(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001112
(43)【公開日】2024-01-09
(54)【発明の名称】均一に分布した二酸化チタンを含む触媒の担体及び製造方法
(51)【国際特許分類】
B01J 21/06 20060101AFI20231226BHJP
B01J 32/00 20060101ALI20231226BHJP
B01J 33/00 20060101ALI20231226BHJP
B01J 23/34 20060101ALI20231226BHJP
C01G 23/00 20060101ALN20231226BHJP
【FI】
B01J21/06 M
B01J32/00
B01J33/00 Z
B01J23/34 M
C01G23/00 C
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023171424
(22)【出願日】2023-10-02
(62)【分割の表示】P 2020540588の分割
【原出願日】2019-01-21
(31)【優先権主張番号】18152854.8
(32)【優先日】2018-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】501186162
【氏名又は名称】サゾル ジャーマニー ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ニーマイヤー,ディルク
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルク,ハンス-ヨルク
(72)【発明者】
【氏名】ゴロール, カタリーナ
(72)【発明者】
【氏名】ショーネボーン,マルコス
(72)【発明者】
【氏名】クーン,マーティン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】均一に分布した二酸化チタンとアルミナとを少なくとも含む触媒の担体を提供する。
【解決手段】本発明の焼成触媒の担体は、アルミナ担体(Al2O3)に対し1~5重量%のTiO2で被覆したアルミナ担体を含み、TiO2は、前記アルミナ担体に均一に分散されており、それにより、アルミナ担体上に表面被覆が形成され、当該表面被覆には、アルミナ担体の内孔壁の表面の被覆が含まれ、アルミナ担体のバルク内の被覆は含まれない。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミナ担体(Al2O3)に対し1~5重量%のTiO2で被覆したアルミナ担体を含み、
前記TiO2は、前記アルミナ担体に均一に分散されており、
前記TiO2が前記アルミナ担体上に均一に分散されることで、前記アルミナ担体上に表面被覆が形成され、当該表面被覆には、前記アルミナ担体の内孔壁の表面の被覆が含まれ、前記アルミナ担体のバルク内の被覆は含まれない、焼成触媒の担体。
【請求項2】
前記焼成触媒の担体のTi:ALのX線光電子分光法によって決定されるピーク面積比に関して、乳棒と乳鉢を用いて粉砕する前の場合と、乳棒と乳鉢を用いて粉砕した後の場合との間の差は、非常に小さいか、または負である、請求項1に記載の焼成触媒の担体。
【請求項3】
乳棒と乳鉢を用いて粉砕する前の前記焼成触媒の担体と、乳棒と乳鉢を用いて粉砕した後の前記焼成触媒の担体と、のTi:ALのX線光電子分光法によって決定されるピーク面積比の差が0.0067以下である、請求項1に記載の焼成触媒の担体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、均一に分布した二酸化チタンとアルミナとを少なくとも含む触媒の担体の生成方法、及び当該方法によって調製した触媒の担体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、含浸によって、触媒の担体の材料にチタン化合物を導入する方法が記載されている。含浸に適した液媒体を用いて、チタン化合物と触媒の担体の材料との間の接触をもたらすことができる。特許文献1の実施例では、チタン化合物で修飾する触媒の担体を調製する間に、触媒の担体の材料をチタン化合物と接触させる有機物の液媒体として、エタノールの使用を開示している。また、特許文献1では、例示されていないが、水などの無機物の液媒体を使用して、触媒の担体材料をチタン化合物と接触させることができることを開示している。
