IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社KJTDの特許一覧 ▶ 国立大学法人徳島大学の特許一覧

特開2024-11106超音波励起サーモグラフィ非破壊検査における定在波起因の発熱低減方法、そのシステム及びそのプログラム
<>
  • 特開-超音波励起サーモグラフィ非破壊検査における定在波起因の発熱低減方法、そのシステム及びそのプログラム 図1
  • 特開-超音波励起サーモグラフィ非破壊検査における定在波起因の発熱低減方法、そのシステム及びそのプログラム 図2
  • 特開-超音波励起サーモグラフィ非破壊検査における定在波起因の発熱低減方法、そのシステム及びそのプログラム 図3
  • 特開-超音波励起サーモグラフィ非破壊検査における定在波起因の発熱低減方法、そのシステム及びそのプログラム 図4
  • 特開-超音波励起サーモグラフィ非破壊検査における定在波起因の発熱低減方法、そのシステム及びそのプログラム 図5
  • 特開-超音波励起サーモグラフィ非破壊検査における定在波起因の発熱低減方法、そのシステム及びそのプログラム 図6
  • 特開-超音波励起サーモグラフィ非破壊検査における定在波起因の発熱低減方法、そのシステム及びそのプログラム 図7
  • 特開-超音波励起サーモグラフィ非破壊検査における定在波起因の発熱低減方法、そのシステム及びそのプログラム 図8
  • 特開-超音波励起サーモグラフィ非破壊検査における定在波起因の発熱低減方法、そのシステム及びそのプログラム 図9
  • 特開-超音波励起サーモグラフィ非破壊検査における定在波起因の発熱低減方法、そのシステム及びそのプログラム 図10
  • 特開-超音波励起サーモグラフィ非破壊検査における定在波起因の発熱低減方法、そのシステム及びそのプログラム 図11
  • 特開-超音波励起サーモグラフィ非破壊検査における定在波起因の発熱低減方法、そのシステム及びそのプログラム 図12
  • 特開-超音波励起サーモグラフィ非破壊検査における定在波起因の発熱低減方法、そのシステム及びそのプログラム 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011106
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】超音波励起サーモグラフィ非破壊検査における定在波起因の発熱低減方法、そのシステム及びそのプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 25/72 20060101AFI20240118BHJP
【FI】
G01N25/72 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022112835
(22)【出願日】2022-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】391021385
【氏名又は名称】株式会社KJTD
(71)【出願人】
【識別番号】304020292
【氏名又は名称】国立大学法人徳島大学
(74)【代理人】
【識別番号】100086346
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 武信
(72)【発明者】
【氏名】福井 涼
(72)【発明者】
【氏名】石川 真志
(72)【発明者】
【氏名】西野 秀郎
【テーマコード(参考)】
2G040
【Fターム(参考)】
2G040AA05
2G040AB08
2G040AB19
2G040BA14
2G040BA25
2G040CA02
2G040DA06
2G040DA15
2G040EA04
2G040GB04
2G040HA07
2G040HA13
2G040HA16
2G040ZA08
(57)【要約】
【課題】 被検材の内部不良を超音波振動による加振にて発熱させて、サーモグラフィの温度変化にて当該内部不良を調べる探傷方法において、発生する定在波の映り込みを抑制する。
【解決手段】 本願発明では、被検材mに対する赤外線カメラ21の撮影位置を一定とし、複数の加振位置において振動子12により加振を行うものとし、コンピュータ3により各加振にて取得した時系列の複数の温度分布データについて初期フレームの後続のフレームの温度分布データを当該初期フレームのデータで差分し、上記各組間で、撮影開始からの経過時間が対応する上記差分のデータを平均することで、定在波の映り込みを低減させ、内部不良を明瞭にする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検材へ当接させた振動部にて超音波振動を前記被検材へ加える加振により、前記被検材の内部不良を加熱させ、前記被検材表面のサーモグラフィ即ち被検材表面の温度分布を可視化した画像について温度変化を観察することで、被検材全体又は被検材の特定の領域における、内部不良を調べる探傷方法について、
被検材に対し前記画像を取得する撮影位置と前記超音波振動の周波数を一定とし、前記超音波振動を加えて、前記撮影開始からの経過時間の異なる2フレーム以上の前記画像を撮影し、前記撮影開始最初の前記画像を初期画像とし、少なくとも前記初期画像の後に撮影した他の前記画像について、前記初期画像に対する温度変化量の分布を算出するものであり、
前記撮影開始は前記加振開始と同時或いは前記加振開始の所定時間前とし、
前記被検材に対し互いに異なる複数の加振位置にて超音波振動を前記被検材へ加え、複数の前記加振位置夫々での超音波振動による各撮影にて、複数の前記初期画像と複数の前記他の画像の夫々を取得するものであり、複数の前記他の画像は前記加振後に取得するものであり、複数の前記他の画像同士間において前記撮影開始からの経過時間を対応し合うものとし、
前記加振位置毎に前記温度変化量の分布を算出して得た複数の前記温度変化量の分布について平均した、平均変化量の分布から、前記内部不良を調べる探傷方法。
【請求項2】
被検材に対し異なる複数の前記加振位置の少なくとも一部の加振位置において、前記超音波振動の周波数を変更して加振することで取得した前記画像から周波数変更温度変化量の分布として1つ又は複数の前記温度変化量の分布を算出し、前記平均において、前記周波数変更温度変化量の分布の夫々も加算して前記平均を行う請求項1記載の探傷方法。
【請求項3】
被検材へ当接させた振動部にて超音波振動を前記被検材へ加える加振により、前記被検材の内部不良を加熱させ、前記被検材表面のサーモグラフィ即ち被検材表面の温度分布を可視化した画像にて温度変化を観察することで、被検材全体又は被検材の特定の領域における、内部不良を調べる探傷方法について、
被検材に対し前記画像を取得する撮影位置と前記加振を行う加振位置の双方を一定とし、前記撮影開始からの経過時間の異なる2フレーム以上の前記画像を撮影し、前記撮影開始最初の前記画像を初期画像とし、少なくとも前記初期画像の後に撮影した他の前記画像について、前記初期画像に対する温度変化量の分布を算出するものであり、
前記撮影開始は前記加振開始と同時或いは前記加振開始の所定時間前とし、
前記被検材に対し互いに異なる複数の周波数の超音波振動を加え、複数の前記異なる周波数夫々での超音波振動による各撮影にて、複数の前記初期画像と複数の前記他の画像の夫々を取得するものであり、複数の前記他の画像は前記加振後に取得するものであり、取得する複数の前記他の画像同士間において前記撮影開始からの経過時間が対応し合うものとし、前記周波数毎に前記温度変化量の分布を算出して得た複数の前記温度変化量の分布について平均した、平均変化量の分布から、前記内部不良を調べる探傷方法。
【請求項4】
前記周波数及び前記加振位置を一定とする個々の前記撮影において、時系列に3フレーム以上の画像群を撮影し、撮影した前記初期画像に対する少なくとも複数の前記他の画像夫々の温度変化量の分布を算出し時系列の複数の前記温度変化量の分布を1組の温度変化量の分布群とするものであり、
被検材に対し互いに異なる複数の加振位置にて前記超音波振動を前記被検材へ加えて行う各撮影で得た複数組の前記画像群から、加振位置の異なる複数組の前記温度変化量の分布群を算出し、
複数組の前記温度変化量の分布群の組間において、前記撮影開始からの経過時間が対応する前記複数の温度変化量の分布を平均し、次の第1観察対象と第2観察対象の少なくとも何れか1つを観察対象として前記内部不良を調べる請求項1又は2に記載の探傷方法。
第1観察対象:前記平均にて得た時系列の複数の平均変化量の分布から選択した少なくとも1つの平均変化量の分布
第2観察対象:時系列の前記複数の平均変化量の分布をフーリエ変換することによって取得した位相画像
【請求項5】
前記周波数及び前記加振位置を一定とする個々の前記撮影において、時系列に3フレーム以上の画像群を撮影し、撮影した前記初期画像に対する少なくとも複数の前記他の画像夫々の温度変化量の分布を算出し時系列の複数の前記温度変化量の分布を1組の温度変化量の分布群とするものであり、
被検材に対し互いに異なる複数の周波数の超音波振動を被検材へ加えて、周波数の異なる複数組の前記温度変化量の分布群を算出し、
複数組の前記温度変化量の分布群の組間において、前記撮影開始からの経過時間が対応する前記複数の温度変化量の分布を平均し、次の第1観察対象と第2観察対象の少なくとも何れか1つを観察対象として前記内部不良を調べる請求項3記載の探傷方法。
第1観察対象:前記平均にて得た時系列の複数の平均変化量の分布から選択した少なくとも1つの平均温度変化量の分布
第2観察対象:時系列の前記複数の平均変化量の分布をフーリエ変換することによって取得した位相画像
【請求項6】
被検材へ当接させた振動部にて超音波振動を前記被検材へ加える加振により前記被検材の内部不良を加熱させる加振部と、前記被検材表面のサーモグラフィ即ち被検材表面の温度分布を可視化した画像データへ変換可能な温度分布データを2フレーム以上連続撮影できる撮影部とを備え、前記撮影部は、赤外線を感知する複数の素子を備えた熱感知カメラ等の熱感知部を有し、前記熱感知部で捉えた前記被検材表面の前記温度分布データの温度変化から前記被検材の内部不良を調べることを可能とする探傷システムであって、
前記温度分布データ中、前記加振にて前記被検材に生じた定在波に起因する温度変化の映り込みにより前記内部不良の識別が阻害されるのを抑制する内部不良明瞭化機構を備えるものであり、
前記内部不良明瞭化機構は、前記被検材の表面の互いに異なる複数箇所の加振位置に前記振動部を配置することにより前記撮影部に前記加振位置を異にする複数の前記連続撮影を可能せしめる配置具と、前記熱感知部にて取得した前記2フレーム以上の温度分布データ間の温度変化量の分布データを算出すると共に前記複数の加振位置について取得した前記温度分布データから算出した複数の前記温度変化量の分布データを平均して平均変化量分布データを算出するデータ処理部と、出力部と、制御部とにて構成され、少なくとも前記データ処理部と前記出力部と前記制御部は、コンピュータと前記コンピュータへ導入された探傷プログラムとにて構築されたものであり、
前記配置具は、少なくとも前記撮影時に前記振動部を前記被検査材へ当接した状態にでき、前記配置具は、前記被検材に対する前記振動部の着脱又は移動により前記振動部の加振位置を順次変更して異なる複数の加振位置への前記配置を可能とするものであるか或いは前記振動部を複数異なる加振位置へ同時に配置することができるものであり、
前記制御部は、前記撮影部による撮影開始を、前記加振部による加振開始と同時或いは前記加振開始の所定時間前とし、
前記撮影部は、前記経過時間と直接又は間接的に関連付けて前記撮影にて取得した温度分布データを前記データ処理部へ入力するものであり、
前記制御部は、前記熱感知部から前記データ処理部に入力された、前記撮影開始の即ち第1フレームの前記温度分布データを初期温度分布データとして、少なくとも前記初期温度分布データよりも後の加振後に撮影された他の前記温度分布データについて前記初期温度分布データに対する温度変化量の分布を前記温度変化量の分布データとして前記データ処理部へ算出させるものであり、
更に前記制御部は、前記加振位置を複数とすることで取得した複数の前記他の温度分布データ同士間において前記撮影開始からの経過時間を対応し合うものとし、複数の前記温度変化量の分布データについての平均を、前記平均変化量分布データとして前記データ処理部へ、算出させるものであり、
