(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111076
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】積層体および画像表示パネルの製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20240808BHJP
【FI】
G02B5/30
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024096706
(22)【出願日】2024-06-14
(62)【分割の表示】P 2021028303の分割
【原出願日】2021-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【弁理士】
【氏名又は名称】籾井 孝文
(74)【代理人】
【識別番号】100143650
【弁理士】
【氏名又は名称】山元 美佐
(72)【発明者】
【氏名】柳本 賢士
(72)【発明者】
【氏名】友久 寛
(57)【要約】
【課題】薄型の位相差層付偏光板を含み、画像表示パネルの製造工程における作業性に優れた積層体を提供すること。
【解決手段】本発明の実施形態による積層体は、表面保護フィルムと、偏光子と保護層とを含む偏光板と、位相差層と、粘着剤層と、剥離フィルムと、をこの順に有する積層体であって、前記偏光板から前記粘着剤層までの積層部分の厚みは70μm以下であり、前記剥離フィルムの厚みは40μm以上であり、前記粘着剤層に対する前記剥離フィルムの剥離力Frは0.04N/25mm以下であり、前記偏光板に対する前記表面保護フィルムの剥離力Fpは、前記Frよりも大きく、0.1N/25mm以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面保護フィルムと、偏光子と保護層とを含む偏光板と、位相差層と、粘着剤層と、剥離フィルムと、をこの順に有する積層体であって、
前記偏光板から前記粘着剤層までの積層部分の厚みは70μm以下であり、
前記剥離フィルムの厚みは40μm以上であり、
前記粘着剤層に対する前記剥離フィルムの剥離力Frは0.04N/25mm以下であり、
前記偏光板に対する前記表面保護フィルムの剥離力Fpは、前記Frよりも大きく、0.1N/25mm以下である、
積層体。
【請求項2】
前記表面保護フィルムの厚みは60μm以上である、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記表面保護フィルムの厚みは、前記積層部分の厚みよりも大きい、請求項1または2に記載の積層体。
【請求項4】
前記偏光板には、前記偏光子の前記位相差層が配置されていない側にのみ保護層が配置されている、請求項1から3のいずれかに記載の積層体。
【請求項5】
前記偏光子の厚みは8μm以下である、請求項1から4のいずれかに記載の積層体。
【請求項6】
前記位相差層は液晶化合物の配向固化層である、請求項1から5のいずれかに記載の積層体。
【請求項7】
反りが5%以下である、請求項1から6のいずれかに記載の積層体。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の積層体を準備すること、
前記粘着剤層から前記剥離フィルムを剥がした前記積層体を画像表示パネル本体に貼り合わせること、および、
前記表面保護フィルムを前記偏光板から剥がすこと、
をこの順に含む、画像表示パネルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体および画像表示パネルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置およびエレクトロルミネセンス(EL)表示装置(例えば、有機EL表示装置、無機EL表示装置)に代表される画像表示装置が急速に普及している。画像表示装置に搭載される画像表示パネルには、代表的には偏光板および位相差板が用いられている。実用的には、偏光板と位相差板とを一体化した位相差層付偏光板が広く用いられている(例えば、特許文献1)。近年、画像表示装置の薄型化への要望が強くなっている。また、画像表示装置の湾曲、屈曲、折り畳み、巻き取りの可能性が検討されている。このような画像表示装置に用いられる位相差層付偏光板として、薄型の位相差層付偏光板が要望されている。しかし、このような位相差層付偏光板を画像表示パネル本体に貼り合わせる際、その作業性に劣る場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、薄型の位相差層付偏光板を含み、画像表示パネルの製造工程における作業性に優れた積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態によれば、積層体が提供される。この積層体は、表面保護フィルムと、偏光子と保護層とを含む偏光板と、位相差層と、粘着剤層と、剥離フィルムと、をこの順に有する積層体であって、前記偏光板から前記粘着剤層までの積層部分の厚みは70μm以下であり、前記剥離フィルムの厚みは40μm以上であり、前記粘着剤層に対する前記剥離フィルムの剥離力Frは0.04N/25mm以下であり、前記偏光板に対する前記表面保護フィルムの剥離力Fpは、前記Frよりも大きく、0.1N/25mm以下である。
1つの実施形態においては、上記表面保護フィルムの厚みは60μm以上である。
1つの実施形態においては、上記表面保護フィルムの厚みは、上記積層部分の厚みよりも大きい。
1つの実施形態においては、上記偏光板には、上記偏光子の上記位相差層が配置されていない側にのみ保護層が配置されている。
1つの実施形態においては、上記偏光子の厚みは8μm以下である。
1つの実施形態においては、上記位相差層は液晶化合物の配向固化層である。
1つの実施形態においては、上記積層体の反りは5%以下である。
本発明の別の実施形態によれば、画像表示パネルの製造方法が提供される。この製造方法は、上記積層体を準備すること、上記粘着剤層から上記剥離フィルムを剥がした上記積層体を画像表示パネル本体に貼り合わせること、および、上記表面保護フィルムを上記偏光板から剥がすこと、をこの順に含む。
