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  • 特開-弾性表面波デバイス 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111233
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】弾性表面波デバイス
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/145 20060101AFI20240808BHJP
   H03H 9/25 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
H03H9/145 C
H03H9/25 C
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024100145
(22)【出願日】2024-06-21
(62)【分割の表示】P 2019145249の分割
【原出願日】2019-08-07
(71)【出願人】
【識別番号】515217498
【氏名又は名称】株式会社Piezo Studio
(71)【出願人】
【識別番号】304023994
【氏名又は名称】国立大学法人山梨大学
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】垣尾 省司
(72)【発明者】
【氏名】木村 悟利
(57)【要約】
【課題】La等の希少元素を含まずに原料の安定供給に有利な、ラブ波型SH波を用いた弾性表面波デバイスを提供する。
【解決手段】Ca3Ta(Ga1-xAlx3Si214の単結晶からなる圧電基板101と、圧電基板101の表面に形成され、圧電基板101の表面にラブ波型SH波を発生させる、金属から構成された交差指状電極102とを備える。交差指状電極102は、規格化膜厚が0.04×(Auの密度÷金属の密度)以下とされている。なお、規格化膜厚は、ラブ波型SH波の波長λで、交差指状電極の膜厚hを除したものである。交差指状電極102を、例えば、Auから構成した場合、規格化膜厚は、0.04以下とすることができる。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Ca3Ta(Ga1-xAlx3Si214の単結晶からなる圧電基板と、
前記圧電基板の表面に形成され、前記圧電基板の表面にラブ波型SH波を発生させる、Auから構成された交差指状電極と
を備え、
前記ラブ波型SH波の波長λで、前記交差指状電極の膜厚hを除した規格化膜厚は、0.04以下である
ことを特徴とする弾性表面波デバイス。
【請求項2】
請求項1記載の弾性表面波デバイスにおいて、
前記圧電基板の前記単結晶からの切り出し角および弾性表面波伝搬方向をオイラー角表示で(φ,θ,ψ)と表したとき、φ=-5°~5°であり、ψ=85°~95°であることを特徴とする弾性表面波デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面波を用いた弾性表面波デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
表面波を利用した弾性表面波デバイスは、小型,高信頼,高速,かつ低消費電力の装置として、携帯電話などの通信機器のフィルタ,信号源などへの利用が開発されている。表面波の中に、ラブ波型SH波がある。ラブ波型SH波は,圧電基板上の特定の伝搬方向にのみ存在し,圧電基板上に金属膜や誘電体膜を形成することで、横波成分のみをもつバルク波のエネルギーを基板表面付近に集中させた表面波として古くより知られている。
【0003】
上述したラブ波型SH波を用いる弾性表面波デバイスとして、圧電基板をランガサイト結晶から構成する技術が提案されている(特許文献1参照)。この技術では、特定のカット角としたランガサイト結晶基板を用いることで、遅延時間温度係数が零またはその近傍であるという温度特性をもつ弾性表面波素子を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4399587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した技術では、結晶均一性の高い高品質なランガサイト結晶を得ることが容易ではなく、また、希土類元素を用いているために材料費が高く、コストがかかるという問題があった。
【0006】
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、La等の希少元素を含まずに原料の安定供給に有利な、ラブ波型SH波を用いた弾性表面波デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る弾性表面波デバイスは、Ca3Ta(Ga1-xAlx3Si214の単結晶からなる圧電基板と、圧電基板の表面に形成され、圧電基板の表面にラブ波型SH波を発生させる、金属から構成された交差指状電極とを備え、ラブ波型SH波の波長λで、交差指状電極の膜厚hを除した規格化膜厚は、0.04×(Auの密度÷金属の密度)以下である。
【0008】
上記弾性表面波デバイスの一構成例において、圧電基板の単結晶からの切り出し角および弾性表面波伝搬方向をオイラー角表示で(φ,θ,ψ)と表したとき、φ=-5°~5°であり、ψ=85°~95°である。
