(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111064
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】記憶回路および処理回路
(51)【国際特許分類】
G11C 11/418 20060101AFI20240808BHJP
G11C 7/18 20060101ALI20240808BHJP
G11C 11/54 20060101ALI20240808BHJP
G06F 12/00 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
G11C11/418 120
G11C7/18
G11C11/54
G06F12/00 560F
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024096368
(22)【出願日】2024-06-14
(62)【分割の表示】P 2024008592の分割
【原出願日】2021-01-29
(31)【優先権主張番号】P 2020020954
(32)【優先日】2020-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020178364
(32)【優先日】2020-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】503360115
【氏名又は名称】国立研究開発法人科学技術振興機構
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】菅原 聡
(72)【発明者】
【氏名】塩津 勇作
(57)【要約】
【課題】並列処理を可能とする。
【解決手段】記憶回路は、複数の行及び複数の列に行列状に配列され、相補的な一対の記憶ノードを各々有する複数のメモリセルと、前記複数の列に各々少なくとも2つのビット線が設けられ、列方向に配列されたメモリセルに接続する複数のビット線と、前記複数の行は、少なくとも2つの行を各々有する複数のブロックに分割され、前記複数のブロックの各々において、前記少なくとも2つのビット線の各々は、ブロック内の前記少なくとも2つの行のうち1つの行に設けられたメモリセルにおける前記一対の記憶ノードの少なくとも1つの記憶ノードに接続され、前記少なくとも2つの行のうち残りの行に設けられたメモリセルに接続されない。
【選択図】
図46
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の行及び複数の列に行列状に配列され、相補的な一対の記憶ノードを各々有する複数のメモリセルと、
前記複数の列に各々少なくとも2つのビット線が設けられ、列方向に配列されたメモリセルに接続する複数のビット線と、
前記複数の行は、少なくとも2つの行を各々有する複数のブロックに分割され、
前記複数のブロックの各々において、前記少なくとも2つのビット線の各々は、ブロック内の前記少なくとも2つの行のうち1つの行に設けられたメモリセルにおける前記一対の記憶ノードの少なくとも1つの記憶ノードに接続され、前記少なくとも2つの行のうち残りの行に設けられたメモリセルに接続されない、記憶回路。
【請求項2】
前記複数のブロックのうち1つのブロック内の前記少なくとも2つのビット線から並列にデータが読み出される、請求項1に記載の記憶回路。
【請求項3】
前記複数の列における前記1つのブロック内の前記少なくとも2つのビット線から並列にデータが読み出される、請求項2に記載の記憶回路。
【請求項4】
前記複数の行にそれぞれ設けられ、行方向に配列されたメモリセルに接続する複数の第1ワード線を備える、請求項1から3のいずれか一項に記載の記憶回路。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか一項に記載の記憶回路であるメモリと、
第1層の複数の第1ノードに対応する複数の第1データに複数の重みによる重み付けをそれぞれ行った後に加算することにより、第2層の複数の第2ノードに対応する複数の第2データのうち1つの第2データを算出する処理を前記複数の第2データについて行うことによって、前記複数の第2データを算出し、前記複数の第2データのうち少なくとも2つの第2データの処理を並列に処理する処理部と、
を備え、
前記複数のメモリセルは、前記複数の重みをそれぞれ格納し、1つの第2データに対応する複数の重みは同じ行に、異なる第2データに対応する複数の重みは異なる行に格納し、
前記処理部は、前記少なくとも2つの第2データの処理を並列に処理するときに、前記複数のブロックのうち1つのブロック内の前記少なくとも2つのビット線から並列にデータを読み出す処理装置。
【請求項6】
請求項1から3のいずれか一項に記載の記憶回路であるメモリと、
第1層の複数の第1ノードに対応する複数の第1データのうち1つの第1データに複数の重みによる重み付けを行うことで第2層の複数の第2ノードに対応する複数の第2データの各々一部を算出する処理を前記複数の第1データについて行い、前記複数の第2データの各々について、前記複数の第2データの一部を前記複数の第1データ分加算することで前記複数の第2データを算出し、前記複数の第1データのうち少なくとも1つの第2データの処理を並列に処理する処理部と、
を備え、
前記複数のメモリセルは、前記複数の重みをそれぞれ格納し、1つの第1データに対応する複数の重みは同じ行に、異なる第1データに対応する複数の重みは異なる行に格納し、
前記処理部は、前記少なくとも2つの第1データの処理を並列に処理するときに、前記複数のブロックのうち1つのブロック内の前記少なくとも2つのビット線から並列にデータを読み出す処理装置。
【請求項7】
請求項1から3のいずれか一項に記載の記憶回路である第1メモリと、
請求項1から3のいずれか一項に記載の記憶回路である第2メモリと、
第1層の複数の第1ノードに対応する複数の第1データに複数の第1重みによる重み付けをそれぞれ行った後に加算することにより、第2層の複数の第2ノードに対応する複数の第2データのうち1つの第2データを算出する処理を前記複数の第2データについて行うことによって、前記複数の第2データを算出し、前記複数の第2データのうち少なくとも2つの第2データの処理を並列に処理する第1処理部と、
前記複数の第2データのうち1つの第2データに複数の第2重みによる重み付けを行うことで第3層の複数の第3ノードに対応する複数の第3データの各々一部を算出する処理を前記複数の第2データについて行い、前記複数の第3データの各々について、前記複数の第3データの一部を前記複数の第2データ分加算することで前記複数の第3データを算出し、前記複数の第2データのうち少なくとも2つの第2データの処理を並列に処理する第2処理部と、
を備え、
前記第1メモリにおける前記複数のメモリセルは、前記複数の第1重みをそれぞれ格納し、1つの第2データに対応する複数の第1重みは同じ行に、異なる第2データに対応する複数の第1重みは異なる行に格納し、
前記第2メモリにおける前記複数のメモリセルは、前記複数の第2重みをそれぞれ格納し、1つの第2データに対応する複数の第2重みは同じ行に、異なる第2データに対応する複数の第2重みは異なる行に格納し、
前記第2処理部が前記複数の第2データのうち1つの第2データの処理を実行しているときに、並列して前記第1処理部は前記複数の第2データのうち別の第2データの処理を実行し、
前記第1処理部は、前記少なくとも2つの第2データの処理を並列に処理するときに、前記第1メモリにおける前記複数のブロックのうち1つのブロック内の前記少なくとも2つのビット線から並列にデータを読み出し、
前記第2処理部は、前記少なくとも2つの第2データの処理を並列に処理するときに、前記第2メモリにおける前記複数のブロックのうち1つのブロック内の前記少なくとも2つのビット線から並列にデータを読み出す処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記憶回路および処理回路に関する。
【背景技術】
【0002】
不揮発性記憶素子を用いることなく、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)から構成されたインバータを用いた擬似不揮発性SRAM(VNR-SRAM)または超低電圧(ULV)リテンションSRAM(Static Random Access Memory)(ULVR-SRAM)が知られている(例えば特許文献1)。VNR-SRAMでは、ULVリテンションが可能なシュミットトリガ(ST)モードと通常の電圧でSRAMと同等の回路性能を実現できるブーステッドインバータ(BI)モードとを切り替え可能なデュアルモードインバータを用いる。このULVリテンションSRAMをいわゆるパワーゲーティング(PG)に用いることができる。
【0003】
また、双安定回路と不揮発性記憶素子を有するメモリセル(NV-SRAM)を用いた記憶回路が知られている(例えば特許文献2)。NV-SRAMでは双安定回路のデータを不揮発性記憶素子にストアし、電力消費を減らしつつ、必要な場合に不揮発性記憶素子のデータを双安定回路にリストアし、当該データを利用な状態とする。
【0004】
更にまた、ニューラルネットワークの重み係数等の係数を記憶するためのSRAMと、積和や評価関数の演算回路を組み合わせることによって、ニューラルネットワークの処理を高速に行うことが検討されている(例えば非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2016/158691号
【特許文献2】国際公開第2009/028298号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】IEEE JOURNAL OF SOLID-STATE CIRCUITS, VOL. 53, pp,983-994, 2018.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1のVNR-SRAMでは、ULVリテンションすることで、セルの記憶内容を失うことなく、待機時電力を削減することができる。しかしながら、VNR-SRAMでは、1つのメモリセルに14個または10個のトランジスタを用いる(以下、それぞれ14Tセル、10Tセルと称する)。このため、メモリセルが大型化してしまう、または、セル面積が増大するという第1の課題がある。また、10Tセルのようにトランジスタを減らすと、ULVリテンションの安定性(ノイズマージン)は低下する。
【0008】
また、特許文献2のNV-SRAMでは、メモリセル内の不揮発性記憶素子を用いることで、待機時にメモリセルの電源を遮断することができるため、待機時電力を削減できる。しかしながら,1つのメモリセルに不揮発性記憶素子に加えて8個トランジスタを用いる。このため、メモリセルが小型化しづらい、またはセル面積が増大するという第2の課題がある。
【0009】
本発明は、上記第1の課題または第2の課題に鑑み、小型化またはトランジスタ数を減らすことが可能な記憶回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、複数の行及び複数の列に行列状に配列され、相補的な一対の記憶ノードを各々有する複数のメモリセルと、前記複数の列に各々少なくとも2つのビット線が設けられ、列方向に配列されたメモリセルに接続する複数のビット線と、前記複数の行は、少なくとも2つの行を各々有する複数のブロックに分割され、前記複数のブロックの各々において、前記少なくとも2つのビット線の各々は、ブロック内の前記少なくとも2つの行のうち1つの行に設けられたメモリセルにおける前記一対の記憶ノードの少なくとも1つの記憶ノードに接続され、前記少なくとも2つの行のうち残りの行に設けられたメモリセルに接続されない、記憶回路である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、小型化またはトランジスタ数を減らすことが可能な記憶回路を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、比較例1におけるメモリセルのループ表示の回路図である。
