(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111203
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】経鼻投与用の粉末製剤及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A61K 47/38 20060101AFI20240808BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20240808BHJP
A61K 47/40 20060101ALI20240808BHJP
A61K 47/20 20060101ALI20240808BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20240808BHJP
A61K 31/192 20060101ALN20240808BHJP
A61K 31/198 20060101ALN20240808BHJP
A61K 31/405 20060101ALN20240808BHJP
A61K 31/568 20060101ALN20240808BHJP
A61K 31/422 20060101ALN20240808BHJP
【FI】
A61K47/38
A61K9/14
A61K47/40
A61K47/20
A61K47/26
A61K31/192
A61K31/198
A61K31/405
A61K31/568
A61K31/422
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024099620
(22)【出願日】2024-06-20
(62)【分割の表示】P 2021519385の分割
【原出願日】2020-05-01
(31)【優先権主張番号】P 2019093150
(32)【優先日】2019-05-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】393030626
【氏名又は名称】株式会社新日本科学
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】治田 俊志
(72)【発明者】
【氏名】園田 陽
(57)【要約】
【課題】薬効を効率的に発揮する経鼻投与用の粉末製剤等の提供を課題とする。
【解決手段】前記課題は、有効成分と水不溶性多糖類とが互いに付着した複合粒子を含む経鼻投与用の粉末製剤により解決することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効成分と水不溶性多糖類とが互いに付着した複合粒子を含む経鼻投与用の粉末製剤。
【請求項2】
前記複合粒子の平均1次粒子径が20~350μmである、請求項1に記載の粉末製剤。
【請求項3】
前記複合粒子の比表面積が0.20~2.3m2/gである、請求項1又は2に記載の粉末製剤。
【請求項4】
前記複合粒子のHausner比が1.8以下である、請求項1~3のいずれかに記載の粉末製剤。
【請求項5】
前記水不溶性多糖類が結晶セルロースを含む、請求項1~4のいずれかに記載の粉末製剤。
【請求項6】
前記複合粒子が結合剤を更に含む、請求項1~5のいずれかに記載の粉末製剤。
【請求項7】
前記複合粒子が吸収促進剤を更に含む、請求項1~6のいずれかに記載の粉末製剤。
【請求項8】
前記吸収促進剤が、ヒドロキシプロピルβシクロデキストリン、ラウリル硫酸ナトリウム又はn-ドデシル-β-D-マルトシドである、請求項7に記載の粉末製剤。
【請求項9】
有効成分と水不溶性多糖類とを含む混合物を撹拌造粒して、前記有効成分と前記水不溶性多糖類とが互いに付着した複合粒子を形成する工程を含む、
経鼻投与用の粉末製剤の製造方法。
【請求項10】
有効成分と水不溶性多糖類とを含む混合物を流動層造粒して、前記有効成分と前記水不溶性多糖類とが互いに付着した複合粒子を形成する工程を含む、
経鼻投与用の粉末製剤の製造方法。
【請求項11】
有効成分と水不溶性多糖類とを含む混合物を凍結乾燥して、前記有効成分と前記水不溶性多糖類とが互いに付着した複合粒子を形成する工程を含む、
経鼻投与用の粉末製剤の製造方法。