【発明の効果】
【0006】
本発明の実施形態によれば、位相差層付偏光板に対し、所定の剥離力を満足する表面保護フィルムおよび剥離フィルムを有する積層体を用いることにより、画像表示パネルの製造工程における作業性を格段に向上させ得る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の1つの実施形態に係る積層体の概略の構成を示す模式的な断面図である。
【
図2】積層体前駆体の反りの状態の一例を示す断面図である。
【
図3A】1つの実施形態に係る画像表示パネルの製造工程例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【0009】
(用語および記号の定義)
本明細書における用語および記号の定義は下記の通りである。
(1)屈折率(nx、ny、nz)
「nx」は面内の屈折率が最大になる方向(すなわち、遅相軸方向)の屈折率であり、「ny」は面内で遅相軸と直交する方向(すなわち、進相軸方向)の屈折率であり、「nz」は厚み方向の屈折率である。
(2)面内位相差(Re)
「Re(λ)」は、23℃における波長λnmの光で測定した面内位相差である。例えば、「Re(550)」は、23℃における波長550nmの光で測定した面内位相差である。Re(λ)は、層(フィルム)の厚みをd(nm)としたとき、式:Re(λ)=(nx-ny)×dによって求められる。
(3)厚み方向の位相差(Rth)
「Rth(λ)」は、23℃における波長λnmの光で測定した厚み方向の位相差である。例えば、「Rth(550)」は、23℃における波長550nmの光で測定した厚み方向の位相差である。Rth(λ)は、層(フィルム)の厚みをd(nm)としたとき、式:Rth(λ)=(nx-nz)×dによって求められる。
(4)Nz係数
Nz係数は、Nz=Rth/Reによって求められる。
(5)角度
本明細書において角度に言及するときは、当該角度は基準方向に対して時計回りおよび反時計回りの両方を包含する。したがって、例えば「45°」は±45°を意味する。
【0010】
A.積層体
図1は、本発明の1つの実施形態に係る積層体の概略の構成を示す模式的な断面図である。積層体100は、表面保護フィルム30、偏光板10、位相差層20、粘着剤層40および剥離フィルム(セパレーター)50をこの順に有する。積層体100により得られる位相差層付偏光板は、代表的には、位相差層20よりも偏光板10が視認側となるように配置される。
【0011】
表面保護フィルム30は、基材31と基材31の片側に形成された粘着剤層32とを含み、偏光板10に対して剥離可能に貼り合わせられている。位相差層20は、第一位相差層21および第二位相差層22を含む積層構造を有している。図示例においては、偏光板10は、偏光子11と、偏光子11の視認側(位相差層20が配置されていない側)に配置された保護層12とを含み、偏光子11と位相差層20との間には保護層は配置されていない。このような形態によれば、例えば、後述の位相差層付偏光板の厚みおよび偏光板の厚みを良好に達成し得る。剥離フィルム50は、粘着剤層40に対して剥離可能に貼り合わせられており、粘着剤層40を保護し得る。剥離フィルム50を用いることにより、例えば、積層体100のロール形成が可能となる。
【0012】
図示しないが、偏光子11のもう片側(偏光子11と位相差層20との間)に保護層をさらに含んでいてもよい。また、図示例とは異なり、位相差層20は、単一層とされていてもよいし、三層以上の積層構造を有していてもよい。
【0013】
図示しないが、積層体は、その他の機能層をさらに有していてもよい。積層体が有し得る機能層の種類、特性、数、組み合わせ、配置等は、目的に応じて適切に設定され得る。例えば、積層体は、導電層または導電層付等方性基材をさらに有していてもよい。導電層または導電層付等方性基材は、代表的には、位相差層20と粘着剤層40との間に配置される。なお、導電層または導電層付等方性基材を有する積層体(位相差層付偏光板)は、例えば、画像表示パネル内部にタッチセンサが組み込まれた画像表示装置に適用される。別の例としては、積層体は、その他の位相差層をさらに有していてもよい。その他の位相差層の光学的特性(例えば、屈折率特性、面内位相差、Nz係数、光弾性係数)、厚み、配置等は、目的に応じて適切に設定され得る。具体例として、偏光板10に含まれ、偏光子11の視認側には、偏光サングラスを介して視認する場合の視認性を改善するその他の位相差層(代表的には、(楕)円偏光機能を付与する層、超高位相差を付与する層)が設けられていてもよい。このような層を有することにより、偏光サングラス等の偏光レンズを介して表示画面を視認した場合でも、優れた視認性を実現することができる。したがって、得られる位相差層付偏光板は、屋外で用いられ得る画像表示装置にも好適に適用され得る。
【0014】
積層体を構成する各部材は、任意の適切な接着層(図示せず)を介して積層され得る。接着層の具体例としては、接着剤層、粘着剤層が挙げられる。例えば、位相差層20は、接着剤層を介して(好ましくは、活性エネルギー線硬化型接着剤を用いて)偏光板10に貼り合わせられている。図示例のように位相差層20が二層以上の積層構造を有する場合、それぞれの位相差層は、接着剤層を介して(好ましくは、活性エネルギー線硬化型接着剤を用いて)貼り合わせられている。
【0015】
偏光板10から粘着剤層40までの積層部分の厚み(単に、「位相差層付偏光板の厚み」と称する場合がある)は、70μm以下であり、好ましくは60μm以下であり、より好ましくは50μm以下である。一方、位相差層付偏光板の厚みは、例えば25μm以上である。なお、位相差層付偏光板の厚みには、上記接着層の厚みも含む。
【0016】
A-1.偏光板
上記偏光板は、偏光子と保護層とを含む。偏光板の厚みは、含まれる保護層の数にもよるが、好ましくは20μm以上であり、より好ましくは25μm以上である。一方、偏光板の厚みは、好ましくは40μm以下であり、より好ましくは36μm以下であり、さらに好ましくは33μm以下である。なお、偏光板の厚みには、偏光子と保護層とを積層する際に接着層(例えば、接着剤層)を用いる場合、その厚みは含まれない。