【
図2】
図2は、比較例1におけるメモリセルのクロスカップル表示の回路図である。
【
図3】
図3は、比較例2におけるメモリセルのループ表示の回路図である。
【
図4】
図4は、比較例2におけるメモリセルのクロスカップル表示の回路図である。
【
図5】
図5は、実施例1におけるメモリセルのループ表示の回路図である。
【
図6】
図6は、実施例1におけるメモリセルのクロスカップル表示の回路図である。
【
図7A】
図7Aは、実施例1におけるメモリアレイのブロック図である。
【
図7B】
図7Bは、実施例1におけるパワースイッチおよび選択回路を示す図である。
【
図7C】
図7Cは、実施例1におけるメモリアレイの別の例を示すブロック図である。
【
図8】
図8(a)および
図8(b)は、実施例1のVDDリテンション状態におけるWLPおよびWFBに対するSNMおよびスタンバイパワーを示す図である。
【
図9】
図9(a)および
図9(b)は、実施例1および比較例3のVDDリテンション状態およびリード/ライト状態のリードにおけるVWLに対するSNMおよびスタンバイパワーを示す図である。
【
図10】
図10(a)から
図10(c)は、実施例1、比較例2および3のVDDリテンション状態およびリード/ライト状態におけるSNMを示す図である。
【
図11】
図11は、実施例1のULVリテンション状態におけるインバータ回路の伝達特性を示す図である。
【
図13】
図13(a)および
図13(b)は、実施例1、比較例2および3のULVリテンション状態における双安定回路のバタフライカーブを示す図である。
【
図14】
図14(a)は、実施例1、比較例2および3のULVリテンション状態におけるSNMを示す図、
図14(b)は、実施例1のULVリテンション状態におけるVVDDに対するSNMおよびスタンバイパワーを示す図である。
【
図15】
図15は、実施例1および比較例3におけるスタンバイパワーを示す図である。
【
図16】
図16は、実施例1の変形例1におけるメモリセルのループ表示の回路図である。
【
図17】
図17は、実施例1の変形例1におけるメモリセルのクロスカップル表示の回路図である。
【
図18】
図18は、実施例1の変形例2におけるメモリセルのループ表示の回路図である。
【
図19】
図19は、実施例1の変形例2におけるメモリセルのクロスカップル表示の回路図である。
【
図20】
図20は、実施例1およびその変形例2のULVリテンション状態における双安定回路のバタフライカーブを示す図である。
【
図21】
図21(a)および
図21(b)は、それぞれヘッダPS・PDFB・タイプ1型およびフッタPS・PUFB・タイプ1型の各電圧を示す図である。
【
図22】
図22は、実施例2における仮想電源方式のメモリセルの回路図である。
【
図23】
図23は、実施例2の仮想電源方式におけるパワースイッチおよび選択回路を示す図である。
【
図24】
図24は、実施例2における仮想接地方式のメモリセルの回路図である。
【
図25】
図25は、実施例2の仮想接地方式におけるパワースイッチおよび選択回路を示す図である。
【
図26】
図26は、実施例2におけるメモリアレイのブロック図である。
【
図27】
図27(a)から
図27(c)は、実施例2におけるメモリセルの動作を示す図である。
【
図28】
図28(a)から
図28(c)は、実施例2におけるメモリセルの動作を示す図である。
【
図29】
図29は、実施例2におけるメモリセルの動作を示す図である。
【
図30】
図30は、シミュレーション3におけるホールド状態のWLPに対するSNMおよびスタンバイパワーを示す図である。
【
図31】
図31は、シミュレーション3におけるリード動作およびホールド状態のVWLに対するSNMを示す図である。
【
図32】
図32(a)および
図32(b)は、シミュレーション3におけるH-ストア動作の電圧VSRに対するそれぞれ電流Im1およびSNMを示す図である。
【
図33】
図33(a)および
図33(b)は、シミュレーション3におけるL-ストア動作の電圧Vcに対するそれぞれ電流Im2およびSNMを示す図である。
【
図34】
図34(a)および
図34(b)は、シミュレーション3におけるリストア動作のそれぞれFFおよびFSの電圧VSRに対するSNMを示す図である。
【
図35】
図35(a)は、実施例2におけるSNMを示す図であり、
図35(b)は、実施例2および比較例3のスタンバイパワーを示す図である。
【
図36】
図36は、実施例2の変形例1に係るメモリセルの回路図である。
【
図37】
図37は、実施例3におけるBNNモデルを示す図である。
【
図38】
図38は、実施例3におけるn-to-1コネクションの演算を行う演算回路のブロック図である。
【
図39】
図39(a)は、実施例3における1-to-nコネクションの演算を行う演算回路のブロック図であり、
図39(b)は、蓄積器のブロック図である。
【
図40】
図40は、実施例3におけるBNN装置のブロック図である。
【
図41】
図41は、実施例3において処理部52が行うn-to-1コネクションの処理を示すフローチャートである。
【
図42】
図42は、実施例3において処理部62が行う1-to-nコネクションの処理を示すフローチャートである。
【
図43】
図43は、実施例3における時間に対する処理を示す図である。
【
図44】
図44は、実施例2におけるメモリの例を示すブロック図である。
【
図45】
図45は、実施例3の変形例1におけるBNN装置のブロック図である。
【
図46】
図46は、実施例3の変形例1におけるメモリの例を示す図である。
【
図47】
図47は、実施例3の変形例2における2R1W型NV-SRAMメモリセルの例を示す回路図である。
【
図48】
図48は、実施例3の変形例2における2R1W型ULVR-SRAMメモリセルの例を示す回路図である。
【
図49】
図49(a)は、実施例3の変形例2のリード動作における2R1W型NV-SRAMメモリセルのVWWLに対するSNMを示す図、
図49(b)は、リード動作における2R1W型ULVR-SRAMメモリセルのVWWLに対するSNMを示す図である。
【
図50】
図50は、実施例3の変形例2における2RW型NV-SRAMメモリセルの例を示す回路図である。
【
図51】
図51は、実施例3の変形例2における2RW型ULVR-SRAMメモリセルの例を示す回路図である。
【
図52】
図52は、実施例3の変形例2における2R1W型メモリの例を示す図である。
【
図53】
図53は、実施例3の変形例2における2RW型メモリの例を示す図である。
【
図54】
図54は、実施例3の変形例における時間に対する処理を示す図である。
【
図55】
図55(a)から
図55(c)は、層数mに対する規格化した処理時間を示す図である。
【
図56】
図56は、実施例3の変形例4に係るNV-SRAMメモリセルの回路図である。
【
図57】
図57は、実施例3の変形例4に係るULVR-SRAMメモリセルの回路図である。
【
図58】
図58は、実施例3の変形例4におけるBNN装置のブロック図である。
【
図59】
図59(a)および
図59(b)は、それぞれ比較例4および実施例3の変形例5のパワースイッチ付近のブロック図である。
【
図60】
図60は、実施例3の変形例5における6Tセルの回路図である。
【
図61】
図61(a)および
図61(b)は、それぞれ比較例4および実施例3の変形例5におけるVDDLに対するSNMおよびスタンバイパワーを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
【0014】
実施例について説明する前に比較例について説明する。
【0015】
[比較例1]
比較例1は、特許文献1に比べフィードバックトランジスタの導電型およびゲートの接続先が異なっている。
図1および
図2は、比較例1におけるメモリセル10の回路図である。
図1はループ表示の回路図であり、
図2はクロスカップル表示の回路図である。
図1と
図2とは同じ回路であるが、動作の説明には
図1のループ表示がわかりやすく、回路面積等の説明には
図2のクロスカップル表示がわかりやすい。
【0016】
図1および
図2に示すように、インバータ回路14および16は、FETm1~m3およびm1a~m3aを備えている。FETm1、m2およびm3aはNチャネルMOSFETであり、FETm1a、m2aおよびm3はPチャネルMOSFETである。
【0017】
FETm1、m2、m1aおよびm2aはグランド線15bと電源線15a(仮想電源線)との間に直列に接続されている。FETm1、m2、m1aおよびm2aのゲートは入力ノードN1に接続されている。FETm2とm2aとの間は出力ノードN2である。FETm1およびm2は、インバータ回路14および16のドライバであり、FETm1aおよびm2aはロードである。
【0018】
FETm1とm2との間の中間ノードN3とバイアスノードN4との間にFETm3が接続され、FETm1aとm2aとの間の中間ノードN3aとバイアスノードN4aとの間にFETm3aが接続されている。FETm3およびm3aのゲートは入力ノードN1に接続されている。FETm3およびm3aはフィードバックトランジスタFBTrである。
【0019】
記憶ノードQ1およびQ2はFETm5を介しビット線BLおよびBLBにそれぞれ接続されている。FETm5のゲートはワード線WLに接続されている。FETm5はNチャネルFETであり、パストランジスタである。
【0020】
ドライバ26はインバータ27aおよび27bを備えている。インバータ27aは制御信号VCTRLを反転した信号VFNをバイアスノードN4に出力し、インバータ27bは信号VFNを反転した信号VFPをバイアスノードN4aに出力する。パワースイッチ(PS)30は、電源15cの電圧VDDを仮想電源電圧VVDDに変換し電源線15aに供給する。パワースイッチ30は不図示の制御回路からの制御信号により仮想電源電圧VVDDを切り替える。
【0021】
比較例1に係るメモリセルは、制御信号VCTRLによりインバータ回路14および16のモードをSTモードとBIモードに変更できる。制御信号VCTRLがハイレベル(VVDDH、例えば1.2V)のとき、インバータ回路14および16はBIモードとなる。制御信号VCTRLがローレベル(VGND、例えば0V)のとき、インバータ回路14および16はSTモードとなる。
【0022】
STモードは、インバータ回路14および16の伝達特性にヒステリシスを有するモードであり、BIモードは、インバータ回路14および16の伝達特性にヒステリシスを実質的に有さないモードである。STモードでは、インバータ回路14および16に加わる仮想電源電圧VVDD-VGNDを通常の電圧(例えば1.2V)とすると、リーク電流が大きくなる。BIモードでは、電圧VVDD-VGNDを通常の電圧としてもSTモードよりリーク電流が小さい。なお、ヒステリシスを実質的に有さないとはSTモードのような意図的なヒステリシスを有さないことであり、意図しないヒステリシスを有することを許容する。
【0023】
