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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111170
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】積層体、包装体及び包装物品
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/32 20060101AFI20240808BHJP
   B32B 7/12 20060101ALI20240808BHJP
   B65D 30/16 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
B32B27/32 Z
B32B7/12
B65D30/16 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024099086
(22)【出願日】2024-06-19
(62)【分割の表示】P 2023552750の分割
【原出願日】2022-09-02
(31)【優先権主張番号】P 2021164766
(32)【優先日】2021-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021166810
(32)【優先日】2021-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021166811
(32)【優先日】2021-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】武井 遼
(72)【発明者】
【氏名】山田 幹典
(72)【発明者】
【氏名】三木 祐二
(72)【発明者】
【氏名】田中 亮太
(72)【発明者】
【氏名】川崎 健太郎
(57)【要約】
【課題】主にポリエチレンからなり、耐熱性に優れた積層体を提供する。
【解決手段】積層体10A1は、基材層1と接着剤層3とシーラント層2とをこの順序で備え、前記基材層1と前記シーラント層2とはポリエチレンを含み、前記基材層1は、探針降下温度が180℃以上である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と接着剤層とシーラント層とをこの順序で備え、
前記基材層と前記シーラント層とはポリエチレンを含み、
前記基材層は、探針降下温度が180℃以上である積層体。
【請求項2】
前記基材層は、探針降下温度が220℃以下である請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記基材層と前記シーラント層との間に介在し、ポリエチレンを含んだ中間層を更に備えた請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項4】
前記中間層は、探針降下温度が180℃以下である請求項3に記載の積層体。
【請求項5】
前記中間層は、探針降下温度が140℃以上である請求項4に記載の積層体。
【請求項6】
前記中間層は、探針降下温度が180℃以上である請求項3に記載の積層体。
【請求項7】
前記中間層は、探針降下温度が220℃以下である請求項6に記載の積層体。
【請求項8】
前記基材層を間に挟んで前記シーラント層と向き合った最表層としての保護層を更に備えた請求項1乃至7の何れか1項に記載の積層体。
【請求項9】
前記保護層は熱硬化型樹脂からなる請求項8に記載の積層体。
【請求項10】
前記基材層は二軸延伸フィルムである請求項1乃至9の何れか1項に記載の積層体。
【請求項11】
前記基材層は一軸延伸フィルムである請求項1乃至9の何れか1項に記載の積層体。
【請求項12】
前記基材層と前記シーラント層との間に介在したガスバリア層を更に備えた請求項1乃至11の何れか1項に記載の積層体。
【請求項13】
前記接着剤層はガスバリア性である請求項1乃至12の何れか1項に記載の積層体。
【請求項14】
前記シーラント層は白色である請求項1乃至13の何れか1項に記載の積層体。
【請求項15】
ポリエチレンの割合が90質量%以上である請求項1乃至14の何れか1項に記載の積層体。
【請求項16】
請求項1乃至15の何れか1項に記載の積層体を含んだ包装体。
【請求項17】
スタンディングパウチである請求項16に記載の包装体。
【請求項18】
請求項16又は17に記載の包装体と、これに収容された内容物とを含んだ包装物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体、包装体及び包装物品に関する。
【背景技術】
【0002】
包装袋等の包装体に使用される包装材料には、用途に応じて様々な特性が求められる。包装材料に必要とされる特性は、例えば、包装体に必要な強度、製袋適性、印刷適性、輸送適性、及び内容物の保存性である。これらの要求を満たすために、特性が異なる複数種類の合成樹脂フィルムを複合してなる包装材料を用いることが一般的に行われていた。
【0003】
例えば、特許文献1には、ポリエチレンから構成される樹脂フィルムを、ポリエステルやポリアミドなどからなる樹脂フィルム等と貼り合わせた包装材料が記載されている。
【0004】
特許文献2には、熱可塑性樹脂によって構成された基材層の少なくとも一方の面上に、無機層状化合物及び水溶性高分子を含む分散液を塗布して形成されたガスバリア層と、カチオン性樹脂と水酸基を有する樹脂とを含むオーバーコート層と、接着剤層と、シーラント層とが順次積層された多層フィルムが記載されている。この文献には、基材層としてナイロンフィルムを使用し、シーラント層として直鎖状低密度ポリエチレンフィルムを使用した具体例が記載されている。
【0005】
近年、循環型社会の構築を求める声の高まりとともに、高いリサイクル性を有する包装材料が求められている。しかしながら、上記したように、従来の包装材料は異種の樹脂材料から構成されている。これら樹脂材料を互いから分離することは困難である。
【0006】
また、一般に、包装材料に含まれる主要な樹脂の割合が90質量%以上であるとリサイクル性が高いと考えられている。従来の包装材料の多くは、上記の通り、複数種の樹脂材料を含んでおり、且つ、上記の基準を満たしていない。
【0007】
そのため、包装材料の多くは、リサイクルされていないのが現状である。
【0008】
特許文献3には、ポリエチレンからなる延伸フィルムを基材として使用し、その上に、接着層と、ポリエチレンからなるヒートシール層とを設け、基材と接着層との間、及び、ヒートシール層と接着層との間の少なくとも一方に蒸着層を設けた積層体が記載されている。この文献には、この積層体は、包装材料としての使用に十分な、強度、耐熱性及びバリア性を有し、リサイクル性にも優れていることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009-202519号公報
【特許文献2】特開2009-241359号公報
【特許文献3】特開2020-055157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、主にポリエチレンからなり、耐熱性に優れた積層体を提供することにある。
【0011】
本発明の一側面によると、基材層と接着剤層とシーラント層とをこの順序で備え、前記基材層と前記シーラント層とはポリエチレンを含み、前記基材層は、探針降下温度が180℃以上である積層体が提供される。
【0012】
本発明の他の側面によると、前記基材層は、探針降下温度が220℃以下である上記側面に係る積層体が提供される。
【0013】
本発明の更に他の側面によると、前記基材層と前記シーラント層との間に介在し、ポリエチレンを含んだ中間層を更に備えた上記側面の何れかに係る積層体が提供される。
【0014】
本発明の更に他の側面によると、前記中間層は、探針降下温度が180℃以下である上記側面に係る積層体が提供される。
【0015】
或いは、本発明の更に他の側面によると、前記中間層は、探針降下温度が140℃以上180℃未満である上記側面に係る積層体が提供される。
【0016】
或いは、本発明の更に他の側面によると、前記中間層は、探針降下温度が180℃以上である上記側面に係る積層体が提供される。
【0017】
本発明の更に他の側面によると、前記中間層は、探針降下温度が220℃以下である上記側面に係る積層体が提供される。
【0018】
本発明の更に他の側面によると、前記基材層を間に挟んで前記シーラント層と向き合った最表層としての保護層を更に備えた上記側面の何れかに係る積層体が提供される。
【0019】
本発明の更に他の側面によると、前記保護層は熱硬化型樹脂からなる上記側面に係る積層体が提供される。
【0020】
本発明の更に他の側面によると、前記基材層は二軸延伸フィルムである上記側面の何れかに係る積層体が提供される。
【0021】
或いは、本発明の他の側面によると、前記基材層は一軸延伸フィルムである上記側面の何れかに係る積層体が提供される。
【0022】
本発明の更に他の側面によると、前記基材層と前記シーラント層との間に介在したガスバリア層を更に備えた上記側面の何れかに係る積層体が提供される。
【0023】
本発明の更に他の側面によると、前記接着剤層はガスバリア性である上記側面の何れかに係る積層体が提供される。
【0024】
本発明の更に他の側面によると、前記シーラント層は白色である上記側面の何れかに係る積層体が提供される。
【0025】
本発明の更に他の側面によると、ポリエチレンの割合が90質量%以上である上記側面の何れかに係る積層体が提供される。
【0026】
本発明の更に他の側面によると、上記側面の何れかに係る積層体を含んだ包装体が提供される。
【0027】
本発明の更に他の側面によると、スタンディングパウチである上記側面に係る包装体が提供される。
【0028】
本発明の更に他の側面によると、上記側面の何れかに係る包装体と、これに収容された内容物とを含んだ包装物品が提供される。
【発明の効果】
【0029】
本発明によると、主にポリエチレンからなり、耐熱性に優れた積層体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係る積層体を概略的に示す断面図である。
図2図2は、図1に示す積層体の一変形例を概略的に示す断面図である。
図3図3は、本発明の第2実施形態に係る積層体を概略的に示す断面図である。
図4図4は、図3に示す積層体の一変形例を概略的に示す断面図である。
図5図5は、本発明の第3実施形態に係る積層体を概略的に示す断面図である。
図6図6は、図5に示す積層体の第1変形例を概略的に示す断面図である。
図7図7は、図5に示す積層体の第2変形例を概略的に示す断面図である。
図8図8は、本発明の第4実施形態に係る積層体を概略的に示す断面図である。
図9図9は、本発明の第5実施形態に係る積層体を概略的に示す断面図である。
図10図10は、図9に示す積層体の第1変形例を概略的に示す断面図である。
図11図11は、図9に示す積層体の第2変形例を概略的に示す断面図である。
図12図12は、本発明の第6実施形態に係る積層体を概略的に示す断面図である。
図13図13は、本発明の第7実施形態に係る包装物品を概略的に示す図である。
図14図14は、本発明の第8実施形態に係る包装物品を概略的に示す図である。
図15図15は、本発明の第9実施形態に係る包装物品を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。以下に説明する実施形態は、上記側面の何れかをより具体化したものである。以下に記載する事項は、単独で又は複数を組み合わせて、上記側面の各々に組み入れることができる。
【0032】
また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、下記の構成部材の材質、形状、及び構造等によって限定されるものではない。本発明の技術的思想には、請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0033】
なお、同様又は類似した機能を有する要素については、以下で参照する図面において同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。従って、或る実施形態において言及している事項は、特に断り書きがない限り、他の実施形態にも適用することができる。また、図面は模式的なものであり、或る方向の寸法と別の方向の寸法との関係、及び、或る部材の寸法と他の部材の寸法との関係等は、現実のものとは異なり得る。
【0034】
<1>第1実施形態
<1.1>積層体
図1は、本発明の第1実施形態に係る積層体を概略的に示す断面図である。
図1に示す積層体10A1は、基材層1と印刷層4と接着剤層3とシーラント層2とをこの順に含んでいる。
【0035】
積層体10A1は、ポリエチレンの割合が90質量%以上である。ここで、積層体におけるポリエチレンの割合とは、積層体を構成する各層における樹脂材料の合計量に占めるポリエチレンの合計量の割合を意味する。ポリエチレンの割合を90質量%以上とすることにより、高いリサイクル性を達成することができる。
【0036】
<1.2>基材層
基材層1はポリエチレンを含んでいる。好ましくは、基材層1はポリエチレンからなる。基材層1の探針降下温度は、180℃以上である。基材層1の探針降下温度の上限は特に制限されないが。250℃以下であることが好ましく、より好ましくは220℃以下である。
【0037】
上記の通り、基材層1は探針降下温度が高い。探針降下温度が高いことは、基材としての耐熱性に優れていることを意味する。優れた耐熱性を有しているということは、基材層を構成する分子鎖の規則的な配列が形成されていることを示唆している。この規則的な配列の形成としては、一次構造である結晶(球晶)の形成や、二次構造形成である配向結晶化などが挙げられる。特に、後者の配向結晶化に代表される二次構造の形成は、耐熱性の向上に加え、その分子配列の規則性から、衝撃耐性や突き刺し耐性の向上も期待することができる。
【0038】
なお、探針降下温度は、基材層の延伸率等の延伸条件の他、用いる樹脂の密度、コモノマーの種類、分子量、分子量分布、熱履歴等のフィルム製造条件、フィルム成膜方法により調整することができる。
【0039】
基材層1に含まれるポリエチレンは、エチレンのホモポリマーであってもよく、エチレンと他のモノマーとの共重合体であってもよい。ポリエチレンがエチレンと他のモノマーとの共重合体である場合、共重合体に占めるエチレンの割合は、例えば、80mol%以上である。
【0040】
