋萎縮症、または加齢黄斑変性症の診断方法および臨床的描写は、当業者に公知である。
【0063】
「哺乳類」には、ヒト、および実験動物(例えば、マウス、ラット、サル、イヌなど)ならびに家庭用のペット(例えば、ネコ、イヌ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ウサギなど)などの家畜動物、および野生動物などの非家畜動物の両方が含まれる。
【0064】
別段の示唆が無い限り、本明細書で参照される全ての重量パーセント(すなわち、「% by weight」および「wt.%」および「w/w」)は、医薬組成物の合計重量に対して測定される。
【0065】
本明細書で使用される場合、「実質的に」または「実質的」は、行動、特徴、特性、状態、構造、品目、または結果の完全なまたはほぼ完全な範囲または程度を指す。例えば、“実質的に”囲まれた物体は、物体が完全に囲まれているか、またはほぼ完全に囲まれていることを意味する。絶対的な完全性からの逸脱の正確な許容可能な程度は、場合によっては、特定の状況に依存し得る。しかしながら、一般的に言えば、完全性への近さは、絶対完了および全完了が得られた場合と同じ全体的な結果を有するようにするものとする。行動、特徴、特性、状態、構造、品目、または結果の完全またはほぼ完全な欠如を指すために否定的な含蓄で使用される場合でも、「実質的に」の使用は同様に適用される。例えば、他の活性剤を「実質的に含まない」組成物は、他の活性剤を完全に欠くか、またはほぼ完全に他の活性剤を欠くため、その効果が他の活性剤を完全に欠くのと同じであるかのいずれかである。言い換えれば、成分もしくは要素または別の活性剤を「実質的に含まない」組成物も、その測定可能な効果がない限り、このような品目を含んでもよい。
【0066】
多形は、化合物の、同じ化学式を維持しながら、異なる結晶形態に結晶化する能力として特徴付けることができる。所与の原薬の結晶多形は、同じ方法で互いに結合された同じ原子を含む原薬の任意の他の結晶多形と化学的に同一であるが、その結晶形態は異なり、安定性、溶解性、融点、バルク密度、流動特性、生物学的利用能などの一つ以上の物理的特性に影響を与える可能性がある。
【0067】
本明細書で使用される場合、用語「固体分散体」は、少なくとも二つの成分を含む固体状態(液体またはガス状態とは対照的に)のシステムであり、一方の成分は、他の成分または複数の成分(均質な混合)全体に多かれ少なかれ均等に分散される。概して、治療活性剤の固体分散体製剤は、不活性担体中の治療活性剤の分散混合物を指す。不活性担体は、結晶性担体(糖など)、ポリマー担体(HPMCASなど)、または界面活性剤およびポリマーの混合物であり得る。典型的には、治療活性剤の固体分散体は、治療活性剤の表面積を増加させ、薬物の溶解性および/または溶解速度を強化する。
【0068】
以下の説明は、本発明を理解するのに有用であり得る情報を含む。これは、本明細書に提供される情報のいずれかが、先行技術であるか、または現在請求されている発明に関連する、または具体的もしくは黙示的に参照される任意の刊行物が先行技術であることを認めるものではない。
【0069】
化合物Iの固体形態
一実施形態では、本開示は、化合物Iの固体形態またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、または溶媒和塩に関する。一実施形態では、固体形態は、化合物I(塩ではなく、溶媒和物ではなく、溶媒和塩ではない)用である。一実施形態では、固体形態は、化合物Iの薬学的に許容される塩用である。一実施形態では、固体形態は、化合物Iの薬学的に許容される溶媒和物用である。一実施形態では、固体形態は、化合物Iの薬学的に許容される溶媒和塩用である。一実施形態では、固体形態は、非結晶または結晶形態である。
【0070】
別の実施形態では、化合物Iの非結晶形態またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、または溶媒和塩は、医薬組成物中に存在する。特定の実施形態では、医薬組成物は、固体分散体中の化合物Iを含む。
【0071】
一実施形態では、化合物Iの固体形態は結晶形態Aである。一実施形態では、化合物Iの固体形態は非結晶形態である。一実施形態では、化合物Iの固体形態は、材料Bである。一実施形態では、化合物Iの固体形態は、材料Cである。一実施形態では、化合物Iの固体形態は、材料Dである。
【0072】
一実施形態では、本開示は、化合物Iの単離された固体形態、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、または溶媒和塩に関する。一実施形態では、単離された固体形態は、化合物Iの単離された結晶形態、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、または溶媒和塩である。一実施形態では、単離された固体形態は、化合物Iの単離された結晶形態Aである。一実施形態では、単離された固体形態は、化合物Iの単離された非結晶形態またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、もしくは溶媒和塩である。一実施形態では、単離された固体形態は、化合物Iの単離された非結晶形態である。
【0073】
一実施形態では、化合物Iの固体形態またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、または溶媒和塩は、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の純度を有する。一実施形態では、化合物Iの固体形態またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、または溶媒和塩は、化合物Iの一つの特定の固体形態またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、または溶媒和塩に関して、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の純度を有する。
【0074】
一実施形態では、化合物Iの固体形態またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、もしくは溶媒和塩は、少なくとも約99.9%、約99.8%、約99.7%、約99.6%、約99.5%、約99.4%、約99.3%、約99.2%、約99.1%、約99.0%、約98%、約97%、約96%、約95%、約94%、約93%、約92%、約91%、または約90%の純度を有する。一実施形態では、化合物Iの固体形態またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、もしくは溶媒和塩は、化合物Iの一つの特定の固体形態またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、または溶媒和塩に関して、少なくとも約99.9%、約99.8%、約99.7%、約99.6%、約99.5%、約99.4%、約99.3%、約99.2%、約99.1%、約99.0%、約98%、約97%、約96%、約95%、約94%、約93%、約92%、約91%、または約90%の純度を有する。
【0075】
一実施形態では、化合物Iの固体形態またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、または溶媒和塩は、約75%~約99%の純度を有する。一実施形態では、化合物Iの固体形態またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、または溶媒和塩は、約80%~約99%の純度を有する。一実施形態では、化合物Iの固体形態またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、または溶媒和塩は、約85%~約99%の純度を有する。一実施形態では、化合物Iの固体形態またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、または溶媒和塩は、約90%~約99%の純度を有する。一実施形態では、化合物Iの固体形態またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、または溶媒和塩は、約95%~約99%の純度を有する。
【0076】
一実施形態では、化合物Iの固体形態またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、または溶媒和塩は、化合物Iの一つの特定の固体形態またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、または溶媒和塩に関して、約75%~約99%の純度を有する。一実施形態では、化合物Iの固体形態またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、または溶媒和塩は、化合物Iの一つの特定の固体形態またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、または溶媒和塩に関して、約80%~約99%の純度を有する。一実施形態では、化合物Iの固体形態またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、または溶媒和塩は、化合物Iの一つの特定の固体形態またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、または溶媒和塩に関して、約85%~約99%の純度を有する。一実施形態では、化合物Iの固体形態またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、または溶媒和塩は、化合物Iの一つの特定の固体形態またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、または溶媒和塩に関して、約90%~約99%の純度を有する。一実施形態では、化合物Iの固体形態またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、または溶媒和塩は、化合物Iの一つの特定の固体形態またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、または溶媒和塩に関して、約95%~約99%の純度を有する。
【0077】
一実施形態では、高純度を有する化合物Iの特定の固体形態またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、または溶媒和塩は、化合物Iの結晶形態Aである。一実施形態では、高純度を有する化合物Iの特定の固体形態またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、または溶媒和塩は、化合物Iの非結晶形態である。
【0078】
一実施形態では、本開示は、化合物Iの固体形態またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、または溶媒和塩に関し、固体形態は、化合物Iの一つ以上の固体形態またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、または溶媒和塩を含む。一実施形態では、本開示の固体形態は、化合物Iの結晶形態A、化合物Iの非結晶形態、化合物Iの材料B、化合物Iの材料C、および化合物Iの材料Dからなる群から選択される一つ以上の形態を含む。
化合物Iの結晶形態
【0079】
一実施形態では、本開示は、化合物Iの結晶形態またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、または溶媒和塩に関する。一実施形態では、本開示は、化合物Iの無水または非溶媒和結晶形態またはその薬学的に許容される塩に関する。一実施形態では、本開示は、化合物I(塩ではない)の無水または非溶媒和結晶形態に関する。一実施形態では、本開示は、化合物I(塩ではない)の結晶形態に関する。一実施形態では、本開示は、形態Aである化合物Iの結晶形態に関する。
【0080】
一実施形態では、結晶形態は、X線粉末回折(XRPD)パターンによって決定される格子面間隔によって特徴付けられる。XRPDのスペクトルは、典型的には、ピークの位置に対してピークの強度をプロットする図によって、すなわち回折角2θ(2シータ)を度で、表される。強度は多くの場合、以下の略語を用いて括弧で囲まれ示される:非常に強い=vst、強い=st、中間=m、弱い=w、および非常に弱い=vw。所与のXRPDの特徴ピークは、ピーク位置およびそれらの相対強度に従って選択され、この結晶構造は他のものと便利に区別される。最も強いピークに対するピークの%強度は、I/Ioとして表されてもよい。
【0081】
当業者は、同じ化合物の所与の結晶形態のXRPDピーク位置および/または強度の測定値は、誤差範囲内で変化するであろうことを認識する。度2θの値により、適切な誤差が許容される。典型的には、許容誤差は“±”で表される。例えば、約17.48±0.2の度2θは、約17.46~17.50度2θの範囲を示す。試料調製技術に応じて、機器、ヒトの操作の変動などに適用されるキャリブレーション技術は、当業者は、XRPDのマージンの適切な許容誤差は約±0.7、±0.6、±0.5、±0.4、±0.3、±0.2、±0.1、±0.05またはそれ未満であり得ると認識する。
【0082】
XRPD分析に使用される方法および装置の追加の詳細は、実施例のセクションに記載される。
【0083】
一実施形態では、結晶形態は、示差走査熱量測定(DSC)によって特徴付けられる。DSCサーモグラムは、典型的には、測定された摂氏での試料温度に対してワット/グラムの単位(W/g)で正規化された熱流をプロットする図によって表される。DSCサーモグラムは通常、外挿された開始温度および終了(アウトセット)温度、ピーク温度、および融合熱について評価される。DSCサーモグラムのピーク特徴値は、この結晶構造を他のものと区別するために、多くの場合、特徴ピークとして使用される。
【0084】
当業者は、同じ化合物の所与の結晶形態に対するDSCサーモグラムの測定値が、誤差範囲内で変化することを認識する。単一ピーク特徴値の値は、摂氏で表され、適切な誤差を許容する。典型的には、許容誤差は“±”で表される。例えば、約17.48±0.2の単一ピーク特徴値は、約17.46~17.50の範囲を示す。試料調製技術に応じて、機器、ヒトの操作の変動などに適用されるキャリブレーション技術は、当業者は、単一ピーク特徴値の適切な許容誤差は約±2.5、±2.0、±1.5、±1.0、±0.5、またはそれ未満であり得ると認識する。
【0085】
DSCサーモグラム分析に使用される方法および装置の追加の詳細は、実施例のセクションに記載される。
【0086】
一実施形態では、結晶形態は、動的水蒸気吸着(DVS)によって特徴付けられる。DVSプロファイルは、典型的には、質量の変化(%)に対して試料の相対湿度(RH)をプロットした図によって表される。DVSプロファイルは、異なるRH条件での結晶形態の吸湿性に関する情報を提供する。
【0087】
DVSに使用される方法および機器の追加の詳細は、実施例のセクションに記載される。
【0088】
一実施形態では、本開示は、無水もしくは非溶媒和である化合物Iの結晶形態である形態Aに関する。一実施形態では、形態Aは、化合物Iの他の結晶形態またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、または溶媒和塩よりも安定している。一実施形態では、形態Aは、高い安定性を示す。一実施形態では、形態Aは、最も熱力学的に安定した形態である。
【0089】
一実施形態では、化合物Iの結晶形態の形態Aは、化合物Iの一つ以上の形態の多形体の混合物を含み得る。一部の実施形態では、化合物Iの結晶形態は、一つの多形体タイプの実質的に純粋な形態を含み得る。一実施形態では、化合物Iの結晶形態は、約99.9%超、約99.8%超、約99.7%超、約99.6%超、約99.5%超、約99.4%超、約99.3%超、約99.2%超、約99.1%超、または約99.0%超の形態Aを含み得る。別の実施形態では、化合物Iの結晶形態は、約99%超、約98%超、約97%超、約96%超、約95%超、約94%超、約93%超、約92%超、約91%超、または約90%超の形態Aを含み得る。一部の実施形態では、化合物Iの結晶形態は、約90%超、約85%超、約80%超、約75%超、約70%超、約65%超、約60%超、約55%超、約50%超、約45%超、または約40%超の形態Aを含み得る。
【0090】
一実施形態では、化合物Iの結晶形態Aは、約17.48、20.78、および21.80度2シータのピークを含むXRPDパターンを呈し、許容誤差は約±0.5、約±0.4、約±0.3、約±0.2、約±0.1、約±0.05、またはそれ未満である。別の実施形態では、化合物Iの結晶形態AのXRPDは、約5.19および12.94度2シータのピークをさらに含み、許容誤差は約±0.5、約±0.4、約±0.3、約±0.2、約±0.1、約±0.05、またはそれ未満である。さらなる実施形態において、化合物Iの結晶形態Aは、約17.80、18.74、19.57、22.59、25.28、または29.95度2シータから選択される少なくとも二つのピークをさらに含み、許容誤差は約±0.5、約±0.4、約±0.3、約±0.2、約±0.1、約±0.05、またはそれ未満である。さらなる実施形態において、化合物Iの結晶形態Aは、約17.80、18.74、19.57、22.59、25.28、または29.95度2シータから選択される少なくとも三つのピークをさらに含み、許容誤差は約±0.5、約±0.4、約±0.3、約±0.2、約±0.1、約±0.05、またはそれ未満である。さらなる実施形態において、化合物Iの結晶形態Aは、約17.80、18.74、19.57、22.59、25.28、または29.95度2シータから選択される少なくとも四つのピークをさらに含み、許容誤差は約±0.5、約±0.4、約±0.3、約±0.2、約±0.1、約±0.05、またはそれ未満である。さらなる実施形態において、化合物Iの結晶形態Aは、約17.80、18.74、19.57、22.59、25.28、または29.95度の2シータから選択される少なくとも五つのピークをさらに含み、許容誤差は約±0.5、約±0.4、約±0.3、約±0.2、約±0.1、約±0.05、またはそれ未満である。さらなる実施形態において、化合物Iの結晶形態Aは、約17.80、18.74、19.57、22.59、25.28、または29.95度2シータのピークをさらに含み、許容誤差は約±0.5、約±0.4、約±0.3、約±0.2、約±0.1、約±0.05、またはそれ未満である。