前記出力部は、オペレータの操作を受けて又は自動的に、前記平均変化量分布データと、前記平均変化量分布データに基づくデータと、前記制御部が前記データ処理部に判定させた内部不良の弁別結果に関するデータの、少なくとも何れか1つを出力することができ、
前記出力部は、出力するデータを、オペレータへ表示することができるディスプレイと、印刷することができる印刷装置と、他のコンピュータや映像機器にて再生可能な記録媒体へ記録する記録装置の、少なくとも何れか1つを備える探傷システム。
【請求項7】
前記加振部は、被検材に対し異なる複数の前記加振位置に配置された前記振動部の少なくとも一部において、前記超音波振動の周波数を変更して加振することができ、前記制御部は、変更して加振することで取得した温度分布データから周波数変更温度変化量の分布データとして1つ又は複数の前記温度変化量の分布データを前記データ処理部へ算出させ、
前記制御部は、前記平均において、前記データ処理部へ、前記周波数変更温度変化量の分布データの夫々も加算させて前記平均温度変化量の分布データを算出させる請求項6記載の探傷システム。
【請求項8】
被検材へ当接させた振動部にて超音波振動を前記被検材へ加える加振により前記被検材の内部不良を加熱させる加振部と、前記被検材表面のサーモグラフィ即ち被検材表面の温度分布を可視化した画像データへ変換可能な温度分布データを2フレーム以上連続撮影できる撮影部とを備え、前記撮影部は、赤外線を感知する複数の素子を備えた熱感知カメラ等の熱感知部を有し、前記熱感知部で捉えた前記被検材表面の前記温度分布データの温度変化から前記被検材の内部不良を調べることを可能とする探傷システムであって、
少なくとも前記撮影時に前記振動部を前記被検査材へ当接した状態に配置することができる配置具と、前記温度分布データ中、前記加振にて前記被検材に生じた定在波に起因する温度変化の映り込みにより前記内部不良の識別が阻害されるのを抑制する内部不良明瞭化機構とを備えるものであり、
前記内部不良明瞭化機構は、前記加振部を前記振動部の超音波振動の周波数を変更することで前記連続撮影毎に異なる周波数の超音波振動で前記加振を行うことができ、前記熱感知部にて取得した前記2フレーム以上の温度分布データ間の温度変化量の分布データを算出すると共に前記異なる周波数による複数の撮影について取得した前記温度分布データから算出した複数の複数の前記温度変化量の分布データを平均して平均変化量分布データを算出するデータ処理部と、出力部と、制御部とにて構成され、少なくとも前記データ処理部と前記出力部と前記制御部は、コンピュータと前記コンピュータへ導入された探傷プログラムとにて構築されたものであり、
前記制御部は、前記撮影部による撮影開始を、前記加振部による加振開始と同時或いは前記加振開始の所定時間前とし、
前記撮影部は、前記経過時間と直接又は間接的に関連付けて前記撮影にて取得した温度分布データを前記データ処理部へ入力するものであり、
前記制御部は、前記熱感知部から前記データ処理部に入力された、前記撮影開始の即ち第1フレームの前記温度分布データを初期温度分布データとして、少なくとも前記初期温度分布データよりも後の加振後に撮影された他の前記温度分布データについて前記初期温度分布データに対する温度変化量の分布を前記温度変化量の分布データとして前記データ処理部へ算出させるものであり、
更に前記制御部は、前記周波数を複数とすることで取得した複数の前記他の温度分布データ同士間において前記撮影開始からの経過時間を対応し合うものとし、複数の前記温度変化量の分布データについての平均を、前記平均変化量分布データとして前記データ処理部へ、算出させるものであり、
前記出力部は、オペレータの操作を受けて又は自動的に、前記平均変化量分布データと、前記平均変化量分布データに基づくデータと、前記制御部が前記データ処理部に判定させた内部不良の弁別結果に関するデータの、少なくとも何れか1つを出力することができ、
前記出力部は、出力するデータを、オペレータへ表示することができるディスプレイと、印刷することができる印刷装置と、他のコンピュータや映像機器にて再生可能な記録媒体へ記録する記録装置の、少なくとも何れか1つを備える探傷システム。
【請求項9】
前記撮影部は、前記周波数及び前記加振位置を一定として行う個々の前記撮影において、時系列に3フレーム以上の前記温度分布データ群を撮影するものであり、前記制御部は、前記データ処理部に、撮影した前記初期温度分布データに対する少なくとも複数の前記他の温度分布データ夫々の温度変化量の分布データを算出させて時系列の複数の前記温度変化量の分布データを1組の温度変化量の分布データ群として取得させるものであり、
前記制御部は、前記データ処理部へ、被検材に対し互いに異なる複数の加振位置にて前記超音波振動を前記被検材へ加えて行う各撮影で得た複数組の前記温度分布データ群から、加振位置の異なる複数組の前記温度変化量の分布データ群を算出させ、
複数組の前記温度変化量の分布データ群の組間において、前記撮影開始からの経過時間が対応する前記複数の温度変化量の分布データを平均させて前記平均変化量分布データとして算出させ、
更に制御部は、オペレータの操作を受けて又は自動的に次の第1データと第2データの少なくとも何れか1つを、前記平均変化量分布データに基づくデータとして、前記出力部へ出力させることができる請求項6又は7記載の探傷システム。
第1データ:前記平均にて得た時系列の複数の平均変化量分布データからオペレータの操作にて選択された又は予め設定された前記撮影開始からの所定の経過時間に対応する、少なくとも1つの平均変化量分布データ
第2データ:時系列の前記複数の平均変化量分布データを前記データ処理部にてフーリエ変換することにより取得した位相分布データ
【請求項10】
前記撮影部は、前記周波数及び前記加振位置を一定として行う個々の前記撮影において、時系列に3フレーム以上の前記温度分布データ群を撮影するものであり、前記制御部は、前記データ処理部に、撮影した前記初期温度分布データに対する少なくとも複数の前記他の温度分布データ夫々の温度変化量の分布データを算出させて時系列の複数の前記温度変化量の分布データを1組の温度変化量の分布データ群として取得させるものであり、
前記制御部は、前記データ処理部へ、被検材に対し互いに異なる複数の周波数の前記超音波振動を前記被検材へ加えて行う各撮影で得た複数組の前記温度分布データ群から、周波数の異なる複数組の前記温度変化量の分布データ群を算出させ、
複数組の前記温度変化量の分布データ群の組間において、前記撮影開始からの経過時間が対応する前記複数の温度変化量の分布データを平均させて前記平均変化量分布データとして算出させ、
更に制御部は、オペレータの操作を受けて又は自動的に次の第1データと第2データの少なくとも何れか1つを、前記平均変化量分布データに基づくデータとして、前記出力部へ出力させることができる請求項8記載の探傷システム。
第1データ:前記平均にて得た時系列の複数の平均変化量分布データからオペレータの操作にて選択された又は予め設定された前記撮影開始からの所定の経過時間に対応する、少なくとも1つの平均変化量分布データ
第2データ:時系列の前記複数の平均変化量分布データを前記データ処理部にてフーリエ変換することにより取得した位相分布データ
【請求項11】
請求項6に記載の探傷システムに導入される前記探傷プログラム。
【請求項12】
請求項8に記載の探傷システムに導入される前記探傷プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、超音波励起サーモグラフィ非破壊検査における定在波起因の発熱低減方法、そのシステム及びそのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
被検材の内部欠陥、材料の不均一、溶接状態(溶接不良)、或いは融着状態(剥離)といった内部不良を検出する方法として、被検材を加熱し、被検材表面から放出される赤外線を、複数の温度感知素子を備える赤外線カメラにて撮影し、撮影した赤外線サーモグラフィにて温度値の変化を観察する方法が普及しつつある。例えば、金属、プラスチック、セラミック、コンクリート、その他の材料の内部欠陥や、プラスチックの融着、炭素繊維強化プラスチックの層間剥離を検出するのに上記赤外線サーモグラフィにて被検材の温度値の変化を観察する方法が普及しつつある。
【0003】
詳しくは、旧来、金属やアクリル、コンクリートなどに超音波を加えてその反射波から内部欠陥等を検出する手法が、超音波探傷法として行われてきたのであるが、最近では超音波の上記反射波を調べる代わりに、上記赤外線サーモグラフィ(サーモグラフィ法)として、金属やCFRP板などに強力な超音波振動(強力超音波振動)を加えて、内部欠陥にて摩擦を起こし、欠陥のある部分で摩擦による発熱を生じさせて、温度変化を観察する超音波励起サーモグラフィ(vibrothermography)が知られている。
【0004】
一例を挙げると超音波励起サーモグラフィとして、特許文献1~3へ示す超音波振動を発生させて被検材に超音波振動を与える方法が提案されている。
特許文献2及び3には、超音波について媒介液を介して被検材へ伝達するものが示され、特許文献1では、上記媒介液を使用せずに直接振動子(振動部)を被検材表面へ当接させて被検材へ超音波振動を加える加振法が採用されている。
【0005】
より具体的には、焼結金属ギアのクラック即ち、歯車の割れなどのように加振により割れ部分・不良部分で摩擦が発生し、当該割れ部分・不良部分が発熱して、その検出を行うことができることが知られている。尚上記の強力超音波振動は、欠陥の検出のみならず、摩擦熱で金属や、プラスチックを融着するにも使用されている技術である。
上記の通り、超音波振動を被検材に加えると内部に振動波による発熱が生成されるのであり、板材に限らず、種々の形状のものを被検材とすることができる。
上記特許文献において、赤外線カメラの撮影位置を変えて行くものが示されている。但し、上記何れの場合も、振動子の位置(加振位置)は一定である。また加振を行う振動子の振動周波数も一定と考えられる。
【0006】
一方、被検材へ入射された超音波振動波については、時間の経過により、定常状態になることも知られている。
一例として、アクリルの板(被検材)に強力超音波振動を加えて撮影したサーモグラフィを見ると、図10(A)(B)へ示すように当該板の表面へ温度の斑(温度班)が生じる。
図10(A)は内部欠陥の無い上記アクリル板のサーモグラフィであり、図10(B)は内部欠陥(図中「欠陥部」と表示)のある上記アクリル板のサーモグラフィである。
この班については、加振する振動の条件により様々な模様を描くことが知られている(非特許文献1)。上記班発生の要因は、部材内に誘導された超音波振動の定在波(定常波)に起因するもので、加振する場所や、対象物の形状などにより変化する。
前述の通り、板など検査の対象物(被検材)に「き裂」などの欠陥があると、振動による摩擦熱にて欠陥部分が発熱する(図10(B))。図10(A)(B)を見れば分かるように、事前に欠陥部と判明している場合には判別できるが、そうでない場合、欠陥以外の発熱部との判別は難しいという問題があった。
上記の通り定在波に起因する模様は欠陥等の内部不良に伴う発熱と誤認する恐れがあり、検査に際して対策が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第6079098号公報
【特許文献2】特許第6573183号公報
【特許文献3】特許第6573184号公報
【非特許文献1】日本非破壊検査協会 2020年度秋期講演大会「超音波励起サーモグラフィ法における定在波に起因した不要発熱とその検査への影響」/岸本真平(徳島大学)、石川真志(徳島大学)、西野秀郎(徳島大学)、福井涼(株式会社KJTD)、羽深嘉郎(株式会社KJTD)、西野豊(株式会社KJTD)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、超音波励起サーモグラフィによる検査において、従来問題となる定在波に起因する温度班を低減させ、高精度な検査を実現せんとするものである。