他のモノマーは、例えば、α-オレフィンである。一例によると、α-オレフィンは炭素数が3乃至20の範囲内にある。そのようなα-オレフィンは、例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン、3-メチル-1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、又は6-メチル-1-ヘプテンである。
【0041】
ポリエチレンは、エチレンと、酢酸ビニル及びアクリル酸エステルのうちの一方との共重合体であってもよい。
【0042】
基材層1は、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、又は超低密度ポリエチレン(VLDPE)である。
【0043】
ここで、高密度ポリエチレンは、密度が0.942g/cm以上であり、中密度ポリエチレンは、密度が0.930g/cm以上0.942g/cm未満であり、低密度ポリエチレンは、密度が0.910g/cm以上0.930g/cm未満であり、直鎖状低密度ポリエチレンは、密度が0.910g/cm以上0.930cm未満であり、超低密度ポリエチレンは、密度が0.910g/cm未満である。
なお、密度は、JIS K7112:1999に準拠した方法で得られる値である。
【0044】
基材層1に含まれるポリエチレンは、バイオマス由来のポリエチレンであってもよい。バイオマス由来のポリエチレンとしては、例えば、グリーンポリエチレン(Braskem社製)を使用することができる。
【0045】
或いは、基材層1に含まれるポリエチレンは、メカニカルリサイクルによりリサイクルされたポリエチレンであってもよい。ここで、メカニカルリサイクルとは、回収されたポリエチレンフィルムなどを粉砕し、その後粉砕したフィルムをアルカリ洗浄してフィルム表面上の汚れ及び異物を除去した後、高温及び減圧下で乾燥してフィルム内部に留まっている汚染物質を拡散させることでポリエチレンフィルムの除染を行うことである。
【0046】
或いは、基材層1に含まれるポリエチレンは、ケミカルリサイクルによりリサイクルされたポリエチレンであってもよい。
基材層1の融点は、100℃乃至140℃の範囲内にあることが好ましく、120℃乃至140℃の範囲内にあることがより好ましい。なお、融点は、JIS K7121-1987に準拠した方法で得られる値である。
【0047】
ここで、基材層1の探針降下温度は、基材層1のシーラント層2と向き合った面とは反対側の面について、後述する測定方法によって得られる値である。探針降下温度の測定方法については、後で詳述する。
【0048】
基材層1は、無延伸フィルムであってもよく、延伸フィルムであってもよい。基材層1は、延伸フィルムであることが望ましい。基材層1が延伸フィルムである場合、耐熱性及び強度に特に優れる。また、基材層1の伸びが少なくなり、印刷適性が向上する。なお、本明細書において、用語「フィルム」は厚さの概念を含まない。
【0049】
基材層1が延伸フィルムである場合、基材層1は、一軸延伸フィルムであってもよく、二軸延伸フィルムであってもよい。基材層1として一軸延伸フィルムを使用すると、製袋時の耐熱性、即ち、後述するシール性が向上する。基材層1として二軸延伸フィルムを使用すると、積層体10Aを包装材料として使用した包装物品の落下強度が向上する。
【0050】
なお、延伸フィルムが一軸延伸フィルム及び二軸延伸フィルムの何れであるかは、以下に説明するように、広角X線回折法によるin-plane測定を行うことにより判別することができる。この測定によって得られるX線回折パターンは、フィルム面に存在している分子鎖の配向度に関する情報を含んでいる。測定方法の一例を示す。
【0051】
先ず、リガク社製の広角X線回折装置を使用し、平行ビーム法にて、アウト・オブ・プレーン(out-of-plane)測定を行う。回折角度10°乃至30°の範囲を2θ/θスキャンすることで、測定対象であるフィルムのX線回折パターンを得る。X線としてはCuKα線を用い、多層膜ミラーにより平行化したX線を基材層1へ入射させる。受光ユニットには、平板コリメータを取り付けたシンチレーション検出器を用いる。
【0052】
得られたX線回折パターンから、結晶成分のピーク面積と非晶成分のハローパターン面積とを求め、それら面積の合計に占める結晶成分のピーク面積の割合を結晶化度として算出する。
測定対象であるフィルムが複数の層を有する場合は、そのフィルムの最表面の何れか一方の結晶化度を測定する。
【0053】
測定対象であるフィルムがポリエチレンフィルムである場合、回折角度10°乃至30°の範囲でスキャンを行うと、(110)面と(200)面とに対応する2つのシャープな結晶成分のピークと、ブロードな非晶成分のハローパターンとが観測される。
【0054】
測定対象であるフィルムが一軸延伸フィルム及び二軸延伸フィルムの何れであるかを判別するには、上述の通り、X線回折法によるin-plane測定を用いることが可能である。このin-plane測定は、X線入射角度θ、及び、回折されたX線が検出器にて検知される角度2θを、それぞれ、上記のout-of-plane測定において特定の結晶面に対応した回折ピーク、例えば、ポリエチレンフィルムの(110)面に対応した回折ピークが検出されたときの角度θ及び角度2θへ固定し、この状態で、測定対象であるフィルムを面内方向にスキャンすることで回折パターンを得るというものである。
【0055】
機械方向(MD)に一軸延伸された一軸延伸フィルムに対してin-plane測定を行うと、MD方向を0°と定義した場合、(110)面に対応したシャープな回折ピークを角度2θが約±90°の位置に有する回折パターンを得ることができる。一方で、二軸延伸されたフィルムの場合は、一軸延伸により得られた高次構造が2回目の延伸により乱され、異方性が低下しているため、この(110)面に対応したシャープな回折ピークを有している回折パターンは得られない。従って、in-plane測定は、一軸延伸フィルムと二軸延伸フィルムとを互いから区別する方法の一つとして挙げることができる。
【0056】
上記の通り、ポリマーフィルムを一軸延伸すると、高次構造が現れる。この高次構造は、シシケバブ構造と呼ばれている。シシケバブ構造は、伸長鎖晶であるシシ構造と、ラメラ晶であるケバブ構造とからなる。一軸延伸フィルムでは、この高次構造が高い秩序度で配列しており、それ故、一軸延伸フィルムに対する上記の測定によって得られるX線回折パターンは、シャープな回折ピークを含むことになる。即ち、一軸延伸フィルムに対して上記の測定を行った場合、明瞭な回折ピークが現れる。なお、「明瞭な回折ピーク」は、半値幅が10°未満の回折ピークを意味している。
【0057】
これに対し、二軸延伸フィルムの製造では、特定の方向へ延伸し、次いで、先の方向に対して垂直な方向へ延伸する。そのため、最初の延伸によって上記の高次構造を生じるものの、この高次構造は2回目の延伸によって乱される。そのため、二軸延伸フィルムに対して上記の測定を行った場合、これによって得られるX線回折パターンでは、回折ピークはブロードになっている。即ち、二軸延伸フィルムについて上記の測定を行った場合、明瞭な回折ピークは現れない。
【0058】
以上のように、一軸延伸フィルムと二軸延伸フィルムとでは、上記の測定によって得られるX線回折パターンが相違する。従って、これに基づいて、延伸フィルムが一軸延伸フィルム及び二軸延伸フィルムの何れであるかを判別することができる。
【0059】
基材層1のヘイズは、20%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましい。なお、ヘイズは、JIS K7136:2000に準拠した方法で得られる値である。
【0060】
基材層1の厚さは、10μm乃至200μmの範囲内にあることが好ましい。基材層1の厚さは、例えば、10μm乃至50μmの範囲内であり、又は、15μm乃至50μmの範囲内であり、又は、12μm乃至35μmの範囲内である。基材層1が薄すぎると、積層体10A1の強度が小さくなりやすい。また、基材層1が厚すぎると、積層体10A1の加工適性が低下しやすい。
【0061】
基材層1は、表面処理されていることが好ましい。この処理によると、基材層1と基材層1に隣接する層との密着性を向上させることができる。
【0062】
表面処理の方法は特に限定されない。表面処理としては、例えば、コロナ放電処理、オゾン処理、酸素ガス及び/又は窒素ガスなどを用いた低温プラズマ処理、グロー放電処理などの物理的処理、並びに化学薬品を用いた酸化処理などの化学的処理が挙げられる。
【0063】
基材層1は、添加剤を更に含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、架橋剤、酸化防止剤、アンチブロッキング剤、滑(スリップ)剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、補強剤、帯電防止剤、顔料、及び改質用樹脂などが挙げられる。
【0064】
<1.3>シーラント層
シーラント層2は、基材層1と向き合っている。シーラント層2はポリエチレンを含んでいる。好ましくは、シーラント層2はポリエチレンからなる。
【0065】
シーラント層2は、透明であってもよく、不透明であってもよい。後者の場合、シーラント層2は白色であることが好ましい。シーラント層2が透明である積層体10Aは、これを包装体に使用した時に、内容物を視認し易い。シーラント層2が不透明である積層体10Aは、これを包装体に使用した時に、印刷層4が表示する画像の視認を内容物が妨げることがない。特に、白色のシーラント層2は、印刷層4が表示する画像の視認性を向上させる。
【0066】
<1.4>印刷層
印刷層4は、基材層1のシーラント層2と向き合った面に、即ち、基材層1の裏面に設けられている。
【0067】
印刷層4に用いる印刷インキとしては、ポリエチレンに対する付着性を有するものであれば、特に限定されない。印刷層4は、例えば、ウレタン系、アクリル系、ニトロセルロース系、ゴム系、及び塩化ビニル系等の従来から用いられているインキバインダ樹脂に各種顔料、体質顔料、可塑剤、乾燥剤、及び安定剤等の添加剤が添加されているインキにより構成される。印刷インキとしては、バイオマス由来のインキを用いることが好ましい。インキとしては、バイオマス由来の材料を含むバイオマスインキも好ましく使用できる。また、遮光性インキも好ましく使用することができる。遮光性インキとしては、例えば、白色インキ、黒色インキ、銀色インキ、セピア色インキ等が挙げられる。
【0068】
印刷方式としては、例えば、オフセット印刷方式、グラビア印刷方式、フレキソ印刷方式、及びシルクスクリーン印刷方式等の周知の印刷方式や、ロールコート、ナイフエッジコート、及びグラビアコート等の周知の塗布方式を用いることができる。
【0069】
印刷層4は、基材層1とシーラント層2との間であれば、どの位置に設けてもよい。例えば、積層体10Aが後述する中間層を更に含んでいる場合には、印刷層4は、中間層の何れかの面に設けてもよい。即ち、印刷層4は、どの層間に設けられていてもよい。印刷層4は、基材層1の表面に設けられていてもよいし、省略してもよい。また、積層体10Aは、複数の印刷層を含んでいてもよい。
【0070】
<1.5>接着剤層
接着剤層3は、印刷層4が設けられた基材層1とシーラント層2とを貼り合わせている。接着剤層3を形成するための接着剤としては、例えば、一般的なドライラミネート用接着剤が用いられる。
【0071】
接着剤層3は、少なくとも1種類の接着剤を含む。接着剤は、一液硬化型接着剤であってもよく、二液硬化型接着剤であってもよく、非硬化型接着剤であってもよい。また、接着剤は、無溶剤型接着剤であってもよく、溶剤型接着剤であってもよい。
【0072】
接着剤としては、ポリエーテル系接着剤、ポリエステル系接着剤、シリコーン系接着剤、ポリアミン系接着剤等のエポキシ系接着剤、ウレタン系接着剤、ゴム系接着剤、ビニル系接着剤、シリコーン系接着剤、エポキシ系接着剤、フェノール系接着剤及びオレフィン系接着剤などが挙げられる。バイオマス成分を含む接着剤も好ましく用いることができる。接着剤は、好ましくは、ガスバリア性を有するポリアミン系接着剤、又はウレタン系接着剤である。
【0073】
接着剤層3は、ポリエステルポリオールとイソシアネート化合物とリン酸変性化合物を含む樹脂組成物の硬化物であってもよい。このような接着剤層3は、積層体10A1の酸素バリア性及び水蒸気バリア性を更に改善することができる 。
【0074】
接着剤層3の厚さは、0.1μm乃至20μmの範囲内にあることが好ましく、0.5μm乃至10μmの範囲内にあることがより好ましく、1乃至5μmの範囲内にあることが更に好ましい。
【0075】
接着剤層3は、例えば、ダイレクトグラビアロールコート法、グラビアロールコート法、キスコート法、リバースロールコート法、フォンテン法及びトランスファーロールコート法など従来公知の方法により、シーラント層2の上に塗布及び乾燥することにより形成することができる。
【0076】
<1.6>探針降下温度の測定方法
以下、探針降下温度の測定方法について説明する。
探針降下温度とは、探針の上昇・降下挙動を測定することによって得られる温度であって、局所的な熱分析を行うことによって得られる温度である。
【0077】
探針降下温度の測定には、加熱機構を有するカンチレバー(探針)から構成されたナノサーマル顕微鏡を備えた原子間力顕微鏡(AFM)を用いる。測定に当たっては、先ず、試料台に、試料として固体状態の樹脂基材を固定する。次に、試料の表面にカンチレバーを接触させ、コンタクトモードにてカンチレバーに一定の力(触圧)を加えるとともに、電圧を印加することにより加熱する。そうすると、試料表面が熱膨張し、カンチレバーは上昇する。電圧を高めてカンチレバーの温度を更に上昇させると、試料表面が軟化して、大きな硬度の変化がみられる。その際に、カンチレバーは下降し、試料に入り込む。この間のカンチレバーの変位と電圧との関係から、探針降下温度を求める。即ち、カンチレバーの位置が急激に変化した温度が、試料の軟化点である。このときの電圧を変換することにより得られる温度が、軟化温度、即ち探針降下温度である。
【0078】
このような測定を行うことで、試料全体の平均的な軟化温度ではなく、ナノスケール領域の軟化温度を知ることができる。具体的には、試料の表面領域の軟化温度を知ることができる。
【0079】
原子間力顕微鏡としては、オックスフォード・インストゥルメンツ株式会社製のMPFー3DーSA(商品名)、Zthermシステム(商品名)を用いる。原子間力顕微鏡は、特にこの装置に限定されることはなく、ブルカー・ジャパン社のNano Thermal Analysis(商品名)シリーズやnanoIR(商品名)シリーズを使用することも可能である。更に、他メーカーの原子間力顕微鏡に、Nano Thermal Analysis(商品名)を取り付けて、測定に使用することも可能である。
【0080】
カンチレバーとしては、アナシス・インスツルメンツ社製のAN2-200(商品名)を用いる。カンチレバーは、特にこれに限定されることはなく、レーザー光を十分に反射することができ、電圧を印加することができれば、他のカンチレバーを使用してもよい。
