(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111115
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】電解液、二次電池、電池モジュール、電池パック及び電力消費装置
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0567 20100101AFI20240808BHJP
H01M 10/0568 20100101ALI20240808BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20240808BHJP
H01M 10/054 20100101ALI20240808BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20240808BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20240808BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20240808BHJP
H01M 4/58 20100101ALI20240808BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20240808BHJP
H01M 4/136 20100101ALI20240808BHJP
H01M 4/131 20100101ALI20240808BHJP
【FI】
H01M10/0567
H01M10/0568
H01M10/052
H01M10/054
H01M4/62 Z
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/58
H01M4/36 A
H01M4/136
H01M4/131
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024097955
(22)【出願日】2024-06-18
(62)【分割の表示】P 2022557174の分割
【原出願日】2021-09-24
(71)【出願人】
【識別番号】513196256
【氏名又は名称】寧徳時代新能源科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Contemporary Amperex Technology Co., Limited
【住所又は居所原語表記】No.2,Xingang Road,Zhangwan Town,Jiaocheng District,Ningde City,Fujian Province,P.R.China 352100
(74)【代理人】
【識別番号】100159329
【弁理士】
【氏名又は名称】三縄 隆
(72)【発明者】
【氏名】彭 ▲暢▼
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼ 培培
(72)【発明者】
【氏名】▲鄒▼ ▲海▼林
(57)【要約】
【課題】本願は、高電圧システムのサイクル膨張に起因してサイクル応力が大きいという問題を解決するための電解液を提供することを目的とする。
【解決手段】本願は、電解液、前記電解液を含む二次電池、電池モジュール、電池パック及び電力消費装置を提供し、前記電解液は、S=O又はP=Oを含有するフッ素含有金属塩と、構造式Ti-(O-R
1)
4を有するチタン酸エステルであって、前記R
1は、C
1-C
6アルキル基、C
1-C
6ハロアルキル基、C
2-C
6アルケニル基、C
2-C
6アルキニル基又はC
1-C
6シラン基から選択される1種又は複数種である、チタン酸エステルと、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
S=O又はP=Oを含有するフッ素含有金属塩と、
構造式Ti-(O-R1)4を有するチタン酸エステルであって、前記R1は、C1-C6アルキル基、C1-C6ハロアルキル基、C2-C6アルケニル基、C2-C6アルキニル基又はC1-C6シラン基から選択される1種又は複数種である、チタン酸エステルと、
を含む電解液。
【請求項2】
前記フッ素含有金属塩は、MSO3F、MPO2F2から選択される1種又は複数種であり、Mは、金属イオンであり、好ましくはLi、Na、K又はCsのうちの1種である、請求項1に記載の電解液。
【請求項3】
前記フッ素含有金属塩は、LiSO3F、LiPO2F2から選択される1種又は複数種である、請求項1又は2に記載の電解液。
【請求項4】
前記チタン酸エステルは、
【化1】
から選択される1種又は複数種である、請求項1~3のいずれか1項に記載の電解液。
【請求項5】
前記チタン酸エステルと前記フッ素含有金属塩とのモル比は、2/1~1/20であり、好ましくは1/8~1/10である、請求項1~4のいずれか1項に記載の電解液。
【請求項6】
前記フッ素含有金属塩は、電解液質量の0.01%~8%、好ましくは0.1%~5%、さらに好ましくは0.2%~3%を占め、
前記チタン酸エステルは、電解液質量の0.01%~8%、好ましくは0.1%~5%、さらに好ましくは0.15%~2.5%を占める、請求項1~5のいずれか1項に記載の電解液。
【請求項7】
前記フッ素含有金属塩と前記チタン酸エステルとの合計は、電解液質量の0.01~10%、好ましくは0.1%~8%、さらに好ましくは0.2%~4%を占める、請求項1~6のいずれか1項に記載の電解液。
【請求項8】
前記電解液は、フッ素化溶媒をさらに含み、
前記フッ素化溶媒は、フルオロカーボネート、フルオロベンゼン、フルオロエーテルから選択される1種又は複数種であり、
好ましくは、前記フルオロカーボネートは、
【化2】
から選択される少なくとも1種であり、及び/又は、
前記フルオロベンゼンは、
【化3】
であり、及び/又は、
前記フルオロエーテルは、
【化4】
であり、
式中、R
2、R
3、R
4、R
5は、それぞれ独立して、C
1-C
6アルキル基、C
1-C
6フルオロアルキル基から選択され、R
6、R
7は、それぞれ独立して、C
1-C
4アルキレン基、C
1-C
4フルオロアルキレン基から選択され、R
8、R
9、R
10、R
11、R
12、R
13は、それぞれ独立して、F又はHから選択される、請求項1~7のいずれか1項に記載の電解液。
【請求項9】
前記フルオロカーボネートは、
【化5】
から選択される少なくとも1種であり、及び/又は、
前記フルオロベンゼンは、
【化6】
であり、及び/又は、
前記フルオロエーテルは、
【化7】
から選択される少なくとも1種である、請求項8に記載の電解液。
【請求項10】
前記フッ素化溶媒は、電解液質量の10~70%を占める、請求項8に記載の電解液。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の電解液を含む、二次電池。
【請求項12】
前記二次電池は、正極極板及び負極極板を含み、
前記正極極板は、正極集電体と、前記正極集電体の少なくとも1つの面に設置された正極コーティング層とを含み、
前記正極コーティング層は、接着剤としてのフッ化ビニリデン-アルキル単位-アクリレート-アクリル酸共重合体(PVdF-Ac)を含有する、請求項11に記載の二次電池。
【請求項13】
前記接着剤は、一般式(I):
【化8】
(式中、m=60~75%であり、
n=5%~10%であり、
x=10%~25%であり、
y=3~5%であり、
R
1’、R
2’、R
3’、R
4’は、それぞれ独立して、水素、置換されていてもよいC
1-C
8アルキル基から選択され、置換基は、F、Cl、Brから選択される少なくとも1種であり、
R
5’、R
6’、R
7’は、それぞれ独立して、水素、置換されていてもよいC
1-C
6アルキル基から選択され、置換基は、F、Cl、Brから選択される少なくとも1種であり、
R
8’は、置換されていてもよいC
1-C
15アルキル基から選択され、置換基は、F、Cl、Brから選択される少なくとも1種であり、
R
9’、R
10’、R
11’は、それぞれ独立して、水素、置換されていてもよいC
1-C
6アルキル基から選択され、置換基は、F、Cl、Brから選択される少なくとも1種である。)
の構造を有する、請求項12に記載の二次電池。
