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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011109
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】排ガス浄化システム
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/28 20060101AFI20240118BHJP
   F01N 3/24 20060101ALI20240118BHJP
   F01N 3/22 20060101ALI20240118BHJP
   F01N 3/035 20060101ALI20240118BHJP
   F02D 9/02 20060101ALI20240118BHJP
   F02D 41/04 20060101ALI20240118BHJP
   F02D 45/00 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
F01N3/28 301P
F01N3/24 E
F01N3/24 B
F01N3/28 301G
F01N3/28 301B
F01N3/22 321L
F01N3/035 A
F02D9/02 R
F02D41/04
F02D45/00 369
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022112841
(22)【出願日】2022-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000104607
【氏名又は名称】株式会社キャタラー
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 幸司
(72)【発明者】
【氏名】仲東 聖次
(72)【発明者】
【氏名】池部 雅俊
(72)【発明者】
【氏名】太田 貴也
(72)【発明者】
【氏名】森島 毅
(72)【発明者】
【氏名】原田 瑛志
【テーマコード(参考)】
3G065
3G091
3G190
3G301
3G384
【Fターム(参考)】
3G065CA12
3G065EA05
3G065GA05
3G065GA08
3G065GA10
3G065GA18
3G065GA46
3G091AB03
3G091AB13
3G091BA19
3G091CB02
3G091CB07
3G091EA17
3G091EA32
3G091EA34
3G091GA06
3G091GB06W
3G091HA36
3G091HA37
3G091HA42
3G190BA17
3G190CA03
3G190CB16
3G190CB18
3G190CB24
3G190CB34
3G190CB35
3G190EA14
3G190EA23
3G190EA32
3G301HA01
3G301JA26
3G301KA26
3G301LA01
3G301NE01
3G301NE06
3G301PA01Z
3G301PB03Z
3G301PD09Z
3G301PD11Z
3G301PD14Z
3G301PE01Z
3G301PE03Z
3G301PF03Z
3G384AA01
3G384BA05
3G384BA34
3G384CA21
3G384DA14
3G384EB01
3G384EB02
3G384FA01Z
3G384FA06Z
3G384FA14Z
3G384FA42Z
3G384FA45Z
3G384FA46Z
3G384FA47Z
3G384FA56Z
3G384FA58Z
(57)【要約】
【課題】COが排出されることを抑制できる排ガス浄化システムを提供することにある。
【解決手段】本発明の排ガス浄化システムは、内燃機関に接続された排気流路の上流側及び下流側にそれぞれ配置された三元触媒及びパティキュレートフィルタと、内燃機関の減速運転時にフューエルカットを実行するように内燃機関を制御する制御装置と、を備え、パティキュレートフィルタは、ハニカム基材と流出セル側触媒層とを備え、ハニカム基材は、流入側端面から流出側端面まで延びる複数のセルを画成する多孔質の隔壁を有し、複数のセルは、隔壁を挟んで隣接する流入セル及び流出セルを含み、流入セルは、流入側端が開口し、流出側端が封止され、流出セルは、流入側端が封止され、流出側端が開口し、流出セル側触媒層は、隔壁の流出側端から延伸方向に沿って流入側に離れた位置まで延在する流出セル側触媒領域に設けられることを特徴とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関に接続された排気流路の上流側及び下流側にそれぞれ配置された三元触媒及びパティキュレートフィルタと、前記内燃機関の減速運転時にフューエルカットを実行するように前記内燃機関を制御する制御装置と、を備える排ガス浄化システムであって、
前記パティキュレートフィルタは、ハニカム基材と流出セル側触媒層とを備え、
前記ハニカム基材は、流入側端面から流出側端面まで延びる複数のセルを画成する多孔質の隔壁を有し、
前記複数のセルは、前記隔壁を挟んで隣接する流入セル及び流出セルを含み、
前記流入セルは、流入側端が開口し、流出側端が封止され、
前記流出セルは、流入側端が封止され、流出側端が開口し、
前記流出セル側触媒層は、前記隔壁の流出側端から延伸方向に沿って流入側に離れた位置まで延在する流出セル側触媒領域における前記流出セル側の表面上及び前記流出セル側の内部領域の少なくとも一方に設けられることを特徴とする排ガス浄化システム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記フューエルカットの実行中にスロットル弁の開度を前記内燃機関の前記減速運転時の目標開度より大きくすることを特徴とする請求項1に記載の排ガス浄化システム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記フューエルカットの実行中において、前記スロットル弁の前記開度を前記目標開度より大きくした後に、前記パティキュレートフィルタに堆積する粒子状物質の堆積量を推定し、前記粒子状物質の前記堆積量が予め設定した目標堆積量以下となった時に前記スロットル弁の前記開度を小さくすることを特徴とする請求項2に記載の排ガス浄化システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関に接続された排気流路の上流側及び下流側にそれぞれ配置された三元触媒及びパティキュレートフィルタを備える排ガス浄化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等における内燃機関から排出される排ガスには、大気汚染の原因となる炭素を主成分とする粒子状物質(PM:Particulate Matter、以下では「PM」と略すことがある。)や不燃成分であるアッシュ等が含まれている。PMを排ガスから捕集して除去するためのフィルタとして、ウォールフロー構造のフィルタが広く用いられている。
【0003】
ウォールフロー構造のフィルタは、通常、ハニカム基材を備え、ハニカム基材が流入側端面から流出側端面まで延びる複数のセルを画成する多孔質の隔壁を有し、複数のセルが隔壁を挟んで隣接する流入セル及び流出セルを含んでいる。そして、流入セルは、流入側端が開口し、流出側端が封止され、流出セルは、流入側端が封止され、流出側端が開口している。このため、流入セルに流入側端から流入した排ガスは隔壁を透過することで流出セルに流入し、流出セルの流出側端から排出される。そして、排ガスが隔壁を透過する時に、PMが隔壁に存在する空隙に堆積される。ウォールフロー構造のフィルタとしては、例えば、ガソリンエンジン用のガソリンパティキュレートフィルタ(以下、「GPF」と略すことがある。)やディーゼルエンジン用のディーゼルパティキュレートフィルタ(以下、「DPF」と略すことがある。)等が知られている。
【0004】
一方、排ガスには、PMの他に、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、窒素酸化物(NOx)等の有害成分が含まれている。有害成分は、貴金属触媒等の触媒を塗布したフィルタによって排ガスから除去できる。GPFやDPF等のパティキュレートフィルタとしては、ウォールフロー構造のフィルタに触媒が塗布されていない非コート型のフィルタ他に、PM及び有害成分の両方を排ガスから除去するためにフィルタに触媒が塗布されたコート型のフィルタが知られている。
【0005】
コート型のフィルタとして、例えば、特許文献1に記載された触媒品が知られている。この触媒品は、通路(セル)を境界付け及び画定する縦方向に延在する孔壁(隔壁)と、吸気端(流入側端)と排気端(流出側端)との間を延在する軸長とにより形成された複数の縦方向に延在する吸気通路(流入セル)及び排気通路(流出セル)を含む通路とを有する壁流フィルタを備える触媒品であって、上記孔壁内に配置されたSCR触媒組成物と、上記排気端から延在し、上記壁流フィルタの軸長よりも短い長さである上記排気通路の壁に配置された酸化触媒とをさらに備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016-211582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
