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▶ 住化エンバイロメンタルサイエンス株式会社の特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111007
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】アレルゲン低減化組成物
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/00 20060101AFI20240808BHJP
   A61K 33/24 20190101ALI20240808BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20240808BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20240808BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
C09K3/00 S
A61K33/24
A61P11/06
A61P37/08
A61P43/00 121
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024093614
(22)【出願日】2024-06-10
(62)【分割の表示】P 2020029194の分割
【原出願日】2020-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】390000527
【氏名又は名称】住化エンバイロメンタルサイエンス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】乾 圭一郎
(57)【要約】
【課題】塗料、コーティング剤、樹脂製品、壁紙または繊維に対してより優れたアレルゲン低減化効果を付与することができるアレルゲン低減化組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】
酸化チタン、水酸化チタンおよびメタチタン酸からなる群より選ばれる1種以上の化合物および酸化タングステンを含有するアレルゲン低減化組成物を用い、ダニやスギ花粉等のアレルゲンを低減化させることができ、また塗料、コーティング剤、樹脂製品、壁紙または繊維にアレルゲンを低減化させる機能を付与した加工品を提供することができる。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化チタン、水酸化チタンおよびメタチタン酸からなる群より選ばれる1種以上の化合物と、酸化タングステンとを含有するアレルゲン低減化組成物。
【請求項2】
酸化チタン、水酸化チタンおよびメタチタン酸からなる群より選ばれる1種以上の化合物ならびに酸化タングステンの重量比が95:5~50:50であることを特徴とする請求項1に記載のアレルゲン低減化組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載のアレルゲン低減化組成物を含む加工品。










【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アレルゲン低減化組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
コナヒョウヒダニ、ヤケヒョウヒダニ等のヒョウヒダニ類、スギ花粉、ヒノキ花粉等の花粉類等のアレルゲンは、近年、喘息やアトピー性皮膚炎等のアレルギー性疾患の原因となることが知られている。これらのアレルゲンは、例えば、衣類、カーテン、布団カバー等の繊維製品に存在している。
【0003】
そこでアレルゲンを不活化するためのアレルゲン低減化組成物の開発が行われており(特許文献1)、より優れたアレルゲン低減化効果を発揮するアレルゲン低減化組成物の開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-64058号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、より優れたアレルゲン低減化効果を示すアレルゲン低減化組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、このような課題を解決するため鋭意研究を行った結果、本発明の組成物を使用することによって高いアレルゲン低減化性能を付与することが可能であることを見出した。すなわち本発明は、