【0009】
上記弾性表面波デバイスにおいて、金属は、Auである。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように、本発明によれば、Ca3Ta(Ga1-xAlx3Si214の単結晶からなる圧電基板の上に、交差指状電極を設け、この交差指状電極の規格化膜厚を、0.04×(Auの密度÷金属の密度)以下としたので、La等の希少元素を含まずに原料の安定供給に有利な、ラブ波型SH波を用いた弾性表面波デバイスが提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の実施の形態に係る弾性表面波デバイスの構成を示す斜視図である。
図2図2は、圧電基板101のカット角と遅延時間温度係数(TCD)との関係を調査した結果を示す特性図である。
図3図3は、カット角を説明するための説明図である。
図4図4は、圧電基板101のカット角と、電気機械結合係数K2との関係を調査した結果を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態に係る弾性表面波デバイスについて図1を参照して説明する。この弾性表面波デバイスは、Ca3Ta(Ga1-xAlx3Si214の単結晶からなる圧電基板101と、圧電基板101の表面に形成され、圧電基板101の表面にラブ波型SH波を発生させる、金属から構成された交差指状電極102とを備える。金属は、例えば、Au、Pt、Ag、W、Taなどから構成することができる。また、この例では、圧電基板101の表面に、反射器となる電極103,電極104を備える。反射器となる電極103,電極104は、表面波の伝搬方向において、交差指状電極102を挾んで配置されている。このように反射器を備えることで、弾性表面波デバイスを、共振器として用いることができる。
【0013】
交差指状電極102は、規格化膜厚が0.04×(Auの密度÷金属の密度)以下とされている。なお、規格化膜厚は、ラブ波型SH波の波長λで、交差指状電極の膜厚hを除したものである。交差指状電極102を、例えば、Auから構成した場合、規格化膜厚は、0.04以下とすることができる。ラブ波型SH波の電気機械結合係数の増加は、圧電基板101の上への質量負荷によって決定されるため、Au以外の金属から交差指状電極102を構成しても、同じ質量とすれば、Auの場合と同様の効果が得られる。
【0014】
ここで、圧電基板101の、Ca3Ta(Ga1-xAlx3Si214単結晶からの切り出し角、および弾性表面波伝搬方向をオイラー角表示で(φ,θ,ψ)と表したとき、製造誤差などを考慮すると、φ=-5°~5°とし、ψ=85°~95°とすることができる。
【0015】
以下、交差指状電極102の規格化膜厚について調査結果を示す。交差指状電極102をAuから構成し、規格化膜厚h/λを、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05としたサンプルを作製し、各々について、圧電基板101のカット角と遅延時間温度係数(TCD)との関係を調査した結果を図2に示す。図2に示すように、規格化膜厚h/λが0.5では、TCDが0となるカット角が得られない。従って、TCDが0となる弾性表面波デバイスを得るためには、交差指状電極102の規格化膜厚は、0.04×(Auの密度÷金属の密度)とすることが条件となることがわかる。TCDが0となる弾性表面波デバイスは、通信帯域と阻止域との間(ガードバンド)が狭い通信方式へのフィルタに好適である。
【0016】
なお、カット角θは、図3に示すように、基準となる結晶のZ面201に対する作製した圧電基板の表面202の角度θである。なお、カット角は、IEEE規格に準拠した表記方法である。
【0017】
次に、交差指状電極102をAuから構成し、規格化膜厚h/λを、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05としたサンプルを作製し、各々について、圧電基板101のカット角と、電気機械結合係数K2との関係を調査した結果を図4に示す。図4に示すように、規格化膜厚h/λが、0.03において、電気機械結合係数が、最大値(2.22%)を示した。例えば、ランガサイト(La3Ga5SiO14:LGS)を用いた場合の電気機械結合係数は、最大1.06%であり、実施の形態によれば、ランガサイトを用いる場合に比較して、より広い範囲の電気機械結合係数が得られる。また、電気機械結合係数が高い弾性表面波デバイスは、通過帯域のより広い通信方式のフィルタに好適である。
【0018】
以上に説明したように、本発明によれば、Ca3Ta(Ga1-xAlx3Si214の単結晶からなる圧電基板の上に、交差指状電極を設け、この交差指状電極の規格化膜厚を、0.04×(Auの密度÷金属の密度)以下としたので、La等の希少元素を含まずに原料の安定供給に有利な、ラブ波型SH波を用いた弾性表面波デバイスが提供できるようになる。
【0019】
なお、本発明は以上に説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で、当分野において通常の知識を有する者により、多くの変形および組み合わせが実施可能であることは明白である。
【符号の説明】
【0020】
101…圧電基板、102…交差指状電極、103…電極、104…電極。
図1
図2
図3
図4