【0091】
一実施形態では、化合物Iの結晶形態Aは、約17.48±0.2、20.78±0.2、および21.80±0.2度2シータのピークを含むXRPDパターンを呈する。一実施形態では、化合物Iの結晶形態Aは、約17.48±0.2、20.78±0.2、および21.80±0.2度2シータで少なくとも50%の強度を有するピークを含むXRPDパターンを呈する。一実施形態では、化合物Iの結晶形態Aは、約17.48±0.2、20.78±0.2、および21.80±0.2度2シータで少なくとも60%の強度を有するピークを含むXRPDパターンを呈する。一実施形態では、化合物Iの結晶形態Aは、約17.48±0.2、20.78±0.2、および21.80±0.2度2シータで少なくとも65%の強度を有するピークを含むXRPDパターンを呈する。
【0092】
一実施形態では、化合物Iの結晶形態Aは、約5.19±0.2および12.94±0.2度2シータのピークを含むXRPDパターンを呈する。一実施形態では、化合物Iの結晶形態Aは、約5.19±0.2および12.94±0.2度2シータで少なくとも30%の強度を有するピークを含むXRPDパターンを呈する。一実施形態では、化合物Iの結晶形態Aは、約5.19±0.2および12.94±0.2度2シータで少なくとも35%の強度を有するピークを含むXRPDパターンを呈する。一実施形態では、化合物Iの結晶形態Aは、約5.19±0.2および12.94±0.2度2シータで少なくとも40%の強度を有するピークを含むXRPDパターンを呈する。一実施形態では、化合物Iの結晶形態Aは、約5.19±0.2、12.94±0.2、17.48±0.2、20.78±0.2、および21.80±0.2度2シータで少なくとも35%の強度を有するピークを含むXRPDパターンを呈する。
【0093】
一実施形態では、化合物Iの結晶形態Aは、約17.80±0.2、18.74±0.2、19.57±0.2、22.59±0.2、25.28±0.2、および29.95±0.2度2シータから選択される少なくとも二つのピークを含むXRPDパターンを呈する。一実施形態では、化合物Iの結晶形態Aは、約17.80±0.2、18.74±0.2、19.57±0.2、22.59±0.2、25.28±0.2、および29.95±0.2度2シータから選択されるピークを含むXRPDパターンを呈する。一実施形態では、化合物Iの結晶形態Aは、約17.80±0.2、18.74±0.2、19.57±0.2、22.59±0.2、25.28±0.2、および29.95±0.2度2シータで少なくとも15%の強度を有するピークを含むXRPDパターンを呈する。一実施形態では、化合物Iの結晶形態Aは、約17.80±0.2、18.74±0.2、19.57±0.2、22.59±0.2、25.28±0.2、および29.95±0.2度2シータで少なくとも20%の強度を有するピークを含むXRPDパターンを呈する。
【0094】
一実施形態では、化合物Iの結晶形態Aは、約5.19±0.2、12.94±0.2、17.48±0.2、17.80±0.2、18.74±0.2、20.78±0.2、および21.80±0.2度2シータで少なくとも30%の強度を有するピークを含むXRPDパターンを呈する。一実施形態では、化合物Iの結晶形態Aは、約5.19±0.2、12.94±0.2、17.48±0.2、18.74±0.2、20.78±0.2、および21.80±0.2度2シータで少なくとも35%の強度を有するピークを含むXRPDパターンを呈する。
【0095】
一実施形態では、化合物の結晶形態Aは、以下の表1Aに示すピークを含むXRPDを呈する。一実施形態では、化合物Iの結晶形態Aは、以下の表1Bに示すピークを含むXRPDを呈する。
【0096】
【表1】
【0097】
【表2】
【0098】
一つの特定の実施形態では、化合物Iの結晶形態Aは、図1と実質的に類似したXRPDパターンを呈する。一実施形態では、図1に示されるXRPDスペクトルは、少量のNaClを含む。一実施形態では、図1の27.3±0.2および31.7±0.2度2シータのXRPDピークは、少量のNaClの存在に起因する。一実施形態では、表1Aの27.3±0.2度2シータでのXRPDピークは、少量のNaClの存在に起因する。
【0099】
一実施形態において、化合物Iの結晶形態Aは、27.3±0.2および31.7±0.2度2シータのピークが形態Aの特徴の一部ではないとして除外されるならば、図1と実質的に類似したXRPDパターンを呈する。一実施形態では、化合物Iの結晶形態Aは、27.3±0.2度2シータのピークが形態Aの特徴の一部ではないとして除外されるならば、表1Aに示されるピークを含むXRPDパターンを呈する。
【0100】
一実施形態では、化合物Iの結晶形態Aは、図2(上)と実質的に類似したTGAサーモグラムを呈する。一実施形態では、化合物Iの結晶形態Aは、約284℃(開始)で始まるTGAサーモグラムの勾配の変化を示す。いかなる理論にも拘束されるものではないが、TGAサーモグラムの勾配におけるこの変化は、化合物Iの結晶形態Aの分解に関連する可能性が高い。
【0101】
一実施形態では、化合物Iの結晶形態Aは、許容誤差が約±2.5、約±2.0、約±1.5、約±1.0、約±0.5、またはそれ未満である約182℃(開始)の吸熱ピークを含むDSCサーモグラムを呈する。一実施形態では、化合物Iの結晶形態Aは、許容誤差が約±2.5、約±2.0、約±1.5、約±1.0、約±0.5、またはそれ未満である約185℃(ピーク)の吸熱ピークを含むDSCサーモグラムを呈する。一実施形態では、化合物Iの結晶形態Aは、図2(下)と実質的に類似したDSCサーモグラムを呈する。
【0102】
一実施形態では、化合物Iの結晶形態Aは、適切な単結晶として得ることができる。一実施形態では、形態Aの単結晶は、モノクリニックであり、空間群がP21/cである結晶系を有する。一実施形態では、形態Aの単結晶のセルパラメータおよび計算体積は、約a=17.5550±0.0002Å、b=10.96169±0.00013Å、c=13.7961±0.0002Å、α=90°、β=104.5717±0.0015°、γ=90°、およびV=2569.40±0.06Å3である。一実施形態では、形態Aの単結晶は約1.384g/cm3の密度を有する。
【0103】
化合物Iの非結晶形態
一実施形態では、本開示は、化合物Iの固体形態またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、または溶媒和塩に関する。一実施形態では、本開示は、化合物Iの非結晶形態またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、または溶媒和塩に関する。一実施形態では、本開示は、化合物Iの非結晶形態またはその薬学的に許容される塩の無水または非溶媒和に関する。一実施形態では、本開示は、無水または非溶媒和化合物I(塩ではない)の非結晶形態に関する。一実施形態では、本開示は、化合物Iの非結晶形態(塩ではなく、溶媒和物ではなく、溶媒和塩ではない)に関する。
【0104】
別の実施形態では、化合物Iの非結晶形態またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、または溶媒和塩は、医薬組成物中に存在する。特定の実施形態では、医薬組成物は、固体分散体中の化合物Iを含む。
【0105】
一実施形態では、化合物Iの非結晶形態は、NaClの存在に起因する約27および約32度2シータのピークを除く図6、下から三番目のスペクトル、と実質的に類似したXRPDパターンを呈する。
【0106】
一実施形態では、化合物Iの非結晶形態は、逆方向の熱流信号における段階的変化として、約61℃で、許容誤差が約±2.5、約±2.0、約±1.5、約±1.0、約±0.5、またはそれ未満であるガラス転移(Tg)を呈する。一実施形態では、ガラス転移温度は、温度変調DSC(TMDSC)によって測定される。一実施形態では、化合物Iの非結晶形態は、約91℃(ピーク)で、許容誤差が約±2.5、約±2.0、約±1.5、約±1.0、約±0.5、またはそれ未満である発熱ピークを含むDSCサーモグラムを呈する。一実施形態では、化合物Iの非結晶形態は、約178℃(開始)で、許容誤差が約±2.5、約±2.0、約±1.5、約±1.0、約±0.5、またはそれ未満である吸熱ピークを含むDSCサーモグラムを呈する。一実施形態では、化合物Iの非結晶形態は、図7と実質的に類似したDSCサーモグラムを呈する。
【0107】
一実施形態では、化合物Iの非結晶形態は、図8と実質的に類似したTGAサーモグラムを示す。一実施形態では、化合物Iの非結晶形態は、約280℃(開始)で始まるTGAサーモグラムの勾配の変化を示す。いかなる理論にも拘束されるものではないが、TGAサーモグラムの勾配におけるこの変化は、化合物Iの非結晶形態の分解に関連する可能性が高い。
【0108】
一部の実施形態では、化合物Iの非結晶形態は、示差走査熱量計によって測定される、約60℃~約180℃の範囲のガラス転移温度(Tg)を呈する。一部の実施形態では、化合物Iの非結晶形態は、示差走査熱量計によって測定される、約60℃~約90℃の範囲のガラス転移温度(Tg)を呈する。一部の実施形態では、化合物Iの非結晶形態は、示差走査熱量計によって測定される、約70℃~約80℃の範囲のガラス転移温度(Tg)を呈する。特定の実施形態では、化合物Iの非結晶形態は、医薬組成物中に存在し、またはより特定の実施形態では、固体分散体組成物中に存在する。
【0109】
一部の実施形態では、化合物Iの非結晶形態は、図13および15に示すパターンのいずれか一つに実質的に類似したX線粉末回折(XRPD)パターンを呈する。特定の実施形態では、化合物Iの非結晶形態は、医薬組成物中に存在し、またはより特定の実施形態では、固体分散体組成物中に存在する。
【0110】
一部の実施形態では、化合物Iの非結晶形態は、図13のSDD-A、SDD-B、SDD-C、SDD-D、もしくはSDD-Eと標識されたパターン、または図15のSDD-H、SDD-I、SDD-J、SDD-N、SDD-O、SDD-O、SDD-P、SDD-Q、またはSDD-Rと標識されたパターンと実質的に類似したXRPDパターンを呈する。一部の実施形態では、化合物Iの非結晶形態は、図15のSDD-H、SDD-I、SDD-J、SDD-N、SDD-O、SDD-O、SDD-P、SDD-Q、またはSDD-Rと標識されたパターンと実質的に類似したXRPDパターンを呈する。特定の実施形態では、化合物Iの非結晶形態は、医薬組成物中に存在し、またはより特定の実施形態では、固体分散体組成物中に存在する。
【0111】
一部の実施形態では、化合物Iの非結晶形態は、図14のSDD-A、SDD-B、SDD-C、SDD-D、またはSDD-Eと標識されたサーモグラムと実質的に類似した変調示差走査熱量測定(mDSC)サーモグラムを呈する。特定の実施形態では、化合物Iの非結晶形態は、医薬組成物中に存在し、またはより特定の実施形態では、固体分散体組成物中に存在する。
【0112】
医薬組成物および製剤
別の実施形態では、本発明は、本明細書に開示されるように、治療有効量の化合物Iの結晶形態、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、もしくは溶媒和塩を、活性成分として、薬学的に許容される賦形剤または担体と組み合わせて、含む医薬組成物を提供する。一実施形態では、本発明は、化合物Iの結晶形態Aの治療有効量を含む医薬組成物を提供する。一実施形態では、本発明は、化合物Iの結晶形態Aの治療有効量および薬学的に許容される賦形剤または担体を含む医薬組成物を提供する。賦形剤は、様々な目的のために製剤に加えられる。
【0113】
本開示の一実施形態では、医薬組成物は、異なる形態の混合物として、化合物Iまたはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、もしくは溶媒和塩を含む。一実施形態では、医薬組成物は、化合物Iまたはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、または溶媒和塩の総量中に、約99.9%、約99.8%、約99.7%、約99.6%、約99.5%、約99.4%、約99.3%、約99.2%、約99.1%、または約99.0%の化合物Iの結晶形態Aを含む。一実施形態では、医薬組成物は、化合物Iまたはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、または溶媒和塩の総量中に、約99%、約98%、約97%、約96%、約95%、約94%、約93%、約92%、約91%、または約90%の化合物Iの結晶形態Aを含む。一実施形態では、医薬組成物は、化合物Iまたはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、または溶媒和塩の総量中に、約90%、約85%、約80%、約75%、約70%、約65%、約60%、約55%、約50%、約45%、約40%、約35%、約30%、約25%、または約20%の化合物Iの結晶形態Aを含む。一実施形態では、医薬組成物は、化合物Iまたはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、または溶媒和塩の総量中に、約0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1%、1.5%、2%、2.5%、3%、3.5%、4%、4.5%、5%、5.5%、6%、6.5%、7%、7.5%、8%、8.5%、9%、9.5%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、18%、または20%の化合物Iの結晶形態Aを含む。
【0114】
一実施形態では、本発明は、本明細書に開示されるように、治療有効量の化合物Iの非結晶形態、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、もしくは溶媒和塩を、活性成分として、薬学的に許容される賦形剤または担体と組み合わせて、含む医薬組成物を提供する。
【0115】
一実施形態では、医薬組成物は、化合物Iまたはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、または溶媒和塩の総量中に、約99.9%、約99.8%、約99.7%、約99.6%、約99.5%、約99.4%、約99.3%、約99.2%、約99.1%、または約99.0%の化合物Iの非結晶形態を含む。一実施形態では、医薬組成物は、化合物Iまたはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、または溶媒和塩の総量中に、約99%、約98%、約97%、約96%、約95%、約94%、約93%、約92%、約91%、または約90%の化合物Iの非結晶形態を含む。一実施形態では、医薬組成物は、化合物Iまたはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、または溶媒和塩の総量中に、約90%、約85%、約80%、約75%、約70%、約65%、約60%、約55%、約50%、約45%、約40%、約35%、約30%、約25%、または約20%の化合物Iの非結晶形態を含む。一実施形態では、医薬組成物は、化合物Iまたはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、または溶媒和塩の総量中に、約0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1%、1.5%、2%、2.5%、3%、3.5%、4%、4.5%、5%、5.5%、6%、6.5%、7%、7.5%、8%、8.5%、9%、9.5%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、18%、または20%の化合物Iの非結晶形態を含む。
【0116】
本開示の一実施形態では、医薬組成物は、化合物Iの結晶形態および非結晶形態またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、もしくは溶媒和塩の混合物を含む。一実施形態において、混合物は、約99%、98%、97%、96%、95%、94%、93%、92%、91%、または90%の化合物Iの非結晶形態、および約1%、1.5%、2%、2.5%、3%、3.5%、4%、4.5%、5%、5.5%、6%、6.5%、7%、7.5%、8%、8.5%、9%、9.5%、または10%の化合物Iの結晶形態を含み、ここで、その量は、混合物中の化合物Iまたはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、もしくは溶媒和塩の総量の割合を表す。一実施形態において、混合物は、約90%、85%、80%、75%、70%、65%、60%、55%、50%、45%、40%、35%、30%、25%、または20%の化合物Iの非結晶形態、および約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、または80%の化合物Iの結晶形態を含み、ここで、その量は、混合物中の化合物Iまたはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、もしくは溶媒和塩の総量の割合を表す。一実施形態において、混合物は、約99%、98%、97%、96%、95%、94%、93%、92%、91%、または90%の化合物Iの結晶形態、および約1%、1.5%、2%、2.5%、3%、3.5%、4%、4.5%、5%、5.5%、6%、6.5%、7%、7.5%、8%、8.5%、9%、9.5%、または10%の化合物Iの非結晶形態を含み、ここで、その量は、混合物中の化合物Iまたはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、もしくは溶媒和塩の総量の割合を表す。一実施形態において、混合物は、約90%、85%、80%、75%、70%、65%、60%、55%、50%、45%、40%、35%、30%、25%、または20%の化合物Iの結晶形態、および約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、または80%の化合物Iの非結晶形態を含み、ここで、その量は、混合物中の化合物Iまたはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、もしくは溶媒和塩の総量の割合を表す。一実施形態では、化合物Iの結晶形態は形態A。
