(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111244
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】オープンセル発泡体を用いた血液サンプルの管理
(51)【国際特許分類】
G01N 1/00 20060101AFI20240808BHJP
G01N 1/28 20060101ALI20240808BHJP
G01N 1/38 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
G01N1/00 101F
G01N1/28 J
G01N1/38
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024100329
(22)【出願日】2024-06-21
(62)【分割の表示】P 2022209917の分割
【原出願日】2015-09-22
(31)【優先権主張番号】62/063,536
(32)【優先日】2014-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/207,618
(32)【優先日】2015-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】595117091
【氏名又は名称】ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ミラン イヴォセビッチ
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー ジェームズ ブレイク
(72)【発明者】
【氏名】ライアン ダブリュ.ムサード
(57)【要約】
【課題】サンプルを受容するように適合した、試料の混合および移送デバイスを開示すること。
【解決手段】本発明が提供するデバイスは、第1の端部と、第2の端部と、それらの間に延びる側壁を有するハウジング、前記ハウジング内に配置された乾燥抗凝固剤粉末、および、前記ハウジング内に配置された混合要素を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細孔を有する物質に抗凝固剤を加える方法において、
前記物質を、前記抗凝固剤と水の液体溶液の中に浸漬する工程と、
前記液体溶液の前記水を蒸発させる工程と、
乾燥抗凝固剤粉末を前記物質の前記細孔内に形成する工程と、
を含む、方法。
【請求項2】
前記物質はスポンジである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ハウジングであって、前記ハウジング内に配置され、細孔を含む前記物質を備える、ハウジングと、前記物質の前記細孔内の前記乾燥抗凝固剤粉末と、を含む、試料の混合および移送デバイスを提供する工程と、
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ハウジングは、第1の端部と、第2の端部と、前記第1の端部及び前記第2の端部の間に延びる側壁を、を含み、
前記第1の端部は、入口を含み、前記第2の端部は、出口を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ハウジングを、添加剤コーティングで処理する工程と、
をさらに含み、
前記添加剤コーティングが、前記ハウジングの表面に付着する検体を阻止する、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記添加剤コーティングが、
タンパク質、好ましくは、ウシ血清アルブミン(BSA)、カゼイン、または、無脂肪ミルク;
界面活性剤、好ましくは、ポリソルベート20(Tween(登録商標)20)、または有機シリコーン(L-720);
ポリマー及びコポリマー、好ましくは、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール(PVA)、または、ポリビニルピロリドン(PVP);
炭水化物、好ましくは、デストラン(destran)、及び、グリコサミノグリカン、好ましくは、ヘパリン:又は、
細胞膜模倣のポリマー、好ましくは、リピジュア(LIPIDURE(登録商標))、
の少なくとも1つを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
化学的表面改質で前記ハウジングを処理する工程と、をさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記化学的表面改質は、
ガスプラズマ処理;
好ましくは、ポリエチレングリコール(PEG)、または、エチレングリコールの化学結合;又は、
好ましくは、パリレンの蒸着、
の少なくとも1つを含む、請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
この出願は、「Blood Sample Management Using Open Cell Foam」と題する2014年10月14日出願の米国仮特許出願第62/063536号、および、「Blood Sample Management Using Open Cell Foam」と題する2015年8月20日出願の米国仮特許出願第62/207618号に基づく優先権を主張するものであり、それらの各々の全開示は、本明細書中に参照により組み込まれる。
【0002】
開示の分野
本発明は概して血液の移送デバイスに関する。より詳細には、本開示は、血液移送デバイス、血液の移送および検査システム、ランセットおよび血液移送デバイス、並びに、抗凝固剤を加える方法に関する。
【背景技術】
【0003】