即ち、本発明は、被検材表面へ振動部を当接させて超音波振動により加振することで被検材の内部不良に摩擦熱を発生させ加熱し、サーモグラフィで被検材の温度変化を捉えて、内部不良を調べる探傷について、前記加振にて前記被検材に生じた定在波に起因する温度変化の映り込みにより前記内部不良の確認が阻害されるのを抑制することを解決課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、被検材へ当接させた振動部にて超音波振動を前記被検材へ加える加振により、前記被検材の内部不良を加熱させ、前記被検材表面のサーモグラフィ即ち被検材表面の温度分布を可視化した画像について温度変化を観察することで、被検材全体又は被検材の特定の領域における、内部不良を調べる探傷方法について、被検材に対し前記画像を取得する撮影位置と前記超音波振動の周波数を一定とし、前記超音波振動を加えて、前記撮影開始からの経過時間の異なる2フレーム以上の前記画像を撮影し、前記撮影開始最初の前記画像を初期画像とし、少なくとも前記初期画像の後に撮影した他の前記画像について、前記初期画像に対する温度変化量の分布を算出するものであり、前記撮影開始は前記加振開始と同時或いは前記加振開始の所定時間前とし、前記被検材に対し互いに異なる複数の加振位置にて超音波振動を前記被検材へ加え、複数の前記加振位置夫々での超音波振動による各撮影にて、複数の前記初期画像と複数の前記他の画像の夫々を取得するものであり、複数の前記他の画像は前記加振後に取得するものであり、複数の前記他の画像同士間において前記撮影開始からの経過時間を対応し合うものとし、前記加振位置毎に前記温度変化量の分布を算出して得た複数の前記温度変化量の分布について平均した、平均変化量の分布から、前記内部不良を調べる探傷方法を提供する。
尚、上記の内部不良とは、被検材内部の、亀裂や空洞その他の欠陥を含む他、材料の不均一、溶接部を備える被検材の溶接不良、融着部を備える被検材の融着部における剥離を含む。また、上記の内部不良を調べるとは、内部不良の有無、内部不良の位置、内部不良の形状、内部不良の寸法・範囲の、少なくとも何れか一つを調べることをいう。
またここでいう超音波とは、人が耳で聞くことを目的としない音波であり、10kHz以上の音波を指す。
更にここでいう「超音波加振開始からの経過時間が対応し合う」ものには、超音波加振開始からの経過時間が完全に同じものを含む他、例えば超音波加振開始からの経過時間が若干異なっていても初期熱画像にて差分される上記他の熱画像の序数(何フレーム目)が一致するもの同士であれば当該経過時間の異なるもの同士も含ものである。即ち、超音波加振開始からの経過時間が凡そ同じであれば、「対応する」ものに当該経過時間が凡そ同じものを含むものである。
また本発明は、被検材に対し異なる複数の前記加振位置の少なくとも一部の加振位置において、前記超音波振動の周波数を変更して加振することで取得した前記画像から周波数変更温度変化量の分布として1つ又は複数の前記温度変化量の分布を算出し、前記平均において、前記周波数変更温度変化量の分布の夫々も加算して前記平均を行う探傷方法を提供できた。
更に本発明は、被検材へ当接させた振動部にて超音波振動を前記被検材へ加える加振により、前記被検材の内部不良を加熱させ、前記被検材表面のサーモグラフィ即ち被検材表面の温度分布を可視化した画像にて温度変化を観察することで、被検材全体又は被検材の特定の領域における、内部不良を調べる探傷方法について、被検材に対し前記画像を取得する撮影位置と前記加振を行う加振位置の双方を一定とし、前記撮影開始からの経過時間の異なる2フレーム以上の前記画像を撮影し、前記撮影開始最初の前記画像を初期画像とし、少なくとも前記初期画像の後に撮影した他の前記画像について、前記初期画像に対する温度変化量の分布を算出するものであり、前記撮影開始は前記加振開始と同時或いは前記加振開始の所定時間前とし、前記被検材に対し互いに異なる複数の周波数の超音波振動を加え、複数の前記異なる周波数夫々での超音波振動による各撮影にて、複数の前記初期画像と複数の前記他の画像の夫々を取得するものであり、複数の前記他の画像は前記加振後に取得するものであり、取得する複数の前記他の画像同士間において前記撮影開始からの経過時間が対応し合うものとし、前記周波数毎に前記温度変化量の分布を算出して得た複数の前記温度変化量の分布について平均した、平均変化量の分布から、前記内部不良を調べる探傷方法を提供する。
また更に本発明は、前記周波数及び前記加振位置を一定とする個々の前記撮影において、時系列に3フレーム以上の画像群を撮影し、撮影した前記初期画像に対する少なくとも複数の前記他の画像夫々の温度変化量の分布を算出し時系列の複数の前記温度変化量の分布を1組の温度変化量の分布群とするものであり、被検材に対し互いに異なる複数の加振位置にて前記超音波振動を前記被検材へ加えて行う各撮影で得た複数組の前記画像群から、加振位置の異なる複数組の前記温度変化量の分布群を算出し、複数組の前記温度変化量の分布群の組間において、前記撮影開始からの経過時間が対応する前記複数の温度変化量の分布を平均し、次の第1観察対象と第2観察対象の少なくとも何れか1つを観察対象として前記内部不良を調べる探傷方法を提供できた。
第1観察対象:前記平均にて得た時系列の複数の平均変化量の分布から選択した少なくとも1つの平均変化量の分布
第2観察対象:時系列の前記複数の平均変化量の分布をフーリエ変換することによって取得した位相画像
更にまた本発明は、前記周波数及び前記加振位置を一定とする個々の前記撮影において、時系列に3フレーム以上の画像群を撮影し、撮影した前記初期画像に対する少なくとも複数の前記他の画像夫々の温度変化量の分布を算出し時系列の複数の前記温度変化量の分布を1組の温度変化量の分布群とするものであり、被検材に対し互いに異なる複数の周波数の超音波振動を被検材へ加えて、周波数の異なる複数組の前記温度変化量の分布群を算出し、複数組の前記温度変化量の分布群の組間において、前記撮影開始からの経過時間が対応する前記複数の温度変化量の分布を平均し、次の第1観察対象と第2観察対象の少なくとも何れか1つを観察対象として前記内部不良を調べる探傷方法を提供できた。
第1観察対象:前記平均にて得た時系列の複数の平均変化量の分布から選択した少なくとも1つの平均温度変化量の分布
第2観察対象:時系列の前記複数の平均変化量の分布をフーリエ変換することによって取得した位相画像
また本発明は、被検材へ当接させた振動部にて超音波振動を前記被検材へ加える加振により前記被検材の内部不良を加熱させる加振部と、前記被検材表面のサーモグラフィ即ち被検材表面の温度分布を可視化した画像データへ変換可能な温度分布データを2フレーム以上連続撮影できる撮影部とを備え、前記撮影部は、赤外線を感知する複数の素子を備えた熱感知カメラ等の熱感知部を有し、前記熱感知部で捉えた前記被検材表面の前記温度分布データの温度変化から前記被検材の内部不良を調べることを可能とする探傷システムであって、前記温度分布データ中、前記加振にて前記被検材に生じた定在波に起因する温度変化の映り込みにより前記内部不良の識別が阻害されるのを抑制する内部不良明瞭化機構を備えるものであり、前記内部不良明瞭化機構は、前記被検材の表面の互いに異なる複数箇所の加振位置に前記振動部を配置することにより前記撮影部に前記加振位置を異にする複数の前記連続撮影を可能せしめる配置具と、前記熱感知部にて取得した前記2フレーム以上の温度分布データ間の温度変化量の分布データを算出すると共に前記複数の加振位置について取得した前記温度分布データから算出した複数の前記温度変化量の分布データを平均して平均変化量分布データを算出するデータ処理部と、出力部と、制御部とにて構成され、少なくとも前記データ処理部と前記出力部と前記制御部は、コンピュータと前記コンピュータへ導入された探傷プログラムとにて構築されたものであり、前記配置具は、少なくとも前記撮影時に前記振動部を前記被検査材へ当接した状態にでき、前記配置具は、前記被検材に対する前記振動部の着脱又は移動により前記振動部の加振位置を順次変更して異なる複数の加振位置への前記配置を可能とするものであるか或いは前記振動部を複数異なる加振位置へ同時に配置することができるものであり、前記制御部は、前記撮影部による撮影開始を、前記加振部による加振開始と同時或いは前記加振開始の所定時間前とし、前記撮影部は、前記経過時間と直接又は間接的に関連付けて前記撮影にて取得した温度分布データを前記データ処理部へ入力するものであり、前記制御部は、前記熱感知部から前記データ処理部に入力された、前記撮影開始の即ち第1フレームの前記温度分布データを初期温度分布データとして、少なくとも前記初期温度分布データよりも後の加振後に撮影された他の前記温度分布データについて前記初期温度分布データに対する温度変化量の分布を前記温度変化量の分布データとして前記データ処理部へ算出させるものであり、更に前記制御部は、前記加振位置を複数とすることで取得した複数の前記他の温度分布データ同士間において前記撮影開始からの経過時間を対応し合うものとし、複数の前記温度変化量の分布データについての平均を、前記平均変化量分布データとして前記データ処理部へ、算出させるものであり、前記出力部は、オペレータの操作を受けて又は自動的に、前記平均変化量分布データと、前記平均変化量分布データに基づくデータと、前記制御部が前記データ処理部に判定させた内部不良の弁別結果に関するデータの、少なくとも何れか1つを出力することができ、前記出力部は、出力するデータを、オペレータへ表示することができるディスプレイと、印刷することができる印刷装置と、他のコンピュータや映像機器にて再生可能な記録媒体へ記録する記録装置の、少なくとも何れか1つを備える探傷システムを提供する。
更に本発明では、前記加振部は、被検材に対し異なる複数の前記加振位置に配置された前記振動部の少なくとも一部において、前記超音波振動の周波数を変更して加振することができ、前記制御部は、変更して加振することで取得した温度分布データから周波数変更温度変化量の分布データとして1つ又は複数の前記温度変化量の分布データを前記データ処理部へ算出させ、前記制御部は、前記平均において、前記データ処理部へ、前記周波数変更温度変化量の分布データの夫々も加算させて前記平均温度変化量の分布データを算出させる探傷システムを提供できた。
また更に本発明は、被検材へ当接させた振動部にて超音波振動を前記被検材へ加える加振により前記被検材の内部不良を加熱させる加振部と、前記被検材表面のサーモグラフィ即ち被検材表面の温度分布を可視化した画像データへ変換可能な温度分布データを2フレーム以上連続撮影できる撮影部とを備え、前記撮影部は、赤外線を感知する複数の素子を備えた熱感知カメラ等の熱感知部を有し、前記熱感知部で捉えた前記被検材表面の前記温度分布データの温度変化から前記被検材の内部不良を調べることを可能とする探傷システムであって、少なくとも前記撮影時に前記振動部を前記被検査材へ当接した状態に配置することができる配置具と、前記温度分布データ中、前記加振にて前記被検材に生じた定在波に起因する温度変化の映り込みにより前記内部不良の識別が阻害されるのを抑制する内部不良明瞭化機構とを備えるものであり、前記内部不良明瞭化機構は、前記加振部を前記振動部の超音波振動の周波数を変更することで前記連続撮影毎に異なる周波数の超音波振動で前記加振を行うことができ、前記熱感知部にて取得した前記2フレーム以上の温度分布データ間の温度変化量の分布データを算出すると共に前記異なる周波数による複数の撮影について取得した前記温度分布データから算出した複数の複数の前記温度変化量の分布データを平均して平均変化量分布データを算出するデータ処理部と、出力部と、制御部とにて構成され、少なくとも前記データ処理部と前記出力部と前記制御部は、コンピュータと前記コンピュータへ導入された探傷プログラムとにて構築されたものであり、前記制御部は、前記撮影部による撮影開始を、前記加振部による加振開始と同時或いは前記加振開始の所定時間前とし、前記撮影部は、前記経過時間と直接又は間接的に関連付けて前記撮影にて取得した温度分布データを前記データ処理部へ入力するものであり、前記制御部は、前記熱感知部から前記データ処理部に入力された、前記撮影開始の即ち第1フレームの前記温度分布データを初期温度分布データとして、少なくとも前記初期温度分布データよりも後の加振後に撮影された他の前記温度分布データについて前記初期温度分布データに対する温度変化量の分布を前記温度変化量の分布データとして前記データ処理部へ算出させるものであり、更に前記制御部は、前記周波数を複数とすることで取得した複数の前記他の温度分布データ同士間において前記撮影開始からの経過時間を対応し合うものとし、複数の前記温度変化量の分布データについての平均を、前記平均変化量分布データとして前記データ処理部へ、算出させるものであり、前記出力部は、オペレータの操作を受けて又は自動的に、前記平均変化量分布データと、前記平均変化量分布データに基づくデータと、前記制御部が前記データ処理部に判定させた内部不良の弁別結果に関するデータの、少なくとも何れか1つを出力することができ、前記出力部は、出力するデータを、オペレータへ表示することができるディスプレイと、印刷することができる印刷装置と、他のコンピュータや映像機器にて再生可能な記録媒体へ記録する記録装置の、少なくとも何れか1つを備える探傷システムを提供する。
