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特開2024-111036心膜を通じた切断を案内するためのカメラを含んだ心膜カテーテル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111036
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】心膜を通じた切断を案内するためのカメラを含んだ心膜カテーテル
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/06 20060101AFI20240808BHJP
   A61B 18/12 20060101ALI20240808BHJP
   A61M 25/10 20130101ALI20240808BHJP
   A61B 1/018 20060101ALI20240808BHJP
   A61B 1/01 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
A61M25/06 556
A61B18/12
A61M25/10
A61B1/018 515
A61B1/01 513
A61B1/01 512
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024095825
(22)【出願日】2024-06-13
(62)【分割の表示】P 2019233938の分割
【原出願日】2019-12-25
(31)【優先権主張番号】16/232,127
(32)【優先日】2018-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】イェフダ・アルガウィ
(72)【発明者】
【氏名】アサフ・ゴバリ
(72)【発明者】
【氏名】イリヤ・シットニツキー
(72)【発明者】
【氏名】ギリ・アティアス
(72)【発明者】
【氏名】イスラエル・ジルバーマン
(57)【要約】
【課題】医療用プローブを提供すること。
【解決手段】医療用プローブが、シャフトと、カメラと、中空切断ツールと、膨張式バルーンとを含んでいる。シャフトは、患者の身体内の切断部を通じて挿入されるように構成されている一方で、シャフトは、シャフトを通じて延びる作動真空チャネルを含んでいる。カメラは、シャフトの遠位端部に装着され、身体内の標的組織部位の画像を提供するように構成されている。中空切断ツールは、ガイドワイヤに被せてシャフトの作業真空チャネルに挿入するためのものであり、カメラによって撮られた画像の案内の下で標的組織部位に穿孔するように構成されている。膨張式バルーンは、シャフトの遠位端部を安定化させるように構成されており、標的組織部位の画像を遮らないように、カメラに対して近位側に配置されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用プローブであって、
患者の身体内の切断部を通じて挿入されるように構成されたシャフトであって、前記シャフトを通じて延びる作業真空チャネルを備える、シャフトと、
カメラであって、前記シャフトの遠位端部に隣接して配置され、前記身体内の標的組織部位の画像を提供するように構成されている、カメラと、
ガイドワイヤに被せて前記シャフトの前記作業真空チャネルに挿入するための中空切断ツールであって、前記カメラによって撮られた画像の案内の下で前記標的組織部位に穿孔するように構成されている、中空切断ツールと、
前記シャフトの前記遠位端部を安定化させるように構成されている膨張式バルーンであって、前記標的組織部位の前記画像を遮らないように、前記カメラの遠位端部に対して近位側に配置されている、膨張式バルーンと、
管腔を有するシースであって、前記シャフトが患者の身体内に挿入される際に、前記シャフト、前記カメラ、及び、前記膨張式バルーンが前記管腔を通過するシースと、
を備え、
前記膨張式バルーンの内周面は、前記シャフトの長手方向における一部の領域において、前記シャフトの外周面の円周方向全体、及び、前記カメラの外周面全体を取り囲んでおり、前記膨張式バルーンの前記内周面と前記シャフトの前記外周面及び前記カメラの前記外周面との間に流体が導入されることで、前記膨張式バルーンは膨張し、