【0117】
一実施形態では、化合物Iは、薬学的に許容される塩として医薬組成物中に存在することができる。一実施形態では、化合物Iは、医薬溶媒和物として医薬組成物中に存在することができる。一実施形態では、化合物Iは、医薬溶媒和塩として医薬組成物中に存在することができる。一実施形態では、化合物Iは、非結晶形態として医薬組成物中に存在することができる。一実施形態では、化合物Iは、形態Aではない結晶形態として医薬組成物中に存在することができる。一実施形態では、化合物Iは、無水化合物Iである形態Aではない結晶形態として医薬組成物中に存在することができる。一実施形態では、化合物Iは、化合物Iの無水遊離塩基である形態Aではない結晶形態として医薬組成物中に存在することができる。
【0118】
一実施形態では、医薬組成物は、本明細書に記載されるように、一つ以上の追加の治療活性剤をさらに含む。一実施形態では、一つ以上の追加の治療活性剤は、癌、神経疾患、アルファシヌクレインの異常蓄積により特徴付けられる障害、老化過程の障害、心血管疾患、細菌感染、ウイルス感染、ミトコンドリア関連疾患、精神遅滞、難聴、失明、糖尿病、肥満、自己免疫疾患、緑内障、レーバー遺伝性視神経症、および関節リウマチの治療に有用な治療剤から選択される。一実施形態では、一つ以上の追加の治療活性剤は、乳癌の前立腺癌を治療するために有用な治療剤から選択される。
【0119】
一部の実施形態では、一つ以上の追加の治療薬は、オラパリブ、ニラパリブ、ルカパリブ、タラゾパリブを含むが、これに限定されないポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP)阻害剤、エンザルタミド、アパルタミド、ダロルタミド、ビカルタミド、ニルタミド、フルタミド、ODM-204、TAS3681を含むが、これに限定されないアンドロゲン受容体リガンド結合ドメイン阻害剤、ガレトロン、アビラテロン、アビラテロンアセテートを含むが、これに限定されないCYP17の阻害剤、ドセタキセル、パクリタキセル、カバジタキセル(XRP-6258)を含むが、これに限定されない微小管阻害剤、ペムブロリズマブ、デュルバルマブ、ニボルマブ、アテゾリズマブを含むが、これに限定されないPD-1またはPD-L1の調節因子、酢酸シプロテロン、ロイプロリドを含むが、これに限定されないゴナドトロピン放出ホルモン、フィナステリド、デュタステリド、ツロステリド、ベキストロステリド、イゾンステリド、FCE 28260、SKF105,111を含むが、これに限定されない5-アルファレダクターゼ阻害剤、ベバシズマブ(アバスチン)を含むが、これに限定されない血管内皮成長因子阻害剤、OSU-HDAC42を含むが、これに限定されないヒストンデアセチラーゼ阻害剤、VITAXINを含むが、これに限定されないインテグリンアルファ-v-ベータ-3阻害剤、スニツミブを含むが、これに限定されない受容体チロシンキナーゼ、アルペリシブ、ブパリシブ、イデアリシブ(idealisib)を含むが、これに限定されないホスホイノシチド3-キナーゼ阻害剤、クリゾチニブ、アレクチニブを含むが、これに限定されない未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)阻害剤、ZD-4054を含むが、これに限定されないエンドセリン受容体A拮抗剤、MDX-010(イピリムマブ)を含むが、これに限定されない抗CTLA4阻害剤、OGX427を含むが、これに限定されない熱ショックタンパク質27(HSP27)阻害剤、ARV-330、ARV-110を含むが、これに限定されないアンドロゲン受容体分解剤、VPC-14449を含むが、これに限定されないアンドロゲン受容体DNA結合ドメイン阻害剤、BI-894999、GSK25762、GS-5829を含むが、これに限定されないブロモドメインおよび末端外モチーフ(BET)阻害剤、シントカミドを含むが、これに限定されないN末端ドメイン阻害剤、ラジウム233またはその塩を含むが、これに限定されないアルファ粒子放出放射性治療薬、ニクロサミドまたはその関連化合物、タモキシフェン、ラロキシフェン、トレミフェン、アルゾキシフェン、バゼドキシフェン、ピピンドキシフェン、ラソホキシフェン、エンクロミフェンを含むが、これに限定されない選択的エストロゲン受容体調節因子(SERM)、フルベストラント、ZB716、OP-1074、エラセストラント、AZD9496、GDC0810、GDC0927、GW5638、GW7604を含むが、これに限定されない選択的エストロゲン受容体分解物(SERD)、アナストラゾール、エキセメスタン、レトロゾールを含むが、これに限定されないアロマターゼ阻害剤、ミフェプリストン、ロナプリソン、オナプリストン、アソプリスニル、ロナプリスニル,ウリプリストル、テラプリストンを含むが、これに限定されない選択的プロゲステロン受容体調製因子(SPRM)、ミフェプリストン、COR108297、COR125281、ORIC-101、PT150を含むが、これに限定されないグルココルチコイド受容体阻害剤、トラスツズマブ、ネラチニブを含むが、これに限定されないHER2受容体拮抗剤、またはエベロリムス、テムシロリムスを含むが、これに限定されない哺乳類標的ラパマイシン(mTOR)阻害剤、MK-2206を含むが、これに限定されないAKT阻害剤、ベネトクラクスを含むBcl-2阻害剤、アリセルチブを含むが、これに限定されないオーロラキナーゼ阻害剤、DKK-1-4タンパク質(Dikhopf)、分泌されたFrazzle関連タンパク質(sFRP)を含むが、これに限定されないWnt標的拮抗剤、ODM-208を含むが、これに限定されないCYP11a阻害剤、LY2452473を含むが、これに限定されない選択的アンドロゲン受容体N末端ドメイン阻害剤、またはCPI-1205を含むが、これに限定されないEZH2阻害剤、である。別の実施形態では、第二の治療活性剤は、非ステロイド性抗アンドロゲン剤(NSAA)である。
【0120】
一実施形態では、医薬組成物は、a)エンザルタミド、アパルタミド、またはダロルタミド、b)化合物Iの結晶形態A、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、または溶媒和塩、およびc)薬学的に許容される担体または賦形剤、を含む。一実施形態では、医薬組成物は、a)エンザルタミド、b)化合物Iの結晶形態A、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、または溶媒和塩、およびc)薬学的に許容される担体または賦形剤、を含む。
【0121】
一実施形態では、医薬組成物は、a)エンザルタミド、アパルタミド、またはダロルタミド、b)化合物Iの非結晶形態、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、または溶媒和塩、およびc)薬学的に許容される担体または賦形剤、を含む。一実施形態では、医薬組成物は、a)エンザルタミド、b)化合物Iの非結晶形態、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、または溶媒和塩、およびc)薬学的に許容される担体または賦形剤、を含む。
【0122】
一実施形態では、医薬組成物は、ベネトクラクス、化合物Iの結晶形態A、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、または溶媒和塩、および薬学的に許容される担体または賦形剤、を含む。
【0123】
一実施形態では、医薬組成物は、ベネトクラクス、化合物Iの非結晶形態、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、または溶媒和塩、および薬学的に許容される担体または賦形剤、を含む。
【0124】
本開示のさらなる実施形態では、化合物Iの一つ以上の固体形態(例えば、形態Aなどの結晶形態または非結晶形態)、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、もしくは溶媒和塩、および薬学的に許容される賦形剤もしくはアジュバントを含む医薬組成物が提供される。薬学的に許容される賦形剤およびアジュバントは、様々な目的のために組成物または製剤に加えられる。別の実施形態では、化合物Iの一つ以上の固体形態、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、または溶媒和塩を含む医薬組成物は、さらに薬学的に許容される担体を含む。一実施形態では、薬学的に許容される担体は、薬学的に許容される賦形剤、結合剤、および/または希釈剤を含む。一実施形態では、適切な薬学的に許容される賦形剤には、限定するものではないが、水、塩溶液、アルコール、ポリエチレングリコール、ゼラチン、ラクトース、アミラーゼ、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ケイ酸、粘性パラフィン、ヒドロキシメチルセルロース、およびポリビニルピロリドンが含まれる。
【0125】
いくつかの実施形態では、本開示の医薬組成物は、従来、医薬組成物中に見出される他の補助成分を、当技術分野で確立された使用レベルでさらに含んでもよい。したがって、例えば、医薬組成物は、例えば、鎮痒剤、収斂剤、局所麻酔剤、または抗炎症剤などの、追加的な、適合性のある、医薬的に活性な材料を含んでもよく、または染料、香味剤、保存剤、抗酸化剤、乳白剤、増粘剤、および安定剤などの本発明の組成物の様々な剤形を物理的に製剤化するのに有用な追加的材料を含んでもよい。しかしながら、かかる材料は、添加された場合、本発明の組成物の構成要素の生物学的活性に不当に干渉すべきではない。製剤は、滅菌されてもよく、また所望により、例えば、潤滑剤、保存剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧に影響を与えるための塩、緩衝剤、着色剤、香味剤および/または芳香族物質などの製剤のオリゴヌクレオチド(複数可)と有害な相互作用をしない補助剤と混合されてもよい。
【0126】
本開示の目的のために、本開示の化合物Iの固体形態は、薬学的に許容される担体、アジュバント、およびビヒクルを含む製剤において、経口、非経口、吸入スプレーによる、局所的、または直腸的を含む様々な手段による投与のために製剤化され得る。本明細書で使用される場合、非経口という用語は、様々な注入技術を用いた皮下注射、静脈内注射、筋肉内注射、および動脈内注射を含む。本明細書で使用される場合、動脈内および静脈内注射は、カテーテルを通した投与を含む。
【0127】
本明細書に開示される化合物Iの固体形態は、所望の投与経路に適合する日常的な手順に従って製剤化され得る。したがって、本明細書に開示される化合物Iの固体形態は、油性または水性ビヒクル中の懸濁液、溶液、またはエマルションなどの形態を取ることができ、懸濁剤、安定化剤、および/または分散剤などの配合剤を含み得る。本明細書に開示される化合物Iの固体形態は、移植または注射のための調製物として製剤化されてもよい。したがって、例えば、化合物Iの固体形態は、適切なポリマーあるいは疎水性材料(例えば、許容される油中のエマルションとして)あるいはイオン交換樹脂、または難溶性誘導体(例えば、難溶性塩として)と共に製剤化することができる。代わりに、活性成分は、使用前に、好適なビヒクル、例えば、滅菌されたピロゲンを含まない水、との構成のための粉末形態であってもよい。これらの投与方法の各々に適した製剤は、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,A.Gennaro,ed.,20th edition,Lippincott,Williams & Wilkins,Philadelphia,PA、に見出され得る。
【0128】
いくつかの実施形態では、本開示の医薬組成物は、公知の技術を使用して調製され、限定するものではないが、これには、混合、溶解、造粒、糖衣化、粉砕、乳化、封入、封じ込め、または打錠プロセスが含まれる。
【0129】
一実施形態では、本開示は、薬学的に許容される担体と組み合わせた、本明細書に開示される式(I)~(VI)および/もしくは(A)~(H-I)の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、もしくは溶媒和塩、を含む医薬組成物、を提供する。一実施形態では、好適な薬学的に許容される担体には、限定するものではないが、不活性な固体充填剤又は希釈剤および滅菌水溶液又は有機溶液が含まれる。薬学的に許容される担体は、当業者には周知であり、限定するものではないが、約0.01~約0.1Mおよび好ましくは0.05Mのフォスフェイト緩衝液または0.8%の生理食塩水を含む。こうした薬学的に許容される担体は、水性または非水性の溶液、懸濁液、およびエマルションであってもよい。本出願での使用に適した非水性溶媒の例には、限定するものではないが、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油、およびオレイン酸エチルなどの注射用有機エステルが含まれる。
【0130】
本出願での使用に適した水性担体としては、限定するものではないが、生理食塩水および緩衝媒体を含む水、エタノール、アルコール/水性溶液、グリセロール、エマルションまたは懸濁液が挙げられる。経口担体は、エリキシル、シロップ、カプセル、錠剤などであり得る。
【0131】
本出願での使用に適した液体担体は、溶液、懸濁液、エマルション、シロップ、エリキシル、および加圧化合物の調製に使用されてもよい。活性成分は、水、有機溶媒、それらの混合物、または薬学的に許容される油もしくは脂肪などの薬学的に許容される液体担体中に溶解または懸濁し得る。液体担体は、可溶化剤、乳化剤、緩衝剤、保存剤、甘味剤、香味剤、懸濁剤、増粘剤、着色剤、粘度調節剤、安定剤、または浸透圧調節剤などの他の適切な医薬添加物を含み得る。
【0132】
本出願での使用に適した液体担体には、水(上記の添加剤を部分的に含む、例えばセルロース誘導体、好ましくはカルボキシメチルセルロースナトリウム溶液)、アルコール(一価アルコールおよび例えばグリコールなどの多価アルコール)、およびそれらの誘導体、および油(例えば、分取ココナッツ油およびラッカセイ油)が含まれるが、これらに限定されない。非経口投与については、担体はまた、オレイン酸エチルおよびミリスチン酸イソプロピルなどの油性エステルを含み得る。滅菌液体担体は、非経口投与のための化合物Iの固体形態を含む滅菌液体形態で有用である。本明細書に開示される加圧化合物の液体担体は、ハロゲン化炭化水素または他の薬学的に許容される推進剤であり得る。
【0133】
本出願での使用に適した固体担体には、ラクトース、デンプン、グルコース、メチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、リン酸二カルシウム、マンニトールなどの不活性物質が含まれるが、これらに限定されない。固体担体は、香味剤、潤滑剤、可溶化剤、懸濁剤、充填剤、滑剤、圧縮補助剤、結合剤、または錠剤崩壊剤として作用する一つ以上の物質をさらに含むことができ、また封入材料であり得る。粉末では、担体は、微細に分割された活性化合物と混合された微細に分割された固体であってもよい。錠剤では、活性化合物は、適切な割合で必要な圧縮特性を有する担体と混合され、所望の形状およびサイズで圧縮される。粉末および錠剤は、好ましくは活性化合物の最大99%を含む。好適な固体担体には、例えば、リン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、ラクトース、デキストリン、デンプン、ゼラチン、セルロース、ポリビニルピロリジン、低溶解ワックス、およびイオン交換樹脂が含まれる。錠剤は、圧縮もしくは成形によって、任意に一つ以上の副成分と共に、作製され得る。圧縮された錠剤は、適切な機械で、粉末または顆粒などの遊離形態の活性成分を圧縮することによって調製されてもよく、任意に、結合剤(例えば、ポビドン、ゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、潤滑剤、不活性希釈剤、保存剤、崩壊剤(例えば、デンプングリコール酸ナトリウム、架橋ポビドン、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム)表面活性または分散剤と混合される。成形錠剤は、好適な機械で、不活性液体希釈剤で湿らせた粉末化合物の混合物を成形することによって作製され得る。錠剤はまた、例えば、様々な割合でヒドロキシプロピルメチルセルロースを使用して、その中の活性成分の緩徐もしくは制御放出を提供して、所望の放出プロファイルを提供するように、任意に覆われたり、または切れ目を入れられたり、および製剤化され得る。錠剤は、任意に腸溶コーティングを提供され、胃以外の消化管の一部に放出されてもよい。
【0134】
本出願での使用に適した非経口担体には、限定するものではないが、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸リンゲルおよび固定油が含まれる。静脈内担体には、液体および栄養素補充剤、リンゲルデキストロースなどをベースとする電解質補充剤が含まれる。例えば、抗菌剤、抗酸化剤、キレート剤、不活性ガスなどの保存剤および他の添加剤も存在し得る。
