(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111185
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 29/78 20060101AFI20240808BHJP
H01L 29/12 20060101ALI20240808BHJP
H01L 29/872 20060101ALI20240808BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20240808BHJP
H01L 21/329 20060101ALI20240808BHJP
H01L 21/28 20060101ALI20240808BHJP
H01L 29/47 20060101ALI20240808BHJP
H01L 29/739 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
H01L29/78 652M
H01L29/78 652T
H01L29/78 653A
H01L29/78 652J
H01L29/78 657D
H01L29/86 301F
H01L29/86 301D
H01L29/78 652D
H01L29/78 652F
H01L29/78 658A
H01L29/78 658E
H01L29/78 658G
H01L29/78 658F
H01L29/86 301P
H01L21/28 301S
H01L29/48 F
H01L29/48 P
H01L29/78 655A
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024099255
(22)【出願日】2024-06-20
(62)【分割の表示】P 2023033014の分割
【原出願日】2018-09-11
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003889
【氏名又は名称】弁理士法人酒井総合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 勇介
(72)【発明者】
【氏名】武井 学
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 直樹
(57)【要約】
【課題】ソース電極とチャネルp層間のコンタクト抵抗を下げること。
【解決手段】トレンチゲート構造の縦型MOSFETは、半導体基体に設けられた第1導電型ドリフト層2と、第2導電型ベース層16と、基体のおもて面側からベース層16よりも深い位置まで設けられる第1トレンチ31および第2トレンチ32と、第1トレンチ31の内部にゲート絶縁膜19を介して設けられたゲート電極20と、第2トレンチ32の内部に設けられた金属膜35と、基体のおもて面の上方に設けられる上面電極22と、基体に設けられベース層16の上方で第1トレンチ31の側部に接する、ドリフト層2よりも高不純物濃度の第1導電型第1高濃度領域17と、基体に設けられ第2トレンチ32の側部に接する、ベース層16よりも高不純物濃度の第2導電型第2高濃度領域18とを備え、上面電極22は第2トレンチ32の内部に埋め込まれ、少なくとも一部が金属膜35に接している。
【選択図】
図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型のドリフト層と、前記ドリフト層よりも上方に設けられる第2導電型のベース層と、上面視で所定方向に延在し前記所定方向と直交する幅方向において隣り合う第1トレンチおよび第2トレンチと、前記ベース層の上方で前記第1トレンチの側部に接する、前記ドリフト層よりも高不純物濃度の第1導電型の第1高濃度領域と、前記第2トレンチの側部に接する、前記ベース層よりも高不純物濃度の第2導電型の第2高濃度領域と、を備える半導体基体を含んだ半導体装置の製造方法であって、
前記幅方向において前記第1高濃度領域に接する前記第2高濃度領域を前記所定方向に間欠的に形成するイオン注入工程と、
少なくとも前記第2トレンチ内部に金属膜を形成する工程と、
前記第2トレンチ内部の前記金属膜の間の空間および前記半導体基体のおもて面の上方に上面電極を形成する工程と、
を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記半導体基体のおもて面側から第1の深さまで前記第1トレンチを形成し、その後、第2の深さまで前記第2トレンチを形成するトレンチ形成工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記トレンチ形成工程では、前記第1の深さが前記第2の深さよりも浅いことを特徴とする請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
第2導電型の底面領域が前記第2トレンチの底面に接していることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記第1トレンチの底面が、深さ方向において、前記ベース層と前記底面領域との間に位置することを特徴とする請求項4に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
第2導電型の底面領域が前記第1トレンチの底面に接していることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記第2トレンチの底面が、深さ方向において、前記ベース層と前記底面領域との間に位置することを特徴とする請求項6に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
第1導電型のドリフト層と、前記ドリフト層よりも上方に設けられる第2導電型のベース層と、上面視で所定方向に延在し前記所定方向と直交する幅方向において隣り合う第1トレンチおよび第2トレンチと、前記ベース層の上方で前記第1トレンチの側部に接する、前記ドリフト層よりも高不純物濃度の第1導電型の第1高濃度領域と、前記第2トレンチの側部に接する、前記ベース層よりも高不純物濃度の第2導電型の第2高濃度領域と、前記第2トレンチの底面に接する第2導電型の底面領域と、を備える半導体基体を含んだ半導体装置の製造方法であって、
前記幅方向において前記第1高濃度領域に接する前記第2高濃度領域を前記所定方向に間欠的に形成するイオン注入工程と、
前記半導体基体のおもて面側から第1の深さまで前記第1トレンチを形成し、その後、第2の深さまで前記第2トレンチを形成するトレンチ形成工程と、
少なくとも前記第2トレンチ内部に金属膜を形成する工程と、
前記半導体基体のおもて面の上方に上面電極を形成する工程と、
を含み、
