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  • 特開-磁性トナー及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011110
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】磁性トナー及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/083 20060101AFI20240118BHJP
   G03G 9/087 20060101ALI20240118BHJP
   G03G 9/097 20060101ALI20240118BHJP
   G03G 9/08 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
G03G9/083
G03G9/087 331
G03G9/097 374
G03G9/083 302
G03G9/08 381
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022112844
(22)【出願日】2022-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】599044397
【氏名又は名称】株式会社アイメックス
(74)【代理人】
【識別番号】100111811
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】宮脇 伸次
(72)【発明者】
【氏名】長尾 友美
(72)【発明者】
【氏名】秋山 悟
(72)【発明者】
【氏名】北岡 明
【テーマコード(参考)】
2H500
【Fターム(参考)】
2H500AA01
2H500AA04
2H500AA05
2H500AA09
2H500BA03
2H500BA14
2H500CA06
2H500CA34
2H500CB05
2H500CB12
2H500EA02C
2H500EA12B
2H500EA13B
2H500EA39B
2H500EA40B
2H500EA52D
2H500EA55C
2H500EA57C
2H500FA06
(57)【要約】
【課題】優れた低温定着性を有するとともに、結晶性ポリエステル樹脂のトナー粒子表面への存在が抑制され、耐熱保存性が良好で部材汚染が抑制された磁性トナーを提供する。
【解決手段】結晶性ポリエステル樹脂と磁性粉とが結着樹脂中に分散したトナー粒子の表面に複合体微粒子が付着した磁性トナーであって、前記磁性粉は、球形で、BET比表面積が8.5m/g以上13.0m/g以下で、電気抵抗が5×10Ωcm以上1×10Ωcm以下であり、前記複合体微粒子が、シリカ微粒子で表面を被覆された酸化チタン微粒子であり、前記結晶性ポリエステル樹脂と前記結着樹脂の溶解度パラメータ(SP値)の差が0.5以上3.0以下の範囲である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶性ポリエステル樹脂と磁性粉とが結着樹脂中に分散したトナー粒子の表面に複合体微粒子が付着した磁性トナーであって、
前記磁性粉は、球形で、BET比表面積が8.5m/g以上13.0m/g以下で、電気抵抗が5×10Ωcm以上1×10Ωcm以下であり、
前記複合体微粒子が、シリカ微粒子で表面を被覆された酸化チタン微粒子である
ことを特徴とする磁性トナー。
【請求項2】
前記複合体微粒子の平均一次粒子径が80nm以上300nm以下の範囲である請求項1記載の磁性トナー。
【請求項3】
前記磁性粉が、炭素数6個以上10個以下のアルキル基を有するシランカップリング剤で表面処理されたものである請求項1又は2記載の磁性トナー。
【請求項4】
前記結晶性ポリエステル樹脂と前記結着樹脂の溶解度パラメータ(SP値)の差が0.5以上3.0以下の範囲である請求項1又は2記載の磁性トナー。
【請求項5】
請求項1又は2記載の磁性トナーの製造方法であって、
結晶性ポリエステル樹脂と、磁性粉と、結着樹脂とを混合して混合物を得る混合工程と、
前記混合物を溶融混練して混練物を得る混練工程と、
前記混練物を粗粉砕して粗粉砕物を得る粗粉砕工程と、
前記粗粉砕物を熱処理するアニール工程と、
前記熱処理した粗粉砕物を微粉砕して微粉砕物を得る微粉砕工程と、
前記微粉砕物を分級して所定粒径のトナー粒子を得る分級工程と、
前記トナー粒子と複合体微粒子とを混合して前記トナー粒子の表面に前記複合体微粒子を付着させる表面処理工程と
を有することを特徴とする磁性トナーの製造方法。
【請求項6】
前記アニール工程における熱処理温度が、前記結晶性ポリエステル樹脂の融点よりも5℃以上低く、且つ、前記結着樹脂のガラス転移温度よりも高い温度であり、
熱処理時間が3時間以上24時間以下の範囲である
請求項5記載の磁性トナーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は磁性トナー及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、複写機やプリンター、ファクシミリなどの電子写真方式の画像形成装置において、省エネルギー化や高速化といった市場の要求に応えるため、トナーの低温定着性の向上が求められている。そして、トナーの低温定着性を向上させる一つの技術として、結着樹脂中に結晶性ポリエステル樹脂を含有させることが行われている。