【0135】
本出願での使用に適した担体は、必要に応じて、当該技術分野で公知の従来的技術を使用して、崩壊剤、希釈剤、造粒剤、潤滑剤、結合剤などと混合することができる。担体はまた、当技術分野で公知である、化合物と有害に反応しない方法を使用して滅菌することができる。
【0136】
希釈剤を本発明の製剤に添加してもよい。希釈剤は、固体医薬組成物および/または組み合わせの容量を増加させ、組成物および/または組み合わせを含む医薬剤形を、患者および介護者がより扱いやすくし得る。固体組成物および/または組み合わせのための希釈剤には、例えば、微結晶性セルロース(例えば、AVICEL)、極細セルロース、ラクトース、デンプン、アルファ化デンプン、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、糖、デキストレート(dextrate)、デキストリン、ブドウ糖、第二リン酸カルシウム二水和物、第三リン酸カルシウム、カオリン、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、マルトデキストリン、マンニトール、ポリメタクリレート(例えば、EUDRAGIT(r))、塩化カリウム、粉末セルロース、塩化ナトリウム、ソルビトール、およびタルク、が含まれる。
【0137】
追加の実施形態は、製剤が、固体、粉末、液体、およびゲルからなる群から選択される、医薬製剤に関する。いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物は、固体(例えば、粉末、錠剤、カプセル、造粒物、および/または凝集物)である。こうしたいくつかの実施形態では、固体医薬組成物は、限定するものではないが、デンプン、糖、希釈剤、造粒剤、潤滑剤、結合剤、および崩壊剤を含む、当技術分野で公知の一つ以上の成分を含む。
【0138】
錠剤などの剤形に圧縮される固体医薬組成物は、その機能が、圧縮後に有効成分および他の賦形剤を一緒に結合させるのを助けることを含む賦形剤を含み得る。固体医薬組成物および/または組み合わせのための結合剤には、アカシア、アルギン酸、カルボマー(例えば、カルボポール)、カルボキシメチルセルロースナトリウム、デキストリン、エチルセルロース、ゼラチン、グアーガム、ゴムトラガカント、硬化植物油、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(例えば、KLUCEL)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(例えば、METHOCEL)、液体グルコース、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、マルトデキストリン、メチルセルロース、ポリメタクリレート、ポビドン(例えば、KOLLIDON、PLASDONE)、アルファ化デンプン、アルギン酸ナトリウム、およびデンプン、を含む。
【0139】
患者の胃における圧縮固体医薬組成物の溶解速度は、組成物および/または組み合わせへの崩壊剤の添加によって増加し得る。崩壊剤には、アルギン酸、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム(例えば、AC-DI-SOLおよびPRIMELLOSE)、コロイド状二酸化ケイ素、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン(例えば、KOLLIDONおよびPOLYPLASDONE)、グアーガム、マグネシウムケイ酸アルミニウム、メチルセルロース、微結晶性セルロース、ポラクリリンカリウム、粉末セルロース、アルファ化デンプン、アルギン酸ナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム(例えば、EXPLOTAB)、ジャガイモデンプン、およびデンプン、が含まれる。
【0140】
非圧縮固体組成物および/または組み合わせの流動性を改善し、投与の精度を改善するために、流動促進剤を追加することができる。流動促進剤として機能し得る賦形剤には、コロイド状二酸化ケイ素、三ケイ酸マグネシウム、粉末セルロース、デンプン、タルク、および第三リン酸カルシウムが含まれる。
【0141】
錠剤などの剤形が粉末組成物の圧縮によって作製されるとき、組成物はパンチおよび染料からの圧力に供される。一部の賦形剤および活性成分は、パンチおよび染料の表面に付着する傾向があり、これは、生成物にくぼみおよび他の表面の凹凸を生じさせる可能性がある。潤滑剤を組成物および/または組み合わせに添加して、付着を低減し、染料からの生成物の放出を容易にすることができる。潤滑剤には、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、グリセリルモノステアレート、パルミトステアリン酸グリセリル、硬化ヒマシ油、硬化植物油、鉱油、ポリエチレングリコール、安息香酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、フマル酸ステアリルナトリウム、ステアリン酸、タルク、およびステアリン酸亜鉛、が含まれる。
【0142】
香味剤および風味エンハンサーは、剤形を患者により口当たりをよくする。本発明の組成物および/または組み合わせに含まれ得る医薬品の一般的な香味剤および風味エンハンサーには、マルトール、バニリン、エチルバニリン、メントール、クエン酸、フマル酸、エチルマルトール、および酒石酸、が含まれる。
【0143】
固体および液体の組成物はまた、任意の薬学的に許容される着色剤を使用して染色されて、その外観を改善し、および/または製品および単位用量レベルの患者による識別を容易にしてもよい。
【0144】
いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物は、液体(例えば、懸濁液、エリキシルおよび/または溶液)である。こうしたいくつかの実施形態では、液体医薬組成物は、限定するものではないが、水、グリコール、油、アルコール、香味剤、保存剤、および着色剤を含む、当技術分野で公知の成分を使用して調製される。
【0145】
液体医薬組成物は、化合物Iの一つ以上の固体形態、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、もしくは溶媒和塩、および水、植物油、アルコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、またはグリセリンなどの液体担体中に成分が溶解または懸濁される任意の他の固体賦形剤を使用して調製することができる。
【0146】
例えば、非経口投与のための製剤は、一般的な賦形剤として、滅菌水または生理食塩水、例えばポリエチレングリコールなどのポリアルキレングリコール、植物由来の油、水素化ナフタレンなどを含み得る。特に、生体適合性、生分解性ラクチドポリマー、ラクチド/グリコリド共重合体、またはポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン共重合体は、活性化合物の放出を制御するのに有用な賦形剤であり得る。他の潜在的に有用な非経口送達システムには、エチレンビニルアセテート共重合体粒子、浸透圧ポンプ、埋め込み型注入システム、およびリポソームが含まれる。吸入投与のための製剤は、賦形剤として、例えばラクトースを含むか、または例えばポリオキシエチレン-9-アリールエーテル、グリココーレートおよびデオキシコーレートを含む水溶液であり得、または点鼻薬の形態での投与のための油性溶液、または鼻腔内に適用されるゲルであり得る。非経口投与のための製剤はまた、口腔投与のためのグリココール酸、直腸投与のためのメトキシサリチル酸、または膣投与のためのクエン酸を含み得る。
【0147】
液体医薬組成物は、組成物および/または組み合わせ全体にわたって均一に分散する乳化剤、液体担体に可溶性ではない活性成分もしくは他の賦形剤を含むことができる。本発明の液体組成物および/または組み合わせに有用であり得る乳化剤には、例えば、ゼラチン、卵黄、カゼイン、コレステロール、アカシア、トラガカント、コンドラス、ペクチン、メチルセルロース、カルボマー、セトステアリルアルコール、およびセチルアルコール、が含まれる。
【0148】
液体医薬組成物はまた、製品の口当たりを改善する、および/または消化管の内壁を被覆するための粘度向上剤を含むことができる。そのような薬剤には、アカシア、アルギン酸ベントナイト、カルボマー、カルボキシメチルセルロースカルシウムまたはナトリウム、セトステアリルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、ゼラチングアーガム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、マルトデキストリン、ポリビニルアルコール、ポビドン、プロピレンカーボネート、プロピレングリコールアルギネート、ナトリウムアルギネート、デンプングリコール酸ナトリウム、デンプントラガンド、およびキサンタンゴム、が含まれる。
【0149】
アスパルテーム、ラクトース、ソルビトール、サッカリン、サッカリンナトリウム、スクロース、アスパルテーム、フルクトース、マンニトール、および逆糖などの甘味剤が、味覚の改善のために添加されてもよい。
【0150】
アルコール、安息香酸ナトリウム、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソール、およびエチレンジアミン四酢酸などの保存剤およびキレート剤が、保存安定性の改善のために、摂取に安全なレベルで添加されてもよい。
【0151】
液体組成物はまた、グコン酸(guconic acid)、乳酸、クエン酸または酢酸、グコン酸ナトリウム(sodium guconate)、乳酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、または酢酸ナトリウムなどの緩衝剤を含んでもよい。賦形剤の選択および使用量は、当技術分野における標準的な手順および参照作業の経験および考察に基づいて、製剤科学者によって容易に決定され得る。
【0152】
一実施形態では、医薬組成物は、注射(例えば、静脈内、皮下、筋肉内など)による投与のために調製される。こうしたいくつかの実施形態では、医薬組成物は、担体を含み、水またはハンクス容液、リンガー溶液、または生理食塩水緩衝液などの生理学的に適合する緩衝液などの水溶液中に製剤化される。いくつかの実施形態では、他の成分(例えば、溶解性を助ける、または保存剤としての役割を果たす成分)が含まれる。いくつかの実施形態では、注射可能な懸濁液は、適切な液体担体、懸濁剤などを使用して調製される。注射のためのいくつかの医薬組成物は、単位剤形、例えば、アンプルまたは複数回投与容器で提示される。注射のためのいくつかの医薬組成物は、油性または水性のビヒクル中の懸濁液、溶液またはエマルションであり、懸濁剤、安定化剤、および/または分散剤などの配合剤を含んでもよい。注射用の医薬組成物での使用に適したいくつかの溶媒には、限定するものではないないが、親油性溶媒および例えばゴマ油などの脂肪油、オレイン酸エチルまたはトリグリセリドなどの合成脂肪酸エステル、およびリポソーム、が含まれる。水性注射懸濁液は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、またはデキストランなどの懸濁液の粘度を増加させる物質を含んでもよい。任意で、このような懸濁液はまた、高濃縮溶液の調製を可能にするために、医薬品の溶解性を増加させる適切な安定剤または薬剤を含んでもよい。
【0153】
滅菌された注射用調製物はまた、1,3-ブタン-ジオール中の溶液または凍結乾燥された粉末として調製された溶液などの、非毒性の非経口的に許容される希釈剤または溶媒中の滅菌された注射用溶液または懸濁液であってもよい。採用され得る許容されるビヒクルおよび溶媒は、水、リンガー溶液、および生理食塩液である。さらに、滅菌固定油は、慣例的に、溶媒または懸濁媒体として用いられてもよい。この目的のために、合成モノグリセリドまたはジグリセリドを含む、任意の無刺激の固定油を使用してもよい。さらに、オレイン酸などの脂肪酸は、同様に、注射剤の調製に使用され得る。静脈内投与のための製剤は、滅菌等張水性緩衝液中の溶液を含み得る。必要に応じて、製剤はまた、注射部位の痛みを緩和するための可溶化剤および局所麻酔剤を含み得る。一般的に、成分は、例えば、活性剤の量を示すアンプルまたはサシェなどの密封容器内の乾いた凍結乾燥粉末または無水濃縮物として、単位剤形で別々にまたは一緒に混合されて供給される。化合物Iの固体形態が点滴により投与される場合、滅菌医薬グレードの水、生理食塩水、またはデキストロース/水を含む点滴ボトルと共に、製剤中に分注されてもよい。化合物Iの固体形態が注射により投与される場合、成分が投与前に混合されるように注入用滅菌水または生理食塩水のアンプルが提供されてもよい。
【0154】
適切な製剤には、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、殺菌性抗生物質、および製剤を意図されたレシピエントの体液と等張にする溶質を含むことができる水性および非水性の滅菌注射溶液、および懸濁剤および増粘剤を含み得る水性および非水性の滅菌懸濁液、がさらに含まれる。
【0155】
いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物は、デポ調製物として製剤化される。いくつかのこのようなデポ調製物は、典型的には、非デポ調製物よりも長く作用する。いくつかの実施形態では、こうした調製物は、移植(例えば、皮下または筋肉内)によって、または筋肉内注射によって投与される。いくつかの実施形態では、デポ調製物は、好適なポリマーもしくは疎水性材料(例えば、許容される油中のエマルション)もしくはイオン交換樹脂を使用して、または例えば、難溶性塩などの難溶性誘導体として、調製される。
【0156】
いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物は、送達システムを含む。送達システムの例には、限定するものではないが、リポソームおよびエマルションが含まれる。いくつかの送達システムは、疎水性化合物を含むいくつかの医薬組成物の調製に有用である。いくつかの実施形態では、ジメチルスルホキシドなどのいくつかのの有機溶媒が使用される。
【0157】
いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物は、共溶媒系を含む。こうしたいくつかの共溶媒系は、例えば、ベンジルアルコール、非極性界面活性剤、水混和性有機ポリマー、および水相を含む。いくつかの実施形態では、このような共溶媒系は、疎水性化合物に使用される。こうした共溶媒系の非限定的な例は、VPD共溶媒系であり、これは、3%w/vベンジルアルコール、8%w/vの非極性界面活性剤ポリソルベート80および65%w/vポリエチレングリコール300を含む絶対エタノールの溶液である。こうした共溶媒系の割合は、溶解性および毒性特徴を著しく変化させることなく、大きく変化し得る。さらに、共溶媒成分の独自性は変化し得る。例えば、ポリソルベート80の代わりに他の界面活性剤を使用してもよく、ポリエチレングリコールの画分サイズが変化してもよく、他の生体適合性ポリマーが例えばポリビニルピロリドンなどのポリエチレングリコールと置き換わってもよく、他の糖類または多糖類がデキストロースと置き換わってもよい。
【0158】
いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物は、徐放システムを含む。こうした徐放系の非限定的な例は、固体疎水性ポリマーの半透過性マトリックスである。いくつかの実施形態では、徐放システムは、その化学的性質に応じて、何時間、何日、何週間、または何か月の期間にわたって医薬品を放出し得る。
【0159】
本開示の適切な医薬組成物は、対象への組成物の任意の臨床的に許容される投与経路に従って決定することができる。組成物が投与される方法は、部分的に、原因および/または位置に依存する。当業者は、いくつかの投与経路の優位性を認識するであろう。方法は、治療活性剤または化合物Iの一つ以上の固体形態(または治療薬または化合物Iを含む組成物)の有効量を投与して、所望の生物学的応答を達成することを含む、例えば、腫瘍障害および神経学障害などの治療される状態の症状を、全体的にまたは部分的に、緩和、改善、または予防するのに有効な量。様々な態様では、投与経路は、例えば、経口または注射により、全身的である。化合物I、もしくはその薬学的に許容される塩、もしくは誘導体、または治療薬は、経口的、経鼻的、経皮的、経肺的、吸入的、頬側、舌下、腹腔内、皮下、筋肉内、静脈内、経直腸的、胸膜内、髄腔内、門脈内、および非経口的に投与される。代替的にまたは追加的に、投与経路は、例えば局部的、腫瘍内、および腫瘍周囲など、局所的である。一部の実施形態では、化合物Iの固体形態は、経口投与される。
【0160】
いくつかの実施形態では、本開示の医薬組成物は、経口投与のために調製される。こうしたいくつかの実施形態では、医薬組成物は、一つ以上の薬剤および薬学的に許容される担体を組み合わせることによって製剤化される。こうしたいくつかの担体は、対象による経口摂取のために、医薬組成物を錠剤、ピル、糖剤、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液などとして製剤化することを可能にする。適切な賦形剤には、限定するものではないが、ラクトース、スクロース、マンニトール、またはソルビトールを含む糖などの充填剤、例えば、トウモロコシデンプン、小麦デンプン、米デンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、ゴムトラガカント、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、および/またはポリビニルピロリドン(PVP)などのセルロース調製物、が含まれる。いくつかの実施形態では、こうした混合物は任意で粉砕され、補助剤が任意で加えられる。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、錠剤または糖衣錠コアを得るために形成される。いくつかの実施形態では、崩壊剤(例えば、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、もしくはアルギン酸、またはアルギン酸ナトリウムなどのその塩)が添加される。