【0081】
カンチレバーに印加する電圧範囲は、測定対象の樹脂等にもよるが、1Vから10Vまでが好ましく、試料の損傷を少なく、より空間分解能を高く測定するためには、3Vから8Vまでがより好ましい。
【0082】
測定可能な温度範囲は、測定対象の樹脂等にもよるが、一般的には、測定開始温度は常温の25℃程度以上であり、測定終了温度は400℃程度以下である。探針降下温度を算出する温度範囲については、25℃以上300℃以下であることが好ましい。
【0083】
探針降下温度の測定においては、上記の通り、カンチレバーによる触圧を一定にして、試料へ熱を加える。触圧を加えるために、カンチレバーを試料に接触させる必要があるが、触圧は試料の表面を破壊しない程度とする必要がある。カンチレバーのばね定数は、0.1乃至3.5N/mであることが好ましく、タッピングモードとコンタクトモードとの両モードでの測定を行うためには、0.5乃至3.5N/mであることが好ましい。触圧は0.1乃至3.0Vであることが好ましい。
【0084】
カンチレバーの昇温速度(電圧上昇速度)は、カンチレバーが備える加熱機構等にもよるが、一般的に0.1V/秒以上10V/秒以下であることが好ましい。昇温速度は、0.2V/秒以上5V/秒以下であることがより好ましい。
【0085】
上記の通り、試料表面が軟化すると、カンチレバーは、試料に侵入して下降する。カンチレバーの侵入量は、軟化曲線のピークトップを認識可能な大きさを有している必要があるため、3乃至500nmであることが好ましい。侵入量が大きいと、カンチレバー(探針)が破損することがあるため、カンチレバーの侵入量は、より好ましくは5乃至100nmである。
【0086】
膨張の曲線と軟化の曲線とを必要に応じて関数によってそれぞれ近似し、近似曲線の交点を算出することで、探針降下開始点や探針降下温度を求めてもよい。或いは、変位のピークトップを探針降下開始点や探針降下温度とする解析方法を利用してもよい。或いは、定常状態から変位が特定の値に達したときの電圧から探針降下開始点や探針降下温度を求めてもよい。
【0087】
上記の通り、探針降下温度は、電圧から換算する。この換算には、検量線(校正曲線)を利用することができる。正確な探針降下温度を得るためには、校正曲線の作成は、例えば、試料に対する測定を実施した後に行う。校正用サンプルとしては、ポリカプロラクトン(融点:55℃)、低密度ポリエチレン(LDPE、融点110℃)、ポリプロピレン(PP、融点164℃)、ポリエチレンテレフタレート(PET、融点235℃)の4種を用いる。校正用サンプルの各々について、測定位置を変えて2回以上の測定を行い、これら測定結果から、探針降下開始点に相当する電圧の平均値を求める。そして、全ての校正用サンプルについて得られた電圧の平均値とそれらの融点とから、検量線(校正曲線)を作成する。この校正曲線に、試料について得られた電圧を参照して、探針降下温度を得る。
【0088】
<1.7>効果
上述した積層体10A1は、耐熱性に優れている。これについて、以下に説明する。
【0089】
包装袋の製造には、一般に、積層体のシーラント層同士を接触させ、それらが接触した部分を治具で挟んで圧力及び熱を加えることにより、上記接触部を熱溶着(ヒートシール)させる工程がある。ヒートシール機の治具は高温になっており、治具に直接接触する基材層の表面は高温に曝される。その結果、耐熱性が劣るポリエチレンを基材層に使用した場合、基材層の表面が熱に冒されて治具に付着するなどの不具合が生じる場合がある。そのため、ポリエチレンを基材層に使用した従来の積層体は、製袋温度の適正条件が狭く、生産性が悪いことが課題となっていた。
【0090】
本発明者らは、種々のポリエチレンについて上記の探針降下温度を測定した結果、基材層1の探針降下温度が180℃以上であると、基材層1が優れた耐熱性を示し、それ故、積層体10A1も優れた耐熱性を示すこと、特には良好なヒートシール適性を達成することを見出した。
【0091】
積層体10A1では、基材層1として、一般に耐熱性が乏しいと言われているポリエチレンを用いている。しかしながら、基材層1の探針降下温度を180℃以上とすることにより、製袋のために行うヒートシールの温度範囲が拡がり、生産性の低下を生じない。
【0092】
更に、積層体10A1は、ポリエチレンの割合が90質量%以上である。従って、積層体10A1はリサイクル性にも優れている。
【0093】
<1.8>変形例
積層体10A1には、様々な変形が可能である。
図2は、図1に示す積層体の一変形例を概略的に示す断面図である。図2に示す積層体10A2は、基材層1と印刷層4との間に介在した無機化合物層5を更に含んでいること以外は、積層体10A1と同様である。無機化合物層5は、無機化合物、例えば、酸化アルミニウムや酸化ケイ素のような無機酸化物からなる薄膜であり、酸素や水蒸気の透過を抑制するガスバリア層として機能する。積層体10A2は、無機化合物層5の代わりに、第2実施形態において説明する被覆層を含んでいてもよい。或いは、積層体10A2は、無機化合物層5と接着剤層3との間に、上記被覆層を更に含んでいてもよい。被覆層、又は、被覆層と無機化合物層5との組み合わせも、ガスバリア層として機能し得る。
【0094】
積層体10A2も、耐熱性に優れている。また、上記の無機化合物層5は実質的に透明であるから、無機化合物層5を基材層1と印刷層4との間に設けても、表面側から印刷層4が表示する画像を視認することができる。そして、積層体10A2もリサイクル性に優れている。
【0095】
また、積層体10A1及び10A2には、遮光性を付与するために、基材層1とシーラント層2との間に金属蒸着層を設けてもよい。積層体が後述する中間層を更に含んでいる場合は、中間層の何れかの面に金属蒸着層を設けてもよい。金属蒸着層としてはアルミニウム蒸着層を挙げることができる。
【0096】
また、シーラント層2が不透明であってもよいことを既に述べたが、基材層1も不透明であってもよい。例えば、基材層1は白色であってもよい。積層体が後述する中間層を更に含んでいる場合は、中間層は不透明であってもよい。例えば、中間層は白色であってもよい。
【0097】
<2>第2実施形態
<2.1>積層体
図3は、本発明の第2実施形態に係る積層体を概略的に示す断面図である。
図3に示す積層体10B1は、基材層1の表面に設けられた保護層6と、基材層1と印刷層4との間に介在した被覆層7とを更に含んでいること以外は、積層体10A1と同様である。
【0098】
<2.2>保護層
保護層6は、基材層1を間に挟んでシーラント層2と向き合った最表層である。ここでは、保護層6は、基材層1の表面を被覆している。
【0099】
保護層6は、一例によれば、熱硬化型樹脂からなる。即ち、保護層6は、熱硬化型樹脂層である。熱硬化型樹脂の硬化物は、耐熱性を有するものであれば、特に限定されない。熱硬化型樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、及びエポキシ樹脂を、単体で又は複合して用いることができる。
【0100】
保護層6は、一形態において、水溶性高分子を含むことが好ましく、有機金属化合物を更に含んだ有機無機複合層であることも好ましい。
【0101】
水溶性高分子としては、例えば、ポリビニルアルコール系、デンプン・メチルセルロース・カルボキシメチルセルロース等の多糖類、及びアクリルポリオール系等の水酸基含有高分子が挙げられる。保護層6は、一形態において、被覆層7が含有し得るポリビニルアルコール系水酸基含有高分子を含むことが好ましい。
【0102】
保護層6は、有機金属化合物として、金属アルコキシド、金属アルコキシドの加水分解物、及び、金属アルコキシド或いはその加水分解物の反応生成物の少なくとも1つを含有することが好ましい。金属アルコキシドとしては、例えば、テトラエトキシシラン[Si(OC]及びトリイソプロポキシアルミニウム[Al(OC]等の一般式M(OR)で表されるものが挙げられる。
【0103】
また、保護層6は、有機金属化合物として更に、シランカップリング剤、シランカップリング剤の加水分解物、及び、シランカップリング剤或いはシランカップリング剤の加水分解物の反応生成物の少なくとも1つを含むことが好ましい。
【0104】
保護層6は、一形態において、被覆層7を形成するための塗布液を用いて形成することができる。
【0105】
保護層6は、積層体の表面におけるヒートシール時の熱ダメージを軽減する。保護層6の厚さが0.3μm以上である場合、熱ダメージを軽減する効果が特に大きい。但し、保護層6を厚くすると、熱硬化型樹脂のからなる塗膜の乾燥不足を生じ易くなるか、又は、生産性が低下する。従って、保護層6の厚さは、3μm以下であることが好ましく、3μm未満であることがより好ましい。
【0106】
<2.3>被覆層
被覆層7は、酸素や水蒸気の透過を抑制するバリア層として機能する。高いバリア性が要求されない場合、被覆層7は省略することができる。
【0107】
被覆層7は、例えば、塗工で形成することができる。この場合、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン-ビニルアルコール共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、及びエポキシ樹脂などの樹脂を含んだ塗液を使用することができる。この塗液には、有機又は無機粒子、層状化合物、及び硬化剤などの添加剤を添加してもよい。
【0108】
或いは、被覆層7は、水酸基含有高分子と有機ケイ素化合物を含む皮膜である。被覆層7は、例えば、アルコキシドの加水分解及び脱水縮合の反応生成物と、水溶性高分子とを含む有機無機複合層であってもよい。この有機無機複合層は、シランカップリング剤の反応生成物を更に含んでいてもよい。
【0109】
有機無機複合層の形成に使用するアルコキシドとしては、例えば、テトラエトキシシラン[Si(OC]及びトリイソプロポキシアルミニウム[Al(OC]等の一般式M(OR)で表されるものが挙げられる。これらのうちの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0110】
有機無機複合層の形成に用いられる塗液における、アルコキシド、その加水分解物又はそれらの反応生成物の合計含有率は、例えば、酸素バリア性の観点から40質量%以上であってよく、50質量%以上であってよく、65質量%以上であってよい。また、上記塗液における、アルコキシド、その加水分解物又はそれらの反応生成物の合計含有率は、例えば、70質量%以下であってよい。
【0111】
有機無機複合層に含まれる水溶性高分子は、特に限定されず、例えばポリビニルアルコール系、デンプン・メチルセルロース・カルボキシメチルセルロース等の多糖類、及びアクリルポリオール系等の水酸基含有高分子が挙げられる。酸素ガスバリア性を一層向上させる観点から、水溶性高分子は、ポリビニルアルコール系の水溶性高分子を含むことが好ましい。水溶性高分子の数平均分子量は、例えば、40000乃至180000である。
【0112】
有機無機複合層に含まれるポリビニルアルコール系の水溶性高分子は、例えばポリ酢酸ビニルをけん化(部分けん化も含む)して得ることができる。この水溶性高分子は、酢酸基が数十%残存しているものであってもよく、酢酸基が数%しか残存していないものであってもよい。
【0113】
有機無機複合層の形成に用いられる塗液における水溶性高分子の含有率は、例えば、酸素バリア性の観点から15質量%以上であってよく、20質量%以上であってよい。また、上記塗液における水溶性高分子の含有率は、例えば、酸素バリア性の観点から50質量%以下であってよく、45質量%以下であってよい。
【0114】
有機無機複合層に使用されるシランカップリング剤としては、有機官能基を有するシランカップリング剤が挙げられる。そのようなシランカップリング剤としては、エチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ-クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、グリシドオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプリピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。これらの中から選択されるシランカップリング剤、その加水分解物及びそれらの反応生成物の1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0115】
シランカップリング剤としては、有機官能基としてエポキシ基を有するものを用いることが好ましい。エポキシ基を有するシランカップリング剤としては、例えば、γ-グリシドオキシプロピルトリメトキシシラン、及びβ-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランが挙げられる。エポキシ基を有するシランカップリング剤は、ビニル基、アミノ基、メタクリル基又はウレイル基のように、エポキシ基とは異なる有機官能基を有していてもよい。これらの中から選択されるシランカップリング剤、その加水分解物及びそれらの反応生成物の1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0116】
有機官能基を有するシランカップリング剤、その加水分解物又はそれらの反応生成物は、その有機官能基と水溶性高分子の水酸基との相互作用によって、被覆層の酸素バリア性と、隣接する層との密着性を一層向上することができる。特に、シランカップリング剤、その加水分解物又はそれらの反応生成物がエポキシ基を有し、水溶性高分子がポリビニルアルコール(PVA)である場合、エポキシ基とPVAの水酸基との相互作用により、酸素バリア性と、隣接する層との密着性を更に向上することができる。
【0117】
有機無機複合層の形成に用いられる塗液における、シランカップリング剤、その加水分解物及びそれらの反応生成物の合計含有率は、例えば、酸素バリア性の観点から1質量%以上であってよく、2質量%以上であってよい。また、上記塗液におけるシランカップリング剤、その加水分解物及びそれらの反応生成物の合計含有率は、例えば、酸素バリア性の観点から15質量%以下であってよく、12質量%以下であってよい。
【0118】
被覆層7の厚さは、50nm以上1000nm以下であることが好ましく、100nm以上500nm以下であることがより好ましい。被覆層7の厚さが50nm以上であると、より十分なガスバリア性を得ることができる傾向があり、1000nm以下であると、十分な柔軟性を保持できる傾向がある。
【0119】
<2.4>効果
