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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000111
(43)【公開日】2024-01-05
(54)【発明の名称】飛行支援システム、及び飛行支援方法
(51)【国際特許分類】
   G08G 5/00 20060101AFI20231225BHJP
   B64F 1/36 20240101ALI20231225BHJP
   B64C 13/18 20060101ALI20231225BHJP
   B64C 39/02 20060101ALI20231225BHJP
   B64C 27/08 20230101ALI20231225BHJP
   G01C 21/20 20060101ALI20231225BHJP
【FI】
G08G5/00 A
B64F1/36
B64C13/18 Z
B64C39/02
B64C27/08
G01C21/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022098678
(22)【出願日】2022-06-20
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(71)【出願人】
【識別番号】517079593
【氏名又は名称】株式会社Spiral
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩下 正剛
(72)【発明者】
【氏名】吉田 駿也
(72)【発明者】
【氏名】堀尾 訓之
(72)【発明者】
【氏名】石川 知寛
【テーマコード(参考)】
2F129
5H181
【Fターム(参考)】
2F129AA11
2F129BB02
2F129CC12
2F129CC17
2F129EE52
2F129FF02
2F129FF19
2F129FF32
2F129GG02
2F129GG17
2F129GG18
2F129HH02
2F129HH20
2F129HH21
2F129HH22
2F129HH33
5H181AA26
5H181BB04
5H181BB12
5H181BB13
5H181BB20
5H181CC02
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC11
5H181CC12
5H181CC14
5H181CC17
5H181CC24
5H181FF04
5H181FF05
5H181FF14
5H181LL01
5H181LL02
5H181LL09
5H181LL14
(57)【要約】
【課題】ダムの監査廊等の狭隘で複雑な経路に沿って飛行体を安定して飛行させる。
【解決手段】飛行体と、飛行体が飛行する予定の経路に沿って設けられる、飛行体に飛行制御に関する情報を提供する複数のマーカとを含み、飛行体が、飛行中にマーカに近づく度に制御情報を取得し、取得した制御情報に従って飛行することにより経路に沿って自律飛行を行うように構成された飛行支援システムにおいて、第1の経路(上り階段又は下り階段等)の終端近傍に、当該第1の経路に沿って飛行中の飛行体を第2の経路(平坦な通路等)に沿った飛行に移行させる制御情報を提供する第1のマーカを設け、第1のマーカを設けた位置よりも第1の経路側の近傍に、飛行体の飛行を安定させるための制御を指示する内容を含む制御情報を提供する第2のマーカを設ける。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
飛行体と、前記飛行体が飛行する予定の経路に沿って設けられる、前記飛行体に飛行制御に関する情報である制御情報を提供する複数のマーカとを含み、前記飛行体が、飛行中に前記マーカに近づく度に前記制御情報を取得し、取得した前記制御情報に従って飛行することにより前記経路に沿って自律飛行を行うように構成された飛行支援システムであって、
第1の前記経路の終端近傍に、当該第1の経路に沿って飛行中の飛行体を第2の前記経路に沿った飛行に移行させる制御情報を提供する第1の前記マーカを設け、
前記第1のマーカを設けた位置よりも前記第1の経路側の近傍に、前記飛行体の飛行を安定させるための制御を指示する内容を含む前記制御情報を提供する第2の前記マーカを設けた
ことを特徴とする飛行支援システム。
【請求項2】
請求項1に記載の飛行支援システムであって、
前記第1の経路は、斜め上方に向けて上昇飛行させる経路であり、
前記第2の経路は、前記飛行体を平坦な通路に沿って水平飛行させる経路である
ことを特徴とする飛行支援システム。
【請求項3】
請求項2に記載の飛行支援システムであって、
前記第1の経路は、前記飛行体を上り階段に沿って飛行させる経路である
ことを特徴とする飛行支援システム。
【請求項4】
請求項1に記載の飛行支援システムであって、
前記第1の経路は、斜め下方に向けて下降飛行させる経路であり、
前記第2の経路は、前記飛行体を平坦な通路に沿って水平飛行させる経路である
ことを特徴とする飛行支援システム。
【請求項5】
請求項4に記載の飛行支援システムであって、
前記第1の経路は、前記飛行体を下り階段に沿って飛行させる経路である
ことを特徴とする飛行支援システム。
【請求項6】
請求項1に記載の飛行支援システムであって、
前記飛行体の飛行を安定させるための制御は、前記飛行体を減速させる制御である
ことを特徴とする飛行支援システム。
【請求項7】
請求項6に記載の飛行支援システムであって、
前記飛行体の飛行を安定させるための制御は、前記飛行体を所定時間ホバリング(空中静止)させる制御を含む
ことを特徴とする飛行支援システム。