【0003】
ところが、結晶性ポリエステル樹脂がトナー粒子の表面に存在すると、トナー粒子表面が軟化して、トナー粒子表面に付着している表面処理剤がトナー粒子中に埋没して耐熱保存性が悪化したり、表面処理剤がトナー粒子表面から脱離して現像ローラ等の表面に付着して汚染させることがあった。またトナーの帯電安定性も悪化し画像濃度の低下をもたらすこともあった
【0004】
特許文献1では、結着樹脂にシクロヘキサン可溶分を含有させ、これによって結晶性ポリエステルの分散を改良し、トナーの保存性や粉砕性を悪化させずに現像部材等の汚染を抑制する技術が提案されている。
【0005】
特許文献2では、結晶性ポリエステル樹脂と炭化水素ワックスとの相溶性に着目し、これらを混合して共晶を形成させて、結晶性ポリエステル樹脂のトナー粒子内での分散性を向上させるとともに、結晶性ポリエステル樹脂などがトナー粒子表面に滲出する現象を抑制する技術が提案されている。また特許文献3では、ワックスを結晶核剤として機能させることで結晶性ポリエステルの結晶化度を向上させ、トナーの耐熱保存性や帯電安定性の低下を抑制する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006-154625号公報
【特許文献2】特開2021-124654号公報
【特許文献3】特開2021-165858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしなら、上記提案の技術では、例えば、特許文献1では結着樹脂としてポリエステルユニットとビニル重合体ユニットとからなるハイブリッド樹脂を用い、特許文献2と特許文献3の実施例では結着樹脂としてスチレン-アクリル樹脂を用いているため、トナーが定着器を通過したときの結晶性ポリエステル樹脂の結着樹脂への相溶性が限定的であって、低温定着性の改良が十分でないおそれがある。
【0008】
また、特許文献1および特許文献2と特許文献3の一部の実施例では、混練粉砕系トナーを作製し用いているところ、結晶性ポリエステル樹脂がトナー粒子表面に存在することによる耐熱保存性や部材汚染等の問題については未だ改良の余地があると考えられる。
【0009】
本発明はこのような従来の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、優れた低温定着性を有するとともに、結晶性ポリエステル樹脂のトナー粒子表面への存在が抑制され、耐熱保存性が良好で表面処理剤による部材汚染が抑制された磁性トナーを提供することにある。
【0010】
また本発明の他の目的は、低温定着性および耐熱保存性に優れ、表面処理剤による部材汚染が抑制可能な磁性トナーを効率的に製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成する本発明に係る磁性トナーは、結晶性ポリエステル樹脂と磁性粉とが結着樹脂中に分散したトナー粒子の表面に複合体微粒子が付着した磁性トナーであって、前記磁性粉は、球形で、BET比表面積が8.5m/g以上13.0m/g以下で、電気抵抗が5×10Ωcm以上1×10Ωcm以下であり、前記複合体微粒子が、シリカ微粒子で表面を被覆された酸化チタン微粒子であることを特徴とする。
【0012】
前記構成の磁性トナーにおいて、前記複合体微粒子の平均一次粒子径が80nm以上300nm以下の範囲であるのが好ましい。
【0013】
前記構成の磁性トナーにおいて、前記磁性粉が、炭素数6個以上10個以下のアルキル基を有するシランカップリング剤で表面処理されたものであるのが好ましい。
【0014】
前記構成の磁性トナーにおいて、前記結晶性ポリエステル樹脂と前記結着樹脂の溶解度パラメータ(SP値)の差が0.5以上3.0以下の範囲であるのが好ましい。
【0015】
また本発明によれば、前記記載の磁性トナーの製造方法であって、結晶性ポリエステル樹脂と、磁性粉と、結着樹脂とを混合して混合物を得る混合工程と、前記混合物を溶融混練して混練物を得る混練工程と、前記混練物を粗粉砕して粗粉砕物を得る粗粉砕工程と、前記粗粉砕物を熱処理するアニール工程と、前記熱処理した粗粉砕物を微粉砕して微粉砕物を得る微粉砕工程と、前記微粉砕物を分級して所定粒径のトナー粒子を得る分級工程と、前記トナー粒子と複合体微粒子とを混合して前記トナー粒子の表面に前記複合体微粒子を付着させる表面処理工程とを有することを特徴とする。
【0016】
前記構成の製造方法において、前記アニール工程における熱処理温度が、前記結晶性ポリエステル樹脂の融点よりも5℃以上低く、且つ、前記結着樹脂のガラス転移温度よりも高い温度であり、熱処理時間が3時間以上24時間以下の範囲であるのが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る磁性トナーによれば、優れた低温定着性が得られるとともに、結晶性ポリエステル樹脂のトナー粒子表面の存在が抑制されて、優れた耐熱保存性が得られ、表面処理剤による部材汚染も抑制される。