【0161】
いくつかの実施形態では、糖衣錠コアにはコーティングが提供される。いくつかのこうした実施形態では、濃縮糖溶液が使用されてもよく、これは任意で、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、および/または二酸化チタン、ラッカー溶液、および好適な有機溶媒または溶媒混合物を含んでもよい。染料または色素は、錠剤または糖剤コーティングに添加されてもよい。
【0162】
いくつかの実施形態では、経口投与のための医薬組成物は、ゼラチンからなるプッシュフィットカプセルである。こうしたいくつかのプッシュフィットカプセルは、ラクトースなどの一つ以上の充填剤、デンプンなどの結合剤、および/またはタルクまたはステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤、および任意に安定剤と混合する、一つ以上の本発明の医薬品を含む。いくつかの実施形態では、経口投与のための医薬組成物は、ゼラチンおよびグリセロールまたはソルビトールなどの可塑剤からなる軟質の密封カプセルである。いくつかの軟質カプセルでは、一つ以上の本発明の医薬品は、脂肪油、液体パラフィン、または液体ポリエチレングリコールなどの適切な液体に溶解または懸濁する。さらに、安定剤が加えられてもよい。
【0163】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、口腔投与のために調製される。こうしたいくつかの医薬組成物は、従来的な方法で製剤化された錠剤またはトローチである。
【0164】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、経粘膜的投与のために調製される。こうしたいくつかの実施形態では、透過されるバリアに適切な浸透剤が製剤に使用される。こうした浸透剤は、当技術分野で一般的に知られている。
【0165】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、吸入投与のために調製される。吸入のための、こうしたいくつかの医薬組成物は、加圧パックまたはネブライザー内のエアロゾルスプレーの形態で調製される。こうしたいくつかの医薬組成物は、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、または他の適切なガスなどの推進剤を含む。加圧エアロゾルを使用するいくつかの実施形態では、単位用量は、測定された量を送達する弁で決定され得る。いくつかの実施形態では、吸入器または送気装置で使用するためのカプセルおよびカートリッジが製剤化されてもよい。こうしたいくつかの製剤は、本発明の医薬品およびラクトースまたはデンプンなどの適切な粉末塩基との粉末混合物を含む。
【0166】
他の実施形態では、本開示の化合物Iの固体形態は、静脈内経路によって投与される。さらなる実施形態では、非経口投与は、ボーラスまたは点滴で提供されてもよい。
【0167】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、座薬または保持浣腸などの直腸投与のために調製される。こうしたいくつかの医薬組成物は、ココアバターおよび/または他のグリセリドなどの既知の成分を含む。
【0168】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、局所投与のために調製される。こうしたいくつかの医薬組成物は、軟膏またはクリームなどの無刺激の保湿ベースを含む。例示的な適切な軟膏ベースには、限定するものではないが、ペトロタラム、ペトロタラム+揮発性シリコン、および油エマルション中のラノリンおよび水、が含まれる。例示的な適切なクリームベースには、限定するものではないが、コールドクリームおよび親水性軟膏が含まれる。
【0169】
いくつかの実施形態では、治療有効量は、疾患の症状を防止、緩和、または改善するために、または治療される対象の生存を延長するのに十分である。治療有効量の決定は、充分に当業者の能力の範囲内である。
【0170】
いくつかの実施形態では、化合物Iの一つ以上の固体形態、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、または溶媒和塩は、プロドラッグとして製剤化される。いくつかの実施形態では、インビボ投与により、プロドラッグは、生物学的、薬学的、または治療的により活性な形態に化学的に変換される。いくつかの実施形態では、プロドラッグは、対応する活性形態よりも投与が容易であるため、有用である。例えば、いくつかの実例では、プロドラッグは、対応する活性形態よりも生物学的に利用可能(例えば、経口投与を通して)であり得る。いくつかの実例では、プロドラッグは、対応する活性形態と比較して、改善された溶解性を有し得る。いくつかの実施形態では、プロドラッグは、対応する活性形態よりも水溶性が低い。いくつかの実例では、こうしたプロドラッグは、細胞膜にわたって優れた伝達性を有し、ここで、水溶性は、可動性に対して有害である。いくつかの実施形態では、プロドラッグはエステルである。いくつかのこうした実施形態では、エステルは、投与時に代謝的にカルボン酸に加水分解される。いくつかの例では、化合物Iの固体形態を含むカルボン酸は、対応する活性形態である。いくつかの実施形態では、プロドラッグは、酸基に結合された短いペプチド(ポリアミノ酸)を含む。こうしたいくつかの実施形態では、ペプチドは、投与時に切断されて、対応する活性形態を形成する。
【0171】
いくつかの実施形態では、プロドラッグは、化合物Iがインビボ投与で再生されるように、医薬的に活性な化合物を修飾することによって生成される。プロドラッグは、薬物の代謝安定性または輸送特徴を変化させ、副作用または毒性を隠し、薬物の風味を改善するか、または薬物の他の特徴もしくは特性を変化させるように設計され得る。薬力学的プロセスおよびインビボでの薬物代謝についての知識のおかげで、医薬的に活性な化合物が公知になれば、当業者は化合物のプロドラッグを設計することができる(例えば、Nogrady(1985)Medicinal Chemistry A Biochemical Approach,Oxford University Press,New York,pages 388-392参照)。
【0172】
様々な態様では、化合物Iの一つ以上の固体形態、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、または溶媒和塩の量は、約0.001mg/kg~約100mg/kg体重(例えば、約0.01mg/kg~約10mg/kgまたは約0.1mg/kg~約5mg/kg)で投与することができる。
【0173】
薬学的に許容される混合物中の開示される化合物Iの固体形態の濃度は、投与される化合物Iの固体形態の投薬量、用いられる固体形態(複数可)の薬物動態特徴、および投与経路を含むいくつかの要因に応じて変化するであろう。薬剤は、単回投与または反復投与で投与され得る。本発明の化合物Iの固体形態を利用する投薬レジメンは、患者のタイプ、種、年齢、体重、性別、および病状、治療される状態の重症度、投与経路、患者の腎機能および肝機能、用いられる特定の固体形態またはその塩を含む様々な要因に従って選択される。治療は、患者の健康全般および選択された形態の処方ならびに投与経路を含む数多くの要因に応じて1日1回またはより頻繁に投与され得る。通常の知識を有する医師又は獣医は、その症状の進行を防ぐか、阻止するか、又は抑えるのに必要な薬剤の有効量を容易に決定し、処方することができる。
【0174】
化合物Iの固体形態、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、または溶媒和塩、または本開示の医薬組成物は、単一もしくは複数の単位用量形態で製造および/または投与され得る。
【0175】
治療的使用
本開示の結晶形態および医薬組成物は、任意の数の方法において使用される。例えば、一部の実施形態では、結晶形態および医薬組成物は、アンドロゲン受容体(AR)を調節する方法において有用である。一部の実施形態では、アンドロゲン受容体(AR)活性の調節は、哺乳類細胞中で行われる。一部の実施形態では、アンドロゲン受容体(AR)の調節は、それを必要とする対象(例えば、哺乳類対象)中で行われてもよく、および記載される状態または疾患のいずれかの治療のためであってもよい。
【0176】
一実施形態では、ARの調節は、ARとの結合である。他の実施形態では、ARの調節は、ARの阻害である。
【0177】
一実施形態では、ARの調節は、AR N末端ドメイン(NTD)の調節である。一実施形態では、ARの調節は、AR NTDとの結合である。他の実施形態では、ARの調節は、AR NTDの阻害である。一実施形態では、ARの調節は、AR N末端ドメイン(NTD)の調節である。一部の実施形態では、ARの調節は、アンドロゲン受容体N末端ドメイン(NTD)のトランス活性化の阻害である。
【0178】
他の実施形態では、アンドロゲン受容体(AR)活性の調節は、前立腺癌、乳癌、卵巣癌、膀胱癌、膵癌、肝細胞癌、子宮内膜癌、唾液腺癌、脱毛、にきび、多毛症、卵巣嚢胞、多嚢胞性卵巣疾患、早発思春期、球脊髄性筋萎縮症、加齢黄斑変性症、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも一つの症状の治療のためのものである。例えば、一部の実施形態では、症状は前立腺癌である。他の実施形態では、前立腺癌は、原発性/限局性前立腺癌、局所進行性前立腺癌、再発性前立腺癌、転移性前立腺癌、進行性前立腺癌、または転移性去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)、またはホルモン感受性前立腺癌である。一方、他の実施形態では、前立腺癌はアンドロゲン依存性前立腺癌である。他の実施形態では、球脊髄性筋萎縮症は、ケネディ病である。
【0179】
本開示の一実施形態では、それを必要とする患者において、細胞増殖に関連する状態を治療する方法が提供される。一実施形態では、本発明は、癌または腫瘍を治療する方法を提供する。別の実施形態では、本発明は前立腺癌または乳癌を治療する方法を提供する。別の実施形態では、本発明は前立腺癌を治療する方法を提供する。
【0180】
本開示の一実施形態では、それを必要とする患者において、細胞増殖を低減、阻害、または改善する方法が提供される。一実施形態では、本明細書に開示される方法における低減、阻害、または改善は、インビボである。別の実施形態では、低減、阻害、または改善はインビトロである。
【0181】
一実施形態では、本明細書に開示される方法の細胞は、癌細胞である。一実施形態では、癌細胞は前立腺癌細胞である。一実施形態では、前立腺癌細胞は、原発性/限局性前立腺癌(新たに診断された、または早期の段階)、局所進行性前立腺癌細胞、再発性前立腺癌(例えば、一次療法で治癒されなかった前立腺癌)、転移性前立腺癌、進行性前立腺癌(例えば、再発性前立腺癌に対する去勢後)、転移性去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)、またはホルモン感受性前立腺癌の細胞である。別の実施形態では、前立腺癌細胞は、転移性去勢抵抗性前立腺癌の細胞である。他の実施形態では、前立腺癌細胞は、アンドロゲン依存性前立腺癌細胞またはアンドロゲン非依存性前立腺癌細胞である。一実施形態では、癌細胞は、乳癌細胞である。
【0182】
一実施形態では、細胞増殖に関連する状態または疾患は、癌である。本明細書に開示されるいずれか一つの方法の一実施形態では、癌は、前立腺癌、乳癌、卵巣癌、子宮内膜癌、唾液腺癌、脱毛、にきび、多毛症、卵巣嚢胞、多嚢胞性卵巣疾患、早発思春期、球脊髄性筋萎縮症、および加齢黄斑変性症からなる群から選択される。一実施形態では、状態または疾患は前立腺癌である。一実施形態では、前立腺癌は、原発性/限局性の前立腺癌、局所進行性前立腺癌、再発性前立腺癌、転移性前立腺癌、進行性前立腺癌、転移性去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)、またはホルモン感受性前立腺癌から選択される。別の実施形態では、前立腺癌は、転移性去勢抵抗性前立腺癌である。一部の実施形態では、前立腺癌は、アンドロゲン依存性前立腺癌細胞またはアンドロゲン非依存性前立腺癌である。一実施形態では、状態または疾患は乳癌である。一実施形態では、乳癌は、AR陽性トリプルネガティブ乳癌である。
【0183】
本開示の別の実施形態では、腫瘍成長を低減または予防する方法は、腫瘍細胞を、本明細書に開示される医薬組成物または組み合わせと接触させることを含む。
【0184】
一実施形態では、腫瘍増殖を低減または防止することは、腫瘍体積の減少を含む。一実施形態では、腫瘍増殖を低減または予防することは、腫瘍の完全な除去を含む。一実施形態では、腫瘍増殖を低減または防止することは、既存の腫瘍の増殖の停止または休止を含む。一実施形態では、腫瘍増殖を低減または予防することは、腫瘍増殖速度の低減を含む。一実施形態では、腫瘍増殖を低減または予防することは、本明細書に開示される方法で患者を治療する前の腫瘍増殖速度(r1)が、前記治療後の腫瘍増殖速度(r2)よりも速いように、r1>r2であるように、腫瘍増殖速度を低減することを含む。
【0185】
一実施形態では、本明細書に開示される方法における低減または予防は、インビボである。別の実施形態では、治療はインビトロである。
【0186】
一実施形態では、本明細書に開示される方法の腫瘍細胞は、前立腺癌、乳癌、卵巣癌、子宮内膜癌、または唾液腺癌から選択される。一実施形態では、腫瘍細胞は前立腺癌腫瘍細胞である。一実施形態では、前立腺癌腫瘍細胞は、原発性/限局性の前立腺癌、局所進行性前立腺癌、再発性前立腺癌、転移性前立腺癌、進行性前立腺癌、転移性去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)、またはホルモン感受性前立腺癌の腫瘍細胞である。他の実施形態では、前立腺癌は、転移性去勢抵抗性前立腺癌である。一部の実施形態では、前立腺癌は、アンドロゲン依存性前立腺癌またはアンドロゲン非依存性前立腺癌である。別の実施形態では、腫瘍細胞は乳癌腫瘍細胞である。
【0187】
アンドロゲン受容体駆動型遺伝子発現に関連する治療的使用
一実施形態では、本開示は、癌を有する対象を治療するための方法を提供し、方法は、化合物Iの固体形態またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、または溶媒和塩を用いた対象の治療の前および/または後に、癌の試料を得ることを含む。
【0188】
本開示の一実施形態では、アンドロゲン受容体駆動性遺伝子活性異常を有する患者を、化合物Iの固体形態またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、もしくは溶媒和塩を、単独で、または第二の治療薬と組み合わせて治療する方法が提供される。
【0189】
一実施形態では、本開示は、癌を有する対象を治療するための方法を提供し、この方法は、化合物Iの固体形態で治療する前に癌の試料を取得し、試料においてアンドロゲン受容体駆動遺伝子の発現レベルを決定することを含む。別の特定の実施形態では、アンドロゲン受容体駆動性遺伝子の発現レベルを試験した後、対象は、化合物Iの固体形態またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、もしくは溶媒和塩を、単独でまたは本明細書に開示される第二の治療活性剤と組み合わせて、投与される。特定の実施形態では、遺伝子は、KLK2、FKBP5、TMPRSS2、KLK3、NCAPD3、NKX3-1、NDRG1、STEAP4、FAM105A、AKAP12、PMEPA1、PLPP1、SNAl2、ACSL3、ERRFl1、CDC6、ELL2、CENPN、RHOU、EAF2、SGK1、SLC16A6、TIPARP、IGF1R、CCND1、ADAMTS1、およびPRR15Lからなる群から選択される一つ以上である。
【0190】
一実施形態では、本開示は、一つ以上のアンドロゲン受容体駆動遺伝子の異常遺伝子発現を有する対象において癌を治療する方法を提供し、この方法は、化合物Iの固体形態またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、または溶媒和塩を対象に投与することを含む。本明細書に開示される方法のいずれか一つの一実施形態では、アンドロゲン受容体駆動遺伝子は、アンドロゲン受容体全長駆動遺伝子である。一実施形態では、アンドロゲン受容体駆動遺伝子は、アンドロゲン受容体V7駆動遺伝子である。本明細書に開示される方法のいずれか一つの実施形態では、異常な活性を有する遺伝子は、KLK2、FKBP5、TMPRSS2、KLK3、NCAPD3、NKX3-1、NDRG1、STEAP4、FAM105A、AKAP12、PMEPA1、PLPP1、SNAl2、ACSL3、ERRFl1、CDC6、ELL2、CENPN、RHOU、EAF2、SGK1、SLC16A6、TIPARP、IGF1R、CCND1、ADAMTS1、またはPRR15Lから選択される。本明細書に開示される方法の一実施形態では、癌は、前立腺癌、乳癌、卵巣癌、子宮内膜癌、または唾液腺癌から選択される。一実施形態では、癌は前立腺癌である。一実施形態では、前立腺癌は、原発性/限局性前立腺癌、局所進行性前立腺癌、再発性前立腺癌、転移性前立腺癌、進行性前立腺癌、転移性去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)、またはホルモン感受性前立腺癌から選択される。他の実施形態では、前立腺癌は、転移性去勢抵抗性前立腺癌である。一部の実施形態では、前立腺癌は、アンドロゲン依存性前立腺癌またはアンドロゲン非依存性前立腺癌である。別の実施形態では、癌は乳癌である。特定の実施形態において、化合物Iの固体形態は結晶形態Aである。特定の実施形態において、化合物Iの固体形態は非結晶形態である。