世界の各地域で排ガス規制が強化される中で、PMの排出重量の規制値に加えて、PMの排出個数(PN:Particulate Number、以下では「PN」と略すことがある。)の規制値についても、厳しい値が設定されるようになっている。特に欧州における次期の排ガス規制と想定されるEuro7では、95%以上のPMの捕集率が求められる見込みとなっている。
【0008】
上述したように、GPFやDPF等のウォールフロー構造のフィルタには、触媒が塗布されていない非コート型と、触媒が塗布されたコート型とが知られているが、非コート型のフィルタの方が、コート型よりもPMの捕集率が高くなる。このため、将来のPMの排出規制の強化に対しては、非コート型のフィルタの方が有用と想定される。一方、非コート型のフィルタでは、隔壁に溜まったPMが燃焼する際に不完全燃焼が起こることで、一酸化炭素(CO)が排出される問題がある。
【0009】
本発明は、このような点を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、一酸化炭素(CO)が排出されることを抑制できる排ガス浄化システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決すべく、本発明の排ガス浄化システムは、内燃機関に接続された排気流路の上流側及び下流側にそれぞれ配置された三元触媒及びパティキュレートフィルタと、上記内燃機関の減速運転時にフューエルカットを実行するように上記内燃機関を制御する制御装置と、を備える排ガス浄化システムであって、上記パティキュレートフィルタは、ハニカム基材と流出セル側触媒層とを備え、上記ハニカム基材は、流入側端面から流出側端面まで延びる複数のセルを画成する多孔質の隔壁を有し、上記複数のセルは、上記隔壁を挟んで隣接する流入セル及び流出セルを含み、上記流入セルは、流入側端が開口し、流出側端が封止され、上記流出セルは、流入側端が封止され、流出側端が開口し、上記流出セル側触媒層は、上記隔壁の流出側端から延伸方向に沿って流入側に離れた位置まで延在する流出セル側触媒領域における上記流出セル側の表面上及び上記流出セル側の内部領域の少なくとも一方に設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の排ガス浄化システムによれば、一酸化炭素(CO)が排出されることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施形態に係る排ガス浄化システムが適用された内燃機関の吸排気システムの構成を概略的に示す図である。
図2】第1実施形態に係るGPFを概略的に示す斜視図である。
図3】第1実施形態に係るGPFにおけるセルの延伸方向に平行な断面の要部を概略的に示す断面図である。
図4】第1実施形態に係るフューエルカットの制御方法の一例におけるフューエルカットの実行を開始する際の処理ルーチンを概略的に示すフローチャートである。
図5】第1実施形態に係るフューエルカットの制御方法の一例におけるフューエルカットの実行中の時点から終了まで処理ルーチンを概略的に示すフローチャートである。
図6】第1実施形態に係るフューエルカットの制御方法の一例の処理ルーチンを実行した際の各パラメータの概略的なタイムチャートである。
図7】(a)~(d)は、それぞれ実施例1~4に係るGPFにおけるセルの延伸方向に平行な断面の要部を概略的に示す断面図である。
図8】(a)~(c)は、それぞれ比較例1~3に係るGPFにおけるセルの延伸方向に平行な断面の要部を概略的に示す断面図である。
図9】上側が実施例1~4並びに比較例2及び3のフューエルカットの実行開始前から実行終了後の間におけるGPF80Uの入りガスのCO濃度の推移を示すグラフであり、下側が実施例1~4並びに比較例1~3のフューエルカットの実行開始前から実行終了後の間におけるGPF80Uの出ガスのCO濃度の推移を示すグラフである。
図10】実施例1~4並びに比較例1~3の排ガス浄化システムのフューエルカットの実行開始前から実行終了後の間におけるGPF80Uの出ガスのCO濃度のピーク値を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の排ガス浄化システムに係る実施形態について説明する。
実施形態に係る排ガス浄化システムは、内燃機関に接続された排気流路の上流側及び下流側にそれぞれ配置された三元触媒及びパティキュレートフィルタと、上記内燃機関の減速運転時にフューエルカットを実行するように上記内燃機関を制御する制御装置と、を備える排ガス浄化システムであって、上記パティキュレートフィルタは、ハニカム基材と流出セル側触媒層とを備え、上記ハニカム基材は、流入側端面から流出側端面まで延びる複数のセルを画成する多孔質の隔壁を有し、上記複数のセルは、上記隔壁を挟んで隣接する流入セル及び流出セルを含み、上記流入セルは、流入側端が開口し、流出側端が封止され、上記流出セルは、流入側端が封止され、流出側端が開口し、上記流出セル側触媒層は、上記隔壁の流出側端から延伸方向に沿って流入側に離れた位置まで延在する流出セル側触媒領域における上記流出セル側の表面上及び上記流出セル側の内部領域の少なくとも一方に設けられることを特徴とする。
【0014】
実施形態において、「流入側」とは、三元触媒及びパティキュレートフィルタにおいて排ガスが流入する側を指し、「流出側」とは、三元触媒及びパティキュレートフィルタにおいて排ガスが流出する側を指す。また、「隔壁の延伸方向」とは、隔壁が延びる方向を指す。さらに、ハニカム基材の軸方向は、通常、隔壁の延伸方向と略同一であり、セルの延伸方向(セルが延びる方向)は、通常、隔壁の延伸方向と略同一である。なお、以下の実施形態の説明において、「延伸方向」とは、隔壁の延伸方向であって、ハニカム基材の軸方向及びセルの延伸方向と略同一の方向を指す。
【0015】
[第1実施形態]
最初に、実施形態に係る排ガス浄化システムの概略について、第1実施形態に係る排ガス浄化システムを例示して説明する。
【0016】
〔排ガス浄化システムの構成〕
第1実施形態に係る排ガス浄化システムの構成について説明する。図1は、第1実施形態に係る排ガス浄化システムが適用された内燃機関の吸排気システムの構成を概略的に示す図である。
【0017】
図1に示すように、第1実施形態に係る排ガス浄化システム110は、内燃機関50の吸排気システム100で機能するものである。内燃機関50は、例えば、車両駆動用のガソリンエンジンである。内燃機関50の吸排気システム100において、内燃機関50には吸気流路60及び排気流路70が接続されている。吸気流路60において、上流側にはエアフローメータ62が設けられている。エアフローメータ62より下流側にはスロットル弁64が設けられている。スロットル弁64より下流側には圧力センサ66が設けられている。エアフローメータ62は、内燃機関50の吸入空気流量を検出する。スロットル弁64は、その開度Dthを制御することで吸気流路60の流路断面積を変更して内燃機関50の流入する空気量を制御する。圧力センサ66は、吸気流路60のスロットル弁64よりも下流側の吸気圧力Pinを検出する。
【0018】
排気流路70において、内燃機関50の直下(上流側)には三元触媒80Sが設けられ、三元触媒80Sの下流側にはGPF(ガソリンパティキュレートフィルタ)80Uが設けられている。
【0019】
また、排気流路70において、三元触媒80Sより上流側には、上流側空燃比センサ72及び酸素濃度センサ73が設けられている。三元触媒80Sより下流側には、下流側空燃比センサ74が設けられている。GPF80Uの上流側には温度センサ76が設けられている。上流側空燃比センサ72は、三元触媒80Sに流入するガスの空燃比A/Fを検出する。酸素濃度センサ73は、そのガスの酸素濃度を検出する。下流側空燃比センサ74は、三元触媒80Sから流出するガスの空燃比A/Fを検出する。温度センサ76は、GPF80Uに流入するガスの温度、及びGPF80Uの床温を検出する。
【0020】
さらに、排気流路70において、GPF80Uの前後の差圧を検出する差圧センサ78が設けられている。差圧センサ78は、排気流路70におけるGPF80Uよりも上流側の圧力とGPF80Uよりも下流側の圧力との差圧を検出する。
【0021】
内燃機関50の吸排気システム100には、内燃機関50が電気的に接続され、内燃機関50を制御する電子制御ユニット(以下、「ECU」と略すことがある。)40が併設されている。ECU40には、エアフローメータ62、圧力センサ66、上流側空燃比センサ72、酸素濃度センサ73、下流側空燃比センサ74、温度センサ76、及び差圧センサ78が電気的に接続されている。さらに、ECU40には、クランク角センサ41及びアクセル開度センサ42が電気的に接続されている。クランク角センサ41は、内燃機関50のクランク角に相関のある信号を出力する。アクセル開度センサ42は、内燃機関50が搭載された車両のアクセル開度Daccに相関のある信号を出力する。これらのセンサの検出値は、ECU40に入力される。