採血は、少なくとも一滴の患者からの血液の離脱を伴う一般的な医療手順である。血液サンプルは、一般的に、入院、在宅医療、および救急治療室の患者から、フィンガースティック、ヒールスティック、または静脈穿刺のいずれかによって採取される。一旦収集されると、血液サンプルを、例えば、化学組成、血液学、および凝固を含む情報であって、医学的に有用な情報を得るために分析することができる。
【0004】
血液検査では、疾患、ミネラル含有量、薬剤の有効性、および臓器機能などの、患者の生理学的および生化学的状態を判定する。血液検査は、臨床検査室で、または、患者の近くのポイントオブケアで行うことができる。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、サンプルを受容するように適合した、試料の混合および移送デバイスを提供する。試料の混合および移送デバイスは、ハウジング、細孔を含む物質であって前記ハウジング内に配置されている物質、および、前記物質の前記細孔内の乾燥抗凝固剤粉末を含む。一実施形態において、前記物質はスポンジ材である。他の実施形態において、前記物質はオープンセル発泡体である。一実施形態において、オープンセル発泡体は、前記物質の前記細孔全体に微細に分布した乾燥抗凝固剤粉末を形成するように、抗凝固剤で処理される。血液サンプルを、前記試料の混合および移送デバイス内で受容してもよい。前記血液サンプルは、前記物質を通過する間に、前記抗凝固剤粉末に晒され、および、混合される。
【0006】
本開示の試料の混合および移送デバイスは、血液抗凝固剤との均一かつ受動的な混合を、貫流条件下で提供する。本開示の試料の混合および移送デバイスは、前記物質の微細構造中の血の塊または他の汚染物質をキャッチし、および、それらが診断サンプルポートに分配されることを防ぐことができる。本開示の試料の混合および移送デバイスは、受動的な貫流血液の安定化のための、簡易でローコストの設計を可能にする。本開示の試料の混合および移送デバイスは、抗凝固剤を精確に制御して前記物質中へ加えることを、それを抗凝固剤および水の溶液で浸漬し、次いで、前記物質を乾燥させて微細に分散した乾燥抗凝固剤粉末を前記物質の前記細孔全体に形成することによって可能にする。
【0007】
本開示の試料の混合および移送デバイスは、血液がラインを通って流れる応用のために、有効で受動的な血液の混合溶液を備えることができる。このような試料の混合および移送デバイスは、少ない血液容量、例えば、50μL未満または500μL未満には、および/または、慣性力、例えば、重力ベースの慣性力が血液採取容器を前後に反転させることによる、真空チューブに必要とされるようなバルク手動混合には効果的でない場合に有用である。
【0008】
本発明の一実施形態によれば、サンプルを受け取るように適合している、試料の混合および移送デバイスは、第1の端部と、第2の端部と、それらの間に延びる側壁とを有するハウジング、細孔を含む物質であって、前記ハウジング内に配置されている物質、および、前記物質の前記細孔内の乾燥抗凝固剤粉末を備える。
【0009】
一構成では、前記サンプルは血液サンプルである。前記ハウジングは、その中に前記血液サンプルを、前記第1の端部を介して受けるように適合している。さらに別の構成では、前記血液サンプルが前記ハウジング中に受けられた状態で、前記血液サンプルは前記物質を通って通過し、それにより、前記血液サンプルを前記乾燥抗凝固剤粉末と効果的に混合する。一構成では、前記血液サンプルは、前記物質を通って通過する間に、前記乾燥抗凝固剤粉末を溶解して、該粉末と混合する。別の構成では、前記物質はオープンセル発泡体である。さらに別の構成では、前記物質はスポンジである。一構成では、前記第1の端部は入口を含む。別の構成では、前記第2の端部は出口を含む。さらに別の構成では、前記ハウジングは、混合室であって、該混合室内に配置された細孔を含む物質を持った混合室を画定する。一構成では、前記ハウジングは、前記入口および前記混合室と流体連通する入口流路、および、前記混合室および前記出口と流体連通する出口流路を含む。さらに別の構成では、前記ハウジングは、前記混合室と前記出口の間に分配室を含む。
【0010】
本発明の他の実施形態によれば、サンプルを受け取るように適合している、試料の混合および移送デバイスは、第1の端部と、第2の端部と、それらの間に延びる側壁とを有するハウジング、前記ハウジング内に配置された乾燥抗凝固剤粉末、および、前記ハウジング内に配置された混合要素を備える。
【0011】
一構成では、前記試料は前記血液サンプルである。別の構成では、前記ハウジングは、その中に前記血液サンプルを、前記第1の端部を介して受けるように適合している。さらに別の構成では、前記血液サンプルが前記ハウジング中に受けられた状態で、前記混合要素が前記血液サンプルの流れを妨害して前記血液サンプルの前記乾燥抗凝固剤粉末との混合を促進する。一構成では、前記乾燥抗凝固剤粉末は前記ハウジングの内部表面上に堆積される。別の構成では、前記混合要素は複数のポストを含む。一構成では、前記第1の端部は入口を含む。別の構成では、前記第2の端部は出口を含む。さらに別の構成では、前記ハウジングは、混合室であって、該混合室内に配置された乾燥抗凝固剤粉末を持つ混合室を画定する。一構成では、前記ハウジングは、前記入口および前記混合室と流体連通する入口流路、および、前記混合室および前記出口と流体連通する出口流路を含む。別の構成では、前記ハウジングは、分配室を前記混合室と前記出口の間に含む。さらに別の構成では、前記ハウジングは、2つの迂回流路を前記入口流路と前記出口流路の間に含む。
【0012】
本発明のさらに別の形態によれば、細孔を有する物質に抗凝固剤を加える方法は、前記物質を、前記抗凝固剤と水の液体溶液中に浸漬すること、前記液体溶液の前記水を蒸発させること、および、乾燥抗凝固剤粉末を前記物質の前記細孔内に形成することを含む。
【0013】
一構成では、前記物質はスポンジである。別の構成では、前記物質はオープンセル発泡体である。
【0014】