【0017】
上記偏光子は、代表的には、二色性物質(例えば、ヨウ素)を含む樹脂フィルムである。樹脂フィルムとしては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)系フィルム、部分ホルマール化PVA系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムが挙げられる。
【0018】
偏光子の厚みは、好ましくは15μm以下であり、より好ましくは12μm以下であり、さらに好ましくは10μm以下であり、特に好ましくは8μm以下である。一方、偏光子の厚みは、好ましくは1μm以上である。
【0019】
偏光子は、好ましくは、波長380nm~780nmのいずれかの波長で吸収二色性を示す。偏光子の単体透過率は、例えば41.5%~46.0%であり、好ましくは42.0%~46.0%であり、より好ましくは44.5%~46.0%である。偏光子の偏光度は、好ましくは97.0%以上であり、より好ましくは99.0%以上であり、さらに好ましくは99.9%以上である。
【0020】
上記保護層は、偏光子の保護層として使用できる任意の適切なフィルムで形成され得る。当該フィルムの主成分となる材料の具体例としては、トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系樹脂、ポリエステル系、ポリビニルアルコール系、ポリカーボネート系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリエーテルスルホン系、ポリスルホン系、ポリスチレン系、ポリノルボルネン等のシクロオレフィン系、ポリオレフィン系、(メタ)アクリル系、アセテート系等の樹脂が挙げられる。
【0021】
本発明の実施形態により得られる位相差層付偏光板は、代表的には、画像表示装置の視認側に配置され、保護層12は、視認側に配置される。したがって、保護層12には、必要に応じて、ハードコート(HC)処理、反射防止処理、スティッキング防止処理、アンチグレア処理等の表面処理が施されていてもよい。
【0022】
保護層12の厚みは、好ましくは5μm~80μmであり、より好ましくは10μm~40μmであり、さらに好ましくは10μm~30μmである。なお、上記表面処理が施されている場合、保護層12の厚みは、表面処理層の厚みを含めた厚みである。
【0023】
偏光子11と位相差層20との間に配置される保護層(図示せず)は、1つの実施形態においては、光学的に等方性であることが好ましい。本明細書において「光学的に等方性である」とは、面内位相差Re(550)が0nm~10nmであり、厚み方向の位相差Rth(550)が-10nm~+10nmであることをいう。偏光子11と位相差層20との間に配置される保護層の厚みは、好ましくは5μm~80μmであり、より好ましくは10μm~40μmであり、さらに好ましくは10μm~30μmである。
【0024】
偏光板は、任意の適切な方法で作製され得る。具体的には、偏光板は、単層の樹脂フィルムから作製した偏光子を含んでいてもよく、二層以上の積層体を用いて得られる偏光子を含んでいてもよい。
【0025】
上記単層の樹脂フィルムから偏光子を製造する方法は、代表的には、樹脂フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質による染色処理と延伸処理とを施すことを含む。樹脂フィルムとしては、上述のとおり、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)系フィルム、部分ホルマール化PVA系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムが用いられる。当該方法は、不溶化処理、膨潤処理、架橋処理等をさらに含んでいてもよい。得られた偏光子の少なくとも一方に保護層を積層することにより、偏光板が得られ得る。このような製造方法は、当業界で周知慣用であるので、詳細な説明は省略する。
【0026】
上記二層以上の積層体を用いて得られる偏光子の具体例としては、樹脂基材と当該樹脂基材に積層されたPVA系樹脂層(PVA系樹脂フィルム)との積層体、あるいは、樹脂基材と当該樹脂基材に塗布形成されたPVA系樹脂層との積層体を用いて得られる偏光子が挙げられる。樹脂基材と当該樹脂基材に塗布形成されたPVA系樹脂層との積層体を用いて得られる偏光子は、例えば、PVA系樹脂溶液を樹脂基材に塗布し、乾燥させて樹脂基材上にPVA系樹脂層を形成して、樹脂基材とPVA系樹脂層との積層体を得ること;当該積層体を延伸および染色してPVA系樹脂層を偏光子とすること;により作製され得る。本実施形態においては、好ましくは、樹脂基材の片側に、ハロゲン化物とポリビニルアルコール系樹脂とを含むポリビニルアルコール系樹脂層を形成する。延伸は、代表的には積層体をホウ酸水溶液中に浸漬させて延伸することを含む。さらに、延伸は、必要に応じて、ホウ酸水溶液中での延伸の前に積層体を高温(例えば、95℃以上)で空中延伸することをさらに含み得る。加えて、本実施形態においては、好ましくは、積層体は、長手方向に搬送しながら加熱することにより幅方向に2%以上収縮させる乾燥収縮処理に供される。代表的には、本実施形態の製造方法は、積層体に、空中補助延伸処理と染色処理と水中延伸処理と乾燥収縮処理とをこの順に施すことを含む。補助延伸を導入することにより、熱可塑性樹脂上にPVAを塗布する場合でも、PVAの結晶性を高めることが可能となり、高い光学特性を達成することが可能となる。また、同時にPVAの配向性を事前に高めることで、後の染色工程や延伸工程で水に浸漬された時に、PVAの配向性の低下や溶解などの問題を防止することができ、高い光学特性を達成することが可能になる。さらに、PVA系樹脂層を液体に浸漬した場合において、PVA系樹脂層がハロゲン化物を含まない場合に比べて、ポリビニルアルコール分子の配向の乱れ、および配向性の低下が抑制され得る。これにより、染色処理および水中延伸処理など、積層体を液体に浸漬して行う処理工程を経て得られる偏光子の光学特性は向上し得る。さらに、乾燥収縮処理により積層体を幅方向に収縮させることにより、光学特性を向上させることができる。得られた樹脂基材/偏光子の積層体はそのまま用いてもよく(すなわち、樹脂基材を偏光子の保護層としてもよく)、樹脂基材/偏光子の積層体から樹脂基材を剥離した剥離面に、もしくは、剥離面とは反対側の面に目的に応じた任意の適切な保護層を積層して用いてもよい。このような偏光子の製造方法の詳細は、例えば特開2012-73580号公報、特許第6470455号に記載されている。これらの公報は、その全体の記載が本明細書に参考として援用される。