BIモードでは、メモリセル10は、通常のSRAMセルとして機能する。STモードでは、電圧(VVDD-VGND)を例えば0.2Vと超低電圧(ULV:Ultralow Voltage)としても双安定回路12はデータを保持する。
【0024】
表1は、比較例1における状態を示す表である。
【0025】
【0026】
メモリセル10にデータの読み出しおよび書き込みを行う状態はリード/ライト状態である。リード/ライト状態のとき、制御信号VCTRLはハイレベルHである。これにより、インバータ回路14および16はBIモードとなる。パワースイッチ30は仮想電源電圧VVDDをVVDDH(例えば1.2V)とする。電圧(VVDD-VGND)はVH(例えば1.2V)となる。読み出しまたは書き込みを行うメモリセル10のワード線WLの電圧VWLをハイレベル(例えば1.2V)とすることにより、FETm5がオンし、双安定回路12からのデータの読み出しまたは書き込みが可能となる。
【0027】
通常動作のときに、データを保持している状態はVDDリテンション状態である。VDDリテンション状態のとき、制御信号VCTRLはハイレベルHであり、インバータ回路14および16はBIモードである。仮想電源電圧VVDDはVVDDH(例えば1.2V)であり、電圧(VVDD-VGND)はVH(例えば1.2V)である。読み出しまたは書き込みを行わないためワード線WLの電圧VWLはローレベル(例えば0V)であり、FETm5はオフである。
【0028】
メモリセル10のデータを超低電圧で保持する状態はULVリテンション状態である。ULVリテンション状態のとき、制御信号VCTRLはローレベルLであり、インバータ回路14および16はSTモードである。パワースイッチ30は、仮想電源電圧VVDDをVVDDL(例えば0.2V)とする。電圧(VVDD-VGND)はVHより低いVL(例えば0.2V)となる。電圧VWLはローレベル(例えば0V)であり、FETm5はオフである。
【0029】
[比較例2]
図3および
図4は、比較例2におけるメモリセル10の回路図である。
図3はループ表示の回路図であり、
図4はクロスカップル表示の回路図である。
【0030】
図3および
図4に示すように、比較例2では、FETm2a、m3a、ドライバ26が設けられていない。その他の構成は比較例1と同じである。
【0031】
表2は、比較例2における状態を示す表である。
【0032】
【0033】
表2に示すように、バイアスノードN4の電圧はモードによらずVFN(例えば0.2V)で一定である。リード/ライト状態のとき、不図示の制御回路からの制御信号によりパワースイッチ30は仮想電源電圧VVDDをVVDDH(例えば1.2V)とする。双安定回路12に加わる仮想電源電圧(VVDD-VGND)はVH(例えば1.2V)となる。このとき、インバータ回路14および16はBIモードとなる。ワード線WLの電圧VWLはハイレベル(例えば1.2V)である。VDDリテンション状態のとき、仮想電源電圧VVDDはVVDDH(例えば1.2V)であり、電圧(VVDD-VGND)はVH(例えば1.2V)であり、インバータ回路14および16はBIモードである。ワード線WLの電圧VWLはローレベル(0V)である。
【0034】
ULVリテンション状態のとき、パワースイッチ30は仮想電源電圧VVDDをVVDDL(例えば0.2V)とする。電圧(VVDD-VGND)はVHより低いVL(例えば0.2V)となる。このとき、インバータ回路14および16はSTモードとなる。電圧VWLはローレベル(例えば0V)である。比較例1と同様に、ULVリテンション状態では消費電力を抑制できる。
【0035】
N型チャネルのFETm1とm2との間にフィードバックトランジスタFBTrとしてFETm3を設けるタイプをプルダウン型フィードバックPDFBと呼ぶ。P型チャネルのFETm1aとm2aとの間にフィードバックトランジスタFBTrとしてFETm3aを設けるタイプをプルアップ型フィードバックPUFBと呼ぶ。FETm3とm3aを両方設けるタイプをプルアッププルダウン型フィードバックPUPDFBと呼ぶ。比較例1はPUPDFBであり、比較例2はPDFBである。
【0036】
FBTrとFBTrが接続されるFETが異なる導電型チャネルの場合、異導電型チャネルFBTrと呼ぶ。PDFBである比較例2では、FBTrであるFETm3はP型チャネルであり、FETm3が接続されるFETm1およびm2はN型チャネルである。よって、PDFBにおいてFBTrがP型チャネルのときは異導電型チャネルFBTrである。PUFBにおいてFBTrがN型チャネルのとき、異導電型チャネルFBTrである。FBTrとFBTrが接続されるFETが同じ導電型チャネルの場合、同導電型チャネルFBTrと呼ぶ。PDFBにおいてFBTrがN型チャネルのとき、PUFBにおいてFBTrがP型チャネルのとき、同導電型チャネルFBTrである。
【0037】
異導電型チャネルFBTrでは、ゲートは、同じインバータ回路の入力ノードまたは相手方のインバータ回路の出力ノードに接続される。同導電型チャネルFBTrでは、ゲートは、同じインバータ回路の出力ノードまたは相手方のインバータ回路の入力ノードに接続される。比較例1および2は異導電型チャネルFBTrである。特許文献1では、同導電型チャネルFBTrが開示されている。
【0038】
電源線15aと電源15cとの間にパワースイッチ30を設け、パワースイッチ30は仮想電源電圧VVDDを設定し、電圧VVDD-VGNDをメモリセル10の電源電圧とする方式をヘッダPSと呼ぶ。グランド線15bとグランドとの間にパワースイッチ30を設け、パワースイッチ30は仮想接地電圧VVGNDを設定し、VDD-VVGNDをメモリセル10の電源電圧とする方式をフッタPSと呼ぶ。電源線15aと電源15cとの間とグランド線15bとグランドとの間の両方にパワースイッチ30を設け、パワースイッチ30は仮想電源電圧VVDDおよび仮想接地電圧VVGNDを設定し、VVDD-VVGNDをメモリセル10の電源電圧とする方式をデュアルPSと呼ぶ。比較例1および2はヘッダPSである。
【0039】
ドライバ26を設け、制御信号VCTRLによりバイアスノードN4およびN4aにハイレベルおよびローレベルを印加することでSTモードとBIモードを切り替える方式をタイプ2と呼ぶ。ドライバ26を設けず、バイアスノードN4を定電圧(一定のバイアス)とする方式をタイプ1と呼ぶ。比較例1はタイプ2であり、比較例2はタイプ1である。
【0040】
まとめると、比較例1は、PUPDFB、異導電型チャネルFBTr、ヘッダPS、タイプ2である。比較例2は、PDFB、異導電型チャネルFBTr、ヘッダPS、タイプ1である。
【0041】
異導電型チャネルFBTrでは、同導電型チャネルFBTrよりULVリテンション状態における双安定回路12の動作安定性(例えばノイズマージン)が向上することを説明する。
【0042】
例えば比較例2において、FETm3がN型チャネル(すなわち同導電型チャネル)の場合、インバータ回路14および16のFETm3のゲートはそれぞれインバータ回路14および16の出力ノードN2に接続されている。ULVリテンション状態において、例えば記憶ノードQ1およびQ2がそれぞれローレベルおよびハイレベルのとき、インバータ回路14のFETm3はオンし、中間ノードN3は電圧VFNのバイアスノードN4から充電される。しかし、FETm3がN型チャネルであり、FETm3の閾値電圧Vthは正のため、バイアスノードN4からの充電電位は、不十分である。これにより、FBTrであるFETm3のフィードバック効果が低下し、ULVリテンション状態における双安定回路の動作安定性が低下する場合がある。
【0043】
一方、比較例2のようにFETm3がP型チャネル(すなわち異導電型チャネル)のとき、例えば記憶ノードQ1およびQ2がそれぞれローレベルおよびハイレベルのとき、インバータ回路14のFETm3がオンする。中間ノードN3は電圧がVFNであるバイアスノードN4から充電される。FETm3がP型チャネルであり、FETm3のゲートにはソースおよびドレインに対し十分低い電圧が加わるため、中間ノードN3をVFNにプルアップできる。これにより、FETm3のフィードバック効果が十分に生じる。よって、ULVリテンション状態における双安定回路の動作安定性を向上させることができる。
【0044】
次に、比較例2がタイプ1となることを説明する。比較例2では、VFNをVVDDL程度の一定のバイアスとする。電源線15aにVVDDHが印加されると、VFNはVVDDHに対し十分に低いため、インバータ回路14および16はBIモードとなる。電源線15aにVVDDLが印加されると、VFNはVGNDに対し高く、VVDDLに等しい、またはVVDDLに近いため、インバータ回路14および16はSTモードとなる。このように、PDFB・ヘッダPSでは、ドライバ26が不要となる。同様にPUFB・フッタPSでは、ドライバ26が不要となる。
【0045】
比較例1では、メモリセル10内のトランジスタの個数は14個であり、かつドライバ26を設ける。これにより、
図2のように、回路の面積が大きくなる。インバータ回路14および16に対するプルアップ側とインバータ回路14および16に対するプルダウン側の両方のFBTr(FETm3およびm3a)によりフィードバックをかけるため、ULVリテンション状態におけるノイズマージンが大きくなる。これにより、VVDDLを例えば0.15Vとすることができ、消費電力を抑制できる可能性がある。
【0046】
比較例2では、メモリセル10内のトランジスタの個数は10個であり、かつドライバ26が不要である。これにより、
図4のように回路の面積を小さくできる。しかし、プルダウン側のFBTr(FETm3)のみによりフィードバックをかけるため、ULVリテンション状態におけるノイズマージンが比較例1より小さくなる。これにより、VVDDLは例えば0.2Vとなる。よって、比較例1より消費電力が大きくなる。
【実施例0047】
実施例1は、PDFB、異導電型チャネルFBTr、ヘッダPS、タイプ1の例である。実施例1では、比較例2のロードであるFETm1aとパストランジスタであるFETm5とを1つのFETm4としている。これにより、メモリセル10内のトランジスタの個数を8個と比較例2よりさらに削減できる。さらに、ULVリテンションにおけるノイズマージンを増大できる。
【0048】
[メモリセルの説明]
図5および
図6は、実施例1におけるメモリセルの回路図である。
図5はループ表示の回路図であり、
図6はクロスカップル表示の回路図である。
【0049】
図5および
図6に示すように、メモリセル10は、インバータ回路14および16を主に備えている。インバータ回路14および16はループ状に接続され双安定回路12を構成している。インバータ回路14および16は、FETm1~m4を各々備えている。FETm1およびm2はNチャネルMOSFETであり、FETm3およびm4はPチャネルMOSFETである。FETm1~m4は例えばノーマリオフ型トランジスタである。
【0050】
FETm1において、ソースはグランド電圧VGNDが印加されたグランド線15bに接続され、ドレインは中間ノードN3に接続され、ゲートは入力ノードN1に接続されている。FETm2において、ソースは中間ノードN3に接続され、ドレインは出力ノードN2に接続され、ゲートは入力ノードN1に接続されている。FETm1およびm2はドライバである。
【0051】
FETm3において、ソースおよびドレインの一方は中間ノードN3に接続され、ソースおよびドレインの他方はバイアスノードN4に接続され、ゲートは入力ノードN1に接続されている。FETm3はフィードバックトランジスタFBTrである。
【0052】