前記第1トレンチの底面は、深さ方向において、前記ベース層と前記底面領域との間に位置することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記トレンチ形成工程は、前記イオン注入工程の後の工程であることを特徴とする請求項2または8に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記トレンチ形成工程は、前記イオン注入工程の前の工程であることを特徴とする請求項2または8に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記イオン注入工程は、前記第2トレンチの部分からの斜めイオン注入を含むことを特徴とする請求項10に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記第2高濃度領域の側面が、前記幅方向の断面において、前記ベース層と接することを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記第2高濃度領域の上面が、前記幅方向の断面において、前記第1高濃度領域と接することを特徴とする請求項1から12のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項14】
前記第2高濃度領域が、前記幅方向の断面において、前記半導体基体のおもて面に位置することを特徴とする請求項1から12のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項15】
前記第2高濃度領域が、前記幅方向の断面において、少なくとも前記第1高濃度領域よりも深い位置に形成されることを特徴とする請求項1から12のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項16】
第1導電型のドリフト層と、前記ドリフト層よりも上方に設けられる第2導電型のベース層と、上面視で所定方向に延在し前記所定方向と直交する幅方向において隣り合う第1トレンチおよび第2トレンチと、前記ベース層の上方で前記第1トレンチの側部に接する、前記ドリフト層よりも高不純物濃度の第1導電型の第1高濃度領域と、前記第2トレンチの側部に接する、前記ベース層よりも高不純物濃度の第2導電型の第2高濃度領域と、前記第2トレンチの底面に接する第2導電型の底面領域と、を備える半導体基体を含んだ半導体装置の製造方法であって、
前記幅方向において前記第1高濃度領域に接する前記第2高濃度領域を前記所定方向に間欠的に形成するイオン注入工程と、
前記半導体基体のおもて面側から第1の深さまで前記第1トレンチを形成し、その後、第2の深さまで前記第2トレンチを形成するトレンチ形成工程と、
少なくとも前記第2トレンチ内部に金属膜を形成する工程と、
前記半導体基体のおもて面の上方に上面電極を形成する工程と、
を含み、
前記第2高濃度領域が、前記幅方向の断面において、前記底面領域から離間するとともに、少なくとも前記第1高濃度領域よりも深い位置に形成されることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項17】
前記金属膜は、少なくともチタン(Ti)またはタングステン(W)を含むことを特徴とする請求項1から16のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項18】
前記上面電極は、少なくともアルミニウム(Al)を含むことを特徴とする請求項1から17のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項19】
前記半導体基体は、炭化珪素からなることを特徴とする請求項1から18のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パワー半導体素子においては、素子のオン抵抗の低減を図るため、トレンチ構造を有する縦型MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor:絶縁ゲート型電解効果トランジスタ)が作製(製造)されている。縦型MOSFETでは、チャネルが基板表面に対して平行に形成されるプレーナー構造よりも基板表面に対して垂直に形成されるトレンチ構造の方が単位面積当たりのセル密度を増やすことができるため、単位面積当たりの電流密度を増やすことができ、コスト面において有利である。
【0003】
しかしながら、縦型MOSFETにトレンチ構造を形成するとチャネルを垂直方向に形成するためにトレンチ内壁全域をゲート絶縁膜で覆う構造となり、ゲート絶縁膜のトレンチ底部の部分がドレイン電極に近づくため、ゲート絶縁膜のトレンチ底部の部分に高電界が印加されやすい。特に、ワイドバンドギャップ半導体(シリコンよりもバンドギャップが広い半導体、例えば、炭化珪素(SiC))では超高耐圧素子を作製するため、トレンチ底部のゲート絶縁膜への悪影響は、信頼性を大きく低下させる。
【0004】
このような問題を解消する方法として、ストライプ状の平面パターンを有するトレンチ構造の縦型MOSFETにおいて、トレンチとトレンチの間、トレンチと平行にストライプ状にp+型領域を設け、さらに、トレンチ底に、トレンチと平行にストライプ状にp+型領域を設ける技術が提案されている(例えば、下記特許文献1参照)。
【0005】
図24は、従来の炭化珪素半導体装置の構造を示す断面図である。
図24に示す従来の炭化珪素半導体装置は、炭化珪素からなる半導体基体(以下、炭化珪素基体とする)のおもて面(p型ベース層16側の面)側に一般的なトレンチゲート構造のMOSゲートを備える。炭化珪素基体(半導体チップ)は、炭化珪素からなるn
+型支持基板(以下、n
+型炭化珪素基板とする)2上にn
-型ドリフト層1、電流拡散領域であるn型領域15およびp型ベース層16となる各炭化珪素層を順にエピタキシャル成長させてなる。
【0006】
n型領域15には、トレンチゲート31の底面全体を覆うように第1p+型領域3が選択的に設けられている。第1p+型領域3は、n-型ドリフト層1に達しない深さで設けられている。また、n型領域15には、隣り合うトレンチゲート31間(メサ部)にも、第1p+型領域3が選択的に設けられている。トレンチゲート31間の第1p+型領域3は、p型ベース層16に接するように設けられている。符号17~22は、それぞれn+型ソース領域、p+型領域、ゲート絶縁膜、ゲート電極、層間絶縁膜およびソース電極である。符号33は金属膜、33aはオーミック電極である。
【0007】
縦型MOSFETは、ソース・ドレイン間にボディダイオードとしてp型ベース層とn型ドリフト層とで形成される寄生pnダイオードを内蔵する。このため、インバータに用いる還流ダイオード(FWD:Free Wheeling Diode)を省略することができ、低コスト化および小型化に貢献する。しかしながら、半導体基板として炭化珪素基板を用いる場合、シリコン(Si)基板を用いた場合に比べて寄生pnダイオードが高いビルトインポテンシャルを持つため、寄生pnダイオードのオン抵抗が高くなり損失増大を招く。また、寄生pnダイオードがオンして通電した場合、寄生pnダイオードのバイポーラ動作により経時的に特性が変化(経年劣化)し、順方向劣化やターンオン損失の増加が生じる。