【0027】
A-2.位相差層
上記位相差層の厚みは、その構成(単一層であるか積層構造を有するか)にもよるが、好ましくは10μm以下であり、より好ましくは8μm以下であり、さらに好ましくは5μm以下である。一方、位相差層の厚みは、例えば1μm以上である。なお、位相差層が積層構造である場合、「位相差層の厚み」は、各位相差層の厚みの合計を意味する。具体的には、「位相差層の厚み」には接着層(例えば、接着剤層)の厚みは含まれない。
【0028】
上記位相差層としては、好ましくは、液晶化合物の配向固化層(液晶配向固化層)が用いられる。液晶化合物を用いることにより、得られる位相差層のnxとnyとの差を非液晶材料に比べて格段に大きくすることができるので、所望の面内位相差を得るための位相差層の厚みを格段に小さくすることができる。したがって、位相差層付偏光板の顕著な薄型化を実現することができる。本明細書において「配向固化層」とは、液晶化合物が層内で所定の方向に配向し、その配向状態が固定されている層をいう。なお、「配向固化層」は、後述のように液晶モノマーを硬化させて得られる配向硬化層を包含する概念である。位相差層においては、代表的には、棒状の液晶化合物が位相差層の遅相軸方向に並んだ状態で配向している(ホモジニアス配向)。
【0029】
上記液晶配向固化層は、所定の基材の表面に配向処理を施し、当該表面に液晶化合物を含む塗工液を塗工して当該液晶化合物を上記配向処理に対応する方向に配向させ、当該配向状態を固定することにより形成され得る。配向処理としては、任意の適切な配向処理が採用され得る。具体的には、機械的な配向処理、物理的な配向処理、化学的な配向処理が挙げられる。機械的な配向処理の具体例としては、ラビング処理、延伸処理が挙げられる。物理的な配向処理の具体例としては、磁場配向処理、電場配向処理が挙げられる。化学的な配向処理の具体例としては、斜方蒸着法、光配向処理が挙げられる。各種配向処理の処理条件は、目的に応じて任意の適切な条件が採用され得る。
【0030】
液晶化合物の配向は、液晶化合物の種類に応じて液晶相を示す温度で処理することにより行われる。このような温度処理を行うことにより、液晶化合物が液晶状態をとり、基材表面の配向処理方向に応じて当該液晶化合物が配向する。
【0031】
配向状態の固定は、1つの実施形態においては、上記のように配向した液晶化合物を冷却することにより行われる。液晶化合物が重合性モノマーまたは架橋性モノマーである場合には、配向状態の固定は、上記のように配向した液晶化合物に重合処理または架橋処理を施すことにより行われる。
【0032】
液晶化合物の具体例および配向固化層の形成方法の詳細は、特開2006-163343号公報に記載されている。当該公報の記載は本明細書に参考として援用される。
【0033】
位相差層20は、上述のとおり、単一層であってもよいし、二層以上の積層構造を有していてもよい。
【0034】
図示例とは異なり、位相差層20が単一層である場合の1つの実施形態においては、位相差層20は、λ/4板として機能し得る。具体的には、位相差層のRe(550)は、好ましくは100nm~180nmであり、より好ましくは110nm~170nmであり、さらに好ましくは110nm~160nmである。位相差層の厚みは、λ/4板の所望の面内位相差が得られるよう調整され得る。位相差層が上述の液晶配向固化層である場合、その厚みは、例えば1.0μm~2.5μmである。本実施形態においては、位相差層の遅相軸と偏光子の吸収軸とのなす角度は、好ましくは40°~50°であり、より好ましくは42°~48°であり、さらに好ましくは44°~46°である。本実施形態では、位相差層は、好ましくは、位相差値が測定光の波長に応じて大きくなる逆分散波長特性を示す。なお、この実施形態においては、積層体は、位相差層20と粘着剤層40との間に配置されるnz>nx=nyの屈折率特性を示す層(その他の位相差層、図示せず)をさらに有し得る。
【0035】
位相差層20が単一層である場合の別の実施形態においては、位相差層20は、λ/2板として機能し得る。具体的には、位相差層のRe(550)は、好ましくは200nm~300nmであり、より好ましくは230nm~290nmであり、さらに好ましくは230nm~280nmである。位相差層の厚みは、λ/2板の所望の面内位相差が得られるよう調整され得る。位相差層が上述の液晶配向固化層である場合、その厚みは、例えば2.0μm~4.0μmである。本実施形態においては、位相差層の遅相軸と偏光子の吸収軸とのなす角度は、好ましくは10°~20°であり、より好ましくは12°~18°であり、さらに好ましくは12°~16°である。
【0036】