積層体10B1は、保護層6を含んでいる。上記の通り、保護層6は、積層体の表面におけるヒートシール時の熱ダメージを軽減する。それ故、積層体10B1は、更に優れた耐熱性、特には、より良好なヒートシール適性を達成し得る。従って、積層体10B1について上述した構成を採用すると、製袋のために行うヒートシールの温度範囲が拡がり、生産性の低下を更に生じ難くなる。
【0120】
即ち、積層体10B1は、耐熱性に更に優れている。そして、積層体10B1はリサイクル性にも優れている。
【0121】
<2.5>変形例
積層体10B1には、様々な変形が可能である。
図4は、図3に示す積層体の一変形例を概略的に示す断面図である。図4に示す積層体10B2は、基材層1と被覆層7との間に、上述した無機化合物層5を更に含んでいること以外は、積層体10B1と同様である。
【0122】
積層体10B2では、被覆層7と無機化合物層5との組み合わせがバリア層として機能する。積層体10B2では、被覆層7を省略してもよい。
【0123】
積層体10B2も、積層体10B1と同様に、耐熱性に更に優れている。そして、積層体10B2もリサイクル性に優れている。
【0124】
<3>第3実施形態
<3.1>積層体
図5は、本発明の第3実施形態に係る積層体を概略的に示す断面図である。
図5に示す積層体10C1は、以下の事項を除き、積層体10A1と同様である。即ち、積層体10C1は、印刷層4を含んでおらず、中間層8を更に含んでいる。また、積層体10C1は、接着剤層3の代わりに第1接着剤層3A及び第2接着剤層3Bを含んでいる。
【0125】
<3.3>シーラント層
シーラント層2は、上記した基材層1と同様に、ポリエチレンを含んでいる。このような構成とすることにより、十分な強度や耐熱性を有し、且つ、リサイクル可能な包装材料などを作製することができる。
【0126】
シーラント層2を構成する樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、中密度ポリエチレン樹脂(MDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-αオレフィン共重合体、及びエチレン-(メタ)アクリル酸共重合体などのエチレン系樹脂;ポリエチレンとポリブテンとのブレンド樹脂;又は、プロピレン-エチレンランダム共重合体、プロピレン-エチレンブロック共重合体などのポリプロピレン系樹脂等を使用することができる。これらの熱可塑性樹脂は、使用用途やボイル処理などの温度条件によって適宜選択できる。
【0127】
シーラント層2は、積層体10C1について説明する特性を損なわない範囲において、上記添加剤を含むことができる。
【0128】
シーラント層2の厚さは、製造する包装袋の形状や、収容される内容物の質量等を考慮して適宜設定できるが、例えば30乃至150μmとすることができる。
【0129】
シーラント層2は、ここでは、接着剤を介してシーラントフィルムを中間層8へ貼り合わせたものである。シーラント層2は、熱可塑性樹脂を加熱溶融させ、カーテン状に押し出し、これを中間層8へ貼り合わせるエクストルージョンラミネート法等により形成することもできる。この場合、第2接着剤層3Bは省略してもよい。
【0130】
<3.4>中間層
中間層8は、基材層1とシーラント層2との間に介在している。中間層8は、ポリエチレンを含んでいる。積層体10C1において、中間層8は、上述した探針降下温度が180℃以上である。中間層8は、上述した探針降下温度が220℃以下であることが好ましい。このような中間層8は、積層体10C1のリサイクル性を高めるとともに、強度、特には突き刺し強度の向上に寄与する。
【0131】
探針降下温度が180℃以上の中間層8は、好ましくは延伸フィルムである。延伸フィルムは、一軸延伸フィルムであってもよく、二軸延伸フィルムであってもよい。
【0132】
なお、この実施形態において、探針降下温度が140℃以上180℃未満の中間層を用いても良い。探針降下温度が140℃以上180℃未満の中間層を用いることで積層体の強度、特には落下強度を向上させることができる。探針降下温度が140℃以上180℃未満の中間層としては無延伸フィルムであることが好ましい。
【0133】
ポリエチレンとしては、例えば、基材層1が含むポリエチレンについて上述したものを使用することができる。中間層8に含まれるポリエチレンは、上記した中でも、強度、耐熱性及びフィルムの延伸適正の観点から、高密度ポリエチレン又は中密度ポリエチレンであることが好ましい。
【0134】
中間層8は、積層体10C1について説明する特性を損なわない範囲において、上記添加剤を含むことができる。
【0135】
中間層8の厚さは、9μm以上50μm以下であることが好ましく、12μm以上30μm以下であることがより好ましい。
【0136】
中間層8の厚さを大きくすると、積層体10C1の強度及び耐熱性を高めることができる。また、中間層8の厚さを小さくすると、積層体10C1の加工適性を向上させることができる。
【0137】
中間層8としては、上記Tダイ法やインフレーション法により作製したものを使用してもよく、市販されているものを使用してもよい。
【0138】
<3.5>接着剤層
第1接着剤層3Aは、基材層1と中間層8との間に介在しており、それらを貼り合わせている。第2接着剤層3Bは、シーラント層2と中間層8との間に介在しており、それらを貼り合わせている。これら接着剤層は、層間の密着性を向上させる。
【0139】
第1接着剤層3A及び第2接着剤層3Bを形成するための接着剤としては、例えば、公知のドライラミネート用接着剤を使用することができる。接着剤は、ドライラミネート用接着剤であれば特に制限なく使用できる。具体例として、二液硬化型のエステル系接着剤、エーテル系接着剤、及び一液硬化型又は二液硬化型ウレタン系接着剤が挙げられる。基材層1と中間層8との貼り合わせ、及び、シーラント層2と中間層8との貼り合わせは、無溶剤接着剤を用いるノンソルベントドライラミネート法によって行ってもよい。
【0140】
第1接着剤層3A及び第2接着剤層3Bを形成するための接着剤としては、硬化後にガスバリア性を発現するガスバリア性接着剤を用いることもできる。ガスバリア性接着剤を使用することで、積層体10C1のガスバリア性を向上させることができる。ガスバリア性接着剤からなる接着剤層の酸素透過度は、150cc/m・day・atm以下であることが好ましく、100cc/m・day・atm以下であることがより好ましく、80cc/m・day・atm以下であることが更に好ましく、50cc/m・day・atm以下であることが特に好ましい。酸素透過度が小さな接着剤層を設けると、積層体10C1のガスバリア性を高めることができる。
【0141】
また、後述するように、積層体10C1は、無機化合物層を更に含むことができる。ガスバリア性接着剤を使用すると、無機化合物層に軽微なクラック等が生じた場合であっても、その上にガスバリア性接着剤を塗工することにより、無機化合物層に生じた隙間にガスバリア性接着剤が入りこみ、これにより、ガスバリア性の低下を抑制することができる。
【0142】
ガスバリア性接着剤としては、例えば、エポキシ系接着剤及びポリエステル・ポリウレタン系接着剤が挙げられる。ガスバリア性接着剤の具体例としては、三菱ガス化学社製の「マクシーブ」及びDIC社製の「Paslim」が挙げられる。
【0143】
第1接着剤層3A及び第2接着剤層3Bがガスバリア性接着剤からなる場合、それらの厚さは、無機化合物層の厚さの50倍以上であることが好ましい。第1接着剤層3A及び第2接着剤層3Bを厚くすると、無機化合物層の割れを抑制する効果が高まり、且つ、積層体10C1のガスバリア性が向上する。第1接着剤層3A及び第2接着剤層3Bを厚くすると、外部からの衝撃を緩和するクッション性をそれら接着剤層へ更に付与することができ、衝撃により無機化合物層が割れることを防ぐことができる。積層体10C1の柔軟性の保持、加工適性、及びコストの観点からは、第1接着剤層3A及び第2接着剤層3B厚さは無機化合物層の厚さの300倍以下であることが好ましい。
【0144】
第1接着剤層3A及び第2接着剤層3Bの厚さは、例えば0.1乃至20μmであり、好ましくは0.5乃至10μmであり、より好ましくは1乃至5μmである。
【0145】
接着剤は、例えば、バーコート法、ディッピング法、ロールコート法、グラビアコート法、リバースコート法、エアナイフコート法、コンマコート法、ダイコート法、スクリーン印刷法、スプレーコート法、又はグラビアオフセット法により塗布することができる。接着剤の塗膜を乾燥させる際の温度は、例えば、30乃至200℃とすることができ、50乃至180℃が好ましい。上記塗膜を硬化させる際の温度は、例えば、室温乃至70℃とすることができ、30乃至60℃が好ましい。乾燥及び硬化時の温度を上記範囲内とすることで、無機化合物層、第1接着剤層3A、及び第2接着剤層3Bにクラックが発生することをより一層抑制でき、優れたガスバリア性を発現させることができる。
【0146】
無機化合物層5の割れ防止の観点からは、第1接着剤層3A又は第2接着剤層3Bと無機化合物層とが直接接触していることが好ましいが、それらの間に他の層が介在していてもよい。
【0147】
<3.6>効果
上述した積層体10C1は、基材層1の探針降下温度が上記範囲内にある。それ故、積層体10C1は、積層体10A1と同様に、耐熱性に優れている。
【0148】
また、積層体10C1は、探針降下温度が上記範囲内にある中間層8を含んでいる。この中間層8は、積層体10C1の強度、特には突き刺し強度を高める。それ故、積層体10C1は、強度、特には突き刺し強度に優れている。
【0149】
そして、積層体10C1は、ポリエチレンの割合が90質量%以上である。それ故,積層体10C1は、リサイクル性にも優れている。
【0150】
また、ポリエチレンの割合が高い積層体は、他の積層体と比較して腰が弱く、それ故、包装材料として使用した場合に折り曲げられる機会が多い。折り曲げられる機会が多くなると、ピンホールが発生する可能性が高まるが、突き刺し強度に優れている積層体10C1は、ピンホールを発生し難い。
【0151】
<3.7>変形例
積層体10C1には、様々な変形が可能である。
図6は、図5に示す積層体の第1変形例を概略的に示す断面図である。図7は、図5に示す積層体の第2変形例を概略的に示す断面図である。
【0152】
図6に示す積層体10C2及び図7に示す積層体10C3は、無機化合物層5を更に含んでいること以外は、積層体10C1と同様である。積層体10C2では、無機化合物層5は、第1接着剤層3Aと中間層8との間に介在している。積層体10C3では、無機化合物層5は、第2接着剤層3Bと中間層8との間に介在している。即ち、積層体10C2では、無機化合物層5は中間層8の一方の面に設けられ、積層体10C3では、無機化合物層5は中間層8の他方の面に設けられている。無機化合物層5は、中間層8の両面に設けられていてもよい。無機化合物層5は、基材層1と第1接着剤層3Aとの間に介在していてもよい。
【0153】
無機化合物層5は、積層体のガスバリア性、具体的には酸素バリア性及び水蒸気バリア性を向上させる。
【0154】
無機化合物層5を構成する材料としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化錫、酸化亜鉛、及び酸化インジウム等の無機酸化物が挙げられ、特に酸化アルミニウム又は酸化ケイ素が、生産性に優れ、高温又は高湿熱環境下での酸素バリア性及び水蒸気バリア性に優れることから好ましい。無機化合物層5は、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて含んでいてもよい。
【0155】
無機化合物層5の厚さは、1乃至200nmが好ましく、厚さを大きくすると、酸素バリア性及び水蒸気バリア性が向上する。但し、厚さを大きくすると、製造コストが高まるとともに、折り曲げや引っ張りなどの外力による亀裂を生じ易くなり、それ故、これに起因したバリア性の劣化を生じ易くなる。
【0156】
酸化アルミニウムからなる蒸着膜の膜厚は、5nm以上30nm以下であることが好ましい。膜厚が5nm以上であると、十分なガスバリア性を得ることができる。また、膜厚が30nm以下であると、薄膜の内部応力による変形によりクラックが発生することを抑制し、ガスバリア性の低下を抑制することができる。なお、膜厚が30nmを超えると、材料使用量の増加、及び膜形成時間の長時間化等に起因してコストが増加し易いため、経済的観点からも好ましくない。上記と同様の観点から、酸化アルミニウムからなる蒸着膜の膜厚は、7nm以上15nm以下であることがより好ましい。
【0157】
酸化ケイ素からなる蒸着膜の膜厚は、10nm以上50nm以下であることが好ましい。膜厚が10nm以上であると、十分なガスバリア性を得ることができる。また、膜厚が50nm以下であると、薄膜の内部応力による変形によりクラックが発生することを抑制し、ガスバリア性の低下を抑制することができる。なお、膜厚が50nmを超えると、材料使用量の増加、及び膜形成時間の長時間化等に起因してコストが増加し易いため、経済的観点からも好ましくない。上記と同様の観点から、酸化ケイ素からなる蒸着膜の膜厚は、20nm以上40nm以下であることがより好ましい。
【0158】
無機化合物層5は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、及びプラズマ化学気相堆積法(CVD)等の公知の成膜方法によって形成することができる。生産性の点では、巻取り式の真空蒸着法が特に好ましい。
【0159】
積層体10C2及び10C3は、無機化合物層5の代わりに、第2実施形態において説明した被覆層を含んでいてもよい。積層体10C2は、無機化合物層5と第1接着剤層3Aとの間に、上記被覆層を更に含んでいてもよい。積層体10C3は、無機化合物層5と第2接着剤層3Bとの間に、上記被覆層を更に含んでいてもよい。被覆層、又は、被覆層と無機化合物層5との組み合わせも、ガスバリア層として機能し得る。
【0160】
積層体10C1、10C2及び10C3は、必要に応じて、印刷層、保護層、遮光層、及びその他の機能層の1以上を更に含んでいてもよい。
【0161】
印刷層は、内容物に関する情報の表示、内容物の識別、又は包装袋の意匠性向上を目的として、包装体の状態において外側から見える位置に設けることができる。印刷方法及び印刷インキは特に制限されず、公知の印刷方法及び印刷インキの中から、フィルムへの印刷適性、色調などの意匠性、密着性、及び食品容器としての安全性などを考慮して適宜選択できる。インキとしては、バイオマス由来の材料を含むバイオマスインキも好ましく使用できる。また、遮光性インキも好ましく使用することができる。遮光性インキとしては、例えば、白色インキ、黒色インキ、銀色インキ、セピア色インキ等が挙げられる。
【0162】