【請求項12】
前記水不溶性多糖類が結晶セルロースを含む、請求項9~11のいずれかに記載の製造方法。
【請求項13】
前記混合物が結合剤を更に含む、請求項9~12のいずれかに記載の製造方法。
【請求項14】
前記混合物が吸収促進剤を更に含む、請求項9~13のいずれかに記載の製造方法。
【請求項15】
前記吸収促進剤が、ヒドロキシプロピルβシクロデキストリン、ラウリル硫酸ナトリウム又はn-ドデシル-β-D-マルトシドである、請求項14に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経鼻投与用の粉末製剤及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、経鼻投与は、主に鼻炎治療等の局所治療を目的とするものであった。しかしながら、最近では、全身疾患、中枢神経系疾患や感染症等を予防又は治療するために経鼻投与を利用する試みがなされており、様々な経鼻投与用製剤が報告されている。例えば特許文献1は、「非ペプチド・タンパク性薬物とそれらの担体としての結晶セルロース集合体とを含んでなる粉末状経鼻投与用組成物」を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1は、粉末状経鼻投与用組成物の製造方法として、薬物と結晶セルロースとを乳鉢で混合する方法を開示している。しかしながら、この製造方法では、得られた組成物を投与デバイスから噴射する際に、薬物と結晶セルロースとが分離してしまい、結晶セルロースの有する粘膜付着性効果を十分に利用することができない可能性があり、その結果として、期待する薬効が発揮されないという問題がある。
【0005】
本発明は、薬効を効率的に発揮する経鼻投与用の粉末製剤及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、有効成分と水不溶性多糖類とを含む混合物を、撹拌造粒、流動層造粒、又は凍結乾燥することによって、薬効を効率的に発揮する複合粒子が得られることを見出した。
【0007】
本発明は以下の実施形態を含む。
[1]
有効成分と水不溶性多糖類とが互いに付着した複合粒子を含む経鼻投与用の粉末製剤。
[2]
前記複合粒子の平均1次粒子径が20~350μmである、[1]に記載の粉末製剤。
[3]
前記複合粒子の比表面積が0.20~2.3m2/gである、[1]又は[2]に記載の粉末製剤。
[4]
前記複合粒子のHausner比が1.8以下である、[1]~[3]のいずれかに記載の粉末製剤。
[5]
前記水不溶性多糖類が結晶セルロースを含む、[1]~[4]のいずれかに記載の粉末製剤。
[6]
前記複合粒子が結合剤を更に含む、[1]~[5]のいずれかに記載の粉末製剤。
[7]
前記複合粒子が吸収促進剤を更に含む、[1]~[6]のいずれかに記載の粉末製剤。
[8]
前記吸収促進剤が、ヒドロキシプロピルβシクロデキストリン、ラウリル硫酸ナトリウム又はn-ドデシル-β-D-マルトシドである、[7]に記載の粉末製剤。
[9]
有効成分と水不溶性多糖類とを含む混合物を撹拌造粒して、前記有効成分と前記水不溶性多糖類とが互いに付着した複合粒子を形成する工程を含む、
経鼻投与用の粉末製剤の製造方法。
[10]
有効成分と水不溶性多糖類とを含む混合物を流動層造粒して、前記有効成分と前記水不溶性多糖類とが互いに付着した複合粒子を形成する工程を含む、
経鼻投与用の粉末製剤の製造方法。
[11]
有効成分と水不溶性多糖類とを含む混合物を凍結乾燥して、前記有効成分と前記水不溶性多糖類とが互いに付着した複合粒子を形成する工程を含む、
経鼻投与用の粉末製剤の製造方法。
[12]
前記水不溶性多糖類が結晶セルロースを含む、[9]~[11]のいずれかに記載の製造方法。
[13]
前記混合物が結合剤を更に含む、[9]~[12]のいずれかに記載の製造方法。
[14]
前記混合物が吸収促進剤を更に含む、[9]~[13]のいずれかに記載の製造方法。
[15]
前記吸収促進剤が、ヒドロキシプロピルβシクロデキストリン、ラウリル硫酸ナトリウム又はn-ドデシル-β-D-マルトシドである、[14]に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、薬効を効率的に発揮する経鼻投与用の粉末製剤及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施例7の試験製剤の電子顕微鏡写真を示す。