【0018】
本発明に係る製造方法によれば、低温定着性および耐熱保存性に優れ、表面処理剤による部材汚染が抑制可能な磁性トナーを効率的に製造可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施例および比較例の磁性トナーの評価に用いた現像装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の具体的な実施形態例について詳述するが、本発明はこれらの実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜、変更を加えて実施することができる。
【0021】
本明細書において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。また、本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
【0022】
(磁性粉)
本発明に係る磁性トナーの大きな特徴の一つは、結着樹脂中に分散させる磁性粉が、球形で、BET比表面積が8.5m/g以上13.0m/g以下で、電気抵抗が5×10Ωcm以上1×10Ωcm以下であることである。
【0023】
本発明者等は、結晶性ポリエステル樹脂のトナー粒子表面の存在量を抑制できないかと鋭意検討を重ねた結果、いわゆる混練・粉砕法で作製される磁性トナーにおいて、製造過程の粉砕工程で結着樹脂と磁性粉との界面での割れが起こりやすくすることで、結晶性ポリエステル樹脂のトナー粒子表面の存在量を抑えることができることを見出した。そして、粉砕工程において結着樹脂と磁性粉との界面での割れを促進させるには、使用する磁性粉として形状が球形で、BET比表面積が8.5m/g以上13.0m/g以下のものを用いればよいとの知見を得た。なお、磁性粉が球形とは、完全な球形だけでなく、球形に近い形状も含まれる。磁性粉が球形であるかどうかは、例えば、磁性粉を走査型電子顕微鏡を用いて30000倍に拡大して観察し、形状が六面体形状や八面体形状でなく、多面体形状に特徴的な角張った部分が存在しないかどうかで判断すればよい。磁性粉が球形であることによって、磁性粉がトナー粒子表面に露出した場合であってもトナー帯電量の低下が抑制される。加えて結着樹脂中での磁性粉の分散性が向上する。
【0024】
磁性粉のBET比表面積が8.5m/gよりも小さい、すなわち磁性粉の粒径が大きすぎると、結着樹脂と磁性粉との界面よりも結着樹脂と結晶性ポリエステル樹脂との界面での割れが起こりやすくなって、結晶性ポリエステル樹脂のトナー粒子表面の存在量が増えて磁性トナーの耐熱保存性などが悪化する。一方、磁性粉のBET比表面積が13.0m/gよりも大きい、すなわち磁性粉の粒径が小さすぎると、磁性粉同士の凝集力が強くなりすぎて結着樹脂中の分散が困難になり、トナー帯電量の低下やそれに伴う画像濃度の低下といった不具合が生じる。
【0025】
一方、結着樹脂と磁性粉との界面での割れを起こし易くすると、磁性粉のトナー粒子表面の露出が増加し磁性トナーの電気抵抗が低下し帯電量不足が生じるおそれがある。そこで本発明では、使用する磁性粉の形状を球形とするとともに、電気抵抗の高い磁性粉を使用することにして、電気抵抗を5×10Ωcm以上1×10Ωcm以下の範囲とした。磁性粉の電気抵抗が5×10Ωcmよりも小さいと高温・高湿環境下において画像濃度が低下するおそれがある。磁性粉の電気抵抗が1×10Ωcmよりも大きいと低温低湿環境下において磁性トナーが過剰に帯電して非画像部に磁性トナーが付着するカブリ現象が悪化するといった不具合が生じる。
【0026】
本発明で使用する磁性粉の材質としては、例えば、鉄、コバルト、ニッケルなどの強磁性金属、もしくはマグネタイト、ヘマタイト、フェライトなどの合金や化合物の粉末が挙げられる。
【0027】
磁性粉は、シランカップリング剤等で表面処理されているのが好ましい。シランカップリング剤としては炭素数6~10のアルキル基を有するシランカップリング剤が好適である。このようなシランカップリング剤で表面処理することで、磁性粉がトナー粒子表面に露出したときのトナーの電気抵抗の低下が抑制され、特に高温・高湿環境下での画像濃度低下が抑えられる。
【0028】
トナー粒子における磁性粉の含有量は、通常、結着樹脂100質量部に対して50質量部~300質量部の範囲が好ましく、より好ましくは70質量部~150質量部の範囲である。
【0029】
(複合体微粒子)
本発明に係る磁性トナーのもう一つの大きな特徴は、トナー粒子の表面に付着させる複合体微粒子が、シリカ微粒子で表面を被覆された酸化チタン微粒子であることである。トナー粒子表面の複合体微粒子は、いわゆるスペーサとしての機能を発揮する。
【0030】
トナー粒子の表面および表面近傍に存在する結晶性ポリエステル樹脂の影響で複合体微粒子がトナー粒子表面から離脱することを完全に防止することは不可能であるが、当該複合体微粒子がシリカ微粒子で表面を被覆された酸化チタン微粒子であると、当該複合体微粒子の電気抵抗は5×1013Ωcm程度と、トナー粒子の表面処理剤としてこれまで広く使用されてきた疎水性シリカほどは高くないので、トナー粒子表面から脱離して現像ローラや帯電ローラの表面に付着してもトナー画像に与える悪影響は現れにくい。