前記並びに本開示の他の特徴および利点、並びにそれらを達成する方法がより明らかになり、開示自体は、添付図面と併せて、本開示の実施形態の以下の説明を参照することによって理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態による試料の混合および移送デバイスの部分断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態による、その微細構造全体に分布している乾燥抗凝固剤粉末を有するオープンセル発泡物質の微細構造の顕微鏡写真である。
【
図3】本発明の他の実施形態による試料の混合および移送デバイスの部分断面図である。
【
図4】本発明の一実施形態による試料の混合および移送デバイスの斜視図である。
【
図5】本発明の一実施形態による試料の混合および移送デバイスの部分断面図である。
【
図6】本発明の一実施形態による、
図5の6-6線に沿った部分断面図である。
【
図7】本発明の他の実施形態による試料の混合および移送デバイスの斜視図である。
【
図8】本発明の他の実施形態による試料の混合および移送デバイスの部分断面図である。
【
図9】本発明の一実施形態による、
図8の9-9線に沿った部分断面図である。
【
図10】本発明の他の実施形態による試料の混合および移送デバイスの代替実施形態の斜視図である。
【
図11A】本発明の一実施形態によるシリンジアセンブリの斜視図である。
【
図11B】本発明の一実施形態による、
図1のシリンジアセンブリの部分拡大斜視図である。
【
図11C】本発明の一実施形態によるシリンジアセンブリの斜視図である。
【
図12】本発明の一実施形態によるオープンセル発泡物質の斜視図である。
【
図13】本発明の一実施形態による、その微細構造全体に分布している乾燥抗凝固剤粉末を有するオープンセル発泡物質の微細構造の顕微鏡写真である。
【
図14】未処理の発泡物質の微細構造の顕微鏡写真である。
【
図15】本発明の一実施形態によるシリンジアセンブリの斜視図である。
【
図16】本発明の一実施形態による、その微細構造全体に分布している乾燥抗凝固剤粉末を有するオープンセル発泡物質を通って流れる血液サンプルによる抗凝固剤取り込みを示すグラフである。
【
図17】本発明の一実施形態による血液移送システムの斜視図である。
【
図18】本発明の一実施形態による血液移送システムの斜視図である。
【
図19】本発明の一実施形態による血液移送システムの斜視図である。
【
図20】本発明の一実施形態による血液移送システムの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
対応する参照文字は、いくつかの図を通して対応する部分を示す。本明細書に記載の例示は、本開示の例示的な実施形態を示し、このような例示は、いかなる方法でも本開示の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0017】
本発明を実施するために企図される記載された実施形態を当業者が行い、使用することを可能にするために、以下の説明が提供される。種々の修正、均等物、変形例、および代替が、しかし、当業者には容易に明らかである。このような任意の全ての変更、変形、均等物、および代替を、本発明の精神および範囲内に含むことが意図される。
【0018】
以下の説明の目的のため、用語「上(upper)」「下(lower)」、「右(right)」、「左(left)」、「垂直(vertical)」、「水平(horizontal)」、「上部(top)」、「底部(bottom)」、「横(lateral)」、「縦(longitudinal)」、およびそれらの派生語は、図面において配向されているとおりに本発明に関連するものとする。しかし、本発明は明白に反対に指定された場合を除き、様々な代替の変形を想定することができることを理解すべきである。以下の明細書に添付の図面に示され、記載される特定のデバイスは、本発明の単に例示的な実施形態であることも理解されるべきである。したがって、本明細書に開示された実施形態に関連する特定の寸法および他の物理的特性は限定的なものと見なすべきではない。
【0019】
図1~3は、本開示の試料の混合および移送デバイスの例示的な実施形態を示す。試料の混合および移送デバイス10は、サンプル12を受容するように適合している。一実施形態において、試料の混合および移送デバイス10は、ハウジング14と、ハウジング14内に配置された細孔18と、物質16の細孔18内の乾燥抗凝固剤粉末20を含む。
【0020】
サンプル12が、試料の混合および移送デバイス10内に受容された状態で、試料の混合および移送デバイス10の部分は 物質16内の乾燥抗凝固剤粉末20と試料12の効果的な混合のための貫流チャンバとして作用する。他の実施形態において、物質16は、他の乾燥物質を含んでいてもよい。効果的な混合は、物質16であってその微細構造全体に分布している乾燥抗凝固剤粉末20を有する物質16を介して、試料12を通過させる
ことで達成される。
【0021】
本開示の試料の混合および移送デバイス10は、均一で受動的な、血液の抗凝固剤との混合を貫流条件下で提供する。本開示の試料の混合および移送デバイス10は、物質16の微細構造内の血の塊または他の汚染物質をキャッチし、および、それらが診断サンプルポートに分配されることを防止する。本開示の試料の混合および移送デバイス10は、受動的な貫流血液の安定化のための、簡易で低コストの設計を可能にする。本開示の試料の混合および移送デバイス10は、抗凝固剤を精確に制御して物質16中へ加えることを、それを抗凝固剤および水の溶液に浸漬し、次いで、物質16を乾燥させて微細に分布した乾燥抗凝固剤粉末20を物質16の細孔18全体に形成することによって可能にする。
【0022】
