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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111028
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】医療用管状デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61L 29/04 20060101AFI20240808BHJP
   A61L 29/08 20060101ALI20240808BHJP
   A61L 29/12 20060101ALI20240808BHJP
   A61L 29/14 20060101ALI20240808BHJP
   A61L 29/16 20060101ALI20240808BHJP
   A61L 31/04 20060101ALI20240808BHJP
   A61L 31/10 20060101ALI20240808BHJP
   A61L 31/12 20060101ALI20240808BHJP
   A61L 31/14 20060101ALI20240808BHJP
   A61L 31/16 20060101ALI20240808BHJP
   A61L 33/04 20060101ALI20240808BHJP
   A61L 33/10 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
A61L29/04
A61L29/08 100
A61L29/12 100
A61L29/14 300
A61L29/16
A61L31/04
A61L31/10
A61L31/12 100
A61L31/14 300
A61L31/16
A61L33/04
A61L33/10
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024095557
(22)【出願日】2024-06-13
(62)【分割の表示】P 2021537494の分割
【原出願日】2019-09-06
(31)【優先権主張番号】PA201870574
(32)【優先日】2018-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(71)【出願人】
【識別番号】521098294
【氏名又は名称】バイオモディクス アーペーエス
【氏名又は名称原語表記】BIOMODICS APS
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】アルム、マーティン
(72)【発明者】
【氏名】トムセン、ピーター テイラード
(57)【要約】
【課題】血液、尿、唾液又はそれらの一部などの体液と接触させて使用するのに非常に適した新しい医療用管状デバイスを提供する。
【解決手段】医療用管状デバイスは、例えばインプラントとして使用するための、高い生体適合性を有する。医療用管状デバイスは、医療用管状デバイスの第1の端部から第2の端部まで延在し、管腔表面及び外表面を有する本体構造を有し得、ここで、本体構造は、ホストポリマーマトリックスと、ホストポリマーマトリックスに相互浸透しているゲストポリマーの少なくとも1つのヒドロゲルゲストポリマードメインとを含む相互貫入ポリマーネットワーク(IPN)を含む。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用管状デバイスであって、前記医療用管状デバイスの第1の端部から第2の端部まで延びる本体構造を含み、前記本体構造は、管腔表面と外表面とを有し、前記本体構造は、ホストポリマーのマトリックスと、少なくとも1つのヒドロゲルゲストポリマードメインとを含む相互貫入ポリマーネットワーク(IPN)を含み、前記IPNにおいて、前記ヒドロゲルゲストポリマードメインは、前記ホストポリマーのマトリックスに相互貫入しているヒドロゲルゲストポリマーの複数の相互に結合された経路を含み、前記ホストポリマーは共有結合で架橋された架橋エラストマーを含み、前記少なくとも1つのヒドロゲルゲストポリマードメインは、前記管腔表面の少なくとも一部を含む管腔表面ヒドロゲルゲストポリマードメインを含み、前記ヒドロゲルゲストポリマーの複数の前記経路が合わさって前記管腔表面の少なくとも一部を形成しており、前記管腔表面は双性イオン部分を含み、前記双性イオン部分は前記ヒドロゲルゲストポリマーに共有結合しており、前記ヒドロゲルゲストポリマーは、前記双性イオン部分を形成している双性イオン性モノマーと、1種以上のメタクリラートモノマーとを含む重合モノマーの架橋ネットワークを含み、前記双性イオン性モノマーは、
CK1572:1-エテニル-3-(3-スルホナトプロピル)-1H-イミダゾール-3-イウム、
CK1573:1-エテニル-3-(4-スルホナトブチル)-1H-イミダゾール-3-イウム、
CK1578:1-メチル-4-(2-メチルプロプ-2-エノイル)-1-(4-スルホナトプロピル)ピペラジン-1-イウム、
CK1582:3-[ジメチル(2-{2-[(2-メチルプロプ-2-エノイル)オキシ]エトキシ}エチル)アザニウミル]プロパン-1-スルホナート、
CK1583:4-[ジメチル({2-[(2-メチルプロプ-2-エノイル)オキシ]エチル})アザニウミル]ブタン-1-スルホナート、
CK1585:1-(カルボキシラトメチル)-1-メチル-4-(2-メチルプロプ-2-エノイル)ピペラジン-1-イウム、
CK1586:1-メチル-4-(2-メチルプロプ-2-エノイル)-1-(4-スルホナトブチル)ピペラジン-1-イウム、
CK1587:3-(カルボキシラトメチル)-1-エテニル-1H-イミダゾール-3-イウム、
CK1599:N-(3-スルホプロピル)-N-メタクリロイルアミドプロピル-N,N-ジメチルアンモニウムベタイン、及び
CK3637:[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]-ジメチル-(3-スルホプロピル)-アンモニウム水酸化物
のうちから選択されたものである、管状デバイス。
【請求項2】
前記外表面は、前記ヒドロゲルゲストポリマーの表面を少なくとも部分的に含み、前記ヒドロゲルゲストポリマーの複数の前記経路が合わさって前記外表面の少なくとも一部を形成しており、前記外表面は双性イオン部分を含み、前記双性イオン部分は、好ましくは前記ヒドロゲルゲストポリマーに共有結合している、請求項1に記載の管状デバイス。
【請求項3】
前記管腔表面は、血栓症不活化薬を含む少なくとも1つの共有結合された薬物を含み、前記血栓症不活化薬は、好ましくは、ヘパリン、EDTA、抗生物質、クエン酸塩、及び/又は上記の血栓症不活化薬の1つを含む任意の組合せを含む、請求項1又は2に記載の管状デバイス。
【請求項4】
前記本体構造は、少なくとも前記管腔表面を介して放出可能なパクリタキセル(タキソール)及び/又はラパマイシンなどの抗増殖薬、及び少なくとも前記外表面を介して放出可能なリファンピシン及び/又はミノサイクリンなどの抗感染薬から選択される放出可能な薬物を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の管状デバイス。
【請求項5】
前記ホストポリマーは、熱可塑性エラストマー(TPE)、ポリオレフィンエラストマー(POE)、ポリウレタン(PU)、ゴム、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、シリコーンエラストマー、又は前述のエラストマーの1つを含む任意の組み合わせから選択され、好ましくは、前記ホストポリマーはシリコーンエラストマー(ポリシロキサン)を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の管状デバイス。
【請求項6】
前記ホストポリマーは、約15~約70のショアA硬度、少なくとも約25kN/mの引裂強度、及び200%の伸び時に、少なくとも約0.3MPA、例えば少なくとも約0.4MPA、例えば少なくとも約0.5MPa、例えば少なくとも約0.6MPa、例えば最大約3MPa、例えば最大約2MPa、例えば最大約1MPaの応力を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の管状デバイス。
【請求項7】
前記ヒドロゲルゲストポリマーは、少なくとも1つのスルホベタイン双性イオンを含むモノマーと、少なくともPHEMAとから重合されたものである、請求項1~6のいずれか一項に記載の管状デバイス。
【請求項8】
前記ヒドロゲルゲストポリマーは、スピロピランモノマーなどの光活性モノマーを含むモノマーから重合されたコポリマーを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の管状デバイス。
【請求項9】
前記少なくとも1つのヒドロゲルゲストポリマードメインは、前記本体構造の前記外表面に位置し、かつ/又は、前記管腔表面も前記外表面も含まない中間ヒドロゲルゲストポリマードメインに位置する血餅促進ドメイン及び/又は細胞増殖促進ドメインを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の管状デバイス。
【請求項10】
前記ホストポリマーは2つ以上のヒドロゲルゲストポリマードメインを含み、前記2つ以上のヒドロゲルゲストポリマードメインは、前記管腔表面の少なくとも一部を含む管腔表面ヒドロゲルゲストポリマードメイン及び前記外表面の少なくとも一部を含む外表面ヒドロゲルゲストポリマードメインを含み、前記2つ以上のヒドロゲルゲストポリマードメインは、ゲストポリマーを本質的に含まないポリマー部分によって分離され、前記ポリマー部分は、好ましくは、相互貫入ゲストポリマーを本質的に含まない前記ホストポリマーのマトリックスの一部である、請求項1~9のいずれか一項に記載の管状デバイス。
【請求項11】
前記本体構造は、2つ以上の層を含む層状本体構造であり、前記層の少なくとも1つは、IPNを含むか又はIPNからなり、前記本体構造の少なくとも1つの層は、IPNを含まないポリマー層、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、発泡PTFE(例えば、ゴアテックス(Goretex)(登録商標))、ポリエチレンテレフタラート(PET、例えばダクロン(登録商標))、ポリウレタン(PU)及び/又はシリコーンエラストマーを含むか又はそれからなるポリマー層であり、好ましくは、前記2つ以上の層のうちの少なくとも2つの層は、化学結合(グラフト化)によって互いに界面結合されており、かつ/又は、前記2つ以上の層のうちの少なくとも2つの層は互いに固定されており、前記少なくとも2つの層の前記固定は、好ましくは、局所的な接着結合、縫合糸、ステープル、クリップ、及び/又はピンホールを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の管状デバイス。
【請求項12】
前記管状デバイスは、前記本体構造と同心円状に配置された管状支持構造を含み、前記支持構造はらせん状ワイヤを含み、かつ/又は、前記本体構造の前記外表面にぴったり合う形状のカフを含み、前記支持構造は、ポリマー材料のものであり、前記ポリマー材料は、コラーゲン、ダクロン(登録商標)、ナイロン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、発泡PTFE(例えば、ゴアテックス(Goretex)(登録商標))、ポリエチレンテレフタラート(PET、例えばダクロン(登録商標))、ポリウレタン(PU)及び/又はシリコーンエラストマーを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の管状デバイス。
【請求項13】
前記カフは、成長ホルモン、抗線維素溶解薬、血餅促進薬、及び/又は細胞増殖促進薬などの1つ以上の薬物が充填されたIPN材料を含む、請求項12に記載の管状デバイス。
【請求項14】
前記本体構造は、約2mm~約6cmの内径、約1~約10の弾性コンプライアンス(80~200mmHgの範囲内のmmHg×10-2あたりの内径変化の%)、及び約1cmまでの、例えば約0.1mm~約3mm、例えば約0.5mm~約1mmの壁厚を有する、請求項1~13のいずれか一項に記載の管状デバイス。
【請求項15】
前記医療用管状デバイスは、透析グラフト、ステント、血管グラフト、ステントグラフト又はThoraflex(登録商標)ハイブリッドデバイスなどの植込み式管状デバイスである、請求項1~14のいずれか一項に記載の管状デバイス。
【請求項16】
前記医療用管状デバイスは透析チューブ、胃瘻チューブなどの栄養チューブ、中心静脈カテーテル(CVCライン)又は末梢挿入中心静脈カテーテル(PICCライン)などの静脈カテーテルである、請求項1~15のいずれか一項に記載の管状デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、医療用デバイス、特に医療用管状デバイス及びそのような医療用管状デバイスを製造するための方法に関する。より具体的には、本明細書に開示される医療用デバイスは、血液などの体液と接触させて使用するのに適している。医療用管状デバイスの例には、透析チューブ、外科用ドレーンチューブ及び/又はインプラント、例えば、血管グラフト、透析グラフト、中心静脈カテーテル、末梢に挿入される中心カテーテル、シャント、ステント又はステントグラフトなどを含むインプラントが含まれる。双性イオン性部分を含む防汚ポリマーもここに含まれる。
【背景技術】
【0002】
医療用管状デバイスは、人間及び動物の治療に不可欠なデバイスである。医療用管状デバイスは、一般に、エラストマーポリマーなどのポリマーでできている。何年にもわたって、生体適合性材料の多くの医療用管状デバイスが開発されてきた。特に、強度、柔軟性、抗菌性、非ファウリング性、及び/又は非血栓形成性の特性が重要である。
【0003】
特許文献1は、ノード及びフィブリル微細構造を有する拡張PTFEの血管グラフトを開示している。
特許文献2は、透析針又は縫合針などによってデバイスが穿刺されたときの流体損失の低減を提供する層状の人工植込み式デバイスを開示している。このデバイスは、多孔質材料であって、曲がったフィブリルによって相互に結合されたノードの微細構造を有し、隣接する曲がったフィブリルの間に空隙を有する多孔質材料の内層及び外層を含む。内層と外層は、外層の内面及び内層の外面に絡んで接着ポリマー混合層を形成することができるエラストマー接着剤によって結合されている。
【0004】
特許文献3は、血管インプラントの植え込み後の新生内膜過形成及び/又は血栓症の発生を低減又は予防するための方法を開示し、この方法は、血管インプラントをオールトランスレチノイン酸(ATRA)と接触させ、その血管インプラントを、それを必要とする患者に植え込むことを含む。ここで、血管インプラントは生体適合性ポリマーマトリックスを含み、血管インプラントは、患者に植え込まれたときに新生内膜過形成及び/又は血栓症を抑制又は予防するのに十分な治療有効量のATRAを放出する。
【0005】
特許文献4は、第1の微孔性生体材料で形成された血液接触層、非多孔質中間層、及び、植え込まれたときに宿主組織と接触するテクスチャ加工された微孔性表面を有する組織界面層を含む血管グラフトを開示している。
【0006】
特許文献5は、抗血栓性コーティングで覆われた脱細胞化組織である抗血栓性血管グラフトを開示している。
特許文献6は、抗菌性のオリゴマー又はポリマー添加剤を含む医療用デバイス用の抗菌性ポリマー組成物を開示している。添加剤には、ブルーム促進性、付着促進性、及び殺生物活性のあるモノマー及び/又は部分(moiety)が含まれる。添加剤は、非ファウリング及び/又は非血栓形成性のモノマー及び/又は部分をさらに含み得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第2006147665号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2006118236号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2010/036476号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2015/238306号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2016058913号明細書
【特許文献6】国際公開第17066242号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、血液、尿、唾液又はそれらの一部などの体液と接触させて使用するのに非常に適した新しい医療用管状デバイスを提供することである。
一実施形態では、使用中に比較的長期間高い開存性を維持することができ、閉塞のリスクが低い医療用管状デバイスを提供することが目的である。
【0009】
一実施形態では、望ましい高い縫合糸保持強度を有する医療用管状デバイスを提供することが目的である。
一実施形態では、植え込まれたときに新生内膜過形成及び/又は狭窄を誘発するリスクが低い、植込み式医療用管状デバイスを提供することが目的である。
【0010】
一実施形態では、比較的単純な方法で設計することができる医療用管状デバイスを提供することが目的である。
一実施形態では、血管グラフトとして非常に適しており、植え込まれると、比較的長期間高い開存性を有し、閉塞のリスクが低い医療用管状デバイスを提供することが目的である。
【0011】
一実施形態では、医療用管状デバイスを製造する方法を提供することが目的である。
これら及び他の目的は、特許請求の範囲で定義され、本明細書で以下に説明される本発明により、解決された。
【0012】
本発明及びその実施形態は、当業者には以下の説明から明らかになるであろういくつかの追加の利点を有することが見出された。
【課題を解決するための手段】
【0013】
医療用管状デバイスは、医療用管状デバイスの第1の端部から第2の端部まで延びる本体構造を含む。本体構造は、内表面である管腔表面と、管腔表面とは反対側の外表面とを有する。本体構造は、少なくとも1つの相互貫入ポリマーネットワーク(IPN)を含む。IPNは、ホストポリマーマトリックスと、ホストポリマーマトリックスに相互貫入しているゲストポリマーの少なくとも1つのヒドロゲルゲストポリマードメインとを含む。
【0014】
本発明の医療用管状デバイスは、以下でさらに説明するように、多くの異なる医療用途に非常に適していることが示されている。ヒドロゲルドメインは、組織との接触における高い適合性を確保し、さらに、医療用管状デバイスが比較的簡単な方法で様々な目的のために設計され得ることを確実にする。ホストポリマーは、医療用管状デバイスが確実に所望の機械的特性を有するようにする。例えば、ホストポリマーマトリックスは、非常に柔軟になるように選択することができる。好ましくは、ホストポリマーマトリックスはエラストマーであり、例えば、医療用管状デバイスが本来の血管の機械的特性を実質的に模倣するようなシリコーンエラストマーである。同時に、ホストポリマーは、医療用管状デバイスに高強度を、例えば、本来の血管に縫合するのに適した高い縫合糸保持強度を提供する。ホストポリマーの弾性特性はさらに、医療用管状デバイスの壁部分が針で貫通され得、その後、針が除去されると、弾性特性のために貫通穴が瞬時に閉じられる(自己回復)ことを確実にし得る。それにより、医療用管状デバイスは、透析グラフトとしての使用に非常に適したものとなり得る。