また、当該複合体微粒子は、通常の酸化チタン微粒子の電気抵抗(10Ωcm程度)よりも高いのでトナー帯電量を低下させることもない。
【0031】
酸化チタン微粒子の平均一次粒子径は80nm~300nmの範囲が好ましく、シリカ微粒子の平均一次粒子径は5nm~60nmの範囲が好ましい。そして、シリカ微粒子の平均一次粒子径は、酸化チタン微粒子の平均一次粒子径の1/60~1/5の範囲であるのが好ましい。また、酸化チタン微粒子とシリカ微粒子の配合比率は質量比で99/1~40/60の範囲が好ましい。複合体微粒子の平均一次粒子径は80nm~300nmの範囲が好ましい。より好ましい複合体微粒子の平均一次粒子径は200nm~300nmの範囲である。
【0032】
複合体微粒子の添加量は、トナー粒子100質量部に対して0.1質量部~4.0質量部の範囲が好ましい。より好ましくは0.2質量部~2.0質量部である。
【0033】
このような複合体微粒子は、例えば、酸化チタン微粒子とシリカ微粒子とをイソプロピルアルコールなどの有機溶媒で希釈したシリコーンオイルなどの有機疎水化剤の存在下で混合し、次いで加熱して有機疎水化剤を反応させて酸化チタン微粒子の表面にシリカ微粒子を結合させることによって作製される。
【0034】
(結晶性ポリエステル樹脂)
本発明で使用する結晶性ポリエステル樹脂としては、従来公知のものを使用できるが、脂肪族ジカルボン酸及び脂肪族ジオールの縮合物であることが好ましい。さらに、飽和ポリエステルであると一層好ましい。なお、本明細書における「結晶性」とは、示差走査熱量測定(DSC)の測定において明確な吸熱ピークを有する(融点Tmを有する。)ことを意味するものとする。「非晶性」とは、明確な吸熱ピークを有さないことを意味するものとする。
【0035】
脂肪族ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等が挙げられる。
【0036】
脂肪族ジオールとしては、具体的には、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール等が挙げられる。
【0037】
結晶性ポリエステルの結晶性の点で、カルボン酸成分のうち、直鎖型脂肪族ジカルボン酸の含有量が80mol%以上100mol%以下であることが好ましく、90mol%以上100mol%以下であることがより好ましく、100mol%であることがさらに好ましい。
結晶性ポリエステルの結晶性の点で、ポリオール成分のうち、直鎖型脂肪族ジオールの含有量が80mol%以上100mol%以下であることが好ましく、90mol%以上100mol%以下であることがより好ましく、100mol%であることがさらに好ましい。
【0038】
結晶性ポリエステルの添加量は、結着樹脂100質量部に対して1質量部~10質量部の範囲が好ましい。
【0039】
(結着樹脂)
本発明で使用する結着樹脂としては従来公知の樹脂を用いることができる。例えば、スチレン系樹脂、アクリル酸系樹脂、オレフィン系樹脂、ビニル樹脂、非晶性ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂、スチレンアクリル酸系樹脂、又はスチレンブタジエン系樹脂が挙げられる。これらの中でも、非晶性ポリエステル樹脂が好適に使用される。
【0040】
ここで、結着樹脂と結晶性ポリエステル樹脂との溶解度パラメータ(SP値)の差が0.5以上3.0以下の範囲が好ましい。溶解度パラメータの差がこの範囲であることで結着樹脂中での結晶性ポリエステル樹脂の分散性が向上し、結着樹脂の過度の可塑化が抑制される。
【0041】
(その他の内添剤)
トナー粒子には電荷制御剤や離型剤などの従来公知の内添剤を必要により添加してもよい。電荷制御剤としては、例えば、正帯電性電荷制御剤としては、ニグロシン染料、脂肪酸変性ニグロシン染料、カルボキシル基含有脂肪酸変性ニグロシン染料、四級アンモニウム塩、アミン系化合物、有機金属化合物等を使用できる。負帯電性電荷制御剤としては、オキシカルボン酸の金属錯体、アゾ化合物の金属錯体、金属錯塩染料やサリチル酸誘導体等が使用できる。電荷制御剤の添加量は、結着樹脂100質量部に対して0.1質量部~10質量部の範囲が好ましい。
【0042】
離型剤としては、例えば、各種ワックス類や低分子量オレフィン系樹脂が使用される。ワックス類としては、例えば脂肪酸の多価アルコールエステル、脂肪酸の高級アルコールエステル、アルキレンビス脂肪酸アミド化合物、天然ワックスが使用される。低分子量オレフィン系樹脂としては、数平均分子量が1,000~10,000、特に2,000~6,000の範囲にあるポリプロピレン、ポリエチレン、プロピレン-エチレン共重合体等が使用がされ、特にポリプロピレンが好適に使用される。離型剤の添加量は、結着樹脂100質量部に対して0.1質量部~10質量部が好ましい。
【0043】
(その他の表面処理剤)