【0191】
一実施形態では、本開示は、一つ以上のアンドロゲン受容体駆動遺伝子の異常遺伝子発現を有する対象において癌を治療する方法を提供し、この方法は、化合物Iの固体形態またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、または溶媒和塩を対象に投与することを含む。一実施形態では、化合物Iの固体形態は、本明細書に開示される第二の治療活性剤と組み合わせた結晶形態Aまたは非結晶形態である。特定の実施形態では、第二の治療活性剤は、非ステロイド性抗アンドロゲン剤(NSAA)である。本開示の医薬組成物の一実施形態では、アンドロゲン受容体リガンド結合ドメイン阻害剤は、エンザルタミド、アパルタミド、ダロルタミド、ビカルタミド、ニルタミド、フルタミド、ODM-204、またはTAS3681である。一実施形態では、アンドロゲン受容体リガンド結合ドメイン阻害剤はエンザルタミドである。
【0192】
本明細書に開示される方法のいずれか一つの一実施形態では、アンドロゲン受容体駆動遺伝子は、アンドロゲン受容体全長駆動遺伝子である。一実施形態では、アンドロゲン受容体駆動遺伝子は、アンドロゲン受容体V7駆動遺伝子である。本明細書に開示される方法のいずれか一つの実施形態では、異常な活性を有する遺伝子は、KLK2、FKBP5、TMPRSS2、KLK3、NCAPD3、NKX3-1、NDRG1、STEAP4、FAM105A、AKAP12、PMEPA1、PLPP1、SNAl2、ACSL3、ERRFl1、CDC6、ELL2、CENPN、RHOU、EAF2、SGK1、SLC16A6、TIPARP、IGF1R、CCND1、ADAMTS1、またはPRR15Lから選択される。本明細書に開示される方法の一実施形態では、癌は、前立腺癌、乳癌、卵巣癌、子宮内膜癌、または唾液腺癌から選択される。一実施形態では、癌は前立腺癌である。一実施形態では、前立腺癌は、原発性/限局性前立腺癌、局所進行性前立腺癌、再発性前立腺癌、転移性前立腺癌、進行性前立腺癌、転移性去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)、またはホルモン感受性前立腺癌から選択される。他の実施形態では、前立腺癌は、転移性去勢抵抗性前立腺癌である。一部の実施形態では、前立腺癌は、アンドロゲン依存性前立腺癌またはアンドロゲン非依存性前立腺癌である。別の実施形態では、癌は乳癌である。特定の実施形態では、化合物Iの固体形態は結晶形態Aであり、第二の治療活性剤はエンザルタミドである。特定の実施形態では、化合物Iの固体形態は非結晶形態であり、第二の治療活性剤はエンザルタミドである。
【0193】
一実施形態では、本開示は、癌を有する対象を治療する方法を提供し、アンドロゲン受容体調節因子を用いた治療後に癌の試料を得ること、および試料中でアンドロゲン受容体駆動遺伝子の発現レベルを決定することを含み、参照標準レベルと比較した場合に、遺伝子発現レベルがアンドロゲン受容体調節因子を用いた治療の前または後に減少するならば、その後、治療有効量のアンドロゲン受容体調節因子および/または第二の治療活性剤を用いて対象の治療を続行または再開することを含む。特定の実施形態では、遺伝子は、KLK2、FKBP5、TMPRSS2、KLK3、NCAPD3、NKX3-1、NDRG1、STEAP4、FAM105A、AKAP12、PMEPA1、PLPP1、SNAl2、ACSL3、ERRFl1、CDC6、ELL2、CENPN、RHOU、EAF2、SGK1、SLC16A6、TIPARP、IGF1R、CCND1、ADAMTS1、およびPRR15Lからなる群の一つ以上から選択される。一実施形態では、癌の試料が得られる前に投与されるアンドロゲン受容体調節因子は、アンドロゲン受容体駆動性遺伝子発現レベルが評価された後に投与されるアンドロゲン受容体調節因子と同一であっても、異なっていてもよい。一実施形態では、アンドロゲン受容体調節因子は、化合物Iの固体形態、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、または溶媒和塩である。
【0194】
一実施形態では、本開示は、癌を有する対象を治療する方法を提供し、本開示は、アンドロゲン受容体調節因子を用いた治療後に癌の試料を得ること、および試料中でアンドロゲン受容体駆動遺伝子の発現レベルを決定することを含み、参照標準レベルと比較した場合に、遺伝子発現レベルがアンドロゲン受容体調節因子を用いた治療の前または後に減少するならば、その後、治療有効量のアンドロゲン受容体調節因子または異なるアンドロゲン受容体調節因子および第二の治療薬を用いて対象の治療を続行または再開することを含み、ここで、遺伝子は、KLK2、FKBP5、TMPRSS2、KLK3、NCAPD3、NKX3-1、NDRG1、STEAP4、FAM105A、AKAP12、PMEPA1、PLPP1、SNAl2、ACSL3、ERRFl1、CDC6、ELL2、CENPN、RHOU、EAF2、SGK1、SLC16A6、TIPARP、IGF1R、CCND1、ADAMTS1、およびPRR15Lからなる群の一つ以上から選択される。一実施形態では、第二の治療薬は、アンドロゲン受容体リガンド結合ドメイン阻害剤であり、エンザルタミド、アパルタミド、ダロルタミド、ビカルタミド、ニルタミド、フルタミド、ODM-204、またはTAS3681である。一実施形態では、アンドロゲン受容体リガンド結合ドメイン阻害剤はエンザルタミドである。一実施形態では、第二の治療薬はBcl-2阻害剤である。一実施形態では、Bcl-2阻害剤はベネトクラクスである。一実施形態では、第二の治療薬はアンドロゲン受容体N末端ドメイン阻害剤である。一実施形態では、アンドロゲン受容体調節因子は、化合物Iの固体形態、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、または溶媒和塩である。
【0195】
一実施形態では、本開示は、癌を有する対象を治療する方法を提供し、本開示は、アンドロゲン受容体調節因子を用いた治療後に癌の試料を得ること、および試料中でアンドロゲン受容体駆動遺伝子の発現レベルを決定することを含み、参照標準レベルと比較した場合に、遺伝子発現レベルがアンドロゲン受容体調節因子を用いた治療の前または後に減少するならば、その後、治療有効量の化合物Iの固体形態またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、または溶媒和塩、およびエンザルタミドを用いて対象の治療を続行または再開することを含み、ここで、遺伝子は、KLK2、FKBP5、TMPRSS2、KLK3、NCAPD3、NKX3-1、NDRG1、STEAP4、FAM105A、AKAP12、PMEPA1、PLPP1、SNAl2、ACSL3、ERRFl1、CDC6、ELL2、CENPN、RHOU、EAF2、SGK1、SLC16A6、TIPARP、IGF1R、CCND1、ADAMTS1、またはPRR15Lから選択される。一実施形態では、アンドロゲン受容体調節因子は、化合物Iの固体形態である。
【0196】
一実施形態では、本開示は、癌を有する対象を治療する方法を提供し、本開示は、化合物Iの固体形態またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、または溶媒和塩を用いた治療後に癌の試料を得ること、および試料中でアンドロゲン受容体駆動遺伝子の発現レベルを決定することを含み、参照標準レベルと比較する場合に、遺伝子発現レベルが、化合物Iの固体形態またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、または溶媒和塩を用いた治療の前または後に減少するならば、その後、治療有効量の化合物Iの固体形態またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、または溶媒和塩を用いて、対象の治療を進行または再開することを含む。特定の実施形態では、エンザルタミドは、第二の治療薬として共投与されてもよい。別の特定の実施形態では、遺伝子は、KLK2、FKBP5、TMPRSS2、KLK3、NCAPD3、NKX3-1、NDRG1、STEAP4、FAM105A、AKAP12、PMEPA1、PLPP1、SNAl2、ACSL3、ERRFl1、CDC6、ELL2、CENPN、RHOU、EAF2、SGK1、SLC16A6、TIPARP、IGF1R、CCND1、ADAMTS1、またはPRR15Lから選択される。
【0197】
一実施形態では、本開示は、癌を有する対象を治療する方法を提供し、本開示は、アンドロゲン受容体調節因子を用いた治療後に癌の試料を得ること、および試料中でアンドロゲン受容体駆動遺伝子の発現レベルを決定することを含み、参照標準レベルと比較した場合に、遺伝子発現レベルがアンドロゲン受容体調節因子を用いた治療の前または後に減少するならば、その後、治療有効量の化合物Iの固体形態またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、または溶媒和塩を用いて対象の治療を続行または再開することを含み、ここで、遺伝子は、KLK2、FKBP5、TMPRSS2、KLK3、NCAPD3、NKX3-1、NDRG1、STEAP4、FAM105A、AKAP12、PMEPA1、PLPP1、SNAl2、ACSL3、ERRFl1、CDC6、ELL2、CENPN、RHOU、EAF2、SGK1、SLC16A6、TIPARP、IGF1R、CCND1、ADAMTS1、およびPRR15Lからなる群から選択される一つ以上から選択される。一実施形態では、アンドロゲン受容体調節因子は、化合物Iの固体形態、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、または溶媒和塩である。
【0198】
一実施形態では、本開示は、癌を有する対象を治療する方法を提供し、本開示は、化合物Iの固体形態またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、または溶媒和塩を用いた治療後に癌の試料を得ること、および試料中でアンドロゲン受容体駆動遺伝子の発現レベルを決定することを含み、参照標準レベルと比較する場合に、遺伝子発現レベルが、化合物Iの固体形態またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、または溶媒和塩を用いた治療の前または後に減少するならば、その後、治療有効量の化合物Iの固体形態またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、または溶媒和塩を用いて、対象の治療を進行または再開することを含み、ここで、遺伝子は、KLK2、FKBP5、TMPRSS2、KLK3、NCAPD3、NKX3-1、NDRG1、STEAP4、FAM105A、AKAP12、PMEPA1、PLPP1、SNAl2、ACSL3、ERRFl1、CDC6、ELL2、CENPN、RHOU、EAF2、SGK1、SLC16A6、TIPARP、IGF1R、CCND1、ADAMTS1、およびPRR15Lからなる群から選択される一つ以上から選択される。
【0199】
本明細書に開示される方法の一実施形態では、癌は、前立腺癌、乳癌、卵巣癌、子宮内膜癌、または唾液腺癌から選択される。一実施形態では、癌は前立腺癌である。一実施形態では、前立腺癌は、原発性/限局性前立腺癌、局所進行性前立腺癌、再発性前立腺癌、転移性前立腺癌、進行性前立腺癌、転移性去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)、またはホルモン感受性前立腺癌から選択される。他の実施形態では、前立腺癌は、転移性去勢抵抗性前立腺癌である。一部の実施形態では、前立腺癌は、アンドロゲン依存性前立腺癌またはアンドロゲン非依存性前立腺癌である。別の実施形態では、癌は乳癌である。
【0200】
本明細書に開示される方法のいずれか一つの一実施形態では、アンドロゲン受容体調節因子は、化合物Iの固体形態、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、または溶媒和塩である。一実施形態では、化合物Iの固体形態は、結晶形態Aである。一実施形態では、化合物Iの固体形態は、非結晶形態である。一実施形態では、化合物Iの固体形態は、材料B、C、またはDである。
【0201】
本明細書に開示される方法のいずれか一つの一実施形態では、アンドロゲン受容体駆動遺伝子は、アンドロゲン受容体全長駆動遺伝子である。一実施形態では、アンドロゲン受容体駆動遺伝子は、アンドロゲン受容体V7駆動遺伝子である。
【0202】
本明細書に開示される方法のいずれか一つの実施形態では、異常な活性を有する遺伝子は、KLK2、FKBP5、TMPRSS2、KLK3、NCAPD3、NKX3-1、NDRG1、STEAP4、FAM105A、AKAP12、PMEPA1、PLPP1、SNAl2、ACSL3、ERRFl1、CDC6、ELL2、CENPN、RHOU、EAF2、SGK1、SLC16A6、TIPARP、IGF1R、CCND1、ADAMTS1、またはPRR15Lから選択される。参照によりその全体が本明細書に組み込まれるWO 2020/198710を参照。
【0203】
ここで本発明を一般的に説明したが、本発明は、例示として提供され、本発明の限定を意図するものではない以下の実施例を参照することによって、より容易に理解されるであろう。
【実施例0204】
これから一般的に記載される本開示は、本発明のいくつかの態様および実施形態の単なる例示目的のために記載されており、本発明を制限することを意図していない以下の実施例を参照することによってより容易に理解されるであろう。
【0205】
一般的な手順-分析方法
【0206】
X線粉末回折(XRPD)
【0207】
“Image by PatternMatch v3.0.4”という標識の付いた図を、未検証のソフトウェアを使用して生成した。XRPDパターンを、Optixの長い高精度焦点源を使用して生成されるCu放射線の入射ビームを使用して、PANalytical X’Pert PRO MPD回折装置またはPANalytical Empyrean回折装置を用いて収集した。楕円状の段階的な多層ミラーを使用して、標本を通して検出器上にCu Kα X線放射を集束させた。分析の前に、シリコン標本(NIST SIM 640e)を分析して、Si(111)ピークの観察された位置が、NIST認定位置と一致していることを確認した。試料の標本を3μm厚の膜に挟み込み、透過ジオメトリで分析した。ビームストップ、短い飛散防止エクステンション、および飛散防止ナイフエッジを使用して、空気によって生成されるバックグラウンドを最小化した。入射および回折ビーム用のソーラースリットを使用して、軸発散からの広がりを最小化した。回折パターンを、標本から240mmに位置する走査位置感知検出器(X’セレレータ)およびData Collectorソフトウェアv.5.5を使用して収集した。各パターンのデータ取得パラメータは、このレポートのデータセクションにある各パターンの画像(X’Pert PRO MPD)の上またはData Viewer v.1.8画像(Empyrean)内に表示される。
【0208】
XRPDのインデキシング
【0209】
高解像度XRPDパターンは、この研究では、独自のSSCIソフトウェア(Triads(商標)、US8,576,985を参照)またはX’Pert High Score Plus 2.2a(2.2.1)を使用してインデキシングされた。インデキシングおよび構造精密化は、計算研究である。赤色の棒でマークされた許容ピーク位置と観察されたピークの一致は、一貫した単位細胞決定を示す。首尾のよいパターンのインデキシングは、試料が主として単一の結晶相から構成されることを示す。割り当てられた減退シンボル、単位セルパラメータ、および導出量と一致する空間群を、暫定的インデキシング解を示す各図の下に表にする。暫定的なインデキシング解を確認するために、結晶学的単位セル内の分子パッキングモチーフを決定する必要がある。分子パッキングの試みは実施されなかった。
【0210】
熱重量測定(TGA)およびTGA/DSCコンボ分析
【0211】
TGAおよびTGA/DSCコンボ分析は、Mettler-Toledo TGA/DSC3+分析器を使用して実施された。温度およびエンタルピー調整を、インジウム、スズ、および亜鉛を使用して実施し、次いでインジウムで検証した。バランスをシュウ酸カルシウムで検証した。試料を、開いたアルミニウムパンに入れた。パンは気密封止され、リッドが穿刺され、その後TG炉に挿入された。試料パンとして構成された計量されたアルミニウムパンを、参照プラットフォーム上に配置した。炉を窒素下で加熱した。データ取得パラメータは、このレポートの図のセクションまたはデータセクションの画像内に表示される。
【0212】
温度変調示差走査熱量測定(TMDSC)
【0213】
TMDSCを、Mettler-Toledo DSC3+示差走査熱量計を使用して実施した。TOPEM(登録商標)は、等温または傾斜温度を、異なる期間のランダムな温度パルスの時系列でオーバーレイする。タウラグ調整は、インジウム、スズ、および亜鉛を用いて実施される。温度およびエンタルピーは、オクタン、フェニルサルチレート、インジウム、スズおよび亜鉛で調整される。次いで、調整を、オクタン、フェニルサリチレート、インジウム、スズ、および亜鉛で検証する。試料を気密封止されたアルミニウムDSCパンに入れ、重量を正確に記録した。パンリッドを穿刺し、次いでDSCセルに挿入した。試料パンとして構成される計量されたアルミニウムパンを、セルの参照側に配置した。データは、±0.25℃の変調振幅で-50℃~160℃まで、かつ2℃/分の基本的な加熱速度で15~30秒の期間、収集された。
【0214】
単結晶X線回折(SCXRD)
【0215】