FETm4において、ソースおよびドレインの一方は出力ノードN2に接続され、ソースおよびドレインの他方は制御線CTRL1またはCTRL2に接続され、ゲートはワード線WLに接続されている。FETm4は、リード/ライト状態ではパストランジスタとして機能し、VDDリテンション状態およびULVリテンション状態ではロードとして機能する。
【0053】
インバータ回路14の入力ノードN1とインバータ回路16の出力ノードN2は記憶ノードQ1に接続され、インバータ回路16の入力ノードN1とインバータ回路14の出力ノードN2は記憶ノードQ2に接続されている。記憶ノードQ1とQ2は相補的なノードである。記憶ノードQ1はインバータ回路16のFETm4を介し制御線CTRL1に接続され、記憶ノードQ2はインバータ回路14のFETm4を介し制御線CTRL2に接続されている。
【0054】
選択回路32は、制御線CTRL1をビット線BLおよび電源線15a(仮想電源線)のいずれか一方に接続する。選択回路32aは、制御線CTRL2をビット線BLBおよび電源線15aのいずれか一方に接続する。パワースイッチ(PS)30は、電源15cの電圧VDDを仮想電源電圧VVDDに変換し電源線15aに供給する。
【0055】
[メモリアレイの説明]
図7Aは、実施例1におけるメモリアレイのブロック図である。
図7Aに示すように、メモリアレイ22は、メモリセル10を有する複数のブロック24に分割されている。ブロック24の個数は適宜設計可能である。メモリアレイ22内には複数のメモリセル10がn列にマトリックス状に配置されている。メモリアレイ22内には、行方向にワード線WLが延伸し、列方向に制御線CTRL1およびCTRL2が延伸している。各メモリセル10には、ワード線WL、制御線CTRL1およびCTRL2が接続されている。
図7Aでは、1列からn列の制御線CTRL1およびCTRL2をそれぞれ制御線CTRL11およびCTRL21からCTRL1nおよびCTRL2nと示している。
【0056】
メモリアレイ22に対応し、制御回路28、パワースイッチ30および周辺回路38が設けられている。制御回路28は、パワースイッチ30および周辺回路38を制御する。
【0057】
パワースイッチ30は、制御回路28からの制御信号にしたがって、電源15cの電圧VDDから、例えば分圧回路によって、得られ仮想電源電圧VVDDを出力する。電圧VVDD-VGNDが双安定回路12に加わる電圧となる。周辺回路38は、WLデコーダ31、選択回路32b、プリチャージ回路33および読出書込回路34を備えている。
図7Aでは、
図5および
図6の選択回路32および32aを選択回路32bとして説明する。以下の同様の図も同じである。
【0058】
メモリセル10がデータを保持するときには、選択回路32bは制御線CTRL11およびCTRL21からCTRL1nおよびCTRL2nに電源線15aを接続するようにスイッチする。メモリセル10からデータを読み出しまたは書き込むときには、選択回路32bは制御線CTRL11およびCTRL21からCTRL1nおよびCTRL2nにそれぞれビット線BL1およびBLB1からBLnおよびBLBnを接続するようにスイッチする。WLデコーダ31は行アドレスに基づきワード線WLを選択する。読出書込回路34に列アドレスが入力する。読出書込回路34は列アドレスに基づきビット線BL1およびBLB1からBLnおよびBLBnから選択する列に対応するビット線BLおよびBLBを選択する。プリチャージ回路33はビット線BLおよびBLBをプリチャージする。読出書込回路34は、選択されたメモリセル10の双安定回路12にデータを書き込みまたは双安定回路12からデータを読み出しバス25に出力する。
【0059】
周辺回路の別の例を
図7Bおよび
図7Cを用い説明する。
図7Bは、実施例1におけるパワースイッチおよび選択回路を示す図である。
図7Bに示すように、パワースイッチ30は、FETPS1およびPS2を備えている。FETPS1およびPS2はPチャネルFETである。FETPS1は電源15cHと電源線15aとの間に接続され、FETPS2は電源15cLと電源線15aとの間に接続されている。電源15cHおよび電源15cLにはそれぞれ電源電圧VDDHおよびVDDLが供給されている。
【0060】
FETPS1およびPS2のゲートにはそれぞれ信号VPS1およびVPS2が入力する。信号VPS1およびVPS2がそれぞれローレベルおよびハイレベルのとき、FETPS1およびPS2はそれぞれオンおよびオフし、仮想電源電圧VVDDはVDDHとなる。仮想電源電圧VVDDがVDDHとなるのは、リード/ライト状態およびVDDリテンション状態のときであり、電圧VVDD-VGNDは例えば1.2Vである。信号VPS1およびVPS2がそれぞれハイレベルおよびローレベルのとき、FETPS1およびPS2はそれぞれオフおよびオンし、仮想電源電圧VVDDはVDDLとなる。仮想電源電圧VVDDがVDDLとなるのは、ULVリテンション状態のときであり、電圧VVDD-VGNDは例えば0.2Vである。信号VPS1およびVPS2がともにハイレベルのとき、FETPS1およびPS2はともにオフし、仮想電源電圧VVDDが遮断される。仮想電源電圧VVDDが遮断されるのは、シャットダウン状態のときである。
【0061】
電源線15aと制御線CTRL1およびCTRL2との間にプリチャージ/選択回路33aが設けられている。プリチャージ/選択回路33aはFETM10~M12を備えている。FETM10は電源線15aと制御線CTRL1との間に接続されている。FETM11は電源線15aと制御線CTRL2との間に接続されている。FETM12は制御線CTRL1とCTRL2との間に接続されている。FETM10~M12はPチャネルFETである。FETM10~M12のゲートには選択信号Selが入力する。制御線CTRL1およびCTRL2と読出書込回路34に接続されたビット線BLおよびBLBとの間に選択回路32bが設けられている。選択回路32bはトランスファーゲートM13およびM14を備えている。トランスファーゲートM13はビット線BLと制御線CTRL1との間に接続されている。トランスファーゲートM14はビット線BLBと制御線CTRL2との間に接続されている。トランスファーゲートM13およびM14に選択信号Sel´およびSel´の相補信号SelB´が入力する。
【0062】
図7Cは、実施例1におけるメモリアレイの別の例を示すブロック図である。
図7Cに示すように、プリチャージ/選択回路33aはパワースイッチ30とメモリアレイ22との間に設けられている。プリチャージ/選択回路33aは
図7BのFETM10~M12を備え、選択回路32bは
図7BのトランスファーゲートM13およびM14を備えている。
【0063】
選択信号Selがローレベルのとき、FETM10~M12はオンし、制御線CTRL1およびCTRL2に仮想電源電圧VVDDが供給される。選択信号Selがハイレベルのとき、FETM10~M12はオフする。FETM10~M12がオフであり、かつ選択信号Sel´がハイレベルのとき、トランスファーゲートM13およびM14はオンし、制御線CTRL1およびCTRL2はビット線BLおよびBLBとして機能する。FETM10~M12がオンであり、かつ選択信号Sel´がローレベルのとき、トランスファーゲートM13およびM14はオフし、制御線CTRL1およびCTRL2はビット線BLおよびBLBから切断される。以上のように、制御線CTRL1およびCTRL2の端にプリチャージ/選択回路33aが接続し、制御線CTRL1およびCTRL2の他の端に選択回路32bが接続されていてもよい。
【0064】
図7Aおよび
図7Cの電子回路の制御回路28はパワースイッチ30を制御し、双安定回路12がデータを保持するULVリテンション状態において、実施例1の表3の電圧VVDD-VGNDの電圧VL(0.2V)をリード/ライト状態(第2状態)における電圧VH(1.2V)より低くする。これにより、ULVリテンション状態における消費電力を抑制できる。
【0065】
表3は、実施例1における状態を示す表である。
【0066】
【0067】
バイアスノードN4は定電圧VFN(例えば0.2V)である。リード/ライト状態のとき、選択回路32bは制御線CTRL(
図5および
図6では制御線CTRL1およびCTRL2)にビット線BL(
図5および
図6ではビット線BLおよびBLB)を接続する。パワースイッチ30は仮想電源電圧VVDDをVVDDH(例えば1.2V)とする。電圧VVDD-VGNDはVH(例えば1.2V)となる。リード状態ではビット線BLおよびBLBはほぼVVDDHとなる。ライト状態ではビット線BLおよびBLBの一方はほぼVVDDHとなり、他方はほぼVGNDとなる。記憶ノードQ1およびQ2のハイレベルはほぼVVDDHとなり、ローレベルはほぼVGNDとなる。インバータ回路14および16はBIモードとなる。
【0068】
読み出しまたは書き込むメモリセル10のワード線WLの電圧VWLを電圧V1(例えば0.25V)とする。電圧V1は記憶ノードQ1およびQ2がハイレベルおよびローレベルのいずれのときにもFETm4がオンする電圧とする。これにより、メモリセル10からデータの読み出しおよび書き込みが可能となる。
【0069】
VDDリテンション状態のとき、選択回路32bは制御線CTRL(
図5および
図6では制御線CTRL1およびCTRL2)に電源線15aを接続する。パワースイッチ30は仮想電源電圧VVDDをVVDDH(例えば1.2V)とする。電圧VVDD-VGNDはVH(例えば1.2V)となる。インバータ回路14および16はBIモードとなる。
【0070】
ワード線WLの電圧VWLを電圧V2(例えば1.1V)とする。電圧V2はVVDDHより少し低いため、記憶ノードQ1およびQ2がハイレベルおよびローレベルのいずれのときでもFETm4はわずかにオンする。これにより、FETm4はインバータ回路14および16のロードとして機能する。VDDリテンション状態では、双安定回路12のデータが保持される。
【0071】
ULVリテンション状態のとき、選択回路32bは制御線CTRL(
図5および
図6では制御線CTRL1およびCTRL2)に電源線15aを接続する。パワースイッチ30は仮想電源電圧VVDDをVVDDL(例えば0.2V)とする。電圧VVDD-VGNDはVL(例えば0.2V)となる。インバータ回路14および16はSTモードとなる。
【0072】
ワード線WLの電圧VWLを電圧V3(例えば0.2V)とする。電圧V3がゲートに加わると、記憶ノードQ1およびQ2がハイレベルおよびローレベルのいずれのときでもFETm4がオフするが、FETm4のリーク電流によりFETm4はインバータ回路14および16のロードとして機能する。ULVリテンション状態では、超低電圧で双安定回路12のデータが保持される。これにより、リーク電流による消費電力を抑制できる。
【0073】
[シミュレーション1]
シミュレーション1はVDDリテンション状態およびリード/ライト状態のリード時におけるSNM(Static Noise Margin)およびスタンバイパワーのシミュレーションである。
【0074】
シミュレーションは、実施例1、比較例2および6個のトランジスタを用いたSRAMセル(6T)である比較例3について行った。シミュレーション条件は以下である。
【0075】
実施例1における各FETのチャネル幅W/長さLは以下である。
【0076】
FETm1、m2(ドライバ):100nm/60nm
FETm3(フィードバックトランジスタ):WFB/60nm
FETm4(パストランジスタ/ロード):WLP/60nm
実施例1における各電圧は以下である。
【0077】
VVDDH=1.2V
VGND=0V