【0003】
特許文献2には、カルボン酸とチタン化合物との水性組成物を調製し、同時に触媒の担体の材料に添加する方法、すなわち、触媒の担体材料に添加するのを、チタン化合物とカルボン酸との混合物とする方法が開示されている。
【0004】
特許文献3には、修飾金属酸化物と、修飾金属酸化物が卑金属酸化物全体に均一に分布された卑金属酸化物とを含む、均一で非晶質な触媒の担体が開示されている。特許文献3には、修飾アルミナを製造するためにアルミナ塩を原料として用いる沈殿工程が記載されている。
【0005】
先行技術の調製方法は合致しないものであるか、あるいはチタン化合物が触媒の担体上に均一に分散されていない触媒が得られるかのいずれかである。したがって、上述の方法を改善する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2014/020507号(WO 2014/020507 A2)
【特許文献2】国際公開第2013/114098号(WO 2013/114098 A1)
【特許文献3】米国特許出願公開第2005/0124490号明細書(US 2005/0124490)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願における第1態様として、触媒の担体を調製する方法が提供され、当該方法は、
i)pHが6~8であり、遷移アルミナ、ベーマイト、及びその混合物からなる群から選択され、好ましくは、γ-アルミナであるアルミナを含むアルミナ懸濁液を調製する工程と、
ii)チタン化合物の溶液を調製する工程と、
iii)アルミナ懸濁液のpHが4~5になるまでアルミナ懸濁液に酸を添加して、酸修飾アルミナ懸濁液を形成する工程と、
iv)酸修飾アルミナ懸濁液にチタン化合物を添加して、アルミナ/チタン化合物を形成する工程とを含む。
【0008】
当該方法は、アルミナ/チタン化合物の懸濁液に酸を添加して、酸修飾アルミナ/チタン化合物の懸濁液を形成する工程を更に含むことができる。
【0009】
当該方法は、アルミナ/チタン化合物の懸濁液又は酸修飾アルミナ/チタン化合物の懸濁液を加熱して、アルミナ/チタン化合物の加熱懸濁液又は酸修飾アルミナ/チタン化合物の加熱懸濁液を形成する工程を更に含むことができる。加熱は、30℃~70℃の温度範囲、典型的には約50℃で、2~4時間なされる。
【0010】
当該方法は、アルミナ/チタン化合物の加熱懸濁液又は酸修飾アルミナ/チタン化合物の加熱懸濁液を乾燥させる工程を含むことができる。
【0011】
当該方法は、チタン化合物の溶液を添加する前に、酸修飾アルミナ懸濁液を乾燥させて、酸修飾アルミナの乾燥混合物を形成する工程を含むことができる。
【0012】
本願の第1態様に対する第1選択肢によれば、触媒の担体を調製する方法が提供され、当該方法は、
i)pHが6~8であり、遷移アルミナ、ベーマイト、及びその混合物からなる群から選択され、好ましくは、γ-アルミナであるアルミナを含むアルミナ懸濁液を調製する工程と、
ii)チタン化合物の溶液を調製する工程と、
iii)アルミナ懸濁液のpHが4~5になるまでアルミナ懸濁液に酸を添加して、酸修飾アルミナ懸濁液を形成する工程と、
iv)酸修飾アルミナ懸濁液にチタン化合物の溶液を添加して、アルミナ/チタン化合物の懸濁液を形成する工程と、
v)アルミナ/チタン化合物の懸濁液を乾燥させて、アルミナ/チタン化合物の乾燥混合物を形成する工程とを含む。
【0013】
本願の第1態様に対する第2選択肢によれば、触媒の担体を調製する方法が提供され、当該方法は、