【0015】
「生体液」という用語は、本明細書では、尿、汗、唾液、母乳、血液、脳脊髄液、水疱液又は嚢胞液などの生物学的な流体を意味するために使用される。
「部分(moiety)」と「部分(moieties)」という用語は互換可能に使用される。
【0016】
「縫合糸保持力」という用語は、ISO7198:2016に従って決定されるべきである。
「実質的に」という用語は、本明細書では、通常の製品の差異及び許容誤差が含まれることを意味すると解釈されるべきである。
【0017】
「約」という用語は、大抵の場合、測定の不確かさの範囲内にあるものを含むように使用される。範囲に関して使用される場合、「約」という用語は、本明細書では、測定の不確かさの範囲内にあるものがその範囲に含まれることを意味すると解釈されるべきである。
【0018】
「モノマー」という用語は、本明細書では、単一の単位モノマー、及び、最大10個のモノマー単位を含むオリゴマーなどの、オリゴマーとも呼ばれる少数の単位モノマーを示すために使用される。一実施形態では、モノマーは、少なくとも1つの単一の単位モノマーであるか、又はそれを含む。
【0019】
一実施形態では、モノマーは、少なくとも1つのオリゴマーであるか、又はそれを含む。
「薬物」という用語は、単一の化学成分、又は2つ以上の成分の組成物又は混合物であり得る。
【0020】
本明細書で使用される場合、「含む」という用語は、オープンタームとして解釈されるべきである。すなわち、要素、ユニット、整数、ステップ、コンポーネント、及びそれらの組み合わせなどの、具体的に述べられた特徴の存在を特定するように解釈されるべきであり、ただし、1つ以上の他の記載された特徴の存在又は追加は排除されない。
【0021】
明細書又は特許請求の範囲全体を通して、文脈からの別段の指定又は要求がない限り、単数形は複数形を包含する。
「実施形態」は、言及された実施形態の特徴を含む本発明の例を含むと解釈されるべきである。
【0022】
範囲及び好ましい範囲を含む、本明細書に記載の本発明のすべての特徴及び本発明の実施形態は、そのような特徴を組み合わせない特定の理由がない限り、本発明の範囲内で様々な方法により組み合わせることができる。
【0023】
一実施形態では、医療用管状デバイスは、本体構造によって構成され得る。別の実施形態では、医療用管状デバイスは、支持要素、補強要素、及び/又は本明細書でさらに説明されるようなものなどの追加の要素を含み得る。
【0024】
本体構造は、有利には、好ましくは概して円形の、好ましくは円形の断面周縁部を有する、長尺の中空構造を有する。本体構造は、管腔面と外表面との間に壁を有する。本体構造は、直線状であるか、湾曲、又は分岐しており、任意選択で、その長さに沿って内径、外径、及び/又は厚さを変えることができる。一実施形態では、本体構造は、ねじられるなどして曲がりくねったものである。
【0025】
本体構造は二股に分かれていてもよい。これは先細になっていても先細になっていなくても(均一でも)よい。
有利には、本体構造は、ホストポリマーの連続マトリックスを含み、少なくとも1つのヒドロゲルポリマードメインは、ゲストポリマーの複数の相互に結合された経路を含む。少なくとも1つのヒドロゲルポリマードメインは、好ましくは、管腔表面の少なくとも一部を含む管腔表面ゲストポリマードメイン、外表面の少なくとも一部を含む外表面ゲストポリマードメイン、及び/又は、管腔表面も外表面も含まない中間ゲストポリマードメインを含む。
【0026】
ヒドロゲルゲストポリマーは、「ゲストポリマー」とも呼ばれる。ヒドロゲルゲストポリマーは、とりわけ、本体構造の、したがって医療用管状デバイスの高い柔軟性及び高い生体適合性を確保するのに役立つ。
【0027】
本体構造壁の少なくとも一部はIPNのものである。一実施形態では、本体構造壁の実質的に全体がIPNのものである。一実施形態では、本体構造壁は2つ以上の層を含む層状構造を有し、層の少なくとも1つは、IPNのものであるか、又はIPNを含む。
【0028】
ホストポリマーマトリックスは、本体構造が、柔軟性及び/又は引き裂き強度などの強度といった所望の機械的特性を確実に有するように選択することができる。有利には、ホストポリマーは、熱可塑性エラストマー(TPE)、ポリオレフィンエラストマー(POE)、ポリウレタン(PU)、ゴム、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、シリコーンエラストマー、又は前述のエラストマーの1つを含む任意の組み合わせなどの架橋エラストマーを含む。
【0029】
ホストポリマーが架橋エラストマーである医療用管状デバイスは、特定の望ましい高い縫合糸保持強度を有することが見出された。さらに、架橋エラストマーホストポリマーを備えた医療用管状デバイスは、望ましい低リークを有し、又は繰り返し穿刺後のリークのリスクが低いことが示され、透析グラフトとしての使用に非常に適している。
【0030】
一実施形態では、ホストポリマーは、例えば、熱可塑性エラストマー(TPE)、ポリオレフィンエラストマー(POE)、ポリウレタン(PU)、ポリエーテルブロックアミド(PEBAX)、ゴム、例えばラテックスゴム、シリコーン、又はそれらの任意の組み合わせなどの架橋エラストマーといった架橋ポリマーである。
【0031】
一実施形態では、ホストポリマーは物理的に架橋されており、ホストポリマーは好ましくは物理的に架橋されたTPEである。物理的に架橋されたTPEは、物理的に架橋された安定化ドメインであって、可逆的であり、例えば、熱又はイオン交換によって再形成することができる安定化ドメインを含む。安定化ドメインは、非晶性でも結晶性でもよい。
【0032】
一実施形態では、ホストポリマーはイオン結合によって架橋されている。
一実施形態では、ホストポリマーは化学的に架橋されており、ホストポリマーは好ましくは共有結合で架橋されている。共有結合で架橋されたホストポリマーは、高強度が求められる場合に特に望ましい。
【0033】
一実施形態では、ゴムは、天然ゴムであるか、イソプレンの加硫ポリマーなどの合成ゴムであり、ゴムは、好ましくは、シリコーンゴム又は架橋ポリウレタンである。
適切なTPUには、例えば、Carbothane(登録商標)、Isoplast(登録商標)、Pellethane(登録商標)、Tecoflex(商標)、Tecophillic(商標)、及びTecothane(商標)の商品名でルブリゾル(Lubrizol)によって販売されているTPUが含まれる。
【0034】
TPUは、ハードセグメント及びソフトセグメントで構成される線形セグメントブロックコポリマーである。ハードセグメントは、芳香族又は脂肪族のいずれかとすることができる。芳香族TPUは、MDIなどのイソシアネートをベースとしてもよく、脂肪族TPUは、H12 MDIなどのイソシアネートをベースとしてもよい。これらのイソシアネートを短鎖ジオールと組み合わせると、ハードブロックになる。これは通常は芳香族であるが、日光にさらされたときの色と透明度の保持が優先される場合は、脂肪族ハードセグメントが使用されることが多い。
【0035】
TPUは処理が比較的簡単で、大量のゲストポリマーを含むことができる。さらに、TPUは伸縮性が高く、高い弾力性を有する。TPUは、有利にはポリエーテル又はポリエステルタイプであり得るソフトセグメントを含む。TPUは好ましくはポリエーテルベースである。
【0036】
好ましい実施形態では、ホストポリマーはシリコーンを含む。
一実施形態では、ホストポリマーは、Si及びO原子からなるか又はSi原子からなる骨格を有するホストポリマーを、質量で少なくとも10%、例えば少なくとも20%、例えば少なくとも40%、例えば少なくとも60%含み、ホストポリマーは、好ましくは、ポリ(ジメチルシロキサン)、ポリ(メチルフェニルシロキサン)、フルオロシリコーンゴム、シリコーンエステル、ポリシロキサン、ポリシラン、ポリクロロシラン、ポリアルコキシシラン、ポリアミノシラン、ポリシラン、ポリジアルキルシロキサン、少なくとも1つのフェニル置換基を含むポリシロキサン、ビニル官能化シリコーン、部分的又は完全にフッ素化されたシリコーン、又は上述したシリコーンのうち2つ以上の混合物を含む。
【0037】
ゲストポリマーは、1つ以上の官能基部分を含み得る。
ホストポリマーの機械的特性は、特に本体構造がIPNからなるか、又は主にIPNからなる場合に重要となり得る。その理由は、ヒドロゲルゲストポリマーは機械的強度が低い場合があり、医療用管状デバイスの強度を実質的に増加させないためである。高い弾性コンプライアンス、つまり低い弾性率が、医療用管状デバイスの高い開存性を確保することが見出された。ただし、一部の用途では、弾性率が低すぎると、医療用管状デバイス内の圧力が特定の閾値を超えて増加した場合に、本体構造が望ましくない直径まで拡張する可能性がある。弾性率が低すぎると、引き裂き強度が比較的低くなる可能性があり、用途によっては望ましくない場合がある。さらに、医療用管状デバイスが縫合用に適合されている用途では、縫合により針貫通チャネルが形成される可能性があり、これは、高弾性率の場合は直ちに閉じるが、医療用管状デバイスを引き込むような変形があると、再び開くことがあり、場合によっては望ましくない出血を引き起こす可能性がある。
【0038】
これらの好ましい特性の1つ以上を満たすために、ホストポリマーは、200%の伸び時に、少なくとも約0.3MPA、例えば少なくとも約0.4MPA、例えば少なくとも約0.5MPa、例えば少なくとも約0.6MPa、例えば最大約3MPa、例えば最大約2MPa、例えば最大約1MPaの応力を有することが有利であることが見出された。
【0039】
有利には、ホストポリマーは、約15~約70、例えば約20~約55、例えば約25~約50のショアA硬度を有する。大抵の場合、より柔らかいエラストマー材料は、より柔らかさが低いエラストマー材料よりも低い弾性率を有する。
【0040】
有利には、ホストポリマーは、少なくとも約8MPa、例えば少なくとも約10MPa、例えば少なくとも約11MPa又はそれ以上、例えば15MPa以上の引張強度を有する。
【0041】
さらに、ホストポリマーは、少なくとも約25kN/m、例えば少なくとも約30kN/m、例えば少なくとも約35kN/m、例えば少なくとも約40kN/mの引裂強度を有することが望ましい。
【0042】
適切なホストポリマーの例には、Nusil(登録商標)Avantor(登録商標)高濃度シリコーン材料が含まれる。一実施形態では、ホストポリマーは、ホストポリマーを溶解せずに膨潤させる有機溶媒及び/又はCO(高密度又は超臨界)によって抽出され得る余剰の残留物を用いて調製される。
【0043】
IPNを提供する方法の例は、例えば、次の出版物に記載されているものである:
Antimicrob.Agents Chemother 2017,61(7),e00604-17 DOI:10.1128/AAC.00604-17.Plasmid 2016,87-88,72,DOI:10.1016/j.plasmid.2016.10.001.J.Control.Release 2016,241,125-134 DOI:10.1016/j.jconrel.2016.09.018.J. Mat.Chem.Phys.2016,181,495-500 DOI:10.1016/j.matchemphys.2016.06.086.J.Indus.Eng.Chem.2016,33,142-149 DOI:10.1016/j.jiec.2015.09.026.Biomacromolecules.2016,17(4),1321-1329 DOI:10.1021/acs.biomac.5b01722.J.Biomed.Mater.Res.Part B Appl.Biomater.2016,104(2),402-410 DOI:10.1002/jbm.b.33371.Eur.J.Pharm.Biopharm.2015,94,305-311 DOI:10.1016/j.ejpb.2015.05.014.Martin Alm,Peter Thomsen.A delivery device.Patent,PA 2015/70520.Martin Alm,Soren Langer Steffensen.A method of producing a
delivery device.Patent,国際公開第2013/075724号.Martin Alm,Maike Benter,Anne Marie Jensen.A method of producing an article comprising an interpenetrating polymer network(IPN)and an article comprising an IPN.Patent,国際公開第2008/052568号.Martin Alm,Maike Benter,Anne Marie Jensen.A method of producing an article comprising an interpenetrating polymer network(IPN)and an article comprising an IPN.Patent,国際公開第2008/052563号.Maike Benter,Martin Alm.A method of coating a polymer surface with a polymer containing coating and an item comprising a polymer coated polymer.Patent,国際公開第2006/074666号.Joachim Karthauser,Maike Benter,and Martin Alm.A method of producing a silicone elastomer rubber item
and the product obtainable by the method.Patent,国際公開第2006/045320号。
【0044】
ヒドロゲルゲストポリマーは、例えば、部分的又は完全に膨潤したヒドロゲル、エアロゲル又はキセロゲルとしての、膨潤した形態又は乾燥した形態であり得る。ヒドロゲルを使用前に、例えば水や食塩水などの水性媒体中で、少なくとも部分的に膨潤させることが望ましい場合がある。ヒドロゲルポリマーの量は、特に明記しない限り、通常は乾燥形態として記載されている。
【0045】
本体構造は、ホストポリマーの連続マトリックス及びゲストポリマーの複数の相互に結合された経路を含み得る。有利には、ゲストポリマーのドメインは、ヒドロゲルゲストポリマーの連続的な相互貫入経路を形成する。それにより、ヒドロゲルの相互貫入経路は、所望の成分及び/又は分子のための通路、及び/又は、例えばヒドロゲルに充填されるか、他の態様でヒドロゲルゲストポリマーと接触するように堆積された所望の薬物を送達するための通路を提供し得る。一実施形態では、薬物は、例えばホストポリマーの押出し中に、ホストポリマーの中に入れられて成形される。それにより、埋め込まれた薬物は、ゲストポリマーの相互に結合された経路を介して放出され得る。
【0046】
有利には、管腔表面は、ゲストポリマーの表面を少なくとも部分的に含む。すなわち、少なくとも1つのゲストポリマードメインは、管腔表面の少なくとも一部を含む。管腔表面のゲストポリマーは、相互貫入経路の出口点のゲストポリマーであり得、及び/又はそれは、ゲストポリマーを含むコーティングを含み得る。
【0047】
ゲストポリマーの表面コーティングは、ホストポリマーの経路内でヒドロゲルゲストポリマーと接触又は連結している場合、少なくとも1つのゲストポリマードメインの一部を形成すると見なされる。ゲストポリマーは比較的低い機械的強度を有する場合があり、さらに層は、表面(の内部から又は)を横切って重合している伝播したポリマー鎖から生じたものである場合があるため、表面コーティングは通常、非常に薄い。適切な表面コーティングは、例えば、10μm未満、例えば約1μm以下、例えば約100nm以下、例えば約50nm以下、例えば約10nm以下、例えば1~2nmの薄さであり得る。
【0048】
ゲストポリマーを備える管腔表面は、例えば、医療用管状デバイスが、血管グラフト、透析グラフト、又は哺乳動物体内の他のグラフトとして適用/利用される場合、哺乳動物の体内での又は体と接触させての使用に非常に適合性があることが見出された。医療用管状デバイスは、同様の用途のための従来技術のチューブと比較して、感染のリスクを非常に低くできることが見出された。さらに、従来技術と比較して、この新しい医療用管状デバイスの閉塞及び低い開存性のリスクは非常に低い。一実施形態では、ゲストポリマーの複数の経路が合わさって管腔表面の少なくとも一部を形成する。
【0049】
一実施形態では、ゲストポリマーが複数の経路から延在して、管腔表面の少なくとも一部を提供する。
一実施形態では、管腔表面は、ゲストポリマー、すなわち相互貫入ゲストポリマーと同じヒドロゲルポリマーを含むか又はそれからなる層などのヒドロゲルポリマーの層を含む。
【0050】
一実施形態では、管腔表面は、別のヒドロゲルポリマー又は非ヒドロゲルなどの、ゲストポリマーとは異なるポリマーの層を含む。一実施形態では、ゲストポリマーは、管腔表面及び/又は外表面に、ゲストポリマーの部分的又は完全に絡み合った繊毛形状及び/又はブリッジ形状の繊維などの繊毛形状の構造(例えば、ブラシ及び/又は微視的な毛様構造)を形成し得る。
【0051】
そのような繊毛形状の構造及び/又はブリッジ形状の構造は、例えば、表面(管腔表面及び/又は外表面)にゲストポリマードメインを有するIPNを、例えば、温度及び/又は湿潤性(乾燥/濡れた状態/湿った状態、低温/高温)が5回以上などの複数回切り替わる条件にさらすことにより形成され得る。
【0052】
一実施形態では、外表面は、例えばコーティングによって提供されたゲストポリマーの表面を少なくとも部分的に含み、ゲストポリマーの経路は合わさって外表面の少なくとも一部を形成し、及び/又はゲストポリマーは複数の経路から延在して外表面の少なくとも一部を提供する。
【0053】
一実施形態では、管腔表面は、別のヒドロゲルポリマー又は非ヒドロゲルなどの、ゲストポリマーとは異なるポリマーの層を含む。
ゲストポリマーがホストポリマーの外側の表面又は他の任意の場所に位置することが開示される場合、ホストポリマーの外側のゲストポリマーは、それがホストポリマーに埋め込まれて内部にあるゲストポリマーに接触及び/又は結合していることを示すために「ゲスト」と表されることを理解されたい。
【0054】
その変形例において、又は追加で、医療用管状デバイスは、ホストポリマーに埋め込まれて内部にあるヒドロゲルゲストポリマーに接触又は結合していなくてもよいヒドロゲルポリマーコーティングを含み得る。そのようなヒドロゲルポリマーコーティングは、それがホストポリマーに埋め込まれて内部にあるヒドロゲルゲストポリマーに接触又は結合していないという違いを除いて、本明細書に記載のヒドロゲルゲストポリマーと同様であり得る。