VFN=0.2V
VWL=1.1Vまたは0.25V
【0078】
比較例2における各FETのチャネル幅W/長さLは以下である。
【0079】
FETm1、m2(ドライバ):165nm/60nm
FETm1a(ロード):100nm/60nm
FETm3(フィードバックトランジスタ):120nm/60nm
FETm5(パストランジスタ):100nm/60nm
比較例2における各電圧は以下である。
【0080】
VVDDH=1.2V
VGND=0V
VFN=0.2V
比較例3における各FETのチャネル幅W/長さLは以下である。
【0081】
ドライバ:150nm/60nm
ロード:100nm/60nm
パストランジスタ:100nm/60nm
比較例3における各電圧は以下である。
【0082】
VVDD=1.2V
VGND=0V
【0083】
実施例1では、制御線CTRL1およびCTRL2からメモリセル10に仮想電源電圧VVDDが供給される。このため、FETm4のサイズおよびVDDリテンション状態におけるワード線WLの電圧VWLによりノイズマージンおよび待機時電力が決まる。また、VFNを一定のバイアスとしているため、BIモードでもFETm3によりSTモードより弱いがフィードバックがかかる。このため、FETm3のサイズによりノイズマージンを設計可能である。
【0084】
そこで、FETm4のサイズ(チャネル幅WLP)およびFETm3のサイズ(チャネル幅WFB)を変え、VDDリテンション状態におけるSNM(Static Noise Margin)およびスタンバイ電力をシミュレーションした。スタンバイ電力は、データを保持している状態における各FETのリーク電流の合計に相当する。また、ワード線WLの電圧VWLを変え、VDDリテンション状態におけるSNMおよびスタンバイパワーをシミュレーションした。SNMは雑音余裕であり、SNMが小さいと双安定回路12のデータが雑音等により反転しやすくなり、SNMが大きいと双安定回路12のデータが雑音等により反転しにくくなる。SNMの指標としてSNMを80mV以上とすることを目標とした。
【0085】
図8(a)および
図8(b)は、実施例1のVDDリテンション状態におけるWLPおよびWFBに対するSNMおよびスタンバイパワーを示す図である。SNMのTTはPFETおよびNFETの閾値電圧がTypicalなときのSNMである。SNMのFFはPFETおよびNFETの閾値電圧がいずれもプロセス変動によりTypical値よりFast(F)側(低い方)に3σずれたときのSNMである。SNMのSSはPFETおよびNFETの閾値電圧がいずれもプロセス変動によりTypical値よりSlow(S)側(高い方)に3σずれたときのSNMである。SNMのFSおよびSFはPFETおよびNFETの閾値電圧の一方がTypical値よりF側に、他方がTypical値よりS側に3σずれたときのSNMである。TT、FF、SS、FSおよびSFのSNMが確保されていれば、PFETおよびNFETの閾値電圧が±3σの範囲内でばらついたとしてもSNMを確保できる。比較例3では、パストランジスタのチャネル幅Wは一定である。
【0086】
図8(a)に示すように、WFB=230nmおよびVWL=1.1Vのとき、WLPを100nmから300nmまで変化させている。WLPが大きくなるとSNMは大きくなる。WLPが100nm以上ではいずれのSNMも80mV以上である。SNMが大きくなるとスタンバイパワーが大きくなる。実施例1のスタンバイパワーが比較例3(6T)より小さくなるのはWLPが110nm以下のときである。そこで、WLPを110nmに設定する。
【0087】
図8(b)に示すように、WLP=110nmおよびVWL=1.1Vのとき、WFBを100nmから300nmまで変化させている。WFBが大きくなるとSNMは大きくなる。WFBが230nm以上ではいずれのSNMも80mV以上である。実施例1のスタンバイパワーはWFBに依存せずいずれのWFBでも比較例3より小さい。以上より、WFBを230nmに設定する。
【0088】
図9(a)および
図9(b)は、実施例1および比較例3のVDDリテンション状態およびリード/ライト状態のリードにおけるVWLに対するSNMおよびスタンバイパワーを示す図である。
図9(b)は、
図9(a)のVWLが1.1V付近の拡大図である。SNMを80mV以上とすることを目標とした。SNM=80mVを破線で示した。
【0089】
図9(a)に示すように、WLP=110nmおよびWFB=230nmのとき、VWLを0Vから1.2Vまで変化させている。SNMはVWL=0.7V付近がピークであり、VWLが0.7Vより小さくなるとSNMは小さくなり、VWLが0.7Vより大きくなるとSNMは小さくなる。VWLが小さくなるとスタンバイパワーは大きくなる。
【0090】
図9(b)に示すように、VWLが1.1V以上では、実施例1のスタンバイパワーは比較例3より小さくなる。VWLが1.15V以下では、いずれのSNMも80mV以上である。そこで、VDDリテンション状態におけるVWLを1.1Vとした。
【0091】
リード/ライト状態ではFETm4をオンするためVWLを低くする。しかし、SNMは大きいことが好ましい。
図9(a)のように、VWLが0.25V以上ではいずれのSNMも80mV以上である。そこで、VWLを0.25Vとした。
【0092】
実施例1、比較例2および3について、リード/ライト状態およびVDDリテンション状態におけるSNMをシミュレーションした。実施例1では、WLP=110nm、WFP=230nmとし、VDDリテンション状態のVWL=1.1V、リード/ライト状態のVWL=0.25Vとした。
【0093】
図10(a)から
図10(c)は、実施例1、比較例2および3のVDDリテンション状態およびリード/ライト状態におけるSNMを示す図である。
図10(a)はVDDリテンション状態のSNMであり、
図10(b)はリード/ライト状態においてリードのときのSNMであり、
図10(c)はリード/ライト状態においてライトのときのSNMである。
【0094】
図10(a)に示すように、VDDリテンション状態では、実施例1のSNMは比較例2および3より小さいものの、すべてのSNMにおいて80mVより大きい。
図10(b)に示すように、リードでは、実施例1のSNMは比較例2および3とほぼ同じであり、すべてのSNMにおいて80mVより大きい。
図10(c)に示すように、ライトでは、実施例1のSNMは比較例2および3より大きく、すべてのSNMにおいて80mVより大きい。以上のように、実施例1では、すべてのSNMにおいて80mVより大きい。また、TTのSNMは100mVより大きい。このように、実施例1では、リード/ライト状態およびVDDリテンション状態において十分なノイズマージンを確保できる。
図9(a)および
図9(b)でのVWLの最適化は、VDDリテンション状態およびリード/ライト状態のリードで行っているが、
図10(a)から
図10(c)のように、リード/ライト状態のライトにおいてもSNMを増加させることができる。
【0095】
[シミュレーション2]
シミュレーション2はULVリテンション状態におけるインバータ回路14および16の伝達特性、双安定回路12のバタフライカーブ、SNMおよびスタンバイパワーのシミュレーションである。
【0096】
特に記載されていない各FETのチャネル幅W/長さLおよび各電圧はシミュレーション1と同じである。実施例1では、WLP=110nm、WFP=230nmとした。比較例3ではVVDD=0.2Vである。
【0097】
実施例1について、ワード線WLの電圧VWLを変えULVリテンション状態におけるインバータ回路14および16の伝達特性をシミュレーションした。
【0098】
図11は、実施例1のULVリテンション状態におけるインバータ回路の伝達特性を示す図であり、インバータ回路14および16の入力電圧Vin(入力ノードN1の電圧)に対する出力電圧Vout(出力ノードN2)を示す図である。
【0099】
図11に示すように、Vinを高くしていくフォワードスイープでは、VWLを高くすると、出力電圧Voutがハイレベルからローレベルにシフトする閾値電圧がVinの高い方にシフトしている。Vinを低くしていくバックワードスイープでは、VWLを高くすると、出力電圧Voutがローレベルからハイレベルにシフトする閾値電圧がVinの低い方にシフトしている。バックワードスイープでは、VWLを高くすると閾値電圧がよりVinの低い方にシフトする。
【0100】
図12(a)および
図12(b)は、実施例1における双安定回路の回路図である。双安定回路12の回路は
図5および
図6においてULVリテンション状態の回路図であり、原理がわかりやすくなるように表示している。
図12(a)および
図12(b)のうちインバータ回路14の入力電圧Vinおよび出力電圧Voutについて説明する。
【0101】
図12(a)を参照し、フォワードスイープについて説明する。初期状態では、入力電圧Vinはローレベル(例えば0V)であり、出力電圧Voutはハイレベル(例えば0.2V)である。この状態では、インバータ回路14において、FETm1およびm2はオフであり、FETm3はオンである。FETm4はVWL=0.2Vではオフであるが、リーク電流が流れる。VWLが0.2Vより低いとFETm4はオンする。このため、出力ノードN2は点線矢印92のようにFETm4のリーク電流またはオン電流により制御線CTRL1のVVDDLから充電され、中間ノードN3は点線矢印93のようにバイアスノードN4のVFNにより充電されている。
【0102】
入力電圧Vinが高くなったときに、出力電圧Voutをローレベルとするためには、実線矢印90のように出力ノードN2から中間ノードN3に放電される。しかし、実線矢印91のように中間ノードN3からグランド線15bに放電されないと、出力ノードN2から中間ノードN3に放電できない。このため、中間ノードN3が放電した後に出力ノードN2が放電するため、出力電圧Voutがローレベルとなる閾値電圧はVinの高い方にシフトする。
【0103】
図12(b)を参照し、バックワードスイープについて説明する。初期状態では、入力電圧Vinはハイレベル(例えば0.2V)であり、出力電圧Voutはローレベル(例えば0V)である。この状態では、インバータ回路14において、FETm1およびm2はオンであり、FETm3およびm4はオフである。このため、中間ノードN3は点線矢印95のようにグランド線15bに放電される。FETm4はVWL=0.2Vではオフであるが、リーク電流が流れる。VWLが0.2Vより低いとFETm4は弱くオンする。点線矢印94のFETm2を介した放電が点線矢印96のFETm4を介した充電より速いため、出力ノードN2は中間ノードN3に放電されている。
【0104】
入力電圧Vinが低くなると、FETm1がオフしFETm3がオンするため、実線矢印97のように中間ノードN3はバイアスノードN4のVFNにより充電される。FETm2がオフしFETm4がオフまたは弱いオンであると、点線矢印96のように出力ノードN2は制御線CTRL1のVVDDLから充電される。しかし、FETm4のオフ電流に近い電流で出力ノードN2が充電されるため、充電はVWLに依存する。これにより、出力電圧Voutがハイレベルとなる閾値電圧は、VWLを高くすると、Vinの低い方にシフトする。特にFETm4のゲートにはVWLが印加されている。このため、点線矢印96の電流の大きさはVWLに依存する。VWLが高いとFETm4の電流は小さいため、閾値電圧はVinの低い方によりシフトする。
【0105】
実施例1、比較例2および3の双安定回路12におけるバタフライカーブをシミュレーションした。実施例1においてVWL=0.2Vとした。