トナー粒子の表面には、前記複合体微粒子のほか、従来公知の表面処理剤が付着していてもよい。このような表面処理剤としては、例えば、トナーの帯電制御性や嵩密度(流動性)等を調整するために、(疎水性)シリカ、アルミナ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム等の無機微粉末;ポリメチルメタクリレート等の有機微粉末;ステアリン酸亜鉛等の脂肪酸金属塩等が使用でき、これらの1種又は2種以上を併用することができる。表面処理剤の添加量は、トナー粒子100質量部に対して0.1質量部~2.0質量部の範囲が好ましい。当該表面処理剤とトナー粒子との混合は、例えばヘンシェルミキサー、V型混合機、ターブラーミキサー、ハイブリダイザー等を用いて行うことができる。
【0044】
本発明の磁性トナーは、一成分系および二成分系のいずれの現像剤としても用いることができる。二成分系現像剤として用いる場合のキャリアとしては、鉄、ニッケル、コバルト等の磁性体金属及びそれらの合金、あるいは希土類を含有する合金類、ヘマタイト、マグネタイト、マンガン-亜鉛系フェライト、ニッケル-亜鉛系フェライト、マンガン-マグネシウム系フェライト、リチウム系フェライトなどのソフトフェライト、銅-亜鉛系フェライト等の鉄系酸化物及びそれらの混合物等の磁性体材料を焼結及びアトマイズ等を行うことによって製造した磁性体粒子、及び当該磁性体粒子の表面を樹脂被覆したものを使用することができる。また、上記キャリアとして磁性体分散型樹脂を使用することもできる。この場合、用いる磁性体としては上記磁性体材料が使用でき、結着樹脂としては、例えばビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、セルロース樹脂、ポリエーテル樹脂あるいはこれらの混合物を挙げることができる。
【0045】
キャリアの粒子径は、一般に電子顕微鏡法による粒径で表して25μm~200μm、特に30μm~100μmのものが好ましい。またキャリアの見掛け密度は、磁性材料を主体とする場合は磁性体の組成や表面構造等によっても相違するが、一般に2.4g/cm~3.0g/cmの範囲が好ましい。
【0046】
二成分系現像剤中のトナー濃度は1質量%~10質量%、好ましくは1質量%~7質量%である。トナー濃度が1質量%未満の場合、画像濃度が薄くなりすぎ、他方トナー濃度が10質量%を超える場合、現像装置内でトナー飛散が発生し機内汚れや転写紙などの背景部分にトナーが付着する不具合が生じるおそれがあるからである。
【0047】
(磁性トナーの製造方法)
本発明に係る磁性トナーの製造方法に特に限定はないが、次のようにして製造するのが好ましい。以下、磁性トナー製造の各工程について順に説明する。
【0048】
(混合工程)
結着樹脂、結晶性ポリエステル樹脂、磁性粉、その他必要により添加剤を秤量し混合して混合物を得る。添加剤としては、例えば、前述のように電荷制御剤、離型剤などが挙げられる。各原料の混合は、従来公知の混合機を用いることができる。混合機としては、例えば、ヘンシェルミキサやV型混合機、ボールミルなどが好適に使用される。
【0049】
(混練工程)
次に、得られた混合物は、従来公知の加熱混練機で加熱溶融・混合され混練物とされる。混練機としては、例えば、2軸混練機やニーダー、エクストルーダーなどが好適に使用される。
【0050】
(粗粉砕工程)
前記混練物はドラムフレーカー等を用いて冷却固化された後、ハンマーミル等の粉砕機で粗粉砕されて粗粉砕物とされる。粗粉砕物の粒径は、一般に、50μm~5000μmの範囲が好ましい。ただし、後工程でアニール処理を行う場合は、粒子径を揃えた方が均一に処理できるので、目開き3mm以下のスクリーンで分級するなどして、粗粉砕物の粒径の上限値は3000μm以下(3mm以下)にした方がよい。
【0051】
(アニール工程)
前記粗粉砕物をアニール処理(加熱処理)する。アニール処理することでトナー粒子中の結晶性ポリエステル樹脂の結晶化度が高まり、耐熱保存性およびトナー耐久性が向上し、現像ローラや帯電ローラの表面汚染が一層抑制される。アニール処理における熱処理温度は、結晶性ポリエステル樹脂の融点よりも5℃以上低く、且つ、結着樹脂のガラス転移温度よりも高い温度であるのが好ましい。また熱処理時間は3時間~24時間の範囲が好ましい。アニール処理は、温度制御可能な流動層乾燥機等、公知の乾燥機を使用することができる。
【0052】
(微粉砕工程)
前記熱処理した粗粉砕物を機械式粉砕機等を用いて所定粒径まで粉砕して微粉砕物を得る。
【0053】
(分級工程)
前記微粉砕物を風力分級機等を用いて分級して所定粒径のトナー粒子を得る。トナー粒子の平均粒径としては5μm~15μmの範囲が好ましい。
【0054】
(表面処理工程)
作製したトナー粒子と、所定量の複合体微粒子と、必要によりその他の表面処理剤とを撹拌機に投入して、トナー粒子の表面に複合体微粒子、その他の表面処理剤を付着させる。撹拌機としては、例えば、ヘンシェルミキサー、V型混合機、ターブラミキサー、ハイブリタイザーなどが用いられる。
【0055】
なお、結着樹脂中の結晶性ポリエステル樹脂の結晶化度を高める必要性のない場合などは、アニール工程を省いて混練物を粗粉砕・微粉砕して所定粒径のトナー粒子を得るようにしてもよい。
【実施例0056】
以下説明する実施例および比較例で使用する原料は下記のとおりである。
【0057】
(複合体微粒子Aの作製)
メチルハイドロジェンシリコーンオイル(信越化学工業社製「KF-9901」)をイソプロピルアルコールで50質量%に希釈して疎水化剤溶液を作製した。
