(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111075
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】包装用紙
(51)【国際特許分類】
B65D 65/40 20060101AFI20240808BHJP
D21H 27/10 20060101ALI20240808BHJP
D21H 19/72 20060101ALI20240808BHJP
D21H 19/20 20060101ALI20240808BHJP
D21H 19/22 20060101ALI20240808BHJP
B32B 27/10 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
B65D65/40 D
D21H27/10
D21H19/72
D21H19/20 A
D21H19/22
B32B27/10
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024096586
(22)【出願日】2024-06-14
(62)【分割の表示】P 2021064745の分割
【原出願日】2021-04-06
(71)【出願人】
【識別番号】000241810
【氏名又は名称】北越コーポレーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】吉澤 美沙紀
(57)【要約】
【課題】プラスチックの使用量を低減し、透明で内容物の確認が容易であり、かつ良好なヒートシール性と耐水性、耐油性を有する包装用紙を提供することにある。
【解決手段】本発明は、不透明度75%以下の紙基材の少なくとも一方の面にアイオノマー、エチレン系コポリマー、熱可塑性ウレタン及びポリ塩化ビニリデンから成る群から選択されるいずれか1種以上を含むヒートシール層を有することを特徴とする包装用紙。に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
不透明度75%以下の紙基材の少なくとも一方の面にアイオノマー、エチレン系コポリマー、熱可塑性ウレタン及びポリ塩化ビニリデンから成る群から選択されるいずれか1種以上を含むヒートシール層を有することを特徴とする包装用紙。
【請求項2】
前記紙基材が樹脂含浸透明紙、グラシン紙、パラフィン紙、又はパーチメント紙のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の包装用紙。
【請求項3】
前記ヒートシール層が、乾燥塗工量で1~10g/m2の範囲であることを特徴とする請求項1又は2に記載の包装用紙。
【請求項4】
透気度が300秒を超えることを特徴とする請求項1~3のいずれか一つに記載の包装用紙。
【請求項5】
不透明度75%以下の紙基材を調整する工程と、アイオノマー、エチレン系コポリマー、熱可塑性ウレタン及びポリ塩化ビニリデンから成る群から選択されるいずれか1種以上を含むヒートシール層用塗工液を調整する工程とを含み、その後、前記紙基材の少なくとも一方の面に前記ヒートシール層用塗工液を乾燥塗工量で1~10g/m2の範囲で塗工する工程を含むことを特徴とする包装用紙の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチックの使用量を低減し、透明で内容物の確認が容易であり、かつ良好なヒートシール性と耐水性、耐油性を有する包装用紙に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プラスチックゴミの問題が深刻化している。世界のプラスチックの生産量は4億トン/年を超えるとされ、その中でも包装容器セクターでのプラスチック生産量が多く、プラスチックゴミの原因の一つになっている。プラスチックは半永久的に分解せず、そのゴミは自然環境下でマイクロプラスチック化し、生態系に深刻な悪影響を与えている。包装容器に使用されるプラスチックとしては、飲料のボトル等に使用されるポリエチレンテレフタレート(PET)、レジ袋、容器のラミネートに使用されるポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)が最も多く使用されている。特に海洋の汚染は著しく、そのプラスチックゴミは回収不可能と言われている。今後、プラスチックの使用を低減することが地球環境保全のために必須である。