【0055】
「ヒドロゲルポリマー」という用語は、それ自体、一実施形態では、ヒドロゲルゲストポリマーを意味すると解釈され得る(すなわち、相互貫入ゲストポリマーと接触している)。「ヒドロゲルポリマー」という用語は、それ自体、別の実施形態では、相互貫入ゲストポリマーと接触していないヒドロゲルポリマーを意味すると解釈され得る。
【0056】
外表面は、有利には、上記の管腔表面について記載された通りであり得る。
一実施形態では、外表面は、ゲストポリマーを含むか又はそれからなる層などの、ゲストポリマーと類似した又は異なるポリマーの層を含む。外表面がヒドロゲルポリマーの層を含む場合、医療用管状デバイスは、哺乳動物組織とさらに適合性を高めることができ、したがって哺乳動物組織と接触させての使用に非常に適したものにできる。以下でさらに説明するように、ヒドロゲルポリマーは、生体適合性をさらに高めることができる官能基部分を含み得る。
【0057】
管腔表面及び/又は外表面におけるヒドロゲルゲストポリマードメインの親水性の特性は、通常の免疫応答を維持しつつ、タンパク質及び細菌の付着を減少させる滑りやすい表面を提供すると考えられる。管腔表面及び/又は外表面は、本来の血管のそれを模倣し/それに類似しており、したがって、好ましくはそれが補体系を引き起こさず、それによって炎症及び/又は感染のリスクを低減するような、ステルス特性を有することが見出された。さらに、この新しい医療用管状デバイスは、新生内膜過形成及び/又は狭窄を誘発するリスクが非常に低く、及び/又はより長期間にわたって開存性を確保することが見出された。
【0058】
ヒドロゲルポリマー、例えば、管腔表面及び/又は外表面にヒドロゲルゲストポリマードメインの形態で提供されたものは、非常に望ましい非汚染表面を提供することが見出された。
【0059】
生体適合性をさらに高めるために、管腔表面及び/又は外表面が双性イオン部分の形態の官能基部分を含むことが望ましいことが見出された。双性イオン部分は、有利には、ヒドロゲル(ゲスト)ポリマーに共有結合している。
【0060】
「ヒドロゲル(ゲスト)ポリマー」という用語は、本体構造の管腔表面及び/又は外表面にあるゲストポリマー及び/又は別のヒドロゲルポリマーを意味する。「別の」ヒドロゲルポリマーは、ゲストポリマーについて記載された通りであり得るが、特定の実施形態において、それは、ゲストポリマードメインのゲストポリマーとは異なり得る。
【0061】
双性イオン部分は、表面のステルス特性をさらに高め、したがって感染及び/又は炎症のリスクを低減することが見出された。医療用管状デバイスが血管グラフトであり、双性イオン部分が管腔表面に現れている場合、双性イオン部分は、血栓症のリスクを確実に低減するか、又は完全に防止することさえできることが見出された。双性イオン部分はさらに、補体系、及び凝固カスケードの活性化を低減又は抑制し得る。
【0062】
したがって、好ましい実施形態では、管腔表面は、ゲストポリマーに共有結合した双性イオン部分を含む。
一実施形態では、外表面は、ヒドロゲル(ゲスト)ポリマーに共有結合した双性イオン部分を含む。
【0063】
有利には、双性イオン部分は、双性イオン部分をゲストポリマーに組み込むことによって提供される。一実施形態では、ゲストポリマーは双性イオン性ヒドロゲルを含み、双性イオン性ヒドロゲルは重合モノマーの架橋ネットワークを含み、重合モノマーは、好ましくは双性イオン性モノマー(1種又は複数種)及び/又はカチオン性及びアニオン性モノマーの組合せを含む、1種以上のモノマーを含む。
【0064】
双性イオン性モノマーは、少なくとも1つの双性イオン性部分を含むモノマーである。カチオン性モノマーは、少なくとも1つのカチオン性部分を含むモノマーである。アニオン性モノマーは、少なくとも1つのアニオン性部分を含むモノマーである。モノマーは、例えばアニオン性モノマー及びカチオン性モノマーの両方であるなど、上記のモノマータイプのうちの2つ又は3つすべてを同時に満たし得ることに留意されたい。
【0065】
双性イオン性モノマーの例には、スルホベタイン、カルボベタイン、ホスホベタイン、ホスホコリン又はそれらの任意の組合せが含まれる。
好ましい実施形態において、双性イオン性モノマーは、式1-エテニル-3-(4-スルホナトブチル)-1H-イミダゾール-3-イウム:
【0066】
【化1】
【0067】
を有する双性イオン性モノマーであるか、又はそれを含む。
これは、図6でCK1573と呼ばれる双性イオン性モノマーである。
好ましい実施形態では、双性イオン性モノマーは、以下の双性イオン性モノマー:
1-エテニル-3-(3-スルホナトプロピル)-1H-イミダゾール-3-イウム(SK1572):
【0068】
【化2】
【0069】
1-メチル-4-(2-メチルプロプ-2-エノイル)-1-(4-スルホナトブチル)ピペラジン-1-イウム(CK1578):
【0070】
【化3】
【0071】
3-[ジメチル(2-{2-[(2-メチルプロプ-2-エノイル)オキシ]エトキシ}エチル)アザニウミル]プロパン-1-スルホナート(CK1582):
【0072】
【化4】
【0073】
4-[ジメチル({2-[(2-メチルプロプ-2-エノイル)オキシ]エチル})アザニウミル]ブタン-1-スルホナート(SK1583):
【0074】
【化5】
【0075】
のうちの1つ以上であるか、又はそれを含む。
好ましい実施形態では、双性イオン性モノマーは、以下の双性イオン性モノマー:
4-(2-メチルプロプ-2-エノイルオキシメトキシメチルアンモニオ)ブタン-1-スルホナート(CK1591):
【0076】
【化6】
【0077】
4-{ジメチル[3-(2-メチルプロプ-2-エナミド)プロピル]アザニウミル}ブタン-1-スルホナート(CK1584):
【0078】
【化7】
【0079】
1-メチル-4-(2-メチルプロプ-2-エノイル)-1-(4-スルホナトブチル)ピペラジン-1-イウム(CK1586):
【0080】
【化8】
【0081】
1-カルボキシ-N,N-ジメチル-N-(2’-メタクリロイルオキシエチル)メタナミニウム(CK1581):
【0082】
【化9】
【0083】
2-[ジメチル(2-{2-[(2-メチルプロプ-2-エノイル)オキシ]エトキシ}-エチル)アザニウミル]アセタート(cCK1589):
【0084】
【化10】
【0085】
2-{ジメチル[3-(2-メチルプロプ-2-エナミド)プロプリル]-アザムニウミル}アセタート(CK1588):
【0086】
【化11】
【0087】
1-(カルボキシラトメチル)-1-メチル-4-(2-メチルプロプ-2-エノイル)ピペラジン-1-イウム(CK1585):
【0088】
【化12】
【0089】
3-(カルボキシラトメチル)-1-エテニル-1H-イミダゾール-3-イウム(CK1587):
【0090】
【化13】
【0091】
のうちの1つ以上であるか、又はそれを含む。
IPNは、管腔表面及び/又は外表面にある薬物などの1つ以上の結合薬物をさらに含み得る。薬物は、有利にはヒドロゲルゲストポリマーに共有結合され得る。有利には、薬物は、管腔表面及び/又は外表面でゲストポリマーに特異的に結合している。一実施形態では、本体構造は、外表面でヒドロゲルゲストポリマーに結合した第1の薬物と、管腔表面でヒドロゲル(ゲスト)ポリマーに結合した第2の異なる薬物とを含み得る。
【0092】
結合させることのできる薬物の例には、酵素、免疫抑制薬、細胞外マトリックスタンパク質、抗菌薬、不活性化薬、及び/又は上記の薬物の1つを含む任意の組合せが含まれる。一実施形態では、結合させることのできる薬物は、抗血栓形成剤である。
【0093】
薬物は、有利には、その生物学的効果を利用するとき、それが消費されるのではなく、所望の期間にわたって活性を維持するような触媒機能を有する薬物である。したがって、それが管腔表面及び/又は外表面に結合される場合、その表面は、薬物の生物学的効果を有し、実質的に維持するであろう。
【0094】
薬物は、医療用管状デバイスの意図された用途に従って選択することができる。
一実施形態では、本体構造は、管腔表面でゲストポリマー及び/又はホストポリマーに結合した(好ましくは共有結合した)少なくとも1つの薬物を含む。
【0095】
一実施形態では、本体構造は、外表面でゲストポリマー及び/又はホストポリマーに結合した(好ましくは共有結合した)少なくとも1つの薬物を含む。
有利には、結合された(例えば、共有結合された)薬物は血栓症不活化薬である。血栓症不活化薬は、好ましくは、ヘパリン、EDTA、抗生物質 クエン酸塩、及び/又は上記の血栓症不活化薬の1つを含む任意の組合せを含む。
【0096】
ヘパリンは周知の血栓症不活化薬である。好ましくは、ヘパリン分子は、管腔表面本体構造に直接結合している。ヘパリンは、血管平滑筋細胞に対して強力な抗増殖効果を有する多糖類抗凝固剤である。管腔表面のヘパリンは、トロンビンを効果的に不活性化し、したがってフィブリンが不溶性線維に変換されずに可溶性のままとすることができ、それによってヘパリンが血栓症のリスクを低減又は排除することが見出された。
【0097】
血栓症不活化薬物の血栓症不活化効果は、1年、2年、又は3年以上、あるいはそれ以上など、非常に長い期間続く可能性があることが予想される。
共有結合された薬物は、有利には、薬物の最適な効果を確実にするために、リンカー分子を介してヒドロゲル(ゲスト)ポリマー及び/又はホストポリマーに共有結合され得る。適切なリンカーには、米国特許出願公開第20080227092号に記載されたリンカーが含まれる。薬物に結合する前、リンカーは、有利には薬物に結合するための官能基部分(例えば、捕捉部分)を含む。リンカーは、例えば、官能基部分を露出させるために切断可能であり得る。本体構造は、例えば薬物の生体適合性及び有益な効果をさらに向上させるため、さらに1つ以上の放出可能な薬物を含み得る。
【0098】
一実施形態では、放出可能な薬物は、パクリタキセル(タキソール)及び/又はラパマイシン及び/又は他の適切な抗増殖薬などの抗増殖薬を含む。
医療用管状デバイスの管腔内で細胞増殖のリスクがある場合、抗増殖薬は少なくとも管腔表面の一部として配置されることが望ましい。
【0099】
医療用管状デバイスが、使用中に接触している周囲の組織と一緒に成長しないことが望まれる場合、抗増殖薬は、有利には少なくとも本体構造の外表面の一部として配置され得る。低内殖特性を有するそのような医療用管状デバイスは、例えば、患者の組織と接触するように挿入される一時的に使用するためのチューブ、例えば化学療法薬を患者に供給するためのチューブであり得る。さらに、医療用管状デバイスがインプラントに適しており、インプラントを回収又は交換する必要があると予想される場合、それは低い内殖能力を有し、したがって、比較的簡単な方法で回収又は外植され得ることが望ましい場合がある。
【0100】
一実施形態では、放出可能な薬物は抗感染薬を含み、これは好ましくはリファンピシン及び/又はミノサイクリンから選択される。
抗感染薬は、有利には、感染性病原体の付着及び拡散を阻害することによって、又は感染性微生物を完全に殺すことによって、感染に対して作用することができる薬物である。
【0101】
抗感染薬は、例えば、抗生物質及び/又は消毒薬を含む。
抗感染薬は、感染のリスクが高く、及び/又は免疫防御が低い患者と接触させての使用に医療用管状デバイスが適合されている状況など、感染のリスクが高い場合に特に望まれ得る。
【0102】
抗感染薬は、医療用管状デバイスのどこにでも配置することができる。有利には、抗感染薬は、本体構造と、それが接触するように適合されている組織との間の感染のリスクを低減するために、本体構造の外表面に配置されている。これにより、手術部位感染のリスクが制限及び/又は低減される可能性がある。透析グラフトは、概して「通常の」グラフトよりも感染のリスクが高くなる。これは、患者が治療(透析)を受けるたびに、針が皮膚、組織、グラフトを貫通し、感染を引き起こす/負わせるリスクがかなり高くなるためである(これは毎週複数回発生し得る)。
【0103】
血液アクセスデバイス(CVCや透析グラフトなど)は、高い感染のリスクを有する。特に中心静脈カテーテル(CVCグラフト)は、体の外側から内側への細菌の経路を提供するため、感染のリスクが高くなる。
【0104】
一実施形態では、抗感染薬は、管腔表面及び外表面の両方から離れたところに位置するゲストポリマードメイン内、すなわち、管腔表面又は外表面を含まない中間ゲストポリマードメイン内に位置している。そのような場合、抗感染薬は、例えば、縫合中の針、又は医療用管状デバイスが透析グラフトである場合は針によって、本体構造が貫かれると放出され得る。したがって、抗感染薬の放出は高リスクの場所に配置され得、さらに放出期間は、放出可能な量の抗感染薬が使用されるまで非常に長くなり得る。
【0105】
一実施形態では、抗感染薬は、殺アメーバ剤;アミノグリコシド;駆虫薬;抗真菌剤、例えばアゾール系抗真菌剤、エキノカンジン、その他の抗真菌剤又はポリエン;抗マラリア剤、例えば抗マラリア剤の組合せ、抗マラリアキノリン又はその他の抗マラリア剤;抗結核剤、例えばアミノサリチル酸塩、抗結核剤の組合せ、ジアリールキノリン、ヒドラジド誘導体、その他の抗結核剤、ニコチン酸誘導体、リファマイシン誘導体又はストレプトマイセス誘導体;抗ウイルス剤、例えばアダマンタン抗ウイルス剤、抗ウイルスブースター、抗ウイルス剤の組合せ、抗ウイルスインターフェロン、ケモカイン受容体アンタゴニスト、インテグラーゼ鎖転移阻害剤、その他の抗ウイルス剤、ニューラミニダーゼ阻害剤、NNRTI、NS5A阻害剤、ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(NRTI)、プロテアーゼ阻害剤又はプリンヌクレオシド;カルバペネム;カルバペネム/ベータラクタマーゼ阻害剤;セファロスポリン、例えばセファロスポリン/ベータラクタマーゼ阻害剤、第1世代セファロスポリン、第4世代セファロスポリン、次世代セファロスポリン、第2世代セファロスポリン又は第3世代セファロスポリン;糖ペプチド抗生物質;グリシルサイクリン;レプロスタティクス(leprostatics);リンコマイシン誘導体;マクロライド誘導体、例えばケトライド又はマクロライド;その他の抗生物質;オキサゾリジノン系抗生物質;ペニシリン、例えばアミノペニシリン、抗緑膿菌性ペニシリン、ベータラクタマーゼ阻害剤、天然ペニシリン又はペニシリナーゼ耐性ペニシリン;キノロン;スルホンアミド;テトラサイクリン;尿路抗感染症薬;皮膚の抗感染薬第四級アンモニウム化合物(quat)又はそれらの任意の組み合わせのうちの1つ以上を含む。
【0106】
有利には、放出可能な薬物は、主としてゲストポリマーに充填される。
薬物は、例えば、ヒドロゲルゲストポリマーの少なくとも一部が膨潤している条件下で、薬物を含む流体にIPNを適用することによりゲストポリマーに充填され得る。充填方法の例は、国際公開第2013075724号、Santosら、「ポリ(ヒドロキシエチルメタクリラート-コ-メタクリラート-β-シクロデキストリン)ヒドロゲル:合成、細胞適合性、機械的特性及び薬物充填/放出特性」(“Poly(hydroxyethyl methacrylate-co-methacrylated-β-cyclodextrin)hydrogels:Synthesis,cytocompatability,mechanical properties and drug loading/release properties”)ScienceDirect、Acta Biomaterialia 4(2008)745-755及び国際公開第2005/055972号に記載されている。
【0107】
有利には、放出可能な薬物は、管腔表面及び外表面の少なくとも一方を介して放出可能である。薬物が抗増殖性薬物である場合、それは、有利には少なくとも管腔表面を介して放出可能であり得る。抗増殖薬は、血管平滑筋細胞の本来の血管から管腔表面(内膜つまり血管/内腔に隣接する内層)への遊走、ならびにそれらの増殖及び細胞外マトリックス沈着を防止又は低減することが示されている。それにより、抗増殖薬は、内膜過形成のリスクを低減するか、又は内膜過形成を予防する機能を有する。
【0108】
一実施形態では、薬物は抗感染薬であり、薬物は少なくとも外表面を介して放出可能である。これにより、感染のリスクがさらに低減されるか、完全に防止され得る。
ゲストポリマー(及び/又はヒドロゲル)は、ホモポリマー又はコポリマーを含み得る。好ましくは、ゲストポリマーは架橋されている。
【0109】
ゲストポリマーは、物理的に架橋され、及び/又は化学的に架橋され得る。
コポリマーとは、2つ以上のモノマー種の共重合によって得られるポリマーを意味する。
【0110】
一実施形態では、コポリマーゲストポリマーは、2つのモノマー種を有するバイオポリマーである。
ゲストポリマーの組成は、ゲストポリマードメインにおいて均一及び/又は一定であり得るか、あるいは、例えば1つ以上のモノマーの量が、例えばグラデーション式に変わることによって変化し得る。これは、例えばホストポリマーへのモノマーの充填中及び/又はその重合中にモノマーの相対量を変化させることによって提供され得る。例えば、ゲストポリマーは、ドメインの第1の部分において主にPHEMAからなり、ドメインの第2の中間部分においてPHEMA及びPEGMEAを含み、第3の、例えば管腔部分において、PHEMA、PEGMEA及びスルホベタインを含み得る。当業者は、モノマーの任意の組合せが可能であり、医療用管状デバイスの所望の特性に従って選択され得ることを理解するであろう。
【0111】
一実施形態では、コポリマーゲストポリマーは、3つのモノマー種から得られるターポリマーである。
一実施形態では、コポリマーゲストポリマーは、4つのモノマー種から得られるクォーターポリマーである。ゲストポリマーは、完全に親水性であってもよいし、疎水性ドメインを含んでもよい。一実施形態では、ヒドロゲル(ゲスト)ポリマーは、疎水性-親水性ハイブリッドヒドロゲルである。疎水性ドメインを有するヒドロゲル(ゲスト)ポリマーは、親水性モノマー及び疎水性モノマーを含むモノマーの混合物から製造することができる。好ましくは、疎水性モノマーは、モノマーのうちの約20重量%以下、例えば、10%以下で存在する。一実施形態では、ヒドロゲル(ゲスト)ポリマーは、照射、pH値及び/又は機械的な影響を受けると、親水性及び疎水性の特性をそれぞれ有する1つの局所ドメインを提供するように段階が切り替わり得る部分を含む。そのような部分は、例えば、本明細書に記載されるような光活性部分であり得る。一実施形態では、ヒドロゲル(ゲスト)ポリマーは、スピロピラン及び疎水性モノマーを含むコポリマー又はマルチポリマーを含む。これは、例えばゲストポリマーが、制御放出及び/又は誘発放出のための親水性薬物などの薬物を含む場合に有利である。
【0112】
