(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111013
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】回路遮断器の消弧室ユニット
(51)【国際特許分類】
H01H 9/36 20060101AFI20240808BHJP
H01H 73/18 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
H01H9/36
H01H73/18 B
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024093956
(22)【出願日】2024-06-10
(62)【分割の表示】P 2020209548の分割
【原出願日】2020-12-17
(71)【出願人】
【識別番号】000124591
【氏名又は名称】河村電器産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】清水 啓太
(57)【要約】
【課題】 消弧板を変形させること無く、グリッドを確実に消弧板に保持させることができる。
【解決手段】 グリッド2は消弧板3に係止する係止片21を左右に備え、係止片21は基部に対して先端が拡幅されて途中に消弧板3に係止する段部4を備え、消弧板3には、係止片21を挿入する挿入孔31aが設けられている。挿入孔31aは貫通孔5と貫通孔5に隣接して形成された舌片6とで構成され、舌片6が弾性変形することで貫通孔5が拡張されるよう構成されている。係止片21の先端部の幅W2より、貫通孔5の幅W1は狭く且つ挿入孔31aの幅D1は広く形成され、係止片21の基部の幅W1は開口部の幅D2より僅かに小さく形成されている。舌片6が弾性変形することで、係止片21を挿入孔31aに挿入でき、係止片21の挿入が完了すると舌片6が弾性復帰して、段部4が消弧板3へ係止する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下に重ねるように板状の複数のグリッドを配置し、左右に配置した消弧板で前記グリッドを保持した回路遮断器の消弧室ユニットにおいて、
前記グリッドは、前記消弧板に係止する係止片を左右に突設して成り、
前記係止片は、基部に対して先端が拡幅されて途中に前記消弧板に係止する段部を備えて成る一方、
前記消弧板には、前記係止片を挿入して前記グリッドを保持するための挿入孔が設けられて成り、
前記挿入孔が、貫通孔と当該貫通孔に隣接して形成された舌片とから成り、前記舌片が弾性変形することで前記貫通孔が拡張されるよう構成され、
前記係止片の基部の幅は前記貫通孔と同一或いは僅かに小さく形成されて成ることを特徴とする回路遮断器の消弧室ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮断時に接点間で発生するアークを消弧する回路遮断器の消弧室ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
直流遮断器等の回路遮断器には、電路遮断時に発生するアークを消弧するために消弧室が設けられ、その中に接点が配置されている。
消弧室は、消弧板に囲まれた内側に複数のグリッドを配置して構成されている。例えば特許文献1では、左右に消弧板を対向して配置し、その間に複数の板状のグリッドを上下に重なるように配置している。また、グリッドの左右を消弧板に保持させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
グリッドは、特許文献1に開示されているように、左右端部に設けた係止片を消弧板の孔に挿入して係止することで一体化されている。この従来の係止構造としては、グリッドの係止片を消弧板の孔に挿入した後、かしめ等変形させることで確実な係止を実施して保持させていた。
しかしながら、グリッドが金属製であるのに対して消弧板は樹脂製であるため、グリッドのカシメ作用で消弧板が変形し易く、強いカシメを施すことができず、係止作用が弱い場合があった。この場合、遮断時に発生したアークガスの圧力でグリッドと消弧板の連結が外れる場合があった。
【0005】
そこで、本発明はこのような問題点に鑑み、消弧板を変形させること無く、グリッドを確実に消弧板に保持させることができる回路遮断器の消弧室ユニットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する為に、請求項1の発明は、上下に重ねるように板状の複数のグリッドを配置し、左右に配置した消弧板でグリッドを保持した回路遮断器の消弧室ユニットにおいて、グリッドは、消弧板に係止する係止片を左右に突設して成り、係止片は、基部に対して先端が拡幅されて途中に消弧板に係止する段部を備えて成る一方、消弧板には、係止片を挿入してグリッドを保持するための挿入孔が設けられて成り、挿入孔が、貫通孔と当該貫通孔に隣接して形成された舌片とから成り、舌片が弾性変形することで貫通孔が拡張されるよう構成され、係止片の基部の幅は貫通孔と同一或いは僅かに小さく形成されて成ることを特徴とする。
この構成によれば、挿入孔に挿入した係止片は、挿入時に変形した舌片が弾性復帰することで段部が消弧板に係止する。よって、抜けることなくグリッドは消弧板に保持される。そのため、係止片のかしめ等を行う必要が無く、消弧板が変形することが無い。
【0007】
尚、上記構成において、消弧板は、挿入孔を設けた左右の側面部に加えて、側面部同士を連結する背面部を有し、消弧板全体はコ字状に形成されて回路遮断器の接点が挿入される前方に向けて開放形成されて成る構成を採用することも考えられる。
この構成を採用することにより、側面部同士が背面部を介して連結されているため、扱いやすくグリッドを取り付け易い。また、消弧板により消弧室の3方が閉塞されるため、アークの広がりを防止できる。
【0008】
また上記構成において、係止片の段部は、回路遮断器の接点が挿入される前方或いは逆の後方に向けて突出した突出部を係止片の先端部に設けることで形成され、舌片は、係止片の突出部の無い側に配置されて成る構成を採用することも考えられる。
この構成を採用することにより、挿入孔に挿入した係止片は、弾性復帰した舌片の作用で確実に段部が消弧板の堅牢な部位に係止する。よって、係止状態が外れることがない。