i)pHが6~8であり、遷移アルミナ、ベーマイト、及びその混合物からなる群から選択され、好ましくは、γ-アルミナであるアルミナを含むアルミナ懸濁液を調製する工程と、
ii)チタン化合物の溶液を調製する工程と、
iii)アルミナ懸濁液のpHが4~5になるまでアルミナ懸濁液に酸を添加して、酸修飾アルミナ懸濁液を形成する工程と、
iv)酸修飾アルミナ懸濁液にチタン化合物の溶液を添加して、アルミナ/チタン化合物の懸濁液を形成する工程と、
v)アルミナ/チタン化合物の懸濁液に酸を添加して、酸修飾アルミナ/チタン化合物の懸濁液を形成する工程と、
vi)酸修飾アルミナ/チタン化合物の懸濁液を乾燥させて、pH修飾アルミナ/チタン化合物の乾燥混合物を形成する工程とを含む。
【0014】
本願の第1態様に対する第1選択肢及び第2選択肢は、アルミナ/チタン化合物の懸濁液又は酸修飾アルミナ/チタン懸濁液を加熱する工程を更に含むことができる。加熱は、30℃~70℃の温度範囲、典型的には約50℃で、好ましくは2~4時間なされる。
【0015】
本願の第1態様の方法が、チタン化合物の溶液を添加する前に、酸修飾アルミナ懸濁液を乾燥させる工程を含まない場合、アルミナ懸濁液に添加される酸は、好ましくはギ酸、乳酸、クエン酸、又はその混合物、より好ましくは乳酸、クエン酸、又はその混合物、最も好ましくはクエン酸である。
【0016】
アルミナ懸濁液に添加される酸の割合は、酸修飾アルミナ懸濁液の5~30重量%、好ましくは、酸修飾アルミナ懸濁液の5~20重量%にできる。しかしながら、酸の添加量は、アルミナ懸濁液のpHを、6~8のpHから、4~5のpHに低下させるのに十分な量でなければならないことは理解されるであろう。
【0017】
本願の第1態様に対する第3選択肢によれば、触媒の担体を調製する方法が提供され、当該方法は、
i)pHが6~8であり、遷移アルミナ、ベーマイト、及びその混合物からなる群から選択され、好ましくは、γ-アルミナであるアルミナを含むアルミナ懸濁液を調製する工程と、
ii)チタン化合物の溶液を調製する工程と、
iii)アルミナ懸濁液のpHが4~5になるまでアルミナ懸濁液に酸を添加して、酸修飾アルミナ懸濁液を形成する工程と、
iv)酸修飾アルミナ懸濁液を乾燥させて、酸修飾アルミナの乾燥混合物を形成する工程と、
v)酸修飾アルミナの乾燥混合物にチタン化合物の溶液を添加して、アルミナ/チタン化合物の懸濁液を形成する工程と、
vi)アルミナ/チタン化合物の懸濁液を乾燥させて、乾燥アルミナ/チタン化合物混合物を形成する工程とを含む。
【0018】
本願の第1態様に対する第4選択肢によれば、触媒の担体を調製する方法が提供され、当該方法は、
i)pHが6~8であり、遷移アルミナ、ベーマイト、及びその混合物からなる群から選択され、好ましくは、γ-アルミナであるアルミナを含むアルミナ懸濁液を調製する工程と、
ii)チタン化合物の溶液を調製する工程と、
iii)アルミナ懸濁液のpHが4~5になるまでアルミナ懸濁液に酸を添加して、酸修飾アルミナ懸濁液を形成する工程と、
iv)酸修飾アルミナ懸濁液を乾燥させて、酸修飾アルミナの乾燥混合物を形成する工程と、
v)酸修飾アルミナの乾燥混合物にチタン化合物の溶液を添加して、アルミナ/チタン化合物の懸濁液を形成する工程と、
vi)アルミナ/チタン化合物の懸濁液に酸を添加して、酸修飾アルミナ/チタン化合物の懸濁液を形成する工程と、
vii)酸修飾アルミナ/チタン化合物の懸濁液を乾燥させて、酸修飾アルミナ/チタン化合物の乾燥混合物を形成する工程とを含む。
【0019】
本願の第1態様に対する第3選択肢及び第4選択肢は、アルミナ/チタン化合物の懸濁液又は酸修飾アルミナ/チタン化合物の懸濁液を加熱する工程を更に含むことができる。加熱は、30℃~70℃の温度範囲、典型的には約50℃で、好ましくは2~4時間なされる。
【0020】
本願の第1態様の第4選択肢のvi)の工程で添加される酸の量は、アルミナ/チタン化合物の懸濁液のpHを4~5のpHに維持するのを保証するのに十分な量であることは理解されるであろう。