【請求項14】
前記正極コーティング層は、リン酸マンガン鉄リチウム、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウムマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物、及びこれらの化合物と他の遷移金属又は非遷移金属との複合体から選択される少なくとも1種の正極活物質を含有する、請求項12に記載の二次電池。
【請求項15】
前記負極極板は、負極集電体と、前記負極集電体の少なくとも1つの面に設置された負極コーティング層とを含み、
前記負極コーティング層は、エポキシ基又はイソシアネート基を有する化合物を含有し、
前記負極コーティング層がエポキシ基を有する化合物を含有する場合、前記エポキシ基を有する化合物は少なくとも2つのエポキシ基を含有し、
前記負極コーティング層がイソシアネート基を有する化合物を含有する場合、前記イソシアネート基を有する化合物は少なくとも2つのイソシアネート基を含有する、請求項12に記載の二次電池。
【請求項16】
前記エポキシ基を有する化合物は、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールグリシジルエーテル、グリシジルフタレート、テトラヒドロフタル酸ジグリシジル、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジグリシジル、4,4’-テトラグリシジルジアミノジフェニルメタンエポキシ、トリグリシジルp-アミノフェノール、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、テトラグリシジル-1,3-ビス(アミノメチルシクロヘキサン)、9,9-ビス[(2,3-グリシドキシ)フェニル]フルオレン、1,4-シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、テトラグリシジル-4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、テトラグリシジル-3,4’-ジアミノジフェニルエーテルから選択される1種又は複数種であり、
前記イソシアネート基を有する化合物は、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、ジメチルビフェニルジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアナート、ノルボルネンジイソシアネートから選択される1種又は複数種である、請求項15に記載の二次電池。
【請求項17】
請求項11~16のいずれか1項に記載の二次電池を含むことを特徴とする電池モジュール。
【請求項18】
請求項11~16のいずれか1項に記載の二次電池又は請求項17に記載の電池モジュールを含むことを特徴とする電池パック。
【請求項19】
請求項11~16のいずれか1項に記載の二次電池、請求項17に記載の電池モジュール又は請求項18に記載の電池パックから選択される少なくとも1種を含むことを特徴とする電力消費装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、リチウム電池の技術分野に関し、特に電解液、それを含む二次電池、電池モジュール、電池パック及び電力消費装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リチウムイオン電池の応用範囲が広くなるに伴って、リチウムイオン電池は、水力、火力、風力及び太陽光発電所などのエネルギー貯蔵電源システム、及び電動工具、電気自転車、電動バイク、電気自動車、軍事装備、航空宇宙などの複数の分野に広く応用されている。リチウムイオン電池の大きな発展により、そのエネルギー密度、サイクル性能及び安全性能などに対する要件が高まっている。
【0003】
しかしながら、高電圧の充放電過程で、リチウムイオン電池の安全性及び性能の安定性は従来から効果的に改善されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願は、上記課題に鑑みてなされたものであり、高電圧システムのサイクル膨張に起因してサイクル応力が大きいという問題を解決するための電解液を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本願は、電解液、それを含む二次電池、電池モジュール、電池パック及び電力消費装置を提供する。
【0006】
本願の第1態様は、
S=O又はP=Oを含有するフッ素含有金属塩と、
構造式Ti-(O-R1)4を有するチタン酸エステルであって、前記R1は、C1-C6アルキル基、C1-C6ハロアルキル基、C2-C6アルケニル基、C2-C6アルキニル基又はC1-C6シラン基から選択される1種又は複数種である、チタン酸エステルと
を含む、電解液を提供する。
【0007】
本願の電解液を用いる電池は、高電圧システムのサイクル膨張でサイクル応力が低く、極板の膨張が少ない。
【0008】
任意の実施形態では、好ましくは、前記フッ素含有金属塩は、MSO3F、MPO2F2から選択される1種又は複数種であり、Mは、金属イオンであり、好ましくはLi、Na、K又はCsのうちの1種である。
【0009】
任意の実施形態では、好ましくは、前記フッ素含有金属塩は、LiSO3F、LiPO2F2から選択される1種又は複数種である。
【0010】
任意の実施形態では、好ましくは、前記チタン酸エステルは、
【化1】
から選択される1種又は複数種である。
【0011】
任意の実施形態では、好ましくは、前記チタン酸エステルと前記フッ素含有金属塩とのモル比は2/1~1/20であり、好ましくは1/8~1/10である。チタン酸エステルとフッ素含有金属塩とのモル比が上記範囲内にある場合、本願の電解液を用いる電池は、極板の膨張力が小さくなり、サイクル応力が小さくなる。
【0012】
任意の実施形態では、好ましくは、前記フッ素含有金属塩は、電解液質量の0.01%~8%、好ましくは0.1%~5%、さらに好ましくは0.2%~3%を占め、前記チタン酸エステルは、電解液質量の0.01%~8%、好ましくは0.1%~5%、さらに好ましくは0.15%~2.5%を占める。
【0013】
任意の実施形態では、好ましくは、前記フッ素含有金属塩と前記チタン酸エステルとの合計は、電解液質量の0.01~10%、好ましくは0.1%~8%、さらに好ましくは0.2%~4%を占める。
【0014】
任意の実施形態では、好ましくは、前記電解液はフッ素化溶媒をさらに含み、前記フッ素化溶媒は、フルオロカーボネート、フルオロベンゼン、フルオロエーテルから選択される1種又は複数種であり、好ましくは、前記フルオロカーボネートは、
【化2】
から選択される少なくとも1種であり、及び/又は、前記フルオロベンゼンは,
【化3】
であり、及び/又は、前記フルオロエーテルは,
【化4】
である(式中、R
2、R
3、R
4、R
5は、それぞれ独立して、C
1-C
6アルキル基、C
1-C
6フルオロアルキル基から選択され、R
6、R
7は、それぞれ独立して、C
1-C
4アルキレン基、C
1-C
4フルオロアルキレン基から選択され、R
8、R
9、R
10、R
11、R
12、R
13は、それぞれ独立して、F又はHから選択される。)。
【0015】
電解液に前記フッ素化溶媒を添加することにより、電解液の酸化電位をさらに向上させ、電解液の電位窓を拡大し、電解液の酸化分解を抑制し、SEIとCEI膜の破壊を低減させ、サイクル過程における極板の膨張を低減させ、サイクル膨張応力を低減させることができる。
【0016】
任意の実施形態では、好ましくは、前記フルオロカーボネートは、
【化5】
から選択される少なくとも1種であり、及び/又は、前記フルオロベンゼンは、
【化6】
であり、及び/又は、前記フルオロエーテルは、
【化7】
から選択される少なくとも1種である。
【0017】
任意の実施形態では、好ましくは、前記フッ素化溶媒は、電解液質量の10~70%を占める。
【0018】
本願の第2態様は、本願の第1態様に記載の電解液を含む二次電池をさらに提供する。
【0019】
任意の実施形態では、好ましくは、前記二次電池は、正極極板及び負極極板を含み、前記正極極板は、正極集電体と、前記正極集電体の少なくとも1つの面に設置された正極コーティング層を含み、前記正極コーティング層は、接着剤としてのフッ化ビニリデン-アルキル単位-アクリレート-アクリル酸共重合体(PVdF-Ac)を含有する。