更にまた本発明では、前記撮影部は、前記周波数及び前記加振位置を一定として行う個々の前記撮影において、時系列に3フレーム以上の前記温度分布データ群を撮影するものであり、前記制御部は、前記データ処理部に、撮影した前記初期温度分布データに対する少なくとも複数の前記他の温度分布データ夫々の温度変化量の分布データを算出させて時系列の複数の前記温度変化量の分布データを1組の温度変化量の分布データ群として取得させるものであり、前記制御部は、前記データ処理部へ、被検材に対し互いに異なる複数の加振位置にて前記超音波振動を前記被検材へ加えて行う各撮影で得た複数組の前記温度分布データ群から、加振位置の異なる複数組の前記温度変化量の分布データ群を算出させ、
複数組の前記温度変化量の分布データ群の組間において、前記撮影開始からの経過時間が対応する前記複数の温度変化量の分布データを平均させて前記平均変化量分布データとして算出させ、更に制御部は、オペレータの操作を受けて又は自動的に次の第1データと第2データの少なくとも何れか1つを、前記平均変化量分布データに基づくデータとして、前記出力部へ出力させることができる探傷システムを提供できた。
第1データ:前記平均にて得た時系列の複数の平均変化量分布データからオペレータの操作にて選択された又は予め設定された前記撮影開始からの所定の経過時間に対応する、少なくとも1つの平均変化量分布データ
第2データ:時系列の前記複数の平均変化量分布データを前記データ処理部にてフーリエ変換することにより取得した位相分布データ
また本発明では、前記撮影部は、前記周波数及び前記加振位置を一定として行う個々の前記撮影において、時系列に3フレーム以上の前記温度分布データ群を撮影するものであり、前記制御部は、前記データ処理部に、撮影した前記初期温度分布データに対する少なくとも複数の前記他の温度分布データ夫々の温度変化量の分布データを算出させて時系列の複数の前記温度変化量の分布データを1組の温度変化量の分布データ群として取得させるものであり、前記制御部は、前記データ処理部へ、被検材に対し互いに異なる複数の周波数の前記超音波振動を前記被検材へ加えて行う各撮影で得た複数組の前記温度分布データ群から、周波数の異なる複数組の前記温度変化量の分布データ群を算出させ、
複数組の前記温度変化量の分布データ群の組間において、前記撮影開始からの経過時間が対応する前記複数の温度変化量の分布データを平均させて前記平均変化量分布データとして算出させ、更に制御部は、オペレータの操作を受けて又は自動的に次の第1データと第2データの少なくとも何れか1つを、前記平均変化量分布データに基づくデータとして、前記出力部へ出力させることができる探傷システムを提供できた。
第1データ:前記平均にて得た時系列の複数の平均変化量分布データからオペレータの操作にて選択された又は予め設定された前記撮影開始からの所定の経過時間に対応する、少なくとも1つの平均変化量分布データ
第2データ:時系列の前記複数の平均変化量分布データを前記データ処理部にてフーリエ変換することにより取得した位相分布データ
更に本発明では、上記各探傷システムに導入される前記探傷プログラムを提供できた。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、被検材表面へ振動部を当接させて超音波振動により加振することで被検材の内部不良に摩擦熱を発生させ加熱し、サーモグラフィで被検材の温度変化を捉えて、内部不良を調べる探傷において、前記加振にて前記被検材へ生じた定在波に起因する温度変化の映り込みにより前記内部不良の確認が阻害されるのを抑制することを可能とした。
即ち、この発明は、定在波に起因する、表面の温度変化(斑画像)を低減して、欠陥による発熱部分の分別を容易にする。
また、本発明の実施により、内部不良の検査結果となる画像を比較的短時間でオペレータ(観察者)に表示することができる。オペレータは、内部不良の検査経験の乏しいものでも、定在波が目立たなくなることで、上記の通り、検査結果となる画像から欠陥部の判定を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】(A)は本発明の一実施の形態に係る探傷システムの説明図、(B)は(A)の探傷システムの加振部の一例を示す略斜視図。
図2】(A)は振動部にて加振する被検材表面の加振位置の例を示す被検材の略平面図、(B)は図1(A)の配置具の一例を示す全体説明図。
図3】(A)は図1の探傷システムのデータ処理部30の詳細を示す説明図(ブロック図)、(B)は図2(A)の加振位置の変更例を示す被検材の略側面図、(C)は(B)の略平面図。
図4図1の探傷システムの運用の流れ(フロー)を示す説明図。
図5図1の探傷システムにて取得するデータ処理の概念を示す説明図。
図6図3(A)のデータ処理部の要部(各データ収容部)を示す説明図(ブロック図)。
図7】他の実施の形態の探傷システムの運用の流れ(フロー)を示す説明図。
図8】更に他の実施の形態のデータ処理部30の詳細を示す説明図(ブロック図)。
図9図9の要部(平均差分データに基づくデータ収容部)の平均差分データに基づくデータ収容部の一例を示す説明図。
図10】(A)は内部不良(内部欠陥)の無い被検材(アクリル板)の加振による温度変化の状況を示す(差分分布データ即ち温度変化量の分布)画像の説明図、(B)は内部欠陥(欠陥部)を有する被検材(アクリル板)の加振による温度変化の状況を示す画像の説明図。
図11】(A)~(I)は夫々図2(A)の加振位置k1~k9にて被検材(アクリル板)を加振して得た温度変化の状況を示す(差分分布データ即ち温度変化量の分布データ)画像の説明図。
図12】(A)は図11(A)~(I)の画像データを平均する過程の概念を示す説明図、(B)は(A)の画像データから得た平均差分データ即ち平均変化量分布データの画像を示す説明図、(C)は(A)及び図12において50で示す図2(A)の加振位置k5による加振で得たサーモグラフィを示す説明図。
図13】(A)は超音波の振動数を20kHzとして取得した差分分布データの説明図、(B)は超音波の振動数を28kHzとして取得した差分分布データの説明図、(C)は超音波の振動数を39kHzとして取得した差分分布データの説明図、(D)は(A)乃至(C)を平均した平均変化量分布データの画像の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(本発明の概要)
本発明は、金属材料又はプラスチック、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)を含む複合材料、セラミック、コンクリート、その他の材料を検査対象(被検材)として、当該被検材へ直接超音波振動を加えて加振することにて被検材を加熱し、前記加熱によって生じる前記被検材内を伝導する熱の変化を観察することにより、前記被検材の欠陥等の内部不良を調べるものであって、当該観察において、観察する画像への定在波(定常波)の映り込みを抑制することにより、定在波の映り込みにて内部不良検出が阻害されるのを回避せんとするものである。
定在波の映り込みを抑制するメカニズムの詳細は十分解明されているとは言えないが、本発明は、発明者の画期的な発見を基に完成されたものであり再現性を以て顕著な効果を奏する。
【0013】
(システム構成)
本発明の好ましいシステム構成について説明する。
この探傷システムは、超音波励起サーモグラフィ非破壊検査における定在波起因の発熱低減システムであり、加振部1と撮影部2とコンピュータ3と配置具4とを備える、(図1及び図2(B))。
加振部1は、被検材mへ振動部12を当接させて超音波振動を加える加振により、上記被検材mの内部不良を加熱させる。
撮影部2は、上記被検材表面のサーモグラフィ即ち被検材m表面の温度分布を可視化した画像データへ変換可能な温度分布データを2フレーム以上連続撮影することができる。
この例では、上記可視化された画像データは、温度範囲毎に色分けされた画像としてモニター(ディスプレイ)で観察することができるデータである。
オペレータがモニターで観察できる、上記可視化した画像データへの変換については、撮影部2(後述の熱感知部21)が行うものとしてもよいが、この例のように、後述する内部不良明瞭化機構(を構築する探傷プログラムが導入されたコンピュータ3)が行うものとしてもよい。
以下、各部の構成について具体的に説明する。
【0014】
(加振部1)
加振部1は、加振機11と、加振機11から振動電圧を受け超音波振動を発生させて被検材mを加振する上記振動部12と、振動部12を支持し振動部12を被検材mに向けて押し付ける加圧機13と、被検材mを配置する載置台14とを備える(図1(B))。
加圧機13は載置台14に設けられている。加圧機13は、上記の通り振動部12を載置台14上の被検材mに向けて押し付けることで、被検材mを振動部12にて加圧する。
【0015】
振動部12は、振動子とホーンとにて構成される。
加振機11は、上記振動子を振動させる発振器(ジェネレーター)である。加振機11にて増幅された電気信号は加振機11からコンバーターである上記振動子へ伝達され、機械的振動エネルギーに変換される。即ち、上記加振機11にて振動電圧を送られた上記振動子は、電気エネルギーを機械的振動エネルギーに変換し、また同時に加圧機13にて加圧をかけることにより被検材mの内部不良において強力な摩擦熱を発生させる。
上記加振において、上記振動子の上記超音波の振動周波数は、10KHz以上とし、好ましくは15kHz以上とし、より好ましくは15kHz~200kHzとし、更に好ましくは20kHz~100kHzとする。
【0016】
この例では、上記発振器にて上記28kHzの電気信号が加えられた上記振動子は、文字通り1秒間に28万回の振動を行うが、その振動エネルギーは上述の通り上記のホーン(共鳴体)を通して被検材へ伝達される。
【0017】
上記の加振部1について、熱可塑性樹脂の超音波溶着に用いられる市販の超音波ウエルダー(超音波溶着機)を採用することができる(図1(B))。
振動部12は、電圧を加えると伸び縮みする電歪型の超音波振動子(電歪型振動子)を上記振動子として備える。具体的には、上記振動子には、BL振動子(BLT振動子/ボルト締めランジュバン型振動子)を採用し、当該BL振動子に上記ホーンを取り付けて使用する。上記BL振動子にて発生させる振動の振動エネルギーは、上記のホーンと呼ばれる共鳴体を通じて被検材mへ伝達される。
上記ホーンについては、例えば、BL振動子に取り付けられてBL振動子の振幅を拡大する固定ホーン(ブースター)と、固定ホーンへ取り付けて被検材mに押し付けることで当該固定ホーンの振動を被検材mに伝達する工具ホーンとにて構成されたものを採用することができる。
【0018】
上記の電歪型振動子は、交流電圧を加えると振動するチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)で形成されている。PZTを使用し低周波用に開発された振動子が、上記BL振動子である。被検材mが樹脂の場合、内部不良における発熱までの時間は、当該樹脂の材質や内部不良迄の距離によって異なるが、通常1秒以下である。
尚、被検材の適切な加振が可能であれば、磁歪型の振動子などBL振動子以外の振動子を用いるものであってもよい。
【0019】