【
図2】実施例10の試験製剤の電子顕微鏡写真を示す。
【
図3】実施例15の試験製剤の電子顕微鏡写真を示す。
【
図4】実施例16の試験製剤の電子顕微鏡写真を示す。
【
図5】比較例1の試験製剤の電子顕微鏡写真を示す。
【
図6】比較例2の試験製剤の電子顕微鏡写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<粉末製剤>
本発明の一実施形態は、有効成分と水不溶性多糖類とが互いに付着した複合粒子を含む経鼻投与用の粉末製剤に関する。
【0011】
本明細書における「複合粒子」とは、有効成分と水不溶性多糖類とが互いに付着して形成された粒子(凝集体)である。そのため、本明細書における「複合粒子」は、例えば特許文献1で開示されているような薬物と結晶セルロースとの単なる混合物とは明確に区別される。
【0012】
本実施形態では、有効成分と水不溶性多糖類とが複合粒子を形成しているため、粉末製剤が鼻腔内に投与されると、有効成分と水不溶性多糖類とが一体となって鼻粘膜に付着する。水不溶性多糖類は粘膜付着効果を有するため、当該効果によって有効成分が鼻粘膜に付着し、有効成分による薬効が効率的に発揮される。
【0013】
有効成分と水不溶性多糖類とを単に混合しただけであると、有効成分が均一に混合されず、粉末製剤間における有効成分の量にバラつきが生じる可能性がある。一方、本実施形態では、有効成分と水不溶性多糖類とが複合粒子を形成しているため、そのようなバラつきを抑えることができる。
【0014】
本実施形態では、有効成分と水不溶性多糖類とが複合粒子を形成しているため、粉末製剤の流動性が向上する。これにより、粉末製剤を容器に均一かつ容易に充填でき、また、投与デバイスからの粉末製剤の噴射率が向上する。
【0015】
粒子径の小さい粒子を含む粉末製剤を鼻腔内に投与すると、鼻腔を通り過ぎて、肺に到達してしまう可能性がある。一方、本実施形態では、有効成分と水不溶性多糖類とが複合粒子を形成して粒子径が大きくなっているため、鼻腔の通過を抑えることができる。
【0016】
本実施形態の複合粒子は、複合粒子の構成成分が互いに付着して形成されているため、各構成成分よりも大きい粒子径を有する。
【0017】
本実施形態の複合粒子の平均1次粒子径の下限としては、例えば、20μm、25μm、30μm、35μm、40μm等を挙げることができ、上限としては、例えば、350μm、300μm、250μm、200μm、150μm、100μm等を挙げることができる。前記下限及び前記上限を適宜組み合わせて、特定の範囲を画定することができる。例えば、20~350μm、25~300μm、30~250μm、35~200μm、40~150μmの範囲とすることができる。平均1次粒子径は、以下の実施例に記載の方法に従って測定する。
なお、平均1次粒子径は、2barの分散圧下で測定するため、複合粒子の構成成分が互いに付着していないと、分散圧によって複合粒子が各構成成分に分解する。例えば特許文献1で開示されているような薬物と結晶セルロースとの単なる混合物の場合には、一部の構成成分が集まって大きな粒子を形成していたとしても、平均1次粒子径の測定条件下では、当該粒子は分解するため、本実施形態の複合粒子の平均1次粒子径と大きく相違する。
【0018】
本実施形態の複合粒子の比表面積の下限としては、例えば、0.10m2/g、0.15m2/g、0.20m2/g、0.25m2/g、0.30m2/g等を挙げることができ、上限としては、例えば、2.3m2/g、2.0m2/g、1.8m2/g、1.6m2/g、1.4m2/g等を挙げることができる。前記下限及び前記上限を適宜組み合わせて、特定の範囲を画定することができる。例えば、0.10~2.3m2/g、0.15~2.0m2/g、0.20~1.8m2/g、0.25~1.6m2/g、0.30~1.4m2/gの範囲とすることができる。比表面積は、以下の実施例に記載の方法に従って測定する。
【0019】
本実施形態の複合粒子のHausner比の上限としては、例えば、1.8、1.7、1.6、1.5、1.4、1.3、1.2等を挙げることができ、下限は特に限定されない。Hausner比は、以下の実施例に記載の方法に従って測定する。