【0020】
任意の実施形態では、好ましくは、前記接着剤は、一般式(I):
【化8】
(式中、m=60~75%であり、
n=5%~10%であり、
x=10%~25%であり、
y=3~5%であり、
R
1’、R
2’、R
3’、R
4’は、それぞれ独立して、水素、置換されていてもよいC
1-C
8アルキル基から選択され、置換基は、F、Cl、Brから選択される少なくとも1種であり、
R
5’、R
6’、R
7’は、それぞれ独立して、水素、置換されていてもよいC
1-C
6アルキル基から選択され、置換基は、F、Cl、Brから選択される少なくとも1種であり、
R
8’は、置換されていてもよいC
1-C
15アルキル基から選択され、置換基は、F、Cl、Brから選択される少なくとも1種であり、
R
9’、R
10’、R
11’は、それぞれ独立して、水素、置換されていてもよいC
1-C
6アルキル基から選択され、置換基は、F、Cl、Brから選択される少なくとも1種である。)
の構造を有する。
【0021】
任意の実施形態では、好ましくは、前記正極コーティング層は、リン酸マンガン鉄リチウム、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウムマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物及び上記化合物と他の遷移金属又は非遷移金属との複合体から選択される少なくとも1種の正極活物質を含有する。
【0022】
任意の実施形態では、好ましくは、前記負極極板は、負極集電体と、前記負極集電体の少なくとも1つの面に設置された負極コーティング層とを含み、前記負極コーティング層は、エポキシ基又はイソシアネート基を有する化合物を含有し、前記負極コーティング層がエポキシ基を有する化合物を含有する場合、前記エポキシ基を有する化合物は少なくとも2つのエポキシ基を含有し、負極コーティング層がイソシアネート基を有する化合物を含有する場合、前記イソシアネート基を有する化合物は少なくとも2つのイソシアネート基を含有する。
【0023】
任意の実施形態では、好ましくは、前記エポキシ基を有する化合物は、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールグリシジルエーテル、グリシジルフタレート、テトラヒドロフタル酸ジグリシジル、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジグリシジル、4,4’-テトラグリシジルジアミノジフェニルメタンエポキシ、トリグリシジルp-アミノフェノール、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、テトラグリシジル-1,3-ビス(アミノメチルシクロヘキサン)、9,9-ビス[(2,3-グリシドキシ)フェニル]フルオレン、1,4-シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、テトラグリシジル-4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、テトラグリシジル-3,4’-ジアミノジフェニルエーテルから選択される1種又は複数種であり、
前記イソシアネート基を有する化合物は、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、ジメチルビフェニルジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアナート、ノルボルネンジイソシアネートから選択される1種又は複数種である。
【0024】
本願の第3態様は、本願の第2態様の二次電池を含む電池モジュールを提供する。
【0025】
本願の第4態様は、本願の第2態様の二次電池又は本願の第3態様の電池モジュールを含む電池パックを提供する。
【0026】
本願の第5態様は、本願の第2態様の二次電池、本願の第3態様の電池モジュール又は本願の第4態様の電池パックから選択される少なくとも1種を含む電力消費装置を提供する。
【0027】
本願の電池モジュール、電池パック又は電力消費装置は、本願の第2態様の二次電池を含むため、少なくとも本願の第2態様に記載の二次電池と同じ利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本願の一実施形態に係る二次電池の模式図である。
【
図2】
図1に示される本願の一実施形態に係る二次電池の分解図である。
【
図3】本願の一実施形態に係る電池モジュールの模式図である。
【
図4】本願の一実施形態に係る電池パックの模式図である。
【
図5】
図4に示される本願の一実施形態に係る電池パックの分解図である。
【
図6】本願の一実施形態に係る二次電池を電源として使用する電力消費装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を適宜参照しながら、本願の電解液、二次電池、電池モジュール、電池パック及び電気装置を具体的に開示する実施形態を詳細に説明する。しかしながら、不要な詳細な説明が省略される場合がある。例えば、知られている事項の詳細な説明、実質的に同じ構造の繰り返し説明が省略される場合がある。これは、以下の説明が不必要に長くなることを回避し、当業者が容易に理解できるようにするものである。また、図面及び以下の説明は、当業者が本願を十分に理解するために提供されるものであり、特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
【0030】
本願で開示されている「範囲」は、下限及び上限の形で定義されており、所与の範囲は、1つの下限と1つの上限を選択することにより定義されており、選択された下限と上限は特定の範囲の境界を定義する。このように定義された範囲は、端点値を含んでもよく、又は端点値を含まなくてもよく、任意に組み合わせることができ、すなわち、任意の下限と任意の上限とを組み合わせて1つの範囲を形成することができる。例えば、特定のパラメータについて60~120と80~110の範囲がリストされる場合、60~110と80~120の範囲も予期されると理解される。また、最小範囲値として1と2がリストされ、最大範囲値として3、4及び5がリストされる場合、1~3、1~4、1~5、2~3、2~4及び2~5の範囲の全てが予期される。本願では、特に断らない限り、数値範囲「a~b」は、aとbの間の任意の実数の組み合わせの省略表現を表し、aとbはいずれも実数である。例えば、数値範囲「0~5」は、本明細書で「0~5」の間の全ての実数がリストされたことを意味し、「0~5」は、これらの数値の組み合わせの省略表現に過ぎない。また、あるパラメータが≧2の整数であると記載される場合、該パラメータが、例えば、整数2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12などであることが開示されていることに相当する。
【0031】
特に断らない限り、本願の全ての実施形態及び任意の実施形態を互いに組み合わせて新たな技術案を形成することができる。
【0032】
特に断らない限り、本願の全ての技術的特徴及び任意の技術的特徴を互いに組み合わせて新たな技術案を形成することができる。
【0033】
特に断らない限り、本願の全てのステップは順番に行われてもよく、ランダムに行われてもよく、好ましくは順番に行われる。例えば、前記方法がステップ(a)及び(b)を含むことは、前記方法が順番に行われたステップ(a)及び(b)を含んでいてもよく、順番に行われたステップ(b)及び(a)を含んでいてもよいことを示している。例えば、前記方法がステップ(c)をさらに含んでいてもよいことは、ステップ(c)を任意の順序で前記方法に追加できることを示しており、例えば、前記方法はステップ(a)、(b)及び(c)を含んでいてもよく、ステップ(a)、(c)及び(b)を含んでいてもよく、ステップ(c)、(a)及び(b)を含んでいてもよい。
【0034】
特に断らない限り、本願に係る「含む」及び「包含」は、オープンな意味であってもよく、クローズな意味であってもよい。例えば、前記「含む」及び「包含」は、リストされていない他の成分をさらに含むか又は包含していてもいし、リストされた成分のみを含むか又は包含していてもよいことを意味し得る。