【0008】
この問題について、回路上にショットキーバリアダイオード (SBD:Schottky Barrier Diode)をMOSFETと並列に接続し、還流時にはSBDに電流が流れ、寄生pnダイオードに電流が流れないようにすることができる。しかしながら、SBDのチップがMOSFETと同数程度必要になるためコスト増になる。
【0009】
このため、SBDはn型ドリフト層とソース電極とを接続する必要があるため、基板表面にp型のチャネル部を貫通するコンタクトトレンチを形成し、トレンチ内壁にSBDを内包させ、還流時の電流をPiNダイオードではなく内蔵SBDに流す技術が提案されている(例えば、下記特許文献2参照)。
【0010】
図25は、従来のSBD内蔵の炭化珪素半導体装置の構造を示す断面図である。
図25に示すように、n
+型炭化珪素基板2のおもて面に、トレンチ型のMOSゲート構造と、トレンチSBD32と、を備える。具体的には、n
+型炭化珪素基板2上にn
-型ドリフト層1となるn
-型層をエピタキシャル成長させて、n
+型炭化珪素基板2のおもて面(n
-型ドリフト層1側の面)側に、p型ベース層16、n
+型ソース領域17、トレンチゲート31、ゲート絶縁膜19およびゲート電極20からなるMOSゲート構造が設けられている。
【0011】
また、トレンチSBD32は、ソース電極22と接続するショットキーメタルでトレンチの内壁が覆われ、内壁に露出するn型領域15と当該ショットキーメタルとのショットキーを形成したトレンチである。このように、
図25では、ソース・ドレイン間に寄生pnダイオードと並列に寄生ショットキーダイオード(内蔵SBD)を設けている。
【0012】
ソース電極22に正電圧が印加され、n
+型炭化珪素基板2の裏面に設けられたドレイン電極(不図示)に負電圧が印加されたとき(MOSFETのオフ時)、p型ベース層16とn
-型ドリフト層1との間のpn接合が順バイアスされる。
図25において、MOSFETのオフ時に寄生pnダイオードがオンする前に寄生ショットキーダイオードがオンするように設計することで、寄生pnダイオードのバイポーラ動作を抑止し、バイポーラ動作による経年劣化を防止することができる。
【0013】
また、ショットキー接触させたショットキー電極が形成されたコンタクト用トレンチを有する炭化珪素半導体装置において、耐圧を向上するためコンタクト用トレンチの底面にp型層を設ける技術がある(例えば、下記特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2015-72999号公報
【特許文献2】特開平8-204179号公報
【特許文献3】特開2014-017469号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上記従来のSBD内蔵のトレンチ型MOSFETの炭化珪素半導体装置によれば、SBDをn
+型ソース領域17を貫通するように配置することで、セルピッチを短縮化できる。しかしながら、
図24に示される従来のトレンチ型MOSFETは不純物濃度が濃いp
+層18とオーミックメタルでコンタクトするのに対し、不純物濃度の薄いp型ベース層16とショットキーメタルでコンタクトするためにp型ベース層16とソース電極22間のコンタクト抵抗が高くなる。これにより、p型ベース層16や第1p
+型領域3の電位が安定せず、スイッチング時の閾値やアバランシェ耐量の低下を招く。
【0016】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、チャネルp層とソース電極間のコンタクト抵抗を低減できる半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上述した課題を解決し、本発明の目的を達成するため、この発明にかかる半導体装置の製造方法は、第1導電型のドリフト層と、前記ドリフト層よりも上方に設けられる第2導電型のベース層と、上面視で所定方向に延在し前記所定方向と直交する幅方向において隣り合う第1トレンチおよび第2トレンチと、前記ベース層の上方で前記第1トレンチの側部に接する、前記ドリフト層よりも高不純物濃度の第1導電型の第1高濃度領域と、前記第2トレンチの側部に接する、前記ベース層よりも高不純物濃度の第2導電型の第2高濃度領域と、を備える半導体基体を含んだ半導体装置の製造方法である。前記幅方向において前記第1高濃度領域に接する前記第2高濃度領域を前記所定方向に間欠的に形成するイオン注入工程と、少なくとも前記第2トレンチ内部に金属膜を形成する工程と、前記第2トレンチ内部の前記金属膜の間の空間および前記半導体基体のおもて面の上方に上面電極を形成する工程と、を含む。
【0018】
上述した課題を解決し、本発明の目的を達成するため、この発明にかかる半導体装置の製造方法は、第1導電型のドリフト層と、前記ドリフト層よりも上方に設けられる第2導電型のベース層と、上面視で所定方向に延在し前記所定方向と直交する幅方向において隣り合う第1トレンチおよび第2トレンチと、前記ベース層の上方で前記第1トレンチの側部に接する、前記ドリフト層よりも高不純物濃度の第1導電型の第1高濃度領域と、前記第2トレンチの側部に接する、前記ベース層よりも高不純物濃度の第2導電型の第2高濃度領域と、前記第2トレンチの底面に接する第2導電型の底面領域と、を備える半導体基体を含んだ半導体装置の製造方法である。前記幅方向において前記第1高濃度領域に接する前記第2高濃度領域を前記所定方向に間欠的に形成するイオン注入工程と、前記半導体基体のおもて面側から第1の深さまで前記第1トレンチを形成し、その後、第2の深さまで前記第2トレンチを形成するトレンチ形成工程と、少なくとも前記第2トレンチ内部に金属膜を形成する工程と、前記半導体基体のおもて面の上方に上面電極を形成する工程と、を含む。前記第1トレンチの底面は、深さ方向において、前記ベース層と前記底面領域との間に位置する。
【0019】
上述した課題を解決し、本発明の目的を達成するため、この発明にかかる半導体装置の製造方法は、第1導電型のドリフト層と、前記ドリフト層よりも上方に設けられる第2導電型のベース層と、上面視で所定方向に延在し前記所定方向と直交する幅方向において隣り合う第1トレンチおよび第2トレンチと、前記ベース層の上方で前記第1トレンチの側部に接する、前記ドリフト層よりも高不純物濃度の第1導電型の第1高濃度領域と、前記第2トレンチの側部に接する、前記ベース層よりも高不純物濃度の第2導電型の第2高濃度領域と、前記第2トレンチの底面に接する第2導電型の底面領域と、を備える半導体基体を含んだ半導体装置の製造方法である。前記幅方向において前記第1高濃度領域に接する前記第2高濃度領域を前記所定方向に間欠的に形成するイオン注入工程と、前記半導体基体のおもて面側から第1の深さまで前記第1トレンチを形成し、その後、第2の深さまで前記第2トレンチを形成するトレンチ形成工程と、少なくとも前記第2トレンチ内部に金属膜を形成する工程と、前記半導体基体のおもて面の上方に上面電極を形成する工程と、を含む。前記第2高濃度領域が、前記幅方向の断面において、前記底面領域から離間するとともに、少なくとも前記第1高濃度領域よりも深い位置に形成される。