【0022】
ECU40は、クランク角センサ41の検出値に基づいて内燃機関50の機関回転速度NRを導出する。また、ECU40は、アクセル開度センサ42の検出値に基づいて、アクセル開度Daccを求め、内燃機関50の機関負荷LEを導出する。また、ECU40には、内燃機関50の燃料噴射弁(図示略)及びスロットル弁64が電気的に接続されている。ECU40によって、これらの装置が制御される。
【0023】
排ガス浄化システム110は、排気流路70の上流側及び下流側にそれぞれ配置された三元触媒80S及びGPF80Sと、ECU(制御装置)40と、を備える排ガス浄化システムである。ECU40は、内燃機関50の減速運転時にフューエルカットを実行するように内燃機関50を制御する。
【0024】
〔三元触媒及びGPFの構成〕
第1実施形態に係る三元触媒80S及びGPF80Uについてさらに詳しく説明する。図2は、第1実施形態に係るGPFを概略的に示す斜視図であり、図3は、第1実施形態に係るGPFにおけるセルの延伸方向に平行な断面の要部を概略的に示す断面図である。
【0025】
三元触媒80Sは、酸素吸蔵放出性能を有する触媒であり、排ガス中のHC、CO、及びNOを酸化あるいは還元する。三元触媒80Sは、図示しないが、モノリス基材と、触媒層とを備えている。モノリス基材は、円筒形の枠部と枠部の内側の空間をハニカム状に仕切る隔壁とが一体形成された基材である。モノリス基材の隔壁は、モノリス基材の流入側端面から流出側端面まで延びる複数のセルを画成する多孔質体である。隔壁の形状は、複数のセルの延伸方向に垂直な断面が正方形等の形状になるように、互いに離間して平行に配置される複数の壁部と、これらの複数の壁部と交わりかつ互いに離間して平行に配置される他の複数の壁部とを含み、延伸方向に垂直な断面が格子状となっている。複数のセルは、隔壁を挟んで隣接し、流入側端及び流出側端の両方が開口している。触媒層は、モノリス基材の隔壁におけるセル内の壁面に設けられ、壁面を被覆する多孔質担体と、多孔質担体に担持された触媒金属粒子とを含んでいる。
【0026】
GPF80Uは、PMを排ガスから捕集して除去するためのウォールフロー構造のフィルタに触媒が塗布されたコート型のフィルタであり、具体的には、図2及び図3に示すように、ハニカム基材10と、封止部16と、流出セル側触媒層30とを備えている。
【0027】
図2及び図3に示すように、ハニカム基材10は、円筒形の枠部11と枠部11の内側の空間をハニカム状に仕切る隔壁14とが一体形成された基材である。隔壁14は、ハニカム基材10の流入側端面10Saから流出側端面10Sbまで延びる複数のセル12を画成する多孔質体である。隔壁14の形状は、複数のセル12の延伸方向に垂直な断面が正方形になるように、互いに離間して平行に配置される複数の壁部14Aと、これらの複数の壁部14Aと直交しかつ互いに離間して平行に配置される複数の壁部14Bとを含み、延伸方向に垂直な断面が格子状となっている。
【0028】
複数のセル12は、隔壁14を挟んで隣接する流入セル12A及び流出セル12Bを含んでいる。流入セル12Aは、流入側端12Aaが開口し、流出側端12Abが封止部16により封止されており、流出セル12Bは、流入側端12Baが封止部16により封止され、流出側端12Bbが開口している。流入セル12A及び流出セル12Bの延伸方向に垂直な断面形状は、矩形となっている。
【0029】
図3に示すように、流出セル側触媒層30は、隔壁14の流出側端14dから延伸方向に沿って流入側に隔壁14の延伸方向の長さの52%の距離離れた位置14eまで延在する流出セル側触媒領域14Yにおける流出セル12B側の表面14SB上に設けられている。なお、図示しないが、流出セル側触媒層30は、隔壁14の流出セル側触媒領域14Yにおける流出セル12B側の内部領域14NBに存在する空隙にも設けられている。流出セル側触媒層30は、大部分が隔壁14の表面14SB上に設けられ、残部が隔壁14の内部領域14NBの空隙に設けられている。流出セル側触媒層30は、担体と、担体に担持された白金(Pt)を含有する触媒金属粒子とを含んでいる。
【0030】
〔フューエルカットの制御方法〕
第1実施形態に係る排ガス浄化システム110において、ECU(制御装置)40が内燃機関50の減速運転時にフューエルカットを実行するように内燃機関50を制御する時に行う制御の方法(以下、「フューエルカットの制御方法」と略すことがある。)の一例について説明する。以下では、フューエルカットの制御方法の一例の処理ルーチンを概略的に説明した後に、フューエルカットの制御方法の一例の処理ルーチンでの各パラメータのタイムチャートを概略的に説明する。
【0031】
(処理フロー)
図4は、第1実施形態に係るフューエルカットの制御方法の一例におけるフューエルカットの実行を開始する際の処理ルーチンを概略的に示すフローチャートである。図4に示される処理ルーチンは内燃機関の運転中にECUにより行われる。
【0032】
図4に示される処理ルーチンでは、まず、ステップS101において、ECU40は、内燃機関50が減速運転中であるか否かを判定する。例えば、機関回転速度NRが所定回転速度NRtより大きい状態においてアクセル開度Daccが0である場合に内燃機関50が減速運転中であると判定し、この状態においてアクセル開度Daccが0より大きい場合に内燃機関50が減速運転中ではないと判定する。なお、所定回転速度NRtは、例えば、内燃機関50のアイドル運転時の機関回転速度(アイドル回転速度)に所定のマージンを加算した機関回転速度である。ステップS101の処理において否定判定された場合、フューエルカットを実行する必要がないため、ECU40は、本処理ルーチンの実行を一旦終了する。一方、肯定判定された場合、ECU40は、ステップS102の処理へ進む。
【0033】
次のステップS102において、ECU40は、スロットル弁64の開度Dthを内燃機関50の減速運転時の目標開度(以下、「減速時目標開度」と略すことがある。)Dthtまで小さくする。なお、減速時目標開度Dthtは、例えば、内燃機関50のアイドル運転時の機関回転速度(アイドル回転速度)に対応するスロットル開度として予め設定された値である。
【0034】
次のステップS103において、ECU40は、圧力センサ66により検出される吸気流路60のスロットル弁64よりも下流側の吸気圧力Pinが、減速時目標開度Dthtに対応する減速時目標圧力Pintまで低下したか否かを判定する。ステップS103の処理は、肯定判定されるまで繰り返される。ステップS103の処理において肯定判定された場合、ECU40は、ステップS104の処理へ進む。
【0035】
次のステップS104において、ECU40は、フューエルカットフラグ(F/Cフラグ)をONにして、内燃機関50での燃料噴射弁からの燃料噴射を停止することでフューエルカットの実行を開始する。
【0036】
次のステップS105において、ECU40は、スロットル弁64の開度Dthを減速時目標開度Dthtから所定量だけ増加させた開度(以下、「F/C時増加開度」と略すことがある。)Dthfまで大きくする。
【0037】
続いて、図5は、第1実施形態に係るフューエルカットの制御方法の一例におけるフューエルカットの実行中の時点から終了まで処理ルーチンを概略的に示すフローチャートである。図5に示される処理ルーチンはフューエルカットの実行中にECUにより行われる。
【0038】
図5に示される処理ルーチンでは、まず、ステップS201において、ECU40は、内燃機関50が減速運転を終了するか否かを判定する。具体的には、アクセル開度Daccが0より大きくなった場合に内燃機関50が減速運転を終了すると判定し、そうでない場合に内燃機関50が減速運転を継続すると判定する。ステップS201の処理において肯定判定された場合、ECU40は、ステップS211の処理へ進む。一方、否定判定された場合、ECU40は、ステップS221の処理へ進む。
【0039】
ステップS211の処理へ進む場合、次のステップS211において、ECU40は、スロットル弁64の開度Dthを、0より大きくなったアクセル開度Daccに応じた機関負荷LEに対応する目標開度(以下、「負荷対応目標開度」と略すことがある。)Dtheまで大きくする。次のステップS212において、ECU40は、F/CフラグをOFFにして、内燃機関50での燃料噴射弁からの燃料噴射を再開することでフューエルカットの実行を終了する。その後、本処理ルーチンの実行を一旦終了する。
【0040】
一方、ステップS221の処理へ進む場合、次のステップS221において、ECU40は、差圧センサ78により検出されるGPF80Uの前後の差圧Pudに基づいて、GPF80Uに堆積するPM(粒子状物質)の堆積量Apmを推定する。
【0041】
次のステップS222において、ECU40は、ステップS221の処理で推定されたPMの堆積量Apmが予め設定した目標堆積量Apmt以下となったか否かを判定する。ステップS222の処理において否定判定された場合、ECU40は、ステップS223の処理へ進まずにステップS201の処理に戻る。一方、肯定判定された場合、ECU40は、ステップS223の処理へ進む。