ゲストポリマーは、好ましくは、以下を含む1つ以上のモノマーから重合され得る:アクリラート;ビニルモノマー、例えばn-ビニルピロリドン(nVP);スチレン;酸素含有、フェニル、アミノ及び窒素含有アクリル誘導体及びメタクリル誘導体、例えばアクリル酸エステル、アクリル酸、メタクリル酸及びエステル、アルキル及びヒドロキシアルキルアクリラート及びメタクリラート;官能化(メタ)アクリラート、例えば2-ヒドロキシエチルメタクリラート(HEMA)、グリセロールモノメタクリラート(GMMA)、ヘプタフルオロブチルアクリラート(HFBA)、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)及び[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]-ジメチル-(3-スルホプロピル)-アンモニウム水酸化物(ベタイン);アルキル置換アクリラート及びメタクリラート、例えばメタクリル酸メチル(MMA)、メタクリル酸エチル(EMA)、メタクリル酸ブチル(BMA)、メタクリル酸ドデシル(DMA);PEG化(メタ)アクチラート(actylate)、例えばポリ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリラート(PEGMEMA)及びポリ(エチレングリコール)メチルエーテルアクリラート(PEGMEA);置換β-及びγ-ラクトン、乳酸モノマー;炭水化物及びフッ素化モノマー;ウレタン;一官能性及び二官能性アルコール;カルボン酸;アミン;イソシアネート;エポキシド;アルキル基を有する芳香族;スルホン化芳香族、芳香族樹脂;イミダゾール;イミダゾール誘導体;双性イオン性モノマー;ピラゾール;第四級アンモニウムモノマー;スピロピランモノマー、キチン又はその誘導体(キトサン)及び上記の1つ以上を含む任意のもの/又は任意の組合せ。
【0113】
モノマー「X」を含むヒドロゲル(ゲスト)ポリマーは、本明細書では、モノマー「X」を含む1つ以上のモノマーから得られるゲストポリマーを示すことを意味する。
一実施形態では、ゲストポリマーは、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリラート)(PHEMA)を含み、好ましくは、ゲストポリマーは、PHEMAとPEGMEAの架橋コポリマーである。
【0114】
一実施形態では、ヒドロゲルゲストポリマーは、少なくとも1つの双性イオンを含むモノマー及びPHEMA、PEGMEA又はビニルイミダゾールブタンスルホナートのうちの少なくとも1つから重合されたコポリマーを含み、好ましくは、ヒドロゲルゲストポリマーは、PHEMA、PEGMEAビニルイミダゾールブタンスルホナート及び/又はスルホベタインを含むモノマーから重合されたコポリマーを含む。
【0115】
一実施形態では、ゲストポリマーは、官能基部分を保護する保護基を含む少なくとも1つのモノマーを含むモノマーから重合されたホモポリマー又はコポリマーを含み、保護基は、好ましくは、フルオレニルメチルオキシカルボニル(FMOC)であり、及び/又は保護された官能基部分は、好ましくは-NH基を含む。
【0116】
適切な保護部分の例は、米国特許出願公開第2008/0227092号に見られる。
適切な官能基部分の例は、米国特許出願公開第2008/0227092号に見られる。
【0117】
重合及び任意選択で架橋した後、管腔表面及び/又は外表面の保護基を除去して官能基部分を脱保護することができ、上記のような薬物を官能基部分(例えば、-NH)、及び任意選択でリンカー(例えばPEG、PEO)を介してゲストポリマーに結合させることができる。
【0118】
一実施形態では、ゲストポリマーは、コポリマー、好ましくは、上述したようなスルホベタイン、カルボベタイン、ホスホベタイン、又はホスホコリンなどの少なくとも1つの双性イオン部分を含むモノマーから重合されたコポリマーを含む。
【0119】
一実施形態では、ゲストポリマーは、スピロピラン基などの光活性部分を含む光活性モノマーを含むモノマーから重合されたコポリマーを含む。光活性モノマーは、有利にはフォトクロミックである。
【0120】
「光活性モノマー」は、本明細書において、少なくとも1つの光活性部分を含むモノマーを意味する。
ゲストポリマーは、有利には、スピロピランアクリラートを含む。
【0121】
ゲストポリマーに光活性部分を含めることにより、ゲストポリマーはそれ自体が光活性になり、それにより、医療用管状デバイスの位置及び/又は1つ以上の特性を光によって、例えば本体構造に紫外線を照射することによって、決定、変更、及び/又は調整することができる。これにより、外科医(医師又は他の訓練を受けた人又は訓練を受けたロボットを含む)は、特定の生物学的特性(親水性及び/又は薬物放出特性など)のオンとオフを切り替えることができる。
【0122】
ゲストポリマーを形成するモノマーに適用するのに適したフォトクロミック部分に関する更なる情報は、Nordinら、「スピロピラン-メロシアニン系の調製及び活性化(“PREPARATION AND ACTIVATION OF SPIROPYRAN-MEROCYANINE SYSTEM”)Malaysian Journal of Analytical Sciences,Vol.17No.3(2013):422-429に見られる。
【0123】
一実施形態では、ゲストポリマーは、サブゲスト相互貫入キトサンネットワークなどの埋め込まれたキトサンを含む。キトサンネットワークは、スピロピラン誘導体などの光応答性誘導体で修飾することができる。
【0124】
スピロピラン(SP)誘導体で修飾され、サブゲスト相互貫入ネットワークを提供するのに適した相互貫入キトサンネットワークの合成は、Cheol Woo Leeらの「相互貫入キトサンネットワークを用いたフォトクロミックヒドロゲルの製造」(“Fabrication of photochromic hydrogels using
an interpenetrating chitosan network”)J.APPL,POLYM.SCI.2017,DOI:10.1002/APP.45120に記載のものであってもよい。キトサンは、ゲストポリマーが架橋された後、ゲスト及び/又はホストポリマーに充填され得る。
【0125】
IPNのゲストポリマーは、等しい又は異なる組成を有する2つ以上のタイプのゲストポリマードメインを含み得る。
一実施形態では、2つ以上のタイプのゲストポリマードメインは、少なくとも管腔表面に、又は外表面にゲストポリマーを含む表面ゲストポリマードメインと、異なるタイプのゲストポリマーを有する中間ゲストポリマードメインとを含む。
【0126】
一実施形態では、2つ以上のタイプのゲストポリマードメインは、管腔表面にゲストポリマーを含む第1のタイプのゲストポリマーと、外表面にゲストポリマーを含む第2のタイプのゲストポリマーとを含む。
【0127】
一実施形態では、2つ以上のタイプのゲストポリマードメインは、管腔表面又は外表面のいずれかと同じであっても異なっていてもよい第3の中間ゲストポリマーを含む。
本体構造のゲストポリマーは、有利には、乾燥重量で少なくとも約1%のIPN、例えば乾燥重量で少なくとも約10%のIPN、例えば乾燥重量で約15%~約85%、例えば約25%~約60%のIPNを構成し得る。
【0128】
有利には、本体構造の少なくとも1つのゲストポリマードメインは、本体構造の管腔表面及び外表面のうちの少なくとも1つなどの、本体構造の少なくとも1つの表面を含む。
一実施形態では、少なくとも1つのゲストポリマードメイン内のゲストポリマーは、ホストポリマーマトリックス中に実質的に均一に分布している。
【0129】
一実施形態では、少なくとも1つのゲストポリマードメインは、好ましくは本体構造の表面に近いところのゲストポリマーの量が本体構造の表面から遠いところのゲストポリマーの量よりも多くなるように、本体構造の管腔表面及び/又は外表面に垂直な(法線)方向にゲストポリマーの量の勾配を有する。
【0130】
ホストポリマー中の量及び/又はモノマー分布を構造化することにより、例えば放出可能な薬物の放出プロファイルを制御するなどの多くの異なる用途のために本体構造を設計し、最適化することができる。
【0131】
一実施形態では、本体構造は、例えばゲストポリマーの任意選択のコーティングを含む、単一のゲストポリマードメインを含む。好ましくは、ゲストポリマーは、管腔表面の少なくとも一部まで延在し、及び/又は管腔表面のコーティングを含む。
【0132】
一実施形態では、ゲストポリマードメインは、ホストポリマーマトリックスの厚さ全体に広がり、好ましくは、IPNは、本体構造の厚さ全体に広がる。
特定の用途では、医療用管状デバイスが、配置されたときに接触する組織と共に比較的速く成長する(成熟する)ことを確実にするため、本体構造は高い組織内殖能力を有することが望ましい。これにより、組織と医療用管状デバイスとの間の感染の潜在的なリスクを大幅に低減させることができる。これにより、医療用管状デバイスの外表面と周囲の組織との間に血腫を生じさせる潜在的な出血による血液の蓄積の潜在的なリスクを大幅に低減することができる。
【0133】
過剰な量の瘢痕組織を形成するリスクを減少させる可能性があることが見出された。瘢痕組織形成の量が多い場合、組織は本体構造の周りで収縮する傾向があり、それによって本体構造の内径が減少することが見出された。本体構造に高い内殖能力があることを確認することにより、感染のリスクと収縮のリスクの両方を減らすことができる。
【0134】
本発明者らは、少なくとも1つのゲストポリマードメインが血餅促進ドメイン及び/又は細胞増殖促進ドメインを含み、血餅促進ドメイン及び/又は細胞増殖促進ドメインが管腔表面から離れて位置し、好ましくは管腔表面を含まないことにより、本体構造が高い内殖能力を確実に有することを見出した。それにより、医療用管状デバイスの管腔内での細胞増殖のリスクを低くすることができ、同時に、本体構造が高い内殖能力を確実に有することができる。
【0135】
本体構造は、例えば、血餅促進及び/又は細胞増殖ドメインを含む外表面ゲストポリマードメインと、抗増殖薬を含む管腔表面ゲストポリマードメインとを有し得る。
血餅促進及び/又は細胞増殖ドメインを有するゲストポリマードメインを含む医療用管状デバイスはまた、例えば医療用管状デバイスの植え込み中の、過度の出血のリスクを大幅に減少させ得ることが見出された。この効果は、医療用管状デバイスが管腔表面及び/又は管腔表面ゲストポリマードメインに抗増殖薬及び/又は血栓症不活性化薬を含む場合でも確認された。有利には、血餅促進ゲストポリマーは、外表面の少なくとも一部を含む外表面ゲストポリマードメインを含む。
【0136】
一実施形態では、血餅促進及び/又は細胞増殖ドメインは、管腔表面も外表面も含まない中間ゲストポリマードメインに位置する。この実施形態の医療用管状デバイスは、高い内殖能力を有する場合もあれば、有さない場合もあるが、細胞増殖促進薬及び/又は血餅促進薬を有する中間ゲストポリマードメインは、例えば医療用管状デバイスの植え込み中及び/又はアクセス植え込み後(透析)の過度の出血のリスクを大幅に減少させることができる。したがって、この実施形態の医療用管状デバイスは、有利には、内殖能力を低減するための抗増殖薬を含む外表面ゲストポリマードメインを有し得る。
【0137】
一実施形態では、放出可能な血餅促進薬を含む血餅促進ドメインは、別のグラフト又は天然の血管に縫合されるように適合された医療用管状デバイスのそれぞれの端部に配置されることが望ましく、それによって、例えば医療用管状デバイスの植え込み中の過剰の出血のリスクを大幅に低減することができる。
【0138】
一実施形態では、放出可能な細胞増殖薬を含む細胞増殖ドメインは、本体構造の実質的に全長に沿った外部ドメインであることが望ましく、それにより、瘢痕組織のリスクが低く、周囲組織への外表面の迅速な内殖を確実にする。
【0139】
血餅促進及び/又は細胞増殖ドメインは、例えば、細胞増殖促進薬及び/又は血餅促進薬、例えば線維素溶解薬、ヘパリンアンタゴニスト、血小板刺激薬、又は上記の血餅促進薬のうちの1つ以上を含むそれらの任意の組合せを含み得る。
【0140】
多くの用途では、医療用管状デバイスは、植え込み後の周囲組織への迅速な内殖を確実にする高い内殖能力を有することが望ましく、それにより、植え込まれたデバイスの周りの側方出血の傾向及び/又はリスクを低減する。これは、医療用管状デバイスが透析グラフトである場合に特に好ましい。
【0141】
一実施形態では、ホストポリマーは、2つ以上のゲストポリマードメインを含む。
一実施形態では、2つ以上のゲストポリマードメインは、管腔ゲストポリマードメイン及び外部ゲストポリマードメインを含む。2つ以上のゲストポリマードメインは、有利には、ゲストポリマーを本質的に含まない本体構造のポリマー部分によって分離され得、ポリマー部分は、好ましくは、ホストポリマーマトリックスと同一であるが、本質的にゲストポリマーを含まない。
【0142】
本体構造は、単層であってもよく、又はいくつかの管状層などのいくつかの層を含み得る。有利には、少なくともホストポリマーは、本体構造の全長にわたって管状層を形成する。追加の層は、本体構造の全長さにおいて完全に管状であり得るか、又はそれ/それらは、例えば本体構造の長さの一部において、局所的な層のみであり得る。
【0143】
一実施形態では、本体構造は、2つ以上の層を含む層状本体構造であり、層の少なくとも1つは、IPNを含むか、又はIPNからなる少なくとも1つのIPN部分を含む。
一実施形態では、本体構造は、管腔表面を含む管腔層を含み、管腔層は、少なくとも1つのIPNを含むか、又はそれからなる。好ましくは、管腔表面は、例えば上記のように、ゲストポリマーを含む。有利には、ゲストポリマードメインは、管腔表面全体などの管腔表面の少なくとも一部を含む管腔表面ゲストポリマードメインを含む。
【0144】
一実施形態では、本体構造は、外表面を含む外層を含み、外層は、少なくとも1つのIPNを含む。好ましくは、外表面は、例えば上記のように、ゲストポリマーを含む。有利には、ゲストポリマードメインは、外表面全体などの外表面の少なくとも一部を含む外表面ゲストポリマードメインを含む。
【0145】
本体構造は、本体構造の表面を含まない1つ以上の中間層及び/又はドメインを含み得る。有利には、ゲストポリマードメインは、管腔表面も外表面も含まない中間ゲストポリマードメインを含む。
【0146】
一実施形態では、本体構造の少なくとも1つの層は、IPNを含まないポリマー層、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、発泡PTFE(例えば、ゴアテックス(Goretex)(登録商標))、ポリウレタン(PU)、ポリエチレンテレフタラート(PET、例えばダクロン(登録商標))及び/又はシリコーンエラストマーのポリマー層である。
【0147】
そのような材料及び/又は材料の層は、例えば、米国特許出願公開第20160354217号、米国特許出願公開第20140142682号、米国特許出願公開第20090258958号、米国特許第6,517,571号、米国特許出願公開第0060118236号及び/又は米国特許第5,931,865号に記載されている。
【0148】
一実施形態では、IPNを含まない本体構造の少なくとも1つのポリマー層は、エラストマー層である。
有利には、2つ以上の層は、層状の本体構造を形成するために同心円状に配置され、同心円状に配置された層は、好ましくは、隣接する層と完全に表面間(界面)接触している。2つ以上の層は、同じ長さ又は異なる長さを有し得る。
【0149】
2つ以上の層は、非結合層、局所的に固定された層、又は界面結合層であり得る。
一実施形態では、2つ以上の層のうちの少なくとも2つの層は、互いに化学的に固定されていない。少なくとも2つの固定されていない層は、例えば機械的インターロックを介して機械的に一緒に保持され得る。
【0150】
一実施形態では、2つ以上の層のうちの少なくとも2つの層は、例えば中間にある接着剤によって互いに界面結合されている。
一実施形態では、2つ以上の層のうちの少なくとも2つの層は互いに固定されている。少なくとも2つの層の固定は、好ましくは、局所的な接着結合、縫合糸、ステープル及び/又はクリップ、ピンホールを含む。
【0151】
医療用管状デバイスは、さらに、例えば本体構造の内側又は周囲に、本体構造と同心円状に配置された管状支持構造を含み得る。
支持構造は、例えば、管腔表面と接触して、又は本体構造の外表面と接触して配置された支持構造を含み得る。
【0152】
支持構造は、有利には、本体構造よりも高い剛性を有する。それにより、支持構造は、所望の位置で医療用管状デバイスを支持することができる。有利には、管状支持構造又は単に「支持構造」は、本体構造の外表面又は管腔表面のいずれも全体的には覆わない。好ましくは、支持構造は、本体構造の外表面又は管腔表面の最大50%、例えば、本体構造の外表面又は管腔面の最大40%、例えば最大30%、例えば最大20%、例えば最大10%を覆う。
【0153】
支持構造は、例えば、らせん状ワイヤを含み得る。らせん状ワイヤは、例えば、本体構造が崩壊しないように、管腔表面と接触するように配置される。らせん状ワイヤは、例えば、外表面を取り囲み、それと接触するように配置される。それにより、らせん状ワイヤは、本体構造の増殖の増進及びより速い内殖を提供し得る。らせん状ワイヤは、例えば、本体構造の中に埋め込まれる。それにより、らせん状ワイヤは、生物学的特性に干渉することなく機械的支持を提供することができる。
【0154】
一実施形態では、管状支持構造は、本体構造の外表面にぴったり合う形状のカフを含む。
カフは、開いたクロスハッチ構造を有することができ、好ましくは、本体構造の外表面の最大約25%、例えば本体構造の外表面の約1%~約20%を覆う。
【0155】
カフは、例えばポリマー材料のものであり、ポリマー材料は、好ましくは、コラーゲン、ダクロン(登録商標)、ナイロン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、発泡PTFE(例えば、ゴアテックス(Goretex)(登録商標))、ポリエチレンテレフタラート(PET、例えばダクロン(登録商標))、ポリウレタン(PU)及び/又はシリコーンエラストマーを含む。一実施形態では、カフは、例えばより速い内殖のために、繊維を含む。一実施形態では、カフはフッ素化エチレンプロピレン(FEP)を含む。FEPは、ヘキサフルオロプロピレンとテトラフルオロエチレンのコポリマーであり、例えば、テフロン(登録商標)(デュポン)、FEP、ネオフロン(登録商標)FEP(ダイキン)又はダイネオン(登録商標)FEP(ダイネオン/3M)のブランド名で販売されている。カフは、有利には、成長ホルモン、抗線維素溶解薬、血餅促進薬、及び/又は細胞増殖薬などの1つ以上の薬物が充填されたIPN材料を含み得る。
【0156】
有利には、カフは、細胞の浸潤、増殖、及び成長のための足場を形成する。
一実施形態では、本体構造の外表面の少なくとも一部及び/又は支持構造の外表面の少なくとも一部は、成長ホルモン、抗線維素溶解薬、血餅促進薬及び/又は細胞増殖促進薬などの内殖増強薬を含む。
【0157】
内殖増強薬は、有利には、細胞の浸潤、増殖、及び/又は成長のための足場を形成し得る。内殖増強薬を含む医療用管状デバイスは、好ましくは、透析グラフト、血管グラフト又は担体、及び/又は人工神経グラフトの絶縁体などの植込み式医療用管状デバイスである。
【0158】
本体構造の外表面及び/又は支持構造の外表面の内殖増強薬は、医療用管状デバイスのさらに速い内殖及び外表面成熟を確実にし、それにより、側方出血の傾向及び/又はリスクの低減を確実にする。