【0003】
対策手段として、包装用紙に使用されるプラスチックを紙に代替することが提案されている。しかしながら、包装用紙としては、ヒートシール性に加えて、防湿性、耐水性、耐油性といったバリア性を必要とする。すなわち、例えば、プラスチックを紙に代替する場合においても、紙を袋や容器に加工する際には、ヒートシール剤として、ポリエチレンやポリプロピレンなどのプラスチックが多量にラミネートされたラミネート紙が包装用紙として使用される。これらプラスチックのラミネート量は、商品コンセプトによって様々だが、概ね25~50g/m2であり、300g/m2と多量になる場合もある。従って、プラスチックを紙に代替した包装容器においても、依然としてプラスチックの使用量は十分に低減されないという問題があり、早急に、直接的にプラスチックの使用を低減する手段が必要である。すなわち、用途によって求められる品質レベルは異なるが、プラスチックの使用量を低減しつつ、従来のラミネート紙と同等程度のヒートシール性とバリア性を有した包装用紙が求められている。
【0004】
さらに、プラスチックから紙に代替した包装用紙では紙の不透明性によって、包装容器の内容物を容易に確認できないという問題がある。プラスチックの透明性を必要とする用途においては、不透明な包装用紙への代替が不可能となってしまい、プラスチックの使用を削減することが難しい。
【0005】
このような背景から、プラスチックの使用量を低減し、透明で内容物の確認が容易であり、かつ良好なヒートシール性と耐水性、耐油性を有する包装用紙の開発が課題としてある。
【0006】
このような包装用紙として、柔軟かつ通気性を有する紙に、透明化剤とヒートシール性化剤の混合液を塗布含浸し乾燥することで、透明性があり通気性、撥水性を付与する提案がある(特許文献1を参照)。さらに、セルロースパルプを主成分とするシート状紙基材に、溶媒にセルロースを溶解せしめたセルロース溶液を含浸または塗布した後、該溶媒を除去することにより該紙基材内にセルロースを充填することで、高い透明性と水性または油性の液体の浸透を抑制させる提案がある(特許文献2を参照)。
【0007】
しかし、特許文献1に記載の衣料品包装材及び衣料品包装用カバーでは、透明性とヒートシール性はあるものの、バリア性が不十分であり、包装用紙に求められる耐水性、耐油性が十分でない。特許文献2に記載の透明紙の製造方法では、透明性と耐水性、耐油性はあるものの、ヒートシール性がないので後工程でヒートシール層の付与が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000-085868号公報
【特許文献2】特開平09-296392号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、プラスチックの使用量を低減し、透明で内容物の確認が容易であり、かつ良好なヒートシール性と耐水性、耐油性を有する包装用紙を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明においては、従来のプラスチックラミネート紙(以降、「ポリラミ紙」と略称する場合がある)に含まれるプラスチックの使用量を低減するために、ヒートシール層にアイオノマー、エチレン系コポリマー、熱可塑性ウレタン又はポリ塩化ビニリデンのいずれか1種以上を使用する。また、内容物の確認を容易にするために、不透明度75%以下の紙基材を使用する。すなわち、本発明による包装用紙は、不透明度75%以下の紙基材の少なくとも一方の面にアイオノマー、エチレン系コポリマー、熱可塑性ウレタン及びポリ塩化ビニリデンから成る群から選択されるいずれか1種以上を含むヒートシール層を有することを特徴とする。本発明による包装用紙であれば、ヒートシール層に含まれるプラスチックの使用量を低減し、透明で内容物の確認が容易であり、かつ良好なヒートシール性と耐水性、耐油性を有する包装用紙を得ることができる。
【0011】