この例において、加振部1に採用した超音波溶着機(超音波ウェルダー)は、先ず50/60Hzの電気的信号を上記発振器によって28kHzの電気的信号に変換するものである。また入力時の電圧は通常AC200v~240vが一般的であるが、発振器内部で1000v近くまで増幅されて振動子12へと伝えられる。但し適切な加振が可能であればよく、上記各数値を変更して実施することができる。
上記発振器によって変換される電気信号は、上記の28kHzに限定されるものではなく、通常使用する超音波融着機によって異なる。上記振動子の上記超音波の振動周波数に対応して、上記発振器によって変換される電気信号は、10KHz以上とし、好ましくは15kHz以上とし、より好ましくは15kHz~200kHzとし、更に好ましくは20kHz~100kHzとする。
【0020】
振動部12は、被検材m表面の複数個所にて加振を行う。即ち、被検材m表面の複数の当該箇所を加振位置とし、振動子mの超音波振動にて被検材mを加振する。
この例では、1つの振動部12の位置を順次変えて、複数の加振位置tにて被検材mの加振を行うものとする。但し複数の振動部12を用いて、各振動部12の配置位置(加振位置)を順次変えて上記加振を行うものとしてもよい。
【0021】
図2(A)に加振位置tの一例を示す。図2(A)の例では、平面視矩形の板状体を被検材mとしている。
被検材mの形状や寸法は、サーモグラフィにより内部不良に起因する温度変化の検出が可能な限り、特に制限はない。実際の不良品の弁別においては、歯車(例えば焼結金属のギア)などの複雑な形状のものも被検材mとして内部欠陥を調べることができる。
【0022】
上記図2(A)へ示す例では、複数の加振位置kは、等間隔で一直線L(仮想線)上に設定した。またこの例では、矩形の板状の被検材mの上面(表面)へ振動部12(の先端の上記ホーン)を垂直に押し付けた状態にて加振を行うものである。
各加振位置kは、頂点c1~c4を備える上記矩形の被検材mの板面の、一辺(辺c1c2)と平行な直線L(仮想線)上にあるものとした。尚説明の便宜上、上記直線Lの伸びる方向をx方向とする。
また、図2(A)の例では、加振位置kを等間隔に配置されたk1~k9の9点としたが、加振位置kを当該9点に限定するものではなく、被検材mの寸法や形状によって、内部不良の明瞭化が可能な限り、他の数や配置箇所を採るものとして実施できる。
【0023】
内部不良に対するサーモグラフィへの定在波の映り込みを相対的に低減できるものであれば、上記直線は被検材mの縁(一辺)に沿うものに限定しない。尚ここでいう「相対的」とは、定在波に対し内部不良を際立たせることの他、内部不良に対し定在波を目立たせないことも含むという意味である。
また、熱感知部21による撮影を阻害しない範囲において、上記一列に限らず、複数列に加振位置kを設定するものとしてもよいし、加振位置kを直線上に限定せず分布するものとしてもよい。被検材mの形状に合わせて、相対的に定在波を目立たないようにする加振位置kを設定すればよい。
【0024】
尚、加振位置kを上記の通り、板状の被検材mの上面(板面)へ垂直に振動部12を当接させる、即ち被検材mの厚さ方向へ振動部12を向けるものに限定するものではない。例えば図3(B)(C)へ示す通り、複数の加振位置kを板状の被検材mの端面へ設定する即ち振動部12を上記板面と平行な方向に向けるものとし、当該端面へ垂直に振動部12を当接させて加振を行うものとしてもよい。
【0025】
隣接する加振位置kの間隔m4についても、内部不良に対するサーモグラフィへの定在波の映り込みを相対的に低減できるものであればよく、人口欠陥を設けたテストピースを用いた事前のテストにより、被検材mの材質や寸法、形状に応じて上記低減が認められる適切な位置を加振位置kとして設定すればよい。
【0026】
加振機11については左右方向や前後方向といった水平方向について載置台14(被検材m)に対する振動部12(のホーン)の位置を変えることができるのが理想的である。即ち、加圧部13が前後或いは左右に(上記直線Lに沿って)移動する可動部分を配置具4として備え当該可動部分に振動部12を保持させることで、撮影毎に振動部12の位置を変えて加振することができるのが望ましい。この他上記と逆に載置台14が振動部12や加圧部13に対して位置を変えるものであってもよい。
一方、既成の上記超音波ウェルダーを利用する場合、加圧部13は前後や左右に移動する上記の可動部を備えず、また上記載置台14側についても振動部12に対し位置を変えることのできないものが一般的である。以上の点を踏まえて、次に配置具4について説明する。
【0027】
(配置具4)
配置具4は、被検材mの表面の加振する上記加振位置へ振動部12を配置するものであり、互いに異なる複数の加振位置の夫々において振動部12に被検材mの加振を行わせることを可能とする。
加圧部13或いは載置台14の水平移動によって振動子13の位置を変更できる場合、上記加圧部13及び載置台14が配置具4を構成する。
一方、上記の通り加振部1において、加圧部13や載置台14が被検材mに対し振動部12を移動させることができないものである場合、配置具4は、加振部1(載置台14)と別体に形成し、被検材mを載置した配置具4を動かすことで振動部12に対し被検材mを移動させて、加振位置の変更を行うものを例示できる。
【0028】
配置具4を加振部1(載置台14)と別体のものとする場合、配置具4は、上記加振部1(この例では図1(B)へ示す超音波ウェルダー)の載置台14の上に設けられて載置台14と被検材mとの間に介される板状の部材即ちテーブル(載置板)とすることができ、被検材mを、載置台14の上に載せられた当該配置具4の上に置くものとする(図2(B))。板状の上記配置具4には、振動部12による被検材mの加振によって、変形したり壊れたりしない強度を備えるものを採用する。
また、必要に応じて、加振中振動により振動部12に対する被検材mの位置(加振位置)が変動しないように、シャコ万力といった万力などの固定用治具にて、配置具4に対し被検材mを固定するものとしてもよい。
【0029】
1回の撮影即ち加振位置を一定とする1回の連続撮影が終了すると、作業者が配置具4を掴んで上記の通り載置台14に対する配置具4の位置をずらすことで、加振位置を変更し次の撮影を行う。図2(A)の例では、加振位置k1での撮影が済めば加振位置k2へ振動部12を配置して次の撮影を行い、加振位置k2での撮影が済めば加振位置k3へ振動部12を配置して更に次の撮影を行うといように、隣接する加振位置k間で撮影毎に順次振動部12を変位させる。
図2(A)へ示す通り加振位置kを一直線上に設定する場合、配置具4(テーブル)を振動部12に対し、一方向(x方向)にずらせばよい。
振動部12の位置を複数の加振位置へ順に変更して加振を行うこの例では、配置具4は、探傷プログラムを導入した上記コンピュータ3と共に被検材mの内部不良を明瞭にする内部不良明瞭化機構を構成する。
【0030】
(撮影部2)
撮影部2は、熱感知カメラ等の熱感知部21と、熱感知部21を支持する支持具22とを備える(図2(B))。
熱感知部21として熱感知カメラを採用する場合、赤外線又は遠赤外線を感知する複数の素子を備えた、周知のサーマルカメラを採用することができる。この例では、上記熱感知カメラには、赤外線を感知する赤外線カメラを採用する。但し、熱感知部21は、被検材表面の前記温度分布画像を撮影できるものであればよく、赤外線カメラ(熱感知カメラ)に限定するものではなく、赤外線を感知できるラインセンサや、赤外線を感知できる単一のセンサを熱感知部21に採用することができる。上記ラインセンサは、赤外線を感知する複数のセンサを線状に配置したものであり、ラインセンサを走査(スキャン)することにより1フレームの温度分布データを取得することができる。当該走査は、ラインセンサを直線的に移動させるものの他、回転(首振り)させるものも含む。また上記単一のセンサを熱感知部21として採用する場合、当該単一のセンサは2次元(エリア)をカバーするように即ち前後左右(或いは縦横)に走査して、1フレームの温度分布データを取得する。
この実施の形態では、熱感知部21に赤外線カメラを採用した例を挙げて説明する(以下必要に応じ熱感知部21を赤外線カメラ21と呼ぶ)。
【0031】
具体的には、上記赤外線カメラ21は、赤外線撮像素子即ち赤外線センサを用いた撮像素子を備える。赤外線カメラ21の赤外線撮像素子は面型(エリアセンサ)である。上記赤外線カメラ21において、赤外線を感知する複数の素子(赤外線撮像素子)は二次元配列され、当該複数の素子の夫々が温度を検知することで、サーモグラフィ(熱映像)として温度の高低により色分けして表示可能な温度分布データを取得する。
本発明において、赤外線カメラ21の撮影により取得する温度分布データは、被検材mの表面の温度分布を示すものであり、被検材m表面の各位置における温度を1枚(1フレーム)の平面画像として表示できる。
赤外線カメラ21は、後述する画素(1ピクセル)毎に温度を色分けして表示可能な上記温度分布データを取得する。
【0032】
また、赤外線カメラ21は一度の撮影において、一定の時間間隔(フレームレート)で即ち単位時間当たりのフレーム数を一定として時系列の複数の上記平面画像のデータ(温度分布データ)を取得する。本発明において、赤外線カメラ21の被検材mに対する位置を変えずに、前記配置具4の使用で振動子12による複数の位置(加振位置)での加振毎に複数の撮影を行い、時系列の複数の温度分布データを、加振位置毎に複数組取得する。
【0033】
上記赤外線カメラ21には、撮影した即温度分布データを、上記可視化した画像データ即ちサーモグラフィへ直接変換するものを採用した。但し、温度分布データのサーモグラフィへの変換は専らコンピュータ3側で行うものとしてもよい。
この例では、上記熱感知カメラ(赤外線カメラ21)については、形式(タイプ)を非冷却サーモグラフィとし、撮影の1秒間のコマ数即ちフレームレートを60Hzとし、画素数(ピクセル)を320×240の76800画素、NETD(温度分解能/感度)0.05℃、波長7.5~13umとし、測温範囲を-20~120℃・0~350℃・200~1200℃の範囲から選択可能とし、測定精度を+/-2℃ と2%の大きい方とするものを採用した。
但し、フレームレートや画素数、NETD、波長の夫々について、実用的な範囲で上記より大きな値或いは上記より小さな値を採るものとしてもよい。
【0034】
上記配置具4即ち被検材mの位置の変更(加振位置の変更)に合わせて、撮影部2の赤外線カメラ21の位置を変えることにより、個々の撮影において被検材mに対する相対的な位置を一定とする。上記支持具22は、赤外線カメラ21の位置の変更ができるように、赤外線カメラ21を支持するものであればよい。
上記支持具22により赤外線カメラ21を、振動子12に撮影の邪魔されない位置へ配置する。赤外線カメラ21の配置即ち撮影位置は、平面視における被検材m表面の中心を、被検材mの上方から見下ろすような位置とするのが好ましい。
【0035】
図2(A)の例では、被検材mの中心、例えば平面視矩形の被検材mの一対の対角線(対角線c1c3と対角線c2c4)の交点oに、当該赤外線カメラ21の光軸を一致させている。
上記交点oを上記光軸が通るものとする場合、交点oの真上に赤外線カメラ21を配置するものに限定するものではないが、被検材mの表面に対し垂直か垂直に近い状態にて上記光軸が被検材mの観察領域の中心を通るもとするのが好ましい。
また、被検材mが矩形以外の形状を有するものである場合、重心を上記中心oとして、被検材mを上記矩形とする場合と同様に、撮影位置を設定すればよい。
【0036】
上記の支持具22には、三脚などの周知のカメラ支持具を採用すればよい(図2(B))。加振位置の変更毎に、被検材mに対する振動子12の変位に伴い、床gの上にて上記三脚を当該変位と同じ移動方向・同じ移動幅移動させるものとし、加振位置の異なる各加振において、上記の通り被検材mに対する赤外線カメラ21の相対的な位置を一定とする。
被検材mの加振位置の変更に対応した赤外線カメラ21の移動(位置合わせ)については、エンコーダや、レーザー距離計にて、上記変更に伴う移動量・方向を計測した赤外線カメラ21の移動を行えばよい。
また、赤外線カメラ21をロボットアームやマニュピュレータにて被検材mの加振位置の変更に赤外線カメラ21を追従させることで上記移動を行うものとしてもよい。