本発明の試料の混合および移送デバイス10は、効果的で受動的な血液の混合溶液を、血液がラインを通って流れる応用のために提供することができる。このような試料の混合および移送デバイス10は、少ない血液容量、例えば、50μL未満または500μL未満には、および/または、慣性力、例えば、重力ベースの慣性力が血液採取容器を前後に反転させることによる、真空チューブに必要とされるようなバルク手動混合には効果的でない場合に有用である。
【0023】
図1は、本開示の試料の混合および移送デバイス10の例示的な実施形態を示す。
図1を参照すると、一実施形態において、試料の混合および移送デバイス10は、ハウジング14と、ハウジング14内に配置されている細孔18を含む物質16と、物質16の細孔18内の乾燥抗凝固剤粉末20を含む。ハウジング14は、第1の端部22と、第2の端部24と、第1の端部22と第2の端部24の間に延びている側壁26を含む。一実施形態において、第1の端部22は入口28を含み、および、第2の端部24は出口30を含む。
【0024】
図1を参照すると、一実施形態において、試料の混合および移送デバイス10のハウジング14は、入口流路32および出口流路34を含む。入口流路32と出口流路34は、流路すなわち混合室36を介して流体連通している。例えば、入口流路32は、入口28および混合室36と流体連通しており、出口流路34は、混合室36および出口30と流体連通している。一実施形態において、物質16は、ハウジング14の混合室36内に配置されている。
【0025】
一実施形態において、物質16はスポンジ材である。他の実施形態において、物質16はオープンセル発泡体である。一実施形態において、オープンセル発泡体は、以下に詳細に記載されるように、物質16の細孔18全体に微細に分布した乾燥抗凝固剤粉末20を形成するように、抗凝固剤で処理される。試料12を、試料の混合および移送デバイス10内に受容してもよい。いくつかの実施形態において、試料12は物質16中に毛細管現象に基づいて浸漬される。いくつかの実施形態において、試料12を血液サンプルとすることができる。血液サンプルは、物質16の複雑な微細構造を通過する間に、抗凝固剤粉末20に晒され該粉末と混合される。このようにして、試料の混合および移送デバイス10は安定化されたサンプルを生成する。いくつかの実施形態において、安定化されたサンプルを、血液検査装置、ポイントオブケア検査装置などの診断機器、または、同様の分析装置に移送することができる。
【0026】
一実施形態において、物質16は、オープンセル発泡体である。例えば、物質16は、柔らかくて変形可能な、血液に対して不活性なオープンセル発泡体である。一実施形態において、オープンセル発泡体は、BASF(登録商標)から市販されているBasotect(登録商標)などのメラミン発泡体とすることができる。他の実施形態において、オープンセル発泡体は、ホルムアルデヒド-メラミン-重亜硫酸ナトリウムのコポリマーからなることができる。オープンセル発泡体は、柔軟で親水性の、熱および多くの有機溶媒に対し耐性のあるオープンセル発泡体とすることもできる。一実施形態において、オープンセル発泡体はスポンジ材であってよい。
【0027】
細孔18を有する物質16に抗凝固剤を加える方法について、ここで説明する。一実施形態において、方法は、物質16を抗凝固剤と水の液体溶液中に浸漬すること、液体溶液の水を蒸発させること、および、乾燥抗凝固剤粉末20を物質16の細孔18内に形成することを含む。
【0028】
本開示の方法は、抗凝固剤を精確に制御して物質16中へ加えることを、それを抗凝固剤および水の溶液に浸漬し、次いで、
図2に示すように、物質16を乾燥させて微細に分布した乾燥抗凝固剤粉末20を物質16の細孔18全体に形成することによって可能にする。
【0029】
物質16を所望の濃度の溶液中に浸漬することによって、ヘパリンまたはEDTA(エチレンジアミン四酢酸)並びに他の血液安定化剤などの抗凝固剤を、物質16中に液体溶液として導入することができる。液相の蒸発後、例えば、水およびヘパリンの溶液から水を蒸発させた後、
図2に示すように、乾燥抗凝固剤粉末20が形成され、そして、物質16の内部構造全体に微細に分布される。例えば、乾燥抗凝固剤粉末20が形成され、物質16の細孔18全体に微細に分布する。物質16を処理して、同様に、疎水性、親水性、または反応性の内部細孔面を備えることができる。
【0030】
一構成では、オープンセル発泡体を物質16として備えることの重要な利点は、抗凝固剤の既知量を発泡物質の細孔18内に加えることができることである。所望の濃度の抗凝固剤は、水または他の適当な溶媒に溶解され、次いで、液状のオープンセル発泡物質16の細孔18内に導入され得る。一実施形態において、抗凝固剤は、オープンセル発泡物質16を抗凝固剤および水すなわち溶媒の溶液中に浸漬し、そして、続いてオープンセル発泡物質16を乾燥させることで、細孔18内に加えることができる。オープンセル発泡物質16は、大気中または加熱オーブン中で乾燥させてもよい。乾燥後、抗凝固剤は、オープンセル発泡物質16の内部微細構造の全体にわたって乾燥粉末形態で分布され得る。
【0031】
上述したように、相互接続されたセルの細孔を有する適当な親水性の発泡物質に抗凝固剤が加えられ、および、本明細書中で貫流血液安定化について記載したように使用されてもよいことに留意されたい。
【0032】
メラミンベースのオープンセル発泡物質を使用することの1つの重要な利点は、メラミン発泡体が、一般に、低い検体バイアスを有することである。本明細書で説明するように、検体バイアスは、検体の測定値における、血液制御値と比較した相違である。一般的に、検体バイアスは、物質の表面に検体が付着したとき、測定を妨げるおそれのある他の要素の導入によって物質から検体が浸出されたとき、または、生物学的プロセスの活性化のとたんに生じる。本明細書中で説明されるとおりに使用するのに適している追加のオープンセル発泡物質は、有機的熱可塑性および熱硬化性ポリマーおよびコポリマーを含み、これらは、限定はされないが、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)などのポリオレフィン、ポリイミド、ポリアミドを含む、物質は、織布またはランダムな繊維状、または、不規則な3D構造などの繊維構造体であってよい。