【請求項8】
請求項1に記載の飛行支援システムであって、
前記第2のマーカは、前記飛行体の飛行を安定させるための制御情報と、前記制御情報による制御を行った後に前記第1のマーカに向けて飛行させる制御情報とを前記飛行体に提供する
ことを特徴とする飛行支援システム。
【請求項9】
飛行体と、前記飛行体が飛行する予定の経路に沿って設けられる、前記飛行体に飛行制御に関する情報である制御情報を提供する複数のマーカとを含み、前記飛行体が、飛行中に前記マーカに近づく度に前記制御情報を取得し、取得した前記制御情報に従って飛行することにより前記経路に沿って自律飛行を行うように構成された飛行支援システムにおいて、
第1の前記経路の終端近傍に、当該第1の経路に沿って飛行中の飛行体を第2の前記経路に沿った飛行に移行させる制御情報を提供する第1の前記マーカを設け、
前記第1のマーカを設けた位置よりも前記第1の経路側の近傍に、前記飛行体の飛行を安定させるための制御を指示する内容を含む前記制御情報を提供する第2の前記マーカを設けた
ことを特徴とする飛行支援方法。
【請求項10】
請求項9に記載の飛行支援方法であって、
前記第1の経路は、前記飛行体を上り階段に沿って飛行させる経路であり、
前記第2の経路は、前記飛行体を平坦な通路に沿って水平飛行させる経路である
ことを特徴とする飛行支援方法。
【請求項11】
請求項9に記載の飛行支援方法であって、
前記第1の経路は、前記飛行体を下り階段に沿って飛行させる経路であり、
前記第2の経路は、前記飛行体を平坦な通路に沿って水平飛行させる経路である
ことを特徴とする飛行支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛行支援システム、及び飛行支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無人飛行体(ドローン、無人航空機(UAV:Unmanned Aerial Vehicle)。以下、「飛行体」と称する。)の様々な分野での利用が進められている。飛行体は、自律飛行させることで、人が行っていた様々な業務を遂行(代行)することが可能であり、省人化や省力化、作業の安全性の向上等の効果が期待されている。
【0003】
現状、業務に利用されている飛行体の多くは、自律飛行に必要な自己の現在位置の取得をGNSS(Global Navigation Satellite System)等の衛星測位システムを利用して行っている。そのため、例えば、鉄筋コンクリート造の構造物の内部のように衛星から送られてくる測位信号を受信することができない環境では飛行体を利用することができない。また、ダムの監査廊内やトンネル内のように、構造物の内部に似たような形状や景観の特徴の少ない構造が複数存在する場合は、SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)等による自己位置推定技術の適用も困難である。そこで、こうした環境においても飛行体の自律飛行を可能にするための仕組みが提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、GPS(Global Positioning System)を使用せず、飛行ルートも記憶させることなく、飛行体を自律飛行させることを目的として構成された飛行体の制御システムについて記載されている。制御システムは、飛行体の制御に関する制御情報を含む画像が表示される少なくとも1つの目印部と、制御情報を読み取る読み取り部と、読み取り部で読み取られた制御情報に基づき、飛行体に飛行情報を送信する飛行情報送信部とを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2018/163699号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「ダム定期検査の手引き」,国土交通省,URL:https://www.mlit.go.jp/river/shishin_guideline/dam/08.pdf,2022/6/1検索
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載された仕組みを用いることで、衛星測位システムやSLAMを利用できない環境でも飛行体を自律飛行させることが可能になる。しかし多くの業務で現在使用されている回転翼方式の飛行体(マルチコプタ、ヘリコプタ等)は、ダウンウオッシュ(downwash)等の影響により上下方向の移動時(上昇/下降時)に不安定になりやすく、また、狭隘で複雑な経路を飛行させるような場合は上記の仕組みによっても飛行体を安定して飛行させることが困難なことがある。また、飛行体を上昇や下降を伴う飛行から水平飛行に移行させる際は飛行の乱れが生じ易く、制御が間に合わずに飛行体が壁面や床面に接触してしまう可能性がある。
【0008】
本発明はこのような背景に鑑みてなされたものであり、飛行体を安定して飛行させることが可能な、飛行体の制御システム及び制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明の一つは、飛行体と、前記飛行体が飛行する予定の経路に沿って設けられる、前記飛行体に飛行制御に関する情報である制御情報を提供する複数のマーカとを含み、前記飛行体が、飛行中に前記マーカに近づく度に前記制御情報を取得し、取得した前記制御情報に従って飛行することにより前記経路に沿って自律飛行を行うように構成された飛行支援システムであって、第1の前記経路の終端近傍に、当該第1の経路に沿って飛行中の飛行体を第2の前記経路に沿った飛行に移行させる制御情報を提供する第1の前記マーカを設け、前記第1のマーカを設けた位置よりも前記第1の経路側の近傍に、前記飛行体の飛行を安定させるための制御を指示する内容を含む前記制御情報を提供する第2の前記マーカを設けたことを特徴とする。