【0035】
本願で使用される用語「以上」、「以下」は、本数字を含み、例えば「1種以上」は、1種又は複数種を意味し、「A及びBのうちの1種以上」は、「A」、「B」又は「AとB」を意味する。
【0036】
特に断らない限り、本願では、「又は」という用語は、包括的なものである。例えば、「A又はB」という表現は、「A、B、又はAとBの両者」を意味する。より具体的には、Aが真であり(又は存在する)かつBが偽である(又は存在しない)という条件、Aが偽であり(又は存在しない)かつBが真である(又は存在する)という条件、又はAとBがいずれも真である(又は存在する)という条件は、いずれも条件「A又はB」を満たしている。
【0037】
特に断らない限り、本発明の文脈における含有量と百分率はいずれも質量に基づくものである。
【0038】
本発明の目的のために、特に断らない限り、置換基は以下の意味を有する。
【0039】
「ハロゲン」、「ハロゲン原子」又は「ハロゲン化」という用語は、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素、特に臭素、塩素又はフッ素、好ましくは塩素又はフッ素、より好ましくはフッ素を意味すると理解されるべきである。
【0040】
「アルキル基」という用語は、具体的に指定された炭素原子数(例えばC1-C8、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個又は8個の炭素原子)を有する直鎖又は分岐鎖状の炭化水素基を意味すると理解されるべきであり、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2-メチルブチル基、1-メチルブチル基、1-エチルプロピル基、1,2-ジメチルプロピル基、ネオペンチル基、1,1-ジメチルプロピル基、4-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、1-メチルペンチル基、2-エチルブチル基、1-エチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、1,1-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、1,3-ジメチルブチル基又は1,2-ジメチルブチル基が挙げられる。「C1-C6-アルキル基」という用語は、1、2、3、4、5又は6個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖状の炭化水素基を意味すると理解されるべきであり、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、2-メチルブチル基、1-メチルブチル基、1-エチルプロピル基、1,2-ジメチルプロピル基、ネオペンチル基、1,1-ジメチルプロピル基、4-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、1-メチルペンチル基、2-エチルブチル基、1-エチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、1,1-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、1,3-ジメチルブチル基又は1,2-ジメチルブチル基が挙げられる。好ましくは、前記アルキル基は、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基又はイソプロピル基などのように、1、2、3又は4個の炭素原子(「C1-C4-アルキル基」)を有する。
【0041】
「C2-C6-アルケニル基」という用語は、1個の二重結合を含有し、2、3、4、5又は6個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖状の一価炭化水素基を意味すると理解されるべきである。特に、前記アルケニル基は、C2-C3-アルケニル基、C3-C6-アルケニル基又はC3-C4-アルケニル基である。前記アルケニル基は、例えば、ビニル基、アリル基、(E)-2-メチルビニル基、(Z)-2-メチルビニル基又はイソプロペニル基である。
【0042】
「C2-C6-アルキニル基」という用語は、1個の三重結合を含有し、2、3、4、5又は6個の炭素原子を含む直鎖又は分岐鎖状の一価炭化水素基を意味すると理解されるべきである。特に、前記アルキニル基は、C2-C3-アルキニル基、C3-C6-アルキニル基又はC3-C4-アルキニル基である。前記C2-C3-アルキニル基は、例えば、エチニル基、プロプ-1-イニル基又はプロプ-2-イニル基である。
【0043】
「C1-C4-アルキレン基」という用語は、1~4個の炭素原子、特に2、3又は4個の炭素原子(例えば、「C2-C4-アルキレン基」に)を有する直鎖、二価かつ飽和の炭化水素基を意味すると理解されるべきであり、例えば、エチレン基、n-プロピレン基、n-ブチリデン基、n-ペンチレン基又はn-へキシレン基、好ましくはn-プロピレン基又はn-ブチリデン基が挙げられる。
【0044】
「C1-C6-シラン基」という用語は、1、2、3、4、5又は6個の炭素原子を含む直鎖又は分岐鎖状のSi-アルキル基を意味すると理解されるべきであり、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基が挙げられる(これらに限定されない)。
【0045】
「ハロアルキル基」、「ハロアルケニル基」、「ハロアルキニル基」及び「ハロアルキレン基」はそれぞれ、同じ又は異なるハロゲン原子で部分的に又は完全に置換されたアルキル基、アルケニル基、アルキニル基及びアルキレン基を表し、例えばCH2CH2Cl、CH2CH2Br、CHClCH3、CH2Cl、CH2Fなどのモノハロアルキル基、例えばCCl3、CClF2、CFCl2、CF2CClF2、CF2CClFCF3などのペルハロアルキル基、例えばCH2CHFCl、CF2CClFH、CF2CBrFH、CH2CF3などのハロアルキル基が挙げられ、ペルハロアルキル基という用語は、ペルフルオロアルキル基という用語をさらに含む。
【0046】
本発明では、「C1-C8」は、例えばC1-C8、C1-C7、C1-C6、C1-C5、C1-C4、C1-C3、C1-C2、C2-C8、C2-C7、C2-C6、C2-C5、C2-C4、C2-C3、C3-C8、C3-C7、C3-C6、C3-C5、C3-C4、C4-C8、C4-C7、C4-C6、C4-C5、C5-C8、C5-C7、C5-C6、C6-C8、C6-C7、C7-C8などの任意のサブ範囲を含むと解釈されるべきである。
【0047】
同様に、「C1-C6」という用語は、例えばC1-C6、C1-C5、C1-C4、C1-C3、C1-C2、C2-C6、C2-C5、C2-C4、C2-C3、C3-C6、C3-C5、C3-C4、C4-C6、C4-C5、C5-C6などの任意のサブ範囲を含むと解釈されるべきである。
【0048】
同様に、「C1-C4」という用語は、例えばC1-C4、C1-C3、C1-C2、C2-C4、C2-C3、C3-C4などの任意のサブ範囲を含むと解釈されるべきである。
【0049】
同様に、「C2-C6」という用語は、例えばC2-C5、C2-C4、C2-C3、C3-C4、C3-C5、C3-C6、C4-C5、C4-C6、C5-C6などの任意のサブ範囲を含むと解釈されるべきである。
【0050】
電池のエネルギー密度を向上させるために、正極材料の動作電位を向上させることは、研究者の主要な戦略となっている。例えば、通常の三元正極材料の動作電圧が4.4V以上に上昇し、例えば、リチウムリッチ層状正極、スピネル酸化物LiNi0.5Mn1.5O4などのより高い電圧及びグラム容量を有する正極材料は、動作電圧が高く、電圧上限が5Vに近くなる。本願の発明者は、電圧が上昇すると、電解液の耐酸化性がなくなり、電池全体の性能を低下させ、また、正極材料の動作電圧が上昇すると、正極材料のリチウム除去量が多くなり、正極材料と負極材料の体積がその分変化し、さらにセルの充放電過程におけるセルの総体積が大きく変化し、セル内部の遊離電解液が絞り出され、電解液をセル内部にタイムリーに還流できない場合、セルのサイクル過程で動力学的な飽和によりリチウムの析出が発生し、また、セルのサイクル膨張が大きくなり、セルの極板にシワが発生し、より深刻な場合、セルの短絡が発生し、安全上の問題を引き起こし、セルの信頼性に大きく影響してしまうことを発見した。