【発明の効果】
【0020】
本発明にかかる半導体装置の製造方法によれば、チャネルp層とソース電極間のコンタクト抵抗を低減できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1A】実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の構造を示す断面図である。
【
図1B】実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の構造を示す上面図である。
【
図2】実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その1)。
【
図3A】実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その2)。
【
図3B】実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す上面図である(その2)。
【
図4A】実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その3)。
【
図4B】実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す上面図である(その3)。
【
図5】実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その4)。
【
図6】実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その5)。
【
図7】実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その6)。
【
図8】実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その7)。
【
図9】実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その8)。
【
図10】実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その9)。
【
図11】実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その10)。
【
図12】実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その11)。
【
図13】実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その12)。
【
図14】実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その13)。
【
図15】実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その14)。
【
図16】実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の他の構造を示す図である。
【
図17】実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の他の構造を示す図である。
【
図18A】実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の他の構造を示す図である。
【
図18B】実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の他の構造を示す図である。
【
図19】実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の他の構造を示す図である。
【
図20】実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の他の構造を示す図である。
【
図21】実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の他の構造を示す図である。
【
図22】実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の他の構造を示す図である。
【
図23】実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の他の構造を示す図である。
【
図24】従来の炭化珪素半導体装置の構造を示す断面図である。
【
図25】従来のSBD内蔵の炭化珪素半導体装置の構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法の好適な実施の形態を詳細に説明する。本明細書および添付図面においては、nまたはpを冠記した層や領域では、それぞれ電子または正孔が多数キャリアであることを意味する。また、nやpに付す+および-は、それぞれそれが付されていない層や領域よりも高不純物濃度および低不純物濃度であることを意味する。なお、以下の実施の形態の説明および添付図面において、同様の構成には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0023】
(実施の形態)
本発明にかかる半導体装置は、シリコンよりもバンドギャップが広い半導体(以下、ワイドバンドギャップ半導体とする)を用いて構成される。ここでは、ワイドバンドギャップ半導体として例えば炭化珪素(SiC)を用いた半導体装置(炭化珪素半導体装置)の構造を例に説明する。
【0024】
図1Aは、実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の構造を示す断面図である。
図1Bは、実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の構造を示す上面図である。
図1Aは、
図1BのA-A’線断面図である。これらの図には、活性領域内の2つの単位セル(素子の機能単位)のみを示し、これらに隣接する他の単位セルを図示省略する。実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置は、炭化珪素からなる半導体基体(炭化珪素基体:半導体チップ)のおもて面(p型ベース層16側の面)側にMOSゲートを備えたMOSFETである。