【0106】
図13(a)および
図13(b)は、実施例1、比較例2および3のULVリテンション状態における双安定回路のバタフライカーブを示す図である。
図13(a)は、Q1がローレベルかつQ2がハイレベルのときが動作点であり、
図13(b)は、Q1がハイレベルかつQ2がローレベルのときが動作点である。
【0107】
図13(a)および
図13(b)に示すように、比較例3の6T-SRAMでは、バタフライカーブの開口(lobe)が狭くノイズマージンが小さい。比較例2では動作点側の開口が広くなりノイズマージンが大きくなる。実施例1では動作点側の開口が比較例2より更に広くなりノイズマージンが比較例2よりさらに大きくなる。
【0108】
実施例1、比較例2および3のULVリテンション状態におけるSNMをシミュレーションした。
【0109】
図14(a)は、実施例1、比較例2および3のULVリテンション状態におけるSNMを示す図である。
図14(a)に示すように、比較例3では、いずれのSNMも80mVより小さく、ノイズマージンが小さい。比較例2では、いずれのSNMも80mV以上であり、ノイズマージンが大きい。実施例1では、いずれのSNMも130mV以上であり、比較例2よりノイズマージンが大きい。実用的なSNMを80mVとすると、実施例1では、VVDDを0.2Vより低くすることもできる。VVDDを0.2Vとすると、SNMは130mV以上となり双安定回路12はVVDDを0.2Vより低くした場合に比べより安定となる。
【0110】
実施例1のULVリテンション状態において、VVDDを変化させ、SNMおよびスタンバイパワーをシミュレーションした。
【0111】
図14(b)は、実施例1のULVリテンション状態におけるVVDDに対するSNMおよびスタンバイパワーを示す図である。
図14(b)に示すように、実施例1では、VVDDを0.1から0.2Vまで変化させている。VVDDが高くなると、SNMが大きくなり、かつスタンバイパワーが大きくなる。VVDDが0.15V以上では全てのSNMは80mV以上である。そこで、ULVリテンション状態におけるVVDD(すなわちVVDDL)を0.15Vとすることもできる。
【0112】
実施例1および比較例3について、各VVDDに対するスタンバイパワーをシミュレーションした。
【0113】
図15は、実施例1および比較例3におけるスタンバイパワーを示す図である。数字は、比較例3においてVVDD=1.2Vのときのスタンバイパワーに対するスタンバイパワーの削減率を示している。
【0114】
図15に示すように、比較例3では、リード/ライトを行う通常状態ではVVDD=1.2Vである。このとき、スタンバイパワーは約4.4nWである。比較例3において、リードおよびライトは行わずデータを保持するスリープ状態では、VVDD=0.8Vである。このとき、スタンバイパワーの削減率は44%である。
【0115】
実施例1において、VDDリテンション状態のときVVDD=1.2Vである。このときのスタンバイパワーの削減率は7%である。ULVリテンション状態のとき、VVDD=0.2Vとすると、スタンバイパワーの削減率は95%である。さらに、VVDD=0.15Vとすると、スタンバイパワーの削減率は97%である。
【0116】
比較例2では、メモリセル10内のトランジスタの個数は10個であるが、実施例1では、メモリセル10内のトランジスタの個数を8個と削減できる。これにより、
図4と
図6との比較のように回路面積を抑制できる。さらに、
図14(a)のように、ULVリテンション状態におけるノイズマージンを比較例2より大きくできる。比較例2と同じノイズマージンとすると、VVDDLを比較例2より低くできる。これにより、スタンバイパワーをより抑制できる。
【0117】
[実施例1の変形例1]
実施例1の変形例1は、PUFB、異導電型チャネルFBTr、フッタPS、タイプ1の例である。
図16および
図17は、実施例1の変形例1におけるメモリセル10の回路図である。
図16はループ表示の回路図であり、
図17はクロスカップル表示の回路図である。なお、PUFB・フッタPSでは、VDDリテンション状態ではなくVSSリテンション状態であるが、ここでは実施例1と合わせるためVDDリテンション状態と呼ぶ。
【0118】
図16および
図17に示すようにインバータ回路14および16は、FETm1a~m4aを各々備えている。FETm1aおよびm2aはPチャネルMOSFETであり、FETm3aおよびm4aはNチャネルMOSFETである。
【0119】
FETm1aにおいて、ソースは電源電圧VDDが印加された電源線15aに接続されている。選択回路32は、制御線CTRL1をビット線BLおよびグランド線15b(仮想グランド線)のいずれか一方に接続する。選択回路32aは、制御線CTRL2をビット線BLBおよびグランド線15bのいずれか一方に接続する。パワースイッチ(PS)30は、グランド15dの電圧VGNDを仮想接地電圧VVGNDに変換しグランド線15bに供給する。バイアスノードN4には一定のバイアスVFPが印加されている。その他の回路構成は実施例1の
図5および
図6のFETm1~m4をFETm1a~m4aにそれぞれ置き換えた回路と同じである。
【0120】
表4は、実施例1の変形例1における状態を示す表である。
【0121】
【0122】
バイアスノードN4は定電圧VFP(例えば1.0V)である。リード/ライト状態のとき、選択回路32および32aは制御線CTRL1およびCTRL2にビット線BLおよびBLBをそれぞれ接続する。パワースイッチ30は仮想接地電圧VVGNDをVVGNDL(例えば0V)とする。双安定回路12に加わる仮想電源電圧VDD-VVGNDはVH(例えば1.2V)となる。リード状態ではビット線BLおよびBLBをほぼVVGNDLにできる。ライト状態ではビット線BLおよびBLBの一方をほぼVVGNDLにでき、他方をほぼVDDにできる。記憶ノードQ1およびQ2のハイレベルはほぼVDDとなり、ローレベルはほぼVVGNDLとなる。インバータ回路14および16はBIモードとなる。読み出しまたは書き込むメモリセル10のワード線WLの電圧VWLを電圧V1(例えば0.9V)とする。
【0123】
VDDリテンション状態のとき、選択回路32および32aは制御線CTRL1およびCTRL2にグランド線15bを接続する。パワースイッチ30は仮想接地電圧VVGNDをVVGNDL(例えば0V)とする。電圧VDD-VVGNDはVH(例えば1.2V)となる。インバータ回路14および16はBIモードとなる。ワード線WLの電圧VWLを電圧V2(例えば0.1V)とする。
【0124】
ULVリテンション状態のとき、選択回路32および32aは制御線CTRL1およびCTRL2にグランド線15bを接続する。パワースイッチ30は仮想接地電圧VVGNDをVVGNDH(例えば1.0V)とする。電圧VDD-VVGNDはVL(例えば0.2V)となる。インバータ回路14および16はSTモードとなる。ワード線WLの電圧VWLを電圧V3(例えば1.0V)とする。ULVリテンション状態では、超低電圧で双安定回路12のデータが保持される。これにより、リーク電流による消費電力を抑制できる。
【0125】
[実施例1の変形例2]
実施例1の変形例2は、PDFB、同導電型チャネルFBTr、ヘッダPS、タイプ1の例である。
図18および
図19は、実施例1の変形例2におけるメモリセル10の回路図である。
図18はループ表示の回路図であり、
図19はクロスカップル表示の回路図である。
【0126】
図18および
図19に示すようにインバータ回路14および16においてFETm3はNチャネルFETである。インバータ回路14のFETm3のゲートは、インバータ回路14の出力ノードN2またはインバータ回路16の入力ノードN1に接続され、インバータ回路16のFETm3のゲートは、インバータ回路16の出力ノードN2またはインバータ回路14の入力ノードN1に接続されている。その他の回路構成は実施例1の
図5および
図6と同じである。なお、
図7Bと同様に、選択回路32および32aの一部はパワースイッチ30と制御線CTRL1およびCTRL2との間に設けられたプリチャージ/選択回路33aであり、選択回路32および32aの他の一部は読出書込回路34と制御線CTRL1およびCTRL2との間に設けられた選択回路32bでもよい。
【0127】
実施例1の変形例2のULVリテンション状態におけるバタフライカーブをシミュレーションした。シミュレーション条件は実施例1のシミュレーション2とほぼ同じである。VVDDを0.2Vとした。実施例1の変形例2では、VWL=0.1Vのときノイズマージンが最も大きくなるため、VWL=0.1Vとした。
【0128】
図20は、実施例1およびその変形例2のULVリテンション状態における双安定回路のバタフライカーブを示す図である。
図20は、Q1がローレベルかつQ2がハイレベルのときが動作点である。実施例1のバタフライカーブは
図13(a)と同じである。
【0129】
図20に示すように、実施例1の変形例2では、動作点側の開口は実施例1の動作点側の開口より小さい。このように、フィードバックトランジスタ(FETm3)がFETm1およびm3と同導電型チャネルの場合、異導電型チャネルよりノイズマージンが小さくなる。動作点側の開口は
図13(a)の比較例3より広い。よって、ULVリテンションにより比較例3より消費電力を抑制できる。さらに、比較例2より回路面積を削減できる。
【0130】
実施例1およびその変形例によれば、インバータ回路14(第1インバータ回路)およびインバータ回路16(第2インバータ回路)において、FETm1(第1FET)(またはFETm1a)では、ソースがグランド線15b(または電源線15a)に接続され、ドレインが中間ノードN3に接続され、ゲートが入力ノードN1に接続されている。なお、実施例1およびその変形例2のようなPDFBではグランド線15bが電源線に相当し、実施例1の変形例1のようなPUFBでは電源線15aが電源線に相当する。
【0131】
FETm2(第2FET)(またはFETm2a)では、ソースが中間ノードN3に接続され、ドレインが出力ノードN2に接続されている。FETm3(第3FET)(またはFETm3a)では、ソースおよびドレインの一方が中間ノードN3に接続され、ソースおよびドレインの他方がバイアスノードN4に接続されている。FETm4(第4FET)(またはFETm4a)では、ソースおよびドレインの一方が出力ノードN2に接続され、ソースおよびドレインの他方が制御線CTRL1またはCTRL2に接続されている。FETm4(またはm4a)の導電型(第2導電型)は、FETm1およびm2(またはFETm1aおよびm2a)の導電型(第1導電型)と反対である。
【0132】
記憶ノードQ1(第1記憶ノード)において、インバータ回路14の入力ノードN1およびインバータ回路16の出力ノードN2が接続され、記憶ノードQ2(第2記憶ノード)において、インバータ回路14の出力ノードN2およびインバータ回路16の入力ノードN1が接続される。これにより、双安定回路12が形成される。
【0133】
インバータ回路14および16のFETm4(またはFETm4a)のゲートはワード線WLに接続されている。インバータ回路14のFETm3(またはFETm3a)のゲートは、インバータ回路14の入力ノードN1、出力ノードN2、インバータ回路16の入力ノードN1および出力ノードN2のいずれか1つのノードに接続されている。インバータ回路16のFETm3(またはFETm3a)のゲートは、インバータ回路16の入力ノードN1、出力ノードN2、インバータ回路14の入力ノードN1および出力ノードN2のいずれか1つのノードに接続されている。