【0159】
本体構造の外表面及び/又は支持構造の外表面の内殖増強薬を有する医療用管状デバイスの非常に高い内殖能力は、医療用管状デバイスが、配置されたときに接触する組織と共に比較的速く成長することを確実にする。これにより、組織と医療用管状デバイスとの間の感染の潜在的なリスクが大幅に低減され、さらに、過剰な量の瘢痕組織を形成するリスクが低減され、それにより、本体構造を取り巻く組織の収縮のリスクが低減され、これもまた開存期間を延長する。さらに、医療用管状デバイスが透析グラフトである場合、成熟がより速いため、従来技術の透析グラフトを使用するよりも早い時点で透析治療を開始することができる。グラフトが完全に成熟しておらず、自己治癒が不十分な場合、針貫通チャネルからの血液の漏出によって、外表面と組織との間の空隙に血液がいくらか蓄積する可能性がある。
【0160】
血餅促進薬は、例えば上記のような、線維素溶解薬、ヘパリンアンタゴニスト、血小板刺激薬、又は上記の血餅促進薬の1つ以上を含むそれらの任意の組合せであり得る。
有利には、内殖増強薬は、細胞外マトリックス(ECM)分子を含み、好ましくは線維状タンパク質及び/又はプロテオグリカンを含む。一実施形態では、内殖増強薬はコラーゲンを含む。
【0161】
細胞外マトリックスを構築する主な線維状タンパク質は、コラーゲン、エラスチン、及びラミニンである。これらはすべて比較的頑丈なタンパク質高分子である。それらの頑丈さは、細胞外マトリックスに緩衝特性及び耐力特性を提供し得る。
【0162】
一実施形態では、内殖増強薬は、天然の細胞外マトリックス又は合成の細胞外マトリックス、あるいはそれらの任意の組合せ又はフラクションを含む。
ECMは、例えば、創傷の処置に適応した、ブタの小腸粘膜下組織(SIS)から自然に派生する無傷のマトリックスであるOASIS(登録商標)創傷マトリックスであり得る。OASIS(登録商標)創傷マトリックスは、Smith&Nephew社によって販売されている。
【0163】
別の例は、スウェーデンの会社VERIGRAFTから入手可能なECMである。VERIGRAFTは、再生医療で使用するためのパーソナライズされた組織工学移植物を作製している。
【0164】
ECM材料のさらなる例は、Corning Matrigelマトリックスである。これは、ラミニン(主成分)、コラーゲンIV、ヘパラン硫酸プロテオグリカン、エンタクチン/ニドゲン、及びいくつかの成長因子などのECMタンパク質が豊富な腫瘍であるEngelbreth-Holm-Swarm(EHS)マウス肉腫から抽出された可溶化基底膜調製物である。
【0165】
ECMの更なる情報及び例は、例えばEduardo A.SilvaとDavid J.Mooneyの論文「組織工学及び再生のための合成細胞外マトリックス」(“Synthetic Extracellular Matrices for Tissue Engineering and Regeneration”)ELSEVIER、第64巻、2004年、181-205頁、https://doi.org/10.1016/S0070-2153(04)64008-7に見られる。
【0166】
医療用管状デバイスの内殖特性をさらに高めるために、本体構造の外表面の少なくとも一部及び/又は支持構造の外表面の少なくとも一部は、予備増殖させた細胞を含み得る。
そのような予備増殖させた細胞は、例えば、本体構造の外表面の少なくとも一部及び/又は支持構造の外表面の少なくとも一部に幹細胞を播種し、続いて、分化及び成長培地に任意選択の支持構造と共に本体構造を埋め込むことによって提供され得る。細胞が医療用管状デバイスの管腔(チャネル)内に遊走しないようにするために、医療用管状デバイスの管腔は、有利には、医療用管状デバイスの両端部で閉じられ及び/又は封止され得る。
【0167】
一実施形態では、本体構造の外表面の少なくとも一部及び/又は支持構造の外表面の少なくとも一部は、ヒドロゲル又はヒドロゲル化可能な生体接着剤などの生体接着剤を含み、好ましくは、生体接着剤はキトサンを含む。
【0168】
本体構造の外表面及び/又は支持構造の外表面の生体接着剤は、植え込み直後の及び内殖が始まる前でさえも、植え込まれたデバイスの周りの側方出血の傾向及び/又はリスクの低減を確実にする。それにより、生体接着剤は、さらに速い内殖及び成熟を確実にし、これは、医療用管状デバイスが透析グラフトである場合に特に望ましい。さらに、生体接着剤はまた、瘢痕組織の形成を減少させ得ることが見出された。これは、本体構造と本体構造を取り巻く組織との間の摩擦及び相対運動が生体接着剤により減少することによって生じ得ると考えられる。さらに、生体接着剤はまた、感染及び炎症のリスクをさらに低減する。
【0169】
一実施形態では、本体構造は外表面ゲストポリマードメインを含み、外表面ゲストポリマードメインは外表面の少なくとも一部を含み、生体接着剤の少なくとも一部は外表面のゲストポリマーの少なくとも一部を含む。例えば、外表面のゲストポリマーは、ゲストポリマーに結合され、及び/又はゲストポリマーに埋め込まれた(相互貫入)キトサンを含み得る。
【0170】
生体接着剤は、例えば、Sylgard(登録商標)184(Dow Corning、Diatom)、Silastic(登録商標)(DowCorning)、及び/又は接着性シリコーンタイプA MED-1137(Nusil)などのシリコーンエラストマーを使用して、管状支持構造及び/又は本体構造に接着され得る。生体接着剤は、例えばキトサン、例えばKitoZymeによって販売されているものである。有利には、キトサンは、例えば凍結乾燥により得られる粉末又は乾燥発泡体の形態である。キトサンは、有利には、シリコーンエラストマー又は他の適切な付着エラストマー/接着剤を使用して、本体構造及び任意選択の支持構造に固定させることができる。
【0171】
一実施形態では、生体接着剤の少なくとも一部は、グラフト化によって管状支持構造及び/又は本体構造に結合される。
医療用管状デバイスの化学組成により、非常に狭い管腔を備えると同時に、長期の開存性を確保し、(例えば、新生内膜過形成、血液凝固及び細菌感染によるバイオフィルム形成による)再狭窄/管腔の閉塞のリスクを低減する医療用管状デバイスを提供することが可能であることが見出された。さらに所望の機械的特性も得ることができる。医療用管状デバイスは、例えば、1mmまでの狭い内径、又は管状デバイスの用途に応じてさらに狭い内径を有し得る。一実施形態では、医療用管状デバイスは、約2mm~約6cm、例えば約3mm~約5cm、例えば約4mm~約3cmの内径を有し、内径は、本体構造の長さに沿って等しくても異なっていてもよい。
【0172】
さらに、本体構造の壁厚は、強度や弾性コンプライアンスなどの望ましい機械的特性を維持しながら、非常に薄くすることができる。一実施形態では、本体構造は、約0.01mm~約5mm、例えば約0.1mm~約3mm、例えば約0.5mm~約1mmの壁厚を有する。
【0173】
弾性コンプライアンスは低すぎてはならないが、高すぎてもならないことが見出された。なぜなら、弾性コンプライアンスが高すぎると、変形及び縫合部の裂け目が大きくなり、したがって、縫合部又はその近くで望ましくない出血を引き起こす可能性があるからである。有利な本体構造は、1以上10以下の弾性コンプライアンス(80~200mmHg(ISO7198:2016、セクションA5.9に従って測定)の範囲内のmmHg×10あたりの内径変化のパーセンテージ)を有する必要がある。一般に、自然の血管は2より大きい、例えば約2.5~6の間の弾性コンプライアンスを有する。
【0174】
したがって、本体構造は、約2~約8の、例えば約2.5~約6の、例えば約2.5~約6の、例えば約3~約5の、例えば約3.3~約4.5の弾性コンプライアンスを有することが望ましい。
【0175】
さらに、本体構造は比較的低い長期拡張を有することが望ましい。拡張は、例えば、「腎下腹部大動脈瘤の開放修復後のポリエステル及び拡張ポリテトラフルオロエチレンチューブグラフトの長期拡張」(“Long-term dilatation of polyester and expanded polytetrafluoroethylene tube grafts after open repair of infrarenal abdominal aortic aneurysms”)J Vasc Surg 2011;53:1506-13に記載されているように決定してもよい。
【0176】
一実施形態において、本体構造は12ヶ月後に約25%未満、例えば約20%未満、例えば約10%未満、例えば約5%未満の長期拡張を有する。
一実施形態において、本体構造は6年後に約50%未満、例えば約30%未満、例えば約25%未満、例えば約15%未満の長期拡張を有する。
【0177】
管状デバイスは、有利には、血管グラフト、透析グラフト、透析チューブ、カテーテル、シャント、ステント、ステントグラフト、及び/又は腸グラフトであり得る。
好ましくは、医療用管状デバイスは、血管グラフト、透析グラフト、又はステントなどの植込み式管状デバイスである。
【0178】
一実施形態では、医療用管状デバイスは透析チューブである。
一実施形態では、医療用管状デバイスは、胃瘻チューブなどの栄養チューブである。
一実施形態では、医療用管状デバイスは、中心静脈カテーテル(CVCライン)又は末梢挿入中心静脈カテーテル(PICCライン)などの静脈カテーテルである。
【0179】
一実施形態では、医療用管状デバイスは、抗癌剤を供給するためのチューブなどの薬物供給チューブである。
本発明はまた、上記の医療用管状デバイスを製造する方法を含む。この方法は、以下を含む方法によって本体構造を製造することを含む:
・管腔基材表面及び外側基材表面を備えた管状ホストポリマー基材を成形すること、
・ゲストポリマーのモノマーを含む溶媒によってホストポリマー基材を少なくとも部分的に膨潤させることにより、ゲストポリマーのモノマーを管状ホストポリマー基材の少なくとも一部に充填すること、及び
・上記モノマーを重合させ及び任意選択で架橋させて、少なくとも1つのゲストポリマードメインを含むIPNを形成させること。
【0180】
ホストポリマー基材からホストポリマーマトリックスを直接形成させてもよいし、任意選択で、ホストポリマーマトリックス内に(ゲスト)モノマーを堆積させる前に、ホストポリマー基材から残留物を抽出してもよい。
【0181】
ホストポリマー基材の残留物の抽出、ゲストポリマー用のモノマーの充填、重合及び任意選択での架橋、ならびに他の任意の及び/又は所望のプロセスステップは、以下の刊行物に見出すことができる:
Antimicrob.Agents Chemother 2017,61(7),e00604-17 DOI:10.1128/AAC.00604-17.Plasmid 2016,87-88,72,DOI:10.1016/j.plasmid.2016.10.001.J.Control.Release 2016,241,125-134 DOI:10.1016/j.jconrel.2016.09.018.J. Mat.Chem.Phys.2016,181,495-500 DOI:10.1016/j.matchemphys.2016.06.086.J.Indus.Eng.Chem.2016,33,142-149 DOI:10.1016/j.jiec.2015.09.026.Biomacromolecules.2016,17(4),1321-1329 DOI:10.1021/acs.biomac.5b01722.J.Biomed.Mater.Res.Part B Appl.Biomater.2016,104(2),402-410 DOI:10.1002/jbm.b.33371.Eur.J.Pharm.Biopharm.2015,94,305-311 DOI:10.1016/j.ejpb.2015.05.014.Martin Alm,Peter Thomsen.A delivery device.Patent,PA 2015/70520.Martin Alm,Soren Langer Steffensen.送達デバイスの製造方法(A method of
producing a delivery device)、国際公開第2013/075724号、Martin Alm,Maike Benter,Anne Marie Jensen.相互貫入ポリマーネットワーク(IPN)を含む物品及びIPNを含む物品を製造する方法(A method of producing an article comprising an interpenetrating polymer network(IPN)and an article comprising an IPN)、国際公開第2008/052568号、Martin Alm,Maike Benter,Anne Marie Jensen.相互貫入ポリマーネットワーク(IPN)を含む物品及びIPNを含む物品を製造する方法(A method
of producing an article comprising an interpenetrating polymer network(IPN)and an article comprising an IPN)、国際公開第2008/052563号、Maike Benter,Martin Alm.ポリマー含有コーティングでポリマー表面をコーティングする方法及びポリマーコーティングされたポリマーを含む物品(A method of coating a polymer surface with a polymer containing coating and an item comprising a polymer coated polymer)、国際公開第2006/074666号、Joachim Karthauser,Maike Benter及びMartin Alm.シリコーンエラストマーゴム製品の製造方法及びその方法により得られる製品(A method of producing a silicone elastomer rubber item
and the product obtainable by the method)、国際公開第2006/045320号。
【0182】
有利には、管状ホストポリマー基材の成形は、押出成形又は射出成形によって行われ、好ましくは、成形された管状ホストポリマーはシームレスである。管状ホストポリマー基材は、任意の所望の壁厚、内径/外径、及び任意の所望の長さで押し出すことができる。一実施形態では、管状ホストポリマー基材は、編むことを含む方法によって成形される。
【0183】
一実施形態では、管状ホストポリマー基材は、マンドレルを使用することによって、好ましくは成形される管状ホストポリマーがシームレスであるように提供することによって製造される。管状ホストポリマー基材は、任意の所望の設計、形状、壁厚、内径/外径、及び任意の所望の長さを有するマンドレルを用いて製造することができる。
【0184】
一実施形態では、管状ホストポリマー基材の表面部分は、モノマー充填ステップの少なくとも一部の間、マスキングされ得る。マスキングされた表面部分は、好ましくは、管腔表面部分及び/又は外表面部分である。
【0185】
任意選択で、この方法は、前にマスキングされた表面部分のマスキングを解除し、前にマスキングされなかった部分をマスキングし、モノマーの充填及び重合のステップを繰り返すことをさらに含む。好ましくは、反復充填ステップは、第1の充填ステップで充填したモノマーとは異なる少なくとも1つのモノマーを含むモノマーを充填することを含む。それにより、IPNは、好ましくは異なるゲストポリマー組成を有する管腔表面ゲストポリマードメイン及び外表面ゲストポリマードメインを有し得る。例えば、管腔表面は、マスキング解除される予定のマスキングされた官能基部分と、それに結合された薬物、例えば血栓症不活性化薬を含み得、外表面は、双性イオン部分を含み得る。他の組合せ及び変形は、明細書から当業者には明らかであろう。
【0186】
一実施形態では、モノマーを充填するステップは、管状ホストポリマー基材に様々な濃度及び/又は様々な種類のモノマーを充填すること、及び/又は様々な充填時間で充填することを含み、それにより、少なくとも1つのゲストポリマードメインに、ある量及び/又は本体構造の表面に垂直な(法線)方向のモノマー勾配のゲストポリマーを提供する。
【0187】
一実施形態では、方法は、管腔表面及び/又は外表面の少なくとも一部にゲストポリマーコーティングを適用することを含み、コーティング適用ステップは、好ましくは、管腔表面及び/又は外表面の前記一部がモノマーにさらされている間に、反応器内で重合ステップを実行することを含む。
【0188】
ゲストポリマーコーティングは、例えば上記のように充填され、重合され、任意選択で架橋されたゲストポリマーのゲストポリマーと同じもの又は異なるゲストポリマーであり得る。
【0189】
ホストポリマーに充填されたゲストポリマーのモノマー及び/又はゲストポリマーコーティングのモノマーは、上記のものであってもよく、有利には、双性イオン性モノマー、カチオン性及びアニオン性モノマーの組合せ、スピロピランモノマー及び/又は保護された官能基部分(例えば、反応性部分/アンカー)を含み、好ましくは、モノマーは、スルホベタイン、カルボベタイン、ホスホベタイン、ホスホコリン又はそれらの任意の組合せのうちの少なくとも1つを含む。
【0190】
ホストポリマーに充填されたゲストポリマーのモノマー及び/又はゲストポリマーコーティングのモノマーが、官能基部分を保護する保護基を含む少なくとも1つのモノマーを含む一実施形態では、この方法は、好ましくは、モノマーを重合し、必要に応じて架橋した後、本体構造の管腔表面及び/又は外表面に露出したゲストポリマーに薬物を結合させるステップをさらに含む。
【0191】
管腔表面及び/又は外表面に露出したゲストポリマーに薬物を結合させるステップは、官能基部分を脱保護し、脱保護された官能基部分を、任意選択でリンカーを介して薬物と反応させて、薬物への共有結合を提供することを含む。保護基は好ましくはフルオレニルメチルオキシカルボニル(FMOC)であり、及び/又は保護された官能基部分は、好ましくは-NH基を含む。
【0192】
この方法は、少なくとも1つのゲストポリマードメインに放出可能な薬物、例えば上記のものを充填することをさらに含み得る。
例えば、薬物は、本体構造の管腔を閉じ、本体構造を薬物含有流体に、例えば充填中に高圧で浸漬することによって、外表面の少なくとも一部を含む外表面ゲストポリマードメインに充填することができる。
【0193】
管腔表面の少なくとも一部を含む管腔表面ゲストポリマードメインは、例えば高圧で、例えば薬物を含む流体で管腔をフラッシングことによって、薬物で充填され得る。
管腔表面も外表面も含まない中間ゲストポリマードメインは、2つ以上の層を積層する前にゲストポリマードメインが充填された層状製品の本体構造を形成することによって充填され得る。
【0194】
一実施形態では、この方法は、本質的にゲストポリマーを含まない管状ホストポリマーのポリマー部分によって分離された2つ以上のゲストポリマードメインを提供することを含む。一実施形態では、この方法は、少なくとも1つのさらなる層を同心円状に、好ましくは完全な表面間接触で管状ホストポリマー基材上又は管状ホストポリマー基材内に提供することを含む。