【0033】
移送デバイス10のハウジング14に関連する潜在的な検体バイアスを回避するまたは最小化するために、ハウジング14の物質を処理してもよい。一実施形態において、ハウジング14を、検体が表面に付着するのを阻止するように作用する添加剤コーティングで処理してもよい。添加剤コーティングは、限定はされないが、1)例えば、ウシ血清アルブミン(BSA)、カゼイン、または無脂肪ミルクなどのタンパク質、2)ポリソルベート20(Tween(登録商標)20)および有機シリコーン(L-720)などの界面活性剤、3)ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール(PVA)、および、ポリビニルピロリドン(PVP)などのポリマーおよびコポリマー、4)ヘパリンなどのデストラン(destran)およびグリコサミノグリカンなどの炭水化物、並びに、5)LIPIDURE(登録商標)などの細胞膜模倣のポリマーを含んでいてよい。
【0034】
代替的に、ハウジング14を、化学的表面改質で処理することができる。化学的表面改質は、限定はされないが、1)ガスプラズマ処理、2)所望の疎水性又は親水性を達成するための化学結合またはポリエチレングリコール(PEG)または他のポリマー、3)エチレングリコールなどの親水性組成物、または、長い炭素鎖などの疎水性の基を含む、表面の化学的改質、並びに、4)パリレン等の、物質の蒸着を含むことができる。上述の物質の任意の組み合わせを使用して、特定の分析物または分析物の基の検体バイアスを最小限にするように所望の特性を達成し得ることが、本明細書中で理解される。
【0035】
一実施形態において、混合室36は、物質16であってその中に乾燥抗凝固剤粉末20を有する物質16を含む。例えば、
図1および
図3を参照すると、物質16は、試料の混合および移送デバイス10の混合室36内に配置されている。抗凝固剤は、上述のように細孔18を有する物質16に加えることができる。
【0036】
図1を参照すると、試料の混合および移送デバイス10のハウジング14は、その中に第1の端部22を介してサンプル12を受け取るように適合している。例えば、試料の混合および移送デバイス10のハウジング14は、その中に入口28を介してサンプル12を受け取るように適合している。入口28を介してサンプル12が試料の混合および移送デバイス10に入った後、サンプル12は入口流路32を通って混合室36へ流れる。
【0037】
サンプル12が混合室36内に受容された状態において、混合室36は、物質16内の乾燥抗凝固剤粉末20とサンプル12の効果的な混合のための貫流チャンバとして作用する。他の実施形態において、物質16は他の乾燥物質を含み得る。効果的な混合は、その微細構造全体に分布している乾燥抗凝固剤粉末20を有する物質16を通して試料12を通過させることによって達成される。試料12は、物質16を通過する間に、乾燥抗凝固剤粉末20を溶解して該粉末と混合する。
【0038】
図2を参照すると、物質16の微細構造であって、その微細構造、例えばその細孔18全体に分布している乾燥抗凝固剤粉末20を有する物質16の微細構造の図が示されている。
【0039】
図3を参照すると、一実施形態において、試料の混合および移送デバイス10のハウジング14は、分配室すなわち保管室38を含む。分配室38は、試料の混合および移送デバイス10の出口30に隣接していてよい。例えば、分配室38は、混合室36と出口30の間に配置することができる。
【0040】
物質16の複雑な微細構造を通って通過している間に血液サンプルが抗凝固剤粉末20に晒されて混合された後、安定化されたサンプルは、物質16から分配室38へ出口流路34を介して流れる。安定化されたサンプルは、安定したサンプルを試料の混合および移送デバイス10から移送することが望ましくなるまのでの間、分配室38内に留まることができる。例えば、安定化されたサンプルは、血液検査装置、ポイントオブケア検査装置などの診断機器、または同様の分析装置に移送することができる。
【0041】
図4~10は、本開示の試料の混合および移送デバイスの他の例示的な実施形態を示す。
図4~10を参照すると、本開示の試料の混合および移送デバイスは、貫流構造の壁に堆積した乾燥抗凝固剤との混合を促進するために流れの障害物を必要とする層流条件に典型的に関連する少ない血液容量に有効であり得る。
【0042】
図4~6は、本開示の試料の混合および移送デバイスの別の例示的な実施形態を示す。試料の混合および移送デバイス100は、サンプル112を受容するように適合している。いくつかの実施形態において、サンプル112は血液サンプルであってよい。一実施形態において、試料の混合および移送デバイス100は、ハウジング114と、ハウジング114内に配置された乾燥抗凝固剤粉末120と、ハウジング114内に配置された混合要素115を含む。
【0043】
ハウジング114は、第1の端部122と、第2の端部124と、第1の端部122と第2の端部124の間に延在する側壁126を含む。一実施形態において、第1の端部122は入口128を含み、第2の端部124は出口130を含む。
【0044】
図5を参照すると、一実施形態において、試料の混合および移送デバイス100のハウジング114は、入口流路132および出口流路134を含む。入口流路132と出口流路134は、流路すなわち混合室136を介して流体連通している。たとえば、入口流路132は、入口128および混合室136と流体連通している。出口流路134は、混合室136および出口130と流体連通している。一実施形態において、乾燥抗凝固剤粉末120は、ハウジング114の混合室136内に配置されている。