【0134】
以上のような回路構成により、インバータ回路14および16のロードとパストランジスタとをFETm4(またはFETm4a)により共用できる。よって、比較例2に比べ回路面積を削減できる。また、FBTrであるFETm3(またはFETm3a)により、ULVリテンション状態でのノイズマージンが比較例3より広くなる。よって、消費電力を削減できる。
【0135】
実施例1およびその変形例1では、FETm3(またはFETm3a)は、FETm1およびm2(またはFETm1aおよびm2a)の第1導電型チャネルと反対の第2導電型のチャネルである。すなわちFBTrは異導電型チャネルである。このとき、インバータ回路14のFETm3(またはFETm3a)のゲートは、インバータ回路14の入力ノードN1またはインバータ回路16の出力ノードN2に接続され、インバータ回路16のFETm3(またはFETm3a)のゲートは、インバータ回路16の入力ノードN1またはインバータ回路14の出力ノードN2に接続されている。
【0136】
これにより、実施例1のシミュレーション2のように、ULVリテンション状態におけるノイズマージンを比較例2より大きくできる。また、VVDDLを低くすることで、消費電力を抑制できる。
【0137】
実施例1の変形例2のように、FETm3は、FETm1およびm2と同じ第1導電型チャネルである。すなわちFBTrは同導電型チャネルである。このとき、インバータ回路14のFETm3のゲートは、インバータ回路14の出力ノードN2またはインバータ回路16の入力ノードN1に接続され、インバータ回路16のFETm3のゲートは、インバータ回路16の出力ノードN2またはインバータ回路14の入力ノードN1に接続されている。
【0138】
これにより、ULVリテンション状態におけるノイズマージンを比較例3より大きくできる。また、VVDDLを低くすることで、消費電力を抑制できる。
【0139】
図7Aおよび
図7Cの電子回路の制御回路28はパワースイッチ30(電源回路)を制御し、双安定回路12がデータを保持するULVリテンション状態(第1状態)において、実施例1の表3の電圧VVDD-VGNDおよび実施例1の変形例1の表4のVDD-VVGNDの電圧VL(第1電圧)をリード/ライト状態(第2状態)における電圧VH(第2電圧)より低くする。これにより、ULVリテンション状態における消費電力を抑制できる。
【0140】
なお、電圧VLは、実施例1ではULVリテンション状態におけるグランド線15bと制御線CTRL1およびCTRL2との間の電圧VVDD-VGNDに相当し、実施例1の変形例1ではULVリテンション状態における電圧VDDの電源線15aと制御線CTRL1およびCTRL2との間の電圧VDD-VVGNDに相当する。電圧VHは、リード/ライト状態における記憶ノードQ1とQ2との間の電圧に相当する。
【0141】
電圧VLは電圧VHより小さければよいが、ULVリテンション状態においてSNMを確保しかつ消費電力を抑制する観点から、電圧VLは電圧VHの1/2以下が好ましく、1/4以下がより好ましく、1/5以下がさらに好ましく、さらに1/6以下がより好ましい。特に、消費電力を抑制する観点から1/10程度が好ましい。電圧VLは0Vより大きい。
【0142】
制御回路28は、選択回路32bを制御し、リード/ライト状態において、双安定回路12からデータをリードまたはライトするためのビット線BLおよびBLBを制御線CTRL1およびCTRL2に接続する。すなわち、制御線CTRL1およびCTRL2をビット線BLおよびBLBに設定する。これにより、制御線CTRL1およびCTRL2を介し、双安定回路12からデータをリードまたはライトできる。
【0143】
実施例1およびその変形例2のようにPDFBのとき(すなわち第1導電型がN型のとき)、FETm4はP型である。このため、リード/ライト状態においてFETm4をオンするためワード線WLの電圧VWLをグランド線15bの電圧VGND(例えば0V)とすることが一般的である。しかし、
図9(a)のように、VWLを0Vとすると、SNMが小さくなる。
【0144】
そこで、リード/ライト状態において、制御回路28は、パワースイッチ30のワード線WLの電圧VWLをグランド線15bの電圧より高くする。例えば実施例1およびその変形例2ではVGND=0Vに対しVWL=0.25Vとする。これにより、
図9(a)のように、SNMが目標である80mVより小さくなることを抑制できる。
【0145】
実施例1の変形例1のようにPUFBのとき(すなわち第1導電型がP型のとき)、制御回路28は、ワード線WLの電圧VWLを電源線15aの電圧VDDより低くする。例えば実施例1の変形例1ではVDD=1.2Vに対しVWL=0.9Vとする。これにより、PDFBと同様に、SNMが小さくなることを抑制できる。
【0146】
VDDリテンションおよびリード/ライト状態では、VWLがグランド線15b(または電源線15a)の電圧に近すぎるとリードにおけるSNMが大きくならない。よって、グランド線15b(または電源線15a)の電圧とVWLとの差は、VHの1/10以上が好ましく、1/5以上がより好ましく、
図9(a)のように1/2程度がさらに好ましい。
【0147】
ULVリテンション状態では、VWLが高くなるとFETm4がオンしなくなり動作速度が低下する。このため、グランド線15b(または電源線15a)の電圧とVWLとの差は、電圧VHの1/2以下が好ましく、1/4以下がより好ましく、1/5以下がさらに好ましい。実施例1では、速度性能を優先してグランド線15bの電圧とVWLとの差を1/6程度とした。
【0148】
ULVリテンション状態では、
図12(a)および
図12(b)において、出力ノードN2がローレベル(例えばGND=0V)のときFETm4はオフし、出力ノードN2がハイレベル(例えばVVDDL=0.2V)のときFETm4はオンすることが好ましい。よって、VWLはVGND以上かつVVDDL以下であることが好ましい。すなわち、制御回路28は、ワード線WLとグランド線15b(または電源線15a)との間の電圧を電圧VL、または電圧VLより低くすることが好ましい。例えば、実施例1ではVL=0.2Vに対しVWL-VGND=0.2Vである。実施例1の変形例1ではVL=0.2Vに対しVDD-VWL=0.2Vである。実施例1の変形例2ではVL=0.2Vに対しVWL-VGND=0.1Vである。
【0149】
図11のように、実施例1ではVWLがVGNDに近すぎるとノイズマージンが小さくなる。よって、ワード線WLとグランド線15b(または電源線15a)との間の電圧は電圧VLの1/4以上が好ましく、1/2以上がより好ましい。
図11においてVWL=0.2Vにおいてノイズマージンが最大となるように、ワード線WLとグランド線15b(または電源線15a)との間の電圧は電圧VLでもよい。
【0150】
実施例1およびその変形例2のようにPDFBのとき(すなわち第1導電型がN型のとき)、FETm4はP型である。このため、グランド線15bと制御線CTRL1およびCTRL2との間の電圧をVVDD-VGND=VH(例えば1.2V)とするVDDリテンション状態においてFETm4をオフするためワード線WLの電圧VWLをVVDD(例えば1.2V)とすることが一般的である。しかし、
図9(b)のように、VWLを1.2Vとすると、SNMが小さくなる。
【0151】
そこで、VDDリテンション状態(第3状態)において、制御回路28は、ワード線WLとグランド線15bとの間の電圧をVHより小さくする。例えば、実施例1およびその変形例2ではVH=1.2Vに対しVWL-VGND=1.1Vとする。これにより、
図9(b)のように、SNMが小さくなることを抑制できる。
【0152】
実施例1の変形例1のようにPUFBのとき(すなわち第1導電型がP型のとき)、制御回路28は、ワード線WLと電源線15aとの間の電圧をVHより小さくする。例えば、実施例1の変形例1ではVH=1.2Vに対しVDD-VWL=1.1Vとする。これにより、SNMが小さくなることを抑制できる。
【0153】
VWLがグランド線15b(または電源線15a)の電圧に近すぎるとSNMが大きくならない。よって、グランド線15b(または電源線15a)の電圧とVWLとの差はVHの49/50以下が好ましく、19/20以下がより好ましく、9/10以下がさらに好ましい。
【0154】
図9(b)のように、VWLが低くなるとスタンバイパワーが大きくなる。このため、グランド線15b(または電源線15a)の電圧とVWLとの差は、電圧VHの1/2以上が好ましく、3/4以上がより好ましく、4/5以上がさらに好ましい。
【0155】
ULVリテンション状態、VDDリテンション状態およびリード/ライト状態のいずれにおいても、バイアスノードN4には一定のバイアスであるVFNまたはVFPが供給される。これにより、ドライバ26が不要となり、回路面積を削減できる。バイアスノードN4に供給される電圧VFNおよびVFPの好ましい範囲について考察する。
【0156】
図21(a)および
図21(b)は、それぞれヘッダPS・PDFB・タイプ1型およびフッタPS・PUFB・タイプ1型の各電圧を示す図である。
図21(a)では、VGNDに対するVVDDHおよびVVDDLを縦方向に示し、
図21(b)では、VDDに対するVVGNDLおよびVVGNDHを縦方向に示す。
【0157】
図21(a)に示すように、ヘッダPSでは、リード/ライト状態およびVDDリテンション状態では電源線15aにVVDDH、グランド線15bにVGNDが供給される。このとき、VFNをVVDDL程度の一定のバイアスとすると、VFNはVVDDHに対し十分低いため、インバータ回路14および16はBIモードとなる。ULVリテンション状態では電源線15aにVVDDL、グランド線15bにVGNDが供給される。このとき、VFNをVVDDL程度とすると、VFNはVGNDに対し高いため、インバータ回路14および16はSTモードとなる。
【0158】
定電圧VFNはVVDDHより小さくVGNDより大きければよい。すなわち、VFNは、リード/ライト状態における記憶ノードQ1の電圧と記憶ノードQ2の電圧の間(
図21(a)の範囲40)であればよい。定電圧VFNがVVDDHに近すぎると、仮想電源電圧VVDDをVVDDHとしたときに、インバータ回路14および16はBIモードとなり難い。定電圧VFNがVGNDに近すぎると、仮想電源電圧VVDDをVVDDLとしたときに、インバータ回路14および16はSTモードとなり難い。よって、仮想電源電圧VVDDによって双安定回路12のモードを自動的に切り替えるには、定電圧VFNは、VVDDHとVGNDとの中点の電圧以下(すなわち(VVDDH-VGND)/2以下)が好ましく、VVDDLにVVDDLとVGNDの差の電圧の1/2を加えた電圧以下(すなわちVVDDL+(VVDDL-VGND)/2以下)がより好ましく、さらには、(VVDDH-VGND)/2と、VVDDLとVGNDとの中点の電圧程度(すなわち(VVDDL-VGND)/2程度)と、の間(
図21(a)の範囲41)が好ましく、VVDDL+(VVDDL-VGND)/2と、(VVDDL-VGND)/2程度と、の間(
図21(a)の範囲42)が好ましい。さらには、VVDDL程度が好ましい。
【0159】
図21(b)に示すように、フッタPSでは、リード/ライト状態およびVDDリテンション状態ではグランド線15bにVVGNDL、電源線15aにVDDが供給される。このとき、VFPをVVGNDH程度の一定のバイアスとすると、VFPはVVGNDLに対し十分高いため、インバータ回路14および16はBIモードとなる。ULVリテンション状態ではグランド線15bにVVGNDH、電源線15aにVDDが供給される。このとき、VFPをVVGNDH程度とすると、VFPはVDDに対し低いため、インバータ回路14および16はSTモードとなる。