前記シースの内周面は、前記シャフトの前記長手方向における前記一部の領域において、前記膨張式バルーンの外周面全体を取り囲んでいる、医療用プローブ。
【請求項2】
前記標的組織部位は心膜部位を含み、前記シャフトは、前記患者の胸部内の切断部を通じて挿入されるように構成されている、請求項1に記載の医療用プローブ。
【請求項3】
標的組織位置を治療するために前記作業真空チャネルを介して挿入されるように構成されている第2のプローブを備え、前記カメラは、前記第2のプローブによる治療の画像を提供するように更に構成されている、請求項1に記載の医療用プローブ。
【請求項4】
前記第2のプローブはまた、前記医療用プローブのための偏向可能なガイドワイヤとして働くように構成されている、請求項3に記載の医療用プローブ。
【請求項5】
前記第2のプローブはアブレーションカテーテルを備える、請求項3に記載の医療用プローブ。
【請求項6】
前記膨張式バルーンは、前記医療用プローブと前記第2のプローブの両方を安定化させるように構成されている、請求項3に記載の医療用プローブ。
【請求項7】
前記標的組織位置は心筋位置を含む、請求項3に記載の医療用プローブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広義には低侵襲プローブに関するものであり、具体的には低侵襲心臓プローブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
体内組織に低侵襲処置を適用するための様々な技術が、特許文献に提案されている。例えば、米国特許出願公開第2016/0249978号には、中で処置を実行するための心膜アクセスのための装置及び方法が記載されている。この装置は、近位端部と、患者の身体の中に導入するようにサイズ決めされた遠位端部と、遠位端部上の撮像アセンブリと、チューブ状部材の遠位端部に取り付けられた実質的に透明な拡張式部材と、を含むチューブ状部材を含んだカテーテルを含む。撮像アセンブリは、拡張式部材の内部に配設されるが、ここで撮像アセンブリは、拡張式部材の表面を通して組織を撮像する。チューブ状部材は、患者の身体から流体を吸引するために、バルーンの近位側のチューブ状部材の遠位端部上の1つ又は2つ以上のドレナージポートと連通するドレナージルーメンを含んでいる。カテーテルは、心膜腔にアクセスするために使用されてもよく、アブレーションプローブは、流体がドレナージポートを介して注入及び/又は吸引されている間に心臓組織を治療するために、カテーテルを通して導入されてもよい。
【0003】
別の例として、米国特許出願公開第2008/0183080号には、撮像システムを組み込んでおりかつ低侵襲性である介入的医療用具が記載されている。この用具は、人体の外側にある細長本体の所定の位置で摺動可能でありかつ固定され得る係留部分を備えられている。この用具は、例えば、人体内の内壁に用具を同様に固定するための展開可能な第1及び第2のバルーンを更に含んでいる。この医療用具は、カテーテル、シースの形態をなしてもよく、又は、介入的用具、特に心膜における低侵襲処置に好適なものを含み得る。二重シーリング/ロッキングバルーンは、患者の皮膚表面へと遠位バルーンを、次いで近位バルーンを別々に膨張させるために、膨張チャネルの上の第1の位置から膨張チャネルの上の第2の位置へと移動するための摺動可能に移動可能なアセンブリを備えてもよい。あるいは、バルーンアセンブリは、近位端部から第1及び第2の膨張/収縮チャネルにわたって固定されてもよい。撮像システムは、遠位端部に近接してかつ/又は細長本体部分の側部上に配置された1つ又は2つ以上の超音波トランスデューサを備え、そのため、用具を標的領域に案内し、展開可能なバルーンの膨張を案内し、処置の実施を案内し、かつ/又は複数のルーメンを介して処置を実施するための標的エリアへの視覚的アクセスを提供するために使用され得る。
【0004】