【0009】
また上記構成において、グリッドの係止片の立ち上がり部の両端に、グリッドの内部方向に切り欠いた凹み部を備えて成る構成を採用することも考えられる。
この構成を採用することにより、グリッドの係止片の立ち上がり部に凹み部が設けられるため、グリッドの作製過程で係止片の立ち上がり部にバリが発生しても、凹み部を有するため、立ち上がり部が拡幅されるのを防止でき、係止片と消弧板との良好な係止作用を維持できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、挿入孔に挿入した係止片は、挿入時に変形した舌片が弾性復帰することで段部が消弧板に係止する。よって、抜けることなくグリッドは消弧板に保持される。そのため、係止片のかしめ等を行う必要が無く、消弧板が変形することが無い。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る回路遮断器の消弧室ユニットの一例を示す斜視図である。
【
図6】グリッドを消弧板に保持させる途中の状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を具体化した実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明に係る回路遮断器の消弧室ユニットの一例を示す斜視図であり、消弧室ユニット1は、上下方向に重ねるように配置された複数のグリッド2と、このグリッド2を保持して固定する消弧板3とで構成されている。
【0013】
図2はグリッド2の斜視図である。グリッド2は金属製の板体を打ち抜いて形成され、
図2に示すように、左右側部に消弧板3に連結するための係止片21が突設されている。係止片21は前後に設けられ、計4ヶ所に設けられている。また、グリッド2の前側は、図示しない回路遮断器の接点を収容するために大きく切り欠かれた接点配置部22が形成され、全体は略U字状を成している。
係止片21の先端部は、前方に折り曲げるように突出させた爪部21aを有し、L字状に形成されている。この爪部21aにより形成された段部4が消弧板3に係止して、抜け止め作用を奏する。また、係止片21の立ち上がり部には、グリッド2の内部方向に向けて切り欠いた凹み部23が前側、後側の双方に設けられている。
【0014】
消弧板3は、ガラス繊維が含有された絶縁性及び耐アーク性に優れた合成樹脂製であり、グリッド2の左右に配置される側面部31と、側面部同士を連結する背面部32とを有している。消弧板3は、1枚の板を打ち抜いて形成され、コ字状に折り曲げて形成されている。
側面部31には、グリッド2の係止片21を挿入してグリッド2を保持するための挿入孔31aが複数穿設されている。背面部32には、接点遮断時に発生するアークガスを逃がすための孔32aが複数穿設されている。
尚、図示しない回路遮断器の接点は、開放された前方(
図1に示す左側)から挿入され、上下方向に開閉動作する。
【0015】
以下、係止片21と挿入孔31aの関係を
図3~
図5を参照して説明する。
図3は
図1のA部拡大図である。但し、グリッド2を2点鎖線で示している。また、
図4は消弧ユニット1の側面図、
図5は
図4のB-B線断面図である。
挿入孔31aは、2種類の部位から成り、貫通孔5と舌片6とで構成されている。全体は前後方向に長く形成され、高さはグリッド2の厚みより僅かに高く形成されている。
貫通孔5は、挿入孔31aの前側、即ち接点挿入側に配置され、舌片6は後側に配置されている。そして
図5に示すように、貫通孔5の幅D2は係止片21の立ち上がり部の幅W1より僅かに広く形成されている。また、舌片21aを含む全体の挿入孔31aの幅D1は、係止片21の先端部の幅W2より十分広く形成されている。具体的には、舌片6を弾性変形させることで、係止片21の拡幅された先端部を挿通できるよう形成されている。
【0016】
図6は、グリッド2を消弧板3に保持させる途中の状態を示す説明図である。
図6に示すように、舌片6を変形させて係止片21は挿入される。挿入は重ねて配置される全てのグリッド2に対して一斉に行われ、片側ずつ挿入操作される。挿入が完了すると、変形した舌片6が弾性復帰して
図5の状態となる。こうして、挿入が完了すると係止片21の前後移動が阻止される。同時に、係止片21の段部4が消弧板1の挿入孔31aの端部に係止する。
この結果、挿入孔31aへの挿入が完了した係止片21は、段部4が消弧板3に係止し、グリッド2の抜けを阻止し、グリッド2は係止板3に保持される。
【0017】
このように、挿入孔31aに挿入した係止片21は、挿入時に変形した舌片6が弾性復帰することで段部4が消弧板3に係止する。よって、抜けることなくグリッド2は消弧板に保持される。特に、挿入孔31aに挿入した係止片21は、弾性復帰した舌片6の作用で段部4が消弧板3の堅牢な部位に確実に係止するため、係止状態が外れることがない。よって、係止片21のかしめ等を行う必要が無く、消弧板3が変形することが無い。
また、側面部31同士が背面部32を介して連結されているため、消弧板3は扱いやすく、グリッド2を取り付け易い。また、消弧板3により消弧室の3方が閉塞されるため、アークの広がりを防止できる。
更に、グリッド2の係止片21の立ち上がり部に凹み部23が設けられるため、グリッド2の作製過程で係止片の立ち上がり部にバリが発生しても、凹み部23を有するため、立ち上がり部が拡幅されるのを防止でき、係止片21と消弧板3との良好な係止作用を維持できる。
【0018】
尚、上記実施形態は、消弧板3をコ字状に折り曲げ形成して左右の側面部31を背面部32を介して連結しているが、背面部32を設けずに左右2部材に分離しても良い。
また、グリッド2の係止片21に設けた爪片21aを前方に突出させているが、後方に向けて突出させても良く、その場合は貫通孔5と舌片6の配置を、逆にして舌片6を前側に配置して貫通孔5を後方に配置することで、爪片21aを消弧板3に堅牢に係止させることできる。更に、爪片21aを一方のみに設けているが、係止片21の両端に設けて貫通孔5の端部に加えて舌片6側にも段部を設けても良い。
【符号の説明】
【0019】
1・・消弧室ユニット、2・・グリッド、3・・消弧板、4・・凹み部、5・・貫通孔、6・・舌片、21・・係止片、21a・・爪片、22・・接点配置部、23・・凹み部、31・・側面板、31a・・挿入孔、32・・背面板。