【0025】
炭化珪素基体は、炭化珪素からなるn+型支持基板(第1導電型の半導体基板)2上にn-型ドリフト層(第1導電型の第1半導体層)1およびp型ベース層(第2導電型の第2半導体層)16となる各炭化珪素層を順に形成してなる。活性領域において、MOSゲートは、p型ベース層16と、n+型ソース領域(第1導電型の第3半導体領域)17、p+型領域18、トレンチゲート31、ゲート絶縁膜19およびゲート電極20で構成される。具体的には、n-型ドリフト層1のソース側(ソース電極22側)の表面層には、第1p+型領域3に接するようにn型領域15が設けられている。n型領域15は、キャリアの広がり抵抗を低減させる、いわゆる電流拡散層(Current Spreading Layer:CSL)である。このn型領域(第1導電型の第4半導体領域)15は、例えば、基体おもて面(炭化珪素基体のおもて面)に平行な方向に一様に設けられている。また、n+型炭化珪素基板2の裏面には、ドレイン電極のコンタクト部にスパッタ蒸着などを用いてニッケル(Ni)膜、チタン(Ti)膜などの金属膜34がオーミック電極として設けられる。
【0026】
n型領域15の内部には、第1p+型領域(第2導電型の第1半導体領域)3、第2p+型領域(第2導電型の第2半導体領域)4がそれぞれ選択的に設けられている。活性領域では、第1p+型領域3は、後述するトレンチゲート(第1トレンチ)31、トレンチSBD(第2トレンチ)32の底面に接するように設けられている。第1p+型領域3は、p型ベース層16とn型領域15との界面よりもドレイン側に深い位置から、n型領域15とn-型ドリフト層1との界面に達しない深さで設けられている。第1p+型領域3を設けることで、トレンチゲート31、トレンチSBD32の底面付近に、第1p+型領域3とn型領域15との間のpn接合を形成することができる。第1p+型領域3は、p型ベース層16よりも不純物濃度が高い。
【0027】
また、トレンチゲート31、トレンチSBD32の幅方向に第1p+型領域3の間が空いており、この間には、n-型ドリフト層1より不純物濃度が高いn型領域15が設けられている。
【0028】
また、第2p+型領域4は、第1p+型領域3の上側に位置し、p型ベース層16と接続させた領域である。これにより、第1p+型領域3とn型領域15の接合部分でアバランシェ降伏が起こったときに発生するホールを効率よくソース電極22に退避させることでゲート絶縁膜19への負担を軽減し信頼性をあげることができる。
【0029】
ここで、
図1Aは、第2p
+型領域4が設けられていない部分の断面図であり、第2p
+型領域4は、n
-型ドリフト層2と離して、第1p
+型領域3と接するように選択的に設けられている。第1p
+型領域3と第2p
+型領域4の界面は、トレンチゲート31、トレンチSBD32の底面より、上側に設けられている。なお、上側とは、ソース電極22側である。第1p
+型領域3は、トレンチゲート31およびトレンチSBD32が延在する
図1Aの奥行方向Yと平行に設けられる。第2p
+型領域4は、後述するように、トレンチゲート31およびトレンチSBD32が延在する奥行方向Yと面直交する幅方向Xに沿って設けられる。
【0030】
また、p型ベース層16には、互いに接するようにn+型ソース領域17および第3p+型領域(第2導電型の第3半導体領域)18がそれぞれ選択的に設けられている。第3p+型領域18の深さは、例えばn+型ソース領域17と同じ深さでもよいし、n+型ソース領域17よりも深くてもよい。
【0031】
トレンチゲート31は、基体おもて面からn+型ソース領域17と、p型ベース層16を貫通してn型領域15に達する。炭化珪素基体のおもて面のトレンチゲート31部分の、すなわち、n+型ソース領域17および第3p+型領域18上には、Ni等の金属膜33aがオーミック電極として設けられる。トレンチゲート31の内部には、トレンチゲート31の側壁に沿ってゲート絶縁膜19が設けられ、ゲート絶縁膜19の内側にゲート電極20が設けられている。ゲート電極20のソース側端部は、基体おもて面から外側に突出していてもいなくてもよい。ゲート電極20は、ゲートパッド領域でゲート電極パッドに電気的に接続されている。層間絶縁膜21は、トレンチゲート31に埋め込まれたゲート電極20を覆うように基体おもて面全面に設けられている。
【0032】
トレンチSBD32は、基体おもて面からn+型ソース領域17および第3p+型領域18と、p型ベース層16を貫通してn型領域15に達する。トレンチSBD32の内部には、トレンチSBD32の側壁に沿って、ソース電極22と接続するショットキーメタル(金属膜35)で覆われ、内壁に露出するn型領域15と当該ショットキーメタル(金属膜35)とのショットキー接合を形成する。
【0033】
ソース電極22は、層間絶縁膜21に開口されたコンタクトホールを介してn+型ソース領域17およびp+型領域18に接するとともに、層間絶縁膜21によってゲート電極20と電気的に絶縁されている。ソース電極22と層間絶縁膜21との間に、例えばソース電極22からゲート電極20側への金属原子の拡散を防止するバリアメタルを設けてもよい。ソース電極22上には、ソース電極パッド(不図示)が設けられている。炭化珪素基体の裏面(n+型ドレイン領域となるn+型炭化珪素基板1の裏面)には、ドレイン電極(不図示)が設けられている。
【0034】
第3p
+型領域18は、ソース電極22とp型ベース層16との間に設けられる。
図1Bに示す例では、第3p
+型領域18は、トレンチSBD32が設けられる方向(奥行方向Y)に沿って、トレンチSBD32の幅方向の一方と他方にそれぞれ、所定長さを有して交互に配置されている。
【0035】
このように、ソース電極22とp型ベース層16の間に濃い不純物濃度の第3p+型領域18を設けることにより、p型ベース層16とソース電極22間に濃い第3p+型領域18とオーミック電極33aを介して接続する。これにより、ソース電極22とチャネルp層間の抵抗を低くでき、p型ベース層16の電位を安定化できるようになる。そして、ソース電極22とチャネルp層間のコンタクト抵抗を下げることで、スイッチング時の閾値の変動やアバランシェ耐量の低下を防ぐことができる。
【0036】
(実施の形態にかかる半導体装置の製造方法)
次に、実施の形態にかかる半導体装置の製造方法について説明する。
図2~
図15は、実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。まず、
図2に示すように、n
+型ドレイン領域となるn
+型炭化珪素基板2を用意する。次に、n
+型炭化珪素基板2のおもて面に、上述したn
-型ドリフト層1をエピタキシャル成長させる。例えば、1200V耐圧クラスの場合、n
-型ドリフト層1を形成するためのエピタキシャル成長の条件を、n