【0042】
次のステップS223において、ECU40は、スロットル弁64の開度DthをF/C時増加開度Dthfから内燃機関50の減速運転時の減速時目標開度Dthtまで小さくする。その後、ECU40は、ステップS201の処理に戻る。
【0043】
(タイムチャート)
図6は、第1実施形態に係るフューエルカットの制御方法の一例の処理ルーチンを実行した際の各パラメータの概略的なタイムチャートである。
【0044】
図6に示されるタイムチャートでは、まず、時間t1の時点において、機関回転速度NRが所定回転速度NRtより大きい状態でアクセル開度Daccが0になる。これにより、内燃機関50が減速運転中であると判定される。これに応じて、スロットル弁64の開度Dthが、減速時目標開度Dthtまで小さくなる。この結果、吸気流路60のスロットル弁64よりも下流側の吸気圧力Pinが、時間t1の時点から低下し始め、時間t2の時点で減速時目標開度Dthtに対応する減速時目標圧力Pintまで低下する。
【0045】
次に、時間t2の時点において、吸気圧力Pinが減速時目標圧力Pintに到達すると、フューエルカットフラグ(F/Cフラグ)がONになる。これによって、フューエルカットの実行が開始される。つまり、内燃機関50での燃料噴射弁からの燃料噴射が停止する。そして、スロットル弁64の開度Dthが減速時目標開度DthtからF/C時増加開度Dthfまで大きくなる。これにより、吸気圧力Pinが、F/C時増加開度Dthfに対応するF/C時増加圧力Pinfまで上昇する。
【0046】
次に、時間t3の時点において、GPF80Uの前後の差圧Pudから推定されるPMの堆積量Apmが予め設定した目標堆積量Apmt以下となると、スロットル弁64の開度Dthが、再びF/C時増加開度Dthfから減速時目標開度Dthtまで小さくなる。これにより、吸気圧力Pinが、再び減速時目標圧力Pintまで低下する。
【0047】
次に、時間t4の時点において、アクセル開度Daccが0より大きくなる。これにより、内燃機関50が減速運転を終了すると判定される。これに応じて、スロットル弁64の開度Dthが、負荷対応目標開度Dtheまで大きくなる。そして、フューエルカットフラグ(F/Cフラグ)がONになる。これによって、フューエルカットの実行が終了する。つまり、内燃機関50での燃料噴射弁からの燃料噴射が再開する。さらに、吸気圧力Pinが、時間t4の時点から上昇し始め、時間t5の時点で負荷対応目標開度Dtheに対応する負荷対応目標圧力Pineまで上昇する。
【0048】
なお、第1実施形態に係る排ガス浄化システム110でECU40により行われるフューエルカットの制御方法は、以上で説明した一例に限らず、内燃機関50の減速運転時にフューエルカットを実行するように内燃機関50を制御する方法であれば特に限定されず、多様な制御の方法が考えられる。
【0049】
〔作用効果〕
第1実施形態に係る排ガス浄化システム110では、ECU40によるフューエルカットの制御方法において、内燃機関50の減速運転時にフューエルカットを実行するように内燃機関50を制御する。フューエルカットの実行時には、内燃機関50での燃料噴射弁からの燃料噴射が停止され、スロットル弁64の開度Dthが減速時目標開度Dthtまで小さくなるが、スロットル弁64は完全に閉弁されず、空気が吸気流路60を介して内燃機関50に流入する。このため、フューエルカットの実行時には、内燃機関50から既燃ガスを含まず空気を含むガスが排気流路70に排出し、その排出ガスが三元触媒80S経由でGPF80Uに流通する。
【0050】
フューエルカットの実行開始時には、図3に示すように、GPF80Uが備えるハニカム基材10の隔壁14の流入セル12A側の表面14SA上及び内部領域14NAの空隙(図示略)などには炭素(C)を主成分とするPM(粒子状物質)が堆積している。また、フューエルカットの実行時に内燃機関50から排出される排出ガスは、内燃機関50で加熱される結果、GPF80Uに流入する段階で温度が600℃~650℃程度以上に維持されていることがある。このため、フューエルカットの実行時に内燃機関50から排出される排出ガスをGPF80Uに流通させることにより、ハニカム基材10の隔壁14におけるPM中のCを空気中の酸素(O)により600℃~650℃程度以上の温度で燃焼させることでPMを燃焼除去できる。この際には、下記反応式(1)に示される完全燃焼により、二酸化炭素(CO)が発生するだけではなく、下記反応式(2)に示される不完全燃焼により、一酸化炭素(CO)が発生することになる。
【0051】
C+O→CO (1)
2C+O→2CO (2)
【0052】
これに対して、第1実施形態に係るGPF80Uでは、隔壁14の流出側端14dから流入側に延在する流出セル側触媒領域14Yにおける流出セル12B側の表面14SB上及び内部領域14NBに流出セル側触媒層30が設けられ、流出セル側触媒層30は担体に担持されたPtを含有する触媒金属粒子を含んでいる。このため、隔壁14の流入側端14aから延伸方向に沿って流出側に延在する領域に触媒層が設けられている場合とは異なり、ハニカム基材の隔壁におけるPM中のCの不完全燃焼で発生するCOの大半を触媒層(流出セル側触媒層)に沿って流すか、又は触媒層に透過させることができる。この際に、Ptによる触媒反応により、COの大半を下記反応式(3)に示すようにOと反応させることでCOに変換できる。これにより、GPF80UからCOが排出されることを抑制できる。
【0053】
2CO+O→2CO (3)
【0054】
また、ECU40によるフューエルカットの制御方法では、フューエルカットの実行中にスロットル弁64の開度Dthを減速時目標開度DthtからF/C時増加開度Dthfまで大きくすることで、従来のようにスロットル弁64の開度Dthを減速時目標開度Dthtに維持する場合よりも多量の空気を含む排出ガスをGPF80Uに流通させることができる。これによって、ハニカム基材10の隔壁14におけるPMを燃焼除去する反応を促進できる。さらに、これに伴って、PMを燃焼除去する反応での不完全燃焼で発生するCOが多量となる場合にも、流出セル側触媒層30により、COの大半をCOに変換できる。よって、GPF80UのPMを燃焼除去する反応を促進するとともに、GPF80UからCOが排出されることをより効果的に抑制できる。
【0055】
さらに、ECU40によるフューエルカットの制御方法では、フューエルカットの実行中に、スロットル弁64の開度DthをF/C時増加開度Dthfまで大きくした状態では、多量の空気を含む排出ガスが三元触媒80Sにも流入することになる。このため、仮にこの状態がフューエルカットの実行が終了するまで継続する場合には、三元触媒80Sの触媒層が排出ガス中の多量の酸素により酸化し劣化するおそれがある。これに対して、ECU40によるフューエルカットの制御方法では、PMの堆積量Apmが予め設定した目標堆積量Apmt以下となった時点で、スロットル弁64の開度DthをF/C時増加開度Dthfから減速時目標開度Dthtまで小さくしている。これにより、PMを目標レベルまで燃焼除去できた時点で、多量の空気を含む排出ガスが三元触媒80Sに流入することを止めることができる。よって、三元触媒80Sの劣化を抑制できる。
【0056】
従って、実施形態に係る排ガス浄化システムによれば、例えば、第1実施形態のように、COが排出されることを抑制できる。また、フューエルカットの実行中にスロットル弁の開度を内燃機関の減速運転時の目標開度より大きくする場合には、パティキュレートフィルタでPMを燃焼除去する反応を促進するとともに、COの排出を効果的に抑制できる。さらに、フューエルカットの実行中において、スロットル弁の開度を減速運転時の目標開度より大きくした後に、パティキュレートフィルタに堆積する粒子状物質の堆積量を推定し、粒子状物質の堆積量が予め設定した目標堆積量以下となった時にスロットル弁の開度を小さくする場合には、三元触媒の劣化を抑制できる。
【0057】
続いて、実施形態に係る排ガス浄化システムの各構成について、詳細に説明する。
【0058】
1.パティキュレートフィルタ
上記パティキュレートフィルタは、ハニカム基材と流出セル側触媒層とを備える。
【0059】
(1)ハニカム基材
上記ハニカム基材は、流入側端面から流出側端面まで延びる複数のセルを画成する多孔質の隔壁を有する。そして、上記複数のセルは、上記隔壁を挟んで隣接する流入セル及び流出セルを含み、上記流入セルは、流入側端が開口し、流出側端が封止され、上記流出セルは、流入側端が封止され、流出側端が開口している。ハニカム基材は、いわゆるウォールフロー型のハニカム基材である。
【0060】
ハニカム基材は、枠部と枠部の内側の空間をハニカム状に区切る隔壁とが一体形成された基材である。ハニカム基材の軸方向の長さは、特に限定されず、一般的な長さを用いることができる。ハニカム基材の容量、すなわち、セルの総体積は、特に限定されず、一般的な容量を用いることができる。
【0061】
ハニカム基材の材料は、特に限定されず、一般的な材料を用いることができるが、例えば、コージェライト、炭化ケイ素(SiC)、チタン酸アルミニウム等のセラミックス、ステンレス等の合金等が挙げられる。