図1に示すように、位相差層20が積層構造を有する場合、位相差層20は、例えば、偏光板側から順に第一位相差層(H層)21と第二位相差層(Q層)22とが配置された、二層の積層構造を有する。H層は、代表的にはλ/2板として機能し得、Q層は、代表的にはλ/4板として機能し得る。具体的には、H層のRe(550)は好ましくは200nm~300nmであり、より好ましくは220nm~290nmであり、さらに好ましくは230nm~280nmであり;Q層のRe(550)は、好ましくは100nm~180nmであり、より好ましくは110nm~170nmであり、さらに好ましくは110nm~150nmである。H層の厚みは、λ/2板の所望の面内位相差が得られるよう調整され得る。H層が上述の液晶配向固化層である場合、その厚みは、例えば2.0μm~4.0μmである。Q層の厚みは、λ/4板の所望の面内位相差が得られるよう調整され得る。Q層が上述の液晶配向固化層である場合、その厚みは、例えば1.0μm~2.5μmである。本実施形態においては、H層の遅相軸と偏光子の吸収軸とのなす角度は、好ましくは10°~20°であり、より好ましくは12°~18°であり、さらに好ましくは12°~16°であり;Q層の遅相軸と偏光子の吸収軸とのなす角度は、好ましくは70°~80°であり、より好ましくは72°~78°であり、さらに好ましくは72°~76°である。位相差層20が積層構造を有する場合、それぞれの層(例えば、H層およびQ層)は、位相差値が測定光の波長に応じて大きくなる逆分散波長特性を示してもよく、位相差値が測定光の波長に応じて小さくなる正の波長分散特性を示してもよく、位相差値が測定光の波長によってもほとんど変化しないフラットな波長分散特性を示してもよい。
【0037】
位相差層20(積層構造を有する場合にはそれぞれの層)は、代表的には、屈折率特性がnx>ny=nzの関係を示す。なお、「ny=nz」はnyとnzが完全に等しい場合だけではなく、実質的に等しい場合を包含する。したがって、本発明の効果を損なわない範囲で、ny>nzまたはny<nzとなる場合があり得る。位相差層のNz係数は、好ましくは0.9~1.5であり、より好ましくは0.9~1.3である。
【0038】
上述のとおり、位相差層は、好ましくは液晶配向固化層である。上記液晶化合物としては、例えば、液晶相がネマチック相である液晶化合物(ネマチック液晶)が挙げられる。このような液晶化合物として、例えば、液晶ポリマーや液晶モノマーが使用可能である。液晶化合物の液晶性の発現機構は、リオトロピックでもサーモトロピックでもどちらでもよい。液晶ポリマーおよび液晶モノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、組み合わせてもよい。
【0039】
液晶化合物が液晶モノマーである場合、当該液晶モノマーは、重合性モノマーおよび架橋性モノマーであることが好ましい。液晶モノマーを重合または架橋(すなわち、硬化)させることにより、液晶モノマーの配向状態を固定できるからである。液晶モノマーを配向させた後に、例えば、液晶モノマー同士を重合または架橋させれば、それによって上記配向状態を固定することができる。ここで、重合によりポリマーが形成され、架橋により3次元網目構造が形成されることとなるが、これらは非液晶性である。したがって、形成された位相差層は、例えば、液晶性化合物に特有の温度変化による液晶相、ガラス相、結晶相への転移が起きることはない。その結果、位相差層は、温度変化に影響されない、極めて安定性に優れた位相差層となる。
【0040】
液晶モノマーが液晶性を示す温度範囲は、その種類に応じて異なる。具体的には、当該温度範囲は、好ましくは40℃~120℃であり、さらに好ましくは50℃~100℃であり、最も好ましくは60℃~90℃である。
【0041】
上記液晶モノマーとしては、任意の適切な液晶モノマーが採用され得る。例えば、特表2002-533742(WO00/37585)、EP358208(US5211877)、EP66137(US4388453)、WO93/22397、EP0261712、DE19504224、DE4408171、およびGB2280445等に記載の重合性メソゲン化合物等が使用できる。このような重合性メソゲン化合物の具体例としては、例えば、BASF社の商品名LC242、Merck社の商品名E7、Wacker-Chem社の商品名LC-Sillicon-CC3767が挙げられる。液晶モノマーとしては、ネマチック性液晶モノマーが好ましい。
【0042】
A-3.表面保護フィルム
上記表面保護フィルムの基材は、任意の適切な材料で形成され得る。形成材料の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル系ポリマー;ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマー;ポリカーボネート系ポリマー;ポリメチルメタクリレート等の(メタ)アクリル系ポリマー;ポリノルボルネン等のシクロオレフィン系ポリマー;が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
表面保護フィルムの基材の厚みは、例えば10μm以上100μm以下であり、好ましくは15μm以上90μm以下であり、より好ましくは25μm以上80μm以下である。
【0044】
上記表面保護フィルムの粘着剤層としては、任意の適切な構成が採用され得る。具体例としては、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、エポキシ系粘着剤、およびポリエーテル系粘着剤が挙げられる。粘着剤のベース樹脂を形成するモノマーの種類、数、組み合わせおよび配合比、ならびに、架橋剤の配合量、反応温度、反応時間等を調整することにより、目的に応じた所望の特性を有する粘着剤を調製することができる。粘着剤のベース樹脂は、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。ベース樹脂は、好ましくはアクリル樹脂である(具体的には、粘着剤層は、好ましくはアクリル系粘着剤で構成される)。粘着剤層の厚みは、例えば5μm~15μmである。粘着剤層の25℃における貯蔵弾性率は、例えば1.0×105Pa~1.0×107Paである。
【0045】
表面保護フィルムの厚みは、例えば40μm以上であり、好ましくは50μm以上であり、より好ましくは60μm以上であり、さらに好ましくは70μm以上である。1つの実施形態においては、表面保護フィルムの厚みは、上記位相差層付偏光板の厚みよりも大きい。このような表面保護フィルムによれば、薄型の位相差層付偏光板を外部応力から十分に保護し得る。具体的には、得られる位相差層付偏光板に、外部応力により打痕等の外観上の不具合が生じるのを防止し得る。また、後述の積層体から剥離フィルムを剥離する際の作業性がさらに向上し得る。一方、表面保護フィルムの厚みは、好ましくは100μm以下である。