【0020】
第十七改正日本薬局法は、Hausner比と流動性との関係について、以下のとおり記載している。
Hausner比:流動性の程度
1.00~1.11:極めて良好
1.12~1.18:良好
1.19~1.25:やや良好
1.26~1.34:普通
1.35~1.45:やや不良
1.46~1.59:不良
>1.60:極めて不良
【0021】
本実施形態の粉末製剤が診断、予防又は治療すべき疾患としては、例えば、脳出血、脳梗塞、中枢神経系の感染症、脳腫瘍、パーキンソン病、てんかん、筋萎縮性側索硬化症、アルツハイマー病、レビー小体型認知症、進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症、ピック病、前頭側頭型認知症、多発性硬化症、統合失調症、うつ病、双極性障害、気分変調障害、適応障害、社会不安障害、パニック障害、強迫性障害、自閉症スペクトラム障害、注意欠如・多動性障害、睡眠障害、不眠症、外傷性脳損傷、疼痛、偏頭痛、頭痛、解熱、炎症、リウマチ、てんかん、脳循環代謝症、筋弛緩症、自律神経症、めまい、高血圧症、狭心症、不整脈、アレルギー、気管支拡張・喘息、その他呼吸器疾患(鎮咳、去痰等)、消化性潰瘍、その他消化器疾患(止痢、整腸、健胃、消化促進、瀉下等)、痛風・高尿酸血症、脂質異常症、糖尿病、ホルモン関連疾患(下垂体ホルモン、副腎皮質ホルモン、性ホルモン、その他のホルモン等に関連する疾患)、子宮関連疾患、骨粗鬆症・骨代謝疾患、ビタミン欠損、栄養不足、中毒(解毒含む)、癌、免疫過剰、耳鼻咽喉科関連疾患、口腔関連疾患、泌尿・生殖器疾患、痔、皮膚疾患、造血・血液凝固関係疾患、麻薬依存症、麻酔、生活習慣病等を挙げることができる。
【0022】
本実施形態の有効成分は、1種を単独で使用してもよいし、複数種の有効成分を組み合わせて使用してもよい。有効成分としては、例えば、低分子化合物、中分子薬(例えばペプチド薬)、蛋白質医薬(例えば抗体医薬)、核酸医薬、細胞医薬、再生医療、ワクチン抗原(例えばペプチド抗原)等を挙げることができる。
【0023】
より具体的な有効成分としては、例えば、組織プラスミノーゲンアクチベーター、エダラボン、オザグレルナトリウム、選択的トロンビン阻害剤、ビダラビン、アシクロビル、ガンシクロビル、バルガンシクロビル、ジドブジン、ジダノシン、ザルシタビン、ネビラピン、デラビルジン、サキナビル、リトナビル、インジナビル、ネルフィナビル、バンコマイシン、セフタジジム、アンピシリン、パニペネム・ベタミプロン、デキサメサゾン、シスプラチン、カルボプラチン、ビンクリスチン、シクロホスファミド、イホスファミド、テモゾロミド、エトポシド、L-ドーパ、カルビドーパ、ベンセラジド、エンタカポン、アドレナリン、アンフェタミン、アポモルヒネ、アマンタジン、カベルゴリン、ゾニサミド、ドロキシドパ、ピペリデン、フェノバルビタール、フェニトイン、プリミドン、エトスクシミド、ゾニサミド、クロナゼパム、ミダゾラム、レミマゾラム、フルマゼニル、バルプロ酸ナトリウム、カルバマゼピン、ガバペンチン、トピラマート、カンナビド、ドネペジル、リバスチグミン、ガランタミン、メマンチン、フマル酸ジメチル、ナタリズマブ、ハロペリドール、スピペロン、フルフェナジン、クロルプロマジン、リスペリドン、ブロナンセリン、クエチアピン、オランザピン、アリピプラゾール、ブレクスピプラゾール、トリアゾラム、ゾピクロン、ゾルピデム、エチゾラム、ロルメタゼパム、ブロムワレリル尿素、抱水クロラール、ペントバルビタール、リルマザホン、オキシトシン、バソプレシン、デスモプレシン、グラニセトロン、オンダンセトロン、トロピセトロン、パロノセトロン、インジセトロン、トリアゾラム、メラトニン、レベチラセタム、カンナビノイド、クロナゼパム、ジアゼパム、ニトラゼパム、ゾルビデム、ドネペジル、メマンチン、チアプリド、セファクロル、エノキサシン、アシクロビル、ジドブジン、ジダノシン、ネビラビン、インジナビル、ダントロレン、ジゴキシン、トリヘキシフェニジル、ピペリデン、デキストロメトルファン、ナロキソン、ベタヒスチン、ナファゾリン、ジルチアゼム、トラニラスト、ロペラミド、ベクロメタゾン、クロルフェニラミン、シルデナフィル、タダラフィル、バルデナフィル、シアノコバラミン、フィナステリド、エピネフリン、オキシブチニン、プロピベリン、ソリフェナシン、トルテロジン、イミダフェナシン、フェソテロジン、ミラベグロン、タムスロシン、シロドシン、5-FU、テラプレビル、リバビリン、シメプレビル、グアンファシン、メティルフェニデート、アトモキセチン、プロゲステロン、スマトリプタン、ゾルミトリプタン、ジヒドロエルゴタミン、リザトリプタン、カモスタット、ファモスタット、エレヌマブ、ガルカネズマブ、フレマネズマブ、ホミビルセン、ミポマーセン、ヌシネルセン、シクロスポリン、タクロリムス、フルオロデオキシグルコース、フルオロチミジン、イオパミドール、タリウム、マンガン、テクネシウム、インスリン、成長ホルモン、成長ホルモン放出ペプチド、グレリン、グルカゴン、カルシトニン、インターフェロン、エリスロポエチン、インターロイキン、PTH(1-84)、PTH(1-34)、PTH関連ペプチド、GLP-1、バソプレシン、リュープロレリン、顆粒球コロニー形成刺激因子、プロラクチン、下垂体性性腺刺激ホルモン、胎盤性性腺刺激Snbl2600ホルモン、卵胞刺激ホルモン、黄体化ホルモン、レプチン、神経成長因子(NGF)、幹細胞増殖因子(SCGF)、角質細胞増殖因子(KGF)、低分子ヘパリン、タクロリムス、アレルゲンエキス粉末、ヒト抗体(例えば、アダリムマブ、パニツムマブ、ゴリムマブ、カナキヌマブ、オファツムマブ、デノスマブ、イピリムマブ、ベリムマブ、ラキシバクマブ、ラムシルマブ、ニボルマブ、セクキヌマブ、エボロクマブ、アリロクマブ、ネシツムマブ、ニボルマブ、ペンブロリズマブ等)、キメラ抗体(例えば、アブシキシマブ)、ヒト化抗体(例えば、ベバシズマブ)、マウス抗体(例えば、ブリナツモマブ)等を挙げることができる。
【0024】
より具体的な有効成分としては、例えば、以下のウイルス又は病原体に対するワクチン抗原を挙げることができる。
アデノウイルス、AIDSウイルス、バキュロウイルス、HCMV(ヒトサイトメガロウイルス)、出血熱ウイルス、肝炎ウイルス、ヘルペスBウイルス、免疫不全ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、ヒトT細胞白血病ウイルス、新生児胃腸炎ウイルス、感染性造血壊死ウイルス、感染性膵臓壊死ウイルス、インフルエンザウイルス、日本脳炎ウイルス、白血病ウイルス、ムンプスウイルス、オルトミクソウイルス、肺炎ウイルス、ポリオウイルス、ポリドナウイルス、ロタウイルス、SARSウイルス、ワクシニアウイルス、RSウイルス、赤痢菌種、腸チフス菌、結核菌、破傷風菌、ジフテリア菌、髄膜炎菌、百日咳菌、肺炎連鎖球菌、炭疽菌、ボツリヌス菌、クロストリジウム・ディフィシル、ウェルシュ菌、エンテロコッカス・フェカーリス、エンテロコッカス・ファシウム、インフルエンザ菌、ヘリコバクター・ピロリ菌、らい菌、淋菌、髄膜炎菌、腸チフス菌、黄色ブドウ球菌、梅毒トレポネーマ、コレラ菌、熱帯熱マラリア原虫。
【0025】
本明細書における「水不溶性多糖類」とは、1000mlの水(20℃)に0.001g以下溶解する多糖類を意味する。水不溶性多糖類は、1種を単独で使用してもよいし、複数種の水不溶性多糖類を組み合わせて使用してもよい。
【0026】
水不溶性多糖類としては、例えば、セルロース、ヘミセルロース、キトサン、キチン等を挙げることができ、好ましくはセルロース又はヘミセルロースであり、より好ましくはセルロースであり、特に好ましくは結晶セルロースである。結晶セルロースを使用することによって、粉末製剤の流動性を更に向上させることができる。市販の結晶セルロースとしては、例えば、CEOLUS(登録商標)のPHグレード、AVICEL(登録商標)のPHグレード等を挙げることができ、より具体的には、CEOLUS(登録商標)PH-F20JP、AVICEL(登録商標)PH-105、CEOLUS(登録商標)PH-UF702等を挙げることができる。
【0027】
本実施形態の複合粒子は結合剤を更に含んでいてもよい。複合粒子が結合剤を含むことによって、有効成分と水不溶性多糖類との付着強度を高めたり、複合粒子の1次粒子径や崩壊性を調整することができる。結合剤は、1種を単独で使用してもよいし、複数種の結合剤を組み合わせて使用してもよい。
【0028】