【0051】
大量の実験の結果、本願の発明者は、前記高電圧システムの電解液に、
S=O又はP=Oを含有するフッ素含有金属塩と、
構造式Ti-(O-R1)4を有するチタン酸エステルであって、前記R1は、C1-C6アルキル基、C1-C6ハロアルキル基、C2-C6アルケニル基、C2-C6アルキニル基又はC1-C6シラン基から選択される1種又は複数種である、チタン酸エステルと
の添加剤を含有する場合、セルのサイクル膨張を顕著に抑制し、サイクル膨張応力を顕著に低減させることができることを発見した。
【0052】
[電解液]
本願の第1態様は、
S=O又はP=Oを含有するフッ素含有金属塩と、
構造式Ti-(O-R1)4を有するチタン酸エステルであって、前記R1は、C1-C6アルキル基、C1-C6ハロアルキル基、C2-C6アルケニル基、C2-C6アルキニル基又はC1-C6シラン基から選択される1種又は複数種である、チタン酸エステルと
を含む、電解液を提供する。
【0053】
発明者は、電解液に上記添加剤を添加することにより、本願の電解液を用いる電池のサイクル応力が低いことを予想外に発見した。セルの充放電過程で、本願の電解液は、正負極に多次元網状、靭性を有する重合体及び無機物複合SEI膜を形成し、サイクル応力を顕著に低減させることができる。
【0054】
いくつかの実施形態では、好ましくは、前記フッ素含有金属塩は、MSO3F、MPO2F2から選択される1種又は複数種であり、Mは、金属イオンであり、好ましくはLi、Na、K又はCsのうちの1種である。
【0055】
いくつかの実施形態では、好ましくは、前記フッ素含有金属塩は、LiSO3F、LiPO2F2から選択される1種又は複数種である。
【0056】
任意の実施形態では、好ましくは、前記チタン酸エステルは、
【化9】
から選択される1種又は複数種である。
【0057】
いくつかの実施形態では、好ましくは、前記チタン酸エステルと前記フッ素含有金属塩とのモル比は2/1~1/20であり、好ましくは1/8~1/10である。チタン酸エステルとフッ素含有金属塩とのモル比が上記範囲内にある場合、本願の電解液を用いる電池は、極板の膨張が小さくなり、サイクル応力が小さくなる。チタン酸エステルとフッ素含有金属塩とのモル比を制御することにより、対応するSEI膜は、正負極活物質に対して良好な結合力を有し、良好な靭性を有する。前記モル比が高すぎると、SEI膜の柔軟性が低くなり、サイクル膨張を抑制する効果が低くなる。前記モル比が低すぎると、SEI膜が脆化されやすくなり、さらに極板が膨張し、セルのサイクル応力が大きくなる。
【0058】
いくつかの実施形態では、好ましくは、前記フッ素含有金属塩は、電解液質量の0.01%~8%、好ましくは0.1%~5%、さらに好ましくは0.2%~3%を占め、前記チタン酸エステルは、電解液質量の0.01%~8%、好ましくは0.1%~5%、さらに好ましくは0.15%~2.5%を占める。
【0059】
いくつかの実施形態では、好ましくは、前記フッ素含有金属塩と前記チタン酸エステルとの合計は、電解液質量の0.01~10%、好ましくは0.1%~8%、さらに好ましくは0.2%~4%を占める。
【0060】
いくつかの実施形態では、好ましくは、前記電解液はフッ素化溶媒をさらに含み、前記フッ素化溶媒は、フルオロカーボネート、フルオロベンゼン、フルオロエーテルから選択される1種又は複数種であり、好ましくは、前記フルオロカーボネートは、
【化10】
から選択される少なくとも1種であり、及び/又は、前記フルオロベンゼンは、
【化11】
であり、及び/又は、前記フルオロエーテルは、
【化12】
である(式中、R
2、R
3、R
4、R
5は、それぞれ独立して、C
1-C
6アルキル基、C
1-C
6フルオロアルキル基から選択され、R
6、R
7は、それぞれ独立して、C
1-C
4アルキレン基、C
1-C
4フルオロアルキレン基から選択され、R
8、R
9、R
10、R
11、R
12、R
13は、それぞれ独立して、F又はHから選択される。)。
【0061】
本願の発明者は、正極材料の動作電圧が上昇すると、通常の電解液溶媒の耐酸化性がなくなり、電解液に前記フッ素化溶媒を添加することにより、電解液の酸化電位をさらに向上させ、電解液の電位窓を拡大し、電解液の酸化分解を抑制し、SEIとCEI膜の破壊を低減させ、サイクル過程における極板の膨張を低減させ、サイクル膨張応力を低減させることができることを見出した。
【0062】
いくつかの実施形態では、好ましくは、前記フルオロカーボネートは、
【化13】
から選択される少なくとも1種であり、及び/又は、前記フルオロベンゼンは、
【化14】
であり、及び/又は、前記フルオロエーテルは、
【化15】
から選択される少なくとも1種である。
【0063】
いくつかの実施形態では、好ましくは、前記フッ素化溶媒は、電解液質量の10~70%を占める。前記含有量が高すぎると、電解液の導電率に大きく影響し、さらにセルの電力性能に影響し、前記含有量が低すぎると、サイクル膨張を抑制する効果が低くなる。
【0064】
いくつかの実施形態では、電解液は、ヘキサフルオロリン酸リチウム、テトラフルオロホウ酸リチウム、過塩素酸リチウム、ヘキサフルオロヒ酸リチウム、リチウムビスフルオロスルホニルイミド、リチウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、ジフルオロリン酸リチウム、リチウムジフルオロオキサラトボレート、リチウムビスオキサラトボレート、リチウムジフルオロビスオキサラトホスフェート及びリチウムテトラフルオロオキサラトホスフェートから選択される少なくとも1種のリチウム塩を含有する。好ましくは、前記リチウム塩は、電解液質量の10~14%を占める。
【0065】
いくつかの実施形態では、電解液は、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、炭酸エチルメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジメチル、炭酸ジプロピル、炭酸メチルプロピル、炭酸エチルプロピル、炭酸ブチレン、フルオロエチレンカーボネート、ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、酪酸メチル、酪酸エチル、1,4-ブチロラクトン、スルホラン、ジメチルスルホン、メチルエチルスルホン及びジエチルスルホンのうちの少なくとも1種から選択される少なくとも1種の有機溶媒を含有する。
【0066】
いくつかの実施形態では、電解液は、好ましくは添加剤をさらに含む。例えば、添加剤は、負極成膜添加剤、正極成膜添加剤を含んでもよく、例えば電池の過充電性能を改善する添加剤、電池の高温又は低温性能を改善する添加剤などの電池のいくつかの性能を改善できる添加剤をさらに含んでもよい。
【0067】
[正極極板]
正極極板は、正極集電体と、前記正極集電体の少なくとも1つの面に設置された正極コーティング層とを含み、前記正極コーティング層は、接着剤としてのフッ化ビニリデン-アルキル単位-アクリレート-アクリル酸共重合体(PVdF-Ac)を含有する。前記接着剤は、正極極板のサイクル膨張をさらに抑制し、サイクル応力を低減させることができる。該接着剤に含有される少量のCOOH及びエステル結合は、対応するCEI膜の成分との強いファンデルワールス力及び水素結合作用を有し、正極材料の表面と接着剤との間の作用力が強くなり、正極極板の膨張をさらに抑制し、セルのサイクル応力を低減させることができ、また、該接着剤分子鎖の規則性が低く、結晶化度が低く、共重合アルキル鎖単位を含有するため、その材質が柔らかく、柔軟性が高く、引張強度が高く、従って、サイクル膨張をさらに抑制することができる。
【0068】
いくつかの実施形態では、好ましくは、前記接着剤は、一般式(I):
【化16】
(式中、m=60~75%であり、
n=5%~10%であり、
x=10%~25%であり、
y=3~5%であり、
R
1’、R
2’、R
3’、R
4’は、それぞれ独立して、水素、置換されていてもよいC
1-C
8アルキル基から選択され、置換基は、F、Cl、Brから選択される少なくとも1種であり、
R
5’、R
6’、R
7’は、それぞれ独立して、水素、置換されていてもよいC
1-C