米国特許第5,827,216号には、心膜腔にアクセスするための心膜穿刺の装置及び方法が記載されている。この発明は、先端が孔を有する経皮チューブを挿入することからなり、その孔は、前心膜の上に配置され、これに接触する。チューブ内に真空を導入することにより、その孔内に心膜のブレブが形成される。チューブ内の案内針が、心外膜との接触を回避しながら、心膜のブレブに穿刺するように前進される。次いで、針内の中空フィラメント又は心電図リード線又は可撓性ガイドワイヤが心膜腔の中へと前進され得る。ガイドワイヤは、選択された治療薬を心膜腔に注射又は注入して様々な心臓及び血管疾患を治療するために、心膜腔内に心膜内カテーテルを案内するために使用されてもよい。制御された薬物放出材料が、治療薬を心膜腔にゆっくりとかつ/又は持続的に送達するために、針を通して注射され得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のある実施形態は、シャフトと、カメラと、中空切断ツールと、膨張式バルーンとを含んだ医療用プローブを提供する。シャフトは、患者の体内の切断部を通じて挿入されるように構成されている一方で、シャフトは、シャフトを通じて延びる作業真空チャネルを含んでいる。カメラは、シャフトの遠位端部に装着され、身体内の標的組織部位の画像を提供するように構成されている。中空切断ツールは、ガイドワイヤに被せてシャフトの作業真空チャネルに挿入するためのものであり、カメラによって撮られた画像の案内の下で標的組織部位に穿刺するように構成されている。膨張式バルーンは、シャフトの遠位端部を安定化させるように構成されており、標的組織部位の画像を遮らないように、カメラに対して近位側に配置されている。
【0006】
いくつかの実施形態では、標的組織部位は心膜部位を含み、シャフトは、患者の胸部内の切断部を通じて挿入されるように構成される。
【0007】
いくつかの実施形態では、医療用プローブは、標的組織位置を治療するために作業真空チャネルを介して挿入されるように構成されている第2のプローブを更に備え、カメラは、第2のプローブによる治療の画像を提供するように更に構成される。
【0008】
ある実施形態では、第2のプローブはまた、医療用プローブのための偏向可能なガイドワイヤとして働くように構成される。
【0009】
別の実施形態では、第2のプローブはアブレーションカテーテルを含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、膨張式バルーンは、医療用プローブと第2のプローブの両方を安定化させるように構成される。
【0011】
いくつかの実施形態では、標的組織位置は心筋位置を含む。
【0012】
更に、本発明のある実施形態によれば、シャフトを通じて延びる作業真空チャネルを有するシャフトと、シャフトの遠位端部に装着されたカメラと、カメラに対して近位側に配置された膨張式バルーンと、を含んだ医療用プローブを、患者の身体内の切断部を通じて挿入することを含む、方法が更に提供される。カメラによって撮られた画像の案内の下で標的組織部位に穿刺するために、中空切断ツールが、作業真空チャネルを介して、ガイドワイヤに被せて挿入される。ガイドワイヤは後退される。第2のプローブが、作業真空チャネルを介して挿入される。バルーンは、医療用プローブ及び第2のプローブを安定化させるように膨張される。カメラによって撮られた画像の案内の下で、第2のプローブを使用して標的組織位置が治療される。
【0013】
本発明は、以下の「発明を実施するための形態」を図面と併せて考慮することで、より完全に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態による、心膜カテーテルを備えた低侵襲心膜治療のためのシステムの模式的な絵画図である。
図2】本発明の実施形態による、図1の心膜カテーテルの模式的な絵画図である。
図3】本発明の実施形態による、図2の心膜カテーテルの遠位端部の模式的な絵画図である。
図4】本発明の実施形態による、図3の遠位端部を製造するための方法を模式的に表すフローチャートである。
図5】本発明の実施形態による、低侵襲心膜治療のための方法を模式的に表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
概論