1.単結晶試料の調製:アセトン中の化合物Iの溶液を調製し、0.2μmのナイロンフィルターを通して、穿孔されたホイルで覆われた清潔なガラスバイアルに濾過した。試料を、周囲温度で乾燥するまでゆっくりと蒸発させた。分析のためにバイアル壁から単結晶を慎重に除去した。
【0216】
2.データ収集:0.28×0.12×0.04mm3のおよその寸法を有する無色のプレートを、ランダムな配向でポリマーループ上に取り付けた。銅陽極マイクロフォーカスシールドX線管(Cu Kα λ=1.54184Å)およびDectris Pilatus3 R 200Kハイブリッドピクセルアレイ検出器を備えた、Rigaku SuperNova回折装置で予備的試験およびデータ収集を行った。セル定数およびデータ収集の配向マトリックスを、4.7930°<θ<77.0370°の範囲の6525反射の設定角度を使用して、最小二乗精密化から取得した。空間群を、プログラムCRYSALISPRO(CrysAlisPro 1.171.38.41r、Rigaku Oxford Diffraction、2015)により、P21/c(国際表番号14)に決定した。室温にて、155.124°の最大回折角(2θ)までデータを収集した。
【0217】
3.データ削減:フレームをCRYSALISPROと一体化した。合計13457反射が収集され、そのうちの5294は一意であった。ローレンツ補正および偏光補正をデータに適用した。Cu Kα放射の線吸収係数は、3.352mm-1である。CRYSALISPROを使用した経験吸収補正を適用した。透過係数は、0.789~1.000の範囲であった。等価反射の強度を平均化した。平均化の一致係数は、強度に基づいて2.22%であった。
【0218】
4.構造ソリューションと精密化:構造は、SHELXTを使用した直接の方法によって解決された(Sheldrick,G.M.Acta Cryst.2015,A71,3-8を参照)。残りの原子は、後続の差異フーリエ合成において配置された。構造をSHELXL-2014を使用して精密化した(Sheldrick,G.M.Acta Cryst.2008,A64,112-122;Id参照)。窒素上に存在する水素原子を独立して精密化した。炭素上に存在する水素原子は、精密化に含まれていたが、それらが結合される原子上に乗るために制限された。構造は、以下の関数を最小化することによって、完全マトリックス最小二乗で精密化された。
【数1】
【0219】
式中、重み、wは、1/[σ2(Fo 2)+(0.1009
P)2+(0.9289P)]として定義され、式中、P=(
o 2+2Fc 2)/3である。散乱係数は、「International Tables for Crystallography」(International Tables for Crystallography,Vol.C,Kluwer Academic Publishers:Dordrecht,The Netherlands,1992,表4.2.6.8および6.1.1.4参照)から取得された。精密化で使用された5294の反射のうち、それらの不確かさの二倍以上の強度を有する反射[I>2□(I)]のみ、4317、を使用して、適合残
差Rを計算した。精密化の最終サイクルには、351の可変パラメータ、15の制限が含まれ、以下のそれぞれの非加重および加重の一致係数と収束した。
【数2】
【0220】
単位重量の観察の標準偏差(適合度)は1.05であった。最終差フーリエで最も高いピークは、0.674e/Å3の電子密度を有した。最小陰性ピークは、-0.649e/Å3の値を有した。
【0221】
5.計算されたX線粉末回折(XRPD)パターン:計算されたXRPDパターンを、Cu放射線向けに、MERCURY(Macrae,C.F.Edgington,P.R.McCabe,P.Pidcock,E.Shields,G.P.Taylor,R.Towler M.and van de Streek,J.J.Appl.Cryst.、2006、39、453-457)、および単結晶構造からの原子座標、空間群、および単位細胞パラメータを使用して生成した。
【0222】
6.原子変位楕円体および梱包図:原子変位楕円図を、M ERCURYを使用して調製した。原子は、50%確率の異方性熱楕円体によって表される。
【0223】
【表3】
【0224】
実施例1:N-(4-((4-(2-(3-クロロ-4-(2-クロロエトキシ)-5-シアノフェニル)プロパン-2-イル)フェノキシ)メチル)ピリミジン-2-イル)メタンスルホンアミドN-(4-((4-(2-(3-クロロ-4-(2-クロロエトキシ)-5-シアノフェニル)プロパン-2-イル)フェノキシ)メチル)ピリミジン-2-イル)メタンスルホンアミド(化合物I)の結晶形態Aの合成および特徴
【化3】
【0225】
ステップ1:MeCN(4mL)中の4-(クロロメチル)-2-メチルスルファニル-ピリミジン(1)(324mg、1.86mmol)、3-クロロ-2-(2-クロロエトキシ)-5-(2-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-2-イル)ベンゾニトリル(2)(0.5g、1.43mmol)およびK2CO3(493mg、3.57mmol)の混合物を、80℃で5時間攪拌した。LCMSおよびHPLCは、反応が完了し、所望の生成物の81.4%が形成されたことを示した。得られた混合物を、飽和NH4Cl(10mL)でクエンチし、EtOAc(10mL×3)で抽出した。一つにまとめた有機層をブライン(10mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。残渣を、MPLCにより精製して、3-クロロ-2-(2-クロロエトキシ)-5-(2-(4-((2-(メチルチオ)ピリミジン-4-イル)メトキシ)フェニル)プロパン-2-イル)ベンゾニトリル(3)(0.54g、収率:77.4%)を無色のシロップとして得た。1H NMR(400MHz、CDCl3)δ=8.54(d、J=4.8Hz、1H)、7.45(d、J=2.4Hz、1H)、7.32(d、J=2.4Hz、1H)、7.22(d、J=5.2Hz、1H)、7.12(d、J=8.8Hz、2H)、6.89(d、J=8.8Hz、2H)、5.09(s、2H)、4.43(t、J=6.4Hz、2H)、3.88(t、J=6.4Hz、2H)、2.59(s、3H)、1.65(s、6H)。検査後:HPLC(220nm):94.7%。 LCMS(220nm):93.5%。正確な質量:487.1;実測値488.0/490.0。
【0226】
ステップ2:THF(20mmL)中の3-クロロ-2-(2-クロロエトキシ)-5-(2-(4-((2-(メチルチオ)ピリミジン-4-イル)メトキシ)フェニル)プロパン-2-イル)ベンゾニトリル(3)(1.07g、2.19mmol)の懸濁液に、水(20mL)中のオキソン(5.39g、8.76mmol)の懸濁液を、20℃で加えた。混合液を、20℃で16時間攪拌した。LCMSおよびHPLCは、反応が完了し、所望の生成物の93.0%が形成されたことを示した。得られた混合物を、飽和Na2SO3でクエンチした。水層を、EtOAc(30mLx3)で抽出した。合わせた有機層を、ブライン(30mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮して、無色のシロップとして3-クロロ-2-(2-クロロエトキシ)-5-(2-(4-((2-(メチルスルホニル)ピリミジン-4-イル)メトキシ)フェニル)プロパン-2-イル)ベンゾニトリル(4)(1.04g、収率:91.2%)を得た。1H NMR(400MHz、CDCl3)δ=8.94(d、J=4.8Hz、1H)、7.85(d、J=4.8Hz、1H)、7.45(d、J=2.4Hz、1H)、7.31(d、J=2.4Hz、1H)、7.15(d、J=8.8Hz、2H)、6.91(d、J=8.8Hz、2H)、5.30(s、2H)、4.43(t、J=6.4Hz、2H)、3.88(t、J=6.0Hz、2H)、3.40(s、3H)、1.66(s、6H)。IPC検出:HPLC(220nm):92.956%。LCMS(220nm):93.0%。正確な質量:519.1;実測値520.1/522.1。
【0227】
ステップ3:MeCN(2mL)中の3-クロロ-2-(2-クロロエトキシ)-5-(2-(4-((2-(メチルスルホニル)ピリミジン-4-イル)メトキシ)フェニル)プロパン-2-イル)ベンゾニトリル(4)(30g、0.058mmol)、メタンスルホンアミド(11mg、0.12mmol)およびK2CO3(15.9mg、0.12mmol)の混合物を、85℃で5時間攪拌した。LCMSは、反応が完了し、所望の生成物の91.6%が形成されたことを示した。得られた混合物を、EtOAc(2mL)およびNH4Cl水溶液(2mL)との間で分配した。水層を、EtOAc(2mLx3)で抽出した。一つにまとめた有機層をブライン(2mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮して、形態Aの化合物I(40mg)を得た。1H NMR(400MHz、CDCl3)δ=8.77(br、s、1H)8.64(d、J=4.8Hz、1H)、7.45(d、J=2.4Hz、1H)、7.32(d、J=2.4Hz、1H)、7.29(d、J=5.2Hz、1H)、7.13(d、J=8.8Hz、2H)、6.90(d、J=8.8Hz、2H)、5.11(s、2H)、4.43(t、J=6.0Hz、2H)、3.88(t、J=6.0Hz、2H)、3.48(s、3H)、1.65(s、6H)。IPC検出:LCMS(220nm):純度91.6%。正確な質量:534.1;実測値535.1/537.2。
【0228】
XRPDスペクトルを、図1および表1A~1Bに示されるように、形態Aに対して取得した。試料は、少量のNaClを含む可能性が高い。27.3±0.2および31.7±0.2度2シータでの鋭いピークは、NaClの存在と一致する。形態Aは、この研究において首尾よく決定され、結果は、それが無水/非溶媒和材料であることを示す。
【0229】
TGA/DSCサーモグラムも、図2に示されるように、形態Aに対して取得した。TGAによって、2.2重量%の重量損失が50~230℃で観察されたが、これは試料中の残留溶媒の損失による可能性が高い。約284℃(開始点)で始まるサーモグラムの勾配の劇的な変化は、材料の分解と関連する可能性が高い。DSCによって、約182℃(開始)で吸熱が観察され、これは材料の溶融による可能性がある。
【0230】
DVS(動的水蒸気吸着)分析を、形態Aで行った(表2、図3)。形態AのDVSプロファイルは、5%~95%RHの吸着中に合計5.474%の重量増加を示し、重量増加の大部分は55%RH超(55%~85%RHの1.978重量%の増加および85%RH~95%RHの3.106重量%の増加)で生じた。95%RH~5%RHの脱着中、試料は5.472%の重量損失を示し、95%~25%RHの間にいくらかのヒステリシスが観察された。DVSデータは、形態Aが、5%~55%RH内で低吸湿性、55%~85%RH内で限定的吸湿性、および85%~95%RH以で有意な吸湿性を呈することを示唆している。
【0231】
DVS分析後に回収された固体は、XRPD分析による形態Aと一致した。
【0232】
【表4】
【0233】
実施例2:溶解性実験および多形体スクリーニング実験
【0234】
種々の有機溶媒中の化合物Iの近似溶解性を、溶媒アリコートを秤量された試料化合物Iに加えることにより決定した。秤量された化合物Iの試料は、周囲温度にて試験溶媒または溶媒混合物のアリコートで処理した。試験材料の完全な溶解を、目視検査により決定した。溶解性は、完全溶解をもたらすために使用される総溶媒体積に基づいて推定された。実際の溶解性は、大きすぎる溶媒アリコートの使用または遅い溶解速度のため、計算された値よりも大きい場合がある。実験中に完全な溶解が達成されなかった場合、溶解性は「未満」(<)として表される。アリコートの一回のみの添加によって完全な溶解が達成された場合、値は「超」(>)として報告される。
【0235】
様々な有機溶媒中の化合物Iの近似溶解性の概要を表3に提示する。
【0236】
【表5】
(a):別段の指定がない限り、溶解性は周囲温度で推定され、最も近いmg/mLで報告される。完全溶解が達成されなかった場合、値は「<」として報告される、完全溶解が一アリコートの溶媒で達成された場合、値は「>」として報告され、実際の溶解性は、大きすぎる溶媒アリコートの使用または遅い溶解速度のため、計算された値よりも大きい場合がある。
(b):はるかに大きなスケールでの試料のスクリーン中の観察に基づくと、p-ジオキサンのおよその溶解性は35~103mg/mL以内である。
(c):24時間で取得された平衡溶解性データ。
【0237】
多形体スクリーニングの様々な方法が、以下に記載されるように実施された。
【0238】
スラリー粉砕実験は、特定の有機溶媒または溶媒混合物中の化合物Iを様々な温度で4~12日間攪拌することによって実施された。超過の固体が残るように、十分な量の化合物Iを、選択された溶媒または溶媒混合物に添加した。次いで、混合物を、指定の温度で特定の時間、攪拌棒で粉砕した。固体を、0.45μmのナイロンフィルターを備えたSpin-X遠心分離管を使用して、遠心分離により単離した。固体を、分析前に空気乾燥した。
【0239】
実験条件および結果の概要を表4に記載する。XRPD分析に基づいて、すべてのスラリー粉砕実験は、化合物Iの形態Aと一致する固体を生成した。
【0240】
【表6】
【0241】
水和物として存在する化合物Iの傾向を調べるために、高い水活性を有する選択された水性混合物(Aw≧約0.7)でも、スラリー粉砕実験が実施された。表5に示されるように、すべての水活性スラリーは、化合物Iの形態Aを生成した。
【0242】
【表7】
(a):溶媒比は、体積による近似である。
(b):水活性値は近似値であり、25℃での溶媒システムの水活性を表す。活性係数の計算は、構成要素中に存在する官能基間の相互作用をモデル化に基づく。これらの計算された水活性値は、
実験的に検証されていない。
【0243】
多形体スクリーニングは、蒸発、冷却、溶媒/抗溶媒付加、および技術の組み合わせを含む様々な溶媒ベースの方法を使用して実施された。低速冷却(SC)および高速冷却(FS)実験については、化合物Iの飽和または濃縮溶液を、高温にて選択された溶媒中で調製し、予め加温された0.2-μmのナイロンフィルター(表6で指定されない限り)を通して、予め加温された清浄なバイアルに温度で濾過した。次いで、溶液を加熱プレートから除去し、周囲条件で放置(FC)するか、または加熱を停止して加熱プレート上の周囲温度まで冷却(SC)した。バイアルに処理可能な量の固体が現れない場合、試料を準周囲条件に移動させた。準周囲保存後に処理可能な量の固体が現れない場合、実験を抗溶媒添加実験に変換した。
【0244】
溶媒/抗溶媒添加(SAS)実験については、冷却の試みからの準周囲溶液、または選択された溶媒中で調製された化合物Iの飽和/濃縮溶液を、0.2-μmのナイロンフィルターを通して、周囲温度で特定の抗溶媒中に濾過した。試料は、分析のために直ちに単離されたか、または単離前に指定された条件で攪拌された。詳細な冷却および抗溶媒添加実験条件、観察、およびXRPD結果を、表6に要約する。
【0245】
溶媒/抗溶媒添加の試み中に溶媒としてジオキサンを使用した場合、抗溶媒の選択が実験結果に著しく影響を与えることが観察された。表6に詳述されるように、ジオキサン溶液をH2Oに添加すると、形態Aが生成され、ヘプタンまたはヘキサンへの添加はそれぞれ、材料Bまたは材料Dを生じた。ジオキサン溶液をEt2Oに加えた時に、不十分な量の固体が観察された。これらのすべての試みにおいて、溶媒比はジオキサン/抗溶媒の1:3(v/v)で一定に維持された。
【0246】
【表8-1】
【表8-2】
【表8-3】
【0247】
蒸発試験を実施 高速蒸発(FE)および低速蒸発(SE)については、化合物Iの溶液を、選択された溶媒中で調製し、0.2-μmのナイロンフィルターを通して、清潔なガラスバイアルに濾過し、オープンバイアル(FE)または穿孔アルミニウムホイル(SE)で覆われたバイアルから周囲温度で蒸発させた。示される場合、N2ガスの定常流れで高速蒸発を補助した。蒸発試験の詳細な実験条件、観察、およびXRPD結果を、表7に要約する。
【0248】
【表9】
【0249】
多形体スクリーニングの実験条件の大部分は、形態Aと一致する固体を生成した。
【0250】
実施例3:多形体スクリーニング実験における材料B、C、およびDの観察
【0251】
実施例2に示されるように、複数の溶媒/抗溶媒の試みを1:3(v/v)ジオキサン/ヘプタン(表6)で実施し、材料Bと標識された形態で化合物Iを一貫して生成した。材料BのXRPDスペクトルについては図4を参照。材料BのXRPDパターンのインデキシングの試みは成功しなかった。
【0252】
材料Bは、乾燥時に不安定であることが見出され(表8)、それゆえ、さらには特徴付けされなかった。材料Bを真空下で65~66℃で乾燥させた場合、形態Aおよび材料Cの混合物を得た。形態Aを有する材料CのXRPDスペクトルについては、図4を参照のこと。ろ紙上の周囲条件で乾燥するとき、材料Bは、ディスオーダー材料Cに変換された。材料Bおよびその乾燥研究を生成する実験条件に基づいて、いかなる理論にも拘束されることなく、材料Bは、乾燥時に材料Cに変換できる溶媒和材料であり得る。
【0253】
【表10】
【0254】
形態Aと材料Cとの間の相対的安定性を評価するために、競合スラリーを実施した。約等しい量(質量)の材料C(いくつかの形態Aとの混合物)および形態Aを、固体が持続し、室温で9日間攪拌するように、アセトンに加えた。固体を、0.45μmのナイロンフィルターを備えたSpin-X遠心分離管を使用して、遠心分離により単離した。ベージュの固体が観察された。XRPDにより、スラリー後の固体は、形態Aの純粋相と一致し、形態Aは、試験された条件下で材料Cよりも安定であることを示す。材料Cは、無水材料であり得る。
【0255】