【0037】
(コンピュータ3)
上記コンピュータ3は、制御装置及び演算装置と、記憶装置(内部記憶装置又は/及び外部記憶装置)とを備え、探傷プログラムを導入(インストール)されることにより、当該探傷プログラムとの協動にて、探傷装置として本発明に係る探傷システムの要部を構成する。
【0038】
上記のコンピュータ3については、探傷装置として探傷専用に製作され当初より探傷プログラムが導入されたものとしてもよいが、この他汎用オペレーティングシステムをインストールされた市販のコンピュータを採用し、アプリケーションとし上記探傷プログラムがインストールされるものとして実施できる。また、探傷プログラムは、クラウド上(インターネット等の広域ネットワークに接続されたサーバ上)に導入されるものとし、クラウド上の探傷プログラムにアクセスするものとしてもよい。上記クラウドを利用する場合コンピュータ3の一部がクラウド上に拡張されているものとする。
【0039】
撮影部2の上記赤外線カメラ21は、コンピュータ3へ接続される入力装置(画像データ入力装置)である。赤外線カメラ21は、撮影したサーモグラフィとして表示可能な温度分布データを、コンピュータ3へ入力する。図示は省略するが、上記の他入力装置(指令入力装置)として、キーボードやマウスなどの操作用デバイスをコンピュータ3へ接続する。
【0040】
また、コンピュータ3には、出力装置としてモニタ(ディスプレイ31)やプリンタ(印刷装置/図示は省略)が接続される。また、データを収容する可搬性のある媒体へデータを記録するディスクドライブやUSBメモリなども出力装置として、周知のインターフェイスによりコンピュータ3へ接続しておけばよい。
【0041】
上記の探傷プログラムを導入されたコンピュータ3により、データ処理部30と制御部31と入力部32と出力部33とが構築される(図3(A))。
この例では、データ処理部31と制御部32と出力部33が前述の内部不良明瞭化機構の要部(内部不良明瞭化処理部)であり、配置具4と共に内部不良明瞭化機構を構成する。
【0042】
出力部32は、主として、上記出力装置へデータを出力できるコネクターの接続ポートである。
データ処理部31は、温度分布データ収容部34と、演算処理部35と、差分分布データ収容部36と、平均差分データ収容部37とを備える(図3(A))。
温度分布データ収容部34と、差分分布データ収容部36と、平均差分データ収容部37夫々は、主として上記記憶装置と上記探傷プログラムとにて構築され、制御部32は主として上記制御装置と上記探傷プログラムとにて構築され、演算処理部35は、主として上記演算装置と上記探傷プログラムとにて構築される。
以下図4へ示す本発明の探傷方法のフローの説明と共にデータ処理部30の詳細について、説明する。
【0043】
(本発明に係る探傷方法の流れ)
先ず、被検材mの表面において、最初に加振を行う加振位置k(図2(A)の例ではk1)へ振動子12を固定し、赤外線カメラ21(熱感知部21)にて被検材m表面を撮影する(Step1)。
上記にて撮影した時系列の複数のサーモグラフィ(として変換して表示可能な温度分布データ)を自動的にコンピュータ3へ保存する(Step2)。
各加振位置における加振に対する夫々の撮影において、温度分布データは、複数フレーム撮影される。各加振についての上記撮影の夫々で、例えば100フレームの温度分布データが連続撮影される。上記フレーム夫々の温度分布データは静止画像のデータである。
【0044】
1回の加振終了後、上記にてコンピュータ3へ保存した温度分布データの各画素(温度値データ)に対し、コンピュータ3に、初期温度分布データ(第1フレームの全画素夫々の温度値のデータ)を差分(減算)させ、温度上昇画像データ(温度変化量の分布データ)即ち差分分布データを作成させる(Step3)。加振位置(n箇所)の変更ごとに、上記Step1~Step3の工程を繰り返す。図2(A)の例では、上記Step1~Step3の工程を9回(n=9)繰り返す(図6の例では3回繰り返す)。
第2フレーム以降の温度分布データは、加振後に撮影された夫々定在波に拠る蓄熱部分の熱画像のデータである。
【0045】
上記Step2において、温度分布データ収容部34は、制御部32の制御の下、上記赤外線カメラ21(熱感知部21)から入力された温度分布データを、撮影開始からの経過時間を識別する識別データと関連付けて収容する(図5及び図6)。
この例では、加振位置を一定とする1回の連続撮影で入力される撮影データの時系列を識別できる序数のデータを識別データとする。具体的には、識別データは、撮影(入力)順に、1フレーム目p1の温度分布データ、2フレーム目p2の温度分布データと言うように、温度分布データが何フレーム目に撮影されたものか識別できるフレーム番号のデータ(序数データ)とすればよい。またフレームの序数データのように間接的に加振からの経過時間を温度分布データへ関連付けるのではなく、加振からの経過時間情報(タイムコード)を上記識別データとして直接各フレーム(温度分布データ)に関連付けた上、温度分布データ収容部34へ温度分布データを収容するものとしてもよい。
【0046】
また上記Step2において、温度分布データ収容部34は、加振位置k(図2(A))ごとに赤外線カメラ21(熱感知部21)が撮影し入力する複数の時系列の上記温度分布データの組を、複数組収容する。即ち、温度分布データ収容部34は、加振位置kを識別する識別子(識別データ)と関連付けて、各組内の時系列の複数の温度分布データを収容する。
図2(A)の例では、加振位置k1~k9にて加振を行った9組の時系列の上記温度分布データを収容する。尚煩雑を避けるため、図6では、加振位置を3箇所(識別子s,t,u)とするが、現実の探傷においても被検材mに応じ加振位置を3箇所として実施することができる。勿論本発明の実施において加振位置は上記3箇所や9箇所に限定するものではなく、実際の被検材mに応じて、加振位置を2箇所、4~8箇所の何れか、或いは10箇所以上の何れかとして実施することができる。不良欠陥の明瞭化については、特に3箇所以上の加振位置を設定するのがより顕著な効果が得られる。
【0047】
加振位置kを上記3箇所としデータ処理部30におけるデータの流れに触れつつ説明すると、上記Step2により、温度分布デー収容部34は、加振位置の一つから取得した時系列の複数(nフレーム)の温度分布データs1~snを、第1データ組sのデータとし、当該組とフレームを識別可能に夫々識別子(図6に示す組識別データs及びフレーム識別データpk;kは任意の自然数)と関連付けて収容する。
【0048】
そして上記Step1~Step3を繰り返すことにより、温度分布デー収容部34は、加振位置の他の一つから取得した時系列の複数(nフレーム)の温度分布データt1~tnを、第2データ組tのデータとし、当該組とフレームを識別可能に夫々識別子(図6に示す組識別データt及びフレーム識別データpk;kは任意の自然数)と関連付けて収容し、更に、温度分布デー収容部34は、加振位置の更に他の(残りの)一つから取得した時系列の複数(nフレーム)の温度分布データu1~unを、第3データ組uのデータとし、当該組とフレームを識別可能に夫々識別子(図6に示す組識別データu及びフレーム識別データpk;kは任意の自然数)と関連付けて収容する。
【0049】
より詳しくは、最初の加振位置での撮影が完了し(Step1)、上記組sにおける上記時系列の複数の温度分布データs1~snの温度分布データ収容部34への収容が完了すると(Step2)、演算処理部35は、制御部31の制御の下、温度分布データ収容部34を参照して、組sにおいて、第1フレームp1の静止画データs1を夫々初期温度分布データとし、後続の静止画データの夫々即ち第2フレームp2以降の各静止画データs2~snの夫々ついて、上記初期温度分布データに対する差分(sk-s1=Sk)即ち温度変化量の分布データを計算する(Step3)。尚skのkは自然数であって1を含み、この例では、上記第2フレームp2以降の各静止画データs2~snと共に第1フレームp1のデータs1も差分の対象とするものであり、第1フレームp1のデータ自身との差分として差分温度変化量0の分布データ(s1-s1)=S1が設定され温度変化量の(分布の)基準データとされる。
演算処理部35は、当該計算結果S1~Snの夫々を差分分布データ即ち温度変化量の分布データとして、差分分布データ収容部36へ収容する。制御部32の制御の下、演算処理部35は、上記差分分布データ(温度変化量の分布データ)の差分分布データ収容部36への収容にあたり、組sの差分分布データ(温度変化量の分布データ)である識別する識別子(識別データ/図6に示すss)と関連付けると共に時系列を示す序数データP1~Pn-1と関連付けて、当該収容を行う。
【0050】
次の加振位置での撮影が完了し(Step1)、上記組tにおける上記時系列の複数の温度分布データt1~tnの温度分布データ収容部34への収容が完了すると、演算処理部35は、制御部31の制御の下、温度分布データ収容部34を参照して、組tにおいて、第1フレームp1の静止画データs1を夫々初期温度分布データとし、後続の静止画データの夫々即ち第2フレームp2以降の各静止画データt2~tnの夫々ついて、上記初期温度分布データに対する差分(tk-t1=Tk)即ち温度変化量の分布データを計算する(Step3)。上記と同様tkのkは自然数であって1を含み、この例では、上記第2フレームp2以降の各静止画データt2~tnと共に第1フレームp1のデータt1も差分の対象とするものであり、第1フレームp1のデータ自身との差分として差分温度変化量0の分布データ(t1-t1)=T1が設定され温度変化量の(分布の)基準データとされる。
演算処理部35は、当該計算結果T1~Tnの夫々を差分分布データ即ち温度変化量の分布データとして、差分分布データ収容部36へ収容する。制御部32の制御の下、演算処理部35は、上記差分分布データ(温度変化量の分布データ)の差分分布データ収容部36への収容にあたり、組tの差分分布データ(温度変化量の分布データ)である識別する識別子(識別データ/図6に示すtt)と関連付けると共に時系列を示す序数データP1~Pn-1と関連付けて、当該収容を行う。
【0051】
更に次の加振位置での撮影が完了し(Step1)、上記組uにおける上記時系列の複数の温度分布データu1~tnの温度分布データ収容部34への収容が完了すると、演算処理部35は、制御部31の制御の下、温度分布データ収容部34を参照して、組uにおいて、第1フレームp1の静止画データu1を夫々初期温度分布データとし、後続の静止画データの夫々即ち第2フレームp2以降の各静止画データu2~unの夫々ついて、上記初期温度分布データに対する差分(uk-u1=Uk)即ち温度変化量の分布データを計算する(Step3)。上記と同様ukのkも自然数であって1を含み、この例でも、上記第2フレームp2以降の各静止画データu2~unと共に第1フレームp1のデータu1も差分の対象とするものであり、第1フレームp1のデータ自身との差分として差分温度変化量0の分布データ(u1-u1)=U1が設定され温度変化量の(分布の)基準データとされる。
演算処理部35は、当該計算結果U1~Unの夫々を差分分布データ即ち温度変化量の分布データとして、差分分布データ収容部36へ収容する。制御部32の制御の下、演算処理部35は、上記差分分布データ(温度変化量の分布データ)の差分分布データ収容部36への収容にあたり、組uの差分分布データ(温度変化量の分布データ)である識別する識別子(識別データ/図6に示すuu)と関連付けると共に時系列を示す序数データP1~Pn-1と関連付けて、当該収容を行う。
【0052】
上記各加振位置における撮影部2(赤外線カメラ12)の撮影の開始に関しては、各加振位置での撮影同士の間で、加振からの経過時間を統一しておく(同期させる)。
この例では、各加振位置での撮影の開始(第1フレームの撮影)は、何れの加振位置での撮影においても加振と同時即ち加振開始からの経過時間0として撮影を行う。但し、各加振位置における撮影開始のタイミングを揃える(同期させる)ものであれば、撮影部2にて加振前から撮影を開始する即ち第1フレームの撮影を加振前とすることも可能である(各加振位置での撮影において、加振開始からのマイナス(負)の経過時間を揃えると考えればよい)。