特定の種類の心室性不整脈及びいくつかの心房細動などの心臓の問題を緩和するために、高周波(RF)アブレーションなどの心膜治療が用いられ得る。しかしながら、心筋の外側表面に適用される心膜アブレーションは、幾分かは心外膜脂肪の存在が原因で成功が限られ得るものであった。脂肪層は、例えば、アブレーションカテーテルと筋肉組織との不適切な接触を引き起こすことによって、適切なRFエネルギー送達を妨げることがある。加えて、有意な量の心外膜脂肪が存在するため、心筋を対象とする任意のアブレーションエネルギーがむしろ、心筋と比較して相当に低い伝導性を有する脂肪によって吸収されることがある。心膜アブレーションはまた、冠動脈血管に近接したエネルギー送達のために生じ得るような他の合併症の可能性が増大することによっても制限され得る。
【0016】
以下に説明及び図示される本発明の実施形態は、心筋などの身体内の標的組織の制御されたアクセス及び治療を可能にするために、カメラ案内式の医療用プローブ(例えば、本明細書では「第1のプローブ」とも呼ばれるカテーテル)を提供する。本明細書に記載される実施形態は、心筋の外側表面にアクセスしその外側表面を治療し得る第2のプローブを備えたカメラ案内式の心膜カテーテルを提供する。開示される心膜カテーテルは、胸部の小さな切開部を通じて患者に挿入され、カメラを使用して心膜にナビゲートされる。カテーテルが心膜のすぐ外側の位置に配されると、治療する医師は、カメラによって撮影された画像による案内の下で、その脂肪質の心外膜下層に穿孔することを含めて心膜に穿孔するために、ガイドワイヤを介してカテーテルの作業チャネルに中空切断ツールを挿入する。カメラは、医師が中空切断ツールで心筋自体に偶発的に穿孔することなど、プロセスにおける付帯的損害を回避するのを支援する。
【0017】
開示される説明の文脈において、「中空切断ツール」という用語は、心膜カテーテルの作業チャネルを通じて挿入され、心膜内で切断を実施するために使用される任意のツール、例えば、針、ブレード、又は切断レーザーの形態を有するツールを表す。
【0018】
いくつかの実施形態では、作業チャネルは、下方の心筋に対するリスクを最小限にして中空切断ツールによる切開を容易にするために心膜を持ち上げるように構成された真空チャネルとして付加的に働く。
【0019】
ガイドワイヤは次いで心膜内の切開部を通じて前進され、中空切断ツールが引き抜かれ、カテーテルは、心膜内の切開部を通じて、ガイドワイヤに被せて押し込まれる。カテーテルが心膜の内側に位置すると、ガイドワイヤが後退し、典型的にはRFアブレーションカテーテルである第2のプローブが作業チャネルの中へと挿入され、また再びカメラを使用して、標的体組織(すなわち、心筋)の位置などの所望の領域にナビゲートされる。
【0020】
いくつかの実施形態では、医療用プローブは膨張式バルーンを備え、これは典型的には、後続のアブレーション処置中に使用されるものであり、切開中には圧縮された状態に保たれる。バルーンは典型的には、カメラと切開の標的組織部位(すなわち、心膜)との間で、前方への視線(例えば、視界)を含む視野を不明瞭にしないように、カメラの近位側に配置される。続いて、膨張されると、バルーンは、バルーンの一方の端部から心外膜層を押圧し、もう一方の端部から心筋を押圧することによって、心膜カテーテル及び第2のプローブを安定化させる。
【0021】
ある実施形態では、第2のプローブは偏向され得るが、心膜カテーテルは第2のプローブよりも柔軟となるように構築され、そのため、第2のプローブは、治療機能(例えば、RFアブレーション)を実施することに加えて、偏向可能なガイドワイヤとして作用する。
【0022】
開示されるカメラ案内式の心膜カテーテルは、低侵襲心膜治療のリスクを減少させ得るだけでなく、場合によってはアブレーションなどの心筋治療の臨床成績をも改善し得る。
【0023】
システムの説明
図1は、本発明の実施形態による、心膜カテーテル28を備えた低侵襲心膜治療のためのシステム20の模式的な絵画図である。医師26が、心臓24の近傍で、患者22の胸部の切断部の中へと、シース47を通して心膜カテーテル28のシャフト29を患者22の胸郭に挿入している。次いで、医師26は、カテーテルのシャフト29の遠位端部30が、挿入図25に示されるように、心膜嚢55に接近し、それを切断して心筋51にアクセスするように、心膜カテーテルを操作する。この切断は、アブレーションカテーテルなどの第2の治療プローブを後に挿入して心筋51の下方のエリアをアブレーションする目的で行われるものである。