-型ドリフト層1の不純物濃度が5×10
15/cm
3~1×10
16/cm
3とし、形成する厚さ(深さ)が8~12μm程度となるように設定してもよい。
【0037】
次に、
図3Aの断面図(
図3BのA-A’線断面図)に示すように、n
-型ドリフト層1の上に、フォトリソグラフィとエッチングで酸化膜マスクを形成し、p型不純物として、例えば、アルミニウム(Al)を500℃でイオン注入し、第1p
+型領域(PB1)3を形成する。例えば、第1p
+型領域3を形成するためのイオン注入時のドーズ量を、不純物濃度が1×10
18/cm
3~5×10
18/cm
3となるようにし、深さが0.3μm~0.8μm程度となるように設定する。
【0038】
また、フォトリソグラフィとエッチングで酸化膜マスクを形成し、n不純物として、例えば、窒素(N)を常温でイオン注入し、下側n型領域15aを形成する。この下側n型領域15aは、n型領域15の一部であり、後述する上側n型領域15bとともにn型領域15を形成する。例えば、下側n型領域15aの不純物濃度が5×1016/cm3~3×1017/cm3程度とし、厚さが0.3μm~0.8μm程度となるように設定する。第1p+型領域(PB1)3と下側n型領域15aとの形成順序を入れ替えてもよい。
【0039】
また、n-型ドリフト層1の上に、下側n型領域15aをエピタキシャル成長させて形成し、次に、フォトリソグラフィおよびp型不純物のイオン注入により、下側n型領域15aの表面層に、第1p+型領域3を選択的に形成してもよい。
【0040】
図3Bは、
図3Aの上面図である。例えば、第1p
+型領域(PB1)3は、幅方向Xに1.5μm程度に形成し、下側n型領域15aは、幅方向Xに1.0μm程度に形成する。第1p
+型領域(PB1)3は、下側n型領域15aの間で奥行方向Yに沿って延びて形成される。
【0041】
次に、
図4Aの断面図(
図4BのA-A’線断面図)に示すように、下側n型領域15aの上に、フォトリソグラフィとエッチングで酸化膜マスクを形成し、p型不純物として、例えば、アルミニウム(Al)を500度でイオン注入し、第2p
+型領域(PB2)4を形成する。例えば、第2p
+型領域4を形成するためのイオン注入時のドーズ量を、不純物濃度が1×10
18/cm
3~5×10
18/cm
3となるようにし、深さが0.3μm~0.8μm程度となるように設定する。
【0042】
また、フォトリソグラフィとエッチングで酸化膜マスクを形成し、n不純物として、例えば、窒素(N)を常温でイオン注入し、下側n型領域15aを形成する。この下側n型領域15aは、n型領域15の一部である。例えば、下側n型領域15aの不純物濃度が5×1016/cm3~3×1017/cm3程度とし、深さが0.3μm~0.8μm程度となるように設定する。第2p+型領域(PB2)4と上側n型領域15bとの形成順序を入れ替えてもよい。
【0043】
また、下側n型領域15aの上に、上側n型領域15bをエピタキシャル成長させて形成し、次に、フォトリソグラフィおよびp型不純物のイオン注入により、下側n型領域15aの表面層に、第2p+型領域4を選択的に形成してもよい。
【0044】
図4Bは、
図4Aの上面図である。例えば、第2p
+型領域(PB2)4は、奥行方向Yに1.0μm程度に形成し、上側n型領域15bは、奥行方向Yに10μm~100μm程度に形成する。第2p
+型領域(PB2)4は、上側n型領域15bの間で幅方向Xに沿って延びて形成される。これにより、第1p
+型領域(PB1)3は、所定ピッチで第2p
+型領域(PB2)4に接続される。
【0045】
次に、
図5に示すように、上側n型領域15bおよび第2p
+型領域4の上に、p型ベース層16をエピタキシャル成長させる。例えば、p型ベース層16を形成するためのエピタキシャル成長の条件を、p型ベース層16の不純物濃度が8×10
16/cm
3~4×10
17/cm
3程度となるように設定してもよい。
【0046】
次に、フォトリソグラフィおよびエッチングで酸化膜マスクを形成し、リン(P)等のn型不純物を500℃でイオン注入し、p型ベース層16の表面層にn+型ソース領域17を選択的に形成する。例えば、n+型ソース領域17を形成するためのイオン注入時のドーズ量を、不純物濃度が1×1019/cm3~1×1021/cm3程度となるようにし、深さが0.1μm~0.8μm程度となるように設定する。
【0047】
次に、フォトリソグラフィおよびエッチングで酸化膜マスクを形成し、アルミニウム(Al)等のp型不純物のイオン注入により、p型ベース層16の表面層に、n+型ソース領域17に接するようにp+型領域18を選択的に形成する。例えば、p+型領域18を形成するためのイオン注入時のドーズ量を、不純物濃度が1×1019/cm3~1×1021/cm3程度となるようにし、深さが0.3μm~1.0μm程度となるように設定する。n+型ソース領域17とp+型領域18との形成順序を入れ替えてもよい。イオン注入が全て終わった後に、活性化アニールを施す。
【0048】
次に、
図6に示すように、フォトリソグラフィおよびエッチングで酸化膜マスクを形成し、ドライエッチングにより、p型ベース層16を貫通して、n型領域15に達するトレンチゲート31を形成する。トレンチゲート31の両側部にはn
+型ソース領域17とp
+型領域18が位置する。
【0049】
トレンチゲート31の底部は、第1p
+型領域3に達してもよいし、p型ベース層16と第1p
+型領域3に挟まれたn型領域15内に位置していてもよい。続いて、トレンチゲート31を形成するために用いたマスクを除去する。また、トレンチ形成時のマスクには酸化膜を用いる。また、トレンチエッチング後に、トレンチゲート31のダメージを除去するための等方性エッチングや、トレンチゲート31の底部およびトレンチゲート31の開口部の角を丸めるための水素アニールを施してもよい(
図7参照)。等方性エッチングと水素アニールはどちらか一方のみを行ってもよい。また、等方性エッチングを行った後に水素アニールを行うことで、トレンチ表面を円滑化できる。
【0050】
次に、フォトリソグラフィおよびエッチングにより、p型ベース層16を貫通して、n型領域15に達するトレンチSBD32を形成する。
図6に示すように、トレンチゲート31の両側部にはn
+型ソース領域17とp
+型領域18が位置する。
【0051】
この際、上面から見て、
図1Bのように、トレンチSBD32が形成された方向(奥行方向Y)に対し、トレンチSBD32の両側部には、所定長さ毎にp
+型領域18が交互に位置している。これにより、仮にトレンチSBD32の中心位置が両側部のp
+型領域18間の中心位置からずれてもこれら両側部のp
+型領域18間の位置に形成できるため、トレンチSBD32のコンタクトをとることができる。
【0052】
トレンチSBD32の底部は、第1p+型領域3に達してもよいし、p型ベース層16と第1p+型領域3に挟まれたn型領域15内に位置していてもよい。続いて、トレンチSBD32を形成するために用いたマスクを除去する。