特許請求の範囲における「加振開始の所定時間前」の「所定時間」とは、撮影開始から加振開始までの時間差について特定の時間差を指すのではなく、各加振位置での撮影間で、撮影開始から加振開始までの時間差を同一とする、即ち上記の撮影開始のタイミングを揃えるという意味である。
尚、加振による定在波の発生によって、被検材mが(加振前の常温状態から)昇温し始めるのであるが、加振から定在波の発生まで若干タイムラグがある。
このため、上記加振開始前と加振開始と同時に行う撮影の夫々について、何れも上記昇温前の常温状態を第1フレームのデータ(温度変化量の基底データ即ち上記基準データ)とするものである。
一方、第2フレーム以降の温度分布データは、夫々定在波に拠る蓄熱部分の熱画像のデータである。
図示は省略するが、この実施の形態において、データ処理部30は、位置ずれ検出部と補正処理部とを備える。上記位置ずれ検出部は、差分分布データ収容部36の第1差分データ組みss、第2差分データ組tt及び第3データ組uuを参照して、互いに対応するフレームの差分分布データ(温度変化量の分布データ)間の位置のずれを検出する(Step4)。具体的には、上記位置ずれ検出部は、被検材mの辺や頂点などの特徴的な個所を基準(基準位置)として、上記各組間の対応するフレームの差分分布データ(温度変化量の分布データ)間の被検材の位置ずれを検出する。
即ち、第1差分データ組ssの各フレームの差分分布データ(温度変化量の分布データ)における被検材の上記位置を基準として、当該基準に対する第2差分データ組ttや第3差分データ組uuの対応するフレームの温度分布データ(温度変化量の分布データ)における被検材の上記位置のずれを検出する。
【0053】
上記位置ずれ検出部が上記にて第1差分データ組ssの各フレームの差分分布データ(温度変化量の分布データ)における被検材の基準位置に対する第2差分データ組ttや第3差分データ組uuの対応するフレームの差分分布データ(温度変化量の分布データ)における被検材の基準位置のずれを検出すると、上記補正処理部が当該ずれを解消すべく、移動や回転、拡大、縮小などの(画像)処理即ち補正を差分分布データ(温度変化量の分布データ)に施す(Step5)。上記補正が完了した差分分布データ(温度変化量の分布データ)にて、差分分布データ収容部36内の各差分分布データ(温度変化量の分布データ)は上書き(更新)される。但し、補正前の差分分布データ(温度変化量の分布データ)を更新するのではなく、上記補正処理部は、補正後の上記差分分布データ(温度変化量の分布データ)を、別途差分分布データ収容部36若しくは専用のデータ収容部(図示しない。)へ収容するものとしてもよい。
【0054】
また、演算処理部35が上記位置ずれ検出部と補正処理部を兼ねるものとしてもよいが、データ処理部30は、演算処理部35と別に上記位置ずれ検出部と補正処理部を備えるものとしてもよい。
【0055】
Step4において上記位置ずれ検出部にて位置ずれが検出されなかった場合、またStep5において補正が完了した場合、制御部31は、演算処理部35に、差分分布データ収容部36を参照させて、上記各組間にて対応するフレームの上記位置ずれのない又は位置ずれの補正された差分分布データ(温度変化量の分布データ)同士について平均したデータを算出させ、平均差分データ(平均変化量分布データ)として平均差分データ収容部37へ収容させる(Step6)。
【0056】
より詳しくは、Step6において演算処理部35は、制御部31の制御の下、差分分布データ収容部36を参照して、上記各組ss,tt,uuから、撮影開始からの経過時間が対応する差分分布データ(温度変化量の分布データ)同士を加算し合って平均する。即ち、上記各組ss,tt,uuから、撮影開始からの経過時間が対応する差分分布データ(温度変化量の分布データ)同士を加算し合った合計を、組数(加振位置k数)で除する。この例では、上記合計を組数3で除することになる。演算処理部35は、算出した上記平均の結果W1~Wnの夫々を、平均差分データ(平均変化量分布データ)として、平均差分データ収容部37へ収容する。
制御部31は、入力部32を通じてオペレータによるキーボードやマウスなどの操作用デバイスからの操作を受け付け、均差分データ収容部37を参照してオペレータにて指定された平均差分データ(平均変化量分布データ)を、出力部33を通じてディスプレイやプリンタなどの出力装置38で出力する(図6及び図3)。
【0057】
オペレータは、出力装置38にて出力された画像(可視化された平均差分データ即ち平均変化量分布データ)を見て、温度変化の最も大きい即ち観察し易い平均差分データ(平均変化量分布データ)を観察して内部不良を調べればよい。オペレータは、上記観察により、内部不良の有無や、或いは内部不良の大きさ、形状の特定を行えばよい。
【0058】
上記において、オペレータは、取得した全てのフレームについての平均差分データ(平均変化量分布データ)即ち全平均差分データ(W1~Wn)を観察するものとしてもよいが、テストピースを用いて予め知得している内部不良による温度変化の最も大きいと推定されるフレームのデータWkのみ観察するものとし効率的に内部不良を調べるものとしてもよい。例えば、オペレータは、加振からの経過時間の最も長いフレームpnに関する平均差分データ(Sn+Tn+Un)/3(識別子Wn)のみ、観察を行うものとしても良い。
【0059】
オペレータは、平均差分データ収容部37内の平均差分データ(平均変化量分布データ)から内部不良を調べるのに適した平均差分データ(平均変化量分布データ)を選択して内部不良の弁別を行うものとしてもよい。
また、上記において、当初より上記フレームpnに関する平均差分データ(平均変化量分布データWn)のみ観察するのであれば、当該フレームpnに関する平均差分データ(平均変化量分布データWn)のみ、演算処理装置35に算出させて平均差分データ収容部37へ収容するものとしても良く、不良品の弁別においてはこのような手法が能率的である。
【0060】
但し、特定の種類(形状や寸法、材質)の被検材mを対象として特定の出力の加振機11でのみ検査(内部不良の検出)を行うのであれば、図示は省略するが閾値データ格納部及び判定部(比較処理部)と、図6へ破線で示す判定結果データ収容部37cをデータ処理部30に設けて、テストピースによる試験にて事前に取得したデータから上記弁別のための(温度差の)閾値となるデータ(閾値差分データ)を当該閾値データへ格納しておき、制御部31は、上記判定部へ上記平均差分データ収容部37と上記閾値データ格納部を参照させて上記平均差分データと閾値差分データとを比較させ、判定結果データを判定結果データ収容部37cへ収容し、出力装置38へ出力することで、オペレータによらず自動的に内部不良の弁別を行うことができる。
【0061】
また、平均差分データ(平均変化量分布データ)と判定結果データの対の蓄積が多数進み、AIなどの機械学習、特にディープラーニングによる学習済データベースを構築できれば、上記判定部は、深層ニューラルネットワークのアルゴリズムを用いて内部不良を弁別するものとしてもよい。また、上記コンピュータ3とは別途の学習済コンピュータへ、上記コンピュータ3にて出力した平均差分データ(平均変化量分布データ)を入力して上記弁別のみ上記学習済コンピュータへ行わせるものとしても良い。
【0062】
(変更例)
前述の通り、振動子12を動かさずに被検材mを載置した配置具14を動かすこと(ずらすこと)で加振位置を変えるものとしてもよいが、逆に配置具14を動かさずに、振動子12を動かすことで、加振位置を変更するものとしてもよい。具体的には、図1(B)へ示す振動子12に代え、握りを備えたハンディタイプ(手持ち式)の振動子12を備えた超音波ウェルダーを採用し、撮影毎に振動子12を持つ作業者により被検材mに対する振動子12を当てる位置を変えるものとするのである(図示は省略)。
【0063】
上記ハンディタイプの振動子12の使用において、作業者が加振位置にて被検材mへ振動子12を押さえ付けるものであり、図2(B)へ示すテーブル(板)を配置具4とする実施の形態に代え、上記握りが配置具4であり、上記の内部不良明瞭化機構の構成要素となる。また、被検材mに対し振動子12を動かす場合、超音波探傷に用いられるタイヤ探触子のプローブと同様、タイヤ内に振動子12を備えるタイヤ型の加振装置を採用することもできる(図示は省略)。当該タイヤ型の加振装置においては、撮影後次の加振位置への移動を、被検材m表面上で上記タイヤを転がすことで円滑に行うことができる。
【0064】
既述の各実施の形態では、被検材mに対する振動子12の配置する位置を撮影毎に変更して複数の加振位置にて加振を行うものとした。この他、加振位置の数に応じた振動子12を用意し、当初より加振位置の夫々へ振動子12を配置し、一度の撮影で複数の加振位置における温度分布データを取得するものとしても実施できる。複数の振動子12を加振位置の夫々に予め配置し、順次加振を行うことで、振動子12の移動作業を不要として、検査時間の短縮が可能である。
また、複数の振動子12にて同時に上記加振を行う場合も、撮影毎に加振位置を変更し、より多くの加振位置にて加振を行うものとしても実施できる。
【0065】
(振動周波数に関する変更例)
一方、複数の加振位置にて、上記加振を行うのではなく、特定の加振位置で加振し撮影後、加振位置を変えずに振動子11の超音波振動の振動周波数を変更することにより、複数種類の振動周波数毎の時系列の複数の温度分布データの組を複数組取得して、周波数の異なる加振にて得た各組間で撮影開始時間の対応する差分分布データ(温度変化量の分布データ)から平均差分データ(平均変化量分布データ)を算出するものとしてもよい。
【0066】
加振位置を変えずに加振毎に振動周波数を異なるものとする場合として、例えば、3種類の周波数で行った加振の夫々から得た時系列の複数の温度分布データの組を図6に示す、第1データ組s、第2データ組t及び第3データ組uとして、前述の場合と同様のデータ処理を行えばよい。即ち上記3組のデータの取得の仕方は、異なるが、上述した加振位置の変更にて得た複数組(例では3組)の時系列の温度分布データのフロー(図4)と同様のフローでデータ処理を行えばよい(図7)。図7へ示すStep10~Step60の夫々は、図4へ示すStep1~Step6の夫々へ対応するものであり、周波数の種類数をnとしてn回、Step10~Step30を繰り返す点のみ、上述の実施の形態と異なる。従って、各加振を互いに周波数の異なる超音波振動にて行う場合のデータ処理部30の構成も上記図6に示す通りである。
超音波振動周波数の変更即ち複数種の振動周波数にて定在波の分布を変えて定在波を目立たなくする場合、選択する複数の上記振動周波数は、10KHz~500kHzの範囲の中から選択すればよい。
【0067】
上記周波数の変更は、互いに振動周波数の異なる加振部1を複数用意し、特定の加振位置において加振部1同士の間で、当接させる振動子12を交代させることで実施することができる。加振部1を複数用意する場合、夫々の振動子12を特定の加振位置に対し交代させて当接させるのに代え、複数の加振位置を設定し加振位置毎に振動周波数の異なる加振部1の振動子12を配置して加振を行うものであってもよく、この場合、複数の加振位置での加振と複数の振動周波数とを混合して上記平均差分データ(平均変化量分布データ)を算出する。
また、加振機11が振動子12の振動周波数を変更できるものである場合、1つの加振部1で複数の振動周波数による加振を行うことも可能である。
【0068】
前述の超音波振動の振動周波数を一定とし複数の加振位置にて各加振を行う場合、加振位置を一定と加振毎に超音波振動の振動周波数を異なるものとする場合、或いは加振位置及び振動周波数の双方を複数とする場合の、何れの場合においても、上記データ処理にて得られた平均差分データ(平均変化量分布データ)を全て観察して内部不良を調べるものとしてもよいが、内部不良のないテスト用の被検材mと人口欠陥を設けたテスト用の被検材mとを用意して加振を行い、内部欠陥が存在する場合温度変化の最も大きくなる(通常温度飽和状態となる)撮影開始からの経過時間を事前に把握しておき、当該経過時間に対応する平均差分データ(平均変化量分布データ)のみ調べるものとしても実施できる。当該経過時間に対応する平均差分データ(平均変化量分布データ)のみ調べる場合、当初より当該経過時間に対応する平均差分データ(温度変化量の分布データ)のみ算出するものとし、当該経過時間に対応する平均差分データ(平均変化量分布データ)を算出するに必要なフレームのみ温度分布データを取得するものとしてもよい。当該経過時間に対応する平均差分データ(平均変化量分布データ)のみ調べる場合、初期温度分布データと当該経過時間の温度分布データのフレームのみ取得すればよいと言える。