【0062】
枠部の形状は、特に限定されず、一般的な形状を用いることができる。隔壁の形状は、特に限定されず、一般的な形状を用いることができる。隔壁は排ガスが透過可能な細孔からなる空隙を含む多孔質構造体である。隔壁の延伸方向の長さは、特に限定されないが、通常、ハニカム基材の軸方向の長さと略同一となる。隔壁の厚さは、特に限定されず、一般的な厚さを用いることができる。
【0063】
流入セル及び流出セルは、枠部の内側の空間を隔壁が区切ることで形成されたものであり、隔壁を挟んで隣接する。流入セル及び流出セルは、通常、延伸方向に垂直な方向が隔壁で囲まれている。流入セルは、通常、流出側端が封止部により封止されている。流出セルは、通常、流入側端が封止部により封止されている。封止部の延伸方向の長さは、特に限定されず、一般的な長さでよい。封止部の材料は、特に限定されず、一般的な材料でよい。
【0064】
流入セル及び流出セルの延伸方向に垂直な断面形状は、特に限定されず、一般的な形状を用いることができる。流入セル及び流出セルの延伸方向に垂直な断面積は、特に限定されず、一般的な断面積を用いることができる。流入セル及び流出セルの延伸方向の長さは、特に限定されないが、通常、ハニカム基材の軸方向の長さから封止部の延伸方向の長さを差し引いた長さと略同一となる。流入セル及び流出セルの配置態様は、第1実施形態に係る配置態様のように、流入セル及び流出セルを交互に配置する市松模様のような態様等が挙げられる。
【0065】
(2)流出セル側触媒層
流出セル側触媒層は、上記隔壁の流出側端から延伸方向に沿って流入側に離れた位置まで延在する流出セル側触媒領域における上記流出セル側の表面上及び上記流出セル側の内部領域(内部領域に存在する空隙)の少なくとも一方に設けられている。
【0066】
隔壁の流出セル側触媒領域としては、隔壁の流出側端から延伸方向に沿って流入側に所定距離離れた位置まで延在する領域であれば特に限定されないが、例えば、第1実施形態のように、隔壁の流出側端から延伸方向に沿って流入側に隔壁の延伸方向の長さの25%以上100%以下の距離離れた位置まで延在する領域が好ましく、中でも隔壁の延伸方向の長さの25%以上80%以下の距離離れた位置まで延在する領域が好ましく、特に隔壁の延伸方向の長さの40%以上70%以下の距離離れた位置まで延在する領域が好ましい。流出セル側触媒領域の延伸方向の長さ(流出セル側触媒層の延伸方向の長さ)がこれらの距離の範囲の下限以上であることにより、COの排出を十分に抑制できるからである。また、流出セル側触媒領域の延伸方向の長さがこれらの距離の範囲の上限以下であることにより、PMを十分に捕集できる上に圧力損失を抑制でき、流出セル側触媒層の形成時の費用を低減できるからである。
【0067】
流出セル側触媒層は、隔壁の流出セル側触媒領域における流出セル側の表面上及び流出セル側の内部領域の少なくとも一方に設けられたものであれば特に限定されないが、隔壁の流出セル側触媒領域における流出セル側の表面上に設けられたものが好ましい。圧力損失を抑制できるからである。
【0068】
流出セル側触媒層は、通常、触媒金属粒子と、触媒金属粒子を担持する担体とを含み、例えば、触媒金属粒子が担体に担持された触媒付担体を含む焼結体である。
【0069】
触媒金属粒子は、特に限定されず、一般的な貴金属等の材料を用いることができるが、例えば、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、及びロジウム(Rh)の少なくとも1種を含有するものが挙げられる。触媒金属粒子としては、Pt及びPdの少なくとも1種を含有するものが好ましい。これらの触媒反応では、COからCOへの酸化が起こり易いからである。
【0070】
触媒金属粒子の平均粒径は、特に限定されず、一般的な平均粒径を用いることができるが、例えば0.1nm以上20nm以下の範囲内が好ましい。平均粒径がこの範囲の上限以下であることにより、排ガスとの接触面積を大きくできるからである。なお、触媒金属粒子の平均粒径は、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)により測定される粒径から求められる平均値を指す。
【0071】
触媒金属粒子の含有量は、特に限定されず一般的な含有量でよいが、触媒金属粒子の材料によって異なり、例えば、材料がPt、Pd、及びRhの少なくとも1種である場合には、ハニカム基材の1L当たり0.01g以上2g以下の範囲内が好ましい。含有量がこの範囲の下限以上であることにより、十分な触媒作用が得られるからであり、含有量がこの範囲の上限以下であることにより、触媒金属粒子の粒成長を抑制できると同時にコスト面で有利になるからである。ここで、触媒金属粒子の基材の体積1L当たりの含有量とは、流出セル側触媒層に含有される触媒金属粒子の質量を、流出セル側触媒層(流出セル側触媒領域)の延伸方向の長さと軸方向の長さが同一のハニカム基材の軸方向の一部の体積で割った値を指す。
【0072】
担体の材料は、特に限定されず、一般的な材料を用いることができるが、例えば、アルミナ(Al)、セリア(CeO)、ジルコニア(ZrO)等の金属酸化物、例えば、アルミナ-ジルコニア(Al-ZrO)複合酸化物、セリア-ジルコニア(CeO-ZrO)複合酸化物等の固溶体などが挙げられる。担体の材料としては、これらのうちの1種でも2種以上でもよい。担体の材料としては、アルミナ及びセリア-ジルコニア複合酸化物等の少なくとも1種が好ましい。担体の形状は、特に限定されず、一般的な形状を用いることができるが、粉末状が好ましい。より大きい比表面積を確保できるからである。粉末状の担体の平均粒径は、特に限定されず一般的な平均粒径でよい。
【0073】
触媒金属粒子及び担体の合計の質量に対する触媒金属粒子の質量比は、特に限定されず、一般的な質量比を用いることができる。触媒金属粒子を担体に担持させる方法は、特に限定されず、一般的な方法を用いることができるが、例えば、触媒金属塩(例えば、硝酸塩等)又は触媒金属錯体(例えば、テトラアンミン錯体等)を含有する水溶液に担体を浸した後、乾燥し、焼成する方法等が挙げられる。
【0074】
流出セル側触媒層は、触媒金属粒子及び担体の他に、例えば、OSC(Oxygen Storage Capacity)材等の助触媒などを含んでもよい。助触媒の材料は、特に限定されず一般的な材料でよいが、例えば、担体と同様の材料が挙げられる。助触媒の中でも特にOSC材の材料は、例えば、セリア、セリアを含む複合酸化物などが挙げられる。セリアを含む複合酸化物としては、例えば、セリア-ジルコニア複合酸化物等が挙げられる。助触媒の形状及び粉末状の助触媒の平均粒径は、特に限定されず一般的な形状でよいが、例えば、担体と同様の形状及び平均粒径が挙げられる。
【0075】
流出セル側触媒層の密度は、特に限定されないが、例えば、30g/L以上250g/L以下の範囲内が好ましい。密度がこの範囲の下限以上であることにより、浄化性能を効果的に向上できるからである。密度がこの範囲の上限以下であることにより、圧力損失を効果的に抑制できるからである。なお、「流出セル側触媒層の密度」とは、流出セル側触媒層の質量を、流出セル側触媒層の延伸方向の長さと軸方向の長さが同一のハニカム基材の軸方向の一部の体積で割った値を指す。
【0076】
流出セル側触媒層の形成方法は、特に限定されず一般的な方法でよいが、例えば、触媒金属粒子を担体に担持させた触媒付担体と溶媒とを混合することで調製されるスラリーを隔壁の流出セル側触媒領域における流出セル側の表面上及び流出セル側の内部領域の少なくとも一方に供給した後に、乾燥し、焼成する方法が挙げられる。
【0077】
スラリーは、触媒金属粒子及び担体並びに溶媒に加えて、助触媒、バインダー、添加剤等の任意の成分を適宜含んでもよい。スラリーの調整方法としては、特に限定されず一般的な方法でよい。スラリーの固形分の平均粒径は、特に限定されず一般的な平均粒径でよい。
【0078】
スラリーを隔壁の流出セル側触媒領域における流出セル側の表面上及び流出セル側の内部領域の少なくとも一方に供給する方法としては、特に限定されず一般的な方法でよい。スラリーを隔壁に供給した後に、乾燥し、焼成する方法での乾燥条件及び焼成条件は、特に限定されず一般的な条件でよい。
【0079】
(3)流入セル側触媒層
パティキュレートフィルタは、隔壁の流入側端から延伸方向に沿って流出側に離れた位置まで延在する流入セル側触媒領域における流入セル側の表面上及び流入セル側の内部領域(内部領域に存在する空隙)の少なくとも一方に設けられた流入セル側触媒層をさらに備えるものでもよい。
【0080】
隔壁の流入セル側触媒領域としては、隔壁の流入側端から延伸方向に沿って流出側に所定距離離れた位置まで延在する領域であれば特に限定されないが、例えば、第1実施形態のように、隔壁の流入側端から延伸方向に沿って流出側に隔壁の延伸方向の長さの25%以上100%以下の距離離れた位置まで延在する領域が好ましく、中でも隔壁の延伸方向の長さの35%以上80%以下の距離離れた位置まで延在する領域が好ましく、特に隔壁の延伸方向の長さの40%以上70%以下の距離離れた位置まで延在する領域が好ましい。
【0081】