【0053】
次に、
図7に示すように、トレンチSBD32を二酸化珪素(SiO
2)等の酸化膜25で埋める。例えば、フォトリソグラフィとエッチングでトレンチSBD32部分に酸化膜25をパターニングし、犠牲酸化とCVD(化学気相蒸着法)により、フィールド酸化膜を形成する。この際、トレンチSBD32側壁界面は犠牲酸化膜が付着する状態となる。酸化膜堆積時のカバレッジが悪い場合、酸化膜25の中に“ス(空間)”32aができる。
【0054】
次に、
図8に示すように、トレンチゲート31内部にゲート電極20を形成する。この際、炭化珪素基体のおもて面およびトレンチゲート31の内壁に沿ってゲート絶縁膜19を形成する。次に、トレンチゲート31に埋め込むように例えばポリシリコンを堆積後、パターニングおよびエッチングすることで、トレンチゲート31の内部にポリシリコンを残し、トレンチゲート31にゲート電極20を形成する。その際、エッチバックしてポリシリコンを基体表部より内側に残すようにエッチングしてもよく、パターニングとエッチングを施すことでポリシリコンが基体表部より外側に突出していてもよい。
【0055】
また、ゲート酸化膜をHTO(High Temperature Oxide)で形成し、窒素酸化物(NO)ガスの雰囲気でPOA(Post Oxidation Annealing)により加熱処理する。
【0056】
次に、ゲート電極20を覆うように、炭化珪素基体のおもて面全面に層間絶縁膜21を形成する。層間絶縁膜21は、例えば、酸化シリコン(SiO2)を堆積後にパターングして形成する。また、層間絶縁膜21は、NSG(None-doped Silicate Glass:ノンドープシリケートガラス)、PSG(Phospho Silicate Glass)、BPSG(Boro Phospho Silicate Glass)、HTO(High Temperature Oxide)、あるいはそれらの組み合わせで形成してもよい。なお、トレンチSBD32内の“ス”32aにポリシリコンが侵入して堆積してしまった場合には、層間絶縁膜21の形成後に追加でポリシリコンをエッチングにより除去する。
【0057】
次に、
図9に示すように、炭化珪素基体のおもて面全面に金属膜33、例えばチタン(Ti)やニッケル(Ni)を堆積し、400度~600度程度の温度の窒素(N
2)雰囲気で熱処理(アニール)する。そして、金属膜33をウェットエッチングで除去することで、炭化珪素基体のおもて面にNiとSiの合金であるNiSi層として金属膜33aのみ残る。
【0058】
また、n+型炭化珪素基板2の裏面には、ドレイン電極のコンタクト部にニッケル(Ni)膜、チタン(Ti)膜、シリコン(Si)膜、などをスパッタ蒸着し金属膜34を形成する。この金属膜34は、Ni膜、Ti膜、Si膜を複数組み合わせたNi/Ti、Ni/Si、Ti/Siで積層してもよい。この後、800度~1000度程度の温度で熱処理する。これにより、表面のNiの金属膜33aと、裏面のNi/Siの金属膜34はオーミック電極になる。
【0059】
次に、
図10に示すように、パターニングおよびエッチングにより、トレンチSBD32部分の酸化膜25を除去した後、炭化珪素基体のおもて面全面に、金属膜35、例えばチタン(Ti)や、タングステン(W)、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)を形成する。このとき、トレンチSBD32内部に金属膜35を堆積させる。この後、例えば400℃~800℃程度の温度の窒素(N
2)雰囲気で熱処理(アニール)することで、トレンチSBD32の側壁に金属膜35と半導体領域(n型領域15)とのショットキー接合を形成する。
【0060】
トレンチSBD32の側壁の金属膜35が半導体領域(n型領域15)と接合していればよい。このため、
図11に示すように、活性部以外の金属膜35をパターニングにより除去してもよく、この例では、金属膜35は、トレンチSBD32内部と上部に残し、トレンチゲート31部分は除去している。また、
図12に示すように、金属膜35は、トレンチSBD32の側壁にのみ形成してもよく、この場合でも、トレンチSBD32の側壁の金属膜35と半導体領域(n型領域15)とのショットキー接合を形成できる。この後、層間絶縁膜21およびゲート絶縁膜19をパターニングしてコンタクトホールを形成し、n
+型ソース領域17およびp
+型領域18を露出させる。
【0061】
次に、
図13に示すように、炭化珪素基体のおもて面全面に、アルミニウム(Al)等によりソース電極22を形成する。次に、コンタクトホールを埋め込むようにソース電極パッドを形成する。ソース電極パッドを形成するために堆積した金属層の一部をゲート電極パッドとしてもよい。その後、例えばTi膜、Ni膜、金(Au)を順に積層した積層膜などの厚い膜を電子ビーム(EB:Electron Beam)蒸着などで形成し、ドレイン電極を形成する。その後、ポリイミドを堆積してパターニングする。
【0062】
上述したエピタキシャル成長およびイオン注入においては、n型不純物(n型ドーパント)として、例えば、炭化珪素に対してn型となる窒素(N)やリン(P)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)などを用いればよい。p型不純物(p型ドーパント)として、例えば、炭化珪素に対してp型となるホウ素(B)やアルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、タリウム(Tl)などを用いればよい。このようにして、
図1A,
図1Bに示すMOSFETが完成する。
【0063】
また、上述した製造工程中において、
図14に示すように、トレンチSBD32内部に“ス”32aが生じた場合には(
図12の状態と同等)、ソース電極22の金属(Al等)でこの“ス”32aの部分を埋めればよい。また、
図15に示すように、埋めたソース電極22の金属(Al等)部分に “ス”32aが生じても特性に影響は生じない。
【0064】
図16~
図23は、それぞれ実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の他の構造を示す断面図である。これらの図を用いて実施の形態の他の構成例をそれぞれ説明する。下記の説明では、
図1A,
図1Bで説明した構造と異なる点を主に説明する。
【0065】
図16(a)は上面図、
図16(b)は
図16(a)のA-A’線断面図である。
図16(a)に示すMOSFETは、上面図で見て
図1B同様の構造を有するが、
図16(b)に示すように、金属膜35はトレンチSBD32の内部に埋め込まれ、トレンチSBD32の開口部の高さ位置程度としている。この場合、おもて面側で金属膜33aを広く形成でき、オーミックコンタクトの面積を増やすことができる。