本発明においては、前記紙基材が樹脂含浸透明紙、グラシン紙、パラフィン紙、パーチメント紙のいずれかであることが好ましい。このような構成とすることで、より不透明度の低い包装用紙を得ることができる。本発明においては、ヒートシール層が、乾燥塗工量で1~10g/m2の範囲であることが好ましい。このような構成とすることで、より良好なヒートシール性と耐水性、耐油性を有しており、かつプラスチックの使用量をさらに削減した包装用紙を得ることができる。
【0012】
本発明においては、包装用紙の透気度が300秒を超えることが好ましい。このような構成とすることで、包装用紙の紙面から侵入する空気を遮断しやすく、加えて水や油を通しにくくなるので、より良好な耐水性、耐油性を有する包装用紙を得ることができる。
【0013】
本発明に別の実施形態は、不透明度75%以下の紙基材を調整する工程と、アイオノマー、エチレン系コポリマー、熱可塑性ウレタン及びポリ塩化ビニリデンから成る群から選択されるいずれか1種以上を含むヒートシール層用塗工液を調整する工程とを含み、その後、前記紙基材の少なくとも一方の面に前記ヒートシール層用塗工液を乾燥塗工量で1~10g/m2の範囲で塗工する工程を含むことを特徴とする包装用紙の製造方法に関する。本発明の包装用紙の製造方法であれば、ヒートシール層に含まれるプラスチックの使用量を低減し、透明で内容物の確認が容易であり、かつ良好なヒートシール性と耐水性、耐油性を有する包装用紙を得ることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、プラスチックの使用量を低減し、透明で内容物の確認が容易であり、かつ良好なヒートシール性と耐水性、耐油性を有する包装用紙を製造することが可能である。本発明の包装用紙を用いた容器製品であれば、仮に自然界にゴミとして不適切に放出された場合であっても、自然環境に与えるプラスチックゴミとしての悪影響を小さくすることが可能であり、プラスチックゴミ問題の解決の一助となる。なお、本発明における包装用紙は、例えば、食品包装における一次袋や二次袋、ホットスナック等の食糧容器、ケース、器、封筒等の包装容器全般に加工可能である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明について実施形態を示して詳細に説明するが、本発明はこれらの記載に限定して解釈されない。本発明の効果を奏する限り、実施形態は種々の変形をしてもよい。
【0016】
本実施形態において、ヒートシール層は、アイオノマー、エチレン系コポリマー、熱可塑性ウレタン及びポリ塩化ビニリデンから成る群から選択されるいずれか1種以上を含むことを特徴とする。ここでアイオノマーとは、金属イオンによる凝集力を利用し高分子を凝集体とした合成樹脂のことを指し、樹脂と金属カチオンが分子間結合して凝集体となるものすべてを含む。例えば、エチレン・メタクリル酸共重合体の金属塩、エチレン・アクリル酸共重合体の金属塩、エチレン・ウレタン系共重合体の金属塩、エチレン・フッ素系高分子共重合体の金属塩等である。金属塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩などが挙げられる。本発明においては、アイオノマーの中でもエチレン・アクリル酸またはエチレン・メタクリル酸の共重合体の金属塩が好ましい。乾燥塗工量が比較的少なくとも十分なヒートシール強度を付与できる。また、エチレン系コポリマーは、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸エステル共重合体、エチレン・メタクリル酸エステル共重合体のいずれかであることが好ましい。ヒートシール強度、耐水性、耐油性が特に優れる。熱可塑性ウレタンとしては、特に制限はないが、エステル系、エステル・エーテル系、カーボネート系、芳香族イソシアネート系のいずれかの熱可塑性ウレタンであることが好ましい。耐水性、耐油性が特に優れる。ポリ塩化ビニリデンとしては、塩化ビニリデン単独でも、他の高分子との共重合体でもよい。特に制限はないが、共重合体として例えばラテックス、塩化ビニル、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、不飽和カルボン酸のいずれかとの共重合体であることが好ましい。耐水性、耐油性が優れる。本発明の包装用紙においては、ヒートシール性能や耐水性、耐油性に影響を及ぼさない限り、これら以外の樹脂を含んでも良く、さらに複数の樹脂を混合しても良い。