【0021】
本願の第1態様の方法が、チタン化合物の溶液の添加前に酸修飾アルミナ懸濁液を乾燥させる工程を含む場合、添加される酸は、好ましくは、ギ酸、乳酸、クエン酸、又はその混合物を含むカルボン酸(少なくとも1つのカルボキシル基(C(=O)OH)を含有する有機化合物)である。
【0022】
アルミナ懸濁液に添加される酸の割合は、酸修飾アルミナ懸濁液の5~30重量%、好ましくは、酸修飾アルミナ懸濁液の5~20重量%である。しかしながら、添加される酸の量は、アルミナ懸濁液のpHを、6~8のpHから4~5のpHに低下させるのに十分な量でなければならないことは理解されるであろう。
【0023】
本願の第1態様に対する第3選択肢及び第4選択肢のとおり、チタン化合物の溶液を添加する前に酸修飾アルミナ懸濁液を乾燥させる(溶液滴下含浸法(inpicient wetness:IW)として公知)よりも、例えば、本発明の第1態様の第1及び第2選択肢のとおり、チタン化合物の溶液の添加前に酸修飾アルミナ懸濁液を乾燥させない方(平衡沈降濾過(equilibrium deposition filtration:EDF)として公知)が好ましい。
【0024】
本願の第1態様の方法(及び選択肢)は、乾燥アルミナ/チタン化合物混合物又は酸修飾アルミナ/チタン化合物の乾燥混合物を焼成する最終工程を含むことができる。焼成は、典型的には100℃~1000℃、好ましくは400℃~600℃の温度で、それぞれ好ましくは2~5時間にわたって実施され、焼成触媒の担体を生成する。
【0025】
遷移アルミナは、γ(ガンマ)-アルミナ、δ(デルタ)-アルミナ、θ(シータ)-アルミナ、又はその混合物であることが好ましい。最も好ましくは、遷移アルミナは、γ-アルミナである。
【0026】
アルミナ懸濁液は、好ましくは、遷移アルミナ、ベーマイト、及びその混合物からなる群から選択されるアルミナ、好ましくはγ-アルミナを少なくとも水中に懸濁させることによって調製される。懸濁液におけるアルミナの割合は、アルミナ懸濁液全体に対して5~60%であり、好ましくは、アルミナ懸濁液全体に対して40~50%である。
【0027】
好ましくは、アルミナ懸濁液中のアルミナは、遷移アルミナ、ベーマイト及びその混合物からなる群から選択されるアルミナのみであり、好ましくは、γ-アルミナのみである。
【0028】
チタン化合物の溶液は、チタン前駆物質を、少なくとも水に溶解させることによって調製される。シュウ酸チタンカリウム、シュウ酸チタンアンモニウム、乳酸チタンアンモニウム、又はその混合物を含む水溶性チタン前駆物質を用いることができる。必要に応じて、少なくとも水の温度を90℃まで上昇させて、溶解工程を加速することができる。溶液中のチタン前駆物質の濃度は、可能な限り高く、少なくとも水中のチタン前駆物質の溶解度によってのみ制限すべきである。好ましいチタン液は、TiO2として算出された1%から4%重量で生成された脱水シュウ酸チタンカリウムの水溶液である。チタン溶液は、アルミナ懸濁液に添加する前に、約30分間磁気撹拌できる。チタン溶液は、アルミナ懸濁液に添加される前に、任意の不純物、例えばカリウムを除去するために、イオン交換カラムを通すのが好ましい。したがって、チタン溶液は、アルミナ懸濁液に添加される前に、一定時間、磁気撹拌し、(また、それとは別に)イオン交換カラムを通すのが好ましい。
【0029】
本願の技術分野で公知の任意の乾燥方法は、本発明の方法で利用できる。乾燥は、典型的には、80℃~120℃の温度で0.5~5時間行われる。
【0030】
アルミナ/チタン化合物の懸濁液は、Al2O3として算出するアルミナ及びTiO2として算出するチタン化合物の合計に対し、99~95重量%、最も好ましくは97~99重量%の、Al2O3として算出するアルミナと、好ましくは1~5重量%、最も好ましくは1~3重量%の、TiO2として算出するチタン化合物とを含む。
【0031】