(1)酸化チタン、水酸化チタンおよびメタチタン酸からなる群より選ばれる1種以上の化合物と、酸化タングステンとを含有するアレルゲン低減化組成物。
(2)酸化チタン、水酸化チタンおよびメタチタン酸からなる群より選ばれる1種以上の化合物と、酸化タングステンとの重量比が95:5~50:50であるアレルゲン低減化組成物。
(3)前記のアレルゲン低減化組成物を含む加工品。
である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、優れたアレルゲン低減化効果を有するアレルゲン低減化組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明のアレルゲン低減化組成物に使用される化合物としては、酸化チタン、水酸化チタンおよびメタチタン酸が挙げられる。該酸化チタンとしては、アナタース型、ルチル型またはブルッカイト型二酸化チタンが挙げられる。該水酸化チタンとしては、四水酸化チタンが挙げられ、該メタチタン酸としては、β-チタン酸が挙げられる。
【0009】
酸化チタンとしては、例えば、市販の酸化チタンをイオン交換水に加えて湿式粉砕機にて粉砕された酸化チタン分散液が挙げられる。当該分散液の平均粒子径は5μm以下に調整されることが好ましい。水酸化チタンとしては、例えば、四塩化チタン等の水溶性チタン塩の水溶液にアルカリが添加された水酸化チタン含有液が挙げられる。また当該水酸化チタン含有液が塩酸や硝酸等の強酸で解膠されたチタニアゾルが挙げられる。当該チタニアゾル中のチタニアの平均粒子径は0.01~2μmに調整されることが好ましい。メタチタン酸としては、例えば、硫酸チタニル溶液を加熱、加水分解されたメタチタン酸含有液が挙げられる。
【0010】
本発明のアレルゲン低減化組成物に使用される酸化タングステンとしては、例えば、市販の酸化タングステン、分散剤をイオン交換水に加えて湿式粉砕機にて粉砕された酸化タングステン分散液が挙げられる。当該酸化タングステンの平均粒子径は5μm以下に調整されることが好ましい。
【0011】
本発明のアレルゲン低減化組成物は、酸化チタン、水酸化チタンおよびメタチタン酸からなる群より選ばれる1種以上の化合物ならびに酸化タングステンの重量比が95:5~50:50となるように配合されることが好ましく、さらに90:10~80:20となるように配合されることがより好ましい。
【0012】
本発明のアレルゲン低減化組成物は、通常、水、極性溶剤等の溶媒を加えて製剤化され使用される。前記極性溶媒としては、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、N-メチルピロリドン、γ-ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、分子量が1000以下のポリエチレングリコール、分子量1000以下のポリプロピレングリコール等が挙げられる。これら極性溶媒は、単独で使用してもよく2種類以上を併用することも可能である。
【0013】
また製剤化に際しては、さらに非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤から選ばれる1種以上の界面活性剤を使用することができるが、これらのうち非イオン性界面活性剤またはアニオン性界面活性剤が好ましい。非イオン性界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルケニルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられる。アニオン性界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホネート、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルサルフェート、ジアルキルスルホサクシネート等が挙げられる。カチオン性界面活性剤としては脂肪族アミン塩およびその4級アンモニウム塩等が挙げられる。両イオン性界面活性剤としてはベタイン型界面活性剤、アミノカルボン酸塩等が挙げられる。