【0017】
本発明の本実施形態においては、不透明度75%以下の紙基材の少なくとも一方の面に、アイオノマー、エチレン系コポリマー、熱可塑性ウレタン及びポリ塩化ビニリデンから成る群から選択されるいずれか1種以上を含むヒートシール層用塗工液を塗工し、乾燥することでヒートシール層を設けることができる。ヒートシール層に用いるアイオノマー、エチレン系コポリマー、熱可塑性ウレタン及びポリ塩化ビニリデンから成る群から選択されるいずれか1種以上を含むヒートシール層用塗工液が水系エマルジョンであることが好ましい。水系エマルジョンを用いることにより、塗工量を比較的低くコントロールすることが可能であり、更にVOC排出が無くなり自然環境に対する負荷を小さくすることができる。ヒートシール層の塗工量は、紙基材の片面あたり、固形分換算で1~10g/m2であり、好ましくは2~6g/m2である。1g/m2未満の場合は、ヒートシール強度において十分な品質を得られない。逆に10g/m2を超える場合は、十分なヒートシール強度は得られるが、プラスチックの使用量も増えるためプラスチック削減効果に乏しくなる。なお、本発明の包装用紙において、ヒートシール層は、紙基材の表面の一部分のみに設けられているのではなく、全面に設けられていることが通常である。すなわち、ヒートシール層は、例えば網状、島状、線状など、ヒートシールによる接着に必要な部分にのみ設けられているのではなく、紙基材の表面の全面を覆うように設けられていると良い。
【0018】
本発明の実施形態においては、ヒートシール層用塗工液には、アイオノマー、エチレン系コポリマー、熱可塑性ウレタン及びポリ塩化ビニリデンから成る群から選択されるいずれか1種以上を含む水系エマルジョンの他に、各種助剤を添加してもよい。例えば、粘度調整剤、消泡剤、ブロッキング防止剤、界面活性剤やアルコールなどのレベリング剤、着色顔料、着色染料などである。しかしながら、これらの助剤の添加は、ヒートシール強度の低下を招きやすいことから、添加する場合には少量であることが好ましい。本実施形態においては、ヒートシール層用塗工液がアイオノマー、エチレン系コポリマー、熱可塑性ウレタン及びポリ塩化ビニリデンから成る群から選択されるいずれか1種以上を含む水系エマルジョンのみからなることが好ましい。
【0019】
本発明におけるヒートシール層用塗工液を塗工する方式としては、特に限定するものではなく、一般に使用されている塗工装置が使用できる。例えばエアーナイフコーター、ブレードコーター、グラビアコーター、ロッドブレードコーター、ロールコーター、リバースロールコーター、バーコーター、カーテンコーター、ダイスロットコーター、チャンプレックスコーター、メータリングブレード式のサイズプレスコーター、ショートドウェルコーター、スプレーコーター、ゲートロールコーター、リップコーター等の公知の各種塗工装置を用いることができる。
【0020】
本実施形態においては、包装用紙の透気度が300秒を超えることが好ましい。より好ましくは500秒以上であり、更に好ましくは1000秒以上である。包装用紙の透気度を300秒以上とすることにより、包装用紙の紙面から侵入する空気を遮断しやすく、加えて水や油を通しにくくなるので、良好な耐水性、耐油性を有する包装用紙を得ることができる。透気度が300秒未満の場合は、耐水性、耐油性において十分な品質を得られない場合がある。本実施形態において、透気度はJIS P 8117:2009に準拠して測定した。
【0021】
本実施形態においては、前記ヒートシール層が2層以上で形成されていても良い。2層以上とすることにより、包装用紙の透気度を高くすることができ、さらに耐水性、耐油性、防湿性を付与することができ、従来のポリラミ紙と同等レベルのバリア性を得ることができるからである。ヒートシール層が2層以上の場合、紙基材に最も近い最下層のヒートシール層の塗工量が、他のヒートシール層の合計塗工量よりも多い方が好ましい。包装用紙の透気度をさらに改善することができ、耐水性、耐油性、防湿性が更に向上するからである。ヒートシール層が2層以上である場合、ヒートシール層の全塗工量は、紙基材の片面あたり、固形分換算で1~15g/m2であり、好ましくは2~10g/m2であってよい。