アルミナ/チタン化合物(酸/pH修飾アルミナ/チタン化合物を含む)の乾燥混合物は、アルミナ/チタン化合物(酸/pH修飾アルミナ/チタン化合物を含む)の乾燥混合物全体に対して、好ましくは99~95重量%、最も好ましくは99~97重量%の、Al2O3として算出するアルミナと、好ましくは1~5重量%、最も好ましくは1~3重量%の、TiO2として算出するチタン化合物とを含む。
【0032】
本願の第2態様によれば、本発明の第1態様によって調製された触媒の担体が提供される。
【0033】
本発明によれば、アルミナ担体(Al2O3)に対して1~5重量%のTiO2で被覆されたアルミナ担体を含み、TiO2は、アルミナ担体上に均一に分散されている焼成触媒の担体が提供される。
【0034】
「被覆する/被覆された」とは、担体の材料に渡って形成された表面被覆を意味し、担体の材料の内孔壁の表面の被覆を含む(担体のバルクの内部は含まない)。
【0035】
当該触媒は、アルミナ担体(Al2O3)に対して3~5重量%(焼成後に測定)のTiO2で被覆したアルミナ担体を含むことが好ましい。
【0036】
本発明の第1態様により調製された触媒の担体におけるTiO2の重量%は、触媒の担体の総重量を単位として表される。
【0037】
アルミナ懸濁液を最初に酸で処理する場合、アルミナ懸濁液をチタン化合物の溶液と接触させる前に、アルミナ触媒の担体上でチタン化合物の均一な分布の改善が実現されることが見出されたことは、最も驚くべきことである。
【0038】
本願の第4態様によれば、促進触媒の担体を調製する方法が提供され、当該方法は、
i)本発明の第1態様により触媒の担体を調製する工程と、
ii)触媒の担体上及び/又は触媒の担体中に助触媒を導入することによって、促進触媒の担体を得る工程と
を含む。
【0039】
助触媒は、例えば、マンガン水酸化物、マンガン酸化物、及び/又はマンガンオキシ水酸化物を含むマンガン化合物であることが好ましい。マンガンは、チタン化合物の溶液と共に、すなわち、マンガン前駆物質、例えば酢酸マンガンを、本発明の第1態様のii)工程のチタン化合物の溶液と混合することによって、触媒の担体に添加してもよい。代替的には、焼成触媒の担体は、マンガン前駆物質、例えば酢酸マンガンで含浸してもよい。
【0040】
本願の第4態様は、焼成の最終工程を含むことができる。
【0041】
本発明により調製した触媒の担体又は促進触媒の担体は、Fischer-Tropsch触媒、炭化水素合成触媒、水素化脱硫触媒、水素化処理触媒、及びNO酸化用の光触媒などに用いることができる。
【0042】
本発明は、添付の図面と以下の非限定的な実施例とにより、ここで更に詳細に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】比較例3の断面SEM画像であり、白い箇所がTiO
2の富化を表している。
【発明を実施するための形態】
【0044】
[実験]
用いられるチタン(IV)ビス(アンモニウムラクタト)ジヒドロキシド(TALH)は、Tyzor(登録商標)LAとして同業者に知られている1重量%(TiO2として算出)のTALHの水溶液である。
【0045】
以下の実施例においては、触媒の担体においてTiO2として算出されるTiの重量%は、触媒の担体の総重量を単位として表される。
【0046】
X線光電子分光法(XPS)を以下の実施例で用いて、アルミナ表面上のTiO2分布を決定した。XPSとは、1000部の範囲あたりの部数で元素組成を測定する表面感度の定量分光技術である。XPSは表面感度のみであるので、受領時のもの(現状の粒子)、及び、乳棒と乳鉢とを用いて粉砕(粉砕)した後のものの両方でXPSによって分析し、元素の比を報告した。乳棒と乳鉢を用いてちょうど十分な力を加えて粒子を分解した粉砕工程では、(現状の粒子を測定したときの試料と)ほぼ同量の試料を用いた。
【0047】