【0024】
心筋51へのアクセスを得るために、遠位端部30には、心膜カテーテル28内の作業チャネルを通じて遠位方向に前進される中空切断ツール32が装着される。しかしながら、上述のように、心膜嚢55、特に心膜嚢55の脂肪質の心外膜副層57を切断することにより、中空切断ツール32が心筋51に穿刺し、心臓腔50にまでも侵入するなどといった付帯的損害が生じ得る。
【0025】
中空切断ツール32を慎重にかつ正確に案内するために、医師26は、遠位端部30に配置されたカメラ35を使用するが、これは、切断処置中に心膜55の画像37(例えば、ビデオ画像)を提供するためのものである。心膜55のビデオ画像は、医師26に向けてディスプレイ27上に提示される。カメラ35の視野から、例えば血液を除去するために、灌注ポンプ48は、カメラ35のレンズを洗浄する生理食塩水などの流体を供給する。清浄用の流体は、カテーテル28内のルーメンを介して遠位端部30へと流れ、チューブ40から抜け出す。
【0026】
以下に記載されるように、心筋51に穿刺することなどの付帯的損害を回避するための付加的な手段として、医師26は、心外膜を持ち上げて心筋から離すように、真空チャネル34を動作させる。チャネル34は、ケーブルチューブ36を介してコンソール24内の真空ポンプ46に接続されている。
【0027】
心膜55における切断を実施した後、中空切断ツール32が後退され、アブレーションカテーテル(図3に示される)などの第2のプローブが、以下に記載されるように、心筋51を治療するために、心膜カテーテル28の同じ又は異なる作業チャネルを通じて前進される。
【0028】
ある実施形態では、アブレーションカテーテルは、アブレーションのための心筋位置の付近にある心膜の切断部を通じて、カメラ35の案内の下で挿入される。アブレーションカテーテルの先端部が標的の心筋位置において心筋と接触していることを確認した後、カメラ35によって捕捉された画像を用いることにより、医師26がRFアブレーションを実施する。
【0029】
RFアブレーションを実施するために、医師26は、制御コンソール42内のRFエネルギー発生器44を作動させて、ケーブル38を介して遠位端部30にRFエネルギーを供給する。遠位端部30内の温度センサ(図示せず)は、RFエネルギー供与量及び/又は冷却潅注の流量を制御する際に使用するためのフィードバックをコンソール42に提供し得る。
【0030】
心膜を通じた切断を案内するためのカメラを含んだ心膜カテーテル
図2は、本発明の実施形態による、図1の心膜カテーテル28の模式的な絵画図である。図示のように、中空切断ツール32が遠位端部30の遠位縁部を越えて突出しており、また、心膜嚢55及びその下方の心外膜層57に近接していることが確認される。中空切断ツール32は、作業チャネルとしても働く真空チャネル34を通じて挿入される(カテーテル28の断面128で確認される)。真空チャネル34は、層55及び57の両方を持ち上げて、下に位置する心筋51に対するリスクを最小限にして、中空切断ツール32による切開を容易にするように構成されている。切開プロセスの全体が、視界350を有するカメラ35を使用して案内されて、標的の心膜組織に対する中空切断ツール32の画像が提供される。カメラ35への照明は、光ファイバ束などの1つ又は2つ以上の光源39、又は拡散性の光学部品で覆われたLEDによって提供される。
【0031】
圧縮されて見える膨張式バルーン45が、視界350を妨害しないように、カメラ35に対して遠位側に装着されている。バルーンはその後、流体チャネル145を用いて膨張及び圧縮される。
【0032】
図2に示されている例は、単に概念を分かりやすくする目的で選択されたものである。図2は、本発明の実施形態に関連する部分のみを示す。遠位端部30上に装着された付加的なセンサなどの他のシステム要素は省略されている。カテーテル28はまた、いくつかの付加的な作業チャネルを含んでもよい。
【0033】