流入セル側触媒層は、通常、触媒金属粒子と、触媒金属粒子を担持する担体とを含み、例えば、触媒金属粒子が担体に担持された触媒付担体を含む焼結体である。
【0082】
触媒金属粒子の材料は、特に限定されず、一般的な貴金属等の材料を用いることができるが、例えば、Pt、Pd、及びRhの少なくとも1種を含有するものが挙げられる。触媒金属粒子の平均粒径については、流出セル側触媒層に含まれる触媒金属粒子と同様である。
【0083】
触媒金属粒子の含有量は、特に限定されず一般的な含有量でよいが、触媒金属粒子の材料によって異なり、例えば、材料がPt、Pd、及びRhの少なくとも1種である場合には、ハニカム基材の1L当たり0.05g以上5g以下の範囲内が好ましい。含有量がこの範囲の下限以上であることにより、十分な触媒作用が得られるからであり、含有量がこの範囲の上限以下であることにより、触媒金属粒子の粒成長を抑制できると同時にコスト面で有利になるからである。ここで、触媒金属粒子の基材の体積1L当たりの含有量とは、流入セル側触媒層に含有される触媒金属粒子の質量を、流入セル側触媒層(流入セル側触媒領域)の延伸方向の長さと軸方向の長さが同一のハニカム基材の軸方向の一部の体積で割った値を指す。
【0084】
担体の材料及び形状並びに粉末状の担体の平均粒径については、流出セル側触媒層に含まれる担体と同様である。
【0085】
触媒金属粒子及び担体の合計の質量に対する触媒金属粒子の質量比については、流出セル側触媒層の当該質量比と同様である。触媒金属粒子を担体に担持させる方法については、流出セル側触媒層での当該方法と同様である。流入セル側触媒層は、流出セル側触媒層と同様に助触媒などを含んでもよい。助触媒については、流出セル側触媒層に含まれる助触媒と同様である。
【0086】
流入セル側触媒層の密度は、特に限定されないが、例えば、30g/L以上250g/L以下の範囲内が好ましい。密度がこの範囲の下限以上であることにより、浄化性能を効果的に向上できるからである。密度がこの範囲の上限以下であることにより、圧力損失を効果的に抑制できるからである。なお、「流入セル側触媒層の密度」とは、流入セル側触媒層の合計の質量を、流入セル側触媒層の延伸方向の長さと軸方向の長さが同一のハニカム基材の軸方向の一部の体積で割った値を指す。
【0087】
流入セル側触媒層の形成方法は、特に限定されず一般的な方法でよいが、例えば、触媒金属粒子を担体に担持させた触媒付担体と溶媒とを混合することで調整されるスラリーを隔壁の流入セル側触媒領域における流入セル側の表面上及び流入セル側の内部領域の少なくとも一方に供給した後に、乾燥し、焼成する方法が挙げられる。
【0088】
スラリーは、触媒金属粒子及び担体並びに溶媒に加えて、助触媒、バインダー、添加剤等の任意の成分を適宜含んでもよい。スラリーの調整方法としては、特に限定されず一般的な方法でよい。スラリーの固形分の平均粒径は、特に限定されず一般的な平均粒径でよい。
【0089】
スラリーを隔壁の流入セル側触媒領域における流入セル側の表面上及び流入セル側の内部領域の少なくとも一方に供給する方法としては、特に限定されず一般的な方法でよい。スラリーを隔壁に供給した後に、乾燥し、焼成する方法での乾燥条件及び焼成条件は、特に限定されず一般的な条件でよい。
【0090】
(4)その他
パティキュレートフィルタとしては、第1実施形態に係るパティキュレートフィルタのように、触媒層として、流入セル側触媒層を備えず、流出セル側触媒層のみを備えるものが好ましい。排ガスからより多くのPMを捕集できるため、PMの不完全燃焼により生じるCOの排出を抑制する効果が顕著となるからである。また、圧力損失を抑制できるからである。パティキュレートフィルタは、GPFでもよいし、DPFでもよいが、GPFが好ましい。
【0091】
パティキュレートフィルタが流入セル側触媒層をさらに備えるものである場合には、パティキュレートフィルタは、流入セル側触媒層に含まれる触媒金属粒子がPt及びPdの少なくとも1種を含有し、かつ流出セル側触媒層に含まれる触媒金属粒子がRhを含有するものが好ましい。排ガスに含まれる炭化水素(HC)が流入セル側触媒層に含まれる触媒金属粒子により効果的に浄化された後に、排ガスが流出セル側触媒層に接触することになるので、流出セル側触媒層に含まれる触媒金属粒子に含有されるRhが炭化水素(HC)により被毒されるのを抑制できるからである。さらに、このようなパティキュレートフィルタの中でも、流出セル側触媒層に含まれる触媒金属粒子がRhとPt及びPdの少なくとも1種とを含有するものが好ましい。
【0092】
パティキュレートフィルタは、通常、流入セルの流出側端を封止する封止部及び流出セルの流入側端を封止する封止部をさらに備える。
【0093】
2.三元触媒
三元触媒は、特に限定されず、一般的な三元触媒であれば特に限定されないが、例えば、第1実施形態に係る三元触媒のように、枠部と枠部の内側の空間をハニカム状に仕切る隔壁とが一体形成されたモノリス基材と、モノリス基材の隔壁におけるセル内の壁面に設けられた触媒層とを備えるものが挙げられる。
【0094】
モノリス基材の材料は、特に限定されず、一般的な材料を用いることができるが、例えば、コージェライト等が挙げられる。触媒層は、壁面を被覆する多孔質担体と、多孔質担体に担持された触媒金属粒子とを含んでいる。触媒層の多孔質担体としては、特に限定されず、一般的な担体を用いることができるが、例えば、酸素吸蔵能(OSC:Oxygen Storage Capacity)を有するOSC材を含有するものが好ましい。OSC材としては、特に限定されないが、例えば、セリア、セリアを含む複合酸化物などが挙げられる。セリアを含む複合酸化物としては、例えば、セリア-ジルコニア複合酸化物等が挙げられる。触媒金属粒子は、特に限定されないが、RhとPt及びPdの少なくとも1種とを含有するものでもよいし、Pt及びPdを含有するものでもよい。RhとPt及びPdの少なくとも1種とを含有する触媒金属粒子としては、具体的には、例えば、RhとPtとを含有するものでもよいし、RhとPdとを含有するものでもよいし、RhとPt及びPdとを含有するものでもよい。Pt及びPdを含有する触媒金属粒子としては、具体的には、例えば、Rhを含有せず、Pt及びPdのみを含有するものである。
【0095】
3.制御装置
制御装置は、上記内燃機関の減速運転時にフューエルカットを実行するように上記内燃機関を制御するものである。ここで、「内燃機関の減速運転時」とは、例えば、機関回転速度又は車両の速度が0より大きく、かつアクセル開度が0である時を指す。
【0096】
制御装置としては、このようなものであれば特に限定されないが、第1実施形態に係る制御方法の一例のように、上記フューエルカットの実行中にスロットル弁の開度を上記内燃機関の上記減速運転時の目標開度より大きくするものが好ましい。GPFのPMを燃焼除去する反応を促進するとともに、GPFからCOが排出されることをより効果的に抑制できるからである。
【0097】
さらに、このような制御装置としては、中でも、第1実施形態に係る制御方法の一例のように、上記フューエルカットの実行中において、上記スロットル弁の上記開度を上記目標開度より大きくした後に、上記パティキュレートフィルタに堆積する粒子状物質の堆積量を推定し、上記粒子状物質の上記堆積量が予め設定した目標堆積量以下となった時に上記スロットル弁の上記開度を小さくするものが好ましい。三元触媒の劣化を抑制できるからである。なお、粒子状物質の堆積量の目標堆積量としては、許容できる圧力損失の大きさ等を考慮して適宜設定できるが、GPF1個当たりの粒子状物質の堆積量の目標堆積量が、例えば、0.5gといった値に設定される。この場合には、GPF1個当たりに堆積する粒子状物質の堆積量を推定し、GPF1個当たりの粒子状物質の堆積量が目標堆積量(例えば、0.5g)以下となった時に上記スロットル弁の上記開度を小さくする。
【0098】
制御装置が、パティキュレートフィルタに堆積するPM(粒子状物質)の堆積量を推定する方法としては、例えば、パティキュレートフィルタの前後の差圧に基づいて、パティキュレートフィルタに堆積するPMの堆積量を推定する差圧法が挙げられる。差圧法では、PMがフィルタに堆積すると、フィルタが目詰まりし、フィルタよりも上流側の排気流路内の圧力がフィルタよりも下流側の排気流路内の圧力よりも高くなり、堆積量が多いほど、フィルタの前後の差圧が大きくなる関係を利用している。具体的には、この関係を表すデータ又は計算式を制御装置に予め記憶させておき、制御装置がこのデータ又は計算式を利用ことで堆積量を推定する。また、制御装置が、パティキュレートフィルタに堆積するPMの堆積量を推定する方法としては、その他に、内燃機関での燃料噴射弁からの燃料噴射量又は燃料噴射回数の累積値に基づいて、パティキュレートフィルタに堆積するPMの堆積量を推定する方法も挙げられる。
【0099】
4.排ガス浄化システム
排ガス浄化システムは、内燃機関に接続された排気流路の上流側及び下流側にそれぞれ配置された上記三元触媒及び上記パティキュレートフィルタと、上記内燃機関を制御する上記制御装置と、を備えるものである。排ガス浄化システムが接続される内燃機関としては、特に限定されず、ガソリンエンジンでもよいし、ディーゼルエンジンでもよいが、中でも車両駆動用のガソリンエンジンが好ましい。なお、内燃機関がガソリンエンジンである場合には、パティキュレートフィルタはGPFとなり、内燃機関がディーゼルエンジンである場合には、パティキュレートフィルタはDPFとなる。