【0066】
また、
図17(a)は上面図、
図17(b)は
図17(a)のA-A’線断面図である。
図17(a)に示すMOSFETは、上面図で見て
図1B同様の構造を有するが、
図17(b)に示すように、金属膜35はトレンチSBD32の内部に埋め込まれ、トレンチSBD32の中途位置(例えばp型ベース層16の高さ位置)程度としている。この場合においても、おもて面側で金属膜33aを広く形成でき、オーミックコンタクトの面積を増やすことができる。
【0067】
また、
図18A(a)は上面図、
図18A(b)は
図18A(a)のA-A’線断面図である。
図18A(a),(b)に示すMOSFETは、トレンチSBD32が設けられた方向(奥行方向Y)に沿った両側部に連続してp
+型領域18を形成したものである。また、
図18A(b)に示すように、金属膜35はトレンチSBD32のおもて面上まで形成されている。p
+型領域18は、上述したように、フォトリソグラフィおよびエッチングで酸化膜マスクを形成し、アルミニウム(Al)等のp型不純物のイオン注入により、p型ベース層16の表面層に、n
+型ソース領域17に接するようにp
+型領域18を選択的に形成する。これに限らず、トレンチSBD32のトレンチ形成後に、トレンチ部分から斜めにイオン注入することで、p
+型領域18を形成してもよい。
【0068】
また、
図18Bに示す断面構造のように、
図18A(a)の上面図同様の構造とし、p
+型領域18をp型ベース層16の深さ位置まで形成してもよい。この場合においても、p
+型領域18は、おもて面側からのイオン注入で形成するほか、トレンチSBD32のトレンチ形成後に、トレンチ部分から斜めにイオン注入することで、p型ベース層16の深さ位置まで形成することができる。
【0069】
また、
図19の上面図に示すように、p
+型領域18は、トレンチSBD32が設けられた方向(奥行方向Y)に沿って間欠的に、トレンチSBD32の両側部に形成してもよい。また、
図20の上面図に示すように、p
+型領域18は、トレンチSBD32が設けられた方向(奥行方向Y)に沿って千鳥状、すなわち、トレンチSBD32の一方の側部と他方の側部に交互に形成してもよい。これら
図19、
図20に対応する断面構造、特に、p型ベース層16の断面構造やトレンチSBD32の構造は、上述した各種構造を任意に組み合わせることができる。
【0070】
また、
図21の断面図に示すように、p
+型領域18は、トレンチSBD32の両側部のp型ベース層16部分に設けてもよい。この場合、p
+型領域18は、p型ベース層16の形成後に、おもて面側からのイオン注入で形成するほか、トレンチSBD32のトレンチ形成後に、トレンチ部分から斜めにイオン注入して形成することができる。
【0071】
また、
図22の断面図に示すように、p
+型領域18は、トレンチSBD32の底部付近において、n型領域15部分に設けてもよい。このp
+型領域18は、上面図で見て例えば、トレンチSBD32が設けられた方向(Y軸方向)に沿って、トレンチSBD32の一側部に連続的に設けられる。このp
+型領域18は、n型領域15(上側n型領域15b)形成後に、おもて面側からのイオン注入で形成できる。これにより、p
+型領域3とソース電極22をp
+型領域18で繋ぐことができ、上記同様にコンタクト抵抗を下げることができる。
【0072】
また、
図23の断面図に示すように、p
+型領域18はトレンチSBD32の深さ方向に複数設けてもよい。
図23の例では、おもて面側のn
+型ソース領域17部分にp
+型領域18を形成し(
図1A等参照)、さらに、トレンチSBD32の底部付近にn型領域15部分にもp
+型領域18を形成する(
図22等参照)。例えば、おもて面側のn
+型ソース領域17部分に形成したp
+型領域18は、トレンチSBD32が設けられた方向(Y軸方向)に沿って、トレンチSBD32の両側部に交互に設け(
図1B等参照)、トレンチSBD32の底部付近のn型領域15部分に形成したp
+型領域18は、トレンチSBD32が設けられた方向(Y軸方向)に沿って、トレンチSBD32の一側部に連続的に設けられる。このような構造によれば、p
+型領域3とソース電極22に対するp
+型領域18の領域を増やすことができ、コンタクト抵抗をより下げることができる。
【0073】
以上説明したように、実施の形態によれば、ソース電極22とp型ベース層16の間に濃い不純物濃度の第3p+型領域18を設けることにより、チャネルp層(p型ベース層16)とソース電極22間に濃い第3p+型領域18とオーミック電極33aを介して接続する。これにより、ソース電極22とチャネルp層間の抵抗を低くする(コンタクト抵抗を下げる)ことができ、チャネルp層(p型ベース層16)の電位を安定化できるようになる。そして、ソース電極22とチャネルp層間のコンタクト抵抗を下げることで、スイッチング時の閾値の変動やアバランシェ耐量の低下を防ぐことができる。
【0074】
以上において本発明は本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であり、上述した各実施の形態において、例えば各部の寸法や不純物濃度等は要求される仕様等に応じて種々設定される。また、上述した各実施の形態では、MOSFETを例に説明しているが、これに限らず、所定のゲート閾値電圧に基づいてゲート駆動制御されることで電流を導通および遮断する種々な炭化珪素半導体装置にも広く適用可能である。ゲート駆動制御される炭化珪素半導体装置として、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)などが挙げられる。また、上述した各実施の形態では、ワイドバンドギャップ半導体として炭化珪素を用いた場合を例に説明しているが、炭化珪素以外の例えば窒化ガリウム(GaN)などのワイドバンドギャップ半導体にも適用可能である。また、各実施の形態では第1導電型をn型とし、第2導電型をp型としたが、本発明は第1導電型をp型とし、第2導電型をn型としても同様に成り立つ。
【産業上の利用可能性】
【0075】
以上のように、本発明にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法は、電力変換装置や種々の産業用機械などの電源装置などに使用されるパワー半導体装置に有用であり、特にトレンチゲート構造の炭化珪素半導体装置に適している。
【符号の説明】
【0076】
1 n-型ドリフト層
2 n+型炭化珪素基板
3 第1p+型領域
4 第2p+型領域
15 n型領域
15a 下側n型領域
15b 上側n型領域
16 p型ベース層
17 n+型ソース領域
18 p+型領域
19 ゲート絶縁膜
20 ゲート電極
21 層間絶縁膜
22 ソース電極
25 酸化膜
31 トレンチゲート
32 トレンチSBD
33 金属膜
33a オーミック電極
35 金属膜