【0195】
前記少なくとも1つのさらなる層は、流体不透過性(バリア)層部分、多孔質層部分、及び/又は微小孔を有する部分を含み得、この部分は、層の一部又は全層であり得る。
好ましくは、前記さらなる層の少なくとも1つは、IPNを含まないポリマー層、例えばエラストマー層、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、発泡PTFE(例えば、ゴアテックス(Goretex)(登録商標))、ポリエチレンテレフタラート(PET、例えばダクロン(登録商標))、ポリウレタン(PU)及び/又はシリコーンエラストマーのポリマー層である。ポリマー層のさらなる例は、本明細書の他の場所に提供されている。
【0196】
この方法は、本体構造の管腔表面と接触するか、又は外表面と接触する管状支持構造を提供することをさらに含み得る。一実施形態では、管状支持構造は、本体構造に埋め込まれ得る。
【0197】
管状支持構造は、本体構造の外表面にぴったり合う形状のカフを含む。カフは、有利には、本体構造とカフとの間に通路が形成されないようにするために、本体構造に固定される。支持構造は上記のものであってよい。
【0198】
一実施形態では、この方法は、上記に開示された内殖増強薬などの内殖増強薬を、本体構造の外表面の少なくとも一部及び/又は支持構造の外表面の少なくとも一部に適用することを含む。
【0199】
一実施形態では、この方法は、本体構造の外表面の少なくとも一部及び/又は支持構造の外表面の少なくとも一部上に細胞を予備増殖させておくことを含む。細胞の予備増殖は、上に開示されたように提供され得る。
【0200】
一実施形態では、この方法は、本体構造の外表面の少なくとも一部及び/又は支持構造の外表面の少なくとも一部に、例えば上述した生体接着剤を提供することを含む。
本発明はまた、双性イオン部分、カチオン性部分とアニオン性部分の組合せ、キチン又はその誘導体(キトサン)、スピロピラン部分及び/又は保護された官能基部分を含む表面コーティングポリマーを含む表面部分を含む医療用デバイスを含み、好ましくは、ポリマーは、スルホベタイン、カルボベタイン、ホスホベタイン、ホスホコリン又はそれらの任意の組合せのモノマーのうちの少なくとも1つを含む。
【0201】
一実施形態では、ポリマーの表面コーティングは、ヒドロゲルの表面コーティングを含むか、又はヒドロゲルの表面コーティングである。ヒドロゲルは、本明細書の、例えばゲストポリマーに関する他の場所に記載されているものであってよく、例えば、ゲストポリマーについて上述したようにモノマーから得られ得る。
【0202】
双性イオン性モノマー、カチオン性及びアニオン性モノマーの組合せ、コラーゲン、キチン又はその誘導体(キトサン)、スピロピランモノマー及び/又は保護された官能基部分を有するモノマーを含む表面コーティングポリマーは、上記のような対応する表面コーティングポリマーのようなものであり得る。
【0203】
本発明のこの態様の医療用デバイスは、管状であってもよく、あるいは、管状以外の別の形状を有してもよいことに留意されたい。医療用デバイスは、有利には、心臓弁、鼓膜、角膜、血管パッチ、腸、半月板、軟骨、椎間板又はそれらの任意の部分などのインプラントであり得る。
【0204】
一実施形態では、医療用デバイスは、上記の医療用管状デバイスと同じである。一実施形態では、医療用デバイスは、管状ではないことを除いて、上記に開示された医療用管状デバイスと同じである。
【0205】
一実施形態では、ポリマーコーティングは、官能基部分を保護する保護基を含む少なくとも1つのモノマーを含み、保護基は好ましくはフルオレニルメチルオキシカルボニル(FMOC)であり、及び/又は保護された官能基部分は、例えば上に開示したように、好ましくは-NH基を含む。
【0206】
一実施形態では、ポリマーコーティングは少なくとも1つの共有結合された薬物、例えば、酵素、免疫抑制薬、不活性化薬、細胞増殖促進薬及び/又は血餅促進薬及び/又は上記の薬物のうちの少なくとも1つを含む任意の組み合わせを含む。薬物は、例えば、上に開示したものであってもよい。
【0207】
一実施形態では、共有結合された薬物は血栓症不活性化薬であり、血栓症不活化薬は、好ましくは、ヘパリン、EDTA、クエン酸塩、及び/又は上記の血栓症不活化薬の1つを含む任意の組合せを含む。薬物は、例えば、上に開示したものであり得る。
【0208】
一実施形態では、共有結合された薬物は、例えば上に開示したように、リンカー分子を介してポリマーコーティングに共有結合されている。
一実施形態では、ポリマーコーティングは、例えば上に開示したように、スピロピランモノマーなどの光活性部分を含むモノマーから重合されたコポリマーを含む。
【0209】
一実施形態では、ポリマーコーティングは、例えば上に開示したように、(サブ)ゲストポリマー相互貫入キトサンポリマーを含む。
一実施形態では、医療用デバイスは、表面部分を含む総表面積を有し、前記表面部分はポリマーコーティング表面を含み、総表面積の5~約100%である。
【0210】
一実施形態では、医療用デバイスは部分的又は完全にポリマーであり、ポリマーコーティングが医療用デバイスの表面部分に配置され、ポリマー部分は好ましくは可撓性である。「可撓性」という用語は、「硬い」の反対の意味で使用される。したがって、ポリマー部分は、永久的な損傷を受けることなく、曲げられるか、又は変形され得る。
【0211】
本発明はまた、キトサンを含む生体接着剤などの生体接着剤を含む外表面部分を含む医療用デバイスを含む。
医療用デバイスは、上記に開示された通りであり得る。
【0212】
一実施形態では、医療用デバイスは、非管状デバイス(すなわち、生体接着剤を備えた外表面を有する)デバイスを含む。
一実施形態では、医療用デバイスは管状デバイスである。
【0213】
本明細書に記載の本発明のすべての特徴及び本発明の実施形態(範囲及び好ましい範囲を含む)は、そのような特徴を組み合わせない特段の理由がない限り、本発明の範囲内において様々な方法で組み合わせることができる。
【0214】
本発明はまた、双性イオン性ポリマーを製造する方法を含む。本発明者らは、スルホベタイン、カルボベタイン、ホスホベタイン又はホスホコリンに由来する双性イオン部分を含む双性イオン性ポリマーが、非常に優れた防汚特性を有することを見出した。具体的には、双性イオン性ポリマーはタンパク質をはじく特性を有することが見出された。双性イオン性ポリマーは、防汚コーティング及び/又はタンパク質忌避コーティングとして有利に使用することができる。一実施形態では、双性イオン性ポリマーは、上記のようにゲストポリマーとして使用される。
【0215】
双性イオン性ポリマーを製造する方法は、スルホベタイン、カルボベタイン、ホスホベタイン又はホスホコリンから選択される少なくとも1つの双性イオン性モノマーを提供すること、及び前記少なくとも1つのモノマーを重合することを含み、好ましくは、この方法は、重合したモノマーを架橋してヒドロゲルを形成することを含む。
【0216】
有利には、この方法は、2つ以上のモノマーを提供すること、及びそのモノマーを重合することを含み、モノマーは、少なくとも前記少なくとも1つのモノマーを含む。好ましくは、この方法は、重合したモノマーを架橋することを含む。
【0217】
式I~XIIIの新規な双性イオン性モノマーのうちの1つ以上を使用することが、非常に有益であることが見出された。
【0218】
【化14-1】
【0219】
【化14-2】
【0220】
【化14-3】
【0221】
好ましい実施形態において、双性イオン性モノマーは、式1-エテニル-3-(4-スルホナトブチル)-1H-イミダゾール-3-イウムの双性イオン性モノマーである。
これは、図6でCK1573と呼ばれる双性イオン性モノマーである。
【0222】
好ましい実施形態では、双性イオン性モノマーは、以下の双性イオン性モノマー:
1-エテニル-3-(3-スルホナトプロピル)-1H-イミダゾール-3-イウム(SK1572):
【0223】
【化15】
【0224】
1-メチル-4-(2-メチルプロプ-2-エノイル)-1-(4-スルホナトブチル)ピペラジン-1-イウム(CK1578):
【0225】
【化16】
【0226】
3-[ジメチル(2-{2-[(2-メチルプロプ-2-エノイル)オキシ]エトキシ}エチル)アザニウミル]プロパン-1-スルホナート(CK1582):
【0227】
【化17】
【0228】
又は4-[ジメチル({2-[(2-メチルプロプ-2-エノイル)オキシ]エチル})アザニウミル]ブタン-1-スルホナート(SK1583):
【0229】
【化18】
【0230】
のうちの1つ以上であるか、又はそれを含む。
好ましい実施形態では、双性イオン性モノマーは、以下の双性イオン性モノマー:
4-(2-メチルプロプ-2-エノイルオキシメトキシメチルアンモニオ)ブタン-1-スルホナート(CK1591):
【0231】
【化19】
【0232】
4-{ジメチル[3-(2-メチルプロプ-2-エナミド)プロピル]アザニウミル}ブタン-1-スルホナート(CK1584):
【0233】
【化20】
【0234】
1-メチル-4-(2-メチルプロプ-2-エノイル)-1-(4-スルホナトブチル)ピペラジン-1-イウム(CK1586):
【0235】
【化21】
【0236】
1-カルボキシ-N,N-ジメチル-N-(2’-メタクリロイルオキシエチル)メタナミニウム(CK1581):
【0237】
【化22】
【0238】
2-[ジメチル(2-{2-[(2-メチルプロプ-2-エノイル)オキシ]エトキシ}-エチル)アザニウミル]アセタート(cCK1589):
【0239】
【化23】
【0240】
2-{ジメチル[3-(2-メチルプロプ-2-エナミド)プロプリル]-アザムニウミル}アセタート(CK1588):
【0241】
【化24】
【0242】
1-(カルボキシラトメチル)-1-メチル-4-(2-メチルプロプ-2-エノイル)ピペラジン-1-イウム(CK1585):
【0243】
【化25】
【0244】
又は3-(カルボキシラトメチル)-1-エテニル-1H-イミダゾール-3-イウム(CK1587):
【0245】
【化26】
【0246】
のうちの1つ以上であるか、又はそれを含む。
一実施形態では、双性イオン性ポリマーは、双性イオン性モノマーのホモポリマーである。
【0247】
一実施形態では、双性イオン性ポリマーは、2つ以上の双性イオン性モノマーのコポリマーである。
一実施形態では、双性イオン性ポリマーは、少なくとも1つの双性イオン性モノマーと、PHEMA、HEMA及び/又はPEGMAなどの少なくとも1つの非双性イオン性モノマーとのコポリマーである。
【0248】
有利には、モノマーは、モルで少なくとも約0.1%の少なくとも1つの双性イオン性モノマーのモノマー、例えば少なくとも約0.5%、例えば少なくとも約1%、例えば少なくとも約2%、例えば少なくとも約3%、例えば少なくとも約%、例えば少なくとも約4%、例えば少なくとも約5%、例えばモルで2~20%の少なくとも1つの双性イオン性モノマーのモノマーを含む。
【0249】
双性イオン性ポリマーが1.5~10モル%の双性イオン性モノマーを含むモノマーのコポリマーである場合、ポリマーは特に高い防汚特性を有することが見出された。それにより、双性イオン部分間の特定の距離を確保し、高度に防汚性の双性イオン性ポリマーになるようにする。
【0250】
双性イオン性ポリマーは、以下を含み得る:1つ以上のアクリラート;ビニルモノマー、例えばn-ビニルピロリドン(nVP);スチレン;酸素含有、フェニル、アミノ及び窒素含有アクリル誘導体及びメタクリル誘導体、例えばアクリル酸エステル、アクリル酸、メタクリル酸及びエステル、アルキル及びヒドロキシアルキルアクリラート及びメタクリラート;官能化メタアクリラート、例えば2-ヒドロキシエチルメタクリラート(HEMA)、グリセロールモノメタクリラート(GMMA)、ヘプタフルオロブチルアクリラート(HFBA)、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)及び[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]-ジメチル-(3-スルホプロピル)-アンモニウム水酸化物(ベタイン);アルキル置換アクリラート及びメタクリラート、例えばメタクリル酸メチル(MMA)、メタクリル酸エチル(EMA)、メタクリル酸ブチル(BMA)、メタクリル酸ドデシル(DMA);PEG化(メタ)アクチラート(actylate)、例えばポリ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリラート(PEGMEMA)及びポリ(エチレングリコール)メチルエーテルアクリラート(PEGMEA);置換β-及びγ-ラクトン、乳酸モノマー;炭水化物及びフッ素化モノマー;ウレタン;一官能性及び二官能性アルコール;カルボン酸;アミン;イソシアネート;エポキシド;アルキル基を有する芳香族;スルホン化芳香族、芳香族樹脂;イミダゾール;イミダゾール誘導体;双性イオン性モノマー;ピラゾール;第四級アンモニウムモノマー;スピロピランモノマー;コラーゲン、フィブリン、キチン又はその誘導体(キトサン)及び上記の1つ以上を含む任意のもの/又は任意の組合せ。
【0251】
有利には、モノマーは、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリエート)(PHEMA)、HEMA及び/又はPEGMEAを含む。
一実施形態では、モノマーは、少なくとも1つの双性イオン性モノマーと、PHEMA、PEGMEA又はビニルイミダゾールブチルスルホナートのうちの少なくとも1つとを含む。
【0252】
本発明はまた、上記の方法に従って得られる双性イオン性ポリマーを含む。
一実施形態では、双性イオン性ポリマーは、少なくとも1つの双性イオン性モノマーと、HEMA、PEGMEA又はビニルイミダゾールブチルスルホナートのうちの少なくとも1つとから重合されたコポリマーを含む。
【0253】
双性イオン性ポリマーは、有利には、双性イオン性ヒドロゲルである。
双性イオン性ヒドロゲルは、特に、皮膚、毛髪及び/又は粘膜と接触させて使用する化粧品などの製品のための保湿剤として非常に有用であることが見出された。
【0254】
したがって、本発明はまた、上記のような双性イオン性ヒドロゲルを含む保湿剤、ならびにそのような保湿剤を含む化粧品を含む。
「化粧品」とは、人体の様々な外部部分(表皮、毛髪、爪、唇、外性器)、又は歯や口腔の粘膜などと接触させることを目的とした任意の物質又は調製物を意味するものとする。
【0255】
保湿剤は、クリーム及びシャンプーから選択される化粧品での使用に特に有利である。
一実施形態では、化粧品は、約0.1~約10重量%の保湿剤を含むクリームである。
本発明はまた、タンパク質忌避表面領域を有するタンパク質忌避デバイスを含み、ここで、表面領域は、上記のような双性イオン性ポリマーを含む表面である。
【0256】
有利には、タンパク質忌避デバイスは、双性イオン性ポリマーのコーティングを含む。
タンパク質忌避デバイスは、有利には、双性イオン性ポリマーを含むか、又はそれからなるコンタクトレンズであり得る。
【0257】
一実施形態では、タンパク質忌避デバイスは、反応器、容器又はチューブであり、タンパク質忌避表面領域は、好ましくは、使用時にタンパク質含有流体と接触するように適合された表面領域である。タンパク質忌避デバイスは、双性イオン性ポリマーで形成された表面領域を含む任意のデバイスであり得ることを理解されたい。
【0258】
本発明はまた、防汚表面領域を有する防汚デバイスを含み、ここで、表面領域は、上記のように双性イオン性の表面である。
一実施形態では、防汚デバイスは、双性イオン性ポリマーのコーティングを含む。
【0259】
双性イオン性ポリマーは、例えば、スプレーコーティング、ディップコーティング、スピンコーティング、塗装、ホットモールド、又はその他の従来の方法を使用して、コーティングとして適用することができる。一実施形態では、双性イオン性ポリマーのモノマーは、表面に、例えば、シラン処理された表面に直接重合される。
【0260】
本発明はまた、式I~XIIIを有する双性イオン性モノマーのそれぞれ、及び防汚コーティング及び/又はタンパク質忌避表面を提供するためのそれらの使用を含む。
式I~XIIIの双性イオン性モノマーは次のとおりである:
【0261】
【化27-1】
【0262】
【化27-2】
【0263】
【化27-3】
【0264】
本発明の好ましい実施形態及び発明の構成要素の簡単な説明
本発明の上記及び/又は追加の目的、特徴及び利点は、添付の図面を参照して、本発明の実施形態及び例の以下の例示的かつ非限定的な説明によってさらに解明されるであろう。
【0265】
図は概略図であり、原寸に比例して描かれたものではなく、分かりやすくするために簡略化されている場合がある。全体を通して、同一の又は対応する部分には同じ参照番号が使用される。
【図面の簡単な説明】
【0266】
図1a】本発明の医療用管状デバイスの例の側面図である。
図1b】本発明の医療用管状デバイスの例の側面図である。
図2a】本発明の医療用管状デバイスのさらなる例の側面図である。
図2b】本発明の医療用管状デバイスのさらなる例の側面図である。
図2c】本発明の医療用管状デバイスのさらなる例の側面図である。
図2d】本発明の医療用管状デバイスのさらなる例の側面図である。
図3a】本発明の医療用管状デバイスの例の本体構造の部分の側面断面図である。断面図は、本体構造の長さに沿った切断面として示される。
図3b】本発明の医療用管状デバイスの例の本体構造の部分の側面断面図である。断面図は、本体構造の長さに沿った切断面として示される。
図3c】本発明の医療用管状デバイスの例の本体構造の部分の側面断面図である。断面図は、本体構造の長さに沿った切断面として示される。
図4】同時治療のセットアップ、例えば、本発明の実施形態の医療用管状デバイスの管腔表面ゲストポリマードメイン及び外表面ゲストポリマードメインの負荷及び/又は反応を示す。
図5】本発明の実施形態の医療用管状デバイスの双性イオン性ヒドロゲルの双性イオン性部分の一部を形成し得るアニオン及びカチオンの例を示す。
図6】本発明の実施形態の医療用管状デバイスのゲストポリマードメインに使用することができるモノマーの例を示す。
図7】実質的に無色の「スピロ型」のスピロピランと、紫色の「メロシアニン型」のスピロピランを示す。
図7a】SP-OHの合成の3つのステップを示す。
図8a】第1の状態(可視光への曝露後)のスピロピランを含む医療用管状デバイスのサンプルを示す。
図8b】第2の状態(UV光への曝露後)のスピロピランを含む医療用管状デバイスのサンプルを示す。
図9a】上皮層で覆われた表面から、キトサンを含むサンプルを除去するために必要な力を示す曲線である。
図9b】上皮層で覆われた表面から、キトサンを含まないサンプルを除去するために必要な力を示す曲線である。
図10】管状医療用デバイスの感染リスクを評価するために使用された豚の背中を示す。ミノサイクリンとリファンピシンの組合せを充填した6ピースの医療用管状デバイスを、背中の片側に埋め込んだ。6ピースの市販の最先端の血管グラフト(ヘパリンコーティングしたプロパテン(登録商標)CBAS、Gore)を反対側に埋め込んだ。すべてのピースをバクテリアの負荷で攻撃する。2週間後、インプラントを回収し、感染レベルを決定/評価する。