図3は、本発明の実施形態による、図2の心膜カテーテルの遠位端部30の模式的な絵画図である。図示のように、心筋51の上の標的組織68をアブレーションするために、アブレーション電極66を有するアブレーションカテーテル60が真空/作業チャネル34を介して挿入される。アブレーションカテーテル60は、カテーテル28のための偏向可能なガイドワイヤとして働くように更に構成されている。バルーン45は、(例えば、シャフト29の遠位端部30を安定化させることによって)処置中にカテーテル28及び60を安定化させるために膨張される。カメラ35は、RFアブレーション治療を案内するために、標的の心筋位置68に対する電極66の視覚画像を提供する。
【0034】
図3に示されている例は、単に概念を分かりやすくする目的で選択されたものである。薬剤の注入のためなどの別のタイプの第2のプローブなど、他のシステム要素が、作業チャネルを通じて挿入されてもよい。潅注は、アブレーション中に心膜カテーテル28内の別のチャネルを通じて心筋位置68を標的とするように適用され得る。
【0035】
図4は、本発明の実施形態による、図3の遠位端部30を製造するための方法を模式的に表すフローチャートである。このプロセスは、カメラ装着ステップ70において、カメラが遠位端部に対して遠位側に自由な視線を有する方式で、遠位端部30にカメラ35を装着することで開始される。次に、光ファイバ装着ステップ72において、光学的な光源39(例えば、照明ファイバー束又はLED)が遠位端部39に装着される。最後に、拡張式バルーン45が、カメラ35の視線を遮らないように、カメラ35に対して遠位側で遠位端部30に装着される。
【0036】
図4に示される例示的なフローチャートは、単に概念を分かりやすくする目的で選択されたものである。本発明の実施形態に関連する製造工程のみが示されている。
【0037】
図5は、本発明の実施形態による、低侵襲心膜治療のための方法を模式的に表すフローチャートである。このプロセスは、心膜カテーテル挿入ステップ80において、医師26が、患者22の胸郭の中へと心膜カテーテル28を挿入して、遠位端部30を心臓24の近傍に配することで開始される。次に、心膜持ち上げステップ82において、医師26は、心膜嚢55及び心外膜副層57を持ち上げるために、チャネル34を介して真空を適用する。カメラ35が提供する画像を使用して、心膜切開ステップ84において、医師26は、持ち上げられた心膜を切断するために、ガイドワイヤ33に被せて中空切断ツール32を適用する。
【0038】
切断ツール後退ステップ86において、医師26は、ガイドワイヤ33に被さった中空切断ツール32を後退させる。
【0039】
次に、心膜カテーテル前進ステップ88において、医師26は、ガイドワイヤ33に被さった遠位端部30を前進させて、圧縮したバルーン45を心外膜副層57の下方に配する。
【0040】
カテーテル28の遠位端部30が心膜嚢を十分に越えて前進されると、バルーン安定化ステップ90において、医師26はバルーン45を膨張させて両方のカテーテルを安定化させる。
【0041】
ツール交換ステップ92において、医師26は、ガイドワイヤ33を後退させ、真空/作業チャネル34を通じてアブレーションカテーテル60を挿入する。次に、アブレーションカテーテルナビゲーションステップ96において、心筋51への明瞭な視線を有するカメラ35を使用して、医師26は、アブレーションカテーテル60をナビゲートして電極66を標的の心筋51の位置68と接触させる。医師26は、必要に応じてカテーテル28上で更にスライドさせるために、例えばカテーテルを更に安定化させるために、カテーテル60を偏向可能なガイドワイヤとして使用してもよい。最後に、アブレーションステップ96において、医師26は心筋の位置68をアブレーションする。
【0042】
図5に示す例示的なフローチャートは、単に概念を分かりやすくする目的で選択されたものである。代替的な実施形態では、例えば、医師26は追加的に潅注を適用し、組織温度を測定してもよい。
【0043】
本明細書に記載される実施形態は、主に心臓の用途に対処するものであるが、本明細書に記載される方法及びシステムは、低侵襲性のカメラ案内式手術などの他の用途においても用いられ得る。
【0044】