【0022】
本実施形態においては、紙基材の不透明度が75%以下であることを特徴とする。紙基材の不透明度を75%以下とすることで、透明で内容物の確認が容易となる。不透明度は低いほど透明性に優れるため、低ければ低いほど内容物の確認が容易となる。75%を超える場合は、得られる包装用紙の透明性が著しく損なわれるため、内容物の確認が困難となる。紙基材の不透明度は、好ましくは60%以下、より好ましくは55%以下、例えば、65%~50%である。ここで、用いる紙基材としては、不透明度が75%以下であればいずれの紙であってもよいが、樹脂含浸透明紙、グラシン紙、パラフィン紙、パーチメント紙のいずれか一つであることが好ましい。本実施形態において、不透明度はJIS P 8149:2000に準拠して測定した。
【0023】
樹脂含浸透明紙とは、原紙にワックスや合成樹脂等の透明化剤を含浸して製造する紙のことを指す。樹脂含浸透明紙の原紙の主成分となるパルプとしては、LBKP(広葉樹さらしクラフトパルプ)、NBKP(針葉樹さらしクラフトパルプ)、LUKP(広葉樹未さらしクラフトパルプ)、NUKP(針葉樹未さらしクラフトパルプ)、DSP(サルファイトパルプ)などの化学パルプ、GP(砕木パルプ)、PGW(加圧式砕木パルプ)、RMP(リファイナーメカニカルパルプ)、TMP(サーモメカニカルパルプ)、CTMP(ケミサーモメカニカルパルプ)、CMP(ケミメカニカルパルプ)、CGP(ケミグランドパルプ)などの機械パルプ、DIP(脱インキパルプ)などの木材パルプ及びケナフ、バガス、竹、コットンなどの非木材パルプ、ポリオレフィンなどの合成パルプを用いることができる。これらは、単独で使用するか、又は任意の割合で混合して使用することが可能である。例えば、パルプとして、NBKP(針葉樹さらしクラフトパルプ)をパルプ中90~100質量部使用することができる。また、本発明の目的とする効果を損なわない範囲において、合成繊維を更に配合することができる。環境保全の観点から、ECF(Elemental Chlorine Free)パルプ、TCF(Total Chlorine Free)パルプ、古紙パルプ、植林木から得られるパルプが好ましい。また、例えば、適切なパルプの叩解度としては、カナダ標準ろ水度(フリーネス)(JIS P 8121:1995「パルプのろ水度試験方法」)で、500mlCSF以上が適している。好ましくは500~700mlCSF、例えば、550~650mlCSFである。また、樹脂含浸透明紙の原紙には、紙力増強剤、蛍光染料、硫酸バンドなどの各種助剤を含有しても良い。
【0024】
また、樹脂含浸透明紙を製造するためには、原紙の乾燥工程の中間で含浸処理を行い透明化することが好ましい。含浸液には、透明化剤及び表面サイズ剤を含む。透明化剤には、両性スチレン、ブタジエン、アクリル混合エマルジョンやフェノール樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂等の樹脂類等、公知の透明化剤を用いることができる。表面サイズ剤には、アルキルケテンダイマー系、スチレン系、アクリル系、スチレン共重合体系等公知の表面サイズ剤を用いることができる。本発明の包装用紙においては、ヒートシール層用塗工液の均一な塗工に影響を及ぼさない限り、これら以外の透明化剤や表面サイズ剤を含んでも良く、さらに複数の透明化剤や表面サイズ剤を混合しても良い。サイズプレスによって、透明化剤及び表面サイズ剤を含む含侵液を原紙の両面あたり5~15g/m2程度含侵させることが好ましい。
【0025】
樹脂含浸透明紙の含浸液には、透明化剤と表面サイズ剤に加えて、含浸処理による透明化に影響のない範囲で、硬化剤、着色剤、界面活性剤、可塑剤等の各種公知の製紙用添加剤が含まれていても良い。
【0026】
樹脂含浸透明紙の抄紙方法は、特に限定されるものではなく、長網抄紙機、長網多層抄紙機、円網抄紙機、円網多層抄紙機、長網円網コンビ多層抄紙機、ツインワイヤー抄紙機などの各種抄紙機で製造できる。また、本発明においては、紙基材としては単層抄きでも多層抄きであってもよい。さらに、含浸方式並びに乾燥方式、平滑化処理についても特に限定されるものではない。
【0027】