【0010】
その他、本願が開示する課題、及びその解決方法は、発明を実施するための形態の欄、及び図面により明らかにされる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、飛行体を安定して飛行させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】飛行支援システムの概略的な構成を説明する図である。
図2】ダムの監査廊の一例を示す図である。
図3A】飛行体が上り階段に沿って斜め上方に上昇飛行した後、平坦廊に沿った水平飛行に移行する際の飛行の様子を説明する図である。
図3B】飛行体を上り階段に沿った斜め上方に向けた上昇飛行から平坦廊に沿った水平飛行に移行させる際の副マーカの役割を説明する図である。
図4A】飛行体が下り階段に沿って斜め下方に下降飛行した後、平坦廊に沿った水平飛行に移行する際の飛行の様子を説明する図である。
図4B】飛行体を下り階段に沿った斜め下方に向けた下降飛行から平坦廊に沿った水平飛行に移行させる際の副マーカの役割を説明する図である。
図5A】飛行体の主な構成を示すブロック図である。
図5B】飛行体の主な機能を示すブロック図である。
図6A】監視制御装置の主な構成を示すブロック図である。
図6B】監視制御装置の主な機能を示すブロック図である。
図7】飛行制御処理を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の記載及び図面は、本発明を説明するための例示であって、説明の明確化のため、適宜、省略及び簡略化がなされている。以下の説明において、同種の構成を区別する必要がある場合、構成を総称する符号の後に括弧書きで識別子(数字、アルファベット等)を表記することがある。また、以下の説明において、符号の前に付した「S」の文字は処理ステップの意味である。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態として説明する無人飛行体(ドローン、無人航空機(UAV:Unmanned Aerial Vehicle))の飛行を支援するシステム(以下、「飛行支援システム1」と称する。)の概略的な構成を説明する図である。飛行支援システム1は、飛行体100、監視制御装置200、飛行体100に提供する飛行に関する情報(以下、「制御情報113」と称する。)を表示するマーカ2(主マーカ2a(第1のマーカ)と副マーカ2b(第2のマーカ))、及び充電ステーション3を含む。
【0015】
飛行体100は、ホバリング(空中静止)することが可能な回転翼方式の飛行体(マルチコプタ、ヘリコプタ等)であり、自律制御による飛行、もしくは監視制御装置200からの遠隔制御指令による飛行が可能である。
【0016】
飛行体100は、マーカ2の情報を読み取ることにより制御情報113を取得する装置(以下、「マーカ読取装置107」と称する。)を備える。また、飛行体100は、飛行中に周囲の情報(例えば、飛行中に周囲を撮影することにより得られる映像や画像。以下、「取得情報114」と称する。)を取得する装置(以下、「情報取得装置108」と称する。)を備える。
【0017】
飛行体100は、飛行中に監視制御装置200との間で双方向の無線通信を行う。例えば、飛行体100は、飛行中に監視制御装置200に現在の状態を示す情報(以下、「機体情報111」と称する。)を送信する。また例えば、飛行体100は、飛行中に監視制御装置200から送られてくる飛行制御信号を受信し、受信した飛行制御信号に従って自身の飛行を制御する。また、飛行体100は、情報取得装置108により取得した取得情報114を記憶するとともに、取得情報114を監視制御装置200に無線送信する。
【0018】
飛行体100は、予め設定された飛行経路に沿って飛行することにより業務を遂行する。以下では、ダムの監査廊内を巡回して堤体の状況に関する情報を収集する業務を飛行体100が行う場合を例として説明する。尚、非特許文献1(「ダム定期検査の手引き」,国土交通省,URL:https://www.mlit.go.jp/river/shishin_guideline/dam/08.pdf,2022/6/1検索)では、ダムの点検のために、監査廊から堤体のコンクリートの状況(壁面のひび割れ、腐食、漏水等)を目視で確認することが基準化されている。しかし、監査廊の長さは通常、数百~数キロメートル以上に及ぶ上、階段等の勾配が急な箇所も多く、現場を人が歩いて点検作業を行うことは人的負荷(肉体的負担)や安全性確保(転倒や怪我のリスク)の点で課題があった。
【0019】
図2にダムの監査廊の一例(断面図)を示す。同図に示すように、例示するダム6の場合、ダム6の底部やダム6の壁面に沿って数百メートル以上に亘り監査廊7が設けられている。監査廊7は、上り階段や下り階段、階段の踊り場や平坦な通路等の平坦部分(以下、「平坦廊」と称する。)が組み合わされた複雑な構造を有する。
【0020】
監査廊7内ではGNSS(全球測位衛星システム(Global Navigation Satellite System))等の衛星測位システムを利用することができない。そのため、飛行体100は、監査廊7の随所に設けたマーカ2を通過する度にマーカ2の情報を読み取ることにより制御情報113を取得し、取得した制御情報113に従って飛行を制御(マーカ誘導方式制御)することにより、予定されている経路に沿って飛行する。
【0021】