【0046】
A-4.粘着剤層
粘着剤層40の厚みは、好ましくは10μm~20μmである。粘着剤層40を構成する粘着剤の詳細については、上記表面保護フィルムに含まれる粘着剤層と同様である。
【0047】
A-5.剥離フィルム
上記剥離フィルムは、任意の適切なプラスチックフィルムで構成され得る。プラスチックフィルムの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルムが挙げられる。剥離フィルムは、セパレーターとして機能し得る。具体的には、剥離フィルムとして、表面が剥離剤でコートされたプラスチックフィルムが好ましく用いられる。剥離剤の具体例としては、シリコーン系剥離剤、フッ素系剥離剤、長鎖アルキルアクリレート系剥離剤が挙げられる。
【0048】
剥離フィルムの厚みは、40μm以上であり、好ましくは45μm以上である。このような剥離フィルムによれば、薄型の位相差層付偏光板(特に、粘着剤層40)を外部応力から保護し得る。具体的には、得られる位相差層付偏光板に、外部応力により打痕等の外観上の不具合が生じるのを防止し得る。一方、剥離フィルムの厚みは、好ましくは80μm以下である。
【0049】
A-6.剥離力の関係
偏光板10に対する表面保護フィルム30の剥離力Fpは、粘着剤層40に対する剥離フィルム50の剥離力Frよりも大きい。Frは、0.04N/25mm以下であり、好ましくは0.03N/25mm以下であり、より好ましくは0.02N/25mm以下である。このような剥離力の関係によれば、後述する画像表示パネルの製造工程における作業性を格段に向上させ得る。このような効果は、剥離フィルムの厚みが厚い場合において、顕著に得ることができる。具体的には、薄型の位相差層付偏光板はコシが低い傾向にあり、薄型の位相差層付偏光板に貼り合わせられた厚手(例えば、40μm以上)の剥離フィルムの剥離性は低くなりやすい。その結果、画像表示パネルの製造工程における作業性が低下し、歩留まりを低下させる一因となり得る。上記剥離力の関係を満足させることにより、薄型の位相差層付偏光板に厚手の剥離フィルムを貼り合わせた場合であっても、その剥離性に優れ得る。また、Fpは、0.1N/25mm以下であり、好ましくは0.07N/25mm以下であり、より好ましくは0.05N/25mm以下である。このような剥離力によれば、画像表示パネルの製造工程における作業性を格段に向上させ得る。具体的には、表面保護フィルムの剥離性に優れ得る。
【0050】
上記Frは、好ましくは0.005N/25mm以上であり、好ましくは0.01N/25mm以上である。上記Fpは、好ましくは0.02N/25mm以上であり、好ましくは0.03N/25mm以上である。なお、Frは、例えば、粘着剤層40の構成、剥離フィルム50の種類を、適宜、選択することで調整し得る。Fpは、例えば、表面保護フィルム30の種類を、適宜、選択することで調整し得る。
【0051】
A-7.積層体の作製
積層体100は、例えば、偏光板10と位相差層20とを積層して積層体前駆体を作製し、得られた積層体前駆体に表面保護フィルム30および剥離フィルム50を積層することにより得ることができる。
【0052】
偏光板10と位相差層20との積層は、例えば、これらをロール搬送しながら(いわゆるロールトゥロールにより)行われる。積層は、代表的には、基材に形成された液晶配向固化層を転写することにより行われる。図示例のように、位相差層が積層構造を有する場合には、それぞれの位相差層を偏光板に順次積層(転写)してもよいし、位相差層の積層物を偏光板に積層(転写)してもよい。
【0053】
上記転写は、例えば、活性エネルギー線硬化型接着剤を用いて行われる。活性エネルギー線硬化型接着剤の硬化後の厚み(接着剤層の厚み)は、例えば0.2μm~3.0μmであり、好ましくは0.4μm~2.0μmであり、より好ましくは0.6μm~1.5μmである。例えば、偏光板と位相差層との積層に用いられる接着剤(具体的には、活性エネルギー線硬化型接着剤の硬化時の収縮)に起因して、偏光板10と位相差層20とを積層して得られる積層体前駆体には反りが生じ得る。
【0054】
図2は、積層体前駆体の反りの状態の一例を示す断面図である。なお、
図2では、図を見やすくするために積層体前駆体の断面は、ハッチングを省略している。
図2に示す例では、積層体前駆体90には、偏光板10側に凸の反りが生じている。反りは、偏光板10(偏光子11)の吸収軸方向に沿って発生する傾向にある。
【0055】
偏光板10と位相差層20との積層は、水蒸気量が10.2g/m3以下の環境下で行われることが好ましい。積層における水蒸気量は、より好ましくは6.0g/m3~10.0g/m3であり、さらに好ましくは8.0g/m3~9.5g/m3である。水蒸気量がこのような範囲である環境下で積層を行うことにより、例えば、後述の加湿処理による効果が顕著なものとなる。積層におけるこのような水蒸気量は、例えば、温度18℃~25℃の範囲で相対湿度を温度に応じて変化させることにより実現され得る。水蒸気量は、例えば、温度が18℃である場合には、相対湿度を65%RH以下とすることにより実現され得;また例えば、温度が20℃である場合には、相対湿度を55%RH以下とすることにより実現され得;また例えば、温度が23℃である場合には、相対湿度を45%RH以下とすることにより実現され得る。なお、相対湿度の下限は、例えば30%RHであり得る。
【0056】
上述のとおり、積層体がその他の機能層(例えば、導電層、その他の位相差層)をさらに有する場合、機能層は、所定の位置に、任意の適切な方法で、積層または形成され得る。
【0057】
少なくとも偏光板10および位相差層20を含む積層体前駆体に対し、表面保護フィルム30および剥離フィルム50を積層する。ここで、表面保護フィルム30は、粘着剤層32が積層体前駆体側になるように配置される。剥離フィルム50は、粘着剤層40を介して積層体前駆体に積層される。こうして得られる積層体には、反り(例えば、剥離フィルム50側に凸の反り)が生じる場合がある。積層体の反りは、画像表示パネルの製造工程における作業性(例えば、後述の積層体から剥離フィルムを剥離する際の作業性)に影響し得る。積層体の反りは、7%以下であることが好ましく、より好ましくは5%以下であり、さらに好ましくは3%以下である。反り(%)の測定方法については、後述する。