6アルキル基から選択され、置換基は、F、Cl、Brから選択される少なくとも1種であり、
R
8’は、置換されていてもよいC
1-C
15アルキル基から選択され、置換基は、F、Cl、Brから選択される少なくとも1種であり、
R
9’、R
10’、R
11’は、それぞれ独立して、水素、置換されていてもよいC
1-C
6アルキル基から選択され、置換基は、F、Cl、Brから選択される少なくとも1種である。)
の構造を有する。
【0069】
上記一般式(I)中、m、n、x、yは、各モノマーの該重合体中の比率を表し、好ましくは、m+n+x+y=100%である。
【0070】
いくつかの実施形態では、前記正極集電体は、金属箔シート又は複合集電体を用いてもよい。例えば、金属箔シートとしては、アルミニウム箔を用いてもよい。複合集電体は、高分子材料基材及び高分子材料基材の少なくとも1つの面に形成された金属層を含んでもよい。複合集電体は、金属材料(アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀及び銀合金など)を高分子材料基材(例えばポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)などの基材)に形成することにより形成されてもよい。
【0071】
いくつかの実施形態では、正極活物質は、本分野で知られている電池用の正極活物質を用いてもよい。例として、正極活物質は、オリビン構造のリチウム含有リン酸塩、リチウム遷移金属酸化物及びそれらの変性化合物のうちの少なくとも1種を含んでもよい。しかしながら、本願はこれらの材料に限定されず、電池の正極活物質として使用される他の従来の材料を使用してもよい。これらの正極活物質は単独で1種を使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。リチウム遷移金属酸化物の一例としては、リチウムコバルト酸化物(例えばLiCoO2)、リチウムニッケル酸化物(例えばLiNiO2)、リチウムマンガン酸化物(例えばLiMnO2、LiMn2O4)、リチウムニッケルコバルト酸化物、リチウムマンガンコバルト酸化物、リチウムニッケルマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物(例えばLiNi1/3Co1/3Mn1/3O2(NCM333と呼ばれてもよい)、LiNi0.5Co0.2Mn0.3O2(NCM523と呼ばれてもよい)、LiNi0.5Co0.25Mn0.25O2(NCM211と呼ばれてもよい)、LiNi0.6Co0.2Mn0.2O2(NCM622と呼ばれてもよい)、LiNi0.8Co0.1Mn0.1O2(NCM811と呼ばれてもよい)、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(例えばLiNi0.85Co0.15Al0.05O2)及びそれらの変性化合物などのうちの少なくとも1種を含んでもよいが、これらに限定されない。オリビン構造のリチウム含有リン酸塩の一例としては、リン酸鉄リチウムとカーボンの複合体、リン酸マンガンリチウム(例えばLiMnPO4)、リン酸マンガンリチウムとカーボンの複合体、リン酸マンガン鉄リチウム、リン酸マンガン鉄リチウムとカーボンの複合体のうちの少なくとも1種を含んでもよいが、これらに限定されない。
【0072】
いくつかの実施形態では、正極コーティング層は、好ましくは導電剤をさらに含む。例として、前記導電剤は、超伝導カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン及びカーボンナノ繊維のうちの少なくとも1種を含んでもよい。
【0073】
いくつかの実施形態では、正極極板は、例えば正極活物質、導電剤、接着剤などの正極極板を製造するための上記成分、及び任意の他の成分を溶媒(例えばN-メチルピロリドン)に分散させて正極スラリーを形成し、正極スラリーを正極集電体に塗布して、乾燥、コールドプレスなどの工程を行って正極極板を得ることによって製造されてもよい。
【0074】
[負極極板]
負極極板は、負極集電体と、前記負極集電体の少なくとも1つの面に設置された負極コーティング層とを含む。前記負極コーティング層は、エポキシ基又はイソシアネート基を有する化合物を含有し、前記負極コーティング層がエポキシ基を有する化合物を含有する場合、前記エポキシ基を有する化合物は少なくとも2つのエポキシ基を含有し、負極コーティング層がイソシアネート基を有する化合物を含有する場合、前記イソシアネート基を有する化合物は少なくとも2つのイソシアネート基を含有する。これらの負極添加剤は、負極スラリー中の安定剤、接着剤表面のCOOH及びOHなどの基と化学的に反応できることにより、負極スラリー中の安定剤及び接着剤が、エポキシ基又はイソシアネート基を含有する化合物によって連結され、さらに負極活物質の表面が接着剤でより完全に被覆され、さらにリチウムインターカレーション後の負極活物質の体積膨張が制限され、セルのサイクル膨張応力が低減する。
【0075】
いくつかの実施形態では、好ましくは、前記エポキシ基を有する化合物は、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールグリシジルエーテル、グリシジルフタレート、テトラヒドロフタル酸ジグリシジル、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジグリシジル、4,4’-テトラグリシジルジアミノジフェニルメタンエポキシ、トリグリシジルp-アミノフェノール、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、テトラグリシジル-1,3-ビス(アミノメチルシクロヘキサン)、9,9-ビス[(2,3-グリシドキシ)フェニル]フルオレン、1,4-シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、テトラグリシジル-4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、テトラグリシジル-3,4’-ジアミノジフェニルエーテルから選択される1種又は複数種であり、
前記イソシアネート基を有する化合物は、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、ジメチルビフェニルジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアナート、ノルボルネンジイソシアネートから選択される1種又は複数種である。
【0076】
いくつかの実施形態では、前記負極集電体は、金属箔シート又は複合集電体を用いてもよい。例えば、金属箔シートとしては、銅箔を用いてもよい。複合集電体は、高分子材料基材及び高分子材料基材の少なくとも1つの面に形成された金属層を含んでもよい。複合集電体は、金属材料(銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀及び銀合金など)を高分子材料基材(例えばポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)などの基材)に形成することにより形成されてもよい。
【0077】
いくつかの実施形態では、負極活物質は、本分野で知られている電池用の負極活物質を用いてもよい。例として、負極活物質は、人工黒鉛、天然黒鉛、ソフトカーボン、ハードカーボン、シリコン材料、スズ材料及びチタン酸リチウムなどのうちの少なくとも1種を含んでもよい。前記シリコン材料は、元素シリコン、シリコン酸素化合物、シリコン炭素複合体、シリコン窒素複合体及びシリコン合金から選択される少なくとも1種であってもよい。前記スズ材料は、スズ単体、スズ酸素化合物及びスズ合金から選択される少なくとも1種であってもよい。しかしながら、本願はこれらの材料に限定されず、電池の負極活物質として使用される他の従来の材料を使用してもよい。これらの負極活物質は、単独で1種を使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0078】