【0045】
一実施形態において、入口流路132と出口流路134は、第1の流路140および第2の流路142を介して流体連通している。たとえば、入口流路132は、2つの別々の流路、例えば第1の流路140と第2の流路142に分岐することができる。
図5に示すように、2つの別々の流路、例えば、第1の流路140と第2の流路142は両方、出口流路134に流入することができる。
【0046】
第1の流路140は壁144を備え、および、第2の流路142は壁146を備える。一実施形態において、乾燥抗凝固剤粉末120の第1の部分は壁144上に堆積され、および、乾燥抗凝固剤粉末120の第2の部分は壁146上に堆積される。例えば、一実施形態において、乾燥抗凝固剤粉末120の第1の部分は、ハウジング114の内面上に、例えば、壁144の内面148上に堆積され、および、乾燥抗凝固剤粉末120の第2の部分は、ハウジング114の内面上に、例えば、壁146の内面148上に堆積される。
【0047】
図5を参照すると、一実施形態において、試料の混合および移送デバイス100のハウジング114は、分配室すなわち保管室138を含む。分配室138は、試料の混合および移送デバイス100の出口130に隣接していてよい。たとえば、分配室138を、混合室136と出口130の間に配置することができる。一実施形態において、分配室138を、流路140,142と出口130の間に位置決めすることかできる。
【0048】
一実施形態において、試料の混合および移送デバイス100は、ハウジング114内に配置された混合要素115を含む。例えば、混合室136の一部はまた、血液サンプルの流路を妨害する障害物すなわち混合促進物150を含むことができ、それによって、血液サンプルと乾燥抗凝固剤粉末120の間の混合が促進される。いくつかの実施形態において、第1の流路140の一部と第2の流路142の一部は、血液サンプルの流路を妨害する障害物すなわち混合促進物150を含むことができ、それによって、血液サンプル120と乾燥抗凝固剤粉末の間の混合が促進される。
【0049】
図4~6を参照すると、試料の混合および移送デバイス100は、サンプル112をその中に第1の端部122を介して受容するように適合している。例えば、試料の混合および移送デバイス100のハウジング114は、サンプル112をその中に入口128を介して受容するように適合している。サンプル112は、入口128内に、および、流入路132へ流れる。いくつかの実施形態において、サンプル112は血液サンプルであってよい。
【0050】
血液サンプルが入口流路140内に受容された状態で、血液サンプルの第1の部分152は第1の流路140へ流れ、および、血液サンプルの第2の部分154は第2の流路142へ流れる。 第1の流路140は血液サンプルの第1の部分152のための第1の流路を備え、および、第2の流路142は血液サンプルの第2の部分154のための第2の流路を備える。
【0051】
血液サンプルの第1の部分152が第1の流路140内に受容された状態で、血液サンプルの第1の部分152は、第1の流路142の壁144上に堆積している乾燥抗凝固剤粉末120の第1の部分と混合する。第1の流路142はまた、血液サンプルの流路を妨害する障害物すなわち混合促進物150を含むことができ、それによって、血液サンプルと乾燥抗凝固剤粉末120の第1の部分の間の混合が促進される。混合の後、血液サンプルの第1の部分154および乾燥抗凝固剤粉末120の第1の部分、すなわち安定化された血液サンプルが出口流路134へ移動する。
【0052】
血液サンプルの第2の部分154が第2の流路142内に受容された状態で、血液サンプルの第2の部分154は、第2の流路140の壁146上に堆積している乾燥抗凝固剤粉末120の第2の部分と混合する。第2の流路140はまた、血液サンプルの流路を妨害する障害物すなわち混合促進物150を含むことができ、それによって、血液サンプルと乾燥抗凝固剤粉末120の第2の部分の間の混合が促進される。混合の後、血液サンプルの第2の部分152および乾燥抗凝固剤粉末120の第2の部分、すなわち安定化された血液サンプルが出口流路134へ移動する。
【0053】
他の実施形態において、試料の混合および移送デバイス100の他の部分は、血液サンプルの流路を妨害する障害物すなわち混合物150を含むことができ、これにより、血液サンプルと乾燥抗凝固剤粉末120の間の混合が促進される。
【0054】
図7~10は、本開示の試料の混合および移送デバイスの他の例示的な実施形態を示す。
図7および8を参照すると、試料の混合および移送デバイス200は、サンプル212を受容するように適合している。いくつかの実施形態において、サンプル212は血液サンプルであってよい。一実施形態において、試料の混合および移送デバイス200は、ハウジング214と、ハウジング214内に配置された乾燥抗凝固剤粉末220と、ハウジング214内に配置された混合要素215を含む。
【0055】
ハウジング214は、第1の端部222と、第2の端部224と、第1の端部222と第2の端部224の間に延びる側壁226とを含む。一実施形態において、第1の端部222は入口228を含み、および、第2の端部224は出口230を含む。
【0056】
図8を参照すると、一実施形態において、試料の混合および移送デバイス200のハウジング214は、入口流路232および出口流路234を含む。入口流路232と出口流路234は、流路すなわち混合室236を介して流体連通している。たとえば、入口流路232は入口228および混合室236と流体連通しており、および、出口流路234は混合室236および出口230と流体連通している。一実施形態において、乾燥抗凝固剤粉末220は、ハウジング214の混合室236内に配置されている。一実施形態において、乾燥抗凝固剤粉末220はハウジング214の内面260上に堆積されている。