【0058】
B.画像表示パネルの製造方法
代表的には、上記積層体は、画像表示パネルの製造に用いられる。
図3A~
図3Eは、1つの実施形態に係る画像表示パネルの製造工程例を示す図である。なお、
図3A~
図3Eにおいては、偏光板10、位相差層20および粘着剤層40の積層構造を位相差層付偏光板110として簡略化して記載している。
【0059】
図3Aは、積層体100から剥離フィルム50を剥がす状態を示している。吸着板Aに吸着された積層体100の最下面(剥離フィルム50)に剥離用テープT1を貼り付けた後、剥離フィルム50の端部から180°の方向に(矢印の方向に)、剥離用テープT1を引っ張ることで、積層体100から剥離フィルム50を剥がしている。上述のとおり、偏光板10に対する表面保護フィルム30の剥離力Fpは、粘着剤層40に対する剥離フィルム50の剥離力Frよりも大きく、Frは、0.04N/25mm以下である。このような関係を満足することにより、剥離フィルム50の剥離性に優れ得る。具体的には、積層体100から剥離フィルム50を剥がす際に、位相差層付偏光板110が表面保護フィルム30から剥がれることを防止することができる。
【0060】
図3Bは、剥離フィルム50を剥がした積層体100を、吸着板Bに吸着された画像表示パネル(例えば、有機ELパネル)本体70表面に貼り合わせた状態を示し、
図3Cは、画像表示パネル本体70に積層体100を貼り合わせた後、吸着板Aを積層体100から離した状態を示している。
【0061】
図3Dは、積層体100から表面保護フィルム30を剥がす状態を示している。画像表示パネル本体70表面に貼り合わせられた積層体100の最上面(表面保護フィルム30)に剥離用テープT2を貼り付けた後、表面保護フィルム30の端部から180°の方向に(矢印の方向に)、剥離用テープT2を引っ張ることで、積層体100から表面保護フィルム30を剥がしている。上述のとおり、Fpは、0.1N/25mm以下である。このような関係を満足することにより、表面保護フィルム30の剥離性に優れ得る。具体的には、積層体100から表面保護フィルム30を剥がす際に、表面保護フィルム30が積層体100から剥がれずに、吸着板Bから画像表示パネル本体70が脱落するのを防止することができる。こうして、
図3Eに示す画像表示パネル80を得る。具体的には、画像表示パネル本体70に位相差層付偏光板110が貼り合わせられた画像表示パネル80を得る。
【実施例0062】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、厚みは下記の測定方法により測定した値である。また、特に明記しない限り、実施例および比較例における「部」および「%」は重量基準である。
<厚み>
10μm以下の厚みは、走査型電子顕微鏡(日本電子社製、製品名「JSM-7100F」)を用いて測定した。10μmを超える厚みは、デジタルマイクロメーター(アンリツ社製、製品名「KC-351C」)を用いて測定した。
【0063】
[実施例1]
(偏光板の作製)
熱可塑性樹脂基材として、長尺状で、Tg約75℃である、非晶質のイソフタル共重合ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み:100μm)を用い、この樹脂基材の片面に、コロナ処理を施した。
ポリビニルアルコール(重合度4200、ケン化度99.2モル%)およびアセトアセチル変性PVA(日本合成化学工業社製、商品名「ゴーセファイマー」)を9:1で混合したPVA系樹脂100重量部に、ヨウ化カリウム13重量部を添加したものを水に溶かし、PVA水溶液(塗布液)を調製した。
樹脂基材のコロナ処理面に、上記PVA水溶液を塗布して60℃で乾燥することにより、厚み13μmのPVA系樹脂層を形成し、積層体を作製した。
得られた積層体を、130℃のオーブン内で縦方向(長手方向)に2.4倍に一軸延伸した(空中補助延伸処理)。
次いで、積層体を、液温40℃の不溶化浴(水100重量部に対して、ホウ酸を4重量部配合して得られたホウ酸水溶液)に30秒間浸漬させた(不溶化処理)。
次いで、液温30℃の染色浴(水100重量部に対して、ヨウ素とヨウ化カリウムを1:7の重量比で配合して得られたヨウ素水溶液)に、最終的に得られる偏光子の単体透過率(Ts)が所望の値となるように濃度を調整しながら60秒間浸漬させた(染色処理)。
次いで、液温40℃の架橋浴(水100重量部に対して、ヨウ化カリウムを3重量部配合し、ホウ酸を5重量部配合して得られたホウ酸水溶液)に30秒間浸漬させた(架橋処理)。
その後、積層体を、液温70℃のホウ酸水溶液(ホウ酸濃度4重量%、ヨウ化カリウム濃度5重量%)に浸漬させながら、周速の異なるロール間で縦方向(長手方向)に総延伸倍率が5.5倍となるように一軸延伸を行った(水中延伸処理)。
その後、積層体を液温20℃の洗浄浴(水100重量部に対して、ヨウ化カリウムを4重量部配合して得られた水溶液)に浸漬させた(洗浄処理)。
その後、約90℃に保たれたオーブン中で乾燥しながら、表面温度が約75℃に保たれたSUS製の加熱ロールに接触させた(乾燥収縮処理)。
このようにして、樹脂基材上に厚み約5μmの偏光子を形成し、樹脂基材/偏光子の構成を有する積層体を得た。
【0064】
得られた積層体の偏光子側に、紫外線硬化型接着剤を介して、アクリル系フィルム(厚み20μm)を保護層として貼り合わせた。次いで、偏光子から樹脂基材を剥離してアクリル系フィルム(保護層)/偏光子の構成を有する偏光板を得た。
【0065】
(位相差層の作製)
ネマチック液晶相を示す重合性液晶(BASF社製:商品名「Paliocolor LC242」、下記式で表される)10gと、当該重合性液晶化合物に対する光重合開始剤(BASF社製:商品名「イルガキュア907」)3gとを、トルエン40gに溶解して、液晶組成物(塗工液)を調製した。
【化1】
【0066】