【0014】
本発明のアレルゲン低減化組成物には、殺ダニ剤、防カビ剤、抗菌剤、キレート剤、防錆剤、香料、スケール防止剤、消泡剤、帯電防止剤、増粘剤、柔軟加工剤、柔軟剤、消臭剤、除菌剤、殺虫剤、接着剤がさらに含まれていても良い。
【0015】
殺ダニ剤としては、天然ピレトリン、フェノトリン、ペルメトリン等のピレスロイド系化合物、フェニトロチオン、マラチオン、フェンチオン、ダイアジノン等の有機リン系化合物、ジコホル、クロルベンジレート、ヘキシチアゾクス、テブフェンピラド、ピリダベン、アミドフルメト、ベンジルアルコール、ベンジルベンゾエート、サリチル酸フェニル、シンナムアルデヒド、ヒソップ油、ニンジン種子油等が挙げられる。
【0016】
防カビ剤または抗菌剤としては、例えば、5-クロロ-N-メチルイソチアゾロン、メチレンビスチオシアネート、2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオール、グルタルアルデヒド、ヨードプロピニルブチルカーバメート、ピリジンチオール-N-オキシドの亜鉛塩、1,2-ベンゾイソチアゾロン、1,2-ジブロモ-2,4-ジシアノブタン、グルコン酸クロルヘキシジン、2-イソプロピル-5-メチルフェノール、3-メチル-4-イソプロピルフェノール、オルトフェニルフェノール、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラクロロメタキシレノール、パラクロロメタクレゾール、ポリリジン、塩化ベンザルコニウム、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、N-n-ブチルベンゾイソチアゾロン、N-オクチルイソチアゾロン、2-(4-チアゾリル)ベンズイミダゾール、2-ベンズイミダゾリルカルバミン酸メチル、テトラクロロイソフタロニトリル、ジヨードメチルパラトリルスルホン、パラクロロフェニル-3-ヨードプロパギルホルマール、2,3,5,6-テトラクロロ-4-(メチルスルホニル)ピリジン、脂肪酸グリセリンエステル、ヒノキチオール等が挙げられる。
【0017】
本発明のアレルゲン低減化組成物の使用形態としては、本発明のアレルゲン低減化組成物を含む塗料、コーティング剤、樹脂製品、壁紙、繊維、柔軟剤、消臭剤、防カビ剤、除菌剤、殺虫剤、接着剤、木材、コンクリート、金属、石、ガラス、ゴム、プラスチック等の加工品が挙げられる。本発明のアレルゲン低減化組成物の添加量は、加工品の総重量に対し0.01~30重量%とするのが好ましい。
【0018】
塗料としては水性塗料、エマルション塗料、ポリウレタン塗料、ポリエステル塗料、油性塗料等が挙げられる。コーティング剤としては自動車用ワックス、ポリマー系コーティング剤、フッ素系コーティング剤、ガラス系コーティング剤等が挙げられる。樹脂製品としてはポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル、ABS樹脂等が挙げられる。壁紙としては、ポリ塩化ビニル樹脂系、ポリオレフィン等プラスチック系、紙系、繊維系、無機質系のもの等が挙げられる。
【0019】
繊維としては、綿、麻、羊毛、絹等の天然繊維、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ポリウレタン繊維、ポリプロピレン繊維、ビニロン繊維等の合成繊維、レーヨン繊維、キュプラ繊維等の半合成繊維等の繊維の他、これらの繊維を2種類以上使用した複合繊維が挙げられる。また繊維を基材とした掃除用ウェットワイパー、マスク、フィルター材料、電気掃除機の集塵袋、衣料品、カーペット、ソファー、壁紙、カーテン等のインテリア類、布団側地、布団カバー、布団中綿、シーツ、枕カバー、マット等の寝具類、カーシート、カーマット、天井材および床材等の自動車部品類、ぬいぐるみ等が挙げられる。
【0020】