【0069】
上述した、a)加振位置(振動を与える位置)の移動(変更)又は複数の振動子による複数点での順次の加振、更に.b)振動周波数を変化させて(複数種の振動周波数での)加振の他、c)上記a)とb)を併用する加振にて、上記温度分布データを取得するものとしても実施できる。
【0070】
更に、平均差分データに基づくデータ収容部37aを、フーリエ変換データ収容部37aとして、制御部31の制御の下、演算処理部35に、上記平均差分データ収容部37を参照させ、時系列の各フレーム対応するW1~Wn-1の複数の平均差分データに対し、フーリエ変換を行わせて、当該変換後の位相画像データを上記フーリエ変換データ収容部37aへ収容するものとしても実施できる。
【0071】
上記の離散フーリエ変換について簡単に説明する。
平均差分データ収容部37へ収容された時系列の複数フレームの平均差分データ(時間と温度変化の関係を示すデータ)に対して、演算処理部35は、フーリエ変換を行い位相と周波数との関係を示すデータを算出する。算出させたデータは離散的であるので、離散フーリエ変換を行うが、解析的な関数にフィッティングを行い、連続なフーリエ変換を行うことによってフーリエ変換を実施することもできる。
離散フーリエ変換は、以下の数1、数2の式に基づいて行われる。
【0072】
【数1】
【0073】
【数2】
【0074】
上記においてFnは、サンプリング周波数をサンプリング数Nの2倍で割った値のn倍の周波数における変換結果(周波数成分、複素強度)を表す。これまでの説明の差分数nが当該サンプリング数Nに相当する。上記「n倍」のnは、これまで用いた上記差分数nのnと区別して用いる。
サンプリング数Nとしては、100フレーム(N=100)の画像データで実施することができた。但し、内部不良の明瞭化の効果が得られる範囲において、上記サンプリング数は、100フレームより多いものであっても、100フレームより少ないものであってもよい。
【0075】
Renは、変換結果の実部を表し、Imnは、変換結果の虚部を表す。Tは、k番目のサンプリングの温度である。Anは、変換結果の強度を表し、Φnは、変換結果の位相を表す。
離散フーリエ変換では、サンプリング周波数と取得データ数によって、変換後の周波数の範囲が決まる。変換後の周波数の最小値fminと、最大値fmaxは、サンプリング周波数fsと、取得データ数Nを用いて、次の数3及び4のように表される。
【0076】
【数3】
【0077】
【数4】
【0078】
フーリエ変換によって、得られた位相と周波数との関係を示すデータに対して、オペレータが、上記キーボード等のデバイスを用いて、検査周波数を選択し、選択された検査周波数における位相を上記ディスプレイによって画像表示することで、被検材mの各位置における位相が可視化される。データは、画像平面上に被検材mの検査位置を表し、彩度、色の濃淡などによって、位相を表す態様で、可視化することができる。
【0079】
フーリエ変換を行う場合、他の態様として、位相の相対値を表示してもよい。
即ち、被検材mの各部分の位相を比較し、被検材mのある部分の位相が被検材mにおける他の部分の位相と異なる場合に、当該ある部分には欠陥が存在するということを把握できる。被検材mの各部分の位相の比較は、画像に表示された位相をオペレータが確認することによって行ってもよいし前述の、閾値データ格納部、判定部(比較処理部)及び判定結果データ収容部37cをデータ処理部30が備えるものとし、被検材mの上記ある部分の位相と他の部分の位相の差が予め定められた閾値を超えるか否かに応じて、データ処理部30が自動的に行うものとしてもよい。
【実施例0080】
(加振位置を複数箇所とする例)
図2(A)の被検材mをアクリル製の板とし、当該被検材mの、長手方向の大きさ(m1+m2)を150mmとし、幅方向の大きさm3を150mmとし、厚みを3mmとし、近い短辺c1c2からの加振位置k中心への距離m2を10mm(遠い短辺c3c4からの加振位置k中心への距離m1を140mm)とし、加振位置k同士の間の上記間隔m4を10mmとして本発明の探傷方法を実施できた。本実施例において、テストピースとして、上記各寸法を採る図2(A)の被検材mに対しプラスチック球を衝突させて被検材m内部に亀裂を発生させることで人工欠陥mkを設けた被検材mと、上記の各寸法を採り上記人工欠陥mkを設けない被検材mとを用意した。上記人工欠陥の最大径は、20mmとした。
本実施例において、上記被検材mの中心o付近であって、図2(A)のoc3c4の領域内に設定した。実際の探傷においては、欠陥(内部不良)が被検材m内部のどの位置にあっても、定在波の映り込みの低減し、観察し易くなることが期待できる。
【0081】
上記の通り、検査材mに対し加振する点を変えると(加振位置をk1からk9へ順次変更すると)、被検材m表面の温度(サーモグラフィ)の模様(斑画像)が変化する。即ち、被検材mにおいて振動による定在波の腹と節の場所が変化する。上記複数の加振位置kの夫々から得た温度分布データから9枚の、時系列に累積した差分分布データ(図11の10~90)同士を加算し合って(図12(A))、平均化した平均差分データを図12(B)へ示す。この図12(B)に示す、9点の(累積した)差分の画像データを重ね合わせて加算平均した画像(平均差分データの画像)と、図2(A)の加振位置k5での加振で得た温度変化状況を示す差分分布データと比較すると、図2(B)の画像は、図2(C)の画像よりも、定在波による斑模様の濃淡の差が小さくなっており、相対的に欠陥による発熱部分が目立つものとなっていることが確認できる。
【0082】
具体的には、図12(B)に示す画像のS/N比(欠陥部温度上昇に対する健全部温度の標準偏差)は24.6であり、図12(C)に示す画像のS/Nは15.6であった。
図12(B)(C)へ示す画像から、異なる複数の加振位置から振動を加える(加振する)ことで、様々な定在波を発生せしめ、各加振で取得した差分分布データを平均化することにより内部の欠陥をS/N比良く表示できることが確認できた。
上記の通り、加振点(加振位置k)を順次変更したデータを得ることで、定在波による斑模様の画像(のビクセル毎の)の温度を加算平均すると斑模様を低減させることが可能であり、例えば縦割れなどの欠陥での加振による発熱は亀裂面の摩擦発熱に起因するものであるため、加振位置を変更しても欠陥による発熱の位置は変わらず、加算平均後の画像でも顕著な温度差が確認できることが、把握できる。本発明の実施にて定在波による斑模様が減少し平均化され、欠陥部を目視で確認し易くなることが確認できたのである。
【0083】
(振動周波数を複数種とする例)
図13(A)へ、振動子12の超音波振動の振動周波数20kHzで加振して得た温度分布データのサーモグラフィを示し、図13(B)及び図13(C)へ図13(A)の場合と同じ加振位置(図2の加振位置k5即ち被検材mの短辺c1c2中央付近)にて振動子12の超音波振動の振動周波数を夫々28kHz及び39kHzで加振して得た温度分布データのサーモグラフィを示す。図13に示す例は、被検材を100mm×150mm×3mmのアクリル試験片とする熱画像である。
図13(A)のサーモグラフィにおいてS/N比は3.35であり、図13(B)のサーモグラフィにおいてS/N比は2.87であり、図13(C)のサーモグラフィにおいてS/N比は3.55であった。図13(D)へ図13(A)乃至図13(C)のサーモグラフィを平均した画像を示す。図13(D)の画像のS/N比は4.66であった。図13(D)に示す平均した画像について、定在波発熱分布即ち定在波に起因する発熱分布の残っていることが分かるが、当該定在波発熱分布の低減と当該低減に伴うS/Nの一定の改善が認められる。
【0084】
従って、上記各周波数での加振で得た時系列の複数の温度分布データの組の夫々において、第2フレーム以降の温度分布データについて初期温度分布データ(第1フレーム)との差分(差分分布データ)を取り、上記各組間で対応するフレームの差分分布データ同士を加算して平均したデータ(平均差分データ)では、温度変化(温度勾配)のデータから平均を取ることになるため、定在波が目立たなくなるのに相まってより一層欠陥を明瞭にすることができると考えられる。
尚、複数種の周波数にて加振を行う場合においても、各周波数の加振での撮影開始のタイミングは、上記加振位置を複数とする場合と同様であり、各周波数での撮影同士の間で、加振からの経過時間を統一しておく(同期させる)。
この例では、各加振位置での撮影の開始(第1フレームの撮影)は、何れの周波数での撮影においても加振と同時即ち加振開始からの経過時間0として撮影を行う。但し、各周波数における撮影開始のタイミングを揃える(同期させる)ものであれば、この場合も撮影部2にて加振前から撮影を開始する即ち第1フレームの撮影を加振開始前とすることが可能である。
【0085】
(総括)
第1の本発明は、被検材mに超音波振動を与える振動子12と、振動子12を励振駆動する、加振機11とを備え、被検材mの表面の温度を計測し記録する赤外線カメラ21(熱感知部21)を設置し、被検材mの表面の温度を記録する検査(探傷)システムにおいて、振動子12は配置具4により、被検材mへ固定されて超音波振動を加えるものであり、加振と同時の又は加振前の初期温度(第1フレーム)と共に、少なくとも加振後の被検材m中にて超音波振動の安定した時点のものを、赤外線カメラ21の温度計測値(出力画像データ)をコンピュータ3へ記録(保存)し、制御部31を備える上記コンピュータ3へ上記データを記録した後に、赤外線カメラ21と被検材mの(相対〉位置を変えずに、被検材mの上記と異なる個所へ振動子12の加振点を変更して、上記と同様赤外線カメラ21の温度計測値を上記コンピュータ3へ記録(保存)し、コンピュータ3への上記記録を加振位置に応じて複数回(N回)繰り返し、得られたN枚の画像を初期温度(第1フレーム)で差分した後に赤外線カメラ21の各赤外線検出器(温度感知センサ)の素子毎に(画像のピクセル毎に)平均化して新しい平均化画像を表示する。
【0086】
第2の本発明は、被検材mに超音波振動を与える振動子12と、当該振動子12と振動周波数の異なる1つまたは複数の振動子12を備えると共に、各振動子12を励振する加振機11を備え、被検材mの表面の温度を計測し記録する赤外線検出カメラ3を設置し、被検材mの表面の温度を記録する検査システムであって、被検材mに対し振動子12を固定し超音波振動を加えるものであり、加振と同時の又は加振前の初期温度(第1フレーム)と共に、少なくとも加振後の被検材m中にて超音波振動の定在波が安定した時点で、赤外線カメラ21の温度計測値(出力画像データ)を上記コンピュータ3へ記録(保存)するものであり、上記データの記録後に、赤外線カメラ21と被検材mの(相対〉位置を変えずに、被検材mの同じ個所に当該振動子12と異なる振動周波数の振動子12にて加振を加えて、上記と同様に赤外線カメラ21の温度計測値をコンピュータ3へ記録(保存)し、上記記録を振動周波数に応じて複数回(N回)繰り返し、得られたN枚の画像を初期温度(第1フレーム)で差分した後に各赤外線カメラ21の赤外線検出器(温度感知センサ)の素子毎に(画像のピクセル毎に)平均化して新しい平均化画像を表示する。
【符号の説明】
【0087】
1 加振部
2 撮影部
3 コンピュータ
4 配置具
11 加振機
12 振動子
13 加圧機
14 載置台
21 熱感知部
22 支持具
30 データ処理部
31 制御部
32 入力部
33 出力部
34 温度分布データ収容部
35 演算処理部
36 差分分布データ収容部
37 平均差分データ収容部
37a 平均差分データに基づくデータ収容部
37c 判定結果データ収容部
38 出力装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13