平均一次粒子径250nmの酸化チタン微粒子90質量部をFMミキサーに投入し、疎水化剤溶液をスプレーで添加しながら15分間混合した。
次いで、平均一次粒子径7nmの未処理シリカ微粒子を30質量部FMミキサーに投入し、メチルハイドロジェンシリコーンオイル(信越化学工業社製「KF-9901」)10質量部をさらにスプレーで添加しながら30分間さらに混合した。
得られた微粒子混合物を循環式熱風棚式乾燥器に入れて150℃で2時間熱処理を行った。その後、乾燥物をFMミキサーで解砕して複合体微粒子Aを作製した。
【0058】
(複合体微粒子Bの作製)
平均一次粒子径が100nmの酸化チタン微粒子を用いた以外は複合体微粒子Aと同様にして複合体微粒子Bを作製した。
【0059】
(結着樹脂)
・非晶性ポリエステル樹脂A(ガラス転移点Tg:59℃,T1/2:122℃,SP値:11.0,酸価:9.0mgKOH/g)
・非晶性ポリエステル樹脂B(ガラス転移点Tg:58℃,T1/2:127℃,SP値:11.9,酸価:6.2mgKOH/g)
・非晶性ポリエステル樹脂C(ガラス転移点Tg:57℃,T1/2:120℃,SP値:13.1,酸価:9.0mgKOH/g)
【0060】
(結晶性ポリエステル樹脂)
・結晶性ポリエステル樹脂A(T1/2:73℃,SP値:9.7,酸価11.0mgKOH/g)
【0061】
(磁性粉)
・磁性粉A(表面処理:なし,形状:球形,平均粒径:170nm,BET比表面積:9.5m/g,電気抵抗:1×10Ωcm)
・磁性粉B(表面処理:ヘキシルトリメトキシシラン,形状:球形,平均粒径:170nm,BET比表面積:9.3m/g,電気抵抗:2×10Ωcm)
・磁性粉C(表面処理:なし,形状:球形,平均粒径:210nm,BET比表面積:7.6m/g,電気抵抗:1×10Ωcm)
・磁性粉D(表面処理:なし,形状:球形,平均粒径:200nm,BET比表面積:9.1m/g,電気抵抗:8×10Ωcm)
・磁性粉E(表面処理:なし,形状:八面体,平均粒径:180nm,BET比表面積:7.7m/g,電気抵抗:2×10Ωcm)
【0062】
(シリカ(表面処理剤))
・シリカA:日本アエロジル社製「RY200」(ジメチルポリシロキサンで表面処理,平均一次粒子径12nm)
・シリカB:キャボット社製「TG-C390」(オクチルシランで表面処理,平均一次粒子径65nm)
・シリカC:信越化学工業社製「X24-9600A」(ヘキサメチレンジシラザン(HMDS)で表面処理,平均一次粒子径100nm)
【0063】
実施例1
非晶性ポリエステル樹脂A(結着樹脂)100質量部に対して、結晶性ポリエステル樹脂Aを6.4質量部、磁性体Aを97.8質量部、電荷制御剤(保土ヶ谷化学工業社製「T-77」)を2.1質量部、パラフィンワックス(日本精蝋社製「HNP-9」)を4.2質量部、ポリプロピレンワックス(三洋化成工業社製「ビスコール660P」)を2.1質量部、ヘンシェルミキサに投入し、周速30m/sで3分間混合し混合物を得た。
次に、得られた混合物を二軸押出機(池貝社製「PCM30」)で加熱溶融・混合して混練物を得た。そして混練物を冷却固化した。
その後、冷却固化した混練物を粉砕機(アーステクニカ社製「KTM」)で粉砕し、次いで分級機(日本ニューマチック工業社製「DSX分級機」)を用いて分級を行って平均粒径9.0μmのトナー粒子を得た。
得られたトナー粒子100質量部に対して、シリカA(日本アエロジル社製「RY200」)を0.7質量部と、複合体微粒子Bを0.6質量部とをヘンシェルミキサに投入し、周速40m/sで10分間混合して、トナー粒子の表面にシリカAと複合体微粒子Bとが付着した磁性トナーを得た。
得られた磁性トナーについて下記評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0064】
実施例2
実施例1と同様にして得たトナー粒子100質量部に対して、シリカA(日本アエロジル社製「RY200」)を0.7質量部と、複合体微粒子Aを1.0質量部とをヘンシェルミキサに投入し、周速40m/sで10分間混合して、トナー粒子の表面にシリカAと複合体微粒子Aとが付着した磁性トナーを得た。
得られた磁性トナーについて実施例1と同様に評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0065】
実施例3
磁性体として磁性体Aに換えて磁性体Bを用いた以外は実施例1と同様にしてトナー粒子を得た。得られたトナー粒子100質量部に対して、シリカA(日本アエロジル社製「RY200」)を0.7質量部と、複合体微粒子Aを1.0質量部とをヘンシェルミキサに投入し、周速40m/sで10分間混合して、トナー粒子の表面にシリカAと複合体微粒子Aとが付着した磁性トナーを得た。
得られた磁性トナーについて実施例1と同様に評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0066】
実施例4
結着樹脂として非晶性ポリエステル樹脂Aに換えて非晶性ポリエステル樹脂Bを用いた以外は実施例1と同様にしてトナー粒子を得た。得られたトナー粒子100質量部に対して、シリカA(日本アエロジル社製「RY200」)を0.7質量部と、複合体微粒子Aを1.0質量部とをヘンシェルミキサに投入し、周速40m/sで10分間混合して、トナー粒子の表面にシリカAと複合体微粒子Aとが付着した磁性トナーを得た。