また、監査廊7は狭隘であり(幅や天井高さは数メートル程度)、飛行体100を監査廊7に沿って飛行させる場合は、天井や床面、壁面等に衝突しないようにこれらから一定の間隔を維持しつつ飛行させる必要がある。本実施形態では、飛行体100は、搭載されている距離センサから得られる情報(天井や床面、壁面等までの距離。以下、「距離センサ情報1115」と称する。)を飛行中にリアルタイムに取得し、取得した情報に基づき飛行を制御することで上記間隔を維持しつつ監査廊7内を飛行する。
【0022】
図1に戻り、監視制御装置200は、飛行体100から送られてくる機体情報111をリアルタイムに受信し、受信した機体情報111に基づき飛行体100の監視や制御を行う。また、監視制御装置200は、飛行体100に飛行制御信号を送信して飛行体100の飛行を制御する。また、監視制御装置200は、飛行体100から送られてくる取得情報114を受信し、受信した取得情報114の記録や管理、受信した取得情報114のユーザインタフェースを介したユーザへの提供(例えば、撮影した映像や画像の表示、印刷等)等を行う。
【0023】
充電ステーション3は、飛行体100に搭載されているバッテリ(後述のバッテリ106)を、例えば、非接触給電により充電する。充電ステーション3は、監査廊7内の要所(飛行体100の出発点、着陸点、飛行経路の途中等)に設けられている。
【0024】
マーカ2は、例えば、二次元画像(二次元バーコード等)により制御情報113を表示する。マーカ2は、例えば、監査廊7の壁面等に設けられる。制御情報113は、例えば、次に向かうべきマーカ2の方向や経路、飛行方法等を示す情報(例えば、次に向かうべきマーカ2までの移動距離、移動方向、飛行高度、離陸指示、着陸指示等の情報)を含む。
【0025】
マーカ2は、主マーカ2aと副マーカ2bとに区別される。このうち主マーカ2aは、第1の経路に沿って飛行中の飛行体100を第2の経路に沿った飛行に移行させるための制御情報113を飛行体に提供する。一方、副マーカ2bは、主マーカ2aが設置されている位置の第1の経路側(進行方向に対して手前側)の近傍に設置され、飛行体100の飛行を安定させるための制御指示を含む制御情報113を飛行体100に提供する。
【0026】
図3A図3B、及び図4A図4Bは、副マーカ2bの役割(機能)を説明する図である。以下、これらの図とともに副マーカ2bの役割について説明する。
【0027】
図3A及び図3Bは、いずれも飛行体100が上り階段に沿って斜め上方に上昇飛行する経路(以下、「第1の経路311」と称する。)で飛行した後、平坦廊に沿った経路(以下、「第2の経路312」と称する。)に移行する際の飛行体100の飛行の様子を説明する図である。このうち図3Aは、副マーカ2bを設けない場合における飛行体100の飛行の様子を、また、図3Bは、副マーカ2bを設けた場合における飛行体100の飛行の様子を説明する図である。
【0028】
図3Aに示すように、副マーカ2bを設けない場合、飛行体100の実際の飛行経路は次のようになる。即ち、まず飛行体100は、飛行中に第1の主マーカ2aの位置に到達すると、第1の主マーカ2aの制御情報113を取得し、取得した制御情報113に従い、第2の主マーカ2aに向けて第1の経路311に沿って斜め上方に上昇飛行する。その後、第2の主マーカ2aの付近に差し掛かると、飛行体100は、第2の主マーカ2aに従って第2の経路312に沿った飛行に移行しようとするが、飛行体100の速度が速すぎて減速制御が間に合わず、天井に接触してしまう可能性がある。
【0029】
ここで上記のように飛行体100が第1の経路311の終端付近で加速してしまうのは、飛行体100が階段に沿って上昇飛行する際、距離センサにより取得される床面からの距離が階段の段差を通過する度に不連続に変化し、制御量の大きな不連続な制御が短い時間間隔で繰り返し行われて誤差の蓄積が大きくなり、高度を安定させるための制御が間に合わなくなるからであると考えられる。
【0030】
この場合、図3Bに示すように、第2の主マーカ2aの第1の経路311側の近傍に副マーカ2bを設けることで、飛行体100を第1の経路311に沿った飛行から第2の経路312に沿った飛行に安定してスムーズに移行させることができる。即ち、この場合、飛行体100は、副マーカ2bの位置に差し掛かると副マーカ2bの制御情報113を取得し、取得した制御情報113に従った制御を行って飛行を安定させてから第2の主マーカ2aに向かうため、飛行体100を安定してスムーズに第2の経路312に沿った飛行に移行させることができる。
【0031】
尚、副マーカ2bにより提供される上記制御情報113は、例えば、飛行速度を減速する制御、所定時間ホバリングする制御、所定の高度を維持しつつ第2の主マーカ2aの方向に向かう制御等を飛行体100に指示するものである。但し、副マーカ2bの位置が手前すぎる(第2の主マーカ2aから離れすぎる)と階段の段差の上空でホバリングしてしまい高度が安定しなくなる。また逆に、副マーカ2bの位置が奥すぎる(第2の主マーカ2aに近すぎる)と減速制御が間に合わずに飛行体100が天井に接触してしまう。このため、副マーカ2bは、現場の状況や飛行体100の特性を考慮して適切な位置に設ける必要がある。
【0032】
図4A及び図4Bは、いずれも飛行体100が下り階段に沿って斜め下方に下降飛行する経路(以下、「第1の経路411」と称する。)で飛行した後、平坦廊に沿った経路(以下、「第2の経路412」と称する。)に移行する際の飛行体100の飛行の様子を説明する図である。このうち図4Aは、副マーカ2bを設けない場合における飛行体100の飛行の様子を、また、図4Bは、副マーカ2bを設けた場合における飛行体100の飛行の様子を説明する図である。
【0033】