本発明のアレルゲン低減化組成物が低減化するアレルゲンとしては、ハウスダスト中のダニ由来のアレルゲン、イヌやネコ等のペットの毛や上皮、ゴキブリ、羽毛、カビ由来のアレルゲン、およびスギ、ヨモギ、ハルガヤ、ヒノキ、ブタクサ等の花粉、天然ゴムラテックス等が挙げられる。
【実施例0021】
本発明を実施例および比較例、試験例によりさらに詳しく説明するが、本発明がこれらに限定されるものではない。
【0022】
(チタニアゾルの調製)
1.イオン交換水600gにヘキサメタリン酸ナトリウム(米山化学工業株式会社製)3.0gを溶解させ、さらに硫酸チタニル(キシダ化学株式会社製)80gを溶解させた後、100℃に昇温し2時間加熱することで水酸化チタンを調製した。
2.当該水酸化チタンを含有する液を70℃まで冷却して25%アンモニア水(富士フイルム和光純薬工業株式会社製)を用いてpHを6.3に調整し、No.5Cのろ紙を敷いた直径12.5cmのヌッチェを用いて吸引ろ過し、さらにイオン交換水50gを注いで洗浄しケーキ150gを得た。
3.当該ケーキをイオン交換水100gに分散させ、塩酸(試薬特級、富士フイルム和光純薬工業株式会社製)10gを添加し解膠することで分散液を得た。
4.当該分散液に四塩化チタン(富士フイルム和光純薬工業株式会社製)10.7g、85%リン酸(富士フイルム和光純薬工業株式会社製)2.1gを添加した後、2時間混合した。
5.次いで25%アンモニア水(富士フイルム和光純薬工業株式会社製)を用いてpHを5.5に調整し、No.5Cのろ紙を敷いた直径12.5cmのヌッチェを用いて吸引ろ過した後、イオン交換水を注いで洗浄しケーキ185gを得た。
6.湿式ミル用容器に当該ケーキ185g、イオン交換水45gおよび直径1mmのガラスビーズ500gを投入し、30分間粉砕処理することでチタニアゾル(固形分20%)を得た。
7.当該チアニアゾル中の粒子の平均粒子径を粒度分布測定装置SALD-2200(島津製作所製)を用いて測定したところ、平均粒子径は0.5μmであった。またpHは5.5であった。
【0023】
(酸化タングステン分散液の調製)
1.イオン交換水165gにポイズ520(花王株式会社製)3gを溶解させ、三酸化タングステン(日本無機化学工業株式会社製)56gを加え、直径1mmのガラスビーズ500gを用いて湿式ミルで30分間の粉砕処理することで分散液を得た。
2.当該分散液160gに対して、キサンタンガム(三晶株式会社製)の1%溶解液を40g添加し、攪拌機を用いて混合し、酸化タングステン分散液(固形分20重量%)を得た。
3.酸化タングステンの平均粒子径を粒度分布測定装置SALD-2200(島津製作所製)を用いて測定したところ、平均粒子径は0.6μmであった。
【0024】
[製剤の調製]
前記チタニアゾルと酸化タングステンの重量比が表1の割合になるように混合し、製剤1~6のアレルゲン低減化組成物を調製した。
【0025】
[表1]
【0026】
[試験例1]
ダニアレルゲンの低減化率の測定
1.PBS(富士フィルム和光純薬工業株式会社製)で2μg/mLに希釈した抗Der f2 モノクローナル抗体15E11(富士フィルムワコーシバヤギ株式会社製)を、F16 MAXISORP NUNC-IMMUNO MODULEプレート(NUNC社製)の1ウェルあたり100μLずつ添加し、4℃にて3日静置した。
2.静置後、液を捨て、ブロッキング試薬{1重量%牛血清アルブミンを含有するPBS(富士フィルム和光純薬工業株式会社製)}を1ウェルあたり200μLずつ添加し、37℃、60分間静置した。
3.PBS(富士フイルム和光純薬工業株式会社製)を用いてプレートをすすいだ。
4.ダニアレルゲンDer f2を含有するアレルゲン液{Der f2換算タンパク質量として900ng/mLとなるようにPBS-T(富士フィルム和光純薬工業株式会社製)10倍希釈液で調製した液}(以下、標準ダニアレルゲン液と記す)1mLに対し、製剤1~6をそれぞれイオン交換水で10倍に希釈した液12.5μLを混合した。
5.これらの混合液を1ウェルあたり100μLずつ滴下し、37℃、60分間静置した。
6.PBS(富士フィルム和光純薬工業株式会社製)を用いてプレートをすすいだ。