【実施例0100】
以下、実施例及び比較例を挙げて、実施形態に係る排ガス浄化システムをさらに具体的に説明する。
【0101】
[実施例1]
第1実施形態に係る排ガス浄化システム110の一例を作製した。
具体的には、最初に、排ガス浄化システム110に用いる三元触媒80S及びGPF80Uを準備した。
【0102】
〔三元触媒〕
三元触媒80Sは、円筒形の枠部と枠部の内側の空間をハニカム状に仕切る隔壁とが一体形成されたモノリス基材と、モノリス基材の隔壁におけるセル内の壁面に設けられた触媒層とを備えている。触媒層は、壁面を被覆する多孔質担体と、多孔質担体に担持された触媒金属粒子とを含んでいる。これらの構成の詳細は、下記の通りである。
【0103】
モノリス基材の材料:コージェライト製
モノリス基材のサイズ:外径×軸方向の長さ=117mm×122mm
隔壁の厚さ:200μm
セル密度:1平方インチ当たり300個
触媒層の多孔質担体の材料:セリア-ジルコニア複合酸化物及びアルミナ
触媒層の触媒金属粒子の材料:Pt
【0104】
〔GPF〕
図7(a)は、実施例1に係るGPFにおけるセルの延伸方向に平行な断面の要部を概略的に示す断面図である。本実施例では、図7(a)に示すように、ハニカム基材10と、封止部16と、Ptを含有する触媒金属粒子を含む流出セル側触媒層30とを備えるGPF80Uを作製し、準備した。
【0105】
GPF80Uの作製では、まず、触媒がコートされていない非コート型のGPFを準備した。非コート型のGPFは、円筒形の枠部11と枠部11の内側の空間をハニカム状に仕切る隔壁14とが一体形成されたハニカム基材10と、封止部16とを備えている。これらの構成の詳細は、下記の通りである。
【0106】
ハニカム基材の材料:コージェライト製
ハニカム基材のサイズ:外径×軸方向の長さ=117mm×122mm
隔壁の厚さ:240μm
セル密度:1平方インチ当たり200個
封止部の延伸方向の長さ:4mm
【0107】
次に、粉末状の担体にPtを含有する触媒金属粒子を担持させた触媒付担体と溶媒とを混合することで、流出セル側触媒層用スラリーを調整した。
【0108】
次に、流出セル側触媒層用スラリーを、非コート型のGPFにおける流出セル12Bに流出側端12Bbから流し込むことで隔壁14の流出セル側触媒領域14Yにおける流出セル12B側の表面14SB上に供給した。隔壁14の流出セル側触媒領域14Yは、隔壁14の流出側端14dから延伸方向に沿って流入側に隔壁14の延伸方向の長さの52%の距離離れた位置14eまで延在する領域である。
【0109】
次に、流出セル側触媒層用スラリーを供給したハニカム基材10を、乾燥機を使用して乾燥した後に、電気炉を使用して焼成した。これらの手順により、GPF1個当たりのPtの含有量が0.56g/個となるように流出セル側触媒層30を形成した。以上により、図7(a)に示すGPF80Uを作製した。
【0110】
続いて、内燃機関50に接続されている排気流路70において、内燃機関50の直下(上流側)に三元触媒80Sを設け、三元触媒80Sの下流側にGPF80Uを設けた。これにより、三元触媒80S及びGPF80Sと、ECU40と、を備える排ガス浄化システム110を作製した。
【0111】
[実施例2]
Rhを含有する触媒金属粒子を含む流出セル側触媒層30を備えるGPF80Uを作製し、GPF80Uとして用いた点を除いて、実施例1と同様に排ガス浄化システム110を作製した。図7(b)は、実施例2に係るGPFにおけるセルの延伸方向に平行な断面の要部を概略的に示す断面図である。
【0112】
具体的には、GPF80Uの作製において、まず、実施例1と同様の非コート型のGPFを準備した。次に、粉末状の担体にRhを含有する触媒金属粒子を担持させた触媒付担体と溶媒とを混合することで、流出セル側触媒層用スラリーを調整した。次に、流出セル側触媒層用スラリーを、実施例1と同様に隔壁14の流出セル側触媒領域14Yにおける流出セル12B側の表面14SB上に供給した。隔壁14の流出セル側触媒領域14Yは、実施例1と同様の領域である。次に、流出セル側触媒層用スラリーを供給したハニカム基材10を、乾燥機を使用して乾燥した後に、電気炉を使用して焼成した。これらの手順により、GPF1個当たりのRhの含有量が0.39g/個となるように流出セル側触媒層30を形成した。以上により、図7(b)に示すGPF80Uを作製した。
【0113】
そして、内燃機関50に接続されている排気流路70において、このようなGPF80Uを実施例1と同様に三元触媒80Sとともに設け、排ガス浄化システム110を作製した。
【0114】
[実施例3]
Rhを含有する触媒金属粒子を含む流出セル側触媒層30が実施例1とは異なる隔壁の領域に形成されたGPF80Uを作製し、GPF80Uとして用いた点を除いて、実施例1と同様に排ガス浄化システム110を作製した。図7(c)は、実施例3に係るGPFにおけるセルの延伸方向に平行な断面の要部を概略的に示す断面図である。
【0115】
具体的には、GPF80Uの作製において、まず、実施例1と同様の非コート型のGPFを準備した。次に、粉末状の担体にRhを含有する触媒金属粒子を担持させた触媒付担体と溶媒とを混合することで、流出セル側触媒層用スラリーを調整した。次に、流出セル側触媒層用スラリーを、隔壁14の流出セル側触媒領域14Yにおける流出セル12B側の内部領域14NBに供給した。隔壁14の流出セル側触媒領域14Yは、隔壁14の流出側端14dから延伸方向に沿って流入側に隔壁14の延伸方向の長さの68%の距離離れた位置14eまで延在する領域である。次に、流出セル側触媒層用スラリーを供給したハニカム基材10を、乾燥機を使用して乾燥した後に、電気炉を使用して焼成した。これらの手順により、GPF1個当たりのRhの含有量が0.39g/個となるように流出セル側触媒層30を形成した。以上により、図7(c)に示すGPF80Uを作製した。
【0116】
そして、内燃機関50に接続されている排気流路70において、このようなGPF80Uを実施例1と同様に三元触媒80Sとともに設け、排ガス浄化システム110を作製した。
【0117】
[実施例4]
実施例1とは異なる非コート型のGPFが用いられ、Pdを含有する触媒金属粒子を含む流出セル側触媒層30が実施例1とは異なる隔壁の領域に形成され、Rhを含有する触媒金属粒子を含む流入セル側触媒層20をさらに備えるGPF80Uを作製し、GPF80Uとして用いた点を除いて、実施例1と同様に排ガス浄化システム110を作製した。図7(d)は、実施例4に係るGPFにおけるセルの延伸方向に平行な断面の要部を概略的に示す断面図である。
【0118】
具体的には、GPF80Uの作製において、まず、実施例1とは異なる非コート型のGPFを準備した。非コート型のGPFは、円筒形の枠部11と枠部11の内側の空間をハニカム状に仕切る隔壁14とが一体形成されたハニカム基材10と、封止部16とを備えている。これらの構成の詳細は、下記の通りである。
【0119】
ハニカム基材の材料:コージェライト製
ハニカム基材のサイズ:外径×軸方向の長さ=117mm×122mm
隔壁の厚さ:200μm
セル密度:1平方インチ当たり300個
封止部の延伸方向の長さ:4mm
【0120】
次に、粉末状の担体にRhを用いた触媒金属粒子を担持させた触媒付担体と溶媒とを混合することで、流入セル側触媒層用スラリーを調整した。次に、流入セル側触媒層用スラリーを、非コート型のGPFにおける流入セル12Aに流入側端12Aaから流し込むことで隔壁14の流入セル側触媒領域14Xにおける流入セル12A側の内部領域14NAに供給した。隔壁14の流入セル側触媒領域14Xは、隔壁14の流入側端14aから延伸方向に沿って流出側に隔壁14の延伸方向の長さの68%の距離離れた位置14bまで延在する領域である。次に、流入セル側触媒層用スラリーを供給したハニカム基材10、乾燥機を使用して乾燥した後に、電気炉を使用して焼成した。これらの手順により、GPF1個当たりのRhの含有量が0.39g/個となるように流入セル側触媒層20を形成した。
【0121】
次に、粉末状の担体にPdを含有する触媒金属粒子を担持させた触媒付担体と溶媒とを混合することで、流出セル側触媒層用スラリーを調整した。次に、流出セル側触媒層用スラリーを、隔壁14の流出セル側触媒領域14Yにおける流出セル12B側の内部領域14NBに供給した。隔壁14の流出セル側触媒領域14Yは、隔壁14の流出側端14dから延伸方向に沿って流入側に隔壁14の延伸方向の長さの68%の距離離れた位置14eまで延在する領域である。次に、流出セル側触媒層用スラリーを供給したハニカム基材10を、乾燥機を使用して乾燥した後に、電気炉を使用して焼成した。これらの手順により、GPF1個当たりのPdの含有量が0.77g/個となるように流出セル側触媒層30を形成した。以上により、図7(d)に示すGPF80Uを作製した。
【0122】