グラシン紙とは、パルプを高度に叩解し抄紙し透明化した紙、パラフィン紙とは、パラフィン、高級脂肪酸、脂肪酸アミド等のワックス類を含浸させて透明化した紙、パーチメント紙とは、原紙を濃硫酸で処理し透明化した紙のことを指す。それぞれの紙は従来の製造方法により製造することができる。本実施形態では、不透明度が75%以下であれば、上記の紙に限定されることはなく、それ以外の紙や、製造方法で製造された紙を紙基材として用いても良い。
【0028】
本実施形態において、包装用紙の坪量は特に限定するものではないが、例えば10~300g/m2である。耐水性と耐油性を高度に備え、軟包装にも使用できる包装用紙の坪量としては、20~150g/m2が好ましく、30~120g/m2がより好ましい。
【実施例0029】
次に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また、例中の「部」、「%」は、特に断らない限りそれぞれ「質量部」、「質量%」を示す。なお、添加部数は、固形分換算の値である。
【0030】
(実施例1)
(紙基材の作製)
カナディアンスタンダードフリーネス600mlcsfの針葉樹さらしクラフトパルプ100部、紙力増強剤(商品名:WS-552、日本PMC社製)を0.8部、蛍光染料(商品名:ケイコールBUL、日本曹達社製)を0.7部、定着剤として硫酸アルミニウムを0.96部添加した紙料を調製し、円網多筒式抄紙機を用いて坪量56g/m2の原紙を作製した。この原紙にサイズプレスによって、両性スチレン、ブタジエン、アクリル混合エマルジョン(商品名:リペレットA-3、日新化学研究所社製)50質量%、アルキルケテンダイマー(商品名:SS362、日本PMC社製)0.75質量%からなる水溶液(含侵液)を両面当たりの乾燥含浸量が14g/m2となるように含浸し、乾燥、キャレンダーによる平滑化処理を行い70g/m2、不透明度57%の樹脂含浸透明紙を紙基材として得た。
【0031】
(包装用紙の作製)
上記で得られた紙基材の一方の面に、水系アイオノマーエマルジョン(商品名:ケミパールS-300、三井化学社製、エチレン・メタクリル酸共重合体の金属塩)を乾燥塗工量が5.0g/m2になるようにエアーナイフコーターを用いて塗工し、乾燥してヒートシール層を設け、包装用紙を作製した。
【0032】
(実施例2)
実施例1における水系アイオノマーエマルジョンの単層のヒートシール層に代えて、水系アイオノマーエマルジョン(商品名:ケミパールS-300、三井化学社製)を乾燥塗工量が4.0g/m2になるようにエアーナイフコーターを用いて塗工し、乾燥して1層目のヒートシール層を設け、次いで、同水系アイオノマーエマルジョンを1層目のヒートシール層の表面に、乾燥塗工量が1.0g/m2となるようにエアーナイフコーターを用いて塗工し、乾燥して2層目のヒートシール層を設けたこと以外は、実施例1と同様にして包装用紙を作製した。
【0033】
(実施例3)
実施例1における水系アイオノマーエマルジョンに代えて、ヒートシール層に使用する樹脂として、水系エチレン・アクリル酸共重合体エマルジョン(商品名:MICHEM FLEX P1883、マイケルマン社製)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして包装用紙を作製した。
【0034】
(実施例4)
実施例1における水系アイオノマーエマルジョンに代えて、ヒートシール層に使用する樹脂として、水系ポリヒドロキシウレタンエマルジョン(商品名:タケラックWPB-341、三井化学社製)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして包装用紙を作製した。
【0035】
(実施例5)
実施例1における水系アイオノマーエマルジョンに代えて、ヒートシール層に使用する樹脂として、水系ポリ塩化ビニリデンエマルジョン(商品名:サランラテックス L411A、旭化成社製)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして包装用紙を作製した。
【0036】
(実施例6)