印刷方法としては、例えば、グラビア印刷法、オフセット印刷法、グラビアオフセット印刷法、フレキソ印刷法、及びインクジェット印刷法を例示できる。なかでもグラビア印刷法は、生産性や絵柄の高精細度の観点から好ましい。印刷層の密着性を高めるため、印刷層を形成する層の表面に、コロナ処理、プラズマ処理、及びフレーム処理などの各種前処理を施したり、易接着層などのコート層を設けたりしてもよい。
【0163】
印刷層は、例えば、基材層1の表面、基材層1の裏面、中間層8の基材層1と向き合った面(表面)、及び中間層8のシーラント層2と向き合った面(裏面)の何れかに設ける。
【0164】
また、積層体に遮光性を付与する方法として、基材、中間層あるいはシーラント層に金属蒸着層を設けることもできる。金属蒸着層としてはアルミ蒸着を挙げることができる 。
【0165】
<4>第4実施形態
<4.1>積層体
図8は、本発明の第4実施形態に係る積層体を概略的に示す断面図である。
【0166】
図8に示す積層体10D1は、基材層1と第1接着剤層3Aとの間に介在した印刷層4、基材層1の表面に設けられた保護層6、及び、無機化合物層5と第2接着剤層3Bとの間に介在した被覆層7を更に含んでいること以外は、積層体10C3と同様である。印刷層4としては、第1及び第3実施形態において説明したものを使用することができる。保護層6及び被覆層7としては、第2実施形態において説明したものを使用することができる。
【0167】
<4.2>効果
上述した積層体10D1は、基材層1の探針降下温度が上記範囲内にある。そして、積層体10D1は、保護層6を含んでいる。それ故、積層体10D1は、更に優れた耐熱性、特には、より良好なヒートシール適性を達成し得る。従って、積層体10D1について上述した構成を採用すると、製袋のために行うヒートシールの温度範囲が拡がり、生産性の低下を更に生じ難くなる。
【0168】
また、積層体10D1は、探針降下温度が上記範囲内にある中間層8を含んでいる。この中間層8は、積層体10D1の強度、特には突き刺し強度を高める。それ故、積層体10D1は、強度、特には突き刺し強度に優れている。
【0169】
更に、基材層1は、ヘイズが小さい場合、透明性に優れている。それ故、この場合、印刷層4が表示する図柄や文字等の画像は、良好な視認性で視認することができる。
【0170】
そして、積層体10D1は、ポリエチレンの割合が90質量%以上である。それ故,積層体10D1は、リサイクル性にも優れている。
【0171】
<4.3>変形例
積層体10D1には、様々な変形が可能である。
例えば、無機化合物層5は、中間層8の裏面に設ける代わりに、中間層8の表面に設けてもよい。この場合、被覆層7は、無機化合物層5を被覆するように設ける。
【0172】
無機化合物層5及び被覆層7の一方は省略してもよい。高いバリア性が要求されない場合、無機化合物層5及び被覆層7の双方を省略してもよい。
【0173】
印刷層4は、基材層1の表面に設けてもよく、中間層8の表面に設けてもよく、中間層8の裏面に設けてもよい。何れの場合であっても、印刷層4が表示する図柄や文字等の画像は、良好な視認性で視認することができる。なお、印刷層4は、省略してもよい。
【0174】
<5>第5実施形態。
【0175】
<5.1>積層体
図9は、本発明の第5実施形態に係る積層体を概略的に示す断面図である。
【0176】
図9に示す積層体10E1は、中間層8の探針降下温度が180℃以下であること以外は、積層体10C1と同様である。中間層8の探針降下温度は180℃未満であることが好ましい。また、中間層8の探針降下温度は140℃以上であることが好ましい。積層体10E1では、中間層8は無延伸フィルムであることが好ましい。このような中間層8は、積層体10E1の強度、特には落下強度を高める。
【0177】
なお、この実施形態において、探針降下温度が180℃以上の中間層を用いても良い。探針降下温度が上記範囲の中間層を用いた場合、積層体の強度、特には突き刺し強度を向上させることができる。探針降下温度が180℃以上の中間層としては延伸フィルムであることが好ましい。
【0178】
<5.2>効果
上述した積層体10E1は、基材層1の探針降下温度が上記範囲内にある。それ故、積層体10E1は、積層体10A1と同様に、耐熱性に優れている。
【0179】
また、積層体10E1は、探針降下温度が上記範囲内にある中間層8を含んでいる。この中間層8は、積層体10E1の強度、特には落下強度を高める。即ち、積層体10E1では、包装体において使用した場合に、基材層1の内側に位置する中間層8は、基材層1と比較して軟らかい。この構造は、積層体10E1を包装材料として使用した包装物品を落下させた場合に生じる衝撃を吸収するのに適している。それ故、積層体10E1を包装材料として使用した包装物品は、落下による破損(破袋)を生じ難い。従って、積層体10E1は、強度、特には落下強度に優れている。
【0180】
そして、積層体10E1は、ポリエチレンの割合が90質量%以上である。それ故,積層体10E1は、リサイクル性にも優れている。
【0181】
<5.3>変形例
積層体10E1には、様々な変形が可能である。
図10は、図9に示す積層体の第1変形例を概略的に示す断面図である。図11は、図9に示す積層体の第2変形例を概略的に示す断面図である。
【0182】
図10に示す積層体10E2及び図11に示す積層体10E3は、第3実施形態において説明した無機化合物層5を更に含んでいること以外は、積層体10E1と同様である。積層体10E2では、無機化合物層5は、第1接着剤層3Aと中間層8との間に介在している。積層体10E3では、無機化合物層5は、第2接着剤層3Bと中間層8との間に介在している。即ち、積層体10E2では、無機化合物層5は中間層8の一方の面に設けられ、積層体10E3では、無機化合物層5は中間層8の他方の面に設けられている。無機化合物層5は、中間層8の両面に設けられていてもよい。無機化合物層5は、基材層1と第1接着剤層3Aとの間に介在していてもよい。
【0183】
積層体10E2及び10E3は、無機化合物層5の代わりに、第2実施形態において説明した被覆層を含んでいてもよい。積層体10E2は、無機化合物層5と第1接着剤層3Aとの間に、上記被覆層を更に含んでいてもよい。積層体10E3は、無機化合物層5と第2接着剤層3Bとの間に、上記被覆層を更に含んでいてもよい。被覆層、又は、被覆層と無機化合物層5との組み合わせも、ガスバリア層として機能し得る。
【0184】
積層体10E1、10E2及び10E3は、必要に応じて、印刷層、保護層、遮光層、及びその他の機能層の1以上を更に含んでいてもよい。印刷層は、例えば、第3実施形態において説明したものである。
【0185】
<6>第6実施形態
<6.1>積層体
図12は、本発明の第6実施形態に係る積層体を概略的に示す断面図である。
【0186】
図12に示す積層体10F1は、基材層1と第1接着剤層3Aとの間に介在した印刷層4、基材層1の表面に設けられた保護層6、及び、無機化合物層5と第2接着剤層3Bとの間に介在した被覆層7を更に含んでいること以外は、積層体10E3と同様である。印刷層4としては、第1及び第3実施形態において説明したものを使用することができる。保護層6及び被覆層7としては、第2実施形態において説明したものを使用することができる。
【0187】
<6.2>効果
上述した積層体10F1は、基材層1の探針降下温度が上記範囲内にある。そして、積層体10F1は、保護層6を含んでいる。それ故、積層体10F1は、更に優れた耐熱性、特には、より良好なヒートシール適性を達成し得る。従って、積層体10F1について上述した構成を採用すると、製袋のために行うヒートシールの温度範囲が拡がり、生産性の低下を更に生じ難くなる。
【0188】
また、積層体10F1は、探針降下温度が上記範囲内にある中間層8を含んでいる。この中間層8は、積層体10F1の強度、特には落下強度を高める。それ故、積層体10F1は、強度、特には落下強度に優れている。
【0189】
更に、基材層1は、ヘイズが小さい場合、透明性に優れている。それ故、この場合、印刷層4が表示する図柄や文字等の画像は、良好な視認性で視認することができる。
【0190】
そして、積層体10F1は、ポリエチレンの割合が90質量%以上である。それ故,積層体10F1は、リサイクル性にも優れている。
【0191】
<6.3>変形例
積層体10F1には、様々な変形が可能である。
例えば、無機化合物層5は、中間層8の裏面に設ける代わりに、中間層8の表面に設けてもよい。この場合、被覆層7は、無機化合物層5を被覆するように設ける。
【0192】
無機化合物層5及び被覆層7の一方は省略してもよい。高いバリア性が要求されない場合、無機化合物層5及び被覆層7の双方を省略してもよい。
【0193】
印刷層4は、基材層1の表面に設けてもよく、中間層8の表面に設けてもよく、中間層8の裏面に設けてもよい。何れの場合であっても、印刷層4が表示する図柄や文字等の画像は、良好な視認性で視認することができる。なお、印刷層4は、省略してもよい。
【0194】
<7>第7実施形態
図13は、本発明の第7実施形態に係る包装物品を概略的に示す図である。
【0195】
図13に示す包装物品100Aは、包装体110Aと、これに収容された内容物とを含んでいる。
【0196】
包装体110Aは、平パウチである。包装体110Aは、一対の本体フィルムを含んでいる。本体フィルムの各々は、第1乃至第6実施形態において説明した積層体の何れかであるか、又は、これから切り出したものである。本体フィルムは、それらのシーラント層が向き合うように重ね合わされており、周縁部が互いにヒートシールされている。包装体110Aには、そのヒートシール部に、易開封構造としてノッチが設けられている。
【0197】
内容物は、液体、固体及びそれらの混合物の何れであってもよい。内容物は、例えば、食品又は薬剤である。
【0198】
<8>第8実施形態
図14は、本発明の第8実施形態に係る包装物品を概略的に示す図である。
【0199】
図14に示す包装物品100Bは、包装体110Bと、これに収容された内容物とを含んでいる。内容物は、例えば、包装物品100Aについて説明したものと同様である。
【0200】
包装体110Bは、スタンディングパウチである。包装体110Bは、一対の本体フィルムと底フィルムとを含んでいる。これらフィルムの各々は、第1乃至第6実施形態において説明した積層体の何れかであるか、又は、これから切り出したものである。
【0201】
一対の本体フィルムは、それらのシーラント層が向き合うように重ね合わされており、一端及びその近傍の領域を除いて、周縁部が互いにヒートシールされている。底フィルムは、シーラント層側から見て山折りになるように二つ折りされており、上記一端の位置で、山折り部が本体フィルムの他端を向くように一対の本体フィルムによって挟まれている。底フィルムは、その中央部を除いた部分が、一対の本体フィルムにヒートシールされている。また、底フィルムは、包装体110Bの底部両脇の位置で外面同士が接着されている。
【0202】
包装体110Bには、本体フィルム同士がヒートシールされた部分に、易開封構造としてノッチが設けられている。易開封構造は、包装物品100Bを開封した場合に、その上方の角部を口部として利用できるように設けられていてもよい。或いは、包装物品100Bは、第9実施形態において説明する口部材及び蓋体を更に含んでいてもよい。
【0203】
<9>第9実施形態
図15は、本発明の第9実施形態に係る包装物品を概略的に示す図である。
【0204】
図15に示す包装物品100Cは、包装体110Cと、これに収容された内容物とを含んでいる。内容物は、例えば、包装物品100Aについて説明したものと同様である。
【0205】
包装体110Cは、ガゼット型パウチである。包装体110Cは、容器本体110C1と、口部材110C2と、蓋体110C3とを含んでいる。
【0206】
容器本体110C1は、一対の本体フィルムと、一対の側フィルムとを含んでいる。
【0207】
一対の本体フィルムは、それらのシーラント層が向き合い、一端で口部材110C2の一部を挟むように重ね合わされている。これら本体フィルムの周縁部は、上記の一端で、口部材110C2へヒートシールされるとともに、その近傍で互いにヒートシールされている。また、これら本体フィルムの周縁部は、反対側の端で、両脇の領域を除いて互いにヒートシールされている。
【0208】
側フィルムの各々は、シーラント層側から見て山折りになるように二つ折りされている。これら側フィルムは、一対の本体フィルムの両脇で、山折り部が互いに向き合うようにこれら本体フィルムによって挟まれている。側フィルムの各々は、その周縁部の一部が本体フィルムの一方へヒートシールされ、周縁部の残りの部分が本体フィルムの他方へヒートシールされている。また、側フィルムの各々は、包装体110Cの上部及び下部の各々の位置で外面同士が接着されている。
なお、容器本体110C1は、底フィルムを更に含んでいてもよい。
【0209】
口部材110C2は、上記の通り、本体フィルムに挟まれるとともに、それらがヒートシールされた部分を含んでいる。口部材110C2は、容器本体110C1から外側へ突き出た口部を更に含んでいる。口部は、略円筒形状を有しており、側壁外面に雄ねじが設けられている。蓋体110C3は、有底円筒形状を有している。蓋体110C3は、側壁内面に雌ねじが設けられており、口部材110C2の口部と螺合している。
【実施例0210】
以下に、本発明に関連して行った試験の結果を記載する。
【0211】
(1)試験A
(1.1)積層体の製造
(1.1.1)例1A
図2に示す積層体10A2を、以下の方法により製造した。
先ず、基材層として、厚さが25μmであり、探針降下温度が211℃であるポリエチレンフィルムを準備した。なお、本例並びに以下に記載する例及び比較例において利用した探針降下温度の測定方法については、後で説明する。
【0212】
次に、基材層の一方の面に、コロナ処理を施した。続いて、基材層のコロナ処理を施した面に、電子ビーム加熱方式の真空蒸着装置を用いて、無機化合物層として、酸化珪素(SiO)蒸着膜を厚さが40nmとなるように形成した。その後、グラビアインキを用いて無機化合物層上に絵柄を印刷して、印刷層を形成した。
【0213】
次に、基材層の印刷層を形成した面に、ドライラミネート用接着剤(ウレタン系接着剤)を塗布した。そして、この接着剤層を介して、シーラント層である直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)フィルム(厚さ60μm)を基材層へ貼り合せた。
以上のようにして、積層体を作成した。
【0214】
(1.1.2)例2A
図1に示す積層体10A1を、無機化合物層を設けなかったこと以外は、例1Aと同様の方法により製造した。
【0215】
(1.1.3)例3A
図2に示す積層体10A2を、接着剤としてドライラミネート用接着剤(ウレタン系接着剤)を使用する代わりに、ポリアミン系ガスバリア接着剤を用いたこと以外は、例1Aと同様の方法により製造した。
【0216】
(1.1.4)例4A