図4Aに示すように、副マーカ2bを設けない場合、飛行体100の実際の飛行経路は次のようになる。即ち、まず飛行体100は、飛行中に第1の主マーカ2aの位置に到達すると、第1の主マーカ2aの制御情報113を取得し、取得した制御情報113に従い、第2の主マーカ2aに向けて第1の経路411に沿って斜め下方に下降飛行する。その後、第2の主マーカ2aの位置に差し掛かると、飛行体100は、第2の主マーカ2aに従って第2の経路412に沿った飛行に移行しようとするが、飛行体100の速度が速すぎて減速制御が間に合わず、床に接触してしまう可能性がある。また、仮に床に接触せずに第2の経路412に移行しても速度が速いためにしばらく高度が安定せず、飛行体100が天井に接触してしまう可能性もある。
【0034】
ここで上記のように飛行体100が第1の経路411の終端付近で加速してしまうのは、例えば、飛行体100が下降時に加速しやすい性質を有することや、飛行体100が階段に沿って下降飛行する際、距離センサにより取得される床面からの距離が階段の段差を通過する度に不連続に変化し、制御量の大きな不連続な制御が短い時間間隔で繰り返し行われて誤差の蓄積が大きくなり、高度を安定させるための制御が間に合わなくなるからであると考えられる。
【0035】
この場合、図4Bに示すように、第2の主マーカ2aの第1の経路411側の近傍に副マーカ2bを設けることで、飛行体100を第1の経路411に沿った飛行から第2の経路412に沿った飛行に安定してスムーズに移行させることができる。即ち、この場合、飛行体100は、副マーカ2bの位置に差し掛かると副マーカ2bの制御情報113を取得し、取得した制御情報113に従った制御を行って飛行を安定させてから第2の主マーカ2aに向かうので、飛行体100を安定してスムーズに第2の経路412に沿った飛行に移行させることができる。
【0036】
尚、副マーカ2bにより提供される上記制御情報113は、例えば、飛行速度を減速する制御、所定時間ホバリングする制御、所定の高度を維持しつつ第2の主マーカ2aの方向に向かう制御等を飛行体100に指示するものである。但し、上り階段の場合と同様に、副マーカ2bの位置が手前すぎる(第2の主マーカ2aから離れすぎる)と階段の段差の上空でホバリングしてしまい高度が安定しなくなる。また逆に、副マーカ2bの位置が奥すぎる(第2の主マーカ2aに近すぎる)と減速制御が間に合わずに飛行体100が床や天井に接触してしまう。このため、副マーカ2bは、現場の状況や飛行体100の特性を考慮して適切な位置に設ける必要がある。
【0037】
ところで、以上では、飛行体100が、階段(上り階段又は下り階段)に沿った飛行(第1の経路に沿った飛行)から平坦廊に沿った飛行(第2の経路に沿った飛行)に移行する場合を例として説明したが、以上の仕組みは飛行体100が他の環境で飛行する場合にも適用することができる。例えば、飛行体100が、連続的に高さが変化する斜面(上り斜面又は下り斜面)に沿った飛行(斜め上方に向かう上昇飛行)から平坦廊に沿った飛行(水平飛行)に移行する場合、主マーカ2aの手前の適切な位置に副マーカ2bを設けることで、飛行体100を第1の経路に沿った飛行から第2の経路に沿った飛行に安定してスムーズに移行させることができる。
【0038】
図5Aは、飛行体100の主な構成を示すブロック図である。同図に示すように、飛行体100は、飛行制御装置101(FCS:Flight Control System、FCU:Flight Control Unit)、各種センサ102、慣性航法装置103(EKF:Extended Kalman Filter)、推力発生装置104、通信装置105、バッテリ106、マーカ読取装置107、及び情報取得装置108を備える。
【0039】
飛行制御装置101は、マイクロコンピュータ(マイコン)等の情報処理装置を用いて構成され、飛行体100の飛行や各種動作に関する制御を行う。
【0040】
各種センサ102は、3軸ジャイロセンサ(角速度センサ)、3軸加速度センサ、気圧センサ、地磁気センサ(2軸、3軸)、6軸(±x,±y,±z)の各方向に存在する物体までの距離を計測する距離センサ(光学式(LiDAR(Light Detection And Ranging)等)センサ、電波式(ミリ波レーダ等)センサ、超音波式センサ、各種ToF(Time Of Flight)センサ等)、バッテリ残量センサ、温度センサ、湿度センサ等である。
【0041】
慣性航法装置103は、各種センサ102によりリアルタイムに計測される情報(加速度、角速度等)に基づき、飛行体100の現在位置を求めて出力する。
【0042】
推力発生装置104は、飛行に必要な推力を発生するための、動力モータやモータ制御装置(ESC:Electronic Speed Controller)を含む。
【0043】
通信装置105は、監視制御装置200との間で所定のプロトコルに従った双方向の無線通信を行う。
【0044】
バッテリ106は、例えば、リチウムイオンポリマー二次電池であり、飛行体100の各構成に駆動電力を供給する。バッテリ106は、非接触給電により外部から電力を受電してバッテリを充電する回路を含む。
【0045】
マーカ読取装置107は、例えば、二次元画像(例えば、QRコード(登録商標)、バーコード等)から制御情報113を取得する装置であり、例えば、二次元画像の撮影装置(カメラ)と二次元画像の解析装置を含む。尚、マーカ2は、マーカ読取装置107によって読み取り可能な態様で制御情報113を提供するものであればよく、マーカ2及びマーカ読取装置107の態様は必ずしも限定されない。例えば、マーカ2は、二次元画像以外の表示により制御情報113を提供するもの(例えば、文字により制御情報113を提供するもの)でもよい。また、マーカ2は、例えば、可視光以外の波長により表示を読み取らせることにより制御情報113を提供するものや、電磁的な方法等、光学的な方法以外の方法で制御情報113を提供するものでもよい。