得られた磁性トナーについて実施例1と同様に評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0067】
実施例5
非晶性ポリエステル樹脂A(結着樹脂)100質量部に対して、結晶性ポリエステル樹脂Aを6.4質量部、磁性体Bを97.8質量部、電荷制御剤(保土ヶ谷化学工業社製「T-77」)を2.1質量部、パラフィンワックス(日本精蝋社製「HNP-9」)を4.2質量部、ポリプロピレンワックス(三洋化成工業社製「ビスコール660P」)を2.1質量部、ヘンシェルミキサに投入し、周速30m/sで3分間混合し混合物を得た。
次に、得られた混合物を二軸押出機(池貝社製「PCM30」)で加熱溶融・混合して混練物を得た。そして混練物を冷却固化した後、粉砕機(ホソカワミクロン社製「ロートプレックス」)で目開き3mmのスクリーンを備えて粗粉砕して粗粉砕物を得た。
得られた粗粉砕物を温度62℃で6時間加熱処理(アニール工程)した後、粉砕機(アーステクニカ社製「KTM」)で微粉砕を行い、次いで分級機(日本ニューマチック社製「DSX分級機」)を用いて分級を行って平均粒径9.0μmのトナー粒子を得た。
その後、トナー粒子100質量部と、表面処理剤としてのシリカA(日本アエロジル社製「RY200」)を0.7質量部と複合体微粒子Aを1.0質量部とをヘンシェルミキサに投入し、周速40m/sで10分間混合して、トナー粒子の表面にシリカAと複合体微粒子Aとが付着した磁性トナーを得た。
得られた磁性トナーについて実施例1と同様に評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0068】
比較例1
磁性体として磁性体Aに換えて磁性体Cを用いた以外は実施例1と同様にしてトナー粒子を得た。得られたトナー粒子100質量部に対して、シリカA(日本アエロジル社製「RY200」)を0.7質量部と、複合体微粒子Aを1.0質量部とをヘンシェルミキサに投入し、周速40m/sで10分間混合して、トナー粒子の表面にシリカAと複合体微粒子Aとが付着した磁性トナーを得た。
得られた磁性トナーについて実施例1と同様に評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0069】
比較例2
磁性体として磁性体Aに換えて磁性体Dを用いた以外は実施例1と同様にしてトナー粒子を得た。得られたトナー粒子100質量部に対して、シリカA(日本アエロジル社製「RY200」)を0.7質量部と、複合体微粒子Aを1.0質量部とをヘンシェルミキサに投入し、周速40m/sで10分間混合して、トナー粒子の表面にシリカAと複合体微粒子Aとが付着した磁性トナーを得た。
得られた磁性トナーについて実施例1と同様に評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0070】
比較例3
磁性体として磁性体Aに換えて磁性体Eを用いた以外は実施例1と同様にしてトナー粒子を得た。得られたトナー粒子100質量部に対して、シリカA(日本アエロジル社製「RY200」)を0.7質量部と、複合体微粒子Aを1.0質量部とをヘンシェルミキサに投入し、周速40m/sで10分間混合して、トナー粒子の表面にシリカAと複合体微粒子Aとが付着した磁性トナーを得た。
得られた磁性トナーについて実施例1と同様に評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0071】
比較例4
結着樹脂として非晶性ポリエステル樹脂Aに換えて非晶性ポリエステル樹脂Cを用いた以外は実施例1と同様にしてトナー粒子を得た。得られたトナー粒子100質量部に対して、シリカA(日本アエロジル社製「RY200」)を0.7質量部と、複合体微粒子Aを1.0質量部とをヘンシェルミキサに投入し、周速40m/sで10分間混合して、トナー粒子の表面にシリカAと複合体微粒子Aとが付着した磁性トナーを得た。
得られた磁性トナーについて実施例1と同様に評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0072】
比較例5
実施例1と同様にして得たトナー粒子100質量部に対して、シリカA(日本アエロジル社製「RY200」)を0.7質量部と、シリカB(キャボット社製「TG-C390」)を0.6質量部とをヘンシェルミキサに投入し、周速40m/sで10分間混合して、トナー粒子の表面にシリカAとシリカBとが付着した磁性トナーを得た。
得られた磁性トナーについて実施例1と同様に評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0073】
比較例6
実施例1と同様にして得たトナー粒子100質量部に対して、シリカA(日本アエロジル社製「RY200」)を0.7質量部と、シリカC(信越化学工業社製「X24-9600A」)を0.6質量部とをヘンシェルミキサに投入し、周速40m/sで10分間混合して、トナー粒子の表面にシリカAとシリカCとが付着した磁性トナーを得た。