【0057】
図8を参照すると、一実施形態において、試料の混合および移送デバイス200のハウジング214は、分配室すなわち保管室238を含む。分配室238は、試料の混合および移送デバイス200の出口230に隣接していてよい。たとえば、分配室238を、混合室236と出口230の間に配置することができる。
【0058】
一実施形態において、試料の混合および移送デバイス200は、ハウジング214内に配置された混合要素215を含む。一実施形態において、混合要素215は、複数のポスト270を含む。例えば、混合室236は、血液サンプルの流路を妨害する複数のポスト270を含むことができ、それによって、血液サンプルと乾燥抗凝固剤粉末220の間の混合が促進される。
【0059】
図7および
図8を参照すると、試料の混合および移送デバイス200は、その中に、第1の端部222を介してサンプル212を受容するように適合している。例えば、試料の混合および移送デバイス200のハウジング214は、その中に、入口228を介してサンプル212を受容するように適合している。サンプル212は、入口228内に、および、流入路232へ流れる。いくつかの実施形態において、サンプル212は血液サンプルであってよい。
【0060】
血液サンプルが入口流路232内に受容された状態で、血液サンプルは混合室236内へ流れる。血液サンプルが混合室236へ流入するにしたがい、血液サンプルは、ハウジング214の内面260上に堆積している乾燥抗凝固剤粉末220と混合する。混合室236は血液サンプルの流路を妨害する複数のポスト270を含むことができ、それによって、血液サンプルと乾燥抗凝固剤粉末220の間の混合が促進される。混合の後、血液サンプルおよび乾燥抗凝固剤粉末220、すなわち、安定化された血液サンプルは出口流路234へ移動する。
【0061】
他の実施形態において、試料の混合および移送デバイス200の他の部分は、血液サンプルの流路を妨害する混合要素215も含むことができ、それによって、血液サンプルと乾燥抗凝固剤粉末220の間の混合が促進される。
【0062】
図10を参照すると、本開示の試料の混合および移送デバイスの代替実施形態が示されている。
【0063】
図11A~16は、本開示に係る物質の別の例示的な実施形態を示す。物質502は細孔505を含み、および、乾燥抗凝固剤粉末504を、上述したように物質502の細孔505内に有している。一実施形態において、物質502はスポンジ材である。他の実施形態において、物質502はオープンセル発泡体である。一実施形態において、上で詳細に説明したように、オープンセル発泡体は、物質502の細孔505全体に微細に分布している乾燥抗凝固剤粉末504を形成するように、抗凝固剤で処理される。
【0064】
一実施形態において、物質502はオープンセル発泡体である。例えば、物質502は、柔らかくて変形可能なオープンセル発泡体であって、血液に対して不活性のオープンセル発泡体である。一実施形態において、オープンセル発泡体は、BASF(登録商標)から市販されているBasotect(登録商標)などのメラミン発泡体とすることができる。他の実施形態において、オープンセル発泡体は、ホルムアルデヒド-メラミン-重亜硫酸ナトリウムのコポリマーからなることができる。オープンセル発泡体は、柔軟で親水性の、熱および多くの有機溶媒に対し耐性のあるオープンセル発泡体とすることもできる。一実施形態において、オープンセル発泡体はスポンジ材であってよい。
【0065】
図11A~16を参照すると、物質502は、シリンジアセンブリ500と一緒に使用することができる。シリンジアセンブリ500はオープンセル発泡物質502を含むことができ、その中に、乾燥抗凝固剤粉末504を有する。オープンセル発泡物質502は、シリンジアセンブリ500内に配置される。抗凝固剤を、上述のように、細孔505を持つオープンセル発泡物質502中に加えることができる。
【0066】
一実施形態において、シリンジアセンブリ500は、第1の端部508と、第2の端部510と、それらの間に延在して内部514を画定する側壁512を有するシリンジバレル506を含む。
図11A~11Cおよび
図15を参照すると、オープンセル発泡物質502は、シリンジバレル506の内部514に配置される。
【0067】
一実施形態において、シリンジアセンブリ500は、プランジャロッド516およびストッパー518を含む。プランジャロッド516は、第1の端部520および第2の端部522を含む。ストッパー518は、プランジャロッド516の第2の端部522と係合しており、シリンジバレル506の内部514において摺動可能に配置されている。ストッパー518は、シリンジバレル506の側壁512に対するシール係合を提供するように、シリンジバレル506の内部514に相対的な大きさになっている。
【0068】
オープンセル発泡物質502は、血液を混合および安定化するために、シリンジバレル506内に配置される。血液は、オープンセル発泡物質502がシリンジバレル506内に包埋された状態で、シリンジバレル506において収集されるようになる。安定化された血液は、次いで分析のために分配することができる。一実施形態において、シリンジアセンブリ500は動脈血ガスシリンジであり、安定化された血液は血液ガス分析のために分配することができる。
【0069】
一実施形態において、シリンジアセンブリ500は、乾燥抗凝固剤粉末504をオープンセル発泡物質502内に有する血液サンプルの効果的な混合のための貫流チャンバとして作用する。他の実施形態において、オープンセル発泡物質502は他の乾燥物質を含むことができる。効果的な混合は、血液サンプルを、その微細構造全体に分布している乾燥抗凝固剤粉末504を有するオープンセル発泡物質502を通して通過させることによって達成される。