【0046】
情報取得装置108は、外部の情報を取得する装置であり、例えば、外部の様子(例えば、ダム6を構成するコンクリート等の構造物の表面)を撮影するカメラ(可視光カメラ、赤外線カメラ等)である。尚、情報取得装置108は、ダム6を構成する構造物に関する情報を取得できるものであればよく、例えば、他の種類のセンサにより構造物に関する情報を取得するものでもよい。
【0047】
図5Bは、飛行体100の主な機能を示すブロック図である。同図に示すように、飛行体100は、記憶部110、飛行計画受信部125、飛行制御信号受信部127、機体情報送信部130、制御情報取得部135、バッテリ残量監視部140、飛行制御部145、情報取得部150、及び取得情報送信部155の各機能を備える。
【0048】
上記機能のうち、記憶部110は、飛行体100について各種センサ102によりリアルタイムに取得される情報である機体情報111(位置情報1111(緯度、経度、高度)、飛行速度/加速度情報1112、飛行針路情報1113、バッテリ残量情報1114、距離センサ情報1115、温湿度情報1116(機体の所定位置における温湿度情報))や、飛行計画112、制御情報113、及び取得情報114を記憶する。
【0049】
飛行計画受信部125は、監視制御装置200から送られてくる飛行計画を受信し、受信した飛行計画を飛行計画112として管理する。
【0050】
飛行制御信号受信部127は、監視制御装置200から送られてくる飛行制御信号(例えば、飛行体100の操縦者(監視者、制御者)のマニュアル操作(プロポの操作等)による飛行制御信号)を受信する。
【0051】
機体情報送信部130は、記憶部110が記憶する機体情報111を監視制御装置200にリアルタイムに送信する。
【0052】
制御情報取得部135は、マーカ読取装置107によりマーカ2に表示されている制御情報を取得し、取得した制御情報を制御情報113として管理する。
【0053】
バッテリ残量監視部140は、バッテリ残量情報1114が予め設定された下限値未満になっているか否かを監視し、バッテリ残量情報1114が予め設定された下限値未満になるとその旨を飛行制御部145に通知する。
【0054】
飛行制御部145は、例えば、飛行計画112や飛行制御信号、及び制御情報113に基づき飛行体100の飛行を制御する。また、飛行制御部145は、例えば、距離センサにより取得される距離センサ情報1115(飛行体100から周囲の物体(床、天井、壁、階段面等)までの距離を示す情報)に基づき、周囲の物体から一定の間隔を維持して飛行するように飛行体100の飛行を制御する。例えば、飛行制御部145は、距離センサ情報1115に基づき、床面や階段面、天井、壁面等からの距離が一定になるようにPID制御(Proportional-Integral-Differential Control)を行う。
【0055】
また、飛行制御部145は、飛行中、例えば、距離センサ情報1115に基づき周囲に存在する物体までの距離の変化を求めることにより自己の現在位置や移動量を取得しつつ、飛行計画112や飛行制御信号、及び制御情報113に従って飛行するように飛行体100の飛行を制御する。
【0056】
また、飛行制御部145は、例えば、特許文献1(国際公開第2018/163699号)に記載されている仕組みにより実際に飛行した経路の制御情報113に指定されている飛行経路からのずれ量を求め、求めたずれ量が補正されるように飛行体100の飛行を制御する。
【0057】
また、飛行制御部145は、例えば、マーカ読取装置107や情報取得装置108に備えられた撮影装置により取得されるマーカ2の画像に基づき、マーカ読取装置107がマーカ2に表示されている内容を正確に読み取るために必要な適切な状態になっているか(撮影装置の撮像部がマーカ2に正対しているか、マーカ2表示面の全体が読み取り可能な状態で画角に収まっているか等)を判定し、適切な状態になっていない場合は適切な位置になるように飛行体100を制御する。
【0058】
また、飛行制御部145は、例えば、バッテリ残量監視部140からバッテリ残量情報1114が予め設定された下限値未満になっている旨の通知を受けると、近くの着陸場所や充電ステーション3を探索(例えば、自己の現在位置を、予め記憶している構内地図情報(マーカ2、着陸場所、及び充電ステーション3の位置を特定する情報を含む)と対照することにより探索)し、探索した着陸場所(例えば、着陸場所に指定されているマーカ2)や充電ステーション3(例えば、充電ステーション3が設けられているマーカ2)に向けて飛行するように飛行体100を制御する。
【0059】
また、飛行制御部145は、例えば、制御情報113を飛行計画112よりも優先して飛行体100の飛行を制御する。また、飛行制御部145は、例えば、飛行制御信号を制御情報113よりも優先して飛行体100の飛行を制御する。
【0060】
情報取得部150は、情報取得装置108により情報を取得し、取得した情報を取得情報114として管理する。
【0061】
取得情報送信部155は、取得情報114を監視制御装置200に随時送信する。
【0062】
図6Aは、監視制御装置200の構成例を示すブロック図である。監視制御装置200は、情報処理装置(コンピュータ)として機能することができる。
【0063】