図2に示す積層体10A2を、基材層として、厚さが25μmであり、探針降下温度が211℃であるポリエチレンフィルムを使用する代わりに、厚さが25μmであり、探針降下温度が205℃であるポリエチレンフィルムを使用したこと以外は、例1Aと同様の方法により製造した。
【0217】
(1.1.5)例5A
図2に示す積層体10A2を、基材層として、厚さが25μmであり、探針降下温度が211℃であるポリエチレンフィルムを使用する代わりに、厚さが25μmであり、探針降下温度が203℃であるポリエチレンフィルムを使用したこと以外は、例1Aと同様の方法により製造した。
【0218】
(1.1.6)例6A
図2に示す積層体10A2を、基材層として、厚さが25μmであり、探針降下温度が211℃であるポリエチレンフィルムを使用する代わりに、厚さが20μmであり、探針降下温度が211℃であるポリエチレンフィルムを使用したこと以外は、例1Aと同様の方法により製造した。
【0219】
(1.1.7)例7A
図2に示す積層体10A2を、基材層として、厚さが25μmであり、探針降下温度が211℃であるポリエチレンフィルムを使用する代わりに、厚さが30μmであり、探針降下温度が211℃であるポリエチレンフィルムを使用したこと以外は、例1Aと同様の方法により製造した。
【0220】
(1.1.8)例8A
図2に示す積層体10A2を、シーラント層として、厚さが60μmの直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)フィルムを使用する代わりに、厚さが40μmの直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)フィルムを使用したこと以外は、例1Aと同様の方法により製造した。
【0221】
(1.1.9)例9A
図2に示す積層体10A2を、シーラント層として、厚さが60μmの直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)フィルムを使用する代わりに、厚さが120μmの直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)フィルムを使用したこと以外は、例1Aと同様の方法により製造した。
【0222】
(1.1.10)例10A
図1に示す積層体10A1を、接着剤としてドライラミネート用接着剤(ウレタン系接着剤)を使用する代わりに、ポリアミン系ガスバリア接着剤を用いたこと以外は、例2Aと同様の方法により製造した。
【0223】
(1.1.11)例11A
図1に示す積層体10A1を、接着剤としてドライラミネート用接着剤(ウレタン系接着剤)を使用する代わりに、ウレタン系ガスバリア接着剤を用いたこと以外は、例2Aと同様の方法により製造した。
【0224】
(1.1.12)比較例1A
基材層として、厚さが25μmであり、探針降下温度が211℃であるポリエチレンフィルムを使用する代わりに、厚さが40μmであり、探針降下温度が156℃であるポリエチレンフィルムを使用したこと以外は、例1Aと同様の方法により積層体を製造した。
(1.1.13)比較例2A
基材層として、厚さが25μmであり、探針降下温度が211℃であるポリエチレンフィルムを使用する代わりに、厚さが25μmであり、探針降下温度が160℃であるポリエチレンフィルムを使用したこと以外は、例1Aと同様の方法により積層体を製造した。
【0225】
(1.1.14)比較例3A
基材層として、厚さが25μmであり、探針降下温度が211℃であるポリエチレンフィルムを使用する代わりに、厚さが25μmであり、探針降下温度が164℃であるポリエチレンフィルムを使用したこと以外は、例1Aと同様の方法により積層体を製造した。
【0226】
(1.2)測定及び評価方法
上記の積層体の製造に使用した基材層について、上述した広角X線回折法によるin-plane測定を行った。そして、この測定によって取得した回折パターンが(110)面に対応したシャープな回折ピークを有しているかを調べた。
【0227】
また、上記の積層体について、シール性、耐熱性、印刷視認性及びガスバリア性を評価した。探針降下温度の測定方法と、シール性、耐熱性、印刷視認性及びガスバリア性の評価方法とを以下に記載する。
【0228】
(1.2.1)探針降下温度の測定方法
探針降下温度は、以下の方法により測定した。
原子間力顕微鏡として、オックスフォード・インストゥルメンツ株式会社製のMPF-3D-SA(商品名)を用いた。これに装備させたナノサーマル顕微鏡として、オックスフォード・インストゥルメンツ株式会社製のZtherm(商品名)を用いた。カンチレバー(探針)としては、アナシス・インスツルメンツ社製のAN2-200(商品名)を用いた。
【0229】
測定に当たっては、先ず、ACモードにて、試料の形状測定を10μm角の視野について行った。次に、カンチレバー(探針)を試料からZ方向へ5乃至10μm離した。この状態で、コンタクトモードにて、最大印加電圧6V及び加熱速度0.5V/sの条件で装置のDetrend補正機能を発動させて、電圧印加によるカンチレバー(探針)のたわみ量(Deflection)の変化を補正した。その後、コンタクトモードにてカンチレバーと試料との接触前後でのDeflectionの変化が0.2Vとなるようにカンチレバーを試料に接触させ、Deflectionを一定の値に保ったまま、最大印加電圧6V及び加熱速度0.5V/sの条件でカンチレバーに電圧を印加して試料を加熱した。この際のZ変位を記録し、Z変位が上昇から下降に転じ、変化点から50nm下降した時点で測定を停止した。Z変位が変化点から50nm下降せずに最大印加電圧に達した場合は、Detrend補正時及び測定時の最大印加電圧を0.5V大きくして、上記と同様の操作を再度実施した。記録したZ変位が最大となる印加電圧を、後述する検量線に参照して温度へ変換した。この測定を10μm角の視野内で10点行い、得られた温度の平均値を探針降下温度とした。
【0230】
印加電圧を温度に変換する検量線を得るべく、構成用サンプルとして、ポリカプロラクトン(融点60℃)、低密度ポリエチレン(融点112℃)、ポリプロピレン(融点166℃)、及びポリエチレンテレフタレート(融点255℃)を準備した。ここで、校正用サンプルの融点は、昇温速度5℃/分の条件で示差走査熱量計(DSC)により測定した融解ピーク温度である。
【0231】
これら校正用サンプルの各々について、上記と同様の測定を行った。なお、Detrend補正時及び測定時の最大印加電圧は、ポリカプロラクトンについては3.5Vとし、低密度ポリエチレンについては5.5Vとし、ポリプロピレンについては6.5Vとし、ポリエチレンテレフタレートについては7.8Vとした。
【0232】
そして、校正用サンプルに対する測定においてZ変位が最大となった印加電圧とその構成用サンプルの融点との関係を、最小二乗法により3次関数で近似して、検量線を作成した。
【0233】
(1.2.2)シール性の評価方法
積層体を10cm角に切り出してなる試料を、シーラント層が内側になるように二つ折りし、ヒートシールテスターを用いてヒートシールした。具体的には、先ず、下面シール温度を100℃に設定するとともに、上面シール温度を120℃に設定して、0.1MPaの圧力を1秒間加えた。そして、シール面の溶融の有無を確認するとともに、二つ折りした試料の上面のうちヒートシールバーを当てた領域を観察した。シール面が溶融しておらず且つ試料上面も溶融していなかった場合には、シール面及び試料上面の少なくとも一方が溶融するまで、下面シール温度を100℃に固定したまま、上面シール温度を10℃ずつ高めて、上記と同様の加圧及び観察を行った。そして、下記基準により、シール性を評価した。
A:試料上面に溶融がなく、外観上問題がなかった。
B:試料上面が溶融しており、外観上問題があった。
【0234】
(1.2.3)印刷視認性の評価方法
印刷層が表示するパターンを基材層側から目視により観察し、下記基準により視認性を評価した。
A:印刷層が表示するパターンを鮮明に確認できた。
B:印刷層が表示するパターンがぼやけて不鮮明であった。
【0235】
(1.2.4)ガスバリア性の評価方法
積層体をボイル処理し、その後、30℃、相対湿度70%における酸素透過速度(Oxygen Transmission Rate、OTR)を測定した。この測定には、酸素透過度測定装置(MOCON社製 OXTRANー2/20)を用いた。そして、酸素透過速度を下記基準へ参照して、ガスバリア性を評価した。
A:OTRが10cc/m・day・atm未満であった。
B:OTRが10cc/m・day・atm以上であった。
【0236】
(1.2.5)耐熱性の評価方法
積層体を10cm角に切り出してなる試料を、シーラント層が内側になるように二つ折りした。次に、ヒートシールテスターの下面シール温度を30℃に設定するとともに、上面シール温度を170℃に設定して、二つ折りした試料へ0.2MPaの圧力を1秒間加えた。そして、シール面の溶融の有無を確認するとともに、二つ折りした試料の上面のうちヒートシールバーを当てた領域がヒートシールバーに付着しているか観察し、下記基準により耐熱性を評価した。
A:試料上面がヒートシールバーへ付着しなかった。
B:試料上面がヒートシールバーへ付着した。
【0237】
(1.3)結果
上記測定及び評価の結果を、以下の表1A及び表1Bに纏める。
【0238】
【表1A】
【0239】
【表1B】
【0240】
表1A及び表1Bに示すように、基材層の探針降下温度が180℃以上である積層体は、何れもシール性、耐熱性及び印刷視認性が良好であった。これに対して、基材層の探針降下温度が180℃未満である積層体は、何れもシール性、耐熱性及び視認性が不十分であった。
【0241】
(2)試験B
(2.1)積層体の製造
(2.1.1)例1B
図4に示す積層体10B2を、以下の方法により製造した。
先ず、基材層として、厚さが25μmであり、探針降下温度が211℃であるポリエチレンフィルムを準備した。なお、後述するように、本例並びに以下に記載する例及び比較例では、探針降下温度は、(1.2.1)において説明した方法により測定した。
【0242】
次に、基材層の一方の面に、コロナ処理を施した。続いて、基材層のコロナ処理を施した面に、ポリアミドイミド樹脂を塗布して、厚さが0.5μmの保護層を形成した。保護層の形成に使用した塗工液における不揮発分濃度は、5質量%であった。
【0243】
次に、基材層の他方の面に、コロナ処理を施した。次いで、基材層のコロナ処理を施した面に、電子ビーム加熱方式の真空蒸着装置を用いて、無機化合物層として、酸化珪素(SiO)蒸着膜を厚さが40nmとなるように形成した。続いて、無機化合物層へ被覆層形成用の塗工液を塗布して、有機無機混合物からなり、厚さが0.3μmの被覆層を形成した。その後、グラビアインキを用いて無機化合物層上に絵柄を印刷して、印刷層を形成した。
【0244】
次に、基材層の印刷層を形成した面に、ドライラミネート用接着剤(ウレタン系接着剤)を塗布した。そして、この接着剤層を介して、シーラント層である直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)フィルム(厚さ60μm)を基材層へ貼り合せた。
以上のようにして、積層体を作成した。
【0245】
(2.1.2)例2B
図4に示す積層体10B2を、保護層の厚さを1μmとしたこと以外は、例1Bと同様の方法により製造した。
【0246】
(2.1.3)例3B
保護層を設けなかったこと以外は、例1Bと同様の方法により積層体を製造した。
【0247】
(2.1.4)例4B
図4に示す積層体10B2を、ポリアミドイミド樹脂を塗布して厚さが0.5μmの保護層を形成する代わりに、有機無機混合物からなる厚さが0.5μmの保護層を形成したこと以外は、例1Bと同様の方法により製造した。有機無機混合物からなる保護層は、被覆層形成用の上記塗工液を塗布することにより形成した。
【0248】
(2.1.5)例5B
図4に示す積層体10B2を、ポリアミドイミド樹脂を塗布して厚さが0.5μmの保護層を形成する代わりに、ウレタン系樹脂からなる厚さが0.5μmの保護層を形成したこと以外は、例1Bと同様の方法により製造した。
【0249】
(2.1.6)例6B
図4に示す積層体10B2を、ポリアミドイミド樹脂を塗布して厚さが0.5μmの保護層を形成する代わりに、ウレタン系樹脂からなる厚さが1μmの保護層を形成したこと以外は、例1Bと同様の方法により製造した。
【0250】
(2.1.7)例7B
図4に示す積層体10B2を、ポリアミドイミド樹脂を塗布して厚さが0.5μmの保護層を形成する代わりに、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)からなる厚さが1μmの保護層を形成したこと以外は、例1Bと同様の方法により製造した。
【0251】
(2.1.8)例8B
図4に示す積層体10B2を、ポリアミドイミド樹脂を塗布して厚さが0.5μmの保護層を形成する代わりに、アクリル樹脂からなる厚さが1μmの保護層を形成したこと以外は、例1Bと同様の方法により製造した。
【0252】
(2.1.9)比較例1B
保護層を設けず、基材層として、厚さが25μmであり、探針降下温度が211℃であるポリエチレンフィルムを使用する代わりに、厚さが25μmであり、探針降下温度が152℃であるポリエチレンフィルムを使用したこと以外は、例1Bと同様の方法により積層体を製造した。
【0253】
(2.2)測定及び評価方法
上記の積層体の製造に使用した基材層について、上述した広角X線回折法によるin-plane測定を行った。そして、この測定によって取得した回折パターンが(110)面に対応したシャープな回折ピークを有しているかを調べた。
【0254】
また、上記の積層体について、シール性、耐熱性及び印刷視認性を評価した。探針降下温度の測定方法と、シール性、耐熱性及び印刷視認性の評価方法とを以下に記載する。
【0255】
(2.2.1)探針降下温度の測定方法
探針降下温度は、(1.2.1)において説明した方法により測定した。
【0256】
(2.2.2)シール性の評価方法
積層体を10cm角に切り出してなる試料を、シーラント層が内側になるように二つ折りし、ヒートシールテスターを用いてヒートシールした。具体的には、先ず、下面シール温度を100℃に設定するとともに、上面シール温度を120℃に設定して、0.1MPaの圧力を1秒間加えた。そして、シール面の溶融の有無を確認するとともに、二つ折りした試料の上面のうちヒートシールバーを当てた領域を観察した。試料上面に溶融又は外観不良を生じていなかった場合には、試料上面に溶融又は外観不良を生じるまで、下面シール温度を100℃に固定したまま、上面シール温度を10℃ずつ高めて、上記と同様の加圧及び観察を行った。そして、下記基準により、シール性を評価した。
【0257】