図11a】新規な医療用管状デバイスの、14日後に再開した後の植込み部位を示す。
図11b】ゴア(Gore)(登録商標)プロパテン(登録商標)CBASヘパリンコーティンググラフトの、14日後に再開した後の植込み部位を示す。
図12】IPN及びゴア(登録商標)プロパテン(登録商標)CBASヘパリンコーティンググラフト材料上(左)及び植え込まれた材料の近くの周囲の皮下組織内(右)でのバイオフィルム細菌(黄色ブドウ球菌(S.aureus)ATCC 29213)の定量化を示す。
図13】IPN及びゴア(登録商標)プロパテン(登録商標)CBASヘパリンコーティンググラフト材料中のバイオフィルム細菌(黄色ブドウ球菌ATCC 29213)の、バクテリア攻撃に対する定量化を示す。
図14】タキソールを充填した新規な管状医療用デバイスからの機能的タキソール放出の分析を示す。グラフは、タキソールを充填したIPNグラフト(●)又は充填していないIPN対照(■)の10mmの部分からの放出培地への曝露後の細胞増殖(EA.hy926内皮細胞培養)を示している。21週間後も、グラフトは内皮細胞の増殖を完全に阻害するレベルでのタキソールの放出を示す。
図15a】ヒツジの頸動脈に血管バイパスグラフトとして6か月間植え込んだ後の、ゴア(登録商標)プロパテン(登録商標)CBASヘパリン血管グラフトの外植片を示す。
図15b】ヒツジの頸動脈に血管バイパスグラフトとして6か月間植え込んだ後の、新規な医療用管状デバイスの外植片を示す。
図16】官能基部分を保護する保護基を有するメタクリルモノマーを示し、保護基は好ましくはフルオレニルメチルオキシカルボニル(FMOC)であり、及び/又は保護された官能基部分は好ましくは-NH基を含む。
図17】トロンビン・アンチトロンビン複合体(TAT)レベルをシリコーン対照に対する%で示す。
図18A】シリコーン対照と比較した、異なる量の双性イオン性モノマーを有する双性イオン性IPNの結果(脱線維化血漿)を示す。
図18B】シリコーン対照と比較した、異なる量の双性イオン性モノマーを有する双性イオン性IPNの結果(クエン酸添加血漿)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0267】
図1aは、血管グラフトとしての使用に適した線形医療用管状デバイス1の実施形態を示す。この実施形態では、医療用管状デバイスは本体構造1からなり、単一の管腔を有する。
【0268】
図1bは、血管グラフトとしての使用に適した、分岐した(二股の)医療用管状デバイスの別の実施形態を示す。分岐した医療用管状デバイスは、第1の管腔を有する第1の部分2aと、その管腔を2つの管腔に分岐する分岐部分2b及び2cとを備える。
【0269】
実際には、医療用管状デバイスは、任意の所望の数の分岐を有し得る。好ましくは、医療用管状デバイスは、非分岐医療用管状デバイスである。
図2aは、例えば外表面の小さな変形部によって、及び/又はヒドロゲル(ゲスト)ポリマーの繊毛形状のブラシによって提供る小さいアンカーポイント3を有する本体構造を備えた医療用管状デバイスを示す。
【0270】
図2bは、本体構造4bの各端部の外表面に配置されたカフ4aを有する本体構造4bを備えた医療用管状デバイスを示す。カフは、例えば上記のものであってもよく、例えば、縫合などのために本体構造を強化する機能を有し得る。
【0271】
図2cは、その外表面に支持ネット及び/又はキトサンコーティング5を有する本体構造を備えた医療用管状デバイスを示す。
図2dは、本体構造の外表面6bに適用されたらせん状の支持構造6aを備えた医療用管状デバイスを示す。
【0272】
図3aは、管腔表面ゲストポリマードメイン7a及び外表面ゲストポリマードメイン7bを有する本体構造を示し、管腔表面ゲストポリマードメイン7a及び外表面ゲストポリマードメイン7bは、ゲストポリマーを含まないホストポリマーの(中間)層7cによって分離されている。
【0273】
図3bは、管腔表面ゲストポリマードメイン8a、中間ゲストポリマードメイン8b、及び外表面ゲストポリマードメイン8cを有する本体構造を示し、ゲストポリマードメイン8a、8b、8cは、ゲストポリマーを含まないホストポリマーの層8d、8eによって分離されている。
【0274】
図3cは、IPN層10と、PTFE層などのさらなる非IPN層9とを含む層状構造を有する本体構造を示す。上記で説明したように、本発明の実施形態の本体構造は、2つ、3つ、4つ又は5つなどのいくつかのさらなる層を有し得る。
【0275】
図4に示されるセットアップは、(管腔ゲストポリマーを処理するための)第1の処理流体を備えた第1の容器11、(外部ゲストポリマーを処理するための)第2の処理流体を備えた第2の容器12、及び蠕動ポンプ17を含む。
【0276】
本発明の実施形態の医療用管状デバイス15は、本明細書の他の場所で説明されているように、管腔表面ゲストポリマードメイン及び外表面ゲストポリマードメインを有するように提供される。
【0277】
医療用管状デバイスは、接続スタッド16及びホースクランプ14を介して、第1のホースセクション13a及び第2のホースセクション13bに取り付けられている。第1のホースセクション13aの自由端13a’は、第1の容器11の第1の処理流体に沈められ、第2のホースセクションの自由端13b’は、第1の容器11内に出口を有するように配置される。
【0278】
第1のホースセクション13aは、蠕動ポンプ17に接続されて、第1の処理流体が、連続的に又は段階的に、第1の容器11から第1のホースセクション13aを介して、医療用管状デバイス15の管腔を通して送られ、さらに、処理流体が、セクションホースセクション13bを介して第1の容器11に戻されるようにする。蠕動ポンプ17は、当然、代わりに第2のホースセクション13b’に接続されてもよい。
【0279】
変形例では、第1の処理流体は、処理時間の間、管内に安定して保持され得る。
同時に、医療用管状デバイス15は、第2の容器12の第2の処理流体に沈められる。
第1及び第2の処理流体(11及び12)は、有利には互いに異なっている。第1及び第2の処理流体(11及び12)は、それぞれのゲストポリマードメインに充填するための少なくとも1つの充填薬物を含む充填流体、及びゲストポリマーを処理するように、例えば薬物をゲストポリマーに化学的に結合させるように適合された少なくとも1つの試薬を含む反応流体から、互いに独立して選択され得る。
【0280】
一実施形態では、第1の処理流体(11)は充填薬物であり、第2の処理流体(12)は反応流体である。一実施形態では、第1の処理流体(11)は反応流体であり、第2の処理流体(12)は充填薬物である。薬物は、本明細書の他の場所に記載されてたものであり得る。
【0281】
一実施形態では、第1の処理流体(11)は、管腔表面ゲストポリマードメインに充填させるための、例えば、管腔表面ゲストポリマードメインにおけるタキソール濃度の勾配を提供するための、タキソールを含む充填流体である。この実施形態又は別の実施形態では、第2の処理流体(12)は、リファンピシン及び/又はミノサイクリンなどの抗感染薬を充填するための充填流体である。
【0282】
図5のアニオン及びカチオンの例は、代表的部分であり、これは、修飾及び/又は組み合わせて、所望の双性イオン部分及び/又はモノマーを形成することができる。
図6に示すモノマーは、医療用管状デバイスの1つ以上のゲストポリマードメイン及び/又はゲストポリマー表面を提供するために有利に適用され得る双性イオン性モノマーであるスルホベタイン、カルボベタイン及びホスホベタインを含む。
【0283】
上記双性イオン性モノマーは、それぞれビニルイミダゾール、メタクリルアミド、及びメタクリラートエステルから合成される。
実施例
実施例1a-スピロピラン-OHの合成
SP-OHの合成は、3つのステップで行われ(図7a)、各ステップについて、構造を確認するためにHNMR検査を行った。HNMRスペクトルの分析は、Brukerソフトウェアによって行った。3つのステップのそれぞれについて、サンプルのHNMRはすべての予想されたシグナルを示す。
【0284】
ステップ1:1-)2-ヒドロキシエチル(-2,3,3-トリメチル-3H-インドリウムブロミド(図7aの1)の合成
MeCN(20mL)中の2,3,3-トリメチル-3H-インドール(2.61g、16mmol)及び2-ブロモエタノール(2.46g、20mmol)の溶液を、還流下及びN下で24時間加熱した。周囲温度まで冷却した後、溶媒を減圧下で留去した。残留物をヘキサン(25mL)中に懸濁させ、混合物を超音波処理して濾過した。得られた固体をCHCl(35mL)から結晶化して、1(2.95g、69%)をピンク色の固体として得た。結晶をHNMRで特徴解析した。
【0285】
ステップ2:9,9,9a-トリメチル-2,3,9,9a-テトラヒドロ-オキサゾロ[3,2-a]インドール(図7aの2)の合成
ステップ1の化合物(2.93g、10mmol)及びKOH(0.92g、16mmol)のHO(50mL)溶液を周囲温度で10分間撹拌し、次にそれをEtO(3×20mL)で抽出した。有機相を減圧下で濃縮して、2(1.84g、88%)を黄色の油として得、それをHNMRで特徴解析した。
【0286】
ステップ3:2-(3,3’-ジメチル-6-ニトロ-3’H-スピロ[クロメン-2,2’-インドール]-1’-イル)-エタノール(SP-OH)(図7aの3)の合成
EtOH(10mL)中の2-ヒドロキシ-5-ニトロベンズアルデヒド(1.05g、6mmol)及びステップ2の化合物(0.87g、4mmol)の溶液を、還流下及びN下で3時間加熱した。周囲温度まで冷却した後、混合物を濾過した。得られた固体をEtOH(2mL)で洗浄し、乾燥させて、SP-OH(1.22g、81%)を紫色の固体として得、それをHNMRによって特徴解析した。
【0287】
実施例1b-スピロピランモノマー(SPMA)の合成:
光活性化合物。SPは、青色光照射下で疎水性(中性)スピロピラン状態(いわゆる閉じた形)から親水性(双性イオン性)メロシアニン状態(いわゆる開いた形)に異性化する光活性化合物である(図7)。図示されるように、疎水性状態(SP)は透明であるが、親水性状態(MC)は紫色である。SPの光異性化は完全に可逆的であり、2つの異性体の親水性は大幅に異なる。
【0288】
図7は、可視光では実質的に無色の「スピロ型」のスピロピランと、濃い紫色の「メロシアニン型」のスピロピランを示している。「メロシアニン型」は、双性イオンを生成するため親水性である。「スピロ型」と「メロシアニン型」との間の変換は可逆的であり、材料をそれぞれUV光及び可視光にさらすことによって生じる。これは親水性スイッチを生成し、このスイッチにより、材料に当たる光の波長に応じて材料の親水性が変化し得る。親水性スイッチを利用して、薬物送達をトリガーし、及び/又は細胞に対して付着/分離させることができる。
【0289】
この図は、スピロピランをUV照射、例えば約365nmにさらすことにより、スピロ型からメロシアニン型に切り替えることができることを示している。UV照射後、スピロピランはメロシアニン型からスピロ型にゆっくりと戻るか、又は可視光を照射されると、スピロ型に戻るのがより速くなり得る。
【0290】
スピロピラン型とメロシアニン型の間の変換は、pHや機械的影響などの他の影響によっても引き起こされ得る。
実施例2-スピロピランを備えた医療用管状デバイス
小型の医療用管状デバイスのサンプルを製造した。Nusilから提供されたMED-4720シリコーンエラストマーのチューブ形のホストポリマー基材が提供された。ホストポリマーに完全なIPNを提供するため、モノマーを充填し、本明細書の他の場所で説明されているようにモノマーを架橋した。
【0291】
医療用管状デバイスのヒドロゲル含有量は、乾燥重量で>30%であった。
図8a及び8bに示すように、コモノマーは2-ヒドロキシエチルメタクリラート(HEMA)と少量のスピロピランであった。示されているスピロピランのパーセンテージは、モノマー充填中のフィードにおけるモノマーのパーセンテージである。
【0292】
図8aには、完全に飽和するまで水に浸した後の、医療用管状デバイスのサンプルのスピロピラン含有量を変化させた3×3のサンプルが示されている。サンプルの色は薄茶色がかっており、これは、スピロピランがスピロ型であることを意味する。
【0293】
図8bには、完全に飽和するまで水に浸され、UV照射を受けた後の、スピロピラン含有量が変化する3つのサンプル(ヒドロゲルの約10、20、及び30重量%)が示されている。サンプルは濃い紫色である。つまり、メロシアニン型である。
【0294】
この特性は、例えば薬物送達をトリガーし、及び/又は細胞に対して付着/分離させるのに非常に有利であり得る。SP型とMC型の間の変化は、双性イオン部分の形成により、ポリマーの親水性を変化させる。
【0295】
さらに、この特性を使用して、手術中に医療用管状デバイスが正しく埋め込まれたことを確認できる。縫合する前に、外科医は医療用管状デバイスを照らし、医療用管状デバイスの固定及び緊張度を制御することができる。
【0296】
実施例3-キトサン充填
シリコーン(PDMS)ポリマーの平円板形状のサンプル(Φ10mm、厚さ2.0mm)を、Lebo Production(Lebo Production、Skogaas、スウェーデン)から商品名「PE4062」で提供される押出しPDMS片から打ち抜いた。6つのサンプルを16mlの反応器に配置し、ゲストポリマーPHEMA(ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリラート))を、COを用いて22℃で24時間、圧力30.0MPa(300バール)まで含浸させた。圧力をゆっくりと解放し、3つのサンプル(ブラインド)を密閉袋に回収した。
【0297】
残りの3つのサンプルには、16ml反応器内でキトサンを充填した。
反応器を10mlの10mg/mlキトサン溶液(7.5mlのEtOH、2mlのHO及び1mlの酢酸中の100gのキトサン)で満たした。
【0298】
反応器を、COを用いて、22℃で24時間、30.0MPa(300バール)の圧力に加圧した。
圧力をゆっくりと解放し、3つのサンプルを密閉袋に回収した。
【0299】
生体接着性を試験するための実験セットアップ:生体接着性は、Texture Analyzer Texture(TA:XT.plus、TA Instruments)で測定した。生体接着性は、pH6.8のリン酸緩衝液中2%ブタ胃粘膜(Sigma)溶液で湿らせた吸収紙でシミュレートした。円板を取り除く前に、粘液で湿らせた紙に180秒間押し付けた。接着力は、円板を取り除くのに必要なピーク力及び円板を取り除くための総仕事量(曲線下面積)として測定された。
【0300】
結果を図9a及び9bに示す。
実施例4-キトサン検出
実施例3から得られたサンプルを、それぞれ、0.5M Tris・HCl、pH9に溶解した0.5mlの0.1%(w/v)蛍光増白剤28(FB28 Sigma F3543)で染色する。
【0301】
余分な染料は3回洗浄することで取り除く。各洗浄液は0.5mlの水からなる。
キトサンで処理されていないデバイス(ブラインド)を、処理されたデバイス内のキトサンの存在に特に関連する蛍光を評価するための参照として使用する。
【0302】
蛍光は、デバイスをUVトランスイルミネータ(302nm)に配置し、CCD画像(G:BOX、Syngene)で発光を記録することによってモニタリングされる。これらの画像は、相対的な含有量を推定するために、又は既知の量を含むデバイスを参照して、定量的にアクセスできる。
【0303】
実施例5-キトサンのシリコーンへの付着
いくつかのキトサン発泡体を、キトサンの濃度が約0.5%、1%、及び2%のキトサンゲルを凍結乾燥することによって生成する。
【0304】
キトサン発泡体の厚さは0.5~1mmである。サンプルを1cmのピースに切断する。
KitoZymeキトサン発泡体調製物のサイズに合わせて、標準的なシリコーンのサンプルを1cmのピースに切断する。
【0305】
発泡体を、Sylgard(登録商標)184(Dow Corning、Diatom)を使用して、いくつかの標準的なシリコーンスラブに取り付ける。未硬化のSylgard(登録商標)184を、ブラシを使用してキャスト標準シリコーンの表面に塗布する。
【0306】
粒径が80μm未満のキトサン粉末が提供される。キャスト標準シリコーンサンプルを未硬化のSylgard(登録商標)184シリコーンに浸漬し、続いて表面を粉末と接触させることにより、粉末をいくつかのシリコーンサンプルの表面に付着させる。
【0307】
粉末キトサンは、キャスト標準シリコーンの表面に容易に塗布され、表面にアクセスできることがわかる。キトサンは一晩のインキュベーション後も付着したままである。これにより、すべての縁を覆うことができる。
【0308】
さらに、大きい細孔を有するキトサン発泡体がシリコーン表面への効率的な付着を可能にすることがわかるであろう。キトサン発泡体は、水中で一晩インキュベートした後も付着したままである。発泡体はSylgard(登録商標)エラストマーに埋め込まれるように見え、細胞相互作用には、粉末キトサンよりも利用されにくいと予想される。
【0309】
さらに、より小さい細孔を有するキトサンもまた、キャストシリコーンの表面への効率的な付着を可能にすることが分かるであろう。キトサン発泡体は、水中で一晩インキュベートした後も付着したままである。発泡体はSylgard(登録商標)エラストマーに完全に埋め込まれるように見え、細胞相互作用に利用できるキトサンは、粉末キトサンよりもはるかに少ないと予想される。
【0310】
実施例6-ブタでの試験
誘発された手術部位感染(SSI)動物(ブタ)モデルが確立された。ブタモデルでの黄色ブドウ球菌による直接汚染により、相互貫入ポリマーネットワーク(IPN)血管グラフト材料と現在使用されているヘパリンコーティングePTFE材料(Gore-Tex)(登録商標)を、感染耐性について比較する。
【0311】
IPNパッチ(ホストポリマー:MED-4720シリコーンエラストマー/ゲストポリマー:PHEMA-コ-PEGMEA-23%ヒドロゲルを含む)に充填させた。
実験の2週間前に充填を行った。充填は2段階で行った。ステップ1では、パッチに96%エタノール中の10mg/mlリファンピシンを1週間充填させた。ステップ2では、パッチにリファンピシンで飽和させたMilliQ(登録商標)水(約2.5mg/ml)中の10mg/mlミノサイクリン溶液を、1週間充填させた。実験の日に、パッチを挿入前に室温で15分間PBS中でインキュベートすることにより洗浄した。
【0312】
直接比較実験を、体重約80kgのメスのデンマーク・ランドレース種のブタ6頭で実施した。ブタの右側には、6個のGore-Tex(登録商標)プロパテン(登録商標)CBASヘパリンコーティング血管グラフトパッチ(20.0×10.0×0.6mm)を植え込み、左側には、同じ寸法の6個のIPNを植え込んだ。これらのパッチに10個の黄色ブドウ球菌を接種した。移植片を14日後に取り出した。
【0313】