XPSスペクトルは、KRATOS Axis Ultra DLDに記録し、分析器はスペクトル探査については160eV、個々の部分については20eVの固定パスエネルギーで動作させた。測定はAlKαの単色光源を用いて行った。材料の性質上、取得中中に中和が必要であった。すべてのスペクトルは、284.6eVのC1sを用いてエネルギー補正した。全ての試料は、モリブデン試料ホルダに遊離粉末として封入した。実施例における全ての担体の試料について、XPSによって決定されるようなピーク面積比は、現状の粒子と破砕した試料との間の差の算出値と共に、表1、2、及び3に提供される。この差が大きくなるにつれて、試料の均一性が低下する。均一な試料は、非常に小さい値か負の値を示す。
【0048】
[実施例-本発明の第1態様の第1選択肢及び第2選択肢]
前述したように、本発明の第1態様の第1選択肢及び第2選択肢は、チタン化合物の溶液の添加前に、酸修飾アルミナ懸濁液を乾燥させる工程(平衡沈降濾過(以下、「EDF」)として公知)を含まない。
【0049】
[比較例1:酸の添加のないTALHの平衡沈降濾過(以下、「EDF」とする)]
38.8gのPuralox SCCa-150を46.5gの水に懸濁し、45.5重量%のAl2O3の水懸濁液を得た。164gのTALH水溶液(1重量%のTiO2)をアルミナ懸濁液に添加し、50℃で3時間加熱し、濾過し、乾燥し、550℃で焼成した。得られた修飾担体は、1.1重量%のTiO2(修飾担体の総重量に基づく)が含まれていた。
【0050】
[比較例2-特許文献2(WO 2013/114098 A1)と同一工程:クエン酸を事前混合した1工程のTALHのEDF]
38.6gのPuralox SCCa-150を46gの水(45.5重量%の懸濁液)に懸濁した。160gのTALHとクエン酸との混合溶液を懸濁液に添加した(1重量%のTiO2=11gのTALH、使用したTALHの量に対する20重量%のクエン酸=2.2g)。混合物を加熱し、50℃で3時間撹拌し、濾過し、乾燥し、550℃で焼成した。得られた修飾担体は、1.7重量%のTiO2(修飾担体の総重量に基づく)が含まれていた。
【0051】
[実施例1:クエン酸を含むTALHのEDF(AP15-171)]
38.8gのPuralox SCCa-150を46.5gの水中に懸濁し、において45.5重量%のAl2O3の水懸濁液を得た。11.2gの40重量%のクエン酸溶液を懸濁液に添加して、懸濁液のpHを4に調整し、酸修飾アルミナ懸濁液を生成した。次いで、164gの1重量%のTiO2のTALH水溶液を酸修飾アルミナ懸濁液に添加し、クエン酸を用いた4へのpH制御下で、アルミナ/チタン化合物の懸濁液を50℃で3時間加熱し、濾過し、乾燥し、550℃で焼成した。得られた触媒の担体には、2.2重量%のTiO2(修飾担体の総重量に基づく)が含まれていた。
【0052】
実施例は、Ti化合物を添加する前にアルミナ懸濁液に酸を添加すると、比較例1及び比較例2のように、酸処理なしの場合と比較した場合又はチタニア(TiO2)と酸を事前混合した場合と比較した場合、アルミナ上のTiO2吸着が、かなり高くなることを示している。
【0053】
実施例1で調製したような現状の粒子及び触媒の担体の粉砕(破砕)試料のTi:Al比は、ほぼ同じであることが見出された。したがって、チタニアの表面分布は、担体粒子の内表面及び外表面にわたって均一であると考えられる。実施例1のようなTALHのEDFでの含浸の前にアルミナ担体を酸で官能化すると、触媒の担体材料を酸で事前に処理することなく、同時にチタン化合物とカルボン酸とを触媒の担体と接触させて、不均一なTi分布が得られた比較例2と比較して、均一なTi分布が得られた(表1の実施例1のXPSのTi:Alピーク比を参照)。
【0054】
担体修飾の結果によって、吸着の改善がpHの機能であること、及びアルミナの表面が酸によって官能化されるという事実が実証される。
【0055】
結果は、以下の表1に含まれる。
【0056】
【0057】
[実施例-発明の第1態様の第3選択肢及び第4選択肢]