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚み38μm)表面を、ラビング布を用いてラビングし、配向処理を施した。配向処理の方向は、偏光板に貼り合わせる際に偏光子の吸収軸の方向に対して視認側から見て15°方向となるようにした。この配向処理表面に、上記液晶塗工液をバーコーターにより塗工し、90℃で2分間加熱乾燥することによって液晶化合物を配向させた。このようにして形成された液晶層に、メタルハライドランプを用いて1mJ/cm2の光を照射し、当該液晶層を硬化させることによって、PETフィルム上に液晶配向固化層A(H層)を形成した。液晶配向固化層Aの厚みは2.5μm、面内位相差Re(550)は270nmであった。さらに、液晶配向固化層Aは、nx>ny=nzの屈折率特性を示した。
【0067】
塗工厚みを変更したこと、および、配向処理方向を偏光子の吸収軸の方向に対して視認側から見て75°方向となるようにしたこと以外は上記と同様にして、PETフィルム上に液晶配向固化層B(Q層)を形成した。液晶配向固化層Bの厚みは1.5μm、面内位相差Re(550)は140nmであった。さらに、液晶配向固化層Bは、nx>ny=nzの屈折率特性を示した。
【0068】
(積層体の作製)
得られた偏光板の偏光子側に、得られた液晶配向固化層A(H層)および液晶配向固化層B(Q層)をこの順に転写した。このとき、偏光子の吸収軸と配向固化層Aの遅相軸とのなす角度が15°、偏光子の吸収軸と配向固化層Bの遅相軸とのなす角度が75°になるようにして転写(貼り合わせ)を行った。液晶配向固化層A(H層)の転写は、紫外線硬化型接着剤(厚み0.5μm)を介して行った。液晶配向固化層B(Q層)の転写は、紫外線硬化型接着剤(厚み1.5μm)を介して行った。こうして、積層体前駆体を得た。なお、転写は、ロール搬送しながら行った。さらに、転写は、水蒸気量が9.3g/m3の環境下(23℃および45%RH)で行った。
【0069】
得られた積層体前駆体の偏光板の保護層側に、厚み90μmの表面保護フィルム(藤森工業社製、「PPF-911」、基材(PET)の厚み75μm、粘着剤層の厚み15μm)を、ロール搬送しながら貼り合わせた。さらに、積層体前駆体の液晶配向固化層B(Q層)側に、厚み50μmの剥離フィルム(三菱ケミカル社製、「MHE50」、PET系フィルム)を、ロール搬送しながらアクリル系粘着剤層(厚み15μm)を介して貼り合わせ、積層体を得た。
得られた積層体の偏光板から粘着剤層までの積層部分の厚み(位相差層付偏光板の厚み)は46μmであった。
【0070】
[実施例2]
積層体前駆体の偏光板の保護層側に、厚み48μmの表面保護フィルム(日東電工社製、「RP109F」、基材(PET)の厚み38μm、粘着剤層の厚み10μm)を貼り合わせたこと以外は実施例1と同様にして、積層体を得た。
【0071】
[実施例3]
表面保護フィルムを貼り合わせる際に表面保護フィルムに加える張力を変更したこと以外は実施例1と同様にして、積層体を得た。
【0072】
[比較例1]
積層体前駆体の液晶配向固化層B(Q層)側に、厚み38μmの剥離フィルム(三菱ケミカル社製、「MHE38」、PET系フィルム)を貼り合わせたこと以外は実施例1と同様にして、積層体を得た。
【0073】
[比較例2]
積層体前駆体の液晶配向固化層B(Q層)側に、厚み50μmの剥離フィルム(三菱ケミカル社製、「MRF50」、PET系フィルム)を貼り合わせたこと以外は実施例1と同様にして、積層体を得た。
【0074】
[比較例3]
積層体前駆体の偏光板の保護層側に、厚み48μmの表面保護フィルム(日東電工社製、「RP1010M」、基材(PET)の厚み38μm、粘着剤層の厚み10μm)を貼り合わせたこと以外は実施例1と同様にして、積層体を得た。
【0075】
<評価>
1.剥離力
得られた積層体を幅25mm、長さ50mmのサイズに切り出したサンプルを、23℃×50%RHの環境下に30分以上放置した後、万能引張試験機にて剥離速度300mm/分、剥離角度180°で長さ方向に剥離したときの剥離力(N/25mm)を測定した。具体的には、粘着剤層に対する剥離フィルムの剥離力Frおよび偏光板に対する表面保護フィルムの剥離力Fpを測定した。なお、測定は23℃×50%RHの環境下で行った。
2.反り
得られた積層体から171mm×127mmのサイズの試験片を切り出した。このとき、偏光子の吸収軸方向が長辺方向となるように切り出した。平面上に、切り出した試験片を、その剥離フィルム側が平面側となるように静置した時の、平面から最も高い部分の高さを測定し、反り量を求めた。ここで、反りが静置面側に凸である場合を「負(-)」、静置面と反対側に凸である場合を「正(+)」とした。なお、表1に示す値は、反り量(mm)/長辺(171mm)×100により求めた値である。
3.剥離試験
得られた積層体を171mm×127mmのサイズに切断し、枚葉状の積層体を得た。このとき、偏光子の吸収軸方向が長辺に対して45°の方向となるように切断した。
図3に示すように、得られた枚葉状の積層体から剥離フィルムおよび表面保護フィルムを剥がして、有機ELパネル本体に位相差層付偏光板を貼り合わせ、剥離不良の発生の有無を確認した。
【0076】
【0077】
積層体に負の反り(例えば、1%以上)が発生している状態においても、各実施例においては剥離性に優れ得ることがわかる。
比較例1の積層体においては、位相差層と剥離フィルムとの間に配置された粘着剤層(糊)に打痕が多数確認された。
比較例2では、剥離フィルムの剥離の際に、剥離フィルムが粘着剤層から剥がれずに、表面保護フィルムと偏光板との間で剥離が生じた。比較例3では、表面保護フィルムの剥離の際に、表面保護フィルムが偏光板から剥がれず、有機ELパネル本体が吸着板から脱落した。
本発明の1つの実施形態に係る積層体から得られる位相差層付偏光板は、画像表示装置の位相差層付偏光板として用いられ、特に、湾曲した、あるいは、屈曲、折り畳み、または巻き取り可能な画像表示装置に好適に用いられ得る。画像表示装置としては、代表的には、液晶表示装置、有機EL表示装置、無機EL表示装置が挙げられる。