最初の試験では、黄色ブドウ球菌の投与量を10から10まで変更した。最適な攻撃は細菌10個であることが分かった。したがって、2回目の試験は細菌10個で行った。2回目の試験は、体重約80kgのメスのデンマーク・ランドレース種のブタ2頭で行った。
【0314】
パッチを黄色ブドウ球菌の濃度について分析し、結果を図13に示す。ゴア(登録商標)パッチよりもIPNパッチの方が感染がはるかに少ないことが分かる。
図10は、ブタのうち1頭の右側を、パッチの植え込まれた場所にマークを付けて示している。
【0315】
図11aは、14日後のIPNパッチを示し、パッチには最初に10個の黄色ブドウ球菌を接種した。
図11bは、14日後のゴア(登録商標)パッチを示し、パッチには最初に10個の黄色ブドウ球菌を接種した。
【0316】
IPNパッチが感染を抑制していることが分かる。P値は、感染のリスクが使用されたパッチに依存しないという仮説に基づいて決定された。P値が非常に低いため、この仮説が正しくなく、実際には、ゴア(登録商標)パッチと比較してIPNパッチを使用した場合の感染リスクがはるかに低いことが明確に示されている。リファンピシン及びミノサイクリンを充填したIPNを、ブタの皮下感染モデルのさらに1回のラウンドで試験し、最先端のゴア(登録商標)グラフト材料と比較した。2回目の試験は、体重約80kgのメスのデンマーク・ランドレース種のブタ2頭で、各手術部位の創傷に細菌10個の細菌攻撃/充填で実施した。
【0317】
結果(図12を参照)はやはり、IPN材料の性能が優れることを示し、ゴアのプロパテン(登録商標)と比較して、IPN材料に付着するバイオフィルム細菌が約10分の1に減少した。
【0318】
実施例7-タキソールでの充填
いくつかの医療用管状デバイスを製造した:
IPNホストポリマー:Vesta(米国)によって細いチューブに押出されたNusil(登録商標)MED-4720シリコーンエラストマー。ホストポリマーのチューブは以下の寸法であった:ID5.0mm、壁厚0.75mm。
【0319】
IPNゲストポリマー:PHEMA、PEGMEA-480(ポリ(エチレングリコール)メチルエーテルアクリラート 平均Mn480)とCK1573(ビニルイミダゾールブチルスルホナート)のコポリマー。
【0320】
ヒドロゲル含有量(乾燥)は41%であった。
医療用管状デバイス(無充填の医療用管状デバイス)のサンプルを密閉袋に詰めた。
IPNグラフトを、タキソールストック溶液中で5日間充填させた。「パクリタキセル『Fresenius Kabi』:エタノールとトウゴマ油の50:50溶液中の6mg/ml PTX。http://pro.medicin.dk/Medicin/Praeparater/5984
充填後、医療用管状デバイスを密閉袋に詰めた。
【0321】
実施例8-放出
実施例7(対照)の無充填の医療用管状デバイス及び実施例7の1つのタキソール充填医療用管状デバイスを使用した。
【0322】
対照サンプル及びタキソール充填サンプルを、それぞれ水性細胞増殖培地に浸漬した。毎週、各水性細胞増殖培地の少量のサンプルを抜き出し、それぞれのウェルに加え、約25,000個の内皮細胞(EA.hy926内皮細胞培養物)を各ウェルに加える。2日後、細胞を計数する。
【0323】
結果を図14に示す。21週間後でも、IPNグラフトは内皮細胞の増殖を完全に阻害するレベルでタキソールの放出を示していることが分かる。
実施例9-ヒツジでの試験
ユトランド半島(デンマーク)の南西海岸で飼育されているヒツジの特別な品種を特定した。この品種は比較的おとなしく、術後の取り扱いが簡単である。
【0324】
試験用に5頭のヒツジを選択した。各ヒツジで両側の総頸動脈の端側吻合バイパス手術を、一方の側にゴア(登録商標)プロパテン(登録商標)CBASヘパリン化グラフトを用い、他方の側に実施例7のタキソール充填医療用管状(IPN)デバイスをグラフトとして用いて行った。ヒツジを毎月、二重走査によって検査した。
【0325】
6ヶ月後、グラフトを取り出した。
図15aは、ゴア(登録商標)プロパテン(登録商標)CBASヘパリン化グラフトの1つを示す。図15bは、本発明の一実施形態のタキソール充填医療用管状IPNデバイスの1つを示す。
【0326】
ゴア(登録商標)プロパテン(登録商標)ヘパリン化グラフトは完全に閉じたように見える。一方、IPNデバイスは十分に開いているように見え、過形成の兆候は見られない。
【0327】
実施例10-FMOCの手順
それぞれ1cm×4cm×1mmの4つのサンプルを使用した:
【0328】
【表1】
【0329】
サンプルDのヒドロゲルゲストポリマーの一部を形成するCK1594モノマーは、図16に示すように、FMOCで保護されたアミンを含むモノマーである。
サンプルを4分割されたワイヤメッシュバスケットに入れ、以下の試薬を入れた25mlビーカーに浸漬した。
【0330】
脱保護:DMF中の20%ピペリジンを2×2分間。
カップリング:20mlのDMF中0.38mmolのHBTU、0.37mmolのリンカー、0.5mmolのDIPEA。
【0331】
キャッピング:MeOH中の20%無水酢酸で2時間。
FITC(フルオレセインイソチオシアナート)のタグ付け:DMF中0.1mg/mlのFITCで2時間。
【0332】
洗浄:対象物をMeOHでリンスし、DMF中で反応の前後に少なくとも3×10分間洗浄した。
保管:反応後、次の反応まで、対象物はDMF中で保管した。
【0333】
FITCの励起及び発光スペクトルのピーク波長は約495nm/519nmであり、緑色をもたらす。サンプルを検査したところ、以下が観察された:
【0334】
【表2】
【0335】
サンプルCの弱いシグナルは、ヒドロゲルにFITCが吸収されたものと説明することができる。しかし、シグナルはサンプルDのシグナルに比べて非常に弱く、これは、サンプルDで観察されたシグナルはIPNに付着した/反応しているFITCによるものであることを示している。
【0336】
実施例11-ヘパリングラフト
PMDSのホストポリマーと、PHEMA-コ-PEGMEA-コ-CK1594ヒドロゲルの少なくとも管腔表面ゲストポリマードメインを形成するゲストポリマーとを含む医療用管状IPNグラフト(OD5mm、ID3mm)を製造する(実施例10のサンプルDと同じ方法)。
【0337】
IPNグラフトは、図4のセットアップに示されるように、その管腔表面で流体と接触するように配置されるが、第2の容器は使用しない。
管腔表面を、実施例10のスキームに従って、脱保護流体、カップリング流体、及びキャッピング流体と反応させる。その後、管腔表面をヘパリンと反応させる。
【0338】
米国特許出願公開第2011064781号明細書の遊離末端アルデヒド(実施例1~6)を含むヘパリン実体を、NaCl(100mlあたり約0.5gのヘパリン及び2.95gのNaOH)とともに、pH3.9のDI水に溶解する。
【0339】
管腔表面を、50~60℃の温度で1~2時間ヘパリン溶液と接触させる。
その後、IPNグラフトを水中で洗浄する。
本発明のさらなる適用範囲は、以下に提示される説明から明らかになるであろう。ただし、詳細な説明及び具体的な実施例は、本発明の好ましい実施形態を示したものではあるが、詳細な説明から本発明の主旨及び範囲内の様々な変更及び修正が当業者には明らかであるため、詳細な説明及び具体的な実施例は例示としてのみ提供されていることを理解されたい。
【0340】
実施例12-双性イオン性IPN
図6に示すように、双性イオン性モノマーを使用していくつかの双性イオン性IPNサンプルを調製した。
【0341】
シリコーンサンプル(外径(OD):5.10mm、内径(ID):4.10mm、厚さ:0.50mm、約35gのチューブ)をステンレス鋼製格子内に構造化し、1リットル反応器(1L、BC-2、HiP、米国ペンシルベニア)に、4cmのマグネットバー(撹拌用)とともに入れた。約100mLのHEMA、100mLのPEGMEA、5gの双性イオン性モノマー、6mLのEGDMA、ヘキサン中の50mLの0.2M DEPDC、70mLのEtOH及び70mLのTHF(テトラヒドロフラン)を別のビーカーで20分間混合した。次に、溶液を反応器に加え、反応器を対応するボルトで、169Nm(125ft-lb)のトルクで閉じた。反応器をマグネチックスターラー(Ret
Basic、IKA、ドイツ)の上に置いた。反応器を特注の加熱ジャケットで包んだ。入口と出口は反応器の上部に配置されたが、適切に混合するために入口チューブは反応器の底に配置し、出口チューブは廃棄物容器に配置した。すべてのチューブは1.588mm(1/16インチ)で、内径は0.762mm(0.03インチ)(15-9A1-030、HiP、米国ペンシルベニア)であった。圧力トランスミッタを入口に接続した。圧力及び温度を、カスタムメイドのLabViewプログラムを介してモニタリング及び記録した。動作圧力を確保するため、米国Thar Designs Inc.のTharP-50電気駆動高圧ポンプを適用する。ポンプには熱交換器を装備し、5℃の冷却水を供給した。COを反応器に加え、約16時間、40℃で約30.0MPa(約300バール)の圧力にした。この間、モノマーは膨潤したシリコーン中に拡散し、重合して架橋する。次に、圧力を廃棄物容器への出口チューブを介して下げた。反応器の減圧には30~60分かかる。その後、反応器を最初にエタノールで洗浄し、続いて脱塩水で洗浄した。製造されたIPNサンプルを収集し、水道水ですすぐことによって過剰なポリマーを除去した。IPNサンプルを96%EtOHに1週間入れて、過剰なモノマー及び非架橋ポリマーを抽出した。次に、IPNサンプルを一定の重量になるまで乾燥させてから、ヒドロゲルの含有量を計量により決定した。
【0342】
製造されたサンプルを表1に示す。
【0343】
【表3】
【0344】
名称のG7/G8/G9の部分は、使用されているシリコーンを示す。
G7:Nusil(登録商標)Med 4020、デュロメータ:25タイプA(押出しチューブ(Vesta、米国)L=2m、壁=0.5mm、φ(内径)=4.1mm。
【0345】
G9:Nusil(登録商標)Med 4720、デュロメータ:25タイプA(押出しチューブ(Vesta、米国)L=2m、壁=0.75mm、φ(内径)=5mm)。
G10:Nusil(登録商標)Med 4027、デュロメータ:30タイプA(押出しチューブ(Vesta、米国)L=0.5m、壁=0.75mm、φ(内径)=5mm)。
【0346】
実施例13-トロンビン・アンチトロンビン複合体(TAT)レベル。
実施例12からのいくつかのIPNサンプルを、血液親和性について試験した。双性イオンベースのIPNを、トロンビン・アンチトロンビン(TAT)及び補体分割産物C3cをそれぞれ凝固及び補体活性化の高感度マーカーとして特異的に測定する酵素免疫測定法(ELISA)を使用して評価した。両方のマーカーは、生体材料の評価のためのISO規格10993-4に含まれている。
【0347】
双性イオン性IPN上でインキュベートした血漿サンプル及びシリコーンのサンプル(参照サンプル)を、ELISAを使用してトロンビン・アンチトロンビン(TAT)レベルについて分析した。Maxisorp(登録商標)プレートを、4℃で2.0μg/mlの抗TATモノクローナル抗体(HYB14-22)O/Nでコーティングした。翌日、プレートを0.05%Tween(登録商標)-20を含むPBS中で3回洗浄し、15分間ブロッキングした。ヒト血漿のサンプルを1:320に希釈し、1:100~1:1024に希釈した血清プールを、PBS+0.1%BSA+凝集IgG+10mM EDTAで希釈した標準化サンプルとして使用した。サンプルを室温で1時間インキュベートし、前述のように洗浄した。ビオチン化二次抗体230-01を1:500に希釈し、1時間インキュベートした。各プレートを洗浄し、ストレプトアビジン結合HRPを1:4000で添加し、30分間インキュベートした後、3回洗浄した。OPD/H溶液を使用して15分間発色させ、100μlの1M HSOで停止させた。プレートを490nmで測定し、参照として650nmを用い、SoftMax(登録商標)Proソフトウェアを使用してTAT濃度を定量化した。
【0348】
結果を図17に示す。
実施例14-異なる量の双性イオン性モノマーを有する双性イオン性IPN
3つの異なる量の双性イオン性モノマーCK1573を用いて、いくつかの双性イオン性IPNサンプルを調製した。双性イオン性IPNサンプルを、実施例12に記載されているように、ただしそれぞれ2g、5g、及び10gの双性イオン性モノマーを使用して製造した。
【0349】
各タイプにつき6個のサンプル(2g、5、及び10gの双性イオン性モノマー)を、それぞれ脱線維化血漿及びクエン酸添加血漿を使用して、実施例13に記載されているように試験した。各群を、ダネットの検定を使用して、シリコーン対照と有意差があるか比較した。P値<0.05は有意であると定義され、*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001で示される。
【0350】
結果を図18A(脱線維化血漿)及び図18B(クエン酸添加血漿)に示す。
実施例15-双性イオン性ポリマーコーティングはタンパク質吸着を抑制する
それぞれ5Lの容量を有する2つの試験容器A及びBが提供された。容器の内面はアルミ製である。
【0351】
容器Aの内面は、双性イオン含有ヒドロゲルコーティングで覆われている。双性イオン含有ヒドロゲルコーティングは、相対モル量35:10:1のHEMA、PEGMA及び双性イオン性モノマー1573から提供される。
【0352】
容器Aは、最初にシランカップリング剤の表面処理を受けた。容器の内面を洗浄し、3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(酢酸/水/エタノールの0.01:1:4混合物中2wt%v/v)の溶液を内面に塗布した。2時間後、内面をエタノールですすぎ、乾燥させた。
【0353】
ヒドロゲルコーティングを、シラン化固体基材上に直接モノマー重合することによって調製した。表面をモノマーの前駆体水溶液にさらし、UV光重合(波長365nm、30mWcm-2)に30分間供した。その後、膨潤平衡に達するまで3日間、容器を純水で満たした。
【0354】
前駆体溶液は、相対モル量35:10:1のHEMA、PEGMA及び双性イオン性モノマー1573、ならびに0.5モル%の架橋剤、ならびに0.5モル%の開始剤を含む。
【0355】
新鮮な搾乳牛乳3Lを各容器に加え、5℃で3時間保持する。その後、容器を空にし、水道水(20℃)を表面に1分間噴霧して洗浄した。その後、吸着されたタンパク質について表面を調べた。
【0356】
容器Aの内面に残っているタンパク質の量は、容器Bの内面に残っているタンパク質の量と比較して大幅に減少している。
実施例16-医療用管状デバイス(グラフト)の内腔及び管腔表面におけるタキソールの勾配充填
医療用管状デバイスの管腔内で細胞増殖のリスクがあると考えられる場合、抗増殖薬が少なくとも管腔表面の一部として配置されることが望ましい。
【0357】
グラフトを、70vol%ETOH中5分間の2回の超音波処理によって滅菌した。次に、グラフトを、無菌ベンチ内の無菌ペトリ皿で週末にかけて乾燥させた。
グラフトを、下部はクランプで、上部はストリップに取り付けられたピペットチップと共にスタンドに垂直に取り付けた。
【0358】
純粋なタキソール溶液(エタノールとヒマシ油の50:50混合物中の6mg/mlタキソール、Fresenius-Kabi)をグラフトの内腔に充填し、充填中に気泡を揉み出した。
【0359】
滅菌ベンチで2時間半充填した。グラフトを空にし、ロッドピペットで適用した100mlの70vol%ETOHを使用して内部を激しくすすいだ。外側と内側を、上部から約300mlの70vol%ETOHでリンスした。
【0360】
グラフトを三脚上で少し乾燥させ、次に10~14cmのグラフト片に切断し、それを滅菌オートクレーブバッグに入れ、バッグを密封した。これで、グラフト片を手術で使用する準備が整った。
【0361】
実施例17-1-エテニル-3-(4-スルホナトブチル)-1H-イミダゾール-3-イウム(CK1573)の合成
1Lの3つ口丸底フラスコに、メカニカルスターラー、接触温度計、及びN2バブラーを取り付けた。フラスコに、1,4-ブタンスルトン(0.48モル、63.4g)、1-ビニルイミダゾール(0.40モル、37.6g)及びMeCN(250mL)をチャージした。反応物を60℃で72時間暗所で撹拌した。反応物をMeCN(125mL)で希釈し、撹拌しながら室温に冷却して、沈殿物を懸濁させたままにした。反応混合物を濾過し、反応フラスコをMeCNですすぎ、残った沈殿物をフィルターに移した。固体をMeCN(250ml)及びMTBE(2×100mL)で洗浄し、減圧下で24時間乾燥させて、表題生成物87.5g(95%)を白色固体として得た。1H NMR(300MHz,D2O)δ7.80(d,J=2.2Hz,1H),7.63(d,J=2.1Hz,1H),7.16(dd,J=15.6,8.7Hz,1H),5.82(dd,J=15.6,2.8Hz,1H),5.45(dd,J=8.7,2.8Hz,1H),4.32(t,J=7.1Hz,2H),3.02~2.94(m,2H),2.14~2.02(m,2H),1.85~1.72(m,2H)。13C NMR(75MHz,d2o)δ134.2(t,1JC-D=34Hz),128.1,122.7,119.5,109.3,49.9,49.2,27.9,20.8。
【0362】
重水素交換のために1つのイミダゾールプロトンが欠落しており、これは134.2ppmで13Cトリプレットも引き起こす。
実施例18:1-エテニル-3-(3-スルホナトプロピル)-1H-イミダゾール-3-イウム(CK1572)の合成
1Lの3つ口丸底フラスコに、メカニカルスターラー、接触温度計、及びN2バブラーを取り付けた。フラスコに、1,3-プロパンスルトン(0.48モル、58.6g)、1-ビニルイミダゾール(0.40モル、37.6g)及びMeCN(200mL)をチャージした。反応物を室温で72時間暗所で撹拌した。反応物をMeCN(125mL)で希釈して沈殿物を懸濁させたままにした。反応混合物を濾過し、反応フラスコをMeCNですすぎ、残った沈殿物をフィルターに移した。固体をMeCN(250mL)及びMTBE(2×100mL)で洗浄し、減圧下で24時間乾燥させて、表題生成物86.3g(>99%)を白色固体として得た。1H NMR(300MHz、D2O)δ7.82(d,J=2.2Hz,1H),7.66(d,J=2.2Hz,1H),7.17(dd,J=15.6,8.7Hz,1H),5.83(dd,J=15.6,2.8Hz,1H),5.46(dd,J=8.7,2.8Hz,1H),4.44(t,J=7.2Hz,2H),3.02~2.90(m,2H),2.45~2.28(m,2H)。13C NMR(75MHz,D2O)δ134.4(t,1JC-D=34Hz),128.1,122.7,119.6,109.4,48.0,47.1,24.9。
図1a
図1b
図2a
図2b
図2c
図2d
図3a
図3b
図3c
図4
図5
図6
図7
図7a
図8a
図8b
図9a
図9b
図10
図11a
図11b
図12
図13
図14
図15a
図15b
図16
図17
図18A
図18B