7.ペルオキシダーゼ標識した抗Der f2モノクローナル抗体13A4(富士フィルムワコーシバヤギ株式会社製)を、1重量%牛血清アルブミンを含有するPBS-T(富士フィルム和光純薬工業株式会社製)で200μg/mLに溶解した後、1重量%牛血清アルブミンを含有するPBS-T(富士フイルム和光純薬工業株式会社製)で1200倍希釈した。
8.1200倍に希釈した液を1ウェルあたり100μLずつ添加し、37℃、60分間静置した。
9.PBS(富士フィルム和光純薬工業株式会社製)を用いてプレートをすすいだ。
10. 0.2mol/Lリン酸緩衝液(pH6.2)6.5mLにオルト-フェニレンジアミンジヒドロクロライド(13mg Tablet、富士フイルム和光純薬工業株式会社製)一錠と30%過酸化水素水6.5μLを加えたものを1ウェルあたり100μLずつ添加し、37℃、3分間静置した。
11. 1mol/L HSOを1ウェルあたり50μLずつ入れ、マイクロプレート用分光光度計(テカンジャパン株式会社製)で吸光度(OD490nm)を測定した。吸光度からDer f2換算タンパク質濃度を求め、式(1)によりダニアレルゲン低減化率を計算した。
ダニアレルゲン低減化率(%)=(900-(Der f2換算タンパク量))/900×100 (1)
【0027】
表2にDer f2換算タンパク質濃度およびアレルゲン低減化率を示す。
【0028】
[表2]
【0029】
[試験例2]
スギ花粉アレルゲンの低減化率の測定
1.PBS(富士フィルム和光純薬工業株式会社製)で2μg/mLに希釈したCry j1 モノクローナル抗体013(株式会社バイオダイナミクス研究所製)を、F16 MAXISORP NUNC-IMMUNO MODULEプレート(NUNC社製)の1ウェルあたり100μLずつ添加し、4℃にて1日静置した。
2.静置後、液を捨て、ブロッキング試薬{1重量%牛血清アルブミンを含有するPBS(富士フィルム和光純薬工業株式会社製)}を1ウェルあたり200μLずつ添加し、37℃、60分間静置した。
3.PBS(富士フィルム和光純薬工業株式会社製)を用いてプレートをすすいだ。
4.スギ花粉アレルゲンCry j1として12.5ng/mLのアレルゲン液{12.5μg/mLとなるようにPBS-T(富士フィルム和光純薬工業株式会社製)の10倍希釈液で調製した液}(以下、標準スギ花粉アレルゲン液と記す)1mLに対し、製剤1~6をそれぞれイオン交換水で10倍に希釈した液12.5μLを混合した。
5.当該混合液を1ウェルあたり100μLずつ滴下し、37℃、60分間静置した。
6.PBS(富士フィルム和光純薬工業株式会社製)を用いてプレートをすすいだ。
7.ペルオキシダーゼ標識したCry j1モノクローナル抗体053(株式会社バイオダイナミクス研究所製)を蒸留水で200μg/mLに溶解し、1重量%牛血清アルブミンを含有するPBS-T(富士フィルム和光純薬工業株式会社製)で1200倍希釈した液を、1ウェルあたり100μLずつ添加し、37℃、60分間静置した。
8.PBS(富士フィルム和光純薬工業株式会社製)を用いてプレートをすすいだ。
9.0.2mol/Lリン酸緩衝液(pH6.2)6.5mLにオルト-フェニレンジアミンジヒドロクロライド(13mg Tablet、富士フイルム和光純薬工業株式会社製)と30%過酸化水素水6.5μLを加えたものを1ウェルあたり100μLずつ添加し、37℃、5分間静置した。
10. 2mol/L HSOを1ウェルあたり50μLずつ入れ、マイクロプレート用分光光度計(テカンジャパン株式会社製)で吸光度(OD490nm)を測定した。
11. 吸光度からCry j1濃度を求め、式(2)によりスギ花粉アレルゲン低減化率を計算した。
スギ花粉アレルゲン低減化率(%)=(12.5-(Cry j1量))/12.5×100 (2)
【0030】
表3にCry j1濃度およびスギ花粉アレルゲン低減化率を示す。
【0031】
[表3]
【0032】
(アレルゲン低減化組成物加工繊維の作成)
製剤1~6のアレルゲン低減化組成物を、夫々イオン交換水で500倍に希釈した希釈液50mLに、9cm×23cmの大きさのポリエステル繊維(目付:240g/m)を浸漬し、絞り率220%(絞り率=(浸漬後繊維重量-浸漬前繊維重量)/浸漬前繊維重量×100)となるように絞った後、105℃の乾燥機にて15分間加熱乾燥し、アレルゲン低減化組成物加工繊維を得た。