本発明の第1態様の選択肢3及び4の前に記載されたように、チタン化合物の溶液を添加する前に、酸修飾アルミナ懸濁液を乾燥させる工程(溶液滴下含浸法(以下、「IW」)として公知)を含む。
【0058】
[比較例3:酸の添加のないTALHのIW]
13.7gのTALHを水に溶解し、合成した21mLのTALH水溶液を得た。次いで、強力な混合中において、54.4gのPuralox SCCa-2/150懸濁液にTALH溶液を滴下した。大気圧下80℃で水を除去し、550℃で3時間焼成した。得られた担体は4.1重量%のTiO
2を含んでいたが、TiO
2の分布は不均一であった(表2及び
図1参照)。
【0059】
[比較例4:20重量%のクエン酸(TALHとの関係で表される)を用いた1工程でのTALHのIW(事前混合)]
11.3gのTALHを水に溶解し、合成した18mLのTALH水溶液を得た。2.3gのクエン酸を固体としてTALH溶液に添加した。強力な混合下で、38.8gのPuralox SCCa-2/150懸濁液にこの溶液を添加した。大気圧下80℃で水を除去し、550℃で3時間焼成した。得られた触媒の担体では、TiO2の分布は不均一であった。
【0060】
[実施例2:20重量%クエン酸、乾燥、及びTALHのIWの2工程]
18mLの20重量%のクエン酸溶液を、38.8gのPuralox SCCa-2/150懸濁液に添加し、混合させた。混合物を大気圧下80℃で乾燥させた。11.3gのTALHを水に溶解し、18mLのTALH水溶液を得た。この溶液を酸修飾Puraloxの乾燥混合物に添加して、アルミナ/チタン化合物の懸濁液を形成した。次いで、このアルミナ/チタニア化合物の懸濁液を80℃で乾燥させて水を除去し、550℃で3時間焼成して、TiO2の分散が均一な4.1重量%のTiO2を含む触媒の担体を得た。
【0061】
[実施例3:5重量%のクエン酸、乾燥、及びTALHのIWの2工程]
4.1重量%のTiO
2を含む修飾アルミナ担体を、実施例2に記載のように調製したが、Puraloxを5重量%のクエン酸溶液で処理した。修飾担体上のTiO
2の分散の均一性は、表2及び
図2のように良好であった。
【0062】
[実施例4:10重量%の乳酸、乾燥、及びTALHのIWの2工程]
29.2gのPuralox SCCa-150懸濁液に、14mLの10重量%の乳酸溶液を添加し、混合させた。混合物を大気圧下80℃で乾燥させた。8.5gのTALHを水に溶解し、14mLのTALH水溶液を得た。酸処理したPuraloxの乾燥合物にこれを添加して、アルミナ/チタン化合物の懸濁液を形成した。次いで、アルミナ/チタン化合物の懸濁液を80℃で乾燥させて水を除去し、550℃で3時間焼成して、Ti化合物の分散が均一な4.1重量%のTiO2の触媒の担体を得た。
【0063】
[実施例5-5重量%の乳酸、乾燥、及びTALHのIWの2工程]
29.1gのPuralox SCCa-150懸濁液に、13mLの5重量%の乳酸溶液を添加し、混合させた。混合物を大気圧下80℃で乾燥させた。8.5gのTALHを水に溶解し、13mLのTALH水溶液を得た。第1工程で調製したような、酸処理したPuraloxの乾燥混合物にこれを添加して、アルミナ/チタン化合物の懸濁液を形成した。アルミナ/チタン化合物の懸濁液を80℃で乾燥させて水を除去し、550℃で3時間焼成した。触媒の担体上のTiO2の分散の均一性は良好であった。
【0064】
実施例及び表2に概説したように、アルミナ懸濁液又は混合物をチタン化合物(TALH)と接触させる前に、アルミナ懸濁液に酸を添加すること、2工程の処理工程により、TiO2の吸着が顕著に改善でき、チタニアがアルミナ担体の内表面及び外表面上に均一に分布されることを示した。
【0065】
【0066】
[本発明の第4態様の例:Mn含浸の例]
[比較例5:酸添加前処理をしないTALHのIW、MnAcのIW]
比較例3に記載したように触媒の担体を調製したが、焼成後に酢酸マンガン(MnAc)を溶液滴下含浸法により添加した。
【0067】