例示する監視制御装置200は、プロセッサ201、主記憶装置202(メモリ)、補助記憶装置203(外部記憶装置)、入力装置204、出力装置205、及び通信装置206を備える。これらはバスや通信ケーブル等を介して通信可能に接続されている。情報処理装置10の例として、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレット等がある。
【0064】
プロセッサ201は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、AI(Artificial Intelligence)チップ、DSP(Digital Signal Processor)等を用いて構成されている。
【0065】
主記憶装置202は、プロセッサ201がプログラムを実行する際に利用する装置であり、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、不揮発性メモリ(NVRAM(Non Volatile RAM))等である。
【0066】
補助記憶装置203は、プログラムやデータを記憶する装置であり、例えば、SSD(Solid State Drive)、ハードディスクドライブ、光学式記憶装置、SDカードや光学式記録媒体等の非一時的な記録媒体の読取/書込装置等である。
【0067】
入力装置204は、外部からの情報の入力を受け付けるインタフェースであり、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル、カードリーダ、ペン入力方式のタブレット、音声入力装置等である。
【0068】
出力装置205は、処理経過や処理結果等の各種情報を外部に出力するインタフェースである。出力装置205は、例えば、上記の各種情報を可視化する表示装置(液晶モニタ、LCD(Liquid Crystal Display)等)、上記の各種情報を音声化する装置(音声出力装置(スピーカ等))、上記の各種情報を文字化する装置(印字装置等)である。
【0069】
入力装置204と出力装置205は、ユーザとの間での対話処理(情報の受け付け、情報の提供等)を実現するユーザインタフェースを構成する。
【0070】
通信装置206は、飛行体100等の他の装置との間の通信を実現する装置である。通信装置206は、無線方式又は優先方式の通信インタフェースであり、例えば、無線通信モジュール、USBモジュール、NIC(Network Interface Card)等である。通信装置206は、例えば、遠隔操縦端末(プロポ)としての機能を有する。
【0071】
監視制御装置200には、例えば、オペレーティングシステム、ファイルシステム、DBMS(DataBase Management System)(リレーショナルデータベース、NoSQL等)、KVS(Key-Value Store)等が導入されていてもよい。
【0072】
監視制御装置200が備える各種の機能は、プロセッサ201が、主記憶装置202に格納されているプログラムを読み出して実行することにより、もしくは、夫々を構成するハードウェアによって実現される。監視制御装置200は、各種の情報(データ)を、例えば、データベースのテーブルやファイルシステムが管理するファイルとして記憶する。
【0073】
図6Bは、監視制御装置200が備える主な機能を説明するブロック図である。同図に示すように、監視制御装置200は、記憶部210、飛行計画管理部220、飛行計画送信部225、飛行制御信号送信部230、機体情報受信部235、飛行監視制御部240、取得情報受信部245、及び取得情報管理部250の各機能を備える。
【0074】
上記機能のうち、記憶部210は、飛行計画211、機体情報212、及び取得情報213を記憶する。
【0075】
飛行計画管理部220は、飛行体100についてユーザ等により設定された飛行計画を飛行計画211として管理する。飛行計画管理部220は、例えば、ユーザインタフェースを介して飛行計画の設定をユーザから受け付ける。
【0076】
飛行計画送信部225は、飛行計画211を飛行体100に送信する。
【0077】
飛行制御信号送信部230は、例えば、ユーザインタフェース(プロポ等)を介してユーザのマニュアルによる操作指示(操縦指示)を受け付け、受け付けた操作指示に対応する飛行制御信号を生成し、生成した飛行制御信号を飛行体100に送信する。
【0078】
機体情報受信部235は、飛行体100から送られてくる機体情報を随時受信(例えば、リアルタイムに受信)し、受信した機体情報を機体情報212として管理する。
【0079】
飛行監視制御部240は、機体情報212に基づき飛行体100の飛行を監視する。飛行監視制御部240は、例えば、飛行体100のリアルタイムな現在位置や機体情報212を示す情報や、マーカ読取装置107や情報取得装置108によって撮影されたリアルタイムな映像等を、GUI(Graphical User Interface)等のユーザインタフェースを介してユーザに提供する。
【0080】
また、飛行監視制御部240は、例えば、飛行体100に何らかの異常が発生した場合、異常が生じていることを示す情報をユーザインタフェースを介してユーザに提示する。また、飛行監視制御部240は、飛行体100に何らかの異常が発生した場合、例えば、飛行体100を安全に飛行させるための飛行制御信号を生成して飛行体100に送信する。
【0081】
取得情報受信部245は、飛行体100から送られてくる取得情報を受信し、受信した取得情報を取得情報213として管理する。
【0082】
取得情報管理部250は、例えば、取得情報213をGUI等のユーザインタフェースを介してユーザに提供する。例えば、取得情報管理部250は、飛行中に構造物を撮影した映像について画像解析を行い、その結果をユーザに提供する。また例えば、取得情報管理部250は、飛行中に構造物を撮影した映像や、同じ構造物について過去に飛行した際に撮影した映像(比較映像)をユーザに提供する。