A:シール面の溶融時に、試料上面に溶融又は外観不良を生じなかった。
B:シール面の溶融時又はその前に、試料上面に溶融又は外観不良を生じた。
【0258】
(2.2.3)印刷視認性の評価方法
印刷視認性は、(1.2.3)において説明した方法により評価した。
【0259】
(2.2.4)耐熱性の評価方法
積層体を10cm角に切り出してなる試料を、シーラント層が内側になるように二つ折りした。次に、ヒートシールテスターの下面シール温度を30℃に設定するとともに、上面シール温度を170℃に設定して、二つ折りした試料へ0.2MPaの圧力を1秒間加えた。そして、シール面の溶融の有無を確認するとともに、二つ折りした試料の上面のうちヒートシールバーを当てた領域がヒートシールバーに付着しているか観察し、下記基準により耐熱性を評価した。
A:試料上面がヒートシールバーへ付着しなかった。
B:試料上面がヒートシールバーへ付着した。
また、保護層を有している積層体については、上面シール温度を190℃に設定したこと以外は、上記と同様の方法で耐熱性を更に評価した。
【0260】
(2.3)結果
上記測定及び評価の結果を、以下の表2に纏める。
【0261】
【表2】
【0262】
表2に示すように、基材層の探針降下温度が180℃以上である積層体は、何れも耐熱性及び印刷視認性が良好であった。そして、基材層の探針降下温度が180℃以上であり且つ保護層を有している積層体は、シール性にも優れていた。これに対して、基材層の探針降下温度が180℃未満であり、保護層を有していない積層体は、シール性、耐熱性及び視認性が不十分であった。
【0263】
(3)試験C
(3.1)積層体の製造
(3.1.1)例1C
図6に示す積層体10C2を、以下の方法により製造した。なお、本例では、基材層1と第1接着剤層3Aとの間に印刷層を設けた。
【0264】
先ず、基材層として、厚さが25μmであり、一方の面にコロナ処理を施したポリエチレンフィルムを準備した。このポリエチレンフィルムは、密度が0.950g/cmであり、探針降下温度が211℃であった。なお、後述するように、本例並びに以下に記載する例及び比較例では、探針降下温度は、(1.2.1)において説明した方法により測定した。この基材層のコロナ処理が施された面に、グラビアインキを用いて絵柄を印刷して、印刷層を形成した。
【0265】
また、中間層として、厚さが25μmであり、一方の面にコロナ処理を施したポリエチレンフィルムを準備した。このポリエチレンフィルムは、密度が0.950g/cmであり、探針降下温度が211℃であった。この中間層のコロナ処理が施された面に、電子ビーム加熱方式の真空蒸着装置を用いて、無機化合物層として、酸化珪素(SiO)蒸着膜を厚さが10nmとなるように形成した。
【0266】
次に、基材層の印刷層を形成した面と、中間層の無機化合物層を形成した面の裏面とに、ドライラミネート用接着剤(ウレタン系接着剤)を塗布し、塗膜を乾燥させて、各々の厚さが3μmの第1及び第2接着剤層を形成した。そして、第1接着剤層を間に挟んで印刷層と無機化合物層とが向き合うように基材層と中間層とを貼り合わせるとともに、第2接着剤層を介して中間層とシーラント層である直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)フィルム(厚さ60μm)とを貼り合せた。
以上のようにして、積層体を作成した。
【0267】
(3.1.2)例2C
図5に示す積層体10C1を、無機化合物層を設けなかったこと以外は、例1Cと同様の方法により製造した。なお、本例でも、例1Cと同様に、基材層1と第1接着剤層3Aとの間に印刷層を設けた。
【0268】
(3.1.3)例3C
図6に示す積層体10C2を、接着剤としてドライラミネート用接着剤(ウレタン系接着剤)を使用する代わりに、ポリアミン系ガスバリア接着剤を用いたこと以外は、例1Cと同様の方法により製造した。なお、本例でも、例1Cと同様に、基材層1と第1接着剤層3Aとの間に印刷層を設けた。
【0269】
(3.1.4)例4C
図6に示す積層体10C2を、基材層として、探針降下温度が211℃である上記のポリエチレンフィルムを使用する代わりに、以下のポリエチレンフィルムを使用したこと以外は、例1Cと同様の方法により製造した。即ち、本例では、基材層として、厚さが25μmであり、密度が0.950g/cmであり、探針降下温度が205℃であり、一方の面にコロナ処理を施したポリエチレンフィルムを使用した。なお、本例でも、例1Cと同様に、基材層1と第1接着剤層3Aとの間に印刷層を設けた。
【0270】
(3.1.5)例5C
図6に示す積層体10C2を、以下の事項を除き、例1Cと同様の方法により製造した。即ち、本例では、基材層として、探針降下温度が211℃である上記のポリエチレンフィルムを使用する代わりに、厚さが25μmであり、密度が0.950g/cmであり、探針降下温度が203℃であり、一方の面にコロナ処理を施したポリエチレンフィルムを使用した。また、本例では、中間層として、探針降下温度が211℃である上記のポリエチレンフィルムを使用する代わりに、厚さが25μmであり、密度が0.950g/cmであり、探針降下温度が205℃であり、一方の面にコロナ処理を施したポリエチレンフィルムを使用した。なお、本例でも、例1Cと同様に、基材層1と第1接着剤層3Aとの間に印刷層を設けた。
【0271】
(3.1.6)例6C
図10に示す積層体10E2を、以下の事項を除き、例1Cと同様の方法により製造した。即ち、本例では、中間層として、探針降下温度が211℃である上記のポリエチレンフィルムを使用する代わりに、厚さが40μmであり、密度が0.949g/cmであり、探針降下温度が156℃であり、一方の面にコロナ処理を施したポリエチレンフィルムを使用した。なお、本例でも、例1Cと同様に、基材層1と第1接着剤層3Aとの間に印刷層を設けた。
【0272】
(3.1.7)比較例1C
基材層として、探針降下温度が211℃である上記のポリエチレンフィルムを使用する代わりに、厚さが40μmであり、密度が0.949g/cmであり、探針降下温度が156℃であり、一方の面にコロナ処理を施したポリエチレンフィルムを使用したこと以外は、例1Cと同様の方法により積層体を製造した。
【0273】
(3.1.8)比較例2C
以下の事項を除き、例1Cと同様の方法により積層体を製造した。即ち、本例では、基材層として、探針降下温度が211℃である上記のポリエチレンフィルムを使用する代わりに、厚さが40μmであり、密度が0.949g/cmであり、探針降下温度が156℃であり、一方の面にコロナ処理を施したポリエチレンフィルムを使用した。また、本例では、中間層として、探針降下温度が211℃である上記のポリエチレンフィルムを使用する代わりに、厚さが40μmであり、密度が0.949g/cmであり、探針降下温度が156℃であり、一方の面にコロナ処理を施したポリエチレンフィルムを使用した。
【0274】
(3.2)測定及び評価方法
上記の積層体の製造に使用した基材層及び中間層について、上述した広角X線回折法によるin-plane測定を行った。そして、この測定によって取得した回折パターンが(110)面に対応したシャープな回折ピークを有しているかを調べた。
【0275】
また、上記の積層体について、シール性、耐熱性、印刷視認性及びガスバリア性を評価した。また、上記の積層体について、突き刺し強度の測定を行った。探針降下温度及び突き刺し強度の測定方法と、シール性、耐熱性、印刷視認性及びガスバリア性の評価方法とを以下に記載する。
【0276】
(3.2.1)探針降下温度の測定方法
探針降下温度は、(1.2.1)において説明した方法により測定した。
【0277】
(3.2.2)シール性の評価方法
積層体を10cm角に切り出してなる試料を、シーラント層が内側になるように二つ折りし、ヒートシールテスターを用いてヒートシールした。具体的には、二つ折りした試料へ、140℃の温度及び0.1MPaの圧力を1秒間加えた。そして、試料の表面のうちヒートシールバーを当てた領域を観察して、下記基準により、シール性を評価した。
A:試料表面に溶融がなく、外観上問題がなかった。
B:試料表面が溶融しており、外観上問題があった。
【0278】
(3.2.3)印刷視認性の評価方法
印刷視認性は、(1.2.3)において説明した方法により評価した。
【0279】
(3.2.4)ガスバリア性の評価方法
ガスバリア性は、(1.2.4)において説明した方法により評価した。
【0280】
(3.2.5)突き刺し強度の測定方法
半径が0.5mmであり、先端部が半球形の針を、積層体に対して基材層側から50mm/分の速度で押し当て、針が貫通するまでの最大力を測定する。この測定を複数回行い、最大力の算術平均を突き刺し強度として得た。
【0281】
(3.2.6)耐熱性の評価方法
耐熱性は、(1.2.5)において説明した方法により評価した。
【0282】
(3.3)結果
上記測定及び評価の結果を、以下の表3に纏める。
【0283】
【表3】
【0284】
表3に示すように、基材層の探針降下温度が180℃以上である積層体は、何れもシール性、耐熱性及び印刷視認性が良好であった。また、基材層及び中間層の双方の探針降下温度が180℃以上である積層体は、何れも高い突き刺し強度を示した。これに対して、基材層の探針降下温度が180℃未満である積層体は、何れもシール性、耐熱性及び視認性が不十分であった。また、基材層及び中間層の双方の探針降下温度が180℃未満である積層体は、低い突き刺し強度を示した。
【0285】
(4)試験D
(4.1)積層体の製造
(4.1.1)例1D
図8に示す積層体10D1を、以下の方法により製造した。
先ず、基材層として、厚さが25μmであり、探針降下温度が211℃であるポリエチレンフィルムを準備した。なお、後述するように、本例並びに以下に記載する例及び比較例では、探針降下温度は、(1.2.1)において説明した方法により測定した。
【0286】
次に、基材層の一方の面に、コロナ処理を施した。続いて、基材層のコロナ処理を施した面に、ポリアミドイミド樹脂を塗布して、厚さが0.5μmの保護層を形成した。保護層の形成に使用した塗工液における不揮発分濃度は、5質量%であった。
【0287】
次に、基材層の他方の面に、コロナ処理を施した。次いで、基材層のコロナ処理を施した面に、グラビアインキを用いて無機化合物層上に絵柄を印刷して、印刷層を形成した。
【0288】
また、中間層として、厚さが25μmであり、探針降下温度が211℃であるポリエチレンフィルムを準備した。次に、中間層の一方の面に、コロナ処理を施した。この中間層のコロナ処理を施した面に、電子ビーム加熱方式の真空蒸着装置を用いて、無機化合物層として、酸化珪素(SiO)蒸着膜を厚さが40nmとなるように形成した。続いて、無機化合物層へ被覆層形成用の塗工液を塗布して、有機無機混合物からなり、厚さが0.3μmの被覆層を形成した。
【0289】
次に、基材層の印刷層を形成した面と、被覆層の表面とに、ドライラミネート用接着剤(ウレタン系接着剤)を塗布し、塗膜を乾燥させて、第1及び第2接着剤層を形成した。そして、第1接着剤層を間に挟んで印刷層と中間層とが向き合うように基材層と中間層とを貼り合わせるとともに、第2接着剤層を介して被覆層とシーラント層である直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)フィルム(厚さ60μm)とが向き合うように中間層とシーラント層とを貼り合せた。
以上のようにして、積層体を作成した。
【0290】
(4.1.2)例2D
図8に示す積層体10D1を、保護層の厚さを1μmとしたこと以外は、例1Dと同様の方法により製造した。
【0291】
(4.1.3)例3D
図8に示す積層体10D1を、保護層の厚さを3μmとしたこと以外は、例1Dと同様の方法により製造した。
【0292】
(4.1.4)例4D
保護層を設けず、中間層として、厚さが25μmであり、探針降下温度が211℃であるポリエチレンフィルムを使用する代わりに、厚さが25μmであり、探針降下温度が160℃であるポリエチレンフィルムを使用したこと以外は、例1Dと同様の方法により積層体を製造した。
【0293】
(4.1.5)比較例1D
以下の事項を除いて、例1Dと同様の方法により積層体を製造した。即ち、本例では、保護層は設けなかった。また、本例では、基材層として、厚さが25μmであり、探針降下温度が211℃であるポリエチレンフィルムを使用する代わりに、厚さが25μmであり、探針降下温度が160℃であるポリエチレンフィルムを使用した。更に、本例では、中間層として、厚さが25μmであり、探針降下温度が211℃であるポリエチレンフィルムを使用する代わりに、厚さが25μmであり、探針降下温度が160℃であるポリエチレンフィルムを使用した。
【0294】
(4.2)測定及び評価方法
上記の積層体の製造に使用した基材層及び中間層について、上述した広角X線回折法によるin-plane測定を行った。そして、この測定によって取得した回折パターンが(110)面に対応したシャープな回折ピークを有しているかを調べた。
【0295】
また、上記の積層体について、シール性、耐熱性、印刷視認性及びリサイクル性を評価した。また、上記の積層体について、突き刺し強度の測定を行った。探針降下温度及び突き刺し強度の測定方法と、シール性、耐熱性、印刷視認性及びリサイクル性の評価方法とを以下に記載する。
【0296】
(4.2.1)探針降下温度の測定方法
探針降下温度は、(1.2.1)において説明した方法により測定した。
【0297】
(4.2.2)シール性の評価方法
積層体を10cm角に切り出してなる試料を、シーラント層が内側になるように二つ折りし、ヒートシールテスターを用いてヒートシールした。具体的には、先ず、下面シール温度を100℃に設定するとともに、上面シール温度を120℃に設定して、0.1MPaの圧力を1秒間加えた。そして、シール面の溶融の有無を確認するとともに、二つ折りした試料の上面のうちヒートシールバーを当てた領域を観察した。試料上面に溶融又は外観不良を生じていなかった場合には、試料上面に溶融又は外観不良を生じるまで、下面シール温度を100℃に固定したまま、上面シール温度を10℃ずつ高めて、上記と同様の加圧及び観察を行った。そして、試料上面に溶融又は外観不良を生じた温度を記録した。また、下記基準により、シール性を評価した。
【0298】
A:シール面の溶融時に、試料上面に溶融又は外観不良を生じなかった。
B:シール面の溶融時又はその前に、試料上面に溶融又は外観不良を生じた。
【0299】
(4.2.3)印刷視認性の評価方法
印刷視認性は、(1.2.3)において説明した方法により評価した。
【0300】
(4.2.4)リサイクル性の評価方法
積層体が含む樹脂の合計量に占めるポリエチレンの割合を算出した。この割合を、以下の基準へ参照して、リサイクル性を評価した。
A:ポリエチレンの割合が90質量%以上であった。
B:ポリエチレンの割合が90質量%未満であった。