そして、内燃機関50に接続されている排気流路70において、このようなGPF80Uを実施例1と同様に三元触媒80Sとともに設け、排ガス浄化システム110を作製した。
【0123】
[比較例1]
実施例1~3で準備した非コート型のGPFをそのままGPF80Uとして用いた点を除いて、実施例1と同様に排ガス浄化システム110を作製した。図8(a)は、比較例1に係るGPFにおけるセルの延伸方向に平行な断面の要部を概略的に示す断面図である。
【0124】
具体的には、内燃機関50に接続されている排気流路70において、非コート型のGPFをそのまま用いたGPF80Uを実施例1と同様に三元触媒80Sとともに設け、排ガス浄化システム110を作製した。
【0125】
[比較例2]
流出セル側触媒層30を備えておらず、Ptを含有する触媒金属粒子を含む流入セル側触媒層20を備えるGPF80Uを作製し、GPF80Uとして用いた点を除いて、実施例1と同様に排ガス浄化システム110を作製した。図8(b)は、比較例2に係るGPFにおけるセルの延伸方向に平行な断面の要部を概略的に示す断面図である。
【0126】
具体的には、GPF80Uの作製において、まず、実施例1と同様の非コート型のGPFを準備した。次に、粉末状の担体にPtを含有する触媒金属粒子を担持させた触媒付担体と溶媒とを混合することで、流入セル側触媒層用スラリーを調整した。次に、流入セル側触媒層用スラリーを、非コート型のGPFにおける流入セル12Aに流入側端12Aaから流し込むことで隔壁14の流入セル側触媒領域14Xにおける流入セル12A側の表面14SA上に供給した。隔壁14の流入セル側触媒領域14Xは、隔壁14の流入側端14aから延伸方向に沿って流出側に隔壁14の延伸方向の長さの52%の距離離れた位置14bまで延在する領域である。次に、流入セル側触媒層用スラリーを供給したハニカム基材10を、乾燥機を使用して乾燥した後に、電気炉を使用して焼成した。これらの手順により、GPF1個当たりのPtの含有量が0.56g/個となるように流入セル側触媒層20を形成した。以上により、図8(b)に示すGPF80Uを作製した。
【0127】
そして、内燃機関50に接続されている排気流路70において、このようなGPF80Uを実施例1と同様に三元触媒80Sとともに設け、排ガス浄化システム110を作製した。
【0128】
[比較例3]
流出セル側触媒層30を備えておらず、Rhを含有する触媒金属粒子を含む流入セル側触媒層20を備えるGPF80Uを作製し、GPF80Uとして用いた点を除いて、実施例1と同様に排ガス浄化システム110を作製した。図8(c)は、比較例3に係るGPFにおけるセルの延伸方向に平行な断面の要部を概略的に示す断面図である。
【0129】
具体的には、GPF80Uの作製において、まず、実施例1と同様の非コート型のGPFを準備した。次に、粉末状の担体にRhを含有する触媒金属粒子を担持させた触媒付担体と溶媒とを混合することで、流入セル側触媒層用スラリーを調整した。次に、流入セル側触媒層用スラリーを、非コート型のGPFにおける流入セル12Aに流入側端12Aaから流し込むことで隔壁14の流入セル側触媒領域14Xにおける流入セル12A側の表面14SA上に供給した。隔壁14の流入セル側触媒領域14Xは、隔壁14の流入側端14aから延伸方向に沿って流出側に隔壁14の延伸方向の長さの52%の距離離れた位置14bまで延在する領域である。次に、流入セル側触媒層用スラリーを供給したハニカム基材10を、乾燥機を使用して乾燥した後に、電気炉を使用して焼成した。これらの手順により、GPF1個当たりのRhの含有量が0.39g/個となるように流入セル側触媒層20を形成した。以上により、図8(c)に示すGPF80Uを作製した。
【0130】
そして、内燃機関50に接続されている排気流路70において、このようなGPF80Uを実施例1と同様に三元触媒80Sとともに設け、排ガス浄化システム110を作製した。
【0131】
[評価]
実施例1~4並びに比較例1~3で作製した排ガス浄化システム110について、一酸化炭素(CO)の排出の抑制効果を評価した。具体的には、まず、各例の排ガス浄化システム110を、第1実施形態に係る内燃機関の吸排気システムと同様の吸排気システム100で排ガス浄化システム110として適用した。その上で、吸排気システム100において、ECU40により、内燃機関50の減速運転時にフューエルカットを実行するように内燃機関50を制御する場合において、フューエルカットの実行開始前から実行終了後の間にGPF80Uに流入する入りガスのCO濃度及びGPF80Uから排出される出ガスのCO濃度を測定し、これらの測定結果から効果を評価した。以下、これらの測定手順及び測定結果を説明した上で、評価の内容を述べる。
【0132】
(測定手順)
最初に、各例の排ガス浄化システム110を適用した吸排気システム100において、内燃機関50としてディーゼルエンジンを装着した上で、内燃機関50を運転することで、GPF80Uに排ガスを流通させることにより、GPF80Uに対してPMをGPF1個当たりで3.9g堆積させた。
【0133】
次に、吸排気システム100において、内燃機関50としてガソリンエンジンを装着した上で、内燃機関50を運転することで、A/F(空燃比)が14.7(ストイキ)の排ガスを三元触媒80Sに供給し、Ga(吸入空気流量)=28g/sの条件において、GPF80Uに流入する入りガス温度を200℃から700℃まで昇温させた。
【0134】
次に、GPF80Uに流入する入りガス温度が700℃に安定した状態となった後に、内燃機関50の減速運転を開始し、ECU40により、減速運転時にフューエルカットを実行するように内燃機関50を制御した。この際には、スロットル弁64の開度Dthを減速時目標開度Dthtまで小さくした状態でフューエルカットが約20sec実行されるように減速運転を継続した後に、減速運転を終了することでフューエルカットの実行を終了し、燃料噴射弁からの燃料噴射を再開した。燃料噴射の再開後は、スロットル弁64の開度Dthを元に戻し、減速運転の開始前と同様の条件で内燃機関50を運転した。そして、フューエルカットの実行開始前から実行終了後の間において、GPF80Uに流入する入りガスのCO濃度及びGPF80Uから排出される出ガスのCO濃度を測定した。なお、これらのCO濃度は、GPF80Uの上流側及び下流側にそれぞれ設置した分析計により測定した。
【0135】
(測定結果)
図9は、上側が実施例1~4並びに比較例2及び3のフューエルカットの実行開始前から実行終了後の間におけるGPF80Uの入りガスのCO濃度の推移を示すグラフであり、下側が実施例1~4並びに比較例1~3のフューエルカットの実行開始前から実行終了後の間におけるGPF80Uの出ガスのCO濃度の推移を示すグラフである。図9の上側及び下側のグラフにおいて、フューエルカットの実行中の時間帯は網掛けで示されている。図10は、実施例1~4並びに比較例1~3の排ガス浄化システムのフューエルカットの実行開始前から実行終了後の間におけるGPF80Uの出ガスのCO濃度のピーク値を示すグラフである。
【0136】
図9及び図10に示すように、触媒がコートされていない非コート型のGPFをそのままGPF80Uとして用いた比較例1の排ガス浄化システム110では、フューエルカットの実行中の出ガスのCO濃度のピーク値が1000ppmを超えている。これに対して、触媒層として流出セル側触媒層30のみを備えるGPF80Uを用いた実施例1~3の排ガス浄化システム110では、フューエルカットの実行中の出ガスのCO濃度のピーク値が、触媒層として流入セル側触媒層20及び流出セル側触媒層30を備えるGPF80Uを用いた実施例4の排ガス浄化システム110のピーク値に近い水準まで大幅に低下している。一方、触媒層として流入セル側触媒層20のみを備えるGPF80Uを用いた比較例2及び3の排ガス浄化システム110では、フューエルカットの実行中の出ガスのCO濃度のピーク値は、比較例1より低下しているものの、依然として高い水準にある。これは、触媒層として流入セル側触媒層20のみを備える場合には、ハニカム基材の隔壁におけるPM中のCの不完全燃焼で発生するCOの多くの割合が、触媒層に沿って流れ、又は触媒層を透過することなく、GPF80Uから排出されるからであると考えられる。
【0137】
以上、本発明の排ガス浄化システムの実施形態について詳述したが、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。
【符号の説明】
【0138】
110 排ガス浄化システム
100 吸排気システム
40 ECU(制御装置)
50 内燃機関
60 吸気流路
70 排気流路
80S 三元触媒
80U GPF(ガソリンパティキュレートフィルタ)
10 ハニカム基材
10Sa 流入側端面
10Sb 流出側端面
12 セル
12A 流入セル
12B 流出セル
14 隔壁
14X 流入セル側触媒領域
14Y 流出セル側触媒領域
14SA 流入セル側の表面
14NA 流入セル側の内部領域
14SB 流出セル側の表面
14NB 流出セル側の内部領域
16 封止部
20 流入セル側触媒層
30 流出セル側触媒層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10