結合剤としては、例えば、精製水、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アルファー化デンプン、部分アルファー化デンプン、これらの塩等を挙げることができ、好ましくはヒドロキシプロピルメチルセルロース又はアルファー化デンプンである。
【0029】
本実施形態の複合粒子は添加剤を更に含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、吸収促進剤、溶解補助・可溶化剤、安定化剤、流動化剤、崩壊剤、マスキング剤、矯味剤、保存剤、免疫賦活剤等を挙げることができる。
【0030】
吸収促進剤としては、例えば、界面活性剤、キレート剤、シクロデキストリン、膜透過ペプチド等を挙げることができる。界面活性剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、カプリン酸ナトリウム等の陰イオン性界面活性剤、n-ドデシル-β-D-マルトシド、テトラドデシル-β-D-マルトシド等の非イオン性界面活性剤、ジパルミトイルホスファチジルコリン、タウロコール酸ナトリウム等の両イオン性界面活性剤を挙げることができる。キレート剤としては、EDTA,クエン酸塩、ピロリン酸塩等を挙げることができる。シクロデキストリンとしては、β-シクロデキストリン、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、メチル-β-シクロデキストリン等を挙げることができる。膜透過ペプチドとしては、penetratin、HIV-1 Tat、HIV-1 Rev、arginine octamer、arginine dodecamer、pVEC、Ems、RRL helix、PRL4等を挙げることができる。
【0031】
溶解補助・可溶化剤としては、例えば、シクロデキストリン、カプリン酸、レシチン、ジパルミトイルグリセロホスファチジルコリン、ドデシルマルトシド、ドデシルホスホコリン、ポリエチレングリコール等を挙げることができる。
【0032】
安定化剤としては、例えば、二糖類(例えば、スクロース、ラクツロース、ラクトース、マルトース、トレハロース、セロビオース、キシロビオース、マルツロース、ガラクトスクロース、それら誘導体)、ビタミン類(例えば、アスコルビン酸、トコフェロール)、アミノ酸類(例えば、グリシン)、クエン酸塩、ピロリン酸塩等を挙げることができる。
【0033】
流動化剤としては、例えば、結晶セルロース、第三リン酸カルシウム等を挙げることができる。
【0034】
崩壊剤としては、例えば、セルロース、デンプン、クロスポビドン等を挙げることができる。
【0035】
マスキング剤としては、例えば、マンニトール等を挙げることができる。
【0036】
矯味剤としては、例えば、アスパラテーム、メントール等を挙げることができる。
【0037】
保存剤としては、例えば、チメローサル等を挙げることができる。
【0038】
免疫賦活剤としては、例えば、シクロデキストリン、アルミニウム塩、CpGオリゴヌクレオチド等を挙げることができる。
【0039】
<粉末製剤の製造>
本発明の一実施形態は、有効成分と水不溶性多糖類とを含む混合物を撹拌造粒、流動層造粒又は凍結乾燥して、前記有効成分と前記水不溶性多糖類とが互いに付着した複合粒子を形成する工程を含む、経鼻投与用の粉末製剤の製造方法に関する。以下、撹拌造粒による方法、流動層造粒による方法、及び凍結乾燥による方法を、それぞれ「撹拌造粒法」、「流動層造粒法」、及び「凍結乾燥法」と称する。複合粒子の構成成分については、前記<粉末製剤>の項目において説明したとおりである。
【0040】
撹拌造粒法における結合剤の添加液量としては、造粒槽内の粉末合計重量100gあたり、好ましくは5mL~150mL、より好ましくは15mL~100mL、更に好ましくは20mL~75mLである。このような結合剤の添加液量で撹拌造粒することにより、好ましい性質の複合粒子を得ることができる。
【0041】