【0070】
図13を参照すると、その微細構造全体に分布している乾燥抗凝固剤粉末504を有するオープンセル発泡物質502の微細構造の図が示されている。
図14を参照すると、未処理の発泡物質502の微細構造の図が示されている。
図16を参照すると、その微細構造全体に分布している乾燥抗凝固剤粉末を有するオープンセル発泡物質を通って流れる血液サンプルによる抗凝固剤の取り込みを示すグラフが図示されている。
【0071】
図17~20は、本開示の試料の混合および移送システムの例示的な実施形態を示す。
図17~20を参照すると、一実施形態において、血液移送システム600は、シリンジアセンブリ602と、ライン604と、容器606を含む。一実施形態において、容器606が血液608を含む。
【0072】
一実施形態において、ライン604は、乾燥抗凝固剤粉末614をその中に有するオープンセル発泡物質612を含む。抗凝固剤を、上述のように、細孔を有するオープンセル発泡物質612内に加えることができる。オープンセル発泡物質612はライン604内に配置されている。ライン604は、第1の端部616および第2の端部618を含む。
【0073】
一実施形態において、シリンジアセンブリ602は、シリンジバレル620、および、内部624を画定する側壁622を含む。
図17~20を参照すると、ライン604は、シリンジアセンブリ602を配置して容器606と流体連通させるのに適合している。例えば、ライン604の第1の端部616は容器606の内容物と流体連通することができ、および、ライン604の第2の端部618はシリンジアセンブリ602と流体連通することができる。
【0074】
オープンセル発泡物質612は、血液を混合および安定化するためにライン604内に配置される。一実施形態において、血液608は、容器606からシリンジバレル620へライン604を通じて移送される。例えば、血液サンプルは、例えば、血液608は、血液がシリンジバレル620内に収集されるようになるにしたがい、オープンセル発泡物質612がライン604内に包埋された状態で、ライン604を通って通過する。このように、血液608はシリンジバレル620に入る前に安定化される。安定化された血液608がシリンジバレル620内に収容された後で、安定化された血液608は、次いで、分析のために分配され得る。
【0075】
一実施形態において、ライン604は、血液サンプルのオープンセル発泡物質612内の乾燥抗凝固剤粉末614との効果的な混合のための貫流チャンバとして作用する。他の実施形態において、オープンセル発泡物質612は他の乾燥物質を含むことができる。効果的な混合は、血液サンプルを、その微細構造全体に分布している乾燥抗凝固剤粉末614を有するオープンセル発泡物質612を通して通過させることによって達成される。
【0076】
本発明は、上述のように、細孔を含む物質であって、乾燥抗凝固剤粉末を該物質の細孔内に有する物質を提供する。一実施形態において、物質はスポンジ材である。他の実施形態において、物質はオープンセル発泡体である。一実施形態において、オープンセル発泡体は、上記で詳細に説明したように抗凝固剤で処理されて、物質の細孔全体に微細に分布する乾燥抗凝固剤粉末を形成する。
【0077】
本開示は、物質の種々の応用および実施形態を提供する。例えば、一実施形態において、本開示の試料の混合および移送デバイスは、サンプルを受容するように適合している。試料の混合および移送デバイスは、ハウジングと、細孔を含む物質であってハウジング内に配置されている物質と、物質の細孔内の乾燥抗凝固剤粉末とを含む。一実施形態においては、物質はスポンジ材である。他の実施形態において、物質はオープンセル発泡体である。一実施形態において、オープンセル発泡体は、物質の細孔全体に微細に分布している乾燥抗凝固剤粉末を形成するように、抗凝固剤で処理される。血液サンプルを、試料の混合および移送デバイス内に受容してもよい。血液サンプルは、物質を通過する間に、抗凝固剤粉末に晒されて該粉末と混合される。
【0078】
本開示の試料の混合および移送デバイスは、均一で受動な、血液の抗凝固剤との混合を貫流条件下で提供する。本開示の試料の混合および移送デバイスは、物質の微細構造内の血の塊または他の汚染物質をキャッチし、および、それらが診断サンプルポートに分配されることを防止ができる。本開示の試料の混合および移送デバイスは、受動的な貫流血液の安定化のための、簡易で低コストの設計を可能にする。本開示の試料の混合および移送デバイスは、抗凝固剤を精確に制御して物質中へ加えることを、それを抗凝固剤および水の溶液に浸漬し、次いで、物質を乾燥させて微細に分散した乾燥抗凝固剤粉末を物質の細孔全体に形成することによって可能にする。
【0079】
本発明の試料の混合および移送デバイスは、有効で受動的な血液の混合溶液を、血液がラインを通って流れる応用のために提供することができる。このような試料の混合および移送デバイスは、少ない血液容量、例えば、50μL未満または500μL未満には、および/または、慣性力、例えば、重力ベースの慣性力が血液採取容器を前後に反転させることによる、真空チューブに必要とされるようなバルク手動混合には効果的でない場合に有用である。
【0080】
本開示の他の実施形態において、上述したように、物質を、試料の混合および移送システムまたはシリンジアセンブリに利用することができる。
【0081】
例示的な設計を有するものとして本開示について述べてきたが、本開示を、本開示の精神および範囲内でさらに変更することができる。本出願はしたがって、その一般的な原理を用いる、本開示の任意の変形、用途、または適用をカバーすることを意図している。さらに、本出願は、本開示からの逸脱であっても、この開示が関係しおよび添付の特許請求の範囲に記載の範囲内に入る、当技術分野で公知または慣行内に入るような逸脱をカバーすることを意図している。