26.9gのTALHを水に溶解し、合成した42mLのTALH水溶液を得た。91.8gのPuralox SCCa-150にこれを滴下し、Krups撹拌機で混合させた。水を大気圧下120℃で除去し、550℃で3時間焼成した。12.5gの酢酸マンガン四水和物(Mn(CH3COO)2・4H2O)を42mLの水に溶解し、焼成粉末に滴下した。触媒の担体を120℃で乾燥し、再び550℃で3時間焼成して、3.9重量%のTiO2及び4.7重量%のMnO2を含む触媒を得た。
【0068】
[比較例6:1工程での20重量%のクエン酸を用いたTALHのIW、及びMnAcのIW]
比較例4に記載したように触媒の担体を調製したが、乾燥後の第2溶液滴下含浸法工程において、酢酸マンガン(MnAc)を添加した。
【0069】
22.8gのTALHを水に溶解し、合成した36mLのTALH水溶液を得た。4.6gのクエン酸を固体としてTALH溶液に添加した。Krups撹拌機で混合しながら、78gのPuralox SCCa-2/150にこの溶液を滴下した。水を大気圧下120℃で除去した。10.6gの酢酸マンガン四水和物を36mLの水に溶解し、この乾燥粉末に滴下し、大気圧120℃で乾燥し、空気中550℃で3時間焼成した。修飾担体は3.9重量%のTiO2と4.7重量%のMnO2で構成された
【0070】
[比較例7:1工程でのTALHのIW、及び20重量%のクエン酸を用いたMnAcのIW]
触媒の担体は、比較例4に記載されているように調製したが、TALHのクエン酸でのIW中にMnAcを添加した。
【0071】
22.8gのTALH、10.6gの酢酸マンガン、及び4.6gのクエン酸を水に溶解し、36mLの水溶液を得た。Krups撹拌機で混合しながら、78gのPuralox SCCa-2/150にこの溶液を滴下した。水を120℃の大気圧下で除去し、粉末を空気中550℃で3時間焼成した。修飾担体は、3.9重量%のTiO2と4.7重量%のMnO2から成るものであった。
【0072】
[実施例6:5重量%のクエン酸で前処理したTALH、及びMnAcのIWの2工程]
触媒の担体は、実施例3に記載のように調製したが、TALHのクエン酸での溶液滴下含浸法の間にMnAcを添加した。
【0073】
73.9gのPuralox SCCa-2/150 34mLに、5重量%のクエン酸溶液を添加し、混合させた。混合物を大気圧下80℃で乾燥させた。21.5gのTALH及び10gの酢酸マンガン(II)四水和物(Mn(CH3COO)2・4H2O)を水に溶解し、34mLのTALH/Mn酢酸水溶液を得た。
【0074】
第1工程で調製したように、乾燥させ、酸処理したPuraloxに、TALH/MnAc水溶液を第2工程の含浸で添加し、80℃で乾燥させて水分を除去し、550℃で3時間焼成して、4.1重量%のTiO2及び4.7重量%のMnO2の修飾担体を得た。乾燥中の大きな酸損失を防止するために、80℃で乾燥を行った。
【0075】
[実施例7:TALHのEDF、5重量%のクエン酸、及び酢酸MnのIWの2工程]
触媒の担体は、実施例1に記載されているように調製したが、焼成後の溶液滴下含浸法性によりMnAcを添加した。
【0076】
85.8gのPuralox SCCa-2/150を102mLの水と混合することによって水懸濁液中のAl2O3を調製し、懸濁液を40重量%クエン酸溶液によってpHを4に調整した。その後、950gの1重量%のTiO2のTALH水溶液を懸濁液に添加し、クエン酸を用いた4へのpH制御下で、50℃に3時間加熱した。懸濁液を濾過し、乾燥し、550℃で焼成した。焼成後、12.4gの酢酸マンガン四水和物を43mLの水に溶解し、粉末に滴下し、120℃で乾燥させ、550℃で3時間焼成した。
【0077】
比較例5及び実施例6についてのXPSピーク比の結果は、溶液滴下含浸ルートを介して調製されたTi及びMn修飾試料の表3に含まれ、チタニアは主に担体の内面上に位置し、一方、マンガンは担体の内面及び外面上に均一に位置することを示す。
【0078】
結果は、以下の表3に含まれる。
【0079】