流動層造粒法における結合剤のスプレー速度としては、造粒槽内の粉末合計重量50gあたり、好ましくは0.001g/min~0.4g/min、より好ましくは0.005g/min~0.3g/min、更に好ましくは0.01g/min~0.25g/minである。流動層造粒法における結合剤としての総添加量としては、造粒槽内の粉末合計重量50gあたり、好ましくは0.01g~4.0g、より好ましくは0.05g~3.0g、更に好ましくは0.1g~2.5gである。このような条件で流動層造粒することにより、好ましい性質の複合粒子を得ることができる。
【0042】
凍結乾燥法における凍結温度は、好ましくは-100℃~-10℃、より好ましくは-80℃~-15℃、更に好ましくは-60℃~-20℃である。このような温度で凍結させることにより、好ましい性質の複合粒子を得ることができる。
【実施例0043】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれに限定されるものではない。
【0044】
<材料>
(有効成分)
・レボドパ(Cayman Chemical Company)
・インドメタシン(和光純薬工業株式会社)
・テストステロン(和光純薬工業株式会社)
・ゾルミトリプタン(東京化成工業株式会社)
・イブプロフェン(和光純薬工業株式会社)
【0045】
(水不溶性多糖類)
・結晶セルロース(Ceolus(登録商標)PH-F20JP、旭化成ケミカルズ株式会社)
【0046】
(結合剤)
・ヒドロキシプロピルセルロース(HPC―H、日本曹達株式会社)
・ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC TC-5E、信越化学工業株式会社)
・アルファー化デンプン(旭化成ケミカルズ株式会社)
【0047】
(添加剤)
・ヒドロキシプロピルβシクロデキストリン(和光純薬工業株式会社)
・アスコルビン酸(和光純薬工業株式会社)
・トレハロース(株式会社林原)
・結晶セルロース(Ceolus(登録商標)PH-301、旭化成ケミカルズ株式会社)
・第三リン酸カルシウム(ICL Performance Products LP)
・ラウリル硫酸ナトリウム(和光純薬工業株式会社)
・n-ドデシル-β-D-マルトシド(和光純薬工業株式会社)
【0048】
<製造方法>
(攪拌造粒法)
攪拌造粒機(ハイスピードミキサー FS-GS-5、深江パウテック株式会社)の造粒槽内に、有効成分、水不溶性多糖類、及び添加剤を投入し、アジテータ回転速度400rpm及びチョッパー回転速度1500rpmの攪拌条件で造粒槽内の紛体を攪拌混合した。その後、結合剤を造粒槽内に滴下しながら、6~8分間程度、同攪拌条件下で攪拌混合した。造粒槽から取り出した混合物を、棚式乾燥機内(NO607C、岩黒製作所)で、50℃で2時間以上乾燥した。得られた乾燥混合物を32μm及び180μmの篩(JIS Z 8801、飯田製作所)にかけ、32μmの篩上に残った乾燥混合物を試験製剤とした。
【0049】
(流動層造粒法)
流動層造粒機(FL-LABO、フロイント産業株式会社)のチャンバー内に、有効成分、水不溶性多糖類、及び添加剤を投入し、70℃の空気でチャンバー内の紛体を流動混合した。その後、精製水に溶かした結合剤を3.6g(結合溶液の量として)/minのスプレー速度で10分間チャンバー内に噴霧しながら、流動混合を行った。チャンバーから取り出した乾燥混合物を32μm及び180μmの篩(JIS Z 8801、飯田製作所)にかけ、32μmの篩上に残った乾燥混合物を試験製剤とした。
【0050】
(凍結乾燥法)
事前に超純水を200mLアルミトレイに入れ、-20℃でアルミトレイ内底部を凍結後、有効成分、水不溶性多糖類、結合剤、及び添加剤をリン酸バッファーと混和し、アルミトレイに入れ、-20℃で2時間の事前凍結を行い、棚式凍結乾燥機内(FreeZone Triad Freeze Dry System、Labconco Corp.)に置き、次の条件下で凍結乾燥品を得た。凍結乾燥条件としては、105mTorrの減圧下において、-25℃で30時間の一次乾燥をし、更に30℃で37時間の二次乾燥を行った。調製した凍結乾燥品をガラス乳鉢で粉砕したものを試験製剤とした。
【0051】
(乳鉢混合法)
ガラス乳鉢に結晶セルロースを添加し目潰しを行い、余分な結晶セルロースを取り除いた。このガラス乳鉢に、有効成分、水不溶性多糖類、及び添加剤を投入し、ガラス乳棒を用いて10分間混合したものを試験製剤とした。
【0052】
各実施例及び比較例の詳細を表1に示す。