材料Dを、1:3(v/v)ジオキサン/ヘキサン中で、溶媒/抗溶媒を添加することにより観察し、続いて周囲スラリーを、1日間添加した(表5)。視覚的観察に基づいて、材料Dおよび材料Bは、それらのXRPDパターンにおいていくらかの類似性を有するように思われる。材料DのXRPDスペクトルについては図4を参照。材料DのXRPDパターンに対するインデキシングの試みは成功しなかった。
【0256】
1H NMRおよびTGA/DSCを含むさらなる分析を材料Dに対して実施した。材料Dの1H NMRスペクトルは、化合物Iの提供される化学構造と一致する。NMRスペクトルに基づいて、材料Dは、約0.9mol/molのジオキサンおよび微量のヘキサンを含む。
【0257】
材料DのTGA/DSCサーモグラムを図5に示す。TGAによって、約93℃で開始する階段状の重量損失が観察され、材料Dが溶媒和材料であることを示す。試料は、48~125℃以内で13.6重量%の重量損失を示し、これは、約0.96モルのジオキサンに対応し、これはNMRデータと一致する。DSCサーモグラムは、約90℃(開始)で吸熱を示しており、これはTGAの階段状の重量損失と一致しており、材料Dの脱溶媒和に起因する可能性が高い。さらなる加熱時に、鋭利な吸熱が182℃(開始)で観察され、これは形態Aの溶融に起因する可能性がある。材料Dは、脱溶媒和時に形態Aに変換される可能性が高い。
【0258】
182℃で観察された吸熱は、材料Dが、50~52℃/真空条件で3日間乾燥されたときにXRPDによって形態Aに脱溶媒和されることが観察されたため、形態Aの溶解による可能性が高い(図6)。特徴解析データおよび乾燥結果に基づき、いかなる理論にも拘束されることなく、材料Dは、化合物Iの溶媒和材料である可能性が高い。
【0259】
実施例4.化合物Iの非結晶形態
【0260】
回転蒸発および凍結乾燥を含む様々な溶媒ベースの技術を実施して、化合物Iの非結晶形態をスクリーニングした。実験条件、観察、およびXRPD結果を、表9に詳述する。
【0261】
【表11】
【0262】
DCMを溶媒として使用して、回転蒸発実験を実施した。化合物Iの希釈溶液をDCM中で調製し、0.2-μmのナイロンフィルターを通して透明な丸底フラスコに濾過した。フラスコを回転式蒸発器に取り付け、指定の温度で水浴中に浸漬し、DCMを真空下で急速に蒸発させて乾燥させた。試料は、XRPD試験前に、真空オーブン中で室温で真空下で二次乾燥された。
【0263】
第一の回転蒸発実験から生成された試料を、周囲温度で真空下で1日間二次乾燥し、次いでXRPDにより分析した。XRPDにより、試料は、NaClによる結晶性ピークを有する広範なハロを示し、化合物Iの非結晶形態の生成に成功したことを示す(X線非結晶)。図7の下からの三番目のスペクトルを参照。
【0264】
「X線非結晶」として記述される材料は、典型的には、ガラス転移の外観(Tg)が材料の非結晶性の性質の支持を提供する熱分析によってさらに特徴付けられる。温度変調DSCを材料上で実施し、Tgを調べた(表10)。図8に示されるように、Tgは、逆方向の熱流信号の段階的変化として、約61℃で観察された。さらなる加熱で、結晶化に起因すると考えられる発熱が約91℃(ピーク)で観察された。約178℃(開始)での吸熱は、いかなる理論にも拘束されることなく、結晶化材料の溶融に起因して、結晶化研究に基づいて形態Aであり得る(表11)。吸熱体は、形態A(182℃、図2)で観察された吸熱体よりもわずかに低い温度を有し、これは非晶質またはディスオーダーな部分(すなわち、分析中に完全に結晶化されない)を含む標本に起因する可能性がある。
【0265】
【表12】
(a):DSCおよびTGAからの温度は、整数に四捨五入され、TGAからのΔCpおよび重量%は、小数第一位で四捨五入される。
【0266】
【表13】
【0267】
1H NMRおよびTGAを含むさらなる解析も、この非結晶試料上で収集された(表10)。1H NMRスペクトルは、化合物Iの化学構造と一致し、微量のDCMを含む。TGA(図9)によると、約1.0重量%の損失が45~200℃で観察され、これは材料中の残留DCMおよび水分による可能性が高い。280℃(開始点)から始まるTGAサーモグラムの勾配の劇的な変化は、材料の分解と関連する可能性が高い。この化合物Iの非結晶形態は、デシケーター中で約10日間、常温で保存したときに、ディスオーダー形態Aになることが観察された(図10、上部スペクトル)。これは、非結晶化合物Iが物理的に安定ではなく、周囲温度で形態Aに結晶化することを示す。試料を周囲温度で真空下で3日間二次乾燥させた後、DCM溶液から回転蒸発を繰り返して試みることによりディスオーダーな化合物I形態A(図7、底部からの第二のスペクトル)が生成され、これは非結晶化合物Iが物理的に安定ではないというさらなる証拠を提供する。
【0268】
非結晶化合物Iを標的とする一つの凍結乾燥実験を、ジオキサン中の希釈溶液から行った。ジオキサン中の化合物Iの希釈溶液を調製し、0.2-μmのナイロンフィルターを通して、清潔なガラスフラスコに滴加して濾過することによって急速凍結した。ガラスフラスコを、ドライアイス/アセトン浴中で-78℃に予冷した。試料をLabconco FreeZone 71040ベンチトップ型凍結乾燥機に取り付け、6日間凍結乾燥した。
【0269】
得られた固体は、XRPDによってディスオーダー化合物Iであることが見出された(図7、下のスペクトル)。このディスオーダー材料に結晶化試験を行い(表10)、固体をアセトンおよびH2O中で4日間、周囲条件で撹拌した。どちらの実験も、結晶形態Aを生成した(図10、下の二つのスペクトル)。
【0270】
溶解性:一般的に、非結晶形態の溶解性は、非結晶状態での結晶格子力の欠如のために、対応する結晶形態の溶解性よりも高い。化合物Iの非結晶形態の溶解性を、有機ストック溶液からpH6.5のフォスフェイト緩衝生理食塩水(PBS)溶液またはpH6.5のPBS中の0.5%wtの擬似腸液(SIF)への非結晶形態の緩徐な添加によって試験した。非結晶溶解性に到達すると、典型的には光を散乱する薬剤豊富な相形態(例えば、液体-液体相分離またはLLPS)が、UV/可視光の散乱および/または動的光散乱(DLS)によって検出され得る。
【0271】
結晶化前の散乱事象は観察されなかった。得られたデータに基づいて、pH6.5のPBSおよび0.5%のSIF(pH6.5)における非結晶溶解性は、それぞれ、>2.5μg/mLおよび>25μg/mLであった(図16)。この試験では正確な濃度を決定することができなかったが、非結晶溶解性は、擬似腸培地中の結晶溶解性よりも少なくとも20倍高いようである。図16は、95:5 THF:化合物Iの非結晶形態の水溶液を、PBS中のブランクPBSまたは0.5% SIFに添加したときの濃度(実線)および散乱(点線)対時間を示す。
【0272】
実施例5.化合物Iの形態Aの単結晶構造決定
【0273】
スクリーン中、アセトン溶液からのゆっくりとした蒸発によって、形態Aの単結晶が観察された(表7)。したがって、適切な単結晶を選択し、単結晶X線回折法により分析し、形態Aの構造を首尾よく決定した。
【0274】
結晶系はモノクリニックであり、空間基はP21/cである。セルパラメータおよび計算された体積は、a=17.5550(2)Å、b=10.96169(13)Å、c=13.7961(2)Å、α=90°、β=104.5717(15)°、γ=90°、およびV=2569.40(6)Å3である。一実施形態では、形態Aの単結晶は約1.384g/cm3の密度を有する。分子量は、Z=4の535.43g/molであり、計算密度は1.384g/cm3である。標準不確かさは、結晶学的括弧表記で記述される。例えば、0.123(4)は、0.123±0.004と同等である。
【0275】
得られた構造の品質は、0.0559(5.59%)の適合残差Rによって示されるように、高かった。2%~6%の範囲のR-因子は、最も信頼性のある決定構造であると見積もられている(Glusker,Jenny Pickworth et al.Crystal Structure Analysis:A Primer,2nd ed.;Oxford University press:New York,1985;p.87)。非対称単位は、一つの化合物I分子を含むように決定された。フェニル環上のシアノ部分および塩素部分は、180°回転が乱され、優勢な配向で78%に精製されることが見出された。単結晶データからの形態Aの計算されたXRPDパターンを図11に、取得された実験パターンとともに、示す(実施例1を参照)。
【0276】
実施例6.細胞アッセイにおける例示的化合物の活性
【0277】
LNCaP細胞を、PSA(6.1kb)-ルシフェラーゼレポーターで24時間過渡的にトランスフェクトし、次いで、指示された濃度の合成アンドロゲンを含む代表的化合物、R1881(1nM)、で24時間で処理した。R1881との24時間のインキュベーション後、細胞を採取し、相対的なルシフェラーゼ活性を決定した。IC50を決定するために、アンドロゲン誘導を用いて最大活性まで処置を正規化した(試験化合物の非存在下で、ビヒクルのみ)(表12)。
【0278】
ルシフェラーゼアッセイ:溶解物を氷上で解凍し、次いでV底の96ウェル組織培養プレート中に収集した。溶解物を4℃で5分間、4000rpmで遠心分離した。LNCaP細胞溶解物の発光を測定するために、製造業者のプロトコルに従って、ホタルルシフェラーゼアッセイシステム(Promega)を使用した。
【0279】
GraphPad Prism(バージョン6.01 for Windows;La Jolla,CA,USA)を使用して統計解析を実施した。処置群と対照群の比較は、二元配置分散分析を使用して、ダネットの事後検定およびテューキーの検定で比較した。差は、0.05未満のP値で統計的に有意と考えられた。相対ARレベルの密度測定定量を、Imageによって決定した。
【0280】
参照化合物XおよびEPI-002は以下の構造を有する:
【化4】
【0281】
PSA-Luc%阻害IC50値化合物Iを表12に示す。
【0282】
【表14】
【0283】
細胞増殖アッセイ:細胞増殖/生存率は、Alamar青色でLNCaP細胞およびPC3細胞で測定され、増殖は、BrdU組み込みでLN-CaP95細胞で測定された。LNCaP細胞では、0.1nM R1881で処置された、またはされていない対照細胞間の差を測定することによって、AR特異的増殖が計算される。表13を参照。
【0284】
【表15】
【0285】
実施例7.LNCaP異種移植片モデルにおける代表的な化合物のインビボ活性
【0286】
LNCaP腫瘍を有するオスのNCGマウスにおいて腫瘍成長を測定した。去勢は、腫瘍が約100mm3に到達した時に実施され、投与(60mg/kgのPO qd)は去勢の1週間後に開始された。マウスの体重は、薬剤に関連した毒性を示さなかった動物で隔週で記録された。実験終了時に測定された、ベースラインからの個々の腫瘍体積の変化。図12を参照。データは、代表的な化合物が活性を示し、腫瘍成長の部分的退縮を誘発したことを示す。代表的な化合物の有効性における5mg/kgのPOでのC分および外挿されたC分を表14に示す。
【0287】
【表16】
【0288】
実施例8.固体分散体組成物試験1
【0289】
化合物Iは、非常に低い結晶溶解性および非常に高い非結晶溶解性強化を有する。単独で、または予め溶解された沈殿阻害ポリマーを用いて、超飽和水溶液から急速に結晶化する。化合物Iの非結晶形態は、穏やかなガラス転移温度(Tg=62℃)を有し、非結晶形態の加熱中に部分的に再結晶する(クラス2のガラス形成物)。
【0290】
これらの特徴に基づいて、組成物は、5つの異なるポリマーまたはポリマーブレンドを用いて、10%の活性装填で調製された(表15)。すべての製造された製剤は、X線粉末回折(XRPD)により非結晶であった。
【0291】
【表17】
【0292】
五つの噴霧乾燥分散体(SDD)組成物を、35kg/時の乾燥能力を有するベンドラボ乾燥機(BLD-35)上で高収率で首尾よく製造した。すべてのSDDを、同じ噴霧圧力(120psig)で噴霧した。噴霧乾燥後、SDDを加熱真空トレー乾燥機で約24時間二次乾燥して、残留溶媒を除去した。製造パラメータを表16に列挙する。
【0293】
【表18】
【0294】
すべてのSDDは、X線回折分析による化合物Iの非結晶形態を含む(図13)。各SDDのTgは、変調示差走査熱量測定(mDSC)によって決定されるポリマーのタイプによって支配された。各SDDについて水または溶媒の損失ピーク、SDD組成物Dに対して最も強い、が観察された(図14)。図14のmDSCサーモグラムの実線は逆熱流であり、破線は非逆熱流である。mDSCデータの概要を表17に列挙する。
【0295】
【表19】
【0296】
実施例9:固体分散体組成物試験2
【0297】
化合物IのSDD組成物G~Mを、35kg/時の乾燥ガス容量を有するベンドラボ乾燥機(BLD-35)上で高収率で首尾よく製造した(表18)。すべてのSDDを、同じ噴霧圧力(120psig)で噴霧した。噴霧乾燥後、SDDを、40℃で約23時間、加熱真空トレー乾燥機中で二次乾燥して、残留溶媒を除去した。製造パラメータを表19に列挙する。
【0298】
二次乾燥を、表18のSDD組成物用の別個のトレー乾燥空間におけるヘッドスペースガスクロマトグラフィーによって監視した。二次乾燥の前(湿潤試料)は、表18のSDD組成物中の残留溶媒は、密封されたステンレス鋼容器中で、5℃および30℃の保存温度で保管。保存および/またはサンプリング中にいくらかの溶媒損失が観察された。二次乾燥中に速やかに乾燥されたSDDは、残留DCMのICH限度(600ppm限度および6.0mg/日の1日曝露可能量)を2時間未満で下回った。データは、約6時間の二次乾燥ステップを支持する。
【0299】
すべての製造された製剤(製造後に2~8℃で保存された)は、X線粉末回折(XRPD)により非結晶であり、製造後に結晶化合物Iの証拠なしに、期待される非結晶ハロを呈した。
【0300】
【表20】
【0301】
【表21】
【0302】
選択されたSDD組成物のTgを、変調示差走査熱量測定(mDSC)によって決定した。乾燥Tg(乾燥条件下で決定されたTg)は、化合物Iの装填の増加と共に減少した。全てのSDD組成物の乾燥Tgは、乾燥条件下での保存のために十分に高いことが示された表20。Tgは、吸収された水による可塑化のため、高RHで減少した。SDD組成物IおよびKは、75%RHで約3%の水を吸収し、一方で、SDD組成物Mは、約6%の水を吸収し、これは、SDD組成物Mに対して観察された75%RHでのTgの減少と一致する。
【0303】
【表22】
【0304】
実施例10.固体分散体組成物試験3
【0305】
化合物IのSDD組成物H~JおよびN~Rを、35kg/時の乾燥ガス容量を有するベンドラボ乾燥機(BLD-35)上で高収率で首尾よく製造した(表21)。すべてのSDDを、同じ噴霧圧力(120psig)で噴霧した。噴霧乾燥後、SDDを、40℃の加熱真空トレー乾燥機中で、3リットル/分または2.5リットル/分のN2スイープガスで約18.5~23時間、二次乾燥して、残留溶媒を除去した。製造パラメータを表22に列挙する。
【0306】
【表23】
【0307】
【表24】
【0308】
すべての製造された製剤(製造後に2~8℃で保存された)は、X線粉末回折(XRPD)により非結晶であり、製造後に結晶化合物Iの証拠なしに、期待される非結晶ハロを呈した(図15)。
【0309】
本明細書に列挙された特許および刊行物は、当技術分野の一般的な技術を説明し、その全体が参照により、すべての目的に対して、また、あたかも各々が参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示されているかのごとく同じ程度に、本明細書に組み込まれる。引用された参考文献と本明細書との間に何らかの矛盾がある場合、本仕様書が優先するものとする。本明細書の実施形態を説明する際に、明確さのために特定の用語が用いられる。しかしながら、本発明は、そのように選択された特定の用語に限定されることを意図していない。本明細書中のいかなるものも、本発明の範囲を限定するとして、考慮されるべきではない。提示されたすべての実施例は、代表的なものであり、非限定的である。上述の実施形態は、上記教示に照らして当業者によって理解されるように、本発明から逸脱することなく、改変または変化させることができる。そのため、特許請求の範囲およびその同等なものの範囲内において、本発明が、特に記載された以外の方法で実施され得ることが、理解されるだろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
【手続補正書】
【提出日】2024-06-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)化合物I
【化1】
または、その薬学的に許容される塩、溶媒和物、または溶媒和塩と、
b)一つ以上の追加の治療薬と、
を含む、医薬組み合わせ。
【請求項2】
a)化合物I
【化2】
と、
b)前記一つ以上の追加の治療薬と、
を含む、請求項1に記載の医薬組み合わせ。
【請求項3】
前記一つ以上の追加の治療薬が、アンドロゲン受容体リガンド結合ドメイン阻害剤又はCYP17の阻害剤である、請求項1又は2に記載の組み合わせ。
【請求項4】
前記一つ以上の追加の治療薬が、エンザルタミド、アパルタミド、ダロルタミド、ビカルタミド、ニルタミド、フルタミド、ODM-204、TAS3681、ガレトロン、アビラテロン、又はアビラテロンアセテートを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の組み合わせ。
【請求項5】
前記一つ以上の追加の治療薬が、エンザルタミドを含む、請求項4に記載の組み合わせ。
【請求項6】
前記一つ以上の追加の治療薬が、アパルタミドを含む、請求項4に記載の組み合わせ。
【請求項7】
前記一つ以上の追加の治療薬が、ダロルタミドを含む、請求項4に記載の組み合わせ。
【請求項8】
前記一つ以上の追加の治療薬が、アビラテロンを含む、請求項4に記載の組み合わせ。
【請求項9】
前記一つ以上の追加の治療薬が、アビラテロンアセテートを含む、請求項4に記載の組み合わせ。
【請求項10】
前記一つ以上の追加の治療薬が、ビカルタミドを含む、請求項4に記載の組み合わせ。
【外国語明細書】