実施例1における水系アイオノマーエマルジョンの単層のヒートシール層に代えて、水系ポリ塩化ビニリデンエマルジョン(商品名:サランラテックス L411A、旭化成社製)を乾燥塗工量が4.0g/m2になるようにエアーナイフコーターを用いて塗工し、乾燥して1層目のヒートシール層を設け、次いで、水系ポリ塩化ビニリデンエマルジョンを1層目のヒートシール層の表面に、乾燥塗工量が1.0g/m2となるようにエアーナイフコーターを用いて塗工し、乾燥して2層目のヒートシール層を設けたこと以外は、実施例1と同様にして包装用紙を作製した。
【0037】
(実施例7)
実施例1における樹脂含浸透明紙に代えて、紙基材として不透明度71%のグラシン紙70g/m2に変更したこと以外は、実施例1と同様にして包装用紙を作製した。
【0038】
(実施例8)
実施例1における樹脂含浸透明紙に代えて、紙基材として不透明度55%のパラフィン紙70g/m2に変更したこと以外は、実施例1と同様にして包装用紙を作製した。
【0039】
(実施例9)
実施例1における樹脂含浸透明紙に代えて、紙基材として不透明度58%のパーチメント紙70g/m2に変更したこと以外は、実施例1と同様にして包装用紙を作製した。
【0040】
(比較例1)
実施例1における樹脂含浸透明紙に代えて、紙基材として不透明度80%のクラフト紙70g/m2に変更したこと以外は、実施例1と同様にして包装用紙を作製した。
【0041】
(比較例2)
ヒートシール層の塗工量を0g/m2に変更したこと以外は、実施例1と同様にして包装用紙を作製した。
【0042】
(比較例3)
実施例1における水系アイオノマーエマルジョンに代えて、ヒートシール層に使用する樹脂として、水系スチレン・アクリル共重合体エマルジョン(商品名:サイビノール EK-754、サイデン化学社製)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして包装用紙を作製した。
【0043】
各実施例及び比較例で得られた包装用紙について、以下に示す方法により評価を行った。得られた結果を表1に示す。
【0044】
(1)透明性
得られた包装用紙を、黒色で文字を印刷したPPC用紙(コピー用紙)の上に重ね、包装用紙から透けて見える文字の識字性によって評価した。
○:文字が全て透けて見え、実用できる。
×:文字の全体がぼやけており、実用できない。
【0045】
(2)ヒートシール材破性
得られた包装用紙を、幅8mm、長さ15cmのサイズに2枚カットし、包装用紙の表面と裏面とを重ね合わせ、ヒートシール装置(パルメック社製、型番:PTS-100)で、一定条件(接着幅:4mm、温度:180℃、圧力0.4MPa、押し当て時間0.5秒、ピッチ:4mm)にてヒートシールした。次いで、ヒートシールしたサンプルを、剥離強度試験機(島津製作所製、型番:オートグラフAGS-X)にて、一定条件(剥離速度:100mm/分、剥離長さ:10cm)で剥離して、剥離面を目視によって評価した。
○:シール部の全部分が紙基材から材破しており、実用できる。
△:シール部の一部が紙基材から材破しており、実用できる。
×:シール部がヒートシール層の界面で剥離している、または接着しておらず、実用できない。
【0046】
(3)コッブ吸水度
JIS P8140:1998に準拠して、ヒートシール層表面の120秒コッブ吸水度を評価した。数値が低いほど耐水性がある(水を吸液しにくい)ことを示す。本発明においては、コッブ吸水度が3.0g/m2以下で耐水性があるといえる。
【0047】
(4)耐サラダ油性
得られた包装用紙をPPC用紙の上に置き、ヒートシール層表面にサラダ油を一滴滴下し5分後に拭き取り、耐サラダ油性を評価した。
○:包装用紙に油染みが全くない、実用できる。
△:包装用紙に油染みがあるが、油がPPC用紙まで到達していないため、実用できる。×:油がPPC用紙まで到達しており、実用できない。
【0048】
【0049】
表1より明らかなように、実施例1~9による包装用紙は比較例1~3と比較して、明らかに透明性、ヒートシール材破性、耐水性、耐サラダ油性に優れていた。実験結果が示している様に、本発明であれば、従来のポリラミ紙におけるラミネートに使用されるプラスチック量と比較してヒートシール層のプラスチック使用量を著しく軽減し、プラスチックゴミ削減に貢献しつつ、透明で内容物の確認が容易であり、かつ良好なヒートシール性と耐水性、耐油性を有する包装用紙を提供することができる。