【0083】
図7は、飛行体100を飛行させて監査廊7の点検を行う際に飛行体100が行う処理(以下、「飛行制御処理S700」と称する。)を説明するフローチャートである。以下、同図とともに飛行制御処理S700について説明する。
【0084】
まず、飛行体100は、飛行計画112を取得する(S711)。飛行体100は、飛行計画112を、例えば、監視制御装置200から取得してもよいし、例えば、飛行計画112を制御情報113として表示したマーカ2の表示を読み取らせることにより取得してもよい。
【0085】
続いて、飛行体100は、出発地点(ホーム)から離陸し、飛行計画112に指定されている高度まで上昇して所定の高さでホバリングする(S712)。
【0086】
続いて、飛行体100は、1枚目のマーカ2を読み取り、制御情報113を取得する(S713)。上記の制御情報113には、飛行体100が移動を開始する前に飛行体100を適切な位置に位置決めするための情報(マーカ2との相対位置、高度)や、次のマーカ2までの飛行を指示する情報を含む。
【0087】
続いて、飛行体100は、取得した制御情報113に従って自機を適切な状態(適切な位置及び姿勢)になるように制御(例えば、マーカ読取装置107のカメラの撮影方向がマーカ2の正面に正対し、かつ、高度が指定された高度になるように制御)する(S714、S715:NO)。
【0088】
続いて、飛行体100は、飛行体100が適切な状態になった(位置決め完了)と判定すると(S715:YES)、制御情報113に指定されている次のマーカ2に向けて移動を開始する(S716)。尚、移動中、飛行体100は、距離センサの情報に基づき飛行を制御(底面、天井面、壁面等からの距離が所定の距離になるように制御)する(S717)。
【0089】
続いて、次のマーカ2に到達すると(S718:YES)、飛行体100は、マーカ2を読み取り(S720)、当該マーカ2の制御情報113が着陸(目的地への着陸、充電のための着陸等)を指示するものであるものか否かを判定する(S721)。制御情報113が着陸を指示するものでない場合(S721:NO)、飛行体100は、取得した制御情報113に従って自機を適切な状態に制御する(S731,S732:NO)。飛行体100が自機が適切な状態になった(位置決め完了)と判定すると(S732:YES)、処理はS716に戻る。
【0090】
一方、制御情報113が着陸を指示するものであった場合(S721:YES)、飛行体100は、制御情報113に従って自機を制御することにより着陸する(S722)。
【0091】
尚、以上の飛行制御処理S700において、飛行体100の飛行中、情報取得部150は、情報取得装置108により情報(周囲の撮影映像等)を取得し、取得した情報を取得情報114として管理するとともに、取得した情報を監視制御装置200に随時送信する。また、以上の飛行制御処理S700において、飛行体100は、バッテリ残量をリアルタイムに監視し、バッテリ残量が下限値未満となった場合、例えば、近場の充電ステーション3に着陸してバッテリ106を充電してから、業務のための飛行を再開する。
【0092】
以上詳細に説明したように、本実施形態の飛行支援システム1にあっては、第1の経路(上り階段又は下り階段)の終端近傍に、当該第1の経路に沿って飛行中の飛行体100を第2の経路(平坦廊)に沿った飛行に移行させる制御情報113を提供する主マーカ2aを設け、主マーカ2aを設けた位置よりも第1の経路側の近傍に、飛行体100の飛行を安定させるための制御を指示する内容を含む制御情報113を提供する副マーカ2bを設け、主マーカ2aの制御情報113に従い飛行体100が第1の経路に沿った飛行から第2の経路に沿った飛行に移行する際、事前に飛行体100が副マーカ2bの制御情報113に従って飛行を安定させるようにしている。このため、飛行体100を第1の経路に沿った飛行から第2の経路に沿った飛行に安定してスムーズに移行させることができる。また、これにより、例えば、衛星測位システムやSLAMが利用できないダムの監査廊やトンネルのような環境においても飛行体100を用いて業務を遂行することが可能になり、省人化や省力化、作業の安全性の向上等を図ることができる。
【0093】
以上、実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれ、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【0094】
例えば、以上の実施形態では、ダムの監査廊内を飛行させる場合を例として説明したが、本発明は、例えば、ビルの監視や警備のためにビルの内部で飛行体100を飛行させる場合等、衛星測位システムやSLAM等を利用することができない他の様々な環境に適用することができる。
【符号の説明】
【0095】
1 飛行支援システム、2 マーカ、2a 主マーカ、2b 副マーカ、3 充電ステーション、6 ダム、7 監査廊、100 飛行体、101 飛行制御装置、102 各種センサ、106 バッテリ、107 マーカ読取装置、108 情報取得装置、110 記憶部、111 機体情報、112 飛行計画、113 制御情報、114 取得情報、135 制御情報取得部、140 バッテリ残量監視部、145 飛行制御部、150 情報取得部、200 監視制御装置、240 飛行監視制御部、245 取得情報受信部、311 第1の経路、312 第2の経路、411 第1の経路、412 第2の経路、S700 飛行制御処理
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7