【0301】
(4.2.5)突き刺し強度の測定方法
突き刺し強度は、(3.2.5)において説明した方法により測定した。
【0302】
(4.2.6)耐熱性の評価方法
耐熱性は、(2.2.4)において説明した方法により評価した。
【0303】
(4.3)結果
上記測定及び評価の結果を、以下の表4に纏める。
【0304】
【表4】
【0305】
表4に示すように、基材層の探針降下温度が180℃以上である積層体は、何れも耐熱性及び印刷視認性が良好であった。そして、基材層の探針降下温度が180℃以上であり且つ保護層を有している積層体は、シール性にも優れていた。また、基材層及び中間層の双方の探針降下温度が180℃以上であり且つ保護層を有している積層体は、何れも高い突き刺し強度を示した。これに対して、基材層の探針降下温度が180℃未満である積層体は、何れも耐熱性及び視認性が不十分であった。また、基材層及び中間層の双方の探針降下温度が180℃未満である積層体は、低い突き刺し強度を示した。
【0306】
(5)試験E
(5.1)積層体の製造
(5.1.1)例1E
図10に示す積層体10E2を、以下の方法により製造した。なお、本例では、基材層1と第1接着剤層3Aとの間に印刷層を設けた。
【0307】
先ず、基材層として、厚さが25μmであり、一方の面にコロナ処理を施したポリエチレンフィルムを準備した。このポリエチレンフィルムは、密度が0.950g/cmであり、探針降下温度が211℃であった。なお、後述するように、本例並びに以下に記載する例及び比較例では、探針降下温度は、(1.2.1)において説明した方法により測定した。この基材層のコロナ処理が施された面に、グラビアインキを用いて絵柄を印刷して、印刷層を形成した。
【0308】
また、中間層として、厚さが40μmであり、一方の面にコロナ処理を施したポリエチレンフィルムを準備した。このポリエチレンフィルムは、密度が0.949g/cmであり、探針降下温度が156℃であった。この中間層のコロナ処理が施された面に、電子ビーム加熱方式の真空蒸着装置を用いて、無機化合物層として、酸化珪素(SiO)蒸着膜を厚さが10nmとなるように形成した。
【0309】
次に、基材層の印刷層を形成した面と、中間層の無機化合物層を形成した面の裏面とに、ドライラミネート用接着剤(ウレタン系接着剤)を塗布し、塗膜を乾燥させて、各々の厚さが3μmの第1及び第2接着剤層を形成した。そして、第1接着剤層を間に挟んで印刷層と無機化合物層とが向き合うように基材層と中間層とを貼り合わせるとともに、第2接着剤層を介して中間層とシーラント層である直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)フィルム(厚さ60μm)とを貼り合せた。
以上のようにして、積層体を作成した。
【0310】
(5.1.2)例2E
図9に示す積層体10E1を、無機化合物層を設けなかったこと以外は、例1ECと同様の方法により製造した。なお、本例でも、例1Eと同様に、基材層1と第1接着剤層3Aとの間に印刷層を設けた。
【0311】
(5.1.3)例3E
図10に示す積層体10E2を、接着剤としてドライラミネート用接着剤(ウレタン系接着剤)を使用する代わりに、ポリアミン系ガスバリア接着剤を用いたこと以外は、例1Eと同様の方法により製造した。なお、本例でも、例1Eと同様に、基材層1と第1接着剤層3Aとの間に印刷層を設けた。
【0312】
(5.1.4)例4E
図10に示す積層体10E2を、以下の事項を除き、例1Eと同様の方法により製造した。即ち、本例では、基材層として、探針降下温度が211℃である上記のポリエチレンフィルムを使用する代わりに、厚さが25μmであり、密度が0.950g/cmであり、探針降下温度が205℃であり、一方の面にコロナ処理を施したポリエチレンフィルムを使用した。また、本例では、中間層として、探針降下温度が156℃である上記のポリエチレンフィルムを使用する代わりに、厚さが25μmであり、密度が0.950g/cmであり、探針降下温度が160℃であり、一方の面にコロナ処理を施したポリエチレンフィルムを使用した。なお、本例でも、例1Eと同様に、基材層1と第1接着剤層3Aとの間に印刷層を設けた。
【0313】
(5.1.5)例5E
図10に示す積層体10E2を、基材層として、探針降下温度が211℃である上記のポリエチレンフィルムを使用する代わりに、以下のポリエチレンフィルムを使用したこと以外は、例1Eと同様の方法により製造した。即ち、本例では、基材層として、厚さが25μmであり、密度が0.950g/cmであり、探針降下温度が203℃であり、一方の面にコロナ処理を施したポリエチレンフィルムを使用した。なお、本例でも、例1Eと同様に、基材層1と第1接着剤層3Aとの間に印刷層を設けた。
【0314】
(5.1.6)例6E
図6に示す積層体10C2を、以下の事項を除き、例1Eと同様の方法により製造した。即ち、本例では、中間層として、探針降下温度が156℃である上記のポリエチレンフィルムを使用する代わりに、厚さが25μmであり、密度が0.950g/cmであり、探針降下温度が211℃であり、一方の面にコロナ処理を施したポリエチレンフィルムを使用した。なお、本例でも、例1Eと同様に、基材層1と第1接着剤層3Aとの間に印刷層を設けた。
【0315】
(5.1.7)比較例1E
基材層として、探針降下温度が211℃である上記のポリエチレンフィルムを使用する代わりに、厚さが40μmであり、密度が0.949g/cmであり、探針降下温度が156℃であり、一方の面にコロナ処理を施したポリエチレンフィルムを使用したこと以外は、例1Eと同様の方法により積層体を製造した。
【0316】
(5.1.8)比較例2E
以下の事項を除き、例1Eと同様の方法により積層体を製造した。即ち、本例では、基材層として、探針降下温度が211℃である上記のポリエチレンフィルムを使用する代わりに、厚さが40μmであり、密度が0.949g/cmであり、探針降下温度が156℃であり、一方の面にコロナ処理を施したポリエチレンフィルムを使用した。また、本例では、中間層として、探針降下温度が156℃である上記のポリエチレンフィルムを使用する代わりに、厚さが25μmであり、密度が0.950g/cmであり、探針降下温度が205℃であり、一方の面にコロナ処理を施したポリエチレンフィルムを使用した。
【0317】
(5.2)測定及び評価方法
上記の積層体の製造に使用した基材層及び中間層について、上述した広角X線回折法によるin-plane測定を行った。そして、この測定によって取得した回折パターンが(110)面に対応したシャープな回折ピークを有しているかを調べた。
【0318】
また、上記の積層体について、シール性、耐熱性、印刷視認性及びガスバリア性を評価した。また、上記の積層体について、落下強度の測定を行った。探針降下温度及び落下強度の測定方法と、シール性、耐熱性、印刷視認性及びガスバリア性の評価方法とを以下に記載する。
【0319】
(5.2.1)探針降下温度の測定方法
探針降下温度は、(1.2.1)において説明した方法により測定した。
【0320】
(5.2.2)シール性の評価方法
シール性は、(3.2.2)において説明した方法により評価した。
【0321】
(5.2.3)印刷視認性の評価方法
印刷視認性は、(1.2.3)において説明した方法により評価した。
【0322】
(5.2.4)ガスバリア性の評価方法
ガスバリア性は、(1.2.4)において説明した方法により評価した。
【0323】
(5.2.5)落下強度の測定方法
積層体を所定の大きさに切り出し、周縁部をヒートシールすることにより、袋を10個作製した。これら袋には、内容物を入れるための開口部を設けた。袋の寸法は100mm×150mmとした。次に、各袋に水道水を200mL充填し、開口部をヒートシールして包装物品を得た。次に、各包装物品を5℃で1日保管し、その後、1.5mの高さから50回落下させた。50回以内に袋が破れた包装物品の数と包装物品の総数(10個)との比を、落下強度として求めた。
【0324】
(5.2.6)耐熱性の評価方法
耐熱性は、(1.2.5)において説明した方法により評価した。
【0325】
(5.3)結果
上記測定及び評価の結果を、以下の表5に纏める。
【0326】
【表5】
【0327】
表5に示すように、基材層の探針降下温度が180℃以上である積層体は、何れもシール性、耐熱性及び印刷視認性が良好であった。そして、基材層の探針降下温度が180℃以上であり且つ中間層の探針降下温度が180℃未満である積層体は、落下強度に優れていた。これに対して、基材層の探針降下温度が180℃未満である積層体は、何れもシール性、耐熱性及び視認性が不十分であった。また、中間層の探針降下温度が180℃以上である積層体は、低い落下強度を示した。
【0328】
(6)試験F
(6.1)積層体の製造
(6.1.1)例1F
図12に示す積層体10F1を、以下の方法により製造した。
先ず、基材層として、厚さが25μmであり、探針降下温度が211℃であるポリエチレンフィルムを準備した。なお、後述するように、本例並びに以下に記載する例及び比較例では、探針降下温度は、(1.2.1)において説明した方法により測定した。
【0329】
次に、基材層の一方の面に、コロナ処理を施した。続いて、基材層のコロナ処理を施した面に、ポリアミドイミド樹脂を塗布して、厚さが0.5μmの保護層を形成した。保護層の形成に使用した塗工液における不揮発分濃度は、5質量%であった。
【0330】
次に、基材層の他方の面に、コロナ処理を施した。次いで、基材層のコロナ処理を施した面に、グラビアインキを用いて無機化合物層上に絵柄を印刷して、印刷層を形成した。
【0331】
また、中間層として、厚さが25μmであり、探針降下温度が160℃であるポリエチレンフィルムを準備した。次に、中間層の一方の面に、コロナ処理を施した。この中間層のコロナ処理を施した面に、電子ビーム加熱方式の真空蒸着装置を用いて、無機化合物層として、酸化珪素(SiO)蒸着膜を厚さが40nmとなるように形成した。続いて、無機化合物層へ被覆層形成用の塗工液を塗布して、有機無機混合物からなり、厚さが0.3μmの被覆層を形成した。
【0332】
次に、基材層の印刷層を形成した面と、被覆層の表面とに、ドライラミネート用接着剤(ウレタン系接着剤)を塗布し、塗膜を乾燥させて、第1及び第2接着剤層を形成した。そして、第1接着剤層を間に挟んで印刷層と中間層とが向き合うように基材層と中間層とを貼り合わせるとともに、第2接着剤層を介して被覆層とシーラント層である直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)フィルム(厚さ60μm)とが向き合うように中間層とシーラント層とを貼り合せた。
以上のようにして、積層体を作成した。
【0333】
(6.1.2)例2F
図12に示す積層体10F1を、保護層の厚さを1μmとしたこと以外は、例1Fと同様の方法により製造した。
【0334】
(6.1.3)例3F
図12に示す積層体10F1を、保護層の厚さを3μmとしたこと以外は、例1Fと同様の方法により製造した。
【0335】
(6.1.4)例4F
保護層を設けず、中間層として、厚さが25μmであり、探針降下温度が160℃であるポリエチレンフィルムを使用する代わりに、厚さが25μmであり、探針降下温度が211℃であるポリエチレンフィルムを使用したこと以外は、例1Fと同様の方法により積層体を製造した。
【0336】
(6.1.5)比較例1F
以下の事項を除いて、例1Fと同様の方法により積層体を製造した。即ち、本例では、保護層は設けなかった。また、本例では、基材層として、厚さが25μmであり、探針降下温度が211℃であるポリエチレンフィルムを使用する代わりに、厚さが25μmであり、探針降下温度が160℃であるポリエチレンフィルムを使用した。更に、本例では、中間層として、厚さが25μmであり、探針降下温度が160℃であるポリエチレンフィルムを使用する代わりに、厚さが25μmであり、探針降下温度が211℃であるポリエチレンフィルムを使用した。
【0337】
(6.2)測定及び評価方法
上記の積層体の製造に使用した基材層及び中間層について、上述した広角X線回折法によるin-plane測定を行った。そして、この測定によって取得した回折パターンが(110)面に対応したシャープな回折ピークを有しているかを調べた。
【0338】
また、上記の積層体について、シール性、耐熱性、印刷視認性及びリサイクル性を評価した。また、上記の積層体について、落下強度の測定を行った。探針降下温度及び落下強度の測定方法と、シール性、耐熱性、印刷視認性及びリサイクル性の評価方法とを以下に記載する。
【0339】
(6.2.1)探針降下温度の測定方法
探針降下温度は、(1.2.1)において説明した方法により測定した。
【0340】
(6.2.2)シール性の評価方法
シール性は、(4.2.2)において説明した方法により評価した。
【0341】
(6.2.3)印刷視認性の評価方法
印刷視認性は、(1.2.3)において説明した方法により評価した。
【0342】
(6.2.4)リサイクル性の評価方法
リサイクル性は、(4.2.4)において説明した方法により評価した。
【0343】
(6.2.5)落下強度の測定方法
落下強度は、(5.2.5)において説明した方法により測定した。
【0344】
(6.2.6)耐熱性の評価方法
耐熱性は、(2.2.4)において説明した方法により評価した。
【0345】
(6.3)結果
上記測定及び評価の結果を、以下の表6に纏める。
【0346】
【表6】
【0347】
表6に示すように、基材層の探針降下温度が180℃以上である積層体は、何れも耐熱性及び印刷視認性が良好であった。そして、基材層の探針降下温度が180℃以上であり且つ保護層を有している積層体は、シール性にも優れていた。また、基材層の探針降下温度が180℃以上であり且つ中間層の探針降下温度が180℃未満である積層体は、落下強度に優れていた。これに対して、基材層の探針降下温度が180℃未満である積層体は、何れもシール性、耐熱性及び視認性が不十分であった。また、中間層の探針降下温度が180℃以上である積層体は、低い落下強度を示した。
【符号の説明】
【0348】
1…基材層、2…シーラント層、3…接着剤層、3A…第1接着剤層、3B…第2接着剤層、4…印刷層、5…無機化合物層、6…保護層、7…被覆層、8…中間層、10A1…積層体、10A2…積層体、10B1…積層体、10B2…積層体、10C1…積層体、10C2…積層体、10C3…積層体、10D1…積層体、10E1…積層体、10E2…積層体、10E3…積層体、10F1…積層体、100A…包装物品、100B…包装物品、100C…包装物品、110A…包装体、110B…包装体、110C…包装体、110C1…容器本体、110C2…口部材、110C3…蓋体。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15