【表1-1】
【表1-2】
【0053】
<電子顕微鏡による観察>
試験製剤を、電子顕微鏡(Miniscope TM3000、株式会社日立ハイテクノロジーズ)にセットし、真空ポンプを用いて減圧後観察した。
図1~6に実施例7、10、15及び16並びに比較例1及び2の試験製剤の電子顕微鏡写真をそれぞれ示す。実施例の試験製剤では、比較例の試験製剤と異なり、各種成分が凝集して複合粒子を形成している状態が観察された。
【0054】
<平均1次粒子径の測定>
試験製剤の平均一次粒子径を、レーザー回析法に基づく粒度分布測定装置(Mastersizer 2000, Malvern社)に、乾式自動分散ユニット(Scirocco 2000, Malvern社)を接続し、2barの分散圧下で測定した。体積換算法による粒度分布解析に基づき算出された平均1次粒子径の結果を表2に示す。実施例の試験製剤の平均1次粒子径は、比較例の試験製剤よりも優位に大きく、これは、各種成分が複合粒子を形成していることを示している。
【0055】
<平均含量及び含量均一性>
(レボドパ含有試験製剤)
逆相クロマトグラフィにより測定した。具体的には、pH2.8 アセトニトリル/0.05%トリフルオロ酢酸(5/95)を移動相とし、試験製剤を適切な濃度となるように移動相で希釈し、0.45μmのシリンジフィルターでろ過したろ液を、高速液体クロマトグラフィ(LC-2010又はLC-2030C 3D plus、株式会社島津製作所)で測定し、試験製剤中のレボドパ含量を算出した。この操作を1試験製剤につき3回行い、測定に用いた試験製剤量に含まる理論レボドパ含量に対する実測のレボドパ含量の平均値及び相対標準偏差を算出し、それぞれを含量(%)及び含量均一性(%)とした。
【0056】
(インドメタシン含有試験製剤)
逆相クロマトグラフィにより測定した。具体的には、メタノール/0.1%リン酸(28/12)を移動相とし、試験製剤を適切な濃度となるように移動相で希釈し、0.45μmのシリンジフィルターでろ過したろ液を、高速液体クロマトグラフィ(LC-2030C 3D plus、株式会社島津製作所)で測定し、試験製剤中のインドメタシン含量を算出した。この操作を1試験製剤につき3回行い、測定に用いた試験製剤量に含まる理論インドメタシン含量に対する実測のインドメタシン含量の平均値及び相対標準偏差を算出し、それぞれを含量(%)及び含量均一性(%)とした。
【0057】
結果を表2に示す。この結果は、実施例の複合粒子に各種成分が均一に含まれていることを示している。
【表2】
【0058】
<比表面積の測定>
試験製剤を、吸引減圧下、100℃で1時間乾燥した後、窒素ガスを用いたガス吸着法に基づく比表面積測定器(Autosorb-iQ-MP, カンタクローム)を用いたBET法で比表面積を測定した。結果を表3に示す。実施例の試験製剤の比表面積は、比較例の試験製剤よりも顕著に小さく、これは、各種成分が複合粒子を形成していることを示している。
【表3】
【0059】
<Hausner比の測定>
日本薬局方一般試験法の紛体物性測定法に基づき、既知質量の試験製剤を、メスシリンダー内に入れた時の体積を測定し、質量を体積で除して、かさ密度を算出した。
日本薬局方一般試験法の紛体物性測定法に基づき、既知質量の試験製剤を、メスシリンダー内に入れた後、メスシリンダーをタップし、試験製剤の体積変化が認められなくなる体積を測定し、質量を体積で除して、タップ密度を算出した。
かさ密度をタップ密度で除して、Hausner比を算出した。結果を表4に示す。実施例の試験製剤のHausner比は、比較例の試験製剤よりも顕著に小さく、これは、実施例の試験製剤の流動性が優れていることを示している。
【表4】
【0060】
<噴射率の測定>
20mgの試験製剤をカプセル(HPMCカプセル、Size2、Qualicaps)に充填し、パブライザー(フォルテグロウメディカル株式会社)にセット後、パブライザーの重量を測定した。パブライザーのポンプを1回のみ押して、試験製剤を噴射した後、パブライザーの重量を再度測定し、噴射前後の重量差を噴射量とした。充填した試験製剤の重量を100%とした場合の噴射量(噴射率)を算出した。結果を表5に示す。実施例の試験製剤が、比較例の試験製剤よりも顕著に高い割合で噴射されたことが示されている。
【表5】