したがって、上述の実施形態は、例として引用したものであり、また本発明は、上記に具体的に示され、記載されたものに限定されないことが理解されよう。むしろ、本発明の範囲は、上述の様々な特徴の組み合わせ及びその一部の組み合わせの両方、並びに上述の説明を読むことで当業者により想到されるであろう、また従来技術において開示されていない、それらの変形形態及び修正形態を含むものである。参照により本特許出願に援用される文献は、これらの援用文献においていずれかの用語が本明細書において明示的又は暗示的になされた定義と矛盾して定義されている場合には、本明細書における定義のみを考慮するものとする点を除き、本出願の一部とみなすものとする。
【0045】
〔実施の態様〕
(1) 医療用プローブであって、
患者の身体内の切断部を通じて挿入されるように構成されたシャフトであって、該シャフトを通じて延びる作業真空チャネルを備える、シャフトと、
カメラであって、前記シャフトの遠位端部に装着され、前記身体内の標的組織部位の画像を提供するように構成されている、カメラと、
ガイドワイヤに被せて前記シャフトの前記作業真空チャネルに挿入するための中空切断ツールであって、前記カメラによって撮られた画像の案内の下で前記標的組織部位に穿孔するように構成されている、中空切断ツールと、
前記シャフトの前記遠位端部を安定化させるように構成されている膨張式バルーンであって、前記標的組織部位の前記画像を遮らないように、前記カメラに対して近位側に配置されている、膨張式バルーンと、を備える、医療用プローブ。
(2) 前記標的組織部位は心膜部位を含み、前記シャフトは、前記患者の胸部内の切断部を通じて挿入されるように構成されている、実施態様1に記載の医療用プローブ。
(3) 標的組織位置を治療するために前記作業真空チャネルを介して挿入されるように構成されている第2のプローブを備え、前記カメラは、前記第2のプローブによる治療の画像を提供するように更に構成されている、実施態様1に記載の医療用プローブ。
(4) 前記第2のプローブはまた、前記医療用プローブのための偏向可能なガイドワイヤとして働くように構成されている、実施態様3に記載の医療用プローブ。
(5) 前記第2のプローブはアブレーションカテーテルを備える、実施態様3に記載の医療用プローブ。
【0046】
(6) 前記膨張式バルーンは、前記医療用プローブと前記第2のプローブの両方を安定化させるように構成されている、実施態様3に記載の医療用プローブ。
(7) 前記標的組織位置は心筋位置を含む、実施態様3に記載の医療用プローブ。
(8) 方法であって、
シャフトを通じて延びる作業真空チャネルを有するシャフトと、前記シャフトの遠位端部に装着されたカメラと、前記カメラに対して近位側に配置された膨張式バルーンと、を備える医療用プローブを、患者の身体内の切断部を通じて挿入することと、
前記作業真空チャネルを介して、中空切断ツールをガイドワイヤに被せて挿入し、前記カメラによって撮られた画像の案内の下で前記標的組織部位に穿孔することと、
前記ガイドワイヤを後退させることと、
前記作業真空チャネルを介して第2のプローブを挿入することと、
前記医療用プローブ及び前記第2のプローブを安定化させるように前記バルーンを膨張させることと、
前記カメラによって撮られた前記画像の案内の下で、前記第2のプローブを使用して標的組織位置を治療することと、を含む、方法。
(9) 前記中空切断ツールを挿入し、前記標的組織に穿孔することは、前記患者の胸部内の切断部を通じてシャフトを挿入し、心膜部位に穿孔することを含む、実施態様8に記載の方法。
(10) 標的組織位置を治療するために前記作業真空チャネルを介して第2のプローブを挿入する一方で、前記カメラを使用して、前記第2のプローブによる治療の画像を提供することを含む、実施態様8に記載の方法。
【0047】
(11) 前記医療用プローブのための偏向可能なガイドワイヤとして前記第2のプローブを使用することを含む、実施態様10に記載の方法。
(12) 前記第2のプローブによる前記治療はアブレーションを含む、実施態様10に記載の方法。
(13) 前記膨張式バルーンを膨張させることによって、前記医療用プローブと前記第2のプローブの両方を安定化させることを含む、実施態様10に記載の方法。
(14) 前記標的組織位置を治療することは、心筋位置を治療することを含む、実施態様8に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
【外国語明細書】