【0160】
定電圧VFPはVVGNDLより大きくVDDより小さければよい。すなわち、VFPは、リード/ライト状態における記憶ノードQ1の電圧と記憶ノードQ2の電圧の間(
図21(b)の範囲40)であればよい。定電圧VFPがVVGNDLに近すぎると、仮想接地電圧VVGNDをVVGNDLとしたときに、インバータ回路14および16はBIモードとなり難い。定電圧VFPがVDDに近すぎると、仮想接地電圧VVGNDをVVGNDHとしたときに、インバータ回路14および16はSTモードとなり難い。よって、仮想接地電圧VVGNDによって双安定回路12のモードを自動的に切り替えるためには、定電圧VFPは、VDDとVVGNDLとの中点の電圧以上(すなわち(VDD-VVGNDL)/2以上)が好ましく、VVGNDHにVDDとVVGNDHの差の電圧の1/2を減じた電圧以上(すなわちVVGNDH-(VDD-VVGNDH)/2以上)がより好ましく、さらには、(VDD-VVGNDL)/2と、VDDとVVGNDHとの中点の電圧程度(すなわちVVGNDH+(VDD-VVGNDH)/2程度)と、の間(
図21(b)の範囲41)が好ましく、VVGNDH-(VDD-VVGNDH)/2と、VVGNDH+(VDD-VVGNDH)/2程度と、の間(
図21(b)の範囲42)が好ましい。さらにVVGNDH程度が好ましい。
【0161】
実施例1およびその変形例では、ドライバ26を設けないタイプ1を例に説明したが、ドライバ26を設けるタイプ2でもよい。PDFBとPUFB、異導電型チャネルと同導電型チャネル、およびヘッダPSとフッタPSとデュアルPSの組み合わせは任意に設定できる。
【0162】
また、SRAMセルを例に説明したが、マスタスレーブ型フリップフロップ回路等のフリップフロップ回路に実施例1およびその変形例の双安定回路を用いてもよい。マスタスレーブ型フリップフロップ回路では、双安定回路12のループ内にクロック信号に同期してオンオフするパスゲート等のスイッチを設けてもよい。
インバータ回路14および16はループ状に接続され双安定回路12を構成している。インバータ回路14は、FETM2およびM4を備えている。インバータ回路16はFETM1およびM3を備えている。FETM1、M2、M5およびM6はNチャネルMOSFETであり、FETM3およびM4はPチャネルMOSFETである。
FETM1(第1FET)およびM2(第2FET)において、ソースはグランド電圧VGNDが印加されたグランド線15bに接続され、ドレインはそれぞれ記憶ノードQ1(第1記憶ノード)およびQ2(第2記憶ノード)に接続され、ゲートはそれぞれ記憶ノードQ2およびQ1に接続されている。記憶ノードQ1とQ2は相補的なノードである。FETM1およびM2はドライバである。
FETM3(第3FET)およびM4(第4FET)において、ソースおよびドレインの一方はそれぞれ記憶ノードQ1およびQ2に接続され、ソースおよびドレインの他方はそれぞれ制御線CTRL1(第1制御線)およびCTRL2(第2制御線)に接続され、ゲートはワード線WLに接続されている。FETM3およびM4は、リード動作およびライト動作のときはパストランジスタとして機能し、ホールド状態、ストア動作およびリストア動作のときはロードとして機能する。
記憶ノードQ1と制御線CTRL0との間にFETM5と強磁性トンネル接合素子MTJ1とが接続され、記憶ノードQ2と制御線CTRL0との間にFETM6と強磁性トンネル接合素子MTJ2とが接続されている。FETM5(第1スイッチ)およびM6(第2スイッチ)において、ソースおよびドレインの一方は、それぞれ記憶ノードQ1およびQ2に接続され、ソースおよびドレインの他方は強磁性トンネル接合素子MTJ1およびMTJ2にそれぞれ接続されている。ゲートはスイッチ線SRに接続されている。
強磁性トンネル接合素子MTJ1(第1不揮発性記憶素子)およびMTJ2(第2不揮発性記憶素子)は、それぞれフリー層17、トンネル絶縁膜18およびピン層19を有している。フリー層17は制御線CTRL0に接続され、ピン層19はFETM5およびM6に接続されている。フリー層17およびピン層19は強磁性体からなる。フリー層17とピン層19との磁化方向が平行な状態(平行状態)では、MTJ1およびMTJ2の抵抗値が低くなる。フリー層17とピン層19との磁化方向が反平行な状態(反平行状態)では、MTJ1およびMTJ2の抵抗値が平行状態より高くなる。MTJ1およびMTJ2は、MTJ1およびMTJ2の磁化状態(すなわち抵抗値)によりデータをストアする。不揮発性記憶素子としてMTJを例に説明するが、不揮発性記憶素子は、巨大磁気抵抗(GMR)素子、ReRAM(Resistance Random Access Memory)に用いられるような可変抵抗素子、または、PRAM(Phase change RAM)に用いられる相変化素子でもよい。
選択回路32は、制御線CTRL1をビット線BLおよび電源線15aのいずれか一方に接続する。選択回路32aは、制御線CTRL2をビット線BLBおよび電源線15aのいずれか一方に接続する。パワースイッチ(PS)30は、電源15cの電圧VDDを仮想電源電圧VVDDに変換し電源線15aに供給する。
FETPS1aおよびPS2aのゲートにはそれぞれ信号VPS1およびVPS2が入力する。信号VPS1およびVPS2がそれぞれハイレベルおよびローレベルのとき、FETPS1aおよびPS2aはそれぞれオンおよびオフし、仮想接地電圧VVGNDはVGNDLとなる。仮想接地電圧VVGNDがVGNDLとなるのは、ストア動作およびリストア動作のときであり、VDD-VVGNDは例えば1.2Vである。信号VPS1およびVPS2がそれぞれローレベルおよびハイレベルのとき、FETPS1aおよびPS2aはそれぞれオフおよびオンし、仮想接地電圧VVGNDはVGNDHとなる。仮想接地電圧VVGNDがVGNDHとなるのは、ホールド状態のときであり、VDD-VVGNDは例えば1.0Vである。信号VPS1aおよびVPS2aがともにローレベルのとき、FETPS1aおよびPS2aはともにオフし、仮想接地電圧VVGNDが遮断される。仮想接地電圧VVGNDが遮断されるのは、シャットダウン状態のときである。
プリチャージ/選択回路33aは、FETM10~M12を備えている。電源15cと制御線CTRL1との間にFETM10が接続されている。電源15cと制御線CTRL2との間にFETM11が接続されている。制御線CTRL1とCTRL2との間にFETM12が接続されている。FETM10~M12のゲートには選択信号Selが入力する。選択信号Selがローレベルのとき、FETM10~M12はオンし、制御線CTRL1およびCTRL2に電源電圧VDDが印加される。FETM10~M12がオンするのは、リード動作のプリチャージのときである。選択信号Selがハイレベルのとき、FETM10~M12はオフし、選択回路32bは制御線CTRL1およびCTRL2をビット線BLおよびBLBまたはグランド線15bに接続する。
メモリアレイ22に対応し、制御回路28、パワースイッチ30および周辺回路38が設けられている。制御回路28は、パワースイッチ30および周辺回路38を制御する。周辺回路38は、WLデコーダ31、選択回路32b、プリチャージ/選択回路33a、読出書込回路34、SRデコーダ35および列デコーダ36を備えている。
リード動作およびライト動作において、選択回路32bは制御線CTRL11およびCTRL21からCTRL1nおよびCTRL2nにそれぞれビット線BL1およびBLB1からBLnおよびBlBnを接続する。WLデコーダ31は行アドレスに基づきワード線WLを選択する。読出書込回路34は列アドレスに基づきビット線BL1およびBLB1からBLnおよびBLBnから選択する列に対応するビット線BLおよびBLBを選択する。プリチャージ/選択回路33aはビット線BLおよびBLBをプリチャージする。読出書込回路34は、選択されたメモリセル10の双安定回路12にデータを書き込みまたは双安定回路12からデータを読み出しバス25に出力する。
ストア動作およびリストア動作において、選択回路32bは制御線CTRL11およびCTRL21からCTRL1nおよびCTRL2nに電源線15aを接続する。ストア動作において、SRデコーダ35は行アドレスに基づきスイッチ線SRを選択する。列デコーダ36は列アドレスに基づき制御線CTRL0を選択する。WLデコーダ31および列デコーダ36に選択されたメモリセル10において双安定回路12のデータが強磁性トンネル接合素子MTJ1およびMTJ2に不揮発的にストアされる。
双安定回路12のデータをMTJ1およびMTJ2に不揮発的にストアする動作について説明する。ストア動作では、MTJ1およびMTJ2の一方を高抵抗に設定するH-ストア動作(第1ストア動作)とMTJ1およびMTJ2の他方を低抵抗に設定するL-ストア動作(第2ストア動作)とを行う。H-ストア動作とL-ストア動作のいずれを先に実行してもよい。H-ストア動作とL-ストア動作との間をホールド状態としてもよい。
また、L-ストア動作のときの電圧VWLはFETM3およびM4が少しオンする程度が好ましい。よって、FETM1およびM2がN型チャネルのとき、L-ストア動作における電圧VWLは制御線CTRL1およびCTRL2の電圧より低いことが好ましい。また、FETM1aおよびM2aがP型チャネルのとき、第2ストア動作における電圧VWLは制御線CTRL1およびCTRL2の電圧より高いことが好ましい。これにより、SNMを大きくできる。第2ストア動作のときの電圧VWLは、VGND+1/4(VDD-VGND)以上かつVDD-1/4(VDD-VGND)以下が好ましい。
表5において、リード動作、ライト動作、H-ストア動作およびL-ストア動作におけるワード線WLの電圧VWLは、アクセスするメモリセル10における電圧VWLである。アクセスしないメモリセル10の電圧VWLはFETM3およびM4がオフする1.2V(ハイレベル)である。
表5では、ホールド状態、リード動作およびライト動作のときに、スイッチ線SRの電圧VSRとしてLより低い-0.2Vを印加している。これは、FETM5およびM6のリーク電流を抑制するためである。電圧VSRはFETM5およびM6がオフする電圧であればよい。ホールド状態、リード動作およびライト動作のときのFETM5およびM6のリーク電流を抑制するためには、制御線CTRL0の電圧VcをLより高くしてもよい。例えば電圧Vcを0.05Vとしてもよい。電圧VSRをLより低くし、かつ電圧VcをLより高くしてもよい。
H-ストア動作、L-ストア動作およびリストア動作における電圧VSRは、FETM5およびM6がオンする程度であればよい。ホールド状態におけるワード線WLの電圧VWLはFETM3およびM4がオフする程度の電圧であればよく、リード動作、ライト動作、H-ストア動作およびリストア動作の電圧VWLはFETM3およびM4がオンする程度であればよい。チャネル幅および各電圧は表5の例に限らず適宜設定できる。
以上のように、実施例2では、FETM1およびM2を第1導電型のチャネルのFETとし、FETM3およびM4を第1導電型と反対の第2導電型のチャネルのFETとし、FETM3およびM4をパストランジスタおよびロードとして用いる。これにより、スタンバイパワーを低くできかつトランジスタの個数を6個にできるため小型化ができる。
メモリセル10へのアクセス間隔が短い場合には、データを双安定回路12にULVリテンションし、アクセス間隔が長い場合にはデータをMTJ1およびMTJ2にストアし、シャットダウンする。これにより、消費電力をより削減できる。