得られた磁性トナーについて実施例1と同様に評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0074】
(定着率)
印字率100%のベタ画像を出力して、メンディングテープをベタ画像に貼り付け、その後剥離し、テープ貼付前の画像濃度とテープ剥離後の画像濃度とを測定して下記式から定着率を測定した。
定着率(%)=(テープ剥離後の画像濃度)/(テープ貼付前の画像濃度)
【0075】
(耐熱保存性)
磁性トナー20gを温度50℃の恒温槽に24時間載置した後、42meshの篩で15秒間篩って篩上に残った磁性トナー量を測定した。
【0076】
(結晶性ポリエステル樹脂(C-PES)の分散性)
TEM観察でトナー粒子中での結晶性ポリエステル樹脂のドメインを観察し、ドメインの長軸径を測定した。磁性トナー30個での長軸径の平均を算出し下記基準で評価した。
平均長軸径
○:0.3μm以下
△:0.3μm超0.6μm以下
×:0.6μm超
【0077】
(帯電ローラ汚染評価)
図1に模式図を示す磁性一成分現像装置D(現像ローラ11,帯電ブレード12,撹拌翼13,感光体ドラム21,帯電ローラ22,転写ローラ23,クリーニングブレード24,露光31,用紙P)を備えた印刷速度60ppmのプリンターに各実施例および各比較例の磁性トナーを充填し、低温/低湿(10℃/20%)環境下で、印字率5%のテキストチャートを用いて2000枚連続印字した。
連続印字後の帯電ローラ表面の汚染状態を目視にて観察し以下の基準で評価した。
レベル
1:帯電ローラの表面に全く汚染なし
2:帯電ローラの表面が白色粒子(表面処理剤)の付着で多少白くなるがトナー画像に不具合なし
3:帯電ローラの表面が白色粒子(表面処理剤)の付着で真っ白くなりトナー画像の白色部分に黒点が発生する。
【0078】
(現像ローラ汚染評価)
帯電ローラ汚染評価と同じ現像装置を用いて高温/高湿(30℃/80%)環境下で、印字率5%のテキストチャートを用いて2000枚連続印字した。
連続印字後の現像ローラ表面の汚染状態をマイクロスコープを用いて観察し以下の基準で評価した。
レベル
1:現像ローラの表面に汚染なく、トナー画像にも不具合なし
2:現像ローラ表面の所々にトナー溶融物が見られたがトナー画像に不具合なし
3:現像ローラ表面の全体にトナー溶融物が見られ、トナー画像のベタ画像に濃度ムラが見られる。
【0079】
(高温/高湿(H/H)環境下での画像濃度評価)
帯電ローラ汚染評価と同じ現像装置を用いて高温/高湿(30℃/80%)環境下で、印字率5%のテキストチャートを用いて2000枚連続印字した。連続印字後にベタ画像を印刷してトナー画像濃度を測定した。
【0080】
【表1】
【0081】
【表2】
【0082】
表2から明らかなように、実施例1~5の磁性トナーは結晶性ポリエステル樹脂(C-PES)の分散性が良好で、所望の定着率を維持しながら所望の耐熱保存性が得られた。また、表面処理剤による帯電ローラおよび現像ローラの汚染もトナー画像に不具合が出ない程度に抑えられた。そしてまた、高温・高湿環境下でのベタ画像濃度も十分なものであった。加えて、製造工程においてアニール処理を行った実施例5に磁性トナーでは、結晶性ポリエステル樹脂の結着樹脂中での分散性に優れ耐熱保存性が0.1gと大変良好であった。
【0083】
これに対して、BET比表面積の小さい磁性粉を用いた比較例1の磁性トナーでは、結晶性ポリエステル樹脂のトナー粒子表面への露出が多くなって耐熱保存性が低下した。また、現像ローラ表面の所々にトナー溶融物が見られた。
【0084】
電気抵抗の低い磁性粉を用いた比較例2の磁性トナー、および八面体形状で、BET比表面積が小さく、電気抵抗の低い磁性粉を用いた比較例3の磁性トナーでは、高温・高湿環境下においてトナー帯電量が低下してベタ画像濃度が低くかった。
【0085】
結着樹脂としてSP値が高い非晶性ポリエステル樹脂を用いた比較例4の磁性トナーでは、結晶性ポリエステル樹脂と結着樹脂とのSP値の差が3.4と大きく、結着樹脂中での結晶性ポリエステル樹脂の分散性が低く、定着率と耐熱保存性のいずれも悪かった。また、現像ローラ表面の全体にトナー溶融物が見られ、トナー画像のベタ画像に濃度ムラが見られた。そして高温・高湿環境下におけるベタ画像濃度も低くかった。
【0086】
表面処理剤として複合体微粒子を用いずにオクチルシランで表面処理したシリカ微粒子を用いた比較例5の磁性トナーでは、現像ローラ表面の全体にトナー溶融物が見られ、トナー画像のベタ画像に濃度ムラが見られた。また表面処理剤として複合体微粒子を用いずにHMDSで表面処理したシリカ微粒子を用いた比較例6の磁性トナーでは、高温・高湿環境下においてトナー帯電量が低下してベタ画像濃度が低下した。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明に係る磁性トナーによれば、優れた低温定着性が得られるとともに、結晶性ポリエステル樹脂のトナー粒子表面の存在が抑制されて、優れた耐熱保存性が得られ、表面処理剤に起因する部材汚染も抑制される。
【符号の説明】
【0088】
D 現像装置
P 用紙
11 現像ローラ
12 帯電ブレード
13 撹拌翼
21 感光体ドラム
22 帯電ローラ
23 転写ローラ
24 クリーニングブレード
31 露光
図1