いくつかの実施形態では、負極コーティング層は、好ましくは接着剤をさらに含む。前記接着剤は、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリアクリル酸ナトリウム(PAAS)、ポリアクリルアミド(PAM)、ポリビニルアルコール(PVA)、アルギン酸ナトリウム(SA)、ポリメチルメタクリレート(PMAA)及びカルボキシメチルキトサン(CMCS)から選択される少なくとも1種であってもよい。
【0079】
いくつかの実施形態では、負極コーティング層は、好ましくは導電剤をさらに含む。導電剤は、超伝導カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン及びカーボンナノ繊維から選択される少なくとも1種であってもよい。
【0080】
いくつかの実施形態では、負極コーティング層は、好ましくは、増粘剤(例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na))などの他の助剤をさらに含む。
【0081】
いくつかの実施形態では、負極極板は、例えば負極活物質、導電剤、接着剤などの負極極板を製造するための上記成分、及び任意の他の成分を溶媒(例えば脱イオン水)に分散させて負極スラリーを形成し、負極スラリーを負極集電体に塗布して、乾燥、コールドプレスなどの工程を行って負極極板を得ることによって製造されてもよい。
【0082】
[セパレータ]
本願は、セパレータの種類を特に限定せず、任意の知られている化学的安定性及び機械的安定性に優れた多孔質構造のセパレータを選択できる。
【0083】
いくつかの実施形態では、セパレータの材質は、ガラス繊維、不織布、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリフッ化ビニリデンから選択される少なくとも1種であってもよい。セパレータは、単層薄膜であってもよく、多層複合薄膜であってもよく、特に限定されない。セパレータが多層複合薄膜である場合、各層の材料は、同じであってもよく、異なってもよく、特に限定されない。
【0084】
いくつかの実施形態では、正極極板、負極極板及びセパレータは、捲回プロセス又は積層プロセスにより電極組立体を形成することができる。
【0085】
[二次電池]
本願の第2態様は、本願の第1態様に係る電解液を含む二次電池を提供する。
【0086】
通常、二次電池は、正極極板、負極極板、電解液及びセパレータを含む。電池の充放電過程で、活性イオンは、正極極板と負極極板との間に往復して挿入、脱離される。電解液は、正極極板と負極極板との間にイオンを伝導する役割を果たす。セパレータは、正極極板と負極極板との間に介在されており、主に正負極の短絡を防止する役割を果たし、イオンの通過を可能にする。
【0087】
いくつかの実施形態では、好ましくは、前記二次電池の使用可能な最大電圧は4.25≦V≦4.95を満たす。スピネルLNMOシステムの場合、その充電カットオフ電圧は最大4.95Vである。
【0088】
いくつかの実施形態では、二次電池は外装体を含んでもよい。該外装体は、上記電極組立体及び電解液を密封包装することに用いられ得る。
【0089】
いくつかの実施形態では、二次電池の外装体は、例えば、硬質プラスチックケース、アルミニウムケース、スチールケースなどの硬質ケースであってもよい。二次電池の外装体は、例えばポーチソフトパックなどのソフトパックであってもよい。ソフトパックの材質は、プラスチックであってもよく、プラスチックとしては、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレート及びポリブチレンサクシネートなどが挙げられる。
【0090】
また、以下、図面を適宜参照しながら、本願の二次電池、電池モジュール、電池パック及び電力消費装置について説明する。
【0091】
本願は、二次電池の形状を特に限定せず、それは、円筒形、角形又は他の任意の形状であってもよい。例えば、
図1は一例としての角形構造の二次電池5である。
【0092】
いくつかの実施形態では、
図2を参照し、外装体は、ハウジング51及びカバープレート53を含んでもよい。ハウジング51は、底板及び底板に接続された側板を含んでもよく、底板と側板は収容キャビティを画定する。ハウジング51は収容キャビティと連通する開口部を有し、カバープレート53は前記開口部に覆設されて、前記収容キャビティを密閉することができる。正極極板、負極極板及びセパレータは、捲回プロセス又は積層プロセスにより電極組立体52を形成することができる。電極組立体52は、前記収容キャビティ内に包装される。電解液は電極組立体52に含浸される。二次電池5に含まれる電極組立体52の数は、1つ又は複数であってもよく、当業者は、具体的な実際のニーズに応じて選択することができる。
【0093】
いくつかの実施形態では、二次電池は、電池モジュールに組み立てられてもよく、電池モジュールに含まれる二次電池の数は、1つ又は複数であってもよく、具体的な数は、当業者が電池モジュールの応用及び容量に応じて選択できるものである。
【0094】
図3は一例としての電池モジュール4である。
図3を参照し、電池モジュール4では、複数の二次電池5は、電池モジュール4の長さ方向に沿って順に配列されてもよい。もちろん、他の任意の方式で配置されてもよい。さらに、ファスナーで該複数の二次電池5を固定することができる。
【0095】
好ましくは、電池モジュール4は、収容空間を有するケーシングをさらに含んでもよく、複数の二次電池5は該収容空間に収容される。
【0096】
いくつかの実施形態では、上記電池モジュールはさらに、電池パックに組み立てられてもよく、電池パックに含まれる電池モジュールの数は、1つ又は複数であってもよく、具体的な数は、当業者が電池パックの応用及び容量に応じて選択できるものである。
【0097】
図4及び
図5は一例としての電池パック1である。
図4及び
図5を参照し、電池パック1には電池筐体及び電池筐体に設置された複数の電池モジュール4が含んでもよい。電池筐体は、上筐体2及び下筐体3を含み、上筐体2は、下筐体3に覆設され、電池モジュール4を収容するための密閉空間を形成することができる。複数の電池モジュール4は、任意の方式で電池筐体に配置されてもよい。
【0098】
また、本願は、電力消費装置をさらに提供し、前記電力消費装置は、本願に係る二次電池、電池モジュール、又は電池パックのうちの少なくとも1種を含む。前記二次電池、電池モジュール、又は電池パックは、前記電力消費装置の電源として使用されてもよく、前記電力消費装置のエネルギー貯蔵ユニットとして使用されてもよい。前記電力消費装置は、移動機器(例えば携帯電話、ノートパソコンなど)、電気自動車(例えば純電気自動車、ハイブリッド自動車、プラグインハイブリッド自動車、電気自転車、電気スクーター、電動ゴルフカート、電気トラックなど)、電車、船舶及び衛星、エネルギー貯蔵システムなどを含んでもよいが、これらに限定されない。
【0099】
前記電力消費装置は、その使用のニーズに応じて二次電池、電池モジュール又は電池パックとしてもよい。
【0100】
図6は一例としての電力消費装置である。該電力消費装置は、純電気自動車、ハイブリッド自動車、又はプラグインハイブリッド自動車などである。該電力消費装置の二次電池の高電力及び高エネルギー密度に対するニーズを満たすために、電池パック又は電池モジュールを用いてもよい。
【0101】
別の一例としての装置は、携帯電話、タブレットPC、ノートパソコンなどであってもよい。該装置は、通常、軽型化と薄型化を必要とするので、二次電池を電源として用いることができる。
【実施例0102】
以下、本願の実施例を説明する。以下に説明される実施例は、例示的なものであり、本願を解釈するためのものに過ぎず、本願を制限するものとして理解すべきではない。実施例で具体的な技術又は条件が示されていない場合、本分野の文献に記載の技術又は条件又は製品の取扱書に従って行われる。使用される試薬又は機器は、メーカーが示されていない場合、いずれも市場から入手可能な通常の製品である。
【0103】
[実施例1]
<正極極板の製造>
正極活物質としてLiNi0.6Co0.2Mn0.2O2(NCM622)、導電剤としてアセチレンブラック、接着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)を、質量比96.5:1.5:2で溶媒N-メチルピロリドン(NMP)に溶解させ、十分に撹拌して均一に混合して正極スラリーを得て、その後、正極スラリーを正極集電体に均一に塗布して、乾燥、コールドプレス、切断をして、正極極板を得た。