【0033】
(洗濯加工繊維の作成)
イオン交換水1.5LにJAFET標準配合洗剤2mLを添加した洗剤液200mLに9cm×11.5cmの大きさに切り取ったアレルゲン低減化組成物加工繊維を入れ、2枚ピッチ羽根(φ=60mm)を取り付けた攪拌機にて300r.p.m.で25分撹拌し、絞り率300%で絞った。次いでイオン交換水200mLに絞った後のアレルゲン低減化組成物加工繊維を入れ攪拌機にて300r.p.m.で25分撹拌し、絞り率300%で絞った。これらの作業を繰り返し、洗濯加工繊維を得た。
【0034】
[試験例3](アレルゲン低減化組成物加工繊維のダニアレルゲン低減化試験)
4cm×4cmに切り取ったアレルゲン低減化組成物加工繊維および洗濯加工繊維を各々チャック付きポリ袋に入れ、標準ダニアレルゲン液1mLを加えた。1時間後にチャック付きポリ袋からダニアレルゲン液を搾り出し、搾り出した該ダニアレルゲン液を遠心分離機にかけ、上澄み液をダニアレルゲン抽出液とした。当該ダニアレルゲン抽出液ついて[0026]に記載のダニアレルゲン低減化試験の手順に従い、ダニアレルゲン低減化試験を行った。結果を表4に示す。
【0035】
[表4]
【0036】
[試験例4](アレルゲン低減化組成物加工繊維のスギ花粉アレルゲンの低減化試験)
4cm×4cmに切り取ったアレルゲン低減化組成物加工繊維および洗濯加工繊維を夫々チャック付きポリ袋に入れ、標準スギ花粉アレルゲン液1mLを加えた。1時間後にチャック付きポリ袋からスギ花粉アレルゲン液を搾り出し、搾り出した液を遠心分離機にかけ、上澄み液をスギ花粉アレルゲン抽出液とした。当該スギ花粉アレルゲン抽出液について[0029]に従いスギ花粉アレルゲン低減化試験を行った。結果を表5に示す。
【0037】
【表5】
【0038】
[試験例5]
アレルゲン低減化組成物加工壁紙のアレルゲン低減化試験
【0039】
塩ビ壁紙の調製
平均重合度700の塩ビ粉末(PQB83、新第一塩ビ株式会社製)100g、可塑剤ジイソノニルフタレート(DINP、田岡化学工業株式会社製)50g、安定剤としてアデカスタブ(登録商標)FL100(株式会社ADEKA製)3g、イソパラフィン(IPソルベント2028、出光興産株式会社製)7gを、攪拌機を用いて混合して塩ビ壁紙表面層液を得た。基材層としてA4サイズのPPC用紙に、200g/mとなるように塩ビ壁紙表面層液を塗布し、220℃の乾燥機にて1分間加熱し、塩ビ壁紙を得た。
【0040】
塩ビ系樹脂エマルジョン(ビニブランHD-057(登録商標)、日信化学工業株式会社製)に対し、製剤1、製剤3、製剤4および製剤6の含有量が各々10重量%となるように添加し、均一に混合して表面処理剤を得た。前記塩ビ壁紙に対し15g/mとなるように前記表面処理剤を塗布し、110℃の乾燥機にて15分間加熱し、アレルゲン低減化組成物加工壁紙を得た。
【0041】
直径8cmの円形に切り取ったアレルゲン低減化組成物加工壁紙のふちから5mmの部分を、表面処理剤を塗布した面が凹となるように折り曲げ、標準ダニアレルゲン液1mLをアレルゲン低減化組成物加工壁紙の中央付近に滴下した。上からもう一枚のアレルゲン低減化組成物加工壁紙のふちから5mmの部分を、表面処理剤を塗布した面が凸となるように折り曲げ、表面処理剤を塗布した面同士を合わせたものをチャックつきポリ袋内に入れて、1時間、室温にて保管し、アレルゲン水溶液をマイクロピペットにて100μL回収し、[試験例1]と同様の方法を用いてダニアレルゲン量の測定を行い、標準ダニアレルゲン液に代えて標準スギ花粉アレルゲン液を用いて同様の前記操作を行い、[試験例2]と同様の方法を用いてスギ花粉アレルゲン量の測定を行った。結果を表6に示す。
【0042】
【表6】
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明により、ダニや花粉等のアレルゲンを低減化させることができ、また塗料、コーティング剤、樹脂製品、壁紙、繊維にアレルゲンを低減化させる機能を付与するためのアレルゲン低減化組成物、およびアレルゲンを低減化できる塗料、コーティング剤、樹脂製品、壁紙、繊維等の加工品を提供することができる。