【0104】
<負極極板の製造>
活物質として人工黒鉛、導電剤としてアセチレンブラック、接着剤としてスチレンブタジエンゴム(SBR)、増粘剤としてカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)を、質量比95:2:2:1で溶媒脱イオン水に溶解させ、溶媒脱イオン水と均一に混合して負極スラリーを製造し、次に、負極スラリーを負極集電体銅箔に均一に塗布し、乾燥して負極シートを得て、コールドプレス、切断をして、負極極板を得た。
【0105】
<電解液の製造>
アルゴン雰囲気のグローブボックス(H2O<0.1ppm、O2<0.1ppm)で、表1を参照して、有機溶媒を質量比で均一に混合し、表に示されている塩及び添加剤を加え、均一に撹拌して、相応な電解液を得た。
【0106】
<二次電池の製造>
厚さ12μmのポリプロピレンフィルムをセパレータとして、正極極板、セパレータ、負極極板を順に積み重ね、分離の役割を果たすようにセパレータを正負極板の間に配置し、電極組立体を電池ケースに置いて、乾燥して電解液を注入し、フォーメーション、静置などのプロセスにより二次電池を得た。
【0107】
他の実施例と比較例の条件パラメータを表1に示し、これらの実施例と比較例における<正極極板の製造>、<負極極板の製造>、<電解液の製造>及び<電池の製造>はいずれも実施例1のプロセスと同じであった。
【0108】
<関連パラメータテスト>
1、リチウムイオン電池の45℃サイクル
セルを3枚の鋼板治具に置き、次に圧力センサを接続し、サイクル過程におけるセルの膨張力を検出し、45℃で、リチウムイオン電池を1Cの定電流で4.4Vに充電し、次に4.4Vの定電圧で電流が0.05Cよりも小さくなるように充電し、次にリチウムイオン電池を1Cの定電流で2.8Vに放電し、これは1つの充放電過程である。このように充電と放電を繰り返し、500clsを行い、500cls目の充電過程におけるセルの最大膨張力を記録した。
【0109】
2、極板厚さのテスト
25℃で、リチウムイオン電池と45℃500clsサイクル後のリチウムイオン電池をそれぞれ0.33Cの定電流で4.4Vに充電し、次に4.4Vの定電圧で電流が0.05Cよりも小さくなるように充電し、次に電池を解体し、マイクロメーターで対応する正極極板の厚さを測定し、10回測定して平均値を取った結果、リチウムイオン電池の正極極板の厚さがh1であり、45℃EOLサイクル後のリチウムイオン電池の正極極板の厚さがh2であり、対応する正極極板の厚さの増加率は(h2-h1)/h1である。
【0110】
【0111】
表1における実施例E1~E6及び比較例C1~C3を包括的に分析することにより、実施例E1~E6に対応する二次電池の極板の膨張、サイクル応力が、比較例C1~C3よりも顕著に低くなることが分かった。
【0112】
比較例C4~C5と実施例E1~E5を比較することにより、チタン酸エステルとフッ素含有金属塩とのモル比が2/1~1/20である場合、二次電池の極板の膨張及びサイクル応力がより優れることが分かった。
【0113】
実施例E7~E8から、電解液がフッ素化溶媒を含有する場合、二次電池の極板の膨張及びサイクル応力がさらに最適化されることが分かった。
【0114】
<正極コーティング層の接着剤の電池の性能に対する影響>
本願の実施例E9では、正極極板の製造過程に接着剤PVDF-Acが加えられ、PVDF-Acは、乳化重合方法により製造され、合成で使用されたフッ化ビニリデン、エチレン、アクリル酸メチルモノマー、アクリル酸モノマーのモル比は60:10:25:5である以外、実施例E2と同じ方法により製造された。
【0115】
重合方法
ステンレス鋼反応釜に脱イオン水、分散剤、pH調整剤、及び連鎖移動剤を加え、真空で脱酸し、所定量のアクリル酸エステル、アクリル酸モノマー及び上記必要なフッ化ビニリデンの1/2を加え、開始剤を加え、温度及び圧力を制御し、重合反応を開始し、残りの1/2のフッ化ビニリデン及びエチレンを連続的に添加し、重合が終了すると、重合体を解乳、洗浄、乾燥させて、PVdF-Ac製品を得て、その分子量は90万であった。
【0116】
【0117】
表2から、正極コーティング層が接着剤としてのフッ化ビニリデン-アルキル単位-アクリレート-アクリル酸共重合体(PVdF-Ac)を含有する場合、二次電池は、極板の膨張が小さくなり、サイクル応力が小さくなることが分かった。
【0118】
<負極コーティング層の添加剤の電池の性能に対する影響>
本願の実施例E10-E11では、負極極板の製造中に負極添加剤としての1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン又はジフェニルメタンジイソシアネートが加えられ、表3に示すように、活物質として人工黒鉛、導電剤としてアセチレンブラック、接着剤としてスチレンブタジエンゴム(SBR)、増粘剤としてカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)及び負極添加剤を、質量比95:2:2:0.8:0.2で溶媒脱イオン水に溶解させ、溶媒脱イオン水と均一に混合して負極スラリーを製造した以外、実施例E2と同じ方法により製造された。
【0119】
【0120】
表3から、負極コーティング層が1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン又はジフェニルメタンジイソシアネートを含有する場合、二次電池は、極板の膨張が小さくなり、サイクル応力が小さくなることが分かった。
【0121】
<電池の各電圧での性能>
本願の比較例C6は、比較例C6の二次電池のテストにおいて、充電カットオフ電圧を4.2Vとした以外、比較例C1と同じ方法により製造された。本願の実施例E12は、実施例E12の二次電池のテストにおいて、充電カットオフ電圧を4.2Vとした以外、実施例E2と同じ方法により製造された。
【0122】
【0123】
なお、本願は上記実施形態に限定されない。上記実施形態は単なる例であり、本願の技術案の範囲内で技術的思想と実質的に同じ構成を有し、同じ作用効果を発揮する実施形態はいずれも本願の技術範囲内に含まれる。また、本願の要旨から逸脱しない範囲内で、実施形態に対して当業者が想到し得る様々な変形を行い、実施形態における一部の構成要素を組み合わせた他の形態本願の範囲内に含まれるものとする。
前記正極コーティング層は、リン酸マンガン鉄リチウム、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウムマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物、及びこれらの化合物と他の遷移金属又は非遷移金属との複合体から選択される少なくとも1種の正極活物質を含有する、請求項15に記載の二次電池。
前記エポキシ基を有する化合物は、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールグリシジルエーテル、グリシジルフタレート、テトラヒドロフタル酸ジグリシジル、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジグリシジル、4,4’-テトラグリシジルジアミノジフェニルメタンエポキシ、トリグリシジルp-アミノフェノール、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、テトラグリシジル-1,3-ビス(アミノメチルシクロヘキサン)、9,9-ビス[(2,3-グリシドキシ)フェニル]フルオレン、1,4-シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、テトラグリシジル-4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、テトラグリシジル-3,4’-ジアミノジフェニルエーテルから選択される1種又は複数種であり、
前記イソシアネート基を有する化合物は、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、ジメチルビフェニルジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアナート、ノルボルネンジイソシアネートから選択される1種又は複数種である、請求項18に記載の二次電池。